とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『ゲーテ格言集』

ゲーテ格言集 (新潮文庫)ゲーテ格言集 (新潮文庫)
(1952/06)
ゲーテ

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ゲーテは作家活動の他に、自身の叡智を短い言葉で数多く書き遺しました。それらの格言は、今でも、さまざまな国のさまざまな人に引用され続けています。

この「ゲーテ格言集」は、太平洋戦争中でも出版が許されていた数少ない書です。つまり、戦時下の日本人に、多大な影響を与えた書であるとも言えます。

古典とも言うべき「ゲーテ格言集」を何十年の時を経て、読み直し、再度共感した箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・憎しみは積極的不満で、妬みは消極的不満である。それゆえ、妬みがたちまち憎しみに変わっても怪しむに足りない

・誤りを認めるのは、真理を見出すのより、はるかに容易である。誤りは表面にあるので、片づけやすい。真理は深いところにおさまっているので、それを探るのは、誰にでもできることではない

・友達の欠点をあげつらう人々がいる。それによって何の得るところもない。私は常に敵の功績に注意を払い、それによって利益を得た

・適切な真理を言うのに、二通りの道がある。民衆はいつも公然と、王公はいつも秘密に言うものだ

・若い時は、興味が散漫なため忘れっぽく、年をとると、興味の欠乏のため忘れっぽい

・われわれの処世術の本領は、生存するために、われわれの存在を放棄するところにある

・すべての旅人が必ずつまづくところのつまづきの石がある。しかし、詩人がその石のあるところを暗示する

生活をもてあそぶものは、決して正しいものになれない。自分に命令しないものは、いつになっても、しもべにとどまる

自負し過ぎない者は、自分で思っている以上の人間である

・卑怯者は、安全な時だけ、威たけ高になる

・気前が好ければ、人から好意を受ける。特に、気前の好さが謙遜を伴う場合に

・君の値打ちを楽しもうと思ったら、君は世の中に価値を与えなければならない

大衆に仕える者は、あわれむべき奴だ。彼は散々苦労したあげく、誰からも感謝されない

・われわれは結局何を目指すべきか。世の中を知り、これを軽蔑しないことだ

・生活はすべて次の二つから成り立っている。「したいけれどできない」「できるけれどしたくない

・なぜ、こう悪口が絶えないのか。人々は、他のちょっとした功績でも認めると、自分の品位を損ずるように思っている

・愚か者と賢い人は同様に害がない。半分愚かな者半分賢い者とだけが、最も危険である

・どんな場合にも、口論なんぞする気になるな。賢い人でも無知な者と争うと、無知に陥ってしまう



今再び読んでも、ゲーテの人間に対する鑑識眼に驚かされます。いや、再び読んだからこそ、驚かされたのかもしれません。

ゲーテは若者が読むものではなく、人生経験を積んできた者こそが読むべきもののように感じました。

書棚から再度取り出して読めば、ゲーテの凄さを発見できるように思います。
[ 2011/09/30 06:42 ] ゲーテ・本 | TB(0) | CM(0)

『ウサギ人間とカメ人間-他人と比べない自分を活かす「成長法則」』川村則行

ウサギ人間とカメ人間―他人と比べない自分を活かす「成長法則」ウサギ人間とカメ人間―他人と比べない自分を活かす「成長法則」
(2002/09)
川村 則行

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他人と比較して成功を願う人を「ウサギ人間」、自分の成長を願う人を「カメ人間」と定義して、成功とは何か、成長とは何かを問う書です。

著者は、心療内科医だけに、豊富な症例を基に、ウサギ人間、カメ人間を分析し、その改善策を示しています。

この本を読み、賛同できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間には欲があり、それを軽視したり、無視したりせず、根本に据えること

・基本的には、食べていければ生きていける。生物としての個体維持を考えた場合、人は食べていけるくらいのお金を稼げばいいことになる。これが、人間の最も基本的な欲求であり価値観

・「成功」を生命維持のためと肌身で感じられるようになると、その人は「足るを知る」ことができるようになる

・どこへ行っても、比較は生じ、優劣や勝敗はついて回る。「お金」「出世」「勉強」「外見」「運動能力」といった価値観だけでなく、「自由」「やる気」「誠実さ」などの価値観が多くあれば、生きやすくなる。多様な価値観から自分の過ごしやすい場所を選んで生きればいい

・価値観を別のものに移行させても、その中での優劣や勝敗からは逃れられない。そこで、自分の中に、「成長の価値観」を併せもっておくことが大切となる

・成長というのは、人間も含めた生き物の本質。だから、常に成長することは、人間にとって「善」となる

・競争を排除するのではなく、競争は、自分を成長させるためのツール、ないしは機会と考えてみる。競争は、決して悪ではない。成長するために、極めて有用に働く手段になる

・ストレスがかかったとき、それを成長する好機と捉えること。自分は試されている、正念場を迎えた、この先きっといいことがある、逃げずに対峙しようと思うこと

・明瞭な目標を持っている人は、先を見るから、小さな失敗は善と見ることができる。目標や目的を持たず、その場しのぎの人生を送っている人は、失敗を必要以上に恐れる。これは、自分に自信のないことの裏返し

・成功を成長という概念で捉えなおし、苦しみを統合し、自分の中で、過去よりも成長したことを成功と考える。そういう視点が何より大切

・自分と向き合うとは、自分とはどういう人間なのか知ること。自分を知って、自分に素直になること。格好をつけずに、弱点や欠点を認めて、自分の心に正直になって、自分の特性を生かすこと

・ウサギ的価値観は「お仕着せの価値観」。カメ的価値観は「自分で見つけた価値観」「自分で作り上げた価値観」。お仕着せの価値観は、逃げの口実に使われる。自分で作り上げた価値観は、言い訳できない。これは「大人になる」ことにつながる

・目的を正しく知っていて、真剣に努力している人に、不幸や災いは、そうそう来るものではない

・人は居場所を間違えると、生きるのがつらくなる。心の健康を守るためには、自分の気持ちに素直になって、その気持ちに従ったほうがいい。行き詰っている理由は、一つには、ここにある

・我慢して、一人静かに物事に取り組む時期は、誰しも必要。勉強したり、研究したり、「出す」のではなく「入れる」のは、実力を蓄えること。この姿勢がいつか必ず実る

・「がんばり」には、志や真の目的がないから、大きなストレスやプレッシャーにかかったとき、耐えられず、ポキッと折れ曲がる。「努力」には、目的がある。目的のためには、艱難辛苦を肥やしにするパワーがある

・ウサギ人間とカメ人間の違いは、「心の根の強さ」の違い。カメ人間には、成長的価値観や、深い人間観、理想や目標があって、確たる自分を持っている。ウサギ人間には、それらがない



成長的価値観」「深い人間観」「理想や目標」の三点があれば、動じない、傷つかない、悩まない、困らない、そして、不安にならないと思います。

これらは、すぐに身につく(ウサギ的速さ)ものではありませんが、時間をかけて(カメ的速さ)身につけていけば、素晴らしい人生を堂々と歩めるのではないでしょうか。

この三点を忘れずに、生きていくことが何よりの素晴らしい生き方なのかもしれません。
[ 2011/09/29 07:11 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『キーワードで読む「三国志」』井波律子

キーワードで読む「三国志」キーワードで読む「三国志」
(2011/02)
井波 律子

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井波律子氏の本を紹介するのは、「酒池肉林・中国の贅沢三昧」に次ぎ2冊目です。井波氏は中国史に詳しい方です。

この本は、漫画家の横山光輝氏の「三国志」全30巻の巻末に、井波氏が解説されたものがベースになっています。

著者の中国の史観および人物観において、納得できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・権力が皇帝に一極集中することなく、各地に割拠した実力者に分散する乱世においては、実力者間の外交交渉が重要となる。各実力者の代理人として相手側と交渉する外交使節、すなわち「使者」の弁舌がものをいう

裏切りは癖になり、繰り返すうち、ますます倫理感が麻痺して、ついに、みずから墓穴を掘り、自滅にいたる。裏切りは、結局裏切った者自身を根底から蝕み崩壊させる

度量があることと無防備であることは、根本的に異なる。乱世の英雄の度量は、異質な者や容認しがたい者を受け入れても、自らがそれによって損なわれることはないという鋭敏な判断力があってこそ、威力を発揮する

・戦いに明け暮れたかに見える三国志の乱世は、その一方で、文人たちによって、新しい文学の表現形式が生み出されるなど、硬直した過去の時代から飛翔する知の舞台ともなった

・檄文(げきぶん)は戦いに先立って、味方をたたえ、敵を攻撃する布告文。古く殷周時代から用いられた。檄文の目的は、文章の威力により、戦わずして敵に深刻なダメージを与えようとするもの

・「軍師」とは、リーダーに深く信頼された上で、軍事面はむろんのこと、政治や外交も含んだ全体的かつ根本的な戦略を立て、これを実行する人物。三国志において、軍師としてまず想起されるのは諸葛亮

・「参謀」は、全体的かつ根本的な戦略を立てる「軍師」とは異なり、戦況に応じて軍事的戦略や作戦を立て、リーダーに提案する人物。この意味で、有能な参謀に恵まれたのは曹操

