とは学

「・・・とは」の哲学

『ニッポン・ヨーロッパ人の眼で見た』ブルーノ・タウト

ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た (講談社学術文庫)ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た (講談社学術文庫)
(1991/12/05)
森 とし郎、ブルーノ・タウト 他

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ブルーノ・タウトは、ドイツの建築家です。日本に滞在し、伊勢神宮、桂離宮などを見学して、それをヒントに、モダニズムを提唱し、世界の現代建築に大きな影響を与えた人物です。現代の日本建築も、その「逆輸入」のモダニズムに影響を大きく受けています。

日本の建築美、構造美を発見した記録が本書に載っています。本書の初版は1950年ですが、何度も版を重ねている書です。ヨーロッパ人から見た日本の美を知る上で、興味深い点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本がこれまで世界に与えた一切のものの源泉、まったく独自な日本文化をひらく鍵、完成させる形のゆえに全世界の賛美する日本の根原。それは外宮、内宮、及び荒祭宮をもつ伊勢である

・日本人は伊勢神宮の神殿を日本国民の最高の象徴として尊崇している。まことに伊勢神宮こそ真の結晶物である。構造はこのうえもなく透明清澄であり、また極めて明白単純なるが故に、形式は直ちに構造そのものとなる

・古典的偉大を具現している桂離宮が、実際にもあらゆる日本的なものの標準になっているという事実を多くの識者に確かめ得て、非常な喜びを感じた

・現代の建築家は、桂離宮がこのうえもなく現代的であることに驚異をさえ感じるであろう。実にこの建築物は種々の要求を極めて簡明直截に充たしている

・生活の要求のみが問題となるところでも、単に実用的だけに片付けられていない。建築物で営まれる日常生活は、これを使用する人々の自然な動きによって、特殊な機能を形成するが、桂離宮がかかる機能をも極めて些細な点にいたるまで見事に充足している

・桂離宮の御庭の諸部分は著しく分化していながら、すべてが相集まって一個の統一を形成している。ここに達成した美は、装飾的なものではなく、精神的意味における機能的な美。この美は、眼をいわば思考への変圧器にする。即ち、眼は見ながらにして思考する

・日本の歴史的建築物について、天皇の御趣味と将軍の趣味との著しい相違を観察するのは、まことに興味深い。桂離宮や修学院離宮その他は、世界における唯一無比の趣味文化を表現している。建築物は何一つ建築的な装飾をもっていない、木骨構造自体だけである

・昔の将軍たちの居館は、実に酷しい。そこに見られるものは豪華の限りをつくした浮麗の美のみ。建物には到るところに高価な彫刻や絵画を嵌めこみ、建築的構造がまったく埋却せられている。これらが、日本的でないのは、様式全体がシナからの輸入だからである

・天皇対将軍という大きな反立は同時にまた神道対仏教の反立である。日本の宗教的感情を複雑微細な点まで理解することは容易ではないが、神道が日本人とその国土とを独自の仕方で結合しているという一事は、極めて明瞭。神道自体が日本と完全に融合している

・神道は日本人を美わしい国土と一体に結合しているばかりでなく、全国民を社会的な意味におけるこの国土の一部分として互いに結びつけている

・日本人が庭園に石を配し、小池を造って写景する理由は、日本家屋の部屋や台所などの神棚に安置された小社殿と同じく、日本人がその国土をいわば常に自分と一緒に持ち廻っているということと同一の現れ方である

・田畑に一本の雑草をも見ないという事実は、ヨーロッパ人の眼には実に驚くべきこと。こういう性質は、国民の生活態度にもまた家屋の様子や手入れにも、実によく現れている。こう観ると、日本の農家も農民も風俗や慣習も、やはり天皇と神道という主題に帰着する

・肉塊をもって相打つ角技の力士にも、ある種の洗練と立合いの気品とが肝要とされている。これは柔道や剣道、あるいは弓道のような武技についてもまったく同様。つまり、大切なのは常に立派な態度であって、徒に相手を打ち負かそうとする興奮ではない

・日本家屋は、常に清潔を保っている点にかけて世界無比。玄関で靴を脱ぐ習慣が、家の中に泥や塵埃を持ち込まないこともあるが、絶えず部屋を清掃していないと、用材の清潔はもとより、室内の整頓も乱れる。このような清潔は、日本のどんな貧しい住宅にもある

・桂離宮の造営についての三箇の条件とは、第一は「建築主は竣工以前に来り見てはならない」。第二は「竣工の期日を定めてはならない」。第三は「工費に制限を加えてはならない」ということ。当時のすぐれた創造的精神は今日でもなお死滅していない

