とは学

「・・・とは」の哲学

『PM2.5越境汚染』沈才彬

PM2.5「越境汚染」 中国の汚染物質が日本を襲う (角川SSC新書)PM2.5「越境汚染」 中国の汚染物質が日本を襲う (角川SSC新書)
(2014/03/10)
沈 才彬

商品詳細を見る

中国の環境汚染は深刻なレベルに達しています。PM2.5のような大気汚染だけでなく、土壌汚染水質汚染食料汚染など、汚染は複合化しています。

人が環境をつくると同時に、環境が人をつくります。最近の中国の動向を見ていると、人の心も汚染されてきているのではないでしょうか。本書は、中国の汚染の実態が記されている書です。参考になった点をまとめてみました。



・「真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」(田中正造)。中国が出すべき答えは、この田中の言葉にはっきりと示されている

・中国の河川の40%が汚染されており、人が触れることもできない有毒な川は全体の2割まで達している。地下水にいたっては、95%の都市で汚染が確認され、そのうち60%が厳重汚染とされている

・中国の土壌の40~70%が重金属化学肥料に汚染されている。このため、カドミウムのような重金属に汚染された食料が市場に出回っている

・WHOの発表によると、世界各国で毎年200万人が大気汚染の影響で死亡しているというが、そのうち65%がアジア人。事実、北京市の肺がん患者はここ10年で60%増えている

・PM2.5が人体に及ぼす悪影響には、喘息、気管支炎といった呼吸器系の疾患が多い。そのほか、心臓や血管などの循環器系疾患への影響も指摘されている。とくに、子供や高齢者は免疫力が弱く、PM2.5を吸い込むと呼吸器系疾患にかかりやすい

・清朝時代から都に住んでいる北京人のプライドは高い。そのため、3K(危険、きつい、汚い)の仕事をやりたがらず、これらの仕事を出稼ぎ労働者に任せるため、北京への人口流入を招いている

共産党の人事政策では、経済成長を成し遂げた人が評価される。任期中にGDPが前年比0.3%上昇すれば、昇進率・出世率は8%高まるが、市民の生活改善や環境保護に力を費やすと、昇進率・出世率はマイナスに落ち込むことがわかっている

・PM2.5の日本のレベルは中国の50分の1から20分の1程度でしかないが、西日本では、1日平均値の環境基準を上回る日も出てきている

・中国には、長江、黄河などの7本の主要河川があるが、これらの河川流域面積の半分以上の水質が汚染されている

湖の汚染も深刻。35の主要な湖のうち、17の湖が厳重汚染の指定を受けている。また、地下水の汚染も進行しており、都市部水源の4割が飲用不能

地下水汚染には、次の3つの経路がある。「1.工業排出物」「2.化学肥料」「3.ゴミ捨て場から染み出た有害物質の浸透」3による汚染は、日本では想像できないが、中国では大問題となっている

・中国の耕地面積の20%に相当する2000万haが汚染されている。土壌汚染により廃棄された食料は年間1万トンにのぼり、損失額は毎年200億元(約3400億円)に達している

・現在の北京には、PM2.5、砂漠化渇水交通渋滞、人口急増と、様々な問題が押し寄せてきている。近い将来、首都としての機能が麻痺するという危惧が強まっている

・1980年代から年間2460㎢(ほぼ神奈川県の面積に匹敵)の土地が砂漠化している。砂漠化によって影響を受けた人は、すでに4億人。砂漠化は黄砂の原因となり、春には朝鮮半島や日本にも影響を与えている

・国土の砂漠化に加え、中国は渇水問題にも頭を悩ませている。中国の1人当たりの水資源は2300㎥しかなく、世界平均の4分の1にしか過ぎず、世界121位という低ランクで、最も水が不足している国の一つ

・中国は、自国内部に「環境破壊」という安全保障上の問題を抱え込むこととなった。この脅威は外部からもたらされたものではなく、自身によってつくられたもの。「北京廃都」は政府が最も恐れるシナリオ

