とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『江戸に学ぶ企業倫理-日本におけるCSRの源流』弦間明

江戸に学ぶ企業倫理―日本におけるCSRの源流江戸に学ぶ企業倫理―日本におけるCSRの源流
(2006/03)
日本取締役協会、弦間 明 他

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江戸時代の「武士道」は有名ですが、「商人道」は忘れ去られているように思います。

法律も契約書もほとんどない中、道徳と規則をつくり、それを守って、経済を大きく発展させた、江戸時代の商人に敬意を表すべきだと思います。

この本には、商人たちの家訓や遺訓を含め、社訓が数多く掲載されています。今でも、そのまま適用できるものが多いのに驚かされます。

この本の中で、共感できた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・近江商人は、異郷での商業の成功に不可欠だった信頼の構築に、「薄い口銭」「売って悔やむ(安売り)」「正直」「信用」「出精専一(商売専心)」、「始末」、「陰徳善事(陰での善行)」を大切にした。これが、後の「三方よし」の教えに純化した

・江戸期の商人育成は、6~7歳頃から、寺子屋に学び、3~4年で読み書き能力をつけたのち、10歳前後に、年季奉公として雇用されて、先輩店員(番頭、手代)に現場で鍛えられた(商業徒弟教育)

・寺子屋で使われた教科書が往来物。往来物は、手紙文、日常用語、地理、商売、百姓、諸職に至るまで多彩。「商売往来」は、取引や帳簿記入に必要な文字、物産や商品の名称と知識、商人の心得、取引の心得、諸都市の概況、道徳教育が主な内容

・商人たちが持っていた意識は、奉公意識(主従関係、集団秩序を重んじる)体面意識(家名、暖簾、看板を傷つけない)分限意識(分相応な生活態度をとる)の三つに集約できる

・江戸時代の商人の85の家訓の項目の頻出順は、公儀尊重、奉公人規定、家法店則、質素倹約、店内業務、家業出精、堅実商、分限相応、衣服の制限、外出禁止、得意重視、正直、祖法墨守、支配人指図、遊芸の禁止、別家・出店、孝行・・・

・堤正敏「商道九篇国字解」は最も系統的な内容の書。「1.商術」(場所、業務、人の三択)、「2.知務」、「3.習労」、「4.使令」(使用人の使い方)、「5.教養」、「6.接待」、「7.継業」(商変動の対処法)、「8.主権」(利権強化)、「9.応変」(時流適応)

・井原西鶴は、才覚に恵まれた商人や信心深い商人に対し、必ずしも好意的ではないが、「日本永代蔵」では、「なにはともあれ大福(幸運)を乞い求めながら、長者(富裕者)になることが極めて大切」という到富観を披露している

・質素、勤勉、倹約、正直といった、石田梅岩の心学で手段として強調された事柄は、商人たちの自己意識に合致していたから、広く受け入れられた。逆に、心学が、商人たちの自己意識を強化し、商業道徳を形成していったという関係も見出せる

・西川家は、奉公人に対しても感謝の意を忘れず、三ツ割銀制度を設け、毎年二期勘定の純益の三分の一を店員に配分する賞与を実行し、勤勉者への褒賞や慰労金制度も実行している

・健康と忍耐は、家を興す基。勉強と節約は、福を招く門なり(近江商人・山本平八家の商工格言)

・事業の邪魔になる人は、「職務に精進しない人、融和心なき人、忠告を耳に止めぬ人、感謝しない人、金銭でなければ動かぬ人、反省しない人、威張り外見を飾る人、工夫せぬ人、犠牲心のない人、仕事を明日に延ばす人」。「現状維持は退歩なり」が藤井彦四郎の言葉

・松代藩の恩田杢は、勘略奉行就任後、税制改革責任者として、今後は「1.嘘を言わない」「2.飯と汁以外は食べない」「3.木綿物以外は着ない」の決意を述べ、家族、親戚、家来全員に離縁を申し渡した

・恩田杢は、全権掌握の代償として、その権力が不正に行使された場合は、いかなる処罰も甘受することを誓詞として提出。リーダーシップの確立が独裁や権力乱用に陥ることを防止する相互誓約であった

・「もし、職人たちが使い勝手や形の美しさ、丈夫さを無視して、品物を作り出したとしたら、笑い飛ばし、軽蔑した。そういうものは、恥ずかしいものであり、そういうものを送り出すことは卑しいことであった」 (失われた手仕事の思想・塩野米松)

・「使い手が、自分の気に入った作り手を選ぶことができた小さな社会では、職人は、その小さな社会で生き抜くために、使い手に選ばれるように、常に最高の商品を作り出す必要があった」 (失われた手仕事の思想・塩野米松)

・「いいものは他人のため。いいものを商品に。これは職人たちが長い時間をかけて自分たちの存在を維持するための倫理だった」 (失われた手仕事の思想・塩野米松)


・「五十歳まで宗教は無用」「賭けの遊びは無用」「四十歳まで贅沢してはならぬ」「夜の宴席は慎め」「人の持ち物を欲しがってはならぬ」 (島井宗室遺言状)

・「親しくすべきは、商売好きな人、出しゃばらない人」「親しくすべきでないのは、人を中傷する人、権力者に取り入る人」「物の値段の高い安いをよく覚える」「高値の品は買わぬように」「商人なら、三里や五里の道は歩け」「夫婦は仲睦まじく」 (島井宗室遺言状)

・「福の神の十人の御子は、貯え・朝起き・算用・内居・五常・会釈・有合・斟酌・耐乏・心立て。貧乏神の十人の御子は、伊達仕・無行儀・物好き・人集め・女房去り・系図立て・大火焚き・見物好み・味合い口・厚着仕」 (町人嚢・西川如見)



「傲慢な社会」では、現在を正当化するため、昔のものを葬り去ろうとします。「謙虚な社会」では、「昔の人は偉かった」と考えて、昔を現在の反省材料に使います。どちらが、住みやすい社会なのかは、明白です。

人間の欲は、昔も今も変わりません。変わったのは、技術の進歩だけです。先人たちが遺した言葉は、昔も今も輝きを放っているのではいでしょうか。
[ 2011/06/30 08:26 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『華僑大資産家の成功法則』小方功

華僑 大資産家の成功法則 お金がなくても夢をかなえられる8つの教え華僑 大資産家の成功法則 お金がなくても夢をかなえられる8つの教え
(2005/05/14)
小方 功

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著者は、1992年に北京に留学し、現地の華僑の実業家から、経営の手ほどきを受け、帰国後、会社(株式会社ラクーン)を興し、2006年に東証マザーズに上場した人です。

実際に、華僑の人から話を聞き、商売を実践して、成功した体験の持ち主は、そうざらにはいないと思います。

この本を読んで、共感できた箇所が20ほどありました、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ビジネスはすべて『必要』で成り立っている。『必要』はいつの時代でも存在している。経済が不安定なときでも、儲ける人は儲けている。ただし、不安定になると、この『必要』は著しく変化する。この必要の変化に、いち早く気づいた人は大きく得をする

・『必要』を無視して、やりたいことをやってはいけない。もし、会社を短期間に大きく成功させたいのなら、以前はなかったのに、これからないと困るものを見つけること

・お客や市場に『必要』とされることは、従業員にとってもやりがいのあること。お金を支払う客とはいえ、本当に必要なモノやサービスを提供されれば感謝してくれる。この客からの感謝こそ、どんなに高い給料よりも従業員のみんなのやりがいとなる

信念を持たない人は、どの知識を自分の中に残して、どれを忘れていいのか、優先順位を決めることはできない

・自分をつくることの次に大切なのが人間関係。この順番を間違ってはいけない。自分自身に徳がないのに人間関係を広げようとしても、それはうまくいかない。せっかく出会った人でも信頼を失いかねないから

・偉大な人の多くは読書家だが、読書家が必ずしも偉大かというとそうとは限らない。人格や人徳を高めるために必要なのは、知識ではなく『決意』

・成長するには、価値観を人と交換し合うこと。交換し合うことによって、それはさらに鍛えられ、洗練されたものになっていく。これは、武術で言えば、他流試合のようなもの。それをやりながら、自身の価値観に磨きをかけていくのが、一番効果の上がる鍛え方

・その人の成功は、彼自身の好奇心がもたらしているもの。その好奇心と素直につき合うことさえできれば、幸せになれる。まず、目の前の仕事に感謝して、明日使うべき知識を今日学び、今日知らなかったことを今夜勉強することから始めなければならない

・成功者に一定の法則を見出そうとしても意味のないこと。成功者には法則はなく、失敗者のみ法則がある。失敗の法則とは、問題を人のせいにする習慣

頂点を極めた人には、もう相談相手がいない。このようなとき、その人は不安に襲われる。向上心がまだ残っていれば、自分自身を否定するもう一人の自分を自分の中に作ろうとする

・成功する人はチャンスに気がつく人だと思われがちだが、実は何かにつけ、チャンスだと思い込む人。大したチャンスでなくても、本人がそう思い込むことで、本当のチャンスになってしまう

・起業は一種の自己主張。自身の個性をよく理解して決めればいい。決めたら一生涯かけて専門家になること

好きな順に人を大事にしていればそれでいい。偉い人にだけ丁寧に接して、お金持ちに会ったときだけお礼の手紙を出す人がいる。しかし、そういう生き方が、どれほど自分の徳を失うかわかっていない

・一生懸命がんばっている人、真剣にやっている人を見たら応援したくなる。休むことを知らずに必死になっている。その努力は心打つものがある。これを見て感動しない人はいない

