とは学

「・・・とは」の哲学

『マインド・コントロール』岡田尊司

マインド・コントロールマインド・コントロール
(2012/12/06)
岡田 尊司

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著者は、精神科医であり、作家です。「社会脳・人生のカギをにぎるもの」に次ぎ、2冊目の紹介となります。

本書は、マインドコントロールを「個人の洗脳」と「集団の洗脳」(消費者・社員・有権者など)という二つの側面に分けて、考察しています。搾取されないためには何が必要かを知ることができます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・個人レベルのマインドコントロールも、集団レベルのマインドコントロールも、使われ方一つで、人間を操り人形に変える非人道的搾取技術にもなれば、生活や人生のクオリティを高め、可能性の限界を広げる有用な手段にもなり得る。毒にも薬にもなる劇薬

・「トンネル」の仕掛けには、二つの要素がある。「外部の世界からの遮断」と「視野を小さな一点に集中」すること。トンネルの中を潜り抜けている間、外部の刺激を遮断されると同時に、出口という一点に向かって進んでいるうちに、いつのまにか視野狭窄に陥る

・小さな集団で暮らし、一つの考えだけを絶えず注ぎ込まれると、その考えは、その人自身の考えとなる。また、その小集団や仲間への愛着ゆえに、それを覆したり、期待と異なる行動ができなくなる。そこから逃げれば、仲間を裏切り、自分の存在を卑しめてしまう

・純粋な理想主義者が抱えやすい一つの危うさは、潔癖になり過ぎて、全か無かの二分法的思考に陥ること。自分たちと信条を同じくしない者は、すべて敵であり、悪だと見なされていく。離れていく者は、裏切り者であり、許せない存在となってしまう

・相手が騙されたと気づかずに相手を騙すことができれば、騙す側は、むしろ「味方」や「善意の第三者」に収まることができる。騙された人は、むしろ良いことを教えてくれたとか、助けてもらったとか、目を開かされたと感じ、感謝や尊敬を捧げる

・社会的動物は、群れで暮らすために、愛情や信頼関係を結ぶという特性を進化させてきた。ところが同時に、人類は高い知能を持ったがゆえに、信じる特性を悪用することを覚えた。親しみや愛情を利用して、信用させ、思い通りにコントロールする技を生み出した

・独裁者やカルトの狂信的指導者から、独善的な上司や配偶者、親、いじめに走る子供まで、本質的な共通項は、「1.閉鎖的集団の中で、優位な立場にいること」「2.弱者に対する思いやりや倫理観が欠如していること」「3.支配することが快楽になっていること」

被暗示性の高い人の特徴は、「1.人の言葉を真に受けやすい」「2.信心深く、迷信や超常現象を信じる」「3.大げさな話をしたり、虚言の傾向がある」

・幼いころ、安心できない環境で育った人は、不安が強い性格になりやすいだけでなく、人の顔色を気にする傾向や他人に依存する傾向が強まり、人から支配されやすくなる

・「私はできる」とか「それ(症状)が消える」といった言葉を唱えさせた「クーエの暗示療法」は非常に効果があったので、評判になった。それは、大人より子供に、都会人より田舎で暮らす人に、より顕著な効果を生んだ

・催眠中に与えた指示は、催眠後の覚醒状態でも、行動をコントロールし、その効果は長時間持続した。また、道徳的、信条的に望まない行為でも、巧みに操ることができた

・依存性パーソナリティの人は、むしろ強引な人押しの強い人を好む。命令や押し付けに逆らえず、相手の言いなりになりやすいだけでなく、そういう人に敬意を抱きさえする

・会社組織でも、独裁国家やカルトに通じる異様な状況が起こり得る。長時間のサービス残業が常態化した会社では、社員は、慢性的疲労を抱えるだけでなく、主体的な判断力や独創的な発想を持てなくなっていき、ノーと言えず、結局、使い潰されていく

