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「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『「見せかけの勤勉」の正体』太田肇

「見せかけの勤勉」の正体「見せかけの勤勉」の正体
(2010/05/18)
太田 肇

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太田肇教授の著作を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」「認め上手」に次ぎ、これで3冊目です。

少し違った角度で、日本の経営を見る眼は秀逸で、非常に参考になります。

この本を読み、勉強になった箇所が、15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本人は、決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくとなると、さっぱりだめ

・外見だけ見ると、有給休暇も取らずに毎晩遅くまで仕事をしているし、無駄口一つたたかず規律正しく働いている。しかし、やむなくそうしているだけであって、本当の意味での自発的モチベーションは、昔からあまり高くなかった

・サラリーマンは、がんばって長時間働いているように見えるが、そうした働きぶりの、かなりの部分は「見せかけのやる気」だった可能性が高い

・人間は誰もが「本物のやる気」の種を持っている。しかし、仕事になると、「本物のやる気」を出さない者が多いのは、せっかくのやる気の芽が出ても、それが育つのを妨げる障害があるから

・認められるために頑張らなければならないが、頑張っても、報われるとは限らない。そして、頑張り過ぎると、自分の首を絞める。サラリーマン生活を10年もやって、昇進昇格や配属を何度か経験してきた人は、「あまり頑張り過ぎたら損」ということを学んでいる

・管理を強化することの弊害について省みられないのは、管理の効果はすぐ表われるのに対し、その弊害はゆっくり表われるから

・管理されていることに慣れている日本人は、過剰管理が相当ひどくならない限り、適応してしまう。気がついたときは、やる気も主体性もすっかり失った「ゆでガエル」状態になっている

・親しい仲間内での人間関係が濃密になれば、それだけ外の人間との関係は希薄になる。ときには、自分たちの団結を強めるための共通の敵をつくることもあるし、新人や気に入らない人を仲間から排除することもある

・給与や賞与の高い業種や職種のほうが、給与に対する不満の声が大きい。なぜなら、高額の報酬がもらえるような業種や職種には、お金に関心が強い人がたくさん集まっているから

・マネジャーというものは、自分のやる気や意気込みが強過ぎると、その意欲とエネルギーが、部下の管理に向かう。また、上司からやる気や忠誠心を見られていると思うと、それをアピールするため、部下を過剰に管理してしまう

・歴史を振り返れば、科学技術の発展、ビジネスの成長、社会の進歩は、いかに効率化するか、楽をするかという快楽主義に誘導されたもの。考えてみたら、頑張る、額に汗する、苦労することが尊いといった薄っぺらな努力至上主義がまかり通る社会は暗いし、恐い

・本物のやる気は、目的へ向かい、成果を上げるための心的状態だが、見せかけのやる気の先には、目的も成果もない

・勉強にしても仕事にしても、最初はそれに没頭していたのが、ほめ言葉や報酬を与えられることによって、ほめられるため、報酬をもらうために、がんばるようになってしまう

・自分のものであるという感覚を、心理学では、「所有感」と呼ぶ。この「所有感」こそが、「やらされ感」の対極にあるもの

・社員のモチベーションを引き出すには、社員のやる気をなくす要因を取り除いてあげればいい

・部下を持つ人は、肩に力を入れ過ぎないほうがいい。管理し過ぎないほうがいい。管理は「片手間」がよい。しかし、「片手間」と「無責任」とは違う



この本の中にも、出てきますが、
「日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)30ヵ国中20位」
「主要7ヵ国の中では、1994年以降、14年連続で最下位」
という事実を厳粛に受け止めなければいけないと思います。

なぜ、そうなったのか?それは、管理者の責任であると著者は見解を述べています。同感です。

日本の管理者の考え方とその管理手法が変わらなければ、日本の今後も変わらないように思います。
[ 2011/08/30 07:39 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『インドと組めば日本は再建できる』アショック・ロイ、鈴木壮治

インドと組めば日本は再建できるインドと組めば日本は再建できる
(2011/06/09)
アショック・ロイ 鈴木壮治

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インドの人口は12億人。しかも、若年人口が多く、なんと世界の25歳以下人口の4分の1をインド人が占めています。

これから、明らかに発展していくのは、中国ではなく、インドに違いないと言われています。

防衛的にも、日本は、アメリカとインドと仲良くすれば、中国を牽制することができます。そうなれば、アジア諸国も、この日米印連合になびき、中国を相当あせらせることが可能になります。

このような期待がかかるインドの実態を、教えてくれるのが、この書です。大変役に立った箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・インドは多民族多宗教共同体からなる集合体であり、12億人の人々は一様ではない。南と西に住む人々は菜食主義者で、東と東北に住む人々は魚と肉を食べる

・インド人はみな英語を話すと思っている日本人は多いが、英語を話せるインド人は5%強くらい。数なら6000万人

インド人のラストネームを聞けば、出身地や食生活までわかる。同じ地域で、同じ言語を使い、同じ信仰、同じ文化の出身者でコミュニティーをつくったためである

・東インドはビジネスを目指す人より、教育、哲学に熱心な人が多く、公務員になる人が多い。それに対して、南の人はIT関係が圧倒的に多い

・インドは、いまだに女性の社会的地位は極めて低く、また貧困層(1日1ドル以下で生活する人)が減ったとはいえ、4億人いる

豊かな水のおかげで、インドは昔から農業が盛ん。米、小麦、サトウキビ、紅茶、菜種、トウモロコシ、豆類、ジュートなどが世界の1、2位を競うほどの収穫高。人口の3分の2が農業に関与しているが、農業のGDP比は18%くらい

・インドでは、子供に何かを教えるとき、ちょっと哲学的な話を絡めて教えるのが習わしになっている。哲学は思考の道筋を見出すものであり、人間が生きていく上で大きな支えとなるもの。インド人は哲学を守り続けてきた

・中国は法治国家ではなく、人治国家で政治が強い。司法の独立が不十分なので、外国企業は不安を抱いている。インドでは知的所有権の保護がしっかりしているから、その技術を盗まれることはない

・インド経済の問題点は、電気と高速道路、鉄道などのインフラが不整備なこと。それと、労働組合が強すぎること

・ITにおけるソフト作りは、プロセスを重視し過ぎると、遅々として前に進まない。ルールを無視して、いろいろな方法を考え、新たなものを作り出すのはインド人の得意とするところ

・現在、アメリカで働く医師の3割がインド人。IT関係、金融関係、そして医療関係にインド人が多い

・インド人は中国が嫌い。その理由の一つは、急成長に対する「嫉妬」だが、もう一つは、言論の自由がないことへの「嫌悪感」である

・中国の華僑が主にアジアに集中しているのに対し、NRI(海外で成功しているインド人)は世界各国に広く存在している。とくに、旧イギリス連邦の国々に多い

・インド人はイラン、アラブ首長国連合などの中東諸国とアフリカ諸国とは仲がいい。中東は日本人のことも嫌っていない。だからこそ、インドと日本が組んで、中東、さらに東アフリカ諸国との外交、経済交流を進めていくべきである

・世界のコンピュータ市場では、ハードは中国で、ソフトはインドが主導権を握りつつある

・インドの経済成長は、2003年~2007年の5カ年計画期間の平均成長率は8.8%。2007~2011年の成長率目標も9%に設定されている

インドの不動産への投資金額は、これからの5年間で、2000億ドル以上になると言われている

・インドの建物のクオリティーはよくないから、海外の建築会社には絶好のチャンスのはずなのに、日本のスーパーゼネコンは、まだ本格的に動いていない

・インド人の日本のイメージは、1位「先進技術国」2位「経済力のある国」3位「平和を愛する国」。日本人に対しては、1位「勤勉」2位「能率的な経営慣行」3位「創造的」。インドにとって重要な国は、1位「米国48%」2位「ロシア30%」3位「日本14%」

・インドは、政治と経済がきちんと分離できている。レアアース問題で明確になったように、政治と経済が切り離されていない中国は、日本の経済活動としては、まったくもって迷惑なこと



身近な話で恐縮ですが、最近、インド料理店が、我が家の近くに2軒できました。昼のランチは、500円~700円で、良心的な価格設定です。何回か利用しましたが、働いているインド人は、みんな、好感の持てる真面目な人たちでした。

また、近くにある外国人学校の生徒も、今やインド人が半数以上を占めているそうです。

このような例からしても、インド人は、日本を居心地のいい国と思ってくれています。また、日本人に好感を持ってくれています。

しかし、日本人は、インド人が持ってくれている好意や好感に応えていません。実際、インドやインド人に対して、関心が薄いように思います。

これから、中国が脅威になってくるのは間違いありません。横暴になるかもしれない中国に対して、インドとの良好な関係は、日本の国益にも適います。

この本は、日本人がインドやインド人に関心を持つための入門書として、最適なように感じました。
[ 2011/08/29 06:53 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)

『その死に方は、迷惑です-遺言書と生前三点契約書』本田桂子

その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)その死に方は、迷惑です ―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)
(2007/05/17)
本田 桂子

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遺言書は、残された子孫たちに、迷惑をかけないために必要なものです。つまり、子孫への礼儀ではないでしょうか。

しかし、礼儀知らずの親たちが多いばかりに、死んでから、子供たちに騒動が起きることが度々あります。立つ鳥は跡を濁さないようにしたいものです。

この本には、遺言は、なぜ必要なのか。遺言の効用は何か。さらに、遺言書の書き方など、詳細に記載されています。

避けては通れない遺言の現実について、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・遺産争いは、金額が多いか少ないかに関係なく起こるもの。相続トラブルは、金持ちだけの問題ではない

・人が一人死ぬことで、驚くほど、たくさんの手続きや書類が必要になる。多くの役所や金融機関をかけずりまわり、親類に頭を下げ、時間を費やし、神経をすり減らすことになる