・マスコミの情報や人のうわさを鵜呑みにし、楽観したり、悲観したりすると損をする。得をしている人たちは、直接、自分の目で確かめて、自分自身の頭で考え、きちんと自分の頭で判断する

・大義とは、社会の誰から見ても必要と感じられるもの。だから、大義があれば、自然と周りが応援してくれるようになる。また、考えることが正しければ、そこには必ず大義が生まれる。すると、そこに、若くて優秀な人も集まってくる

・先進国の場合、働く人間はやりがいを求めている。お金のためだけでは続けられなくなっている。好奇心と向上心を持った若者は、ひとたび合点がいくととても熱心に働き、成果を出す。現代の経営者にとって、説明することこそが仕事である

・みんなに事情を話し、会社をもっと大きく、もっといい会社にしたいということを話してみたらいい。言葉に嘘がなければ、みんなはついてきてくれる



この本には、現代の華僑の人たちが実行している商売の真髄が描かれています。本当に、経営で大事なことを、丁寧に教えてくれています。

華僑だけではなく、全世界の商売人にとっての成功法則になると思います。これから、起業したいと考えている方に、是非読んでほしい書です。
[ 2011/06/28 06:51 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『名将名言録一日一言』火坂雅志

名将名言録 一日一言名将名言録 一日一言
(2009/11/11)
火坂 雅志

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交通、通信技術も発達していない時代にどうして、統治することができたのか。マスメディアもない時代に、どうして、人心の掌握ができたのか。

その答えは、人の本能に根ざした、シンプルな考え方があったからではないでしょうか。技術の発達していなかった時代だからこそ、言葉を重く感じます。

この本には、中世から明治維新に至る数々の武士、武将の言葉が載っています。その中で、共感した箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「必ず金銀にて人を使はんと思ふるるは、人心の離るる本なり」 (大谷吉継)

・「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。此の仕末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり」 (西郷隆盛)

・「とかく金を持てば、人も世上も恐ろしく思はぬものなり、摺切れば(貧窮すれば)、世上も恐ろしきものなり」 (前田利家)

・「正道は学びかたく、外道は学びやすしとなり」 (今川貞世)
人々が守るべき正しいことは会得することが難しく、逆に道に外れたことはたやすい。しかしながら、難しい正道を学ぶように努めよ 

・「上下万民に対し、一言半句にても、虚言を申すべからず」 (北条早雲)
領民に、ごくわずかでも、嘘をついてはいけない。嘘を言うことは癖になり、せせら笑いされる羽目に陥り、見限られる。さらに、人に糺されたら、一生の恥になる

・「人をばつかわず、業(わざ)をつかふぞ」 (武田信玄)
家臣の人柄や才能を見抜き、役目を与える

・「総じて人は己に克つを以て成り、自ら愛するを以て敗るるぞ」 (西郷隆盛)
無私無欲の心で自らコントロールできれば成功するが、自分の欲望に屈していては失敗する 

・「算用の道知らざるものは諸事に付け悪しき候、常に心懸申すべく候事」 (藤堂高虎)

・「古人云く、国に三不祥あり。賢人有るを知らず一不祥、知って用ひざるを二不祥、用ふるも任ぜざるを三不祥と」 (太田道灌)

・「仁に過れば弱くなる、義に過れば固くなる、礼に過れば諂ひ(へつらい)となる、智に過れば嘘をつく、信に過れば損をする」 (伊達政宗)

・「およそ主君を諌める者の志、戦いで先駆けするよりも大いに勝る」 (徳川家康)
諫言は戦場の功名よりも勝るから、諫言を受け入れよ

・「楽しきと思ふが楽しさの本なり」 (松平定信)

・「意見をしてみるに、直ちに請合ふ者にその意見を保つ者なし」 (小早川隆景)
意見をした時、すぐにわかりましたと返事をする者がいるが、そのような者に限って、人の意見を受け入れない

・「かちの上にけがあれば、かち又敵方へ付く也」 (武田信玄)
合戦に勝ったとしても、そこに過ちがあれば、せっかくの勝ちも、やがて敵の勝利につながる 

・「分に過ぎたる価を以て馬を買ふべからず」 (竹中半兵衛)
分際以上の高価な馬を持てば、執着心が粗略な扱いを妨げる。しぜん、戦中への果敢な攻めが鈍り、功名も難しくなる

・「金銀も用ゆべき時に用ゐずば、石瓦に劣れり」 (黒田如水)

・「害を避くるを知りて、害を避くるの害を知らず。物の勢ひとたび屈する時は、また伸ぶべからず」 (本多正信)
害を避けてばかりいると、勢いを失ってしまう。害に立ち向かうことも必要

・「人材は必ず一癖ある者の中に選ぶべし」 (島津斉彬)



一歩間違った判断をしたら、殺されるかもしれない世界で、正確な判断を下し、統治していた昔の偉人たちの発言には、学ぶところが大いにあります。

人間の行動心理を知りつくしたプロでないと、将の職は務まりません。そういう観点で、昔の偉人たちの言葉に接すると、新鮮な気持ちで読むことができるのではないでしょうか。
[ 2011/06/27 08:40 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活』家森幸男

110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活 (生活人新書)110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活 (生活人新書)
(2007/09)
家森 幸男

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家森幸男氏は病理学者です。京都大学の名誉教授をされています。世界25カ国をまわり、延べ16000人の血液と尿、食事のサンプルを採取されてきました。

この調査データをもとに、長生きできる秘訣が、推論ではなく、科学的に証明された事実として掲載されています。

長寿の食生活を知る上で、本当に役に立つ箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本食は非常にバランスのとれた食事。ご飯を中心に、大豆、魚、海藻を日常的にとり入れる伝統的な食生活は、長寿の秘訣にかなった素晴らしいもの。しかし、その食事の中で、「塩分の取り過ぎ」は一つの欠点

・大豆(イソフラボン)や魚(タウリン)を十分に食べていると、HDLが十分に増えて、悪玉コレステロール(LDL)が減る

男女の平均寿命の差(7年)は心筋梗塞にかかる率と関係が深い。その理由は、女性ホルモン。この7年は、大豆や魚を毎日しっかり食べることで確実に延ばすことができる。女性でも同じ。減塩による3年と合わせて10年は長生きが可能

・男女とも、長寿の秘訣の第一位は「自身の健康観」。男性は以下「仕事の満足度」「知的課題の遂行」と続く。女性は以下「家庭生活の充実度」「身体機能の評価」と続く。これらの条件がすべて揃うと、男性で16年、女性で23年の寿命延長が可能になる

楽天的に生きる人は、そうでない人に比べて、心臓死に至る確率は45%しかない。心臓死が半分以下になれば、7年の寿命差になる

高蛋白食(大豆や魚)には血圧を下げる効果があり、脳卒中の遺伝がたとえ強くても、食事によって予防できる

・日本人よりもたくさんの肉を食べるグルジア人のコレステロール値が、日本人と変わらなかったのは、肉の食べ方にあった。グルジアでは、ゆでたり蒸したりして、肉の脂肪分を除いて食べる料理が中心

・香辛料を使うのは、シルクロードの地域に共通した特徴。食塩(ナトリウム)は、コレステロールの吸収を促す。その食塩の代わりに、香辛料を使うことで、コレステロールの吸収を抑える

・カリウムはナトリウムの害を打ち消す効果がある。カリウムは、野菜や果物に多く含まれており、グルジアでは日常的にたくさん食べている

・グルジアの病院では、ヨーグルトを内科、外科を問わず入院患者みんなに食べさせる。ヨーグルトを食べると回復が早く、感染症を防ぐというのが、その理由。ヨーグルトには、日本人が不足しがちな蛋白質やカリウム、マグネシウムを補い、健康を保つ効果がある

・グルジアの隣国ブルガリアは、近年、長寿国とは言えず、東欧一、二位の短命国になった。ヨーグルトやチーズを食べ、肉や野菜も食べるが、グルジアに比べて、魚を食べない。この違いが、二つの国を長寿と短命に分けてしまった

・タンザニアのマサイ族の30、40歳代には高血圧の人がいない。マサイ族の食生活には、食塩というものが存在しない。マサイ族は1日3ℓ以上のヨーグルトを飲む。ヨーグルトを飲めば、カリウム、カルシウム、マグネシウムをとることができる

・尿のデータでは、長寿のウイグル族はナトリウムが少なく、カリウムが多い。短命のカザフ族は、ナトリウムが多すぎ、カリウムが少ない。彼らは、塩茶バター茶をよく飲む。カザフ族の多くは50歳代で亡くなるので、60歳以上が見つからない

・主食に米を食べるのは長寿の秘訣の一つ。お米を食べている人たちは、肥満が少なく、コレステロールも少ないため、心筋梗塞が少ない

・ウイグル族の飲み水は天山山脈の雪解け水を地下水系で引いている。その井戸水は、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルがしっかり入っている。この水を毎日飲めば、食塩の害を消せるので、血圧はさがる

・ウイグル族はブドウをよく食べる。ブドウは世界共通の長寿食。ブドウに含まれるポリフェノールは抗酸化力が強く、悪玉コレステロールが酸化され血管壁にたまるのを防ぐ作用がある。赤ワインを飲むフランス人はコレステロール値が高くても長寿でいられる

・ポリフェノールには、レスベラトールという女性ホルモンの一種が含まれている。最新の研究では、レスベラトールを動物に与えると、カロリー制限したときと同じ延命効果のあることがわかってきている