・中国には、散歩しているかのような体裁をとりながら、無言の抗議を行う抗議活動(デモ)がある。このデモを政府は「群発事件」と呼んでいる。群発事件の発生件数は1年に20~30万件。特に、環境問題に端を発したデモが頻発している



先日も、中国の食料汚染が話題になりました。空気も汚い、水も汚い、土も汚ければ、安全な食品などつくれるはずがありません。

しかし、考えてみれば、空気や水や土を汚くしているのは、中国国民です。つまり、心の汚い人たちだから、食品も汚くなるといってもいいでしょう。心の汚染が終焉するまで、中国の食品に手を出さないほうが無難かもしれません。


[ 2014/08/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『嫉妬のお作法』川村佳子

嫉妬のお作法 (フォレスト2545新書)嫉妬のお作法 (フォレスト2545新書)
(2014/06/07)
川村佳子

商品詳細を見る

嫉妬は厄介なものです。嫉妬は、人間の遺伝子に組み込まれたものであり、それをなくしていくのは容易ではありません。

本書は、嫉妬をなくすのではなく、嫉妬への対処法、つまりお作法について書かれたものです。なかなか読みごたえがあります。それらの一部をまとめてみました。



・嫉妬心は、人間が生まれてから死ぬまで、ずっと付き合っていく感情。基本的な感情である「喜怒哀楽」に、この「嫉妬」が加わってもいい

・人間関係に共通する一つのキーワードが「嫉妬」。親子、兄弟、嫁姑、友人、同僚、部下、恋人、ご近所の人など、あらゆる人間関係にまつわる問題の多くが「嫉妬」に結びつく

・嫉妬心は、自分と他者を比較したときに湧き起こってくる感情

・「妨害された」「妨害されるのではないか」という危機感不安感が、嫉妬心に火をつける

・嫉妬心は抑圧され、変形された間接的な方法(悪口を言う、批判する、中傷する)で、表される

・成人期、社会人になると、自分と他者を比較することから目を背けられなくなる。受験や恋愛、就職、出世、才能、容貌、健康、財産など、嫉妬心は「自分より優れた人」「評価の高い人」に、ますます向けられる。現役を退いて、老年期に入っても続く

・「うらやむ」は、他者の優位性をはっきり認めた上で、その状態になれない自分を省みることができる状態。一方、「妬み」は、他者の優位性は認めてはいるものの、省みることをせずに、むしろ自分の中から排除しようとするもの

・手を伸ばしても届かない人には憧れを抱き、少し手を伸ばしたら、届きそうな相手には嫉妬する

・「調和」と可能性の「平等」が、逆に、妬みやひがみを生みやすくしている

・嫉妬には、「1.貶める『嫌がらせタイプ』」「2.不満をぶつける『ストレス発散タイプ』」「3.時間をかけて復讐する『自己優越タイプ』」「4.目をそらす『現実逃避タイプ』「5.悔しさをパワーに変える『自己成長タイプ』」がある。目指したいのは5のタイプ

・嫉妬深い人の特徴は、「自己アピールの強い人」「目立ちたがり屋の人」「噂好きな人」「虚栄心の強い人」「他者と常に比較する人」

・正論や正義を振りかざし、人を正そうとする人には、自分では気づいていないが、嫉妬心が根底にある。そういった人の特徴は、間違いや失敗を何より恐れ、自信がないために、「自分」を主語にせずに、「世間一般」や「常識」を盾に、世間の意見だと言ってくる

嫉妬されやすい人の5つの特徴。「1・正直すぎる人、率直な人」「2.相手が嫉妬するかもしれないという想定が足りない人」「3.自慢せずにはいられない人」「4.無頓着、無自覚な人」「5.存在感のある、目立つ人」

