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「・・・とは」の哲学

『新版・ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点』手島佑郎

新版 ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点新版 ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点
(2003/04)
手島 佑郎

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タルムードとは、ユダヤ4000年の記録であり、そこには、成功も失敗も記されています。ユダヤ人は、タルムードを学ぶことによって、成長してきました。

しかし、このタルムードを読むのは、難解で躊躇していました。本書は、タルムードの中から、ビジネスに関する箇所を選別した書です。タルムードの入門書として、読みやすい本です。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・ユダヤ教やイスラム教は、利息を禁じている(現実には、利息をつけての金銭の貸し借りが横行しており、再三禁止を命じている)。利息禁止だからこそ、ユダヤ人は実業という形で財産形成をはかり、投資や投機でさらにこれを殖やし、成功したものが多い

・貧富のアンバランスがあるから、お金はものをいう。全員が金持ちになってしまったのでは、金持ちになっても意味がない

・金持ちは常に少なく、貧乏人が圧倒的多数。金持ちは貧乏人からの利益の吸い上げによって富を築いている。金持ちからの、たらい回しによって、富を築いているのではない

・社会は拡大再生産を続けていかないと、やがて萎縮消滅する。拡大再生産のためには、生産技術の維持と継承、ならびに子孫の拡大増加は必須条件。幼子らが元気活発であれば、次世代の家族の繁栄も民族の発展も望める

・「ならず者は罪を恐れない。大衆は敬虔でない。恥ずかしがり屋は学ばない。短気な者は教えない。商売に耽りすぎる者は賢くならない。人々がいない場所で人間らしくあるべく努めよ」(ヒレルの言葉)

古典研究は、毎日の仕事と無関係に見える。だが、日々の仕事を離れて、真理の前に心を虚しくすることが、精神を鍛え、広い視野から物事を判断することを可能にする

・人が尊敬に値するかどうかは、自分の力で生活できるかどうか

・有名人の能力は過大評価され、凡人の能力は過小評価される。人に機会と責任を与えて、やらせてみよ。そうすれば人は伸びる

・原則として、ユダヤ人社会では、まず若い者から発言させる仕組みになっているから、ユダヤ人は闊達に意見を述べる

・人間とは不慮の過ちや事故を引き起こす可能性を常に持っている存在。そういう人間観を土台に、個人の責任の取り方を明示し、周知徹底させようとするのが、タルムードの基本的な考え方

・「余裕」と「意志」と「」、これは人が前進するための三要素

・理屈よりも行動が先行する。行動で先行してみて不都合なことがあれば、それから、おもむろに反省する。行動しないで議論しても、話がかみ合うはずもない

・学問と知恵こそは、ユダヤ人全体の存続に関わる最重要事。家柄や名門よりも、ユダヤ教の学殖と知恵が尊敬される。今日でも、ユダヤ人社会では、賢人学者には、権力者や金持ちよりも上席が用意される

・ユダヤ人のビジネスの基本は「広く浅く多く」であって、「狭く深く少なく」という発想はない

・ユダヤ人は、狭い専門領域だけに終始しようとはしない。間口の広さは、接触の多さと情報の多さとなり、新しい着想やビジネスチャンスの創出に関係する。要は、多く稼ぐ、多く儲けるかではなく、いかに多くの人々と接触できるかの発想

・ユダヤ人の母親は、普段から息子が早く一人立ちするように、しつける。生活習慣の中で、自立独立を子供たちに教える

・日本人は、契約とは、強者が弱者に押しつけるものであって、弱者が強者に提案するとは考えられていない。ユダヤ人と根本的に考え方の違いがある

・日本では、相手が自分よりも弱いと見るや、途端に高圧的にさまざまな要求をし始める。それでいて、高圧的要求の正当さを裏付ける根拠を何も説明できない。それが世間の常識、世間で当たり前だからとしか説明できない

・ユダヤ人の世界では、訴訟においても必ず三人の証人を立てる。客観というものは、少なくとも第三の視点から観察を得て初めて成立する



ユダヤ人は、タルムードの教えによって、宗教観以上に、人間観、社会観、ビジネス観が形成されているように思います。

過去の失敗を反省することで、成長してきた人や民族は、どんな事態が起きようと、しっかり生きていけます。このことが、一番大きな財産になるのではないでしょうか。
[ 2012/05/31 07:05 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『中国人に学ぶ「謀略の技術」』福田晃市

