とは学

「・・・とは」の哲学

『江戸のワイロ―もらい上手・渡し上手の知恵くらべ』童門冬二

江戸のワイロ―もらい上手・渡し上手の知恵くらべ江戸のワイロ―もらい上手・渡し上手の知恵くらべ
(1995/03)
童門 冬二

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歴史番組に度々登場する童門冬二さんの「お金」に関する本です。

その「お金」の中でも、特に賄賂はどのように使われていたのか、賄賂の背景と、賄賂を生む社会構造を解説した面白い書です。

江戸時代も、今も形は変われども、人間の欲は変わらないことがよくわかります。

なるほどと思えたところが数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・徳川家康は、幕府と大名の経営政策の根幹を「分断」においた。即ち、「花と実を同一人に与えない」「花(名誉)を与える者には実(給与)を少なくする。実を与える者には花を与えない」という方針をとった

幕府高官はすべて譜代大名(徳川家の忠臣)とし、外様大名は最後までポストにつけなかった。しかし、幕府の高いポストにつく大名の給与は、せいぜい五万石から二十万石。反対に役につけなかった外様大名は、加賀前田百万石、伊達六十余万石、島津七十余万石

・参勤交代は、人工的に考案された大名の財力消耗策。各宿場に多大な経費を落としていき、これによって、日本の街道筋は潤った。大名家はいつもピイピイしていた

・汚職の遠因もたどってみれば、幕府高官の給与が安すぎたということ。今の政府高官と「まったく今と同じだ」と言ってもらいたくない。構造が違う

・大名家の財政力を弱めるために行われたのが「お手伝い」。これは幕府首脳部である老中が集まって、「今年はどんな工事を行うか」「どこの大名に負担させるか」ということを協議する。各藩は財政が痛まないような工事を引き受けたいため、当然贈賄が行われた

・田沼意次は「金銀は人の命にも代え難い大事な宝。その宝を贈っても奉公したいと願う人なら、上に忠であることは明らか。志の厚い薄いは、金品の多いか少ないかに表われている」と言ったが、収賄を悪事だと思っていない

・田沼意次の発想の転換は、重農主義を重商主義に切り替えたところ。彼は商人に新しい税を課した。「運上」は、上から強制的に徴収するもの。「冥加金」は、商人が自発的に差し出す課徴金

・田沼意次は一部の商人と提携し、ともに利益を得て、その利益の一部を徳川幕府に収めさせるようにした。つまり、幕府直営の座を設けて専売し、許可制の問屋も設け、これらの座や問屋には、すべて特権営業を認め、利益の独占を保証し、運上と冥加金をとった

・江戸の経営学者の海保青陵は、「この世の中の存在は、すべて代物という経済的財貨である」と言い切る。そして、この財貨を売買して、新しい財貨を得ることは天の理と考え、「およそ政治の目的は、この経済社会の天理に即して上下を富ますこと」と言い切った

・海保青陵は、武士の「忠誠心」も、「武士の忠も代物。忠義といっても、主人は臣を買い、臣は主人に自分を売って代金を得ている」と言い切る。つまり、青陵の考えは、武士の忠といっても、たんなる労働契約にすぎないということ

・海保青陵は、「天子は天下という代物を持った豪家。諸大名は国という代物を持った豪家。この代物を民へ貸し付けて、その利息をとって生きている」と言い、知力と労働力を主人に売って賃金をもらう武士と、人を駕籠に乗せて賃金をもらう労働者は同じだと言った

・心学の祖、石田梅岩は「武士は臣として主人に仕え、その代価として俸録を得ている。商人や職人も同じで、客に仕えて代価を得る。代価とはすなわち利益のこと」と言った。さらに、社会的劣位にあった商人の存在を積極的に肯定し、励ました

・「大名からワイロをとるのは、その財政力を弱めるという徳川家康の方針に基づく」という論理は、江戸初期の大老酒井忠清や京都所司代板倉重矩らの実力者によって、忠実に守られた

・江戸の土木建設業者である河村瑞賢は「公共性の追求」「小さな企業者や、労務者すべてが潤う仕組み」を実現するために、平然と幕府要人に贈賄を行い、また同業者とも談合した。彼は、江戸の余剰人員を使い、開発と同時に失業者たちに生業の道を与えようとした



