とは学

「・・・とは」の哲学

『「見せかけの勤勉」の正体』太田肇

「見せかけの勤勉」の正体「見せかけの勤勉」の正体
(2010/05/18)
太田 肇

商品詳細を見る

太田肇教授の著作を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」「認め上手」に次ぎ、これで3冊目です。

少し違った角度で、日本の経営を見る眼は秀逸で、非常に参考になります。

この本を読み、勉強になった箇所が、15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本人は、決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくとなると、さっぱりだめ

・外見だけ見ると、有給休暇も取らずに毎晩遅くまで仕事をしているし、無駄口一つたたかず規律正しく働いている。しかし、やむなくそうしているだけであって、本当の意味での自発的モチベーションは、昔からあまり高くなかった

・サラリーマンは、がんばって長時間働いているように見えるが、そうした働きぶりの、かなりの部分は「見せかけのやる気」だった可能性が高い

・人間は誰もが「本物のやる気」の種を持っている。しかし、仕事になると、「本物のやる気」を出さない者が多いのは、せっかくのやる気の芽が出ても、それが育つのを妨げる障害があるから

・認められるために頑張らなければならないが、頑張っても、報われるとは限らない。そして、頑張り過ぎると、自分の首を絞める。サラリーマン生活を10年もやって、昇進昇格や配属を何度か経験してきた人は、「あまり頑張り過ぎたら損」ということを学んでいる

・管理を強化することの弊害について省みられないのは、管理の効果はすぐ表われるのに対し、その弊害はゆっくり表われるから

・管理されていることに慣れている日本人は、過剰管理が相当ひどくならない限り、適応してしまう。気がついたときは、やる気も主体性もすっかり失った「ゆでガエル」状態になっている

・親しい仲間内での人間関係が濃密になれば、それだけ外の人間との関係は希薄になる。ときには、自分たちの団結を強めるための共通の敵をつくることもあるし、新人や気に入らない人を仲間から排除することもある

・給与や賞与の高い業種や職種のほうが、給与に対する不満の声が大きい。なぜなら、高額の報酬がもらえるような業種や職種には、お金に関心が強い人がたくさん集まっているから

・マネジャーというものは、自分のやる気や意気込みが強過ぎると、その意欲とエネルギーが、部下の管理に向かう。また、上司からやる気や忠誠心を見られていると思うと、それをアピールするため、部下を過剰に管理してしまう

・歴史を振り返れば、科学技術の発展、ビジネスの成長、社会の進歩は、いかに効率化するか、楽をするかという快楽主義に誘導されたもの。考えてみたら、頑張る、額に汗する、苦労することが尊いといった薄っぺらな努力至上主義がまかり通る社会は暗いし、恐い

・本物のやる気は、目的へ向かい、成果を上げるための心的状態だが、見せかけのやる気の先には、目的も成果もない

・勉強にしても仕事にしても、最初はそれに没頭していたのが、ほめ言葉や報酬を与えられることによって、ほめられるため、報酬をもらうために、がんばるようになってしまう

・自分のものであるという感覚を、心理学では、「所有感」と呼ぶ。この「所有感」こそが、「やらされ感」の対極にあるもの

・社員のモチベーションを引き出すには、社員のやる気をなくす要因を取り除いてあげればいい

・部下を持つ人は、肩に力を入れ過ぎないほうがいい。管理し過ぎないほうがいい。管理は「片手間」がよい。しかし、「片手間」と「無責任」とは違う



この本の中にも、出てきますが、
「日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)30ヵ国中20位」
「主要7ヵ国の中では、1994年以降、14年連続で最下位」
という事実を厳粛に受け止めなければいけないと思います。

なぜ、そうなったのか?それは、管理者の責任であると著者は見解を述べています。同感です。

日本の管理者の考え方とその管理手法が変わらなければ、日本の今後も変わらないように思います。
[ 2011/08/30 07:39 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『インドと組めば日本は再建できる』アショック・ロイ、鈴木壮治