・勉強のやらせすぎは、主体的な意欲がない子供を育てる。子供が「疲れている」状態は、絶対に避けること。余力を残しておくことが、子供を病まさず、可能性を伸ばしていく

・強力な暗示効果が奇跡を引き起こすことがある。優れた臨床家や教育者ほど、この原理を上手く使いこなす。「希望を約束する」ことで、実際にそれを現実にしてしまう

・人は心地よい体験をすると、それをもう一度求めるようになる。心地よい体験を与えてくれた者たちや場所に対して、愛着や親しみを覚え、それを肯定的に考えるようになる。自分をこんなに愛してくれる存在が、悪いはずがないと、理性より本能がそう思う

・カルト宗教は、大きく二つに分かれる。一つは、家族や愛といった絆を重視したもの。もう一つは、修行や祈祷により超常的パワーを手に入れるといった自己鍛錬に重きを置いたもの。前者は、大衆的、庶民的な宗教であり、後者は、エリート的な志向がみられる



日本の会社には、雇用者のような被雇用者が大勢います。すなわち、給料も安く、休みが少ないのに、懸命に働く人たちです。日本のホワイトカラーと呼ばれる人の多くは、これに属します。企業側のマインドコントロールのかけ方が上手ということかもしれません。

最近、マインドコントロールはいろんなところで使われています。マインドコントロールに引っかからず、搾取されない方法を身につけることが、人生にとって欠かせない技ではないでしょうか。


[ 2013/07/31 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『ゼニの人間学』青木雄二

ゼニの人間学 (ロング新書)ゼニの人間学 (ロング新書)
(2009/05/01)
青木 雄二

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著者の本を紹介するのは、「ゼニの幸福論」「銭道実践編」などに次ぎ、5冊目です。本書は、漫画以外で、60冊ほどある作品の中で、2冊目の書(1995年出版)で、ベストセラーとなったものです。

自著である「ナニワ金融道」やドストエフスキーなどの作品を例に出しながら、わかりやすく「お金」と「人間」を解説しています。それらの中から、参考になった箇所を要約して、紹介させていただきます。




・金に困って、借金をすれば、そこから人生の苦闘が始まる。金のことで悩み、困惑し、狼狽し、煩悶し、疲労し、やがては、犯罪、夜逃げ、自殺にまで発展していく。これは、何百年の昔から、人間が繰り返してきた永遠のドラマ

・この世の中は、金持ちほどラクして儲かる。ラクとは他人を働かせて、自分は働かないでも儲かるということ

・人間は、置かれた立場でコロリと変われる。どんな奴でも、経営者という立場に立てば、ある程度の度胸がつき、「今月の売上が足りない」と思えば、押しが強くなれる

・集金のつらさだけは、もう二度と味わいたくない。子分を養うための営業の苦労は、人間を磨いて度量をつけてくれるが、集金の苦労は、人間性を荒廃させてしまう

・ゼニは金利を生む。ゼニが生き物だというのは、この意味から。カネを持っている人間は、ここのところがよくわかっている。不労所得を受け取る人間がいる裏では、誰かが必死に働いている。得をする人間の裏側には、損をする人間がいるということ

・本当の金持ちなら、バブル期にビルを建てて賃貸にしようとは考えない。もっと昔からビルを持って、他人に貸しているから、わざわざ建築費の高騰しているときに、ビルを建てたりしない。バブル期にビルを建てて失敗したのは、一発狙いのビンボー人

・コマーシャルというものは、ビンボー人からゼニを巻き上げるためにつくられたもの

・人間は欲に弱い。その欲が、理想的な自分をつくりあげる方面に向かうと、コロッとゼニを払ってしまう。ビンボー人は甘い夢に弱い

・学校で「保証人にならないように」と教えないのは、資本主義の経済活動が停滞してしまうから

・カネを借りる人間は、自分に力がないくせに見栄っ張り。弱みを見せたくないから、逆にカネのあるフリをする。これぐらいのことを見抜かないと、金融業はやっていけない

・金融業者が、相手の信用を判断するのは、小さな約束を守るかどうかという点。約束の時間を守り、最初の条件をきちんと履行するかどうか。人間の本質は、約束を守るという基本的な生活態度にあらわれる。その部分で信用できない人間は、すべて信用できない

