とは学

「・・・とは」の哲学

『本能知と理知-見えてきた生命の実体』沢登佳人

本能知と理知―見えてきた生命の実体本能知と理知―見えてきた生命の実体
(2003/12)
沢登 佳人、沢登先生喜寿記念出版会 他

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沢登佳人先生は、新潟大学法学部の名誉教授です。数々の専門書を出版されています。

現在は、法学者としての枠を超えて、幅広く活動されています。社会学者、哲学者、宗教学者の顔も併せ持つマルチな方です。つまり、「知の巨人」です。

ところが、「知の巨人」として、先生の存在は余り知られていません。

この本は、このブログに度々登場するFさんにいただきました。Fさんは、沢登先生の学会の事務局に関わられています。この書の巻末に、Fさんが、あとがきを述べられています。

とにかく、すごい本です。説明なんて要らないと思います。紹介したい箇所が数多くありすぎて、「本の一部」しか紹介できていませんでしたが、とにかく要点をご覧いただければと思います。



・あらゆる生物は、本能知の指示に従って、生きている。生命の何たるかを知るには、本能知を知らなければならない。人間は、本能知の他に、理知の指示に従って、生きている。人間の何たるかを知るには、本能知と理知の相互関係を知らなければならない

・人間とその理知は、長い進化過程で、他の諸々の動植物の本能知の結集による「本能自身の進化=自己超出」の一段階。つまり、本能知は、理知の父母、理知は本能の子。本能知の創造力を否定することは、父母が自分を生んでくれたことを否定するのと同じ

・行動計画を決定するのが「思索」「工夫」の過程。計画に従って行動を起こすのが「実行」「実現」の過程。「思索」「工夫」の過程を外界から眺めると、何の変化も起きていないように見えるが、実際には、内界で活発な変化、すなわち、思考の自己超出が進行している

本能知の主体は、各生物個体ごとに独立して存在するのではなくて、全生物全体の生態系全体に一体化して存在する

・近代、現代の理知は、知性の傲慢に陥り、「あらゆる創造力は理知のみにあり、本能知は理知の操り人形にすぎないから、脳が死ねば、自分の力では何もすることができない」という考えが普及してしまった

・生物が「生きる」とは、「自己超出する」こと。生物は、全存在の生を自分自身の生として生きている

・自分のやる仕事が、本当の価値創造=自己超出であったなら、他の人や生物の価値創造=自己超出と一体化して、来宇宙に引き継がれていく。この世限りでは終わらない

・自己超出は、自己の再認識(=見直し・反省・省察)による、新しい自己の発見である。そのためには視座が必要。一般的には、自己の行為を再現するもう一人の自己がその視座に当たる。他人の眼、他人からの批判、古人の著書を反省の資にすることも視座

・質問や批判や提言に、多くのヒントがある。どう理解させるか、どう誤りに気づかせるか、どう修正したら有益な提言になるかを考えながら喋るうちに、自分の考えの足らないところ、あいまいなところに気づき、その克服方法を発見する

・理知は自己認識であることを本質としているから、自己認識しえない理知的存在を、自分とは認めない。その結果、自分の自己超出は、出生に始まり死に終わる束の間の幻にすぎないと考え、嘆き、そして死を恐れる

・死は人生の絶対的終焉で、その先の未来には何も存在しない。永遠の霊魂を願っても、転生を祈っても無駄。しかし、同時に死は、現宇宙での人生よりも輝かしい来宇宙でのもう一つの生への旅立ち

・自分の本能知的生命活動は、やりっ放しでは、記憶として残らない。残すには、大脳を使って、反芻し、意識化しなければならない

・人間は独善的、利己的な理知を持っているので、病気や仕事で苦しくなると、自分だけの利害や思惑で、延命努力を放棄したり、自殺する。しかし、本能知は、全存在の意思だから、個人の利害や思惑に関わりなく、最後の最後まで生きる可能性の追求を止めない

・理知的生命活動は、本能知の創造力の偉大さ、霊妙さを「覆い隠し」「霞ませる」ことによって可能となる。大学者たちも、本能知を理知に遥かに劣る知恵と思い込んでいる

・今の地球生態系は、過去・現在の全生物が、その共有する本能知を使い、共同して創り上げてきたもの

・精神障害者は時に素晴らしい創造力を発揮する。植物人間や脳死の状態にこそ、人間を超える、脳神経系に依存しない、新しい理知が備わり、貴重な創造に携わることができる

・経済学も真理の探究のための学問。金儲けの学問と考えてはいけない。本当の学問なら、金を儲けるにしても、それを人格の尊厳・発展のために使い、人間の社会だけでなく、自然生態系全体の豊かな発展のために役立たなければならない