金持ちには、名誉を与えない。そして、お金を使わせなければならない。この考えが支配していたからこそ、江戸の泰平が250年以上続いたのかもしれません。

そして、お金持ちに、お金を使わせる仕組みとして、賄賂が有効に使われていたことが、この本で分かります。

江戸時代は、賄賂を贈る側も受け取る側も、卑しくなかったので、賄賂は経済の潤滑油くらいにしか考えていなかったのではないでしょうか。

賄賂をみんなが幸せになるために使い、贈る側も受け取る側も、そのお金を貯め込まずに、パッと使ってしまったら、賄賂は経済を循環させる「生き金」になります。

お金と名誉」「お金の稼ぎ方とお金の使い方」の整合性と社会性を考えさせてくれる書です。


[ 2011/11/30 08:00 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『借金の底なし沼で知ったお金の味』金森重樹

借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記
(2009/02/05)
金森 重樹

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著者は、東大出身ながら、借金を1億円以上つくり、その後、金儲けに目覚めた人です。

現在は、借金を完済し、行政書士事務所を経営されながら、3店舗のビジネスホテルのオーナーもされています。

この本には、著者のお金にまつわる波乱万丈が赤裸々に掲載されています。少し、偏った表現もありますが、ためになるポイントが数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「貧困は恥ではない」というのは、すべての人間が口にしながら、誰一人、心では納得していない諺である (劇作家・コッツェブー

・親の保護は、社会に出ると、リスク回避に役立っても、リターンに対しては足かせとなる。金儲けに関する限り、親の助言がリスク回避の方向に働いていると感じたならば、聞き容れる必要はない(特に、親が貧乏な場合)

・東京は一方では、無知な人間を食い物にする人たちが棲む街でもあった。その時理解したことは、世の中には悪い人がいるということ。そして、悪い人は何らかの相手を説得する技術を身につけており、それは学校では教えてくれないということ

・お金を払い続ける側と、それを受け取り続ける側の間には非常に大きな隔たりがある。物事を反対側の立場に立って考えなければ、食われる側に回る。このことは、「ギャンブルのように中毒性の高い事業をすると成功する」と言える

他人に評価されること、他人にどう見られかに価値を置く人たちには近づかない。同級生に混じって、システムの上に載って競争している限り、億万長者への道はない

・東大生たちが持ち合せていなかったのは、自分で糧を得るという発想。彼らは、官僚になったり、大企業に入社して、お金を貰うことは考えていても、自らの手で顧客を創造して、お金を創り出すという発想はなかった

・お金を消費する活動は「自傷行為」。ストレスに曝された日常から逃避して心の空虚感を満たすために、コンプレックスの裏返しとして自尊心を満たすために、自制心が効かずにお金を使ってしまう

・「何でも買える財力を持った者は何も欲しくなくなる」。本当に何でも好きなだけ買える状態に到達した人間は、そこまでの過程で、お金の扱い方を身につけているから、消費活動が快楽でなくなっている

・経営が苦しくなった時の打開策は、売上を上げること。ところが、税理士は売上を上げる方法を知らないから、経費削減のほうばかりいじる。しかし、経営が苦しくなった経営者は、言われなくても、とっくの昔に無駄な経費は削減している

財閥系鉄道系を除くほとんどのマンションデベロッパーは、10年でランキングトップ10から消え去り、20年ですべて潰れる

・財閥系のデベロッパーは、グループ内の銀行などから融資のパイプを確保しているから、最終的に新興系のデベロッパーが潰れるまで危機が悪化した時に、思い切って叩いて不動産を総取りすることができる

・江戸時代の呉服屋は、店が火事になったら、大福帳(特殊なこんにゃくで作った紙を使用)を井戸に投げ込んで逃げる。反物が燃えても、大福帳だけは守る。呉服が燃えた損失は微々たるもの、それに比べてデータベース焼失の損失は計り知れないことを知っていた

・富山の薬売りは、薬を売った先の名簿(懸場帳)を持っている。この懸場帳は、薬売りが引退する時に売買された。その売買金額の計算法は、既に置いている薬代の集金可能額に2割~5割の暖簾代を計上した金額。商売を引退する時には、名簿が退職金になった