・参謀の能力は、彼らの立てる作戦や計略が的確であれば、瞬時に採用するリーダーのもとでこそ、存分に発揮される

・諸葛亮は厳格な法治主義を断行して、政権基盤を確立するなど、まことに有能な行政家。軍事家としても情に流されない厳しさの持ち主であった。諸葛亮の厳罰主義は、決して理不尽なものではなく、罰せられた者を納得させる道理にもとづいていた

・曹操も諸葛亮も、力と力が激突する乱世の真っ只中にありながら、つねに法律や規則を重んじる冷徹さを保ち続けた。彼らには組織を作り上げていくための合理性があり、その図抜けた「システム感覚」が並みの英雄と区別されるところ

・死にもの狂いで活路を求める者が知恵の限りを尽くすとき、間者諜報作戦も小汚い陰謀の域を突き抜け、爽やかな明るさを帯びる

・劉備は、「もし私の後継に才能がないなら、君がこの国を取ればよい」と諸葛亮に遺言をのこした。凡庸な人間には、いかに相手が信頼する人物でも、臨終の間際に、このような大胆なセリフは吐けない

・諸葛亮は世に出る前、隠者の歌を愛唱していた。もともと隠者や文人に歌や音楽は付き物であった



三国志には、リーダーとはどうあるべきか?が書き記されています。度量、人の使い方、作戦の立て方、統治のし方など、現代においても、リーダーにとって必要なことが、物語の場面場面で示唆されています。

リーダーを目指す人は、楽しく読めて、勉強になる参考書として、もっと活用すべきかもしれません。

この本は、三国志のエキスが詰まっており、時間をかけずに理解したい方には、最適な書と言えるのではないでしょうか。
[ 2011/09/28 06:30 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『交渉人勝海舟-対話と圧力、駆け引きの名手』鈴村進

交渉人 勝海舟―対話と圧力、駆け引きの名手交渉人 勝海舟―対話と圧力、駆け引きの名手
(2010/03/19)
鈴村 進

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勝海舟の交渉力にスポットを当てた本です。勝海舟の証言をもとに、その卓越した交渉力がどんなものだったのかを検証しています。

昔から勝海舟が好きで、数々の本を読んできましたが、この本は、また別の角度で、面白く読むことができました。

興味深かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・海舟は西郷隆盛の関係を踏まえて、「『敵に味方あり、味方に敵あり』といって、互いに腹を知りあった日には、敵味方の区別はないので、いわゆる肝胆相照らすとはつまりこのこと」と言っている

・海舟は「主義といい、道といって、必ずこれのみと断定するのは、おれは昔から好まない。単に道といっても、道には大小・厚薄・濃淡の差がある。しかるに、その一をあげて、他を排斥するのは、おれの取らないところ」と言った

・海舟は「人はよく方針と言うが、方針を定めてどうするのだ。およそ天下のことは、あらかじめ計り知ることができないもの。網を張って鳥を待っていても、鳥がその上を飛んだらどうするのか」と語っている

・海舟は、生涯を通じて、相当に「言いたいこと」を言い、「やりたいこと」をやり通した。それは、彼が私心を離れ、公に生きた人であったからこそ可能だった

・海舟は「忠義の士というものが国をつぶす。己のような大不忠・大不義のものがなければならぬ」と宣言している。目先のことだけしか見られない偏狭な「忠義の士」が国を誤るもの

・「彼なら我々の立場をわかってくれる。彼に任せれば大丈夫だ」。相手にこう言わさせるためには、日ごろの誠実さ、そして人間の大きさがものを言う

・とかく情緒的な人は、大事な契約に大きな失敗をすることがある。そんな間違いの理由は、たいていは最後の締めくくりが欠けていることによる

・海舟は「外交の極意は『正心誠意』にあるのだ。ごまかしなどをやりかけると、かえって向こうから、こちらの弱点を見抜かれるもの」と言う

・海舟は「およそ仕事をあせるものに、大事業ができたという例がない。天下の大事が、そんなけちな了見でできるものか」と断言している

・海舟は、方針を見失って目を回している人に、「世の中のことは、時々刻々変遷窮まりないもので、機来たり、機去り、その間実に髪を容れない。こういう世間に処して、万事、小理屈をもって、これに応じようとしても、それはとても及ばない」と言った

・海舟は、「およそ世間の事には、自ずから順調と逆境とがある。気合いが人にかかったと見たら、すらりと横にかわす。もし、自分にかかってきたら、油断なくずんずん押していく。この呼吸が活学問」と、どこまでも自然体であれと説いている

・ここ一番というところでは、いつもと違って、相手の意表をついた発言が有効。「何を言い出すのだろう」と思わせれば、それで半分は成功。相手は話を聞こうという姿勢になり、聞き耳を立てている

・相手のほうに、「あまり強制すると、思いがけない反撃をされるかもしれない」「見かけは小さくても鋭い牙がありそうだ」という警戒感、あるいは恐怖感や不気味さを与えるだけの実力を残しておくことが交渉の秘訣

・海舟は交渉の極意を「怒雷一驚、その耳を掩うが如くして可ならんか」、つまり、大きな仕事をやってのけるには、雷のようにすさまじい勢いで、相手が思わず耳をふさぐほど強烈にぶつかっていって、はじめて成功するものだと言う

・上位のものが、過度に興奮してみせれば、部下はかえって冷静になるもの。強大なエネルギーを抑えるためには、そのエネルギーを逆用するのがもっとも効果的



勝海舟は、その器の大きさからか、人を喰ったようなところがあり、常識人には理解されにくい部分がありました。

その大きな器が、起死回生時や緊急時の交渉には有効でした。平和時には、その器の大きさが、むしろ邪魔をしたのかもしれません。

とにかく、これからのしあがっていこうとする人にとっては、勝海舟に学ぶべき点が大いにあるのではないでしょうか。
[ 2011/09/27 08:04 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(1)

『フリーからお金を生みだす新戦略』クリス・アンダーソン

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
(2009/11/21)
クリス・アンダーソン

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クリス・アンダーソン氏の著書を紹介するのは、「ロングテール」に次ぎ2冊目です。

「ロングテール」もそうでしたが、この「フリー」もネット社会、デジタル社会で今起ころうとしていることを的確に分析している問題作です。

実際に、日本でも、フリー戦略(0円戦略)で躍進するゲーム関係の会社などが登場してきました。そういう意味で、今後のビジネス展開を考える上で、非常にヒントが多い書ではないでしょうか。

この本を読んで、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・デジタル時代のユニークな特徴は、ひとたび何かがソフトウエアになると、それが必ず無料になること。つまり、コストが無料になるのは当然として、ときとして、価格までが無料になる

・今日の最も興味深いビジネスモデルは、無料からお金を生み出す道を探すところにある。遅かれ早かれ、すべての会社がフリーを利用する方法や、フリーと競い合う方法を探さざるを得なくなる

・「内部相互補助」の世界には、「有料商品で無料商品をカバー」「将来の支払いが現在の無料をカバー」「有料利用者が無料利用者をカバー」といったやり方がある

・「三者間市場」とは、二者が無料で交換することで市場を形成し、第三者があとからそこに参加するために、その費用を負担するビジネスモデル。すべてのメディアの基本がこれ

・「フリーミアム」とは、一般的に5%の有料ユーザーが残り95%の無料ユーザー(有料プレミアム版の前の基本版のユーザー)を支える関係のビジネスモデル

・世界のトップ企業上位100社のうち、モノをつくる会社は32社しかない。あとの68社は、アイデアを加工する会社、サービスを提供する会社、知的財産を作る会社(製造コストより開発コストのほうが高い)、他人が作ったもので市場を形成する会社

・ウェブの配信コストはゼロ。フリーを利用して、できる限り多くの読者を獲得すること。コンテンツをつくるのに費用がかかるが、それは読者全員で償却できれば、読者が多くなればなるほど、ページ当たりコストはタダに近づく

・収入より注目を集めたいクリエーターにとって、無料にすることは理にかなっている。コンテンツをタダにすることで、競争優位が得られる。タダで優位に立った者は、並ばれることはあっても、負けることはない

・情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅が、速くなり、性能が上がり、安くなるという三重の相乗効果をオンラインは享受している。それらは、ほんの数年前には、目の飛び出るほど費用がかかることだった

・潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる

・インターネットは、世界中の何億もの人が参加する市場であり、誰もが自由かつ無料でアクセスできる。スパマーは100万通に1通でもスパムメールに反応があれば儲けられる(従来の業界ではダイレクトメールの返事が2%以下なら失敗)

・従来の市場に3人の競争者がいると、そのシェアは1位60%、2位30%、3位5%といった形になる。だが、ネットワーク効果に支配された市場では、1位95%、2位5%、3位0%となりかねない。ネットワーク効果は「金持ちをより金持ちに」させやすい

・グーグル世代は新聞に対してお金を払うという両親の習慣を真似しないだろうと気づいた新聞社は、フリーペーパーを発行し、街角や地下鉄の駅で配った。新聞業界が衰退するなか、フリーペーパーが唯一の希望の光となっている

