とは学

「・・・とは」の哲学

『2020年のブラジル経済』鈴木孝憲

2020年のブラジル経済2020年のブラジル経済
(2010/11/23)
鈴木 孝憲

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著者のブラジルの本を紹介するのは「ブラジル巨大経済の真実」に次ぎ、2冊目です。この本も、前作以上に、ブラジル経済を詳しく解説された良書です。

少しだけですが、ブラジル債券を所有しているため、ブラジルの動向が気になり、この本を手にしました。ブラジルという国を客観的に判断された意見は、参考になるところが多々あります。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・ブラジル経済は、巨大な国内市場に支えられた内需主導型経済。ブラジルの輸出の対GDP比率は12.2%にすぎず、しかも輸出の半分近くが農産物や鉄鉱石などのコモディティ

・ブラジルの人種別分布は、白人が48%、黒人が7%、混血が44%、黄色人が1%。この人種の坩堝から生まれるエネルギーと生命力が、ブラジル経済を支える一つの底力になっている

・ポルトガル人は流血を好まない、相手を最後まで追い込んで止めを刺すことを好まない。この「大らかな」気質、大きな包容力が世界各国からの多数の民族、人種とそれらがもたらした文化、習慣、宗教などを大らかに包み込み、ブラジルの融和、同化の根を作った

・ブラジル国内では、たとえば、サンパウロ市内でも、アラブ系とユダヤ系の人たちが、同じ商業地区、同じ町内で喧嘩一つせず仲良く暮らしている。ここでも、両方の民族を大らかに受け入れているベースは、ポルトガル人たちのDNAと思わる

・ブラジル人は新しいものが大好き。選挙の電子投票を世界で一番早く実現したのも、IT社会への対応能力もインドの若者たちにひけをとらない

・日本の移民たちは、辛い農作業からスタートし、真面目に正直に働きながら、子供たちの教育に全力を挙げた。その結果、「ジャポネース・ガランチード(日本人は信用できる)」という評価がブラジル社会で定着している

・ルーラ前大統領は、まさにブラジリアン・ドリームを象徴する人物。一介の極貧の東北ブラジル(4500万人を超える)生まれの男が大統領になったから、貧しい民たちの支持は絶対的だった

・前々大統領のカルドーゾ政権は、インフレが収まったところで、最低賃金の実質引き上げ(インフレを超えるアップ)を推し進め、低所得者層への通学奨励金をスタートさせた。次のルーラ政権にも、所得格差是正政策は引き継がれ、大きく実を結んだ

最低賃金の実質大幅値上げは、民間の給与所得者全体にとってプラスとなり、その購買力をアップさせた。ルーラ政権下(2003~2008年)で、3190万人が所得ランクアップを果たし、所得階層(富裕層・中間層・貧困層)の中間層がほぼ50%に達した

・ブラジルの2006年利用率・普及率は、電気98%、水道83%、下水道49%、テレビ93%、自動車33%、冷蔵庫89%、ガスレンジ98%、パソコン22%、電話75%

・世界主要国の石油埋蔵量は、1位サウジアラビア、2位イラン、3位イラク、4位クウェート、5位ベネズエラ、6位アラブ首長国連邦、7位ロシア、8位リビアで、ブラジルは16位だが、プレ・サル油田の発見で、8位に上がってくる

・1994年ハイパーインフレが収束したが、レアル高が進み、ブラジルの輸出競争力は低下した。そのため、輸出メーカーは、人件費の安い東北ブラジルに次々と工場を移転した。その結果、人々が購買力を持ち始め、貧困の中に眠っていた東北ブラジルが目覚めた

