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「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『ミトコンドリア不老術』日置正人

ミトコンドリア不老術ミトコンドリア不老術
(2009/12)
日置 正人

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ミトコンドリアは、太古の昔(われわれの祖先の単細胞時代)、われわれの細胞内に住みつき、今日に至っています。

酸素を用いた呼吸で、大きなエネルギーを作り出すのが、ミトコンドリアの役目です。しかも、副作用である活性酸素もコントロールすることができるすぐれものです。

ミトコンドリアをうまく働かせることができれば、健康回復、維持、増進が可能と、近年さまざまの研究機関で発表されてきています。

本書は、それらの結果を踏まえ、ミトコンドリアと人間の付き合い方に言及したものです。ミトコンドリアの数々の効用について、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・心臓が休むと、血流が止まり、栄養素や酸素が行き渡らなくなって、からだ全体に支障が出る。そのために、心臓は日夜、不眠不休で活動し続ける。心臓が休まないのは、ミトコンドリアが大きく関係しているから

心臓の筋肉は、乳酸を生みださないだけでなく、そのエネルギー生産率の高さで、活性酸素の害をフォローしている。アンチエイジングで目指すのは、まさに、この心臓の筋肉

・今、しんどいと感じている人は、どこかの細胞が確実にエネルギー不足に陥っている。その積み重ねが老化につながっていく

・わたしたちの体は、「解糖」(すぐにエネルギーを得ることができる)と「呼吸」(ミトコンドリアで行われ、大きなエネルギーを得ることができる)の2種類の方法で、エネルギーを作り出している

・酸素のおかげで、私たちは莫大なエネルギーを獲得することができ、動き回ることが可能になっている。そして、それは、ミトコンドリアという小器官のおかげ

酸素が足りないと、ピルビン酸がエネルギー物質になれず、乳酸になる。そして、疲労物質として、筋肉に動くのを止めるように号令を出す

・がんのような目に見える疾患は、細胞核内のDNAの異常によって起こる。そして、DNA異常を引き起こす最大の原因が、ミトコンドリアで漏出する酸素フリーラジカル

・究極のアンチエイジングとは、ミトコンドリアに仕事をさせて、エネルギーを豊富に生み出し、老化の進行に歯止めをかけること

・エネルギーを作ることは、ミトコンドリアでの有酸素活動を活発化すること。決して、食べることによるエネルギー原料を蓄えることではない

回遊魚渡り鳥のように優れた有酸素活動をする強靭な筋力を、私たち人間も授かっている。それは、心臓の筋肉。つまり、心筋だけは、回遊魚や渡り鳥のように、休むことなく、一生動き続けることができる

・すべての筋肉が心臓の筋肉のようになれば、疲れを知らない、若さであふれた体になる

・筋肉には、速筋(瞬発力)と遅筋(持続力)がある。有酸素運動をする遅筋は肥大した筋肉にはならない。背骨とその周囲の筋肉は、有酸素運動が得意な筋肉

・アンチエイジングにいい運動はヨガ。ヨガはポーズ呼吸法から成り立っている。ヨガの姿勢ポーズを維持する持続力は有酸素運動。ヨガの瞑想は、呼吸を整え、体の隅々にエネルギーを行き届かせるので、体温も上昇し、免疫力もアップする

CoQ10α-リポ酸L-カルニチンの三つを組み合わせたサプリメントなら、一連のミトコンドリアでのエネルギー生産反応に働きかけることができる

・ミトコンドリア活性には、カロリー制限がいい。しかし、カロリー総摂取量を低くすると、食べ物のカサが少ないため、便秘になりやすい。食物繊維が多く低カロリーのこんにゃく、キノコ、海藻類がその状況を改善する。発酵食品も腸内細菌のエサになるのでいい

・デザイナーズフードピラミッド(米国立がん研究所のがん予防に効果的食品)はミトコンドリアを鍛える。(ニンニク、大豆、人参、生姜、キャベツ等)(玉葱、茶、玄米、柑橘、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー等)(胡瓜、あさつき、じゃがいも、ベリー等)

腹筋運動は、姿勢を整え、深層筋を鍛え、有酸素活動を活発にする。スクワットの他に片足立ちなど、姿勢を維持し、バランス感覚をとる運動も有酸素運動につながる



われわれの生きるエネルギーは、食べること(解糖によるエネルギー)と、呼吸すること(ミトコンドリアによるエネルギー)の二つから作られているというのが、本書のポイントです。

エネルギーは、食べることでしか得られないと思っている人が多いのではないでしょうか。

食べるのは、腹七分目にして、後は、ミトコンドリアに仕事をしてもらうことが、健康回復、維持、増進の秘訣なのかもしれません。
[ 2012/03/31 07:00 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『人間・この劇的なるもの』福田恆存

人間・この劇的なるもの (新潮文庫)人間・この劇的なるもの (新潮文庫)
(2008/01)
福田 恆存

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福田恆存氏の著書を紹介するのは、「日本への遺言」「私の幸福論」に次いで3冊目です。

著者は、評論家として有名でしたが、劇作家、演出家として、劇団を主宰し、演劇活動も行われていました。

本書は、劇作家の視点で、人間や社会を評論した書です。著者の鋭い哲学的考察によって、人間や社会が次々に解剖されていくように感じます。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・喜びにせよ、悲しみにせよ、私たちは行けるところまで行きつくことを望んでいる。そして、行為が完全に燃焼しきったところに無意識が訪れる。今日と明日の間に、夜の睡眠があるように

・私たちは焔であると同時に薪であらねばならないのだが、その完全燃焼のためには、二つの性の内側から発するもの以外に、なんの要因も必要としない

自然のままに生きるというが、これほど誤解された言葉もない。もともと人間は自然のままに生きることを欲していないし、それに堪えられもしない。程度の差こそあれ、誰もが、何かの役割を演じたがっている。また演じてもいる。ただそれを意識していないだけ

・個性などというものを信じてはいけない。もしそんなものがあるとすれば、それは自分が演じたい役割ということにすぎない

・生きがいとは、必然性のうちに生きているという実感から生じる。その必然性を味わうこと、それが生きがい。私たちは二重に生きている。役者が舞台の上で、常にそうであるように

・劇的に生きたいというのは、自分の生涯を、あるいは、その一定の期間を、一個の芸術作品に仕立て上げたいということにほかならない

・人間はただ生きることを欲しているのではない。生の豊かさを欲しているのでもない。人は生きると同時に、それを味わうことを欲している。現実の生活とは別の次元に、意識の生活がある。それに関わらずには、いかなる人生論も幸福論も成り立たない

・労働、奉仕、義務、約束、秩序、規則、伝統、過去、家族、他人、等々からの逃避、それを私たちは自由と呼んでいる。まず私たちは、それらのものを、堪えがたい「いやなこと」として諒解しているという事実を見逃し得ない

・自由の名において、人々は、求めていたのではなくて、逃げていただけのこと。強いて言えば、自由そのものを求めていたのである。何かをしたいための自由ではなく、何かをしないための自由

・孤独者は再び、全体への復帰を求めずにはいられなくなる。彼は生きることが全体との一致において初めて可能であることを思い知らされる

・常に自由は、下から上に向かってのしあがろうとする奴隷の哲学を母胎としてきた

・古いものが新しいものを裁くということは、それ自体としては間違っている。しかし、その原則を否定すれば、私たちはさらに間違いを犯すことになろう

自由の原理は、私たちに快楽をもたらすかもしれないが、決して幸福をもたらさない。信頼の原理は、私たちに苦痛を与えるかもしれないが、その中においてさえ、生の充実感を受け取ることができる

・個人主義にせよ、全体主義にせよ、その原理は、人間が人間を支配し得るということにある。この原理のもとには、全体は存在し得ない

・全体を調整しようとすれば、自分が勝ち、相手を滅ぼすしか道はない。生命の貴重や平和を口にしようと、それが当然の帰結

・現代のヒューマニズムにおいては、死は生の断絶、もしくは生の欠如を意味するにすぎない。言い換えれば、全体は生の側にのみあり、死とは関わらない。しかし、古代の宗教的儀式においては、生と死とは全体を構成する二つの要素であった

・私たちは、認識において、現実の資料をすべて知り尽くすことができないと同様に、行動においても、生涯、一貫した必然性を保持することはできない。一生を整え、それに必然の理由づけを附することは、個人の仕事ではあり得ないこと



自由とは?個性とは?生きがいとは?個人主義とは?著者はそれらに幻想を抱いてはいけないと言っているように思います。

現実を直視し、全体との調和の中に、自分の人生を見出すことの大切さを述べているのではないでしょうか。

ある意味、知的に偏った人間を目覚めさせてくれる書ではないかと感じました。
[ 2012/03/30 07:00 ] 福田恒存・本 | TB(0) | CM(0)

『「孟子」は人を強くする』佐久協

「孟子」は人を強くする (祥伝社新書129)「孟子」は人を強くする (祥伝社新書129)
(2008/09/26)
佐久 協

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孔子は、権力者にとって都合のいい論理が多く、体制を維持するために利用されてきました。近年、中国は孔子を礼賛するようになっています。

孟子は、権力者に嫌われ、恐れられました。孟子の思想は、個人の自立を促し、為政者の怠慢をただし、革命を肯定する論理だからです。ある意味、乱世の時代の論理です。

今の日本の置かれている状況を考えると、孔子の論語を学ぶよりも、孟子の思想を理解したほうがいいように思います。幕末の吉田松陰も孟子の信奉者でした。

本書は、孟子の思想をわかりやすくまとめた書です。著者のユニークな解説も読みごたえがあります。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・孟子の主張の特色は、以下の三点に要約できる。1.「自己の確立と、なれ合いの排除」2.「革命の是認」3.「民意の優先

・人が何かをしたいという意志を持てば、それに見合った気持ちが動き出し、肉体もそれに付き従って動き出す。だから、正しい意志を持つことが肝心。決して、悪い意志弱気な感情に従って、肉体を暴走させてはならない

・何が一番大切かといえば、自分自身を正しく守ることに尽きる。つまり、自分自身をどう扱うかが、人生における最重要問題

・人間ならば、誰でも、人の不幸に同調する気持ちと、不善を恥じる気持ちと、人に譲る気持ちと、正誤を判断する能力、の四つを持っている。この生まれつき具わっている四つの性質は、道徳の最高目標である「仁愛」「正義」「礼儀」「智能」の芽にあたる

・聖人と呼ばれる者は、特別な人ではない。自分の心に具わっている善悪・正邪の判断能力を自覚し、自分の心と対話しながら、行動をしているだけのこと

・人の不善にばかり目を向けていると、自分自身の不善に鈍感になるという災いが来る

・人格者というのは、赤子のように、生まれたままの純真さを保っている

・教育では、自習自得の習慣を身につけさせることが、何より肝心。強制によらず、自主的に会得した知識や道徳的な境地には安住できる。安住できれば、それを自分でさらに深めることができるようになる

・人間が陥りやすい誤りは、とかく先生面をして、やたらと偉そうに教えたがること

・大人物は、余計なおせっかいをせずに、ひたすら我が身を磨くことに専念する。その結果、道徳的感化によって、周囲のすべてを正しく導いてしまう

・上手な教育者の教え方は、以下の五つ。1.「生徒の発展段階に合わせ、時間をかけて教える」2.「教育者の人格的感化によって導く」3.「手本を見せて手取り足取り教える」4.「質疑応答のディベイト方式」5.「見ず知らずの者を慕わせて、自主的に修養させる」

・正義の実行者は、とかく小人物から悪口を言われがちなもの。悪口の多さは、自分の徳の高さのバロメーターと考えるくらいのノンキさを持つこと

・利益に賢い者は「凶作の年でも生き延びられる」と言うと、やっぱり金銭勘定が一番なんだと、早合点したくなるが、そうではない。人格的修養を積めば、凶作だろうが、乱世だろうが、心を乱されることなく、泰然自若として生活できるようになる

・道義によって、人々を説得する王道政治は、民衆を心から喜んで従わせることができる。この心服という信頼関係こそが政治の基本中の基本

・自分の不正を棚に上げて、人を正しく導けた者などいない。ましてや、恥さらしな行為をしておきながら、世の中を良くした例など聞いたこともない

・天下万民のために、公正な人材登用ができる者が仁愛の自覚者。賢者を用いなければ、国は亡んでしまう

・民衆を侮り、民衆を収奪する独裁者は、民衆を怖がらせているように見えるが、実際は、独裁者の方が、民衆が自分に順わないことを恐れている

・「賢者や有能者を登用する」「物品に課税しない」「関税は取らない」「農家の私田に課税しない」「付加税は取らない」。この五点を実施する指導者には、天下に敵がいなくなる。このような指導者は、天が民衆に使わせた役人、すなわち「天吏」となる

・物事をしっかり観察すれば、知識が豊富になる。知識が豊富になれば、意識は明白になる。意識が明白になれば、心が偏らない。が偏らなければ、行動も穏やかになる。行動が穏やかであれば、家庭も和やかになる。家庭が和やかになれば、国も安らかに治まる


孔子が中央集権体制の独裁を是とする論理であるなら、孟子は社会民主主義体制を擁護する論理であることがわかります。

民主主義には、個人の自立、自己の確立が不可欠です。今、日本は、その岐路に立たされているように思います。孟子の影響をもっと受けてもいいのではないでしょうか。
[ 2012/03/29 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『ドケチ道―会社を元気にする「生きたお金」の使い方』山田昭男

