とは学

「・・・とは」の哲学

『こだまでしょうか、いいえ誰でも。-金子みすヾ詩集百選』

こだまでしょうか、いいえ、誰でも。―金子みすヾ詩集選こだまでしょうか、いいえ、誰でも。―金子みすヾ詩集選
(2011/04/26)
金子みすヾ

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金子みすゞに興味を持ったのは、5年前に山口県の長門・青海島方面に旅し、仙崎の街に、記念館があったのを見つけてからのことです。そのときは、金子みすゞの詩が教科書に載っていることや詩の内容も深く知りませんでした。

その後、あの震災で有名になり、誰にも広く知られるようになりました。本書は、有名になった「こだまでしょうか」など、100の詩がコンパクトに収められた書です。金子みすゞには、素敵な詩が数多くあります。その一部を紹介させていただきます。



・「こだまでしょうか」 「遊ぼう」っていうと「遊ぼう」っていう。「馬鹿」っていうと「馬鹿」っていう。「もう遊ばない」っていうと「遊ばない」っていう。そうして、あとで、さみしくなって、「ごめんね」っていうと「ごめんね」っていう。こだまでしょうか、いいえ、誰でも。

・「さびしいとき」 私がさびしいときに、よその人は知らないの。私がさびしいときに、お友だちは笑うの。私がさびしいときに、お母さんはやさしいの。私がさびしいときに、仏さまはさびしいの。

・「」 お花が散って実が熟れて、その実が落ちて葉が落ちて、それから芽が出て花が咲く。そうして何べんまわったら、この木は御用がすむか知ら。

・「私と小鳥と鈴と」 私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、飛べる小鳥は私のように、地面(じべた)を速く走れない。私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、あの鳴る鈴は私のように、たくさん唄は知らないよ。鈴と、小鳥と、それから私。みんなちがって、みんないい

・「お魚」 海の魚はかわいそう。お米は人につくられる。牛は牧場で飼われてる、鯉もお池で麩を貰う。けれども海の魚はなんにもお世話にならないし、いたずら一つしないのに、こうして私に食べられる。ほんとに魚はかわいそう。

・「雀のかあさん」 子供が子雀つかまえた。その子のかあさん笑ってた。雀のかあさんそれみてた。お屋根で鳴かずにそれ見てた。

・「大漁」 朝焼小焼だ大漁だ、大羽鰯の大漁だ。浜は祭りのようだけど、海のなかでは何万の鰯のとむらいするだろう。

・「燕の母さん」 ついと出ちゃ、くるっとまわってすぐもどる。つういとすこうし行っちゃまた戻る。つういつうい、横町へ行ってまたもどる。出てみても、出てみても、気にかかる、おるすの赤ちゃん気にかかる。

・「繭と墓」 蚕は繭にはいります、きゅうくつそうなあの繭に。けれど蚕はうれしかろ、蝶々になって飛べるのよ。人はお墓へはいります、暗いさみしいあの墓へ。そしていい子は翅が生え、天使になって飛べるのよ

・「お菓子」 いたずらに一つかくした弟のお菓子。たべるもんかと思ってて、たべてしまった一つのお菓子。母さんが二つッていったら、どうしよう。おいてみて、とってみてまたおいてみて、それでも弟が来ないから、たべてしまった、二つめのお菓子。にがいお菓子、かなしいお菓子。

・「土と草」 母さん知らぬ草の子を、なん千万の草の子を、土はひとりで育てます。草があおあお茂ったら、土はかくれてしまうのに。

・「お花だったら」 もしも私がお花なら、とてもいい子になれるだろ。ものが言えなきゃ、あるけなきゃ、なんでおいたをするものか。だけど、誰かがやって来て、いやな花だといったなら、すぐに怒ってしぼむだろ。もしもお花になったって、やっぱしいい子にゃなれまいな、お花のようになれまいな。