・東北ブラジルには、米国の大手農家も土地を購入(アメリカの農地の値段の10分の1)し始め、ブラジル農業の新しいフロンティアになっている

・2009年のブラジルへの直接投資国。1位オランダ、2位アメリカ、3位スペイン、4位ドイツ、5位フランス、6位日本、7位カナダ

・日本企業は、日本から来た現地経験の少ないトップが、3~4年の短期間で交代する。しかも、権限付与が不十分で、何でも本社の指示を仰ぐ。本社が判断すると、ミスジャッジかリスクをとらない策しか選ばない。その結果、ビジネスチャンスを逃がしている

・最近の深海油田の発見と開発の石油石化業界、再生し始めた造船業界、拡大する自動車産業界などのブラジル産業界では、エンジニアが不足しており、工業高校や大学の工学部の拡充が叫ばれている

・今後、年平均5%の経済成長を続けていけば、ブラジルは2020年にGDP世界第5~6位の経済大国になる可能性が出てきた


EUの経済危機、中国の経済成長の失速などが顕著にならない限り、ブラジルの成長はほぼ間違いないように思います。サッカーのワールドカップとオリンピックなどの大きなイベントもこなしながら、経済大国への道を歩み続けていくはずです。

夢と希望に満ちあふれているブラジルと積極的に関係を持たれたい方には、非常に役に立つ本ではないでしょうか。
[ 2012/01/31 07:09 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)

『森信三に学ぶ人間力』北尾吉孝

森信三に学ぶ人間力森信三に学ぶ人間力
(2011/09/16)
北尾 吉孝

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初めて森信三先生を知ったのは、このブログでも紹介した「森信三語録心魂にひびく言葉」を17年前に買ったときです。何気なく書店で立ち読みしていて、心を打たれたことを今でも覚えています。

この本の著者は、SBIホールディングス(オンライン証券のSBI証券やネット専用銀行の住信SBI銀行などのグループを傘下に持つ会社)の代表取締役である北尾吉孝氏です。

北尾吉孝氏が、教育者であった森信三先生を崇拝されていることを2、3年前に知り、何となく親しみを覚えていました。北尾氏が選んだ森信三先生の遺された言葉の中から、興味深かった箇所を「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・気品というものは、人間の修養上、最大の難物と言ってよい。それ以外の事柄は、生涯をかければ、必ずできるものだが、この気品という問題だけは、容易にそうとは言えない

・人間は、死というものの意味を考え、死に対して自分の心の腰が決まってきた時、そこに初めて、その人の真の人生は出発する

・結局「われわれ人間は、死ねば生まれる以前の世界へ還っていく」と考えている

・その人の生前における真実の深さに比例して、その人の精神は死後にも残る

・一切拒まず、一切却けず、素直に一切を受け入れて、そこに隠されている神の意志を読み取らねばならない

・深く生きるためには、偉人の伝記を三回読まなければいけない。一回目は、12、3歳から17、8歳前後にかけての「立志」の時期。二回目は、34、5歳から40歳前後にかけての「発願」の時期。三回目は、60歳前後にかけての人生の総括の時期

・世の中が不公平に思えるのは、「自分の我欲を基準として判断するからであって、もし裏を見、表を見、ずっと永い年月を通して、その人の歩みを見、また自分の欲を離れて見たならば、案外この世の中は公平であって、結局はその人の真価通りのもの

・現在自分は不幸だと思わない状態こそ、実は幸福な証拠

・常に自ら求め学びつつあるのでなければ、真に教えることはできない

・日常生活の中に宿る意味の深さは、主として読書の光に照らして、初めてこれを見出すことができる

・われわれ人間生活は、その半ばはこれを読書に費やし、他の半分は、かくして知り得たところを実践して、それを現実の上に実現していくこと

真の読書というものは、自己の内心のやむにやまれぬ要求から、初めてその書物の価値を十分に吸収することができる

・自己の充実を覚えるのは、自分の最も得意とする事柄に対して、全我を没入して、三昧の境にある時。そしてそれは、必ずしも得意のことでなくても、一事に没入すれば、そこに一種の充実した三昧境を味わうことができる

