とは学

「・・・とは」の哲学

『川と国土の危機-水害と社会』高橋裕

川と国土の危機――水害と社会 (岩波新書)川と国土の危機――水害と社会 (岩波新書)
(2012/09/21)
高橋 裕

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著者は、河川工学が専門の東大名誉教授です。日本は、歴史的にも、水害(洪水、土石流、地滑り、津波、高潮など)に悩まされてきた国だから、水源地の森林から河口の海岸まで、川の流域全体の統一した保全思想と防災構想の必要性を提唱されています。

しかし、主に高度成長期、何の思想も構想もなく、付け焼刃的に防水治水工事を行ってきたツケが、現在の危機的状況に至っていると警鐘を鳴らされています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・東京は、先進国の中で、最も災害危険性が高い首都。ミュンヘン再保険会社の自然災害リスク評価では、東京・横浜のリスク指標は710と抜群に高い。以下、サンフランシスコ167、ロサンゼルス100、大阪・神戸・京都92、ニューヨーク42。他の大都市は40以下

・東京は江戸時代以降、震度6の地震を6回経験している。安政大地震(直下が震源)と関東大地震(遠方が震源の巨大地震)の異なるタイプの地震で100年足らずの間隔で大被害を受けた大都市は、世界中で東京しかない

・東京の水害多発は諸外国の首都に例を見ない。江戸の三大洪水(1742、86年、1846年)。そして1910、47年の利根川、荒川の大氾濫。1917、49年の台風による高潮災害。1958年の狩野川台風による山手水害以後、東部下町だけでなく、西部でも水害が頻発している

・江戸時代は住所を高所に設置し、洪水を自由に氾濫させ、低平地は冠水に強い農産物を育てる対応だった。明治期、都市化・工業化の政策大転換によって、都市域や工業用地への氾濫を完全に防ぐことが要求された。この大治水事業が完成したのは、昭和5年のこと

・主要河川において、大洪水時の最大流量が過去最大記録を更新している。その構造的理由は、明治以来の連続大堤防方式の治水方策にある。すなわち、流域内に降った雨をしばらく留めようとせずに、多くの支流から本川の河道へと速やかに集中させようとしたから

水田が宅地化されると、洪水調整機能が失われるのみならず、降水は地下へ浸透せず、一目散に都市内河川か、整備された下水道へ殺到する。そのため、都市内河川は、従来の河道では間に合わなくなり、氾濫しやすくなった

・1990年以降普及した「多自然」河川工法の狙いは、ドイツ・スイスなどヨーロッパ各国で普及した「近自然」河川工法とほぼ同様。自然生態系を考慮し、強度で少々劣るが、堤防護岸にコンクリートを極力使わず、石材・植生などの自然材料を多用するようになった

・堤防に親しむ手段として、堤防の勾配を緩くするのは効果的。緩勾配は川に集う人々の心をなごませる。堤内側はもとより提外側でも緩勾配であればなおさらのこと。しかし、緩勾配は広い敷地を要するので、土地を得るのが困難な都市河川では難しい

ダムがもたらす利益は、洪水調節、水力発電、農業用水、工業用水、飲み水など生活用水の供給など多面的で、河川技術の花形でもあった。現在、日本のダムの総計は約3000。1950年代~1970年代にかけては、戦後の国土復興、高度成長へ大きく寄与した

・ダムブームの70年代まで、ダム建設は土木技術者の憧れの的であり、マスメディアもダム建設推進を唱えていた。オリンピック直前の東京の深刻な水不足に際しては、メディアはこぞって水道局を無策とし、なぜダムを早く造らなかったのかと攻撃していた

・1970年代以降、森林の水源涵養機能がダムに代替できるとして、「緑のダム」が謳われるようになったが、森林とダムの河川の流れに対する役割は異なる。森林はダム上流域において土砂流出を抑え、ダム湖の堆砂を減らし、洪水調整機能を増させる役割