・「」 うちのだりあの咲いた日に、酒屋のクロは死にました。おもてであそぶわたしらを、いつでも、おこるおばさんが、おろおろ泣いて居りました。その日学校でそのことを、おもしろそうに、話してて、ふっとさみしくなりました。

・「積った雪」 上の雪、さむかろうな。つめたい月がさしていて。下の雪、重かろうな。何百人ものせていて。中の雪、さみしかろうな。空も地面(じべた)もみえないで。

・「かたばみ」 駈けてあがったお寺の石段。おまいりすませて降りかけて、なぜだか、ふっと、おもい出す。石のすきまのかたばみの赤いちいさい葉のことを。とおい昔にみたように。



金子みすゞの詩には、仏教的な精神、柔らかく言えば、「ほとけの心」が宿っているように思います。

時空を超え、自我を超え、いろいろな人や物の立場に立って考え、共感できることの素晴らしさを再認識させられる詩ではないでしょうか。


[ 2013/06/30 07:00 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『超訳・ゲーテの言葉』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

超訳 ゲーテの言葉超訳 ゲーテの言葉
(2011/03/15)
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

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ドイツの文豪ゲーテの本を紹介するのは、「ゲーテ格言集」「いきいきと生きよ・ゲーテに学ぶ」などに次いで、これで5冊目になります。

詩、小説、戯曲、紀行文、エッセイ、論文など、莫大な種類と数の文章を残しているだけあって、名言をまとめた本だけでも、相当な数が出版されています。本書もその一つですが、その中で、心に響いた箇所を、幾つか紹介させていただきます。



・何の努力もせずに何の能力も得ていない者は、人になりきれていない

・装飾品は、本当の自分を隠すことはできても、変えることはできない

・人は、役立つ人間しか評価しない。だから、他人の評価を喜ぶのは、自分で自分を道具扱いすること

・相手を楽しませて、「一緒にいること」を喜ばれるのが、紳士の第一条件

・知っていることを確認するのは楽だが、知らないことを覚えるのは辛い

・たいていの人は、進む道を誰かに指示されないと前進できない

・他人に命令を下す者には、資格が要る。それは、これから築く未来の姿をはっきり見据えていること

・愚かな人間には、次の三つの型がある。一つは「高慢な男」、もう一つは「恋に狂った娘」、そして、最後の一つは「嫉妬に駆られた女」

・人間は、いつも忙しくて騒がしい人間たちの中でこそ、何かを創り出せる。その騒がしさが創造のヒントになり、きっかけになり、エネルギーになり、参考になる

力を持つ者は、行動するのが義務。その者が語るだけで済まそうとするのなら、それは卑怯な逃避だ

・純粋な正しさなど、世間では滅多に役立たない。それどころか、世間の動きを止めてしまうことさえある。だから、正論を唱える者は、たいてい反論にさらされて、苦い思いをする。結局、人の世は清濁併せて成り立っているのだから

