とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『老いへの不安・歳を取りそこねる人たち』春日武彦

老いへの不安 歳を取りそこねる人たち老いへの不安 歳を取りそこねる人たち
(2011/04/07)
春日 武彦

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春日武彦氏は精神科医です。精神分析を踏まえての「老い」に対する意見には、一考の価値があると思います。

この本を読んで、「老い」について、なるほどと思えた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・前向きで溌剌として、笑みを絶やさず、常に頑張る、そのようなキラキラした「若さの神話」を無意識のうちに強制されている

・若さを装うことは、自己肯定につながり、自信をもたらす。初老期を迎えた者が若作りしたがるのは、他人を欺く前に、自分を欺きたいから

・「惰性」は、人間の心を安定させ、安寧を保つ装置。人間は、基本的にマンネリに則って生きている。退屈で変化に乏しくても、マンネリにしがみついている限り、大きな間違いや不幸は生じない

・過去を振り返って、ノスタルジックだとか懐かしいと感じられる事柄の大部分は、惰性やマンネリに彩られていた事物。日々の惰性がストップしたとき、そこに出現するのは異形の現実

・「年寄りが淋しくなったり、可哀相になったりするのは、何も決められなくて、人の言うがままに動かされてしまうから」 (高井有一『老いの巣』)

・老いることは、人生体験の積み重ねであるにもかかわらず、徐々に個性が失われ、雑駁なステレオタイプへと収斂していくプロセスであるかのように考えられている

・若作りは浅ましいことでも、醜態でもない。身の程知らずでなければ、悪あがきでもない。若くありたいと願うほうが自然、といった共通認識が生まれている

・恥という感覚は、無力感に自己嫌悪が注ぎ込まれたときに生ずる。どんなに歳を経ても、どんなに成功体験を重ねても、無力感から脱することはできない

・笑顔と軽々しさと空元気とが混ざり合ったような「アンチエイジング的なもの」には、人生における難儀なものを引き受けずに済まそうとしているかのような印象が付きまとう

・全体として幸福な境遇にはないであろう人たちが、部分だけの極楽であっても「ほんまに、ええなあ」と言い合う妙味には、苦笑しつつも相槌を打てる大らかさがある

・老いを自覚するということには、今までの人生を振り返ることが含まれている。それは、人生の岐路、運命、世の不思議、呆気なさ、遠謀深慮の空しさ、人間の無力感などに対して、感概と虚無を覚え、苦笑を浮かべるといったこと

・老いることは、人生経験を積むことによって「ちょっとやそっとでは動じない」人間になっていくこと。つまり、うっとうしかったり、面倒だったり、厄介だったり、気を滅入らせたりすることへの免疫を獲得していくこと

・世間は、鈍感な者のみが我が世を謳歌できるシステムとなりつつある。歳を取るほど、裏口や楽屋が見えてしまい、なおさら難儀なものを背負いこむことになる

・「ここはひとつ、年寄りの顔に免じて堪えてくれんかのう」と言えば、喧嘩している同士が、しぶしぶ矛先を納める。年寄りとは喧嘩の仲裁ができる人

・歳を取っても、貪欲で、大人げない。つまり、往生際が悪いと、年寄りではなく、中古品の若者や古ぼけた中年としか見えない。歳を経たがゆえの味わいを楽しむのがいい




若作りはしないこと、個性的でいること、自分の考えで動くこと、何事にも動じずにいること。これらの信念を持たないと、老いても、付和雷同の人生を歩むことになると著者は忠告しています。

若いときに、人間を作る努力をしてきた人だけが、老いていくことの楽しさを知り、良き老いを迎えることができるのかもしれません。
[ 2011/07/29 07:23 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『憎国心のすすめ・知痴民族の未来』林秀彦

憎国心のすすめ 知痴民族の未来憎国心のすすめ 知痴民族の未来
(2009/12/05)
林 秀彦

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愛国心を唱える人たちは、「憎国心」という言葉に嫌悪感を持つかもしれません。しかし、読むに従って、この言葉が、日本への叱咤激励を示していることがわかります。

著者の林秀彦氏は、映画やテレビの脚本家として活躍した後、17年間オーストラリアに移住されていました。2005年に日本に帰国後、昨年末、亡くなられました。

海外生活が長かったせいか、日本人の弱点を看破する眼に、並みはずれたものを持っておられます。

この本の中で、日本人について気づかされた点が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・消費経済などとお題目をつけて、欲情を肯定し続け、子供にもその欲を教え込む。それが、日本において、過去から現在も続く。すべては、閉鎖的な人間関係の利害を維持する一点で運営されている

・学校で教わること以外の自国の歴史に無関係でいられる日本社会は恐怖である。聖徳太子も、昔はお札に肖像が刷られていたが、何らかの意図で追放され、可もなし不可もなしの人物になっている

・日本人が世界基準での普遍的人間になることは今後も不可能。そのあまりの特殊で、非普遍性ゆえに、世界的な視野からは排除される以外に道は残っていない

・日本民族は他律的な民族である。それは、縄文から続く本性である。他律とは、自分の意志によるものでなく、他からの命令や束縛によって行動するということ

日本人の本性を、骨の髄まで他律的であることを知っている誰かと、どこかの国と、どこかの民族が、その欠点を巧みにつき、利用し、搾取し、操っている

・日本人は、何でもかんでも、目に見え、肌で触れられるもの以外は認めない。しかも、その認識方法は、見えるまま、感じるままであり、それが意味する中まで追求することをしない。つまり、抽象論はまったく理解できないということ

・日本人は、分析することが大の苦手。分析しないということは、物事と物事の間にある関係を無視するということ。分析せず、関係を考えないということは、疑う能力を一切持ち合せていないことに等しい

・日本人のやること、為すこと、言うことには、意味の伝達と意識の相互確認が含まれていない。意味が中途半端で完結しないから、日本は、やりっぱなし、言いっぱなしの「パナシ社会」になる。つまり、「無責任社会」ということ

・日本は、仏教をばらばらに解体してしまった。それでいて、それを仏教と呼んだ。実は、仏教でもなんでもなく、日本教に過ぎない。道元にしても、日蓮にしても、「ウケ」を狙った。今のテレビの視聴率と何も変わらない

・本来の仏教にある戒律は、全部取っ払った。なぜなら、日本人は横着で、あれをするな、これをするなという禁止が大嫌いだから。厳しくすれば、信者が集まらない。誰も来なければ、お布施も入らず、食い上げになる

・あるがままの姿の確認ではなく、あるべき姿の確認を求め合うことによって、連帯が生まれ、コミュニケーションが生まれ、知性が生まれる。人間には、戒律的な感覚は必要

・世界はお互いの民族が、敵視し合い、軽蔑し合っているほうがノーマルな状態。国際親善というのは、それを基本とした上で、成り立っている

・日本語の本は、明治大正はもとより、数年前のものでも、言葉が変化し、内容も古さを増す。死語になっている単語の割合も、英語、フランス語に比べて極端に多い。日本の過去は歴史になっていない。明日につながる蓄積にならず、ただ消え去る時間に過ぎない

・卑怯を知らずして、どうして勇気がわかるのか。不正がわからなくて、どうして正義がわかるのか。自分の意識内容を整理したいとき、相対的に価値の悪い方を徹底的に分析し、知ること

・美を愛する人は、その前に醜を憎める人。汚いもの、醜いもの、正しくないものに、強い嫌悪感を持てないで、美しいものや正しいものを愛することはできない

・知性とは、日本人が想像するような高尚なものではない。いわば「生活の知恵」。生き残りに不可欠な大脳技術

・日本人同士の初対面の挨拶は、しまりのない笑顔で、自分が無防備で、バカで愚かであることを誇示する。それは、じゃれつく犬がひっくり返って、腹をさらすのと変わらない

・悪知恵にこそ、知性が不可欠になる。弱肉強食の強と弱は、知性による悪知恵の有無である

・知性とは、即興で作られ、思考と行動によって磨かれる「過程」のこと

・常にWHYの鍛練をしていれば、共通項を推理、想像できているから、一種の連鎖反応で、未体験な現象にも、的確に反応できる。それが、侵略、裏切り、弾圧などの恐怖と不条理の連続を経てきた白人たちの日常反応。恐怖心こそ、想像力と推理力を育てる源泉