・カネ貸しは、自分より賢い奴にゼニは貸さない。もしあなたが、金融業者から借金したとすれば、金融業者に「こいつ、俺よりアホやな」と判断されたということ

・金融業者は弁護士にはカネを貸さない。追い込みをかけようにも、頭のいい抜け道を使われたら、手に負えなくなる。だが、医者には貸す。医者はいくら頭がよくても、世間の知識に疎い。学校の先生や警察官、公務員もこの類。金融業者にとっては、絶好のカモ

・「毎日ご飯がいただけるのはありがたい」と労働者が思ってくれれば、資本家はラクができる。つまり、資本家と宗教家は利害が完全に一致している

・人間は欲望をエネルギーにして生きている。欲望があるから、未来に向かって努力できる。だから、その欲望を捨てるなんてことは、さらさら考える必要がない

・資本主義の基本原理は、極めて単純明快。「買ったものを売って、利潤を得る」だけ。経営者は、労働者から労働力を買って、商品をつくり、それを売って利潤を得る。同じ給料を払うなら、労働者にはたくさん働いてもらわなければ困る

・これまでの歴史で、人間は宗教的戦争と経済的戦争を繰り返してきた。神とゼニが、すべての戦争の原因

・自分を軽蔑する人間は、未来に希望を抱かない。明るい未来、希望ある未来を想像し、自分の力で創造していけるのは、ある程度、生活に余裕のある人間



著者が亡くなられて10年近く経ちましたが、現在でも、「ナニワ金融道」は人気です。その理由は、著者のお金と人間の本質を見る眼が、正しいと認識されているからだと思います。

底辺のところを歩んでこられた著者の眼は、今後とも、不滅なのではないでしょうか。


[ 2013/07/30 07:00 ] 青木雄二・本 | TB(0) | CM(0)

『島国チャイニーズ』野村進

島国チャイニーズ島国チャイニーズ
(2011/08/25)
野村 進

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著者は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した実力派ライターです。本書は、日本在住の中国人を取材して、本当の姿を聞き出した、内容の充実した作品です。

取材先は、劇団員、留学生、教授、妻、学校、チャイナタウンなど多岐にわたります。日本にいる中国人の実態が非常によくわかり、そうだったのかと思えた点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



劇団四季には、中国人俳優が24人、韓国人俳優が48人。700名いる所属俳優の1割以上が外国人俳優。中国人・韓国人俳優のほとんどが日本名の芸名を名乗っている。「名前」という文化的アイデンティティーを死守する気概が、中国人には感じられない

・中国で雑技団にいた人は、日本で器械体操をしていた人より体ができている。ウォーミングアップを一切しなくても、ケガをしない。中国ダンサーの身体能力の高さとハングリー精神に、中国でのミュージカルの可能性を感じる

・中国共産党は、「千人計画」をぶちあげ、「海外有名学者」や「海外傑出人物」の呼び戻しに力を入れ、一人百万元(1500万円)を支給したうえ、最高峰の大学や企業、研究機関に、破格の待遇を用意して迎え入れている

・日本にいる中国人の大学教授や研究者のほぼ全員が、本国から好条件の誘いを受けている。しかし、彼らが勧誘に乗らなかったのは、子供の教育の問題。日本で教育を受けた子供は、言葉の面でもメンタリティーの面でも、中国人よりずっと日本人に近くなっている

・池袋界隈は「東北三省」(遼寧省・吉林省・黒竜江省)出身、蒲田は福建省出身、大宮は上海出身など、民族や出身地で、多数の「在日中国人コミュニティー」ができている

・反日・嫌日になるのは、バイト先などで日本人から受けた差別や屈辱による場合が断然多い。1990年代に留学生の間でささやかれた「留日反日」(日本に留学して反日になる)という自嘲は、いまだ死語になっていない