・ウイグル族の長寿の秘訣として、ナッツとザクロがある。一日中座って、アーモンドを割って食べている。アーモンドの茶色い渋い皮も食べる。この渋みが、まさにポリフェノールの味。カリウムやマグネシウムが豊富に含まれている

・魚をとっている人たちには、肥満も、高血圧も、高脂血症の割合も少ない。魚に含まれるタウリンは、交感神経の働きを抑え、副腎や神経末端から出るアドレナリン、ノルアドレナリンを少なくするため、血圧が下がる

・日本全国で尿を調べたところ、大豆を食べている地域では、イソフラボンの値が高く、長寿であることがわかってきた。イソフラボンには血管が新しくつくられるのを抑える効果もあるので、がん細胞の増殖転移を防ぐ

・さまざまな効用のある大豆は、1日70g食べれば、健康に必要なイソフラボンをとることができる。朝、ワンパックの納豆を食べ、夜、冷や奴か枝豆をつまみで食べるくらいで十分カバーできる

・大豆はブドウと並ぶ長寿食の一つ。大豆がたくさんの病気を防ぐ力を持っていることに驚かされる

・南米エクアドルのビルカバンバ(海抜1500m)は世界の長寿地域として有名。主食は芋とトウモロコシ、食物繊維とカリウムが多く含まれる。魚の代わりに、タウリンが多く含まれるモルモットの姿焼の内蔵(肝臓、心臓、肺、脳)をご馳走として食べる

・オーストラリアの先住民族アボリジニは、伝統的な食生活の崩壊を100年以上も前から受け、短命への坂道を転げ落ちてきた。アボリジニにイソフラボンの錠剤を投与した結果、8週間後、血圧が下がり、動脈硬化指数が明らかに改善した

コレステロール値が低すぎると脳卒中が増え、高すぎると心筋梗塞が増えることがわかってきた。中庸の180~200㎎/㎗が最適

ハワイ島ヒロは沖縄からの移住者が多い。70歳以上の人の1日にとる食塩量が、沖縄の人よりも2g少ない。さらに、蛋白質の指標となるアルブミンが、日本のどの地域の年寄りに比べても最も高い。70歳の時にアルブミンの高い人ほど、その後の生存率が高い

・ハワイの日系人のデータの中で注目されるのが、認知症の少なさ。その原因と考えられるのが豊富なビタミンE。ビタミンEを初めとする抗酸化栄養素は、アボガドなどのトロピカルフルーツの中にたくさん含まれる

・ブラジルのカンポグランデで、400人の日系人の食生活改善に取り組んだ。日本の長寿の栄養源である大豆や魚や海藻の特製カプセルを毎日とってもらった。その結果、一度伝統食を捨てた日系人でも、また長寿への道を進むことができるとわかった

長寿の秘訣6法則「1.大豆や大豆加工品をとる」「2.過剰な塩分をとらない」「3.魚はたくさん、肉はバランスよく」「4.牛乳や乳製品をとる」「5.野菜や果物を欠かせない」「6.食卓は明るく、楽しいものに」



よくこれだけの研究をしてくれたものだと著者及び研究班に感謝せざるを得ません。医学や健康の本としてだけでなく、文化人類学の専門書としても、楽しく読むことができます。

全世界の長寿地域のデータから導き出された結果に、素直に従うことが、長生きできる秘訣となるのではないでしょうか。
[ 2011/06/24 08:39 ] 健康の本 | TB(0) | CM(1)

『林輝太郎「相場人生訓」』前野晴男

林輝太郎「相場人生訓」林輝太郎「相場人生訓」
(2008/11)
前野 晴男

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林輝太郎氏の本を紹介するのは、「相場師スクーリング」に次ぎ2冊目です。林輝太郎氏は最後の相場師と言われている人です。

その「相場の金言」を集約したのが、この本です。相場を少しかじったことがある人なら、この本の相場訓に同意することが多いのではないでしょうか。

思わず頷いた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・今まで、オシレーター(相場の指標)を使って成功した人を聞いたことがない。その根本的理由は、「なにかに頼って儲けよう」とする心にある

・相場師は、意外につまらない商売。時間が自由になる、他人に頭を下げなくてもいいといったメリットがある代わりに、すべて自己責任だから、絶対に冒険ができない、日常生活が地味になる。常に金銭感覚を正しくしていなければならない

・「おかしいな」という判断は、売買している本人にとって適切で確率の高い「価値ある判断」になる

・「終わり良ければすべて良し」が売買。その「終わり」を良くするために、「始め」をどうするか

・お荷物になる銘柄を捨てないのは、下手な売買の見本

・相場をやる人はどうしても過去の足取りや相場を参考にする。だから、多くの人が知らないうちに「後ろ向き」の姿勢になりやすい。過去は参考にしても、溺れてはならず、姿勢は常に「前向き」でなければならない

・記者は、人気にもっとも汚染されているので、市場の人気を記事として書く

・株式投資における「敵」は戦争の相手と異なり、攻撃を加えない。危害がないから、警戒心が薄れて安心する。つまり、敵(値動き)が損害を与えるのではなく、自分が損害をつくる

・静かに買い、静かに売る。忍者ではないが、いつ買い始めたのか、いつ手仕舞いしたのか、損だったのか利益だったのか、わからないぐらい静かな売買がよい

・失敗であると判明した時点で切ることができる玉でなければならない

・大切なのは安定した技術を身につけることであり、利益はその結果に過ぎない

・できることをやっても失敗することがあるのだから、できないことを試みる必要はない

・下手な人ほど利益目標を立てる。しかし、技術で稼ぐものは、上手になることが目標であり、利益はそれに付随するもの

・相場の上手な人は、自分をよい環境に置くことを心掛ける。勝ち癖をつけるのも、そのひとつ

・まず初めに、「高く売る」勉強をしなければならない。これは商売と同じで、需要とは、自分の好みではなく、他人の好みである

・相場の失敗は、予測の誤りではなく、建て玉の誤りがほとんどである



相場観を磨くと、売買が絡むすべてのものに応用ができます。日常生活の中でも、家を買う、売る。車を買う、売るといった大きなものだけでなく、スーパーマーケットの惣菜が何時から何割引きになるかを予測するのも相場観です。

需要と供給で値段が決まる世界は、この相場観を持っている人が有利になります。この最たるものが、株式売買です。

相場の神様である著者の言葉に耳を傾けると、長い一生、きっと得になることが増えるのではないでしょうか。
[ 2011/06/23 06:12 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『セコムが教える防犯プロのアドバイス』セコムIS研究所

セコムが教える防犯プロのアドバイスセコムが教える防犯プロのアドバイス
(2006/06/21)
セコムIS研究所

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身の安全を守るプロたちが、現場で蓄積したノウハウとは、どういうものなのか、興味があって、この本を手に取りました。

家宅侵入だけでなく、ひったくり、詐欺にいたるまで、さまざまなトラブルの防止法、対策について、詳しく記載されています。

この本を読み、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・空き巣は電話をかけて留守を確認(下見)することもある。留守番電話では、留守を伝えないこと。電話に出ないで、安易に居留守を装うことも危険

・外出するとき、ラジオをつけっぱなしにしておけば、留守だと思われにくい

・空き巣が侵入する場合、10分以内で鍵を外せなければ、ほとんどが侵入をあきらめる。一つのドアに二つの鍵を付けたり、窓に面格子や防犯フィルムを付けておけば、手間がかかると判断し、最初から侵入をあきらめる

・モニターテレビ付きインターホンやセンサーライトを取り付ければ、防犯対策として有効である

・侵入犯は、外から見える様々な手がかりから、女性の一人暮らしを察知する。表札に書くのは姓だけ。花柄のカーテンや女性らしいグッズが外から目に入らないようにしておく

・車道と歩道がきちんと分かれて、歩道が少し高くなっている道は、バイクを使ったひったくりに遭いにくい

路上強盗は、午後10時から午前4時までの間に54%発生し、午前0時から2時の間がピークになっている。深夜に帰宅する場合には、注意が必要

・スリの多く発生する場所は、ラッシュ時の電車の中、競馬場などの遊戯施設、祭り・イベント会場、バーゲン会場など。特に、賭け事、バーゲン会場などで我を忘れると被害に遭いやすい

・ひったくりが発生する時間は、午後8時~10時が最も多い。続いて午後6時~8時

・電車ドア付近は、痴漢の発生率が高い。ドア付近にいると女性が痴漢に狙われやすいだけでなく、男性が痴漢冤罪を受けてしまう場合も多い。冤罪を晴らすのは実に大変

・夜間に、コンビニを利用する人は、生活圏がそのコンビニ周辺にある場合がほとんど。ストーカーはコンビニで待ち伏せして、つけ狙うことがある。同じ顔の男を何度も見かけたら用心する

・コンビニで不用意に第三者に自分の情報を与えないこと。公共料金などは、生活圏以外のコンビニで支払うようにする

・振り込め詐欺は、銀行へ入金させるため、電話をかけるのは、午前10時から午後2時まで。この時間帯の電話に注意

・放火による住宅火災の半数以上は共同住宅で発生している。放火の多い時間帯のピークは午前1時~4時、月別では、11月、12月、2月が多い

自動車盗難場所は、駐車場(62%)、道路上(12%)、自宅(10%)の順。駐車場が圧倒的に多い。駐車するときは、管理がしっかりしたところを選ぶこと

・レンタルビデオ店やスポーツジムなどの申込書に、運転免許証などを転写、転記することで個人情報がわかるようになっている。万一漏えいした時に悪用されかねないので、不用意にコピーさせてはいけない