対決精神がないことは、恥ずべきこと。妥協も恥。個人としても、民族としても。知性とは、対決する姿勢。自分にも他者にも。知性とは妥協を拒むこと。自分にも他者にも

・日本人は、狭い範囲の中で作られている社会に生きているから、権威に弱い。進歩的と自称する人々の間でも、特定権威に対して、まったくだらしなく、ヘナヘナになる

・日本人は、自ら繊細な民族と自惚れ、自己認識を誤っている。日本人が繊細に見えるのは、「他人指向性」人間が極端に多いだけのこと

・日本人ほど、みんなという呼称を使う民族はない。その真意は、自分がいないということ。この「自己幽霊化」は、一見繊細に見えるが、みんなの存在を恐れているということ。日本人の他人指向は、みんなと同じレベルの中で生きるということにすぎない

・生存競争に勝ち残る才能と技術は、知性に負っていて、知識や情報でないことは、肝に銘じておくべき



この本は、誰にもわかりやすく読ませようという意図が全くありません。知性ある人のみが読み進んでくれたらそれでいいと割り切っています。

知性的になろうとしない人には、読むのがつらいですが、日本人の本質を知る上で、欠かせない一冊のように思いました。
[ 2011/07/28 07:45 ] 人生の本 | TB(0) | CM(1)

『ドラッカーに学ぶ・自分の可能性を最大限に引き出す方法』

ドラッカーに学ぶ 自分の可能性を最大限に引き出す方法ドラッカーに学ぶ 自分の可能性を最大限に引き出す方法
(2011/03/04)
ブルース・ローゼンステイン 著

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今から20年ほど前、ドラッカーに熱中していた時期があり、ドラッカーの著書を15冊ほど持っています。その中で、このブログで記事にしたのは「非営利組織の経営」だけです。

ドラッカーは、今や誰もが知る有名人になりすぎて、昔の著書を紹介するだけでなく、新しいドラッカー解説本を読むのもためらっていました。

この本は、ドラッカーの精神がよくあらわれているので、ためらわずに読むことができました。仕事と人生の関係を考える上で、共感できた箇所が15ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・充実した人生を送る人は、二つ以上の世界を持っている。一つだけというのは寂しい

・人は持てる時間やエネルギーを二つ以上のものに振り分けなければならない。違う世界の人と生き、汗を流す。そうすれば、小さな世界の小さな価値観にとらわれずに済む

知識労働者たる者は、若いうちに、非競争的な生活とコミュニティをつくりあげておかなければならない。仕事以外の関心事を育てておく必要がある

・なるべく早いうちに、セカンドキャリア(第二の人生)の助走をすることが、セルフマネジメントのポイント

・成果をあげる能力とは、積み重ねによるもの。必要なことは、すでに上手に行えることを、さらに上手に行えるようになること

・お金、お金と言っている人は気の毒。幸福なのは、成功を手にした後でも、後世に何かを残そうとした人たち

・時間を奪おうとする人や仕事だらけ。優先順位をはっきりさせておかないと、貴重な時間は奪い取られる。まず、無用のことは一切行わないこと

・よき明日を意識するならば、優先順位として、「1.過去ではなく未来を選ぶ」「2.問題ではなく機会に焦点を合わせる」「3.横並びではなく独自性を持つ」「4.無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ」

・大切なのは、人を変えること。ものが見えるようになるお手伝いをすること。見ることは永続する。理論は永続しない

・イエスよりも、ノーと言えるかで、成果が決まる。仕事ができる人とは、「それは私の仕事ではない」と言える人たちである

・人類史上初めて、個が組織よりも長命になった。そこでまったく新しい問題が生まれた。セカンドキャリアをどうするかである

・企業人、医師等で、すでに成功した人たちは、社会的企業家になること。仕事は好きだが、もはや心躍るものではない人は、新しい仕事、特に非営利の仕事を始めたらいい

・人に教えることほど、自らの勉強になることはない。それと同様に、人の自己啓発を助けることほど、自らの自己啓発に役立つことはない

・情報化時代にあっては、いかなる企業も、学ぶ組織にならなければならない。同時に、教える組織にもならなければならない

・知識労働の生産性を向上させるには、継続して学ばせ、継続して人に教えさせなければならない



寿命が長くなった今、分別のある中高年、老人は、何をすべきかが、この本に数多く示唆されています。

既得、既存のものに、しがみつくだけで、歳だけを重ねていくのは、むなしいものです。ドラッカーは、知識人の未来を、真剣に考えた、世界で稀有の人だったように思います。
[ 2011/07/26 08:31 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『「交渉力」を強くする』藤沢晃治

「交渉力」を強くする (ブルーバックス)「交渉力」を強くする (ブルーバックス)
(2010/12/21)
藤沢 晃治

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交渉が苦手な人は多いと思います。以前、自分の経験から「値引き交渉力」という記事を書きました。

この本には、値引き交渉だけでなく、すべての交渉事に関することが、書き記されています。交渉が苦手なために、人と会うのが億劫になっている人は、是非、この本を読んで、苦手を克服してほしいものです。

私自身、この本の中で、交渉事で、勉強になった箇所が、20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・交渉がもっとも苦手な人とは、いわゆる「お人好し」。正直すぎて本音を隠せない、他人の話を疑わない、心にもない演技ができないという人

・演技力は交渉の必需品。演技せず正直に振る舞っていては、交渉で負け続ける

本音を隠せないのは、次に投げる球種や球筋を打者に伝える投手のようなもの。あるいは、狙い球を投手に知らしてしまう打者のようなもの。交渉で損をするのは当然

・主張に説明力がなければ、交渉で成果を挙げることはできない。説明の中で、最も重要なのは「論理力」。説得力のある主張ができない人は、説明力というよりも論理力が欠けていることが多い

・相手を追い込みすぎてしまうことも、交渉失敗の原因になる。主張が正当でも、攻めすぎれば、相手の「反発」という感情のスイッチが入ってしまう

・交渉では、相手が嫌がること、喜ぶことを正しく推察する「相手の視点」が必要。「相手の視点」で考えられなかったことが、交渉の失敗原因に多い

・相手が喜ぶような好条件で妥結しそうな印象を与えること。つまり、相手の期待値を上げることは、交渉妥結のハードルを上げ、自らの首を絞めることになる

・交渉は共同作業。交渉で目指すものは、お互いに「自己利益の最大化」であると同時に、「相手が同意する」という平和的解決でなければならない

・スポーツやゲームでの「騙し」や「脅し」は、巧みな技として、むしろ賞賛される。同じような交渉の場でも、「騙し」や「脅し」のテクニックは許される。自分にはなんの損失もないように思わせるのが「騙し」。発生するであろう相手の損失を指摘するのが「脅し」

・交渉では、お互いに、無意識に「公平性の原則」を守っている。しかし、交渉の公平性とは、「ルールの公平性」であって、「結果の公平性」ではない。その意味で、「脅し」や「騙し」があっても、それを隠す「表面的な公平性の原則」が「公平性の原則」ということ

欲しがる者は「お願いする側」であり、欲しがらない者は「お願いされる側」。欲しがる者は、交渉の「弱者」。欲しがらない者は「強者」というのが原則

・相手より先に譲渡すると、自ら「私は交渉成立したがっています」と宣言するようなもの。譲歩したい気持ちをできるだけ抑えること

・相手の主張を突き崩したい場合は、その「主張」自体ではなく、その主張の土台となっている「根拠」の非論理性を攻める。支えていた土台(根拠)を崩された建物(主張)は、もろくも崩れ落ちる

・満足度は事前の期待の程度(期待値)に大きく左右されるので、交渉を上手に進めるには、相手の期待値を下げること

吹っかけることは、交渉の常套手段。当然、相手にも見透かされる。それでも、下手な交渉と比較すれば、吹っかけたほうが、交渉を有利にすすめられる

・相手が、その要求を飲まない場合、それより「大きな痛み」が振りかかることを伝えるのが、交渉における「脅し」

・期限を設けて、あさらせることは、相手の本音を探る有効な手段でもある

・「聞いてもらいたいなら、先に聞け」が大原則。「そうですね」「おっしゃるとおり」「一理ある」と、相手の主張に耳を傾け、共感の態度を示すこと。また、自分にできる譲歩案を相手に尋ねることも、交渉の基本戦略

・相手に譲歩を求める場合は、相手の譲歩案を自ら提案すること。相手に譲歩案を考えさせると、相手側に有利に傾くことが多くなる

・自分の譲歩は、「痛いふり」して、相手に高く売りつける。そのとき、本当に痛い譲歩案を隠しておくのが、交渉のテクニック

・譲歩しようとするとき、「絞り切った雑巾」であることを演ずる必要がある。つまり、「もうこれ以上、譲歩を絞り出すことはできない」と相手に感じさせること。たとえ、自分が勝っていても、相手に「勝った!」と思わせること



