とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『商いの心くばり』伊藤雅俊

商いの心くばり (講談社文庫)商いの心くばり (講談社文庫)
(1987/03)
伊藤 雅俊

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イトーヨーカドー・グループ名誉会長である著者の本を紹介するのは、「商いの道」に次いで2冊目です。

本書は、著者が感じたことを社内配布の小冊子にまとめたものです。今から、25年以上前の本ですが、商売の基本に古きも新しきも関係ありません。勉強になることばかりです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



人間は好みに滅ぶ。女好きの人は女で失敗するし、お金にばかり執着する人はお金で滅び、商売好きな人は、商売に気をつけなければならない

・とかく人間は、慣れてくると、態度がラフになりがち。そういう態度から失う信用は、操作上のミスよりも、はるかに始末が悪い

品質がよい、価格が妥当、サービスがよい、これらのことを忘れると、商売は基本的に狂ってくる。商売とは厳しいもの

・商品は売れないのが当たり前、お客様は来てくださらないのが当たり前。まず、ここから出発しなければならない

・会社が大きくなると、問題点がわからなくなる。商売をする人にとって一番大切な「利益よりも信用」という基本が、忘れられてしまう

・会社でも個人でも同じ。商売は自分の力だけで成り立っていると考えたら、必ず腐敗し、お客様や取引先を粗末にして、信用を失い、自ら滅んでいくに違いない

・誠実とは、「嘘のない行為であり、責任をもった行為」である

・広告宣伝に偽りがないから、お客様が信用してくださり、お客様が信用してくださるから、店が繁盛する。嘘のない仕事をするから、同僚、上司から仕事をまかされ、それに応えるから、ますますまかされ、昇進する。これが信頼関係

・新しい傾向を、いつ取り入れるのか、これがタイミング。「早すぎるバカ、遅すぎるバカ」で、早すぎてもだめ、遅すぎてもだめ

・変化に対応する戦略を考える上で大切なのは、やはり、店員自身がほしいと思う商品を揃えること。社員が自店の商品を本当にほしいと思って、買うようでなければだめ

・節約やコストダウンのことばかり考えていてはだめ。マネジメントというものは、会社の中の問題。けれども、利益というものは、必ず外部にある

・商売で成功している人には、意外に無器用な人が多い。利にさといとか才覚がある人は、かえって商売がうまくいかない。才覚のある人は、だいたい相場をやる。しかし、それに走ったら、商売がだめになる

・本田宗一郎さんが「お金など、そんなに難しいものではない。約束した日に支払えば、お金はいくらでも集まってくるものだ」と、うまいことをおっしゃっていた

・小売業は、案外、場所の悪いところでやっている人が成功する。いい場所にいる人は、おうおうにして道楽してしまう。その上、これまでいい場所にいた人は、どこかへ新しい店を出すのがこわくなる。恵まれた場所で豊かになると、保守的になってしまう

・小売業から商売を始めた人は、何をしてもうまくいく。これは、お客様から出発しているため。大企業の人が中小企業に来て育つことは少ない

・世の中でも、会社でもそうだが、自分で判断がつかなくなると、人に答えを求めるようになる。そういう時代に、英雄待望論が出てくる

人材とは何か。それは「責任を持つ人のこと」。言い換えれば、泥をかぶれる人のこと

他人様が持ってきてくれた仕事のほうが、自分の能力で考えた仕事より、はるかに大きい。だから、いろいろな人の引力に引っ張られて、自分が存在するのだと感じている

・官僚的になった人は、非常にうまい言葉でいろいろなことを言うが、一人称ではなく、三人称で言うのが特徴。三人称でものを言う人は不必要であり、一人称でものを言う人こそ、必要な人材である

・子供に限らず、人間は冒険心をもったときには、いきいきとしている。会社も、社員が冒険心をもったときには、いきいきとしている



会社が大きくなっていく過程では、技術力の向上よりも、社員の人間力の向上のほうが重要です。人間力の要素を、堂々と日々言えるリーダーがいるかどうかで、会社の将来が決まってくるようにも思います。

大企業では、著者のような言葉を直接聞くことは少ないのかもしれません。自分を奮い立たせる意味において、本書のような自叙伝は、その助けになるのではないでしょうか。


[ 2013/09/30 07:00 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『壁を破る言葉』岡本太郎

壁を破る言葉壁を破る言葉
(2005/04/01)
岡本 太郎

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著者の本を紹介するのは、「日本の伝統」に次ぎ2冊目です。著者はは芸術家として有名ですが、フランス留学時代、哲学者と交流を深めており、思想家、文筆家としての顔も持ちます。

人や事象を見る目は鋭く、文章も上手で、含蓄のある言葉を数多く残しています。本書は、その中から、勇気づけられる言葉を集め、編集したものです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人間というものは、とかく自分の持っていないものに制約されて、自分のあるがままのものを疎かにし、卑下することによって、不自由になっている

・自分の姿のありのまま直視する。それは強さだ

・苦労した作品より、ひとりでにどんどん進んでしまったもののほうが、いつでもいい

・芸術はきれいであってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいけない。それが根本原則だ

・人に理解されたり、喜ばれようなんて思うな。むしろ認められないことを前提として、自分を猛烈に突き出すんだ

・いつも危険だと思うほうに自分を賭ける。それが生き甲斐だ

・人間の生活は矛盾だらけだ。それに耐え、そのマイナス面をプラスの面に転化していくこと。それが創ることなんだ

昨日すでにやったこと、人のやったことと同じようなことをやるのでは、まったく意味がない

・ぼくは、いつも自分が純粋に感じたこと、考えたことを、理解されようがされまいが、ダイレクトにぶつける

・他人のものはもちろん、たとえ自分の仕事でも、なぞってはならない

・芸術は呪術である。その呪力は無償のコミュニケーションとして放射される。無償でなければ呪力を持たない

・人が「あらいいわねえ」なんて言うのは、「どうでもいいわね」と言っているのと同じなんだ

・孤独であって、充実している。そういうのが人間だ

・いつも自分自身を脱皮し、固定しない。そういう人は、常に青春を保っている

・すべてが常に移りかわり、興亡する。歴史は新しい価値を不断につくり、それを壊しながら、また、つくっていく

・不動のものが価値だというのは、自分を守りたい本能からくる錯覚にすぎない。破壊こそ創造の母

・チームを作ったり、コンビで何かをやるときは、遠慮したり、内にこもらず、面白くぶつかりあうことが大事だ。ぶつかりあうことが面白いと思ってお互いをぶつけあう。そうすれば逆に生きてくる

・昔の夢に寄りかかったり、くよくよすることは、現在を侮辱し、おのれを貧困化することにしかならない

・この瞬間瞬間に、若さとか、年よりとか、力があるないとか、才能とか、金とか、あらゆる条件を超えて、その持てるぎりぎりいっぱいの容量で挑み、生きるんだ

・勝とうが負けようがどっちでもいい。ただ、完全燃焼、全力をつくす。ぼくは、そういう主義を貫いている

人間の運命というものは、99.9%が成功しない。成功者でないほうが、より人間的な運命だ

・人間は精神が拡がるときと、閉じこもるときが必ずある。強烈に閉じこもりがちな人ほど、逆に拡がるときがくる



本書には、人生を闘ってきた著者の信念と決意表明のようなものを感じます。

自己を奮い立たせて、一歩踏み出そうとするとき、その背中を押してくれる言葉が満載です。人生のお守りになる本ではないでしょうか。


[ 2013/09/29 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『猫のように生きる: からだで感じる生きかた指南』板橋興宗

猫のように生きる: からだで感じる生きかた指南猫のように生きる: からだで感じる生きかた指南
(2013/03/07)
板橋興宗

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著者の本を紹介するのは、「息身佛」に次ぎ2冊目です。著者は、曹洞宗の管長という大役を務められた後、福井県で禅寺を興し、修行僧30人、猫80匹とともに、暮らしています。

本書は、猫好きで知られる住職が、猫のように「からだで感じる」生き方を指南したものです。非常にわかりやすい言葉なので、少々戸惑ってしまうほどです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・みんなで一緒にやるから修行できる。一人では節制できない。規則正しい修行生活を送っていると、自分に締りがでてくる。そして、身心ともに健康であることを、直に感じる

・修行をすると、言葉を離れて、からだがわかっている生活に戻る。修行というものは、どんな種類のことでもそうなる

・その時、その時の「今」に目を向ける努力。それが私の修行。私にとっての修行の目標は「実感

・坐禅をすると、脳の中が無重力の状態になる。宇宙船の中では、何の抵抗もなくサーッとモノが動いていく。人間の頭も、執着がなければ無重力の状態になる

・言葉で考えるのではなく「からだがわかる」生き方が、坐禅の真髄

・坐禅をしていると、いい知恵が出る。大切なことを決定するときなど、坐禅をするといい。毎日続けていると、自然に普通の人とはどこか違ってくる

・どこに石があるのか、足を取られる深みがあるかわからない川を渡るのに、おどおどしながら渡る人もあれば、遠くに見える光を信じ切って「あそこに輝くものがある」と足元を気にせず歩いて行く人もある。それが信仰というもの

・禅の方法は「深みがあって転んだら、転んでもいいじゃないか」と、取り越し苦労をしないで、前向きに歩くというもの

・解脱(悟り)とは、「このままでよかったのだ」と気づくこと。頭で考えて理解することでもなく、単なる納得でもない。ああ、このままでよかったのだという「気づき」

・猫には言葉がない。「にゃー」「にゃお?」と、気分がそのまま声に現れているだけ。人間は言葉で考えるから、「明日はどうなるのか」「あの人は何を考えているのか」「ほかの人に比べて」と、悩んだり喜んだりする。まるで、頭の中で、小説や映画を描いている

・「言葉の極致」は、言葉を使わずに「からだがわかる」ことにある。言葉を使うよりも「からだがわかっている」のが実感であり事実

・猫は、魚を食べてお腹がいっぱいになれば、どこかへ行ってしまう。また同じ場所に置いてあれば、また食べに来る。ただそれだけ。人間は「残しておけば誰かが食べてしまう」と推測する。人は考えて悩み、苦しみ、争い、果ては戦争までやってしまう

・我々は、変わりゆくものに個人的な情を入れてしまう。執着することさえなくせば、恐れることのない「自由自在の境地」になれる

・猫には言葉がないから、餌のために争うことがあっても、その時、その場だけの争い。相手の油断を狙って襲いかかる考えや計画性はない。「煩悩は言葉がつくる

・とにかく、グチグチと考えるくせを少なくすること。それには、自分のやりたいこと、好きなことに目を向けて、努力するのが一番賢明な生き方。そのために、坐禅や読経などの修行がある

質素な生活ほど精神性を深める。再び、良寛さんや二宮尊徳のような質素な暮らしが重んじられる時代がやってくる。それが日本人の底力

・「生ぜしも独りなり、死するも独りなり、されば人と共に住すも独りなり」(一遍上人)

・優しい言葉には動物も従う

・この世には雑用という用は一つもない

垣根は相手がつくっているものではない。自分がつくっている

・智は愚を責めず



著者は、観念の世界よりも、「からだ」の感性に重きをおいて生きることが、生きることの極意であると説かれています。

坐禅を含めた修行というのは、人間の心にこびりついた言葉の垢や汚れをとるためのものかもしれません。絶えず、心の中をクリーンにしておくことが大切なのだと思います。


[ 2013/09/27 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『人間、このタガの外れた生き物』池田清彦