・美しい虹でも、15分も消えずに空に架かっていたら、誰も見上げ続けようとはしない。感動とは、短命なもの

・興味、関心、好奇心。これらの心なくしては、人生には何も残らない

・その時々の流行や風潮に合わせるだけの生き方だと、人生はあっという間に過ぎてしまう。人生をじっくり味わいたいなら、もっと根本的な人の世の仕組み約束事を学ぶこと

・人は結局「最高の自分になること」が唯一の目的だ。「他人とそっくりになること」や「世間の求める姿になること」などは、人生の本当の意味ではない

・人の道は、選ぶものではない。自分で切り開いていくものだ

・若いうちに老人の偉大さに気づき、老いてからも若い頃のひたむきさを忘れなければ、もっと実りある人生が送れる

・人のするべきことは、ただ一つ。それは、他人の幸福を祈ること。それだけで、すべての不幸はなくなる、他人の不幸も、自分の不幸も

・人は、忙しければ悪事を為さない。悪事というのは、暇な人間がやらかすこと

・本当に完成したものなら、時が経っても変わらない。全くそのままの姿で、後の世に伝わっていく

・誰からも反論されない意見は、中身が空っぽの言葉の羅列に過ぎない

・人が不機嫌になるのは、誰かが悪事を企んでいることに、感づいたときである。だから、いつでも機嫌の良い者は、勘の鈍い者である

勇敢な戦士は、敵を恐れない。賢明な戦士は、敵をあなどらない

気高い人物は、気高い人物を引き寄せる。気高い人物は、気高い人物を尊敬するから



本書を読んで、再度、ゲーテの慧眼、叡智に触れることができました。やはり、ゲーテは立派な存在です。

世の中とは何か、人間とは何か、そして、人生とは何かを考え続け、求め続けて、そこで得た貴重な言葉は、後の世のわれわれにも、数多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。


[ 2013/06/28 07:00 ] ゲーテ・本 | TB(0) | CM(0)

『日本人の人生観』山本七平

日本人の人生観 (講談社学術文庫 278)日本人の人生観 (講談社学術文庫 278)
(1978/07/07)
山本 七平

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著者は、日本の病、日本人の精神、日本人とは何かについて、考え抜いた評論家です。「空気の研究」「あたりまえの研究」などの著書が有名です。

本書は、1978年の出版後、ずっと版を重ねてきた書です。著者の日本人観がよく示されている本です。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・人間の思考の範囲は、非常に限定されたもの。「自由に考える」といっても、これは一人間の記憶の量の範囲内でのこと。こう考えると、記憶の量がその人の発想を決めてしまうわけだから、「憶える」という作業は、実に大切な作業になる

・質の良い記憶の量を増やせば増やすほど、その人間の発想の総量は増えていく

・天才とは、普通の人が絶対に結びつかないと考えている二つ以上の概念を結びつけて、新しい世界を開く人

・意味もわからず暗記させられた文章が、徐々にわかってくるという状態は、解説付きで何かを読んで「ワカッタ」と思って、それで忘れてしまうのと全く別の状態。まず暗記して、その内容が後に一つ一つわかっていく状態こそ、「その人のものとなった」状態

・自分の知っている言葉で記憶の限定を受け、それが思考の限定となり、同時に判断の限定となる。この限定を飛び越えて何かができる人間は実際にはいない

・この変転しやすい社会に生きていく上で最も必要なことは、変転の背後にある伝統の基礎をつかむこと

・多くの人が、生涯計画という形の発想をしているが、これは社会が動かないことが絶対的な前提になっている

・みんな体制の絶対を信じたがっている。これは紙幣や貯金への信仰にも表れる。これらこそ、われわれが持っている非常に強固なる信仰であり、宗教的信仰のようなもの

・「社会とか、この世界というのは動かない。その中をわれわれは通過していく」となると、未来も絶対的に動かないのだという宗教的信仰が出てくる

・われわれは「作為(する)」より「化為(なる)」をよいと考えている。意識的・作為的に何かを「する」のは否定される。自然なことがよろしいわけで、計らいはよろしくない

・「ごく自然に生きる」とは、自分ではどうにもならない自然の変化、いわば自然的な環境の変化に適応して生きることだが、自然現象でない変化(外圧など)に対しても、われわれは同じように対応する

・福沢諭吉は、何かに取りつかれたような、過激な声高な攘夷論者の主張を聞き、その殺気だった顔を見ながら、「この人は本心では、自分の言葉を信じていない。信じていないから、こういう態度になるのだ」と、冷静に観察している

・戦争直後「騙された」は流行語だった。「騙された」ならば、全日本人を「騙す」という大陰謀に成功した人間がいたはず。だから、別に騙されたわけではなく、「騙された」本人が自分を騙していたわけで、騙されたかっただけのこと