・真善美というものは、常識的な観念であり、その中身は不明確で、きちんと定義できないが、それが何かということは、誰もが共通してわかっている

・人間は、生まれてこの方、いろんな体験を積んだ中から、記憶として残っているものを意識化し、組み合わせて、一つの意味連関を作り出す。その意味連関の中で、真理の発見、美の創造の目的が生まれてくる

活気と節度を兼ね備えた経済活動が行われる金利は、歴史的に5%前後。景気回復に有効な引下げ限度は3%~4%。それ以下では、経済権力を握る層(金融業、大企業、政府)の利己心が、経済を操作し、労働者、消費者の取り分を奪うので、経済は不健全化する

・心は、何かをしようとするとき、まず「これから何をすることが可能か」を考える。その可能性は。視聴嗅味触など物質を知覚する方法では認識できない。したがって、未来の可能性は、考えるという心の働き(=思考)の要素ということになる

・理知は、それ自身としては、甚だ視野の狭い貧しい知恵であって、本能知のような、生態系全体から、各細胞器官一つ一つの機能に至るまで、つぶさに見渡して、適切に指示を与える霊妙な知恵とは、比較すべくもいない

・今の文明社会では、夫婦や親子のような身近な人々の間でさえ、日常生活上の関わりが部分的、断片的なっている。これらの関わりの重要部分は、専ら利害や打算によるもの。利害を超えた人的交際の範囲は狭くなって、理知の利己性は先鋭化している

・私たちは、謙虚な心で、利己の情念を抑制し、地球生態系をこれ以上破壊しないように、責任を持って大切に保全て、人間の跡を継ぐ、新型理知生物の到来に備えなければならない



この本には、「人間も、生命のネットワークの一部であるという認識を持つことによって、世の中に平和が訪れ、安心して暮らせるようになる」といった仏教的な教えに似たものをすごく感じます。

謙虚になるには、本能知の声に従い、理知を抑えることが重要だということがよくわかります。

「理知」が幅を利かす時代ですが、「本能知」の存在を忘れないように、謙虚に行動していきたいものです。
[ 2011/05/31 07:12 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『フロー体験とグッドビジネス-仕事と生きがい』M.チクセントミハイ

フロー体験とグッドビジネス―仕事と生きがいフロー体験とグッドビジネス―仕事と生きがい
(2008/08)
M. チクセントミハイ

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チクセントミハイ氏は、フロー理論を最初に提唱した、世界的に有名な心理学者です。

フローとは、「のめり込む」「深くはまる」「夢中になる」「集中する」「没頭する」「時間を忘れる」ような状態のことを指します。

この本には、ビジネスとフローの良き関わりについて、詳しく記されています。参考にしたい箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・見識もなく、無責任な権力は、いつの時代でも危険なもの。権力を持った聖職者や貴族や大地主が、コミュニティーの幸福をなおざりにしても構わないと感じたとき、紛争と革命が起こった。ビジネスも例外ではない

・企業の成功は、社会の幸福に役立つと信じるからこそ、人々は、ビジネスマンに、権力や特権を与えている。しかし、彼らが、社会を気にかけず、自分たちの利益だけに関心を示すように見えたら、ビジネスも社会もうまくいかなくなる

・歴史を振り返ると、社会を先導したエリートが、リーダーになれたのは、大多数の人々の生活を改善する約束をしたから

・よい人生には、次第に増大し、感情的、知的、また社会的な複雑さに発展していく成長の軌跡がなければならない

・失明したり、麻痺症のような苦しみに陥った人々は、二、三カ月は大変なことと思うが、その後、通常の幸福のレベルに回復する。予期しない富を手に入れた人々も、数カ月は幸福だと感じるが、その後はもとの状態に戻る

・人生のシンボル(新しい車、大きな家、豪華な休暇)を切望する結果、中流の人々の多くが、ますます長時間働くようになった。彼らは、人間として成長し、価値ある自尊心を獲得し、親密な人間関係を結ぶ機会を喪失している

・幸福の証しとは、もう何も欲しいものがないという状態。何か不足していると感じる限り、幸福だと思うことはできない。商品を作って売るのは、幸福とは正反対のビジネス

・最終目標にこだわると、しばしば成果に支障をきたす。真の楽しみは、目標を達成するために踏む過程の体験の質から生まれるのであり、実際に目標に到達することではない

・人間の心は、急ぎの用事がないときは、怖れを感じ、実現されていない願望に向き合うようにプログラムされている。精神を集中する仕事がなければ、ほとんどの人は、次第に憂鬱になってくる

