とは学

「・・・とは」の哲学

『ニッポン・ヨーロッパ人の眼で見た』ブルーノ・タウト

ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た (講談社学術文庫)ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た (講談社学術文庫)
(1991/12/05)
森 とし郎、ブルーノ・タウト 他

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ブルーノ・タウトは、ドイツの建築家です。日本に滞在し、伊勢神宮、桂離宮などを見学して、それをヒントに、モダニズムを提唱し、世界の現代建築に大きな影響を与えた人物です。現代の日本建築も、その「逆輸入」のモダニズムに影響を大きく受けています。

日本の建築美、構造美を発見した記録が本書に載っています。本書の初版は1950年ですが、何度も版を重ねている書です。ヨーロッパ人から見た日本の美を知る上で、興味深い点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本がこれまで世界に与えた一切のものの源泉、まったく独自な日本文化をひらく鍵、完成させる形のゆえに全世界の賛美する日本の根原。それは外宮、内宮、及び荒祭宮をもつ伊勢である

・日本人は伊勢神宮の神殿を日本国民の最高の象徴として尊崇している。まことに伊勢神宮こそ真の結晶物である。構造はこのうえもなく透明清澄であり、また極めて明白単純なるが故に、形式は直ちに構造そのものとなる

・古典的偉大を具現している桂離宮が、実際にもあらゆる日本的なものの標準になっているという事実を多くの識者に確かめ得て、非常な喜びを感じた

・現代の建築家は、桂離宮がこのうえもなく現代的であることに驚異をさえ感じるであろう。実にこの建築物は種々の要求を極めて簡明直截に充たしている

・生活の要求のみが問題となるところでも、単に実用的だけに片付けられていない。建築物で営まれる日常生活は、これを使用する人々の自然な動きによって、特殊な機能を形成するが、桂離宮がかかる機能をも極めて些細な点にいたるまで見事に充足している

・桂離宮の御庭の諸部分は著しく分化していながら、すべてが相集まって一個の統一を形成している。ここに達成した美は、装飾的なものではなく、精神的意味における機能的な美。この美は、眼をいわば思考への変圧器にする。即ち、眼は見ながらにして思考する

・日本の歴史的建築物について、天皇の御趣味と将軍の趣味との著しい相違を観察するのは、まことに興味深い。桂離宮や修学院離宮その他は、世界における唯一無比の趣味文化を表現している。建築物は何一つ建築的な装飾をもっていない、木骨構造自体だけである

・昔の将軍たちの居館は、実に酷しい。そこに見られるものは豪華の限りをつくした浮麗の美のみ。建物には到るところに高価な彫刻や絵画を嵌めこみ、建築的構造がまったく埋却せられている。これらが、日本的でないのは、様式全体がシナからの輸入だからである

・天皇対将軍という大きな反立は同時にまた神道対仏教の反立である。日本の宗教的感情を複雑微細な点まで理解することは容易ではないが、神道が日本人とその国土とを独自の仕方で結合しているという一事は、極めて明瞭。神道自体が日本と完全に融合している

・神道は日本人を美わしい国土と一体に結合しているばかりでなく、全国民を社会的な意味におけるこの国土の一部分として互いに結びつけている

・日本人が庭園に石を配し、小池を造って写景する理由は、日本家屋の部屋や台所などの神棚に安置された小社殿と同じく、日本人がその国土をいわば常に自分と一緒に持ち廻っているということと同一の現れ方である

・田畑に一本の雑草をも見ないという事実は、ヨーロッパ人の眼には実に驚くべきこと。こういう性質は、国民の生活態度にもまた家屋の様子や手入れにも、実によく現れている。こう観ると、日本の農家も農民も風俗や慣習も、やはり天皇と神道という主題に帰着する

・肉塊をもって相打つ角技の力士にも、ある種の洗練と立合いの気品とが肝要とされている。これは柔道や剣道、あるいは弓道のような武技についてもまったく同様。つまり、大切なのは常に立派な態度であって、徒に相手を打ち負かそうとする興奮ではない

・日本家屋は、常に清潔を保っている点にかけて世界無比。玄関で靴を脱ぐ習慣が、家の中に泥や塵埃を持ち込まないこともあるが、絶えず部屋を清掃していないと、用材の清潔はもとより、室内の整頓も乱れる。このような清潔は、日本のどんな貧しい住宅にもある

・桂離宮の造営についての三箇の条件とは、第一は「建築主は竣工以前に来り見てはならない」。第二は「竣工の期日を定めてはならない」。第三は「工費に制限を加えてはならない」ということ。当時のすぐれた創造的精神は今日でもなお死滅していない

・日本は近代技術の一様化的影響をも摂取して、日本的なものに改容して日本文化の血肉に化するであろう。そして、そのとき日本は、再び世界に新しい大きな富を贈る



タウトが日本に来たのは1933年です。わずか2カ月余りですが、実に多くの日本文化を貪欲に摂取しました。しかも、個々の建築物の本質を理解するだけでなく日本文化の真髄を短期間に理解しています。まことに驚くばかりです。

本書によって、戦前のヨーロッパ人の日本文化観を知ることができます。80年経った今、日本文化が衰退しているとしたら、その原因は本書に載っているのではないでしょうか。

[ 2014/01/31 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『中国人には、ご用心!』孔健

中国人には、ご“用心中国人には、ご“用心
(2012/09/25)
孔健

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中国という国を理解しようとしても、なかなか理解できません。それを知るには、公式なものではなく、もっと庶民の日常的なものが大事なように思います。

著者は、孔子直系の子孫で、日中関係評論家として活躍されています。本書は、中国の大衆のことが多く、興味深く読めました。その一部をまとめてみました。



・中国社会は今、拝金主義に陥っている。多くの人が浮き足立ち、頭の中はお金のことだけ。中国人は古来より貧しかった。何千年に渡り、豊かだったのは、支配階級や一部の商人だけ。それが今や国民全部に豊かになる道が開かれた。お金に群がるのも仕方がない

・中国人は今、老いも若きも「狼の道」(金に群がる拝金主義)を歩んでいる。人の心を傷つけ、裏切っても、自分だけは金持ちになるのが正義、という社会。道徳はすり減った

・中国人女性と日本人男性が結婚する数は、1年間に2万カップル以上。そして、たっぷりと慰謝料を懐に入れ、子どもの手を引いて、中国に帰る中国人女性も多い

・浙江省温州の人は「中国のユダヤ人」と称され、古くから金儲けがうまい。偽ブランド商品の製造も盛ん。温州人150万人が、中国各地で軋轢を起こしながら商売をしている

・自宅と車と別荘を持ち、海外旅行をする人々を中国ではリッチマンと呼び、約7500万人いるといわれている。中国総人口の5%。中国の富裕層は、一代で財を築いた「爆発戸」と呼ばれる成金。市場が広いだけに、一発当てれば爆発戸も夢ではない

・中国には、一人っ子政策以降、戸籍のない「黒孩子」が、数千万人いる。黒孩子は、戸籍上は存在しないため、学校教育や医療など行政サービスを受けることができない

・中国では、日本現地企業に働く幹部は、ほとんど5~6年勤めてから、中国の企業に転職するという風潮がある。日系企業は、中国企業への転職用の専門学校のようになっている

・中国では、党の幹部が妻子を外国に出し、一人中国に残るのを「裸官」と言うが、不正が発覚しそうになる寸前に「裸官」本人が海外逃亡をはかるケースが増えている。1998年から10年間で、海外逃亡した政府や国有企業の幹部は17000余人。流出資産は約10兆円

・中国人の国民性を表わす言葉は、「自尊自大 自満自足」(なんでも世界一)、「吃苦怕難 貪図享楽」(苦しいことは苦手だが、享楽は好む)、「克己忍辱 残酷無情」(我慢強さも残忍さも世界一)、「反古薄今 旧習悪俗」(常に不平不満をもらし悪い習慣を直さない)