・幸福な状態の期間は、不思議なほど短いわけで、「今の時代は必ず終わる、終わった時に、自分はどうすべきか」の意識を、心のどこかに絶えず持っていたほうがよい。そして、終わりを意識しつつ現在の自分を規制していく発想で、自己の方針を定めていくのがよい

・人間の生み出した思想は、すべて人間の所産であり、よって、いずれの思想も絶対的権威として人に臨むことは許されない。啓蒙主義や民主主義の権威化など、それ自体がこっけいな言葉

・「日本人は原則(プリンシプル)のない民族だ」の無責任な批評がしばしば載る。この世界に原則のない民族など存在しないが、こう言われても反論できないのは、われわれが自らの原則を把握していないからに外ならない

・各人がその属するすぐ上の組織を「天=絶対化」すれば、日本全体の総合的な合理的運営は不可能となる。政府は諸集団にはさまれて、何一つ決断を下し得ず、マスコミは諸集団への気兼ねから「正論」を吐けず、何人も「さまよえる」心理状態となってしまう

・人間は、自然の秩序内にいるのであるから、それに従っていけばいいと考えた場合、人間の自由意思は否定される。そこから出てくるのは、「順応する如く志向する自由」であり、「一尊への徹底的順応」という形になっていかざるを得なくなる



われわれは、大きな宇宙秩序の中に生きている、長い歴史的時間の中の一部に生きている、と考えると、「自由意志」といったものが萎えてきます。

萎えてくるだけではなく、誰かに、自分の人生を委ねてもいいと考えるようになります。著者は、日本人に、その危険性があると述べています。人間としての「自由意志」と自然の「秩序」とのバランスを見極めることが重要なのかもしれません。


[ 2013/06/27 07:00 ] 山本七平・本 | TB(0) | CM(0)

『善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか・救心録』曽野綾子

善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか 救心録 (祥伝社黄金文庫)善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか 救心録 (祥伝社黄金文庫)
(2009/08/29)
曽野 綾子

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著者の本を紹介するのは、「なぜ日本人は成熟できないのか」「完本戎老録」などに次ぎ、5冊目です。いつも、平和ボケの日本人、甘っちょろい大人を叱ってくれます。

本書でも、日本人のノーテンキさに喝を入れ、真の国際人、真の大人とは、どういうものかを数多く教えてくれています。その一部を要約して、紹介させていただきます。


・物事には裏があり、人には陰があると信じ、疑い深く生きれば、裏切られることはない

・善人は自信があるから困る。人の心がわからなくて、自分が善人であることにあぐらをかいているから

・すぐ他人に同情し、手を貸す、情の厚い人間がいる。しかし、このような手の貸し方が、自ら解決しなければいけない当事者に甘える気分を起こさせる

・資金の全額を出すのはよくない。相手51%こっちが49%というのが理想。そうすると、こちらも威張らないし、向こうは誇りを持てる。そして、その後どう自助努力していくかを見守ったほうがいい