著者は、お金に関して、苦い経験を多くされてきただけに、お金の味をよく知っておられます。つまり、お金の本質をよく理解されています。

今、お金に苦労されている方が、この本を読まれると、心に響いてくるものがあるように思いました。


[ 2011/11/29 06:52 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『女子の論語』祐木亜子

女子の論語女子の論語
(2011/07/04)
祐木亜子

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上海に住み、翻訳業、通訳業を務める著者が訳した、女性のための論語です。

今の時代にも合わせている読みやすい訳で、論語を身近な書に、見事に変換されています。楽しく読めて、しかも気に入った箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・言いたいことは二割で我慢して、ゆったりとした気持ちで見守る。それが相手を生かし自分を生かす

「敬に居て簡を行い」(雍也篇)

・本当にいい人なら善人に好かれても、悪人からは憎まれるはず。みんなからいい人だと言われる人は、誰にでもいい顔をする偽善者とも言える

「郷人の善き者はこれを好し、其の善からざる者はこれを悪まん」(子路篇)

・その人の持つ人間性が、仕事に影響を与えてくる。人柄は目に見えないけれど、第一義

「君子道を学べば則ち人を愛し」(陽貨篇)

・常識やしっかりした考えを持つ人ほど、「この人は常識を知らない」「仕事の態度がなっていない」と他人を見る目が厳しい。でも、そういう人にはみんな嫌がって寄りつかない

「寛なれば則ち衆を得」(陽貨篇)

・思いやりは難しい。単純な同情心や優しさで他人を包み込むだけではない。ときには、その人のことを思って、厳しい助言や忠告をすることも思いやり

「仁を好みて学を好まざれば、其の蔽や愚」(陽貨篇)

・「申し訳ありません」「すみませんでした」。この一言で、不思議と空気が和らぐ。一つの過ちを、貴重な経験にするのも、あなた次第

「過てば則ち改むるに憚ること勿かれ」(学而篇)

・価値観が異なる人に、腹の底まで見せるのは危ない。要らない対立を招くか、変に邪推され、被害を受けるだけだから

「道同じからざれば、相い為めに謀らず」(衛霊公篇)

・何か新しい発見はないか、自分が知らないことはないか、そんな意識を持って、学ぶようになれば、その蓄積があなたを変えていく

「日々に其の亡き所を知り」(子張篇)

・人の先天的な差は、それほど大きくない。違いは、その人間がどういう習慣を身につけながら生きてきたかによる

「性、相い近し、習えば、相い遠し」(陽貨篇)

・正直一途も度が過ぎると、自分が一番正しいと思い込み、他人の意見に耳を貸さない頑固者になってしまう。本を読み、いい話を聞いて、日ごろから思考を柔軟にしておきたい

「直を好みて学を好まざれば、其の蔽や絞」(陽貨篇)

男の器量がわかるのは、一つは、人に対する態度。誰にでも公平に接しているかが重要。もう一つは、困難にぶつかったときの態度。どっしり構えているかが大事

「君子は坦かに蕩蕩たり」(述而篇)

男の価値は、人間的魅力と将来性にある。金持ちだとか、学歴が高いとか、今目に見えているものだけで、男を選ぶのは少し危険

「小利を見れば則ち大事成らず」(子路篇)

・他人の不幸には興味津々なのに、他人の幸せや成功はうれしくない。こんな器量の狭い女性になってはだめ

「人の悪を称する者を悪む」(陽貨篇)

・自分の生き方や夢、勉強や趣味のこと、いろんなことについて本音で語り合い、互いが成長していく。こんな関係を築ける友だちは最高

「友を以て仁を輔く」(顔淵篇)

・あなたが楽しそうにしていれば、まわりも自然と笑顔になる。これって、他愛ないけど大切なこと

「事を敬して信」(学而篇)

信念を貫くのは大変。同僚や友人を敵に回すこと、家族や恋人を傷つけることもある。それでも、これが自分の生き方と言い切って、本当にその通りに生きている人は格好いい

「匹夫も志しを奪うべからざるなり」(子罕篇)