・今でも中国では「日本はその昔中国がつくった国」と思っている人が大勢いる

・中国人の伝統的長所を表わす言葉は、「謙虚学習 団結向上」(天が与えた不遇から脱却するには勉強するしかない)、「尊重権威 官僚為重」(権威を尊重し、官僚を重視する)、「修身斉家 楽天知命」(自分を磨き家庭を平穏に保ち運命に従う)

・人付き合いの実践すべき項目、「無事随訪」(用事がなくてもたまに尋ねる)、「礼多無妨」(心を込めて時々贈り物)、「信上往来」(会わなくても文章でやりとり)、「以書会友」(勉強会に積極的に参加)、「活用所長」(お互いの長所を活用)、「背無悪言」(悪口を言うな)

・中国人の欠点を表わす言葉は、「自我為重 利益第一」(自己中心、自分の利益しか考えない)、「面子如命 相互不信」(面子を大事にし、お互い信用しない)、「馬虎了事 曖昧不明」(完璧を求めず、責任もとらない)「厚黒多計 闘争為栄」(腹黒い恥知らずが跳梁跋扈)

・最近目立つのがヤクザの社会進出。魚市場、野菜市場、精肉関係、セメント業界、建築土木業界、建材関係など、利権が発生するところはどこもヤクザが仕切っている

四直轄市の省民性、「北京」(怠惰な人間が多く、政治好き)、「天津」(女性が男性的)、「上海」(日本人男性との結婚が理想)、「重慶」(男は正業に就かず、女性が麻雀好き)

華北・東北・華東・華中の省民性、「河南」(評判がよくない)、「黒龍江・吉林・遼寧」(情熱的だが、気が短い)、「山東」(礼儀正しく、評判がいい)、「江蘇」(治安のよさは全国一)、「浙江」(中国のユダヤ人)、「安徽」(いまだに貧しい)、「湖北」(叡智に富み、美女が多い)

華南・西北・西南・五自治区の省民性、「福建」(日本の居酒屋で働く女性が多い)、「広東」(実利を好む)、「湖南」(男の気性が激しい)、「青海」(保守的で閉鎖的)、「四川」(多くの才能を輩出)、「雲南」(少数民族が多い)、「内モンゴル」(勇猛)、「チベット」(穏やか)

・来日した中国人は99%日本を好きになって帰る。日本に住む100万の中国人も穏やかに客観的に見ている。問題なのは、大多数を占める日本のことをよく知らない、また知りたいとも思わない中国人。しかし。この大多数の動き方が中国の行方を決める要因となる



中国と付き合うのは、なんて難しいことかと思えた内容の書でした。とらえどころのない雑多な大国を杓子定規に判断しようがありません。また、現在の日本と中国は、性格も大いに違ってきています。

付かず離れずの関係で、ご近所付き合い程度の「日中薄交」で、当分はいくしかないのかもしれません。


[ 2014/01/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『人間を磨く言葉』鍵山秀三郎

人間を磨く言葉人間を磨く言葉
(2007/10/25)
鍵山 秀三郎

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著者の本を紹介するのは、これで4冊目(参照:「鍵山秀三郎・本」)になります。

凡事徹底」という全くブレない著者の考え方が、何に影響を受けたのか、以前より気になっていました。本書は、著者の人間を形づけた「お気に入り」の言葉集です。それらの言葉の数々をまとめてみました。



・「少しの労作で大きな成果を得た人は、得た成果の量に比例して、不安も一緒に抱えることになる」

・「過去相も現在相も決定相ではない。過程相に過ぎない」(三谷隆正)

・「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年にして歴史なる」

・「魅は与によって生じ、求によって滅す」(無能唱元)

・「益はなくとも、意味はある」(晏子)

・「境遇に強いられしところにより事を行えば、そのことは必ず成就する」

・「本物は続く、続ければ本物になる」(東井義雄)

・「簡単の向こうには荒廃が待っている」(竹花豊)

・「私が私を捨てれば、そこにあなたがいる。あなたがあなたを捨てれば、そこに私がいる」(山本紹之介)

・「己を捨つるより、大いなる愛はなし」

・「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」(芥川龍之介)

・「自分よりも弱いものを守ろうとすれば、勇気が湧いてくる。自分より苦しんでいる人に優しくなれば、自分の苦しみがやわらぐ」

・「親切で優しくあれ。あなたを訪ねてきた人を、少しでも幸せにしないで帰してはいけない」(マザー・テレサ)

・「聖人は微を見て以て萌を知り、端を見て以て末を知る」(韓非子)

・「動中の工夫は、静中の工夫に勝ること百千億倍」(白隠禅師)

・「ゴミを拾えば拾う習慣が身につき、捨てれば捨てる習慣が身につく」

・「百術、一清に如かず」(玉木文之進)

・「教育とは流水に文字を書くようなはかない業である。だがそれを巌壁に刻むような真剣さで取り組まねばならぬ」(森信三)

・「カッコよさは、破滅につながる」(三浦綾子)

・「規則は人を咎め、規律は人を和ます」

・「変えることのできないものを、素直に受け入れる心の落着きがほしい。変えることのできるものを、敢然と変えていく勇気がほしい。変えることのできるものと、できないものとを見分ける賢明さがほしい」(ラインホルド・ニーバー)

・「己のために、計らわず」(広田弘毅)

・「エリートとは、断れば断ることのできる責務を、あえて受諾する者である。自分自身の上に、困難を積み重ねる者である」(オルテガ)

・「一所懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る」

・「善友は助け合って成長し、悪友は誘い合って堕落する」(孔子)

・「大きな欲望を持つと心が荒む。自分を自分のためだけに使うと心身を消耗する。人のために使うと心に余裕が出てくる」



時代を超えた言葉の数々。これらが、著者の血となり肉となり骨となり、そして脳となったのではないでしょうか。

先人たちが遺してくれた言葉をどう受け止めるかで、人間は磨かれていくのかもしれません。


[ 2014/01/27 07:00 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『50代からの休みかた上手』大原敬子

50代からの休みかた上手50代からの休みかた上手
(2005/02)
大原 敬子

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著者は、ラジオの人生相談などを担当している方です。女性の相談に乗られることが多いようです。

本書は、定年前の「心と体のお掃除」といった感の書です。言い換えれば、良き定年を迎えるための準備書です。参考になる点が多々ありました。その一部をまとめてみました。



・苦しみや辛さをつくるのは「もっともっと」の気持ち。仏教ではこれを「業」と言う。業の本質は「命の火」。もっともっとを求めなくてはいられなくなる

・自分自身が見えていないと、飽くなき欲を求める。目的が見えないと、その欲は業という悩みに変わる。しかし、目的が見えていると、欲は夢と希望になる

・50代は模索と選択の時代。仕事、結婚、子育てと、目標が明確に見えている時には迷いはない。迷いは目標がなくなった時に始まる

・知恵とは、生きるための技術。一生懸命生きようともがいていると、さまざまな経験を通して、その経験則が生きるための道具となる。これが知恵

・何のために生きるか、どう生きるかは、人それぞれ。人生の目的、目標はみんな違う。しかし、生きる技術、知恵の中には、多分に万人に共通する普遍的な要素が含まれている

・働く本当の喜びは、他人の喜びがあって初めて感じられるもの。そして、他人を喜ばせたいがゆえに働くから、休みも肯定的に捉えられる

・好きなことが見つからないと嘆くのは、他人の顔色ばかり窺って生きているから。休めないのは、失敗や恥を根に持ち続けているから

・多くの人の間違いは、選択というとピックアップだと勘違いしているところにある。選択とは、何かをピックアップするのではなく、何かを捨てること

・過去とは、すでに過ぎ去りし時。そこに生きるのは死んでいる状態

・自由を手に入れるには、孤独を楽しむ能力が必要。他人は関係ない、自分が満足していればいいという孤独。孤独を選ぶ人は好きな道を歩んでいる

・人生の大事な闘いに勝ち抜く技術は「休む」「逃げる」「盗む」。「休む」とは、休みを取りながら、進むこと。「逃げる」とは、いったん逃げて、勝機を待つこと。「盗む」とは、知恵を盗むこと