・善意ほど恐ろしいものはない。悪意は拒否できるが、善意は拒否する理由がないから

・仮想敵国を想定し、お互いの間に何が起こるか繰り返し繰り返し、予測し、修正し、また予測して、妥協案を考え出すことでやっと、戦争に至らない状態が可能になる

・どこの国でも、近隣の国とは利害が一致せず、肩肘張っていないとやられてしまうと教える。しかし一方で、隣人故に感情も超えて助けなければならない場合があるとも教える

・人間は、時には好意を持って、時には憎悪によって相手を理解する。好意だけで相手を完全に理解できればいいが、人間の眼が鋭くなるのは、多くの場合、憎悪によってである

・話し合いによる平和を実現しようなどと簡単に言う人々こそ、実は平和の敵。平和などというものは、そんなに簡単に実現することはない

・善意でしたことでも、必ず正しいことばかりではない。人間はいつも正しいことだけをするものとは限らないから。善意というのは、「あなたらしい」ということ

かっとなる人は弱い。弱い人間は正視し、調べ、分析するのを恐れる。強い人間は、怒る前に、その対象に関する冷静なデータを集める。好き嫌いは後のこと。まず知ること

・幼児性はオール・オア・ナッシング。あいまいな部分の存在意義を認めようとしない

・人間関係の普遍的な基本形は、ぎくしゃくしたもの。齟齬、誤解、無理解である

・現代人の多くは、人道的なことを言いながら現実の行動は何もせず、知りもしない他人の行動を批判し、体制におもねり、公金を平気で使いながら、自分の意志を通す勇気はなく、どこにも欠点がないようで、実は何一ついいことはしない人物ばかり

・極端な悪人と善人は、共に人を困らせるが、ほどほどの人、いい加減な性格は、嘘つきでない限り、世の中でそれほどの悪をなさない

・泥棒が「泥棒をしちゃいかん」と言うと迫力がある。言葉と人物を一緒にせず、人間がいかに分裂していて、自分にないものを説教するかということを楽しみに感じればいい

・人生の面白さは、そのために払った犠牲と危険と、かなり正確に比例している

・文明の恩恵に浴しながら自然が保たれることなどない。ホタルが飛ぶ土地には、工業も産業もない。ホタルか雇用か、どちらかをとるのが人生

・凧の糸は自由を縛るように見えるが、重い糸に縛られて初めて、凧は強風の青空に舞う

・味方だから受け入れ、自分を非難するようになったら拒否するという思考形態に変わってきたら、老化がかなり進んでいる

・他人は自分の美点と同時に、欠点に好意を持つ。自分の弱点をさらすことによって、相手は慰められる。それは優越感だと怒る必要はない。それもまた、愛の一つの示し方

・愛というのは、見つめ合うことではない。同じ未来を見ること

・人から嫌われた場合、その人の視野から消えてあげるのが、一番穏やかな方法

・親が子にしてやれる最大のことは、子供に期待しないこと



人間とは矛盾した存在、人生は厳しくて当たり前、ということが分かっているのが大人であり、それが分からないのが子供。日本には、成熟した大人が少ないと、著者は言っておられます。

渡る世間が鬼ばかりという現実を見据えれば、成熟した大人になることを目標としなければいけないのかもしれません。


[ 2013/06/26 07:00 ] 曽野綾子・本 | TB(0) | CM(0)

『転落・ホームレス100人の証言』神戸幸夫

転落―ホームレス100人の証言転落―ホームレス100人の証言
(2010/02)
神戸 幸夫

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成功体験記は多いですが、失敗体験記は、非常に少ないように思います。本書は、ホームレス100人に取材して、転落の要因(家族、性格、学歴、お金、ギャンブル、酒、仕事、犯罪など)を一人一人から聞き出した貴重な書です。

ホームレスに15年間密着し続けてきた著者でしか、この本を書き上げることはできなったかもしれません。ホームレスの貴重な証言や資料の一部を、要約して紹介させていただきます。



・家族が原因でホームレスになった人が多い。「酒乱の父におびえた」「嫁の治療代が払えなかった」「継母に可愛がられず拗ねて家出」「里親に奴隷のように扱われた」などが理由

・ホームレス100人の出自は、富裕層11人、中流層40人、貧困層34人、富裕層から貧困への零落3人、不明12人。貧困層(生活保護費受給世帯など)出身がやはり多い

・生まれ故郷に実家のあるホームレスは多い。しかし、居候する肩身の狭さとホームレスの気楽さを訴える人が多い。こうした考えの底流には、日本人の家族観の変容がある

・その昔であれば、人を押しのけるのが苦手な人や、人づき合いが苦手な人も、農業、漁業、林業、職人の世界に居場所を求められた。しかし今は、他人とコミュニケーションが取れないと、共同体から排除されるという、「無口で少し変わり者」を許容しない社会

