とは学

「・・・とは」の哲学

『ミトコンドリア不老術』日置正人

ミトコンドリア不老術ミトコンドリア不老術
(2009/12)
日置 正人

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ミトコンドリアは、太古の昔(われわれの祖先の単細胞時代)、われわれの細胞内に住みつき、今日に至っています。

酸素を用いた呼吸で、大きなエネルギーを作り出すのが、ミトコンドリアの役目です。しかも、副作用である活性酸素もコントロールすることができるすぐれものです。

ミトコンドリアをうまく働かせることができれば、健康回復、維持、増進が可能と、近年さまざまの研究機関で発表されてきています。

本書は、それらの結果を踏まえ、ミトコンドリアと人間の付き合い方に言及したものです。ミトコンドリアの数々の効用について、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・心臓が休むと、血流が止まり、栄養素や酸素が行き渡らなくなって、からだ全体に支障が出る。そのために、心臓は日夜、不眠不休で活動し続ける。心臓が休まないのは、ミトコンドリアが大きく関係しているから

心臓の筋肉は、乳酸を生みださないだけでなく、そのエネルギー生産率の高さで、活性酸素の害をフォローしている。アンチエイジングで目指すのは、まさに、この心臓の筋肉

・今、しんどいと感じている人は、どこかの細胞が確実にエネルギー不足に陥っている。その積み重ねが老化につながっていく

・わたしたちの体は、「解糖」(すぐにエネルギーを得ることができる)と「呼吸」(ミトコンドリアで行われ、大きなエネルギーを得ることができる)の2種類の方法で、エネルギーを作り出している

・酸素のおかげで、私たちは莫大なエネルギーを獲得することができ、動き回ることが可能になっている。そして、それは、ミトコンドリアという小器官のおかげ

酸素が足りないと、ピルビン酸がエネルギー物質になれず、乳酸になる。そして、疲労物質として、筋肉に動くのを止めるように号令を出す

・がんのような目に見える疾患は、細胞核内のDNAの異常によって起こる。そして、DNA異常を引き起こす最大の原因が、ミトコンドリアで漏出する酸素フリーラジカル

・究極のアンチエイジングとは、ミトコンドリアに仕事をさせて、エネルギーを豊富に生み出し、老化の進行に歯止めをかけること

・エネルギーを作ることは、ミトコンドリアでの有酸素活動を活発化すること。決して、食べることによるエネルギー原料を蓄えることではない

回遊魚渡り鳥のように優れた有酸素活動をする強靭な筋力を、私たち人間も授かっている。それは、心臓の筋肉。つまり、心筋だけは、回遊魚や渡り鳥のように、休むことなく、一生動き続けることができる

・すべての筋肉が心臓の筋肉のようになれば、疲れを知らない、若さであふれた体になる

・筋肉には、速筋(瞬発力)と遅筋(持続力)がある。有酸素運動をする遅筋は肥大した筋肉にはならない。背骨とその周囲の筋肉は、有酸素運動が得意な筋肉

・アンチエイジングにいい運動はヨガ。ヨガはポーズ呼吸法から成り立っている。ヨガの姿勢ポーズを維持する持続力は有酸素運動。ヨガの瞑想は、呼吸を整え、体の隅々にエネルギーを行き届かせるので、体温も上昇し、免疫力もアップする

CoQ10α-リポ酸L-カルニチンの三つを組み合わせたサプリメントなら、一連のミトコンドリアでのエネルギー生産反応に働きかけることができる

・ミトコンドリア活性には、カロリー制限がいい。しかし、カロリー総摂取量を低くすると、食べ物のカサが少ないため、便秘になりやすい。食物繊維が多く低カロリーのこんにゃく、キノコ、海藻類がその状況を改善する。発酵食品も腸内細菌のエサになるのでいい

・デザイナーズフードピラミッド(米国立がん研究所のがん予防に効果的食品)はミトコンドリアを鍛える。(ニンニク、大豆、人参、生姜、キャベツ等)(玉葱、茶、玄米、柑橘、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー等)(胡瓜、あさつき、じゃがいも、ベリー等)