・大水害は、ほとんど河川の中下流部の破堤によって発生する。中下流部に広い沖積平野のある大河川では、一旦破堤すると広い面積に氾濫して大水害になる。都市水害の被害は、沖積平野の無秩序な開発による土地利用の変化によるもの

・伊勢湾台風後に建設された海岸堤防は、すでに半世紀を経て、老朽化している。壮大な堤防が完成すると、企業も市民も、津波・高潮からの危険は最早ないと信じ、一層堤防の近くに立地した、しかし、その堤防を越える大波が襲来すれば、被害は深刻になる

・明治初期、東海道線の新橋・横浜間の建設に際して、汐留から品川までの9㎞の線路を、海の中の遠浅の干潟に敷設した。第二次大戦後も、高速道路やバイパス道路を水際や海上に建設した例は多く、海岸災害の危険度が増している

・大きな河川には大規模遊水地が完成してきているが、中小河川には大きな遊水地候補がなく、ほとんど完成していない。大洪水の際の氾濫水を一時貯溜するのに、耕作放棄地が河道近くにあれば、効果が期待できる



東日本大震災以後、地震と津波にばかり目が行きがちですが、水害にも、もっと関心を持つべきかもしれません。

洪水対策がないまま、農地から住宅地・工業用地になし崩し的に開発されてしまった土地が、日本には無数にあります。今住んでいる土地が、水害に対して、本当に安全なのか、もう一度点検してみる必要があるのではないでしょうか。


[ 2013/11/29 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『いい話グセで人生は一変する』小中陽太郎

いい話グセで人生は一変する―人間関係を幸せにする技術いい話グセで人生は一変する―人間関係を幸せにする技術
(2011/09)
小中 陽太郎

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著者は、作家ですが、討論番組の司会やテレビのコメンテーターとしても、ずっと昔から活躍されており、「座談の名手」とも呼ばれています。

その著者が、多人数の中での会話の方法をまとめたのが本書です。参考になる点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「とりもつ」「フォローする」「会話をコーディネートする」ことは必要。それらは、決して自分をかくして相手に合わせることではない。それによって、自分にも相手にも社会にも可能性が開ける

・「人生とは、座をとりもつこと」。この「座持ち」の思想は、バカにできない

・漫才は、ボケとツッコミだけで成り立っているわけではない。それを見て、楽しむ人がいるから成り立つ。ボケ、ツッコミ、笑う人の三角関係でうまくいく

・座談でも、攻撃する人反撃する人、それを見て、その力をうまくさばいて座をとりもつ人の3人がいる。その場をまとめているのは、座をとりもつ人

・主観的な人間は、自分だけで考え、ひとりよがりになる。対話(弁証法)こそ、真理に到達する道であり、実のある会話。だから、他人に反対されても怒ってはいけない。また、他人に反対することを遠慮してもいけない。最後に必ず一致点を探すこと

・司会者、座談を動かす人は「アジェンダ(議題)」を握っている。このアジェンダを悪用すると、大勢の人の関心を一つに集め、操作する危険な武器になってしまう

・真のコーディネーターは、支配者すらもコーディネート(同格に)してしまう大きさと思いやりがなければいけない

・世界が狭くなり、文化も言葉も、異文化が混じり合った今の社会では、多様な文化や人種をうまく調整する人がとても大切になっている

反体制といっても所詮、うらみつらみの復讐にすぎず、それがはれると、現世的栄誉に走るのが人間

・コメンテーターには「1.解説」「2.予測」「3.意見」の三つの役目が課せられている

・「笑いは常に集団の笑いである」は、ベルグソンの名言。笑いには他人が必要。笑いとは、場に生きるということ

・コーディネーターは、「けじめ役」をかって出て、みんなの意見を簡潔にまとめること。そして、締めたら、サッと引き上げること。これが必須

・シャープ(半音高い)で、目立つ人もいれば、フラット(半音低い)で和ませてくれる人もいて、音楽となる

・他の人と違う何かを訴えるために、人は話をする。会話はいつだって「化学反応

・縁こそが社会のダイナミズム。偶然の出会いという、この不思議なものこそ、会話のコーディネートの信条。それなら、「折角ですから・・・」を効果的に使おう。「折角」は「縁」を増幅させる魔法の言葉