・男性は、「表面上は嫉妬心など抱いていない」といった、涼しい顔をしている。嫉妬心を表に出すことで、自分の評価を下げたくない、という気持ちがはたらく

・男は学歴に嫉妬する。女は美しさに嫉妬する

・人間関係に悩みを抱える相談者は、「嫉妬する」側が多いと思われがちだが、実は「嫉妬される」側の相談が多い

・嫉妬深い人から身を守るには、一定の線引きをして、深入りをしないこと。いっさい関係を持たないと、敵視されてしまうので、注意が必要

・嫉妬の矢を自分以外の場所へ方向転換させるには、「運が良かっただけ」「皆さんの協力があったおかげ」といった、自分だけの実力でないことを強調すること

・嫉妬心が湧き出るとき、目の前の相手や出来事を極端に考えてしまう。それを防ぐには、「根拠のない決めつけ」「白黒思考」「部分的焦点づけ」「過大評価・過小評価」「すべき思考」「一般化」「自己関連づけ」「情緒的な理由づけ」の思考グセに注意を払うこと

・本当は自分がそうしたいと思っているのにできないこと、自分で制限していることを自由に行っている相手が現れたとき、嫉妬してしまう



本書は、嫉妬は誰でもするものなので、嫉妬されたときに身を守る方法が大切であるという内容の書でした。

喜怒哀楽に次ぐ、第5の感情である「嫉妬」からの防衛戦略書ではないでしょうか。


[ 2014/08/27 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『言葉でたたかう技術・日本的美質と雄弁力』加藤恭子

言葉でたたかう技術言葉でたたかう技術
(2010/12/07)
加藤 恭子

商品詳細を見る

外交は「言葉」の戦い、経済は「お金」の戦い、戦争は「軍事」の戦いです。日本は、平和ボケが続いたせいか、言葉の戦いが低レベルです。

そこを周辺国家に巧妙に突かれているのが現状です。それを防ぐには、どうすればいいかのヒントが本書に詰まっています。その一部をまとめてみました。



・日本人は「島国人間」、周囲のほとんどの国の人々は「大陸人間」。友好的な場では、「島国人間」のやり方をすればいいが、対立的になったら、やり方を変えること

にこにこ、にやにやを続けてはいけない。相手の出方によって、こちらも表情を変えること。厳しい表情になったら、それに見合う言葉も出てきて、反論もしやすくなる

・日本人同士なら、初対面の他人といえども、「島国人間」同士だから、ある程度察しはつく。ところが、欧米人相手では、何が飛び出してくるかわからない。思いもかけない頼みごと、批判、非難、説明の要求などが来たりする

・他者との会話や交流において、多くの日本人は「丁寧か」どうかに気を使う。だが、欧米人で、形式を重んじる人は一部。多くの欧米人は「誠実か」どうかを重んじる

・言い難いことでも、敢えて言う。それが誠実さの一つの要素。欧米では、誠実な人間とは、自己の意見、思っていること、感じていることを心から語り、自分の正しさに自信を持っている人のことを言う

・日本人同士では、けんかをすれば不仲になるが、アメリカ人とは、けんかをしたほうが、あとで仲よくなれる場合が多い

アメリカ人の人材評価。「演出力、表現力、発表能力に秀でている」「個の主張が強いが、相手の個も尊重する」「コミュニケーションを大切にし、上手」「意見の違いと対立を恐れない」

・誇張は嘘ではない。少々芝居がかっているだけ。それが自己の主張を通すやり方。少なくとも、大陸世界においては「雄弁は力なり

・日本は、地理的にも、文化的、宗教的にも、孤独な存在。主張すべきこと、発信すべきことが多いのに、それをあまりしてこなかった。「文化通訳」なり、「仲介役」なり、専門家を養成し、活用する専門機関の設立が必要

・個人としては、政府に不満を抱いても、外部からの批判に対しては、団結して政府の味方になるのが、世界のエリート層。日本では、エリート層が政府の味方になっていない

・日本の弱みは、相手を理解していないこと。相手を理解してこそ、こちらも理解してもらえる。説明を求め、こちらも説明し、理解し合える人を作ることが必要

・「島国人間」の日本人は、異文化間の軋轢の怖さを忘れている。知識として知っているだけ。説明下手でいられるのも、その怖さを本当に知らないから

・日本人は、「繰り返し」が嫌い。「きちんと説明したのだから、それで充分なはず」「何回も同じことを言うのは、くどい」というのが日本人的感覚。しかし、国際関係では、反撃は、何度でも、繰り返さなければならない

