とは学

「・・・とは」の哲学

『自信』加藤諦三

自信 (知的生きかた文庫)自信 (知的生きかた文庫)
(2000/11)
加藤 諦三

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著者の本を紹介するのは、これで5冊目になります。心理学の側面から、人間のよりよい生き方を示唆する書が多いのが特徴です。

どの本も、人に勇気を与えるものがほとんど。本書も、タイトル通り、人に自信を与える書です。参考になったところをまとめてみました。



・自信のない人は、ありのままの自分を受け入れてくれる人の前でも、自我防衛を行う

・過保護は偽装された憎しみ。つまり、その親は自らの内なる憎しみを過干渉、過保護、誤保護という形で表現している

・自分の周囲にいる人の正体を見破った時初めて、なぜ自分はこんな「ずるい人間」に、よく思われようとへとへとになっていたのかと、おかしくもなる

・自己中心的傾向の強い人は、人前では逆に振る舞う。だから、自信のない人は見間違える。自己中心的な人は、言葉づかいは丁寧できちんとしていて、愛想がいい。しかし、図々しい。つまり、いい人を演じるが、決して自分の要求を引き下げない

・自己主張のある人は、ちょっとした言動にすぐ傷ついたり、怒ったりはしない。自己主張のない人のように、さまざまなことを期待しない

・自分自身に失望している人は容易に他人に失望し、他人を非難する

・「ずるさ」は「弱さ」に敏感。したがって、弱い人間のまわりには、ずるい人間がいっぱい群がっている。ずるい人間は、弱い人間た自分の都合のいいように操作して利用する

・本当の愛情のない人間ほど、過剰な愛を他人に要求する。他人との関係を無理に円満にしようと努力する人は、このような過剰な愛の要求に痛めつけられ、傷つけられてきた人

依存心の強い親ほど、子供の精神的成長を恐れる。したがって、依存心の強い親を持った子供の精神的成長は、親に好かれたいと思ったところで止まる。依存心の強い親にとって「よい子」とは、親に心理的に依存しつつ、社会に優越を示す子供である

・現実から逃げることは、自分から逃げること

言い訳する人は、実際の自分より高く評価してもらえなければ、生きていかれないように感じている

・甘えのある者は、自信を持つことはできない。甘えとは相手との一体感を求めること

・自己主張とは、自分の望みを相手の前にさらけだすこと。その結果として、その相手を失うかもしれない。そんな危険をおかしながら、自己を主張する時、その人は自信を得る

・自己主張するためには、相手への依存心を切り捨てなければならない。そしてそれは、相手を利己的に支配しようとする気持ちを、同時に切り捨てることでもある

母親の強い心理的依存を感じた子供は、自己実現を裏切りと思い、罪の意識に悩まされる

・断りにくいという人間関係は共感的人間関係ではなく、共生的人間関係。そんなものは、親しそうに見えても、欺瞞的一体化

自己主張の第一歩は、イエスとノーをはっきりと言えるようになること。他人の顔を見ずに賛成の時は賛成の、反対の時は反対の手をあげられるということ

・自己主張なくして自信はない。自己主張が自信を生み、自信がまた自己主張をさせる

自信のない人は、実際の自分を受け入れてくれるような人のところに行けばいい。実際の自分を否定する人の間にばかり身を置いているから、自分の無価値感に悩む

・自分ができることをやっていくうちに、自分の個性が出てくる

・人生には二つの大切なことがある。一つは、自己の信念に忠実であること。二つ目は、独りよがりにならないこと



自信と気迫は、人を威圧するものです。気迫は人為的につくることができますが、自信はそうはいきません。

本書は、その自信をつける方法について、詳しく論じられています。人生を明らかに左右する自信について、考察することは大切なことだと思いました。


[ 2014/06/30 07:00 ] 加藤諦三・本 | TB(0) | CM(0)

『100歳、元気、あたりまえ!』吉川敏一

100歳、元気、あたりまえ!100歳、元気、あたりまえ!
(2011/03/04)
吉川敏一

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著者の本を紹介するのは、「不老革命」に次ぎ、2冊目です。アンチエイジング界の第一人者で、国際フリーラジカル学会の会長も歴任されています。