・警視庁が泥棒に聞き取りした調査によると、物色する場所は、整理ダンス(51%)、サイドボード(44%)、手提げ金庫(40%)机の引き出し(33%)の順。物色する部屋は、居間(71%)、寝室(51%)、書斎(29%)、台所(18%)の順



犯罪に巻き込まれないためには、犯罪発生率を知っておくのが有効だと思います。この本には、犯罪発生率が犯罪別に具体的に掲載されているので、参考になります。

犯罪者に隙を与えず、命と財産を守る方法を知っていることは、長い一生において、必ずプラスになると思います。
[ 2011/06/21 07:58 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『継続する力』児玉光雄

継続する力継続する力
(2009/10)
児玉 光雄

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著者の本は、2年前に「なぜモチベーションが上がらないのか」を紹介して以来です。

児玉光雄氏は、鹿屋体育大学教授で、スポーツ心理学者です。オリンピック選手のデータ分析などもされてきました。

スポーツ科学と経営学はよく似ています。下手な経営書より、一流スポーツ選手のトレーニングプログラムを見たほうが役に立ちます。

この本を読み、一流スポーツ選手の継続する力で勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・偉大な仕事を成し遂げた人間の共通点は、どんなピンチや逆境に追い込まれても、夢を追い続けることを止めなかったこと

・「成功の確率を倍にしたければ、失敗の数も倍にすること」 (トム・ワトソン)

・データはあくまでも過去の数字に過ぎない。データを頭の中に叩き込んでしまうと、肝心の本番で、それに囚われて自由な発想ができない。プロの世界は、毎回が予測不可能な真剣勝負

・比較評価することを潔く捨てて、徹底して絶対評価すること。自分が設定したゴールに到達することよりも、ゴールに向かって最善を尽くす行為そのものに生きがいを見出すこと

不安や恐怖を抱えて、試行錯誤しながら生きることによってしか、才能は磨かれない

・セールスで成功するのは、実は話術が巧みな人ではなく、断られてもすぐに「次は大丈夫」と気持ちを切り替えられる人

・「いつも人と違うことをしたい。人と同じ方向は見ない。人が変わるなら僕は変わらない。人が変わらないなら僕は変わる」 (イチロー)

・自分を限界まで追い込んで、初めて馬鹿力は発揮されるという事実を認識して努力を積み重ねる

・この世の中は、四六時中、仕事のことを忘れない習慣を身につけた者が成功するようにできている

・努力をしているだけで満足している人間は、絶対に一流になれない。一流になりたかったら、努力という意識さえも心の中から消し去って、何かにこだわること

・能力の低下を、日々の鍛錬により最小限に抑えることに努めながら、自分の特徴が活きる新境地がないか模索する。そういう努力が、新たな機会を与える

・とにかく独創性溢れるメニューを作成して、得意技を極めることに全精力を傾注する。過酷な競争社会で生き残るには、それしかない

・失敗を重ねることを快感にしてしまう。そして、貪欲にその失敗から何かをつかみ取って、「より良い失敗」を繰り返すこと。そういう姿勢が、成功に導いてくれる

・漠然と何かを継続したところで、才能など身につかない。継続するなら、その先に自分がワクワクするような、目標や夢がなければならない

やらなくてもいいことを潔く捨て去ること。あらゆる人々にとって、一日は24時間しか与えられていない

・徹底して、自分が納得できる人生を演出すること。人生を演出できる人間だけが幸せな人生を歩むことができる

・自分の本能や感性に頼って、仕事を進める勇気が、あなたを偉大な仕事人に変えてくれる



スポーツ選手には、明確な目標があります。それに向かって、どういう努力をしたらいいかを工夫します。一流スポーツ選手は、それに成功してきた人です。

人生の目標が決まったなら、それにどう向かうか、一流スポーツ選手に学ぶべき点が多いのではないでしょうか。
[ 2011/06/20 07:38 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『幸福の方程式』山田昌弘

幸福の方程式 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書 44)幸福の方程式 (ディスカヴァー携書) (ディスカヴァー携書 44)
(2009/09/09)
山田 昌弘、電通チームハピネス 他

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幸福とは何か?この本では、主に、幸福感と消費の関係を探っています。その上で、消費を超えた何が、幸福感をもたらすのかを検証しようとしています。

バブル崩壊後、失われた20年の中で、日本人にとって、幸福とは何か?20年で変化した幸福感を知る上で、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「このような商品を買うと幸福になる」という「物語」が存在し、その物語の中に生き、その物語に求められる商品を手に入れていく過程で、幸福を実感する

・戦後から1980年頃までは、豊かな家族生活をつくるという「家族消費の時代」であった。豊かな家族に必要なモノを揃えていくこと=幸福という物語

・1980年代以降、「商品の消費=幸福」の時代の第二段階、「ブランド消費の時代」に入っていく。ブランドというのは、幸福の物語を「保証」する

・幸福と時間の関係では、好きなことをできるタイミングが、自分の意思で自由になるかどうかが幸福に影響する

・幸福を解く五つの鍵は、「自尊心」「承認」「時間密度」「裁量の自由」「手ごたえ実感

・知っていることが増えたとき、できなかったことができたとき、お金が増えているとき、自分が成長しているのを実感できたときなど、人生の手ごたえを感じるとき、幸福を感じる

・「手ごたえ実感」を得られているとき、人は、人生に迷いがなく、夢や目標に向かって努力するエネルギーに溢れている

・他人から認めてもらえる自分を好きになりたい。だから、自分を認めてもらうためには、他人が必要

・仕事の中で買物(発注)をすることも、消費者として買物をすることも、市場にとっては同じこと。仕事と消費は、意外にも似たもの同士

・「自分も何か夢中になれる趣味を持たねば」と言う人は、ハマる趣味は持てない。ハマる人は、言葉よりも先にハマってしまっている

・社会がどんなに不況になろうとも、ハマる人は、自分のこだわりに対して金に糸目はつけない

・「お金から解放されるためには、お金を全部使ってもよい」という一見矛盾するような考え方は、もし実現可能であれば、最も魅力的な選択

・財布をまったく開かずに過ごし、しかも充実した一日が過ごせたと感じる状態が、お金から解放された状態

・コミュニケーション能力とは、相手が何を喜ぶのかを知っている能力のこと

・自分の年金をつぎ込んで、会社の赤字を埋めながら、会社を続けているのは、年金を使って働くことを選んでいる。つまり、仕事をお金で買っているということ

・今、経済的に豊かかどうかよりも、将来に夢と希望を持てるかどうかが幸福を決定する



「幸福とは何か?」が、年齢、性別、職業、貯蓄額などによって、みんな違っているのが、今の世の中です。

この本には、今の日本の標準的な幸福が示されていますが、個々の幸福については、明解な答えは示されていません。

幸福は百人百様、千差万別です。幸福の方程式は、自分の心の声に解かせるのが、一番正解率が高くなるのかもしれません。
[ 2011/06/17 06:35 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『勲章・知られざる素顔』栗原俊雄

勲章 知られざる素顔 (岩波新書)勲章 知られざる素顔 (岩波新書)
(2011/04/21)
栗原 俊雄

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昔、ある団体の仕事をしていたとき、その団体の理事長と勲章の話題になりました。

私が、若気の至りで、その理事長に向かって「勲章なんて何でほしいのかわからない」と言いましたら、「君も歳をとったら、勲章をほしいという気持ちがわかるようになる」と言い返された記憶があります。

それから、二十年以上経ちましたが、いまだに勲章を欲しがる気持ちがよくわかりません。

国家の権力者にとって、庶民を掌の上で踊らすのに、一番安くて最適な道具が勲章です。

例えば、会社でも、社内表彰制度がありますが、表彰してもらっても、賞状だけで給料が上がらなかったら、馬鹿にされているような気分になります。

国家から、多額の金一封があるか、将来の年金が大幅にアップするなら、勲章をもらいたい気持ちもわかりますが、戦後の憲法下では、お金の妙味はなくなっています。

現在では、子供がつける缶バッジと本質的に変わらないのに、勲章をなぜ欲しがるのか?勲章を欲しがる心理とはどういうものなのか?

