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「・・・とは」の哲学

『天皇はなぜ万世一系なのか』本郷和人

天皇はなぜ万世一系なのか (文春新書)天皇はなぜ万世一系なのか (文春新書)
(2010/11)
本郷 和人

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著者は、歴史学者で東大の准教授です。最近、テレビの歴史番組に時々顔を出されます。NHK大河ドラマの時代考証などもされています。

本書は、日本の権力構造が、「世襲」と「才能」のどちらに傾いたのかを歴史的に検証していく書です。

世襲の頂点としての「天皇」から、日本人が求めてきたものが見えてきます。納得できる箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・朝廷を貫く理念は世襲。朝廷に出入りする官人は、世襲の貴族。どんなにを蓄えようが、どんなに学識を積もうが、庶民の家に生まれた者が中央政府には出仕できない

・朝廷は貴族社会。新しい者の参入を拒絶する。彼らは「新しさ」よりも「古さ」を重視する。「古きもの」こそが「よきもの」であり、理想や模範は常に過去にある

・法然は在地領主の息子。武士の家の人。だから、どんなに仏教に研鑽を積んだとしても、出自が卑しいから、天台座主にも、座主に仕える高位の僧侶にもなれない。法然は念仏を広めたい一心で比叡山を下りたのではない

・貴族には、プライベートでも、引退してからも、位階・官職はずっとついて回る。利権もまた、官位についてくる。人事に異様な関心が集中するのは当然

・貴族が切磋琢磨して学ぶべき対象の「四道」とは、紀伝道(中国史、漢文学)、明経道(儒学)、明法道(律令、法学一般)、算道(数学)

・四道のうちで格が上なのは紀伝道。紀伝道をよく修めた官職として「文章博士」「式部大輔」などがある。文章博士は、天皇の家庭教師を務めた儒学者が就任した

・日本は科挙を導入しなかったが、政権が機能すれば、官僚的役割を果たす人材が必要になる。朝廷は、そうした仕事を地下人(下級の門閥貴族)に割り振った。政治家の上級貴族、実務をこなす中級貴族、それに官僚的な下級官人というクラス分け

・後醍醐天皇に仕えた北畠親房は、「まず徳行。徳行が同じなら才用ある人。才用が等しかったら労行ある人。その順番で官人を任用すべし」と言っている

・「世襲は徳行にも、才能にも優越する」。積善の余慶という理論を用いて、北畠親房は世襲を徳と才の上位に置いた。親房には、徳ある天皇が位について、その余徳を後世に伝えていくという、継承に前向きな「万世一系」観があった

・中世では父権が強力だったので、悔い返し(生前贈与された財産を元に戻す)が全面的に認められていた。悔い返されては困るので、子供は親が死ぬまで孝行をした。

・土地が生み出す恵みに支えられた家を、父から子へ、子から孫へと受け継いでいく。それが世襲であり、世襲は武家社会を成り立たしむ根本的原理

・社会の根幹をなす世襲の原理が崩れてしまうと、世の中は再び安定を失い、動乱に逆戻りする。武力をもって天皇家の息の根を止めることは容易だったが、足利義満は世襲の尊重こそ、幕府秩序を安定させる方法に他ならないことをよく知っていた

・実力重視の戦国時代とはいえ、やはり家柄が大事。それは大名家だけでなく、大名を支える家臣団にも言える。有力な国人領主たちの協力を得られなければ、大名は自滅する他ないから、従来の秩序を無視するわけにはいかなかった

・トップの責任とは、イザという時に責任を取ること。ところが、日本の場合、天皇は実権をまず藤原氏に奪われ、さらに争いごとは武士の仕事になっていたので、権力争いなどで責任を取る立場に立ったことがほとんどなかった

・武士のトップである将軍も、何人かの例外を除いて影が薄い。実務は、鎌倉幕府では執権北条氏が、室町幕府では三管領が、江戸幕府では老中(大老)が担っていて、専制をふるう機会がなかった。そのため、幕府滅亡の時に責めを負って命を失った将軍がいない

・世襲と才能の連関は、明治維新のときは「天皇と官と民」だったが、戦後は、天皇がここから後退、政治家が登場し、「政治家と官と民」になった。この政治家が世襲されるようになる。世襲議員にはなれないが、官僚には努力すればなれるという構造ができた