・国際外交の世界では、対外的に強く発信しないと、向こうの主張が正しく、こちらは「魔女」にされてしまう。こちらの意見に耳を傾けず、言いがかりをつけてくるような強い態度に出てくる相手には、こちらもより強く出る

・日本の立場に同意しない国々には、説得を続ける。そして、利害関係が一致する国々とは、手を結び、問題に立ち向かうよう働きかける

・国と国との利害の衝突においては、第一段階として、言葉による外交交渉での解決の努力がなされるもの。武力の行使は最終段階。不戦を誓う日本人にとって、言葉と情報は、残された唯一の紛争抑止の手段であり、衝突回避の手立て

・「武器に替わる、武器としての言葉」という発想が必要。「軍事力」に代わるものとして、「言葉力」を強めなければならない

・国内政治と国際政治とでは、原理が違う。日本の政治家は、複雑かつ多方面な外交を全世界で展開するために、もっと外務省を強化し、その専門性を使うべき。政治家とは、言葉によって闘う職業。「口下手」「説明下手」ではすまされない



日本の政治家は、左や右の思想を問わず、周辺国家からの言葉の戦い、情報の戦いに、逃げ腰です。軍備云々の前に、言葉でやり返さないと、日本の主権は守れません。

そして、左右の人たちは、国内では論争していても、対外的には、一致団結して戦うのが大人の行動であり、エリート層の行動です。そこら辺のところが忘れられているのが、日本の嘆かわしい現状ではないでしょうか。

[ 2014/08/25 07:00 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『ほんとはこわい「やさしさ社会」』森真一

ほんとはこわい「やさしさ社会」 (ちくまプリマー新書)ほんとはこわい「やさしさ社会」 (ちくまプリマー新書)
(2008/01)
森 真一

商品詳細を見る

社会心理学者である著者の書を紹介するのは、これで4冊目になります。特に、日本の「お客様社会」「お客様心理」の研究は、鋭く分析されており、勉強になります。

本書は、現代の日本人が考える「やさしさ」とは何かを、過去からの「やさしさ」の変遷を基にした分析は大変興味深いものです。その一部をまとめてみました。



・現代社会では、「やさしさ」や「やさしいこと」は、ほとんど無条件に「善いこと」とされている。しかし、実際に自分の生活を振り返ると、必ずしもそう言えない。やさしさ社会がもたらしている「しんどさ」や「こわさ」に改めて気づく

・現代のやさしさとは、「人を傷つけないように気を遣う態度や振る舞い」という意味になる

・「やさしいきびしさ」は、やや古いタイプのやさしさ。基本的には相手に厳しく接する。ただし、その厳しさは優しさに基づく。一方、「きびしいやさしさ」は、新しい、現代的な優しさ。それは「今傷つけないように全力を尽くす」もの

・「治療的やさしさ」は、思わず誰かを傷つけてしまったときに、言葉で癒せば、傷は治る
というもの。「予防的やさしさ」は、人を傷つけたら、一生消えないので、相手を傷つけないようにすることこそ、「やさしさ」というもの

現代のやさしさが「やさしいきびしさ→きびしいやさしさ」「治療的やさしさ→予防的やさしさ」に、変化してきており、対人関係のルールになっている

・予防的やさしさは、傷つけることを回避することがやさしさ。ということは、修復は最初から考慮に入れられていない。傷つけたら終わり、という感じ

・上から目線にムカつくのは、人間関係は対等であるべきという原則によるもの。この対等性の原則は、横の差異(ファッションや趣味)は認めても、縦の差異・上下の差異(センスの良し悪しや経済格差)は容認できない