インドと組めば日本は再建できるインドと組めば日本は再建できる
(2011/06/09)
アショック・ロイ 鈴木壮治

商品詳細を見る

インドの人口は12億人。しかも、若年人口が多く、なんと世界の25歳以下人口の4分の1をインド人が占めています。

これから、明らかに発展していくのは、中国ではなく、インドに違いないと言われています。

防衛的にも、日本は、アメリカとインドと仲良くすれば、中国を牽制することができます。そうなれば、アジア諸国も、この日米印連合になびき、中国を相当あせらせることが可能になります。

このような期待がかかるインドの実態を、教えてくれるのが、この書です。大変役に立った箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・インドは多民族多宗教共同体からなる集合体であり、12億人の人々は一様ではない。南と西に住む人々は菜食主義者で、東と東北に住む人々は魚と肉を食べる

・インド人はみな英語を話すと思っている日本人は多いが、英語を話せるインド人は5%強くらい。数なら6000万人

インド人のラストネームを聞けば、出身地や食生活までわかる。同じ地域で、同じ言語を使い、同じ信仰、同じ文化の出身者でコミュニティーをつくったためである

・東インドはビジネスを目指す人より、教育、哲学に熱心な人が多く、公務員になる人が多い。それに対して、南の人はIT関係が圧倒的に多い

・インドは、いまだに女性の社会的地位は極めて低く、また貧困層(1日1ドル以下で生活する人)が減ったとはいえ、4億人いる

豊かな水のおかげで、インドは昔から農業が盛ん。米、小麦、サトウキビ、紅茶、菜種、トウモロコシ、豆類、ジュートなどが世界の1、2位を競うほどの収穫高。人口の3分の2が農業に関与しているが、農業のGDP比は18%くらい

・インドでは、子供に何かを教えるとき、ちょっと哲学的な話を絡めて教えるのが習わしになっている。哲学は思考の道筋を見出すものであり、人間が生きていく上で大きな支えとなるもの。インド人は哲学を守り続けてきた

・中国は法治国家ではなく、人治国家で政治が強い。司法の独立が不十分なので、外国企業は不安を抱いている。インドでは知的所有権の保護がしっかりしているから、その技術を盗まれることはない

・インド経済の問題点は、電気と高速道路、鉄道などのインフラが不整備なこと。それと、労働組合が強すぎること

・ITにおけるソフト作りは、プロセスを重視し過ぎると、遅々として前に進まない。ルールを無視して、いろいろな方法を考え、新たなものを作り出すのはインド人の得意とするところ

・現在、アメリカで働く医師の3割がインド人。IT関係、金融関係、そして医療関係にインド人が多い

・インド人は中国が嫌い。その理由の一つは、急成長に対する「嫉妬」だが、もう一つは、言論の自由がないことへの「嫌悪感」である

・中国の華僑が主にアジアに集中しているのに対し、NRI(海外で成功しているインド人)は世界各国に広く存在している。とくに、旧イギリス連邦の国々に多い

・インド人はイラン、アラブ首長国連合などの中東諸国とアフリカ諸国とは仲がいい。中東は日本人のことも嫌っていない。だからこそ、インドと日本が組んで、中東、さらに東アフリカ諸国との外交、経済交流を進めていくべきである

・世界のコンピュータ市場では、ハードは中国で、ソフトはインドが主導権を握りつつある

・インドの経済成長は、2003年~2007年の5カ年計画期間の平均成長率は8.8%。2007~2011年の成長率目標も9%に設定されている

インドの不動産への投資金額は、これからの5年間で、2000億ドル以上になると言われている

・インドの建物のクオリティーはよくないから、海外の建築会社には絶好のチャンスのはずなのに、日本のスーパーゼネコンは、まだ本格的に動いていない

・インド人の日本のイメージは、1位「先進技術国」2位「経済力のある国」3位「平和を愛する国」。日本人に対しては、1位「勤勉」2位「能率的な経営慣行」3位「創造的」。インドにとって重要な国は、1位「米国48%」2位「ロシア30%」3位「日本14%」

・インドは、政治と経済がきちんと分離できている。レアアース問題で明確になったように、政治と経済が切り離されていない中国は、日本の経済活動としては、まったくもって迷惑なこと



身近な話で恐縮ですが、最近、インド料理店が、我が家の近くに2軒できました。昼のランチは、500円~700円で、良心的な価格設定です。何回か利用しましたが、働いているインド人は、みんな、好感の持てる真面目な人たちでした。