・オンラインでは、コンテンツの供給増と入手のしやすさもあって、これからも広告収入で運営するビジネスが勝ち続ける

・テレビゲーム業界が、成長を加速させるためにフリーへ突き進んでいるビジネスとするならば、音楽業界は、衰退の速度を遅らせるためにフリーに行き着いたビジネスと言える

・限界費用の低いデジタル書籍は、限界費用の高い講演やコンサルティング業務のためのマーケティング手法。カスタマイズされたアイデアを知りたい場合、著者の稀少な時間に対して料金を支払う必要がある

・広告収入で運営するビジネスモデルがウェブの初期に優勢だったのは確かだが、今日では「フリーミアム」(少数の有料利用者が多くの無料利用者を支えるモデル)が急速に広がっている

・消費者は無料でオンラインゲームをし、「パンドラ」で無料音楽を聴き、「フールー」で無料動画を観て、「スカイプ」で無料の国際電話をかけて、お金を節約する。そこでは、すべてが100%オフ

・フリーミアム戦術には、「時間制限」(30日間無料、その後は有料)「機能制限」(基本版は無料、拡張版は有料)「人数制限」(一定数まで無料、それ以上の利用者は有料)「顧客タイプ制限」(創業まもない小規模企業は無料で、それ以外は有料)のモデルがある



現代社会のキーワードは、「グローバリゼーション」「IT革命」「新興国の躍進」です。それに呼応する形で、「先進国の中間層の崩壊」が負のキーワードとなっています。

先進国の中間層の崩壊の原因の一つとして、この「フリー」があるのではないでしょうか。

デフレどころではありません。タダになるのですから、その影響は、すぐに大きく現れてきます。

フリーの影響を受ける業界は、フリーをどう上手く利用し、衰退を防ぐことが、これからの大きなテーマになるのかもしれません。
[ 2011/09/26 07:51 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『「宇宙の力」を引き寄せる365の方法』ウエイン・W・ダイアー

「宇宙の力」を引き寄せる365の方法「宇宙の力」を引き寄せる365の方法
(2008/10/18)
ウエイン・W・ダイアー

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著者のウエイン・W・ダイアー氏は、アメリカの心理学者であり、個人の生き方重視の意識革命を提唱する方です。

スピリチュアルな内容なので、心の内に響く言葉が、この本に、数多く出てきます。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・写真にはエネルギーがある。自然界、動物界、悦びの世界、愛の世界、このような高エネルギー世界を表現する写真を身近に置き、その恩恵に浴すること

・他人にマイナス評価を下す癖があるのなら、あなたは何かを恐れているということ

・すべての源である存在から、よいものを受け取り、みなと分け合うこと。そうすると、よいものが絶えず、流れ込んできて、願いが実現する

・人に知られずに、親切を行うこと。お礼の言葉も、見返りも求めずに

・自分のもとにやってくる豊かさに執着せず、その流れを止めないように。あなたが、止めさえしなければ、豊かさは、いつまでも流れてくる

・どんな状況でも、美を探すことが、意志の力へとつながる秘訣

・感謝されるため、見返りのため、ではなく、何かのため、誰かのために

・自分は正しいというのは、エゴの執着。自分は正しいと思わないこと

・あなたが集めたもの、あなたの持っているものは、あなたではない。持っているものに、執着しないこと

・恨みつらみ、復讐の念にとどまるよりも、ゆるすことが真の勇気

・あなたがトラブルを作るパターンを分析すると、豊かな知恵が得られる

・自慢話をしようとすれば、そこから、超・低エネルギーが充満し、エゴの臭さにみな、辟易とする

・行動のチャンスを逃さず、偶然の一致という形で現れるサインを見逃さないように。チャンスとサインをしっかりつかむこと

・自分を偉いと思い込むと、いつも人に侮辱された気になる。この思い込みこそ、あなたのほとんどの問題の原因であり、人類のほとんどの問題の原因

・エゴの凶暴な力が弱まるときが、意志の力とつながり、可能性を発展させるとき。チャンスはエゴの力が弱まるとき

・願っていることが、形となって実現する前に、すでに目の前にあるかのように生きる。「結末から考える」ことが、成功の秘訣



自慢をしない、独占しない、執着しない、自分を正しいと思わないこと、つまり、エゴをなくすことが、良いエネルギーを運んでくれるということが、主に書かれています。

人間には、戒める存在が必要です。これが、身近な人になるのか、書物になるのか、人それぞれですが、戒めながら生きることが、人生なのかもしれません。そう考えさせてくれる書でした。
[ 2011/09/22 08:01 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『「惜しい努力」で終わらせない思考法』午堂登紀雄

「惜しい努力」で終わらせない思考法「惜しい努力」で終わらせない思考法
(2010/08/31)
午堂登紀雄

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世の中には、頑張っている人が、いっぱいいます。しかし、その努力が報われている人は、少ないのではないでしょうか。

この本は、努力を努力で終わらせないためには、どうすればいいのか。その考え方を説く書です。

著者の考え方に、賛同できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・批判レビューを書き込んでも、1円も生み出さない。しかし、嫉妬心に支配された人たちは、批判を書き込み、自分の溜飲を下げることに躍起。無駄な時間と労力を費やしていることに気づかない人間は、チャンスを引き寄せることができない

・他人の言動が気になるのは、自分が出すべき価値にフォーカスできていない証拠。自分がやるべきことに集中していれば、他人が何を言っても、何をやっても気にならない

・効率的に仕事をすることも大切だが、むしろ、プラスアルファの時間を確保するために、付加価値の低い作業は、より短い時間で終わらせるという発想が必要

・オンとオフを区別する人は、まだ仕事を楽しめていない。オンとオフの区別がなくなったとき、潜在能力は開花し、突き抜けた人間になる

・誰でもできる仕事は、時給がより安い人にスイッチされる。時間をかけて磨きあげた能力こそ、巨大な参入障壁となり、富に変換することができる

・本当に成功している人が書いた本の主張は、「当たり前のことを地道にやる、徹底的にやる、繰り返しやる、継続してやる」といった地味なもの。だから、いい本であっても売れない

・リターンを得られてこそ自己投資。だから、「その行為によって、どういうリターンが期待できるか?」を冷静に洞察し、換金する方法を考えておくこと。換金手段が思い浮かばない場合は、あえて手を出さない勇気も必要

・勉強は大事。ただし、何を勉強するか、勉強したことをどう活かすか、というアウトプットを考えてから取り組むことが大切。資格を取得する人が増えても、供給過剰となり、これからの人口減少時代、ダンピング競争になることは容易に想像できる

・覚えなければならないことやルーチンでできることは、ソフトウェアに置き換わり、作業レベルの仕事は、海外人材に置き換わっていく。稼げる仕事は、難しい問題を解決する仕事と、新しいものを創造する仕事に収斂していく

・オリジナリティは、先祖から引き継いできたもの、生きてきた環境、つきあってきた人、経験してきたもの、全員違うから、誰でも持っている。しかし、個性は、相手に受け入れられて初めて個性となる。それが、価値として、人に認めてもらえなければならない

・企業は、今のことだけでなく、5年後も10年後も考えている。リストラしている企業も人を募集している。つまり、戦力にならない人材や、コストパフォーマンスの悪い人材は減らしつつ、有能な人材を採用して、成長を図っているということ

・リハビリは、回復したいという欲求がある人にしか効果がない。それと同様に、職業訓練は、働きたいという欲求がある人にしか効果がない。支援の手を差し延べても、本当にやる気がある人にしか届かない。つまり、やる気がない人には、何をやっても無駄になる

・ランキングは質を保証するものではなく、もはや広告テクニックの一種になっている。ランキングという他人の行動に、自分の意志を委ねないこと



われわれは今、グローバリゼーション、IT革命の時代の中にいます。その中で、新興国に負けないように仕事をしていくならば、必然的に、著者が述べているような「正しい努力」が必要になってきます。

もはや、努力にも無駄が許されない時代です。せちがらい世の中になりましたが、これが、先進国の宿命として、受け止めなければいけないように思います。
[ 2011/09/20 05:55 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『「長寿食」世界探検記』家森幸男

「長寿食」世界探検記 (ちくま文庫)「長寿食」世界探検記 (ちくま文庫)
(2007/11)
家森 幸男

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家森教授の本を紹介するのは、「脳と心で楽しむ食生活」に次ぎ、2冊目です。著者は、世界の民族の健康を、食との関係で、古くから現地調査してきた方です。

この本が出版されてから、10年以上経っていますが、現在、健康で話題になっていることの多くが、既に数多く記載されています。そういう意味では、健康本の古典的名著なのかもしれません。

この本を読み、健康知識に役立つと思えた箇所が、20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本食(魚を世界一食べている)と地中海食(野菜・果物を日本人の1.5倍以上とっている)を足して二で割るような食事をすれば、量・質ともに世界最高の長寿食になる

・男性と同じように働くスウェーデンの女性は男性よりも三年くらいしか長生きしていなかった。検診の結果、スウェーデンの女性は、男性以上に高血圧が多かった。家庭を持ち、赤ちゃんができれば仕事をやめることが多い日本の女性は、健康にとってはよいこと