・自由といったところで、個人の自立が育っていない文化では、自由は逃亡にしかすぎず、休んで自由になることを過度に罪悪視する

・好きで仕事をしている人は、休むことに抵抗や不安を感じない。仕事中毒人間は働いていることで安心しているだけで、仕事自体は心から好きではない

・「休むこと」「拒否すること」「意思を伝えること」「金銭を請求すること」「自己主張を述べること」。これらはアメリカ人が思う「日本人があまり良いと考えていない事柄

・欲から生じた闘いは、その貪欲さゆえに、すべてをなくしてしまうもの。奪っても、奪っても、満足できないから。結果、何もかも失うまで闘い続ける

・貧乏が恥ずかしいと感じる人は、経済レベルで人を評価する。美しさが一番と思っていれば、美醜によって人の価値を決める。裏を返せば、力のない自分を隠す人は、地位や権力がすべてという世界観の持ち主

信用をつくれない人は、偽りの人間関係に囲まれているから

・心が弱っていると、邪悪な感情(妬みや羨みなど)に取り憑かれる。でも、羨んでいるのは、相手の結果だけで、その人の実態ではない

・不安感は時間の経過とともに「どうしよう」から「生きるのが嫌だ」に変わっていく。刹那的な気持ちに陥ると、生きる力もなくなる

・そもそも欲が強い人ほど近道を選ぶので、なおさら欲望が膨らむ。基盤づくりには時間がかかる。短時間に築き上げたものは、見かけがいくら立派でも、砂上の楼閣。近道を選ぶ人は攻めには強いが、守りには弱いという欠点がある。とことん転げ落ちる



休めない人は、他人の目ばかり気にしている人、孤独に耐えられない人、精神的自立をしていない人です。

本書を読むと、休める人にならなければ、定年後に苦労することが、実感できるのではないでしょうか。


[ 2014/01/24 07:00 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『努力する人間になってはいけない・学校と仕事と社会の新人論』芦田宏直

努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論
(2013/09/02)
芦田宏直

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校長である著者が、専門学校の入学式や卒業式の式辞などで述べたことを文書化したのが本書です。

エリートではない人が、社会に出て、どう戦っていくか、生きていくかが記されているように思います。本書の中で、気に入ったところを一部まとめてみました。



・「1.怠け者だけれども目標を達成する人」「2.頑張り屋で目標を達成する人」「3.頑張り屋で目標を達成できない人」「4.怠け者で目標を達成できない人」。有害な人材とは、3番目の人

・仕事の仕方を変えて目標を達成しようとせず、時間をさらにかけて達成しようとする。これが努力する人が目標を達成できない理由。努力が唯一の武器と思っている。努力は時間、努力すればするほど疲弊する、息苦しくなる、つらくなる。これでは仕事はできない

企業は時間を嫌う。時間をかけることが企業の美徳ではなく、いかに短時間で高度な目標を達成できるかが企業の見果てぬ夢。努力主義は、時間をかければ目標が達成できると思っているので、残業して(無理して)やり遂げようとするが、企業の考えとは全く逆

・努力主義は、自己のやり方を変えようとしないエゴイズム。努力する人は謙虚なように見えて、そうではない。むしろ自分に固執する偏狭な人

・努力しているのに評価してくれないときは、立ち止まって、深呼吸して、やり方を変える、自分のスタンスを変える、そのことに思いをはせること

・「努力する」の反対が、「考える」ということ。努力する人は、考えない人ということ

・「時間がない」と言ってはいけない。「お金(予算)がない」と言ってはいけない。まして「クライアントはケチだ」などと言ってはいけない。「お金と時間がない」ときにどうすればいいかという知恵こそが、勉強の実践的意義

・人間の本質は、若者に引き継がれている。人間性とは若者のこと

・「遠い」お客様を大切にすること。お客様は近所であっても、「遠い」ところから来ている人たちだと思うこと

・自立するというのは、自分が使いたくないものにお金を使うことを意味する。光熱費もアパート代もできればなしで済ませたい。しかし、社会人になるというのは、そういうものを担うこと。自宅通いでも、社会人になったら、家に月5万円以上入れるべき

・お金を借りるには、貸してくれる人を説得しなければならない。説得する過程で一所懸命プランを練らなければならない。そうやって、精度の高い、成功する確率の高いプランに成長していく

・コミュニケーションとは、無償のもの(=片方向のもの)。お互いが理解し合うなんて、最低の貧相なコミュニケーション。返ってこないから、無償の配慮が存在する

・いわゆる低偏差値の学生というのは、家庭、地域、クラスメート、担任の先生といった近親者との比較の中でしか、自分の位置を測ることができない子たち。若者が大人になる契機の一つは、対面人間関係(=親密圏を越えるとき

・日本の若者の大半は勉強していないけれども、消費者としての水準、サービス水準への要求は、どこの国の若者にも負けない

・日本の若者は、放っておいても顧客志向のエリートアジアのエリート学生を採用しても、スキルや学力は高いが、消費者水準が実感できない。そこに一番気づいていないのが、大学や専門学校の教育関係者

・アメリカは実力主義と言われるが、大学に入るには、ボランティア活動、親の推薦状、高校の先生の評価など「人間的なこと」を聞かれる。試験点数以外の家族主義的な履歴、長時間の評価を問う。それこそ差別主義。日本のマークシート方式こそウルトラ近代主義

・人間の観察を長いスパンで見る場合、その人間がどこで生まれたか、どんな親元で育ったかということに密接に関わってくる。「長い時間」の観察・評価というのは、ヒューマンな管理主義



著者は、文部科学省、経済産業省などで教育に関する委員を務めた方なので、独自の「教育論」を持っておられます。

人材とは何か、教育とは何か、極めて実践的な視点から発するその論評は、参考になる点が多いように感じました。


[ 2014/01/22 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『東京は郊外から消えていく!首都圏高齢化・未婚化・空き家地図』三浦展

東京は郊外から消えていく!  首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)東京は郊外から消えていく! 首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)
(2012/08/17)
三浦 展

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東京だけでなく、全国の大都市でも、郊外の住宅地(特に、通勤に不便で、女性の働き場が少ないところ)の地価が下がり続けています。この状態が続くのか、非常に気になるところです。

本書は、人口減少の時代、しかも若者の大都市流入も減りつつある時代に、大都市の地価が今後どうなるのかを調査分析している書です。住んでいい地域、買っていい地域とは、どこなのかも記されています。その一部をまとめてみました。



郊外の地価は、1992年から2011年にかけて、5割から6割減。それに比べて、都心近くの住宅地は3割減くらい。郊外住宅地の地価下落率が高いのは明らか

・住宅の価格が下がるのは、日本全体の景気が悪いからだけではない。昔は、郊外の駅から遠い不便な物件でも売れたのは、男性だけが働き、長い通勤時間に耐え、通勤定期代が会社持ちだったから

・都心から遠く、駅からも遠くに立地している住宅は、男女役割分担時代の遺物。現代においては利用価値がない。だから、価格は下がるしかない

団塊ジュニアが住む地域は、「未婚で所得が低い者」は郊外の親元の家。「未婚で所得が高い者・既婚で子供がいない夫婦」は都心部のブランド地域。「既婚で子供のいる裕福な世帯」は都心部や郊外のブランド地域。「既婚で子供のいる一般世帯」は大衆的な郊外住宅地

・マーケティング系の人は、住んでみたら意外に楽しい、便利だ、生活しやすいと評価される街が今後発展すると考えている。コンサルタント系の人は、従来型の価値観(ファッショナブル、流行や時代の先端、ステイタスなど)の街が今後も発展すると考えている