論語は広義に解釈すれば、性別年代を問わず、あらゆる人へのテキストになります。

大事なのは、解釈されたものを、どう自分の中に取り込むかです。そのためには、自分に取り込めるように訳された書を活用したほうがいいのかもしれません。

自分に合って、しかも自分を成長させてくれる書、この本は、そういう一冊になるのではないでしょうか。


[ 2011/11/28 07:41 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『「問題」と「解決」の法則』ジェームズ・アレン

「問題」と「解決」の法則「問題」と「解決」の法則
(2005/01)
ジェームズ アレン

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ジェームズ・アレン氏の本を紹介するのは、「最高にすてきな人生」に次ぎ、2冊目です。

仏教の影響を受けたイギリス人のアレン氏の文章は、亡くなられて、すでに100年経っても、日本人の心を刺激します。

この本にも、心に響いた箇所が多数ありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「渇望、憎悪、怒り、強欲、高慢、虚栄、執着」「報復、羨望、中傷、欺瞞」「盗み、策略、背信、虐待、疑心、嫉妬」。煩悩の一部であるこれらの暗い力はみな凶暴で、激しい感情の底に潜む分別のない衝動。これらの力にとりつかれると、自滅への道を辿る

・他人を制することに躍起になればなるほど、煩わしい感情に縛られ続ける。自分自身の利己心を忍耐強く治めていくことで、人は自由の高みへと向かうことができる

・愚かな者は、他人を非難し、自分を正当化する。しかし、より賢明な者は、他人の正当性を認め、自分の非を問う。平穏に至る道は、自分の外に求めて見つかるものではない。それは、内なる思考の世界に存在するものだから

・煩悩とは、生きている者が持つパワーのこと。そのパワーの向けどころが正しいか誤っているかで、幸せや苦痛が生み出される

・自分自身の愚かさが明確に認識できるようになると、この世の道理を追求しようとする思いが生じてくる。心の奥深くで目覚めるその願望は、悟りに近づく聖人と同じ喜びをもたらす

・人が願望を抱くということは、好ましくない現状に満足せず、よりよい現実を目指してそこに向かうこと。その熱い思いは、「生きる気高さ」と「充実した人生」を意識し始めた確かな証拠

・煩悩の世界に浸っている人たちは、すぐに消費して終わってしまうものや、その場限りで心に残らないものを手にするために奮闘する。大望を抱いている人たちは、美徳、知識、知恵を吸収することに奮闘する

・前進しようとする者を後退させようとするのが誘惑。誘惑の力は、邪な考えや自分を卑しめる欲望に潜んでいる。誘惑の拠点は、外ではなく、心の内にあることを自覚しない限り、誘惑にかられる期間が続く

・利己主義は利己主義と対立する。他人の悪意によって、かきたてられるのは、自分の我欲

・愚者は、激情には激情で交わり、憎悪には憎悪で応じ、悪には悪で応える。一方、賢人は、激情には穏健に交わり、憎悪には愛をもって接し、悪には善で応える

・不安も心配も消え、嘆きや悲しみが終わるとき。渇望や憎悪、怒りや羨望が生じなくなったとき。さらに、すべてのことが原因から生じる結果として望ましく映るようになれば、心を悩ます出来事がなくなる。その結果、「超越」に至る

・攻撃、嫌がらせ、迫害など、人を悩ませ、苦痛をもたらす出来事は、幸せを高める役目を果たす。苦しみを受けた人は、内なる善の深い泉を湧き立てることができるから

・高い徳を備えた人は、不幸になり得ない。不運を感じる原因を自分の中に知るから。我を捨てた心に、我が身を不幸に思う理由はない

人道的な徳は不完全。さもしさや身勝手さなど、まだ浄化できる要素が混在している。高潔な精神の美徳は、無垢で純粋。それ自体が、まったくもって完璧

・最高の徳、至福と、その喜びを具現化し、体現化する行いとは、「公平性」「惜しみない思いやり」「完璧な忍耐」「謙虚」「清廉潔白」「完全な平常心」

・善悪は行いにあるのではなく、その動機にある。動機を浄化して純粋にしていくことは、「善の精査」をすることになる



この本を読めば、問題を解決する策を自分の内に求めることが、すべてを解決する「万能の法則」であることがわかります。それは、難しく思えるが、易しいこと。易しく思えるが、難しいことなのかもしれません。