交渉事は、自分が完全に有利なように進めることはできません。それでは、社会の眼が許してくれません。ところが、少しだけ、自分に有利に導くことができます。それは、あくまで、相手に気づかれない錯覚の範囲内です。

その錯覚が、積み重なると、大きな利益として跳ね返ってきます。逆に錯覚を被ると、大きな損失として跳ね返ってきます。これが、交渉の本質ではないでしょうか。

そうならないためには、この本を読んで、知的武装をしておくことも大事ではないでしょうか。
[ 2011/07/25 08:43 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『世界を救う13人のおばあちゃんの言葉』キャロル・シェーファー

世界を救う13人のおばあちゃんの言葉世界を救う13人のおばあちゃんの言葉
(2007/05/25)
キャロル・シェーファー

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世界の先住民族の女性の長老たちが、ニューヨークに一堂に会し、人類や地球の未来について語り合った本です。

世界中の先住民共通の魂、精神、生命観を知ることができる貴重な書です。この本を読み、興味深かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・私が説いているのは「持ちつ持たれつ」の互恵主義。私たち2本足は、いつも得るばかりで、滅多に与えない。互いに与えあわなければ、自然のバランスは乱れる (タケルマシレッツ族・オレゴン州)

・私の教えは、「人であれ」ということ、他人を尊ぶこと、そして心を自由にすること (マヤ族・中央アメリカ)

・背伸びをするのではなく、自分が知っている範囲を認めることが肝心。等身大以上の自分になろうとすると、大抵の場合、本当に欲しいものが目の前にあっても、それに気づかない (ユピック・北極圏)

・受け入れることを学び、手放すことを学んだとき、人は本当に人になる (ユピック・北極圏)

・この世界で間違っているのは、自分のことをたいそう偉いと思っている人がいるということ (サントダイミ・ブラジル)

過去と向き合うこと、過去がどういうものかについて、正直になることが必要不可欠。もし、過去を正直に見ないならば、ここまで私たちを連れてきてくれた力に頼ることができない。記憶の欠如は憂鬱の根源 (アフリカ系アメリカ人)

・回復する明るい力は、悠久の太古から持ち堪えてきた自分たちの文化の直接的な結果である (チェロキー族・オクラホマ州)

・新しい体験をする度に、私たちは自分自身を定義し直す力を持っている。だから、過去にどのような過ちを犯したとしても、いつだって変化することができる (ホピ族・アリゾナ州)

・自分は大人だから、たくさんのことを知っていると考えがちだが、それでも学び続けなければならない。この世の出来事は、すべて何らかの理由があって起きているから (マヤ族・中央アメリカ)

・教義や規則ではなく、人間の経験の偉大なる多様性から何を学び、どう生かしていくかを重視することで、文明を復興することができる (マヤ族・中央アメリカ)

・教育は何かの才能や望ましい資質を身につけるためのものではない。良き意図を持ち、肯定的な考えを持つようにさせるのが教育 (チベット人)

・世界中の暴力の連鎖を断ち切るには、加害者の心の傷を癒すことも必要。それには、過去の痛みと誠実に向き合い、過去をしっかりと踏まえて生きていくこと (オグラララコタ族・サウスダコダ州)

・感情は、胸の中に押し込めるのではなく、息を吐くように吐き出す必要がある (ユピック・北極圏)

・毎日ほんのわずかな時間でも人生の目的に心を向けるようにすれば、私たちの生活はもっとバランスのとれたものになる (オグラララコタ族・サウスダコダ州)



先住民族の女性の言葉は、先進国の男性の言葉に比べ、論理的ではありませんが、本能から発せられた声のように聞こえてきます。

科学的でないこと、論理的でないことも受け容れたら、その情緒的、感情的な言葉の中には、地球や人類を救うヒントが多くあるように思います。

時には、大地から湧き出た、切実な教えに、耳を傾けてみることも大事ではないでしょうか。
[ 2011/07/22 07:23 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『勝負強さの研究-ここ一番に負けない100のポイント』折茂鉄矢

勝負強さの研究―ここ一番に負けない100のポイント (PHP文庫 オ 2-1)勝負強さの研究―ここ一番に負けない100のポイント (PHP文庫 オ 2-1)
(1984/11)
折茂 鉄矢

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この本は、勝負のあや勝負師の条件などが深く解説されている良書です。25年以上前の出版ですが、全く古く感じません。

ビジネスや人生の局面など、ここ一番に強くなりたいと考えている方には、最適の本かもしれません。

勝負強さの秘密を知る上で、役に立った箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



勝負強い人の共通項とは、「1.実力者である」「2.精神力が強い」「3.努力家である」「4.守備に強い」「5.待つ、休むを知る」「6.勝利への執念」「7.不評さえ買う」「8.派手より地味」「9.自在の自然体」「10.運の強さ」

・「人は生きねばならぬ。生きるために戦わねばならぬ。名は揚げねばならぬ。金はもうけねばならぬ。命がけの勝負はしなければならぬ」 (徳富蘆花)

・「われに勝ち、敵に勝ち、味方に勝つ。これを武将の三勝という」 (楠木正成)

・ワルたちのたくましい魂は鬼神をもひしぐ。強い精神は強い運を呼び、罰が当たるどころか、「人盛んなるときは天に勝つ」を地でいく。そして、時という妙薬があらゆる毒を消し、いつかワルは正義に、悪運は好運へと変わる

・正邪を問わず、神様は気魄と情熱を持つ人間が好きである

・「賭博に熱中した厭世主義者はいない」 (芥川龍之介)

勝負強さとは、「1.勝機をつくる力がある」「2.確実にモノにする」「3.逆境にしぶとい」「4.接戦、乱戦に強い」「5.終盤に本領を発揮」「6.ここ一番に強い」「7.プラスアルファの力を発揮する」こと

・勝負師にとって、喜怒哀楽の情は敵。興奮、動揺、アガルといったことのないタフな神経が、ここ一番で実力を出し切れるための条件

・勝負強さのベースは自信につきる。いざという時に実力を発揮するには、いざという場面に馴れておくのが一番

・名将は、刀を交える前に、敵を徹底的に計算し、勝てるとみれば、初めて戦う。しかも、勝つための準備を尽くしてから開戦するから、自然と勝つ。遮二無二体当たりしても効果はない。計画、根回し、段取りといった事前段階が大切

・勝負師は「読み」でリードを奪う。前夜からの実績、得意技、性格などによって、相手の出方を読み、効果的な対抗策を練る。試合前には、体調、表情から調子を探る。あらゆる可能性を考えて何通りもの展開を読む

・自分の得意を生かして成功する人。ゴールを老年期において大輪の花を咲かせる人。人生いろいろだが、真の王者は、コンスタントに好調を持続できるアベレージマン

・奥の手を秘めておく。勝負師の真価は土壇場でどう燃えるかにある。負けは自分であきらめた瞬間に決まる。最後まであきらめてはいけない

・ベテランの力士が負けがこむのは体力の衰えではない。若い力士と対戦するとき、知らないうちにカッコをつけて、受けて立つようになる。これなら負けても体裁が悪くないし、自分に対する言いわけにもなる。力一杯やるのがテレ臭い。体力の衰えはその後からくる

・年がいもなくと自分の年齢を意識することが闘志に水を差す。他人の目や評判から自由に振る舞う。プライドや虚栄心ばかり人並み以上強い男に、しぶとさしたたかさは望めない。カッコいい勝ち方、勝ちっぷりなど無意味

・勝負事というのは、本質的に孤独な戦い。「黙って見ている強い奴」は、決して、余計な口を出さない

・勝負師は80点主義。現実を直視して対応する融通性があるからしぶとい。カリカリして最善手を目指すより、常に安定して次善手を選ぶゆとりを持つ。だから、多少のミスや汚点は拭って立ち直れる

・敵のリズムを知り、それと「逆の拍子」「対立する拍子」「外す拍子」で立ち向かう。この「背く拍子」の考え方は、相手に得意の場を取らせないことに通じる

・暴れたければ暴れさせ、攻撃してくれば面倒を見てやる。相次ぐ敵の仕掛けを丹念に応接してやって、やがて相手が力尽きて自滅するのを待つ。これを「受けつぶし」と言う

・ベテラン登山家は、天候がくずれるとわかれば、途中まで登っていても、降りて引き返す勇気を持っている。先行き悪材料、見通し不透明のまま勝負をかける勝負師はいない。待つ、降りる、休むは高等戦術と心得ること

・「勝ち誇る兵は、自己の力の幾十倍もの力を発揮する。敗軍の兵は自信を失い、実力の幾十分の一も発揮できない」 (クラウゼウィッツ)