また、近くにある外国人学校の生徒も、今やインド人が半数以上を占めているそうです。

このような例からしても、インド人は、日本を居心地のいい国と思ってくれています。また、日本人に好感を持ってくれています。

しかし、日本人は、インド人が持ってくれている好意や好感に応えていません。実際、インドやインド人に対して、関心が薄いように思います。

これから、中国が脅威になってくるのは間違いありません。横暴になるかもしれない中国に対して、インドとの良好な関係は、日本の国益にも適います。

この本は、日本人がインドやインド人に関心を持つための入門書として、最適なように感じました。
[ 2011/08/29 06:53 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)

『その死に方は、迷惑です-遺言書と生前三点契約書』本田桂子

その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)
(2007/05/17)
本田 桂子

商品詳細を見る

遺言書は、残された子孫たちに、迷惑をかけないために必要なものです。つまり、子孫への礼儀ではないでしょうか。

しかし、礼儀知らずの親たちが多いばかりに、死んでから、子供たちに騒動が起きることが度々あります。立つ鳥は跡を濁さないようにしたいものです。

この本には、遺言は、なぜ必要なのか。遺言の効用は何か。さらに、遺言書の書き方など、詳細に記載されています。

避けては通れない遺言の現実について、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・遺産争いは、金額が多いか少ないかに関係なく起こるもの。相続トラブルは、金持ちだけの問題ではない

・人が一人死ぬことで、驚くほど、たくさんの手続きや書類が必要になる。多くの役所や金融機関をかけずりまわり、親類に頭を下げ、時間を費やし、神経をすり減らすことになる

・相続トラブルというと、「遺産争い」をイメージする人が多いが、実際は、相続手続きの難しさや煩わしさのほうが、深刻な問題である

遺産分けを巡って、遺族が対立し、家庭裁判所が調停や審判を行った件数は、年間12000件近くに達している

・故人が生前、相手に十分な経済的援助をしていたり、生前贈与をしていたなどの特別な事情がない限り、誰かに遺産を放棄してもらうことは簡単ではない

・若い世代で遺言書をつくるのは、「事実婚のカップル」「結婚して子供をつくらない夫婦」「仲の悪い夫婦」たち

・遺言書も生命保険も、自分の死後、遺族が困らないためのものという点では共通しているが、生命保険の世帯加入率は87.5%なのに対し、遺言書の作成は年間7万件弱にすぎない

・団塊世代の既婚女性の「両親が亡くなる前に聞いておきたいこと」のトップは、「遺言の有無」と「葬儀の参列者リスト」だった

・故人の遺産をきっちりと法定相続分どおりに分けるのは至難の業。遺産のすべてが、現金や預貯金ならともかく、たいていは、不動産や非公開株など換金しにくいものも含まれている

・預貯金の額は少なくても、取引金融機関の数が多ければ、それだけ手続きの手間がかかる。インターネットによる株式取引、投資信託、積立貯金、純金積立など、そのすべてに、解約名義変更の手続きをしなければならなくなる

・面倒な手続きを専門家にまかせると、通常、相続手続きの報酬は最低でも20~30万円。相続人との交渉を依頼したりすれば、さらに金額はアップする。もし遺言書があれば、遺族は余計な出費をせずに済む

・嫁や娘婿など、子供の配偶者には、財産を相続する権利がないことを十分に認識すべき。息子の嫁にお礼をしたいのであれば、元気なうちに遺言書をつくっておくこと

・いくらお世話になった人にお礼したいと思っても、家族ではない第三者への遺贈は実現が難しい

・両親の再婚で、半血兄弟がいるケースでは、親の遺産相続だけでなく、その次の世代、つまり子供たち自身の相続にも影響を与える

ペットの世話が心配な場合、家族や友人にペットの面倒をみてもらう代わりに財産を遺贈する「負担付遺贈」がある。ペットの余命や病気の際の出費なども考慮して、適当な額を遺贈すれば、相手も気持ちよく引き受けてくれる