人間、このタガの外れた生き物 (ベスト新書)人間、このタガの外れた生き物 (ベスト新書)
(2013/05/09)
池田 清彦

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著者の本を紹介するのは、「正しく生きるとはどういうことか」「楽しく生きるのに努力はいらない」「他人と深く関わらずに生きるには」に次ぎ4冊目になります。過去3冊は、人間学的な本でしたが、本書は著者の専門である生物学的な部分が多い本です。

生物学者の顔を持ち、生物・生態学から人間を観察するという視点は、本書にも、如何なく発揮されているように思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「人間が戦争を始めたのは言語があるせいだ。言語と家族愛と農耕が、戦争の3つの原因」(山極寿一)

・今まで住んでいた所のほうが、餌のありかも狩りの場所もわかるし、住みいいに決まっている。にもかかわらず、どこかへ行くという危険をあえて冒すというのは、好奇心。「好奇心のある人」「命を賭けて危険なことをする人」がいたお陰で、人類は世界を席巻した

・野生動物が家畜になると繁殖期が年がら年中になるのは、人間に馴致されて、餌がいつでもあるから。野生動物としての本来持っている性質を失って、だんだん人間に似てくる

・病気というのは、生物を絶滅させる大きな原因。ニホンオオカミが絶滅したのも犬のジステンバーのせい。東インド諸島の風土病の梅毒、アフリカの風土病のエイズもあっという間に世界に広がった。しかし、遺伝的多様性が高いと、集団全体が絶滅する確率は低い

・嫉妬というのは、もともと人間が持っている本能的な性質ではない。女と男のエッチの奪い合いと関係している

・ニホンザルは、政権交代する時に、メスに気に入られないと、なかなかボスの座に就けない。動物の場合、メスがその気にならないと交尾は絶対にできない

・人類は最初50人ぐらいの小さな集団をつくって暮らしていた。ただ、その中で遺伝子の交換をやっていると、近親相姦になる。部族と部族が、嫁を交換するというのは、遺伝子交換システムと社会の秩序形成にとっても重大なことであった

・人間は一番力の強い者が勝つということにはなっていない。ものすごいコミュニケーションをして、権謀術策を握ったほうが勝つようになっている

・エネルギーがすごく高くなると、賃金の安いところで製品をつくっても、輸送費にものすごい金がかかる。そうなると、「地産地消」にならざるを得なくなって、経済は縮小する

・今やアメリカだけが鎖国に耐えられる国。食糧自給率が130%、エネルギーも現在は75%ぐらいだが、シェールガス・オイルが出て、近未来にはエネルギー自給率が100%を超える

・自国にエネルギーがないのに、戦争をやったら負けるに決まっている。エネルギーを自給できるようになれば、別によその国に何を言われたってほっとけばいい

・エネルギーの分布と、エネルギーのと、エネルギーの調達が、すべての世界戦略に関係していて、この世界はみんな、結局はエネルギーによって決められている

・人間には、ネポティズム(身びいき)という生得的な性質がある。社会主義が破綻したのも、「みんなで分かち合えば、みんなが幸せになれる」のが、結局は、自分の家族や自分の近隣を大事にしたから。大きな組織で社会主義みたいなことをやるのは無理がある

・そもそも人類は50人程度の集団で長い間暮らしてきたわけで、ムチャクチャでかい集団を、博愛とか平等とかで、管理していくというのは無理

家畜化した動物は、みんな長生きする。人間化する。野生の雀は2年ぐらいしか生きないが、飼うと10年くらい生きている。猫も人間が飼うと長生きする

・グローバリズムというのは、この世の最終権力を国民国家から多国籍企業に委譲すること。グローバリゼーションがなくならない限り、景気がよくても、増えるのは非正規労働者ばかり。それに対処するためには、「1.鎖国する」「2.外国に行ってしまう」こと

・うんと自信がある子は、いじめられても気にしないから、いじめられない。独りでも平気、友達なんかいなくても平気という人間は、いじめようがない

・自分の現在あるお金、見合ったお金で何をして遊ぶかということ。高級車を買ったり、外国旅行に行ったりはできなくても、それなりに楽しいことはいくらでもある

・男性ホルモンがたくさん出る人は、一時的に元気だけど、老化が進む。去勢したオス(哺乳類)は長生きする。中国の宦官の寿命は、普通の男の人より長かった



本書には、生物学的知識と人間行動学を融合した雑学が数多く載せられています。

どうでもいいことも多いですが、ハッとさせられることや、日ごろの行動を反省させられることも、少なからずあります。軽い気持ちで読むのには、面白い本ではないでしょうか。


[ 2013/09/26 07:00 ] 池田清彦・本 | TB(0) | CM(0)

『軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか?』溜池ゴロー

軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか? (双葉新書)軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか? (双葉新書)
(2013/05/15)
溜池 ゴロー

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著者は、映画監督ですが、熟女系の映画を得意とされています。本書には、現代の人妻の心理が見事に記されているように感じました。少しエロチックな表現もありましたが、あえてブログに採り上げさせていただきました。

どの職場にも、人妻(既婚女性)が働いています。彼女たちの心理、習性を知っておくことは重要です。特に大事だと思ったことを要約して、その一部を紹介させていただきます。



・ダンナが仕事で出かけている間、「1.自分の自由に使える軽自動車に乗って」「2.携帯サイトやネットで連絡を取った相手と」「3.郊外ロードサイドのファミリーレストランで落ち合って」「4.街道沿いのホテルで」人妻たちは不倫を楽しんでいる場合が多い

・不倫の三種の神器(軽自動車、ファミリーレストラン、ラブホテル)をサポートする、もう一つのインフラに、大型ショッピングセンターがある

・ファミレスは明るくてオープンな造り。だから逆に、男女二人が座っていても、不倫カップルとは思われにくい

・人妻が不倫に走る理由は大きく分けて3つ。「夫が不倫している」「子供が大きくなり、割と自由な時間がある」「誰からも女性として見てもらえなくなった」。この三つが重なったとき、それまで守ってきた「妻であり、母である」という囲いを飛び越えてしまう

・人妻が、リアルの世界で直接会ってもいいと判断するポイントは、会話で波長が合うのは当然として、「常識のある人」だから

・人妻で「若い男性が好き」というケースはほとんどなく、「大人の男性」を好む。その「大人」というのは、「自分の生活に土足で踏み込まない人」という意味が含まれている

・人妻に選ばれる男性のタイプは「都合のいい男」。好きなときに相手をしてくれて、家庭を壊そうとしないで、女の身勝手に対してもやわらかく受け流すようなタイプの男性

・男性が熟女を好きになるのは、大人の女性だからこそ持っている、重ねた人生経験による心の広さみたいなものに癒されるから

・人妻ではなく、一人の女性として接してほしいと望んでいる。そのことを踏まえた上で、相手の持つ自然な色気をホメてあげること

・人妻は、自分に興味を持ってくれているな、と確信できた男性にしか向かっていかない。なぜなら、若いときとは違い、男性を振り向かそうという時間もエネルギーもないから

・どんな人妻にも、忙しい日常で放り去られたり、心の奥にしまい込んだ「女性」の部分が必ずある。「自分に興味を持っているから、好みを知りたがるのね」と思わせるだけでいい。そうすれば、好感度は上がっていく

・人妻は自分のことを「賞味期限が切れたもの」と思い込みがち。そのデリケートな部分をすくい取って、評価してあげればいい

・常に疑問形で女性に尋ねるクセはモテに欠かせない。気遣いの配慮を入れ込んだ疑問形の言葉をかけて、「大丈夫よ」という反応を得られたら、心を開き始めたも同然

・「させていただく」という、へりくだる気持ちを忘れてはいけない。初めから「させてもらえない」ことを前提に接していくべき

・何度断られても、肩すかしをくらっても、常に相手に「大義名分」を与えてあげること。そうすれば「ここまで頼まれたら仕方がない」と、あなたの想いに妥協する形で、応じてくれる

・自分を口説くために、エネルギーや情熱を惜しみなく使ってくれて、さわやかにへりくだる。さらに、たとえおカネを持ち、誇れる肩書きを背負っていようが、すべてを見せずに接してくれる男は、知らない世界へ連れ出してくれる王子様

・「嫌いな男性のタイプ」は、すべての女性に共通していることだが、それは「不潔」「ウジウジ」「不自然(威勢を張る)」の三つの要素

・あなた自身が自己開示して、自分の情報を伝える。そして、相手から情報を引き出して、好みや興味のあることを探る。さらに、相手から聞き出した情報に乗っかって話題を広げる。これを繰り返せば、距離も近づき、好意を抱かれるようになる



本書は、ホストクラブのテクニック集のような感じでもありますが、既婚女性の習性みたいなものと喜びそうなことが書かれているように思いました。

人妻の気持ちがわかり、上手に扱うことができれば、こんなに心強いことはないのではないでしょうか。


[ 2013/09/25 07:00 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『しばられてみる生き方―軍隊式・超ストレスコントロール術』下園壮太

しばられてみる生き方――軍隊式・超ストレスコントロール術 (講談社プラスアルファ新書)しばられてみる生き方――軍隊式・超ストレスコントロール術 (講談社プラスアルファ新書)
(2009/10/21)
下園 壮太

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著者は、陸上自衛隊メンタルヘルス教官です。自衛隊員のカウンセリングにもあたっている方です。主な研究テーマは「軍隊組織が兵士に及ぼすストレスの関係」です。

本書には、兵士がストレスに屈せず、力を発揮するために必要なことが記されています。日本の企業組織における社員とストレスの関係も軍隊に似たようなものを感じます。参考にすべきことが非常に多いと感じました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・ストレスとは、「不快感情の苦」と「エネルギー苦」の総合体。「不快感情の苦」とは、痛さ、不安、恐怖、焦りなどの苦しみであり、自分を襲う対象から距離をとるための感情。「エネルギー苦」とは、飢え、渇き、疲労、睡眠不足などの苦しみ

・不安は常にシミュレーションを要求する。情報を求め、相手などの動きを絡めながら、最悪のケースをシミュレーションする。いくつかのシミュレーションを比較し、十分な対策を立てなければ、不安は治まらない。これにはかなりのエネルギーを使ってしまう

・「もっと自由を!」と、ないものねだりして、不快感情を発動させ、エネルギーを消耗するか、「これくらいのプチ束縛感が、健康に良い」と受け入れ、エネルギーを節約するか。自由が足りないと思ったら、今は「自由太りをダイエットしている」と思い直すこと

・軍隊では、反復演練で、規律を体に覚え込ませる。回数をこなし、習うより慣れる。「40回400回の原則」とは、深刻な体験なら40回、そうでない体験でも400回も経験すれば、体が覚えて、自然に行動できるようになるという原則

・旺盛な責任感には欠点もある。責任感がある人とは、通常「結果」を気にする人。結果に関わると思うからこそ、仕事を一生懸命やり、分析や決断について、自分が正しいと思うことを強く主張する。このことが、軍隊という組織にとってマイナスに働くことがある

・軍隊は敵と戦っていおり、時間との勝負。もし軍隊が強い責任感を持つ人ばかりで構成されているなら、組織の決断に、かなりの時間が必要で、決まったことに従わない人も出る。そのような軍隊では、一枚岩になれないし、必要なタイミングにも間に合わない

・重要な決定では、誰が決める、どうやって決める、誰がやる、誰が従う、などの「決定の手続き」に大きなエネルギーを使う。お互いの命がかかっているため、腹を探り合い、人間関係も壊れ、疲労困憊する。これでは、戦う前に味方同士の人間関係で潰れてしまう

