とは学

「・・・とは」の哲学

『和顔・仏様のような顔で生きよう―山田無文老師説話集』

和顔 仏様のような顔で生きよう―山田無文老師説話集和顔 仏様のような顔で生きよう―山田無文老師説話集
(2005/10)
山田 無文

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著者は、25年前に亡くなられた昭和期の代表的な禅僧です。著書を数多く遺されています。私の父が、著者のいた禅寺に通っていた関係で、その著書が家にたくさんあります。

本書は、著者の「仏様のような顔(和顔)で生きよう」「和顔を人生の目標にしよう」といった訓えを、簡潔に表わしたものです。ためになることがたくさん載っています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人生とは、ただ生活を享楽するような甘いものではない。また、より多く幸福を求めるなどという、意味のないものでもあってはならない。自分がこの世の中に出てきた真実の意味を自覚し、何らかの足跡を残していかなければ、せっかく人間に生まれた甲斐がない

・臨済禅師は「随処に主と作れ」と言った。これは、威張れということでも、自由勝手にせよということでもない。どこへ行っても、その場所を愛せよ、愛情を持てということ

・臨機応変のはたらきは、何も思わぬところから自然に出てくる。その、何も思わぬ純粋な気持ちをいつも失わないことが、一番大事なことであり、それが「信心」

・古い記憶がいつまでも心の中に残っているというのは「穢れ」。すんだことをいつまでも覚えているのは「心の塵

・すべてのものに敬語をつけて、尊敬して呼ぶことが仏法の教えであり、日本民族の長いならわし。しかし、それは、どんなものにも魂があるから尊敬するというのではない。こちらの感謝の心が、そうせずにはおられぬからそうする

・霊があれば祀る、ないから祀らないという理屈ではなくて、霊があってもなくても、祀らずにおられないからそうする

・自性がわかることを見性と言う。真実の自分もわからずに、世の中へ飛び出して、損だ得だ、嬉しいの哀しいの苦しいの楽しいの、憎いの可愛いの、進歩だ闘争だと騒いでみてもしょうがない

好き嫌いにとらわれたら、これほど嫌なものはない。良し悪しにこだわったら、これほど厄介なものはない。好き嫌いを捨てずに、好き嫌いに落ちず、良し悪しにこだわらずして、良し悪しのけじめを正していく、そこに至道の妙味がある

・頭をゴツンと打って、「痛い!」のは親から教わったものではない。何もないこころから「痛い」と出たもの。この何もないこころから分別せずに出てくる智慧、かかる純粋な意識そのものがわかることを悟りと言う

・花には蜜があるが、それは世の中に奉仕しようとする心、何かを捧げる心。花さえ咲かせれば、実はひとりでに結ぶ。幸福というものは、こちらから求めるものではなく、向こうから与えられるもの

・草木がこの世に生じたのは、美しい花を咲かせるため。人間がこの世に生まれてきた目的は、仏のような立派な人相をつくるため。死ぬまでに、よい人相になりたいもの

・何もない透明な、写真機のレンズのような心が、ものに触れ、ことに触れて感動し、その端的に句が生まれる。そこに俳句の世界があり、それは、禅に近いもの

・人間の内側に動揺しないものがあるから、動揺する心がわかる

・現実の世界の真っただ中にあって、苦楽の中にいて苦楽を離れ、生き死にの中にいて、生き死にを忘れている、そういう心境が彼岸と名付けられるもの

・「求むる有るは皆苦なり」、つまり、心の中に欲しい物があるのは皆苦の種だと臨済禅師ははっきりと言っている

・純粋とは、計らいのないこと、権謀のない心、それを内面的に把握すること、これが「直心」で、「直心は是れ菩薩の浄土なり」とは、その心自体が浄土であるということ

・人柄や相といった、人間から出てくる匂いがないといけない。美男や美女でなくてもいい。顔に何とも言えない味わいが出てくるのが「妙相」。惚れ惚れとする顔ではないが、何かしらいいところ、明るいところ、温かみがある「妙相」になっていかなければならない

・親が生みつけてくれた顔を、輝かしい、喜ばしい、微笑みのある、温かい、人に喜ばれる、いい顔にして死ななくてはいけない。大概、親の生んでくれた無邪気な顔を、できそこないの顔にして、死んでいく



人相は、年齢とともに、顔に刻まれていきます。写真家が撮ってみたいと思うような顔になるには、真剣に、誠実に、生きていないと、そうなりません。

お金や名誉に恵まれていない市井の人の中に、この「和顔」の人が大勢います。人は見た目ではわからないといいますが、本書を読むと、「人は見た目でわかる」ように思えてきます。