若い女性の関心が、都心で高級品を買うことから離れていっている。ブランド志向、おしゃれ志向が弱まり、よりカジュアル志向、シンプル志向になっていることが、買い物をする街の選択にも現れている

・いつの時代も新しい流行をつくるのは若い女性。今、若い女性は脱ブランド志向になり、逆におじさん的な趣味に向かっている

・ずっと長期不況を経験してきた団塊ジュニアやそれ以降の若い世代にとっては、イメージはよいが値段が高いブランド地域は、そう簡単に手は出せないし、コストパフォーマンスが悪いと感じる

二世帯同居は、親にとっても、行政にとっても都合がよい。そして、特に子育て期の女性にとって、親が近くに住んでいると都合がよい

・女性が働ける郊外地域でなければ、女性は都心に出ていく。あるいは、働ける別の郊外地域に引っ越していく。若い世代がいなくなれば、高齢者だけの地域になり、税収が減り、福祉予算ばかり増える。これからの時代は、自治体が若い世代を奪い合う時代

・若い世代が、街にブランド性を求めなくなっている。それよりも、楽しさ、便利さ、刺激やクリエイティブな風土を求め始めている。若い世代が、下町に関心を向ける背景には、単なるレトロ志向ではなく、職住一致の地域への憧れがある

・第一の消費社会は大正から戦前。都心に百貨店ができ、鉄道沿線に住宅が開発された時代。第二の消費社会は、戦後から1974年まで、大量生産による画一的消費の時代。第三の消費社会は、個性志向が強まった時代。第四の消費社会は、モノが完全に飽和した時代

・第一の消費社会から第三の消費社会までは、地方から都市へ、都市から郊外へという動きが単線的直線的に起こった。大量の人々が同じ価値観を持ち、田舎より都会のほうがいい暮らしができると信じ、都会は狭苦しいから郊外に家を買うのがいいと考えた

・東京の都心がつまらなくなっているのは、一概に不況のせいばかりではない。それは、空間が均質になり、個性が失われているから

・新しいものでも、無駄なもの、意味のないものは、つくってほしくない人が増えている。そんな無駄をするなら、古いものをうまく利用したほうが面白いと考える人が増えている

・単純な近代化を終えた社会においては、人々は単純なモダニズムを信じない。まっすぐな道路を嫌い、曲がりくねった路地を好み、自動車を嫌い、歩くことを好み、ピカピカの巨大なビルを嫌い、古くて味のあるビルを好むようになった。これは退歩ではなく成熟

・放っておくと住宅地が劣化してしまうのは、「多様な世代が住める居住の場がない」「まちに必要な『働・学・憩・農』の機能をつくらなかった」から



業者が考える「住んでほしい街」よりも、消費者が考える「住んでよかった街」のほうに軍配が上がるのかもしれません。

人気の街は、女性の現実的な願いが70%、若者の未来嗅覚が30%くらいの割合によって決まっていくのではないでしょうか。


[ 2014/01/20 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『俺の後ろに立つな-さいとう・たかを劇画一代』さいとうたかを

俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代俺の後ろに立つな―さいとう・たかを劇画一代
(2010/06)
さいとう たかを

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著者は、言わずと知れた、「ゴルゴ13」の作者です。45年もの長きに渡り、連載されています。他にも数々の代表作があります。

本書には、著者の劇画論、映画論、人生論などが展開されています。著者の作品が、長い人気を博している理由を知ることができます。読み応えのある一冊の一部をまとめてみました。



映画は娯楽であるという認識から始めなければならない。そこで多くの映画ファンを獲得したら、娯楽だけではないさまざまな映画を製作すればいい。娯楽映画は文芸作品より劣る、そうした価値規準が映画人の意識下にある限り、日本映画の復興はありえない

・アメリカ映画はハッピーエンドや、善玉と悪玉がはっきりし過ぎて面白くないという人もいるが、難解で不可解を覚える映画よりは、はるかにいい。不可解を覚える映画とは、テクニックが稚拙であり、観客の心理を無視した作り手側の独りよがりにすぎない

贅沢な生活を手に入れたとしても、それを羨ましがる者とは生活レベルが違ってしまい、むしろ眼につくのは、自分より贅沢三昧に生きる人。つまり、昇っても昇ってもきりがなく、半永久的に幸福感を得られない

・そもそも、無償の愛など、親が子供に対する本能の愛以外にはあり得ない。それを赤の他人に求めるのはお門違い

・あるコーヒーを飲んで、美味いと満足するか、またはもっとおいしいコーヒーがあるのではないかと考えるかによって、その人の幸福感は違ってくる。ここにヒントが隠されている。幸福になるためには、そのコーヒーで満足できればいい

・精神的にも肉体的にも心地よさを感じるか否かで幸福かどうかが決まる。それを実践するためには自分自身の価値観をもつことが必要。テレビや本、雑誌、人の考え方に左右されない自分だけの価値観がなければ、いつまでたっても幸福を味わうことはできない

・子供は、血肉を分けた母親の動物本能的な愛情と、ちょっと距離を置いた父親の人間愛(打算のない純粋な愛情)の間で、うまい具合に育っていく仕組みになっている

・父親というのは、たとえ娘に嫌われても構わないという覚悟を決めて、娘に対峙している。それこそまさしく人間愛の成せる業

・男が強いなんてイメージは母親が作ったもの。つまりメスから「男は強くなければならない」と子供のことから教育され続け、男は家族を守るものと錯覚しているだけ

・自分自身の価値観で獲得したものに囲まれているのが一番心地よい。権威や権力とは無縁のところに身を置き、自分自身に忠実に生きている人は、実に気楽に、快適に人生を謳歌できる

・地位を確保した人間はやたらと自分のやり方に固執する傾向がある。「これはこうするものだ」式のマニュアル人間に成り下がる。傍から見ればマニュアルどおりなのに、「これが私の個性」と言い張る。こういう手合いは、若い人の斬新なアイデアを生かせない

・勉強というのは、自分が見聞きし、身体全体で学ぶもの。それなのに、今の学校はただ単に便宜方法を教えるだけの場所と化している。歴史でも、なぜ権力は入れ替わるのか、時代はどのように移り変わってきたのかという根本ではなく、表層ばかり教えている

・権力は、高圧的で強制力を発揮し、個を傷つけたりする。一つの権力が生まれれば、それに群がる者もいれば、アンチテーゼの狼煙を上げる者もいる。したがって、権力を維持するためには、それを守る組織が誕生する

・権力は必ず、力と力がぶつかって生まれてきたが、どんな権力もいつかは必ず滅びるときを迎え、新しい権力にとって替わられる。まさに諸行無常の響きあり

・地球規模で対立してきた一方の権力が敗れたからといって、地球が一つの権力のもとで平和になるはずがない。必ず相反する権力が登場する。権力闘争に終わりはない

利権に群がる輩は相変わらず権力の周辺をうろつき、それが国家を蝕む。それを是正するには、これからも先、手を焼く。なぜなら、それを一掃するのも権力だから

・「出たい人よりも出したい人を」というのは、実にナンセンス。選挙に出て政治を行うのだから、「出たい人」でいい。「出したい人」を何のために出したいのか、きっと、出す側に利益があるから



本書を読み、さいとうたかを氏の作品の人気の秘密は、自身が培ってきた価値観にあるように思いました。

仕事に関する価値観だけでなく、政治、文化、教育、人生など実にさまざまな価値観を有しておられます。それが作品に滲んでくるのではないでしょうか。本書は、著者の価値観を発表する場であったのかもしれません。


[ 2014/01/17 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『稼ぎたければ、働くな。』山田昭雄

稼ぎたければ、働くな。稼ぎたければ、働くな。
(2012/11/05)
山田昭男

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著者の本を紹介するのは、本書で3冊目になります(参照「山田昭雄・本」)。