・座持ちがいい人というのは、言われたことをイヤな顔もせずにさばき、客も接待側にも満足してもらえる人。客をたてる、これが座持ちのコツ。それさえ芸にしたのが幇間(タイコモチ)

瞳は人間の心を洩らす。これを会話に生かすには、大事な話を聞くとき、相手の目を見て聞くこと

・会話は言葉だけでない。全身でするもの。それも相手だけではない、周りにふと見せる表情や姿のほうがものを言う

・話し上手は、つきつめれば心の優しさ、そして分け隔てをしないこと

・会話は、論理を伝える。音楽は、感情を伝えるだけでなく、相手の感情を興奮させたり、慰めたりする。会話と感情をうまく調和させることが、真の能力あるコーディネーター



1対1のコミュニケーションや1対多の一方向コミュニケーションのできる人は多いですが、1対多の双方向コミュニケーション(座をコーディネート)のできる人は、意外と少ないものです。

著者は、長年それをやられてきた方です。実践で培われた、そのノウハウが本書に詰まっています。本当のコミュニケーション上手になるために、読んでおいて損のない書ではないでしょうか。


[ 2013/11/27 07:00 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『ヤバいです!その金遣い』石原伸浩

ヤバイです!その金遣いヤバイです!その金遣い
(2011/10/21)
石原 伸浩

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著者は、1万件にのぼる「お金のトラブル」の相談を受けてきた弁護士です。

お金で失敗した人の、その平均的借金額やそれに陥った理由などが、具体的に示されている本です。お金の使い方について、反面教師になる点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



ギャンブルで相談に来る人の抱えている借金額はだいたい500万円前後。複数の消費者金融会社から借りている。ギャンブルにハマる人は執着心が強い性格の人。経済的にはまずまずの中堅会社に勤めている中流層。既婚者なら家庭がうまくいっていない人が多い

ホストクラブにハマって借金が膨らみ、債務整理の相談に来る人も多い。日常生活で味わえない優越感が楽しくてあっという間に借金を作る。若い20代の女性の借金額はだいたい200~300万円。それ以上貸すと回収できないリスクが高いと貸す方も警戒する

キャバクラにハマって相談に来る人は両極端。ガテン系で年収200~300万円の仕事をしていて、120~130万円の借金で来る人と、年収1000万円以上の30~40代の人で、最初は会社の接待だったのが、経費が落ちず、積もり積もって1000万円くらいの債務になる人

エステの多重債務で相談に来る女性(典型的なのは20代200~300万円の借金)が後を絶たない。ホストより多いという点で「浪費の女王」。施術費だけでなく、美顔器などを買わされて、借金が膨らむ。相談者は、エステに通う必要のない「太っていない」子が多い

・借金を抱えているのに、車を持っていて、そのローンも抱えている人が多い。普通の人なら真っ先にお金のかかる車を処分して返済に回すが、彼らは違う。経済的コンプレックスを持つ人は、いまだに高級車に乗ることが成功の証のように思い込んでいる

絵画や骨董で借金を作るのは中年女性と若い男性。中年女性は、自分には芸術を理解するセンスがあるという自意識で、150万円の絵を何枚も買ってしまう。若い男性は、30~50万円の絵を一回買った後、何度も勧誘されて、200万円ほどの借金を作ってしまう

借金を作る人の特徴は、「1.収入の範囲内で収められない」「2.周りによく思われたいという見栄が強い」「3.ストレス解消のために、本当はやりたくないけどやってしまう」

・債務整理の相談に来る人の中に、住宅ローンを抱えている人(身だしなみもきっちりしていて、ある程度の会社に勤め、収入もある人)が多い。そういう人たちの多くは頭金なしのフルローンを組んでしまっている。頭金は、最低3分の1は払うべき