・魚介類とワカメなどの海藻には、海のミネラルが豊富。隠岐の人々の白血球の中の銅の量は、イギリス人(心臓死が多い)の3倍。心筋梗塞患者の6倍。隠岐では、心筋梗塞による死亡がほとんどない

・ヨーグルトには、カルシウムも蛋白質も多く、これでお腹を膨らませれば、脳卒中も骨粗鬆症も予防でき、寝たきりや痴呆も減る

・アフリカの農耕地帯では、中心部に近いほど、高血圧や肥満が多かった。その理由は電気。電気が通ると、まず村の雑貨店に電灯がひかれ、塩をはじめ、コーラ、ビール、砂糖などが並べられる。そのとたん、肥満や高血圧などの生活習慣病が多発してくる

草食の牛が、太い骨を持っているのは、牧草の中でも、カルシウムの多い牧草を食べるから。カルシウムの吸収がよければ、丈夫な骨ができる。また、牛は、マメ科の植物(イソフラボンを摂取できる)も食べており、骨からカルシウムが抜け出るのを抑えている

・歩くことが大切。それも、若いときなら、なるべく重い荷物を持って歩くこと。重力がかかると、骨にカルシウムが沈着する。逆に、重力がなくなれば、宇宙旅行と同じで、カルシウムが急に激減する

活性酸素が多く発生するのは、脳に血液が十分行き届かなくなった後に、再び血液が流れて、酸素が供給されたとき

・中国の広州で、50~54歳の人たちの検診をしたとき、皆、裸足でやってきた。この年齢の人たちは、平均からすると、5人に1人が高血圧。しかし、裸足の人たちは、皆、正常血圧であった。塩味文化のアジアにおいて、高血圧のない集団はここが初めてだった

・昆虫は、小さな体の中に、成長や活力のもとをすべて備えている。カルシウム、カリウム、マグネシウムも多いし、鶏などの内臓にも含まれるタウリンなどが豊富。これらは、すべて、血圧を下げてくれる栄養素

・今のユダヤの人々は、聖書の時代の食事をしていない。世界中からイスラエルに戻った人々は、世界各地の食文化の洗礼を受け、魚も食べなくなり、心筋梗塞が増え、日本人の4~5倍になっている。旧約聖書の先祖のような伝統食の保全が急務

・中国の貴州省は、隣の雲南省とともに、お茶の発祥地で、毎日多量にお茶を飲む。歯が黒いのは、虫歯のせいではなく、お茶のシブ。すなわちカテキンによるもの。カテキンは、歯を強くするだけでなく、動脈硬化の予防にもよく、痴呆の予防にも役立つ

・エビ、カニ、イカなどにある、硫黄を含んだアミノ酸は、血圧を上げる交感神経を抑え、コレステロールを胆汁として排出するのを助ける

・赤ワインには、ポリフェノールのみならず、植物エストロゲンの種が入っている。これは、目下アメリカで大ブームのレスペラトール

日本の漁村で長寿なところは、魚だけでなく、野菜も食べているところ。長寿の隠岐にしても、裏山で山菜を採り、庭先の畑で野菜を作って、魚と一緒に煮込み、食物繊維やカリウムを摂っている

・プルーンは、生命の実とも言われる果実。動脈硬化の犯人と言われる活性酸素の働きを抑える抗酸化物質を多く含んでいる。長寿地域のグルジアでは、生で食べるだけでなく、乾燥させて、保存食にもしている

・沖縄の長寿は、減塩と豚肉からの蛋白質摂取、その上、豆腐を食べる。魚と野菜や海藻なども食べている。これら沖縄の伝統食こそが、これからの健康の扉を開く鍵

・沖縄や隠岐の人が、総じて長生きなのは、ワカメなどの海藻類の日常的な摂取。食塩をとり、血圧が上がっても、食物繊維をとっていれば、脳卒中はもちろん、大腸ガンにもなりにくい

・心筋梗塞の死亡率は、男性1人に対し、女性0.35人。女性ホルモンは、血管を拡げる一酸化窒素の生産を促進する。大豆のイソフラボンは、一酸化窒素を産生させ、心筋梗塞を少なくする



家森教授の本を読むと、食生活に注意を払うことの重要性を、改めて感じます。

体を鍛えることやストレスをためないことも、健康には大事ですが、より以上に、食生活を見直すことが大事なように思います。

老後を楽しむためには、お金と健康が、必須条件です。つまり、お金をかけずに健康でいる方法を探求することが、老後に向けての大きな知恵になるのかもしれません。
[ 2011/09/19 07:45 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『戦前のラジオ放送と松下幸之助』坂本慎一

戦前のラジオ放送と松下幸之助戦前のラジオ放送と松下幸之助
(2011/04/26)
坂本 慎一

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松下幸之助は、死んで20年以上経ちましたが、今や、海外からも思想家として注目される存在です。

本をほとんど読まなかった松下幸之助が、なぜ、思想家と呼ばれるまでになったのでしょうか?考えてみたら、不思議です。

著者は、その謎を解明しようとした結果、その答えを戦前のラジオ放送に見出しました。

戦前のラジオ放送は、今と違って、裕福な知識人のための教養あふれる番組が多かったようです。松下幸之助は、それらの番組を熱心に聴いているうちに、自然と思想を形成していったというのが著者の見解です。

読むこと、見ること以上に、聴く(聞く)ことの大切さを教えてくれる箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・尋常小学校中退で、あまり本を読まない人の言葉が、死後20年たっても広く支持される理由は、思想史研究の専門家には理解しがたいこと

・人が語っていることの多くは、それまで読んだり聞いたりした言葉を応用したもの。多くの優れた言葉を語れる人は、それまでに多くの優れた言葉を聞いたり読んだりした人

・日本には経済思想がなかったと誤解されているが、近江商人の家訓や石門心学、二宮尊徳の報徳思想など、伝統的に、経済思想と呼び得るものは存在した

・松下幸之助には、1.「長年にわたって師事した碩学はいなかった」、2.「大量の書を読んだ形跡はない」、3.「本人が一定の体系的な思想を持っていた」

・松下幸之助は、「神を信ずる者だけを神は助ける」といった考え方は方便で、神仏への依頼心を持つ考え方を妥当でないとしていた

・税金を論ずる際、財政確保の数字上の議論になりがちだが、松下幸之助にとっては、高すぎる税金は道義の衰退をもたらすものだった。道義の退廃は、社会や国家の混乱をもたらすと考えていた

・松下幸之助は「本は、動的な原理を静的に説明している。それでは、原理は真にわからない。世相、事物は動いている」と述べている

・松下幸之助は、宗教という「根源的なもの」が確立すると、お互いに愉快な生活ができると考えた

高嶋米峰を筆頭とする新仏教徒同志会のメンバーは、教養放送全盛の時代の初期のラジオ放送に頻繁に出演していた。松下幸之助は、最初期からラジオに接しており、高嶋の影響を受けたと考えられる

・大正15年3月末における東京のラジオ受信機普及率は15%、大阪で7%、愛知で5%。全国ではわずか2%だった。松下幸之助が既に聞いていたラジオは、大多数の庶民にとって、縁の薄いものであった

・「物心一如」「総合芸術」「人間としての成功」など、高嶋米峰が盛んに使っていた言葉は、松下幸之助も述べている。松下の言葉は分かりやすく、大衆向けであって、文語的でないといった、ラジオから影響を受けた特徴がある

・メディア論のマーシャル・マルクハーンは、メディアの中でも、特にラジオは人々を引きつける力が強く、人々への影響力が高いが故に、その影響力が当人たちに意識されにくいと論じている

・松下幸之助がいつも強調する人生哲学や実践は、釈尊研究の大家、友松円諦の持論と完全に一致する。友松氏は、昭和9年にラジオで「法句経講義」を放送して爆発的人気を呼び、全日本真理運動を興した仏教学者。初期のPHP誌にも寄稿している

真理運動の特徴は、「超宗派の活動」と「経済的活動と宗教的反省を結びつける傾向」。友松氏の説く思想は、農民や漁民向けというよりは、都市で生活するサラリーマンや経営者向きであった

PHP運動新仏教運動、真理運動、三者に共通の特徴は、A「物心一如」B「労働による修練修行・道場としての職場」C「聖徳太子の奉賛」D「仏教的知性による学校教育批判」E「音声的知性」F「諸行無常ゆえの生成発展」

・真理運動の副代表であった高神覚昇は哲学者の西田幾多郎に師事した。松下幸之助が重視した「素直な心」は、高神の言う「すなおな心」「悟り」「成仏」「解脱」「涅槃」とほぼ同じ

・松下幸之助の「素直な心」は手段や方法。衆知を集めたその先にある最終的な目標は、「物心ともに豊かな調和ある繁栄、平和、幸福を逐次実現させていくこと

・松下幸之助は、衆知は自動的に集まるものではなく、人間が集めようとするもの。つまり「新しくて良いもの」は、衆知を集めようとする人間の意志と、その意志に基づく行動が不可欠と考えた

・松下幸之助は「知情意は、人間が人間としての働きを高めていく上において非常に大事な枢軸。すなわち、知情意の調和をはかり、かつ高めていくことが、人間性を向上さていくことになる」と述べている。「知情意」の三つを重視した