本書には、アンチエイジングに関する医学界の常識が網羅されています。健康に関心が出てきた人には関心のあるところです。その一部をまとめてみました。



・何もしないで、10代のころと同じだけ食べると、20%は、体の中に残ってしまう。中年太りを防ぐためには、食べる量を2割減らすか、2割増しで運動しなければならない

筋肉は血糖の処理工場。筋肉があれば糖尿病にならない。中性脂肪も筋肉細胞に取り込まれて、エネルギーになる。高脂血症の薬を飲むよりも、実は筋肉をつけたほうが早い

・やせるときには、筋肉、骨、脂肪が減っていくが、その中で真っ先に減るのが内臓脂肪。脂肪は予備のエネルギー源。内臓脂肪は、緊急のとき、いち早く使えるように身近に貯蔵されている。お腹まわりの皮下脂肪は、内臓脂肪がなくなってから、ようやく減り始める

・運動しないで、食事だけでダイエットするのはとにかく絶対ダメ。やせているのに、筋肉がなくて、お腹だけが出ている人は、肥満と同じ。健康とか長生きとかは、見た目の体型ではなく、内臓脂肪と筋肉の関係で決まる

・昔は酒に弱かったが、付き合いで飲むうちに慣れてきて、顔は赤くなるが、このごろだいぶ飲めるようになったというタイプが一番危ない。顔が赤くなるのに、毎日のように飲む人は、顔が赤くならない酒に強い人に比べて、「食道がん」になるリスクが6~9倍高い

・アルコールとタバコというのは、とても相性が悪い。酒とタバコの二つが合わさると、がんも、動脈硬化も心筋梗塞も増える。つまり、どっちか一つにしたほうがいい

がんを殺す免疫力には、腸内細菌が深く関わっている。腸は免疫細胞の「基地」になっているので、免疫細胞は、この基地で腸内細菌に鍛えられて、がん細胞に出撃する

・医者は、お年寄りを入院させるときには、できるだけ短い期間で退院してもらう。なぜかと言うと、ボケが進んでしまうから。入院期間が長くなればなるほどボケてくるのは、歴然とした事実

・皮膚は、いろいろな外敵をすぐにブロックしなければならないので、体の免疫力がいち早く反映される場所。だから、免疫力が高ければ高いほど、肌の状態もよくなる

老眼は筋肉の老化現象。目の老化予防に注目なのが「アスタキサンチン」。鮭の身や海老・蟹の甲羅に豊富に含まれる赤い色素。アスタキサンチンは、強力な抗酸化物質で、筋肉をよく動かす働きをする。鮭が長い旅の果てに故郷の川に帰ってこられるのも、そのおかげ

・血液の固まらない薬を投与するとき、患者に「食べたらあかん」と指導するのは、「納豆」(ナットウキナーゼという酵素とビタミンKが作用して血が固まりにくくする)と「タマネギ」(ケルセチンという成分が血を固まりにくくする)

・心臓血管外科の医者は、心臓に血管を植えつけるバイパス手術などのリスクの高い心臓手術のとき、タバコを吸う患者に2~3ヵ月、タバコをやめさせてからでないと手術しない。タバコの毒(血管を収縮させ、血液循環を悪化させる)は、2ヵ月以上悪さをする

・食べ物の色素カテロノイドは強力な抗酸化物質。ほうれん草やトウモロコシの「ルティン(黄)」、温州ミカンの「βクリプトキサンチン(黄)」、トマトやスイカの「リコピン(赤)」、トウガラシの「カプサンチン(赤)」、昆布やワカメの「フコキサンチン(茶)」など

・野菜や果物でも、皮ごと食べたほうが体にいい。植物の皮には、紫外線や害虫、寒さや暑さ、そういうものを防ぐバリア機能があって、抗酸化物質がいっぱい集まっている

・トウガラシ、ショウガ、ワサビ、コショウ、サンショなどの香辛料は強力な抗酸化物質。ニンニク、ラッキョウ、ネギなどのイオウ化合物も抗酸化作用が強い食材

・体にいい「食事の習慣」とは「体の欲するままに食べる」こと。感覚にしたがって、自分の体が調子いいような食べ方をしていたらそれでいい

・運動量を示す単位「エクササイズ」は1週間「23以上」が目標。運動の強度を表わす「メッツ」という単位×「時間」が「エクササイズ」になる。歩くのは「3メッツ」。20分歩くと「1エクササイズ」。自転車は「4メッツ」、水泳は「6メッツ」



アンチエイジングは、まだまだ研究半ばの学問だそうです。これからも新たな発見がありそうです。

身も心も健康を保とうとする気持ちこそが、健康を維持する基本のような気がします。本書は、その一助になるのではないでしょうか。


[ 2014/06/27 07:00 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『脳はすすんでだまされたがる』