・「世襲」と「才能」を「徳」の名のもとに止揚する。そうした柔軟な姿勢こそが、現代の日本人に求められている


才能か、世襲か、これは難しい問題です。しかし、世襲をなくしながら、社会の安定秩序を保っていくことに成功した国が、先進国と言えるように思います。

また、現代の日本で、既得権益を守り、それを世襲していくには、大きな徳がなければ、世間が認めなくなっているように思います。子への徳育こそ、世襲を望む家にとって、一番大切な財産になるのではないでしょうか。

[ 2012/02/29 07:00 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『不動産絶望未来―これからの住宅購入は「時間地価」で探せ!』山下努

不動産絶望未来 ―これからの住宅購入は「時間地価」で探せ!不動産絶望未来 ―これからの住宅購入は「時間地価」で探せ!
(2010/11/26)
山下 努

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著者は、雑誌「AERA」の記者です。不動産に関する記事を多く書かれています。

朝日新聞の経済記者を長く務められていたので、マクロ経済と不動産の関係性について書かれた文章は秀逸です。誰もが参考になるポイントばかりです。その中から、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・マイホームなんて所詮は「箱」。全国ですでに760万戸も余っている。これは、新築住宅着工戸数のざっと10年分。ダムや道路と同じように、住宅もつくりすぎた不良資産

・「箱」を建てる場所の「地面」は、過去20年間に半分になった。インフレが来ない限り、どんどん下がるから、非常に危ない資産

職住混在地域は、昼間人口が増えるために、地価が下がりにくい。地域が老けず、借家や持ち家需要も底堅い

・広い住宅を持て余す一人暮らし高齢者が大量に増え、少子化でその相続者が減る状況では、郊外の老朽戸建などの物件は、価値が下がる前に売り抜けて現金化した方がいい

・もう世帯数は増えない。だから、標準世帯とは一人暮らしを指すことになる

・企業と若者の関係は「保有」から「利用」になった。未来資産として、長期契約を結ばれていない若い労働者に住宅を「保有」させるのは、虫がよすぎる

・「嫌消費」の象徴は、車からマイホームに移っていく。当面、マイホーム取得は、割高の新築から中古に徐々にシフトしていく

・コンパクトで折り畳み可能な簡易キッチンや、カプセルのような寝室を自動車で運搬できるような住宅が必要。移動住宅は土地購入コストがかからないので割安にできる。後は「駐家料(駐車料)」の問題。米国にはトレーラーハウスに住む人がたくさんいる

マンション建て替え物件の世帯主の平均年齢は70歳近い。新たな資金負担は高齢者に重荷。しかも、大半の物件が、現状より小さくしか建て替えられない(還元率が100%を超える物件はごくわずか)

日本の固定資産税は、土地に対する課税が十分でなく、それを補うために新築建物に重税をかけている。遊休地には優しく、有効利用した土地には厳しいおかしな税制

・「野・丘・台」のつく洒落た住宅街や坂の上にある住宅地の価値は下がっていく

・値下がりリスクの高い築浅物件には喜んで融資する。値下がりリスクの低い中古優良物件には貸さない。つまり、銀行が好んで融資する物件ほど不良債権化しやすい

・いくら賃貸投資が10%の高利回りでも、そのマンションの空き家率が3軒に1軒、4軒に1軒なら、空室のため、マイナスになる。表面利回りに振り回されてはいけない

・住宅の都心回帰によって、優良住宅地の地価動向は商業地の動向とリンクする

・郊外地域に家を買って移り住んだのは主にホワイトカラー。彼らは、これといった専門性がないのに給与が高めで生産性が低いので、リストラの標的になりやすい。そのため、その土地は、「先安感」や「売り圧力」にさらされ、値下がりしやすい

・エコポイントや期間限定の減税は、需要を先食いし、支援が終わったら失速する。持ち家優遇バブルも弊害は大きい。「新築好き」は、業界と政府のカモ、人身御供にされた「一人公共事業主」