・ホームレス100人の最終学歴は、未就学及び小学校まで4人、中学中退2人、中学卒36人、高校中退7人、高校卒31人、大学中退4人、大学卒6人、その他及び不明10人。高校卒以下の学歴では、安定した収入を得るのが困難になっている

・ホームレス100人の結婚形態は、結婚経験なし37人、同棲経験あり8人、妻と死別2人、離婚26人、別居中5人。ホームレスに堕ちる要因に、未婚と離婚体験が多い

・男が本気で結婚したいと考えたときのエネルギーはパワフル。結婚するときには、相手の女性の人生を引き受ける覚悟と、子供ができれば、その子を育てあげる覚悟も必要。しかし、ホームレスの人々には、そうしたエネルギーや覚悟が希薄な人が多い

・ホームレスには離婚経験者が多い。ほとんどのケースが、男のふがいなさに女性の側が愛想を尽かして離婚に至っている。女性から三行半を突きつけられた離婚の痛手は、相当な重さでのしかかってくる

お金が原因でホームレスになった人が多い。「連帯保証人になって」「会社が倒産して」「販売ノルマを自腹で払った結果、借金が膨らんで」などが理由

・借金を重ねて返済不能になるまで膨らませてしまった当人たちにも問題はあるが、簡単に金を貸す消費者金融の存在や、そのグレーゾーン金利を認めてきた国のシステムの不備が、人を借金苦に追いやったと言える

・取材した100人のホームレスのうち、ギャンブルに凝っていた(いる)と答えた人は19人。「全財産1億2000万円競馬に使った人」「競馬と競輪に明け暮れ、家に一銭も入れなかった人」「麻雀にはまって、結婚できなかった人」など

・ホームレスのうち、酒で身を持ち崩した人、今も酒が手放せない人は20人。そのうち、酒による暴力事件を起こした人が3人、アルコール依存症であった人が3人。酒は入手が手軽なだけに、現在も継続中の人が多い

・100人のホームレスに転じた理由は、バブル経済崩壊による仕事の減少22人、ケガ・病気21人、高齢20人。この3つの理由が拮抗して高い

・ホームレスの人々が抱える病気は、高血圧、脳梗塞の後遺症、アルコール依存症、結核、ヘルニア、腰痛、クモ膜下出血、脚痛等の病名が挙がる。同情を禁じ得ないのは後遺症の残る病気。また、うつ病、統合失調症などの精神疾患を抱えている人も多いと言われる

・ホームレスたちは、いくつかの職業を転々とし、転職するたびに労働条件が悪化し、果ては日雇いを中心とした土木作業員に行き着く。100人のうち、路上生活を始める直前の仕事は、44人が土木関係

・インチキ背広の営業、暴力団構成員、地上げグループ員、町金融経営などのインチキ商売違法ギリギリの世界の人たちも、ホームレスに堕ちていく。一見派手に見えるが、これらの商売は、どれも賞味期限が短い

・ホームレス100人のうち、元自衛隊員が9人いる。自衛隊員であったことが、キャリアになっていない



ホームレスになった理由は、「家族が冷たくて」「気が弱くて」「学歴がなくて」「妻が去って」「カネが返せなくて」「ギャンブルにはまって」「酒に呑まれて」「体を壊して」「仕事が続かなくて」「ヤバイことをして」のように大別できます。

精神的な弱さから堕ちていく人が多いように感じました。誰でも、その可能性があるということを知っておくべきなのかもしれません。


[ 2013/06/25 07:00 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『ためこまない生き方』越山雅代

ためこまない生き方ためこまない生き方
(2011/02/11)
越山雅代

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著者は、アメリカで手広く商売を営んでおられる方です。シカゴ在住だそうです。