腹筋運動は、姿勢を整え、深層筋を鍛え、有酸素活動を活発にする。スクワットの他に片足立ちなど、姿勢を維持し、バランス感覚をとる運動も有酸素運動につながる



われわれの生きるエネルギーは、食べること(解糖によるエネルギー)と、呼吸すること(ミトコンドリアによるエネルギー)の二つから作られているというのが、本書のポイントです。

エネルギーは、食べることでしか得られないと思っている人が多いのではないでしょうか。

食べるのは、腹七分目にして、後は、ミトコンドリアに仕事をしてもらうことが、健康回復、維持、増進の秘訣なのかもしれません。
[ 2012/03/31 07:00 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『人間・この劇的なるもの』福田恆存

人間・この劇的なるもの (新潮文庫)人間・この劇的なるもの (新潮文庫)
(2008/01)
福田 恆存

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福田恆存氏の著書を紹介するのは、「日本への遺言」「私の幸福論」に次いで3冊目です。

著者は、評論家として有名でしたが、劇作家、演出家として、劇団を主宰し、演劇活動も行われていました。

本書は、劇作家の視点で、人間や社会を評論した書です。著者の鋭い哲学的考察によって、人間や社会が次々に解剖されていくように感じます。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・喜びにせよ、悲しみにせよ、私たちは行けるところまで行きつくことを望んでいる。そして、行為が完全に燃焼しきったところに無意識が訪れる。今日と明日の間に、夜の睡眠があるように

・私たちは焔であると同時に薪であらねばならないのだが、その完全燃焼のためには、二つの性の内側から発するもの以外に、なんの要因も必要としない

自然のままに生きるというが、これほど誤解された言葉もない。もともと人間は自然のままに生きることを欲していないし、それに堪えられもしない。程度の差こそあれ、誰もが、何かの役割を演じたがっている。また演じてもいる。ただそれを意識していないだけ

・個性などというものを信じてはいけない。もしそんなものがあるとすれば、それは自分が演じたい役割ということにすぎない

・生きがいとは、必然性のうちに生きているという実感から生じる。その必然性を味わうこと、それが生きがい。私たちは二重に生きている。役者が舞台の上で、常にそうであるように

・劇的に生きたいというのは、自分の生涯を、あるいは、その一定の期間を、一個の芸術作品に仕立て上げたいということにほかならない

・人間はただ生きることを欲しているのではない。生の豊かさを欲しているのでもない。人は生きると同時に、それを味わうことを欲している。現実の生活とは別の次元に、意識の生活がある。それに関わらずには、いかなる人生論も幸福論も成り立たない

・労働、奉仕、義務、約束、秩序、規則、伝統、過去、家族、他人、等々からの逃避、それを私たちは自由と呼んでいる。まず私たちは、それらのものを、堪えがたい「いやなこと」として諒解しているという事実を見逃し得ない

・自由の名において、人々は、求めていたのではなくて、逃げていただけのこと。強いて言えば、自由そのものを求めていたのである。何かをしたいための自由ではなく、何かをしないための自由

・孤独者は再び、全体への復帰を求めずにはいられなくなる。彼は生きることが全体との一致において初めて可能であることを思い知らされる

・常に自由は、下から上に向かってのしあがろうとする奴隷の哲学を母胎としてきた

・古いものが新しいものを裁くということは、それ自体としては間違っている。しかし、その原則を否定すれば、私たちはさらに間違いを犯すことになろう

自由の原理は、私たちに快楽をもたらすかもしれないが、決して幸福をもたらさない。信頼の原理は、私たちに苦痛を与えるかもしれないが、その中においてさえ、生の充実感を受け取ることができる

・個人主義にせよ、全体主義にせよ、その原理は、人間が人間を支配し得るということにある。この原理のもとには、全体は存在し得ない

・全体を調整しようとすれば、自分が勝ち、相手を滅ぼすしか道はない。生命の貴重や平和を口にしようと、それが当然の帰結

・現代のヒューマニズムにおいては、死は生の断絶、もしくは生の欠如を意味するにすぎない。言い換えれば、全体は生の側にのみあり、死とは関わらない。しかし、古代の宗教的儀式においては、生と死とは全体を構成する二つの要素であった