[ 2013/08/30 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『生きているのはひまつぶし』深沢七郎

生きているのはひまつぶし (光文社文庫)生きているのはひまつぶし (光文社文庫)
(2010/10/13)
深沢 七郎

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作家の深沢七郎さんが、亡くなられて25年経ちます。姥捨山で有名になった「楢山節考」などの作品が知られています。作家活動の他に、40過ぎてから農場を開いて、百姓をされ、50前には、今川焼屋を開き、自ら焼かれていました。

その独特の人生観に、学ぶべきところが数多くあると思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・死ぬことは、清掃事業の一つ。ゴミがたまれば、ゴミ屋が持っていってくれるように、人間が片付いていくということ

・死の世界は、生まれる前の世界。死ぬということは、生まれる前の世界に帰ること

・地獄極楽は日本人が作ったもの。お寺は仏教を商売にしている。死ねば戒名をつけ、名を変える。そんなことで金をとるのはおかしい。大乗仏教は八百長。仏教にお寺が建つのもおかしい。金出すやつがいるから、金をもらうやつがいる

・思想というものは悪いもの。何かを思わせるのは悪いことで、何もないことがよいこと。お釈迦さまの思想は「何もないことが一番よいこと」。あることがいけない

・私の「人間滅亡教」は、「生活程度をあげない」「勤勉は悪事である」「怠惰はこの世を平和にする」ことを説く

・種をまくときは、収穫するまで生きているかなんて考えない。人は、明日死ぬかもしれないから。種をまいたら芽が出るまでが楽しい。二日見ないと変わってくるから

・土は、水がなければ水をほしがり、多ければ困る。ちょうどよいところを欲するというのは、まさに生きもの

・真実の人生は性生活が片付いてから。性が片付いたあとは、まったく別な世界に生きることになる。性という峠のような劇しい道を越えると、別な世界が展開する

・悩みは、人生のアクセサリーみたいなもの

・過去の社会は、立身出世型の人間たちをつくることで、オレたちの生活を不幸にしてきた。つまり、偉いと言われる人間をつくって、人間の差別をしてきた

・何も考えず、何もしないで生きることこそ、人間の生き方。虫や植物が生きていることと同じ。それで自分自身に満足であればいい

スポーツ選手というのは、おだてられて、自分の身体に無理して、自分の体力の限界以上のことをやっている、一つの犠牲者。一位だ二位だと、権威というものにあこがれて、本当にひどい労働以上のことをしている

・スポーツは運動。それを何秒で走ったなんていう競争になったら、楽しさを越えて苦しさになってしまう。苦しいなんてとんでもないこと。今は、苦しくなるまでやるのがスポーツになっている。とんでもない悪いほうに向いている

・涅槃というのは、生きながらにして、死んだと同じ心になることだから、喜びも悲しみも欲望もなくなってしまう

・金や功名とかで権威のある名をつけるのは、悪魔の仕事

・水商売をすれば、感覚が狂ってくるから、切符を買っても、靴下を買っても、ネギを買っても、違った物になってしまう。そこが落とし穴。感覚によって、同じものでも味が違ってしまうのは、おそろしいこと

・男だって、どんどん泣いたほうがいい。泣くのは、機械に油をくれるのと同じこと

裏切られたという人にかぎって、他人を利用しようと思っている。そんな人は、あっちにも、こっちにも裏切られている。自分の欲をさらけ出しているようなもの

・永遠というのは、私の生きていくうちということ。太陽が輝いているのも自分の死と同時になくなってしまう

過去はおぼろがいい。憶えていないのがいい。忘れるというのは、人間に大切なこと

・生きていることが青春。死ぬまではずっと青春の暇つぶし。暇つぶししながら生きているのが、人生の道、世渡り術というもの



「生まれたときに、死のゴールへのレースが始まる」。このように考えていたからこそ、著者は、すべてにおいて達観していたのではないでしょうか。

人生を、死ぬまでの暇つぶしと考えたら、自分の人生を、自分の思い通りに、自由に生きていくことができます。本書は、そのことを示唆してくれているのかもしれません。


[ 2013/08/29 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”』山田昭男

日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”
(2011/11)
山田 昭男

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未来工業(電気設備資材メーカー・二部上場)の創業者である著者の本を紹介するのは、「ドケチ道」に次ぎ2冊目です。日本の横並び的な経営管理法を否定しながら、高い利益率を出す会社のオーナーとして有名です。