アメリカで成功した理由が精神面によるものとして、本書で、その考え方を公開されています。その中で、注目すべき点がいくつかありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人間は「出す」生き物。息を吸い込んだままでは死んでしまう。「出すもの」を我慢するのは、つらいだけでなく、生死に影響する。出すことは、とても大切なこと。心や体が病気になるのも、「出す」ものを出さず、ためこみ、抱え込んでいるから

・「腕利きの船乗りは荒海を好む」(中村天風)。今挑戦している大きな試練や困難な体験を通して、人はこの先さらに成長していく。この世は学びの場

・人生には、それまでの寝ぼけた自分をたたき起こしてくれる目覚し時計が用意されている。このベルは、「お金」や「健康」、「人間関係」の不調、という形で現れる

・「喜びはどんなに大袈裟に表現してもよい」(中村天風)。自分の気持ちを「拡声器」を使って、大きく膨らまして伝えること。コツは、「感謝はやや大袈裟に、ただし誠実に」

・「キャンセル、キャンセル」。これはアメリカでよく使われている言葉。嫌なこと、悪いことを考えてしまったら、この言葉を唱えて、「心配しなかった」ことにしてしまえばいい

・「いいことの告げ口」は、よい人間関係をつくるチャンスになる

・「強運」な人のほとんどは、一見、「不運」のような人であり、チャレンジや課題の多い人生を歩んでいる

・人は、本来、「人の喜ぶことをする」ことに、大きな喜びを感じるようにできている。だから、人が助ける機会を奪ってはいけない。変な遠慮やプライドを捨て、素直に助けを求めること。人に尽すのが「与える」ことならば、人の助けを受けるのも「与える」こと

・天真爛漫を「超訳」すると、「周りのことなど気にしない、天の真実にそった生き方

・困難なことに出合っても、それを「耐えなければならない修行」から、「○○大作戦」というゲームにしてしまうこと。「大作戦」という名前をつけると、不思議とやる気が出て、本気で計画を練るので、成功する

・相手の「気持ち」になっても、一緒の感情を味わうことができるだけ。相手の「」となって初めて、その人の納得できる的確なアドバイスができるようになる

・必死で、一生懸命で、少し危なっかしいところがあると、多くの人は「そのまま放っておいたら大変なことになってまずい」と本能的に感じ、進んで助けてくれるようになる

・「やります宣言」のメリットは、周りの人があなたの目標を知って、その目標に向かって頑張っている姿を見ると、ついつい手助けをしたくなること

・「できない人」に「できない人」だと文句を言っている間は、あなたも「できない人

・成功者に共通しているのは、心が豊かで、夢や目標に無心に一生懸命に向かっていくこと。そして、子供のように無邪気で、自然体で、シンプルで、気取らないこと

・「神様」とは、何か人間の知恵や理性を遥かに超えた「大いなる力」「高次元の意思」といったイメージのもの

・明治維新の志士たちは、あかぬけない恰好で、愛想のない顔をして、鋭い目でにらみつける「茶髪でやんちゃな田舎の暴走族」のような人たち

・情報や叡智は、お金や物より、人の人生に大きな影響を与える貴重なもの。せっかく持っている情報はどんどん出すこと。情報源になると愛される

・何かをやろうというときに一番大切なのは「ASK」。「ASK」には、「尋ねる」ことと「助けを乞う」ことの二つの意味がある。成功したければ、とにかくなんでも「ASK」

夢を奪う人は、「やろうかな、やめようかな」と迷っているときに相談しても、「そんなこと、うまくいくはずがない」しか言ってくれない。夢を奪う人には気をつけること

・アメリカには「Street Smart」(路上の叡智)という言葉がある。多くの成功者は、路上で賢くなった人が山ほどいる



本書を読むと、日米の成功哲学は、表現方法は違えども、同じものを感じます。

天真爛漫な人が、自分の可能性を信じ、目標に向かって努力していれば、その姿に、人は心を打つのかもしれません。まずは、天真爛漫になることから始めていきたいものです。


[ 2013/06/24 07:00 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)