・私たちは、認識において、現実の資料をすべて知り尽くすことができないと同様に、行動においても、生涯、一貫した必然性を保持することはできない。一生を整え、それに必然の理由づけを附することは、個人の仕事ではあり得ないこと



自由とは?個性とは?生きがいとは?個人主義とは?著者はそれらに幻想を抱いてはいけないと言っているように思います。

現実を直視し、全体との調和の中に、自分の人生を見出すことの大切さを述べているのではないでしょうか。

ある意味、知的に偏った人間を目覚めさせてくれる書ではないかと感じました。
[ 2012/03/30 07:00 ] 福田恒存・本 | TB(0) | CM(0)

『「孟子」は人を強くする』佐久協

「孟子」は人を強くする (祥伝社新書129)「孟子」は人を強くする (祥伝社新書129)
(2008/09/26)
佐久 協

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孔子は、権力者にとって都合のいい論理が多く、体制を維持するために利用されてきました。近年、中国は孔子を礼賛するようになっています。

孟子は、権力者に嫌われ、恐れられました。孟子の思想は、個人の自立を促し、為政者の怠慢をただし、革命を肯定する論理だからです。ある意味、乱世の時代の論理です。

今の日本の置かれている状況を考えると、孔子の論語を学ぶよりも、孟子の思想を理解したほうがいいように思います。幕末の吉田松陰も孟子の信奉者でした。

本書は、孟子の思想をわかりやすくまとめた書です。著者のユニークな解説も読みごたえがあります。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・孟子の主張の特色は、以下の三点に要約できる。1.「自己の確立と、なれ合いの排除」2.「革命の是認」3.「民意の優先

・人が何かをしたいという意志を持てば、それに見合った気持ちが動き出し、肉体もそれに付き従って動き出す。だから、正しい意志を持つことが肝心。決して、悪い意志弱気な感情に従って、肉体を暴走させてはならない

・何が一番大切かといえば、自分自身を正しく守ることに尽きる。つまり、自分自身をどう扱うかが、人生における最重要問題

・人間ならば、誰でも、人の不幸に同調する気持ちと、不善を恥じる気持ちと、人に譲る気持ちと、正誤を判断する能力、の四つを持っている。この生まれつき具わっている四つの性質は、道徳の最高目標である「仁愛」「正義」「礼儀」「智能」の芽にあたる

・聖人と呼ばれる者は、特別な人ではない。自分の心に具わっている善悪・正邪の判断能力を自覚し、自分の心と対話しながら、行動をしているだけのこと

・人の不善にばかり目を向けていると、自分自身の不善に鈍感になるという災いが来る

・人格者というのは、赤子のように、生まれたままの純真さを保っている

・教育では、自習自得の習慣を身につけさせることが、何より肝心。強制によらず、自主的に会得した知識や道徳的な境地には安住できる。安住できれば、それを自分でさらに深めることができるようになる

・人間が陥りやすい誤りは、とかく先生面をして、やたらと偉そうに教えたがること

・大人物は、余計なおせっかいをせずに、ひたすら我が身を磨くことに専念する。その結果、道徳的感化によって、周囲のすべてを正しく導いてしまう

・上手な教育者の教え方は、以下の五つ。1.「生徒の発展段階に合わせ、時間をかけて教える」2.「教育者の人格的感化によって導く」3.「手本を見せて手取り足取り教える」4.「質疑応答のディベイト方式」5.「見ず知らずの者を慕わせて、自主的に修養させる」

・正義の実行者は、とかく小人物から悪口を言われがちなもの。悪口の多さは、自分の徳の高さのバロメーターと考えるくらいのノンキさを持つこと

・利益に賢い者は「凶作の年でも生き延びられる」と言うと、やっぱり金銭勘定が一番なんだと、早合点したくなるが、そうではない。人格的修養を積めば、凶作だろうが、乱世だろうが、心を乱されることなく、泰然自若として生活できるようになる