・「敵の待ち構えているところに出ていって何で勝てようか。武士は思いもよらぬことをやり、他の者から見透かされないのが本当の大将である」 (織田信長)

・人の一生には、「炎の時」と「灰の時」がある。「炎の時」は、多少のムリをしてもうまくいくし、ヘマをやっても軽い事態で収拾できる。「灰の時」は、やることなすこと裏目に出るから、じっと控えて時を待つ。人間が失敗するのは、この時期の過ごし方が原因

・将棋の盤外戦で使われる心理戦法は、「1.ハッタリをきかせる」「2.油断を誘う」「3.怒らせる」「4.イライラさせる」「5.クサらせる」。これは相手の実力が上の場合には、効果が薄い

・ナポレオンは新戦術と大砲を駆使して、戦争のプロである古い将軍を一掃してしまった。定石は破られて変わっていく。新戦法を創造する者は勝つ。ここ一番という一発勝負となれば、新兵器の威力は格別である



勝負強いことは、戦争、スポーツ、ギャンブルだけに限らず、人生のさまざまな部分において、必要になります。

人生とは、さまざまな局面で、勝ったか負けたかの積み重ねで決まるように思います。

年齢に関係なく、通算勝ち星を増やしていくことが、その後の人生を豊かにするのではないでしょうか。
[ 2011/07/21 07:30 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『運が味方につく人つかない人-幸田露伴「努力論」を読む』渡部昇一

運が味方につく人つかない人―幸田露伴『努力論』を読む (知的生きかた文庫)運が味方につく人つかない人―幸田露伴『努力論』を読む (知的生きかた文庫)
(2001/09)
幸田 露伴

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五重塔」の小説で有名な幸田露伴が「努力論」を書いたのは、大正二年(約90年前)のことです。自己啓発書の走りのような存在だと思います。

昔の人の自己実現の書とは、どんなものなのか。興味があって、手に取りました。共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・運命が前もって決められていると考えるのは、愚の骨頂としかいいようがない。薄弱で貧困な意志、感情、思想こそが悪運を招き、幸運を追いやってしまう

・成功者は、自分の意志、知慮、勤勉、仁徳の力によって好結果を得たと信じている。失敗者は、自分には罪はなく、みな運命のせいで苦しい目に遭っていると嘆いている。成功者は「自己の力」として運命を解釈し、失敗者は「運命の力」として自己を解釈する

・自らを責めることは、自らの欠陥を補うのに効果がある。同時に、自分の欠陥を補っていくほど、自分を成功の有資格者にする

・幸福に遇える人は、「惜福」(福を使い果たしたり、取り尽くしてしまわない)の工夫ができる人。有り金を浪費して使い果たすのは惜福の知恵がない。正当なこと以外には無駄づかいしないのが惜福

・人の上に立つ者は、「分福」(福を分け与える)の工夫がなければならない。人の下にいる者は、「惜福」の工夫がなければならない

・「植福」とは、自分の力・情・智をもって、人の世に幸福をもたらす物質・清趣・知識を提供すること

・「有福」は先祖のおかげで、評価すべきでない。「惜福」は少し尊敬していい。「分福」は、さらに尊敬していい。「植福」を敬愛しなければならない

・教育の標的は、「」「」「」「」の四つだけ。この月並みな四つの言葉は、われわれを正しく導いてくれる

・自らを大きくする心を捨ててはならない。努めて視野を広げ、心境を開拓し、「知」を広くし「識」を豊かにして「自己の知的拡大の努力」を続けるべき

・学業成績の悪い学生を見ると、それらの多くは、聡明さに欠けているのではなく、気が散り、心が乱れがちな性格の持ち主

・つまらぬことに対して、全気全念をもって立ち向かう健全純善な気の習慣は、やがて確たる偉業を打ち立てることにつながる

・努力もよいことに違いないが、気の張りは努力にも増して好ましいこと

・多人数の集会は、優良な人よりも、そうでない資質の人のほうが多く、偏った二、三人の空飛で狂妄な言動に引きずられて共鳴作用を起こす。一つの悪気、一つの凶気が満場を覆って、善気を圧しつぶす。凝る気も一変すれば、暴ぶ気になる

・いかに優れた能力を持っている人でも、自信のないところに勇気は芽生えない。勇気は自信の堆積によって増進される

・世の成功者は、その人の天分才気が卓越していたからというよりは、自分が決めたことを遂行するという習慣が実を結んだもの



文章は少し難解ですが、言わんとすることは、現代の自己啓発書と何ら変わりません。

「努力論」という堅苦しいタイトルですが、今も昔も変わらず、成功する人とは、どういう人かを知るには、大事な本ではないでしょうか。
[ 2011/07/19 08:21 ] 渡部昇一・本 | TB(0) | CM(0)

『魚の行動習性を利用する・釣り入門』川村軍蔵

魚の行動習性を利用する 釣り入門 (ブルーバックス)魚の行動習性を利用する 釣り入門 (ブルーバックス)
(2011/04/21)
川村 軍蔵

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この本は、魚目線で、釣りを研究した画期的な書です。プロの漁師もビックリするような最新の研究成果が満載です。

日本は、海域面積も含めると、世界有数の国土面積を有しています。この豊かな資産を、食糧資源だけでなく、趣味やスポーツにも有効活用すれば、もっと豊かに暮らすことが可能です。

この本の中で、釣りの楽しさをより知った箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「1日幸せでいたいなら、床屋に行きなさい。1週間幸せでいたいなら、結婚しなさい。1ヶ月幸せでいたいなら、良い馬を買いなさい。1年間幸せでいたいなら、新しい家を建てなさい。もし一生幸せでいたいなら、釣りを覚えなさい」 (イギリスの諺)

・魚は常に水鳥の襲撃に備えているので、水面上で動く見慣れない物を、本能的に警戒する。その一方で、渓流で水面に落ちる枯れ葉は警戒しない。水中の魚には、水面上の景色がよく見えている。魚には、釣り人の姿もよく見えている

魚の視野が広いのは、眼が顔の横にあって、眼が飛び出しているから。同じような眼を持っている、馬、牛、ウサギなどの草食性の哺乳動物や鳥も、広い視野を持っている

・深海魚以外の、どの魚も色を識別している。魚は、視細胞(錐体)の種類が4種類。人は3種類。魚は紫外線を色光として見ることができるので、人より色の識別能力は優れている。但し、鯨、イルカ、アザラシなどの海産哺乳類は1種類の錐体なので、色盲

・魚は匂いの強さの微妙な差を検出して、次第に匂いの強い方に向かい、見つけた餌に食いつく。撒き餌は液状であれ、固型であれ、水中で匂いを拡散するものであればよい

・水中で魚を誘引する匂い物質として、アミノ酸は有効。集魚剤として、動物性では、オキアミエキス、さなぎ。植物性では、ニンニクも有効

・満腹した魚は、胃内容物量が6~7割程度になる2時間後に、再び撒き餌に興味を示すようになる

・魚種を問わず、どんな魚でも「おいしそう」と感じる餌は、海産魚にも淡水魚にも使えるのがミミズ。海水魚には、カタクチイワシの活き餌

活き餌の動きは、掛け方(鼻掛け、頭頂部掛け、背掛け、尾柄部掛け)によって微妙に違い、それが釣果に影響する

魚型のハードルアーは、種類によって、できる渦は複雑になる。ローリング(前から見て左右に傾く揺れ)、ヨーイング(頭を左右に振る揺れ)、ピッチング(頭を上下する縦揺れ)の三種を操るのが、釣り人の曳きのテクニック

魚が集まる場所は、餌が豊富なところ。漁場では、暖流と寒流が衝突して潮目をつくる海域。身近な磯、渓流、湖でも、流れによって餌が集まる場所

干満の差は場所によって違う。日本で、大きなところは、有明海の島原湾で4.9m。中くらいが、東京湾で1.5m。日本海は小さく、新潟で0.4m、佐渡で0.2m

・魚は潮の動きに敏感。潮の流れが止まると、食いも止まる。船釣りの潮回りは「上げ七分、下げ三分」(干潮から70%の水位と満潮から30%の水位)。磯釣りの潮回りは「上げ三分、下げ七分」がよく釣れる

・魚の摂食の日周期には、昼夜の明暗周期も影響する。ハマチが摂食したアジの数では、明け方5時~9時の時間帯が40%近い。早朝の潮が動く時が、最好調の釣り時となる

・防波堤の付着生物(環虫類、甲殻類、海藻など)は、磯魚にとって、重要な餌供給源。防波堤に衝突した潮境に餌生物が集積する場所と、潮流の内側に発生する渦流場所も釣るポイント