・「一度きりの人生」とは、自分の人生の値打ちが生かされずに無駄になるのが惜しいという思想であり、自己実現を重要視する価値観

・能力「低下」をうるさく言う現代は、能力への関心が「上昇」している時代。能力への関心が上昇しているからこそ、能力の低下について大騒ぎする

・「よそよそしさ」「冷たさ」「攻撃性」は、ひどくやさしいから生まれてくる。皮肉なことに、やさしさルールがあまりにも厳しくなって、過剰に優しくしなければならないからこそ、逆にこわい現象が起きる

・うかつに触れれば、すぐ傷ついてしまう「腫れもの」「こわれもの」、あるいは「爆発物」が、現代人の自己の特徴

・今の日本人は身分差のない武士的存在。武士はちょっとした礼儀上のミスでも「無礼者!」と激しく怒り、ミスをした家臣や町人を手討ちにする。今は対等が原則だが、この対等を守らなければ、かつての武士のように怒りだす、怖い人が増えた

・日本社会には、仲間には非常に気を遣うのに、それ以外の人にはまるで無関心、という思いやりの落差がある。この「内集団」と「外集団」への思いやりの落差は拡大中

・楽しさ至上主義は、「いつでもどこでも楽しくないとだめ」という思想。この思想を信じてしまうと、自分以外のみんなは、いつも楽しいことだらけのような気がしてあせり、イライラして、怒りっぽくなってくる

・気軽さ、気楽さが、現代日本に最も欠けているところ。「対人恐怖症の武士」である現代日本人にとって、見知らぬ人に「すみません」と言うのは、プライドが許さない

・「お客様」からされた理不尽な要求を、自分が「お客様」になったとき、無関係な従業員に対してもする、お互いが首を絞め合う状況にある。お金のために首を絞め合う傾向は、能力主義、市場原理、グローバリゼーションといった過度の競争によって推進される

・悪口は「悪」だから、公然とは使えない。でも、使いたい。この葛藤の結果、悪口の使用法が屈折してしまう。その典型例がネットいじめ



社会が「やさしさ」「善意」を要求してくるのに比例して、そのツケがどこかに溜まってきます。このツケが、悪口だったり、いじめだったりします。

過度の要求をすることで、みんながギスギスするようになっているというのが著者の見解です。目くじらを立てずに、もっと気楽に、気軽に生きることでしか、現代の日本社会を平和にする手立てはないのかもしれません。


[ 2014/08/22 07:00 ] 森真一・本 | TB(0) | CM(0)

『ブラック企業・日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
(2012/11/19)
今野 晴貴