中国人に学ぶ「謀略の技術」中国人に学ぶ「謀略の技術」
(2007/05/10)
福田 晃市

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中国人のしたたかさに関して、今まで「厚黒学・腹黒くずぶとく生き抜く」「高潔じゃない中国人が好き」などの本を、とり上げてきました。

そのしたたかさや駆け引きの基本となっているのが、孫子を初めとする兵法書です。兵法書が中国人に与えた影響は大きいようです。

本書は、その兵法の中でも、もっともずるい「謀略」について述べたものです。事が及んでから、卑怯だと中傷しても、後の祭りです。そうならないためのポイントが、本書には数多く掲載されています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・中国の兵法家は、「自分のためにつくウソは許されないが、人のためにつくウソは許される」と考える。つまり、私欲を満たすためではなく、公益をはかるためにウソをつく

・特定の情報を流したり、流さなかったりすることで、自分の思うどおりに相手をコントロールする。これが情報操作

スパイ活動は、孫子の兵法の「五間」に学ぶこと。「郷間」(敵の身近にいる人間の利用・住民など)、「内間」(敵国の内部にいる人間の利用・役人など)、「反間」(敵のスパイを利用)、「死間」(誰かを犠牲にしてのスパイ活動)、「生間」(生還を前提にしてのスパイ活動)

・スパイ活動を行うには、敵国の解任された役人、処刑された人の子息、処罰された家の人などの恨みを利用すること

・「秘密」にすることで、スパイの働きを神妙にする。「厚遇」することで、スパイの心をがっちりつかむ

出向してきた人に取り入り、うまく信頼を得たところで、巧みに情報を選んで流す。すると、本社や本庁を操りやすくなり、自分たちに都合のよい状況をつくり上げていける

・「李衛公兵法」によれば、スパイ活動のターゲットは、1.「間君」(君主)2.「間親」(一族)3.「間能」(有能な人材)4.「間助」(仲間)5.「間隣」(同盟国)6.「間左右」(側近)7.「間縦横」(口のうまい人)

・トップの近くには、上昇志向が強い人が多い。そんな人は立身出世に役立つことなら、どんなことでも好んでする

・中国の兵法家は、競争相手の組織の人に会ったら、その人のライバルとなる人物をそれとなくほめる。すると、その人物に疑念を持ち、敵対心が芽生え、内輪もめを引き起こしてくれる。競争相手の内部が混乱すれば、競争しやすくなる

・人は赤の他人が言うよりも、身近な人が言ったほうが信じやすい。中国の兵法家は、ライバルをコントロールしたいときには、その人の人間関係を調べて、アプローチする

・ダメな人ほど威張る。ダメな人は、できる人と違って手玉に取りやすい。ダメな上司やお客は、媚びを売ってやる(笑ってあげる、感心してあげる、笑顔を向ける)と、動く

・口で言うより、文書にしたほうが、信じてもらえる。証拠が残るから、手紙をうまく使えば情報操作できる。「正しい文書を装い」「ウソをホントと信じ込ませ」「人を思惑どおりに動かす」ことがポイント

・何かを言うときは、ゆっくり話す。何かをするときは、ゆったり動く。自信にあふれた言動や表情を目にすれば、相手は、勝手に信頼し、思い込み、心理的に逆らえなくなる

・人は団結していれば強くなるが、不和になれば弱くなる。だからこそ、ライバルを不和にするには、「ウワサを流す」「デマを飛ばす」こと

・相手から「あの人はできる人だから交渉もうまい」と身構えられたら、やりにくくなる。「あの人は少し抜けているから、やりこめられる心配もなさそうだ」と思わせ、油断を誘えば、やりやすくなる

・パートやアルバイトの人に話を聞けば、自ずと他社の内情が推察できる。出入り業者を使うのも手

・自国=憐れな被害者、敵国=野蛮な侵略者というイメージをつくりあげることに成功すれば、国際社会を味方に引き込める

・情報については、必ずウラをとる。そうしないと、まんまと敵にダマされてしまう



騙すというよりか、騙されないために、読んでおきたい書です。

調子のいいときほど、策略にはまる危険があります。そうならないためにも、こういう世界があるということを知っておくことが大事ではないでしょうか。
[ 2012/05/30 07:09 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『西鶴に学ぶ:貧者の教訓・富者の知恵』中嶋隆