・相続トラブルというと、「遺産争い」をイメージする人が多いが、実際は、相続手続きの難しさや煩わしさのほうが、深刻な問題である

遺産分けを巡って、遺族が対立し、家庭裁判所が調停や審判を行った件数は、年間12000件近くに達している

・故人が生前、相手に十分な経済的援助をしていたり、生前贈与をしていたなどの特別な事情がない限り、誰かに遺産を放棄してもらうことは簡単ではない

・若い世代で遺言書をつくるのは、「事実婚のカップル」「結婚して子供をつくらない夫婦」「仲の悪い夫婦」たち

・遺言書も生命保険も、自分の死後、遺族が困らないためのものという点では共通しているが、生命保険の世帯加入率は87.5%なのに対し、遺言書の作成は年間7万件弱にすぎない

・団塊世代の既婚女性の「両親が亡くなる前に聞いておきたいこと」のトップは、「遺言の有無」と「葬儀の参列者リスト」だった

・故人の遺産をきっちりと法定相続分どおりに分けるのは至難の業。遺産のすべてが、現金や預貯金ならともかく、たいていは、不動産や非公開株など換金しにくいものも含まれている

・預貯金の額は少なくても、取引金融機関の数が多ければ、それだけ手続きの手間がかかる。インターネットによる株式取引、投資信託、積立貯金、純金積立など、そのすべてに、解約名義変更の手続きをしなければならなくなる

・面倒な手続きを専門家にまかせると、通常、相続手続きの報酬は最低でも20~30万円。相続人との交渉を依頼したりすれば、さらに金額はアップする。もし遺言書があれば、遺族は余計な出費をせずに済む

・嫁や娘婿など、子供の配偶者には、財産を相続する権利がないことを十分に認識すべき。息子の嫁にお礼をしたいのであれば、元気なうちに遺言書をつくっておくこと

・いくらお世話になった人にお礼したいと思っても、家族ではない第三者への遺贈は実現が難しい

・両親の再婚で、半血兄弟がいるケースでは、親の遺産相続だけでなく、その次の世代、つまり子供たち自身の相続にも影響を与える

ペットの世話が心配な場合、家族や友人にペットの面倒をみてもらう代わりに財産を遺贈する「負担付遺贈」がある。ペットの余命や病気の際の出費なども考慮して、適当な額を遺贈すれば、相手も気持ちよく引き受けてくれる



遺言といっても、あらゆる場合が想定されます。両親の離婚、自分の離婚、海外での結婚など、婚姻関係が複雑になればなるほど、難しいものがあります。

さらに、財産が、家と預貯金以外に、株式配当収入、家賃収入、知的財産権の収入、投資信託、外貨預金、などがあれば、複雑すぎて、手続きが大変になります。

複雑な家庭や財産を持っておられる方は、遺言について、しっかり勉強する必要があるのではないでしょうか。
[ 2011/08/26 07:08 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『オランダの共生教育・学校が公共心を育てる』リヒテルズ直子

オランダの共生教育 学校が〈公共心〉を育てるオランダの共生教育 学校が〈公共心〉を育てる
(2010/10/02)
リヒテルズ 直子

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このブログで、度々、北欧諸国を採り上げてきました。オランダは、北欧諸国に距離的に近いですが、民族、言語なども含めて、北欧とは、少し違います。

しかし、近年、西欧諸国の中では、珍しく、成功を収めています。北欧とは、社会制度や税制も違う国なのに、どうして北欧と同様に好調なのか?

その答えを探すために、この本を読みました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・オランダの特別支援教育の対象に、軽度の学習困難や発達障害を持つ子供たち以外に、「秀才児」が含まれている。秀才児が伸び続けることを大切にし、その子が持つ潜在的な力を最大限に引き出すという考えに基づいている

・オランダでは、フレイネ教育、モンテッソーリ教育、ダルトン教育、イエナプラン教育など、進歩的な教育の学校が生まれた。普通校と同じ条件で国庫から教育費を受け、独自の授業を展開することができた

・オランダの小学校では、先生と子供たちが、みんなでサークル(車座)になって話し合いをする授業形式を採り入れている。サークル対話は、「教える者」と「教えられる者」、「知っている人」と「知らない人」という一方的に情報や知識が流れる授業を否定するもの

・「ラーニング・バイ・ドゥーイング」は、科学的な手続きを実感によって養うもの。自分で問いを立てる(問題提起)→問いの答えを考えてみる(仮説)→実験や観察で確かめる(実証)→結果を引き出す(発見)→結果を考察する(結論)

・それぞれの子供が、現在の発達段階の次の段階の課題に挑戦的に取り組むことが、発達を引き出す重要な手段。学校は工場ではない。フレキシブレな時間割(自分で納得して選んだ時間割)で、受け身の気持ちをなくせば、自主的な責任を持つようになる

・イスラム教徒の移民との間の摩擦は、教育界にも大きな影響を与え、「民主的な態度は放っておいて育つものではない」という考えが広くオランダ社会に浸透していった

・シチズンシップ(市民性)教育では、「公共の利益」「能動的な社会参加の態度」など、人々が自分の方から進んで、社会の安定のために関わることの重要性を強調している

・オランダでは、保護者に子供の学校を選ぶ権利がある。教育の自由として、多様な理念を持つ学校が選択肢として、いくつも存在している。しかも、公立校も私立校も、親に授業料の負担は課せられない

・先進諸国の中で、金融危機による打撃が大きかった国は、恵まれない人々への福祉を、家族や近隣の人々の温情と庇護に依存してきた国々(アメリカ、イギリス、ギリシア、ポルトガル、スペイン)であった

・以前から福祉国家の原理に基づいて、国内に住む人々の間の経済格差を小さく保ってきたオランダやスカンジナビア諸国は、金融危機による社会的打撃を比較的小さく抑えることができた

・オランダは、スカンジナビア諸国に比べ、経済格差の小ささ、生活満足度の高さ、就業率の高さなど、福祉の達成度では、同程度を保ちながら、所得に対する課税圧力の低さパートタイム就業率の高さ、労働時間数の短さ、平均年収の高さでは優位に立っている

時間当たり労働生産性の高いオランダ人は、有給休暇をフルに利用し、家族との時間を生み出している。親たちは、残業せずに、ほとんど毎日、夕食を子供と共にとっている。家庭生活を守られた親たちは、おのずと教育に関心を持ち、学校活動に協力している

・日本の近代教育は、他の社会制度と同様に、官僚主導で行われてきた。保護者や教員といった、現場の市民の意思を反映していない。その結果、自殺と引きこもりが桁外れに多く、自分さえよければいいと社会に背を向ける、孤独感に苛まれた人で溢れた国になった



オランダの自殺率は、日本の3分の1で、先進国の中で最も低い水準です。OECDの生活満足度調査で、先進国中、最も低かったのが日本です。生活満足度と自殺率は相関することで知られています。

北欧と同様に、オランダも日本のモデルになれるはずです。そのためには、市民が、政治家、官僚、経営者を見張るしくみが必要です。

今の日本の状況は、市民が物事を真剣に考えないことに起因しています。少しでも、生活満足度の高い先進国について、学ばなくてはなりません。この本も、その助けになる、素晴らしい本です
[ 2011/08/25 06:20 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『これが日本人だ!』王志強

これが日本人だ!これが日本人だ!
(2009/09/05)
王 志強

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この本のサブタイトルは、「中国人によって中国人のために書かれた日本および日本人の解説書」とあります。

日本人のために書かれた中国人の本は数多くありますが、こういう類の本は少ないように思います。中国人が、日本および日本人のことを、客観的にどう思っているかがよくわかります。

今回、この本を読んで、中国人の認識を知るのに、役に立った箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本では、人は亡くなると仏になると考えられている。また、彼らは動物にさえ優しい。にもかかわらず、第二次大戦における数千万の人々に対する犯罪行為には、誠意を持った謝罪ができない

・あらゆるところで稼ぐ日本のビジネスマンは、利益を求めて狂ったように奔走している。その一方で、アジア・アフリカの貧困地域や難民キャンプ、被災地には、労苦を厭わず、汗水流して働く日本人ボランティアの姿がある

・日本人は、成功すれば有頂天になり、自らを上等な人種であると思うし、失敗すれば深く落ち込み、下等な人種だと自虐的になる

・日本人にとって「個の不安」は多くの面で現れる。仲間がいない時の寂しさからくる不安の他に、見知らぬ人間に対する「対人不安」がある

・集団から離れると蔑視され、一人では何もできないばかりか、攻撃されることもあり、孤独と屈辱に耐えなければならない。日本人は、集団に対して強い帰属意識を持ち、日本式の小さな共同体に守られ、平穏に暮らしたいと願っている

・日本人は知らない人間と会うと緊張するので、相手のポジションを確かめ、自分がどう振る舞うかをわきまえることによって、緊張を取り除く

・日本人は、買い物をする時「神様」のような気分となる。「あなたの物を買いに来てあげて、恩恵を与えるのだからサービスしなさいよ」といった傲慢かつ得意げな態度になる。売り手もまるで「神様」を見るかのように、日本特有の複雑な礼儀や甘い言葉をつくす

・日本人は、プライベートな付き合いの中では、本来のキャラクターを丸出しにし、遠慮もせずに、自然に振る舞うが、社会的組織や集団の中では明らかに別人となる。対人関係には一定の距離があり、常にそれを計測し、確かめている

日本人を喜ばせるには、ちょっとした贈り物、ちょっとした手伝いをするだけでいい。すると、相手は、百方手をつくしてお返しをしてくれる。しかも、その返礼は、きっちり計算されたかのように、与えたものと同じ価値であることが多い

・単独では「風に吹かれそうな弱い人」でも、いったん集団に入ると、強健になり、結束して、排外し、攻撃性を持つようになる。そして、何者も恐れず、集団の利益のために水火をも辞さない

・日本人は、大人になっても甘えの感情を引きずり、根深い甘えを持ちながら、学校や会社に入り、かつて母親を慕った時と同じように、優しさ、友愛、安全を求める

・経済分野において大きな成功を収めた日本人が、世界マーケットでいつも人を困らせるのは、「意志決定のスピードの遅さ」である

・日本人の最も危険なところは、集団の中で醸成されるムードのメカニズム。平和な時代は平和ボケし、経済成長期には馬車馬の如き働きまくり、拡張主義が高じて、戦争となれば、殺人ロボットとなる