・目の充血した人が相談に来ると、投資で借金を作ったとすぐわかる。投資で来る人は借金2000万円とかザラ。自信過剰でプライドが高く、ギャンブルする奴らは下賤で、頭のいい人は投資をやり、仕組みがわかっているから損することはないと思っている人が多い

宗教で多額の借金を抱えた人の通帳は、振込先の宛名に個人名がたくさん記載されている。宗教の会合や寄り合いでお金がどんどん出ていく。月収20~30万円ほどの人が、月に10万円以上平気で使っている。もう少し収入のある人は、教団に多額の寄付をしている

マルチ商法で相談に来るのは若い層、20~30代で負債額は300万円程度が多い。マルチにハマった動機は人を騙して楽して儲けたいというよりも、友達づくりから始まった人が多い。「絆」や「つながり」という言葉に弱い若者は、簡単にハマっていく

・債務整理の相談に来る人はほぼ皆、職を転々としている。自己破産申請をする際に、ここ10年の職歴を書く必要がある。その欄は6行しかないが、収まりきらずに別紙が必要になる人も少なくない。業界ではアパレルとITが多く、職種では圧倒的に営業職が多い

安易な起業の場合、負債額700~800万円という場合が多い。サラリーマンよりもっと稼げそうだから起業する人はいいが、組織の中で浮いてしまったから起業する人はうまくいかない。起業して5年以内に倒産する会社は80%、10年以内が95%。生き残りは厳しい

離婚は、前段階として別居を伴う。その間、家賃や生活費など二重の費用がかかる。愛人がいたら出費が一層かさむ。協議離婚の費用もバカにならない。離婚調停と裁判をやれば、弁護士費用が100万円ほど。さらに、男の場合、そこから慰謝料や養育費もかかる

子育てには金がかかる。よく相談に来るのが子だくさんの家庭の親。主人が相談に来る場合の借金額は400万円前後。離婚して女手一つで沢山の子を育てているお母さんの場合は200万円台が多い。子供手当があるとはいえ、子供が多いとやはり経済的にマイナス

・優柔不断、八方美人な人は名義貸し保証人になってしまいがち。断るところは断らなければだめ。人から頼まれたらうまく断れない人は、最初に「ごめん、無理」と言ってから理由を言うのがコツ。理由を先に言ったら議論になり、優柔不断の人は押されてしまう



お金を貯めるには、いっぱい稼ぐか、出費を抑えるかしかありません。いっぱい稼ぐには、才能や運もあり、万人に共通する成功ルールはないですが、出費を抑える、節約と浪費防止の方法はルール化できます。

本書には、浪費を防ぐ方法がいっぱい記載されています。借金を背負わないための教訓にもなる書です。


[ 2013/11/26 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(2)

『ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年』大澤武男

ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)
(2013/08/07)
大澤 武男

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本ブログの「ユダヤ本」分類で、ユダヤ人に関する書をとり上げるのは、これで22冊目になります。

本書は、ユダヤ人の教育がテーマです。ユダヤ人がユダヤ人たる原点と言えるべきものが教育です。興味深い点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・ユダヤ民族の最も古く、重要で、聖なる史料「旧約聖書」には、子弟の教育の大切さと、人生の命の糧としての知恵と教養が繰り返し、教訓として語られている

・ユダヤ人の自信と伝統を大きく支える特徴は、自己批判精神にすぐれていること。事象や己自身を神の眼で客観的、批判的に考察、反省し、正そうとする態度。このユダヤ教精神こそ、ユダヤ人の学問、学術研究における大きな成果の根源になっている