・人生を楽しみ続けることができるのは、裕福で、気楽だからではない。新しいチャレンジを積極的に探し、新しいスキルを身につけていくからである

仕事の環境は、そこに従事している人が、どの程度成長するかということに、かなり影響する。ワーカー各人のスキルが最大限使用され、磨きをかけられるような機会を設けるのはリーダーの責任である

・人は楽しい活動に注意力を注ぐ。それと同様に、時間も多く割り振る。多くの人は家庭生活のための時間が十分にないと不満を言うが、事実ではない

・あまりにも仕事に没頭した結果に起こることは、時間の浪費がとても不快になるということ。中堅幹部のカウンセリングで、彼らが、変えたがっていた個人的特徴の一番は「短気

・もし精神エネルギーを意識の内に注がず、外部の報酬に追い求めることに空費すれば、自分の人生を自由に支配することはできずに、周囲の事情の操り人形になってしまう

・グッドビジネスを行う組織は、そのメンバーの個人的成長に関心がある。進化している組織は静止しておらず、複雑な方向へ向かう。生涯学習の機会の提供こそ、個人的成長へのもっとも明確な関心



著者のチクセントミハイ氏が、グッドビジネスの条件として、挙げているのは、

社員が「のめり込む」「はまる」「夢中になる」「集中する」「没頭する」「時間を忘れる」状態になるような組織を作ること

一緒になって、技術を学び、人間的に成長していくことを目標にすること

以上のグッドビジネスの条件だけでなく、グッドカンパニーの条件とは?グッドリーダーの条件とは?グッドワークの条件とは?も同時に、理解できました。

人間の心から発想して、会社、仕事、指導者を構想すると、すべて、うまくいくように思います。

この本は、人間の心に還ることの大切さを教えてくれる書ではないでしょうか。
[ 2011/05/30 08:06 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『そこで夢はかなえられる・人生の時を大切に-アートに話そう』池田満寿夫

そこで夢はかなえられる 人生の時を大切に―アートに話そうそこで夢はかなえられる 人生の時を大切に―アートに話そう
(1994/09)
池田 満寿夫

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池田満寿夫氏の本を紹介するのは、「美の値段」に次いで2冊目です。「美の値段」は、「芸術とお金」をテーマにして、美術品の値段がどう決まるかを掘り下げた書でした。

今回、紹介するのは、著者の芸術論です。著者は世界的な版画家として名を成したたけでなく、小説家として、芥川賞を受賞し、映画監督も務めるなど、多彩な才能の持ち主でした。

著者の芸術論は、美の感覚を論理的な言葉で表現しているので、素人でも、わかりやすいと思います。

この本の中で、共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ものをつくるというのは、ただ単に、技術の披露ではない。自分の中に湧き起こる何かを表現したい欲求。欲求にムダはない

・我々の社会は芸術、アイデアに対して、あまりお金を払いたがらないが、技術に対しては、惜しみなくお金を払う。しかし、それではいけない。一番大事なのはアイデア

・人間には二つの欲望がある。一つは人と同じことをしたいという欲望。もう一方は、人と違ったことをしたいという欲望。芸術家というのは、人と違ったことをしたいという欲望が一般の人より、かなり強い人種

・ゴッホの傑作は最後の2年間に描かれている。画家の表現力について考えたとき、一人の人間が一気呵成に表現する情熱、強さはすごい

・芸術家というのは、パトロンがいないとやっていけない。極端に言うと、結局、芸術作品はあってもなくてもいいという考え方がどこかにある。これは芸術の持っている一番情けないところ

・なぜ芸術をやるのか、なぜ美術をやるのか、あるいは小説を書くのか。それは企業と違って、自分一人で表現できる世界だから。完全に自由な世界だから

・世の中の美しいものとは何か。一番大事なことは何か。それは自然がよどみなく波動していること、循環していること

・観察は、芸術にとって、あるいは科学にとっても第一歩。ものの形はどうか、それがどうやって成り立っているか、ということをじっと見て認識する

・若いころは、感受性があるので、理屈よりもひらめきの方がはるかに強い。若いころは詩がポンポン出てくる。ところが、知識がつくと、ひらめきがなくなってくる。詩でなく、文章によって説明していかなくなる。詩から散文に移っていく