ドケチ道 ―会社を元気にする「生きたお金」の使い方ドケチ道 ―会社を元気にする「生きたお金」の使い方
(2010/09/28)
山田 昭男

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著者は、岐阜県に本社を構える未来工業株式会社(電気設備資材メーカー・二部上場)のオーナーです。労働時間が日本一短い会社として有名です。

社員本位のユニークな経営は、今の日本の会社に警笛を鳴らすものです。そして、付加価値の高い経営法は非常に勉強になります。その一部を紹介させていただきます。


・未来工業は、ドケチで有名だが、休みが日本一多い会社(有給休暇を除き年間140日)。社員の年間総労働時間は1640時間。残業禁止仕事の持ち帰り禁止。タイムカードなし

経常利益率の低い会社の経営者に限って、安い賃金で、長時間働かせようとする

・1965年創業以来、赤字ゼロ。1985年から売上高も200億円を越え、2010年の経常利益率は15%。休みが多い割に、利益率の高い会社として知られる

・就業時間内に仕事を終わらせるのも、電気代の節約も、すべての社員に「常に考える」クセをつけさせるのが目的

・社員は、常に考えているから、社長に何の相談もない。未来工業は「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も禁止

・社内の蛍光灯は、引きひもスイッチが下がっている。自分の席を離れるときは、必ず蛍光灯を消すように義務づけられている。引きひもの先に管理すべき社員の名札が結ばれているのは、当事者意識を植え付けるための仕掛け

・エレベーターの「閉」ボタンを押すのは厳禁(電力消費が損)、ドアノブ取り外し(回す時間が損)、コピー機が330人いる本社に1台(コピー機の台数と仕事効率・業績向上との関係はない)など、普段見過ごしている小さなムダをなくすのが「ドケチの道」

・ドケチとは、社員にコスト意識を植え付ける最良の教育。社員をドケチにすることが、社長の仕事。それぞれの業務の中で、どういう形でドケチを実践するのかは、社員の仕事

・大手問屋と取引しない。理由は簡単、販売手数料が15%と法外に高いから。売上200億円の会社に、200人の営業職がいて、全国に30ヵ所の営業拠点があっても、そんなに経費はかからない。自社営業と中小問屋への卸だけで、身の丈にあった商売はできる

・会社のムダを本気でなくしたいのなら、社内をこまめに歩いて回り、社員の仕事ぶりを見ながら、「何かを見たら、必ず損か得かと常に考える」「社員の動きを徹底的に観察する」

・常識や慣習は疑ってみるべき。未来工業は、年間140日の休日、7時間15分という日本一短い労働時間。大手ハンバーガーチェーンのような名ばかり管理職も、派遣社員もパートもいない。全員が正社員

・残業禁止、タイムカードなし、自宅に持ち帰って仕事をすることも絶対禁止。こうなると、社員たちは逆の意味で大変。各自が目一杯仕事の効率を引き上げないと(常に考えるを実践しないと)、仕事が回らなくなる恐れが出てくる

・出張費は渡し切り方式(宿泊費は1泊1万円、差額を小遣いにしても構わない。新幹線料金を夜間バスにしてもいい)自分の得になるから社員は必死で考える

・社長の仕事は、社員たちの不満だと思われることを、少しずつ消していくこと

・未来工業のプロ社員育成法は「3ナイ」主義。「教育しない」「管理しない」「強制しない」これは、裏返せば、自分で考え、動き、その結果を自ら検証できること

・トップに対する「勝手な気づかい」が知らないうちに積み重なり、いつの間にか「思考停止」に陥り、「トップの前例」を繰り返す。前例主義という幽霊と組織の因縁を断つこと

・「他社と同じものはつくらない」「常に考える」の合言葉は、会社の生き残りをかけたもの

・命令も管理も禁止。上司は部下を説得した上で、社員を見守る。管理されるのを嫌がった人間でも、自分が管理職になると、間違いなく管理したがる人間になる。人を信じる性善説と、信じられない性悪説は、ひとりの人間の表と裏にすぎない

・「教えていただいて、すぐにつくり直しました」。誰だって、自分の意見でよりよい製品ができたらうれしい。お客さんが喜ぶものに改善していけば、製品づくりに終わりがない

・数字上の「合理化」は、会社を蝕むことはあっても、会社を強くすることは断じてない。それは、会社が、やる気を起こしたり、失ったりする人間の集合体だから


「こんな会社に就職したかった」と、つくづく思います。

日本人は、管理をしたがります。管理とは、部下を信用していない裏返しです。また、日本人は、一生懸命遅くまで働き、それを上司にアピールします。それは、上司が業績で部下を判断していないことを意味します。

このようなバカな上司がいるのは、バカなトップがいるからです。この悪循環が断ち切れなくて、日本の会社は苦しんでいるように思います。

バカなトップ、バカな上司を一掃して、このような賢い会社の制度を、若い社員たちが見習い始めたら、日本の会社に明るい未来が見えてくるのではないでしょうか。
[ 2012/03/28 07:00 ] 山田昭男・本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人』石角完爾

ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人
(2011/12/01)
石角 完爾

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石角完爾さんの本を紹介するのは、「天才頭脳のつくり方」に次ぎ、2冊目です。石角さんは、日本人なのに、ユダヤ教に改宗し、ユダヤ人となった国際弁護士です。今は、スウェーデンに暮らされています。

世界を股にかけて活躍されている著者の眼から見て、最近の日本人がどう映っているのか、興味のあるところです。本書の一部を、紹介させていただきます。


・ユダヤ社会は、徹底的に「ハウツー」を教えない社会。ハウツー本など読まない代わり、「ヘブライ聖書」の精神を解釈した「タルムード」に従う。これは、ハウツーではなく、知恵の集大成

・だめかもしれないけど、やるしかない。あきらめることは神が許さない。欧米人やイスラム教の人々は、そうした加点主義の発想を子供のころから頭に刷り込まれる

・未来に待ちかまえる夢を想像できず、減点主義のストレスで、自殺率も世界一(中高年男性は世界一)になってしまった日本。加点主義発想がないことで、大きな損をしている

・日本人が、海外で無責任とみなされる理由には、「私ならこうする」と言わないで、「多数に合わせる」ことで責任を転嫁するから

・ユダヤ人は、小さいころから「ふつうと違う人間」「他人と違う人間」になることを徹底的に教えられる

・タルムードをいくつも読んで、常に「複眼視」(物事は、表裏、上下、左右からも、あるいは壊して内側からも眺められるといった思考法)をユダヤ人たちは叩きこまれる

・「相手が攻撃を仕掛けてきた瞬間の反撃は、正当防衛として許される」。国際社会では、その場で反論しないと相手に同意したものと看做される。沈黙は相手に従ったのと同様

・欧米諸国は議論を聞いているのも好き。口論や討論、議論こそ「Wisdom」の源泉という考え。実際、議論することによって、多角的な見方論理分析能力が身につく

・日本人は「議論の文化」「反論の文化」「討論の文化」「質疑応答の文化」に慣れるべき。日本社会は、議論、反論、討論を嫌うために、世界の秘境になっている

・日本人は、証拠や根拠のないことでも、皆が「そうだ」と言っていれば、素直に信じてしまう。やはり、国際社会では「騙されやすい人々」

・国際社会では、ハッキリ「NO」と言うのは当然だが、それだけでは不十分。「NO」と言った後で、必ず「because」と続けなければならない。理由を述べて、「why」を埋める

・革新的な技術は、一度すべてをご破算にして、ゼロから創り直す「統合理論」からでないと生まれない

・謝罪会見(頭を下げて謝っている姿)は、海外では滅多に見られない奇妙な光景。日本には「叱る文化」が根づいている。叱っても何も前進しないし改善もしないのに「叱る」

・減点主義の日本では「提案しない、行動しない、自分ではしない」の「ないない人間」ばかりになっている

・駄洒落は通用しないが、「川柳」は、英語に訳せば、ジョークとして世界に通用する

・「地球温暖化が問題だ」と言われたら、すぐに敏感に反応しているのは日本だけ。世界は、言うだけ言っても、損になることは軽はずみにやったりはしない

・日本人が「What you have(何を持っているか)」を追求してきたのに対して、「Who I am(私はどのような人間であるべきか)」を追求してきたのがユダヤ人

・日本は、他人と比較し、物欲に振り回される国。「持たざる不幸感を煽る」ビジネスモデルを仕掛けられ、富を奪い取られていく

・ユダヤのお金持ちは、京都のお金持ちや近江商人に共通するものがある。京都には、間口が狭く、質素につくった「豪商の家」がたくさんある。豪邸を自慢したりしない

・日本では「いい人」と「悪い人」だけ。ユダヤ社会では、「いい人に見えるいい人」「いい人そうに見える悪い人」「悪い人のように見えるいい人」「悪そうに見える悪い人」の4タイプがいて、一番注意すべきは「いい人そうに見える悪い人」と、はっきり教える

・ユダヤでは、神によって「生涯にわたって勉強すること」が定められる。だから、嫌でも勉強し、知識を子供に教えていかねばならない


本書には、日本人に厳しい指摘が数多くあります。しかし、それを謙虚に受けとめることが大事だと思います。

「いや日本は、素晴らしい」「日本には、こんないいところがある」と反論するよりも、まずは、低姿勢で学ぶことが、次の発展成長につながるのではないでしょうか。
[ 2012/03/27 07:01 ] 石角完爾・本 | TB(0) | CM(0)

『「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す』町田宗鳳

「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す (ちくま新書)「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す (ちくま新書)
(2001/07)
町田 宗鳳

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町田宗鳳氏の著書を紹介するのは、「法然対明恵」に次ぎ、2冊目です。

「異色の経歴」(14歳で出家して大徳寺で修行、その後、渡米してハーバード大学を卒業、現在は広島大学教授)だけでなく、肉体主義(肉体を通じてこそ肉体を超える思想を獲得できる)を唱え、自ら体を鍛えている「異色の思想家」です。

本書は、信長の決断力、龍馬の行動力、円空の造形力、宮沢賢治の想像力、松下幸之助の直観力を題材にして、野性の回復を訴える内容になっています。盛りだくさんの興味深い内容を、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・環境と思想を結びつけるのが肉体。環境の変化を感じ取るのは、脳の一部ではなく、つま先からアタマのてっぺんまでの全細胞。体全体の細胞が総動員で、環境の変化を読み取り、情報を脳に送り込み、しかるべき判断を下す。そこに従来と異なる発想が生まれる

・禅の修行である「不立文字、直指人心」を趣旨とする禅宗では、教義についてあれこれ理屈をこねるのをよしとせず、修行者は坐禅を通じて全身で真理をつかみ取ることを求められる。

・禅のカナメは、坐禅だけにあるのではない。「行住坐臥」の言葉に示されているように、日常儀礼や食事作法における一挙手一投足に心を注ぎ、自らの身体が仏教の教えそのものを体現していることを理想とする

・精神主義は励ます側の権威の匂いがするが、肉体主義は肉体に内在する生命力に敬意を払うこと。運命の厳しい試練を生き抜くのは、外からの押し付けられた精神力ではなく、内から湧き出てくる生命力

・文明の恩恵を受けるということは、自分の力で生きる意欲を放棄し、知らず知らずのうちに飼育される存在になることでもある

・「感ずる理性」を持ちあわせない人格者が、いくら立派な道徳論を振り回してみたところで、いったん生命の連帯感が途切れてしまえば、人権の無視やら他の生命に対する暴力が発生してくるのは必然的

野性的思考を獲得するためには、一方では万巻の書を読破する気概をもちあわせ、また一方では、多少の危険を冒してでも現場に出ていく大胆さがいる

・奈良時代から築かれた仏教寺院の強固な権力基盤を破壊するには、日本の歴史は、信長という狂人を登場させざるを得なかった。そうでなければ、宗教を中心とした妄想共同体が、古い封建秩序の中で温存され、日本人がいつまでも暗闇をさ迷い続けた可能性は高い

・詩人は凡人とは違って、生活臭にまみれてしまってはダメ。いつも現実よりも遠く見つめながら、現象の中に隠されている本質を本能的に直感したり、これから起こるべきことを予言する能力を持っていてこそ詩人である

・野性的人間の特徴は「型破り」であることだが、「型」を身に付けることなく、「型破り」は成立しない。単に奇抜をてらった前衛的手法というのは、一時期評判になっても、時間とともに飽きられてしまうのが常

・円空仏がもつ骨太の縄文的明るさの最大の秘密は、この生死を賭した厳しい山岳修行にある。人間の脆い生命が大自然の脅威の前にさらけ出されたとき、野性的生命感覚が修行者の肉体に一気に逆流してくることがある

・真の造形力とは、新しい価値観を作りだす行為のこと。経済的価値だけを中心にした生活から脱却して、自分の魂が本当に満足できる生き方を見つけなくては実現できない

・自分の開発している技術に何らかの芸術性を感じられないのなら、そこにオリジナリティーが欠落していないか、エンジニアは疑ってみるべき

・「手の哲学」が「アタマの哲学」よりも劣っている形跡はどこにもない。日本人はモノに託して、自分の思想を見事に語り尽くしてきた

・理性知のみを偏重するうちに、心と体をすっかり分離させてしまった現代文明の犠牲者となるのは、感受性の鋭い若者たち

・日本が大きな脱皮をとげるためには、新鮮な感覚と大胆な発想を兼ね備えた野性的女性が、もっと第一線に登場してこなくてはならない。男性の甘えを無意味に許容したり、媚びを売るようでは、男性の権威を奪い取れない