・マンションを早く買いたがる晩婚シングル女性は、マイホーム購入でも、男選びで見せる慎重さを発揮する必要がある

・名義上、男が家を買ったということは、債務も男が支払う状況に追い込まれること。自分は名義人だから、地主だと錯覚すると困る。実質的には、大家ではなく、カネを稼いでくる働きづめの小作人

・マンションの経済価値は「貸していくらになるか」という収益性と、「値下がりせずにいくらで売れるか」という換金性の二つしかない。「貸してよし、売ってよし」がAクラス

・不動産のポイント「住民年齢が将来の地価の鍵」「住民所得動向が地価を動かす」「不動産は所有より利用の時代」「空き家大国を活用しよう」「マンションはスラム化する」「逆ドーナツ化現象に逆らわない」「郊外は負のブランド」「時間地価」「女の立場で家を買うな」



著者は、不動産の購入には、マクロ経済の動向が欠かせないと強調されています。ン千万円の買い物には、その視点が絶対に必要なことは全く同感です。

慎重に、慎重に、考慮しないと一生が台無しになる不動産の動向を詳しく知ることこそ、大きな財産になるのではないでしょうか。

[ 2012/02/28 07:06 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『江戸商家の家訓に学ぶ商いの原点』荒田弘司

江戸商家の家訓に学ぶ商いの原点江戸商家の家訓に学ぶ商いの原点
(2006/08)
荒田 弘司

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江戸時代の商家は、財産がいくらあろうとも、地位と身分が低いままでした。その中で、何を精神的支えとして生きていたのか、興味の湧くところです。

稼いでも認められない中で、自己を律して、商売を持続していかなければならないというもどかしさを和らげる手段として、家訓が重要な役割を果たしたように思います。

本書には、江戸時代を代表する家の教えが数多く載せられています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・「時節に随ひ考えを凝し、時を見、変を思うべし」(三井高房・町人考見録)
時節に合わせてじっくり考え、情勢をしっかり観察して、変化を予測すること

・「己れ其道に通ぜざれば他を率ゐる能はず」(宗竺遺書)
自ら商売道に通じていなければ、人を指揮することはできない

・「名将の下に弱卒なし。賢者能者を登用するに最も意を用いよ」(三井高利・遺訓)
名将と言われる人は、無能な部下を持たない。能力のある者を登用すること

・「老朽を淘汰して、新進の人物を雇傭すべし」(宗竺遺書)
古い考えに固執する社員は淘汰し、進歩的な考えができる人物を雇用すること

・「律儀程身の為能き事は無之候、人はあほうと申候共律儀成るほど能き人はなし」(大丸・主人心得の巻)
正直、実直であることほど、商人の立身にふさわしいことはない。他人が「あいつはあほだ」と言おうが、気にしないで正直、実直を貫く人こそ、商家の主人にふさわしい人

・「栄者常通、辱者常窮。通者常制人、窮者常制於人。是栄辱之大分也」(荀子・栄辱篇)
栄誉の者は常に順調に進み、軽蔑の者は常に困窮する。順調な者は常に人を支配し、困窮する者は常に人に支配される。これが栄と辱のあらまし

・「我思案と替りたる事を申出で候人は相談相手也、御尤御尤と申す人は何の役にも立たぬと可心得也」(大丸・主人心得の巻)
こちらのアイデアと違うことを提案する人ならば、相談相手になる。「ごもっとも、ごもっとも」と言うだけの人は、何の役にも立たないと心得ること

・「徳は本なり、財は末なり。本末を誤ること勿れ。貧富に依って人を上下することは最も戒む可きことなり」(茂木家・家憲)
商売は徳を行うのが本質であって、それで得る財産は末節である。本末を間違えてはいけない。財産の貧富によって他人を敬ったり侮ったりするのは、最もしてはいけないこと

・「謀計は眼前の利潤たりといえども、必ず神明の罰に当たる。正直は一旦の依怙に非ずといえども終には日月の憐みを蒙る」(住友政友・文殊院旨意書)
謀りごとをすれば、その場の利潤を得られるが、必ず神の罰があたる。正直を貫けば、その日の利益にはならないかもしれないが、天から同情を得られる

・「商品の良否は、明らかに之を顧客に告げ、一点の虚偽あるべからず」(飯田新七・網領)
商品のどこが良くてどこがそうでないか、客にはっきりと説明すること。一つの偽りがあってはならない