・自分が正しいと思う意見を、議論の結果、納めなければならないとき、自尊心が邪魔をする。そんなとき、階級があれば、あきらめもつきやすい。自分の意見が劣っていたからではなく、階級の高い人の案を採用するという「決まり」に従ったまでだ、と思えばいい

・組織はリーダーシップだけではうまくいかない。従うことが上手にできないと、組織力は低下する。組織が大きくなればなるほど、この傾向は強くなる。軍隊組織の生活の中で身に着くのはフォロアーシップ。理不尽さに対するある種の鈍感さを学べる

・戦争を初めとした悲惨な出来事は、人類の歴史以前から存在した。その苦しみに、人は宗教の力を借りて対処してきた。宗教は、自責を扱ったものが多い。例えば、キリスト教では、過剰な責任の苦しみを、神と折半する道を提示してくれる

・結果が悪かったときに、それを神に肩代わりしてもらう習慣もなく、すべて自分が悪いと考えると、自分を責め、自信を失い、社会から距離をとるようになる。過剰に太りやすい責任感(自責の念)をいかにコントロールするかは、現代人にとって大きなテーマ

・儀式によって、ストレスコントロールできる。カウンセリングでも、儀式的要素(忘れられない嫌な思い出を紙に書き、灰皿の上で燃やす「思い出のお葬式」)を使うこともある

・目標に必要な要件は、「1.意味があること」「2.具体的であること」「3.達成可能であること」。国防という任務を与えられた自衛隊員が、訓練を通じて自分の技量を伸ばすことは意味のあること。だから、隊員は訓練することが好き。訓練は隊員を元気にする

・自衛隊では、各訓練の到達基準以外にも、免許検定、検閲、各種試験競技会など隊員の目標となるものを設けている。それでよい成績を上げたものは、表彰される

・堅実な自信を作り上げるには、「1.体力を鍛える」「2.生活の基本的スキルを身につける」「3.人のためになることをする(その結果、お金が稼げればもっといい)」こと。人のためになったとき、本当の自信が持てる。そして、人生のストレスが大きく低下する

・ついたくさんのことを教えたくなる。それは一番ダメな教育。「教えたいことは、一つに絞れ」で、何度も強調しながら訓練すると、どんな隊員でも次第にそれができるようになる。つまり、自分に自信がついてくる



日本人の自信のなさを蘇らせ、ストレスを緩和する方法が、本書に記されていました。

自由行動ばかりでは疲れるし、しばられてばかりだと息苦しいものです。その中間の「少々しばられるくらい」が生きていくにはちょうどいいくらいです。本書には、「上手なしばられ方」によって、ストレスを緩和する道が示されているのではないでしょうか。


[ 2013/09/24 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』間川清

気づかれずに相手を操る交渉の寝技気づかれずに相手を操る交渉の寝技
(2012/11/22)
間川清

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著者は、弁護士として、数々のもめ事を解決されてきた方です。その経験をもとに、交渉をスムーズに行う技術をまとめたのが本書です。

しかし、本書には、真正面からの交渉法ではなく、知らず知らずのうちに人を動かす、秘策のような交渉法が書かれています。それだけに、読んでいて新鮮でした。ためになった箇所を要約して、紹介させていただきます。


・交渉は「相手と勝負して、どれだけ多くのモノを手に入れるかの戦い」という考え方では、柔軟な思考ができず、すべてのモノを手に入れようとする結果、相手の反発を招く。、また、「交渉は戦い」と思うと、交渉している自分、戦っている自分に酔ってしまう

・交渉において、本当に自分が何を目標としているのかわかっていなかったり、交渉を続けていくうちに本来の自分の目標を見失ってしまうのは、人が感情の生き物だから

・「人は正論では動かない」。正論を振りかざすのではなく、事実関係を整理し、把握しておくことが「相手を操る」ためには必要

・交渉や人間関係のトラブルにおいて、優位に立つには、人間が行動を起こす二つの理由「不快を避けようとする」「快楽を得たいと思う」を知って、相手にとっての「不快」と「快楽」は何かを考えておくこと。「メリット」「デメリット」と言い換えることもできる

・「相手が従う人を見つける」。人は自分にとって、絶対的に優位にいる人の言ったことの方を自然に聞くもの。相手が言うことを聞く人が誰かを考えるようにすること

・「穏やかに脅す」。相手にとってのデメリットを示すことは「優位に立つ」ために、とても有効になる。暗に、「こちら側に有利なことをしないと、そちらに不利益が起こるぞ」と相手に告げる

・「誰が本当の敵かを見極める」。敵と思っていた人が、実は単なる人形で、裏でその人を操っている人物がいる可能性ある

・「人のいるところで話し合う」。相手が感情的になることが予想され、そのために話し合いがまとまらない可能性が高い場合、第三者がいるような場所を話し合いの場所とする

・「個人情報は開示する」。個人情報を開示することによって、相手が自分に共感し、結果として優位に立つことができるようになる。「共通点がある」ということの力は強い

・「勝ったと思わせる」。 最初から落とし所と思う金額を提示してしまえば、相手に「交渉に勝った」と思わせることはできない。人はいつも本能的に相手に勝ちたいと思うもの

・「胃袋で人を操る」。食事には、人との距離をぐっと近づける効果がある。敵対する関係を解消し、相手との信頼関係を作ることができれば、気づかれずに操ることも簡単になる

・「客観的資料を提示し、相手の思考を止める」。「正しさ」には、主観的正しさ(本人が思う正しさ)と客観的正しさ(第三者の目から見て)がある。トラブルの多くは、主観的正しさが原因。人は数字を「間違いない」と思って従うので、数字入り資料を用意すること

・「自分で決めたように思わせる」。人は自分の意志で決めたことを覆さずに、一貫した行動をとりたい。そのため、相手に自発的に決めさせたら、その後のトラブルが少なくなる

・「敵とは名刺交換をする」。人は接触回数が多ければ多くなるほど、その相手に対して信頼を感じやすくなり、名刺交換はその絶好の機会となる

・「共通の敵をつくる」。 人は、共通する敵を持つと、他人と強い信頼関係を感じ、一致団結する。相手を意図的に動かしたいなら、まずお互いの共通の敵を強烈に意識させる

・「大量の資料を用意する」。重くて大変だが、プレゼンの準備段階で作成した資料をすべて持参する。プレゼンのとき、机の上にどかっと資料を置いておくと、あなたの主張に対する信頼性が一気に高まる

・「タレコミの力を利用する」。タレコミ先は、「相手がその人の言うことを必ず聞く」人。自分で相手を説得できないなら、説得してくれる人がいないかを考えることが重要

・「名前を呼び続ける」。信頼関係を築く最も簡単な方法は、「相手の名前をしつこく呼ぶ」こと。名前を呼ばれると、人は自己重要感が満たされるので、アドバイスを素直に聞くようになる

・「弱点を開示する」。過去の失敗経験や知られたくない弱点を開示すると、人は強い親近感を持つ。信用性に影響のない失敗経験や弱点は「おいしい」。自分の武器にもなる



交渉事を経験し、トラブルに遭遇することが多かった人ならではの本です。

何事も波風立てずに、穏便に事を運びながらも、こちらが有利になるノウハウが本書には満載です。本書は、日本の人間関係に則したトラブル解決の書ではないでしょうか。


[ 2013/09/23 07:00 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『武士マニュアル』氏家幹人

武士マニュアル (メディアファクトリー新書)武士マニュアル (メディアファクトリー新書)
(2012/04/27)
氏家幹人

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本書は、武士道といった堅いものではなく、武士の現実的な世渡り術を集めたものです。その中身は、現代のサラリーマン処世術となんら変わりありません。

むしろ、武士という身分にしがみつこうとする涙ぐましい努力に、滑稽さを感じてしまうくらいです。現代にも役立つマニュアルの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「番頭組頭又伴頭の子供親類近付いて居よ」(番頭とその配下の組頭、さらにその下の伴頭。これら上司とうまくやっていくためには、彼らの子供や親類と親しい関係を持つこと)

・「頭衆へ見舞は月に一度なり、寒暑非常の見廻外なり」(職場の上司に対しては、月一度のご機嫌伺いのほか、寒中見舞い・暑中見舞いに参上し、さらに火事などの非常時にも見舞いを欠かせてはいけない)

・「男子をば八才以後は常袴、行儀作法を教育せよ。手習と読書の道を急ぐべし、無事無学はならぬ役人」(武士の子は、8歳になったら身なりを正し、行儀作法を躾けること。さらに、習字と読み書きを疎かにしてはいけない。無教養では、幕府の役人は務まらない)

・「十五才前の武術は無益なり。腕が弱くて術も叶わず」(武術は15歳になるまで始めてはいけない。筋肉の発達が不十分な子供に武術を鍛錬させても上達しない)

・「大用場立とき帯ゆるまりて、脇差落とす事も切々」(トイレで排泄を終えて立ち上がるとき、帯がゆるんで脇差が落ちてしまうことがあるので要注意。糞尿に浸った脇差を差しているという噂が広がったら、家の名誉も武士の面目もまるつぶれ)

・「在番は碁将棋立花俳諧に、何ぞ小細工好暮らせよ」(在番中の宿舎での退屈しのぎには、碁、将棋、華道に俳句と、趣味の模型作りなどがおすすめ)

・「下々を月に一度は暇やれ。使に出て脇よりをせず」(下々の者だからといって、月に一度くらい休暇をやらないと、使いに出されたとき、寄り道をしがちになる)

・京や大坂の者たち、なかでも風俗営業の者たちは、商売上手だから、騙されないように気をつけること。また、初めて赴任した者は先輩たちからいろいろとイジメられるもの。気にせずゆったり構えること。初対面なのに親切な人も本性が悪いから要注意(思忠志集)

・「乗下りと又あつかひの安さとて小馬を好む人は拙し」(乗り降りが容易で扱いやすいからといって、小さな馬を好むのは、駄目な武士)

・「武士の足ふみのべてあほむきに寝ては勝負に勝たぬものかな」(武士たる者は、足を伸ばして仰向きに寝てはならない。そんな緊張感のない者では勝負には勝てない)

・「人は相手によりて怒りも出来、恨みも有るものなり。手前の理暗さに、先方の思はぬ事をも我が心のひがみにて思ふらん」(理由は相手ではなく、本人の心にある。心のひがみから相手の言動を悪く勘ぐり、相手に悪意がないのに腹を立て、恨みを抱いてはいけない)

・「主人の御気に入るべきとつとむるは悪し。御気に違はず仕損なひをせぬ様にと可勤事なり」(主人に気に入られようと努めるのはよくない。気に入られようとするのではなく、機嫌を損ねたり、しくじりのないように努めるべきだ)

・「家内庭の掃除も、端々人の見ぬ所に気を付け掃除すべし。雪隠猶更きれいにするものなり」(家の中でも庭でも、人目につきにくいところまで気をつけて掃除をすべきだ。トイレはなおさらのこと。汚いところは掃除しないといっそう汚くなってしまう)

・「平士の肥満しては歩行立の用に立たずとて、強く腹帯をし固め、食に心を付ぬれば、肥満を遁れたり」(上級の武士ならともかく、歩行で務める平士の身で肥満になったら役に立たない。腹帯をきつく締め、食事に気をつけて肥満にならないように努めること)

・「衆座に禁ずべきは、食物の噂、雑務の噂、毎物巧者ぶりたる咄、色欲の噂、自慢らしき事」(多くの人がいるところで言ってならないのは、食べ物や訴訟の噂。知ったかぶりで話すのも、エッチな話題、自慢話も禁物)