・日本の子供たちは、「友達関係」と「人に迷惑をかけない」という教育を受けながら、集団とは何かをじっくり学んでいく

・日本企業では、社員達に国家資格等、公的資格の取得を奨励する。資格試験を受けるための養成コースは数多くあり、日本の一大産業を形成している。日本の生涯教育は、世界で最もシステマティックで規模が大きい

・日本人の感性や情緒性は、鋭く豊かである。理性よりも本能によって、外部の事象を感じ取り、目新しいことに興味を覚える。しかし、豊かな好奇心も裏を返せば、何も知らないということ。つまり、「田舎者の好奇心」。田舎者ほど、強い好奇心を抱く

・どんな会社にも忙しい時と暇な時がある。日本人の労働者で、理解できないのは、他の先進国と異なり、暇な時でも忙しそうにすること

・日本経済の発展には、三つの内在的要因がある。一つは、日本人の集団精神、運命共同体的意識。二つ目は、日本人特有の感性による事物事象への好奇心と敏感さ。そして、三つ目が、日本人の職人気質である

・村八分にされた者は孤立に陥り、毎日ビクビクしながら過ごさなければならず、村中から「外される」悲しみを痛切に思い知らされる。日本人にとって、村八分は最も残酷で恐ろしい懲罰である

・近年では、日本人女性の東南アジアへの「男買い」ツアーが流行っている。インドネシアのバリ島には、娼婦はいないが、男娼はいる。日本には特殊な文化がある

・日本人は、日本人論をひどく好む。日本人のように、自民族のことを論じた本を好む民族は、世界のどこにもいない

・恵まれた自然環境に暮らす日本人は、自然をこよなく愛し、厳かなものとして崇拝している。日本人には、自然の対立という概念がない。人は自然の一部であり、自己の中に自然があり、自然の中に自己がある

・武士道では、精神的に優位な者が、勝利を収めるとされる。己に勝る者が、敵に勝つと考える。そして、精神的優位とは、姿かたち、言葉、所作、振る舞いに表われる。正しい礼儀や威厳は、武士の心である

・政治的に責任をとらなければならない場合、時の政府が責任を取る。いざという時は、天皇の権威でもって事態を収束する。これが、日本人のずっと継承してきた歴史的慣習

・何事にも固執する日本人であるが、反面、その現実的な融通性は他民族には及びもつかない。第二次世界大戦中は、自らの民族を世界一と思い込み、実力を顧みず、とことん突っ走ったが、戦後、世界のドンジリだと思うと、柔軟にスタートした

・日本は、ほとんど自力で改革を行ったことはなく、外部の刺激や圧力に突き動かされて、重要な変革を成し遂げてきた。しかも、それは、日本にとって、最も必要なタイミングで成され、かつ一挙に短期間での勃興が成功する



人間は、他人のことは、よく見えます。中国人も、日本人のことは、よく見ています。

著者の意見には、多少、穿った点もありますが、客観的に、日本人のことをよく見ているように感じました。

日本人は、欧米人からどう見られているかを気にしながら、戦後、走ってきました。しかし、これからは、アジア人にどう見られているかを気にして、行動をとるべきなのかもしれません。
[ 2011/08/23 08:01 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『100年デフレ-21世紀はバブル多発型物価下落の時代』水野和夫

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)
(2009/04)
水野 和夫

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水野和夫氏の本を紹介するのは、「超マクロ展望世界経済の真実」に次ぎ、2冊目です。

この本は、2003年に出版したものを2009年に文庫化したものです。金融の専門家からも高く評価されています。

しかも、経済学に留まらず、文明史観的な要素も含んだ大作です。感銘した箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ある国でマネーを過剰に供給しても、その国でバブルが生ずる必然性はなくなった。マネーは国境を越え、バブルを生成させる。その結果、世界中で資産価格が急騰する

歴史の危機とは、システムの内部矛盾が極限に達したために起きる。すなわち、同種のシステムを自ら再生することが展望としても現実としても不可能となったために起きる

・「国家は自ら望むと望まざるとにかかわらず、16世紀最大の企業者であった。しかも、国家はまた、商人にとって重要な顧客でもあった」 (アメリカの社会学者/ウォーラーステイン)

・英国の物価は1317年をピークに、1477年まで160年の長きに渡って下落した(下落幅は62%)(ピーク時を100とすると38の水準)(年率換算0.6%の下落)。人類史の中で、14世紀は最も人口が減少した世紀。西欧の人口は年率0.34%の減少

・中世後期は資本(地主)分配率が低下した。地主の利潤額が減少し、中世の支配者である貴族にとって、没落の危機であった。それを打破するために、1500年前後に、領主制から主権国家へ転換し、荘園経済から資本主義経済に変わり、大航海時代の幕を開けた

・16世紀になると、新大陸との交易が盛んになり、経済は長期停滞期から脱し、新たな発展期を迎える。人口増に農産物の供給が追いつかない状況が150年に渡って続き、インフレーションの時代になった

・16世紀の利潤インフレで幕を開けた資本主義は、20世紀に賃金インフレで終わりを告げようとしている。資本主義は、労働者の生活水準を引き上げ、システムとして成功した

・近代国家の最も基本的な要素は領土の支配権。インターネット革命は、近代主権国家の基盤そのものを揺るがしかねない重大な意味を持っている。主権国家の中央集権的支配は終わり、ITによる帝国特有の分権的支配システムが実現することになる

・日本の資産デフレは、土地本位制の崩壊が原因。一般物価デフレはグローバリゼーションが原因。95年以降の土地の貿易財化の進展は、デフレの源泉が、グローバリゼーションで共通している

・相対的な購買力平価説が成立しなくなった時期と、貨幣の中立性が成立しなくなった時期が一致しているのは偶然ではない。途上国通貨が元来置かれていたような状況に、世界の通貨が向かい始めている

・一度目の新技術は、19世紀半ばの鉄道と蒸気船。二度目の新技術は、20世紀初頭の電気。そして、三度目の新技術は、20世紀末から21世紀初頭にかけての情報・通信技術。新技術は生産性向上をもたらし、成長率を高める

・日本の対外資産は無防備に為替リスクに晒されている。スペイン王家に巨額の貸し付けを行い、債務不履行にあって衰退したイタリア・ジェノバの銀行家の例のように、国内に投資機会が少ないからといって、単に国際分散投資をすればいいというものではない

・世界で最も金利が低い国は、最も資本蓄積に成功した国であり、同時に物価水準が高い国でもある。それは、16世紀末のイタリアであり、20世紀末の日本である

・中国は為替調整が行われることなく、世界の工場と台頭し、大競争の時代に突入して、21世紀がデフレの時代となった。中国・人民元のみならず、インド・ルピー、ベトナム・ドン、タイ・バーツもドルに対して大幅に割安である

・17世紀のヨーロッパは内外価格差が縮小した時代。1600年に約7倍あった内外価格差が1750年までに1.8倍に収斂していく過程で、フランスの通貨は4分の1になったが、物価は下落基調が続いた。通貨を4分の1に切り下げてもデフレになるという事実は重要である

・日本と中国の間にある人件費格差は25倍から30倍。また、英国から米国への「世界の工場」移転における人口格差は1.7倍で、米国から日本へは0.5倍だったが、日本から中国へは10倍の格差がある。しかも為替調整メカニズムが機能していない

・バブル崩壊後の生産性を見ると、規制産業であるほど、過去と比べて低下割合が大きい。金融保険業、鉱業、電気ガス水道業など、政府規制のウエートが高い産業の生産性低下が著しい

・マネーだけでなく、実物投資や雇用も国を越え、企業は生産を自由に選べるようになる。世界的な需給ギャップが是正されるのは、100年後。それまでは、世界的な物価・サービス価格の長期下落資産バブルが繰り返される

・世界的な超低金利時代は、先進国において実物投資に対する資本リターンが著しく低下したことを意味する。そのことは、「成長とインフレがすべての怪我を治す」近代の終わりを意味する

・近代社会とは、常に社会が進歩し、経済的側面から見ると、資本(利潤率)と国家(税収)と国民(所得)の利害が一致することで、中産階級をより多く生み出す社会。この三者の利害が一致する時代が終わり、近代の持つ基本原理が崩壊してきた



これから、新興国が発展するのと引き換えに、先進国の中産階級が崩壊していくことが顕著になります。その過程で、先進国はデフレになります。

この本で、著者は、そのデフレが100年続くと断言されています。そういう時代を、歩まざるを得ない中で、どう行動したらいいのか、どこに投資したらいいのか、判断できなければ生き残っていけません。

この本は、すでに起こっている100年デフレを生き残っていく、信頼できる羅針盤になるのではないでしょうか。
[ 2011/08/22 07:23 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)

『カイチュウ博士と発酵仮面の「腸」健康法』藤田紘一郎、小泉武夫

カイチュウ博士と発酵仮面の「腸」健康法カイチュウ博士と発酵仮面の「腸」健康法
(2010/05/14)
藤田 紘一郎、小泉 武夫 他

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藤田紘一郎先生は、以前、このブログで、「不老の免疫学」を採り上げました。腸および寄生虫が専門の医者です。小泉武夫先生は、発酵学者として、世界中のあらゆる食べ物を味見している有名な方です。

この本は、二人がコラボして、健康的な食事とは何かを言い合う内容です。博学の二人の食と健康の知識に圧倒されます。

面白く読めた箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・原始人のフンの化石から、ゴキブリの羽が出てくる。ゴキブリは、蛋白質がほとんどで、カルシウムもビタミンもある。いろんな活性酵素がある。昆虫は本当によい。中国では、ゴキブリを養殖して、売っている