・自分が現在なさなければならなぬと分かった事をするために、それ以外の一切の事は、一時思い切ってふり捨てる

・真の謙遜とは、結局はその人が、常に道と取り組み、真理を相手に生きているところから、おのずと身につくもの

・ローソクは、火を点けられて初めて光を放つもの。同様に人間は、その志を立てて初めてその人の真価が現れる

・もはや足のきかなくなった人間が、手だけで這うようにして、目の前に見える最後の目標に向かって、にじりにじって近寄っていく。このねばりこそ、仕事を完成させるための最後の秘訣

・物質文化は無限に積み重ねることができるけれど、精神文化はそうはいかない。なぜならば、人間は誰しも死を迎え、地上より姿が消えるから


到達した人にしか見えない境地に、森信三先生は立たれていたのだと思います。私には、まだまだうかがい知ることのできない境地ですが、歳をとるにつれ、そこが少しでも見えていくことを願っている次第です。

森信三先生の言葉は、一生の道標になると思っています。これらの言葉を携えながら、徐々に老いていきたいと考えております。
[ 2012/01/30 07:00 ] 森信三・本 | TB(0) | CM(0)

『実況・料理生物学』小倉明彦

実況・料理生物学 (阪大リーブル030)実況・料理生物学 (阪大リーブル030)
(2011/10/14)
小倉明彦

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身近な料理をネタにして、ウンチクを傾けるのは楽しいことです。人によっては、ウザいと言われる方もいますが、場を盛り上げること間違いなしです。たまに、尊敬されることもありますし、異性にモテたりすることだってあります。

ワインの話、日本酒の話、紅茶の話、チョコレートの話、ウンチクを傾ける話は数多くありますが、この本は、料理全般についてのものです。しかも生物学から考察した料理の話です。

ネタになる(会話の潤滑油になる)話がゴロゴロありました。その中から、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・アリナミンはビタミンB1をアリシン(ニンニク)と化合させて、腸管での吸収を高め、分解を抑えたもの。ニンニクの学名はアリウム・サティブム。ニンニクだけでなく玉ねぎ、ネギ類全体にも「アリ」の名がつく

・味覚は、甘い、酸い、塩辛い、苦い、旨いが五原味。これらの味は、舌や口の粘膜から大脳皮質の味覚野に送られて情報処理される。しかし、トウガラシやコショウの辛味は大脳皮質の体性感覚野に送られる。だから、生理学では、辛いを五原味の中には含めない

・カプサイシンなどの受容体には、活性化され続けると次第に活性を失う性質がある。これを脱感作と言う。その結果、辛いものを食べ続けると、だんだん辛く感じなくなる「辛味中毒」になる

・燻製も食品の保存法の一つ。不完全燃焼の煙の中には、メチルアルコールやホルムアルデヒド、フェノールやクレゾールなどが混ざっている。はっきり言って毒だが、この毒で菌を殺す

・ハムやソーセージを作るときに、硝石という鉱物を混ぜる。硝石は酸素を発生するので、食中毒の原因になるボツリヌス菌(ソーセージ菌という意味)の増殖を防ぐ。この硝石から発生する亜硝酸イオンが肉の成分と結合して、きれいな赤色になり。発色剤となる

・硝酸塩、亜硝酸塩が食品の成分と結合してできるニトロソアミン類に若干の発ガン性が認められる。食中毒の危険を避けるか、がんの危険を避けるかの選択

・粘弾性を補充する食品添加剤のペクチンは、柑橘類の外皮直下の白い綿状部分の成分。タンパク質系の増粘添加剤には、ゼラチン(コラーゲンを加熱)、グルテン(小麦)、ムチン(ヤマイモ、オクラ、ナメコのネバネバ)、ポリグルタミン酸(納豆のネバネバ)がある