・作曲家に必要なのは、再現する力ではなくて、ものをつくり上げる技術。しかし、その作曲したものを誰かが弾いてくれるのを待っているより仕方がない。弾いてくれる人がいないと、どんな名曲を書いても作曲家として成立しない

・最初に真っ黒な茶碗がいいと言ったのは千利休。日本社会で、すべての芸術はそうだが、最初に誰かが「いい」と言ってくれないとダメ。これは非常に大事なこと

・絵の評価には実は六つある。「上手・下手」「きれい・汚い」ここまでは分かる。あとが困る「好き・嫌い」。好き嫌いというのが入ってくると絵の評価はガラッと変わる

・下手は下手なりに技術を持っていなければダメ。自分流でもなんでも、自分の技術を持つことが大切。なぜなら、技術や方法を持っていなければ、アイデアを表現できないから



芸術作品とは、「自分が好きで作って、他人も好きと思う」ものではないでしょうか。お金の介在を別にすれば、絵画、音楽、小説などにとどまらず、料理、工作、手芸、庭づくりに至るまで、すべてが芸術だと思います。

著者も、「結局は、好きか嫌いか」「好きなことができる社会は素晴らしい社会」であると言われています。

みんなが好きなことをする。その結果、人の好きもわかる。つまり、芸術の感受性を持つ人が増える社会が、「豊か」なのかもしれません。
[ 2011/05/27 07:43 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『貧者の領域-誰が排除されているのか』西澤晃彦

貧者の領域---誰が排除されているのか (河出ブックス)貧者の領域---誰が排除されているのか (河出ブックス)
(2010/02/11)
西澤 晃彦

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ホームレスとは、家がない人々ではなく、大きな意味では、世間の常識に排除されて、居場所がなくなった人々です。

世間の常識に排除された人々は、貧者になっていくことが多いと、著者は指摘されています。

ホームレスの人たちを深く研究している本は少ないように思います。そして、現代において、新しいホームレスが出現してきていることも、まだあまり知られていません。

貧しくなるとはどういうことかを知る上で、役に立った箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「まとも」とは、帰属する「組織」を持つこと、帰属する「家族」があること、そして「定住」していること

・携帯電話一本であちこちの現場に派遣される貧困層には共有できる空間がなく、見えざる仲間は、競争相手としてしか立ち現れない。貧者の支配は、隔離から分散へチェンジしつつあり、現代の貧者は、空間的な接触媒体を奪われつつある

・野宿者は、「檻のない牢獄」という特質の空間にいる。この牢獄は、1.「排除の空間」2.「自己否定の空間」3.「死を待つ空間」の三つの特徴を持つ。

・野宿生活者と簡易宿泊所投宿者の死亡時の平均年齢は56歳と若く、死亡の種類は、病死(59%)、自殺(16%)、餓死凍死含む不慮の外因死(15%)

・阪神大震災仮設住宅における「孤独死」には、「近隣と没交渉」「一人暮らしの無職の男性」「慢性疾患の持病」「年収100万前後の低所得」といった特徴が見られた

・野宿者は圧倒的に単身男性に偏っており、50代が中心。野宿をする直前の職業は、建設土木関係が半数から7割強を占め、日雇労働者などの非常雇用が、これも半数から8割強を占めている

・東京圏の野宿者は、大阪、名古屋と比較して、全く無収入である比率が顕著に高く、雑業を行っている比率が少ない。首都東京における国民的秩序への強い均質化圧力を、そこに見てとれる

・下層労働市場は、「履歴書のいらない仕事」「保証人のいらない住宅」をセットで提供し、組織・定住社会から排除された都市下層を回収し、労働化する制度を発達させている

・下層労働市場において、単身女性や子連れの女性は、都市部や観光地に移動して、風俗産業の店員や旅館ホテルの従業員になり、「寮」に入るという流れがある。単身男性は、建築土木系の日雇労働者、パチンコ店店員、新聞勧誘員などの職種が割り当てられる

・野宿者集団において、彼らは「馬鹿にされる」ことに敏感である。その結果、「平等主義者」の仲間関係は、金銭が介在することでたやすく空中分解してしまう

・野宿者の多くが働く人であり、仕事を求める人である。「仕事をつくる」人は、空き缶や銅線、雑誌や本を集めて業者に売る都市雑業で月平均3万円程度の金をつくる

・野宿者に最も飼われている動物は猫。野良猫の餌代は結構な出費だが、自分のテントや小屋に連れ込んで、毎日餌を食べさせる

若い世代の野宿者は、「人材派遣会社」に名前を登録し、電話をかけ、引越しや工事の手伝いなどの日雇いの仕事を得る。もはや、手配師も業者もなく、飯場のような建物も食事も不要