・道義によって、人々を説得する王道政治は、民衆を心から喜んで従わせることができる。この心服という信頼関係こそが政治の基本中の基本

・自分の不正を棚に上げて、人を正しく導けた者などいない。ましてや、恥さらしな行為をしておきながら、世の中を良くした例など聞いたこともない

・天下万民のために、公正な人材登用ができる者が仁愛の自覚者。賢者を用いなければ、国は亡んでしまう

・民衆を侮り、民衆を収奪する独裁者は、民衆を怖がらせているように見えるが、実際は、独裁者の方が、民衆が自分に順わないことを恐れている

・「賢者や有能者を登用する」「物品に課税しない」「関税は取らない」「農家の私田に課税しない」「付加税は取らない」。この五点を実施する指導者には、天下に敵がいなくなる。このような指導者は、天が民衆に使わせた役人、すなわち「天吏」となる

・物事をしっかり観察すれば、知識が豊富になる。知識が豊富になれば、意識は明白になる。意識が明白になれば、心が偏らない。が偏らなければ、行動も穏やかになる。行動が穏やかであれば、家庭も和やかになる。家庭が和やかになれば、国も安らかに治まる


孔子が中央集権体制の独裁を是とする論理であるなら、孟子は社会民主主義体制を擁護する論理であることがわかります。

民主主義には、個人の自立、自己の確立が不可欠です。今、日本は、その岐路に立たされているように思います。孟子の影響をもっと受けてもいいのではないでしょうか。
[ 2012/03/29 07:00 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『ドケチ道―会社を元気にする「生きたお金」の使い方』山田昭男

ドケチ道 ―会社を元気にする「生きたお金」の使い方ドケチ道 ―会社を元気にする「生きたお金」の使い方
(2010/09/28)
山田 昭男

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著者は、岐阜県に本社を構える未来工業株式会社(電気設備資材メーカー・二部上場)のオーナーです。労働時間が日本一短い会社として有名です。

社員本位のユニークな経営は、今の日本の会社に警笛を鳴らすものです。そして、付加価値の高い経営法は非常に勉強になります。その一部を紹介させていただきます。


・未来工業は、ドケチで有名だが、休みが日本一多い会社(有給休暇を除き年間140日)。社員の年間総労働時間は1640時間。残業禁止仕事の持ち帰り禁止。タイムカードなし

経常利益率の低い会社の経営者に限って、安い賃金で、長時間働かせようとする

・1965年創業以来、赤字ゼロ。1985年から売上高も200億円を越え、2010年の経常利益率は15%。休みが多い割に、利益率の高い会社として知られる

・就業時間内に仕事を終わらせるのも、電気代の節約も、すべての社員に「常に考える」クセをつけさせるのが目的

・社員は、常に考えているから、社長に何の相談もない。未来工業は「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も禁止

・社内の蛍光灯は、引きひもスイッチが下がっている。自分の席を離れるときは、必ず蛍光灯を消すように義務づけられている。引きひもの先に管理すべき社員の名札が結ばれているのは、当事者意識を植え付けるための仕掛け

・エレベーターの「閉」ボタンを押すのは厳禁(電力消費が損)、ドアノブ取り外し(回す時間が損)、コピー機が330人いる本社に1台(コピー機の台数と仕事効率・業績向上との関係はない)など、普段見過ごしている小さなムダをなくすのが「ドケチの道」

・ドケチとは、社員にコスト意識を植え付ける最良の教育。社員をドケチにすることが、社長の仕事。それぞれの業務の中で、どういう形でドケチを実践するのかは、社員の仕事

・大手問屋と取引しない。理由は簡単、販売手数料が15%と法外に高いから。売上200億円の会社に、200人の営業職がいて、全国に30ヵ所の営業拠点があっても、そんなに経費はかからない。自社営業と中小問屋への卸だけで、身の丈にあった商売はできる