・魚は太陽の位置を指標にして、方位を知る能力があり、太陽コンパス地図を持っている。もう一つ、鼻先に磁気感覚器があり、磁気コンパスが織り込まれた地図も持っている

・海釣り公園のほとんどの釣り台が白く塗装されているが、魚の集まる釣り台の色は、青か緑。青と緑は、魚にとって遠くから見えにくい色

・渓流で魚が身を潜めている隠れ場は、倒木の下と岩の裏。魚は流れてきた餌を食うために、流れの中に出てくる。晴天時には、黒っぽい体色の魚は岩陰にいるが、銀色の魚は、日陰で目立ってしまうので、岩陰には入らない

・餌の直前に達したときの最大遊泳速力は、オオクチバスで秒速100cm、ブルーギルで20cm。餌が吸い込まれる最大の速さは、二種の魚共に、秒速100cm。まさに、瞬間的に餌を吸いこんで摂っている

・竿の全長を10等分して、先端の2だけ曲がる竿を8・2調子(渓流竿、船竿)。3だけ曲がる竿を7・3調子(清流竿、投げ竿、磯竿)。4だけ曲がる竿を6・4調子(ヘラ竿、磯大物竿)。最近のカーボンロッドやグラスロッドは全体がほどよく曲がる

・最新の魚群探知機は、水温を表示したり、魚群を音で知らせたり、海底が浅くなると警告音を発する。GPS機能と記憶装置を備えた魚探を使い、魚群分布情報を独自に有している漁船が多くなった

・魚種によって違うが、魚には、「生存可能水温」(5~30℃)「成長適水温」(18~28℃)「摂食減少水温」(15℃以下、26℃以上)、「摂食停止水温」(10℃)がある

・魚は溶存酸素が2PPMでは窒息する。5PPM以上で正常に棲息できる。活魚運搬車やエアレーションで過剰に酸素供給して13PPMを超えると、有害である。人間が、水をおいしく感じる酸素量も、魚の溶存酸素量と同じくらい

・魚を買う時の鮮度の見分け方は、「眼が澄んでいる」「エラの色が鮮やかな赤かピンク」「体を触って張りがある」こと

・魚を一番おいしく食べられるのは、死後硬直が始まってから終わるまで。活き締め直後は、身がコリコリして歯ごたえはあるが、味はほとんどない



今、海から1.5㎞のところに住んでいます。私は、初心者向けのアジのサビキ釣りしかしていませんが、近所のおじいさんたちは、投げ釣りをよくされています。

晴耕雨読ならぬ暖漁寒読といったこともあれば、定年後の趣味の幅が広がりそうに思います。

身近な楽しみとして、釣りを覚えていたら、一生幸せになれるのではないでしょうか。
[ 2011/07/15 06:55 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『その科学が成功を決める』リチャード・ワイズマン

その科学が成功を決めるその科学が成功を決める
(2010/01/26)
リチャード・ワイズマン

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この本は、自己啓発の真偽を確かめるために、各種データを収集し、具体的に分析しています。

幸福、成功、自己実現のために、間違った行動を起こさないように、注意を促す書でもあります。

この本を読み、興味深い箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・名声や財産に対する人間の適応能力のおかげで、昨日の贅沢も、たちまち今日は当たり前に、そして明日には思い出になってしまう

・人の幸福感の50%は遺伝で決まる。そして、10%は急には変えられない環境(教育、収入、既婚独身など)で決まる。残り40%は、日常的な行動や身の回りの人たちをどう受け止めるかによって変わる。つまり、しあわせ度は数秒で大幅にアップする

・嫌な体験を相手に話しても、何かが変わった形跡はなかった。過去の苦痛を癒し、マイナス思考を抑えつけるには、「打ち明け日記」を書くといい

・物質主義の人は、お金を人のためより、自分のために約3倍使い、自己中心の傾向がある。お金を自分のために使うと、幸福感は薄くなる

・物質主義のルーツは幼年時代にあり、主に自尊心の欠如から生まれる

・しあわせを求めるなら、貴重なお金を体験に使う(食事に行く、コンサート、映画に行く、旅行に行く、ダンスを習うなど)こと

・苦労を新鮮な刺激と考えること。しあわせ度を高めるためには、環境的変化より、意図的変化を選ぶほうがいい。苦労をいとわずに、新しい趣味、大きな計画、初めてのスポーツに挑戦すること

・拾った財布が戻る要素の実験で、財布の中に入れた「笑っている赤ちゃんの写真」は35%が戻り、以下順に、「しあわせな家族の写真」21%、「かわいい子犬の写真」19%、「老夫婦の写真」11%。人間には、赤ちゃんを見れば、助けたくなるメカニズムが働く

・自分が死後、どのように記憶されたいかを考えると、人生の様々な場面で指針ができる。これによって、長期の目標を持ち、その目標をどこまで実現できたかが測れるようになる。自分の葬儀における弔辞の原稿を書いてみること

・わずか数分で、相手の心をとらえなければいけないデートの場面では、相手のことを聞き出せるよう、独創的で意表をつく面白い質問を用意しておくこと

・祈るときの内容(お金や健康など)を訊ねた結果、他の人のために祈ることが、祈り手の経済的ストレスを軽くし、幸福感を高めることがわかった。物について祈っても、その御利益はなかった

・犬を飼っている人は、長生きし、ストレスの少ない生活が送れている。犬を飼えば、犬を飼う人とのふれあいが増える。ほかの人とふれあうことが、人間の幸福感と健康の源。犬が人間同士を効果的に結びつけ、飼い主のしあわせに大きく貢献している

・動物のビデオを見るだけで、実際に動物がそばにいる場合と同じ癒し効果がある。心拍数と血圧を一分足らずで下げたいときは、テレビをつけ、愛らしい動物の映像を見るといい

・夫婦が一緒にゴールを目指し、胸の踊る新鮮な活動を日常的に行っていると、愛のある関係が長続きする。一緒に人生の障害物を乗り越えれば、夫婦はいつまでも仲睦まじくいられる

・親の子に対するほめ言葉は、必ずしもいい結果を生まない。ほめるなら、子供の努力や集中力、時間の使い方をほめるほうが、はるかに効果がある

・人間の性格は複雑というのは幻想。人の性格の違いは、5つの基本的な因子「1.開放性」「2.勤勉性」「3.外向性」「4.協調性」「5.情緒安定性」の違いにすぎない

魚の飼い主は最も幸福感が強かった。犬の飼い主は最も社交性があった。猫の飼い主は最も頼りになると同時に感受性が高かった。爬虫類の飼い主は最も独立心が旺盛だった



この本には、心理科学の実験及びデータで、なるほどと思えること、まさかと思えることが、数多く掲載されています。

幸福や成功を決める要因を探り、知るためには、役に立つ書ではないかと思います。
[ 2011/07/14 06:46 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『大江戸えねるぎー事情』石川英輔

大江戸えねるぎ-事情 (講談社文庫)大江戸えねるぎ-事情 (講談社文庫)
(1993/07/06)
石川 英輔

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節電に向き合わなければいけなくなっています。ところで、昔はどうだったのか?それらを詳しく知りたくて、この本を手にしました。

江戸時代のエネルギーはどう確保されていたのか、どれくらいの値段であったのか、庶民はどう節約していたのか。この本を読めば、自然エネルギーを余すところなく有効に、無駄なく使っていた当時のシステムに学べます。

参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・照明器具の行灯に使われたのは、菜種油(食用油兼用)で、米より高価だった。低所得者は、菜種油の半値で買える魚油を使ったが、燃える時に、くさい匂いが出るのが欠点だった。行灯より明るい(3倍から5倍程度)照明が必要な場合はローソクが使われた

・昔の水道は、地下の配水管の中を流れる「自然流下式」だから、水を使うときは、「水道枡」や「水道井戸」から、つるべを落として汲み上げた。神田上水の給水域に枡の数は3600以上。30~40m四方に一カ所の割合で水道が汲めるようになっていた

・江戸の水道は延長され、地下に埋められた配水管延長が150㎞に及んだ。水銀と呼ばれた水道料金は、町人の場合、表通りの土地の間口に応じて地主が払うのが原則。借家人は支払う必要はなかった。風呂屋や料理屋には大口逓減制度があり、割安になった

・冷凍技術も氷もない時代だったが、活場という大きな生簀があちこちの海中に設けてあった。とってきた魚を海の中の生簀に生かしておいたので、少しぐらい不漁が続いても、必要に応じて出荷できた