上場企業(未来工業)の創業者でもある著者の会社には、全世界から視察が相次いでいます。特に、韓国や中国で、著者の経営手法は高く評価されているようです。

日本では、まだそんなに有名ではありません。独特の経営法が、日本企業にとって、違和感を覚えるのではないでしょうか。このユニークな経営法が載っている本書の一部をまとめてみました。



・未来工業ではホウレンソウは禁止。いちいち上の指示や判断を仰いでいると、自分の頭で考えなくなるから

・現在、未来工業には約800人の社員がいるが、人事部はない。人事部がなくて困ったことは一度もない。社内の人の異動は、部長や課長同士で話し合えばすむし、新人の採用も必要な部署がやればいい。人がほしいのは現場。人事部の人員などムダ

・だいたいタイムレコーダーがあると、ズルズルと時間を延ばして残業代を稼ごうとする輩が必ず出てくる。だから、タイムレコーダーを廃止して、残業を禁止した

・たくさん働けば働くほど儲かる、というのは嘘っぱち。いかにして働かないか。うまくいっていない大多数がやっていることを鏡に反転させることで、そのヒントが見えてくる

・泥棒でも、信じてやれば泥棒はしない。世の経営者の多くは、そこが信じきれないがために、結局は社員に裏切られる

・大事なのは、どうやったら客が喜ぶかを考えること。安ければ売れるだろう、と安易な発想に飛びつくからいけない

・未来工業には営業にノルマがない。ノルマを設けると、どうしてもディーラーのところに行きがちになる。でも、実際の商品のヒントを持っているのは、それを使って仕事をする現場の人間

・営業はなるべく現場に行ったほうがいい。職人に「何でや」と、しつこく聞いていくと、最後にポツリと問題点を言ってくれることがある。この、最後の「ポツリ」が営業の成果、ひいては会社の命運にまで大きく関わってくる

・儲けたかったら、倹約も重要だが、それ以上に浪費が大切。倹約するか、浪費するか、その基準は、それをやって「やる気が出るか」「人が喜ぶかどうか」にある

・江戸の商人が新しい店を出す時は、その店に3年間、米を送り続けた。商売ではそれが普通。つまり、最初の3年間は損をする覚悟をしなければならない

・営業で一番大事なのは、お客をもてなすことではなく、お客と仲良くなること

・虚礼など、どんどん廃止すればいい。喜ばないものにお金を使うのは、ムダ以外の何ものでもない

・今の市場で十分食っていけているものを、なぜわざわざ大変な思いをして、海外に行く必要があるのか

・パートや派遣社員を使って、人件費が劇的に減らせたのなら、会社はもっと儲かってもいいはずなのに、潤う会社が一向に増えない。アメを与えず、ムチだけ残して、正社員と同じように働かせようとするのは土台無理な話

・人を動かしたいなら、命令するな!そのためには部下を「説得しろ」。命令ではなく、説得。説得して納得させる、そこがポイント

・車を持っていない。維持費がバカにならないから。当然ながら、社用車もないし、運転手もいない。社長がどうしても車に乗りたければ、中古の軽自動車で十分

・先着順で採用しても人は育つ。新卒をどう育てるかは、すべて会社の手腕にかかっている。育たないのは、育てられる人間のせいではなく、育てる人間が悪いから

・選んだ人間が期待した以上の成果をあげられなかったとしても、その人が100%の力を出していれば、それだけでも大成功。会社とは、社員それぞれの100%の力が集まって伸びていくもの



年商200億円、40年間赤字ゼロという業績を上げている社長だからこそ、発言に説得力があります。

常識にとらわれないユニークな経営法ですが、儲かっているので正しいと思います。株式会社は、儲かるのは善、儲からないのは悪なのですから。


[ 2014/01/15 07:00 ] 山田昭男・本 | TB(0) | CM(0)

『ドロのかぶり方』尾藤克之

ドロのかぶり方 (マイナビ新書)ドロのかぶり方 (マイナビ新書)
(2013/08/23)
尾藤 克之

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人間誰でも、泥をかぶらないといけない時があります。でも、かぶってしまってはいけない泥もあります。本書は、どういう泥ならかぶったほうがいいのか、泥の上手なかぶり方が記されています。

この「泥」という現実を検証している書を、今まで見たことがありませんでした。著者は元衆議院議員秘書です。ドロをかぶるのが仕事のような経験をされてきた方です。その貴重なノウハウの数々をまとめてみました。



・絶対にかぶってはいけないドロとは違法行為(収賄、背任など)になるもの。そんなことを促してくるドロかけ屋に注意しなければならない

・ドロをかぶる最大のメリットは、相手に恩を売れること

・ドロをかぶらされるということは、ドロをかぶせるほうと比べて、立場が弱くなる。クビを切られるかもしれない。そんな立場に追い込まれないためにも、ドロをかぶるときは言い訳をしてはいけない。上司に恩を売るチャンスなので、徹底的にかぶってあげること

・成功したときに出世したり、給与が上がったり、評判が死ぬほど上がるようなドロは大歓迎

・「うまくいっていない新規事業のリーダー」「設立以来、赤字が続く部門の責任者」「不祥事の後始末を託されたリーダー」。この種のドロをかぶって、うまく事態に対処できれば、能力を高く評価される。プロジェクトを黒字化することだけが、飛躍への道ではない

・ドロをかぶるときに一番気をつけるのが「客観的視点」。かぶったドロが誰の目から見ても「ドロ」でなければならない

・ドロかぶりには「愛嬌」も大切。愛嬌は、会社という集団の中で、警戒心、敵対心、嫉妬心をもたれないための重要なスキル

・上司にとって「カワイイやつ」「気になるヤツ」になれば、変なドロをかぶる確率はかなり低くなる。馬が合わない上司にも、積極的に声をかけること

・自分が失敗したときは「すみません」「自分のせい」、お酒の席でアピールしたいときは「うまくいかない」「教えてください」、上司が得意げに自慢したときは「さすが」「ダメなんです」。こういったお世辞の定型句は、コツをつかめば、簡単に口から出てくる

・文句を言われる前に、自分から謝りに行くこと。出鼻をくじかれると、本来、怒り爆発の状態だったとしても、矛をおさめざるをえないのが、人の情

・クレーム処理は代表的なドロかぶり。このクレーム処理の基本形は、クレームを言ってくる相手に「自分がイジメているみたい」と思わせること

・ドロかぶりが下手な上司は、部下に尻拭いをさせがち

・「手のひらをかえす」タイプ、つまり、信用できない人物には「口が軽い」「他人の批判を平気でする」「うわべだけを取り繕う」といった特徴がある。このような人を日ごろから特定しておくこと

・ドロかぶりは、もし一歩間違うと、すべてを失ってしまう危険な賭け。周囲の人物が信頼に値するか、注意深く見ておく必要がある

・会社生活ではババともいうべきドロは必ずある。基本的にミスをしたくない上司が上にいればいるほど、ババの数は増える

・会社の体質を見抜くのは簡単。査定が減点方式の会社では、ババが致命的な傷となる可能性が高い。そこでババを出されたときは、「お引き受けできません」と明確に拒否すること。失敗確率の高いババが振られた時点で、あなたは会社から軽視されていることになる

・立場が偉くなればなるほど、建前で話すのが普通。ペラペラ本音を言うのは中間管理職まで。上に立つ者が、建前で話を通すのは、それが理論武装になるから

・出世する人は、何らかの傷を持っているもの。だから、上層部の信用を勝ち取り、上にあげられるというわけ

・会社がドロをかぶせようと考えている人物は、自然と高位に出世していくもの。逆を言えば、ドロをかぶらない社員は、いつまでたっても出世しないままということ。ドロかぶりは究極の出世術



議員秘書として、ドロをかぶってきた著者の見解は、「義理人情のある会社では、ドロをかぶることが出世の道」となるが、「ドライな会社では、ドロをかぶらずにうまく逃げることが大事」ということです。