・日本は近代技術の一様化的影響をも摂取して、日本的なものに改容して日本文化の血肉に化するであろう。そして、そのとき日本は、再び世界に新しい大きな富を贈る



タウトが日本に来たのは1933年です。わずか2カ月余りですが、実に多くの日本文化を貪欲に摂取しました。しかも、個々の建築物の本質を理解するだけでなく日本文化の真髄を短期間に理解しています。まことに驚くばかりです。

本書によって、戦前のヨーロッパ人の日本文化観を知ることができます。80年経った今、日本文化が衰退しているとしたら、その原因は本書に載っているのではないでしょうか。

[ 2014/01/31 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『中国人には、ご用心!』孔健

中国人には、ご“用心中国人には、ご“用心
(2012/09/25)
孔健

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中国という国を理解しようとしても、なかなか理解できません。それを知るには、公式なものではなく、もっと庶民の日常的なものが大事なように思います。

著者は、孔子直系の子孫で、日中関係評論家として活躍されています。本書は、中国の大衆のことが多く、興味深く読めました。その一部をまとめてみました。



・中国社会は今、拝金主義に陥っている。多くの人が浮き足立ち、頭の中はお金のことだけ。中国人は古来より貧しかった。何千年に渡り、豊かだったのは、支配階級や一部の商人だけ。それが今や国民全部に豊かになる道が開かれた。お金に群がるのも仕方がない

・中国人は今、老いも若きも「狼の道」(金に群がる拝金主義)を歩んでいる。人の心を傷つけ、裏切っても、自分だけは金持ちになるのが正義、という社会。道徳はすり減った

・中国人女性と日本人男性が結婚する数は、1年間に2万カップル以上。そして、たっぷりと慰謝料を懐に入れ、子どもの手を引いて、中国に帰る中国人女性も多い

・浙江省温州の人は「中国のユダヤ人」と称され、古くから金儲けがうまい。偽ブランド商品の製造も盛ん。温州人150万人が、中国各地で軋轢を起こしながら商売をしている

・自宅と車と別荘を持ち、海外旅行をする人々を中国ではリッチマンと呼び、約7500万人いるといわれている。中国総人口の5%。中国の富裕層は、一代で財を築いた「爆発戸」と呼ばれる成金。市場が広いだけに、一発当てれば爆発戸も夢ではない

・中国には、一人っ子政策以降、戸籍のない「黒孩子」が、数千万人いる。黒孩子は、戸籍上は存在しないため、学校教育や医療など行政サービスを受けることができない

・中国では、日本現地企業に働く幹部は、ほとんど5~6年勤めてから、中国の企業に転職するという風潮がある。日系企業は、中国企業への転職用の専門学校のようになっている

・中国では、党の幹部が妻子を外国に出し、一人中国に残るのを「裸官」と言うが、不正が発覚しそうになる寸前に「裸官」本人が海外逃亡をはかるケースが増えている。1998年から10年間で、海外逃亡した政府や国有企業の幹部は17000余人。流出資産は約10兆円

・中国人の国民性を表わす言葉は、「自尊自大 自満自足」(なんでも世界一)、「吃苦怕難 貪図享楽」(苦しいことは苦手だが、享楽は好む)、「克己忍辱 残酷無情」(我慢強さも残忍さも世界一)、「反古薄今 旧習悪俗」(常に不平不満をもらし悪い習慣を直さない)

・今でも中国では「日本はその昔中国がつくった国」と思っている人が大勢いる

・中国人の伝統的長所を表わす言葉は、「謙虚学習 団結向上」(天が与えた不遇から脱却するには勉強するしかない)、「尊重権威 官僚為重」(権威を尊重し、官僚を重視する)、「修身斉家 楽天知命」(自分を磨き家庭を平穏に保ち運命に従う)

・人付き合いの実践すべき項目、「無事随訪」(用事がなくてもたまに尋ねる)、「礼多無妨」(心を込めて時々贈り物)、「信上往来」(会わなくても文章でやりとり)、「以書会友」(勉強会に積極的に参加)、「活用所長」(お互いの長所を活用)、「背無悪言」(悪口を言うな)

・中国人の欠点を表わす言葉は、「自我為重 利益第一」(自己中心、自分の利益しか考えない)、「面子如命 相互不信」(面子を大事にし、お互い信用しない)、「馬虎了事 曖昧不明」(完璧を求めず、責任もとらない)「厚黒多計 闘争為栄」(腹黒い恥知らずが跳梁跋扈)