・「国家」が嫌いなら「国民」も嫌い。日本人は「国家」と「国民」を分けて考えられない

・日本の入国管理局は、留学生の送り出し地域別のブラックリストをつくっている。福建省や東北三省、内モンゴル自治区を不法就労や偽造文書作成などの前歴から要注意地域とみなし、それらの地域出身の留学生の入国審査をとりわけ厳格化している

中国人留学生の多い大学では、彼らだけで固まる傾向がある。日本人学生も、群れ集って声高に話す留学生たちを「何気に怖い」と遠巻きにながめ、近寄ろうとしない。中国人留学生も、日本人学生に対し「いつまで経っても中に入れてくれない」と不満を募らせる

・拝金主義と利己主義が蔓延する今の中国で、「親孝行」という徳目だけはまだ生き残っている。中国人留学生は、卒業式に両親を呼ぼうとする

・山形、秋田などの東北地方には、外国人妻が大勢暮らしている。これら地域のファミレスは、外国人妻たちの溜まり場になり、中国語や韓国語やフィリピノ語が飛び交っている。山形県の外国人妻の数は、二千人を超え、その半数近くが中国出身者

・中国はいま高度成長で、みんな気持ちが「お金、お金」に向かって、心というものを失いかけている。医者でさえ賄賂をとる。みんな、株で「もうかった、もうかった」という話ばかりする。中国にいたら、同じような人間になってしまう

連れ子のいる中国人花嫁が増え続けている。特に「東北三省」出身の花嫁に、連れ子の姿が目立つ。日本人男性への一回の仲介料は、200万円台から300万円台が相場

・1899年開校の神戸中華同文学校(小1~中3まで681名の生徒)では、日本国籍者が74%近くにのぼる。にもかかわらず、日本国からの援助がほとんどない。中華同文学校の教員給与は、兵庫県内の公立学校に比べ、4分の3にも届かない

・華僑への就職差別は、1980年代中頃まで明らかに存在した。旧財閥系有名企業でも、日本国籍者以外に、内定通知取消をしていた。今では逆に、中国語が堪能な華僑の子弟のほうが、就職に有利になった。日本企業の手のひらを返すような振る舞いに危惧を感じる

・華僑は、在日韓国・朝鮮人社会がとってきた、民族差別を日本社会に訴えるやり方と、あえて距離を置き、民族差別反対運動に関わらないほうが無難とみなしてきた

・いま中国では、競争し合っている。向上心も強いけど、物欲が半端じゃない。日本に住んでいたら、「これ欲しい、あれ欲しい」とか少なくなった。たまに中国に帰ると、友達から「静かになった」「ボーっとしてる」と言われる。日本文化が知らず知らず、浸みこんだ



「在日中国人」の実態や本音を聞き出した本は、少なかったように思います。中国との関係がぎくしゃくしている時代だからこそ、今必要な本なのかもしれません。

本書を読むと、中国国家と在日中国人を単純に同一視できなくなるのではないでしょうか。


[ 2013/07/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『中原淳一の世界・幸せになる言葉』

中原淳一の世界 幸せになる言葉中原淳一の世界 幸せになる言葉
(2013/02/06)
ひまわりや

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著者は、戦前と戦後間もないころ、画家、イラストレーター、デザイナーとして、今のファッション文化の先駆けをつくり、女性から圧倒的支持を受けた方です。本を紹介するのは、「美しく生きる言葉」に次いで2冊目です

本書には、その多くの作品と洗練された言葉の数々が収められています。その言葉の一部を要約して、紹介させていただきます。



・いつまでも古くならないもの。それこそが、最も新しいもの

・しあわせは心の中にあるもの。つまり自分がしあわせと感じること

・人間の生き方の中で、一番正しい生き方は、自分らしい生き方をすること

・美しいものにふれることで、美しさが増している

・女らしいとは、甘えることではない。女らしい慎ましやかな態度、そして男には持つことのできない神経を持つこと

・美しさに甘えていたのでは、決して愛される人にはなれない。美しくなくても、美しい心になることによって、人はいつの間にか、その人の美しさを発見する。人間は、瞬間だけを見ているのではない