西鶴に学ぶ: 貧者の教訓・富者の知恵西鶴に学ぶ: 貧者の教訓・富者の知恵
(2012/01/24)
中嶋 隆

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お金と欲を正面から見つめない人が書く文章には、重みがありません。きれい事、絵空事の場合が多くなります。

井原西鶴はお金と欲にこだわった、日本最初であり、世界最初のベストセラー作家です。西鶴は、俗物ではなく、江戸初期の大坂に現れた、偉大なる職業作家と評するのが正しいと思います。

本書には、井原西鶴の作品から読み取った教訓が、ふんだんに掲載されています。気に入ったところを「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「世の中には金銀がたくさんあるものなのに、これを儲ける知恵が沸いてこないのは、商人と生まれて悔しいこと」(世間胸算用)

・「資本を持たない商人は、知恵才覚を働かせて商売しても、儲けを利息にとられて、人のために苦労することになる」(西鶴織留)

・商人の信用は、律儀な生活と地味な服装から得られる。そして、信用は演出するものである

・「自分の心がけひとつで、大金持ちになれるもの。そもそも大阪の金持ちは、代々続いたのではない。たいていは、丁稚から成り上がった人たち」(日本永代蔵)

・「遠国へ商売にやる手代は、生真面目な者はよくない。何事も控え目にして、人のやったことを繰り返すだけで、利益を得ることが難しい。胆力があって、主人に損をかけるような者のほうが、かえって良い商売をして、取引の損失を埋めるのが早い」(日本永代蔵)

・「商人が家業に失敗して破産する原因は、遊女遊びと商品の先物買いの二つ」(西鶴織留)

・「人をだましたとしても後が続かない。正直であれば神も頭に宿り、清廉潔白ならば仏も心を照らすものだ」(日本永代蔵)

・「お客様は神様です」という言葉には、どこか嘘が感じられてしまう。神様とまでいかなくても、西鶴は「お客様は家族やで」と言いたかったのではないか

・蓄財には覚悟が必要。ただその覚悟が人間らしさを失ったときに、金と人との関係が逆転して、人が金に食われてしまう。つまり、人が人であり続けること

・「人置き」(人材派遣業)にしろ、「小質屋」(金融業)にしろ、貧乏人から金を稼ぐには、同情心を捨てなければならない

・「富裕な者は悪事を隠すことができるが、貧乏人は恥が世間に知られてしまう」(西鶴織留)

・「金銀があり余るほどあって目出たいのは、二五歳の若盛りより商売し、三五歳の男盛りに稼ぎだし、五〇歳の分別盛りに家業を揺るぎないものにして、惣領に家督を譲り、六〇歳になる前に楽隠居した人に言えること」(日本永代蔵)

・「人は四〇歳より前には懸命に稼ぎ、五〇歳から楽しみを見極めて楽隠居するほど、寿命を延ばす薬は他にない」(西鶴織留)

・「町人の出世とは、奉公人を一人前にして、その家の暖簾を多くの者に分けてやることであり、そうすることが、奉公人を抱えた主人のなすべきこと」(日本永代蔵)

・「二代続いた金持ちはいないし、三代にわたって女郎遊びを続けられた者もいない」(西鶴置土産)

・「この世で利を得るためには、急流にかけられた水車のように働き、片時も油断してはならない」(日本永代蔵)

・「長年商売をして、客の出入りが多い商家は、店を改築してはいけない」(日本永代蔵)

・金儲けには「かわいらしさ」が必要である

・「結婚は、一生に一度の大切な取引。これで損したら取り返しのつかないことなのだから、念には念を入れたほうがいい」(日本永代蔵)

・善意でカムフラージュされた人の欲心は、金儲けの種になる



江戸初期(1600年代)に、これほど合理的、客観的、現実的な思想が生まれていたのに、それが、明治維新の武士道精神、昭和初期の軍国主義で壊されてしまったのが誠に残念です。

今、グローバル経済の中で生き抜いていくには、江戸初期の井原西鶴と彼を育んだ大坂という都市に学ぶことが多いように思います。
[ 2012/05/29 07:09 ] 偉人の本 | TB(1) | CM(0)