・最近目立つのがヤクザの社会進出。魚市場、野菜市場、精肉関係、セメント業界、建築土木業界、建材関係など、利権が発生するところはどこもヤクザが仕切っている

四直轄市の省民性、「北京」(怠惰な人間が多く、政治好き)、「天津」(女性が男性的)、「上海」(日本人男性との結婚が理想)、「重慶」(男は正業に就かず、女性が麻雀好き)

華北・東北・華東・華中の省民性、「河南」(評判がよくない)、「黒龍江・吉林・遼寧」(情熱的だが、気が短い)、「山東」(礼儀正しく、評判がいい)、「江蘇」(治安のよさは全国一)、「浙江」(中国のユダヤ人)、「安徽」(いまだに貧しい)、「湖北」(叡智に富み、美女が多い)

華南・西北・西南・五自治区の省民性、「福建」(日本の居酒屋で働く女性が多い)、「広東」(実利を好む)、「湖南」(男の気性が激しい)、「青海」(保守的で閉鎖的)、「四川」(多くの才能を輩出)、「雲南」(少数民族が多い)、「内モンゴル」(勇猛)、「チベット」(穏やか)

・来日した中国人は99%日本を好きになって帰る。日本に住む100万の中国人も穏やかに客観的に見ている。問題なのは、大多数を占める日本のことをよく知らない、また知りたいとも思わない中国人。しかし。この大多数の動き方が中国の行方を決める要因となる



中国と付き合うのは、なんて難しいことかと思えた内容の書でした。とらえどころのない雑多な大国を杓子定規に判断しようがありません。また、現在の日本と中国は、性格も大いに違ってきています。

付かず離れずの関係で、ご近所付き合い程度の「日中薄交」で、当分はいくしかないのかもしれません。


[ 2014/01/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『人間を磨く言葉』鍵山秀三郎

人間を磨く言葉人間を磨く言葉
(2007/10/25)
鍵山 秀三郎

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著者の本を紹介するのは、これで4冊目(参照:「鍵山秀三郎・本」)になります。

凡事徹底」という全くブレない著者の考え方が、何に影響を受けたのか、以前より気になっていました。本書は、著者の人間を形づけた「お気に入り」の言葉集です。それらの言葉の数々をまとめてみました。



・「少しの労作で大きな成果を得た人は、得た成果の量に比例して、不安も一緒に抱えることになる」

・「過去相も現在相も決定相ではない。過程相に過ぎない」(三谷隆正)

・「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年にして歴史なる」

・「魅は与によって生じ、求によって滅す」(無能唱元)

・「益はなくとも、意味はある」(晏子)

・「境遇に強いられしところにより事を行えば、そのことは必ず成就する」

・「本物は続く、続ければ本物になる」(東井義雄)

・「簡単の向こうには荒廃が待っている」(竹花豊)

・「私が私を捨てれば、そこにあなたがいる。あなたがあなたを捨てれば、そこに私がいる」(山本紹之介)

・「己を捨つるより、大いなる愛はなし」

・「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」(芥川龍之介)

・「自分よりも弱いものを守ろうとすれば、勇気が湧いてくる。自分より苦しんでいる人に優しくなれば、自分の苦しみがやわらぐ」

・「親切で優しくあれ。あなたを訪ねてきた人を、少しでも幸せにしないで帰してはいけない」(マザー・テレサ)

・「聖人は微を見て以て萌を知り、端を見て以て末を知る」(韓非子)

・「動中の工夫は、静中の工夫に勝ること百千億倍」(白隠禅師)

・「ゴミを拾えば拾う習慣が身につき、捨てれば捨てる習慣が身につく」

・「百術、一清に如かず」(玉木文之進)

・「教育とは流水に文字を書くようなはかない業である。だがそれを巌壁に刻むような真剣さで取り組まねばならぬ」(森信三)

・「カッコよさは、破滅につながる」(三浦綾子)

・「規則は人を咎め、規律は人を和ます」

・「変えることのできないものを、素直に受け入れる心の落着きがほしい。変えることのできるものを、敢然と変えていく勇気がほしい。変えることのできるものと、できないものとを見分ける賢明さがほしい」(ラインホルド・ニーバー)

・「己のために、計らわず」(広田弘毅)

・「エリートとは、断れば断ることのできる責務を、あえて受諾する者である。自分自身の上に、困難を積み重ねる者である」(オルテガ)