いずれの場合も、ドロに対する自分の考え方を磨き、場と人を見抜き、ドロに対処することが組織を生き抜く上で、非常に重要です。その助けとなる書です。


[ 2014/01/13 07:00 ] 出世の本 | TB(0) | CM(2)

『実伝・黒田官兵衛』火坂雅志

実伝 黒田官兵衛 (角川文庫)実伝 黒田官兵衛 (角川文庫)
(2013/05/25)
火坂 雅志

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私は歴史が好きです。テレビでも、歴史番組をよく見ています。とりわけ、参謀、懐刀、知恵袋といったナンバー2に当る人物に興味があります。今年の大河ドラマに決まった黒田官兵衛は、その代表的人物です。

戦国武将一の知将と言われる黒田官兵衛に関する本をとりあげるのは、「人使いの極意」に次いで2冊目となります。本書にも、興味深い記述が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・官兵衛の有名な言葉に「草履片々、木履片々」というものがある。片方は草履で片方は下駄、そんなちぐはぐな格好でも、走り出さなければならない時がある、という意味

・官兵衛は、普段は吝嗇家と言われていたが、盛大な活きた金の使い方もする。「金銀も用ふべき事に用ひずは、石瓦に同じ」というのが、官兵衛のモットーだった

・官兵衛に、「我れ人に媚ず、富貴を望まず」という言葉がある。確かに、官兵衛は、ゴマをすって人に取り入ろうとはしなかったし、贅沢な暮らしもしようとはしなかった。けれども、仙人のような清廉潔白さを貫いたわけでもない

・官兵衛は、戦が好きだった。それは勝って領地を拡大すること、勢力を拡大することが楽しいのではなく、自分が人より抜きん出た智謀・智略を巡らして勝つというプロセスが好きだったから、ということ

・秀吉や家康は「政治家」だったが、官兵衛は「芸術家」だった。芸術家というものは、自分の描いた絵をみんなに見てほしい、自分の作った音楽をみんなに聴いてほしい。自分が表現したいものを外に出していく。心の裡にあるものを押し隠すことはできない

・官兵衛の言葉「夏の火鉢、旱(ひでり)の傘」は、底冷えする冬になれば、火鉢は役に立ち、雨降りには、傘が役立つことを言っている。一方的に「あいつは使えない」と判断してはいけない。いいところを引き出してやるのが、上に立つ者の役目だ、ということ

・官兵衛の「相口、不相口」というのは、相性の合う人には、つい贔屓目になり、相性の合わない人には、話を聞く耳を傾けずに遠ざけてしまうし、ちょっとしたミスも気に障る。そういうものだから、私心が入り込んで目が曇らないように注意すること、という意味

・官兵衛の「将たる人は、威というものなくては、万人の押へ成りがたし」というのは、大将たる者には威厳がないと、人々の抑えがきかないが、威厳というものを誤解して、やたら威を振るってはいけない、という意味

・真のいくさ人とは、いかなるときも肚がすわっていなければならない。しかし、石田三成は目先の現象にとらわれ、大局を見ていなかった。「これがこの才子の限界であろう」、官兵衛は三成の人物を見切った

・秀吉は官兵衛の才知を恐れたが、「由々しき曲者」を利用することを忘れなかった。中国戦線以降も、官兵衛を脅かしながら使い続けたのは、人使い第一といわれた秀吉の狡さ

・官兵衛は、息子の恩人であり、また自分の進むべき道を示してくれた竹中半兵衛の志を、遺品の軍配・采配とともに受け継ぐ。官兵衛はこのとき、半兵衛が説いた「まことの軍師」になることを胸に誓った

・官兵衛は、その昔歌人を目指すほどの文学青年であり、それゆえどこか純粋な「ロマンチスト」な部分を生涯持ち続けていた。そこが、「リアリスト」竹中半兵衛との違い

・官兵衛は福岡城中に「異見会」を設けた。これは「月の上中下旬の三回開く」「場所は大広間」「誰が出席してもよい」「会議内容の秘密を保持し、低身分の者が上級者を批判しても、上級者はわだかまっても、人事で報復してはならない」という民主主義的な会議

・如水(官兵衛)は隠居した後、毎日歩いて、町の人々に声をかけ、意見も聞いて、息子に「こういうことを聞いたぞ」「このへんを直したらどうか」と、世論を受け入れた

・如水は、息子長政に「われひとりの功を好むは匹夫の勇にして大将たる道にあらず」と、武功を誉めることなく、逆にその行動を戒めた

・時を待った結果は、裏目に出た。筑前五十二万石が与えられただけ。天下無双の博打うちも無駄に終わった。あとは身を引く以外になかった。如水ではどうにも手をつけられないくらいに徳川政権は構成されていた。残されたのは、茶と歌とキリスト教だけだった

・如水は長政を呼び寄せ、「上天子より下百姓に至るまで、一日として食物がなくては世に永らう者はない。国を富まし士卒を強くすることが根本第一」と遺言した



黒田官兵衛は天下獲りを十分に狙えた人物です。最終的には、筑前の領主となりましたが、無念だったと思います。いつ、どこに生まれるか、誰を上司に選ぶか、決断するのはいつか、などによって人生はガラッと変わってしまいます。

まさに、運と実力に恵まれないと、勝者にはなれません。信長、秀吉、家康だけでなく、戦国武将たちの生き方は、我々に多くのものを教えてくれます。本書もその一助になるのではないでしょうか。


[ 2014/01/10 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『だから売れちゃう! お客様の心を一瞬でつかむ接触の法則』河瀬和幸

だから、売れちゃう! お客様の心を一瞬でつかむ接触の法則だから、売れちゃう! お客様の心を一瞬でつかむ接触の法則
(2013/09/04)
河瀬 和幸

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著者は、東急ハンズの実演販売で、8年連続売上ナンバー1の商品を生み出した、販売のプロです。実演販売の道では、広く名が知られており、「完売王」と呼ばれているそうです。

その著者が、販売ノウハウを漏らさず公開しているのが本書です。モノを売る高度なノウハウがぎっしり詰まっています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・他人と趣味について話をすると、その人は友達になる可能性がある。他人と商品について話をすると、その人はお客様になる可能性がある。

・商品について話した人が「お客様」。商品について話してない人は「通行人

・販売のステップは、「1.接触する」「2.説得する」「3.納得してもらう」。接触することを「引っ張る」とも言う。この「引っ張る」には、「1.遠くにいる人を商品の前に引っ張る」「2.その人の意識を商品の中に引っ張る」の二通りの意味がある

・「いらっしゃいませ」は一方通行のコミュニケーション。「いらっしゃいませ」と声をかけても、お客様は返答できない。午前中は「おはようございます」、午後は「こんにちは」と挨拶すると、お客様は言葉を返さなくても、表情が変わり、接触のキッカケが生まれる

・販売員の裏返る声、甲高い声に、お客様は「いいカモにされそう」と受けとめる。これではモノは売れない。普通の声でしゃべるべき。不自然な声はメッセージを歪んで伝える

・キレイに陳列するのは、実は、お客様にとっては「手にとりにくい」こと。お客様が手にとりやすいように、「チョイ崩し陳列」をすること

・お客様に買い物カゴを渡すと、「YES=ありがとう、どうもの言葉」「NO=結構ですの言葉。必要ないのポーズ」が返ってくる。NOならば「失礼しました」と一礼して引き下がる。YESならば「何かお探しですか」と声をかけて、接触の最初のステップが果たせる

・POPの一番の役割は「エッ、何?」と思わせ、立ち止まらせること。それには、歩いている人が読めるPOPを書くこと。大きく、太く、短く、シンプルに、ひと言ふた言で

・場面が変わる「移動ゾーン」に入ると、人の脳は緊張する習性がある。この「移動ゾーン」(出入口、エスカレーター、階段など)で販売活動をしても、効果は期待できない

・お客様の目線は、ゆっくり移動しながら、商品を「見ている」(SEE)と、商品をじっと「見つめている」(LOOK)の2パターン。声かけのタイミングは「見つめている」とき