・会社のムダを本気でなくしたいのなら、社内をこまめに歩いて回り、社員の仕事ぶりを見ながら、「何かを見たら、必ず損か得かと常に考える」「社員の動きを徹底的に観察する」

・常識や慣習は疑ってみるべき。未来工業は、年間140日の休日、7時間15分という日本一短い労働時間。大手ハンバーガーチェーンのような名ばかり管理職も、派遣社員もパートもいない。全員が正社員

・残業禁止、タイムカードなし、自宅に持ち帰って仕事をすることも絶対禁止。こうなると、社員たちは逆の意味で大変。各自が目一杯仕事の効率を引き上げないと(常に考えるを実践しないと)、仕事が回らなくなる恐れが出てくる

・出張費は渡し切り方式(宿泊費は1泊1万円、差額を小遣いにしても構わない。新幹線料金を夜間バスにしてもいい)自分の得になるから社員は必死で考える

・社長の仕事は、社員たちの不満だと思われることを、少しずつ消していくこと

・未来工業のプロ社員育成法は「3ナイ」主義。「教育しない」「管理しない」「強制しない」これは、裏返せば、自分で考え、動き、その結果を自ら検証できること

・トップに対する「勝手な気づかい」が知らないうちに積み重なり、いつの間にか「思考停止」に陥り、「トップの前例」を繰り返す。前例主義という幽霊と組織の因縁を断つこと

・「他社と同じものはつくらない」「常に考える」の合言葉は、会社の生き残りをかけたもの

・命令も管理も禁止。上司は部下を説得した上で、社員を見守る。管理されるのを嫌がった人間でも、自分が管理職になると、間違いなく管理したがる人間になる。人を信じる性善説と、信じられない性悪説は、ひとりの人間の表と裏にすぎない

・「教えていただいて、すぐにつくり直しました」。誰だって、自分の意見でよりよい製品ができたらうれしい。お客さんが喜ぶものに改善していけば、製品づくりに終わりがない

・数字上の「合理化」は、会社を蝕むことはあっても、会社を強くすることは断じてない。それは、会社が、やる気を起こしたり、失ったりする人間の集合体だから


「こんな会社に就職したかった」と、つくづく思います。

日本人は、管理をしたがります。管理とは、部下を信用していない裏返しです。また、日本人は、一生懸命遅くまで働き、それを上司にアピールします。それは、上司が業績で部下を判断していないことを意味します。

このようなバカな上司がいるのは、バカなトップがいるからです。この悪循環が断ち切れなくて、日本の会社は苦しんでいるように思います。

バカなトップ、バカな上司を一掃して、このような賢い会社の制度を、若い社員たちが見習い始めたら、日本の会社に明るい未来が見えてくるのではないでしょうか。
[ 2012/03/28 07:00 ] 山田昭男・本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人』石角完爾

ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人ユダヤ人国際弁護士が斬る! だから損する日本人
(2011/12/01)
石角 完爾

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石角完爾さんの本を紹介するのは、「天才頭脳のつくり方」に次ぎ、2冊目です。石角さんは、日本人なのに、ユダヤ教に改宗し、ユダヤ人となった国際弁護士です。今は、スウェーデンに暮らされています。

世界を股にかけて活躍されている著者の眼から見て、最近の日本人がどう映っているのか、興味のあるところです。本書の一部を、紹介させていただきます。


・ユダヤ社会は、徹底的に「ハウツー」を教えない社会。ハウツー本など読まない代わり、「ヘブライ聖書」の精神を解釈した「タルムード」に従う。これは、ハウツーではなく、知恵の集大成