・「一所懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る」

・「善友は助け合って成長し、悪友は誘い合って堕落する」(孔子)

・「大きな欲望を持つと心が荒む。自分を自分のためだけに使うと心身を消耗する。人のために使うと心に余裕が出てくる」



時代を超えた言葉の数々。これらが、著者の血となり肉となり骨となり、そして脳となったのではないでしょうか。

先人たちが遺してくれた言葉をどう受け止めるかで、人間は磨かれていくのかもしれません。


[ 2014/01/27 07:00 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『50代からの休みかた上手』大原敬子

50代からの休みかた上手50代からの休みかた上手
(2005/02)
大原 敬子

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著者は、ラジオの人生相談などを担当している方です。女性の相談に乗られることが多いようです。

本書は、定年前の「心と体のお掃除」といった感の書です。言い換えれば、良き定年を迎えるための準備書です。参考になる点が多々ありました。その一部をまとめてみました。



・苦しみや辛さをつくるのは「もっともっと」の気持ち。仏教ではこれを「業」と言う。業の本質は「命の火」。もっともっとを求めなくてはいられなくなる

・自分自身が見えていないと、飽くなき欲を求める。目的が見えないと、その欲は業という悩みに変わる。しかし、目的が見えていると、欲は夢と希望になる

・50代は模索と選択の時代。仕事、結婚、子育てと、目標が明確に見えている時には迷いはない。迷いは目標がなくなった時に始まる

・知恵とは、生きるための技術。一生懸命生きようともがいていると、さまざまな経験を通して、その経験則が生きるための道具となる。これが知恵

・何のために生きるか、どう生きるかは、人それぞれ。人生の目的、目標はみんな違う。しかし、生きる技術、知恵の中には、多分に万人に共通する普遍的な要素が含まれている

・働く本当の喜びは、他人の喜びがあって初めて感じられるもの。そして、他人を喜ばせたいがゆえに働くから、休みも肯定的に捉えられる

・好きなことが見つからないと嘆くのは、他人の顔色ばかり窺って生きているから。休めないのは、失敗や恥を根に持ち続けているから

・多くの人の間違いは、選択というとピックアップだと勘違いしているところにある。選択とは、何かをピックアップするのではなく、何かを捨てること

・過去とは、すでに過ぎ去りし時。そこに生きるのは死んでいる状態

・自由を手に入れるには、孤独を楽しむ能力が必要。他人は関係ない、自分が満足していればいいという孤独。孤独を選ぶ人は好きな道を歩んでいる

・人生の大事な闘いに勝ち抜く技術は「休む」「逃げる」「盗む」。「休む」とは、休みを取りながら、進むこと。「逃げる」とは、いったん逃げて、勝機を待つこと。「盗む」とは、知恵を盗むこと

・自由といったところで、個人の自立が育っていない文化では、自由は逃亡にしかすぎず、休んで自由になることを過度に罪悪視する

・好きで仕事をしている人は、休むことに抵抗や不安を感じない。仕事中毒人間は働いていることで安心しているだけで、仕事自体は心から好きではない

・「休むこと」「拒否すること」「意思を伝えること」「金銭を請求すること」「自己主張を述べること」。これらはアメリカ人が思う「日本人があまり良いと考えていない事柄

・欲から生じた闘いは、その貪欲さゆえに、すべてをなくしてしまうもの。奪っても、奪っても、満足できないから。結果、何もかも失うまで闘い続ける

・貧乏が恥ずかしいと感じる人は、経済レベルで人を評価する。美しさが一番と思っていれば、美醜によって人の価値を決める。裏を返せば、力のない自分を隠す人は、地位や権力がすべてという世界観の持ち主

信用をつくれない人は、偽りの人間関係に囲まれているから

・心が弱っていると、邪悪な感情(妬みや羨みなど)に取り憑かれる。でも、羨んでいるのは、相手の結果だけで、その人の実態ではない

・不安感は時間の経過とともに「どうしよう」から「生きるのが嫌だ」に変わっていく。刹那的な気持ちに陥ると、生きる力もなくなる

・そもそも欲が強い人ほど近道を選ぶので、なおさら欲望が膨らむ。基盤づくりには時間がかかる。短時間に築き上げたものは、見かけがいくら立派でも、砂上の楼閣。近道を選ぶ人は攻めには強いが、守りには弱いという欠点がある。とことん転げ落ちる