以前に紹介した「最高にすてきな人生」もそうでしたが、読むごとに引き込まれていく、不思議な力を持つ書です。

それはなぜかと考えたら、著者自身が、無垢で純粋であったからのように思います。


『過働社会ニッポン―長時間労働大国の実態に迫る』小倉一哉

過働社会ニッポン―長時間労働大国の実態に迫る (日経ビジネス人文庫)過働社会ニッポン―長時間労働大国の実態に迫る (日経ビジネス人文庫)
(2011/06/02)
小倉 一哉

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一般的に、先進国では、労働者の賃金が、増えにくくなります。その代わりに、労働時間が減って、時間的余裕を楽しむ(豊かさを味わう)ことができるようになります。

つまり、全体の賃金は増えないが、「時間当たり賃金」が増えるのが、先進国の労働者の特徴です。

ところが、今の日本は、全体的な賃金が減っているのに、労働時間が逆に増えているような状態になっています。

それは、労働者の「時間当たり賃金」が大幅に減っていることを意味します。つまり、先進国から転げ落ち始めているということです。

なぜ、そうなったのかを解き明かしてくれるのが、この書です。日本人の労働の実態を興味深く読めた箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・通勤時間が片道1時間だとしても、毎日家を午前8時に出て、帰宅は午後11時以降という人が、働き盛りの男性の2割強に及んでいる。これでは、「仕事と生活の調和」などのスローガンは耳に届かない。それどころか、「生命の危機」を感じる

・OECD加盟国(先進国)の中で、週50時間以上労働者の比率は、他国に比べて群を抜いた1位。先進国の中での日本の異常さが目につく

長時間営業のコンビニを、ドイツやフランスではほとんど見かけない。基本的に西欧諸国では法令等に違反する。日曜にも、デパートを開けない国が多い

・コンビニの80%以上が終日営業。利用する消費者からすればありがたいが、そこで働く人々や、お弁当やおにぎりを深夜・早朝に作ったり、商品の流通に携わる人々のことを想像していない。自己の便利さを追求することで、社会全体の長時間労働を促している

・1ヵ月の総労働時間の平均が200時間を超えるのは、「営業・販売」「研究開発・設計・SEなどの技術系専門職」「現場管理・監督」「輸送・運転」など

・100~300万円未満の人の総労働時間は短いが、300~500万円未満の人は、それより上の収入の人と総労働時間に大きな違いはない。「働けば働くほど儲かる」と言えない

・興味深いのは、フレックスタイム制では、サービス残業がまったくないことが多い。フレックスタイム制の人は、勤務時間管理がきちんとされている

・仕事に生きがいを感じる人は、サービス残業時間が長い。日本の正社員の中に、自らすすんでサービス残業をする人たちがいるが、サービス残業時間の長さに収入が伴っていない。一方、収入が多い人ほど、サービス残業時間は長くない

・単身無業者は就業者よりも性行動の頻度が少ない。また、既婚給与所得者でも、労働時間が長いほど、性行動の頻度が少なくなっている。性行動と出生率は相関しているので、二ート対策や長時間労働対策は、少子化対策(出生率上昇促進策)にとって無視できない

・ヨーロッパの残業割増率は、「残業をさせる経営者に対するペナルティ」。これは、残業をさせるよりも新しく人を雇った方が得するということ。日本の残業割増率は、新しく人を雇うよりも、残業させた方がお得なインセンティブと言える

過労死認定における労働時間の長さは、月当たり残業時間が45時間を超えると健康を害するリスクが高まり、発症前1ヶ月間に100時間を超える場合、業務と発症の関連性が強いとされている

・「うつ病」は女性に多い。しかし、「自殺」は男性に多い。働き盛りの人々が自殺する場合、多くは生前に病院に行っていない。病院に行っていないから、過労自殺の認定に手間がかかる

・成果主義的な賃金や評価制度には、それを補完する「能力開発の機会」が充実しなければならない。成果主義を短期的・人件費削減のためととらえるのではなく、長期的・能力開発向上という視点でとらえるべき

・日本のパートタイマーは、正社員に比べ、労働時間は短いが、ヨーロッパの基準では、限りなく「フルタイマー」に近い。日本の場合、正社員とパートタイマーは、「労働時間の長さ」ではなく、「身分」の違い。同一労働同一賃金の原則に反する身分格差が存在する国