・戦前のラジオにおける教養放送について、メディア史の研究では、教養をアカデミックな知性だけに限り解釈するが、宗教と積極的に結びつけて解釈する必要がある

声の思想にも配慮しなければ、言葉で表現された思想の全貌を見ることができない。その意味で、従来の思想研究は、何をもって思想とするのか、今一度考え直す必要がある



松下幸之助が興したPHP運動は、PHP研究所(この本の出版元)が健在で、今も大きな影響力を有しています。さらに、彼が興した松下政経塾は、今や首相を輩出するまでになっています。

経済・宗教・哲学を融合させて、新たな経済思想をつくり上げた松下幸之助の原点がラジオにあったという指摘は非常に興味深く感じられました。

先月、久しぶりに、NHKラジオ放送の文化講演を聴いたのですが、結構、記憶や印象が頭の中に残り、知的刺激を受けました。

世は、ネット社会になり、読むメディア(テキスト画面)、見るメディア(映像画面)全盛の時代ですが、ラジオのような聴くメディアの利点もあるように思いました。

ラジオは、やはり、「影響力が高いが故に、その影響力が意識されにくいメディア」なのかもしれません。
[ 2011/09/16 08:40 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『家計株式会社化のススメ』藤川太

家計株式会社化のススメ (講談社プラスアルファ新書)家計株式会社化のススメ (講談社プラスアルファ新書)
(2011/05/20)
藤川 太

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家庭を会社のように考えて、健全な経営をすれば、無駄がなくなります。

デフレ時に、家をローンで買うべきなのか?乗りもしないのに車を買うべきなのか?合理的に判断しないと、放漫経営で家庭が潰れてしまいます。

日本人の多くは、右肩上がりで来た幻影をいまだに拭い去ることができていません。

この本は、デフレ時の家庭経営はどうあるべきかを提言する内容です。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・多くの人が思い描く「普通の生活」というのは、自分たちの親世代が実現してきた生活

・かつての「普通」は、「結婚して、子供にきちんと教育を受けさせる」「住宅を購入し、ローンを完済する」「夫婦が豊かな老後を送れる資産を築く」「与えられた仕事をこなし、ある程度の給料やポジションを得る」こと。これからは、「普通でいることすら大変な時代」

・ローンの借りやすさ、低金利、安い物件価格、税制優遇などが揃っていると、本来、マイホームを買ってはいけない人までが、住宅を手に入れるようになり、新たな悲劇を生む

・今後、物価水準は下がる。住宅価格は一気に値下がりする。現在よりもずっと少ないお金で生活できる状況になる。日本は、より少ない収入でも住める国に変わっていく

・親からすれば、何とかして、自分たちの子供にも「普通の生活」を維持させてやりたい。そこで、結婚資金や住宅資金の援助、孫の小遣いや教育費の一部援助、さらには、子供世帯の生活費そのものの援助という形になって、親から子供への所得移転が行われている

・今後20年間で、人口が1200万人減少する。不動産価格は下がり、借家は空室だらけになる。そうなれば、大家は、定期的に年金収入のある高齢者に貸すほうが安心。「家は資産になる。家賃を払うくらいなら、ローンを払ったほうがいい」と言う親の意見は怪しい

・年収800万~1500万円の「中途半端な小金持ち」層の年収が、ここ1、2年下がり始めている。昨今の年収ダウンは、高所得者層がターゲットになっている

・頭に入れておく必要があるのは、「専業主婦」「自動車」「」「教育」の4つの選択肢のどれを選び、どれを捨てるかということ。すべて満たすような生活を送るには、よほどの世帯収入がなければ無理。多くの家庭で、1つないし2つあきらめる必要がある

・子供がいないと、老後に向けて資産を築いておくべき時期にさしかかっても、従来通りの高い生活レベルを継続してしまいがち。結果、定年退職を前に満足な貯金ができていないという状態に陥る

・これまで、家計には、あまりにも「経営」といい観点が欠けていた。家計と言えば、節約の話ばかりで、家計経営の手法はほとんど語られていない

・世の男性は、会社では、さまざまな経営関連の数字をチェックし、コスト削減、組織改革、収益増強などに取り組んでいる。ところが、なぜか家計のことは無頓着。とくに妻が、専業主婦の場合、任せっぱなしになる

・企業経営に関わっていこうとする人にとって、家計は格好の練習台になる。家計経営の改善に取り組むことができれば、自分が将来、企業の管理職になっても、経営改善にスムーズに取り組むことができる

・家計経営を行っていく上で、重要なポイントは、「夫婦の協力」「経営計画」「相見積もり」「節約より固定費削減を優先」

・「自分の人生は自分でつくる」ことで、人生は格段に面白くなる。それを実現するには、強固な家計の財政基盤を持つこと



会社は利益を追うことで存在しています。家庭も利益を追わなければ、存在できません。人生を楽しく渡っていくには、お金の問題を抜きにはできません。

稼ぎがいっぱいあろうが、なかろうが、毎年確実に利益を出すことで、家庭を盤石にすることができます。

そのためには、家庭を小会社の経営ととらえることが必要です。その必要性を強く感じられる人にとって、この本は、良き指導書になります。
[ 2011/09/15 06:30 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『臨床外科医が語る・人生に勝つ脳』篠浦伸禎

臨床脳外科医が語る 人生に勝つ脳 ~脳のしくみを知り、生き方をコントロールする~ (ぐっと身近に人がわかる)臨床脳外科医が語る 人生に勝つ脳 ~脳のしくみを知り、生き方をコントロールする~ (ぐっと身近に人がわかる)
(2010/10/21)
篠浦 伸禎

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また、脳の本かと思って、手にしましたが、私の偏見を裏切る、読み応えのある内容の書でした。

著者の篠浦伸禎医師は、現在も、現場で活躍されている臨床脳外科医です。手術患者、入院患者に起きた事実を題材にしながら、それを専門用語でなく、一般的な言葉に置き換え、わかりやすく解説されています。

この本の中で、勉強になった箇所が、20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間学は、余計なストレスを回避する、さらに、ストレスを受けても、パニックにならずにストレスを乗り越える、そのための指針を与える学問

・現場での予想外の出来事に対する感銘は、新たな真理を見つけるための源泉

・暗闇の中にずっといると、3日目から幻覚、幻聴が起こり、精神に異常をきたす。受動的な情報が入って来なくなることは、脳に短期間で悪影響を及ぼす。様々な角度から、正確に情報を受動することが、柔軟で適切な判断をする前提条件

・動物の脳には、自分より強い敵が来れば、逃避し、自分より弱い敵が来れば、攻撃する機能が搭載されている。人間でも、下の人には居丈高になり、上の人には、媚びへつらうのは、動物の脳が主体で生きている人

・左脳の本質は「進歩と質」、右脳の本質は「調和と量」。左脳は、言葉を使うことにより、過去から未来に向かって、物事の質を上げる。右脳は、感情や空間を統合することにより、現実に対応する

・脳の使い方の偏りが、その人の大きな武器になる。しかし、そこだけにこだわると、人としてのバランスを崩すことになる。偏りは偏りで活かし、使われていない脳も意識して使って、脳をバランスよく発達させることが、幸せに生きていくのに極めて大事

・動物脳(大脳の下にある脳)の長所は、強烈なエネルギーを有すること。短所は、危険な状態において、パニックになったり、逃避行動をとること

・動物脳が主体の人生を見ると、最終的にほぼ例外なく破綻している。動物脳は、エネルギーがあって、魅力的なのだが、コントロールするのが、極めて厄介な脳

・ある時代の教育を受け、時代の空気を吸って成長した世代が、指導者から引退した時が、時代の転換点。戦前であれば、明治維新に活躍した人が引退した日露戦争であり、戦後であれば、太平洋戦争を経験した人が引退した1980年代半ばのバブルの時代

・過去の偉人の人生をたどると、若いころの屈辱的な経験が、動物脳のエネルギーを高め、その経験から身を持って感じたことを、人間脳(大脳)で理想を高め、生涯努力し続けたと思わせることが多い

・冷静に考えれば、長い目で見ると損なことでも、今得だと感じると飛びついてしまうのは、動物脳が脳を支配している状態。ほとんどの犯罪は、それが原因

・仕事に取り組むときに、私だけでなく公のためにもなっているか、100年先でも通用することをやっているか、常に問うことは、心がけ次第でできること。それに向かって、努力し続ければ、動物脳を乗りこなすことができる

・生きていくのが厳しいほど、生存競争に勝たなければならないため、左脳を使う(脳の使い方の質を上げる)方に傾き、それほど厳しくなければ、周りの人と仲良くしたほうが、生きやすいため、右脳を使う方に傾く

雨が多いと、自然と仲良くしさえすれば、厳しい競争をしなくても生きていける。雨が多い東アジアは、右脳に傾き、雨が少ないヨーロッパは、左脳に傾く。米国の中枢の高収入の人達は、より左脳を使い、低収入の人達は、より右脳を使っている