・「意志の弱き人は何事にも気の移り易く、衣服調度の如き、時々の流行を追ひ、外見を飾るを以て能事とす、斯る虚栄の奴隷となる人は、予算外の支出も嵩み」(安田家家憲)
意志の弱い人は移り気であり、流行ばかり追って外見を飾る。虚栄心の奴隷となって支出がかさむ

・「意志の弱き人は、取引上始終人の後へに立ちて、ひけを取るものなり。斯くの如き人は情実に拘泥して、常に損害を醸す」(安田家家憲)
意志の弱い人は、取引に際して引っ込み思案で、相手に退けをとる。だから情実にとらわれ、損害を出しやすい

・「相場買置の賈術は所謂貧賈の所為、人の不自由を〆くくり、他の難儀を喜ぶものなれば、利を得ても真の利にあらず、何ぞ久しからんや」(二代目中井源左衛門・中氏制要)
値段変動を狙ったり、品物を買い占めたりするのは、さもしい商法。不自由している人を締めつけ、他人が困るのを喜ぶわけだから本当の利益にならず、商売として長続きしない

・「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの。利真於勤」(伊藤忠兵衛家初代の座右銘)
商売は菩薩の行為。商売道の尊さは、売り手買い手どちらにも利益をもたらし、世に不足するものを補うから仏の教えに適っている。商人本来の勤めを果たしてこそ、本当の利益


「偉い人はいつでも偉い」と感じる書でした。偉い人はこの世にいなくても、残した文章で、その偉い人に出会うことができます。

内容的にも、現代にも通じるものばかりです。これを江戸時代の偉い人たちが書き遺したことに意味があるように思います。

困ったとき、悩んだとき、不安なときに、不変のものを見つけることで、それが、大きな心の拠り所となります。また、緩んだ気持ちを再度引き締めるときにも、役に立ちます。

家訓は、何度も何度も、事ある毎に、読み返していくことに意義があるのではないでしょうか。

[ 2012/02/27 07:07 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響』ユーリ・バンダジェフスキー

放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ
(2011/12/13)
ユーリ・バンダジェフスキー

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真善美の「真」を求めるのが学者、「善」を求めるのが宗教家、「美」を求めるのが芸術家だとすれば、「金」を求めるのは商人です。

今の世の中には、学者の仮面を被った商人が多くて困りものです(ちなみに、ひねくれ者の私は、商人の仮面を被った学者を目指しています)。ところで、この本の著者、ユーリ・I・バンダジェフスキー氏は、純粋に「真」を求める学者です。

チェルノブイリ事故被害者の内部被ばくを10年間、国からの援助や資金を受けずに、執拗に調査(病理解剖、臓器別放射線測定、汚染地域住民の健康調査など)し続けた、ベラルーシのゴメリ医科大学元学長です。

その姿勢が、ベラルーシ政府当局に嫌われ、1999年に不当に逮捕され、国際人権保護団体(アムネスティ)らの訴えにより、刑期途中の2005年に釈放された筋金入りの「学者」です。現在、ベラルーシを国外追放となり、ウクライナの病院に勤務されています。

放射能汚染に関する情報で、真実は何かを知りたくて、この本を読みました。その多くの真実を「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・放射性セシウムが土壌に浸透すると、植物にすぐに吸収され、食物と一緒に人間や動物の体内に入り込む。農産物の中でも、牛乳、キノコ類、ベリー類(液果類)、野生動物の肉のセシウム濃度は著しく高い

・高度汚染地域の住民調査では、年長の子ほど体内セシウム濃度が倍ほど高い。その理由は、セシウム137の半減期間が、年少の子より長いから。年少の子には、現行の食品規制に適合した食料を支給されているから

・男性は、女性よりはるかに多く、放射性セシウムが蓄積する。このことは、動物実験の結果やゴメリ州住民の体内放射能測定で確かめられている

・放射性セシウムの濃度は、妊娠中の母体でかなり高くなるが、胎盤が生理的防御壁になって、放射性セシウムが胎児へ移行することを防ぐ。しかし、その後、母乳を与えることで、放射性セシウムが子供の体内に取り込まれ、次第に蓄積していく