・江戸では年間50万klもの下肥が、近郊農家に運び出された。厨芥(台所から出るゴミ)も、野菜の促成栽培用に使われた。家畜のいない農家では、街道筋や宿場へ出て馬糞を集めたりした

・江戸時代の市場に流通していた衣服の大部分は古着だった。自動織機の発明前の明治30年までは、古着こそが衣類の主流であり、享保年間の江戸には、千軒以上もの古着屋があった

・体を冷やしたい時は行水をした。たらいに水を張って、庭の隅などの日陰で浴びる。冷たい井戸水が汲める所ではさっぱりするが、ぬるま湯で浴びても、後が涼しくなる

囲炉裏は多目的の暖炉。火を使って、暖房、乾燥、炊事、それに照明までできたから、驚くほど合理的だった。さらに、煙に含まれるタールが防腐剤としても作用した

湯屋の経営者は、買入れる薪の量を少しでも減らすために、木拾いに力を入れた。結果として、ゴミの始末もつき、市民たちも安く風呂に入ることができた

・江戸の本の流通は主力が貸本屋だった。貸本屋は一人が平均170~180軒の得意先があり、江戸だけで、貸本を借りる家が10万軒もあった

・子供の教科書(往来物)は、現在のように一年で捨てるのではなく、十年以上使うのが普通であった

・上方の酒造地域では、江戸時代後半になると、水車による精米が普及した。水車の臼一つで、一日に60kgの精米ができた

・上方からの酒が陸路を使わなかったのは、海上運輸と陸上運輸では運べる量が桁違いだったから。米が一千石積める千石船を馬で運ぼうとすれば、1250頭必要で、これでは、酒の値段より輸送費のほうがはるかに高くなってしまう

・江戸時代以後、塩は、海水を人力で塩田まで汲み揚げなくてもいい「入浜式」(潮の干満の差が大きい土地で、満潮時に海水を塩田に引き込む方法)で作られるようになった

・薩摩や長州から出てきた成り上がりの政治家たちは、木や花に関心もなく、工業と軍備の時代にむしろ有害となる植物を公共の場から追放し、美しい江戸の景観を破壊していった。この方針は、明治政府の後継者である歴代政権によって強化され、現在に到っている

・京都や大坂など、上方の上流階級によって洗練されてきた自然の接し方である「遊山」(日帰り近郊ピクニック)が、金はなくても暇だけはある江戸の町人に拡がっていった。江戸時代中期以降、武士は町人よりはるかに貧乏になり、この遊山文化の担い手となった

・100~120万人いた江戸住民は、下肥を農家にお願いして「持って行ってもらった」のではなく、ちゃんと金を取って売り渡していた。商品として、立派に流通していたことになる

・紙を集める屑屋のほかに、古鉄買い専門の商人がいた。鍋、包丁などの鉄製品だけでなく、銅や真鍮などの金属類なら、どんな物でも買い漁った

・かまどで燃やした灰でさえ、「灰買い」が廻って買い集めた。昔の灰は純粋な植物性だから、良いカリ肥料になった



この本を読むと、江戸時代にリサイクル業レンタル業が、立派に商売として成立していたことがわかり、驚きでした。

このようなサービス業が発達していたのは、庶民がエネルギーを大切にしただけでなく、それらの職業につく人への差別感情があまりなかったからかもしれません。江戸時代は、今以上に、町人が住みやすかったのではないでしょうか。
[ 2011/07/12 07:13 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『価格戦争は暴走する』エレン・ラペル・シェル

価格戦争は暴走する価格戦争は暴走する
(2010/12/11)
エレン・ラペル・シェル

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人はなぜ安売りが好きなのか?価格戦争はなぜ起きるのか?価格戦争によって、どういう弊害が起きているのか?を解明しようとする書です。

価格の本質、つまり、お金の本質を知ることができます。

この本を読んで参考になった箇所が15ほどあります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・中国の工場労働者を搾取することと、アメリカの中流層が縮小していることは、表裏一体の関係

・「安値の経済」が技術革新を妨げ、かつては盛んだった産業の衰退を促し、職人技という誇るべき財産を消滅させかけている

・小説でも演劇でも映画でも、安物好きのしみったれは悪役か笑われ役である。それなのに、誰もが「安値」に引きつけられる。安値は、欲望を満たす夢をかなえてくれる

・「今すぐ買わないと、逃してしまう」。期間限定セールは、人の感情をひどく高ぶらせることによって機能する。その商品が必要でなくても、欲しくなくても、制限時間そのものが、今すぐ行動する理由を与える

・人々はお金を善と見なしている。金を手放さなければならないことは悪である

・大幅な安売りを提示されたものほど、より魅力的に思う

・オークションでは、買い手は競ること自体からかなりの喜びを得ている。その喜びは、望みの品を低価格で入手することから得られる喜びよりも大きい

・大半の人は、自分に益のある価格なら、ほぼどんなものでも、公正な価格と見なしている

・あらゆるゲームと同じように、安売りゲームの目的も勝つことにある。そして、安売りゲームに関しては、たとえ実際にはどれだけ負けていようとも、誰もが勝者の気分を味わう

・値引きは、数学的根拠ではなく、その衝撃を五臓六腑で感じ取るもの。セックスやアルコールや麻薬のように、値引きは脳の快楽中枢を侵し、分別を失わせる。人は値引きにとられて、過ちを犯す

・価格のインフレは消費者にとって、実は大したことではないのに対し、賃金デフレと失業は、多くの人に苦境をもたらす。首切りや給料および手当のカットは、あてどのない長くて暗い道のりになる

・貧困層は、安売り業界から得られる利益以上に、安売り業界に利益を与えている

・低価格要因が悪循環を生み、労働者は困窮化し、富裕層への社会的移動が達成不可能になる。こうして生まれた低賃金労働者は低所得者となり、低価格製品を追い求める



同じものなら、人は安い方を買うに決まっています。価格競争は、デフレを助長するとわかっていても、この循環を止めることは難しそうです。

根深い現実にわれわれはどう対処していくのかを問われているように思えた書でした。
[ 2011/07/11 10:55 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『快楽の哲学-より豊かに生きるために』木原武一

快楽の哲学―より豊かに生きるために (NHKブックス No.1166)快楽の哲学―より豊かに生きるために (NHKブックス No.1166)
(2010/10/27)
木原 武一

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木原武一氏の著書を紹介するのは、「ゲーテに学ぶ幸福術」に次ぎ、2冊目です。

著者は、哲学的な本を数多く出版されています。その深い内容に、眼を開かされることが度々です。

この本も、幸せに生きるためにどうすればいいのかを、真正面から考察されています。参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・煩わしいことを考えなくてよい、不満がない、不足しているものがない、欲しいものがない、痛みがない。「ある」ではなく、「ない」という否定表現によって、幸福は示され、生きているという実感に関わり合う

・欲望ないし願望が満たされていないからこそ、それを求めて努力する。この当然にして自然の成行きのなかにこそ、幸福がある。幸福な人が幸福を求めるはずがない。不幸の自覚が幸福の第一歩である

・宗教は、理屈抜きに信じることによって成り立つのに対して、哲学は理屈を通して、物事を考える。ギリシア哲学以来、哲学者にとっての最大の課題は、幸福とは何であり、いかにすれば幸福になれるかということを、論理によって示すことであった

・坂の下の不満足・不足・欠乏は、坂の上の満足・幸福を目指すが、いかに努力しても、そこへ到達することができない。努力そのものが苦悩を生み出しているから

・悩みの合間に、束の間の幸福の花が咲くが、たちまち花はしおれてしまう。その繰り返しが、人間の生涯である

・「誰をも支配せず、誰にも服従せずに、何者かでいられるような人間こそ、本当に幸福で偉大なのだ」 (ゲーテ)

・「不機嫌は罪悪」「上機嫌は第一位の義務」「自他の不機嫌を無視」。この三つが、幸福のためのセルフコントロール法

・苦悩と欲望は表裏一体。こうしたいと思うところから、それがかなえられない悩みが生まれる。人間は、心の内に涸れることのない欲望の泉を抱えている。一つの欲望がかなえられると、たちまち新たな欲望が湧き出てくる。それが、人間の生の証し

・道徳家や宗教家は、欲望を抑えることを説き続けるが、人類の出現以来、人間の欲望は、増えこそすれ、衰える気配はない。文明の発展は、人間の欲望の拡大にほかならない。文明の利器が一つ増える度に、新たな欲望が喚起される

・「人間を一番不快にさせるのは、豊かさの中にありながら、自分に欠けているものを感じることだ」 (ゲーテ『ファウスト』)