・右脳に訴えて、お客様の心をつかみ、左脳で買う理由を見つけてもらう。この右脳から左脳への働きかけで重要なのは、右脳の刺激。そのためには、擬声語(ふわふわ、ごつごつ、さらさら、ぱくぱく、つるつる、ぷんぷん、チカチカ、きらきら等)で伝えること

・「売ろう、売ろう」オーラを出している自分に気づいたら、一旦、待つ。でも、ただボーッと待ってはダメ。「積極的にお客様を待つ」こと。積極的に待つとは、作業をしながら待つということ、適当に忙しそうにしている販売員に、お客様は声をかけやすい

・人は明るいところに引き寄せられる。楽しそうに集まっていると、ついついのぞいてみたくなる。その輪に入ると、自分の気持ちも楽しくなってくる。この集団心理を利用する

・人がモノを買う時の、購入の5ステップとは、1「エッ、何?」、2「で、それで?」、3「へー、なるほど!」、4「欲しくなっちゃったなあ」、5「ヨシ、決めた!」

・お客様の期待を募らせるには、「情報完結欲」の刺激が効果的。情報が完結しないと、脳が不快になり、情報を完結しようとする。この「情報完結欲」の刺激には、「暗示」が一番

・同じ商品を売っても、お客様は誰一人、同じように商品を見ていない。だから、その商品を正しく説明しようと気負わずに、お客様のイメージに合わせ、うなずいておけばよい

・最強の武器は、しゃべらずに背筋を伸ばし、にこやかにお客様に微笑むこと。微笑みが表のメッセージで、「買ってほしい」が裏のメッセージとして、お客様は読みとる

・二兎を追う者は一兎を得ずで、通路のどちらかを通るお客様を「断つ」勇気が必要

・工夫をする心こそが、モチベーションを高める。工夫する心は、どんどん増える脳細胞のようなもの。工夫した結果が失敗であっても、「経験」したということで成功と同じ

・販売員には、売場での接客を超えた可能性がある。その可能性は、観察し、観察から得られた情報を活用することで、花を開かせることができる



著者は、お客様の観察力に長けています。その観察力が、そのまま販売力となっています。どの分野でも、プロと呼ばれる人は、観察力に長けた人です。

売上を5倍にする著者の秘技は、他の人に比べて、お客様を5倍観察していることから生まれてきたのではないでしょうか。


[ 2014/01/08 07:00 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『千年のまなざし』坂村真民

千年のまなざし―未来を開いてゆく愛と平和のために千年のまなざし―未来を開いてゆく愛と平和のために
(1999/01)
坂村 真民

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年末に、NHKのラジオ深夜便に、坂村真民さんの娘さんが出演されていました。坂村真民さんは、毎朝、「念ずれば花ひらく」の石碑に手をかざし、詩のインスピレーションが湧いてくることを祈り願っていたそうです。

一行、一節の短い文に秘められた作者の大きな思いを感じることが詩の醍醐味なのだと思います。

坂村真民さんの本」を紹介するのは、これで5冊目になります。本書は、既存の詩集に入っていないものを収めたものです。その一文をまとめてみました。



・「一心」 限りある命だから 蝉もこおろぎも 一心に鳴いているのだ 花たちも あんなに 一心に 咲いているのだ わたしも 一心に 生きねばならぬ

・「」 孤が 人間を磨く 人間を 本ものにする 孤雲 孤鳥 孤木 孤は わが終生の友

・「歴史は神である」 虐げられた人たち 賤しめられた人たち 苦しめられた人たち そういう人たちに いつかは必ず光が射してくる それが歴史である だから歴史は神である ・・・

・「大念願」 殺さず 争わず 互いにいつくしみ すべて平等に 差別せず 生きる これが 大宇宙の 大念願なのだ ・・・

・「よい夢を持とう」 国籍のない 鳥たちは 無限の夢を持ち 太古から 空を舞い 海を越え 群れをなして 飛んでゆく ・・・ それに比べて 人間たちの 何というみじめな夢か 金や名誉や地位のため 二度とない人生を 支離滅裂なものにし ・・・

・「愛のまなざし」 宇宙を分類したら 真善美となる そしてその調和が 愛のまなざしである

・「回帰」 魚が帰ってゆくように 鳥が帰ってゆくように 星が帰ってゆくように わたしも生の初めに帰ってゆこう 長い間流れ流れて 行方を知らぬ流木のような生活から 古い血が動き出し 生まれた家の柱が呼ぶ ・・・

・「成就」 自分の人格の成就 自分の念願の成就 世界平和の成就 この成就こそ 目に見えるもの 見えないもの 生きとし生けるもの 祈りであり 願いである ・・・

・「凛凛」 リンリンと天地冴え リンリンと霊気満ち リンリンと心機燃え リンリンと梅花咲く ・・・ 凛凛は わたしの好きな 座右の銘 仏島四国の一隅で リンリンの気を吸飲し リンリンと生きてゆこう 鈴よリンリンと鳴れ

・「流れ」 流れ雲 流水 流れてゆくのが 一白水星生まれの わたしの運命 流転の教えが わたしの信仰 つゆくさのつゆとなり ころころころがり 霧となり雨となり またもとの流れとなる ・・・

・「湧き水」 春の湧き水のように 湧き出てくる詩の泉が まだわたしの体の中にはある これがある限り わたしは詩を作り続けてゆける ・・・

・「こおろぎ」 ・・・ わたしはこおろぎの声を 聞いていると 地球のある限り 歌い続ける 深い切ない 愛を感じる あまりにも純粋にして 一途なゆえに わたしはわたしの願いを この小さいこおろぎに 託しておきたい気がする ・・・

・「今」 咲くも無心 散るも無心 花は嘆かず 今を生きる 花の下に立つと いつもそう思う ・・・

・「呼応」 花ひらく時蝶きたり 蝶きたる時花ひらく と良寛さんはうたう まことにまことに 森羅万象が この詩のように 呼応のなかに生きてゆく その喜びを知るまで 生きながらえたありがたさよ ・・・

「嘆くなら」 嘆くなら ただ一つ 愛の足りなさに嘆け 金がないとか 思うようにならぬとか どこそこが痛むとか そんなことよりもっと大事な 愛の足りなさに嘆け ・・・

・「愛」 愛は すべてを 結ぶ 帯である



本書だけでなく、他の詩集も併せて読めば、坂村真民さんの世界が、より味わえるように思います。

自分と自然と世の中を見つめ、問い続けた、坂村真民さんの詩の世界に「回帰」し、「呼応」するのも悪くはないと思うのですが・・・


[ 2014/01/06 07:00 ] 坂村真民・本 | TB(0) | CM(0)

『50歳を超えても30代に見える生き方・「人生100年計画」の行程表』南雲吉則

50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社プラスアルファ新書)50歳を超えても30代に見える生き方 「人生100年計画」の行程表 (講談社プラスアルファ新書)
(2011/10/21)
南雲 吉則

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「50歳を超えても30代に見える」には、20歳近く若返る必要があります。その具体的手法が本書に記されています。著者自身も、服装、髪型、体型なども若々しく、写真では「美魔男?」のように感じます。

医者の不養生ではないようなので、信頼できそうです。著者の見解の幾つかをまとめてみました。



肥満は6歳寿命が縮む。タバコを吸っている人も6歳。さらに、独身の男性は8歳、独身の女性は4歳。ほかにも夜更かしなどで睡眠が不規則な人は4年、暴飲暴食をしている人も4年縮む

・「都市型貧乏の人」(袋菓子やコンビニ弁当などで毎日を過ごしている人)は、10年寿命縮む

・森毅京大元教授の唱えた「二乗の仮説」(1の2乗、2の2乗、3の2乗、4の2乗・・・と、数字を2乗しながら並べていくと、個々の数字が体の節目)は、不思議なくらい人生の節目と重なってくる