著者は、最後に、異端者へのチャンス、血を混ぜることの大切さを力説しています。

今の日本の凋落ぶりは、身内だけの集団で固まり、保守的、閉鎖的行動をとってきたことが原因のように思います。つまり、野性を喪失、排除してきた結果ではないでしょうか。

嗅覚、皮膚感覚を通しての発想が、今こそ求められているように感じます。
[ 2012/03/26 07:00 ] 町田宗鳳・本 | TB(0) | CM(0)

『見えない巨大水脈・地下水の科学』日本地下水学会・井田徹治

見えない巨大水脈 地下水の科学 (ブルーバックス)見えない巨大水脈 地下水の科学 (ブルーバックス)
(2009/05/21)
日本地下水学会、井田 徹治 他

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井戸水だけでなく、湧き水も地下水です。広義の意味では、温泉も地下水です。海、河川、湖沼を除いた水は、すべて地下水かもしれません。

われわれは、地下水の恩恵に浴して、生活を営んでいるのですが、わかっているようでわかっていないのが地下水です。なにしろ、肉眼では見えない地下なので、その実態があまり知られていません。

本書は、地下水の実態をわれわれに教えてくれるものです。徐々に解明されてきていますが、まだまだ謎だらけです。勉強になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・地球上の大部分の水が海水。淡水はほんのわずか。その淡水資源のうち、河川や湖沼の水よりも多くの割合を占めるのが地下水。地下水は飲み水だけでなく、農業用水としても非常に重要。世界の食糧事情は、地下水に左右されているといっても過言ではない

・地上に降り注いだ雨などが浸透して地下水になってから、湧き水などの形で、流れ出していくまでの時間が、地下水の「寿命」。世界の地下水の平均寿命は、なんと600年強になる。一度汲み上げてしまうと、再び元の状態に戻るまで600年以上かかるということ

地球上の水のうち、海水が97%、南極やグリーンランドの氷が2%、地下水が0.66%、湖沼の水が0.01%、河川の水は0.0001%に過ぎない。淡水は地球上全部合わせても2.7%

・食糧生産に使われる灌漑用水に占める地下水の割合が最も高いのが、リビアで90%、続いて、インドが89%、南アフリカが84%、スペインが80%。農業用水だけでなく、飲料水、工業用水でも、地下水は、地球上の多くの人々の生命を支えている

地下水の用途は、飲料用、調理用(営業用)、飲食品製造用(酒飲料、豆腐、菓子)、工業原料用(化粧品、生コン)、工業用(精密機器、染色)、養魚用、農作物栽培用、浴用(銭湯)、消雪用、温調用(紡績織物、事務所)、冷却用(プラスチック、ゴム)、公園用等

・日本の地下水利用の用途別割合は、工業用水29%、生活用水29%、農業用水27%、養魚用水11%、建築物用5%

・ヒートアイランド対策に注目されているのが地下水。夏場に温度が低い地下水をくみ上げて散水し、路面を冷やす方法で、打ち水と同じ原理

・おいしい水の水質条件は、蒸発残留物(コク、まろやかさ)硬度(しつこさ、苦味)遊離炭酸(さわやかさ)、過マンガン酸カリウム消費量(まずさ)、臭気度(臭さ)、残留塩素(臭さ)、水温(温度の低さ)。水道水のおいしい都市のほとんどは地下水が水源

・地下水が多く存在する場所を「帯水層」と言う、帯水層は、砂層など透水性が高い地層。帯水層は、地下水が流れる経路になる

温泉水は、かつてはマグマの中に含まれる水分が起源と考えられていたが、最近では、降った雨や雪が地下にしみ込んで循環するようになった地下水、つまり循環水であることがわかってきた

・日本の土地の地下増温率(地温上昇率)は100m当たり3℃が平均(東京都内は0.4~2.4℃、京都を除く近畿地方は5℃超、鳥取市付近は9℃など)。1000m掘れば、たいていの場所で45℃以上になり、「非火山性温泉」が得られる

・河川の水の流速は1日で数㎞から数十㎞なのに対し、帯水層の中を流れる地下水の流速は、1日に平均1m。動きがほとんどない

・地下水は一般的に16℃~20℃。地下水が「夏に冷たく、冬温かい」のは、恒温層(深さ10~14m)の存在によるもの

地下水探しは大きく分けて、文献調査、現地踏査、現地調査(物理調査、ボーリング調査)、試掘の順に行われる

・火山の山麓や扇状地、河川の周囲などは、地下水が豊富で地下水位が高い。破砕帯(地下にかかる力によって岩石や岩盤が割れてずれた断層の中)の中に、大量の地下水が含まれていることが多い。破砕帯をはさんで地下水の流れが大きく変わる

・地下水が流れる地層の分布や井戸を掘る場所を決める際に威力を発揮するのが電流探査。地下水の探査に有効なのが電磁波探査。地下の割れ目の大きさや形の推定する放射能探査などがある

・地下水の過剰揚水(地下水の浪費)を続けていては、やがて世界の穀物生産は減少し、深刻な食糧危機を招く



石油や金属などの資源だけでなく、淡水も立派な資源です。淡水がなければ、農業生産や工業生産に支障をきたします。

淡水の宝庫である地下水を、有効にかつ持続的に使っていくことが、ますます求められていくのではないかと、感じさせてくれる書でした。
[ 2012/03/24 07:02 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『リヒテンベルク先生の控え帖』ゲオルク・クリストフ リヒテンベルク

リヒテンベルク先生の控え帖 (平凡社ライブラリー)リヒテンベルク先生の控え帖 (平凡社ライブラリー)
(1996/07)
ゲオルク・クリストフ リヒテンベルク

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リヒテンベルクは、18世紀半ばに活躍したドイツの物理学者です。でも、もう一つの顔がありました。

それは、人間観察の箴言を残した文筆家としての顔です。かの、ゲーテが教えを乞い、ニーチェ、ヴィトゲンシュタインらに愛読されました。

このリヒテンベルクが遺した「アフォリズム」を、池内紀氏が選りすぐったものが本書です。グサッと心に刺さりそうな言葉が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・慰めるとき、たいていの人は慰めよりもお説教をしている

・たいての読書家は、考えずにすむように、そのためせっせと読書に励む

・宗教が、多数者の気に入るためには、いくぶん迷信のいかがわしさを備えていなくてはならない

・しぐさや身ぶりがわからない人は、誰よりも残酷で粗野である

・人間は、過去・現在・未来の三界に生きている。どれが欠けても不幸にならざるを得ない。宗教は、さらに「永遠」という第四界をつけ加えた

・君たちに、この本を、自分を見つけるための鏡として贈る。他人をのぞくための柄つき眼鏡ではなしに

・人の性格は、その人が、どんな冗談に気を悪くするかによってよくわかる

・ある事柄を上っすべりに学ぶよりも全然学ばないほうがむろんいい。何かを判断するとき、健全な人間合理性は生半可な知識よりも正確である

長い幸せは、すでに、その長さによって意味を失う

・人を決して、その人が書いたものによって判断してはならない。同等の男たちの中で話したことにより判断すべし

予言で世渡りはできる。真理を語っては生きられない

・人間はいつも党派的であって、それ以外にあり得ない。無党派ですら党派的であって、無党派の党をなしている

・同情は悪質な施し

・年をとると何も学べないのは、年をとると指図されるのを好まないことに対応している

・いつも暇のない人は、何もしない

・頭の弱い人間が経験で習得できる最上のものは、すぐれた人の弱点を見てとるときのあの素早さである

・人間にとって、天国ほど手のかからない発明品はなかっただろう

・読むとは借りること。そこから発見をかすめ取る

・この世を楽しく、軽妙に過ごすために必要なのは、ただ一つ、すべてをうわべだけ見ることだ。思案しだすと、重々しくなる

・美しい妻は、夫の才能の一つに数えていい

・寝ているときと起きているときで考えが違う。空腹のときと、満腹のときとで、また違う

・ハエは、ハエ叩きに打たれたくないなら、ハエ叩きにとまるのが最も安全だ

・惚れ込むことがあるように、憎み込むというのがある

・ロバは馬と似ているので滑稽である。一方、馬はロバのせいで滑稽にならない

・おおかたの人間は、理性よりも流行に即して生きる

・自分は生まれる前に死んでいたのであり、死によって、再びあの状態に戻る



かのニーチェが絶賛したのも納得できます。短い言葉で、人間の本質を表現する力に、ただただ驚くばかりです。

本書が面白いと感じるようになったら、大人になった証拠と言えるかもしれません。大人が読むのに、ふさわしい一冊ではないでしょうか。
[ 2012/03/23 07:02 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『高潔じゃない中国人が大好き―情実・賄賂社会の仕組み』江河海

高潔じゃない中国人が大好き―情実・賄賂社会の仕組み高潔じゃない中国人が大好き―情実・賄賂社会の仕組み
(1999/05)
江 河海

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この本は、今から13年前のものです。経済発展の恩恵に、まだ多くの中国人が浴していない時代です。つまり、地に足がついていた時代です。

その時代だからこそ、逆に、中国人の気質、性格などの根っこの部分、素の部分が、よく見えたのかもしれません。とても、面白い本です。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・中国の「ほら吹きに税金はかからない」という諺は、「元手も力も要らず危険もない」「法を犯すわけでもなく、何の制限も取り締りもない」ので、ほらは吹きたい放題という意味

・中国人の座右の銘「人に語るは三分の話、心を全て明かすなかれ」は、「話は余地を以て語ること。三割ならいいが、五割話してはいけない、弱みにつけ込まれる」という意味

毛沢東語録「謙虚は人を進歩させ、傲慢は人を落後させる」の影響で、中国人は謙虚さの仮面を被り、「有頂天になってのぼせ上がっている」と言われないように気をつけている

如才のない人は、自分の考えや立場を旗色鮮明にすることがないし、異議を唱えることもない。意見を求められると、黙りこくるか、「まだ思案中なので、先にみなさんの意見をうかがいたいのですが」と答える

・「好漢常に当年の勇を語る」、中国人は昔の自慢話が大好き。しかし、失敗した話になると口をかたく閉ざす

・結婚式が財産を推し量り、まわりと比較する機会だと考えられているために、日頃は家計を切り詰めても、結婚式にはドンとお金を使わなくてはいけない

・中国人は、プライドが高く、とりわけメンツを重んじる。声望、栄誉、身分、地位、能力などの集約なので、人前でメンツをつぶされるのを絶対に許さない

・嫉妬深い人のことを中国では「結膜炎患者」と形容する。結膜炎患者は、誰かが出世する、金持ちになる、立派な家に住む、高学歴である、奥さんが美人など、とにかく人が自分にないものを持っていると、その人を引きずりおろして、自分がのし上がりたい

・中国人の「多数に従う心理」を表わす「先頭の鳥は鉄砲で撃たれる」「豚は太ると殺される」の諺は、出しゃばらず、逆らわず目立たずに事に当たれの戒め

・「関係網」をつくる目的は「裏口を通る」ため。「裏口を通る」ためには様々な社会的「関係」を利用する必要がある。「関係網」と「裏口を通る」ことは、密接不可分の双子の兄弟

・強大な血族・姻族関係を持つ家族は、その土地で、何事につけ優遇され、人からバカにされることがなくなる。そのため、中国人は血族・姻族を誇示し、ひけらかしたがる

・中国では、よそ者を警戒し、排除しようとする地方主義の力が非常に強い。よそ者に対しては不公平なことをやり、策を弄して、追い出さないと気がすまない

・人に権力があれば一生懸命取り入ろうとするが、権力を失うや否や、手のひらを返したように相手にしなくなる。だから、中国では、役人は退職後の生活を恐れる

・金を最大の武器にして、実権を握る者を打ち破れば、贈賄側は敵なし。収賄側の役人は、官職を守るために贈賄側の言いなりになって、大人しく服従するほかなくなる

・ごちそうは一番初歩的な贈り物で、探りを入れる陽動作戦のようなもの

・中国人は「名気」(評判の料理、レストラン)、「名人」(有名人や偉い人の名前を使った料理)を食べたがる

・中国には、大した意義を持たない会議が多い。会議の重要課題は豪華な食事にある

・「十億人民九億賭博、残りの一億株投機」。中国人がみんなギャンブルが大好きなことを形容する言葉

・中国人の大きな特徴で、趣味なのが野次馬。何か面白そうなことがあると、自分と無関係でも興味津々に首を突っ込みたがる

・プライバシーを知りたがり、口コミ情報を広めるのは、何といっても中国の女性の得意分野。「長舌婦(人のことに口出しする女)」は、耳ざとく、おしゃべりで、噂好き

・人々は何か不吉なことに出会うと、原因を自らに求めるのではなく、風水が間違っているせいだ、と理由づけをする


この本を読むと、中国人も日本人も基本的には、同じであることがわかります。唯一、違いがあるとすれば、日本人には「恥の意識」が強いということだけです。

つまり、日本人から「恥の意識」がなくなれば、日本人も中国人もほぼ同じになってしまうということではないでしょうか。
[ 2012/03/22 07:07 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『暮らしの年表/流行語100年』