閉鎖的な組織(トップが世襲制の組織、ワンマンの組織、専門性の高い組織、成功した組織)では、時間が経つほど、動物脳が支配する

・左脳が文明(世界のどの地域でも共通の、理に適った合理的なもの)、右脳が文化(その地域でしか通用しない、理屈を超えた独特のもの)をつくる

・脳の次元の高い国が、長い目で見ると、競争に強い。次元が高いほど、多くの情報を処理することが可能になる

・アイデンティティーに徹して、自分の能力を伸ばしながら、バランスにも気を配ること。この「アイデンティティーとバランス」が、社会の競争に勝つ秘訣

・同じストレスを受けても、それで崩れる人間と、成長する人間との差は、脳を統合する、正しい方向性を知っていることが大きい。正しい方向性を知るには、人間の生き方を説いた人間学が大きな役割を果たす




社会学、歴史学、人間学などの社会学系の学問と、脳科学を統合したような内容の本は、珍しいのではないでしょうか。

著者の推測の意見も多いですが、脳外科の数々の臨床をされてきた方だけに、説得力があります。

社会の質は、人間の愚かな行動と理性的な行動の違いによって、決まるように思います。快適な社会をつくるには、人間が理性的な行動をとるように、脳を意識させ、コントロールさせることが必須なのかもしれません。
[ 2011/09/13 08:19 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『ほめようはげまそう1001の知恵』ボブ・ネルソン

ほめようはげまそう1001の知恵ほめようはげまそう1001の知恵
(1999/07)
ボブ ネルソン

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アメリカ企業の評価、表彰、報償制度を徹底的に調べている書です。人は、報酬だけで動かないという事実は、万国共通です。

認められたい欲求をどう満たすか、アメリカ企業の各社が実際に採用している制度が数多く掲載されています。

その中で参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・お客にすぐれたサービスをした従業員は、スピードくじがもらえる。カードはその場でマネジャーから渡され、さまざまな賞品がもらえる (ブッシュ・ガーデンズ=タンバ)

・社長は、新入社員が入ると、その人がどんな地位の人であっても、1時間面談する (フィジオ=コントロール)

・清掃係以外の人がゴミを拾ったりすると、金のブラシの絵がついた小さなカードがもらえる。10枚たまると、商品がもらえる (ミーク&アソシエーツ)

・1年に1日、製造部門の事務職の社員全員が生産現場で働く (メアリー・ケイ・コスメティックス)

・フリーダイヤルの「質問電話」を設けて、従業員からの仕事に関連した問題や質問に応えている (セキュリッティ・パシフィック)

・顧客からの称賛の手紙は社内報で紹介される (ブランチャード・シカゴ)

・「公正な待遇の保証」制度があり、社員は、公正な待遇を受けていないと思ったら、不満を訴えることができる (フェデラル・エクスプレス)

・夏の間、金曜日の午後は、有給休暇にしている (モリソン・ラボラトリーズ)

・7年後に、通常の3週間の休暇に加え、8週間の有給休暇がとれる (インテル)

・乗務員がいろいろな制服の中から好きなものを選ぶことができる (デルタ航空)

・目標を大幅に越えた従業員に「ペースセッター(見本になる人)賞」を授け、受賞者には、「ペースセッター」と記された新しい名刺が贈られる (ノードストローム)

・コスト削減法を見つけたり、新たな収入源を追い求めた人には、デスクに飾る管理幹部たちの署名が入った野球ボールが贈られる (ジェファーソン郡)

・レジそばに備えてある顧客の感想ノート、「お客を装った調査係」の報告、顧客からの手紙などをもとに、その月に最も際立ったサービスを行った従業員から、「顧客サービスオールスター」を選出する (ノードストローム)

・フィッシング、ランニング、コーラスまで幅広く何十ものクラブがあり、退職者たちは、会費なしにクラブに参加することができる (ノースウエスタン相互生命保険)

・時間に遅れてきた人に罰金を課し、そのお金を時間どおりに来た人たちに与えている (マイクロエイジ・コンピュータ)

・全社規模でオリンピックを開催し、会計、ピザ生地づくり、野菜切り、トラックへの荷積み、ピザ生地つかみ、トレイ集めなど、16の分野でコンテストを行い、国内チャンピオンには賞金が贈られる (ドミノ・ピザ)

・生産現場の従業員は、就業時間に、工場の理髪店で、2ドルで髪をカットしてもらうことができる (ワージントン・インダストリーズ)



アメリカ人の評価、表彰、福利厚生制度は、ユニークであり、ユーモアのあるものが数多くあります。

日本にももちろん、このような制度はあると思うのですが、少し真面目すぎて、楽しくないのかもしれません。

こういう感覚は、アメリカ人に学ぶべき点が多いのではないでしょうか。
[ 2011/09/12 07:03 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『定年後のリアル』勢古浩爾

定年後のリアル定年後のリアル
(2009/12/22)
勢古 浩爾

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著者の定年後の心境を綴った本です。勢古浩爾氏は、数多くの著書を有する知識人だけあって、定年後を醒めた眼でみています。

その醒め方が、私には心地よく感じられました。この本の中で、共感できた箇所が15ほどあります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・勤めていたときは、会社という組織の中で、何者かであると思っていただけ。いまや何者でもないが、元々何者でもなかったということ

・夢や希望は実現されるにこしたことはないが、夢や希望を持つことによって、それがフラストレーションにしかならないとしたら、その持ち方がおかしいということ

・テレビを見て、散歩をして、本を読むだけで結構。あと時々旅行。何かをしたくなればするし、そうでなければやらない。「つまらない老後」だと思われても、つまんねえもへちまもない

・心が若いのはいい。しかし、なかには、気位も利己心も無作法も昔のままという爺さん婆さんがいる。こうなると、これほど醜い生き物もない。外見の醜さに内面の醜さが二乗されて、にっちもさっちもいかない

・仕事が大事なのは、仕事をしている間だけで、辞めてしまえば、仕事など大事でもなんでもなくなるというのが不思議

・結局、人は自分の立場があるからうるさいだけ。立場がなくなった人間にとって、そのことがばかばかしい。立場がなくなるということが、これほどまで自由だと知らなかった

・趣味なんか暇つぶしであり、ちょっとした楽しみだけでいい。それをやっている間は夢中になれる時間を忘れる、だけでいい

・最近の人間には、バカでいいと開き直っている人と、どうしたらいいと他人に答えを求める人の二種類いる。後者は、他人の言説の中に答えが書かれていないと怒る

・本には、自分の知らないすごい秘策のようなものが書かれているのではないか、専門家は自分の知らない、目も覚めるような考えを持っているのではないか、と考えすぎ

・健康である。住むところがある。仕事もある。当分食べていけるだけの金もある。親も兄弟もいる。私はまだ生きている。これは悪くないとプラスに考えることである

・国のみならず、家族、夫婦、人脈などに頼る気持ちを捨てる。高齢者に優しい社会などないと覚悟する。健康は幻想、善意は報われないとあきらめる。その上で、小さくても素朴な善意に接することができたら、躍りあがって喜ぶべき

・何でも最低の条件と比較すること。マイナス思考とは意味合いが違うが、すべてを最低の線から考えた方がいい

・統計は、あらゆる物事を「社会問題」として考える人間にとって必要だが、「自分問題」だけで生きている人間にとって何の参考にもならない

・詐欺で大金を掠め取った連中の金の使い途は、「高級マンション、外車、時計、クラブ」。それで、昔の同級生に「成功ぶり」を見せつける。一人旅に出たり、プラモデルを作ったり、文学全集を買ったりする犯罪者はいない

・自我を少しでも縮小したい。余計なことはもう考えない。論を争わない。それで、できるだけ外の静かな空気を吸う。そのようにできたらそれでいい。若者の刹那主義は戒めるが、老後を生きる人間は、今日一日よければ、それでいい

・好きなように生きればいい。好きでなくても生きるしかない。そして、「死ぬ時は、死ぬがよろしく候」(良寛)。死ぬのだから、嫌と言っても仕方ない

・私が死んでも、たった一つの命が消えていくだけのこと。私にとっては大したことであろうが、世界にとってはまったく大したことではない。この世は常に生きている者たちのもの



アンチエイジング的な老後を過ごそうとする人が多くいますが、著者のように、淡々と老後を過ごせていけたらいいのではないでしょうか。

老後は、気張らず、威張らず、意地張らず、ゆったりと生きていけたらそれでいいと感じさせてくれる書です。
[ 2011/09/09 08:53 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『幸せはゆっくりゆっくりやってくる!』新井えり

幸せはゆっくりゆっくりやってくる!幸せはゆっくりゆっくりやってくる!
(2002/11)
新井 えり

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時は、ゆっくり。心は、ゆったり。このように、まったり生きたいものですが、現代社会は、そういう生き方を許してくれません。

自分が、そういう生き方をしようと誓わない限り、ゆっくり、ゆったりは、永久にやってきません。

この本には、ゆっくりの真髄が書かれています。共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・本当の幸福、真の豊かさとは、外側から与えられるものではなく、自己の内側から現われ出るものが、外の世界を変えていくときに、手に入るもの