・動物で一番おいしいところは、いつも動かしている部分。そういうところには、旨味のアミノ酸が集中している。ヘビは、全身が筋肉で、いつも動かしているからうまい

ぬか味噌1gの中に、乳酸菌が2億個いる。人間には、猛毒のフグのテトロドトキシンも、乳酸菌にとっては、単なる食べ物。最終的には、水と炭酸ガスとアンモニアに分解して無毒にする

・種馬でも、仕切りのある畜舎に入れると、すぐ交配できなくなる。放牧すると元気になってくる。食べ物一つとっても、野性の、そこに生きているものを食べなければいけない

・人間の免疫を決定するのは腸内細菌だから、ウンチを調べれば免疫がわかる。人間の免疫の70%ぐらいは腸がつくるというくらい、腸は大切な臓器

・戦前、日本人は1日平均300gのウンチをしていたのに、現代人は150gがやっと。その民族が強いかどうか、ウンコの健康状態で判断できる。今、一番すごいのは中国。奥地に行くと、ほれぼれするようなウンコがある

・我々を守ってくれる腸内細菌が活躍するためには、悪いものが適当にいて、そいつを常にやっつけるような攻撃態勢をもっていないとダメ。平和すぎ(きれいすぎ)てはダメ。働かせておかないと、腸内細菌は活動を止めてしまう

・乳酸菌は、潰瘍性大腸炎などの病気にいい。乳酸菌や納豆菌のように、吸着力の強い菌を多くとると、他の菌が来ても、腸に定着させない

・ちょっとした病原菌にもやられてしまう人は、腸内細菌が少ない。腸内細菌が少ないということは、ウンチが小さいということ。ウンチの状態がよくない人は、病気になりやすいということ

・この50年間で、日本人の肉の消費量が3倍、油の消費量が4倍になったのに、和食の植物に多く含まれるミネラルの摂取が4分の1になった。4分の1になると、アドレナリンの異常分泌の症状が出てくる。つまり、興奮しやすくなって、暴力をふるいやすくなる

・「5 A DAY運動」で、アメリカの野菜消費量が増え、日本と逆転したのが、1995年。その95年に、日本人とアメリカ人のがん発生率が逆転した

・今は、脳科学がもてはやされて、「脳が一番」の風潮だが、腸が先。脳は腸から進化したもの。脳のない生き物は、腸が脳の働きをする。人でも、一番神経細胞が多いのが腸。腸は敏感

・O-157が騒ぎになったとき、下痢を繰り返していたのは、ものすごく神経質な子だった。全員が一戸建てに住み、母親も神経質な人だった

・抗生物質ばかり飲んでいる人は、腸内細菌がいなくなるから、腸が弱くなり、下痢して、いろいろな病気になる。同様に、防腐剤とか着色料なども飲んでいるとおかしくなる

・世界の大豆発酵食品で抗酸化物質のベスト3は、味噌と糸引き納豆とテンペ(煮た大豆をクモノスカビで発酵させたもの)。学会でも、この三つの発酵食品は、非常に抗酸化物質が強いため、がんの予防になるとされている

・モンゴルには、獣医は大勢いない。ヒツジの赤ちゃんが下痢したとき、発酵した草の漬け物を食わせて治す。北海道にあったサイロも、土の中に草を埋めて、空気から遠ざけて、乳酸菌を発酵をさせるもの

・女性が愛用している香水には、インドールスカトールを入れるが、これはウンコの中にも含まれている成分

・においをかがせると、体のどこが反応するかというと、まず心臓に行く。心臓発作を起こした人に、亜硝酸エステルのにおいをかがせると、心臓がまた動き始める

・喉頭がんになった人で、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の値の高い人は再発していないが、低い人は50%以上再発している。そのNK細胞の数値を上げる方法の一つが、イメージトレーニング。イメージさせる方法には、従来の音楽よりもにおいの方が効果的

・野菜だけ食べて、肉やコレステロールは食べないというのはおかしい。だいたい、一番早く死んでいるのは、コレステロールの少ない人。自殺者も、コレステロール値が正常以下の人が一番多い。やせ型が一番死亡率が高く、一番長生きするのは小太り

・スルメはアルギニンというスタミナアミノ酸と強壮効果のあるタウリンやベタインの固まり。結婚式に結納に出るのは、「だんなさんが食べてがんばってください」ということ

・海産物には亜鉛が多く含まれる。亜鉛は精子をつくるミネラル。だから、男性は亜鉛がないとダメ

・免疫力を高める、がん予防の食物のトップがニンニク。ニンニクは強力な抗酸化力を持っているし、腸内細菌のエサになる。ニンニクのアホエンという成分は、たしかに免疫力を高める

・日本のどこの水道水にも塩素が入っている。細胞や細菌を殺す塩素を飲んでいると、腸内細菌は全部死んでしまう。ヨーロッパでは、ペットボトルの水は煮沸していない、塩素の入れていないものを売っている。ボルヴィックやエビアンなども湧き水そのまま

雪解け水には、活性作用がある。雪解け水を与えると、鶏は卵を多く産み、ヒヨコは早く成長する。牛は乳を多く出し、米の成長もよくなる。雪の多いところの米はおいしい

・世界の長生きのところの水は、カルシウムやマグネシウムが多い硬度の高い水、つまり硬水を飲んでいる。体液が酸性になると、血液や汗や精液も酸性になり、病気になりやすい。アルカリ性のカルシウムの多い水を飲むと効果がある

・ニンニク、ネギ、ニラ、カラシナなどのピリッとするものとか、キノコのβグルカンなどをとらなければ老化するし、記憶力も低下する



高級低級、上品下品を問わず、二人の食と健康の知識が炸裂して、学術的なのに、面白い内容になっています。

今の食生活を見直すためには、二人の知識を参考にしてみるのもよいかもしれません。面白くてためになる本とは、まさに、この本のことを言うのだと思います。
[ 2011/08/19 07:31 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『図解・倒産する会社はココでわかる!』企業ドクター

図解 倒産する会社はココでわかる!図解 倒産する会社はココでわかる!
(2009/04/03)
企業ドクター

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3年前に、このブログで、「倒産しそうな会社」という記事を書きました。実際に考えられることを100箇条にまとめました。

単に、倒産しそうな状況を把握するだけでなく、会社が倒産する前に、どう気づいて、どう速やかに逃げるかが被害を少なくします。

自分の勤務している会社や得意先が、どんな状況にあるのかを、あらゆる角度から知るのに、この本は役に立ちそうに思います。

ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・倒産の種類には、法的整理の再建型倒産(会社更生法、民事再生法、会社整理)、法的整理の清算型倒産(破産、特別清算)、私的整理の清算型倒産(銀行取引停止処分、任意整理)がある

倒産の原因は、販売不振(64%)、赤字累積(11%)、放漫経営(8%)、他社倒産の余波(7%)、過小資本(6%)、信用性低下(1%)、売掛金回収難(1%)、設備投資過大、在庫状態悪化

・経営者が、創業者か二代目かサラリーマン経営者か、これらは会社を知る上で大きなポイントになる

・自らの経歴を堂々と公開できない経営者は怪しい。休眠会社の商業登記を利用したパクリ屋の疑いがある

・構造不況業種などで、後継者を育成しておらず、廃業が既定の事実になっている会社は要注意

・経営者がどんな人物とつきあっているかで、その会社のレベルがわかる。暴力団、総会屋、異性、新興宗教、ギャンブル仲間、同業者(融通手形で助け合い)、バッタ屋(即金買取)の交友、交際は経営を危うくする

・突然の経営者の交替の背景には、必ずマイナスの要因がある。交替の理由には、「業績不振による引責」「病気・入院」「役員抗争」「不祥事」などがあげられる

・役員、幹部社員の退職が目立つのも注意が必要。特に、ワンマン社長の補佐役とみなされるナンバー2の幹部役員の突然の退職は容易ならざる事態の前触れ

・銀行が役員を派遣し、金融支援に乗り出したら、一安心どころか要注意。銀行の行員派遣の狙いは、「再建の可能性」を探るため。再建不可能と判断したなら、「債権回収と債権保全」を図ろうとする

・支払手形のサイトが延びる(決済延期)のは、企業の窮状を端的に示す赤信号。銀行での資金手当てができずに、懐具合は極めてピンチの状況

・大口払いだけでなく、小口払い(諸会費、業界紙購読料、新聞代、広告料、レンタル代、飲食店のツケなど)の滞納も、倒産の前触れ

不自然な売上の急増(資金繰りのための廉価販売、相殺勘定の見直し、子会社への押し込み販売、信用不安で他社が手を引いた先への売り込みなど)には、必ず裏がある。

仕入れの急増も、投機買いか換金目的の横流しの疑いが大きい。これも倒産の危険信号

・経営の変化は必ず、広告出稿の増減に現れる。費用対効果が数値化されにくいので、真っ先に削られるのは広告費。広告宣伝費が減少してきたら、その会社の経営状態が良好でないとみて間違いない

・返品は即、資金繰りに響く。返品情報を耳にしたら、支払状況を確認すること。今の時代、旧製品を転売するのは難しい

・取引先が支店、営業所の縮小を行ったら、「守りの経営」に入ったことを示唆している。それが、プラスのリストラ(得意分野への絞り込み、少数精鋭化、地域の見直し、利益率の重視、費用対効果の重視)なのか、単なるマイナスのリストラなのかチェックすること

・経営に対する批判、上司への不満、給与の問題など、取引先で何気なく口にする自分の会社の話題も、ある意味、立派な「内部告発」。内部告発が出回るのは、倒産の予知情報



失われた20年が過ぎ、失われた30年に突入していきそうな中、企業業績を日本の中で伸ばしていくのは至難の技です。

下りのエスカレーターを昇っている状況では、ちょっと手を抜いただけで、急降下していきます。この急降下する会社を見抜くのに、この本は役に立ちます。

デフレの世の中では、倒産しそうな会社を見抜く目は、必要不可欠ではないでしょうか。
[ 2011/08/18 06:47 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『あなたの心を救う仏教の言葉』植西聰