『一倉定の経営心得』

一倉定の経営心得一倉定の経営心得
(1999/06)
一倉 定

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一倉定氏は、社長だけを対象にした、経営コンサルタントでした。亡くなられてから十年以上経ちますが、その遺された文章は、今でも輝きを失っていません。

トップは、どう考え、どう行動すべきかの原点になる言葉が、本書にいっぱい詰まっています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・お客様は、命令はしないが、自分の意に添わない時、「無警告首切り」をやる。つまり、黙って、その会社の商品を買わない。過去の実績を一切認めてくれないお客様をしっかりとつかまえ、さらに新しいお客様をつくりあげていくこが企業の生きる道であり、経営

・収益は一生懸命努力することによって得られるのではなくて、商品が売れることによってのみ手に入れることができる。収益は会社の内部にはない。内部にあるのは費用だけ。収益は外部にある、つまりお客様のところにある

好業績の根本原理は、「わが社の事情を一切無視し、お客様の要求を満たす」こと

・社長の定位置は社長室ではない。お客様のところ

・お客様が望むのは、全ての品が揃っていることではなく、自分の買いたい品が豊富に揃っていること。市場の全ての要求を満たそうとすると、全ての要求を満たせなくなる

・事業経営にきれい事は危険。事業は学問でもなければ、理論でもない。事業の存続を実現する戦い

・いい会社とか悪い会社とかはない。あるのは、いい社長と悪い社長

・すぐれた決定は、多数の人々の意見から出るのではなくて、すぐれた経営者から生まれる。ワンマン決定は権力の現れではなく、責任の現れである。これが決定の大原則

・優柔不断は誤った決定よりもなお悪い。決定に伴う危険や部下の不満を考えて、イタズラに迷っていたら、会社をおかしくしてしまう

・人間はみな生活の向上を願い、自己の才能を発揮したい。これが、一個の人間としての「自己拡大」の本能。会社を発展させなければ、従業員の自己拡大の欲求は満たされない

・今日の事業収益は、赤字でない限り、社長にとって大した重要性はない。大切なのは、あくまでも、会社の将来の収益

・見込み違いが分かってこそ、正しい舵取りができる。だから、目標は、その通りいかないからこそ役に立つことを知らなければならない

・小売店に払うマージンは販売手数料ではない。その本質は「売場借用料」。自ら店舗を作るには、多額の費用と時間が必要。同様に、問屋に払うマージンも販売手数料ではない。「販売網使用料」である

・「小さな市場で大きな占有率」こそ、優良会社になる近道

・値切られるのは、値切られるほうが悪い。自らの努力を忘れ、お客様を恨むのは誤り

・会社の中の数字は、絶対額で見るだけでは不十分。必ず「傾向」で見よ

・社長とは、企業の将来に関することをやる人。そして、それは社長以外には、誰もやってくれないこと

・企業内に良好な人間関係が維持されているということは、革新が行われていない実証

・組織論者は、責任の範囲を明らかにしないから仕事がうまく行われないと思い込んでいるが、これは、全くの見当違い。責任の範囲を明確にすると「それ以外のことには責任がない」ととるのが人間というもの

・口頭による指令は忘れられ、文章による指令は守られる

・社長は、ムリを承知で社員に頼め。社員が「ムリ」と言うのは、できなかった時の予防線。できたら手柄になる。社員が「ムリではない」と言えば、できて当たり前と等しい

・人材の下には、人材が隠れていて育たない。人材は、伸びるべき新人の芽を摘んでしまう。社長は人事異動をためらうべきではない



社長と丁々発止で、築いてきたものが、文章に現れているように思います。この本を、社長の立場にいる人が読めば、グッとくるものがあるのではないでしょうか。

社長=トップ=リーダーです。人を率いる人にとっても、参考になることが数多くあるように思います。率いる人の常識論が覆されるかもしれません。


[ 2012/05/28 07:04 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『六十歳以後-植福の生き方』米長邦雄

六十歳以後―植福の生き方六十歳以後―植福の生き方
(2007/05)
米長 邦雄

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著者は、史上最年長で名人位を獲得した米長邦雄さんです。現在は、永世棋聖で、日本将棋連盟会長をされています。