暮らしの年表/流行語 100年暮らしの年表/流行語 100年
(2011/05/20)
講談社

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本書を読むと、「これが昔の流行語だったのか」と思えるものが数多く登場します。1912年からの流行語の中には、時代背景も色濃く現れています。

今回は、大正、昭和に絞って、流行語となった後、現在に定着している言葉を中心に選んで、紹介させていただきます。


・「高等遊民」(1912) 夏目漱石の「それから」の登場人物がモデルで、大学を出ても仕事に就かず、読書をしたり、芸術に触れたり、興味のある分野を研究するなど、好きなことをして暮らしている人のこと

・「銀ぶら」(1915) 銀座の町を特に目的もなく、雰囲気を楽しむために、ぶらぶら散歩すること

・「サボタージュ(サボる)」(1919) 神戸川崎造船所の賃上げ闘争で、サボタージュ戦術が実行された。労働争議の際に、待遇改善を求めるために、意図的に仕事の能率を落とすこと

・「産児制限」(1922) 出産をコントロールすること。アメリカの女性社会運動家が公衆衛生の視点から提唱した

・「バーゲンセール」(1923) 東京三越が物価引き下げを看板に、2~3割安く、売り出しを行い、早朝から客が殺到した

・「美人コンクール」(1929) 現代女性美の標準を確立しようと「アサヒグラフ」が企した懸賞付きコンテスト。他の雑誌もこれに続き、ブームに

・「彼氏」(1929) 三人称の男性の代名詞だった「彼」に、徳川夢声が文章の中で「氏」をつけ、それが流行になり、恋人の男性の意味となった

・「十銭ストア」(1931) 高島屋がアメリカの「10セントストア」を真似て始めた十銭均一店

・「転向」(1933) ある思想を持つ者が、それを捨てて、他の思想的な立場に変わること。日本共産党中央委員長らが日本共産党を批判して、転向声明を発表した

・「ハイキング」(1935) 都市近郊を走る私鉄が、乗客誘致の宣伝文句に盛んに使用して定着

・「ハリキリ」(1937) ハリキリボーイの映画がヒットして定着

・「複雑怪奇」(1939) 独ソ不可侵条約が調印された際に、平沼首相が語った言葉

・「大本営発表」(1942) 大本営は天皇直属の統帥機関で、そこから出される発表

・「ニューフェイス」(1946) 東宝が新人俳優を「ニューフェイス」として募集し、流行語に

・「ノルマ」(1948) 労働者に割り当てられた責任生産量の意味のロシア語。シベリア引き揚げ者の話から流行語に

・「ワンマン」(1949) 吉田茂首相が、貴族気取りでわがままに政治を牛耳ったところからついたあだ名から広まった

・「自転車操業」(1949) 終戦直後、中小企業が不況の中、原価を割っても倒産を避けようと生産し続けた状態を評論家が、こう表現し流行に

・「ノーコメント」「社用族」(1951)「PR」「エッチ」「プータロー」「恐妻」(1952)「八頭身美人」「プラスアルファ」(1953)「ロマンスグレー」「パートタイマー」(1954)「三種の神器」「ノイローゼ」(1955)

・「サイクリング」「デラックス」「ストレス」(1957)「イカす」「シビレる」「ながら族」(1958)「がめつい」(1959)「申し訳ない」「プライバシー」「レジャー」(1961)「青田刈り」(1962)「バカンス」「ハッスル」(1963)

・「ウルトラC」(1964)「ナンセンス」「断絶(の時代)」(1969)「目が点」(1970)「脱サラ」(1971)「ギャル」「変身」「ワーカホリック」(1972)「便乗値上げ」(1974)「フィーバー」「窓際族」(1978)

・「ワンパターン」「熟年」(1979)「ぶりっ子」(1981)「胸キュン」(1983)「キャピキャピ」(1984)「新人類」「バブル」(1986)「B級グルメ」(1987)「ツーショット」「フリーター」(1988)


流行語になって、その後定着している言葉の中には、仕事、余暇、恋愛に関するものが多いように思います。

厳しい仕事に対する、庶民の、ちょっとした皮肉、批判、息抜きのようにも感じます。まるで、川柳に似たところがあります。

これらの流行語が定着しているということは、生きることの厳しさ、切なさは、昔も今も変わらず、これからも変わらないのかもしれません。
[ 2012/03/21 07:43 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『不安家族―働けない転落社会を克服せよ』大嶋寧子

不安家族―働けない転落社会を克服せよ不安家族―働けない転落社会を克服せよ
(2011/12/09)
大嶋 寧子

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デフレが続く世の中で、非正社員の増加、賃金の低下、貧困の拡大などが問題になっています。その中で、家族はどう変化しているのか、気になるところです。

この本は、最近の統計データを基に、家族の変化や兆しについてまとめた書です。兆しを知ることによって、今後を予測することができます。

参考になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・男性正社員が高い産業、男性正社員が多い産業で、男性正社員の減少幅が大きい。97~07年に、「製造業」では257万人、「建設業」で115万人、「運輸業」で58万人、卸売・小売業」112万人の減少幅

・「製造業」では、高卒正社員の減少幅が大きい。「製造業」の生産部門は、高卒新卒男性が正社員として就職する重要な受け皿だったが、近年、その機会が大幅に縮小している

・02~07年にかけて、雇用者数が拡大したのは、男性正社員は情報通信業が20万人強、医療福祉が20万人弱。「製造業」や「建設業」で縮小した安定雇用を補えていない

・年間所得が税込300万円未満で、週労働時間60時間以上の正社員の数が、1997年の65万人から2007年の116万人へと大幅に増えた。仮に、週60時間で年50週働き、年収299万円なら、時給は997円となり、非正社員に近い

・週60時間以上働く正社員の割合は、20歳代後半~40歳代前半の男性では、20%を超えている。始業が朝9時、通勤時間片道36分(全国平均)なら、帰宅時間は11時前になる

・長時間労働を前提とする働き方は、育児期の女性の低就業や少子化の一因になっている

・子供のいる現役世帯の貧困率は、日本は13%(OECD諸国平均11%)。一人親世帯の貧困率は、日本59%(OECD諸国平均31%)と際立っている。日本の一人親世帯の苦境は、「働いても貧困から抜け出せない」ことが原因

・公立高校の一人当たり学内活動費は年間約35万円。授業料(年間約12万円)の無償化分を差し引いても、家計負担は年間20万円以上になり、決して小さな額ではない

・一人親世帯の多くが属する年収300万円未満世帯の1日1人当たり食費は約450円。1日3食とすれば、1食当たりの食費が150円。健康、体力面で問題を抱える

・国際比較で見れば、日本の高齢者向けの社会政策は手厚い。OECD平均に比べ「老齢」が136、「保健」は108だが、「障害・業務災害・傷病」「家族」「積極的労働市場政策」「失業」など、現役世代の生活を守る分野では、軒並みOECD平均の半分以下の支出規模

・日本の家族への現金給付規模は、GDP比0.4%。OECD平均の3分の1。児童手当などの現金給付が少なく、産前産後休業や育児休業に伴う所得保障支出が少ないことが原因

・教育費総額のうち、私費負担割合は33%。OECD平均(17%)の2倍。特に私費負担割合が大きいのは、就学前教育(幼稚園など)や高等教育(大学など)であり、それぞれ6割弱、7割弱である。OECD平均は、それぞれ2割、3割である

・日本の1年以上長期失業者の割合は、1994年には18%OECD平均(35%)を大きく下回っていたが、2008年に33%まで上昇し、OECD平均(25%)を上回っている。特に男性が顕著であり、長期失業者の割合が40%へと上昇している

・日本でハウジング・プア(住まいの貧困)のリスクに直面する世帯は、勤労者世帯の7%。雇用の安定度が低いほど、ハウジング・プアのリスクが高まる傾向にある

・相対的貧困率は、20歳代後半から50歳代後半までは10%前半だが、50歳代後半より上昇し、特に70歳代以上の女性では3割近くが相対的貧困の状況にある

・不本意な非正社員を放置すると、高齢期に「低年金」「低貯蓄」「単身」という貧困リスクの高い人が増加する。このことは生活保護を受給する高齢者が拡大することを意味する

・先進国の成長率と国民負担率の関係を見ると、日本より国民負担率の高い国が日本より高成長を実現していることは、高負担が経済の活力を損なわないことを示している

・OECD加盟国では、家族政策への公的支出が大きい国ほど出生率が高い傾向にある。国民負担が「働くこと」「子供を育てること」を支える政策に振り向けられる場合、経済・社会の活力や持続可能性を高める



先進国の代表(OECD諸国)と日本を、家族政策で比較すると、日本のお気楽ぶり、日本の迷走、日本の体たらくぶりが目につきます。

若い人の大人しさ(謙虚さ)と大人の若々しさ(図々しさ)が、こういう結果をもたらしているようにも思います。日本人は、若い人が若々しく、大人は大人しくすることから再出発しないといけないと思える書でした。
[ 2012/03/20 07:59 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『代表的日本人』内村鑑三

代表的日本人 (岩波文庫)代表的日本人 (岩波文庫)
(1995/07/17)
内村 鑑三

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本書は、今から100年以上前に内村鑑三が英文で刊行した著作の翻訳です。日本人の考え方や思想を5人の代表的日本人(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人)に託して、西欧社会に紹介したものです。

出版当時、海外だけでなく、日本においても、大きな反響がありました。ある意味、歴史に残る名作です。5人の著名人の生き方、身の処し方など感銘した箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


西郷隆盛

・「天を相手にせよ。人を相手にするな。すべてを天のためになせ。人をとがめず、ただ自分の誠の不足をかえりみよ」

・「文明とは、正義の広く行われること。豪壮な邸宅、衣服の華美、外観の壮麗ではない」

・「天はあらゆる人を同一に愛する。ゆえに我々も自分を愛するように人を愛さなければならない」

・「人の成功は自分に克つにあり、失敗は自分を愛するためにある。八分どおり成功していながら、残りの二分のところで失敗する人が多いのは、成功が見えるとともに、自己愛が生じ、慎みが消え、楽を望み、仕事を厭うから」

・賢者は施すために節約する。自分の困苦を気にせず、人の困苦を気にする。こうして財は、泉から水が湧き出るように、自分のもとに流れ込む。恵みが降り注ぎ、人々はその恩沢に浴する。これは賢者が、徳と財との正しい関係を知り、結果でなく原因を求めるから

上杉鷹山

・「次の言葉を日夜忘れぬこと『贅沢なければ危険なし、施して浪費することなかれ』」「言行の不一致、賞罰の不正、不実と無礼、を犯さぬようにつとめること」

・「教師である教導出役は、地蔵の慈悲をもち、心には不動の正義を忘れるな」「警察である廻村横目は、閻魔の正義、義憤を示し、心には地蔵の慈悲を失うな」

・鷹山の産業改革は二通りあった。(1)領内に荒地を残さないこと(2)民の中に怠け者を許さないこと

二宮尊徳

・「救済する秘訣は、金銭的援助をことごとく断ち切ること。援助は、貪欲と怠け癖を引き起こし、人々の間に争いを起こすもと。貧困は自力で立ち直らせなくてはならない」

・「天地はたえず活動していて、我々を取り巻く万物の成長発展に止むときがない。この永遠の成長発展の法にしたがって、休むことさえしなければ、貧困は訪れない」

・「誠実にして、初めて禍を福に変えることができる。術策は役に立たない。一人の心は、大宇宙にあっては、小さな存在にすぎなが、誠実でさえあれば、天地も動かしうる」

・「国に飢餓が起こるのは、民の心が恐怖に覆われるから。これが気力を奪って、死を招く」

中江藤樹

・藤樹の一生の目的は、聖人となること、完全な人となること。藤樹の目には、学者、思想家であるより、偉大なことだった

・「学者とは徳によって与えられる名。学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない。無学の人でも徳を具えた人は、ただの人ではない。学識はないが学者である」

・「一善をすると一悪が去る。日々善をなせば、日々悪は去る」

日蓮上人

・法華経は日蓮にとって尊かった。「我が奉ずる経のために死ぬことができたなら、命は惜しくない」とは、日蓮が度重なる危機に直面した折に口をついて出た言葉

・仏教は、インドから日本へと東に向かって進んできたが、日蓮以後は改良されて、日本からインドへ、西に向かって進むと日蓮は語った。受け身で受容的な日本人にあって、日蓮は例外的な存在

・日蓮は自分自身の意志を有していたから、あまり扱いやすい人間ではない。闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教者


キリスト教国の人々から見れば、「異教徒」である日本人が、なぜ優れているのかを示すために、内村鑑三は本書を書き記しました。

今の日本人にも、これら五人の血が流れています。平和時には現れず、危機的状況時にしか現れてこないかもしれませんが、流れていることだけが確かなように思います。
[ 2012/03/19 07:18 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『キャンピングカーで悠々セカンドライフ』藤正巖

キャンピングカーで悠々セカンドライフキャンピングカーで悠々セカンドライフ
(2008/07)
藤正 巖

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移動電話(モバイル)が増えたように、移動住宅がもっと増えてもいいように思います。キャンピングカーという言葉を、モバイル住宅と訳したほうが、イメージしやすいのかもしれません。