・だめかもしれないけど、やるしかない。あきらめることは神が許さない。欧米人やイスラム教の人々は、そうした加点主義の発想を子供のころから頭に刷り込まれる

・未来に待ちかまえる夢を想像できず、減点主義のストレスで、自殺率も世界一(中高年男性は世界一)になってしまった日本。加点主義発想がないことで、大きな損をしている

・日本人が、海外で無責任とみなされる理由には、「私ならこうする」と言わないで、「多数に合わせる」ことで責任を転嫁するから

・ユダヤ人は、小さいころから「ふつうと違う人間」「他人と違う人間」になることを徹底的に教えられる

・タルムードをいくつも読んで、常に「複眼視」(物事は、表裏、上下、左右からも、あるいは壊して内側からも眺められるといった思考法)をユダヤ人たちは叩きこまれる

・「相手が攻撃を仕掛けてきた瞬間の反撃は、正当防衛として許される」。国際社会では、その場で反論しないと相手に同意したものと看做される。沈黙は相手に従ったのと同様

・欧米諸国は議論を聞いているのも好き。口論や討論、議論こそ「Wisdom」の源泉という考え。実際、議論することによって、多角的な見方論理分析能力が身につく

・日本人は「議論の文化」「反論の文化」「討論の文化」「質疑応答の文化」に慣れるべき。日本社会は、議論、反論、討論を嫌うために、世界の秘境になっている

・日本人は、証拠や根拠のないことでも、皆が「そうだ」と言っていれば、素直に信じてしまう。やはり、国際社会では「騙されやすい人々」

・国際社会では、ハッキリ「NO」と言うのは当然だが、それだけでは不十分。「NO」と言った後で、必ず「because」と続けなければならない。理由を述べて、「why」を埋める

・革新的な技術は、一度すべてをご破算にして、ゼロから創り直す「統合理論」からでないと生まれない

・謝罪会見(頭を下げて謝っている姿)は、海外では滅多に見られない奇妙な光景。日本には「叱る文化」が根づいている。叱っても何も前進しないし改善もしないのに「叱る」

・減点主義の日本では「提案しない、行動しない、自分ではしない」の「ないない人間」ばかりになっている

・駄洒落は通用しないが、「川柳」は、英語に訳せば、ジョークとして世界に通用する

・「地球温暖化が問題だ」と言われたら、すぐに敏感に反応しているのは日本だけ。世界は、言うだけ言っても、損になることは軽はずみにやったりはしない

・日本人が「What you have(何を持っているか)」を追求してきたのに対して、「Who I am(私はどのような人間であるべきか)」を追求してきたのがユダヤ人

・日本は、他人と比較し、物欲に振り回される国。「持たざる不幸感を煽る」ビジネスモデルを仕掛けられ、富を奪い取られていく

・ユダヤのお金持ちは、京都のお金持ちや近江商人に共通するものがある。京都には、間口が狭く、質素につくった「豪商の家」がたくさんある。豪邸を自慢したりしない

・日本では「いい人」と「悪い人」だけ。ユダヤ社会では、「いい人に見えるいい人」「いい人そうに見える悪い人」「悪い人のように見えるいい人」「悪そうに見える悪い人」の4タイプがいて、一番注意すべきは「いい人そうに見える悪い人」と、はっきり教える

・ユダヤでは、神によって「生涯にわたって勉強すること」が定められる。だから、嫌でも勉強し、知識を子供に教えていかねばならない


本書には、日本人に厳しい指摘が数多くあります。しかし、それを謙虚に受けとめることが大事だと思います。

「いや日本は、素晴らしい」「日本には、こんないいところがある」と反論するよりも、まずは、低姿勢で学ぶことが、次の発展成長につながるのではないでしょうか。
[ 2012/03/27 07:01 ] 石角完爾・本 | TB(0) | CM(0)

『「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す』町田宗鳳

「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す (ちくま新書)「野性」の哲学―生きぬく力を取り戻す (ちくま新書)
(2001/07)
町田 宗鳳

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町田宗鳳氏の著書を紹介するのは、「法然対明恵」に次ぎ、2冊目です。

「異色の経歴」(14歳で出家して大徳寺で修行、その後、渡米してハーバード大学を卒業、現在は広島大学教授)だけでなく、肉体主義(肉体を通じてこそ肉体を超える思想を獲得できる)を唱え、自ら体を鍛えている「異色の思想家」です。