・優秀な生徒とは、すぐれた質問や疑問を持ち出し、教師を利口にする子供

・ユダヤ人地区(ゲットー)への略奪は、単に借金の証文を奪い取って、焼き捨てたり、質入れ品を取り返すだけでなく、ユダヤ人所有の金品を強奪する機会となった

・放浪のユダヤ人が身につけた生活の知恵は「行商」。店を構えての商売が許されなかったユダヤ人は、質流れ品(衣類、貴金属、鍋釜、工具等)を田舎へ持って行って売りさばき、田舎の産物、穀物、野菜等を仕入れ、都市へ持ち帰り、路上や戸口訪問で売りさばいた

・ユダヤ人は「調達」や「仲介」という仕事に極めて優れ、その能力や条件を備えている

・ユダヤ人特有の、貨幣の改造再鋳造という仕事は、ユダヤ人が率先して携わったのではなく、資金に困った領主からの要望によるもの。その片棒を担がされたのがユダヤ人

・キリスト教会の政治的勝利の下、罪深い流浪の民のレッテルを貼られたユダヤ人は、差別、規制、侮り、隔離、迫害、虐殺、略奪、追放、搾取、罪の捏造に耐えて生きなければならなかった。そのため、処世術、知恵、知識、賢明さ、判断、行動力を常に必要とした

・ユダヤ人は、過去の体験から「物事を抽象化して考察すること」「なぜと問うこと」「じっくり考えること」を学び、聖典を共に読み、「対立見解を議論する」という学習方法を実践し、それらを自分たちの伝統とした

・ユダヤ人の生徒は、男女共に、「学習成績の優秀さ」とは対照的に、評価のところで、「勤勉さ」や「学習態度」は普通。しかも、「生意気」「早熟」と書き込まれた

・ユダヤ人のノーベル賞受賞者数185名(全体の20%)は、日本人の10倍。人口比で見ると、日本人の100倍以上

・「自己実現(個の独立)への努力という態度は、ユダヤ民族がその宿命的な伝統として受け継いだ根本思想である」(アインシュタイン)

・ユダヤ的学習指導方法の特徴の第一は、不動の律法トーラーをそのまま声に出して、復唱、暗唱して完璧に学ぶこと。第二は、伝承のタルムードを学ぶ時は、鵜呑みにすることなく、質問、疑問を提示して、議論を重ね、その時々にふさわしい律法の適用を学ぶこと

・教育とは教師と生徒との対話が前提であり、両者の対話が親密であるほど、理想的な教育がなされる

・日本の子供は、行動が早く、てきぱきと物事を処理する。ユダヤ人の子供は、おっとりしていて行動が遅く、戸惑いがち。なぜなら、日本の子供は、何をどんな手順ですべきかを教えられており、ユダヤ人の子供は自分で考え、行動するように仕向けられているから

・20世紀初め、ユダヤ人が多かったベルリンでは、ユダヤ人の収入は、キリスト教徒市民の5倍だった。また、フランクフルトのユダヤ人の平均納税額は、一般市民の5倍だった

・「学校のないところに住んではいけない」というタルムードの教えを待つまでもなく、ユダヤ市民の高等教育進学率は、キリスト教徒市民の数倍(ベルリンでは8倍)であった

・反ユダヤ主義の根源には、彼らの優れた教育、教養、知恵、学識に先を越されたという、ドイツ人インテリの嫉妬、不愉快があった。その気運がヒトラー・ナチスの狂気を許した

・不安定な移動の民として、農耕生活から締め出されたユダヤ人は、得意とする商取引の中心地である都市の住民となったが、そこでも職人仲間から締め出されたため、知恵と巧妙さを駆使して稼ぐ、金融、両替、商取引を生業とすることになった


ユダヤ人がなぜ勉強をしてきたのか、なぜ最適な教育方法を考えてきたのか、本書を読むと、よくわかります。それは、現代の世界を生き延びる知恵でもあります。

ユダヤ人のような教育を受けた子供は、自立心の強い、打たれ強い人として、多民族の世界を堂々と渡っていけるのではないでしょうか。


[ 2013/11/25 07:00 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『火の誓い』河井寛次郎

