江戸時代に、日本は、オランダと友好を深めたはずなのに、今では、オランダが話題になることがほとんどありません。
オランダはヨーロッパの小国ですが、北欧諸国と同様に、賢い国です。オランダに関する本は、「
オランダの共生教育」に次ぎ2冊目です。
日本は、今こそ、オランダに学ぶべき点が多いと思います。本書にも勉強になる箇所が多々ありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。
・オランダ人の文化人類学者、ヘールド・ホフステードが開発した「
ホフステードの4次元」では、1.「権力の格差」2.「個人主義対集団主義」3.「男性らしさ対女性らしさ」4.「不確実性の回避」の4つの特徴で、地域別の価値観、国民文化を定義している
・世界50カ国で、もっとも「
男性的」なのが、日本。オーストリア、ベネズエラ、イタリア、スイス、メキシコ、アイルランド、ジャマイカ、イギリス、ドイツが次ぐ。逆に、「
男性性が低い」のが、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、デンマーク
・「
不確実性を許容しない」国は、ギリシア、ポルトガル、グアテマラ、ウルグアイ、ベルギー、エルサルバドルに続き、日本は7番目。逆に、「
不確実性を許容する」のは、シンガポール、香港、マレーシアなどの海洋都市国家、華僑の影響をもった地域
・もっとも「
不確実性の回避+男性的」な国が日本。「
不確実性の許容+女性的」な国がデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、フィンランドなどの北欧圏。日本と北欧圏は、ちょうど対角線上の反対側の位置にある
・経済災害の「
オランダ病」(1960年代北海で大量の天然ガス油田発見→天然ガス売却収入増大→為替レート上昇→工業製品の輸出停滞→労働者賃金上昇→製造業の国際競争力低下→社会保障費負担が財政圧迫→膨大な財政赤字が発生)の教訓は、現在の日本に役立つ
・徳川幕府は国を閉ざす意識はなかった。鎖国は、オランダの無宗教ビジネス提案を幕府が採用し、オランダと独占契約した結果で、列強の
宗教的領土拡大(植民地主義)の防御策
・
購買力平価ベースの1人当たりGDPランキング2010年では、1位カタール、2位ルクセンブルク、3位シンガポール、4位ノルウェー、5位ブルネイ、6位アラブ首長国連邦、7位アメリカ、8位香港、9位スイス、10位オランダ。21位台湾、25位日本、27位韓国
・オランダは知識経済社会への転換を成し遂げている。たとえば、
1時間当たりのGDPが世界一。これには、インターネットなど情報技術の活用、ワークシェアリング、ネットワーク化が進んだ社会構造、サービス経済などが要因と考えられる
・オランダは知識経済圏のリーダーになることを目標に掲げた。ベアトリクス女王の言う
知識経済圏とは、デンマーク、スウェーデン、カナダ、シンガポール、スイス、米国、フィンランド、オランダ、香港、英国の10カ国(地域)
・オランダでは、各都市が創造性経済の役割を担い、補完し合っている。とくに、アムステルダム(国際都市)、ロッテルダム(経済都市)、ユトレヒト(知の交流都市)、デンハーグ(政治都市)の4都市は円環状に連携。「
ランドシュタット」と名づけられている
・オランダ東インド会社(1600年代初期)は「経営精神」(
市民主義・
企業精神・
功利主義の3つの側面)を具現化し、宗教の支配力を退けることができた
・日本企業が
ワークシェアリング導入に消極的な5つの理由。「サービス残業の存在」「正社員の給与低下の恐れ」「教育訓練などのコスト増」「パートタイマーとの現実的賃金格差の大きさ」「従来の仕事の仕方に大きな変化を迫られる」
・
所得の平等性と5年後の
イノベーション力には、かなり高い相関がある。経済的な不平等性が高まると、イノベーション指数が低くなる。ここ20年、日本は、先進諸国中でジニ係数(経済格差、平等性)が上昇し続けている。失われた20年と期間が一致する
・九州ほどの面積で、1660万人しか人口がいないオランダが、
農産物純輸出額(輸出から輸入を引いた実質輸出額)が世界一。農業を知識産業化して、高付加価値商品や加工食品を輸出し、世界最大の「
農業ビジネス国」となった
・現代のオランダ的思考9項目。「目立たず能力を発揮する」「トラブルの真因を突き止める」「オランダ的なものに批判的」「私権重視の個人主義」「皆が一家言」「権威を認めない」「英雄好まず仲良く」「ビジネス優先」「交渉しないで話し合い」
・オランダの経済と文化・芸術は深く結びついている。成熟した国家にとって、技術と並んで文化・芸術は
経済的持続性の源泉で、経済にダイナミズムを与える
オランダをヨーロッパの小国と考えるか、世界の先進国と考えるかによって、学ぶ態度が変わってきます。
このブログでも、北欧諸国の本を数多くとり上げてきましたが、オランダも、北欧諸国と同類のように感じました。
本書を読んで、江戸時代初期に遡って、再度、オランダから多くの事柄を謙虚に学ぶべき時が来ているように思いました。