本書は、信長の決断力、龍馬の行動力、円空の造形力、宮沢賢治の想像力、松下幸之助の直観力を題材にして、野性の回復を訴える内容になっています。盛りだくさんの興味深い内容を、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・環境と思想を結びつけるのが肉体。環境の変化を感じ取るのは、脳の一部ではなく、つま先からアタマのてっぺんまでの全細胞。体全体の細胞が総動員で、環境の変化を読み取り、情報を脳に送り込み、しかるべき判断を下す。そこに従来と異なる発想が生まれる

・禅の修行である「不立文字、直指人心」を趣旨とする禅宗では、教義についてあれこれ理屈をこねるのをよしとせず、修行者は坐禅を通じて全身で真理をつかみ取ることを求められる。

・禅のカナメは、坐禅だけにあるのではない。「行住坐臥」の言葉に示されているように、日常儀礼や食事作法における一挙手一投足に心を注ぎ、自らの身体が仏教の教えそのものを体現していることを理想とする

・精神主義は励ます側の権威の匂いがするが、肉体主義は肉体に内在する生命力に敬意を払うこと。運命の厳しい試練を生き抜くのは、外からの押し付けられた精神力ではなく、内から湧き出てくる生命力

・文明の恩恵を受けるということは、自分の力で生きる意欲を放棄し、知らず知らずのうちに飼育される存在になることでもある

・「感ずる理性」を持ちあわせない人格者が、いくら立派な道徳論を振り回してみたところで、いったん生命の連帯感が途切れてしまえば、人権の無視やら他の生命に対する暴力が発生してくるのは必然的

野性的思考を獲得するためには、一方では万巻の書を読破する気概をもちあわせ、また一方では、多少の危険を冒してでも現場に出ていく大胆さがいる

・奈良時代から築かれた仏教寺院の強固な権力基盤を破壊するには、日本の歴史は、信長という狂人を登場させざるを得なかった。そうでなければ、宗教を中心とした妄想共同体が、古い封建秩序の中で温存され、日本人がいつまでも暗闇をさ迷い続けた可能性は高い

・詩人は凡人とは違って、生活臭にまみれてしまってはダメ。いつも現実よりも遠く見つめながら、現象の中に隠されている本質を本能的に直感したり、これから起こるべきことを予言する能力を持っていてこそ詩人である

・野性的人間の特徴は「型破り」であることだが、「型」を身に付けることなく、「型破り」は成立しない。単に奇抜をてらった前衛的手法というのは、一時期評判になっても、時間とともに飽きられてしまうのが常

・円空仏がもつ骨太の縄文的明るさの最大の秘密は、この生死を賭した厳しい山岳修行にある。人間の脆い生命が大自然の脅威の前にさらけ出されたとき、野性的生命感覚が修行者の肉体に一気に逆流してくることがある

・真の造形力とは、新しい価値観を作りだす行為のこと。経済的価値だけを中心にした生活から脱却して、自分の魂が本当に満足できる生き方を見つけなくては実現できない

・自分の開発している技術に何らかの芸術性を感じられないのなら、そこにオリジナリティーが欠落していないか、エンジニアは疑ってみるべき

・「手の哲学」が「アタマの哲学」よりも劣っている形跡はどこにもない。日本人はモノに託して、自分の思想を見事に語り尽くしてきた

・理性知のみを偏重するうちに、心と体をすっかり分離させてしまった現代文明の犠牲者となるのは、感受性の鋭い若者たち

・日本が大きな脱皮をとげるためには、新鮮な感覚と大胆な発想を兼ね備えた野性的女性が、もっと第一線に登場してこなくてはならない。男性の甘えを無意味に許容したり、媚びを売るようでは、男性の権威を奪い取れない



著者は、最後に、異端者へのチャンス、血を混ぜることの大切さを力説しています。

今の日本の凋落ぶりは、身内だけの集団で固まり、保守的、閉鎖的行動をとってきたことが原因のように思います。つまり、野性を喪失、排除してきた結果ではないでしょうか。

嗅覚、皮膚感覚を通しての発想が、今こそ求められているように感じます。
[ 2012/03/26 07:00 ] 町田宗鳳・本 | TB(0) | CM(0)