火の誓い (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)火の誓い (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
(1996/06/10)
河井 寛次郎、壽岳 文章 他

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先月、京都の河井寛次郎記念館へ行ってきました。作品の数々、住居、仕事場、登り窯など、当時のまま残されており、その生前の生きざまを肌で感じることができました。

この本は、そこで買いました。陶芸家としてだけでなく、造形作家詩人随筆家としても活躍された足跡を知ることができます。その一部を要約して、紹介させていただきます。


<棟方志功君とその仕事>

・君はこれ迄の仏画から出発したのではなくて、君から新しい仏画が出発したのだから仕方がない。これ迄の立派な仏画に宿るものが形を変えて君の絵に籠っているのだから仕方がない

・人は誰でも素晴らしいものをもつにも拘わらず出さないものだ。出せば出る。君は今それを出して来た。君の絵の前に立って、その出したものは何かと考える。さらけ出された君の本然のものの前に立って思う。本能とは、公明な私なき働き、ではないかと思われる

・君は人間の着物を剥ぐどころか、身ぐるみとっていく強盗だ。魂だけ残していく強盗だ。君のような強盗が出て来ないと、人間は一番大切なものに気が附かないのだ

<いのちの窓>

祈らない祈り、仕事は祈り

・誰が動いているのだこれこの手、動かせば何か出て来る、身体動かす

まっすぐなものしかまがれない。まがったものしかまっすぐになれない

・怒りとは、怒らないものの上に出来たおでき。悲しみとは、悲しまないものの上に出来たかび

・何もない、見ればある。ないものはない、見るだけしかない

見ないのに見ている。持たないのに持っている。行かないのに行っている

向こうの自分が呼んでいる自分。知らない自分が待っている自分。何処かにいるのだ未だ見ぬ自分

・この世は自分をさがしに来たところ。この世は自分を見に来たところ。どんな自分が見付かるか自分。どこかに自分がいるのだ、出て歩く。新しい自分が見たいのだ、仕事する

仕事が仕事をしています。仕事は毎日元気です。出来ない事のない仕事。どんな事でも仕事はします。いやな事でも進んでします。進む事しか知らない仕事。びっくりする程力出す。知らない事のない仕事。聞けば何でも教えます。頼めば何でもはたします

・美はすべての人を愛している。美はすべての人に愛されたがっている。美はすべての人のものになりたがっている

追えば逃げる美。追わねば追う美。美を追わない仕事。仕事の後から追って来る美

・ひとりの仕事でありながら、ひとりの仕事でない仕事

・自分でない自分、第二の自分。人は二つの自分を持つ。にも拘わらず、第一の自分しか認めようとはしない。二つなんか持っていないと思っている。にも拘わらず、二つを持つ。自分だと思っている自分と、自分でない自分とを

・時にいない人、処にいない人、時と処にいない人。ない時にない処にいない人がいる。そういう人がいる。確かにいる。誰の中にもいる。ない自分を掴まえているない自分

・道を歩かない人、歩いたあとが道になる人。時は場所へ、人という場所へつねに新しい土地を与える。昨日で今日を拓く事は出来ない。嘗て耕された事のない地面に人はいつも立っている。はてしない土地、新しい世界、身体

・葉っぱは虫に食われ、虫が葉っぱを食っているにも拘わらず、虫は葉っぱに養われ、葉っぱは虫を養っている

・模様は人にだけしか作れない精神なのだ。模様は人にだけしか持てない悲願なのだ。模様の国という国は、あらゆるものが愛と美とをしか出せない処。汚れたものや、醜いものは一切出せない処。すべてのものが幸福にしかなれない処。そういう此処は第二の世界