いい人とは、いい行いが自然に心からできる人のことを言う

・美しくありたいと思ったら、美しくなってからでも、なお磨くことを忘れてはならない。毎日の生活は、美しい心の人になるように心がけること

・本当に女らしいのは、男の人では持てない、女の人だけに持つことのできる、美しい心を持つこと

・働くということは、働くということに対する心構えを身につけるということ

・美しく気どってすましているよりも、明るく微笑んでいるほうが、ずっと気持ちよく美しく感ぜられる

・微笑みを持つためには、健康で明るい気持ちを持っていなければならない。また、たえず、微笑みを持っていれば、本当に気持ちの明るく美しい少女になれる

・自分の持っているものをよく考えて、それを、人のために、世の中のために、どうすれば一番いいかということを、一生懸命に考えて、実行する人が一番素晴らしい人

・温かく、優しい真心を持った少女。聡明であって、生意気でない少女。自分の身の回りのことを皆工夫して楽しんでいる少女。本を読むことが好きで、健康で、花を愛して、音楽を理解する。こんな少女が好き。そして、ピアノが弾けたらなおいい

・あなたを愛してくれる方に、余計な心配をかけてはいけない。それは、愛される者の責任として、愛してくれる人に対する心だから

・自由が許されると、どんどんそれを自分勝手な、自分だけが都合のよいほうにもっていく。人の厚意に慣れてしまうということは、お互いに不愉快な結果になる

・美しいものを美しいように外に現せる技巧を身につけること

・まず清潔であること。美しさの最も尊いものは清潔。どんなに心の美しい少女でも、不潔なものを身につけていたのでは、人々にその心の良さを見てもらえない

・身だしなみの目的は、自分の醜いところを補って、自分の姿が、いつも他人に快く感じられるようになること

新しさとか変化とかいうものは、自然に生まれてくるもの。つまり、その時代の変化の対象とか標準とかが流行

・一人一人が、美しく豊かに暮らせるのは、個人の幸福ばかりでなく、日本全体が美しくなる

・嬉しい思い出になるようなことを、たくさん持っていれば、生活はますます楽しいものになる。嫌な不愉快な思い出ばかりだと、本当の楽しい生活はできないことになる。美しい楽しい思い出を持つためにも、今、美しい楽しい生活をしないといけない



天才とは、従来の既成概念を飛び越えて、新たな夢を提案し、後輩たちに希望を与える存在になる人です。

著者は、終戦後すぐの昭和20年代に、立て続けに少女雑誌を創刊しました。それらは、少女の夢になり、目標になりました。まさに、終戦後を駆け抜けた天才だったのではないでしょうか。


[ 2013/07/28 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『ラ・ロシュフコオ-箴言と考察』

ラ・ロシュフコオ 箴言と考察ラ・ロシュフコオ 箴言と考察
(2010/04/22)
ラ・ロシュフコオ

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ラ・ロシュフコオに関する本は、「ラ・ロシュフコー箴言集」「ラ・ロシュフコー箴言集(二宮フサ訳)」に次ぎ、3冊目です。