・警察、消防、救急(病院)や、電気、ガス、水道などの分野以外は、深夜営業がなくても生きていける。深夜や終日の営業が、一部例外だったのが、「全部例外」に近づいている。自分にとっての利便性は、誰かの犠牲によって成り立っていることを意識する必要がある



みんなが豊かさを味わうためには、どうすればいいのかといった視点を欠いたまま、日本は、先進国から転げ落ちていこうとしています。

そうなったのも、産業界のエゴと消費者のエゴが原因ではないかと思います。この本は、そのエゴを浮き彫りにした書です。

このままの状態が続けば、金持ちになったのに、豊かにもなれず、また貧乏に逆戻りしてしまう「日没する国」になるのかもしれません。


[ 2011/11/24 06:26 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『日本列島改造論』田中角栄

日本列島改造論 (1972年)日本列島改造論 (1972年)
(1972)
田中 角栄

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十数年前に古本屋で手に入れた本です。出版されたのは、昭和47年(今から40年前)です。家の本棚の奥にしまってあったのを取り出して読んでみたら、なかなか面白いのです。

田中角栄という人物を批判的な目で見る人が多くいますが、この本を読んでの印象は、日本の高度成長時代末期に、出るべくして出た人物であると感じました。

その当時の田中角栄に罪はなく、田中角栄的なるものをずっと引きずってきた後輩の政治家や官僚たちに罪があるように思いました。

日本列島改造論には、田中角栄の理想と夢と予測が、数多く描かれています。40年経って、その理想と夢が実現されて、その予測が当たったのかどうか、「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・都市と農村の人たちがともに住みよく、生きがいのある生活環境の下で、豊かな暮しができる日本社会の建設こそ、一貫して追求してきたテーマ

・土地、人口、水などを総合的に組み合わせた地域別の発展目標を設ける

・明治から一貫してとり続けてきた財政中心主義(財政資金による資源配分で国を運営)は、明らかに改める時期にさしかかっている。これまでの制度は発展途上国の制度

・電力料金は、過密地域と過疎地域との間で料金差を設ける。工業用水道も同じような政策的配慮を加える。住民税も過疎地域のほうが相対的に安くなるような配慮をする

行政の広域化を促進すべく、市町村の第二次合併を積極的にすすめ、適正規模とすることによって、その行政力、財政力を強化する。周辺市との再編をすすめることによって、大都市行政の一元化と広域化をはかることが必要

・新しい広域地方団体を設置できれば、府県事務の3分の2を占めている国の機関委任事務や国の地方出先機関の大半は、この中に吸収、一元化され、激変している経済社会の体制に対応できる

・国際農業に対抗し、食糧の安定した自給度を確保するためには、高能率、高収益の日本農業をつくることが絶対に必要。そのためには、農業の大型機械化、装置化、組織化が大胆にはかられなければならない

・人間は自然と切離しては生きていけない。世界に例をみない超過密社会、巨大な管理社会の中で、心身をすり減らして働く国民のバイタリティーを取り戻すためには、きれいな水と空気、緑あふれる美しい自然にいつでもふれられるように配慮することが緊急に必要

・わが国が今後とるべき対外経済政策の重点は、「1.貿易取引のルール(国際分業)」「2.国際投資のルール(国際企業活動)」「3.援助と受け入れのルール(南北間)」「4.国際通貨体制のルール(国際収支の不均衡調整、通貨準備の量的不足、信用喪失)」

・これまでの生産第一主義、輸出一本ヤリの政策を改め、国民のための福祉を中心にすえて、社会資本ストックの建設、先進国並みの社会保障基水準の向上など、バランスのとれた国民経済の成長をはかること

・「人間の一日の行動半径の拡大に比例して、国民総生産と国民所得は増大する」原則からして、「地球上の人類の総生産の拡大や所得の拡大は、自らの一日の行動半径に比例する」という見方もできる

・今後の産業構造は、経済成長の視点に加えて、わが国を住みよく働きがいのある国にするという視点が必要。つまり、今後の日本経済をリードする産業は、従来の重化学工業ではなく、環境負荷基準労働環境基準という尺度から選び出すことが必要