・「物を問ひかけられ候時、延引にて苦しからざる儀は、追って申すべしと言ひて、よく了簡して申し遣はすべきこと」(何か質問されたときは、回答が遅れて構わない場合は、後でお答えします、と述べて、時間をかけてよく考えてから回答を伝えればいい)

・「あて言、なぶり口上などには、怯えあがるほどの一言を言て、かさ高に仕掛け、その後に遺恨を残さず二の勝を取るべきこと」(悪口や嘲笑を浴びせるときは、相手が震えあがるほど激しい言葉で、威圧的に行えば、かえって恨みを後に残さないでいい)


大企業や公務員など安定した組織に勤めるサラリーマンの悲哀が、この「武士マニュアル」に数多く記されているように思います。

昔も今も、日本人の性格や組織における行動は変わっていません。武士道精神にばかり気をとられていると、本当の武士の精神を見誤るのかもしれません。「これがエリート日本人だ!」という書ではないでしょうか。


[ 2013/09/22 07:00 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『イスラム圏でビジネスを成功させる47の流儀』佐々木良昭

イスラム圏でビジネスを成功させる47の流儀イスラム圏でビジネスを成功させる47の流儀
(2013/07/19)
佐々木 良昭

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著者の佐々木良昭氏はリビア大学出身で、イスラム諸国に豊富な人脈のある方です。大学教授を経て、アナリスト、財団の研究員として活躍されています。

本書には、その豊富な人脈に培われたイスラム圏のエキスが詰まっています。習わし、掟など、ビジネスに必須の事柄も簡潔にまとめられています。役に立つ書です。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・現在、世界のイスラム教徒(ムスリム)の数は16億人。インド(人口の20%がイスラム教徒)、パキスタン、バングラデシュの地域に約5億人。インドネシアに2億人以上。ロシアの人口の15%、中国の人口の3%もイスラム教徒。フランスやイギリスでも急上昇中

・イスラム教徒急増中のフランスでは、ハラ―ル(イスラム法上で食べることを許された食品)関連商品を集めた「ハラ―ル・エキスポ」が毎年開催されている。ハラ―ル食品の市場規模は5800億ドル、化粧品や医薬品を加えた市場規模は2兆1000億ドルにも上る

・モノを作る場所としても、イスラム圏は注目されている。勤勉な労働者が多く、賃金の割安なインドネシアやバングラデシュ、中東の雄トルコへと向かう日本企業が目につく

・石油や天然ガスによって好況を維持している湾岸諸国(アラブ首長国連邦、バハレーン、クウェート、カタール、オマーン、サウジアラビアなど)は、ビジネスチャンスにあふれている。これらの国々の富裕層が操る「イスラムマネー」の総額は1兆ドルを突破した

・18000を超える島々で構成されるインドネシアは、国家全体が海に面しているので、部品や製品の輸送に強力な武器となり、「モノを作る場所」としての大きなアドバンテージ。また、石油、天然ガス、レアメタルといった天然資源も豊富

・インド政府は、ものづくりの基礎教育の徹底を図ろうとしている。全土にある職業訓練校(電気工事、旋盤、金型などのコースがある)には、優秀な指導者が不足している。そこで目を付けているのが、日本人の熟練工。リタイアー組であっても引く手あまた

・トルコの大学数は156校。毎年52万人が巣立つ。教育水準の高さとその勤労意欲は魅力で、専門知識や技術を持つ若者が多い。トルコはEUと関税同盟を結び、20ヵ国とFTA(自由貿易協定)を締結しているのも魅力。主要市場への効率的かつ費用効果の高い架け橋

・イスラム圏の人々は、受けた恩義を忘れない。義理人情に厚く、昔気質の日本人に共通するものがある。苦しいときに助けるという先行投資も、やがて実を結ぶ日が来る

・コーラン(イスラム教聖典)は、女性は顔と手以外は隠せよと記している。保守的な地域では、外出の際、「ビジャブ」(頭髪を覆う)と「アバヤ」(ドレス)で身を隠す。「ニカーブ」(目だけ見せる頭巾)や「ブルカ」(目の部分も網目で覆う)などの制約もある

・ぽっちゃりと太った男は、イスラム圏のいい男の条件。その結果、生活習慣病に悩まされており、サプリメントが注目されている。この分野でも、家電や自動車と同じく、日本製の受けが大変いい。健康食品産業は新たな市場としてイスラム圏に目を向けるべき

・アラブの人々に受ける日本料理はすし。手で味わうというDNAが親近感を覚える。他の日本料理で受ける可能性のあるのは、お好み焼、ラーメン、焼きそばなどのB級料理。ただし、その場合も「ハラ―ルの掟」を遵守することが条件

・イスラム圏の人々は、よく「日本人は、やさしい母親のようだ」と言う。その心は、何でも言うことを聞いてくれるから。日本人のきめ細かいサービスは武器となる

・ハラ―ルの世界標準規定に名乗りを上げたのがマレーシア。国家ぐるみでハラ―ルの認証を行い、巨大なハラ―ル市場を相手にビジネスを行おうとしている

・イスラム金融にはスクーク(イスラム債)、タカッフル(イスラム保険)、ムダーラバ(信託金融)などの商品があるが、いち早く政府主導でこの分野に進出したのがマレーシア。発行額844億ドルのスクークの7割がマレーシアで発行される

カラミーヤ(賄賂)は減少したが、ワーシタ(仲介料・口利き料)は今でも強力なビジネスの手段。ワーシタは人脈のパイプを劣化させないための潤滑油

・「独裁者だから許せない」「民主的でないから許せない」というのは、西側諸国の見方にとらわれた一方的なもの。イスラム圏を相手にするビジネスマンは、言動を慎むべき

・イスラム教徒の義務である信仰の方法を「六信五行」と呼ぶ。6つの信じていることは、「1.アッラー」「2.天使」「3.コーラン」「4.預言者」「5.来世」「6、定命」。5つの義務行為は「1.信仰の告白」「2.礼拝」「3.断食」「4.喜捨」「5.大巡礼」



本書には、これらの他に、「母親や家族に気に入られる」「神秘さを漂わせる日本人は強い」「安全第一・整理整頓の標語が武器となる」「女性だけのオンラインビジネスにチャンスがある」などのイスラム圏で成功する流儀が記されています。

ビジネスのヒントがいっぱい載っていますので、イスラム圏でのビジネスに関わっている方の入門書として、最適なように思います。


[ 2013/09/20 07:00 ] 海外の本 | TB(0) | CM(2)

『生き心地の良い町・この自殺率の低さには理由(わけ)がある』岡檀

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある
(2013/07/23)
岡 檀

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本書は、自殺率が日本で一番低い町(徳島県海部町)を丹念に取材した書です。数字上では表れない部分も、取材によって浮き彫りにされています。

自殺率が低いということは、「幸福円満」ではなくても、「不幸せではない」ということだけは間違いなさそうです。「不幸せではない」ヒントが満載の書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・自殺率の低い自治体ベスト10のうち、海部町以外はすべてが「島」。島の特殊な地勢を除けば、海部町だけが残る。しかも、海部町の両隣の町の自殺率が全国平均並み。地形や気候、産業構造、住民の年齢分布など類似点をもつ三町に、自殺率の差があるのは不思議

・海部町では赤い羽根募金が集まらない。募金を拒む人は「あん人はあん人。いくらでも好きに募金すりゃええが。わしは嫌いや」と言う。老人クラブも、役所の担当者が声をかけても、募金同様に集まらない。海部町町民は、「統制」や「均質」を避けようとする

・海部町で、現在も機能している「朋輩組」(江戸時代発祥の相互扶助組織)はユニーク。歴史ある組織でありながら、会則と呼べるものがないし、入退会の定めもない。よそ者、新参者でも希望すれば、いつでも入会(退会も)できるし、女性の加入も拒まない

・海部町では「歳が上がれば自動的に偉くなるとは限らない」。朋輩組でも、年長者が年少者に服従を強いることがない。年少者の意見でも、妥当と判断されれば即採用される。町の人事にも人物本位主義が反映される。現在の教育長は、教育経験のない41歳の男性

・海部町では主体的に政治に参画する人が多い。自分たちが暮らす世界を自分たちの手で良くしようという姿勢がある。行政に対する注文も多く、いわゆる「お上頼み」がない。こうした住民意識を反映してか、首長選挙が盛んで、海部町には長期政権の歴史がない

・海部町には「病、市に出せ」の格言がある。これには、やせ我慢すること、虚勢を張ることへの戒めが込められている。また、親や教師から「でけんことはでけんと、早う言いなさい。はたに迷惑かかるから」と、言われることが多い

・海部町は、江戸時代、材木の集積地だった。大坂夏の陣後の復興需要で、短期間に、一攫千金を狙っての労働者や職人、商人が町に流れ込み、やがて居を定めた。この成り立ちが、周辺の農村型コミュニティと大きく異なる

・海部町は、多くの移住者によって発展してきた、いわば地縁血縁の薄いコミュニティ。町では、今も「ゆるやかな絆」が維持されている

・海部町のコミュニティにおけるトラブル処理の方針は、評価を固定させないこと。「朋輩組」でも、「一度目はこらえたれ(許してやれ)」という言葉がよく聞かれた

・かつては地縁血縁の薄い共同体であった海部町が、自分たちの生活を脅かす危険をいかに回避するか、被害を最小限にとどめるか、住民が知恵を出し合って、試行錯誤して、行き着いた策が「弱音を吐かせる」というリスク管理術

・海部町の人々は、人間の「性(さが)」や「業(ごう)」をよく知る。性や業を無視して、金科玉条を掲げても、人々は容易に従わないし、それどころか強い反発を招きかねない。

・「傾斜度が自殺率に与える影響」調査によれば、傾斜が15度~25度と強くなれば、自殺影響度が急速に高まる。厳しい自然環境が住民の生活活動に支障をきたし、孤立が強められ、忍耐力が植え付けられる。そのことが誘因となり、うつ状態が生じる可能性がある

・海部町には、住民が気軽に立ち寄れる場所、時間を気にせず腰掛けていられる場所、行けば必ず隣人と会える場所、新鮮な情報を持ち込み広められる場所が数多く存在する。これら「サロン機能」が傾斜の弱い平坦な土地に、コンパクトかつ集中的に配置されている

・「幸福度に関する調査」では、海部町は、幸せな人が少なく、幸せでも不幸せでもない人が多い。「不幸でない」ことに、より重要な意味がある。海部町のコミュニティは「大変幸福というわけにはいかないが、決して不幸ではない」を心がけている

・「生きづらさ」の元となる要素を取り除き、生き心地のよいコミュニティを次世代に引き継いできたのは、先達の「損得勘定」。人間の業である損得勘定を基にしていたからこそ、長年にわたり、破綻することなく継承されてきたと

・海部町では、「野暮な奴だ」と言われることが最大の不名誉。個人の自由を侵し、なんらかの圧力を行使して従属させようとする行為をくい止めるためには、そうした行為に「野暮ラベル」を貼ること。野暮ラベルは、魔物を封印する御札



「幸福とは何か」。それは「不幸でないこと」。「不幸でない」ためには、どうすればいいか。そのヒントが、この海部町の事例が示しています。

しかも、江戸時代より続いてきた事例です。この事例を参考にすることが、息苦しい世の中から解放される一助になるのではないでしょうか。


[ 2013/09/19 07:00 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『なぜこの人は、自分のことしか考えないのか』加藤諦三