・「2乗の法則」でわかる人生の分岐点とは、1歳まで(乳時期)、4歳まで(幼児期)、9歳まで(小児期)、16歳まで(思春期)、25歳まで(青年期)、36歳まで(若年期)、49歳まで(中年前期)、64歳まで(中年後期)、81歳まで(老年期)、100歳まで(長寿期)

・不摂生をすれば上皮が荒れる。これが「炎症」と呼ばれる症状で、「発赤」「疼痛」「発熱」「腫脹」「機能障害」という五徴(5つの徴候)が現れる

ガンは不摂生の結果、体を救おうとして現れたもの。だから、ガンになった後も、生活習慣を変えなければ、どんどん大きくなって浸潤・転移をするのは当たり前

・病気の50%が生活習慣に、25%が遺伝や免疫に、残りの25%が生活環境に関係していると言われている

・動物の肉の脂肪分やバター、ラードが室温で固まってしまうということは、血管の中でも固まる可能性があるということ。動物の脂が「飽和脂肪酸」と呼ばれるのに対し、植物油や魚の脂は、室温では固まらないサラサラとした油なので「不飽和脂肪酸」と呼ばれる

・ガンに効くサプリメントはない。効くのは野菜や果物の皮だけ

・心=精神年齢、美=美容年齢、体=肉体年齢。アンチエイジングの世界では、この三つの柱が指標になる

・肉体年齢は、血管年齢、年齢、内蔵年齢、筋肉年齢、関節の柔軟性の総和として現れてくる

・男性は閉経がないから、生涯にわたって「男」であることを維持していく必要がある。生殖能力を失わないことが若さの源

・毎日の食事の中で意識しなければならないのは、「丸ごと食べる」ということだけ。「丸ごと食べる」というのは、「完全栄養を摂る」こと。魚は骨ごと、腹ごと、頭ごと。穀物は全粒で。野菜は葉ごと、皮ごと、根っこごと、食べる

・延命遺伝子を働かせるためには、「腹八分目」でも多過ぎ。できれば「腹六分目」を目指すこと

・お酒は水銀やタバコと同じように「蓄積毒」。実は、一生の間で飲める酒の量は決まっている。男性は500キロ、女性は250キロ。日本酒4合(720mlアルコール度14%ならアルコール量100g)を毎日飲めば、13.7年で生涯飲酒量に到達する

・イギリス・ケンブリッジ大学の研究調査によると、「毎日30分程度の適度な運動」「野菜と果物を300g(こぶし5つ分)摂取」「飲酒の適度な抑制」「禁煙」をすれば、寿命が14年も長くなるという結果が得られた

・激しい運動は体にいいどころか「早死に」の原因。もちろん、ダイエットの効果もない

ふくらはぎこそが「第二の心臓」。歩くことによって、ふくらはぎの筋肉が収縮して、末梢に滞っていた血液を心臓へと送り返す。歩くことだけで、心臓に負担をかけずに、内臓脂肪が燃焼する



著者の言う若返り法は、いたってシンプルで簡単なものです。例えば、スポーツジムで運動することよりも、スポーツジムへの行き帰りを歩くことのほうが大事だとか。何でも丸ごと食べると、バランスのいい食事が自然と摂れるといったものです。

健康のことを考えれば、若く見えることに越したことはありません。今すぐ簡単に実践できそうに思えてきました。


[ 2014/01/03 07:00 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『名人は危うきに遊ぶ』白洲正子

名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫)名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫)
(1999/05/28)
白洲 正子

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骨董を愛し、芸術への優れた審美眼の持ち主であった著者の随筆には、度々ハッとさせられます。

現場に出かけ、その地の匂いをかいで得た審美眼だからこそ、そう感じさせてくれるのかもしれません。本書にも、心に響く文章が数々載っています。その一部をまとめてみました。



動こうとして動かずにいる緊張感が天平の観音の魅力。平安時代には、観音さまは女性的になり、「遊び足」といって、こちらのほうへ一歩踏み出す気配が表れる。さらに時代が下がると、意識的に「遊び足」を用いるようになる。それは、もはや堕落の一歩手前

・人間は誰でも矛盾だらけでつかみ所のないパラドックスをしょいこんでいるが、大抵は苦し紛れにいい加減な所で妥協してしまう。だが、西行は一生そこから目を放たず、正直に、力強く、持ってうまれた不徹底な人生を生き抜き、その苦しみを歌に詠んだ

・西行の真似がしたかったのではない。自由に生きることがどんなにつらいことか、その孤独な魂に共感されるものがあった

・「名人は危うきに遊ぶ」という、その危険な「遊び」がないところに真の美しさも生まれない

・形をしっかり身につけておけば、内容はおのずから外に現れる。時には自分が思っている以上のものが現れることもある。何も考えず、無心に徹するからこの世のものならぬ美しさを表現できる

・無心といった、そういう空な状態を造り出すために、お能は600年もかけて工夫に工夫を重ねてきた

・「人間は自由によって何一つしていない」とロダンは言った。また「鳩が空を飛べるのは、空気のせいだ」とは、カントの言葉。見かけ倒しの自由の中に道を失った現代人は、もう一度、本当の自由とは何であるかを見直してみるべき

・人間として知っておくべき基本の生き方を身につけた上で、個性は造られるのであって、野性と自由が異なるように、生まれつきの素質と個性は違う。個性は、自分自身が見出して、育てるもの

・森林浴だの、緑のキャンペーンだの、そんな言葉を信用しない。私たちに必要なのは、自然を敬い、神を畏れる心から発した、生者の魂を鎮めることにある

・はやるということはいいことだから、それについてとやかく言いたくはない。ただ、はやりすぎると、芸が荒っぽくなるのを怖れているのであって、書きすぎると、筆が荒れるのとそれは同じこと

・「監督の仕事は、見つける、育てる、生かす、の三つに尽きる」(野村克也)。人間でも、焼きものでも同じ。先ず「見つける」ことの難しさ、次に「育てる」ことの愉しみは、使っている間によくなること。最後の「生かす」は、活用の道を発見するところにある

余技に生きることが人間の本当の在り方。日本の芸術一般には、素人的なところがあり、それが作品に余裕を与えるとともに、使う人たちを参加させる余地を残す。不完全な言葉がより合って連歌を作るように、不完全な道具が集まってお茶の世界を形づくる

・今になってみると、無為にすごした旅が懐かしい。小林秀雄さんは「人間は遊んでいる時に育つ」と言っていたが、仕事をするだけが人生ではないと、近ごろしきりに思う

・国際的という理想はおおかた達せられたように見えるが、中身は依然として昔ながらの日本人であり、一歩も前進していない。むしろ退歩したように感じるのは、それまで大切にしてきた文化を惜しげもなく捨てたからで、鹿鳴館の亡霊はいまだに巷を彷徨っている

・一つの国には、それを造り上げてきた長い歴史と文化があり、一朝一夕で変わるものではないのは自明のことだと思うが、絢爛豪華な外国文明に眩惑された明治政府の役人は、いとも簡単に、外国のものはいい、日本のものはダメだ、と短絡的に決めてしまった

・「放っておけば、風とか空気とか太陽などが自然に治してくれる。ただし、私がそこにいなくてはダメ。そこにいて、何もせず待っているだけ。待つのもつらくはない。患者が治る楽しみがあるから。ただし、これは自分のやり方で、人に強いることはない」(河合隼雄)

・「狐や狸や犬のせいにしとけば助かる。それが昔の人の智恵。今は自分が悪いからノイローゼになる。直すのは自分自身しかない、と思い込んでいるから本当に可哀想」(河合隼雄)



素晴らしい自然に出会い、素晴らしい芸術作品に出合い、素晴らしい人に出会い、それらに醸し出され、培われたものが、この著述になっているように思いました。

まさに、一流に育てられた結果としての一流の文章ではないでしょうか。


[ 2014/01/01 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)