350年前の作品なので、翻訳者によって訳し方が微妙に違ってきます。今回は、前にとり上げていなかった箴言を中心に、紹介させていただきます。



・もしわれわれが欠点を持たなかったら、ほかの人の欠点に気づく場合、こうまで嬉しくないはず

・率直とは、心をむき出しにすること。世の中に、率直な人はいくらもいない。普通、世間で見出される率直は、他人に信用されようとする巧妙な偽りにすぎない

・真実が世を利することはある。しかし、それよりは、真実らしい行いが、世を毒する

他の支配を受けまいとすることは、他を支配すること以上に困難である

・人に見境なく悪を為すことは、あまりに多くの善を為すことほどには危険ではない

・初めから不可能な事は、いくらもない。われわれには、事を成就させるための励みが、手段以上に欠けているのだ

・その極に達した腕の冴えは、物事の値打ちを知り抜くところにある

・自分を卑下することは、しばしば、他を服従させるために人の用いる偽りの服従にすぎない。自分を高くするために、自分を卑しくする高慢心の手管である

・大部分の人間の報恩感謝の念は、もっと大きな恩恵にありつこうとする欲望にすぎない

・人間の馬鹿さ加減をついぞ見せなかった人間が世の中にあるとしたら、それは世間が、その馬鹿さ加減をよく探さなかったからだ

・いやになるわけにいかない人を相手にするのは、とかくいやになりがちなもの

・われわれの人品が下がるとき、趣味もまた下がる

・どんなに美しい行為でも、もしそれを生んだ動機が残らず世間にわかったら、われわれはしばしば、それを恥ずかしいことに思う

・何かの才を持っている愚か者ほど、厄介な愚か者はない

・人から気の毒に思われたいとか、感心されたいとか思う心は、しばしば、われわれの人を頼りにする心の大部分をなす

・優しそうに見える人は、通常、弱さだけしか持っていない人。そしてその弱さは、わけなく気難しさになり変わる

・この世で最も幸福な人は、零細な富をもって足る人であるので、偉大な人と野心深い人とは、この点で最も惨めな人である。なぜなら、彼らが幸福になるためには、限りなく富を寄せ集める必要があるから

・幸福になることは、さほど苦労でない。それより、自分は幸福だと人に思わせることが苦しいのである

・正義は、われわれの持ち物を他人に取られてはならないと、しきりに気づかう心にすぎない

・細かいことに気づく人と細かすぎる人とは大変に違う。細かいことに気づく人は、いつも人に喜ばれる。しかし、細かすぎる人は、真っすぐに道を進まず、しきりに、脇道や遠回りして、計画を成功させようとする。そんなやり方はまもなくばれ、人に恐れられる

・心に熱を持っている人と、明るい心を持っている人は幾分違う。明るい心を持っている人には、機敏さがあり、美しさがあり、正しさがあるが、心に熱を持っている人のほうが、急速に立身出世する

・生まれつき他にまさった人であっても、そうでなくとも、人はその身分と顔にふさわしい様子と口調と素振りと感情を持ち続ければ持ち続けるほど、他から喜ばれ、それから遠ざかれば遠ざかるほど、他からいやがられる



フランスの大貴族で、公爵の位にあったラ・ロシュフコーが、政変で失脚した後に書き記したのが、この「箴言と考察」です。だから、人を裏側や斜めから見た、拗ねた表現様式になっていますが、それもまた魅力です。

人が有する嫌なところを抉り出すようで、目を背けたくなりますが、これもまた現実であり、真実です。本書は、人間関係に悩んでいる人に、何らかの考察を与えてくれるのではないでしょうか。


『植物の不思議な生き方』稲垣栄洋

植物の不思議な生き方 (朝日文庫)植物の不思議な生き方 (朝日文庫)
(2013/02/07)
稲垣栄洋

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本書には、植物の巧みな戦略が描かれています。外敵、競争、受粉、悪環境などに対して、植物たちは、どういう道を選んできたかがよくわかります。

植物たちの涙ぐましい努力は、われわれ人間社会にも参考になるところが多いように思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・アリストテレスは「植物は逆立ちした人間である」と評した。口に相当する「根」が一番下にあり、胴体に相当する「茎」がその上。生殖器に相当する「花」が、植物の一番上

・植物の葉の表面にはワックスの層でコーティングされている。これが城壁のように病原菌の侵入を防いでいる

・植物は活性酸素を除去するためのさまざまな抗酸化物質を持っている。ポリフェノールやビタミン類も植物が持つ抗酸化物質

葉を食い荒らす昆虫は、植物にとって実におそろしい敵。傍若無人に片っ端から葉をむしゃくしゃ食べまくる。病原菌に比べれば、体もすこぶる巨人で、まるで怪獣のよう

毒を盛るのは、戦わずして強靭な敵を殺す常套手段。力を持たない植物が強大な敵を倒すには、これほど有効な手立てはない。生き残るためには、卑怯などと言ってはいられない。かくして植物はありとあらゆる毒性物質を調合し、身を守る道を選んだ