なぜこの人は、自分のことしか考えないのか―神経症のことがわかる本 (PHPエル新書)なぜこの人は、自分のことしか考えないのか―神経症のことがわかる本 (PHPエル新書)
(2003/02)
加藤 諦三

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著者の本を紹介するのは、「ずるい人に騙された時どう生きるか」「たくましい人」「不機嫌になる心理」に次ぎ4冊目です。

今回のテーマは「神経症」(心理的に病んでいる人)についてです。神経症の人の行動を、心理学的側面から、詳しく記載されています。参考になることがたくさんありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・自分のことしか考えていない人の言うことは、「あの人はこうしてくれない」「この人はああしてくれない」と他人への要求ばかり。彼らは周囲の人をむさぼる対象としてしか考えていない。自分と同じ人間とは考えていない

ふれあっている人は、相手に自分をよく見せようという気持ちが少ない

・ふれあいのない家族の父親は、家族に馬鹿にされまいと虚勢を張り、家族に自慢する。このような父親は、皆から賞賛を得て、自分の幼児的願望を満たそうとする

ふれあっている関係とは、言いづらいことが少ない、躊躇なくノーと言える、喧嘩しても別れの不安がない、無理に合わせる必要がない、頼みごとを断ってもこじれる心配がない関係

・小さい頃、人から蔑視されたり、無視されたりして、心理的に傷ついた人は、「見返してやる」と思い、自分の実際の能力を無視して、非現実的なほど偉くなろうとする

情緒的に未成熟な親は、子供の自然な成長を待てない。つまり、神経症的な親は、子供のうちから大人のような行動を子供に期待する。すなわち、子供に非現実的な要求をする

・神経症者は現実の世界に生きていないから、他人に理想を求める。現実の自分を省みず、これで仕方ないと考えない。心理的に健康な人は、「自分もそうする」と思うから、相手の言動を許せる

・神経症者は、周囲からの特別な愛を受けることが目的。周囲の人から「わあ凄い」と注目されることが望み

・自己中心的な人は常に人間関係がこじれる。自分が誠意を尽くせば、相手も自分に誠意を尽くすのが当たり前と感じている。そして、自分の期待した反応がないと、「こんなにしているのに」と相手に不満を持つ。つまり、自己中心的な人は相手の感情を無視している

・神経症者は、自分のしてきたことを棚に上げて要求だけはする。そして、その要求が通らないと、相手を酷い人だと恨む。あるいは、社会を不公平だと恨む

・神経症者は、自分がするべきことをしていないから、正義と愛の言葉を言う人に弱い

・立派なことを声高に言う人で、卑怯でない人はいない。「かわいそうで、かわいそうでたまらない」などと自分の愛情深さを誇示する人は、たいてい冷たい利己主義者

・神経症者は、自分の不安を、名誉やお金によって逃れようとする。お金や名誉を誇示することで、自信のなさから逃れようとする。だから、名誉やお金に強迫的になる

・自分の理想像に執着するとは、自分への期待を下げられないということ。心理的に病んでいる人は、「期待を変える」ことを「期待を下げる」と解釈する

・現実に利害が対立しているわけでもないのに、神経症者は、もの凄い対抗意識を持つ

・神経症的野心を持つ人が、現実の人生で優位に立てない場合、自分が成功するよりも他人が失敗すること、自分が幸せになるよりも他人が不幸せになることが重要となる

・「自分だけが不幸」と思っている人は、「皆が不幸になってくれ」と願っている

・神経症の男性は、相手の女性に母親を求めている。つまり、相手の女性に、「保護」と「安定」を求めるだけでなく、「賞賛」も求めているということ

・神経症の人はいつも「魔法の杖」を探しているから騙されやすい。うまい話に騙されるのは神経症の人に多い

・神経症の人は何でも「すぐによくなる」ことを要求する。何事も一気によくはならない

自信がある人は、身構えないで話ができる。よい子にはならない。楽しい生活をする。利口ぶらない。肩肘張らない。犠牲を払ってでも栄光を求めたりしない



本書には、心が病んでいる人の欠点や短所が詳しく書かれています。

しかし、心の病みをうまく使えば、生きるエネルギーとなります。誰でも、心の病みは必ずあるものです。それを長所にすることを学ぶために、本書は役に立つのではないでしょうか。


[ 2013/09/18 07:00 ] 加藤諦三・本 | TB(0) | CM(2)

『金持ちになる男、貧乏になる男』スティーブ・シーボルド

金持ちになる男、貧乏になる男金持ちになる男、貧乏になる男
(2012/05/01)
スティーブ・シーボルド

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著者のスティーブ・シーボルト氏は、アメリカの富裕層研究者で、経営コンサルタントをされており、イギリス、オーストラリアにまで、その活躍の舞台を広げられています。

本書は、長年の研究成果から、金持ちと貧乏を対比させ、その違いを単純、冥界、簡潔な言葉で記されています。うなずきの連続であった、その一部を要約して、紹介させていただきます。



・貧乏になる男が、恐怖と不安を意識して行動するのに対し、金持ちになる男は、豊かさを意識して行動する

・貧乏になる男は、「お金」が諸悪の根源だと考え、金持ちになる男は、「貧困」が諸悪の根源だと考える

・「お金は邪悪だと言う人が現れたら、すぐに身を遠ざけよう。その人は貧乏神だ」(アイン・ランド)

・この世の中は問題解決に対して報酬が支払われる仕組みになっているので、問題を解決すれば誰でも金持ちになれる

・「私は芯が強くて野心的で、明確な目標を持っている。それを批判されるなら本望だわ」(マドンナ)

・金持ちになる男の最大の秘密は、知識ではなく感性に頼ること。そのため、発想が豊か

・貧乏になる男は、「嫌いなこと」をしてお金を稼ぎ、金持ちになる男は、「大好きなこと」をして財産を築く

・「お金は寛容の精神を持つ自由な人々のためにつくられた」(ジョン・レイ)

・金持ちが金儲けを得意とするのは、知能が高いからではなく、一定の行動計画にしたがって、したたかに振る舞うから

・貧乏になる男は、お金に「支配されている」と考え、金持ちになる男は、お金が「自由にしてくれる」と考える

・貧乏になる男は、「お金」を得るために働き、金持ちになる男は、「充実感」を得るために働く

・財産を築く最も効率的な方法は、独立して働き、自分で給料の額を決めること。ところが、貧乏になる男は、安定という幻想にしがみつき、努力を怠りがち

・お金は良いものでも悪いものでもなく中立的。人々を傷つける使われ方をすることもあれば、人々を救う使われ方をすることもある

・貧乏になる男は、幸運に恵まれるのは「偶然」だと考え、金持ちになる男は、幸運に恵まれるのは「必然」だと考える

・「成功とは、お金の心配をしなくてもいいことだ」(ジョニー・キャッシュ)

・貧乏になる男は、「誰とでも気安くつきあい」、金持ちになる男は、「つきあう相手を慎重に選ぶ」

・貧乏になる男は、「努力せずに楽しよう」と考え、金持ちになる男は、「努力を楽しもう」と考える

・貧乏になる男は、「古きよき時代」に固執し、金持ちになる男は、「現在に生きて明るい未来」を夢見る

・銀行の融資担当者は、起業家の情熱、集中力、粘り強さを見落としがちだが、金持ちになる男は、これらの三つの要素が不可欠であることを知っている

・貧乏になる男は、「一握りの人が富の大半を独占している」ことを批判し、金持ちになる男は、「貧乏人が富裕層の仲間入りをする」ことを歓迎する

・貧乏になる男は、「お金」が腐敗の原因だと考え、金持ちになる男は、「お金の欠如」が腐敗の原因だと考える

・金持ちになる男は、「財産を与えることが子供の破滅を招く」と考える



「金持ち」と「貧乏」の違いは、古今東西よく言われていることです。しかし、ここまで徹底的に、100項目の「金持ちになる男」「貧乏になる男」を列挙されると、否が応でも、脳内にその考え方が、注入されてしまいそうです。

「金持ちになりたいと強く願う人」には必読の価値、「貧乏だけは避けたいと考える人」にも一見の価値、のある書ではないでしょうか。


[ 2013/09/17 07:28 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『中国絶望工場の若者たち・「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』福島香織

中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実
(2013/03/02)
福島 香織

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昨年秋に起こった中国での反日デモと日系工場のストライキは記憶に新しいところです。本書は、暴動が起こった原因を、日本の工場で働く中国人と中国の日系工場で働く中国人に取材して、探ろうとしたものです。

その原因には、中国の複雑な制度が横たわっています。現在の中国の若者を知る上で貴重な書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・親が農民工(出稼ぎ農民)の子供である「第二世代農民工」は、日本車が憎いのではなく、日本車を持っている金持ち層が憎くて、日本車を叩き壊した

韓国への出稼ぎを嫌がるのは、「1.仲介業者に預ける保証金6万元(約100万円)が帰国後全額返金されない」「2.労働時間が12時間~14時間と長いのに日本より給料が低い」「3.日本のように住居・宿舎が準備されない」「4.韓国人のほうが性格がきつい」から

・中国の一人っ子政策では、一人目が女の子や障害児であれば二人目を産んでもいい。次も女の子だったら、三人目から罰金が1万元(約16万円)かかる

・検品は日本人担当者がするが、本当にささいなキズを見つけては、納品を拒否する。そうなると金を払わない。すると、経理が怒って工場長を怒鳴りつける。ライン長がワーカーを蹴り上げる。検品の後の工場内はギスギス、ピリピリして地獄

・日本人は、日本製品がつくられている現場を知らない。管理のやり方が、1分遅刻したら罰金1元、トイレが1分長いと罰金1元、居眠りしたら1元罰金。何でも罰金、罰金

・2012年春節前に日系工場で起きたストライキには反日感情はない。このストライキは「経済補償金先払いスト」。まだ退職しないが、退職したとき本当に退職金が支払われるかどうか心配なので、今まで働いた分の退職金をとりあえず先払いしろ、というストライキ

・日系の工場はストレスがたまる。5S6S(整理・整頓・清掃・清潔の頭文字をとって4つのS。これに躾か作法が加わる)とか、耐えがたい

・日本人が尊ぶ「約束を守る」「時間を守る」「嘘をつかない」といったマナーを持ち合せていなくとも、中国では特に批判されない。むしろ、無法で厳しい中国社会を渡っていくには、相手を言い負かす自己主張力や、自分の落ち度を認めない交渉力のほうが必要

・賃金未払いなど、中国の工場ではよくあること。それより、トイレ休憩とか、携帯電話の持ち込みとか、そういう自由のほうが大切。今どきのワーカーは、3か月賃金未払いよりも、管理が厳しい職場のほうがイヤ

・2010年以降の日系企業のストライキ成功体験から、日本人相手ならば要求が通ると思われている。だからこそ、日本から日本人社長が来ている最中に合わせてストライキを行う

・ワーカーに対する管理や評価を中国人中間管理職に任せっぱなしにせず、日本人管理職がワーカーのいる現場に降りて、彼らの要求を直接吸い上げるべきだが、そういう日本人管理職(中国語が堪能、中国理解が深い、ストライキ対応経験あり)がいないことが問題

・「農民工」というのは差別用語。農民でありながら、工人(労働者)であるという言葉。日本語で言えば「出稼ぎ農民」。都市に暮らしていても、農民は農民というのは、中国の戸籍管理制度に由来する