駐車場の一区画の面積は、大体5m×2.5mで、3.75坪になります。つまり、7畳までの大きさの車で、寝泊りできたら、駐車料(駐家料)だけで、生活できることになります。

コインランドリー、スーパー銭湯など代替サービスを上手く利用すれば、決して夢物語ではありません。また、車が動けば、旅行だけでなく、出張、介護、書斎など、実用面でも便利なことがいっぱいありそうに思います。

安くて、実用的な、キャンピングカーが発売されたら、新車を買うことを躊躇している人も、購入を検討し出すかもしれません。車は性能や機能ではなく、仕様で選ぶ時代ではないでしょうか。

本書は、実際に、キャンピングカーを買われた著者の体験記です。貴重なユーザー意見の集大成でもあります。参考になる点が多々ありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・キャンピングカーは停めたところが自宅となる。旅と異なるから、できるだけ日常を過ごす場所を決めている

・車で数泊するときは、別荘となる。行った先は避暑地であり、避寒地であり、山であり、海であり、森である。途中には、行き慣れた買い物場所と、小休憩の場所がある。どれも自宅の延長である。自宅が動いて別の自宅へ行く

・一般に販売されていた家庭用のキャンピングカーは、日常と異なった空間を求め、キャンプしながらの旅をする目的のものがほとんど。日常使うものではないから、たまにしか乗らない車の悲哀があり、動かす前に整備しなければならない

・現在のわが国で多数を占めるキャンピングカーの平面寸法は2×5m。鴨長明が方丈記を書いた庵は3m四方。その面積は、キャンピングカーの広さと同じ

・車庫に置くだけで、一軒家を手に入れた感じになる。夫婦二人で寝るには十分な空間と、必要十分な広さの居間を提供してくれる。また、シンクと二口のコンロ、調理台、小型の冷蔵庫、水洗トイレ、温水シャワーまで装備され、日常生活が十分可能

・道の駅は24時間、365日開いていて、水が供給できて、トイレが使用できる。多くのキャンピングカーの人たちが仮眠をとっている。また、日帰り温泉もありがたい。駐車場の雰囲気がよければ、そこで時間を過ごしてもいい

・キッチンは一人が入れば事足りる。慣れれば、導線も短く能率的。居間は、六尺四方(2畳)だが、二人で過ごすには十分。テーブルがあり、ソファー状の椅子が二脚あれば、食事にも作業にも十分な空間

・一般に、キャンピングカーとは、ばかでかくて、大型免許で乗る、燃費のひどく悪い、贅沢な、物好きな人間の乗る車といった、先入観があるが、普通小型トラックエンジンで、燃費はガソリンで1ℓ6㎞走る。新車で500万円、中古で200万円出せば、いいものがある

・内部がコンパクトに出来ているだけでなく、場所さえあれば、容易に外部に生活空間が拡げられる。その役割をするのが、車の外壁に取り付けられた、タープと呼ばれるテント

・天井が高く、断熱材で覆われていて比較的涼しい。全ての窓に網戸があり、天井には換気扇が付けられているので熱気を外へ抜ける。本当に暑いときは、涼しいところに移動すればいい

・元来寒い冬のヨーロッパのスキー場などで、キャンピングをするようにつくられた車を手本としているから、日本の寒さ程度では、どうということもない

・電力が使用エネルギーとなれば、日本の最も得意な技術領域の家電メーカーがこの世界に参入してくることになる。キャンピングカーの技術は、産業を再編成する起爆剤になる

・キャンピングカーのタイプには、「フル・コンバージョン」「キャブ・コンバージョン(バン型車がベース)」「トラベルバン・コンバージョン(サニタリーと就寝スペースが重点)」「バス・コンバージョン」「トラベルトレーラー(牽引車)」がある



キャンピングカーの広告宣伝みたいな書評になってしまいましたが、キャンピングカーには、まだまだ未知の可能性が秘められているように思います。日本人の感性に、狭い空間は合っているのではないでしょうか。

アメリカでは、キャンピングカーで生活している人たちも多くいます。日本も、一人暮らしや夫婦暮らしの世帯では、そうなっていくように感じました。
[ 2012/03/17 07:36 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『人生の問題がすっと解決する・名僧の一言』中野東禅

人生の問題がすっと解決する 名僧の一言 (知的生きかた文庫)人生の問題がすっと解決する 名僧の一言 (知的生きかた文庫)
(2006/12)
中野 東禅

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日本の歴史上、僧はずっと、知識人であり文化人でした。昔の僧の言葉には、その時代の教養が詰まっています。

僧の中には、宗教者であるばかりでなく、権力の中枢に入り、指南役、参謀役、相談役になった者、あるいは、あえて権力から遠ざかり、世捨て人のような哲学者になった者など、さまざまです。

本書には、そのさまざまな僧侶の知性あふれる一言が数多く収められています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「人のあやまちをいうほどのものは、わが身に徳なき折りのことなり」 (明恵上人遺訓)
人の過ちや欠点をあげつらう人は、自分自身に徳がない人だ

・「用心とは、心を用いると書申候へば、ことばにも色に出し候では、用心に成不申候」 (沢庵)
用心とは心を用いると書くのだから、言葉や顔色に出してしまってはならない

・「河に栖んで力あるものは、陸に登って悩む。虚にありて能あるものは、地に在りて力無し」 (栄西・興禅護国論)
自分にない能力を持つ者をうらやむな

・「知りてしらざれ、還りて愚痴なれ」 (一遍上人語録)
才知や学問は往生の役に立たないものだから、知っていても知らないふりをして、賢い人も馬鹿になりなさい。そして、念仏を唱えなさい

・「ただまさに、やわらかなる容顔をもて、一切にむかうべし」 (道元・正法眼蔵四摂法)
どのような場合でも、ただただ柔和な態度でものごとに接しなさい

・「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」 (最澄・天台法華宗年分縁起)
好ましくないことは自分で引き受け、好ましいことは人に振り向け、自分を忘れて人のためになることこそ、慈悲の究極のあり方である

・「丈夫の気を負って、小児の心を抱く」 (釈宗演)
勇気のある男の気力を持ちながら、子供のように純な心を持って行動せよ

・「もの一目見て、その心止めぬを不動と申し候」 (沢庵・不動智神妙録)
外界の刺激にかかわらず、自由な発想で行動することこそ、本来の不動心

・「なに事もよろこびずまた憂じよ。功徳黒暗つれてあるけば」 (無住・雑談集)
福の神と貧乏神はいつも離れないでいるのだから、少しばかりの幸運、不運があっても、喜んでのぼせあがったり、すぐに落ち込んだりするな

・「人みな心あり、心各々執るところあり。忿を絶ち、瞋を棄てて、人の違うを怒らざれ」 (聖徳太子・十七条憲法)
心の中の憤りをなくし、怒りを捨て、人が自分と異なる行動をしても怒ってはならない。人には皆それぞれに考えがあり、それぞれにその考えにとらわれるところがあるもの

・「悪人を憎むような善人は、まだ実力のない善人である」 (清沢満之)

・「もし人、智なくんば酔眠の人のごとし」 (円仁)
もし知恵(真実を正しく見通す力)がなければ、酔っ払って眠っている人と同じである

・「客に接するは独りおるがごとく、独りおるは客に接するがごとし」 (釈宗演)

・「たとい牛盗人とはいわるとも、もしは仏法者とみゆるようにふるまうべからず」 (蓮如・御文章)
立派な念仏者だとか、善人だとか、熱心な仏教者だとかと人から見られるように振る舞ってはいけない。そう見られるくらいなら泥棒呼ばわりされたほうがいい

・「人の身の五尺六尺の神も一尺の面にあらはれ、一尺のかほのたましいも一寸の眼の内におさまり候う」 (日蓮・妙法尼御前御返事)
人の心の動きは顔に表れ、さらに顔の中でも目を見れば一目瞭然。人の心はごまかせない

・「なげきなげき経蔵に入り、悲しみ悲しみ、聖教にむかふ」 (法然)
この世の苦しみに耐えながら生きている人々のことを忘れて仏教を勉強してはいけない



人間関係、仕事、家族、健康、心、死など、さまざまな悩み、不安に直面したとき、歴史上の先輩方に聞くのもいいものです。

昔から、人々の悩みは大きく変わっていません。この本を読めば、昔の相談事例から、自分に合った解決方法を見つけ出すことができます。名僧の一言を大事にしたいものです。
[ 2012/03/16 07:08 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『在日華僑が書いた華僑・華僑・ユダヤ・日本の民族商法』楊文魁

在日華僑が書いた華僑・ユダヤ・日本の民族商法在日華僑が書いた華僑・ユダヤ・日本の民族商法
(1995/07)
楊 文魁

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この本の中で、興味をそそられる「シオンの議定書」は、1900年前後に、ロシア語版で出版された「ユダヤ人を貶めるための本」「史上最悪の偽書」と呼ばれているものです。

内容はともあれ、国民を堕落させるには、どうしたらいいのかを、今から100年以上前に巧妙に考えていた人物がいたことに驚きです。

堕落の様子が、今の日本の状況に瓜二つなので、今回は、この偽書「シオンの議定書」の中から、印象深い箇所を絞り、紹介させていただきます。



・この世には、「性善」な人間より、低俗な本能に生きる者のほうが、はるかにたくさんいる。だから、政治において最も効果的なのは、学者などの議論ではなく、「暴力」と「恐怖」

・民衆はどんなことにせよ、表面しか分からないし、非論理や矛盾に誘われやすいから、理性的な助言や説得は功を奏さない。彼らは、浅はかな感情、迷信、習慣、伝統、感傷的な説に同調しやすく、党派根性に陥りがち

・モラルに制約される政治家は、政治家失格。とても権力の座は維持できない。政治家たるもの、策謀と偽善を用いなければならない。民衆が美徳とする誠実や率直さは政治において罪悪。こうした徳目は、最強の政敵よりも一層確実に政権を転覆させてしまう

・酒に浸って馬鹿になった青年は、若いうちから悪徳に誘われる。貴婦人もこの同類で、放蕩や贅沢の真似に忙しい

・歴史の事実を、公正な観察によらず、批判的検討をせず、結果だけを求めるインテリたちに、科学の法則を信じ込ませて、疑わせないようにする。マスコミを使い、理論に対する盲目的信仰を高めれば、必要なことを実行することができる

・人民の関心を商工業に引きつけなければならない。そうすれば、すべての人民は自分の利益に没頭して、共同の敵を見逃す

・優越のための闘争と市場の絶えざる投機は、人情酷薄な社会を現出する。そして、高尚な政治や宗教に対して嫌気がさし、金儲けに対する執念が、唯一の生き甲斐になる。彼らは金で得られる快楽を求め、金を偶像視するようになる

・民衆は、言論と行動を錯覚している。彼らは、その感情に訴えるものだけに満足し、公約が実行されたかどうかを見届けることをしない

・商工業に保護を加え、とりわけ投機を奨励すること。狙いは工業を不安定にすることにある。さもないと、工業は個人資本を増大させ、債務を返済する。工業の富をとり上げ、投機を通じ、全世界の財宝を手に収めるようにしなければならない

・工業を破壊するために、投機の他に贅沢を広めること。つまり、華やかなものへの強い欲望、財力を使い果たしてしまうような激しい欲求を募らせること

・政治的成功を収める秘訣は、腹の中に隠すこと。だから、外交官は言行不一致でなければいけない

・民衆を憎悪、闘争、欠乏にさらし、結局、金力の支配下に入る以外にないように追い込むこと

・民衆に事情を悟らせないために、マス・レジャーを盛んにして、芸能、スポーツをもてはやす。こうして、人間は次第に自ら思索する能力を失い、権力者の考えるとおりにしか考えないようになる

・権力を握ったからには、青少年を従順に育て、支配者を敬愛させるようにする。そして、古典と歴史の研究を廃し、未来社会の研究に眼を開かせること

視覚教育の狙いは、人々を、ものが考えられず、絵を見なければ何も理解できない従順な動物にすること

・政治犯が英雄視されることをなくすため、窃盗や殺人などの破廉恥罪の者どもと同じ席に座らせる。そうすれば、世間は、彼らを軽蔑の眼差しで見るようになる

課税の最善の方法は、財産に対しての累進税。そうすれば、財産高に応じて、何の造作もなく、税を徴収できる。貧困な階級に対する課税は、革命の萌芽となり、国家になんの利益ももたらさない

・国債は、政府が誤った行政をおこない、権力を正しく行使しなかったことの明白な証明



「シオンの議定書」には、マキャベリの君主論に少し似たところがあります。権力を長く維持し続ける方法論や策略が、ここには書かれています。

支配者、既得権益者、知識人の策略や謀略に引っ掛からないように、自己防衛するためには、このような文章を読んでおくことも必要ではないでしょうか。
[ 2012/03/15 07:56 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『アメリカン・スーパー・ダイエット』柳田由紀子

アメリカン・スーパー・ダイエット―「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実アメリカン・スーパー・ダイエット―「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実
(2010/07)
柳田 由紀子

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著者は、アメリカ在住のジャーナリストです。太っているアメリカ人の悲喜こもごもを取材された書です。