・放射性セシウムは、おもに腎臓から体外に排出される。体内に入ったセシウム137の80%までが1カ月以内に排出される。ただし、人体からセシウム137が半減するまでには、おおよそ70日かかる

・汚染地域に住む子供たち(生後14日~14歳まで)を対象に心電図検査を行った結果、心電図異常が高頻度(56~98%)に認められた。主に、心筋内伝導障害起因の不完全右脚ブロック、心筋の酸化還元反応混乱、心房内洞結節伝導系の自律機能障害による心電図異常

・汚染地域に住む子供たちの血圧を分析したところ、セシウム137の体内蓄積量が増すと血圧の高い子供の数が増えるという相関関係が認められた(汚染地域に住む子供の42%に高血圧の症状)

・チェルノブイリ事故後、突然死したゴメリ州の患者の部検標本を検査したところ、99%の症例で、心筋異常が存在することが明らかになった。特に注目すべきは、びまん性心筋細胞の異常である

・視覚器官は、外部からの放射線にも、内部被曝にも非常に敏感。汚染地域の村に住む子供の視覚器官を調査したところ約94%の子供の視覚器官に何らかの病理学的変化があった。特に体内セシウム137の量と白内障の罹患率の間には、正比例関係が明瞭に認められた

・セシウム137は、ネフロン構造の尿細管糸球体の血管系に悪影響を与える。なによりも、糸球体が構造的、機能的に破壊され、典型的な組織学的所見を呈する

・セシウム137が常に体内に取り込まれていると、甲状腺は十分に修復できず、細胞分化が阻害され、免疫反応の亢進に伴って、自己抗体と免疫適格細胞が甲状腺を傷つけ、自己免疫性甲状腺炎や甲状腺がんを発症する

・1995年のベラルーシでは、1976年に比べて、悪性新生物の発生率が腎臓で男性は4倍、女性は2.8倍、甲状腺は男性で3.4倍、女性で5.6倍になった。ゴメリ州は、腎臓がんの症例数は男性で5倍、女性で3.8倍、甲状腺がんの症例は男性で5倍、女性で10倍になった

・まず考慮すべきは、重要な臓器に対するセシウム137がもたらす毒性であって、他の放射性元素による障害ではない

・セシウム137は、まず心筋に取り込まれ、深刻な組織病変と代謝変化を引き起こす。公式の医学では、この事実を完全に無視している


放射能汚染による人体への影響は、何を信じていいのか、よくわからないのが現状です。広島、長崎の事例を出されても、事故の形態や規模も違うため、参考程度にしかならないように感じていました。

やはり、参考になるのは、チェルノブイリ原発事故です。その正確なデータ、症例を知ることが大事だと思っています。

それらの情報が、マスコミを通して、なかなか入ってこない状況下においては、ユーリ・I・バンダジェフスキー氏の著書は、信じられる確かな情報の一つではないでしょうか。

[ 2012/02/25 07:05 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『賀川豊彦』隅谷三喜男

賀川豊彦 (岩波現代文庫)賀川豊彦 (岩波現代文庫)
(2011/10/15)
隅谷 三喜男

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賀川豊彦って、ご存知でしょうか?ノーベル文学賞とノーベル平和賞の候補に計5回なった人物です。もし、ノーベル賞に輝いていたら、湯川秀樹より早く受賞して、日本初になっていました。

賀川豊彦のすごさは、それだけではありません。今の、労働組合農協生協のきっかけをつくった人物です。今や、既得権益団体に成り下がった?これらの団体は、賀川豊彦が貧困を救うために提唱したキリスト教精神から生まれたものです。

実際に、貧民街で暮らし、貧民、工場労働者、小作農民の救済に捧げた賀川豊彦の思想と人生に迫った本書の中で、心に響いた箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・「私自身の理想は、貧民窟の撤去にあるが、今すぐに貧民窟がなくならないとすれば、貧しい人々と一緒に慰め合っていきたい。これは必ずしも慈善ではない。これは『善き隣人』運動の小さい糸口である。人格と人格との接触をより多く増す運動である」