・農民工には都市民の権利(医療、結婚の自由、子供の義務教育など)が与えられなかった。立場の弱い彼らは、悪条件で搾取され続け、厳しい差別や侮蔑、迫害の対象となった

・農民工同士が結婚し、そこで産まれた子供が「民工子女」。彼らは都市生まれだが、都市戸籍がなく、都市の公立校入学資格もない。親の期待に応えて大学に進学しても、農民戸籍ゆえに就職差別(都市の就職は、都市戸籍を有し、コネを持つ者が優先)される

・農村戸籍大卒者は「蟻族」と呼ばれる高学歴ワーキングプアとなって、都市の片隅に住むようになっていく。農民工は目下2.5億人、その6割の1.5億人が「第二代農民工」。故郷に帰って農業に就こうと考えているのは、わずか1%、99%が都市に溶け込みたい

・ネットで都市民の女の子と知り合っても、オフ会で、農民工だと分かると、フンと鼻先で笑われ、歯牙にもかけられない。休みの日に遊ぶ相手は同郷の同じ農民工しかいない

・2012年の反日デモ暴動が、中国当局の暗黙の指示や誘導による官製デモであるにしても、あれほどまでに若者が無法化し、破壊活動を起こしたのは、日本への憎しみでも歴史への恨みでもなく、「第二代農民工」の若者たちの抱える孤独と絶望感によるものと考えられる



中国の都市民と農民の差別問題がこじれ、「農民工」に不満が蓄積していけば、新たな天安門事件に発展していく可能性があります。その不満のガス抜きに、反日を利用しようとする中国当局のあざとさに閉口しますが、現実に、そうせざるを得ないのかもしれません。

チャイナリスクを把握するには、経済指標だけでなく、社会問題も考えておく必要があります。中国社会の歪を知る上で、本書は、貴重な書ではないでしょうか。


[ 2013/09/16 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『日本人と日本文化』司馬遼太郎、ドナルドキーン

日本人と日本文化 (中公文庫)日本人と日本文化 (中公文庫)
(1996/08/18)
司馬 遼太郎、ドナルド キーン 他

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初版は1972年のロングセラーの書です。日米の叡智である二人が、日本人と日本文化について深く詳細に語り合う内容です。

二人の語り合うところは、歴史的にも、好奇心をかき立てられます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本の歴史を眺めていると、あらゆる面に外国文化に対する「愛と憎」「受容と抵抗」の関係がある。源氏物語にも中華文化崇拝のところもあるが、「唐めきたり」という形容詞には、「日本らしくない」「わざとハイカラな姿」という悪い意味で使われている(キーン)

・朝鮮人は、新羅の末期に、朝鮮語の名前を捨てて、中国名前になってしまった。官僚制度もそうなって、徹底的に儒教体制をやり出した。それが最も徹底したのが李朝からで、1900年初頭まで続いた。つまり、500年間、生活の端々まで中国原理的になる(司馬)

・芭蕉の俳句には「私」のような言葉が出てこない。非常に公平、客観的にものを見る。主観的に女性らしくものを書くことは、まずなかった(キーン)

・中国人というのは、地上に生えたもの、地上を動かしているもの、目に見えるもの、食べることができるものしか認めない。密教は観念論議だから、中国人の体質になんとなく合わなかった。中国密教の長老は、空海が来たので、その全部を受け渡してしまう(司馬)

・一休の悩みには、不思議な普遍性がある。アメリカで講演したら、みんな感激していた。一休は、偽善者を徹底的に嫌って、罵って、ある意味わがままな、不道徳な生活をしたのだが、彼の怒り、憤慨は、本当に身をもって理解できる(キーン)

・日本には、いろんな宗教が入ってきたが、日本人と一番ウマが合った宗教が禅。幕末あたりで出てくる武士も、禅的な人間が多い(司馬)

・人間は皆同じだというのは、足利義政にとっては、生きた血の通った実感ではなくて、禅に凝っていたために、それが観念になっていた。そんなことを言い続けなくても、ただ飢えたものを助けてやればよさそうなもの。しかし、彼は観念に生きた(司馬)

・日本人の趣味からいうと、金よりも銀のほうが合っている。金の温かい黄色よりも、銀のような淋しい色のほうが日本的。そういう意味で、金閣寺より銀閣寺のほうが親しみやすかった。東山文化の墨絵、お花、茶の湯というものは、同じ銀の世界(キーン)

・中世は、叡山の仏教的権威とか、公家の権威とか、室町大名の権威とか、血統とか、権威に満ち溢れていた。東山時代になると、それらは、亡霊みたいにかぼそくなった(司馬)

・応仁の乱は、革命意識もなければ、勝ち負け意識もない変な戦争だったが、生態史観的には、一種の自然発生的な革命作用だった。その後、京都の新しい文化が出てきた(司馬)

・足利義満の金の文化に対する義政の銀の文化、織田信長が支配すると、また金が復権する。世界にパッと窓が開かれた気分が「金」になり、世界に窓を閉ざすと、日本的なものが生まれ、「銀」が復活する。日本の文化史では、このことは繰り返す(司馬)

・中国人だと、黒っぽくなった広隆寺の弥勒菩薩は、金箔に塗り直す。朝鮮でも、朱塗りの剥げた法隆寺などの古い建物は、どぎつい青、赤に塗り直す。日本人は、地肌しか見えないものに美しさを感じる。利休の精神は、千年前からあった(司馬)

・源平時代から戦国時代まで、いろんな合戦があったが、勝負の結果が決まったのは、だいたい「裏切り」だった(キーン)

・忠義というものは、その人がサラリーを直にもらっている主人と従者の間だけに成立するもの。薩摩の侍は、島津の殿様への忠義はあるが、徳川将軍家への忠義はない(司馬)

・世界の民族では、回教なら回教、キリスト教ならキリスト教、儒教なら儒教、つまり絶対原理なようなもので、飼い馴らされないと、社会はできないと思われていた(司馬)

・孟子を偉い人だと言って、「孟子」の講義ばかりしていた人は、江戸時代を通じて、吉田松陰だけ。だとすると、我々日本人は、儒教の影響をたいして受けていなかった(司馬)

・平安朝の文学の多くの傑作は、女性によって書かれた。それらには普遍性がる。女性は外の世界をあまり見ないで、自分の内面を見つめる。女性が感ずるような人間の内面的感情は、国を問わず、時代を問わず、みな共通(キーン)

・奇人は、たいへんな知恵とか知識とか、際立ってすぐれたものを持っていないといけない。それがあれば、閉鎖的な社会の通風口として、ラベルを貼ってくれる場がある(司馬)



日本文学の研究者であるキーンさんと歴史作家である司馬さんが、見事にかみ合った傑作対談集です。

本書は、日本人の精神とは何かが、海外の視点と歴史の視点を通して、抽出されている良書ではないでしょうか。


[ 2013/09/15 07:00 ] 司馬遼太郎・本 | TB(0) | CM(0)

『身軽にいきましょうや―中年からのスピリチュアル・ライフ』町田宗鳳

身軽にいきましょうや―中年からのスピリチュアル・ライフ身軽にいきましょうや―中年からのスピリチュアル・ライフ
(2004/07)
町田 宗鳳

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元禅僧で、ハーバード大学出身の大学教授である著者の書を紹介するのは、「法然対明恵」「野性の哲学」「法然愚に還る喜び」に次ぎ4冊目です。

本書は、宗教学者の専門書ではなく、あくまで一般書として書かれたものです。その分、読みやすい内容になっています。著者の意見や感情などを知ることができます。それらの一部を要約して、気軽に紹介させていただきます。



・欲が多い人は、それだけ生命力が旺盛なわけだから、悩みが多いのは人間的勲章。しかし、中年になれば、欲を減らしていくべき、五十、六十になって、強欲なのは恥ずかしい

・自分という人間の器を大きくしていく楽しみに勝るものはない。毎日がそのための修行

・世間の動きから一歩退いて、ひたすら魂の浄化を心がけている人は、孤独に耐えることを求められる。どうでもいいことは、世間に合わせておけばいいが、肝心なところでは、妥協をしない、自分の魂を売らないという覚悟が大切

・現代日本人は、ますます孤独に弱くなっている。いつも群れて、目先のことにワイワイと興奮したがる

・神さまとは、「いのち」のこと。絶対に死に絶えることのない生命を「いのち」と言う

・人間は、試練を乗り越えていくたびに、器が大きくなる。何にも動じない自信が生まれてくる

・人間だけでなく、動物も植物も微生物も、山も川も森も、全部、太陽のおかげで生きている。朝の太陽を見ていると、自分の体の中に「いのち」のエネルギーがすっと入ってくるのを感じる。私たちは、この大きな「いのち」の力で生かされている

・大切なのは「私が始める」という決意、ひとりでやる覚悟。宇宙のリズムにあった穏やかないい気(陽気、やる気、元気など)を出し始めると、必ず周りが変わってくる

人生は壮大な実験。やってみたいと思ったことは、物おじせず、どんどんやればいい。自分さえ本気なら、支離滅裂でもいい

・今の日本が直面している大きな問題は「生命感覚の鈍り

・無意識のうちに子供は「お父さんもお母さんも本音で生きて」とメッセージを送っている。本音で生きていない人には、どこか皮相なものを感じる。子供は驚くべき感知力で、そのごまかしを見抜く。子供の側から見ると、親の年収や職業などは大したことではない

・自分のやりたいことを見つけるというのは、とどのつまり、本音で生きられるようになるということ

・苦手な相手を受け入れるには、自分を空白にし、しかも相手の幸せを念じる以外にない。こんなことは、自分中心の考え方を捨てない限り、できない相談

・ひがみっぽい人と高慢ちきな人、この両者に共通していることは、心の深いところに、大きな劣等感を巣くっていること

・殿様がいる城を中心に、直臣、侍、商人、職人、農民の各階層が遠心状に並んでおり、自分の身分が保障されたければ、その権威を中心とした社会構造に挑戦してはならないという「城下町メンタリティー」が、ここ数百年続いてきている

群れなければ引きこもる引きこもらなければ群れる。日本人は、プライベートな時間や空間の楽しみ方が下手

・山の「いのち」と人間の「いのち」が呼応し合って、自分の中に新しい生命力が生まれてくる。生命力バッテリーが弱っているときは、山から充電してもらうことができる。そういう山と身近に暮らしている日本人は幸せ

・水の音や鳥の声を聞きながら、川辺でぼんやりしていても、立派な瞑想。浜辺で聞く海の音も、夜空を見上げて、美しい星座に見入るのも最高の瞑想

・一般的に禅をやる人には、自意識過剰の人が多い。どうせ禅をやるなら、そういう意識が消えるまで、徹底してやるべき

・命がけで真剣に生きてきた者が、ごく自然に身につけている「軽み」は、見ていてもすがすがしいが、わざと「軽み」をてらった振る舞いは、軽薄にすぎない



日本人は、中高年になっても、欲のまま生きて、人と群れてばかりいる人が多いように思います。いわゆる大人になれない大人が増えています。それは恥ずかしいこと、情けないこと、という認識を社会が持つべきなのかもしれません。

本書は、中高年が、気軽に、シンプルに、力を抜いて生きていくことをすすめるものです。日ごろ、ストレスを抱えて日常生活を送っている方には、おすすめの書です。


[ 2013/09/13 07:00 ] 町田宗鳳・本 | TB(0) | CM(0)