その経営法は、常識を覆すものばかりです。すなわち天才的です。この天才経営者のマネジメント法は、勉強になるだけでなく、勇気をも与えてくれます。その一部を紹介させていただきます。



・第一に差別化すべきは製品。「絶対よそと同じ製品は作らない」「よそと同じものしか作れないのなら、それがどんなに儲かる製品とわかっていても発売しない」

・「残業や営業ノルマの禁止」「定年70歳」「全員正社員」「育児休暇3年」「有給休暇を除いて休日140日」「年間就業時間1640時間」などの差別化は、社員たちが「この会社のためにがんばろう」と思ってくれるためにはどうすればいいか?と考えた結果

・よそと差別化していくためには、常に考える習慣を付けないといけない。新製品のアイデアや仕事の効率化について考え続けないといけない

職人さんが喜ぶ4つの要素「簡単に作業できる」「速く作業できる」「上手に作業できる」「安く作業できる」に「見た目」を加えた部分で勝負をして、うちの製品はファンを作ってきた

・社長になる人間は、まず自分がバカということを認めるところから始めないといけない。自分ではそう思っていないから「社員は管理しないと・・・」という発想になる

・たくさん売りたい、高く売りたい、いいモノを作りたい、安く作りたい、いいモノを買いたい、安く買いたい、と現場で考えるのは社員の仕事。社長の仕事は、彼らにがんばってもらうための「餅」の与え方を考えること。だから、社長が陣頭指揮をしてはいけない

・中小企業では、出せる給料には限度がある。だから、その分、休みを多くしている。休みというのは、お金が要らない。だから、増やすのは簡単

・製造業で一番多いのは8時~17時。差別化しないといけないから、8時30分~16時45分までにして、1日7時間15分にした

・残業は禁止。休みも多いから年間にすると労働時間は1640時間。これについては、政府系機関から「日本一勤務時間が短い会社」と認定された

・言っておくが、残業手当を出さない会社は法律違反だ。そんなことまでして金儲けはしたくない

・うちの800人弱の社員全員は正社員。多くの会社は、コスト意識が足りないのに、パートや派遣社員を雇う。仕事内容は、正社員とほぼ一緒で、給料半分、ボーナス10%、退職金ゼロ。それで「コストが下がった」のなら、人間をコスト扱いしているということ

・金儲けをしたい経営者たちが謳うのが「いいモノを安く」という言葉。しかし、いいモノを安く売っては儲からない。「いいモノを安く」の行き着く先は、過当競争

・「お客さんから『まけろまけろ』と言われて値段をまけたら、それは負け。しかし、そう言われてもまけなければ、会社の勝ち」(花登筺)

・「たくさん買うから安くしろ」と言われても、製造業では、時間単位で作れる数が決まっている。たくさんの注文をくれても、残業になれば、社員に25%増、深夜作業なら50%増の残業代を払わなくてはいけない。すごくコストが上がるのに、安くできるわけがない

・評価を人間がやる限り成果主義は導入しない。だから、ひたすら「年齢とキャリア」で給料を決める

・守衛を正社員で雇ったら、年間に750万円の支出になる。被害額がそれ以上になったら守衛を置く意味があるが、そうはなっていない。泥棒に盗まれる額とコストの算数が大事

・韓国企業が「注目する日本の経営者」の5位に入った。他の人は、松下幸之助、稲盛和夫、孫正義、本田宗一郎、永守重信、山内溥、柳井正など超大企業の経営者で、自分だけが中小企業だった

・うちの工場には、韓国から年間1500人が見学に来る(見学料は1人2000円)が、韓国の企業は勉強熱心


日本で、著者のことがもっと評価されるべきですが、自分を否定された気持ちになるのか、日本の企業経営者や社員は、見て見ぬふりをしているように思います。

隠れた異彩の経営者であることは確かなようです。さらに、著者の本を読んでみようと思っています。


[ 2013/08/28 07:00 ] 山田昭男・本 | TB(0) | CM(0)

『天皇家の財布』森暢平

天皇家の財布 (新潮新書)天皇家の財布 (新潮新書)
(2003/06)
森 暢平

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天皇家の家計簿、貯金、資産、収入など、どうなっているのか少し興味がありました。戦前に比べて、かなり予算が小さくなったみたいですが、それでも、お抱えの人件費等を考えれば、膨大な額になります。