・人は「忙しい」と、「心を亡くす」。本当に元気になるためには、心にゆとりを戻すこと

・力を抜くと、まったく違った働きの「負の力」が、自然に現れる。それが、心の中に眠っていた「ゆっくり」を起こすきっかけになる

・「ゆっくり」のよさは、今ある状態をそのまま認めて、変わることを強いらないこと

・人間が速さを追求したのは、時間の節約のため。「急いで、さっさと済ませて、後でのんびりしよう」としたが、実際は、ちっとも暇にも、のんびりにもなれなかった

・人生の中身の濃さは、どれだけ、たくさん見たり、聞いたり、読んだりできるかで決まる。急いでばかりいると、見落とし、聞きもらし、読んだものも覚えていられない

・本当に欲しいものは、見つめていると、人生のいろんな場面が、心に甦ってくる品。一生使える品を受け継ぐことは、心の中に、小さな贅沢を持つこと

・道具にこだわる人たちは、自分の持つ道具に、機能だけでなく、趣きや美しさを求めている。そして、使い込むことのよさを知っている

・いつの時代にも、「本物を少しだけ」という贅沢が、一番いい

・伝統とは、人と時が一緒になって、作り、守っていく「熟すときを待つ文化」。ものを作ることには、そんなゆったりした側面がある

・植物を育てることは、自然の時の流れに任せて、移ろっていくのを、ゆっくり待っていること

・待つことは、心の絆の象徴。人は待つ相手がいなければ寂しい。待っているとき、相手を信じること以外、支えにするものは何一つない。少し不安もある。でも。待つ人がいることは、人生において、やはり、とても幸福なこと

・人生は競争ではない。人生の中心にいるのは、自分で、生きる際のいろいろな基準を決めていくのも、自分だということ

・苦労が表情に出ず、苦労が愚痴にならずに、苦労を笑いながら明るく人に語る人は、苦労から育むものを見出した人

・人も、その仕事も、機が熟して、内面から自然にあふれ出ようとするものがあってこそ、初めて認められ、存在感を持つ

・「よい時」を待つのに必要なのは、動じない、毅然とした精神。優れた人物は、運に恵まれようと、見放されようと、常に態度を変えない人



今、ゆっくり、できなくても、これから、ゆっくりしようと心に誓えば、必ず、ゆっくりとした生活が手に入ると思います。

何かに追い立てられて生きていく心苦しさからの解放を目指すのが、人生の目的ではないでしょうか。
[ 2011/09/08 06:49 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『資本主義はどこへ向かうのか-内部化する市場と自由投資主義』西部忠

資本主義はどこへ向かうのか―内部化する市場と自由投資主義 (NHKブックス)資本主義はどこへ向かうのか―内部化する市場と自由投資主義 (NHKブックス)
(2011/02/24)
西部 忠

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今、我々は、資本主義社会の中で暮らしています。しかし、時代と共に、社会は生成発展しています。その中で、資本主義は、どう変わらざるを得ないのか、興味があるところです。

先進国、新興国、資源国、金融国など、それぞれの立場において、違いはあれど、資本主義が、おしなべて、どこに向かおうとしているのかを、教えてくれるのが、この書です。

投資と貨幣について、なるほどと感じた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・資本主義は、万人が投資家であることを、あるいは投資家の意識で行為することを奨励するような「自由投資主義」へと向かっている

・すべての行為は、利潤を目的とする投資という形態をとり、個人が投資家として振る舞うことを余儀なくする。個人の消費活動もまた、投資行為としての意味を付与されることになってくる

・労働者が、自らの労働力を販売し、賃金を得ているのは、もはや生きていくのに不可欠な生活必需品(衣食住医など)を買うためではない。彼らは、教育や訓練に費用と時間をかけて、自らの労働力の価値を高めるべく投資を行っている

・貨幣は、流通手段としてではなく、儲けるために使われる「資本」になっている。長引く不況において、人々が貨幣を使わないのは、貨幣が、価値貯蔵手段としての資本になっていることの現れ

・人々は、生活必需品以外は、将来価格がさらに下がると予想するときには、モノは買わない。株や不動産などのインカムゲイン(収益)を生む資産ですら、キャピタルロス(値下がり損)が大きいと予想されれば、誰も買わなくなる

・金融資産の保有高が高いだけでなく、貨幣の退蔵が広範に起きたことによって、労働者の意識は、すでに資本家に接近している。不況のもと、金利をいくら下げても、企業が投資しないのと同様に、労働者も消費しない

・教育は、人的資本への投資行為という教育観を、教師や教官のサイドが広く容認している。この投資家的な視点や論点は、職業訓練、教養、習い事、情報収集、健康管理など、いまや至る所に適用されつつある

売買投資という二つの観点から、市場領域をどう確定するのかを考えなければ、諸問題にもはや答えることができない地点にいる

・人々は、貨幣を稼ぐこと、稼ぎ方には大いに関心を抱いているが、貨幣のあり方や貨幣という制度の望ましさには関心を抱いていない

・グロバリゼーションとは、資本が無限に自己膨張する「自由」を求める運動である。資本が利潤や利子を求めて、自由に動き回れば、市場は不安定になり、地球の有限性が露わになる

・貨幣の本質を突き詰めると、それは、自分の欲望ではなく、他者の欲望の予想を媒介に成立するものであることがわかる

・貨幣改革の第一の選択肢は、グローバルな投機的取引を管理することを目的とする税を導入すること。外国為替取引の85%は投機的な取引であり、80%が1週間内に決済される往復取引である。この超短期の資本移動を抑制するために税金を課すこと

・貨幣改革の第二の選択肢は、グローバルな管理通貨制度を確立すること。人工的な国際通貨を作り、世界中央銀行がそれを管理するという方法がいい

・貨幣改革の第三の選択肢は、「貨幣発行自由化」ないし「フリーバンキング」への転換。国家が独占する貨幣発行益を消滅させ、インフレーションという貨幣の堕落を阻止し、個人が享受する便益を高める

貨幣言語は共に、時間・事象・社会の三次元における差異を克服する「一般化」という観点でも同型である。貨幣での「商品」と「価格」に対応するのは、言語での「文章」と「意味」である



この本で重要なことは、「資本主義社会が進むと、家庭も企業と同じ行動をとる」ということではないでしょうか。つまり、どの家も「家庭経営」をするということです。

本来なら、家庭で、モノやサービスを買うのは、「消費」ですが、それが、資本主義の進んだ社会では、「仕入」「備品購入」「投資」になり、「固定資産」になるモノは、「償却年数」を考えながら購入するようになります。

世界中が、資本主義に参戦してくる中で、ドルの没落が叫ばれている以上に、貨幣全体の意味が、大きく問われてきているように思います。

その中で、何を「信用」し、何を「消費」すれば賢明なのかのヒントが、この本に載っています。このことを頭に入れて、生きていけば、道を大きく踏み外さなくてすむのではないでしょうか。

[ 2011/09/06 07:45 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『ムダな努力をしないで幸福になる方法』ジョナサン・ロビンソン

ムダな努力をしないで幸福になる方法 (PHP文庫)ムダな努力をしないで幸福になる方法 (PHP文庫)
(2004/07)
ジョナサン ロビンソン

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先月末に紹介した「見せかけの勤勉の正体」の中に、「科学技術、社会の進歩は、いかに楽をするかの快楽主義に導かれたもの。額に汗する、苦労することが尊いといった努力至上主義がまかり通る社会は暗い」の一節がありました。

日本人も、もう少し、今回紹介する本のタイトルのように、「ムダな努力をしないで幸福になる方法」を考えないといけないのかもしれません。

楽をして幸せに生きるというのは、人間の究極のテーマであるはずです。そのヒントを求めて、この本を読みました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・苦痛に対する楽しみの割合が、5対1を超えると、人は人生がいやになる。いい気分になるためには、苦痛な行動をする時間を減らして、楽しいことをする時間を増やす必要がある

・楽しみを優先させすぎると、後の人生が、がたがたになると思っている人がいるが、それは違う。生活の中に楽しい時を持っていないと、仕事でも人間関係でも、能力も効果も落ちてしまう

・車を持っているだけで、あなたは、世界の富の上位7%にいることになる。もし、上位7%にいても感謝できないとすれば、上位2%になっても、同じこと。「足りない病」の解毒剤は、今持っているものに感謝を感じること

叫ぶこと叩くことは、感情を発散する自然な方法。いらだった時、ベッドを叩いたり、車の中で叫んだりすると、生活の他のところに、有毒な感情を持ち込まないで済む

・心の中で、嫌な思い出のビデオを制作し、そのシーンを再生し、巻き戻しをする。次に、シーンの中の登場人物全員に、おかしな小道具や衣装を着させて、もう一度、高速再生する。嫌な思い出のシーンを壊してしまうと、気分が楽になる

拒否される恐怖心に克つ鍵は、拒否されたことが成功と思える仕組みをつくること。例えば、人に10回拒否されるのを目標にし、そうなれば、報酬が得られるようにする。これで、恐怖心がなくなり、「ノー」と言われても、大したことないと思えるようになる

・「これでいいんだ」という強い感覚を得れば、直観的な導きを受け取ったことになる。これは、「ああ、そうか」という体験に似ている。ずっと前から、答えを知っていて、しばらく忘れていたけれど、もう一度思い出した感覚