一歩間違えれば、誰でも野宿者になっていく可能性があります。他人事ではないように思いました。「世間に排除された人」と「自らの意思で非属になった人」とは紙一重です。

時代は、貧者になる確率を高めているように感じます。貧者にならないためにどうするかではなく、貧者が発生しない社会のしくみが、やはり必要とされているのではないでしょうか。
[ 2011/05/26 07:21 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『中原淳一・美しく生きる言葉』

中原淳一 美しく生きる言葉中原淳一 美しく生きる言葉
(2004/04/28)
中原 淳一

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中原淳一という名を聞いて、ピンとこない方でも、氏が描いた挿絵表紙絵を見れば、わかると思います。詳しくは、中原淳一公式サイトを見て下さい。

戦前から活躍され、亡くなられて三十年近く経ちますが、ファッションデザイナー、スタイリスト、イラストレーターの先駆者として、今でも多くのファンがいて、絶大なる支持を得ています。

氏が遺した言葉も、古さを全く感じません。この本を読み、美の先駆者の貴重な言葉として、参考にできる箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・あなたが一番美しく見えるのは、あなたのいる場所と、あなたの着ているものとが、ぴったりとひとつの雰囲気に、溶け込んでしまった場合にある

・「おしゃれな人」とは、美しくありたいと思う心が、ことさらに強い人のこと

・「美しくなりたい」ということは、街を歩いていて、みんなに「美人だな」と、振り返ってもらうためではなくて、自分の心のためにこそあるもの

・快い話し方、さわやかな笑顔、清潔な装い、趣味の良い色彩感覚、てきぱきとした身のこなし、適度なおしゃれセンス、そんなものが、必ず相手に快いものを与えているはず

・「美しさ」に自信がなくても、相手にさわやかな印象を与えることは、誰にでもできるのだと自信を持つこと

美しい心とは、強い心であり、また、こまやかな心である

・いつの場合も、季節にさきがけた装いをすること、それが、あなたを美しくみせるコツのひとつ

・瞬間にある、その幸せは、一度掴んだらそれでいい。それで、ずっと幸せというのではなく、いつも幸せを感じるように努力することが大切なこと

・夫の友人にも、住んでいる家にも、家具にも、畳にも、庭の木にも、すべてに愛情を注ぐ女性は美しい

・人間が生活する上に、当然起きてくる、煩わしいたくさんの仕事は、誰かが始末しなければならない。誰もが、あまり好まない仕事を進んでするという意志があって、初めて、自分をも他の人々をも幸福にすることができる

・人間の生き方の中で、一番正しい生き方は、自分らしい生き方をすること

・毎日毎日、努力を続けて、大きな幸せを感じることは、どんなに素晴らしいことか

・いつも下着をきれいにしているという自信が、心底から光る美しさを作ってくれる

・「いつまでも古くならないもの」それこそが、もっとも「新しい」もの

・流行というのは、その時々の時代感覚と言える。それをつかんで、服を着ている場合に、初めて「美しい」と感じられる



中原淳一氏のイラスト、絵、デザイン、言葉は、亡くなられて三十年経っても、「古くならない」ということは、「新しい」のだと思います。

それは、シンプルで飾り気のない「美しさ」が、いつまでも、心にしみ込んでくるからではないでしょうか。

忙しさにかまけて、日常の中で、「美しさ」を忘れてしまいがちですが、いつも「美しくなりたい」と願う姿勢だけは、失わないようにしたいものです。
[ 2011/05/24 06:31 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『宮本武蔵五輪書の読み方』谷沢永一

宮本武蔵 五輪書の読み方宮本武蔵 五輪書の読み方
(2002/10)
谷沢 永一

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古今東西、なびかない生き方、群れない生き方を実践する人間、つまり自立して生きようとする人間に勇気を与えているのが、宮本武蔵の「五輪書」です。

世界中の大きな書店に行けば、必ずあります。日本が世界に誇れる古典的名著だと思います。

この本は、五輪書の中から、宮本武蔵が言わんとする、自立して、人生を生き抜く方法を、わかりやすく解説している書です。

この本を読み、役に立った箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・勝つためにありとあらゆる術を使う。卑怯とか堂々とか、そんな程度の噂なら聞き捨ててる。勝負に規制はない