遺言といっても、あらゆる場合が想定されます。両親の離婚、自分の離婚、海外での結婚など、婚姻関係が複雑になればなるほど、難しいものがあります。

さらに、財産が、家と預貯金以外に、株式配当収入、家賃収入、知的財産権の収入、投資信託、外貨預金、などがあれば、複雑すぎて、手続きが大変になります。

複雑な家庭や財産を持っておられる方は、遺言について、しっかり勉強する必要があるのではないでしょうか。
[ 2011/08/26 07:08 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『オランダの共生教育・学校が公共心を育てる』リヒテルズ直子

オランダの共生教育 学校が〈公共心〉を育てるオランダの共生教育 学校が〈公共心〉を育てる
(2010/10/02)
リヒテルズ 直子

商品詳細を見る

このブログで、度々、北欧諸国を採り上げてきました。オランダは、北欧諸国に距離的に近いですが、民族、言語なども含めて、北欧とは、少し違います。

しかし、近年、西欧諸国の中では、珍しく、成功を収めています。北欧とは、社会制度や税制も違う国なのに、どうして北欧と同様に好調なのか?

その答えを探すために、この本を読みました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・オランダの特別支援教育の対象に、軽度の学習困難や発達障害を持つ子供たち以外に、「秀才児」が含まれている。秀才児が伸び続けることを大切にし、その子が持つ潜在的な力を最大限に引き出すという考えに基づいている

・オランダでは、フレイネ教育、モンテッソーリ教育、ダルトン教育、イエナプラン教育など、進歩的な教育の学校が生まれた。普通校と同じ条件で国庫から教育費を受け、独自の授業を展開することができた

・オランダの小学校では、先生と子供たちが、みんなでサークル(車座)になって話し合いをする授業形式を採り入れている。サークル対話は、「教える者」と「教えられる者」、「知っている人」と「知らない人」という一方的に情報や知識が流れる授業を否定するもの

・「ラーニング・バイ・ドゥーイング」は、科学的な手続きを実感によって養うもの。自分で問いを立てる(問題提起)→問いの答えを考えてみる(仮説)→実験や観察で確かめる(実証)→結果を引き出す(発見)→結果を考察する(結論)

・それぞれの子供が、現在の発達段階の次の段階の課題に挑戦的に取り組むことが、発達を引き出す重要な手段。学校は工場ではない。フレキシブレな時間割(自分で納得して選んだ時間割)で、受け身の気持ちをなくせば、自主的な責任を持つようになる

・イスラム教徒の移民との間の摩擦は、教育界にも大きな影響を与え、「民主的な態度は放っておいて育つものではない」という考えが広くオランダ社会に浸透していった

・シチズンシップ(市民性)教育では、「公共の利益」「能動的な社会参加の態度」など、人々が自分の方から進んで、社会の安定のために関わることの重要性を強調している

・オランダでは、保護者に子供の学校を選ぶ権利がある。教育の自由として、多様な理念を持つ学校が選択肢として、いくつも存在している。しかも、公立校も私立校も、親に授業料の負担は課せられない

・先進諸国の中で、金融危機による打撃が大きかった国は、恵まれない人々への福祉を、家族や近隣の人々の温情と庇護に依存してきた国々(アメリカ、イギリス、ギリシア、ポルトガル、スペイン)であった

・以前から福祉国家の原理に基づいて、国内に住む人々の間の経済格差を小さく保ってきたオランダやスカンジナビア諸国は、金融危機による社会的打撃を比較的小さく抑えることができた

・オランダは、スカンジナビア諸国に比べ、経済格差の小ささ、生活満足度の高さ、就業率の高さなど、福祉の達成度では、同程度を保ちながら、所得に対する課税圧力の低さパートタイム就業率の高さ、労働時間数の短さ、平均年収の高さでは優位に立っている

時間当たり労働生産性の高いオランダ人は、有給休暇をフルに利用し、家族との時間を生み出している。親たちは、残業せずに、ほとんど毎日、夕食を子供と共にとっている。家庭生活を守られた親たちは、おのずと教育に関心を持ち、学校活動に協力している

・日本の近代教育は、他の社会制度と同様に、官僚主導で行われてきた。保護者や教員といった、現場の市民の意思を反映していない。その結果、自殺と引きこもりが桁外れに多く、自分さえよければいいと社会に背を向ける、孤独感に苛まれた人で溢れた国になった