・本当の直観的な導きには、「これでいい」という感覚と同時に、オープンな感じや体がリラックスしている感じ、心が安らぎに満たされている感覚がある

・もしパートナーが、あなたの感じを共有して、あなたのことを評価してくれるようなら、自分が正しい道にいることのしるし

・私たち一人一人には、何か特別なやるべきことがある。「あなたは、自分に与えられたものを、自分独自の人生のために、どう使ったか?」ということ

・直観は、心の内部にあって、覆いを外されるのを待っている。理屈っぽい、忙しい心を静めてあげれば、覆いが外れていく

・レーザー光線の集中のように、特定のことや疑問に焦点を当てること。静かな心と特定のことへ焦点を当てることの組み合わせによって、人生に重大な変化をもたらすことができる

・実証済みだが、自分が人生で何を得たいかを知り、それを目標にして書き出すことは、自分の夢を実現するパワフルな方法である

・人生で創り出したいものが何であれ、あなたの進歩にずっと責任を持ってくれる人がいると助けになる。相棒は、怠けたり、気が散るのを克服させてくれる


幸福になるには、他人が切り拓いた道を歩まないこと、自分で道を切り拓くことが大切というのが著者の見解です。

では、どうすれば、自分で道を切り拓くことができるのか?それは、創造力を発揮することというのも著者の見解です。さらに、創造力を発揮するには、直観を大切にするというのも著者の見解です。

この本は、発想、アイデア、クリエイティビティーに長けた人間になるためには、どうすればいいのかが記載されています。創造性に興味のある方には、おすすめの書です。
[ 2011/09/05 08:13 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『福の神と貧乏神』小松和彦

福の神と貧乏神 (ちくま文庫)福の神と貧乏神 (ちくま文庫)
(2009/01/07)
小松 和彦

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この本は、昔の人が、お金や幸せをどう考えていたかを知るのに役立つ書です。

古来、日本人は、幸せを願うために何をしてきたのか、福の神の信仰がどうなされてきたか。また、七福神などの現世信仰の神々の由来が解説されています。

昔の人のお金観幸せ観を興味深く読めた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・福とは、貧乏神や鬼や盗賊を遠ざけることによってもたらされると考えられていた

・福は、正直だったり、親孝行だったりするだけではやってこない。それと同時に、熱心な信仰心をもっていることが必要であった

・わらしべ長者などの物語を作ったのは、没落貴族やその周辺に集まる宗教者たち。彼らの福や富の観念が物語に投影されている。そして、これらの物語を享受した層が、富裕になることを夢見る庶民であり、福神信仰を支持した人々

・福とは、貴族的な社会での出世であり、それによって獲得される領主としての地位と、その地位によって蓄積される物質的な富であった。そのような生活を夢見て、福神系の寺社に参詣し、祝福芸人・宗教者の売る福を買い、家の中に福神の像を祀った

・福神としての大黒天は、支配者層が海の向こうから迎え入れた神であるのに対し、恵比寿は民間の中から出てきた神であった

毘沙門天信仰の初期の信者層は鉱山関係者。それが刀鍛冶など、金属加工業者の間に広がっていった。期待された福は、当初、金や銀などの鉱物であったが、中世では福一般になっていった

弁才天は、仏教の教義に由来する福とは関係なく、豊穣・多産・エロス・蓄財・出世といった「生命」や「現世利益」に深く関わる福を授ける神として、民衆が期待していった

福助が福神として登場し、人気を集めたのは江戸時代。そのときには、七福神のメンバーはすでに決まっていた

稲荷神が七福神に入れなかったのは、霊験あらたかでも、狐が本尊の姿であるイメージが広く流布していたため、動物神は、七福神の仲間にふさわしくないと判断された

・室町時代頃から、福を授ける神として人気の七福神をランキングすると、断然人気なのが、恵比寿と大黒。これに並ぶほどの人気が毘沙門天。これを追って、弁才天。さらにこれを追って布袋。最後に福禄寿と寿老人。別格で稲荷神が上位ランキングに入っていた

・福とは、現世での幸せであり、その中身は金持ちになることであった。そして、そのような福を与えるのが、恵比寿や大黒天、毘沙門天などの特別の神仏であるという観念が流布していった

・祝福芸能者は、貴族や長者の家々を訪問し、神仏の代理などと称し、福を授けることができると説き、謝礼を要求していた。それは、福をもたらすのではなく、福を持っている者を祝福するためのものであった

・福とは厄の中から立ち現われてくるもの。厄(鬼や貧乏神)を引き受け、厄を演じる者が、厄を祓い落とし、福を授け、福を売ることができた

・農民や商人の富を搾取することで生活する支配者層が危惧していたのは、健康が損なわれて、その福富を享受できなくなること。天皇や貴族たちが、呪術師系の宗教者に期待したのは、富貴ではなく、健康を損なう病気を治してもらうことであった

・貴族や武士、農民層と異なる人々、すなわち、商い・交換に従事している層の貧者の中から、長者は生まれてくる。そして、長者になれるような仕事は、賤視されていた

・江戸幕府が安定期に入ると、成り上がりの物語は人気を失い、現実感がなくなっていく。祝福芸能者や縁起物売りの人気も低落する。七福神信仰は、娯楽的要素が次第に強調されるようになっていった

・長者が一挙に没落し、逆に貧者が一挙に長者になることができるのが、都市であり、マチ(貨幣共同体)であった。その論理を知らないムラの善良な者には、マチは魅力的な世界でもあり、残酷な世界でもあった

・打出の小槌は、一振りに、ほんの少し裕福になる程度の富しか期待してはならず、それも滅多に振ってはならないものであった。そうすることで、永続する幸せが保証されると考えられていた

・福子とは、心身に何らかの異常(知的障害、脳性小児マヒ、水頭症など)を持っている人。そのような子供は、神からの授かりもので、家に富をもたらしてくれる子として、大事に育てる習慣があった。福助も実在の人物が福神化したもので、水頭症であった

・富や幸せを授けてくれる神々が衰退したあと、貨幣がそれら神々を追放し、貨幣を媒介とする新しい共同体が生まれていった

・福は、近世中期以降、「想像的なモノ」「身体的なモノ」によってもたらされる娯楽のための素材(富を生み出す商品)へと次第に作り変えられていった



今でも、七福神は健在です。貨幣が巾を利かせる社会になっても、みんな、福の神を楽しんでいるように見えます。

真剣に信じていなくても、何か御利益があればという軽い気持ちで、福の神と付き合っているのではないでしょうか。

御利益がありそうだと思えば、御利益があるのが、神の世界かもしれません。
[ 2011/09/02 08:59 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『下から目線で読む「孫子」』山田史生

下から目線で読む『孫子』 (ちくま新書)下から目線で読む『孫子』 (ちくま新書)
(2010/07/07)
山田 史生

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孫子の兵法は、何回か読もうとしましたが、最後まで精読するに至っていません。日本語訳も結構難解で、読むのに時間がかかります。

この本は、訳がわかりやすく、簡単に読めました。孫子の入門書として最適ではないでしょうか。

孫子を読んで、改めて、ためになった箇所が15ほどありました、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・できるのに、できないふりをし、有るのに、無いふりをし、近いのに、遠いふりをし、遠いのに、近いふりをする

・「不十分であっても、素早く切り上げる」という考えはあるが、「完璧を期するあまり、つい長引いてしまう」というやり方はない

必需品は、あらかじめ準備し、消耗品は、なるべく現地で調達する

・降参してきた者は優遇する。そうすれば、相手に勝つほどに自分の強さが増す

・相手を無傷のまま、降伏させるのが最上の策で、相手を撃破して屈服させるのは、次善の策である

・十倍なら包囲し、一気に押しつぶす。五倍なら、正面から攻撃する。倍なら、分断して、別個に撃つ。互角なら必死に戦う。劣勢なら、逃げる。敗勢なら、隠れる

守りを固めるのは、戦力が不足しているときである。攻めに走るのは、戦力に余裕があるときである

・丸い石を高い山からゴロゴロと転げ落とすようなもの、それが勢いである

・遠い道のりを行きながら、疲れないのは、誰もいない道を行くからである

・おのれを無形にすべし。無形であれば、深く潜入してきたスパイでも、実情を嗅ぎつけることができず、どんなに智謀にすぐれたものでも、策略をめぐらす手立てがない

逃げるふりをするやつを追いかけてはいけない

血気盛んな者を攻めてはいけない

・言葉がへりくだり、守り一辺倒に見える者は、攻めてくる覚悟である。言葉が居丈高で、いかにも攻めてきそうな気配の者は、逃げていく寸前である

・上に立つ者が、むやみに褒美を与えるのは、下に居る者にやる気がないとき。上に立つ者が、しきりに怒鳴っているのは、下に居る者が疲れているとき



孫子は、戦いやビジネスの戦略だけでなく、人間的な駆け引きにも応用できる面が多々あります。

要するに、切羽詰まったときの人間の心理を、明確に示したのが孫子なのかもしれません。誰でも一度は、孫子に目を通すことが、必要なのではないでしょうか。


[ 2011/09/01 07:49 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)