本書は、それらを一つ一つ明かすことにより、天皇家の生活ぶりを知らせてくれます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・天皇、皇族の活動のための「皇室費」は、オフィシャルマネーの「宮廷費」と、プライベトマネーの「内廷費」「皇族費」の三つに分類される

・皇室の公的な活動に使われる「宮廷費」は、一般の役所と同じで、毎年金額が変わる(2003年度は64億円)。宮中晩餐会、国体や全国植樹祭への地方訪問、宮殿の補修、皇居の庭園整備など土木・建設費も含まれる

・「内延費」は、天皇家へのサラリーで、国家公務員の給与と同じ。定額制で3億円程度。ピアノの修理代、登山用品代などが、「内延費」から支出される

・「皇族費」は、天皇家以外の宮家(秋篠宮、常陸宮などの七家)のサラリーと考えると捉えやすい。秋篠宮家は約5000万円で、総額は約3億円程度

・宮内庁が管理する予算には、他に宮内庁費がある。1000人を超える宮内庁の経費は、110億円を超える。そのうち、人件費と手当関係が約8割を占める。つまり、宮内庁は「皇室費」を合わせると、「4つの財布」を持っていることになる

・皇室費(宮廷費・内延費・皇族費)と宮内庁費に、皇室関連の国の付属機関である「皇宮警察本部予算」を加えた広義の皇室関連予算は約270億円。国民負担は1人210円ほど

・戦前の皇室は、全国に広大な山林を持ち、林業経営で収入を得ていたほか、教育機関である学習院まで持っていた。宮内庁職員は、1945年の敗戦時、約6200人もいた

・現在も、京都御所、桂離宮、修学院離宮、正倉院、千葉・埼玉の鴨場、長良川筋漁場、那須・須崎・葉山の御用邸を抱える

・現在も、雅楽や洋楽演奏の楽師24人、正史編纂や陵墓調査の研究職46人、天皇陵の陵墓守143人、正倉院や古文書の修繕師12人、調理人25人、配膳担当22人、運転手と車両整備40人、土木・水道・電気・機械などの専門技官78人、庭園管理者30人がいる

・皇居の1カ月の水道代は約930万円、電気代は約840万円、ガス代は約340万円。東宮御所は別払い。NHKのテレビ放送受信料は約180万円

・出席者132人の大統領晩餐会の食材仕入れ費は約97万円。一人当たり7300円ほど。御料牧場の生産物や大膳課職員の人件費を考慮すれば、一人の食事単価は1万円単位

御料牧場では、乳牛18頭が飼育され、牛乳瓶200ml換算で、1日約200本の生産。豚は78頭が飼育され、年間に豚肉約3000kgの生産。他にも羊が385頭、鶏が886羽、キジが35羽いる。御料牧場の年間生産額は約4200万円。支出は6億円強で、やはり赤字

・天皇家のお小遣いは不明だが、「その他雑費」の7割、2500万円と推定すると、天皇家の成人で、年間一人当たり500万円になる

・戦前、天皇家が持つ「御料林」は、北海道夕張、静岡大井川、岐阜木曽など全国に散らばり、「金のなる木」と呼ばれるほど、莫大な収益を上げた。この利益を元手に、皇室は株式、国債への投資にも乗り出した

・皇居や御用邸などの土地、宮殿や御所のような建物は、天皇家の私有ではなく、国有財産で、国が皇室に提供する「皇室用財産」という種類にあたる。現在の皇室用財産は、土地を合わせると、4000億円以上になる

・昭和天皇が亡くなった時の資産はおよそ20億円。これは、昭和天皇個人の遺産

・昭和天皇逝去で整理された所有の美術品は約4600件(国有財産3180件、御由緒物580件、天皇陛下と香淳皇后が相続800件)。国有財産になった品に、「蒙古襲来絵詞」「源氏物語屏風」、小野道風の直筆、横山大観などの近代絵画、幕末志士たちの書画などがあった

・天皇家と比べると、宮家の暮らしは、ぐっと一般人に近い。自分自身で買い物をすることも、銀座で飲むこともある。秋篠宮家の6人いる使用人の人件費を除いた年間生活費は約2500万円。皇族という身分を考えると、潤沢とは言えない



本書を読み、天皇家や宮家は、庶民が思っているより、そんなに贅沢な暮しをしていないように感じました。

プライベートな行動が制限され、ストレスのかかる公務に追われることを考えると、決して、豊かとは言えないように思います。「天皇家の財布」を知ることにより、天皇家を身近に感じられるようになるのではないでしょうか。


[ 2013/08/27 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『新編・悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)
(1997/01/16)
アンブローズ ビアス