あなたの心を救う仏教の言葉あなたの心を救う仏教の言葉
(2010/10/26)
植西 聰

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このブログには、「仏教・東洋思想の本」というカテゴリーを設けています。今日で、32冊目になります。

今まで、本の紹介を500冊近くしてきましたが、その7%近くになります。若いときは、全く仏教に興味なんかなかったので、自分でも驚きです。

この本は、「あきらめない」「悩まない」「欲張らない」「心配をしない」「怒らない」という5つの仏教の教えで、心を救おうとする書です。

興味深く思えた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「誓願なければ、牛の御するなきがごとく赴くところを知らん」 (智『摩訶止観』)
最初に誓願を立てることがなければ、手綱を引く人を失った牛が暴れ回るように、自分自身がどこへ行ってしまうかわからなくなる 

・「人間、到る処青山あり」 (月性『将東遊願壁』)
どんなに苦境に陥ろうとも、探せば希望が見つかるもの。最後まであきらめないで、志を貫くこと

・「知者の手に入らば則ち黄葉もまた真金なり。愚者の手に落つらば則ち真金もまた黄葉なり」 (白隠『遠羅天釜』)
賢い人は、枯れ葉を純金に変える。愚かな人は、せっかくの純金を枯れ葉に変える

・「道心の中に衣食あり。衣食の中に道心なし」 (伝教『伝述一心戒文』)
自分が信じるものを極めようとしていれば、生活に必要な衣食やお金は自ずから得られる。しかし、衣食やお金を求める気持ちからは、ものを極めようという意志は生まれない

・「天真に任す」 (良寛)
私の人生は、天の意志にお任せする

・「求心やむ処、即ち無事」 (臨済『臨済録』)
必要のないものを求めるのをやめ、自分自身の本性に向き合うことができるようになった時、人は自分の生き方が定まる

・「随処に主と作れば、立処皆真なり」 (臨済『臨済録』)
どのような状況でも、自分が何をしたいのか見失わず、自分の本心にしたがって、主体的に行動すれば、真実の方向に進んでいける

・「凡夫顛倒して妄りに楽想を生ず。智者は苦なりと知る。貪をみれば則ち断ず」(成実論)
愚かな人は、良し悪しの見境がつかず、遊びに夢中になる。賢い人は、遊びも過度になると、苦痛でしかないことを知っている。だから、遊びを貪りたい気持ちを断ち切れる

・「規矩、行い尽くすべからず」 (大慧武庫)
規則を守ることに、あまりこだわりすぎることはない

・「憎しと思うも、かはゆしと思うも、みなみずからが思いなしなり。この思いなしのところを妄想と名づけたり」 (鉄眼『鉄眼仮字法語』)
憎いも、かわいいも、自らの思い込み。根拠はない。好き嫌いの感情は、すべてが妄想

・「人に物を施せば、我が身の助けとなる」 (日蓮『食物三徳御書』)
腹をすかせて死にそうな人に食べ物を分けてあげる。これは、人助けではない。自分自身を救うことにつながる

・「能く自らの意を伏せば、他人の意を伏すべし」 (三慧経)
自らが謙虚になって、自分の意見を押し通すのを控えれば、相手もまた自分の意見にこだわる気持ちを捨ててくれる

・「身は乾ける薪の如く、瞋恚は火の如し。未だ他を焼くこと能わずして、まず自らを焦がす」 (大荘厳経論)
体は乾いた薪、怒りは火。人への怒りの火が自分に点けば、瞬間に燃えて、自らを滅ぼす

・「生まれを問うてはいけない。その人が何を行ったかを問うこと」 (経集)
生まれを聞いて、先入観や固定概念で相手を判断してはいけない。相手の実際の行動、また内面性を重視して判断すること



先人の僧侶たちたちが悟った、人生の知恵、人間関係の知恵が、この本に納められています。

困ったとき、不安になったとき、悩んでいるときに、周りの人に相談するだけでなく、昔の知恵者たちに、本を通じて、相談することも大事だと思います。


[ 2011/08/16 08:04 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『死後はどうなるの?』アルボムッレ・スマナサーラ

死後はどうなるの?死後はどうなるの?
(2005/10)
アルボムッレ スマナサーラ

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アルボムッレ・スマナサーラ氏の本を紹介するのは、「やさしいって、どういうこと?」に次ぎ、これで6冊目になります。

著者は、ブッダの教えを忠実に守る、初期仏教の長老です。本来の仏教を学ぶのに、非常にためになります。

私のような人が多いのか、最近、スマナサーラ氏の出版する本が、書店の売れ筋ランキングの上位に登場するようになってきました。

この本は、スマナサーラ氏の著作の中でも、かなり難解な部類に入ると思います。お盆を迎える季節にあたり、ブッダが説く仏教では、死後をどう考えているのかを知りたくて、時間をかけて読みました。

参考になった箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



死後の世界は、あるとも言えないし、ないとも言えない。明確に言うと、亡くなったら、そのあと、命が続くのか、続かないのか、わからないということ

・死後があろうがなかろうが、「どのように生きているか?自分の人生にどのくらいの点数をつけられるか?」ということ。このポイントさえ気をつけていれば、死後の世界があっても、なくても心配無用

・仏教では、よく仕事をするとか、家族の面倒をみているか云々とは、違う観点で評価をする。生き方について、どういう態度を持っているか、つまり、「心の持ち方」を問題にする

・どんな宗教も死後の世界を認めている。ただ、「死にたくない」という人間の希望を、「死んでも生まれ変わる」という願望で置き換えただけのこと

・仏教は輪廻転生を信じる人だけが対象ということでもない。自分の人生を体験すると、「すべては苦である」とわかる。それが理解できれば、最終的に涅槃を得られるから、輪廻を証明することに、それほど力を入れていない

・瞑想によって、集中力を育てることで、自分の過去世を見る能力がつく。しかし、その過去世は逃げ出したくなるほど恐怖に満ちていることがわかる。本当のところ、過去世とは、絶対に見たくないほど怖いもの

・私たちは、さまざまな失敗をして、ひどい目にあって、無始なる過去から輪廻してきた。どこから輪廻してきたのか調べてもキリがない。釈迦も「輪廻に始め無し」と言っている

・私たちの感情は生滅変化している。つまり、一つの心が消えなければ、新しい心は生れてこない。妄想するときも、さまざまなことを同時に妄想することはできない

・高熱を出したり、意識不明になって、前後不覚になったら、支離滅裂なことをしゃべってしまったり、いろんな幻覚が見えたりする。そんなとき、自己コントロールできずに、くだらないことやおかしなことを考えているならば、来世が心配

・「常によいことを考える」「慈悲の心を持つ」こと。怒りや嫉妬の感情は毒であるので、明るくポジティブな考え方、生命を愛する考え方、善行為を喜ぶ考え方を習慣づけること。そうなれば、死後は怖くなく、次の生まれは心配ない

臨死体験なんてものは大したことはない。体が弱くなると、心は勝手に妄想する。いままで妄想してきた癖によって、妄想するだけ。その人が実在感を抱いている世界が、その通りの現象として現れる

・初期仏教の世界では、人が死にかけている時に、坊さんが訪ねるのはごく普通。死ぬのだから、最後の心の状態を清らかな立派な状態にしてあげようとする。最後にできる親孝行とは、親が亡くなってから、天界やよい境遇に生まれ変われるように計ってあげること

・「立派な身体」をつくろうとしても、来世のために役に立たない。「立派な心」をつくることが一番大事。年をとれば醜くなってしまうので、いつでも明るく、素晴らしい、上品な、品格のある心を持たなければならない

・「生きていてよかった」ではなく、「生きていたことによって、さまざまな素晴らしい善行為ができました」「立派な人間として生きることができました」と、そういう満足感で亡くなったら、善いところに行く

・知識に優れていても、あり余る財産を持っていても、心が汚れているならば、その人の人生は何の価値もない。清らかな心を作ることこそ、生命にとって唯一の財産になる

・人が行っているすべての行為は、ただ生きるためか、生きることを楽しむためか、に限られる。死ぬ時、これらは何の意味もない。生きるため、楽しむためという目的を超えて、人は清らかな心を作るため、人格を向上させるために善行為を行うべき

・人間は堕落の道を自然に歩むようにできている。成長する道は努力によってのみ成り立つ。精進することによってのみ、幸福は成り立つ

・成仏とは、成仏していない霊を納得させて、次の生をはっきりさせてあげるだけのこと。そこから、善いところに生まれ変わるためには、本人が徳を積んでおかなければいけない

・人間として一番素晴らしい喜びは、自分の子供たちが、世の中で立派に生きていること。回向とは、これと似た働き。遺族が故人の供養のために、善行為をして、功徳を積み、清らかな心を持つと、故人は喜ぶ。すると、故人に清らかな心の波動が生まれる

・自分自身が精神的に徳を積んで、清らかな波動をつくって、その波動の影響をほかの生命に与えてあげるのが、本当の供養のシステム

・もし、自分が先に死んでしまっても、布施を受けた人が生きている限り、徳を積んでいることになる。そういう業(カルマ)の法則がある

・善行為の功徳を先祖に回向して供養してあげると、その生命は大変幸福になるから、向こうからすればありがたくてしょうがない。だから、善い波動で私たちをきちんと守ってくれる。災難からも守ってくれる

・怖れを抱き、心配することで、暗い波動がさっさととりつく。それで不幸になってしまう。心の波動は効く

・輪廻転生するのだから、不道徳な生き方ほど危険なことはないと、気づくことができれば、善い人間になることが優先される。自分の境遇に不平不満を言っている暇があれば、明るい気持ちで努力すればいいこと

・どうして私はこんなに不幸なのかと、みじめに思い悩む必要もない。今の自分なんか、どうせ変わるもの。どん底からでも、どこまでも人格向上が可能になる

・仏教用語の十悪とは、「1.生命を殺す」「2.盗む」「3.邪な行為をする」「4.嘘をつく」「5.怒鳴って侮辱する」「6.陰口、中傷を言う」「7.ムダ話をする」「8.異常な欲を持つ」「9異常に怒る」「10.邪見する」こと。これらの反対が十善