ダイエットに取り組む人だけでなく、太っている人たちのさまざまなニーズを汲み取ったビジネスも取材されています。

太っていることを否定するビジネスと太っていることを肯定するビジネスが共に急成長しているアメリカの現実を面白く読むことができました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「ダイエットエコノミーは、太らせる経済(高カロリー外食産業など)と、痩せさせる経済(ダイエット産業など)の二つに大別できる。肥満関連経済総収益は約32兆円。アメリカ経済全体の約3%」 (肥満経済学者・シアトル大学のウイリアム・ワイス教授)

・胃全体を縮める手術(約6000億円)や脂肪吸引手術(約1400億円)といった強引な減量手段にも、巨額のお金が流れ込んでいる

・「太ったまんまの経済」では、女性のスーパーサイズ服飾分野だけでも総売上が約2兆円。今や肥満関連専門業者は、服飾、スポーツ用品、趣味、ブライダルなど50に及ぶ

・病的肥満者のケアを専門とする民間企業のウエブサイトには、肥満者用の医療器具を扱う会社が100社以上紹介されている

・「こんなに肥満者がいるのだから、ビジネスの可能性は限りなくある。痩せるのは難儀。痩せてもリバウンドする。ヘロイン中毒よりリバウンド率が高いのが肥満。一度離れたクライアントも必ず戻ってくる」(肥満ビジネスの先駆企業社長・ティモシー・ベリー氏)

・肥満者に人気の商品は、「スティック装着爪切り(約9000円)」(肥満者は足先まで手が届かない)、「スティックの先にトイレットペーパーを挟む器具(約5000円)」(用を足してもお尻に手が届かない)、「便座(約12500円)」(一般品の倍くらいの特大サイズ)

・肥満度の高い南部の顧客が増えたのは、ネットの賜物。「ペイ・パー・クリック・マーケティング(クリック事業)」は、必要な人とそうでない人がくっきり分かれる。従来のマス広告は意味がない。店舗を開いても費用対効果が低い。オンラインストアのみ

・アメリカには、肥満者の棺桶を製造販売する会社もある。一般の棺が70cm×210cmまでのところ、最大137cm×244cmのスーパーサイズまで対応。また、肥満者には、アメリカで一般的な土葬(約60万円)より、火葬(約20万円)が大人気

・ダイエット洪水のアメリカで急成長しているのが「リンドラ・メディカル・クリニック」。毎日4000人のダイエッターが通う。基本コースは「週5日×8週間+その後半月のフォローアップ(約13万円)」(毎日身体検査とカウンセリングによる個人別ダイエット計画)

・ノースカロライナ州の小都市、ダーラムは、「デブのシリコンバレー」と呼ばれる。全米でも屈指の本格的ダイエットセンターが3つもあり、肥満者の聖地と崇められている。訪問者の肥満者4000人は、年間に85万円=34億円をダーラムに落とす

・ダーラムのダイエットセンターで効果が得られなかった肥満者は、ダーラムの病院の門を叩く(胃縮小手術実績10年間で2800件)。急激に減量した患者は、垂れ下がった皮膚の切除手術も行う。3~6時間で、20~90kgの皮膚を切除する大手術。手術代は250万円

肥満者解放運動が盛んになるにつれ、性生活を語る人が増えている。アメリカでは、肥満者に、どんなセックスを行っているか?のアンケートを行った「肥満セックス」本も出版されている

・医療保険会社の個人保険料は、30~34歳の場合、男女とも月々12000円~32000円だが、84kg以上の女性なら、月々25000円~65000円支払わなければならない。ほぼ2倍の金額を請求される

・減量集団「TOPS」(減量を目的とする非営利の自助グループ)の支部は、全米各地に約7000カ所。毎週1回のミーティング、ニュースレターの発行と年に一度の全米大会(減量キング・クイーンの選出)も行う。年会費約2600円

・「TOPS」の週1回ミーティングでは、体重計にのり、体重通帳(パウンド通帳)に記入。前回に比べ体重が増えたら、1パウンド(450g)毎に1ドルを会計に支払う。また、全員の前で、「ロスト」(減量)「タートル」(のろい)「ゲイン」(増量)と発表される



本書は、肥満先進国のアメリカで、急成長しているダイエット産業、肥満者産業の実態が見え、楽しく読むことができました。

日本では、ダイエット産業にスポットが当たることが多いのですが、アメリカでは、肥満者産業が着実に市場を拡大しているようです。しかも、まだ黎明期です。

まさに、困っているところにビジネスあり、悩んでいるところにもビジネスありです。アメリカの急成長産業を知る上で、役に立つ一冊です。
[ 2012/03/14 07:29 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)

『江戸のお金の物語』鈴木浩三

江戸のお金の物語 (日経プレミアシリーズ)江戸のお金の物語 (日経プレミアシリーズ)
(2011/03/09)
鈴木 浩三

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江戸の生活と物価に関する本は数多く出版されていますが、江戸時代の貨幣制度や貿易など、経済学的側面に真面目に切り込んだ一般書は、少ないように思います。

この本は、そういう意味で、真面目すぎる本なのかもしれません。気になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・「東の金遣い、西の銀遣い」と言われるように、大坂・京都などの上方や、日本海沿岸、中国・九州地方では主に銀が通用していた。関東や東国は金の通貨圏であった。日本列島は大きく金と銀の経済圏に二分されていた。ただし、銭は全国共通で通用していた

・金貨・銀貨・銭がそれぞれ対等の本位貨幣として通用することを三貨制と言う。このような例は世界でも珍しい。しかも、金は額面通りで通用する計数貨幣、銀は秤量貨幣だったので、カネの勘定方法も上方と関東では異なった

・江戸では銀相場が安いとき(金高銀安)に上方から商品を買うのが有利だった。逆に、大坂では金相場が安いとき(金安銀高)に江戸方面に売却すると得になった。だから、大きな商人ほど金銀相場銭相場の動向に敏感だった

・一文銭貨96枚をさし(銭の穴に通す麻や藁で作った縄)で通したものが百文として通用していた。そうした名残りで、現在の50円と5円硬貨も伝統的に穴が空いている

・金、銀、銭が同時に流通する市場の中で、三貨のバランス調整とともに、物価対策を行うための通貨供給量のコントロールを行っていた

・井原西鶴の「世間胸算用」では、「銀が銀儲くることばかりなり」と記されているように、お金を溜め込むだけでなく、カネがカネを生み出すこと、つまり貨幣は資本なのだという認識が人々の常識になっていた

・大坂の両替商は、手形の決済業務も盛んに行われていた。両替商同士で互いに手形を振り出し合って相互に決済することも一般的だった

・不渡手形を発行した両替商には入牢などの罰則、手形に偽印を使用した者は斬罪にするなど、幕府(大坂の東西町奉行所)も信用制度の保護に努めた。また、手形訴訟についても、他の訴訟と異なり、スピード審理を制度化していた

・享保八年(1723)には、1000石以内の先物取引が解禁され、翌年には禁止していた空米取引の黙認、1730年には、空米取引が公認された

・株の譲渡は、単なる営業権の移転にとどまらず、事業のノウハウや得意先、場合によっては従業員も含む一つのまとまった経営単位を対象とした取引だった。そうしたことが日常的に行われていた江戸時代は、M&Aの時代であった

・田沼意次の時代になると、営業の独占を幕府が保証する代わりに、冥加金運上といった間接税を幕府に納めるようになった。しかし、これが、次第に利益擁護の機能を強め、販売価格を一方的に決め、新規参入を妨げるようになった

・松平定信が行った寛政改革の一環として設立された「七分積金」の制度は、江戸の庶民向けの備荒貯穀=囲籾や、土地を担保にした低利融資の原資、低所得者向けの生活保護の財源になった

・三井高利が書いた「町人考見録」の中で、借金踏み倒しの常習犯だったのが、肥後の細川家。「細川家は前々から不埒なる御家柄にて、度々町人の借金断りこれあり」と名指ししている。「信用度ゼロの細川家」だった

・江戸の質屋の利率が最初に公定されたのが元禄十四年(1701)。このとき銭百文は年利50%、金二両以下は年利32%、金百両以上は年利20%と定められた

・享保期(1716~36)になると、領主が米の増産に努めても貨幣収入は増えなかった。作れば作るほど、米余りになって、米価は下がって物価は高騰した。これが「米価安の諸色高

・田沼意次は、貿易赤字を黒字に転換するための輸出品を全国で組織的に生産させるだけでなく、そこで得られた清国銀貨を国内通貨の原料にするなど、国内生産と海外貿易をリンクさせた「成長戦略」をとったのが特徴

・元禄の貨幣改鋳の狙いの一つは、長崎貿易での金銀流出を抑えることであった。オランダ人が慶長小判をバタビア(インドネシアのジャカルタ)に運ぶと20%の利益になったのが、元禄小判では逆に19%の赤字となった

・大名たちにとって、明治維新の新政権は、とてもありがたい政府だった。というのは、一定の身分保証とともに、夢にまで見た債務の帳消しどころか、石高の10%を家禄として保証されたから


いつの世もお金と人間に関する話はつきないものです。でも、江戸時代のお金に関する諸制度は、今の時代とほとんど変わらない、高度なシステムで運営されていたことがわかります。

ある意味、日本の金融制度は、江戸時代からほとんど発展していないのかもしれません。そういった思いを喚起させてくれる本でした。
[ 2012/03/13 07:08 ] 江戸の本 | TB(1) | CM(0)

『ランチェスター思考2 ―直観的「問題解決」のフレームワーク』福田秀人

ランチェスター思考 2 ―直観的「問題解決」のフレームワークランチェスター思考 2 ―直観的「問題解決」のフレームワーク
(2010/07/16)
福田 秀人

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福田秀人氏の著書を紹介するのは、「見切る!強いリーダーの決断力」「成果主義時代の出世術」「ランテェスター思考」に次いで四冊目です。今回の「ランテェスター思考Ⅱ」のテーマは問題解決です。

著者の本は、どの本も現実的なものばかりです。今回も役に立ちそうな箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「タイミングを失する」ことにより、やることなすこと後手に回り、チャンスを逃がし、脅威をふやす。意思決定では、「タイミングを失さないこと」が至上課題となる

敗北や苦戦からえた教訓をもとに作成したマニュアルだからこそ参考になる

・不測の事態の多くは、全容を早くつかむことができないため、「早く」を追求すれば「正しく」がおろそかになり、「正しく」を追求すれば「早く」がおろそかになる。「早く」と「正しく」の両立は難しい

・「拙といえども、速をもってすれば勝つ」(孟子)。スピード第一、安全二の次

・深刻な損失の多くは、決定を間違えるより、間違いに気づくのに遅れたためか、メンツや責任回避にこだわり、間違いを認めないために発生する

・発信者の思惑で、「省略、誇張、変形」した情報操作が施されている状況では、ゆっくり的確な意思決定は不可能

・大事なのは情報源であり、そこから発信された1次情報

・動かないことも、それが遅疑逡巡のためではなく、動くべきではないとの判断によるものなら、立派な決定である。後退することはもちろん、中止し撤退することも立派な決定である

・リーダーが、命令一元性の原則、権限委譲の原則、責任絶対性の原則の三つを守れば、部下は、信頼してがんばり、リーダーシップも発揮される

・官僚制の弊害とは、「1.何でも規則病」「2.何でも完全病」「3.何でも秘密病」「4.何でも反対病」「5.セクショナリズム」

・陸上自衛隊は、指揮官のタブーを「遅疑逡巡」「責任転嫁」「優柔不断」「威圧統御」「頑迷固陋」「先入観念」「打算主義」と簡潔明瞭に列挙している

・よいリーダーは(部下を指導する)悪いリーダーは(部下を追い立てる)。同様に、よい(熱意を吹き込む)悪い(不安の念を抱かせる)、よい(「やろう」と言う)悪い(「やれ」と言う)、よい(仕事を面白くする)悪い(仕事を苦しいものにする)

・アメリカ軍は、第二次大戦後、どういった兵士が勇敢に戦った>かを研究した。すると、「真面目で、責任感がある」「貯金に励む」「異性関係とトラブルがない」といった、よき社会人が、よき兵士であった。勇ましい言辞を弄する粗野な人間ではなかった

・1921年、アメリカ陸軍は、戦いの9原則(プリンシプル・オブ・ウォー)をまとめた。その内容は次のとおり。「1.目標」「2.集中」「3.攻勢」「4.機動」「5.奇襲」「6.指揮の統一」「7.簡明」「8.節用」「9.警戒」

・大事なのは、批判を通して思考を深めることであって、批判そのものが批判的思考ではない

・ランチェスター戦略は、次の3つの競争原則の実行を要求する。「1.ナンバー1主義」「2.競争目標(学ぶべき)と攻撃目標(奪取すべき)の分離」「3.一点集中主義」

・リーダーが、2階層上の上級リーダーの意図を把握すれば、適切かつ効果的な指揮と任務の遂行が可能となる

・「戦上手は逃げ上手」。中国の毛沢東は、抗日戦闘を繰り広げていたとき、「勝てるなら戦い、勝てなければ去る(逃げる)」をモットーにし、命じていた

・「何をなさざるべきか」を知ることは軍事的叡智の第一歩であり、「なすべきもの」を発見する最良の道である

・動機や行動の正当性をアピールする言い訳や、弱音を吐くことは、リーダーとしての信頼を崩壊させる重大なミスとなる



指揮官、リーダーとして、どう考えるか、行動するかの糸口は、戦争や軍隊に学ぶことで得られることが多々あります。

戦いの原則であるランテェスターの法則は、組織や集団を統率するのに、非常に役立ちます。組織や集団の長にいる方は、是非、現実に当てはめて、この本を読むと得られるものが多いことと思います。
[ 2012/03/12 07:29 ] 福田秀人・本 | TB(0) | CM(0)