オランダの自殺率は、日本の3分の1で、先進国の中で最も低い水準です。OECDの生活満足度調査で、先進国中、最も低かったのが日本です。生活満足度と自殺率は相関することで知られています。

北欧と同様に、オランダも日本のモデルになれるはずです。そのためには、市民が、政治家、官僚、経営者を見張るしくみが必要です。

今の日本の状況は、市民が物事を真剣に考えないことに起因しています。少しでも、生活満足度の高い先進国について、学ばなくてはなりません。この本も、その助けになる、素晴らしい本です
[ 2011/08/25 06:20 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『これが日本人だ!』王志強

これが日本人だ!これが日本人だ!
(2009/09/05)
王 志強

商品詳細を見る

この本のサブタイトルは、「中国人によって中国人のために書かれた日本および日本人の解説書」とあります。

日本人のために書かれた中国人の本は数多くありますが、こういう類の本は少ないように思います。中国人が、日本および日本人のことを、客観的にどう思っているかがよくわかります。

今回、この本を読んで、中国人の認識を知るのに、役に立った箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本では、人は亡くなると仏になると考えられている。また、彼らは動物にさえ優しい。にもかかわらず、第二次大戦における数千万の人々に対する犯罪行為には、誠意を持った謝罪ができない

・あらゆるところで稼ぐ日本のビジネスマンは、利益を求めて狂ったように奔走している。その一方で、アジア・アフリカの貧困地域や難民キャンプ、被災地には、労苦を厭わず、汗水流して働く日本人ボランティアの姿がある

・日本人は、成功すれば有頂天になり、自らを上等な人種であると思うし、失敗すれば深く落ち込み、下等な人種だと自虐的になる

・日本人にとって「個の不安」は多くの面で現れる。仲間がいない時の寂しさからくる不安の他に、見知らぬ人間に対する「対人不安」がある

・集団から離れると蔑視され、一人では何もできないばかりか、攻撃されることもあり、孤独と屈辱に耐えなければならない。日本人は、集団に対して強い帰属意識を持ち、日本式の小さな共同体に守られ、平穏に暮らしたいと願っている

・日本人は知らない人間と会うと緊張するので、相手のポジションを確かめ、自分がどう振る舞うかをわきまえることによって、緊張を取り除く

・日本人は、買い物をする時「神様」のような気分となる。「あなたの物を買いに来てあげて、恩恵を与えるのだからサービスしなさいよ」といった傲慢かつ得意げな態度になる。売り手もまるで「神様」を見るかのように、日本特有の複雑な礼儀や甘い言葉をつくす

・日本人は、プライベートな付き合いの中では、本来のキャラクターを丸出しにし、遠慮もせずに、自然に振る舞うが、社会的組織や集団の中では明らかに別人となる。対人関係には一定の距離があり、常にそれを計測し、確かめている

日本人を喜ばせるには、ちょっとした贈り物、ちょっとした手伝いをするだけでいい。すると、相手は、百方手をつくしてお返しをしてくれる。しかも、その返礼は、きっちり計算されたかのように、与えたものと同じ価値であることが多い

・単独では「風に吹かれそうな弱い人」でも、いったん集団に入ると、強健になり、結束して、排外し、攻撃性を持つようになる。そして、何者も恐れず、集団の利益のために水火をも辞さない

・日本人は、大人になっても甘えの感情を引きずり、根深い甘えを持ちながら、学校や会社に入り、かつて母親を慕った時と同じように、優しさ、友愛、安全を求める

・経済分野において大きな成功を収めた日本人が、世界マーケットでいつも人を困らせるのは、「意志決定のスピードの遅さ」である

・日本人の最も危険なところは、集団の中で醸成されるムードのメカニズム。平和な時代は平和ボケし、経済成長期には馬車馬の如き働きまくり、拡張主義が高じて、戦争となれば、殺人ロボットとなる

・日本の子供たちは、「友達関係」と「人に迷惑をかけない」という教育を受けながら、集団とは何かをじっくり学んでいく

・日本企業では、社員達に国家資格等、公的資格の取得を奨励する。資格試験を受けるための養成コースは数多くあり、日本の一大産業を形成している。日本の生涯教育は、世界で最もシステマティックで規模が大きい