それを知るために、この本を読みました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・いかなる職業のいかなる地位の人が、どのような等級の勲章を与えられているかを見ることによって、国家の、職業に対する価値の高さと評価の度合いが明らかになり、国家の考える価値体系が明確になる

・大多数の人々は生きていくために、それぞれの分野で励み、働いている。評価の分かれ目は、模範になるかどうか

・明治憲法体制下では、勲章の恩恵は名誉だけではなく、年金が支給されていた。日本国憲法の下になり、勲章の年金制度は廃止され、経済的恩恵はなくなった

勲章受章者の官の割合が58%で、公職を含めれば66%。民(34%)の2倍近い。政治家や公務員は公のために働くのが仕事であり、相応の報酬も得ているのに、莫大な税金を使って勲章や褒章で顕彰する必要はないと、1990年代より批判が噴出している

叙勲の種類は、「1.春秋叙勲」(55歳以上、春秋ともに、4000人)「2.高齢者叙勲」(春秋叙勲対象外の88歳)「3.死亡叙勲」「4.外国人叙勲」「5.危険業務従事者叙勲」(警官、自衛官、消防吏員、海上保安官等、春秋ともに3600人)「6.緊急叙勲」

勲章を欲しがる人がいなくなったら、勲章の価値はなくなる。それゆえ、勲章を贈る側にとって、最も避けたいのは、辞退されること

・叙勲を受けることができない「欠格条件」は、有罪判決者、犯罪容疑者だけでなく、「刑罰等調書」(駐車違反の罰金刑を含む刑罰の有無、破産宣告または破産宣告手続きの有無など)も協議書類の一つ

・永井荷風は妖艶で詩情豊かな世界を描いた作家で、権力を嫌い、ストリップ劇場や娼婦街を取材し、品行方正とは言い難い暮らしであった。世間は勲章など受けることはないだろうと見ていたが、文化勲章を受賞し、授賞式当日の様子を詳しく記している

・社会党は「今の叙勲は戦前と同じく人間を細かく格付けしており、新憲法になじまない」「社会党員と議員は生存者叙勲を拒否する」との見解であったが、1970年の加藤シヅエ以来、党議は完全に溶解してしまった

・福沢諭吉は、栄典を嫌い、徹底してこれを避けた。叙勲の話があったときも、「迷惑」として辞退する書簡を送っている

・芥川龍之介は、勲章を「小児の玩具」に似ているとし、「なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩けるのか、不思議である」という文章を残している

・彫刻家の佐藤忠良は、文化功労者の打診を断った理由に、「職人に勲章は要らないから」と答えた。佐藤は「粘土職人」を自認していた

・作家の城山三郎は、「物書きの勲章は野垂れ死。もらわないよ。断ってくれ」とにべなく言った。さらに、自分が死んでも決して受け取らないように念を押した

・勲章の1個あたり製造費は約10万円。2010年度の予算額は約28億円

・勲章を受けるかどうかが、その人の人となりを判断する大きな要素。勲章制度をどう評価するかは、その人の歴史観、国家観に大きく左右される



この本を読み、わかったことは、勲章をもらえたのにもらわなかった、勲章辞退者こそが、立派な人物であったということです。その人たちを、心の中で表彰したいと思います。

勲章をもらうことと、AKBの総選挙で上位に入ることは、「人間心理の操られ方」において同じです。違いは、誰の手で、踊らされるかということです。

それならば、国家に選ばれるより、CDを買ってくれた人たちに選ばれて、踊らされたほうが、よっぽど名誉なことなのかもしれません。
[ 2011/06/16 08:15 ] お金の本 | TB(0) | CM(3)

『大人の実力』浅田次郎

大人の実力大人の実力
(2009/04)
浅田 次郎

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浅田次郎氏の著書は、一年前に「僕は人生についてこんなふうに考えている」を紹介して以来、2冊目です。

この本は、過去の20冊以上の著書から、大人とは何かについて触れた部分を抜粋したものです。

浅田次郎氏の考えが、小説を読まなくても、簡易にわかります。この本の中で、共感できたところが15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・書物さえあれば、親も学校もいらない。それだけで、いっぱしの大人になることはできる。世の中が豊かになり、さまざまの利器が登場して、書物に親しむ時間を奪い始めた。大人の実力を退行させ続ける原因は、その現実にある

・「人間ならば、いかなる事情があろうと、血をつなぐ子や孫をわが手にかけてはなりませぬ。それが士道なりと言うなら、武士など人間ではない獣でござります」 (五郎治殿御始末)

・「この明るさは天性のものではあるまい。世の中の辛酸をなめ、少しでも暗くなったら押しつぶされてしまうから、つとめて明るく生きてきたのだろう」 (王妃の館)

・「貧と賤と富と貴とが、けっして人間の値打ちを決めはしない。人間たるもの、なかんずく武士たる者、男たる者の価値はひとえに、その者の内なる勇気と法懦とにかかっている」 (壬生義士伝)

・「みてくれとか、お金のあるなしとか、弁がたつとか、そういうのって、人間の見栄じゃないですか。中味とはちがう」 (壬生義士伝)

・天は彼らに、使命を与えたのである。彼らはあまたの人々の中から選ばれ、人々の幸福のために尽くすよう、天から命ぜられているのである。運良と呼ばれる者は、その栄光と等量の責任を常に負っている (勇気凛凛ルリの色)

・「他人の痛みはわかってやりながら、自分の痛みはけっして他人に悟らせようとしない。あの人は何の理屈もなく、そういう武士道を生きた人だった」 (壬生義士伝)

・学問することの楽しみを忘れ、ただ立身のためのみにお仕着せの教養を身につけ、しかも決して「習う」ことなく、次々と忘れていく。高度な教育がすべての人々に行き渡っても、世の中が少しもよくはならないのは、多分このせいであろう (勇気凛凛ルリの色)

・「平和は無知な人間によって壊される。だから、平和のために必要なものは、真の教育と、それによって培われた豊かな教養であると、知識は人間を生かすのだと、この人は信じ続けている」 (王妃の館)

・一流の犯罪者は、一流の政治家や実業家と同様、基本的ポリシィを持っている。利益はそうした思想の副産物である (初等ヤクザの犯罪学教室)

・「魂の行方を定めるものは、善悪ではなく、死するときの覚悟であるように思えてならなかった」 (中原の虹)

・「自己表現のできない女は損よ。大人の女なら必ずしも自己主張する必要はない。でも、自己表現はしなくちゃだめ。主張は権利だけど、表現は義務。このあたりをはき違えると、実力も努力も正当に評価されない」 (椿山課長の七日間)

・「カネというものは、苦労して作った本人でなければ、その重要性はわからないもの。親から頂戴したカネを子供が有意義に使いこなすという例はあまりない。わからないなりに保守に徹すれば二代目としてほぼ合格」 (極道放浪記)

・「描かれた花は天然の花の美しさには及ばない。しかし、愛する人に胸の思いを込めて描いた花は、おそらく、天然の花に増して美しい」 (中原の虹)

・真の努力をした者は、己れの努力の至らなさを知る。だから、その結果、どれほどの名望を得ようとも、それを容易に信じようとしない。自分を取り巻く人々のすべてが、自分より優れた者だと考えてしまう (勇気凛凛ルリの色)



大人とは何か?それを一言で説明するならば、体験を積み上げてき人と言えるかもしれません。

しかし、自己の体験だけでは限界があります。信頼できる他人の成功談、失敗談という疑似体験も含めて、体験を増やすのが賢明な方法です。

この本には、信頼できる疑似体験が詰まっているように思います。大人の実力を知る格好の一冊ではないでしょうか。
[ 2011/06/14 07:24 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『撃墜王との対話-続々・大空のサムライ』坂井三郎、高城肇

撃墜王との対話―続々・大空のサムライ (1975年)撃墜王との対話―続々・大空のサムライ (1975年)
(1975)
坂井 三郎、高城 肇 他

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坂井三郎氏の本を紹介するのは、「大空のサムライ・戦話篇」に次いで、2冊目です。

坂井三郎氏は、十年ほど前に亡くなられました。現代の宮本武蔵と呼ぶべき人です。前回も紹介しましたが、太平洋戦争中、戦闘機のパイロットとして、敵機を64機撃墜の記録の持ち主です。

生きるか死ぬかの空中戦の中で、勝ち残った著者の言葉は、どの言葉にも重みを強く感じます。

1948年から現在も続く月刊誌「丸」の元編集長であり、現在も会長を務められる、高城肇氏との共著ですが、今回は、坂井三郎氏の言葉で、感動した箇所だけを抜粋しました。



真剣勝負では、たった一回、その勝負に敗れるということは、その場で殺されることを意味する。絶対に二度と挽回のチャンスは巡ってこない。真剣勝負は、それほど厳しいもの。だから、逆転勝ちを得意とするなんて戦法は、全くの誤り

・真剣勝負というものは、精神力だけでは、絶対に勝てない。自分の行う戦術思想と直接の戦闘技術が「理にかなう」、つまり、合理的でなければならない

戦いに臨むにあたって、いかに鍛錬し、研究し、努力したか。勝つ準備、勝つ手にはどういうものがあるか。また、自分がミスを犯した場合、いかにして戦勢を立て直し、主導権を挽回するか。といったことを想定して、準備したかしないかが、最後の勝負を決する

・こうすれば勝てるという「攻めの一手」を持つ。また、パニックに遭遇したときには、この一手で、敵の攻撃をかわしてみせるという「逃げの一手」もちゃんと用意する

・空中戦の真剣勝負の場合には、一回やられたら、永遠にこの世から、おさらばだから、初心者に対しては、やられない方法を教えていくしかない。しかし、そのままではいくらたっても敵を仕留めることはできない。そこで、一手先を読むことから教え始める

・こうなることは先刻ご承知。俺の腕をもってすれば、必ず挽回できる。結局、一時的な、形の上での主導権を与えているかに見せかけているだけと読めるようになればしめたもの

・コンディションが悪い、スタミナがなくなっている、ということを意識した上で、戦闘に臨めば、案外ミスをカバーすることができる

・100の力を持っている人は、70の力しか持っていない相手と戦う場合には、75の力でいいから、常に自分のエネルギーの蓄積をはかっておく。常に全力を出していたら、長い戦闘では、スタミナがだめになる

・事前に、先輩たちの成功談、失敗談を数多く聞いておき、それらを完全に自分のものにし、頭脳に記憶させ、分類して、引き出しに整理しておく。そして、いざという場に遭遇した瞬間、引き出しの中から最短時間に、正しいデータを抽出しうる能力を養うこと

・夜というのは、その日の戦闘の疲れを癒し、明日への戦力を蓄える時間。つまり、ゼンマイをまく時間。ところが、たいていの人は、一日が終わったあと、疲れを癒すだけ。翌日の心と体力の準備をなおざりにする

・力というものは、いつでも小出しにして、必要量より少し多い目にしておいて、ここぞというときに、瞬間的に、ぱあっと120%出す。出し終わったら、さっと引いて、また体力をチャージする