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本書は、およそ100年前にアメリカで出版されました。冷笑家、風刺家、毒舌家と言われた著者の作風は、芥川龍之介など日本の作家にも大きな影響を与え、100年経った今でも、世界中に影響を与え続けています。

本書は賛否の分かれる書ですが、「言い得て妙」の表現に感嘆することが多々あります。それらの内容の一部を要約して、紹介させていただきます。



・「アマチュア」 趣味を技量と思い誤り、おのれの野心をおのれの能力と混同している世間の厄介者

・「安心」 隣人が不安を覚えているさまを眺めることから生ずる心の状態

・「自惚れ」 こちらが嫌っている奴に見られる自尊心

・「会社」 個々の人々が、責任を伴わないで、それぞれ自己の利益をあげ得るように工夫された巧みな仕掛け

・「感謝の念」 すでに受けた恩恵と、これから期待する恩恵との中間に位置する感情

・「頑張り」 凡庸な連中が、それによって不名誉な成功をかち得る、取るに足らぬ美徳

・「希望」 欲望と期待とを丸めて一つにしたもの

・「欺瞞」 商業の生命、宗教の精髄、求愛のさいの餌、政治的権力の基礎

・「群集」 その中に最も賢い構成分子に従う場合には、その者と同じ程度に賢くなるが、従わない場合は、その中の最も愚かな構成分子と同程度の英知しか持てないもの

・「幸福」 他人の不幸を眺めることから生ずる気持ちのよい感覚

・「搾取する」 人を信じやすい連中に教訓と経験を授ける

・「讃辞」 富および権力という利点を持っているか、この世におさらばを告げてしまった人をほめたたえること

・「借金」 奴隷を監督する者が用いる鎖と罠の代わりをなす、功名に工夫された代用品

・「信仰」 類例のない物事について、知りもしないくせに語る者の言うことを、証拠がないにもかかわらず、正しいと信ずること

・「人道主義者」 救世主は人間であって、当の自分は神である、と信じている者

・「侵略」 愛国者が、おのれの抱く祖国愛を証拠立てるために用いる、最も広く世に認められている方法

・「大胆不敵」 安全無事な立場にある人に見られる最も著しい特質の一つ

・「忠実」 今まさに裏切られようとしている人々に特有の美徳

・「長命」 死に対する恐れが、異常なほど長期にわたって引き延ばされること

・「憎しみ」 他人のほうが、自分よりも勝っている場合にふさわしい感情

・「忍耐」 小形の種類の絶望。ただし、美徳に偽装している

・「武勇」 虚栄心と義務感と賭博者の希望とから成る、軍人に特有の混合物

・「平和」 国際関係において、二つの戦争の時期の間に介在するだまし合いの時期を指す

・「法律家」 法律の裏をかく技術に熟練している者

・「民主国家」 数限りない政治的寄生虫によって運営されている行政上の統一体

・「幽霊」 内なる恐怖が外に現れた、目に見えるしるし

・「冷笑家」 物事をあるべきようにではなく、あるがままに見る、たちの悪い奴

・「霊廟」 富裕な連中に見られる最終にして最高に滑稽な愚行



世を客観的に、公平に観察できた著者にしか、本書は表現できなかったのではないでしょうか。

この作品を歪んだ、偏った表現であると思われた方は、ひょっとしたら、自分が、歪み、偏っているのかもしれません。


[ 2013/08/26 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『大名たちの構造改革』谷口研語、和崎晶

大名たちの構造改革―彼らは藩財政の危機にどう立ち向かったのか (ベスト新書)大名たちの構造改革―彼らは藩財政の危機にどう立ち向かったのか (ベスト新書)
(2001/10)
谷口 研語、和崎 晶 他

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江戸時代の後期、財政危機になる藩が多発しました。その難局を乗り越えた藩、乗り越えられなかった藩、その成功と失敗の要因を調べたのが本書です。

現代にも通じる部分が数多くあり、参考になります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。


・農民が豊かになれば、地主となって中間搾取する者が出る。没落すれば、耕作地が荒れ、年貢が取れない。だから、農民が富裕化しないよう、さりとて、没落もしないように生活させ、その全余剰を税として取り上げることが、幕藩領主にとって農民支配の最上の策

・農村の荒廃は、天災によるものだけではない。商品経済・貨幣経済が農村にも浸透してきた結果、農民たちが借金返済のため、田畑を質地として地主に渡すか、出奉公で貨幣を手にした。並行して、間引き・捨て子も横行し、村は人間の再生産さえ困難に陥った