・人間のつくり上げた文化とは、いかにして人々ができる限り円滑に、互いの欲望を満たすかということについてのルールである。そのようなルールのないところでは、安定した人間社会は成り立たない

・「恋の一番大きな幸福は、愛する女の手を初めて握ることである」 (スタンダール)

・一つのことに「時を忘れて」没頭したようなとき、後で振り返ると、それが「至福の時間」であったことに気づく。我を忘れ、時の経つのも忘れる。これに勝る快楽はない

・人生における快楽はすべて、外界の事物の規則正しい繰り返しにある。昼と夜、季節、開花と結実などの移り変わりこそ、この世の生活の本来の原動力。これらを楽しむことに心が開いていればいるほど、我々は幸福を感じる

・「自己の内なる最高の部分」=「知性」に則しての活動(物事を学ぶ、知る、知識を身につける、考える、イメージする、表現する、物事の原理や理論を発見する)で、快感が得られることを多くの人は経験で知っている

・誰にも強制されず、内なる欲求から行うのが、趣味である。命令されて行う勉強は、知的快楽ではなく、知的苦役である

・「私は何を知っているか」ではなく、「私は何を知らないか」という自覚こそ、知的快楽の最大の原動力

・「幸福の秘訣は、あなたの興味をできる限り幅広くすること」 (ラッセル『幸福論』)

・満たされないものがあるのは、生きている証拠。人間を動かしているのは、満たされないもの。満足は人間を動かさない。不満が人間を動かす。満たされないものを大切にしたい。満たされないものが大きいほど、快楽も大きい



この本を読むと、足るを知り、次の足らないものを追いかけていくのが、人間の理想的な生き方のように思いました。

つまり、満たされていないものを見つけ出し、満たされるように行動することが、人間の生命活動の源であり、これを肯定することが、しあわせの秘訣ということではないでしょうか。
[ 2011/07/08 08:20 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『「声」は見た目よりものをいう』竹内一郎

「声」は見た目よりものをいう「声」は見た目よりものをいう
(2011/05/06)
竹内 一郎

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声優は長く活躍しています。声のいい俳優も長く活躍しています。声の魅力は、顔の魅力よりも、長く効くのかもしれません。

この本には、声の魅力とは何か、声の魅力を増すには、どうしたらいいのかが記述されています。

声について勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・コミュニケーションの大事な順序は、「聞く」「話す」「読む」「書く」

・声のいい人は好感をもたれている。「声が生む先入観」で得をしている

・低い声は聞く人の心を落ち着かせる力がある。加えて、女性の心を射止める力もある。逆に、高い声は、人を興奮させる働きを持つ

・日本のアナウンサーも65年前までは、北朝鮮のように興奮した声を出していた。高度成長期は、今よりも「頑張って」いた感じがあった。国営放送のアナウンサーの声は、国そのものの状態を表す

・声は筋肉運動。1カ月単位で訓練すれば飛躍的によくなる。声は「変えられる」

・「リズム」「テンポ」「強弱」「抑揚」「間」なども音声情報を左右する大きな要因だが、何より勝るのは「声」

・俳優の卵たちが、実践し、成果を上げている「自分の声をよくする方法」は、新聞の一面に載っている600字程度のコラムを、毎朝朗読して、ボイスレコーダーに吹き込み、自分の耳で聞くこと。自分の声を客観的に聞いてみることが大事

・声に無自覚な時期は、基本的に高めの声を発している。ポジティブに頑張りなさい、と言われ続けて育った人は、必然的に早口になる。早口になれば、当然、声は高くなる

・声の大きな人は、自信に満ちている。普段から人を説得する役回りの人は、声も大きい。しかし、声が「大きい」と「通る」は異なる。そこにいる人に「届かせる気持ち」が「通る声」を作っていく。通る声は「七分の力で発した声」

・呼吸と発声は一つながり。プロの俳優は必ず腹式呼吸を身に付けている。腹式呼吸は、仰向けに寝てお腹に軽く手を置き、ゆっくり自然に呼吸。息を吸ったり吐いたりする度、お腹が上下している状態

・声は腹筋だけで出しているわけではない。いい発声をするためには背筋力が必要。さらに、演劇の発声練習では、「お尻をしっかり締めて」と言う。発声にはお尻も大事。腹筋、背筋。肛門は三位一体

・細い音は、管の細い楽器から出る。太い音は、管の太い楽器から出る。声の場合は、太い声、細い声、それぞれに魅力があるが、「薄っぺらい声」は人にマイナス感情を与える。「薄っぺらい声」は基本的に共鳴不足。咽喉の奥の部分が開いたときに共鳴する

・話し手の声質だけで「いい声」「悪い声」を判断できない。「話し方」とセットになって初めて、声の評価が決まる。声には、「高い・低い」「強・弱」「メリハリ」「テンポ(速さ)」などの要素が複雑に絡み合う

言葉を強調する方法は、大きく4つの方法がある。1・「強く大きく言う方法」、2.「直前に間をとる方法」、3.「長くゆっくり言う方法」、4.「より強いイメージを持つ方法」

・話芸で間をおくということは、聞く相手に想像させる時間を持たせるということ。すなわち、聞き手と交流するということ

・しゃべりには、情報を伝えるのが主な目的の「リポートトーク」と信頼感を築くのが主な目的の「ラポートトーク」がある。前者の時は「論理が大事」、後者の時は「情緒が大事」と意識すること



美しくなる、服装センスを磨く、マナーを身につけることも大事ですが、声の魅力を増すことも、それらと同様に大事なことです。

しかし、声の魅力に関心のない人が多いように思います。この本をきっかけに、声に関心を持つようになれば、また違った自分の魅力を引き出すことができるのではないでしょうか。
[ 2011/07/07 08:26 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『幸福は幸福を呼ぶ』宇野千代

幸福は幸福を呼ぶ (なでしこ文庫)幸福は幸福を呼ぶ (なでしこ文庫)
(2008/12/19)
宇野 千代

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宇野千代さんの本を紹介するのは、「幸福の法則一日一言」に次ぎ2冊目です。宇野千代さんは、以前、このブログで紹介した「成功の実現」の著者である、中村天風氏の信奉者であり、門下生でもありました。

また、宇野千代さんは、結婚を4回もし、家を11軒も買い、着物には目がないなど、欲しいと思ったら、心の命ずるままに動く人でもありました。

そのせいか、宇野千代さんの本は、どれをとっても前向きで、自分の力を信じて生きることの素晴らしさについて書かれています。

この本にも、励まされる言葉が数多く掲載されています。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



気を入れてやっている人の様子は、端から見ても気持ちが好い。どんな詰まらない仕事でも、気を入れてやっている人の顔つきは、気持ちが好い。あの人の仕事は巧くいくなあと思えるから

・人はふだん、そうとは気がついていないが、ほとんど、人からの暗示か、自分自身の暗示によって、ものごとを考える

・思うというのは、予期すること。いつでも、失恋しやしないかと思っていると失恋する。一度でも、舵をとるのを誤って、船を衝突させたことのある者には、船会社では、二度と舵をとらせない。衝突しやしないかと思っている瞬間に百発百中衝突する

・自信があるということは素晴らしいこと。それが単に自惚れであっても、自信を持つことはよい。自信を持っているときは、顔が輝いている。自分で自分の心に、出来る暗示がかかっているからである

・谷崎潤一郎の初期の作品の、幼稚さ、野暮ったさには驚きあきれるが、この中に「自己を信じる」強い気持ちを感じる。この気持ちが、中、後期の輝かしい傑作を生む要因になった。自己の持っているものを、神を信じるような念力で信仰した人、それが谷崎潤一郎

・人生は、「弾み」によって、思いもかけない面白い結果が現れることがある

・健康法というのは、体操をするとか、歩くとか、あれを食べるとか、これを食べないということではない。いつでも、何か追いかけていく目的があって、張りきっている状態でいること

・人から笑われることを嫌がる人がいるが、人から笑われるのはそんなに嫌なことだろうか。いっぺん人に笑われたら、あとは笑われた者の得だと思う

バカなことはしたくないという気持ちの中には、バカなことをして、損をするのはバカらしいという、損得の感情が潜んでいる

・私は心で考えるのではなくて、体で考える。だから、いつでも、すぐに駆け出していく

・人間は一旦、何かに向かって駆け出したら、ただそれだけで運命を決めることがある

・人は、その人自身の思っているほど、自分の嫌いな、自分に不似合いな生き方はしないもの

欠点は隠そうとするものではない。利用するもの

・がむしゃらに暮らしてきた。夢中で生きることが生きていく目的であった



宇野千代さんは、チャーミングな外見とは反対に、心の奥底に、激しいものがあり、それを制御できなかったのかもしれません。

波乱万丈な人生で、実行し、体験し、証明してきたことの数々が掲載されている本です。男女を問わず、夢を実現したい人には最適の書ではないでしょうか。
[ 2011/07/05 08:23 ] 宇野千代・本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤの訓え「大物」になる勉強法』加瀬英明