・食品の古典的保存方法は、細菌やカビの繁殖を防ぐ、塩漬け、味噌漬け、醤油漬け、砂糖漬け、蜂蜜漬け。中性環境を好む微生物繁殖を防ぐ、酢漬け、灰漬け。酸素の供給を断つことで繁殖を防ぐ、油漬け、甕詰め、壺詰めなど。近代では、びん詰、缶詰、脱酸素剤

・人に無害な特定の細菌やカビを積極的に繁殖させることで、有害な微生物の繁殖を抑える方法として、乳酸菌利用(ヨーグルト漬け、糠漬け、キムチ漬け)、コウジカビによる麹漬けなどがある

・茶葉の中でタンニンが増えるとテアニン(旨味物質グルタミン酸の誘導体)が減る。上等なお茶は、成長を犠牲にしても陽を当てないように育て、テアニンを取り出す。テアニンは低温で十分抽出できるから、熱湯で渋いタンニンを抽出するヘマはしないこと

・ドーパミンの作用を強める物質の一つがカフェイン。カフェイン中毒は冗談じゃなく本物の中毒。お茶のテオフィリンもココア・チョコレートのテオプロミンも同類で中毒を起こす

・ベーグルは、小麦粉をイーストで発酵させるまではパンと一緒だが、最低限発酵した段階で、熱湯に投げ込んで発酵を止め、焼く。「避難するのに、かさを増やすな」「膨らまなくても腹の中に入ると同じ」というユダヤ人の合理精神がぎっしり重たいパンになった



この他にも考察する料理生物学のテーマが、「カレーライス」「ラーメン」「ホットドッグ」「焼肉」「酒」「デザート」など多岐にわたっています。

科学的に、しつこく解説しようとする姿勢には、頭が下がります。食べ物のことをもっと知りたい方には、面白い本ではないでしょうか。
[ 2012/01/28 07:07 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『二宮金次郎正伝』二宮康裕

二宮金次郎正伝二宮金次郎正伝
(2010/08)
二宮 康裕

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著者は、二宮金次郎の子孫です。二宮家には、46000頁に及ぶ金次郎自身の文献が所蔵されています。

このブログでも、「二宮尊徳90の名言」「二宮翁夜話」などの書物を紹介してきました。本書は、本家本元の書です。

江戸時代の再建コンサルタントであった二宮金次郎の本当の姿と考え方が、この本を読むとよくわかります。印象的な箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・金次郎は、「講」「米相場」「金融」に関し、若年の頃から深い関心を寄せていた。奉公時には、仲間や女中衆を相手に金銭貸借を行った。二十代半ばには、農民の米を委託販売したり、米相場への投機を行った。天保の飢饉には、各地の米の売買差に着目して売買した

・金次郎は、自己の勤労で得た賃金や開墾地からの作徳米を浪費せずに、倹約生活で貯え、かつ貸付金の利子で財を増やし、それらを元手として田畑を買い増していった。この繰り返しで、1810年(23歳)には地主として一家再興を成し遂げた

・金次郎は、「家」を再興させ、「富貴」な生活を求め、「私欲」(自己の所有地を小作に出し、武家奉公の給金、米の売買益、薪の販売益、貸金の利子など多角的収入を得ていた)のみを一途に考えていた当時の心境を、後年になると批判的に回顧している

・金次郎の「分度」とは、己の心に内在している「怠け心」と「勤労意欲」の加減を度すること。金次郎は「勤労」「倹約」「推譲」を方法とする「分度」論を展開した

・金次郎の表彰策は、「村民をいたわり、民生の向上を図る」「戸数と人口の増加を目指す」「耕作地を拡大し、取穀の増加を目指す」こと。金次郎は荒地と化した田畑を復興させるのは農民の労働力であり、彼らのやる気を起こさせることが何よりも肝要と考えた

・金次郎はインフラ整備(下枝刈り、道普請、用水路浚いなど)に重点を置き、この費用を公的負担で行う原則を貫いた

・金次郎は、復興のためには、人口の増加が必須の課題と考え、生活困窮者に、小児養育料を与えた

・金次郎の七誓願「禍いを転じて福となし」「凶を転じて吉となし」「借用変じて無借となし」「荒地変じて開田となし」「瘠地変じて沃土となし」「衰貧変じて富栄となし」「困窮変じて安楽となす」