『日本の伝統』岡本太郎

日本の伝統 (知恵の森文庫)日本の伝統 (知恵の森文庫)
(2005/05/10)
岡本 太郎

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この本は、1956年に出版された書です。岡本太郎が45歳の時に執筆されたものです。

晩年は、芸術家として活動されていましたが、この時は、バリバリの哲学者、思想家、批評家、美術評論家でもありました。フランスから帰ってきて、日本美術界の閉塞性に腹が立ってしょうがなかったのだと思います。

地球規模の視点から、日本芸術の可能性を探っていたようにも思います。こういう時代があったからこそ、後に芸術家として爆発できたのではないでしょうか。

岡本太郎の文章は、知的で教養に溢れています。その視点の鋭さに感動することばかりです。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



芸術の批評は、新しく価値を発見し、創りだす。だから、本当の芸術家は必ずまた批評家である。だが、絶対に鑑定家ではありえない。そういうものに興味を持たない

・「青丹よし」の奈良時代の人は、今日つきあったら、やりきれないくらい無邪気に違いない。とてつもなく大きなもの、極彩色で光ったものを、素直、単純に喜んだ。てらいとか、ひねりとかいうような近世風な繊弱な神経は、影も見られない

・千利休らの茶人たちは、決して伝統主義者ではなかった。古い伝統をたくましく乗り越えたモダンアートの創始者だった

・人間の表側よりも裏側だけに神経を集中し、強烈な生命力の奔出よりも、繊細なひねりを「通」としたので、芸術は洒落や、味や、型の世界に堕落していった

・人間としてぶつかり、つかみとり、食えるものはすべて、われわれの餌とすべき

・伝統とは、似たような形式を繰り返すことではない。縄文土器のあの原始的なたくましさ純粋さにふれ、今日瞬間瞬間に失いつつある人間の根源的な情熱を呼びさまし、新しい日本の伝統がより豪快不敵な表情をもって、受け継がれることを望む

・古墳時代の埴輪文化のイージーな形式主義に絶望する。なんとなく、なまぬるい、消極的な楽天主義は、どうにもならないわが国の文化の宿命なのか

・狩猟期は、糧は闘いとるもの。獲物を追って突き進み、仕留める。躍進、闘争はその根本にある気分。それは、極まりなく激しく、動的であり、むごたらしいほど積極的

・愛するから憎み、憎むから愛するといった矛盾律こそ、原始人の生存の条件。そこに不安と危機がある。それに堪え、克服する人間の強靭な表情を縄文土器ほど豊かに誇り示している芸術はない

・あきらめの情緒主義や形式などは、新しい現実に立ち向かう力を失っている。これからの人はモリモリした生命力、その英知をもって、封建日本のじめじめした雰囲気を打ち破って、新鮮な時代を創りあげてゆかねばならない

・光琳の絢爛で、心憎いまでの力強い仕事は、王朝からの貴族文化の伝統を濃く受け継いだ京都で、新しい時代の担い手として興隆し始めた町人階級の、富裕と新鮮な活力をバックにして生み出された文化

・徳川幕府の町人圧迫政策(奢侈禁止令)、鎖国の影響(文化の滋養分を遮断)、はびこった官僚的形式主義など、江戸後期以後の不幸な政策的ゆがみが、今日の日本人のセンスをも決定している。あきらめの味とか、わび、しぶみなど、すべて消極的にくすんだ姿

・庭には味な仕組みがしてある。人間の弱みにつけこみ、しっとり衒学的な気分をおだてる。それが「伝統」のカサにかかって押してくる。気分に浸りつつも、覚めて相手の魔術を見破ること。魔術は向こうの仕業ではなく、こちらの精神の弱みから出てくるから

・芸術は根源的な矛盾を秘めている。その緊張した統合の上に、強烈な表情を輝かせる。矛盾した要素の対立は芸術の本質であり、根本要素

借景式庭園の驚嘆すべき技術は、大自然をそのままこちらに引きずり込む。狭い人工的なアレンジメントが広大な自然に溶け込み、広がりと気韻を漂わせ始める。大空間と小空間を異質として対立させることで、平凡な自然空間を新鮮な芸術空間に置き換えてしまう

・遺産が推進力になるよりも、むしろ呪縛として働いている日本では、大きな外科的治療が必要。伝統の意味を新しい観点から掴みとることは、豊かな財宝を抱えながら、ひたすら卑屈になっている日本の現代文化を袋小路から引き出すことになる



これだけ、情熱をもって、日本の芸術と文化を語ることができる人はいないと思います。しかも、本書は、戦後10年しか経っていない時期に書かれたものです。

その時代に、日本文化を見る眼、また、日本を見る眼を岡本太郎が持っていたことは、驚嘆よりも尊敬に値することではないかと思います。

[ 2012/03/10 07:12 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『自己を見つめる』渡邊二郎

自己を見つめる (放送大学叢書 6)自己を見つめる (放送大学叢書 6)
(2009/09/30)
渡邊二郎

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著者は、東大や放送大学の名誉教授を務められた方です。四年前に亡くられました。専攻は、西洋哲学でした。この本は、著者が放送大学の授業で講義したテキストを書にしたものです。

そのため、「経験」「時間」「境遇」「遍歴」「自己」「生き甲斐」「仕事」「孤独」「愛」「他者」「世間」「運命」「不幸」「老い」「死」という15のテーマに区切られて、各章毎に読みやすく編成されています。

それぞれ、悩みの源泉となるテーマに真摯に向かわれた著者の言葉が、本書に満ちあふれています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・私たちは、経験において初めて、自己自身と宿命的に向き合うことになる。経験の中にこそ、自己自身がある

・「過去のものの現在が、記憶であり、現在のものの現在が、直観であり、将来のための現在が、期待である」(アウグスティヌス)

・人間は、不条理の人生の境遇を、自らの生存の地盤とし、そこに根ざして、憂き世の活路を開拓しなければならない。そのときには、自分に足りないもの、自分の欠陥こそが、むしろ自分の誇りであると、開き直るくらいの強さが必要である

・「これが生きるということだったのか。よし、それならば、もう一度」と勇気を奮い起し、自分自身の人生行路に挑戦することによってしか、人生の有意義性は築かれえない

・異境に出て、他流試合に揉まれ、異他的なものとの交流もしくは対決を経巡ってのみ初めて、私たちの人格は大きく実る

・神の前に立ち、たった一人の単独者として、全責任を負って決断してこそ初めて、自己の人生は築かれる

・甲斐ある人生を生きるべく、生死を賭けて、活路を探究するのが真摯な人間の宿命となる。それ以外に、どこにも真実の人生は存在しない。人生とは、生き甲斐の探究の一語に尽きる

・自己の存在のうちの絶対的なものの要求と充足、それとの一体化、そうした根源的なもののうちに根を下ろした生き方のみが、人間に生き甲斐のある人生を初めて可能ならしめる

・「怠け者はあまりすることがないので、友人たちのすることなすことをあげつらい、しまいには干渉してきて、厄介な人物になるから、働き者とだけ友情を結んだほうが利口である」(ニーチェ)

・自我や精神の発展構造の中には、当の自己の客観化ないし表現としての自己の作品化、精神の客体化、そうしたものとしての仕事や労働の成果が、必然的に組み込まれなければならない

・人間とは油断のならない生き物。生き馬の眼を抜くような競争と他者排除が、共同存在の美名の蔭で暗躍している

・知性は愛と意志に支えられて初めて、有意義にまた有用に発揮される。知情意におけるこの根本的序列を、人は決して見失ってはならない

苦しみの多い人生の中では、自分の苦悩を忘却するために、他者に残忍な振る舞いをして、他者の苦しむのを見て悦ぶという非情かつ冷酷な倒錯にまで至る

・人間が嘘と仮面で、自己を凝り固めるのも、それは自己喪失の中に忍び込む他者性の魔力のせいだと言える

・世の中の無常と底知れぬ不条理への煩悩こそは、人間にとっての最終的な情念

・欠如状態としての不幸と、充実状態としての幸福の二つは、人間を構成する基本要因

・知性を練磨して、労作や仕事に励む老年には、老化は寄りつかない。老年になって恵まれた晴耕雨読の田園生活こそは、人間に幸福をもたらす

・人間は、徹頭徹尾、死の影のもとに生きる存在者である。この憂悶に満ちた現実が、人間の生存の真実である



真理ははるかかなたにあるのではなく、自己を見つめることによって、発見できる。つまり、「汝自身を知れ」ということが、本書の主旨だと思います。

自分自身とは、決定と決断を通して、経験してきたことの積み重ねと言い得ることもできます。本書を読めば、自分を知ることが、自分に合った人生の近道になるということが、よくわかるのではないでしょうか。

[ 2012/03/09 07:05 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『息身佛そくしんぶつ・ ただ、息をする。ただ、生きる。』板橋興宗

息身佛 そくしんぶつ  ただ、息をする。ただ、生きる。  角川SSC新書 (角川SSC新書)息身佛 そくしんぶつ ただ、息をする。ただ、生きる。 角川SSC新書 (角川SSC新書)
(2011/11/10)
板橋 興宗

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著者は曹洞宗の大本山の貫首管長も務められた後、公職を辞し、再び寺の住職に戻られた禅師です。

病苦と闘い、挫折しながらも、懸命に生きてこられた経験から発せられる言葉には、重みではなく、軽さがあります。何もかも超越した中での軽やかさなのかもしれません。それらを「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・よりよく生きる極意とは、「足るを知る」こと。「足」という字は、「足る」とも、「足す」とも読む。「足る」には、人間の幸せの原点がある。「足す」には、人間の欲望や悩みを生みだす原因になる

・何が「悪」かもわからないほどの病根、これが「愚」。「もっともっと」を続けていったら、人類はいつか「愚」に滅ぶ

・足るを知る人は、地上に臥すような生活をしていても、なお安楽である。足るを知らない人は、天堂に暮らすような生活をしていても、なお満足しない。欲望に引きずられて、むしろ憐れである

・なぜ生きているかと言えば、それは死にたくないから。「生き物」とは、「死にたくないもの」のこと

・名利を求める欲や世間的な評価、常識、怒りや疑い、我欲などを落として、落として、落としていくと、底が抜けて「ずぶの人間性」が現れる。それが「底抜けの人」で、そこまでいくことが悟りの境地。道元禅師は、それを「身心脱落」と言われた

・修行とは、迷っている人間が無駄骨を折ること。逆に言えば、無駄骨を折るほどの迷いがないと、「足りている世界」にも気づけないということ

・幸せ感というのは、命の燃焼度。目標がある人は、燃焼している

・生きたという実感は、振り返ってみて、よくやったなと思うこと。人間というのは、自分自身に納得したい、命を充実させたいと思う生き物

・執着をなくすには、執着するエネルギーを自分のやりたいことに投入すること。やりたいことを見つけて、志を持つ、生きがいを持つ、探究心に変える

・修行だけでなく、一心に掃除したり、何か芸事に打ち込んだり、夢中で仕事をしたり、自分が納得する無心になる方法を探せばいい。私にとっては、それが坐禅

・今ここにいる自分以外に、どこかに自分がいるのか?本当の自分は、もっと素晴らしいのか?