脳はすすんでだまされたがる  マジックが解き明かす錯覚の不思議脳はすすんでだまされたがる マジックが解き明かす錯覚の不思議
(2012/03/28)
スティーヴン・L・マクニック、スサナ・マルティネス=コンデ 他

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本書の副題は、「マジックが解き明かす錯覚の不思議」というものです。すなわち、本書は、マジックを通して、人間の脳の構造を説明していこうという内容です。

マジシャンが人をだます方法なども例にあるので、興味深く読むことができます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・マルチタスキング(いくつかのことを同時に効率よく行う能力)は作り話。脳は二つ以上のことを同時に、注意を払うようにできていない

・記憶には一つの情報源しかないように感じるが、それは錯覚。記憶はいくつかの下位システムが連携して、これまでの人生を一貫して生きてきたという感覚を与える

エピソード記憶自伝的記憶は、あなた個人の経験を保存する。この記憶によって、あなたは自分の人生に何が起こったかを知り、想起することができる

・記憶コンテストのチャンピオンや世界に名だたるマジシャンの多くは「場所法」(覚えたい対象を自分がよく知る場所と結びつけ、その場所を手がかりに記憶する)を用いる

・考えることは時間と注意を他の仕事から奪う。確実であるとわかっている事実が多ければ多いほど、目の前の目的や興味に集中できる。考える時間が少ないほど、人生は楽

・私たちの脳は常に、秩序、パターン、解釈を求めており、ランダムさ、パターンの欠如、形容しにくさに対する嫌悪感を生まれつき持っている。説明不能になるとみると、無理にでも説明を試みる

・自分が何かを選んでいるとき、その選択が変えられたり、歪められたりしても、その選択にしがみつき、自分の「選択」を正当化(作話)しようとする。作話は、恥も外聞もなく物事をでっち上げる行為。しかし、私たちは、この強力な作話の過程に気づかない

・認知的不協和は、同じような二つの選択肢からいずれかを選ぶときにしばしば生じる。それが自分の選択というだけの理由で、その価値を上げようとする

・私たちに自由意思はないかもしれないが、「拒否する自由」ならある

・セールスマンの中には、「あなたの心を読む」人がいる。高価な買い物をするとき、売り手が誠実でないと感じたら、途中で話を変えればいい。あなたの希望に応じて、話が変わるようならば、そのセールスマンは、あなたが聞きたいことを言っているだけ

誠実な第三者を装うと、詐欺はうまくいく。私たちは社会的生き物であり、とかく自分はこうすべきだと他人が思っていることをしがち

手品のトリックの種類
「出現」(何もないところからものを出す)
「消失」(ものを消す)
「移動」(ある場所にあるものを別の場所に移す)
「復元」(あるものを破いたり、燃やしたりしたあとに元通りにする)
「貫通」(あるものに別のものを通り抜けさせる)
「変身」(あるものを別のものに変える)
「念動」(何かを浮かばせることで重力に打ち克つ)
「超能力」(人がする選択を予測する)

・何かに注意しようと一生懸命になればなるほど、それがより強調される反面、周辺情報がより抑制される。この抑制と強調の力学は、意思決定のかかわり(直感の役割と合理的思考の対比)にもある

・スポットライトの中心では、ものがはっきり見えるが、スポットライトのすぐ外には闇が広がる。私たちは、先入観や予測、仮定に影響され、重要な情報を無視もしている。反対に、あいまいな直感でも、注意のスポットライトを当てれば、「合理的な」心に達する

・マジシャンは、注意に対して「分割し征服する」アプローチをとる

・マジシャンは、記憶と想起の間が曖昧になっていることを知っており、「曖昧の隙をつく

・マジシャンは、間違いを犯しても、こだわらず「前へ進む」ので、観客はほとんど気づかない

・マジシャンは、ユーモアと共感を用いて、あなたの「守りの壁を取り払う



本書から学べることは、人の注意、意識は案外弱いものであるということです。つまり、人をだますのは簡単だということです。

だます手法を知ることで、だまされにくくなります。相手が、だます「矛」を使ってくるなら、だまされない「盾」を使わなければいけないのかもしれません。


[ 2014/06/25 07:00 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『逆境に強い心のつくり方・システマ超入門』北川貴英

逆境に強い心のつくり方 システマ超入門―ロシア軍特殊部隊が生んだメソッド (PHP文庫)逆境に強い心のつくり方 システマ超入門―ロシア軍特殊部隊が生んだメソッド (PHP文庫)
(2013/06/05)
北川 貴英