・金次郎は、新たな「分度」を求める理論として、「君の衣食住は、民の労苦なり、国民の安居は、君の仁政にあり」と記した。やがて、この認識が集大成される

・対立という立場を捨て去り、「一円融合」の境地に達したとき、人間界には、様々な果実がもたらされる。この「一円融合」の精神に立ってこそ、人は穏和な環境と、永遠の幸を保証されるものだと金次郎は考えた

・領主が己の利を優先した政治を展開すれば、闇政→惰農→廃田→貧民→下乱→犯法→重刑→臣恣→民散→国危→身弑→不孫という悪い循環になると金次郎は説いた

・領主が「仁徳」に基づいた政治を展開すれば、明政→励民→開田→恵民→下治→守法→省刑→臣信→衆聚→国寧→上豊→孫栄という好循環がもたらされると金次郎は説いた

・金次郎は、村内の富裕な者が貧窮者の面倒を見るという村内互助を求めた。あくまで村内のことは村内で解決するという村内自治を目指し、村落の経済的自立を促した

・貧窮に苦しむ農民に目標を与え、向上心をもたせた。そのために、農民の貢納額を一定に定めれば、農民は荒地開墾や農作業出精によって、増収分を自己のものにすることを金次郎は藩に認めさせた

・領主に「分度」を求め、報徳金を原資とし、農民に賃銭を払って、荒地を復興させ、収穫米の中から借財を返済していく金次郎の仕法は一定の成果を挙げた

・「安民」が達成されてこそ、「富国」がある。「国の元は民にて、民安かれば即ち国固し」と「安民富国」論を金次郎は展開した

・財政の悪化を増税に転嫁している内は根本的な改善を図ることができない。増税は一時的な効果をもたらしても、民を枯渇させるだけであり。民の枯渇はやがて領主の困窮につながることを、「分度」の定まらない仕法はザルに水を注ぐが如くと金次郎は喩えた


本書には、二宮金次郎の人生の軌跡が描かれています。働き者でしたが、若いときから銅像のような聖人君子ではなかったことがよくわかります。

若いとき、懸命に働き、親の借財を返しますが、その後、米相場などに手を出し、金儲けに走ります。しかし、晩年は、欲を捨て、みんなが幸せになるように懸命に動き回ったというのが、二宮金次郎の一生です。

この本を読み、偶像化されていない、二宮金次郎の本当の姿を知ることができ、より一層尊敬と親しみを感じることができました。
[ 2012/01/27 07:02 ] 二宮尊徳・本 | TB(0) | CM(1)

『日本はスウェーデンになるべきか』高岡望

日本はスウェーデンになるべきか (PHP新書)日本はスウェーデンになるべきか (PHP新書)
(2010/12)
高岡 望

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このブログで、「北欧の本」を過去に10冊採り上げてきました。本書は、スウェーデン公使(大使に次ぐ長)の著者が、スウェーデンと日本を対比(気候、人口、性格、法律、医療、福祉、年金、企業、労働組合、外交など)させた書です。

スウェーデンの素晴らしい政策が、この本には多く載っています。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。


・スウェーデンは、一年の半分が冬で、農作物に恵まれない。19世紀後半までヨーロッパの貧しい国の一つ。当時、豊かさを求めて、北米大陸に人口の3分の1近くが移住した

・スウェーデンが今日の地位を獲得した第一の要因は、19世紀初頭以降2世紀にわたる中立政策。第二の要因は、豊富な天然資源(木材、鉄鉱石、水力発電)。第三の要因は、優れた科学技術(国を挙げての教育、科学技術の育成)