・心のうちに起きた波紋は、消そうとせずに、そのままにしておけばいい。消えるときがくれば、自然に消える

・「今が誕生、今がゼロ歳、今が臨終、今が地獄、今が極楽」、今この瞬間の出合いだけが事実

・人間は、時を「昨日」「今日」「明日」という連続した時間の観念でとらえてしまう癖がついている。これも、言葉で考えた頭の中の独り相撲

・そもそも宗教がなぜ必要になったかというと、この世は一寸先がわからず、いつ死ぬかわからないという不安が人間にあるから。不安を感じないで生きていくために、人間は神や仏を作り出した

生きる極意とは?「あたりまえに生きること」あたりまえとは?「無理がないこと」無理がないとは?「頭を使わないこと」頭を使わないとは?「体がわかっていること」体がわかっているとは?「息をしていること」息をしているとは?「自然に溶け込んでいること」

・私たちは、ともすると、「言葉」を「言刃」にもしてしまう。今、生きている大切な命を、言葉の刃で傷つけてしまう。また、他人をいじめるときも言の刃になってしまう。言葉というのは使い方次第

・道元禅師は、生きる極意を見つけるには、「ひたすら坐禅をして、言葉で思い量る世界を超越し、非言語の世界に入っていくのがいい。ごく自然に息づいていることの素晴らしさに気づくこと、そこに人生の究極がある」と言った。それは、あらゆる芸道の極意と同じ



あるがまま、ありのまま、そのまま、あたりまえ、今ここにいる、考えない、空っぽ、ゆったり。

著者から出てくる重要な言葉は、ほとんどが「ひらがな」です。その「ひらがな」の境地は、無心になるからこそ得られるように思います。

夢中になる、打ち込む、一心になる。これらを見つけて、日常生活で無心になるのが、幸せということではないでしょうか。

[ 2012/03/08 07:54 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(1)

『テレビは余命7年』指南役

テレビは余命7年テレビは余命7年
(2011/09/16)
指南役

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最近、テレビの番組は、ほとんど録画して視ています。録画を頻繁にするようになってから、以前にも増して、多くの番組を視るようになりました。

その訳は、CMやタレントのトークを飛ばし(引き算)、1.3倍速(割り算)で視ているからです。民放なら1時間番組を20分で視ることも可能です。

休日に1週間分番組を予約します。主に、海外情報、歴史、芸術、ドキュメンタリーなど知的好奇心をそそられるものだけに絞っていますが、週に15時間分(実質視聴時間はその半分くらい)ほどになります。それを空いた時間で視ることにしています。

このように、私自身もテレビの視方が大きく変化してきています。世の中の流れも、それに似たところがあるように感じています。

したがって、テレビはどうなっていくのか、少しだけ心配でもあります。この本は、今後のテレビ業界の動向を鋭い視点で分析しています。参考になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・昨今のテレビは、過剰なまでに「石橋を叩いて渡る」。気がつけば、緊張感のない、無難な番組のオンパレード。「自分が全ての責任を取るから、好きなようにやらせて」と、啖呵を切れる気概のある作り手がいないのが現状

・はやぶさ帰還のスケジュールは、予めわかっていた。番組内容変更の時間は十分にあったが、テレビ局はどこも、対応できなかった。テレビの持ち味である「生放送」に対応できない時点で、テレビの存在理由はない

・特定の事務所が「キャスティング権」(行政枠)を持つ番組は、まずキャスティングありきで企画されるので、コンセプチュアルな番組など生まれるはずもない。大抵、無難なロケ企画に落ち着く

・「毎分視聴率」に左右されるようになり、番組が大きく変貌した。毎分視聴率が落ちないように編み出されたのが、CM前の煽り、CM明けのリピート、定時前のフライングスタート、定時またぎに番組ピークを持ってくるなど、チャンネルを変えさせない手法

ローカル局の収入の大半は、キー局からの「電波料」で賄われる。キー局はローカル局とネットワークを組むことで、スポンサーに高額の広告費を請求できる。ローカル局も、キー局も、スポンサーも喜ぶ「三方一両得」の図式こそ、郵政大臣・田中角栄の発明

・1953年の民間放送局開局以来、今日まで、ただの一局も倒産がない。そんな業界はない

テレビ局の支出構造は、「番組製作」40%、「広告代理店手数料」12%、「ローカル局への電波料」12%、「人件費」9%、「電波使用料」0.3%、「その他」22%。国に納める電波使用料の8割が携帯電話会社の負担、テレビ局の10倍強。要は携帯電話代から支払われている

・テレビ業界の売上低迷の最大の要因は、ネット広告にパイを奪われたから。決して、リーマンショックや震災不況といった震災の影響ではない

・開局以来BSは広告費が集まらず、赤字経営。地上波の100分の1しか広告収入がない

・スポンサーは以前から、マーケティングの参考になる「個人視聴率」に変更するよう、テレビ局側に求めている。しかし、テレビ局や広告代理店が頑なに拒み、広告料金の値下げを求めさせないように、旧態依然の世帯視聴率を続けている

・現在の女子アナは「置屋の芸妓」と同じ。彼女たちのキャスティング権を握っているのは、直属の上司ではなく、各番組のプロデューサー。彼らから声がかかるのを待っている

・民放各局がインターネット台頭による「構造不況」に苦しむ中、NHKが元気。受信料で安定した財源を確保している。また、関連会社による受信料以外の収入の道も開けている

・アメリカは日本と違い、ローカル局とキー局は対等な関係。他のネットワークに魅力的な番組があるなら、系列を乗り越えることも珍しくない。さすが、市場原理の国

・アメリカでは、どの時間帯に、どのCMを流すかは、スポンサーとテレビ局との交渉によって決まる。検討されるのは、番組内容ではなく、単純に視聴者数(視聴率)。視聴率とCM投下量の掛け算の「GRP」数値のみ。スポンサーが番組の内容に口を出すことはない

・マーケティングで番組を作った時代は、もはや過去のもの。これからのテレビは「コンテンツ重視」。足し算のマーケティングではなく、いいもの、面白いものを厳選して届けようとする引き算の発想、作り手の真摯な姿勢



著者(企画集団)の考え方に共鳴できる部分がかなり多くありました。冒頭に述べましたが、最近、ネットの時代なのに、私のテレビ視聴時間は増えています。

すごく濃い視聴内容(徹底して、要らない部分は飛ばし、短い時間でよい情報を吸い取る)です。著者が言うように、引き算をして、テレビを大活用しています。

テレビとの関係を今後どう築き上げるかは、視聴者の姿勢によって決まるのではないでしょうか。

[ 2012/03/07 07:08 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『経済を動かす単純な論理』櫻川昌哉

経済を動かす単純な論理経済を動かす単純な論理
(2009/04/24)
櫻川昌哉

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慶応の教授である著者が、世界経済の「リスク」と「バブル」を分析して、判断するという内容の書です。しかも、このキーワードを使えば、複雑に見える経済の世界が、誰でも簡単に理解できるようになります。

本書を読んで、役に立った箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・金融システムが強くてしっかりしている(金融機関の貸出先への目利きができている)と、資金需要は強く、実質金利は高くなる。逆に、金融システムが弱いと、資金需要は弱いので、実質金利は低くなる

・預金者はお人好し。不良債権問題があるときは、銀行を助けてやって、問題が解決すると、今度は企業を助けている。ついには、金利はゼロが当たり前だと思い込んでいる

・情報をすべての売り手と買い手が持っている市場なんてない。むしろ、売り手も買い手も、相手の無知につけ込んで、一儲けをたくらんでいるのが現実の市場

・貨幣は、将来も価値があるということが、現在の価値を形成している。つまり、将来の価値を失った瞬間に、現在の価値を失う。それが貨幣というものであり、実は「バブル」である

・バブルは業績の良い企業で起きやすい。だから、株価の上昇が、バブルなのか、将来の成長を反映した予想なのか見極めが難しい

・バブルが持続する条件とは、「投資家が価格上昇の期待形成を持つこと」と「資金提供者の存在」の二つ。資金が続かなくなれば、バブルは崩壊する。バブルの裏には、金融機関が潜んでいる

・日本銀行が、通貨価値の安定にことのほか神経を尖らせるのは、実は、貨幣は何の実体もともなわないバブルにすぎないことを知っているから。日銀マンが神聖なイメージを社会に与えることが、「価値の安定したバブル」を維持するためには必要な作業

・貨幣、国債、土地、絵画、金、宝石など、本来の価値よりも高い価格で取引される財はすべて「バブル」と呼べる。価値がないとわかっていても、高い価格の取引が起きるのは、購入した「バブル」を、将来世代の人が同じように購入してくれると期待するから

・利子率が成長率より低くなるとき(利子率<成長率のとき)バブルが存在する

・好景気が失速して、景気が踊り場に来たとき、バブルが生まれやすい。過去の好景気のおかげで投資資金が潤沢にあるのに、もはやいい投資先がないといった状況。いわゆる「金余り現象」は、こうしたときに起きる

・GDPとバブルは同じ率で成長すれば、バブル経済が持つ。80年代後半から90年代前半のバブルも、地価の上昇率が当時の経済成長率なみであったら、バブルは弾けなかった

・世の中に、バブルが複数あれば、そのバブルを足し合わせた総額が、経済成長率と同率で成長する。言い換えれば、一つ一つのバブルが経済成長率と同率で成長する必要はない

・大金持ちは、複数の資産に分散して保有している。一つくらいバブルが弾けても困らない。残った資金を次のバブルに投入する。そして新しいバブルが生まれる

・教育水準の低い発展途上国では、人々は目先だけの行動に走りがちになるので、貯蓄率は低くなる

土地の貨幣機能は、地価の上昇期には有効に働くが、いったん地価が下がり始めると、その貨幣機能が失われるがために、地価の下落もまた著しいものになる

・日本経済における有力なバブルの候補は、土地国債、そして、株式。土地の時価総額と政府債務(国債と貨幣の和)に、株式の時価総額を加えた「バブルの総和」は、1990年半ば以降、2500兆円から2800兆円の間で、極めて安定した動きをしている

・地価バブルと国債バブルはまったく無関係の動きを示しているように見えるが、実は、両者を足し合わせた額は、ほぼ一定値。つまり、地価バブルは、国債の大量発行でバブルのシェアを徐々に失い、縮小していった

・気になるのは、アメリカを初め各国政府の景気対策で発行された大量の国債。「バブルの代替」で、バブルが、株式、不動産、石油から国債へ取って代わるわけだから、実質金利は上昇しない。追加的な国債発行は、株式や不動産などの資産価格をさらに圧迫する


著者の意見で、面白いのは、土地・国債・貨幣・株式の総和が一定という考え方です。日本は、国債をどんどん発行し、マネーサプライも増やしています。

ということは、土地か株式に影響を与えるということに他なりません。現在、株式は上がり基調になっているということは、土地はまだまだ厳しいということが予想されます。

こういう視点を持っていることが、マクロ経済を見るのに、大いに役立つように思いました。

[ 2012/03/06 07:06 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『マキアヴェリ、イタリアを憂う』沢井繁男

マキアヴェリ、イタリアを憂う (講談社選書メチエ)マキアヴェリ、イタリアを憂う (講談社選書メチエ)
(2003/09)
沢井 繁男

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マキャベリの本を紹介するのは、「マキャヴェッリ語録」に次ぎ二冊目です。君主論を書いたマキャベリは、冷徹な人間のように思われていますが、外交官として、優秀であっただけです。

国を思うあまり、君主を思うあまり、超現実的にならざるを得なかったのだと思います。この本の中には、組織を守るノウハウが満載です。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・能力のある者が領土を欲しがれば、ほめられることはあっても、そしられはしない。しかし、能力のない者が、どんな犠牲もいとわずに手に入れようともがくのは、間違いでより非難に値する

・君主は、一芸に秀でた人を賞揚して、自らが力量ある人に肩入れしていることを示さなければならない。君主は、市民が商業、農業、その他一切の営みにおいて、各自が安心して仕事に従事できるように、勇気づけなくてはいけない

・君主は、一年の適当な時期に、祭りや催し物を開き、民衆の心をそれに夢中にさせること

・君主は、職業組合や地区組合の人々のことを考慮に入れ、折にふれて、彼らとの会合をもち、君主自身の豊かな人間味度量の広さを誇示すべき。しかもなお、毅然たる威光をしっかりと守っていくこと

・人が現実に生きていることと、人間いかに生きるべきかということには大きな隔たりがある。だから、人が生きている現実の姿を見逃す人間、善行をすると広言する人間は、破滅することになる

武力なき国は維持することができず、終焉のときを迎える。私人の間で信用を保証するのは、法律や証文、協定だが、君主の間で信用を保証するのは武器である

・人間の行動には必要に迫られてやる場合と、自由な選択の結果による場合がある。人間とは必要に迫られない限り、善を行わないものである

・いったん謀反が起きた国をもう一度奪取すれば、今度は滅多なことでは奪われないのは事実。それは、君主が謀反の機会をとらえて、反逆者を処罰し、あやしげな人物を審らかにし、自分の立場を固めるからだ

・領土をしっかり確保するには、これまでの統治者の血統を根絶してしまえばことたりる

・民衆というものは、頭を撫でるか、消してしまうか、そのどちらかにしなければならない。というのは、人は些細な侮辱には仕返ししようとするが、大いなる侮辱に対しては報復し得ない

・他者が強大になる原因を作った者は、自らを亡ぼす。強大な勢力は、才覚か武力か、いずれかを備えた者によって生み出される

罠を見抜くという意味では、狐でなくてはならないし、狼どもの度肝を抜くという面では、ライオンでなければならない

・人間は憎しみだけでなく、恐怖心からでも危害を加える。新たな恩義を受ければ、昔の遺恨が水に流されるなどと思うならば、それは大間違い

・征服者は当然やるべき加害行為を決然としてやることで、しかもそのすべてを一気呵成に行い、日々それを蒸し返さないこと

・人間はもともと邪なものであるから、ただ恩義の絆で結ばれた愛情などは、自分の利害の絡む機会がやってくれば、たちまち断ち切ってしまう

・新君主は、国を維持するためには、信義に反したり、慈悲に背いたり、人間味を失ったり、宗教に背く行為をも、たびたびやらねばならないことを知っておくこと

・君主に謁見し、その言葉に聞き入る人々の前では、君主はどこまでも慈悲深く、信義に厚く、裏表なく、人間味にあふれ、宗教心にあつい人物と思われるように心を配らなくてはならない

・君主は戦いに勝ち、国を維持すること。そうすれば、彼のとった手段は、必ずや立派だと評価され、誰からもほめそやされる。大衆は常に外見だけを見て、出来事の結果で判断してしまうもの


優秀な官僚、優秀な外交官、優秀な側近。つまり、優秀なナンバー2が、マキャベリであったと思われます。

トップとナンバー2の絶妙なコンビが、世を動かすのかもしれません。トップに進言できて、しかも、嫌われ役、汚れ役を引き受けてくれる人が必要です。

善と悪の心を人間が持っている以上、永遠に善と悪のコンビが必要なのではないでしょうか。

[ 2012/03/05 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)