休めない人は、他人の目ばかり気にしている人、孤独に耐えられない人、精神的自立をしていない人です。

本書を読むと、休める人にならなければ、定年後に苦労することが、実感できるのではないでしょうか。


[ 2014/01/24 07:00 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『努力する人間になってはいけない・学校と仕事と社会の新人論』芦田宏直

努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論
(2013/09/02)
芦田宏直

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校長である著者が、専門学校の入学式や卒業式の式辞などで述べたことを文書化したのが本書です。

エリートではない人が、社会に出て、どう戦っていくか、生きていくかが記されているように思います。本書の中で、気に入ったところを一部まとめてみました。



・「1.怠け者だけれども目標を達成する人」「2.頑張り屋で目標を達成する人」「3.頑張り屋で目標を達成できない人」「4.怠け者で目標を達成できない人」。有害な人材とは、3番目の人

・仕事の仕方を変えて目標を達成しようとせず、時間をさらにかけて達成しようとする。これが努力する人が目標を達成できない理由。努力が唯一の武器と思っている。努力は時間、努力すればするほど疲弊する、息苦しくなる、つらくなる。これでは仕事はできない

企業は時間を嫌う。時間をかけることが企業の美徳ではなく、いかに短時間で高度な目標を達成できるかが企業の見果てぬ夢。努力主義は、時間をかければ目標が達成できると思っているので、残業して(無理して)やり遂げようとするが、企業の考えとは全く逆

・努力主義は、自己のやり方を変えようとしないエゴイズム。努力する人は謙虚なように見えて、そうではない。むしろ自分に固執する偏狭な人

・努力しているのに評価してくれないときは、立ち止まって、深呼吸して、やり方を変える、自分のスタンスを変える、そのことに思いをはせること

・「努力する」の反対が、「考える」ということ。努力する人は、考えない人ということ

・「時間がない」と言ってはいけない。「お金(予算)がない」と言ってはいけない。まして「クライアントはケチだ」などと言ってはいけない。「お金と時間がない」ときにどうすればいいかという知恵こそが、勉強の実践的意義

・人間の本質は、若者に引き継がれている。人間性とは若者のこと

・「遠い」お客様を大切にすること。お客様は近所であっても、「遠い」ところから来ている人たちだと思うこと

・自立するというのは、自分が使いたくないものにお金を使うことを意味する。光熱費もアパート代もできればなしで済ませたい。しかし、社会人になるというのは、そういうものを担うこと。自宅通いでも、社会人になったら、家に月5万円以上入れるべき

・お金を借りるには、貸してくれる人を説得しなければならない。説得する過程で一所懸命プランを練らなければならない。そうやって、精度の高い、成功する確率の高いプランに成長していく

・コミュニケーションとは、無償のもの(=片方向のもの)。お互いが理解し合うなんて、最低の貧相なコミュニケーション。返ってこないから、無償の配慮が存在する

・いわゆる低偏差値の学生というのは、家庭、地域、クラスメート、担任の先生といった近親者との比較の中でしか、自分の位置を測ることができない子たち。若者が大人になる契機の一つは、対面人間関係(=親密圏を越えるとき

・日本の若者の大半は勉強していないけれども、消費者としての水準、サービス水準への要求は、どこの国の若者にも負けない

・日本の若者は、放っておいても顧客志向のエリートアジアのエリート学生を採用しても、スキルや学力は高いが、消費者水準が実感できない。そこに一番気づいていないのが、大学や専門学校の教育関係者

・アメリカは実力主義と言われるが、大学に入るには、ボランティア活動、親の推薦状、高校の先生の評価など「人間的なこと」を聞かれる。試験点数以外の家族主義的な履歴、長時間の評価を問う。それこそ差別主義。日本のマークシート方式こそウルトラ近代主義

・人間の観察を長いスパンで見る場合、その人間がどこで生まれたか、どんな親元で育ったかということに密接に関わってくる。「長い時間」の観察・評価というのは、ヒューマンな管理主義



著者は、文部科学省、経済産業省などで教育に関する委員を務めた方なので、独自の「教育論」を持っておられます。

人材とは何か、教育とは何か、極めて実践的な視点から発するその論評は、参考になる点が多いように感じました。


[ 2014/01/22 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『東京は郊外から消えていく!首都圏高齢化・未婚化・空き家地図』三浦展

東京は郊外から消えていく!  首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)東京は郊外から消えていく! 首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)
(2012/08/17)
三浦 展

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東京だけでなく、全国の大都市でも、郊外の住宅地(特に、通勤に不便で、女性の働き場が少ないところ)の地価が下がり続けています。この状態が続くのか、非常に気になるところです。