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本書は、武道愛好家の中で注目されている「システマ」というロシア軍特殊部隊で使われている技術と、その実社会面での使い方について解説したものです。

特に、窮地における心の落ち着かせ方、身の守り方、対立を避ける方法、群集心理から離れて自由な発想を養う方法など、生きる上で役に立つことが記されています。参考にすべき点が多々あり、その一部をまとめてみました。



・システマの格闘術や呼吸法は、「体力をつけ、精神力を高めることで、攻撃しない人間になる」ためのもの。自分を殺しにきた敵さえも癒してしまう技術

・少しでも緊張や不安、怒りなどを感じたら、すぐにブリージング(鼻から息を吸い、口をすぼめて「フッー」と軽く音を立てつつ吐く呼吸法)をする。タイミングに悩む必要はない。思い立ったらすぐにブリージングする

殺人事件の大部分は、素性をよく知る人との感情的なこじれが発端。まずは、感情的にならず、リラックスして人と接し、円満な人間関係を築いていくことが確実なサバイブをもたらす護身術

・システマで学ぶマーシャルアーツ(格闘術)の技術はすべて、誰かを傷つけないことを最終的な目的としている。それは「破壊の否定」。目指すべきは、対立関係を速やかに終わらせ、誰ひとり傷つくことなく無事に生きて帰れるようにすること

・攻撃を受ける時、恐怖心が芽生える。それに伴い、筋肉が緊張し、脈拍が速まり、呼吸が浅くなり、視野が狭まり、頭の中が真っ白になる。マーシャルアーツは、他者による精神的ストレスが迫る中で、冷静さとリラックスを保っていくのかを自分に問いかける練習

・普通とは、「余計な緊張がない状態」と言い換えられる。恐怖心をコントロールすることで、普通の精神状態を保つことができる

威嚇とは、相手の精神に揺さぶりをかける行為。だから、威嚇を受けた際に、怒りや恐怖心を抱き、動揺してしまった時点で、威嚇が成功したことになる。予想通りに事が進むことで、相手は安心し、さらに強い態度に出て、自分の要求を強く主張してくる

・威嚇してくる相手に逆に動揺を与えるには、こちらが動揺しないこと。威嚇されても動じることなく、落ち着いているだけで相手は混乱し、恐怖心が芽生える。ここで威力を発揮するのがブリージング。身体と心をリラックスさせた後に、話し合いに応じること

・自分の身体にどれだけ怒りが溜まっているかをチェックするには、ミゾオチに指を差し入れてみるといい。指が入らなかったり、吐き気がするほど不快感があれば、黄信号。こうした緊張をほぐしていくことで、怒りにくい状態に整えていくことができる

リラックスしすぎもよくない。身体が緩んで重くなり、動くのが億劫になる。気力も萎えて、行動力や決断力が鈍る。身体が緊張しすぎれば動きは硬くなるし、リラックスしすぎれば今度は重く鈍くなる。いずれにせよ、スムーズで自由な動きが損なわれる

速く動くためには、ゆっくり動く必要がある。一見遠回りにも思えるこのプロセスは、無駄を省き、最小限の労力と手間で、最大限の効果を得るための一番の近道

・必ず3割程度の余力を残し、力尽きても、必ず回復して力を取り戻すようにする。動きを止めることは、戦場では死を意味する。余力を残すことで生存率は高まる。全力を尽くしても、途中で力尽き、燃え尽き症候群になっては、理想を実現するのも困難となる

・大切なのは、一点に意識を集中してしまわないこと。意識を一つの対象に集中させることで姿勢が曲がり、視野が狭まり、致命的なミスに繋がる危険性が高まる。周囲の360度に意識を向けつつ、リラックスし、止まることなく動きを続けていくようにする

・人の上に立つ人は、まず自分自身が落ち着き保つ必要がある。リーダーの役目とは、学校の先生のようなもの。騒ぐ子供達に言うことを聞かせるには、まず注目を集めなくてはならない。一緒になって騒いでいたら、自分に注目させることはできない

・毅然とした態度で呼びかけ、誰がリーダーであるかを再認識させ、部下たちの意識を束ねた上で、的確な指示を出せば、チームは大きな力を発揮する。適切な判断力を持つリーダーが「大きな脳」の代わりを務めることで、群集心理の持つ性質がプラスに転じる