・「讃美せざるを得ないのは、このドン底にも一種の固い道徳と、愛と、相互扶助があること。貧民窟の博徒が入監でもすれば、皆で同情して差入をする。病気になれば、近所で救済する」

・「精神的堕落と共に、頽廃的気分に社会が包まれると、飲酒、黴毒等によって、貧民窟を目がけて集まってくる」

・「貧民は群衆として生活しており、個人の意識が弱いから、ついつい群衆の波におされ、無意識的盲動に安ずる」

・「人と生まれて、屑物拾いにまで堕落すれば、永遠の向上することができない。親に連れられて屑拾いに出た子供は永遠に絶望である。彼らはいつかは奈落の底に堕ちていく。物を拾うことから、物をとることまでは、何の抵抗もなく連続している」

・「世界に悪人はいない。世界に聖人もいない。善は失楽園以降破片となって世界に散っている。ドン底の人々にも少しずつの善の破片が落ちている」

・「もし今日、貧民階級をなくしてしまおうと思えば、今日の慈善主義では不可能である。慈善主義は常に貧民を増加させる」

・1918年の関西労働同盟会創立宣言で、賀川の宣言はさらに進んで、八時間労働制、最低賃金の制定、社会保険制度の確立、工場民主制、男女同一賃金、住宅問題の解決、教育の機会均等を要求している

・「人間はその本然において自由である。ゆえに労働者は人格である。ただ賃銀相場によって売買せしむべきものではない。労働力を掠奪し、人間性を物質化せんとする時に、社会秩序の支持は黄金にあるのではなく、人間性にあることを資本家に教えねばならない」

・「我らは何よりも先に人間になりたい。要求はただ賃金の値上げだけではない。八時間労働制だけではない。貧乏しても、労働時間が長くてもかまわない。先ず人間でありたい

・「憎悪を教えることは、すべての社会運動においては失敗である。社会運動の根本的動機は愛であらねばならない」

・1922年日本農民組合創立大会で可決された賀川の起草、「農民は知識を養い技術を磨き徳性を涵養し農村生活を享楽し農村文化の完成を期す」「相愛扶助の力により相信じ相倚り農村生活の向上を期す」「農民は穏健着実合理合法を以て共同の理想に到達せんことを期す」

・「農民は年々疲弊していく。彼らは、ほとんど貧民同様の生活に甘んじている。日本の750万人の農民家族は一反の田畑を持っていない無産階級の人々。日本の社会問題は農村にある。農村の小作人は、体裁のよい賃金労働者である」

・「農村の貧民はきそって都市に集中してくる。都市に集中した職工の8割が農民。彼らは、不況になっても故郷に決して帰らない。とにかく、百姓していては儲からないからである」

・賀川はデンマークの農民高等学校にならって、全国からの農村青年たちと起居を共にし、農村問題について語り合い、農民の生きる道を話す農民福音学校をつくった

・「今日労働運動で、私の最もいやな傾向は、労働運動が抗争的になって、人間愛の基調から分離して、倫理運動から堕落していくこと」

・1919年賀川は購買組合共益社を組織したときの網領、「実質本位の日用品を廉価に供給して、組合員の生活を安定幸福ならしむ」「購買による利益を二分し、一を組合資本に積立て共同の利益を図り、他を組合員の購買高に応じ年末配当し、家計を安定豊富ならしむ」


本書には、賀川豊彦の理想と生き様が描かれています。理想が必ずしも実現できたわけではありませんが、今日に影響を与える大きな足跡を残しています。

愛を貫き、人間の人格を尊重し、その身を公平な社会実現に捧げた賀川のような人物が、今の格差社会の世の中において、現れてくることを願っています。

[ 2012/02/24 07:09 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(3)

『ことばを旅する』細川護熙

ことばを旅する (文春文庫)ことばを旅する (文春文庫)
(2011/01)
細川 護熙

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元首相の細川護熙さんの著書です。最近は、陶芸家として活躍されており、芸術家、文化人としての顔を持たれています。