本書は、人口減少の時代、しかも若者の大都市流入も減りつつある時代に、大都市の地価が今後どうなるのかを調査分析している書です。住んでいい地域、買っていい地域とは、どこなのかも記されています。その一部をまとめてみました。



郊外の地価は、1992年から2011年にかけて、5割から6割減。それに比べて、都心近くの住宅地は3割減くらい。郊外住宅地の地価下落率が高いのは明らか

・住宅の価格が下がるのは、日本全体の景気が悪いからだけではない。昔は、郊外の駅から遠い不便な物件でも売れたのは、男性だけが働き、長い通勤時間に耐え、通勤定期代が会社持ちだったから

・都心から遠く、駅からも遠くに立地している住宅は、男女役割分担時代の遺物。現代においては利用価値がない。だから、価格は下がるしかない

団塊ジュニアが住む地域は、「未婚で所得が低い者」は郊外の親元の家。「未婚で所得が高い者・既婚で子供がいない夫婦」は都心部のブランド地域。「既婚で子供のいる裕福な世帯」は都心部や郊外のブランド地域。「既婚で子供のいる一般世帯」は大衆的な郊外住宅地

・マーケティング系の人は、住んでみたら意外に楽しい、便利だ、生活しやすいと評価される街が今後発展すると考えている。コンサルタント系の人は、従来型の価値観(ファッショナブル、流行や時代の先端、ステイタスなど)の街が今後も発展すると考えている

若い女性の関心が、都心で高級品を買うことから離れていっている。ブランド志向、おしゃれ志向が弱まり、よりカジュアル志向、シンプル志向になっていることが、買い物をする街の選択にも現れている

・いつの時代も新しい流行をつくるのは若い女性。今、若い女性は脱ブランド志向になり、逆におじさん的な趣味に向かっている

・ずっと長期不況を経験してきた団塊ジュニアやそれ以降の若い世代にとっては、イメージはよいが値段が高いブランド地域は、そう簡単に手は出せないし、コストパフォーマンスが悪いと感じる

二世帯同居は、親にとっても、行政にとっても都合がよい。そして、特に子育て期の女性にとって、親が近くに住んでいると都合がよい

・女性が働ける郊外地域でなければ、女性は都心に出ていく。あるいは、働ける別の郊外地域に引っ越していく。若い世代がいなくなれば、高齢者だけの地域になり、税収が減り、福祉予算ばかり増える。これからの時代は、自治体が若い世代を奪い合う時代

・若い世代が、街にブランド性を求めなくなっている。それよりも、楽しさ、便利さ、刺激やクリエイティブな風土を求め始めている。若い世代が、下町に関心を向ける背景には、単なるレトロ志向ではなく、職住一致の地域への憧れがある

・第一の消費社会は大正から戦前。都心に百貨店ができ、鉄道沿線に住宅が開発された時代。第二の消費社会は、戦後から1974年まで、大量生産による画一的消費の時代。第三の消費社会は、個性志向が強まった時代。第四の消費社会は、モノが完全に飽和した時代

・第一の消費社会から第三の消費社会までは、地方から都市へ、都市から郊外へという動きが単線的直線的に起こった。大量の人々が同じ価値観を持ち、田舎より都会のほうがいい暮らしができると信じ、都会は狭苦しいから郊外に家を買うのがいいと考えた

・東京の都心がつまらなくなっているのは、一概に不況のせいばかりではない。それは、空間が均質になり、個性が失われているから

・新しいものでも、無駄なもの、意味のないものは、つくってほしくない人が増えている。そんな無駄をするなら、古いものをうまく利用したほうが面白いと考える人が増えている

・単純な近代化を終えた社会においては、人々は単純なモダニズムを信じない。まっすぐな道路を嫌い、曲がりくねった路地を好み、自動車を嫌い、歩くことを好み、ピカピカの巨大なビルを嫌い、古くて味のあるビルを好むようになった。これは退歩ではなく成熟

・放っておくと住宅地が劣化してしまうのは、「多様な世代が住める居住の場がない」「まちに必要な『働・学・憩・農』の機能をつくらなかった」から



業者が考える「住んでほしい街」よりも、消費者が考える「住んでよかった街」のほうに軍配が上がるのかもしれません。

人気の街は、女性の現実的な願いが70%、若者の未来嗅覚が30%くらいの割合によって決まっていくのではないでしょうか。


[ 2014/01/20 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)