・すべての責任は自分でひっかぶる。自分自身は、他の何ものにも属さない存在。自分以外のものをあてにする気持ちを一切なくす。

・悟りとか、急に一つの結論に達することとかは、現実にありえない。一つ一つの稽古を無限に重ね、努力の限りを尽くすこと

・教えるほうも、習うほうも利を得たがっている生兵法は大怪我のもと。剣術を売り物にするなど、邪道もいいところ

平常心とは、合戦を前に、自分が手柄を立てようとしない気持ちである

・状況に応じて、持てる限りの道具を残さず役に立てる。しかし、道具や材料の持ちすぎは、足りないと同じで、かえってマイナスになる

・現在、脚光を浴びていたり、あるいは権威が確立している者は、すでに盛りが過ぎていると考えていい

・「底の心を強く」とは、気持ちの奥底で、権威に動じない強い心を養うことが必要だということ

・太刀の動きにせよ、手の持ち方にせよ、すべて固定してしまってはなんにもならない。固定は死であり、自分が負けること。固定しないことが生であり、勝ちに結びつく

・敵は、来るぞと思うと緊張する。来ないとわかる「ほっとする瞬間」に打ちこむ

力量が互角のときは、集中力によって勝負が決まる。その極点では、平常の精神力を鍛練していれば、体も手も自然に動く

・相手が先にしかけてきたとしても、対応策を間違えなければ、逆にこちらが先手を取れる

・相手の充実した状態のときには攻め込まない。相手の崩れを待つ。相手が好調なときは勝負を挑まず、不調になったときを狙う

・敵を知ること、敵の身になって考えることもまた必要。敵の身になるとは、功利性を肯定することと言い換えられる。相手が何を求めているのかを知り、人間の欲望の際限のなさを肯定すること

・論争やケンカは、ときとして感情的になりやすい。そして、感情的になったほう、頭にきてしまったほうは負ける。怒ってはならない。できれば、相手を怒らせる側にまわるべき

・急所を乗り切るには、先のことを考えてはいけない。余力を残さず、現在自分の持っている力を残さずに使い尽くすこと

・人間は現実に即すべき。具体的な勝負に勝つための人間修行が必要。それ以外の虚飾は一切排すべし



この古典的自立への指南書は、人によって、解釈の仕方は数多くありますが、これから、厳しい世界を渡っていこうとする方を励まし続けます。

自立を目指す人が、苦しいとき、落ちこんだとき、心が折れそうになったとき、五輪書を読み返すと、生きる勇気が再び沸いてくるのではないでしょうか。人生の応援書に必ずなると思います。
[ 2011/05/23 07:38 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(2)

『仏教が好き!』河合隼雄、中沢新一

仏教が好き! (朝日文庫)仏教が好き! (朝日文庫)
(2008/06/06)
河合 隼雄、中沢 新一 他

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この本も、度々登場のFさんに推薦してもらいました。本のタイトルは「仏教が好き」ですが、内容的には、「宗教が好き」のように感じました。

世界の宗教を「男性型か女性型か?」「若者型か老人型か?」「ビジュアル型か論理型か?」「輪廻転生の肯定か否定か?」「一神教か?」「呪術的か?」「自然崇拝なのか?」「性に関する考え方は?」など、二人の宗教知識が炸裂して、本当に面白く読めました。

河合隼雄先生は、亡くなられましたので、先生の宗教観を知る上でも、貴重な本だと思います。

この本の中で、勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ユダヤ教はシャーマニズムに批判的。神と人間の間に契約があればいいと考えているので、思考に勝る宗教をつくった。イスラムは神への情熱の宗教だから、彼らからすると、ユダヤ教は理屈や論理で、純粋な情熱を汚していると思える

・仏教は、大帝国が成立してくる時代に、分裂してしまったシャーマニズム的なものと野性の思考的なものを、もう一回結合して、二つを分離させないようにするための宗教としてできあがった。仏教の瞑想がその二つをつないでいる

・仏教は帝国主義と結びつかない宗教。「宗教ではない宗教」「知恵としての非宗教」。そういう宗教ならざる宗教をブッダはつくろうとした

・ヒンドゥー教の寺院には神様がごちゃごちゃいる。日本の神仏はもっとごちゃごちゃ。カトリックの教会もゴシックやバロックなど内面にごちゃごちゃを抱えている。ところが、プロテスタントとイスラム教、それに日本の禅は、ごちゃごちゃを排除したすっきり志向

・プロテスタントは視覚による美の喜びを教会から放逐しようとし、母なるマリアも崇拝しなくなった。父性原理の重視で、理屈を積み上げていくので、美的感覚は後退した。しかし、耳だけの音楽は残し、バロック音楽が発達した