・人間はどうしても罪を犯す。努めるべきは、罪を繰り返さないこと。懺悔すること、犯した罪よりたくさん善行為することによって、犯した罪が弱くなる

・人生の後半であっても生き方を改めれば、次の生まれがうまくいくと、仏教は強調する

・餓鬼の影響、幽霊の影響、先祖の影響で、不幸になるという話は、日本でよく聞く。それは、つまり、影響を受けるほど、自分が精神的に弱い、情けないということ

・三宝(仏法僧)に帰依しますと心から念じれば、ものすごく明るい心になる。勝負事で、負けっぱなしのときに三帰依すると、いきなり勝ってしまう。効果のあるお守りにもなる

・病人の意識がはっきりしなくても、「生きとし生けるものが幸せでありますように」と耳元で唱えれば、慈悲の明るい波動によって、暗い想念が打ち消される




死後の世界は、あるか、ないか、わかりませんが、あると考えたほうが、世の中も、自分も上手くいくように思います。

しかも、先祖への最高の供養は、自分が現世で善い行為を行うことと考えれば、世の中がどんどん平和になっていくのではないでしょうか。輪廻転生はあるものとして、考えないといけないのかもしれません。
[ 2011/08/12 07:14 ] スマナサーラ・本 | TB(0) | CM(0)

『親鸞と生きる-悩むから人間なんだ』紀野一義

親鸞と生きる―悩むから人間なんだ (PHP文庫)親鸞と生きる―悩むから人間なんだ (PHP文庫)
(1999/05)
紀野 一義

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日本の宗教史上、親鸞ほど、深く敬愛されている人も珍しいように思います。

庶民の味方となる宗教論をいち早く展開し、庶民から絶大なる支持を受けた背景に何があったのかを知るために、この本を手に取りました。

親鸞を初め、日本の仏教界に関することで勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「落ち着く」というのは、落ちるところまで落ちて、どん底に着くことである。どん底まで行かなくてはだめ

・宮沢賢治の詩「ああいいな せいせいするな」は、無量の生命の讃歌。ここに帰命がある

・「信心あさくとも、本願ふかきがゆゑに、頼めばかならず往生す。このゆゑに、本願にあふことをよろこぶべし」 (恵心僧都)

・親鸞は、戦闘者として生きることができた。戦闘者となる第一の条件は、己と戦うこと。己の弱質を克服すること。他人の弱質には寛容であること。真の戦闘者は、「人間の悲しみ」「人間の弱さ」「人間のずるさ」をよく知っている

・親鸞は、「凡夫のくせに勇猛の振る舞いをするのは、みな虚仮である」と言った。人間というものは、弱いものだ。脆いものだ

・日本という国は、権力に敵対し、非常識の世界に生きようとする者には陰に陽に圧力を加える。法然も、親鸞も、道元も、日蓮も、この圧力に狙われ、陥れられた

・親鸞は、どんな時にも醒めている。甘えないし、溺れない。四年間の煮えたぎるような愛欲生活の果てに親鸞が手に入れたのが、この「醒めた、クールな性格」である

・人を信ずるということは、自分を命ごとその人に預けてしまうこと。「信」とは、まかせること。まかせてしまった以上、その相手がどんな無理難題を言っても、「はい畏まりました」と言うのみ

・人間はどこかで、大なり小なり悪いことをしてきている。しなかったという者は、したくても気が弱くてできなかっただけ。悪いことをする勇気がなかったくせに、悪いことを考えたこともないような澄ました顔をするのは、しゃらくさいと親鸞は思っていた

・人間は、勝ちっぷりよりも、負けっぷりの方がはるかに難しい。負けっぷりの見事な男は、一流の男である

・親鸞は「無根の信」の者に暖かい眼を注いだ。信心の根の全くない者が、仏に会うことによって、突如信に目覚め、大勢の人々に巣食う悪心を破壊し、人々に代わって、地獄に落ちてよいと決心する。これが、無根の信の者

・他人事ではない、自分のことだ。よその話ではない、自分の話だ、と親鸞はいつも自分の身、自分の愚かさ、自分のどうしようもなさに引き当てて、痛切に受け取っていた

・倫理や道徳は人を救うものではなく、優性の遺伝因子を持って生まれた者の福利を守るための道具にすぎない

・歎異抄で「この親鸞は弟子など一人も持ってはおらぬ」と言った。真の子弟間には、節義や尊敬や面倒を見る思いやりはあっても、金や権力は介在しなかった。日本の茶道や華道の子弟関係は、師は金蔓としての弟子を握り、弟子は昇進する手段として師を利用する

・親鸞には、人によく思われようという気がまるでなかった。いつも仏さまの方に顔を向けていた。弟子の顔色を窺ったりはしなかった



親鸞の思想や行動と、著者の解説がほどよくマッチして、楽しく読めることができました。

もし、親鸞という人物を一言で語るとすれば、この本で、著者が解説されているように、「人間の悲しみ」「人間の弱さ」「人間のずるさ」をよく知っていた人ということになると思います。

それは、落ちるところまで落ちた人間でしかわからないのかもしれません。
[ 2011/08/11 05:51 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『思わず人に教えたくなる!「問題解決」のネタ帳』岩波貴士

思わず人に教えたくなる!「問題解決」のネタ帳 (青春文庫)思わず人に教えたくなる!「問題解決」のネタ帳 (青春文庫)
(2011/08/09)
岩波 貴士

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著者の岩波貴士さんは、日本アイデア作家協会の代表であり、メールマガジン「まぐまぐ」の部門で、読者数ランキング1位の常連です。

この度、「儲けのネタ帳」「儲けの裏知恵」に続く、三冊目として「問題解決のネタ帳」を出版されました。

実を言いますと、岩波さんは、「お金学」のブログを読んでくれています。「問題解決のネタ帳」の中でも、貢献度の高い?「書評ブログ」として、紹介していただきました。

「お金学」の貢献度はさておき、「問題解決のネタ帳」は情報源として、貢献度の高い本です。すぐに役立ち、得する内容です。

この本を読み、前半部分だけで、ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・書き出すことをせず、頭の中だけで思考すると、今、頭の中に浮かんでいること以外の関連情報は意識しにくい。紙に書き出すことで、常に別の関連情報も意識しながら、考えることができるようになる

・チェックリストは思考の取りこぼしを防ぐ。チェックリストは、予め制作しておいた「自分への質問リスト

・チェックリスト法の生みの親“オズボーン”の9つのチェック項目は、「拡大したら?」「縮小したら?」「組み合わせたら?」「逆にしたら?」「どこかで変えたら?」「似たものを探したら?」「置き換えたら?」「別の使い道は?」「配置や並びを換えたら?」

・角の立たない否定の仕方は、1.「そうですよね」(自分もそう思っていたことを示す)、2.「だって○○ですからね」(そう思うことが当然である理由を示す)、3.「ただ、以前・・・」(過去の自分の失敗談を話す)

・自分の生活を守る上で、嘘の弱みを作っておくことはとても役に立つ。「妻の実家に寝たきりのお爺ちゃんがいるので、介護のお金を出している」などの、経済的な弱みの嘘は、とても説得力がある

・コミュニケーション能力が低いと悩む人のほとんどは、単に他人に興味がないだけ。他人によくされたいのであれば、まずは自ら他人に興味を持つこと。どのように振る舞えば、他人は喜ぶかと「人に関心を持つこと」

・失敗がその人の評価を下げるのではない。評価を下げるのは、失敗の後の対処の仕方である

・「3年分の価値ある苦労を1年で行えば、その人は10年分の基礎が作れる。10年分の価値ある仕事を3年で行えば、その人は一生の基礎が作れる」(ロッキー青木)

・目標は、社会的に評価の高い既製品のものではなく、自分自身が心の底から望むオーダーメイドのものにすること

・「本当の品格」が問われる二つの場面とは、「無料の物の扱い」(相手への配慮がわかる)と「公共施設の利用」(次の人への配慮がわかる)

・些細なことで人と口論しているような人は、「守りたいもの」や「叶えたいもの」のない暇な人

・一足飛びに大きな対象に興味が向いた場合は、逃避行為の一種でないかと疑うこと。一般的に、「よいこと」「立派なこと」と思われる行為をする場合、そこには、別の何かを「しなくて済む」という、一種の「大義名分」も形成されている

・「二人の人間がいて、常に意見が同じなら、そのうち一人はいなくていい人間である」(カーネギー)。他人と違っていればこそ価値がある。自分と違う考えを持つ人や、自分と違う仕事に従事してくれる人がいることで、世の中はうまく回っていられる

・人に相談するのは、「○○さんもそう言っていたから」という事実を作り、自分にかかる責任を軽減しようとするのが目的。「人間は正しいことを求める以上に、不安でない心の状態を求める」



この本の後半部分には、より具体的な、「日常生活の困ったを解決」「デスクワークのイライラの解決」「緊急時の解決」など、すぐに役に立つ情報、アイデア、裏ネタなどが満載です。特に、簡単に、時間短縮できる手法は、早速活用したいと思います。

この世の中、「発想力」と「誠実さ」と「金銭感覚」があれば、どうにでも渡っていけます。この本は、「発想力」に大いに貢献する書ではないでしょうか。
[ 2011/08/09 07:57 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(2)

『中国流不敗の交渉術』孔健

中国流 不敗の交渉術 (成美文庫)中国流 不敗の交渉術 (成美文庫)
(2004/02)
孔 健

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著者は、孔子の75代直系子孫で、日本で、数多くの著書を出し、活躍されています。

この本は、中国人の個性、性質、常識、知恵、考え方を四字熟語で表したユニークな書です。

数多くの四字熟語から、中国人とは一体どんな民族であるのかがわかります。気になった四字熟語が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