室町時代から続く細川家の当主で、永青文庫(細川家伝来の美術品、歴史資料の保存と公開)に囲まれて、育ってこられただけあって、文化教養のレベルは半端じゃありません。

そして、偶然ですが、細川元首相が、この本で旅した場所(48箇所)のうち、私も、その半分ほど足を運んだことがあり、興味を持って読み進んでいくことができました。

日本の礎を築いた人物の言葉を選択された細川元首相のセンスのよさ、教養の高さに舌を巻かざるを得ませんでした。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「古意に擬するを以て善と為す」(弘法大師・高野山)
詩を作るときも書を書くときも、先人に学ぶことは大切だが、ことばや形をなぞるのではなく、「意」(こころ)を汲み取ることが根本

・「傍輩をはばからず、権門を恐れず」(北条泰時・鶴岡八幡宮)
「御成敗式目(貞永式目)」を制定した泰時は為政者として、法を推し進めながら、その裁きは、情に流されたように見える。法とは別次元に立つ泰時の政治家としての面目がある

・「ただ現世に先づ、あるべきやうにてあらん」(明恵上人・高山寺)
「あるべきようわ」は、ただ漫然とあるがままに生きることではない。明恵にとって、その言葉は身を切るような精進の果てに見えてくる自己に忠実に生きることだった

・「貧なるが道に親しきなり」(道元禅師・永平寺)
道元は「只管打坐」(ひたすら坐禅せよ)と説く。そして、仏道の人は貧を恐れてはならず、むしろ貧を積極的に受け入れるべきと言う。また「学道の人は最も貧なるべし」と説く

・「数寄者といふは隠遁の心第一」(武野紹鴎・南宗寺)
「侘び」の根底には驕者を排する思想がある。紹鴎はまた「茶湯者は無能なるが一能なり」と弟子に諭した。あれこれ手を染めて多能であるよりも、茶の湯に専念しろという教え

・「謙の一字なり」(中江藤樹・琵琶湖畔)
藤樹はその著「翁問答」の中で、「おごり自慢する魔心の根」を絶ち、「かりそめにも人をあなどりかろしめず」とする謙譲、謙遜の心こそ本当の教育の根幹としている

・「俗気を脱するを以て最となす」(与謝蕪村・淀川縁)
また別に、俳諧は俗語を用いて俗を離れるのを尚ぶとも言っている。俗とともにありつつ脱俗、離俗をなすべきというところに蕪村その人の生き方をみることができる

・「一成らば一切成る」(池大雅・萬福寺)
大雅にとって、学問も画も書も一つで、それは人としての生き方、人間性に帰一するものに他ならない

・「驕らざれば危ふからず」(上杉鷹山・米沢市)
年老いてなお厳しい節倹の生活を続ける鷹山に、日用品の増額が提案されたが、「今や老年の自分を叱ってくれる人もいず、心が弛んでしまうのではないかと恐れている」と答えた

・「心を養うは寡欲より善きは莫し」(吉田松陰・萩城城下町)
松陰は、孟子を愛玩した。別に、「一誠兆人を感ぜしむ」とも言っている。「誠」と「寡欲」は、松陰の精神の骨格をなす。寡欲と至誠によって天性を磨き上げた美しさ、それが松陰

・「無畏」(山岡鉄舟・浅草寺)
畏れる気持ちは「私心」から生まれる。「私」がなければ「畏」もない。鉄舟は剣禅一致の境に「無」を見たのに違いない

・「教育の第一は品性を建つるにあり」(新渡戸稲造・北海道大学)
稲造は「武士道」で「教育の主目的は・・・品性の確立」と書いた。中江藤樹は「徳」を修めることを重視した。品性といい徳といい、今の日本の教育に最も欠けているもの

・「為すべきを為し、為すべからざるを為さず」(幸田露伴・余市)
思うべきところを思い、為さねばならぬこと、思わねばならぬことがあったら、ただちに「全気全念で事を為す」ようにしなければならない、と露伴は言う



人と言葉と土地。その土地に行ってみて、その人とその言葉の意味を新たに感じ取ることができます。

この本は、細川元首相が、実際に、その言葉が発せられた言われのある土地を踏みしめ、味わい、それを五感を通して文章にしたものです。

晩年ならではの円熟したエッセイの中には、珠玉の言葉が散りばめられているように思います。価値のある一冊ではないでしょうか。

[ 2012/02/23 07:07 ] 細川護熙・本 | TB(0) | CM(0)