・将来の産業構造の重心は、人間の知恵や知識をより使う産業=知識集約型産業に移動させなくてはならない。知恵や知識を多用する産業は、生産量に比べて、資源エネルギーの消費が低いので、環境を破壊することも少ないし、知的満足できる職場を提供できる

・知識集約型産業こそ、産業と環境の共存に役立ち、豊かな人間性を回復させるカギを持つ。「知識、技術、アイデアを多用する研究開発集約産業」「高度組立産業」「ファッション産業」「知識、情報を生産し提供する知識産業」などを発展させること

・「都合の悪いものは隣村へ持っていく」ことでは、問題の本質的解決にはならない。住民の生活環境や自然を守りながら開発をすすめることが必要

・これからの内陸型工業団地は、本格的インダストリアルパークにしたい。緑の並木道、噴水のある芝生の広場、整然とした工場の建物、色も明るく落ち着いて、工場団地全体が公園を思わせる外観にし、工業を地域社会に組み込んでいくことも可能

・明治以来、わが国の交通政策は鉄道中心におかれてきた。これは、点と線の交通政策であり、大都市拠点主義はここから出発した。これから必要なのは、点と面の交通政策であり、その新拠点は、道路と鉄道、海運、航空の結節点である

・高速道路ができればできるほど、市場が広がる反面、産地同士の競争も激しくなる。それは、貿易の自由化と同じことで、日本経済全体からみれば、適地適産がすすみ、価格が平準化し、生産は合理化する

・産業道路と切り離して、休日に都市を離れる人々が自然に溶け込むレクリエーション道路の建設を急がねばならない。サイクリング道路や森や神社、史跡を巡る緑の散歩道を大量につくることが必要

・道路政策について当面、重要なことは、通過道路と生活道路を切り離すこと。今は、通過道路をはみだした車が生活道路にまで入り込んで、わがもの顔に走っている。これでは、自分の家のまわりもおちおち歩いていられない

・隅田川、淀川の河口で魚釣りを楽しむところまで河川をきれいにしなければ、日本列島の改造が本当にできたとは言えない

・地方都市の多くは、工場や商店があっても、中枢管理機構や文化、学問の場が乏しい。いわば、胴体や手足は一応揃っているものの、神経中枢が十分でないようなもの。そうした状態では、経済活動の完結性が低くなるから、資金が大都市に吸い上げられてしまう

・行政上の許認可権限は、できるだけ地方自治体におろし、地方自治体が中央と同じ量の情報を駆使する企画を自由に行えるようにすべき、広域ブロック都市には、シンクタンク、コンサルタント、調査研究機関などの情報産業が必要

・当面、東京にある大学を地方に分散することが、都市への人口の過度集中を緩和する一方法である。それと同時に、地方にある大学を、特定の学問分野で世界をリードする特色のある大学に改めていきたい

・限られた土地条件を前提にして、農業で高い生産性と高い所得を確保するためには、少数精鋭による経営の大規模化、機械化が必要。その過程で、農業人口の大幅な減少は避けられない

・都市の立体化は建物の高層化それ自体が目的ではない。高層化によって生じる空間を公共の福祉のために活用するところに最大の目的がある。貴重な都市の空間は、空中も地下もフルに利用しなければならない

・汗と力と知恵と技術を結集すれば、大都市や産業が主人公の社会ではなく、人間が主人公となる時代を迎えることができる。自由で、社会的偏見がなく、創意と努力さえあれば、誰でもひとかどの人物になれる日本は、国際社会でも誠実で尊敬できる友人になれる



この「日本列島改造論」で、田中角栄が打ち出している政策や戦略(環境政策、格差是正対策、地方分権政策、農業成長戦略、大都市成長戦略、知識集約型産業移行政策、エネルギー政策など)は、今でも新鮮に感じられます。

とても、40年前に書かれたものとは思えません。ということは、田中角栄が進んでいたというより、この40年間、日本社会が、ほとんど進歩していないということではないでしょうか。

現実面だけに合わせ、お金に執着させる政策を行ってきたツケが今の日本のあわれな姿でないかと思います。

田中角栄のような、理想を語り、目標を掲げ、それを強引に推し進めるリーダーシップある人物の登場が、今の日本には必要なのかもしれません。


[ 2011/11/22 07:20 ] 田中角栄・本 | TB(0) | CM(0)