公平待人 (人はみな平等)
商売でも売り手と買い手は対等。強者と弱者を分けるのは、交渉力の差

人生多劫 (人生、いたるところ敵だらけ)
人に騙されるのは恥ずかしいこと

・危中救急 (追い詰めながら、助け船を出す)
アメとムチを巧みに使い分ける。金銭で結ばれた人間関係は、あくまで金銭第一の関係

恩徳相兼 (恩と徳とは一体。貸し借りすべきものではない)
自分が受けた恩を、いつの日か、他人のために力を尽くす。それが中国式の恩返し

・惜金如命 (お金が欲しいというより、お金が惜しい)
中国人は、働かないでお金が欲しいわけではない。定刻まで働き、さっさと帰るだけ

人生商戦 (金銭感覚は人生感覚である)
中国では、けちは美徳であり、けちと言われると「ほめられた」と受け止めるぐらい

・開源節流 (支出の節約が大事)
中国人は、必要のない出費を嫌う。見栄を張る不必要なお金を使うことは、軽蔑される

食来運転 (食事会の出会いによって運が強くなる)
食卓を通して、心が通い合い、人脈が形成される。そこから人生は流れを変え進んでいく

以利動人 (お金を動かせる人が人を動かせる)
人を動かせる人は、お金を動かすことができる人

話留半句 (本当のことは、いたずらに口にしない)
交渉は「しゃべりたい自分」との闘いである

・情報即金 (情報は金の卵)
同じ情報を目にしても、その情報から利益を得るのは、行動を起こした者だけ

・実事求是 (言葉を信じすぎると、現実から裏切られる)
冷静、客観的に判断する姿勢をもたなければ、苦戦する

信義行商 (いい情報をくれた人には対価を支払う)
権力につながる人脈は、強いインパクトで現実を動かしている

和気生財 (人の心を柔らかに解きほぐす。そこから富につながる何かが生まれる)
笑顔は幸せ、富の原点。和顔は相手を無防備にさせる

・行成於思 (よく変化し、すぐ動く人が成功する)
相手の変化を先読みするぐらいの気持ちで臨むことが大切

人各有志 (人とは違う自分だけの得意分野を持て)
親は、子の可能性を見極め、見込みがあるとなれば、徹底的に伸ばしていく

・持両用中 (経験の引き出しを増やそう)
可能性の限界にぶつかれば、速やかに方向転換する。選択肢には限界をつくらないこと

笑門金来 (笑顔に釣られてお金が集まる)
顔の皮一枚に、交渉の巨大技術がある。つくり笑いではなく、心底の笑顔を浮かべること

知勇競争 (人生は知識より知恵、知恵より肝である)
交渉の多くは、知力より胆力が左右する

貯金集福 (お金が幸せを呼ぶラインとなる)
お金を得るにつれ、人々の表情は豊かになり、輝くようになる

・家和業興 (妻と家族を大切にしなければ人生は成功しない)
人生は愛と財が同じバランスでなければならない。家族の結束を強くすること

養精蓄鋭 (元気を発信せよ)
ビジネスは金力より、気力が左右する

学思相長 (インプットとアウトプットのバランスをとれ)
学問をしたり、情報を得たりしたら、それをどう人生に役立たせるかを考えること



日本人には理解できない行動を中国人はよくとります。それは、一言で言えば、文化の違いでしょうが、その違いを知るには時間がかかります。

この本には、中国四千年との「文化の違い」が記されています。中国及び中国人の行動に対して、理解に苦しんでおられる方にはおすすめの書です。
[ 2011/08/08 06:24 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『若き芸術家たちへ-ねがいは「普通」』佐藤忠良

若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)
(2011/04/08)
安野 光雅:佐藤 忠良

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彫刻家の佐藤忠良氏の作品を偶然見たのは、今から10年ほど前、私の住む町の野外彫刻でした。

道沿いに、彫刻家の作品が15点以上並んでいるのですが、ひときわ存在感を放っていたのが氏の小さな作品でした。この彫刻家は誰だろうと気になって調べたのが最初です。

佐藤忠良氏は、今年3月末に亡くなられました。3年間のシベリア抑留を経験した、文化功労者になるのを拒否した、女優の佐藤オリエさんの父である、とかの話は有名です。

この本は、画家の安野光雅氏との対談形式ですが、佐藤忠良氏の芸術家魂が、よくあらわれていると思います。この本の中で、感動した箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・自然の生み出した姿は、いくら、えぐり出そうとしても、奥が深く、挑んでも挑んでも、蹴飛ばされることの連続。成功したと錯覚することはあっても、どこかで失敗している。失敗して、汗をかき、恥をかいてまた挑む。これは、哲学というより全くの実感

・人間の顔はその人の表札。そして、やはり、地位や名誉の有る無しに関わらず、中身のある心のいい人が、いい顔をしている。身近な人や行きずりの人の中にも本物がいる

・人の顔をつくるとき、粘土の中に、その人の怒りや喜びや過ごしてきた時間(現在と過去と未来までも)をぶちこもうとする。それが、彫刻家の苦しさ

・シベリアに抑留されていた三年間、男ばかりで過ごしていると、すべてのことを見せ合ってしまう。そのとき、日本人っていうのは、教養と肉体がバラバラになっていると思った。土方や野良仕事をしてきた人の方に、人間的に素晴らしい人がいた

・「習い事は、枠に入って、枠から出よ」と言うが、そこから、じわっと出てくるのが個性。芸術の世界では、他人を蹴っ飛ばして歩いているのが個性と誤解されるが、初めからシッチャカメッチャカなものは個性とは言わない

・どんなに素晴らしいものでも、気品のないものはダメ。隣人への憐みがない芸術はウソ

・本物は違う。内にしっかり内蔵して、能の表現のように耐えて、それでも外へ、にじみ出ていく

・対象が本当の顔を見せてくれないのではなくて、こっちがつかみ出せないだけ。えぐり出そうとしても、えぐり出せないだけ

・いい彫刻というのは、どんなに暴れているように見えても、らせん状に躍動感が立ち上がって、しかも、全部が枠の中にピチッと入っている。作用と反作用というバランスの原則もちゃんと踏まえている

切ない憧れが、今の若者に見えにくい。芸術の世界では、憧れがものを生み出す

・子供におもねるのはよくない。子供は喜ぶかもしれないが、感覚が鈍ってしまう。子供には、わからなくてもいいから、本物を見せなくてはいけない。それで、子供たちの物差しを作る必要がある

・勲章は全部断った。勲章をもらった人のことを見ると、学生よりひどい作品がある。職人は死んだら作品しか残らない。「え!これが文化勲章の作品?」なんてことになったら、子孫だって恥ずかしい

本当の影響と、形だけ真似したというのでは、中身が違う。ある意味、影響も真似事かもしれないが、中身が問題



いい彫刻には、指一本まで、魂が宿っています。その対象を深く見る眼とそれを作る力量が伴わないと、立派な彫刻家にはなれません。

ある意味、立派な彫刻家は、人物の鑑定師とも言えます。この本の中には、人物を見る眼に関することが、頻繁に出てきます。

芸術の本ですが、人間というものを知るのに、役立つのかもしれません。
[ 2011/08/05 07:33 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『夫婦の「幸せ循環」を呼ぶ秘訣』二松まゆみ

夫婦の「幸せ循環」を呼ぶ秘訣 (講談社プラスアルファ新書)夫婦の「幸せ循環」を呼ぶ秘訣 (講談社プラスアルファ新書)
(2010/11/19)
二松 まゆみ

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夫力」が低下している今日において、「妻力」が家庭を救うと言っても過言ではありません。

この本には、妻力とは何か、妻力をどう養うか、妻力をどう発揮するかなどが、詳細に記されています。

従来の夫婦関係から、一歩進んだ夫婦関係を構築するには、妻の力が不可欠です。この本で、共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・妻力は、夫の力が弱くなった今の時代の夫婦関係をリードする。ひと昔前の時代の弱者であった妻だからこそ、新しい夫婦関係をリードできる

・最終的には夫と同じ気持ちで、対等の場所に立ち、夫との幸せを共有したいという生活の方向を見ているから、夫をコントロールし、自分の手のひらで遊ばすことができる

・夫への家事の依頼は、「してもらいたい家事」より「できそうな家事」をまず探すこと

・家族とうまく連携して、「パパはすごいね」と持ち上げながら、実際は主導権を握るのが、妻力

・夫婦喧嘩をしても、きっかけを作り、非がなくても、「私も悪いところがあった」と切り出すのが妻力。男は、プライドが邪魔をして、頑固に口をつぐむ。そうなると、冷静な話し合いができなくなる

・夫婦の会話で、おすすめなのが、二人だけの将来のこと。子供が出ていった後に、残った二人で、どんな生活をしたいか、夫に想像してもらう

・夜の生活に不満をためこんでいる妻は山ほどいる。日々、性に関する会話ができる状況にして、夫と向き合い、提案を一つ一つ取り入れること

・一緒に家計を考えようという感覚が必要。最終的には、お金を二人の生活のために有意義に生かし、お金の使い方に二人で愛情を込められるかが大切

・夫の浮気の発覚に、一番必要なことは、自分自身のクールダウン。慌てず、恐れず、ついにこの時がやってきたかの心構えで、その場で騒ぐのはやめること

・夫の浮気の指摘は、1.「大事な話がある」2.「その女性とこの先どうなりたいのか」3.「もう忘れる。私のいけないところも言って」の手順で行う。翌日からは水に流した顔で過ごしていく。後はにっこりが妻力

・夫婦喧嘩で、夫が家を飛び出してしまったら、「ごめんね」「寂しい」「あなたしかいない」という言葉を恥ずかしくてもぶつけてみる。意地を先に捨て去って、甘えてみるのも妻力

・夫がリストラなどのアクシデントに遭って、人が変わったようになってしまったとき、妻は逃げるか、踏み込むかの二つに一つ。踏み込む場合は、徹底的に夫の味方になってあげること