『幸福に通じるひそやかな道』ジェームズ・アレン、松永英明

幸福に通じるひそやかな道幸福に通じるひそやかな道
(2005/10/20)
ジェームズ・アレン、松永 英明 他

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著者の本を紹介するのは、「最高にすてきな人生」「問題と解決の法則」に次ぎ、で3冊目となります。亡くなられて100年が経つ「成功哲学」の元祖とも言える方です。

西洋と東洋が融合した思想なので、現代の日本人にも理解しやすい内容です、その一部を要約して、紹介させていただきます。



・正しい始まりは正しい結果、間違った始まりは間違った結果を生む。注意深く考えることによって、間違った始まりを避けることができれば、よい結果を享受することができる

・秩序、明確さ、決意は永遠にあまねく広がる。事業において、こういった数学的な要素を無視する人は、実質を失い、完成に至れず、成功を手に入れられない

・明確な計画には、首尾一貫した努力が伴う。そして、首尾一貫した努力からは、きちんと織りなされた秩序だった結果(機知、完成、完全、成功、幸福)が生まれる

・種をいつ、どこに、どのように蒔くべきかを慎重に学ぶ園芸家は、よい結果と素晴らしい知識を手に入れる。よい収穫物は、その最高の始まりをつくった人の魂を歓喜させる

・間違った思考は、その始まりからして苦しいものであり、成長するにつれて苦しいものであり、実を結んだときにも苦しいもの

・宇宙が完璧なのは、一粒の砂が完璧だから。小さな部分を軽視することは、大きな物事を混乱させる

・小さなものは、単に大きなもののおまけではない。むしろそれは、大きなものの支配者であり、大きなものの中にみなぎる資質

・虚栄心の強い人たちは、野心に満ちており、何か偉大なことをやろうと見回している。彼らは、今注意を払うべき小さな雑事を無視したり軽視したりする。そして、小さな雑事を行うことを、大人物が注意を払う価値もない「つまらない」こととみなす

・偉大な人は、自分に与えられた小さな雑事に対して、私心を捨て、実直に注意を払うことによって偉大な人となった。拍手を浴びることもなく、報酬が約束されることもないことを行って、賢者となり、力強い者となった

・断片の中で人生を生き、そこから人生全体が出現する

・安らぎに至るには苦しみを通らねばならず、平安に至るには孤独を通らねばならない

いらだつ人は、自分自身がやっかいごとや不安をいつも発しているから、幸福について何も知ることができない。落ち着いた美しさや甘美さは、このような人にはわからない

先入観と悪意は思いやりを与えることを妨げる。プライドとうぬぼれは思いやりを受け取るときの妨げになる

復讐は、意識の核心を食い荒らし、精神的存在すべてを毒するウイルス。恨みは、意識の健全なエネルギーを焼き尽くす熱病。怒りは、優しさや好意の流れを搾り取る心の病

・悪は間違った方向に向けられたエネルギーであり、善は正しい方向に向けられたエネルギー。神聖な人とは、他人の中の悪から目を背け、自分自身の浄化に努める人

・話し方を正しくコントロールすることは知恵の始まり。意識の正しいコントロールは知恵の完成。言葉を制御することによって、人は意識の自制を手に入れる

・快楽、個人的な付き合い、騒々しい活動といった外側の世界は消耗の世界。バランスをとるためには世俗を離れた静養の効果を必要とする

・天才は知恵を求め、普通の人は快楽を求める

・世俗を離れて静養することは、強い人のためのもの。あるいは、強くなる準備のできた人のためのもの。人が偉大になるとき、その人は一人になる

・あなたは自分自身の主人、自分自身を統治する君主でなければならない

・欲望は手に入れたい切望。向上心は平安を求める心の飢え。ものに対する切望は、平安からどんどん遠くへ人を導いていく。そして、その切望は喪失して終わるわけではなく、絶え間なく欠乏した状態が続く



著者は、小さな雑事、静養、一人の大切さを一貫して説いています。また、ひそやかに生きるほうが、力強く生きるより、長い意味で、幸福になるとも述べられています。

大きな道を猛スピードで駆け抜けるよりも、小さな道や脇道を迂回しながら、そして時折休息しながら、ゆっくり着実に歩む方が、幸福という最終目的地に到達しやすいことを本書は教えてくれているのではないでしょうか。


『「人に好かれる方法」今から・誰でも・このまま使える』井上敬一

「人に好かれる方法 」 今から 誰でも このまま使える(HS/エイチエス)「人に好かれる方法 」 今から 誰でも このまま使える(HS/エイチエス)
(2012/03/21)
井上 敬一

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著者は、ホストクラブのオーナーであり、NPO法人の理事もされています。全国各地から講演の依頼がひっきりなしにあるそうです。

本書には、短時間で人と親しくなるプロの技術が記されています。参考にできるところが多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・何のためにコミュニケーションが必要なのか?それは、「好かれるため」。何のために好かれるのか?それは、「得するため

・「心」(心構え)「技」(テクニック)「体」(身振り、手振り、表情)、心技体揃ってこそコミュニケーション

・コミュニケーションで土台にあたるのは「心」。まず「好かれたい」という心構えを固めること。そのためには、正直であること、誠実であること

・人に好かれるためには、先ずこちらが「相手を好きになる」こと。これがすべて。多くの人は、自分を好きになってくれる人に好感を持つ

・質問を続ける中で、自分が知らない答えが返ってきたらチャンス。「それって何ですか?」と聞いてみること。知らないことに出逢ってこそ、質問は続けられる

・大きくうなずくことで、相手の話を引き出すことができる。日本人の多くはオーバーリアクションが苦手なので、意識して首を振ること

・「子供タイプ」<直情型・短絡的>思ったことをそのまま自分の言葉で話す。「お父さんタイプ」<理論型・威厳的>知識が豊富で難しい言葉を使う。「お母さんタイプ」<感情型・抱擁的>感じたことを皆と分かちあおうとする。3タイプを見極め、口調を合わせること

・「ユーモアは本当の気遣い」。ユーモアで相手に安心してもらうことは、好かれることへ最短距離で到達する方法でもある

・自分が気にするほど人はルックスを気にしていない。そう決めつけて前へ進むこと。勇気をもってコンプレックスをさらけ出すと、正直な印象を与えて人に愛される

・「相手の心配事をなくす」「都合の悪いことは先に正直に話す」。この二つの鍵が、お客様の心の扉を開かせる

秘密の共有は、二人の心の距離を縮める

・男は「日本のため」、女性は「半径2メートルのため」に頑張れる。性別によって、訴えるポイントを変えてみる

・断り上手よりも誘われ上手。ポイントは、行けなかったことへの謝罪よりも、誘われたことへの感謝を前面に打ち出すこと

お詫びとは「原因の確認」。「こういうことが原因だった」とお互いに理解し合うことで初めて前に進んでいける

・女性のほめ方は、「外から入って、中身である本人をほめる」こと

目上の人に好かれる3条件とは、「1.礼儀・礼節」(正しい挨拶だけでは足りない。質問を準備しておくこと)「2.向上心」(助言に対して素直な気持ちで実践すること)「3.だめであること」(私がいないと、いつまでたってもだめだなと思ってもらうこと)

ルックスは人のためにある。その場に合った、相手に失礼のない服装選びは、大人のマナーであり、思いやり

・「失敗した」と思わなければ、「失敗していない」ことになる。「失敗ではなく、経験と思う」こと

・あなたは何者か?
「医者」相手の悪いところや短所を伝える力、治す力がある
「学者」人に知識や情報を与える力がある
「易者」将来を見通せる力があり、人にアドバイスできる
「芸者」ピエロになって笑いを生むことができる
「役者」相手が望む自分になれる
この5人になる力を高めながら、人への興味を広げ、関わっていけばいい



本書には、人に好かれる方法が、誰でも、今から、このまま使えるように、簡潔に、そして、実践的に記されています。

したがって、スッと心の中に入ってきて、すぐに「好かれる」ように思わせてくれます。本書には、誰にでも、いい発見があるのではないでしょうか。


[ 2013/09/11 07:00 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『犯罪者はどこに目をつけているか』清水賢二、清永奈穂

犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)
犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)

(2012/09/14)
清永 賢二、清永 奈穂 他

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本書は、元泥棒によって書かれたものをまとめた書です。盗みやすい家(盗まれやすい家)とは、どんな家かを知ることができ、どんな防犯対策の本よりも役に立ちます。

犯罪者自身の記述の中に、なるほど、そうだったのかと思える箇所がたくさんありました。その中から一部を要約して紹介させていただきます。



・「やりやすいか、いい獲物か、上手く逃げられるか」(強盗の竹村弘)

・「賊にも三分の利というやつで、目的を得るために危険を犯し、全神経と労力を駆使したにもかかわらず、無駄骨折って終わった賊の心は反抗的となる」(忍びの弥三郎)

・「人間がかぶりつく、というのはもの凄い力。動けなくなった。痛いなんてものじゃなく、思わずイターッって叫んだ。許して下さい、と言って離させた」(猿の義ちゃん)

・「人の口には戸は立てられぬの言葉もあるように、極秘としている事柄ほど人から人へと漏れる。金庫や高額品の在り場、施錠箇所、防犯の設置不設置、有人無人といった秘密は完全にもらさないことに重点を置くべき」(忍びの弥三郎)

・「昔、爺さんと婆さんの二人暮らしの家に、コツコツ貯めた現金があるのを知って狙った。家の周りは格子があり、厳重だったので、家の横の木に登り、屋根に飛び移って、瓦をはずし、押入れの板を足で壊し、金庫をドライバーで壊し、大金を奪った」(猿の義ちゃん)

・「不幸にして、泥棒に侵入されても、泥棒自身の逃げ場がなくなったとき、大声を出してはいけない。泥棒が居直る恐れがあるので、見て見ぬふりをすること」(忍びの弥三郎)

・「堅牢な建物でも、現金があると感知したら、侵入する手段と方法を練り上げ、外から見られる率が最も少ない場所を見出す。どんな家にも必ず欠点の場所がある」(忍びの弥三郎)

・「空き巣を働く人間は、その犯行時の服装は紳士的で、その言葉や語調も真面目な人間としての表面を作り、一般善良な市民と変わらない。その格好で、狙う家屋の周囲を必ず一、二度往復し、住人の在不在、在宅人数や老若を判断する」(忍びの弥三郎)

・「賊は発覚した場合を考えて、近隣の家並みを把握する。突発時に備えて、弁解用語も備えており、落ち着いた動作で、相手に変化を覚られない細やかな芸を持つ」(忍びの弥三郎)

・「家の周囲1m内に、脚立、酒の空箱、自転車、車、街灯、電柱、植木、ブロック塀などが接近してある場合、泥棒は、家屋やベランダに飛びついて侵入する」(忍びの弥三郎)

・「いざとなれば、体当たり一発で突き破れる壁の家を狙う」(強盗の竹村弘)。プロの侵入盗は、古い家を狙い目と考え、新しい家を避ける傾向がある。古い家を狙う理由として、侵入盗23人中21人までが、「逃げやすいから」と答えた

・「家屋で最も侵入されやすい便所、風呂場、応接室、裏勝手口の窓や扉を覆ってしまうほどの樹木、障壁は低くすること。改善できない場合は、その各窓の施錠を三重ロックにして、家の中が見えないように、濃色のカーテンを引き閉めておくこと」(忍びの弥三郎)

・「泥棒は家の周囲を回り、一階に錠がかけてある場合、二階を狙う。その時、足場になるものを探す。そして、雨樋、クーラーの配管、水道のパイプなど手足を掛けられるものがあれば、簡単に侵入できる」(猿の義ちゃん)