・宮本武蔵と立ち会って、負けたほうから言えば、「武蔵ってやつは、油断も隙もならん。ずるい奴だ」ということになる。勝った武蔵からすれば、ごく当たり前のこと

・これをやらなければ、俺は明日死ぬんだということになったら、人間は、二倍も三倍も力を出す

・スポーツでは、欧米流は相手をねじ伏せて、戦闘意欲を失わせたほうが勝つ。日本の武道は技を決めたら勝つ。プレー一つで勝てる勝利と、息の根をとめて勝つ勝利との差は非常に大きい。つまり、日本の武技の勝敗は、欧米流に言えば、勝負の一過程に過ぎない

・勝つか負けるかの最後の一手は、失敗をいかに利用するかしかない

・不運に多く遭遇した人が早くやられ、幸運の多い人が、自分の運に対して、ますます自信を持つ。そこに大きな差が出る。運の強い人は、運の経験、幸運の回数が多い人

・粘って粘って粘り抜く。最後の一秒まであきらめない執念深さが、やっぱり運につながってくる

・待てるか待てないか。言い換えれば、時間の持つ不思議な力を信じるか信じないか、また、時間の効用や運用について、知っているかいないかは、大変な差になる

・スランプに入ったら、まず悪ければ悪いなりに安定させ、その後の回復をはかるようにする。そして、スランプの間に学ぶ。これが「潜時有意

・生命がけでやるつもりになり、それを実行する小さな勇気を持ちうるなら、未来に光明はある。なぜなら、生命がけの勇気をもって行えば、人は胆力を養うことに成功し、ハラがすわっていれば、見えないものも見えてくるから

・戦国時代の堺の豪商たちは、荒くれ武将どもを相手に商売をした。財産も命も一度に失う危険の中にいたので、武将と同等以上の胆力を備えていた。彼らは、財産を動かすことを戦闘と考えていいた。だから、やることのすべてに勝負師としての味わいがある

・人がかけ出す時には、かけ出さない。競ってみんなが欲しがるものを、欲しがらない。どうしても必要なら、最後に手に入れる。慌てずに状況を判断し、心の中で対策を講じながら、自己陶冶を続け、最後のチャンスを確実にものにする。それが勝利への近道

・0対0の引き分けは、失敗ではなく成功。なぜなら、次のチャンスが与えられたから。だから、何としても、戦いは、勝ち残るか、0対0で引き分けて残るか、どちらでもいいから、残ることに執念を持たなければならない

・自分の死を意識したその時点において、ああ、おれの一生はいい一生だった、自分の生命力を無駄なく、最後の最後まで完全燃焼しておさらばすることができる、と思って死んでいく人ほど、幸せな人はいない



坂井三郎氏は、生きるか死ぬかのトーナメント戦で、勝ち続け、生き残った奇跡の人です。その言葉には、誇りと自信だけでなく、謙虚さも備わった、風格のようなものを感じます。

現代の宮本武蔵である坂井三郎氏のことが、このまま、時が経つにつれ、忘れ去られていくのは残念です。

この坂井三郎氏の体験談を、自分のものに取り込むことができれば、いざという時の役に立ち、人生の荒波を凌いでいけるのではないでしょうか。
[ 2011/06/13 08:06 ] 坂井三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『奴隷の時間、自由な時間・お金持ちから時間持ちへ』ひろさちや

奴隷の時間 自由な時間 お金持ちから時間持ちへ (朝日新書)奴隷の時間 自由な時間 お金持ちから時間持ちへ (朝日新書)
(2009/10/13)
ひろ さちや

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ひろさちや氏の本は、このブログでも数多くとり上げてきました。今回は、「時間」をテーマに、深く掘り下げた内容になっています。

著者は、日本人の時間に対する考え方に疑問を呈しておられます。日本では、常識と思われる時間の使い方も、別の角度で眺めると、異常なことばかりです。

この中で、時間について考えさせられたことが15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ワークシェアリングというのは、労働時間の短縮の上に成り立つ。日本人がワークシェアリングの思想を受け容れられないのは、労働時間の短縮が嫌いだから

・江戸は、ニコニコと貧乏をしていた。まるで趣味で貧乏をしているようなところだった。不況になって、仕事が半分に減ってしまったのなら、江戸のように、のんびりした生活のできる絶好のチャンスである

・前半の若いころの人生は、後半の老後の人生の準備段階。後半の老後こそ、大事な人生なのだが、日本人は逆にして、前半の若いころの人生に重きを置いて、後半の老後の人生を「おまけ」と考えてしまっている

・企業は、労働者を牛馬のごとくに扱き使おうとしている。日本の労働者はまるで奴隷並みに扱われている。そんな企業に忠誠心を尽くす必要はない

・企業の奴隷ではなく、精神的自立をして、自由人になること。自由人になったところで、表面まで変える必要はない。いや変えてはいけない。表面まで変えて、会社を首になってはたまらない。精神的自由を獲得すればいいだけ

・「人の心は金で買える」と、はっきり言われると、嫌悪感をおぼえる。ところが、その反対は「人の心を金で売る」ということ。自分の心を、働く会社に金で売っておいて、それを買う人を非難するのは不公平

・心を売らぬというのは、会社に忠誠心を持たないということ。会社と従業員は契約関係。江戸時代の殿様と家来ではない。だから、会社の悪は告発すること。犯罪を告発して会社が潰れると路頭に迷うといって黙っている人は、心を会社に売り渡して奴隷になった人

・金ではない。欲しいのは、ゆったりとした人間の心、ゆったりとした時間。そのためには、いやいやながら働く、働かざるを得ないから働く。できるだけ少なく働く、できるだけ怠け、忙しくしないでおく

・命は時間の集積。一年、一日、一時間、一秒の集積が寿命にほかならない。ならば、その一時間をじっくり味わって生きるべき。その大事な一時間を仕事のために使ってしまうなんてもったいない

・マルクスの次女と結婚したフランスの政治家ラファルグは、自著「怠ける権利」の中で、「マルクスは資本家に対して、怠ける権利を要求すべきだったのに、働く権利を要求した」と、マルクスの間違いを批判した

・金儲けのために、時間を切り売りするから、それが悪質な時間になってしまう。時間というのは、本来良質なもの。それを現代日本人は、悪質な時間にしてしまった

・仕事には二種類ある。一つは、金を稼ぐための仕事。もう一つは、人間としての大事な仕事で、「老いる仕事」「病む仕事」「死ぬ仕事」。にもかかわらず、大事な仕事を押っ放り出して、金儲けの仕事に懸命になっている人が多い

・生活費を稼ぐために過ごす時間は、一種の動物的時間。その時間は人生から差し引かなければならない。その差し引いた残りの自由時間を幸福に暮らせば、「人生の幸福」を得ることができる

・「人生の幸福」を得るためになすべきことは、一つに、「自由時間を増やすこと」、もう一つは、「自由時間をうまく生きること」、の二つ



この本を読むと、自由とは何かを改めて考えさせられます。

自由とは、生活のためにお金を稼がなくてもいいこと。そして、時間を思い通りに使えることだと思いました。

つまり、現代の多くの「日本の老人」ではないでしょうか。ということは、生きる目標は、「早く老人になりたい」ということかもしれません。

このことを頭に置きながら働き、できるだけ、早く会社を辞めることができるように、人生を過ごしていけばいいのではないでしょうか。

[ 2011/06/10 06:23 ] ひろさちや・本 | TB(0) | CM(0)

『人はなぜ勉強するのか千秋の人・吉田松陰』岩橋文吉

人はなぜ勉強するのか―千秋の人 吉田松陰人はなぜ勉強するのか―千秋の人 吉田松陰
(2005/05)
岩橋 文吉

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吉田松陰の本を採り上げるのは、「吉田松陰名語録」「吉田松陰誇りを持って生きる」に次ぎ、3冊目です。

昨年、萩の松下村塾周辺を散策しましたが、吉田松陰の家のご近所さんから、歴史に名を残す人たちが輩出しています。

優秀な人を集めて、英才教育したのではなく、一般人を大化けさせたとしか考えられませんでした。

その秘訣は何か?その答えの多くが、この本に掲載されています。吉田松陰の実話、逸話でためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「世の中に読書する人が多いのに、真の学者がいないのは、学問をする最初に、その志がすでに間違っているからである」

・「井戸を掘るのは水を得るため、学問をするのは人の生きる道を知るためである。水を得ることができなければ、どんなに深く掘っても井戸とは言えないように、人の生きる正しい道を知ることがなければ、どんなに勉強に励んでも、学問をしたとは言えない」

・松陰の考えている学問、勉学というのは、全体としての人生の学であり、人生を真に人として人らしく、正しく生きる道を明らかにすることを目指している

・松陰は、天性(天から授かった本性)が身分の差なく、万人に等しく授けられていることを信じ、これを「真骨頂」と呼んでいる

・松下村塾は、書物による勉学だけでなく、さまざまな作業もする「労作共同体」であった。その共同体の中では、士農工商を一緒にして、青年と青年がぶつかり合い、互いに自分の持ち味(真骨頂)を磨き合う、自然の交わりができていた

・「学の効果は、気持ちや意志がまず通じ合い、次に道理や道徳を理解するところにある。こまごまとした礼法や規則の及ばないところである」

・「仁義道徳の環境の中に身体丸ごと漬けさせて、知らず知らず、善に移り、悪に遠ざかって、古い悪習が自然とよくなるのを待つことである」

・松陰は、志士たちの粗暴な振る舞いを厳しく戒めた。常日頃は、穏やかに優しく礼儀正しく自制して、内面に豊かな精神的貯えのある人こそ、いざというときに、大気迫を発揮できる