自分を見ている自分、自分の中にいる自分、自分が自由自在に、時空を駆け巡っているように感じる詩を書かれたのは、河井寛次郎さんが本物の芸術家だったからだと思います。

最初に棟方志功を発見したのも、河井寛次郎さんの心眼のなせる技だったのではないでしょうか。


[ 2013/11/24 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『チャーチル150の言葉』

チャーチル150の言葉チャーチル150の言葉
(2013/05/16)
不明

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チャーチルは、第二次世界大戦開戦当時、イギリスの海軍大臣を務め、後に首相となって、イギリスを戦勝国に導きました。また、別の顔として、1953年にノーベル文学賞を受賞しています。

政治家であり作家であったチャーチルには、さまざまな名言が残されています。それらを150にまとめたのが本書です。意味深な言葉が数多く載せられています。それらの一部を要約して紹介させていただきます。



・決してあきらめてはならない。決して、決して、決して。事の大小にかかわらず、人生の大事であれ些事であれ、決してあきらめるな

・確実な勝機を見逃してはならない。目の前の戦いが血を流すことなく、簡単に勝つことができるにもかかわらず、もし戦わないというならば、生き残るのが難しい状況で、いつか戦わなくてはならない日が来るだろう

・今立っている場所の両側に断崖絶壁があるとしよう。一方は「慎重過ぎる」という断崖。反対には「大胆過ぎる」という断崖だ

・多数派の意見が癌を治すわけではない。必要なのは治療だ

・われわれの将来は自らの手の中にある。われわれの選択したものによって、人生は作られるのだから

・長い人生では状況は移り変わる。その中で首尾一貫した態度を貫く唯一の方法は、常に不動の人生の目的を持ち、それ以外は状況に合わせる柔軟性が重要だ

・一生起こらない物事を先回りして心配し、心配することで人生を費やしてしまうほど、無駄なことはない

・人生は謎解きゲームだ。死ぬ時にその答えがわかる

・唯一、味方同士で争うより悪いことがある。それは味方無しに孤立無援で戦うことだ

・国家の強靭さとその文明は、建築現場で足場を組むように出来上がるものではない。その成長はむしろ植物や樹木の生長に近い。育てることに比べたら、木を切り倒すことはひどく容易なものだ。だからこそ次の木を植える前に、誰もその木を切り倒してはならない

勇気とは立ち上がり、発言すること。また同時に、着席し、耳を傾けることも勇気である

・苦い薬を飲み干す方法はただ一つ。一気に飲み干すしかない

・金は機嫌をとるための賄賂として使うこともできるし、結果を出すための「テコの原理」のテコとして使うこともできる。テコとして使った場合は、大きなものを小さな力で動かすことができる。支点、力点、作用点がどこにあるかをよく考えて金を使おう

外交とは、相手の感情を損ねることなく、明白な真実を伝える特殊な技術のこと

・どんな逆境にあっても、良心を持とう。唯一、良心こそが自分を守る盾となる。人々の心ない中傷から守る盾となるのは、自らの良心に基づいた、清廉潔白で公正な行動なのだから

・すべての叡智は新しいものではない。先人から学んだもの

・理想の姿なくして人間は進歩できない。だが、他人の犠牲の上に成り立つ理想主義は、最高の思想となることなどあり得ない

・人々の憤りを喚起できるのは、自分の心が真の怒りに満ちている時だけだ。人々に涙を流させるには、自分も心から涙を流さなくてはならない。人を説得するには、自分がその事実を徹頭徹尾、信じていなければならない。真実の感情だけが人の気持ちを動かすのだ

・深淵で豊かな知識なくしては、想像力は危険な罠に過ぎない

・貧困という代償を払って平等をとるのか、不平等の代償として繁栄をとるのか、どちらが良い選択だというのか

・若い時には自由と改革、中年には思慮分別のある妥協、老年期には安定と休息がもたらされる


チャーチルは前向きで、我慢強い人です。その性格がもたらされたのは、希望や目標があったからではないでしょうか。

しかも、希望や目標に向かって、知性や知恵を積み重ねていくことで、その性格を強固にしていったのかもしれません。本書は、チャーチルを簡潔に知ることができる書です。


[ 2013/11/22 07:53 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)