・イスラムの原理的な人々と、プロテスタントを核として発達したアメリカという国家が衝突しているのは、ある点で似た者同士。思想のかたち、ものの考え方が似ている。鏡の像のように、全部お互いに反対を向いている

・ブッダは師弟同一と言っている。弟子も努力すれば、ブッダと同等になれる。ところが、一神教の世界では、人間が努力して神になることなど考えられない

・イエスの教えは青年の思想。三十代初めに殺された三十代の思想家。ブッダは八十歳まで生きて、ムハンマドは六十まで生きた。ブッダにしてもムハンマドにしても、その老獪さで、表面的に矛盾することを平気で言っている

老人たちの思想は、矛盾とパラドックスの塊。最近の何世紀かは青年期だったので、若い思想であるキリスト教の文化圏がむちゃくちゃ威張りだした時代であった

・仏教は「これではない、あれではない、これではない、あれではない」の連続で進んでいく。キリスト教だったら「これだっ!」。仏教は、すかっとしない宗教

・仏教は初めから深層心理学を知っていた。「すべては心である」と言い切る。これは、ユダヤ教でもイスラム教でも言えることではない

・ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など、一神教の宗教は、真理が男性形。お父さんが、言葉を通じて理性的な命令をする。ところが、仏教では、神=真理に、初めから女性的なものが積極的に参画している

・貨幣はあらゆる質的差異を均し、世界を均質化するという意味で、一神教につながる。商品は、農耕の増殖原理に結びついている。資本主義は、一神教に農耕豊饒の原理を組み込まないと発生しない

・日本の仏教が伝来時から親鸞の時代まで下っていくと、結局、日本人が、縄文時代から持っている自然感覚とか、人間についての思いとか、そういう場所に着地していく

・経済的な幸はもらったけれど、この幸は人間を全然楽にしない。むしろ苦しく追い詰めている。だから、「幸福」といったわけのわからない言葉よりも、仏教語の「」や「安心」を使ったほうが、正確に事態をつかめる

・仏教とは、「楽になるための正しい教え」。極楽(大きな楽)という言葉が最初から意識されている。英語のできる坊さんは、「楽」を「ハッピー」と訳したが、語感からすれば、「リラックス」のほうが、言いたいことを表している

・お釈迦様は輪廻的なこと、つまり「再生」は口にしなかったが、最後に死ぬときに、「この世は美しい」と言っている。「この世は美しい」という真実を、自分の心でしみじみ理解するためには、自分が教えたような生き方をする必要があると考えていた

・日本人は、今世界で一番不幸せな民族になってしまっている。経済や社会のシステムは、キリスト教的世界観の西欧製を受け入れたけれども、幸福を考えるとき、それとは違う回路を作動させている。これからのアジア人もそれに苦しまなければならなくなる

・日本人の倫理、宗教などは、物が少ないことを前提にして、そのシステムをつくってきた。時代と環境が変わったのに、言葉が今と対応していないのは、文科系の学者とか宗教家とかの怠慢

神様とお金はどこか似ている。どっちも永遠ということを言っている。人間が貨幣をつくり出したのは、価値あるものが壊れていく、風化していく事態を恐れたから

・経営では「事例研究」を発表する人が多い。事例発表すると、人も熱心に聞くし、役に立つ。「経済理論でどうこう」の話を聞いても役に立たない。「事例研究」など、科学的でないと反発する人がいるが、自然科学の学会でも、理論より事例研究をしていくべき



年とともに、仏教がしっくりくるようになりました。キリスト教などは、むしろ説教くさく思えるようになっています。

そのわけは、二人の著者が言っているように、キリストは30代前半で死んだが、ブッダは80歳まで生きたことに起因するように感じます。

世の中、そう簡単に割り切れるものでもあるまいし、正反、陰陽、善悪、すべて具有しているのが人間です。

割り切れないことを前提で、いかに生きていくか、いい社会にしていくか、このあたりの心境は、仏教でないと、理解できないのかもしれません。
[ 2011/05/20 08:13 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(3)

『知的余生の方法』渡部昇一

知的余生の方法 (新潮新書)知的余生の方法 (新潮新書)
(2010/11)
渡部 昇一

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最近、前の会社の上司であったFさん推薦の本を紹介することが増えました。この本もFさんにすすめられて読みました。