・「初めの一念が、名声や利益のために始めた学問は、進めば進むほど、その弊害が表れ、広い知識や言葉で飾っても、ついにその害を包み隠すことができない。節操を欠き、権勢や利益に屈服し、その醜いありさまは、とても言い表しえないほどである」

・「志を立てて、自分の信ずるところを行えば、志を遂げても驚かないし、うまくいかなくても落ちこまないもの」

・「世の中のそしり誉まれというものは、たいてい事実と違うものである。それなのに、そしりを恐れ、誉まれを求める心があれば、心を用うるところ、皆外面のこととなって、真実味が薄くなる」

・「そもそも、空しい理屈をもてあそび、実践をいい加減にするのは、学者一般の欠点である」

・「日本の国柄を明らかにし、時代の趨勢を見極め、武士の精神を養い、人々の生活を安らかにした歴史上の秀れた君主や宰相の事蹟や世界の国々の治世のしくみを調べ、一万巻の本を読破すれば、つまらぬ学者や小役人にならなくてもすむ」

・松陰は三つの実践項目を立てている。「一、志を立てて以て万事の源となす(立志)」「二、交を択びて以て仁義の行いを輔く(択交)」「三、書を読みて以て聖賢の訓を稽う(読書)」。現代においても、学問、勉学にいそしむ者が片時も忘れてはならない心得



吉田松陰のことを一文字で説明するなら「純」だと思います。この純粋さが、幕末の志士たちの心を動かしていったのではないでしょうか。

教えるとは何かを、吉田松陰が示してくれています。教える立場にいる方は、吉田松陰をもっと知らなければいけないように思います。

[ 2011/06/09 06:05 ] 吉田松陰・本 | TB(0) | CM(0)

『ジョージ・ソロス不滅の警句』青柳孝直

ジョージ・ソロス不滅の警句ジョージ・ソロス不滅の警句
(2009/04/27)
青柳 孝直

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ジョージ・ソロスの本を、このブログで採り上げるのを、躊躇していました。

15年ほど前に、「ソロスの錬金術」という本を読みましたが、その時は、理解不能でした。その中の「再帰理論」を5年前に再び読み返しましたが、結局のところ、わからず、本棚の飾りになっています。

ジョージ・ソロスの一生を描いた「ソロス」を読んだのは8年ほど前です。ユダヤ人としての逃亡、慈善事業家としての活動などに感動しましたが、ここには、投資家ソロスについては、あまり書かれていませんでした。

投資家でありながら、哲学者でもある、ソロスの考えを理解しようとしても、非常に難解です。

この本には、ソロスの言葉が100ほど、コンパクトにまとめられています。これなら、理解できそうだと思い、翻訳者の解説を無視し、ソロスの言葉だけを読みました。

少しだけわかったように思えましたので、今回、このブログに取り上げてみました。20ほど、ソロスの言葉を紹介したいと思います。



・収益がどのくらい見込めるかは、根拠となる対象の固有の価値によって決定されるものではなく、価格変動によって表現される一般大衆の売買意欲によって決定される

・参加者は、自分たちにとって最良の利益に基づいて行動しているのではなく、「自分たちにとって最良の利益という認識」に基づいて行動しており、この二つのことは同一ではない

・現実とそれに対する私たちの考えのギャップが、現実の世界に不確定要素をもたらす

・現実を正確に理解するには、人々の考えに影響されない自然現象と、意志を持つ関与者が存在する社会現象とを区別しなければならない

・金融市場の際立った特徴は、道徳とは無関係である

・金融市場は、うぬぼれに対して非常に冷酷である

・社会科学は自然科学を無理矢理に模倣しようとした結果、扱う対象をむちゃくちゃにしてしまった

・金融市場に伴うのは、自由な取引だけでない。権力と政治が重要な役割を果たす

・結局、市場至上主義は、金持ちと権力者に都合のよいイデオロギーである

・市場では、協調などそっちのけで競争を重要視している。しかし、協調がなければ、法も市場も文化も存在しない

・つまらないビジネスには、つまらない人間が集まる

・市場経済の主な利点は、人々に選択の機会を与え、自分の失敗から学ばせることである

・私は支配的な見解とは相反する投資テーマを見つけようと、意識的に努力した

・人々は自分が生きることに精一杯である。集団的な生存に対する真の脅威、あるいは仮想の脅威がなければ、人々が共通の命題に目覚めることはあり得ない

・市場は常に弱者、つまり確固たる信念を持たない投資家を完膚なきまで叩きのめす

・現実は欠点だらけで出来上がっている。ある種の考え方が広まるという事実は、それが妥当であるということを意味するわけではない

・均衡の概念を金融市場に適用することは、それ自体が誤解である

・私の好きな格言は「逃げるが勝ち」である




ジョージ・ソロスは金融市場が何たるかを熟知できたので、世界的な投資家になりました。

その熟知とは、科学とは無縁の、哲学的なもの、人間の本能的なものです。そう簡単に理解できるものではないですが、この本には、理解へのヒントが掲載されています。

それは、「どうしたらいいのか」のヒントではなく、「どうしたらいけないのか」のヒントではないでしょうか。
[ 2011/06/07 07:40 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『最高にすてきな人生』ジェームズ・アレン

最高にすてきな人生最高にすてきな人生
(2004/05)
ジェームズ アレン

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不思議な本でした。読み始めは、退屈な本に思われたのですが、読むにつれ、どんどん引き込まれていきました。

ジェームズ・アレン氏は、イギリス生まれ。素朴な生活から育んだ思想書を数多く残しています。亡くなられてから、すでに100年経ちます。

素朴で簡易な言葉が多い文章なので、重要なことを、見落してしまいそうになりますが、この本の中で重要だと思えた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人生は、富や地位や名声ではなく、豊かな知識成果決意である

・過去と未来は、夢のようなもの。「今」だけが、唯一の現実。過去や未来は、現在の消極的な投影。だから、過去の後悔の念や、未来についての想像にひたって生きると、最も重要な人生の現実を見失う

・今、生きる。そうすれば、豊かに満ち足りる。今、理想の姿をとる。そうすれば、あなたは、完成している

清らかな人は、極めてシンプル。清らかであるためには議論など必要ない。清らかでない人は、限りなく複雑で、いつも自己弁護するための議論を必要とする

・自分の心の外で起こる出来事の奴隷になってはいけない。すべての物事や出来事は、自分を活かすべきものであり、育ててくれるものとみなすことが大切。それが本当の知恵である

賢明な人は、いつも自分が学ぶことを切望しているが、他の人に自分の考え方や教えを強制しようとは思っていない

・必要なことは、自分が強く、賢くなるために、今の状況を活用して生きること

・疑い、心配、悩みとは、利己心の中から生まれる実体のない影。魂が晴れやかな高みにまで登った人は、もはや悩まされることはない

穏やかな人は、暗闇の中で輝き、世に知られずに栄えていく。穏やかさは、自ら自慢することも、宣伝することもできないので、うわべや外見に夢中になり、目をくらまされている精神的に目覚めていない人には見えない

・歴史上の栄光とは、戦いと権力において、偉業を達成すること。歴史は、穏やかな人の、平和と優しさの栄光を記録しない。歴史は、力によって成し遂げられたことのみを記す

・自分の心の中から、邪悪な心を取り除く。そうすれば、他の人の心の中にある邪悪なものに、あえて抵抗することが馬鹿げているとわかるはず

・穏やかな人は、自分のためのものを要求したり、欲しがったりしない。しかし、すべてのものが、この人を守り、保護してくれるから、すべてのものが、この人のもとへやってくる

正しさを尊ぶ人は、隠さなければならないことは何もない。人目を忍ばねばならない行動を取ることもなく、他人に知られたくないような思考や欲望も心に抱いていないので、恐れることもなければ、恥じることもない

愛のある人が思考したとき、考えたことは、すでに達成されている。その人が話せば、世界中の人が、その言葉に耳を傾ける

・知性だけでは失敗することでも、愛があれば成功する。知性だけではわからないことも、愛があればわかる。本当の知性は、愛があることによって、初めて完成する

・偉大さは善良さから生じる。善良さは純真さから生じる。だから、善良であること、純真であること、偉大であることは、切り離せない

・偉大な人は、同時代の人には理解されない。その輝かしい姿は、歴史を経てはっきりとわかってくる。これは、距離を置くことによって、初めてわかる魅力

・流行的なもの、派手に宣伝しているものは、時代が過ぎると、あっという間に消えて、永続しない。これに対して、偉大なものは、世に知られないところから、ゆっくりと現れて、永遠に記憶に残るものとなる

・最も偉大な芸術は、自然と同様、飾り気のないもの。それは、小手先の技術も使わず、気構えもなく、作意のこもった努力もない

・心の狭い人は権威を求め、権威を愛する。偉大な人は、決して権威的ではない。権威的でない人ほど、人々から信頼を得るもの

・今は未熟と思える人は、まだつぼみの状態。目には見えない美しさが、その人の内に隠されていて、やがて美しい花として開花する。このように、他の人を見るならば、どこにも悪は存在しない。すべてがよいものに変わる