・藩政改革には、有能な人材が必要だった。その新たに登用する人材を束ねる人材(名補佐役)を得ることで、名君たちは、藩政改革に着手することができた。逆に言えば、補佐役に人を得ることができなかった大名は、「名君」たりえなかった

・人材を登用して高い役職につけても、禄高が低いままでは、何かと不都合が生じる。そこで、就任させた役職に相応する禄高との差額を補てんする制度がとられた。やがて、この補てんも合わせた総計高が子孫に世襲されるようになってしまった

・江戸時代後期には、儒学から派生した経済学や政治学に近い思想を展開した「経世家」や「農政家」が現れた。彼らは派遣された藩の農業方法を指導し、農村の復興を行い、藩の殖産興業や交易に意見を述べた。二宮尊徳、海保青陵、大蔵永常、佐藤信淵などが有名

・財政再建に向けての改革は、家臣たちに耐乏生活を強いる中で行われた。藩主上杉鷹山が率先垂範したように、改革の担当者は、禁欲の中で改革にあたらなければならなかった

・徳川吉宗には、大奥に残る美女の名を書き出せと命じ、書き出された50人全員に「美女ならば引く手あまたのはず、みな大奥を出て結婚するがいい」と暇を出したという、大奥経費削減の逸話が残っている

・水野忠邦に特に目をつけられたのは、職人や商人が頻繁に出入りする諸役所。出入りの者と馴れ合い、リベートを受け取り、贈物攻勢にもはまって、工期が延びても、値段の割に材料・品質が落ちても、まったく知らん顔だと、水野忠邦は批判している

・江戸時代の侍は、「あれをするな、これをするな」と、手取り足取り、私生活の指導を受けた。経営能力がまるでなかった

・半知とは、家臣に渡った分から半分借り上げるもの。財政帳簿では、家臣へ渡す半分を藩庫に入れると書くべきものを、最初から半分の額しか記載しなくなった

・荻原重秀が行った貨幣改鋳は、通貨量不足に対応したものだが、真の目的は、質を落とした金銀貨の発行で利益を得ることだった。この貨幣改鋳により、幕府は557万両の巨利を得た。この額は、当時の幕府歳入の約7倍にあたる

・幕府の三貨(金銀銭)に対して、各藩は、藩札という一種の紙幣を発行した。藩札には、米の額や金の額または銭の額を記したものがあったが、銀経済圏の藩を中心に発行されたため、多くは銀札だった。領内限りの通用を原則とし、通用期限が定められていた

・藩財政が悪化すると、諸藩は正貨を吸収する目的で、藩札を乱発するようになる。1774年に、幕府は藩札再発行を禁じたが、まるで効き目がなかった。財政窮乏に苦しむ諸藩は、兌換の保証がないまま、幕府の許可を得ず、命令に違反した藩札を続々と発行していった

・薩摩藩などは、天保の改革のさい、かなりの偽銭を鋳造したらしい。幕末には、戦争資金として、多くの藩で金銀貨幣の鋳造が行われている

・農村が荒廃し、農村人口が減少すれば、年貢徴収率が低下する。そのため、間引きの禁止、都市から農村へのUターン政策が必要だった。寛政の改革で行った「人返し令」には、Uターンの旅費食料費や農具代の支給があったのに、応募者が少なく、失敗に終わる

・二宮尊徳の報徳仕法とは、節約と勤労で分度を守ることにある。例えば、金十両の収入があれば、九両と二分(四分で一両)を限度とする生活をし、二分を貯蓄に回した。その貯蓄を貸し付けにも回し、その利子で農具や農業の基盤整備に運用した

・薩摩藩の財政改革を担当した下級武士出身の調所広郷は、偽金づくり密貿易を行い、なりふりかまわない方法で、藩財政を立て直した。当初500万両あった負債を返済し、10年後には、営業用途費200万両のほか、藩庫に50万両の貯蓄を行った



本書を読むと、幕府や諸藩は、財政再建のために、涙ぐましい努力をしています。給料半減、首切り、不正防止のための細かな規則だけに及ばず、外部者(経営コンサルタント)を使ったリストラも行っています。

さらに、貨幣改鋳、不換紙幣の発行など、財政政策の禁じ手を行っています。また、藩によっては、偽金づくり、密貿易などの不正行為を行い、借金を返済しています。このような財政再建の歴史を知ることは、現代においても、参考になりそうです。


[ 2013/08/25 07:00 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)