タイトルにもある植福とは、幸田露伴が「努力論」で唱えた「幸福三説」(惜福・分福・植福)によるもので、運のつくり方を説いたものです。

著者は、この幸福三説をもとに、還暦を過ぎて、人はどう行動すべきかを論じられています。私自身、60歳まで、時間はまだありますが、参考にしたい点が多々ありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・宮本武蔵の「五輪書」に、「いつくは死ぬる手なり」という一文がある。「いつく」とは、安定している、動かないという意味。要は、「変わらない」ということ。変わらないのは、死ぬこと。死にたくなければ、どんどん変わっていくしかない

・人が老いやすいのは、夢や好奇心を失ったとき。なまじ常識的で物わかりのよい大人になど成長しないほうがいい

・六十を過ぎても、心の若さを保ちたいと思ったら、肉体の衰えなどに惑わされてはいけない。変わることを恐れないこと

・しばらく考えても結論が出ないことは、その後、いくら考えたところで答えが出ない。なぜなら、そこに絶対的な基準がないから

・スランプとは、強さや勢いが行きすぎたときに起きる。実力があっても、何かの理由で、その実力が発揮できない状態とも言える。実力がなかったり、実力をすべて出し切っても負けるような場合は、スランプとは呼べない

形勢が悪くなったとき、最もマズい対処の仕方は、冷静さを失って不用意な動きをすること。次に悪いのは、ふて腐れて勝負を投げ出してしまうこと。それに対して、望ましい対処の仕方は、形勢の悪さを受け入れ、じっと反撃に出るためのエネルギーを貯えること

・いつか必ず死ぬことはわかっている。だから、いつになるかわからないそのときまで、ただ生きることだけを考えて生きる。死んだ後のことまで考えたって仕方ない

・「福を惜しむ人は福を保つを得ん。福を分つ人は福を致すを得ん。福を植うる人は福を造る。植福なる哉、植福なる哉」 (幸田露伴・努力論)

・会社はピークのときに入ったらダメ。ボトムのときに入って、五十歳になったときに、ピークを迎えるような会社を選ぶこと

過去と戦う者は全敗する。「あの頃は若かった」「あの頃は金があった」「あの頃はモテた」は、すべてダメ。未来を見つめていくこと。年をとっても、過去を振り返らずに、前へ、前へ

・ケチには三つある。お金のケチ体のケチ(自分の体を相手のために動かさない。不潔)、そして、心のケチ(面倒くさい)。この三つともケチだと、絶対にモテない

偉い坊さんは、たいがい年をとってから女性にモテる。女性の方が放っておかない。離さない。その人間性、心の優しさに女性たちが惹かれる

・命を捨てても、新しい国を創ると、血潮をたぎらせた幕末の「勤皇の志士」に、当時の芸者衆や舞妓などが惚れた。ごはんを食べさせ、自分の命と引き換えにかくまった。「義」に生きようとする「志」に女性たちが惚れた

義の道を一生懸命生きていると、必ずいい風が吹いてくる。運気が上向く。応援団が現れる

・日本の男たちが、「義に生きる」覇気をなくしたために、日本の女性たちは、「男の色気」を感じなくなってしまった。そんな男など要らない。そんな男にはついていけない

・何事に限らず、それに惚れているかどうかが大事。「しかたないから○○でもやってみるか」という気持ちが少しでもあるのなら、やらないほうがいい

・どこを頂点と定め、どこで降りるのか。それこそが人生設計。引き際とその先の生き方を考えるとき、その道は、自分の利益を追求する道ではなく、自分が得たものを還元する



感じたことを、ありのままに書かれた文章は、小気味よく、心にスーッと、伝わってきます。米長さんの言われていることは、ほぼ正しいように思います。

それは、世の中に起きる普遍の事実なのかもしれません。自分が信じられる一文を糧とすれば、役に立つ一冊になるのではないでしょうか。


[ 2012/05/26 07:00 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『「都市縮小」の時代』矢作弘

「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)「都市縮小」の時代 (角川oneテーマ21)
(2009/12/10)
矢作 弘

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日本の人口が減少を続けています。地方の中小都市人口も縮小しています。ところが、驚いたことに、欧米の中小都市も縮小しているそうです。コンパクトシティは世界共通の課題となっています。