この本のどのページを読んでも、心が洗われてきます。そして、真面目にしっかり生きていくように、励まされます。

素朴な言葉で書かれているので、後で、その言葉が、ゆっくりと、しっかりと、自分の心の中に根を張るような感じがしてきます。

清らかに、賢明に、穏やかに、生きていくことを忘れなければ、誰でも偉大な人間なれることを悟らせてくれる、人生の指針となる書ではないでしょうか。

『見えない世界とのコンタクト-自然と生き物に触れて』藤田悦史

見えない世界とのコンタクト―自然と生き物に触れて見えない世界とのコンタクト―自然と生き物に触れて
(2004/10)
藤田 悦史

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このブログに度々登場するFさんとは、この本の著者の藤田悦史さんです。

以前いたF社で、直属の上司だった人です。私が会社を辞めてからも、仲良くさせていただき、北欧諸国やスイスへの視察旅行にも、ご一緒させていただきました。

今のF社の社長の上司としても活躍されていましたが、脳梗塞を患われて、現在はリハビリ中です。足の方に後遺症があるものの、頭脳は相変わらず明晰です。「文化と達成」というブログを毎週更新されています。

海外の知識人と交友もされていますので、今、アメリカ人は何を考えているか、どのように考えているかなどのメールを寄こしてくれます。このブログもよく読まれており、「読むべき本」を推薦していただいています。

知っている人だけに、感想を書きづらいのですが、この本の中で、線を引いた箇所を紹介したいと思います。



・人間の頭脳よりも、生命力の知恵(命の営みとして、すべての生き物たちが共有している知恵)のほうが、はるかに優れている。しかし、一般的には、人間の頭脳のほうが優れていると考えられている

・人間の頭脳が生み出した、組織、企業、権力、官僚制など、すべては、同時にお金を儲けるという一点でつながっている

・30数億年前から始まるすべての生き物に共通する、生命の一本の木がイメージできるようになると、自然と生き物たちの命の複雑な共生関係が見えてくる。この共生関係が見えてきた人は、生き物、自然環境、地球に対して、優しく謙虚な気持ちになってくる

自然からインスピレーションを得た、工芸家や芸術家の作品や詩人の言葉は、私たちを慰め、やすらぎの心を甦らせるだけでなく、生きる喜びを与えてくれる

・自分だけが、自分の企業だけが成功しようと、利己的なことばかりを考えて行動しているのは、大きな頭脳を持っている人間しかいない

見えない世界(生命力からの知恵)と見える世界(頭脳からの判断)の、極端に一方の世界に偏らないライフスタイルの創造が求められている

・お金を稼ぐことがすべてであるとか、自分だけがよい生活をしようとか考えている人からなる組織から、ビジネスに必要な新しいアイデアは生まれてこない

・頭脳で考えていくと、やがて、お金の価値から役に立たない人間や動植物や自然は、どうなってもよいのだという考えに、人間はなっていく

・今の世代のためだけに勝手に使って、一部の人間が利益を得るための自然破壊を、見逃してはいけない。私たちには、次の世代が健全であるために、この自然を引き継いでいく役割がある

・頭脳で考える人間が、神も、人間の形をしているような宗教を生み出した。人間の形をした神を考えた人間は、優れた頭を持っている者が、他の人間よりも優れた人間であるという考えになっていく

・会社、社会、利害関係などの見える世界からは、忙しく動き回るライフスタイルを過ごすようにと、無言の圧力がかかる。でも、反対に必要なのは、怠け者のライフスタイル。静かな時間を持たない限り、見えない世界からの波動をキャッチできにくい

・見える世界ばかりを見ている視野の狭さから、ストレスが蓄積していき、感情的になったり、愚かな同じ行動を繰り返したりするのが、弱い生き物である人間

・いくらお金を持っていても、自然や美しいものがわかる素直な心や教養がなくては、お金の使い方がわからないことと同じ

お金が優先する世界に住んでいると、無限にいつまでも、お金や物や権力を追い求める生き方から逃れられなくなる。そして、この世界から脱落しそうな不安が、大きな影響を与える

頭脳を使う社会が進めば進むほど、人間には暴走する基本プログラムが組み込まれている。だから、頭脳からの判断では、見えない世界、宗教、哲学、自然環境、美しい作品などは役に立たないものとして、社会の隅に追いやってしまう

・組織は、そのままでは、それ自体が無限にお金儲けを目指すリバイアサン(人間がコントロールできない怪獣)のように増殖して、誰もが止められない状態になっていく。だから、企業活動には、近江商人の三方よし(地域、消費者、会社)のようなルールが必要

・一人の人間が必要とするお金は、それほど大した金額ではない。お金よりももっと大切なことに関わることが、人間には必要。どんなに困難な状況が訪れても、質素で謙虚な生き方に慣れていれば、多くのお金は必要ない。欲望の虜にならないこと




頭でっかちの人間が考えて、ガチガチ頭の官僚的組織の会社が運営する、原子力発電が次世代に大きな重荷を与えたということは、「見えない世界」を無視してきたことに他ならないと思います。

人間、子供たち、生き物、自然、地球を慮る気持ちがあれば、このような悲劇は起こらなかったのではないでしょうか。

ちなみに、この本は、7年前に出版されましたが、冒頭が、金子みすゞの大漁の詩から、始まります。現代日本社会への警笛として、今、「読むべき本」のように思います。
[ 2011/06/03 08:22 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『アフリカ動きだす9億人市場』ヴィジャイ・マハジャン

アフリカ 動きだす9億人市場アフリカ 動きだす9億人市場
(2009/07/14)
ヴィジャイ マハジャン

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日本人にとって、アフリカは遠い存在です。南米諸国や中近東諸国以上に、よくわかっていない国々のように思います。

サハラ砂漠以北以南で、文化や民族も全く違うのですが、よく理解していない人もまだまだいるのではないでしょうか。

アフリカには、中国やインドと同程度の9億人の人口がいて、平均年齢においては、世界で最も若い地域です。

この本は、今、アフリカで何が起きているのか、アフリカがどう変わろうとしているのかを教えてくれます。

参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・仮にアフリカが一つの国だとすると、インドを上回り、世界10位の経済規模になる。BRICsのうち、中国以外のブラジル、ロシア、インドを凌いでいる

インドと中国の企業が、自国にいくらでも市場機会があるのに、アフリカに数多く進出するのは、同じ経験をしてきたゆえに、アフリカの市場機会に気づいているから

・一人当たり国民所得で、中国を上回っているアフリカ国家が十数カ国ある。企業投資ファンドと在外アフリカ人たちの活発な投資が市場機会を拡大している。情報通信や金融の面での発展がさらなる発展の土台となっており、アフリカは意外に裕福

・南アフリカは、サハラ以南のアフリカにおける経済の牽引役というだけでない。アジアでシンガポールが果たした(金融と貿易の玄関口)ような役割を果たしている

・アフリカの全人口の過半数が24歳未満。世界で最も若い市場。2050年までに、アフリカの人口は9億人増えて、現在の人口が倍増すると予測されている

・世界中の高成長国上位10カ国の8カ国、業績の良い株式市場の8市場がアフリカにある

・在外アフリカ人は1億人以上いる(アフリカ系アメリカ人などの移住者の子孫も含めた場合)。在外組がアフリカに投資し、海外で教育を受けたアフリカ人が故郷に帰国するにつれ、アフリカの発展に大きな戦力となっている

・多くの発展途上地域では、携帯電話こそが、初めて手に入れる通信インフラである。零細企業に事業基盤を与え、地方と世界をつなぎ、知識を広める道具となっている。携帯電話こそが経済発展の根幹

アフリカ市場は組織化されていない。西欧では、小売業全体の売上の59%を上位30社が占めたのに対し、アフリカ及び中東の上位30社の売上は29%

・中国の長城汽車、奇瑞汽車、吉利汽車といった自動車メーカーがアフリカに進出し、中古車に対抗できるほどの価格で新車を販売している

・韓国のLG電子は、年50%近い成長率で、アフリカ市場を拡大した。その大きな原動力となったのが、イスラムの祭日に的を絞ったプロモーション(犠牲祭の冷蔵庫、ラマダン期間のテレビなど)だった

・南アフリカのように比較的インフラが安定した国でも、限られた電力に成長を脅かされている。発電所の建設には何年もかかるので、発電機太陽電池といった代替物は成長を続けている

・2050年までに、コンゴ民主共和国、エジプト、ウガンダがナイジェリア、エチオピアに続いて、世界で人口の多い国15カ国に名を連ね、日本、ロシア、ドイツを圏外に押し出す

・アフリカの15歳未満人口は全人口の41%。インドの33%、ブラジルの28%、中国の20%と比べても高い割合

外国への出稼ぎ者は、母国に大きな影響を及ぼす。在外ガーナ人が母国へ送金した金額は、国がカカオや金の輸出で得た収入よりも多かった

・P&Gは、浄水粉1袋10ℓ分を8.5円で販売し、ウガンダ、ケニア、マラウイなどの発展途上国に住む人々に、200万キロリットル以上の清潔な水を供給している

・アフリカの人々が一番求めているのは、まともな広報。メディアは、アフリカの悲惨な状況について話すことばかり好んで、成功を伝えることに対し、抵抗感を示している



日本以外の世界の国々は、アフリカを資源輸入国としてではなく、成長市場国と見て、積極的に進出しています。商業活動も活発的に行っています。

この本を読む限りにおいて、日本企業や日本人は、アフリカに対し、まだまだ、多くの偏見をもっているように思います。

アフリカは、日本から見れば、距離的にも、文化的にも、遠い存在ですが、成長市場であることには、間違いありません。今後とも、アフリカに注目していきたいと考えています。
[ 2011/06/02 06:30 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)