商品詳細を見る

ユニクロが警告状を出したことで有名な書で、昨年度の大佛次郎論壇賞にも輝きました。そして、著者は「ブラック企業」で、昨年度の流行語大賞を受賞されました。

ブラック企業問題に取り組んでいる著者の渾身の作が本書です。ブラック企業の特徴や手口がよく分かります。それらをまとめてみました。



・耐えきれずに自主退社を余儀なくさせる「ハラスメント手法」に共通するのは、努力をしても罵られ、絶え間なく否定されるということ。人格破壊の巧妙かつ洗練された手法

・若手社員は、苛烈な退職強要、圧迫、加虐のあり様を目にするなかで、恐怖と緊張により、「コスト=悪」「稼いだ奴は何をしてもよい」という価値観を強力に内面化していく

・研修の目的は、技術の向上や社会人としてのマナーを教えることを企図していない。本当の目的は、従順さを要求したり、それを受け入れる者を選抜することにある

・正社員で採用されても選抜は終わらない。店長になって初めて本当の正社員になる。それ以外は、淘汰されていなくなる

・ブラック企業の共通点は、入社してからも終わらない「選抜」と、会社への極端な「従順さ」を強いる点。自社の成長のためなら、若い人材を、いくらでも犠牲にしていく

・ブラック企業は、「固定残業代」「定額残業代」によって、低い給与を多く見せかける。「試用期間」によって、正社員と見せかけ、若者を非正社員として契約させる

・ブラック企業は、解雇の規制を免れるために、社員が「自ら辞めた」形をとらせる

・ブラック企業の「使い捨て」パターンは、代わりがいくらでもいる中で、若者を、安く、厳しく、使い尽くす

・残業代の支払いを免れるように装う場合、「労働者ではない」と言ってしまう。大体、「管理監督者」とされるか、「個人請負」とされるかのどちらか

・日本の大企業の大半で長時間残業が導入され、さらに国家も事実上規制をかけないという状況は、世界的に見れば異様な事態

・選別のために辞めさせるのも、辞めさせずに使い潰すのも彼ら次第。ブラック企業は、「生殺与奪」の力を持っている

・寄せられる相談の一定部分が本人ではなく、両親や恋人など家族の身の回りの肩からのもの。当人が精神的に追いつけられている中で、家族が異変を察知し、相談を寄せてくる

・辞めさせる技術は、主に三つ。「1.カウンセリング形式」(個別面談で抽象的な目標管理を行い、反省を繰り返させる)。「2.特殊な待遇付与」(みなし社員、準社員、試用期間など、辞めることを前提とした呼称を設ける)。「3.ノルマと選択」(過剰なノルマを課す)

・ブラック企業の所業の結果、若者の不本意な離職が増加。大卒就職者57万人のうち早期退職者(3年以内)が20万人。無業、一時的な仕事に就いた者、中途退学者も含めると、学校から雇用へと円滑に接続できなかった若年者は41万人で、52%を占める

・ブラック企業は、日本の有効な資源を消尽し、自分たちの私的利益に転換している。特に若者のうつ病の増加と少子化はこれに当てはまる

・日本企業の「命令の権利」が際立って強いのは、「終身雇用」「年功賃金」との引き換え

・日本の労働組合には、もはやブラック企業の発生を抑える力はない。日本型雇用の「いいとこどり」を簡単に許してしまう

・採用面接で「環境問題への配慮」「ワークライフバランスへの取り組み」について質問した学生は、全員不採用になる。もはや労働条件について、何も言えない、言うべきでない

・最近流行のキャリアカウンセラーは、「カウンセリング」を受け入れさせるという意味で、マインドコントロールに一役買っている

・ブラック企業の労働の特徴は、「単純化(マニュアル化)」と「部品化」にある

・悪徳な社会保険労務士弁護士が、ブラック企業と労働者との間に介在し、ブラック企業が用いる「パターン」を企業に唱導し、日本型雇用の「悪用」の仕方を説いている



日本型雇用体制においては、新卒採用が優遇され、そこから漏れた人たちは、冷遇されます。その新卒採用において、ブラック企業に引っ掛からないために、情報武装する必要があります。

本書は、ますます手口が悪質になっているブラック企業を見極める手法が記されています。参考になる点が多いのではないでしょうか。


[ 2014/08/20 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『年収100万円の豊かな節約生活術』山崎寿人

年収100万円の豊かな節約生活術 (文春文庫)年収100万円の豊かな節約生活術 (文春文庫)
(2014/05/09)
山崎 寿人

商品詳細を見る

著者は、東大出身、大手企業を30歳で退職し、定職に就くことなく20年以上、わずかな収入で、愉快に暮らしている50代独身の方です。

この本は単なる節約の本ではありません。豊かな人生を問い続けた著者の思想実践書です。この楽しみを理解できる人は、人生を達観できた人かもしれません。参考になった点が多々ありました。それらの一部をまとめてみました。



・求めているのは、日々の生活を人生もろとも楽しむこと。あくまでも幸せが先、節約は二の次。だから、よくある節約術のように、「何円倹約できたか」に一喜一憂しない

・年収100万円や生活費月3万円(変動費部分)とは、生きることを楽しむために「これくらいあれば、大して支障はない」という金額。あるに越したことはないが、なければないで構わない。この予算内で、いかに豊かな生活が送れるかを楽しんでいる