・タバコの成分、ニコチンは害虫から身を守るための物質。野菜のえぐみも本来は防御のための物質。シソやネギやハーブの香り成分も、害虫を防ぐために植物が身につけたもの

・植物の毒を体内に蓄えて自らの身を守る昆虫は多い。それらの昆虫は、食べられるものなら食べてみろと、自らの体を毒々しく目立たせて、危険な毒を持つことをアピールする

・ボラタイル(SOS信号を出す揮発物質)を感知して、イモムシの天敵である寄生バチがトウモロコシを助けるべく駆けつける。寄生バチも、どこにいるかわからない餌のイモムシの存在を効率的に知ることができる。なんともうまくできた仕組みになっている

・人間を震い上がらせるアシナガバチやスズメバチでさえ、アリに襲われるのを恐れて、中空にぶら下がった巣をつくり、巣の付け根にアリの忌避物質を塗っている。アリの強さは他の昆虫に抜きん出ている。植物界には、そんなアリをボディガードに雇うものが多い

・リンゴ、桃、柿、みかん、ブドウなど木の上で熟した果実は、赤、橙、ピンク、紫色のように赤系統の色彩が多い。これは、鳥が赤色を最も認識するから

・葉のつき方は、5分の2や8分の3などのフィボナッチ数列の角度に従っている。植物は、黄金比に近似の5分の2(逆回り1.67)8分の3(逆回り1.6)を選んだ。それは、葉が重なりあわずに効率よく光を受けるためや、茎の強度を均一ににするため

・花びらは、ユリが3、桜が5、コスモス8、マリーゴールド13、マーガレット21、ヒナギク34。花びらの枚数もまた、フィナボッチ数列によって作り出されている

・「つる植物」は、「他人に頼れば苦労せずに大きくなれる」という図々しい生き方で、スピーディな成長をする。「絞め殺し植物」は、頼った相手を亡き者にして、財産を奪う

・花がここにある、ということを昆虫にアピールするため、花びらは「看板」がわり。昆虫に合わせて、早朝に店を開き、日中閉じるアサガオやツユクサの「営業時間」。植物にとって昆虫への「サービス品」が蜜。その蜜を一番奥に配置し、「案内板」を表に出している

・花が昆虫を呼び寄せるのは、蜜を食べてもらう代わりに、花粉を運んでほしいため。長居する困り者の昆虫に「いつまでいるのですか。そろそろ次の花へ行ってもらわないと困りますよ。こっちだって慈善事業でやっているわけじゃないんだから」と昆虫に仕向ける

・黄色い花が好みはアブ。白色好みはコガネムシ。紫が好みはミツバチ。赤色が好みは蝶々

・早春の花はアブ好みの黄色が多い。アブは移り気だから黄色の花は群生する。コガネムシは不器用だから白い花は平たく咲く。ハナバチは同じ花を識別できるので、紫の花は離れて咲く。蝶々は大量の花粉を遠くに運ぶので、赤色の花は大きく、大量の蜜を奮発する

・植物の果実は、実り熟すことが使命。実り熟すことは同時に老化を意味する。決心したようにエチレンを放出した果実は、自らを老いさせ、死出の旅を急ぐ

・ロゼット(タンポポなど)は冬の寒さに逃げることなく、冬の時と向き合って生きる道を選んだ。地面に張り着く葉は、光を受けながら寒さを避ける理想的な形



植物は、動かず、黙っているので、どうしても、見過ごされがちです。でも、この地球に、動物が棲みつく以前から、ずっと暮らしてきています。

その植物を観察すれば、人間社会の問題を解決するヒントがいっぱい詰まっているように感じました。本書は、その参考になる良書ではないでしょうか。


[ 2013/07/25 07:00 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)