ユダヤの訓え「大物」になる勉強法ユダヤの訓え「大物」になる勉強法
(2007/11/15)
加瀬 英明

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本のタイトルは、「大物になる勉強法」ですが、タイトルとは関係なく、ユダヤ人になぜ成功者が多いのか?なぜ金儲けがうまいのか?等も知ることができる内容です。

ユダヤ人やユダヤ社会を総合的に知る上で、非常に役に立つ箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ユダヤ人にとって、富も、豊かな生活もよいこと。それでいながら、ユダヤ人は堕落しなかった。もし、金儲けと享楽だけに耽っていたとしたら、他民族に同化して、歴史の中に消えていたはず

・ユダヤ人は、独自の哲学として、「知識」や「知恵」といった目に見えないものを、土地や財産などの実際に目に見えるものと同様に大切にしてきた

・日本人とユダヤ人は、ともに民族として、世界史の中で孤立してきた。この二つの民族は、部族的で一つにまとまろうとする傾向が強い。それでいながら、外界に対して、燃えるような好奇心をもって、よいものを常に吸収しようとする進取の気性に富む民族

・「神は一千の捧げ物よりも、一時間の学習を喜ぶ」(ラビ・サアディア・ベン・ヨセフ)。ユダヤ教が「教育宗教」たるゆえん

・「教養に税金をかけることはできない」 (タルムード)

・思考力をつける最も効果的な方法は、常に自分なりの疑問点を持つこと。疑問を持つということは、それだけ、その人が思考したことの証明になる。ユダヤ人の子供は、とにかく質問することをしつけられる。自分なりに考え、意見を持たなければ、質問はできない

・「教育とは、学校で習ったことをすべて忘れてしまったあとに、自分の中に残るもの」「教育は、他人から独立して思考することができる人間を作るための訓練」 (ユダヤ人のアインシュタイン)

・ユダヤ人の子供たちは、「もし、本と服を汚したら、まず本から拭きなさい」「百回復習するのと、百一回復習するのとでは、その間に大きな違いがある」といった諺を幼いときから、繰り返し聞かされる

・「その人でなければ持っていない力を引き出すことこそが、教育だ」 (タルムード)

・ユダヤ人は、為政者にしろ経営者にしろ、世俗的な権威を疑ってかかる。これは権力者によって虐げられてきた迫害の歴史と、個人主義の対極にある権力を危険視することから発している

・「あなたを疑っている賢人を、あなたを好いてくれている愚者よりも大切にしなさい」

・「愚かな人は、自分がよく知らないことでも話す。賢人はこれから自分が話すことが、どのような結果をもたらすかを考えてから話す」

・「最も勇気のある人は、誰か?敵を友に変えようとする人である」

・「人があなたの言うことは正しいと認めても、あなたは何も学ぶことができない。人があなたの過ちを指摘したら、新しいことを学ぶことができる」

・「商人はできるかぎり口を閉じること。人々に賢いと思われるよりも、愚かだと思われるべき」

・「性格がよく、美人で、賢い娘を妻にしようとする人は、現実には三人の娘をほしがっているようなものだ」



ユダヤ人の処世術、商法、自己鍛練法、人間観、結婚観、人生観などの知恵が、この本には詰まっています。

人生の「成功率が高い」ユダヤ人に素直に学ぶことも、よいのではないでしょうか。
[ 2011/07/04 06:51 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『超訳・心から安らぐ仏教の言葉』本郷陽二

超訳 心から安らぐ仏教の言葉 (中公新書ラクレ)超訳 心から安らぐ仏教の言葉 (中公新書ラクレ)
(2011/01)
本郷 陽二

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この本は、時代や国を問わず、多くの僧侶、法師、帰依者などの言葉を網羅して、現代語訳にわかりやすく直した書です。

ここに登場する歴史的人物が何を言ってきたのかによって、人類普遍の悩みを知ることができます。

この本を読んで、勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「平生業成」 (親鸞)
誰にも生れてきた目的がある。生まれてきた価値がない人はいない。成すべきものがない人もいない。何をしたらいいかわからない、するべきことが見つからないという人は自分が見えていないだけ

・「欲深ければ禍い重し」 『仁王経』
欲には果てがなく、「もっともっと」が歯止めなく続いていく。そして、あるところから強欲に変わる

・「すべての過去が意味を持って蘇ってくる」 (大森曹玄)
過去はそれまでの迷いの足跡であり、自分が生きてきた証。過去があるから、今の自分がある

・「半途にして始めて得たり、全途辞することなかれ」 (道元『学道用心集』)
半ばまで行ったところが、最初の一歩。道はそこからが始まる

・「法を操る、法に操られる」 『六祖壇経』
周囲の人や世間がそうするからそうするというのは、「世間に操られて」生きているだけ。これでは、いつまでたっても自分の人生は始まらない。自分が自分を操って生きるべき

・「煩悩を心の却とし、念仏をば心の主とす」 (法然『七箇条起請文』)
煩悩はどうやっても起こるもの。煩悩が起こっても、それを大事に扱いつつ、結局は何もさせない。要は、振り回されなければそれでいい

・「化城こそ力」 『法華経』
目標は心に勝手に描いた餅、いわば化城。だが、餅のために重ねた努力は幻でなく現実。実際に重ねた努力は必ず自分の力になる。化城は大きな力を与える源になる

・「十万世界、全身を現ず」 『無門関』
身につける宝飾品が立派であればあるほど、それを装う人が貧弱で哀れに見えてしまう

・「老婆心切」 『臨済録』
不必要な手助けは、相手の命を縮める結果になる。相手に厳しく接するには強さが必要。そんな強さを身につけよう

・「ただ誹られるだけの人はあるまじ。また、ただほめられるだけの人もあるまじ。過去も未来も現在も」 (ブッダ)
悪口を言われても、三日の間、沈黙していれば、誰も何も言わなくなる

・「鈍な者でも正直ならば、神や仏になるがすじ」 (白隠)
のろまで鈍いところがあるが、まっすぐな心で邪なことを考えない人は、歩みは遅くても、必ず目的を達することができる

・「真なる者は甚だ以て難く、実なる者は甚だ以て希なり」 (空海『教王経開題』)
自然体で人と接し、気負いや衒いなく、出会う人そのまま受け入れるようにしていれば、実はその人が師になるだろう

・「自己を燈火とせよ。法を燈火とせよ」 (ブッダ『大般涅槃経』)
やりたいことが見つからないなら、まだまだ未知の自分が隠れていると楽しみにしていればいい

・「阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)」 (明恵『明恵遺訓』)
そのものが本来あるように「ふさわしくあれ」ということ。阿留辺幾夜宇和の七文字を大切にすると、さりげなさの中に、自ずと深い品性が醸しだされてくる

・「選択とはすなわちこれ取捨の義なり」 (法然)
選んだものは欲しかったもの、必要だったもの。選ばなかったものは縁がなかったもの。とどのつまり、いま手元にあるものだけが必要だったいうこと

・「己事究明」 (雲門文偃)
そのときどき、与えられた環境で、巡り合った上司や仲間とともに、やるべきことに没頭する。それこそが、もっとも自分を生かす生き方

・「行雲流水」 『普勧坐禅儀』
止まれば水は澱み、やがて腐り出す。すべてにおいて、止まったり、こだわったりは避けなければならない

・「南無地獄大菩薩」 (白隠)
誰も助けてくれないなら、エイッと思い切って飛び込んでみよう。地獄の底には明るい光が射しているかもしれない。思いもかけぬ救いの糸が見えるかもしれない

・「光陰のひそかに移り、行道の命を奪うことを惜しむべし」 (道元『正法眼蔵』)
人生は限りがあるからこそ、意味が深い。有限の時間を意識したときにはじめて、新しい生き方を考えようという気持ちが生まれてくる



この本の、70以上の出典、200以上の言葉の数々を読むと、仏教の奥行きを感じることができます。

仏教には、絶対的なものはありません。これらの中から、自分に合った、「生きる姿勢」と「心の安らぎ」を得ていけばいいのではないでしょうか。
[ 2011/07/01 09:08 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)