・人は遠くに行こうとすればするほど、多くの人の助けを必要とする。近所のコンビニであれば、一人で行けるが、エベレストに登頂するには、多くの人との助け合いが必要

・カチンときて、言い返してしまうのは、相手の影響下に入ってしまったことを意味する。



感情をコントロールして、精神を落ち着かせることは、人間としての修行かもしれません。武道で訓練することで、その領域に達することが可能です。

心技体のバランスを保ち、堂々とできることを目標に生きることは、大切なことではないでしょうか。


[ 2014/06/23 07:00 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『働くアリに幸せを・存続と滅びの組織論』長谷川英祐

働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論
(2013/09/19)
長谷川 英祐

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著者の本を紹介するのは、「働かないアリに意義がある」「縮む世界でどう生き延びるか」に次ぎ、3冊目です。著者は進化生物学の准教授です。生物と人間を比較しながら、経済や組織などを論じるのを得意とされています。

本書のテーマは、組織と家族と個人が、みんなハッピーな関係は可能か?また、その関係はずっと続くのか?ということです。興味深いところが多々あり、その一部をまとめてみました。



・人間でも、動物でも、社会は「力が弱い者たちの協力」によってできている。社会形成はセカンドベスト。一人で生きていけるなら一人でやる方がよい

・集団を維持していくためには必ずコストが存在する。「力を合わせる」というのは、社会に参加するものはすべて「コストを払わなければならない」ということを意味する

・個体が協力のためにコストを払い、みんなが得になる社会を築いていると、そこに「ただ乗り」しようとする裏切り者は必ず現れる

・「裏切り者」は社会の中では「協力者」より有利なので、入ってくることを止められない。裏切り者は「我ら」であると思わせる嘘をつく。裏切り者だらけになると社会は崩壊するので、嘘を見抜き、罰する行動が進化する

人は、「個人―地域集団―国家」へとつながる階層と、「個人―企業―経済社会」へとつながる階層の、二つの系列に同時に属している

・個体と組織がどのような関係になっているかということが、滅私奉公が個体にとって有益になるか徒労になるかを決めている。人間の企業では、組織の個体に対する依存性が低いため、個体の利益確保が簡単ではない

・人の組織の力学は主に金勘定で決まっている。しかし、モチベーション低下による組織効率の低下を考えると、組織の利益のために個人の利益を減らすのは、細心の注意が必要。日本企業の多くは、金勘定には敏感だが、人の組織は人で成り立っていることに鈍感

・社会は個人から構成され、社会の利益を上げるためには、個人の利益(幸せ)を増大させるような駆動力を与える必要がある

・多くの子供を担当、管理しなければならない教室で、空飛な発想で行動する子供は厄介

・「短期的な効率性(平均値の上昇)」と「長期的存続(独創性)」の間には、トレード・オフがある

・グローバル企業と国家の間には利害対立があり、そこでの綱引きは現在、ほぼ一方的に国家の力を弱めるように働く

・年長者は若者に覇気がないと嘆くが、「草食化」は、生活の豊かさの帰結ではなく、そのように振る舞うことが、今までと同じように仕事を頑張るよりも、総体としての幸せを最大化できるという選択圧によって進化した考え方

・「働けるけれど今は働かないでいるアリ」と「働くつもりがないアリ」は同じものではない。「まったく働くつもりがないアリ」は「裏切り者」

・生き物でも企業でも、本質的に重要なのは滅びないことであり、短期的にどれだけ儲かるかではない

長期的存続を犠牲にしても「短期的効率を追求することが正義」という状況がある限り、そこへ向かって突っ走る。企業が、株式公開により資金を得るなど、企業が株式市場に頼るシステムになっている限り、短期的効率ばかり優先されるのを止めることはできない

・企業では、山が出現することを「商機」と呼んでおり、いかにして利益の山に登るかを皆が競う。しかし、一方で、様々な分野に手を出す多角経営というやり方をしている

・経済はいつも成長することを求めているが、成長を急ぎすぎると、その後に待っているのはクラッシュ。「うまくやろうとすると破滅へ向かう

・生物は基本的にムダなことはしない。彼らの行動は将来へ伝える遺伝子量を最大化するように調節されており、それ以外の余計なことをしないようになっている。それに較べ、人間はムダなことばかりしている。自然科学も人文科学も芸術もすべて道楽



成長することよりも、生き残ること。これが目的のはずなのに、ついつい成長することにうつつを抜かし、気がついたら、成長の度が過ぎて、破滅してしまうことは、世の中には多いものです。

持続すること、生き残ることの大切さと組織と個人の利益バランスを再確認できる書ではないでしょうか。


[ 2014/06/20 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『関係する男・所有する女』斎藤環