・夫がどんな状況のときも、どっしり構えて、笑顔を見せるのが妻力。夫の支えとなり、夫が前向きで自立して生きられるように関わっていくのが、ホンモノの妻力

・男は、仕事のことと性のことは責められたくない。妻は、「いつでも私はあなたの味方」「何があっても一緒にいたい」と言い続けること



夫を立てながら、実は、妻が完全に夫をコントロールし、家の経営者の地位を確保するのが、この本で言う、「妻力」なのかもしれません。

こういう妻がいれば、夫も楽になるし、家庭も円満になるのではないでしょうか。男性は、結婚相手を選ぶときに、こういう基準を相手に持つべきだと思います。
[ 2011/08/04 08:10 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『リーダーのための自衛隊ゲリラ式ビジネス戦闘術』久保光俊、松尾喬

リーダーのための自衛隊ゲリラ式ビジネス戦闘術―ビジネス現場ですぐに実行できる99+1のキーワードリーダーのための自衛隊ゲリラ式ビジネス戦闘術―ビジネス現場ですぐに実行できる99+1のキーワード
(2009/11)
久保 光俊、松尾 喬 他

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人の生死に関わる組織に失敗は許されません。厳しさ、綿密さは、ビジネス組織の比ではありません。

自衛隊は何を教えているのか、自衛隊に何を学べるのか、この本には、マネジメントに応用できる自衛隊の「術」がいっぱい掲載されています。

この本を読み、共感できる箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



正早安楽は、仕事をする上で、常に問題意識を持って、改善目標にするべき4つのポイント。「正」は他の3つの土台。「早・安・楽」を求めるために、「正」をないがしろにしてはいけない。また、「楽」を求めるために、「正・早・安」をないがしろにしてはいけない

・人は、常に、すべての面で緊張を高く保つことができない。休みや手を抜くことで、メリハリをつくらないと、いい結果を出すことはできない。今、抱えている仕事を「緊急性」と「重要性」のマトリックスに当てはめて考えるのもそのため

必成目標(必要最小限の目標)を達成すれば、「勝ち意識」が生まれ、次の望成目標(もう一声、もう一押し)に向けた意欲がわく。大事なポイントは、できるだけ早期に必成目標を達成させること

挟差法(まず、目標に狙いを定めて撃つ。後は、上下左右に目標を挟み込むように弾着を少しずつ修正し、命中率を上げる方法)のように、大づかみで目標を捉えたら、まず動くこと。そして、その後の検証を正確に素早く行うことが成功の近道

・期限があると、何をいつまでにやるべきかという「時間見積もり」をつくることができる。この時間見積もりで、仕事の全体像を見れば、スケジュールの自己管理が可能になる

結合(二つ以上のものを結びつけ、一つのものに変化させる)。省略(ムダ、ムリをなくす)。発展(これまでと違った意味を持たせる)。変形(そのもの自体を全く別に使ったり、違う素材を使う)。「結合」「省略」「発展」「変形」は新しいアイデアを生み出す4つの視点

・敵の情報を収集する場合に重要なことは、敵の弱点情報を掴むこと。弱点とは、十分ではない、そこを突かれると困る敵の欠点のこと

・「1.感性的把握」(あっ、おやおや、なんだ)、「2.比較」(どこが違う、どこが同じ)、「3.分析」(どうして、なぜ)、「4.統合」(こうかもしれない)、「5.法則性の発見」(つまりこういうこと)、「6.一般化」(この場合にも言える)で、情報を解明する

・「1.突破口の形成」(幅が広いと分散し、威力が低下する)、「2.突破口の拡大」(敵の側面や背面に回り込み、陣地から誘い出す)、「3.突破目標の奪取」(次々と攻撃部隊を投入する)が、防御する敵を攻撃するやり方

・指揮官を失えば、不安になり、士気が低下する。通信が確保できなくなると、統制がとれなくなり、部隊がバラバラになる。燃料、弾薬を失うと、戦車や大砲も単なる鉄の塊と化す。物と心の拠り所を制すれば、敵の戦意は喪失し、損害が少ないうちに勝てる

熱意は心の表れであり、態度や行動に現れる。人に感動を与え、人をその気にさせるもの。熱意は教官のみならず、人の前に立つ者として、決して失ってはならないもの

・リーダーの役目は、部下に仕事を任せることではなく、部下の仕事を管理して、成功させること。人柄や性格が良いからといって、仕事ができるとは限らない。人を信用しても、仕事は信用してはいけない

・世界が狭い人は、誰もが「密室の暴君」になり、威張るようになる。「視野が狭いと、心も狭い」、これは定説

・「人生は仮面」、リーダーは、その場その場で演じなければならない。役割をしているだけではダメ。つらく、厳しいときこそリーダーたる自分を演じるのが、真のリーダー

・「一令一動」とは、一つの命令・指示で、一つの動きをさせるやり方。人は、初めて取り組むことを複数同時に覚えられない。一つの作業が終わらないと、次の作業をしてはならない

・叱るのは、「早い段階で」「他人のいないところで」「具体的な事実だけで」「感情抜きで」「人格を責めずに」「最後に激励して」叱る。褒めるのは、「すぐに」「具体的に」「脚色なしで」「感情を素直に」褒めるだけ

一斉教育(1対30)は、効率的だが、個が見えなくなり、落ちこぼれを生む。個人教育(1対1×30)は、細かな部分の指導には最適だが、競争相手がなく、甘えを生む。グループ教育(1対5×6)は、自主性を育てるが、違った方向に走り過ぎることがある

・指示を完全に理解しないで、作業が進むと、間違った方向に向かい出す。そのとき、すかさず、「ちょっと待ったコール」を出す。被害や危険が大きくならないうちに、正しい方向に軌道修正させる

・部下に傾聴させるクセをつけさせるには、「質問はございませんか?」「ありません?」「では、こちらから質問させていただきます」と、逆質問を習慣化すること

・リーダーは、部下を手足として使うのではなく、優先順位や判断基準を指し示し、部下に「考える」ことを学ばせる。考えさせることで、リーダーである自分を理解させられれば、優秀な分身が育つようになる

・「和」を訓練の目的や目標にしては、本末転倒の結果を生む。「和」の象徴である「満場一致」は危険信号。「和をもって滅びる」とは、お互いを甘くしてしまい、切磋琢磨することもなくなり、組織が滅びるということ

・リーダーに求められるのは、「自分が動くのか」「人を使って動かすのか」「一部を使って他を休ませるのか」を考えて行動すること

・昨日よりも今日、今日よりも明日と自分を伸ばすこと。昨日の自分に満足していては、勝ちにつながらない。成長の秘訣は、「自分の敵は昨日の自分」と思うこと



自衛隊には、無駄なく、効率的に、人を成長させるしくみができあがっています。会社は、大企業であっても、意外にも、教育のシステムは整っていません。

人を鍛えて、成長させて、活用していくには、自衛隊の教育システムやマネジメントは、大いに役立つのではないでしょうか。

人を育てる立場にいる人は、自衛隊に素直に学ぶべきかもしれません。
[ 2011/08/02 07:11 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『伝える本。-受け手を動かす言葉の技術』山本高史

伝える本。―受け手を動かす言葉の技術。伝える本。―受け手を動かす言葉の技術。
(2010/02/19)
山本 高史

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著者は、元電通社員で、コピーライターとして、さまざまな広告賞の受賞歴がある方です。

長く書くならアホでもできる。短くまとめて伝えるのは、賢くないとできません。その中で、数々の広告を手がけてきた著者の「伝える」論は、参考になります。

この本の中で、ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



送り手の言葉が、受け手に働きかける結末は、次の四つ。1.「受け手の耳や目に届いていない」2.「届いたが、自分には関係ないと、無意識に捨てられた」3.「伝わったが、脳が、メッセージを受け入れなかった」4.「伝わって、メッセージは受け入れられた」

・言葉は、「送り手が受け手を自分の望む方向へ動かそうと」伝える

・世の中の言葉は、書いて伝わる言葉(書いて伝わらない言葉)と、話して伝わる言葉(話して伝わらない言葉)から成り立っている

・言葉が伝わるためには、送り手と受け手の間で、その言葉の特定する意味が共有されていなければならない

・「ちゃんと」や「きちんと」を多用する人物を、あまり信用すべきではない

・よく聞くよく見るよく使う言葉なのに、一皮むけば空っぽの言葉。「カラ言葉」とは、いつもはコミュニケーションのスピードに押されて見過ごされてしまうけれど、立ち止まって考えてみると、「何だっけ?」という言葉

・言葉を正確に伝えようとしない人たちに、共通するのが「受け手の不在」。受け手が見えていなかったり、受け手がどう思おうと知ったことではない。オレの言葉だから、黙って受けていればいいということ

・受け手の冷酷さは、惚れた弱みを弄ぶ異性のそれに似ている

・言葉は発せられたとたん、否応なしに受け手をつくる。その受け手は、自分が話しかけている目の前の人だけとは限らない。しばしば、想定外の受け手もつくり出す

・言葉を受け手に伝えて、うなずかせるまでの一連の作業を成功させて、初めて、受け手を送り手の望む方向へ動かすことができる。つまり、すべては受け手が決めること

・伝わる言葉と伝わらない言葉を隔てるものは、受け手の「ベネフィット」があるかないか。それを聞くと私にどんなトクがあるの?が、「ベネフィット」の正体

・送り手が受け手を、自分の望む方向へ動かそうとするならば、「受け手の言ってほしいことを言ってあげる」とよい

・「使っていないあなた」は、やりたいこともできない。時間もかかる。要領が悪くなる。不自由だ。なんて、不幸なんだと、その不満や、不安の解消を前提とすることを仮定して、作業に入る

・受け手の鼓膜や網膜に届くのは、送り手の言葉に過ぎない。受け手の脳が、その言葉をベネフィットであると感じなければならない



話すことだけが、コミュニケーションではありません。文字も映像もコミュニケーションです。

要するに、脳に伝わって、納得させることができれば、伝達が終了したことになります。そこまで、考えて、言葉に責任を持つことを、著者は求めています。

伝えるということは、単純に見えて、奥が深いことを、改めて思い知らされました。
[ 2011/08/01 08:04 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)