縮小の中で、人を集め、活気を取り戻した成功事例を世界中から集めたのが、本書です。大変面白く読めました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・世界の人口10万人以上都市のうち、4分の1以上が人口を減らした。この現象は世界中の、工業都市、歴史都市、重厚長大産業都市、経済停滞都市、繊維関連都市、厳冬地帯都市、鉱業都市などで起きている

・人口減少で先進諸国のトップを走る日本だが、縮小都市研究では欧米諸国に遅れている。縮小都市研究国際会議では、縮小都市国際比較、インフラと財政、代替する新しい文化創造産業などが、議論されている

・縮小の軋轢を調整しながら、経済的、社会的な縮小の負担を、社会全体でいかに分かち合うのかが、縮小都市で問われている

・地方分権改革を進めている世界の国では、自立した縮小都市ほど、他の都市と連帯して、フルセット型の都市機能を維持している

拡散都市構造を放置すると、「高齢者などの生活支障」(車社会弱者が3分の1)、「中小市街地の衰退」(防災、防犯、子育て環境の悪化)、「財政の圧迫」(都市施設の維持、行政コストの増大)などの問題が生じる

・21世紀のアメリカの「都市のかたち」を決める条件は、人口移動・ガソリン価格・都市型産業立地。いま悲惨な中西部の縮小都市も、この3条件の幾つかに支えられれば、変貌する

・縮小都市化するインナーシティに溢れる空き地を目障りなものと見ずに、可能性をはらむ土壌と考えたほうがいい。デトロイトで始まったのが、社会変革型の都市農業運動

・クリーヴランドのデザイン地区構想には、都市型創造企業を育てる狙いがある。ポスト工業化社会でも、モノづくりは終わらない。モノづくりのソフトに携わる新都市産業をダウンタウンに集積させる考え方

・セントルイスでは、街路景観の修景プログラムが動いている。225街区の美化・活性化(街路のサイン、植栽、ベンチや彫刻などのストリートファニチャー、垂れ幕などの色彩・形状のデザインコード)に取り組む。歩いて暮らせるダウンタウンを目標にしている

医療・健康産業はアメリカGDPの16%。メディカルコンプレックスは、新都市産業としての期待が大きい。病院は労働集約型ビジネス。医師、看護師、検査技師、職員などの雇用規模が大きく、研究所には高学歴・高所得者が多い。衰退都市の税収増につながる

・ライプチヒ(旧東ドイツ)では、1970年代半ば以降に市外縁部に開発した大規模住宅団地の空き家率が増え、社会主義体制時代に放置されていた「歴史的共同住宅(19世紀末~20世紀初め)」を改築したものに人気が出て、転居する人が増えている

・ドイツの縮小都市のキーワードは“穿孔”「孔(あな)をあけること。あるいはその孔のこと」。都市空間が希薄化すると、連続した街並みに孔があく。その孔を活用して、公園、原っぱ、小さな森にして、過剰住宅対策と都市環境改善の一石二鳥を狙う

・画家には、「家賃が安く、スペースを自由に使える廃墟利用が魅力」。都市が縮小すると、ある地域が辺境化する。しかし、一方では、主流派でない人が、廃墟に宿る創造性の開拓者となる

・兵庫県尼崎市の製造業出荷額は、この40年間で3倍に増加したが、雇用者数は同時期に60%のマイナス。「雇用なき拡大」という縮小都市の典型的類型。成長することばかりを考えてきた既往の都市政策手法は、限界を露呈した

・福井市のDID地区(1km2あたり4000人以上人口密度)は拡散し、「低密度の土地浪費型」で、車依存土地利用になった。大学は郊外に移り、路線バスの高い運賃と運行本数の少なさや都心の高い駐車料金で、まち中から、若者の姿が消えた

・福井市の「コンパクトな都市づくり」対策は、1.「鉄道利用者増加」(13%増)2.「都市居住者増加」(16%増)3.まち中の歩行者自転車通行者の増加(21%増)を掲げる



本書を読み、豊かになるためには、拡大信仰を捨てて、賢い撤退をすること。「小さく賢く成長する都市」になることが、日本の都市に求められているように思いました。

製造業でも、大量生産を目指さず、独自の技術で、付加価値の高い製品をつくり続けている企業が、好調です。都市も全く同じことではないでしょうか。

都市間競争に勝つということは、独自のものをつくり出し、遠くから人やモノや情報が集まるようにすることに他ならないのだと思います。


[ 2012/05/25 07:07 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)