・日本人の感性や情緒性は、鋭く豊かである。理性よりも本能によって、外部の事象を感じ取り、目新しいことに興味を覚える。しかし、豊かな好奇心も裏を返せば、何も知らないということ。つまり、「田舎者の好奇心」。田舎者ほど、強い好奇心を抱く

・どんな会社にも忙しい時と暇な時がある。日本人の労働者で、理解できないのは、他の先進国と異なり、暇な時でも忙しそうにすること

・日本経済の発展には、三つの内在的要因がある。一つは、日本人の集団精神、運命共同体的意識。二つ目は、日本人特有の感性による事物事象への好奇心と敏感さ。そして、三つ目が、日本人の職人気質である

・村八分にされた者は孤立に陥り、毎日ビクビクしながら過ごさなければならず、村中から「外される」悲しみを痛切に思い知らされる。日本人にとって、村八分は最も残酷で恐ろしい懲罰である

・近年では、日本人女性の東南アジアへの「男買い」ツアーが流行っている。インドネシアのバリ島には、娼婦はいないが、男娼はいる。日本には特殊な文化がある

・日本人は、日本人論をひどく好む。日本人のように、自民族のことを論じた本を好む民族は、世界のどこにもいない

・恵まれた自然環境に暮らす日本人は、自然をこよなく愛し、厳かなものとして崇拝している。日本人には、自然の対立という概念がない。人は自然の一部であり、自己の中に自然があり、自然の中に自己がある

・武士道では、精神的に優位な者が、勝利を収めるとされる。己に勝る者が、敵に勝つと考える。そして、精神的優位とは、姿かたち、言葉、所作、振る舞いに表われる。正しい礼儀や威厳は、武士の心である

・政治的に責任をとらなければならない場合、時の政府が責任を取る。いざという時は、天皇の権威でもって事態を収束する。これが、日本人のずっと継承してきた歴史的慣習

・何事にも固執する日本人であるが、反面、その現実的な融通性は他民族には及びもつかない。第二次世界大戦中は、自らの民族を世界一と思い込み、実力を顧みず、とことん突っ走ったが、戦後、世界のドンジリだと思うと、柔軟にスタートした

・日本は、ほとんど自力で改革を行ったことはなく、外部の刺激や圧力に突き動かされて、重要な変革を成し遂げてきた。しかも、それは、日本にとって、最も必要なタイミングで成され、かつ一挙に短期間での勃興が成功する



人間は、他人のことは、よく見えます。中国人も、日本人のことは、よく見ています。

著者の意見には、多少、穿った点もありますが、客観的に、日本人のことをよく見ているように感じました。

日本人は、欧米人からどう見られているかを気にしながら、戦後、走ってきました。しかし、これからは、アジア人にどう見られているかを気にして、行動をとるべきなのかもしれません。
[ 2011/08/23 08:01 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『100年デフレ-21世紀はバブル多発型物価下落の時代』水野和夫

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)
(2009/04)
水野 和夫

商品詳細を見る

水野和夫氏の本を紹介するのは、「超マクロ展望世界経済の真実」に次ぎ、2冊目です。

この本は、2003年に出版したものを2009年に文庫化したものです。金融の専門家からも高く評価されています。

しかも、経済学に留まらず、文明史観的な要素も含んだ大作です。感銘した箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ある国でマネーを過剰に供給しても、その国でバブルが生ずる必然性はなくなった。マネーは国境を越え、バブルを生成させる。その結果、世界中で資産価格が急騰する

歴史の危機とは、システムの内部矛盾が極限に達したために起きる。すなわち、同種のシステムを自ら再生することが展望としても現実としても不可能となったために起きる

・「国家は自ら望むと望まざるとにかかわらず、16世紀最大の企業者であった。しかも、国家はまた、商人にとって重要な顧客でもあった」 (アメリカの社会学者/ウォーラーステイン)

・英国の物価は1317年をピークに、1477年まで160年の長きに渡って下落した(下落幅は62%)(ピーク時を100とすると38の水準)(年率換算0.6%の下落)。人類史の中で、14世紀は最も人口が減少した世紀。西欧の人口は年率0.34%の減少

・中世後期は資本(地主)分配率が低下した。地主の利潤額が減少し、中世の支配者である貴族にとって、没落の危機であった。それを打破するために、1500年前後に、領主制から主権国家へ転換し、荘園経済から資本主義経済に変わり、大航海時代の幕を開けた

