著者は、ソロ歌手として、中南米で活躍されている方です。現地でCDもリリースされて、日本とラテン諸国を往き来されています。
ラテン人に接している著者が、
ラテン人気質と日本人気質を比較し、考察しているのが、この本です。
目からウロコのことも数多く記載されており、あっと言う間に読みました。楽しく、しかも、ためになった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・
世界価値観調査による「現在の生活満足度」で、上位3カ国をラテンアメリカの国々が占めた。1位はコロンビア(麻薬戦争などで悪名高い)、2位メキシコ、3位グアテマラ
・ロンドンに本部を置く新経済財団が行った「
地球幸福度指数」でも、1位がコスタリカ、2位ドミニカ共和国、3位ジャマイカ、4位グアテマラと中米諸国が続く。一方、調査国であるイギリスは74位、日本75位、アメリカ114位.G20中の最上位はブラジル
・日本の
自殺者は年間33000人弱。引き取り手のない死者(
無縁死)の数も年間32000人。一方、激化する一方と日本のメディアに取り上げられる
メキシコの麻薬戦争の死者数は1年で7600人。その死傷者はマフィアの構成員で、一般庶民の死者数は稀少
・WHOの出している自殺率の国際比較では、
自殺率の低い国として、ラテンアメリカ諸国がずらりと並んでいる。当地の人々は、「無縁死」など考えられないと言う
・ラテンと言えば、「いい加減」「女たらし」「享楽的」というイメージがある。しかし、その一方で、「人生を楽しむ」「食べることや芸術を愛する」というイメージもまた強くある
・ラテン系の人たちは、お金がないならないで、
生活を楽しむ余裕を持っている。内戦中で、肝心の家が壊れてなくなっているのに、焚火をして、一族郎党持ち寄ったありあわせの食料で、楽しく串焼き宴会をやっている
・見ず知らずの女性に向けて投げかける甘い言葉をスペイン語で「
ピローポ」と言う。けれど、日本人が誤解しているのは、ピローポは、あくまで「挨拶の一環としての褒め言葉」であって、「特別な好意を持っている相手に対しての口説き文句」ではない
・「相手を褒める」という前向きな姿勢や褒め言葉は、多少そらぞらしくても、人間関係の潤滑油になる。基本的に、ラテンの国々には、できるだけ相手の良い点を見つけるという、
褒める文化がある
・褒めるには「観察力」がものを言う。ラテンの人たちは、姿形だけでなく、その人の内面もきちんと褒める。探すのはよいところだけ。これで、ラテンの人間関係はスムーズに運ぶ
・日本の男性陣が、銀座のクラブ、キャバクラ、流行りのメイド喫茶、執事喫茶に行くのは、嘘でもいいから、誰かに
褒めてもらいたいから。人間は、無意識に言葉の力により、活力を得て、ストレスを解消している
・ラテンの世界では、夫婦お互いの呼び方として、「
ミ・ビダ」が一般的。その意味は、「わが命」
・ひたすら相手を褒めるラテン人のスタイルは、身近な異性に対してだけでない。当然ながら子供にも発揮される。小さな時から、「愛している」「あなたが宝物」と言い聞かされ、ほおずりされ、ほっぺたにキスされ、抱きしめられて、子供たちは育つ
・褒めることと
甘やかすことは全く別。甘やかすことは、子供を見ていなくてもできるが、褒めるためには、子供を見ていなくてはならない。相手に無関心だと褒めることはできない
・ラテンの国々では、15歳を過ぎると、もう子供として扱われることはない。女の子は、レディーとしての振る舞いを要求されるし、男の子は、女性を立派にエスコートできなくてはならない
・ラテン男は、15歳を越えれば、普段から毎日のように、女性に
手を差し伸べる。だから、若くてかわいい女性だけではなく、年配のご婦人にも、体の不自由な人にも、高齢者にも、ためらいなく手を差し伸べることができる
・「お母さんと奥さん、どっちが大事?」の質問に、大抵のラテン男は「お母さん」と答える。お母さんは、僕を
産んでくれた人。お母さんがいなければ、妻と出会うことも結婚することもなかったと考えている
・ラテンの女性が、日本に来て一番驚くのは、男の子の
部屋が汚いこと。日本の公共の場所は清潔なのに、部屋がひどく散らかっているのはラテンアメリカではあり得ないこと
・ラテン世界では、子供部屋といっても、あくまで
親の所有物であり、主権が親にあるのが当然。「引きこもるって、どういうこと?」という人が大半
・ラテン世界ではホームパーティーが盛ん。家がいつ人に見られても恥ずかしくない程度に整理整頓されていれば、すぐに人を家に集めることが簡単。また、家に客を招き、パーティーを開くからといって、特別なものを用意しないのが、ラテンの常識
・「お金がないから結婚できない」のは日本の常識だが、ラテンアメリカでは、「
お金がないからこそ、就労状況が不安だからこそ、結婚して2人分の収入で、生活費をシェアする」
・ラテン人は、豊かな日本で、ホームレスがいることが理解できない。日本人は「失業→住所不定→ホームレス」という図式になるが、ラテン人なら、まず間違いなく、
友達の家に転がり込む・ラテン人は「共感力」が高い。悩んでいる人、悲しんでいる人がいれば、とにかく理解しようとする。そして、
そばにいてあげる。彼らは、「おせっかい」と思われることをまったく恐れない
・ラテン人が音楽を大事にするのも、踊りを愛するのも、ひとりだけで楽しむためではなく、
他者との関係をつなぐための潤滑油として使うため
・ラテンアメリカの人々は「
しょうがない」という言葉をよく口にする。やれるだけやった、でも、上手くいかないこともある。時代が悪い、運が悪い。この価値観を持っていれば、自殺にまで追い詰められることはない
・「
火事場の馬鹿力」という言葉ほど、ラテン人に似合う言葉はない。直前まで物事が決まらず、これは絶対無理だと思わせられることなど毎度と言っていいくらい。しかし、最後に必ず何とかしてしまうのがラテン人
今の日本人は、ラテン人の爪の垢でも煎じて飲まないといけないのかもしれません。でも、日本人も、江戸時代は、ラテン人に近かったのではないでしょうか。
経済成長をしている時代のモードは捨てて、経済停滞時のデフレ対応的生き方、つまり
ラテン的生き方をして、幸せに暮らす術を身につけることが急務かもしれません。