・移住者の多い中南米を除けば、日本人が1000人以上住んでいる国で、永住者割合が最も高い国がスウェーデン。その背景には、両国民の気質の共通点(内気な性格)がある

・スウェーデン人と日本人はよく似ているが、「自立した強い個人」「規則に基づく組織力」「透明性」「連帯」といった本質的に異なる点もある

・寒い国では勤勉でないと生きていけない。毎晩凍え死なないためには、寝ずの番で火を絶やさないようにしなければならない。厳しい環境では、真面目で勤勉で決まりを守ることが、美徳どころか生存の条件になる

・ヨーロッパにおけるカトリックが優勢な地域とプロテスタントのそれを分ける境界は、ワインの生産の北限とほぼ一致する

国民総所得当たりODA(政府開発援助)は、スウェーデンが1.12%で世界1位。日本は0.18%、アメリカは0.2%。日本の5倍以上の比率で対外援助をするのは、自国の社会福祉に満足し、その豊かさを分かちたいという善意のあらわれ

・スウェーデンは、人口当たりの国際養子縁組数が世界一高い。50人のうち1人が養子。毎年、約1000人が養子縁組により入国する

・スウェーデンの難民第三国定住(一時的に逃れた国から難民の受け入れ定住を認める)受け入れ数は、米国、カナダ、オーストラリアに次ぐ世界4位で1800人

・47%の高い女性国会議員比率は、ある日突然実現したわけではない。女性の参政権が実現したのが1920年代、20%を超えたのが1970年代、30%を超えたのが1980年代

・スウェーデン企業の取締役の女性比率22%は、ノルウェーに次いで世界2位。日本は1.4%で世界最下位

・スウェーデンの20歳から64歳の女性のうち、病気療養中、学生、年金生活者を除くと、「家事」人口は、たったの2%。全女性人口に占める専業主婦の率は2%未満

・スウェーデンでは、子供手当が1984年に導入された。現在は、子供が16歳になるまで、1人約13000円。累進的に1人当たり給付が増えるので、子供が6人なら約12万円になる

・スウェーデンの合計特殊出生率は、2010年に1.97に達する。1990年代に1.5近くまで低下した後、継続して上昇。90年代末以降の景気回復と移民の高い出生率がプラスに働いている

・スウェーデンの65歳以上高齢者で、特別住宅入居者は10万人(6%)。高齢者の94%は自宅に住んでいる。特別住宅入居者はここ数年減少。在宅介護サービスを受ける人が15万人(10%)と増えている

・人口1000人当たり医師数はスウェーデンが3.6人、日本が2.1人と倍近い差。保健医療支出がGDPに占める割合は、スウェーデンが9.1%、日本は8.1%とさほど変わらない

・スウェーデンの労働者の7割が以下の労働組合に加入。LO(産業別組合、ブルーカラー)170万人、TCO(ホワイトカラー)120万人、SACO(高学歴専門職組合、教師、医師、弁護士等)60万人。同一労働同一賃金を実現する連帯賃金政策が特徴

・同一労働同一賃金が実現すると、生産効率が同一賃金より低い企業は、その企業にとっては高すぎる賃金で従業員を雇用する必要がある。その結果、生産効率の悪い企業、産業セクターから、効率のよいところに賃金と労働力が移転していく

・2003年にユーロ導入の是非を問う国民投票が実施されたが、政府は前向きだったが、反対56%で、導入が見送られた。一般国民は、スウェーデン独自の社会保障制度が悪影響を受けることを危惧した


これらのデータを見ると、スウェーデンと日本の差が一目瞭然となります。バブル崩壊後の20年にわたる日本政府の無策と怠慢と世界知らずが、もたらした災いかもしれません。

世界は、日々発展しているという事実を、もっとみんなが知らないといけないように思います。この本は、スウェーデンと日本という明暗が分かれる国を対比しているので、現実がよくわかるのではないでしょうか。
[ 2012/01/26 07:06 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(2)