・16世紀になると、新大陸との交易が盛んになり、経済は長期停滞期から脱し、新たな発展期を迎える。人口増に農産物の供給が追いつかない状況が150年に渡って続き、インフレーションの時代になった

・16世紀の利潤インフレで幕を開けた資本主義は、20世紀に賃金インフレで終わりを告げようとしている。資本主義は、労働者の生活水準を引き上げ、システムとして成功した

・近代国家の最も基本的な要素は領土の支配権。インターネット革命は、近代主権国家の基盤そのものを揺るがしかねない重大な意味を持っている。主権国家の中央集権的支配は終わり、ITによる帝国特有の分権的支配システムが実現することになる

・日本の資産デフレは、土地本位制の崩壊が原因。一般物価デフレはグローバリゼーションが原因。95年以降の土地の貿易財化の進展は、デフレの源泉が、グローバリゼーションで共通している

・相対的な購買力平価説が成立しなくなった時期と、貨幣の中立性が成立しなくなった時期が一致しているのは偶然ではない。途上国通貨が元来置かれていたような状況に、世界の通貨が向かい始めている

・一度目の新技術は、19世紀半ばの鉄道と蒸気船。二度目の新技術は、20世紀初頭の電気。そして、三度目の新技術は、20世紀末から21世紀初頭にかけての情報・通信技術。新技術は生産性向上をもたらし、成長率を高める

・日本の対外資産は無防備に為替リスクに晒されている。スペイン王家に巨額の貸し付けを行い、債務不履行にあって衰退したイタリア・ジェノバの銀行家の例のように、国内に投資機会が少ないからといって、単に国際分散投資をすればいいというものではない

・世界で最も金利が低い国は、最も資本蓄積に成功した国であり、同時に物価水準が高い国でもある。それは、16世紀末のイタリアであり、20世紀末の日本である

・中国は為替調整が行われることなく、世界の工場と台頭し、大競争の時代に突入して、21世紀がデフレの時代となった。中国・人民元のみならず、インド・ルピー、ベトナム・ドン、タイ・バーツもドルに対して大幅に割安である

・17世紀のヨーロッパは内外価格差が縮小した時代。1600年に約7倍あった内外価格差が1750年までに1.8倍に収斂していく過程で、フランスの通貨は4分の1になったが、物価は下落基調が続いた。通貨を4分の1に切り下げてもデフレになるという事実は重要である

・日本と中国の間にある人件費格差は25倍から30倍。また、英国から米国への「世界の工場」移転における人口格差は1.7倍で、米国から日本へは0.5倍だったが、日本から中国へは10倍の格差がある。しかも為替調整メカニズムが機能していない

・バブル崩壊後の生産性を見ると、規制産業であるほど、過去と比べて低下割合が大きい。金融保険業、鉱業、電気ガス水道業など、政府規制のウエートが高い産業の生産性低下が著しい

・マネーだけでなく、実物投資や雇用も国を越え、企業は生産を自由に選べるようになる。世界的な需給ギャップが是正されるのは、100年後。それまでは、世界的な物価・サービス価格の長期下落資産バブルが繰り返される

・世界的な超低金利時代は、先進国において実物投資に対する資本リターンが著しく低下したことを意味する。そのことは、「成長とインフレがすべての怪我を治す」近代の終わりを意味する

・近代社会とは、常に社会が進歩し、経済的側面から見ると、資本(利潤率)と国家(税収)と国民(所得)の利害が一致することで、中産階級をより多く生み出す社会。この三者の利害が一致する時代が終わり、近代の持つ基本原理が崩壊してきた



これから、新興国が発展するのと引き換えに、先進国の中産階級が崩壊していくことが顕著になります。その過程で、先進国はデフレになります。

この本で、著者は、そのデフレが100年続くと断言されています。そういう時代を、歩まざるを得ない中で、どう行動したらいいのか、どこに投資したらいいのか、判断できなければ生き残っていけません。

この本は、すでに起こっている100年デフレを生き残っていく、信頼できる羅針盤になるのではないでしょうか。
[ 2011/08/22 07:23 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)