・豊かな貧乏生活術の目標とする柱は二本。「いかに金をかけずに、生活の質を上げていくか」の追求。「いかに安い食材で、豊かな食生活を送るか」の追求。そのため、脳みそを使う

金のかからない楽しみを探すことが節約法の一つなら、これこそ最強の節約術。頭を使うことにお金はかからない

食費は月15000円(1日3食500円)が目安。もっと節約できるが、500円は、安い食材で、贅沢気分を味わえ、栄養バランスを考えた料理を作る額。朝食40円前後、昼食35円。夕食は主食40~45円、サラダ30円、小鉢30円~75円、おかず250円~300円

・月初めに、銀行から現金2万円を引き出し、財布に入れる。現金払いの生活費が1万5000円、予備費が5000円。これで、月の食費と日用品、雑貨、交際費、遊興費、医療費、衣料費、交通費をすべて賄うのが基本。光熱費とスクーターのガソリン代は銀行引き落とし

・日々のやりくりの主役は、食材の買い出し。徒歩10分圏(スーパー3店、ディスカウントショップ1店)スクーター10分圏(業務用スーパー3店、激安スーパー3店、輸入エスニック食材店4店、ショッピングモール5店、市場1か所)の巡り歩きと特売食材の物色

・割高の商品を買う人を見るたびに、「この人たちは、その割高の分だけ、タダ働きをしていると考えないのかな」と思う。無駄遣いは無駄働きと一緒

・世の節約術とは違う「貧乏生活術」の目指すところは、「1円でも安く」ではない。あくまで、自分の少ない収入の範囲で、豊かな気分になれるような生活を送ることが目的

・こういう生活を長く続けていくためには、健康に人一倍気をつけなくてはいけない。心と体の健康が生活を豊かに楽しむ基本。そして、医療費と歯科医療費のような不意の出費を避けるため

・『残すもの』「パソコン」(外界との接触が希薄になり、暮らしの孤立化を防げる)、「冷蔵庫」(料理が趣味)、「スクーター」(電車賃の節約、格安食材購入のため)

・『削るもの』「車」「電車」(スクーターで代用)、「携帯電話」(ほとんど家に居るため)、「コンビニ」(激安スーパーや深夜営業ディスカウント店で十分)、「タバコ」「酒・ドリンク」(健康と倹約を考えて)、「外食」「新聞」(節約のため)、「床屋」(電動ヘアカッターで代用)

お金なんて要らないと言えば、やせ我慢と取られ、成功に興味がないと言えば、負け犬の遠吠えと思われる世の中

・この生活を続けているのは、ここに自由な時間が無尽蔵にあるから。言い換えれば、何もしないでよいことを、何より大切に生きているということ

・世の中には、高揚感を幸福と錯覚している「興奮中毒患者」が多い。毎日のスケジュールが予定びっしりで、あくせく動き回っているのは、心の空洞をそのままにして、仕事や遊びで埋めようとしているようなもの。鎮痛剤で痛みを抑えているだけのこと

・何に贅沢を感じるかは、人によって違うのが当たり前。何に豊かさを感じるかもそう。何も自分の幸福や健康をないがしろにしてまで、社会の常識や価値観をそのまま受け入れる必要はない

社会の常識や価値観なんて利用するもので、縛られたり、踊らされるものではない。もちろん、社会の常識や価値観は尊重する。批判もしない。だが、自分がそれに従うかどうかは自分で決める。そして、そのリスクは甘んじて受け止めるということ



著者の生活こそが、未来志向の「贅沢な生活」なのかもしれません。世間の常識に惑わされず、企業の宣伝を無視し、すべて自分の頭で考えて、自分に合った生活を楽しむことができれば、こんなに幸せなことはありません。

世の中の全員が、こういう生活を求めれば、資本主義社会は崩壊します。とりあえず、みんなが資本主義社会に巻き込まれて、あくせく働くのを横目に、こういう生活を楽しむのが心地いいのではないでしょうか。

[ 2014/08/18 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(1)