『こころを凛とする196の言葉』斎藤薫

こころを凛とする196の言葉 (ブルームブックス)こころを凛とする196の言葉 (ブルームブックス)
(2004/03)
斎藤 薫

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著者の本を紹介するのは、「されど服で人生は変わる」に次ぎ、2冊目です。

斎藤薫さんは、女性の美意識、美的願望を、一文で見事に表現する卓越した能力をお持ちの方です。

男性では理解できない女性の心の細部を知ることができるので、感銘できる箇所がかなりあります。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・おしゃれとは、年齢とともに失っていく清潔感を取り戻すためにある

・他人の視線が気にならないのは、ある意味でとても「おさまり」がいい。でも、その「おさまり」こそ、言ってみれば「地味」の正体。危険がそこにある。気がつくと「地味」の中にぬくぬくと埋もれてしまい、女が最低限持っている艶まで失わせてしまう

・美しく「しまう」ことが、ものを所有する喜びを3倍にもする

・美人じゃなくても美しく見える人は、自分自身を「美しいもの」として扱っている。それで女は決まる

・街で振り返ってしまう女性は、いつも決まって同じタイプ。清潔感と色気がきっちり7対3の女たち

・好きになってくれるのを待つのではなく、「好き」を取りに行くつもりになると、不思議に恋はうまくいく

・魂は顔に出ている。女はメイクで隠せるが、男は魂を隠せない。だから、それを見逃してはダメ。最初の一瞬が勝負

・自分のやりたいようにしているのに、結果的に相手を少しだけ幸せにする。そういうわがままもある。相手を喜びに巻き込む身勝手は、女をとても魅力的に見せる。どうせなら、そういうわがままの言える女になること

・カワイイにカッコイイを組み合わせないと、「大人のカワイさ」は成立しない

・男と女の相性を最終的に決めるのは、正義感の有無。つまり、正義感の強い女は、自分と同量、またはそれ以上の正義感を持っている男でないと、一生ついてはいけない

・幸せそうに見える女は美しい。しかし、幸せそうに見せる女は少し悲しい。その手段が「お金持ちに見せること」だったときは、もっと悲しい。それを知った人から、おしゃれがうまくなる

・誰が何と言おうと、自分の意志だけで自分の力を信じて歩いていける人は、目に見えない「美しい緊張感」を全身に張り巡らせ、それが何とも言えぬ凛とした力強い美しさに変わる。「オーラが出る人」とは、たぶん「強い意志を持っている人」

・言い訳そのものが、女から清潔感を奪っていく。そして、言い訳は言い訳を呼び、怒ってばかりいる女をつくっていく

・お風呂に入浴剤を入れたり、ヨーグルトに上等なハチミツをかけたり、日常にひとさじの贅沢をすること。生きている張り合いをなくした女をあっけないくらい簡単に救ってくれる

・自分をバカにも見せられるゆとり、知的な会話のキモはそこにある

・「現実逃避」は決してほめられたりしない。でも、「行動的な逃避」は「あり」。転職、引越し、そして決別

・「知的」とは、知性や教養が洋服を着ていることではない。むしろ、それを日ごろいかに隠しているかが、知的な量を決めている

・よく考える人は、あまり悩まない。くよくよとよく悩む人は、実はあまり考えていない。「悩む」と「考える」は、見た目よく似ているが、実はまったく別のこと。多くの人は、考えているふりをして、悩んでしまう

・コンプレックスを克服したければ、それを人に言うか、書く。コンプレックスは他人にも自分にも、ひた隠しにしているから、どんどん大きくなってしまう



この本を読めば、技術論ではなく、精神論こそ、おしゃれの本筋であることがよくわかります。

格好よく言えば、おしゃれとは、心の着こなしではないでしょうか。そういう意味で、死ぬまで、おしゃれであり続けたいものです。
[ 2012/01/25 07:08 ] 斎藤薫・本 | TB(0) | CM(0)