・「玄関に発光ライトと防犯カメラが付いていたら、厄介だから避ける」(猿の義ちゃん)

・「一般家庭のシャッターは、簡単に開ける方法があるし、一階にシャッターを落としていても、二階までシャッターを落とすところは少ない。そこで二階から侵入を図る。シャッターは強い味方というより、裏切り者になる」(忍びの弥三郎)

・「狙った家の隣人から『どちらさんですか』と声をかけられるほど、嫌なことはない。だから、一人住まいのアパートほどやりやすいものはない」(忍びの弥三郎)

・「『防犯多発地区』『怪しいと思ったら110番』などのポスターが剥がれてかけていたり、汚れていたり、貼りっぱなしだったら、そこはそれだけやりやすいところ」(猿の義ちゃん)

・「カメラはどこに付いているか、すぐ分かる。それをよければ問題はない。しかし、逃げる時は熱くなって用心を欠き、知らぬ間に写されてしまう。でも、『スーパープロ』は、カメラが付いていても、狙ったらやる」(猿の義ちゃん)

・「犯罪というのは、隙間産業。その隙とは、やられるヤツの油断であり死角。自分たちはそこを突く」(猿の義ちゃん)



「強盗の竹村弘」「忍びの弥三郎」「猿の義ちゃん」といった本物の泥棒が登場するので、興味深く読むことができました。

泥棒に遭わないようにするために何が必要かの予防策を、泥棒目線で知っておくことは、重要なことではないでしょうか。


[ 2013/09/10 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤの「生き延びる智慧」に学べ』石角完爾

ユダヤの「生き延びる智慧」に学べユダヤの「生き延びる智慧」に学べ
(2013/04/19)
石角完爾

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スウェーデン在住で、ユダヤ教に改宗した国際弁護士の著者の書を紹介するのは、「天才頭脳のつくり方」「だから損する日本人」「お金とユダヤ人」に次ぎ、4冊目です。

著者は本書で、ユダヤ人の図々しさ逞しさ狡猾さに学ぶべきと説いています。ユダヤ人の著者だけに、説得力があります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・イスラエルはロシアと強力なパイプを持っている。その役割を担っているのは100万人ともいわれるロシア系ユダヤ人。ソ連時代に差別を受け、冷遇された科学者、エンジニア、学者などが大挙してイスラエルに移住している

・中国もイスラエルと軍事的に密接な関係を持っている。中国軍の近代化、ハイテク化は、イスラエルのハイテク産業がその一部を担っている。日本が知らないところで、イスラエルと中国の官民挙げての交流が活発化している。中国企業のイスラエル企業買収も多い

・イスラエルはアメリカは言うに及ばず、中国、ロシアにとってもなくてはならない国だが、日本は中国、韓国、ロシアにとって、衰退しても一向に差し支えのない国である

・秩序や平和やルールなどというものは、国際政治上、一瞬たりとも存在しなかった。世界は武力のみが支配するカオス。よほど狡猾に振る舞わないと、周辺強国の占領を招く

・日本は戦略的嗅覚が全く発育していない「鼻のないネズミ」。いつも遅れて決断するので、不利な後続組になる。歴史を振り返れば、帝国主義的植民地支配もそう。後続組のくせに余計な振る舞いをするから、先頭集団から「うるさい奴だ。黙れ」と足蹴にされた

・スイスやシンガポールのように、黙って目立たぬように強力な戦力を蓄えればよい。それがずる賢い狡猾な国家戦略というもの

・自分が主人公であるのを放棄して、考えもせず、質問も議論も抗議もせず、他人に依存して御上に言われるまま行動する。こんな奴隷のような日本人の生き方は、ユダヤ人の目には神の期待に背いているように映る

・能力のある者、知識のある者、技術のある者、新規事業を興す勇気のある者、これらを日本以外では「タレント」という。タレントは資源。国内にいなければ「輸入」すること

・アップルが貯め込んだキャッシュは1370億ドル、マイクロソフトは680億ドル、グーグルは480億ドル。この3社で日本円にすると約24兆円貯め込んでいる。この3社は創業者がユダヤ系であったり、イスラエルのハイテクIT産業に大きく依存している

・イスラエルはベンチャー起業が多い。ナスダック証券取引所に上場しているイスラエルの企業数はアメリカに次いで多い。軍事国防産業からいくつもの企業が分離独立して成功を収めているのもイスラエルの特徴

・軍隊で、生きるか死ぬかという環境に置かれ、自分の力だけで考え、決断し、規律とは何かを学ぶ。精神を鍛えて物事に取り組む姿勢はビジネスの世界でも役立つ

・イノベーションは「流動性」に接触することから生まれる。流動性とは、下剋上、奇想天外が受け入れられる沸騰した社会状態。イノベーションにとって理想的な環境とは「混沌の淵」「カオスの淵」「厳格な規律と混沌との出会い

・ある国がイノベーティブを生む土壌にあるかどうかは、女性が従順か闘争的かが一つの指標になる。アメリカ、イスラエル、イギリスには闘争的女性が多い

・「物事が永続する価値は、密かに隠されて小さく、人々が気づかない精神的な洞察であることが多い」。この哲学を日本の生活に則したならば、有名人の言うことは信用するな。テレビ、新聞、雑誌は読む価値なし。ネットのフォロワー数も価値なし、ということ

・「マネジメントはリベラルアーツである」(ドラッカー)。リベラルアーツ教育はパイオニア精神を叩き込む教育。トーマス・ジェファーソンは「単なるリーダーになるな、パイオニアになれ」と言った

・美食・飽食は人を馬鹿にする。甲殻類の禁食を含むユダヤの食事戎律カシュルートは「生きる目的は美味いものを食べるためではない」と戒める。日本は、テレビ番組でものを食うシーンが多い。性欲や食欲という一次欲求は、本来、人に見られたら恥ずかしいもの

・ユダヤ人はお金を軽視したり蔑視したりはしない。お金は人生の扉を開ける大切な鍵だと考えている。欲望の充足のためにお金を稼ぐようなことはしない。あくまで「適切」に「正統」に稼ぐことを大切にする



本書のサブタイトルに、「浮かれる日本への警鐘」とあります。日本にいると、日本という国に対して主観的になります。

国際的な視野を持つ著者が見つめる日本の問題点は、かなり的をついているように思いました。著者のような真の国際人の意見をもっと聞くべきではないでしょうか。


[ 2013/09/09 07:00 ] 石角完爾・本 | TB(0) | CM(0)

『映画はやくざなり』笠原和夫

映画はやくざなり映画はやくざなり
(2003/06)
笠原 和夫

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著者は10年前に亡くなられましたが、「仁義なき戦い」など、東映任侠映画の脚本を書かれていた花形ライターです。本書は、亡くなられる少し前に、「ヒットするシナリオ」について、その秘伝の技法(骨法)を惜しみなく公開されたものです。

ストーリーを描くことが、ビジネスでも、ますます重要になってきています。本書には、そのノウハウが満載されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・脚本には、「1.コンセプトの検討」「2.テーマの設定」「3.取材と資料蒐集」「4.キャラクターの創造」「5.人物関係表」「6.事件の配列」「7.ストーリー作り」の工程がある

・いきなりストーリー作りに入らずに、回り道をすること。回り道というのは、コンセプトやテーマを何度も話し合い、資料を読み、背景に使う土地に出かけ、人に会ったりするという、地味でオーソドックスな道。急いで片づけようとした瞬間から迷路にはまる

・コンセプト(戦略)というのは、映画の有り様を考えること。映画を取り巻く様々な状況、時世時節の流れを踏まえ、その中で、どのように映画を成功に導くのか。このグランドプランを設定するのが、脚本の最初の作業

・ヒットする映画とは、コンセプト(戦略)が発揮した場合であって、決して目新しいストーリーのせいではない。ストーリーは、考えられ得るものはすべて出尽くしている。コンセプトこそが映画のキモ。それを考案する脚本家は、いわば戦争における「作戦参謀

・事件の配列は、「山あり、谷あり」のリズムを心がける。細かく言えば、「起承転結」の4区分に分けて取り組み、それぞれの区分の中で、ヤマ場危機のリズムを刻んでいくこと。そして、次第に「結」、つまりラストに向かってテンションが高揚するように運ぶこと

・骨法その1「コロガリ」。引っ張られた糸が、もつれほぐれ絡んで、最後は初めの糸に収斂され、大空高く凧が舞い上がる、という展開の妙。コロガリ過ぎはだめ。「コロガリ」は、観客と適当に駆け引きをしながら、意表を突くカードを次々に見せていくのを最良とする

・骨法その2「カセ」。主人公に背負わされた運命、宿命。カセはマイナスに作用するファクターとなる。カセが設定され、アヤ(カセから生ずる波乱)が効いたドラマは、文句なしに面白い。しかし、カセが凡庸だと、アヤもちゃちなパターンドラマに終わってしまう

・骨法その3「オタカラ」。主人公にとって、何ものにも代え難く守るべき物(獲得すべき物)であり、主人公に対抗する側は、そうさせじとする具体的な核のこと。サッカーのボールのように、絶えず取ったり奪われたりすることで、ドラマの核心が観客に理解される

・骨法その4「カタキ」。敵役のことで、「オタカラ」を奪おうとする者。ただし、一目見てすぐ「悪」だとわかるような「カタキ」は、現代劇では浮いてしまう。内面的なこと、トラウマや劣等感など、内部から主人公の心を侵害しても「カタキ」になれる

・骨法その5「サンボウ」。進退ギリギリの瀬戸際に立った主人公が、その性根を見せて、運命(宿命)に立ち向かう決意を示す地点。これがないと、そこから先のドラマは視界ゼロとなって、どこに着くやら観客は見当がつかなくなってしまう

・骨法その6「ヤブレ」。破、乱調のこと。どんなスーパーマンでも、一度は失敗や危機、落ち目に出くわさないと、存在感が稀薄になる。失意の主人公がボロボロになって、酒に溺れたり暴れたりする芝居は、役者にとっても、見せ場となる

・骨法その7「オリン」。ヴァイオリンのこと。母と子の別れの場面には、ヴァイオリンを弾き鳴らして観客の涙を誘ったことから、感動的な場面のことを「オリンをこする」と呼ぶようになった。「オリン」の設定は、「ヤブレ」のあと、次の「ヤマ」の一歩前が最適

・骨法その8「ヤマ」。俗に言うヤマ場、見せ場、クライマックスのこと。「ヤマ」は、観客が抑制してきたものを、ここぞとばかりに一気に解き放つもので、何より作者自身がまず感動し、我を忘れるようなボルテージの高い場面にしなくてはならない

・骨法その9「オチ」。締めくくり、ラストシーンのこと。ラストシーンは、そのドラマが装う衣装の中で、最も華やかで美しく、高貴な香りを湛えた衣装でなくてはならない。作者は、ここで思い切り楽しみつつ、細心の気遣いをもって、書き上げなくてはならない

・骨法その10「オダイモク」。お題目、つまりテーマのこと。脚本を書き上げたところで、さて、自分が観客に伝えようとしたテーマは充分に示されたかどうか、もう一度オダイモクを唱え直して検証することが肝要



本書は、物語の作り方のノウハウを目にできる貴重な書です。世の中は、キャラクターブームですが、いくら出来栄えのいいキャラクターでも、物語性のないものは、人気がありません。

商品についても、人間についても、その物語性を作り上げることが、共感を得る第一歩です。共感を得るという点で、物語性は避けて通れないのではないでしょうか。


[ 2013/09/08 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)