関係する女 所有する男 (講談社現代新書)関係する女 所有する男 (講談社現代新書)
(2009/09/17)
斎藤 環

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精神医学者である著者の本を紹介するのは、「30歳成人時代の家族論」「ヤンキーと精神分析」に次ぎ3冊目です。鋭い分析力で、現代人の精神病理を解明されています。

本書では、男と女の本質的違いを分析しています。異性を知る上で、貴重な書ではないでしょうか。その中で、納得できたところをまとめてみました。



・男と女の最大の違いは、「所有」と「関係」の違い。所有を追求する男と関係を欲する女

・「性愛」こそが、すべての欲望の根源。欲望をもたらすのは常に「差異」であり、性差こそが、人生で最初に経験する、最も重要な「差異」にほかならない

・欲望に傷つけられまいと否定を重ねていくと、人はシニシズム(冷笑主義)に陥る。シニシズムは防衛としては強力だが、自分の欲望すら否定するので、しばしば間違った悟りのような境地を作り出してしまう

・男にとっては、結婚したばかりの妻こそが「最高の妻」。性格的にも外見的にも。だからこそ、男は結婚による所有欲の満足に酔いしれる。しかし、妻は変わっていく。外見も性格も、そして「夫に対する忠誠度」までも

・男子は社会的地位、とりわけ「良い職業+良い結婚+良い子孫」への期待度と重圧がことのほか高く、必然的に学歴が重視される

・男性は自分の立ち位置、つまり「立場」を所有していないと安心できない。しかし、女性は、男性ほど立場にこだわらない。女性は「関係」によって自分を支えようとするから

・男子の場合、自己評価を決めるのは「社会的スペック」。すなわち、知的・身体的能力やコミュニケーションスキルなど。外見的よりは本質的・機能的な側面にこだわりが強い。「恥」や「世間体」の意識も、「能力を低く見積もられるのでは?」という葛藤によるもの

・女子の視線を意識し始めた男子は、外見以上に自分の能力にこだわり始める。それは女子にアピールする要素として、社会的評価が最も重要であることに気づくから

・女子には、外見よりも能力といった発想はあまりない。外見と能力の評価はあくまで別物であり、どちらかと言えば、外見重視に傾く

・女性は「1度に1人」が原則。新しい恋人ができる度に、過去の男は消去(デリート)され、新たな関係が「上書き」される。恋人フォルダには1人分の容量しかないから

・異性のどこに魅力を感じるかという点で、男女で一番分かれるのは「ルックス」と「」。「男は目で恋をし、女は耳で恋に落ちる」なんて格言があるくらい。男は女の声に驚くほど無頓着。顔さえよければ、相当の悪声でも個性的な美声に「脳内変換」されてしまう

・哲学とは、言葉だけで閉じた世界を構築しようという試み。これは極めて男性的な言葉の使い方。男が使う言葉は、それによって世界を構築する=所有するための道具にほかならない

・「女らしさ」と呼ばれるものの大半は、可愛い髪型や化粧、フェミニンな衣服あるいはしとやかな仕草といった、身体=外観に関わる要素から成り立っている。要するに、女らしい身体性とは、他者の欲望を惹き付ける身体性を意味している

・「女らしさ」にも容姿以外の内面的な要素もある。例えば「やさしさ」「おとなしさ」「従順さ」「受け身性」などだが、これらはいずれも「欲望を放棄する態度」にほかならない

・女性は「共感脳」を持っている。相手が感じたり考えたりしていることを察知し、それに反応して適切な感情を催す傾向を持つ脳。他者への配慮にすぐれている反面、他者の感情に左右されやすい問題がある

・男性は「システム脳」を持っている。対象をシステムとしてとらえ、そこにあるパターンや因果関係を論理的に理解することを得意とする脳。しかしその分、他者への共感は不得手であり、攻撃的になりやすい問題がある

・男が会話するのは「情報伝達」が目的。だから男は、いつも会話の結論を急ぐ。一方女は、結論を出すためよりも「会話そのもの」を楽しむことが目的。だから男性は、女性の愚痴につきあうのなら、すぐに答えを出してはいけない



「♪男と女の間には~、深くて暗い川がある♪誰も渡れぬ川なれど、エンヤコラ今夜も舟を出す」(黒の舟歌)という曲が、昔ありましたが、今も男と女には、深くて暗い川が存在しています。

本書を読むと、男と女の根本的な違いが理解でき、川底が浅くなり、透明度も増してくるのかもしれません。


[ 2014/06/18 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)