Fさん自身が、この「知的余生の方法」の実践状態にあります。知的に、前向きに定年後を暮らす考え方が、この本に詰まっています。

本好きの人なら、フンフンと頷けることが多いのではないでしょうか。私自身も納得できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・学者で、晩酌が一番の楽しみとか、酒宴がこの世の楽しみになっている人は、きちんとした本を遺せない

・芸術も学問も、本人が楽しむ境地に至らないと本物でない。本当に楽しむ境地の人の作品や演奏や言葉や行動からは、人の魂を揺り動かす何かが出ている

・ある国を知る一つの方法は、その国でどんな本がベストセラーになっているかを見ること

・個人的な富や財産を悪だとして排除すると、民衆の段階に下りる富や自由までなくなることになる

・自由は、個人の富の蓄積とそれを自由に使える社会に生まれてくるもの。ならば、もっと自由を欲しければ、もっと個人財産権が守られるようにすること

・大切なことは、良きものを嫉妬心によって、悪しきものにしてしまわないこと

・読書こそが、脳細胞を知的に磨き、精神を生き生きと甦らせてくれる、最も単純にして、手っ取り早い方法

・贅沢と閑暇によって磨かれる美の他に、女性には「子供好き」という、もう一つの美の源がある

・年齢を経てくると、基本的な考え方が違う人とはつきあいたくなくなる。我慢できなくなる。一緒にいても面白くない。その人の日常的なものの考え方とか習慣とかではなく、長年培ってきた、基本的な思想・信条が違っていては、友情を育めない

・教養の差が大きいと、友達としてはつきあえなくなる。教養を押し殺してつきあうほど、面倒で面白くないものはない

・夫婦というのは、組み合わせ。別の組み合わせだったとしたら、必ずしもうまくいったとは限らない。結果よければ、いい夫婦

・知らない世界へ行けば、楽しいことも多いが、それだけでなく、何かとトラブルが生じたりする。それを二人で何とか解決したりすれば、その記憶は楽しかった以上に残る。楽しいことばかりのノッペラボウな人生は、後々の記憶としては薄れがち

・「リーダーというものは、勝つか負けるかわからないようなどん底の状態に置かれても、朗らかでいられる奴」(旧ドイツ陸軍参謀総長ゼークト大将)

・カリカリ、イライラする上司と一緒に仕事をする程、嫌なことはない。人の上に立つ人間ほど、朗らかで、大らかで、寛容でなければならない

・「人生の最後の一息まで精神的に活発に活動し、神の完全なる道具として仕事中に死ぬことが、秩序正しい老年の生き方であり、人生の理想的な終結である」(スイスの哲学者ヒルティ)


この本を簡単にまとめると、以下のことが書かれています。
知的余生を楽しむために、準備するものは、「富」と「教養」と「良き友・伴侶」
知的余生を楽しむために、必要なものは、「書」と「朗らかさ」


定年を意識する年齢の方には、おすすめできる書です。定年後も、群れるしかない人生は、余りにも寂しいものです。これだけは避けるように、今から準備しておいたほうがいいのかもしれません。
[ 2011/05/19 07:09 ] 渡部昇一・本 | TB(0) | CM(0)

『出社は月に3日でいい』松久信夫

出社は月に3日でいい出社は月に3日でいい
(2010/07/09)
松久 信夫

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著者は、岐阜県でタンクを製造する、森松工業株式会社(年商450億円、社員2600名)の70歳の社長です。

Webカメラ270台(国内外の8工場に設置)とメールを駆使して、会社にほとんど出社せずに、社長業を遂行されているユニークな方です。

シンプルで、本質を突く経営法が、社員のやる気を上手に引き出しているように思います。本当の意味で、頭のいい社長ではないでしょうか。

この本を読み、ためになった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・会社に行くのは、どうしても外せない打合わせや来客など、毎月2、3日程度。喫茶店に車で通い、ひとり黙々と仕事をする。ノートパソコン1台あれば、工場に設置したWebカメラで一目でわかる。多くの時間をかけて、現地まで視察に出かける必要はない

・日本の労働生産性は、先進7ヵ国中最下位。OECD加盟30ヵ国中20位。その原因は、長時間の残業や会議だけでなく、長時間通勤などの効率の悪い労働慣習に負うところが大きい。自宅から車で5分の「喫茶店出社」の方が、はるかに合理的

・毎朝11時前に家を出て、夕方4時まで、行きつけの喫茶店で過ごす。仕事の内容は、Webカメラでの工場チェック、メールの送受信、必要に応じて、関係者に携帯電話で連絡をとること。朝昼晩、この3つの繰り返しが基本

・喫茶店にいたら、仕事をしながら昼食を取ることができ、外に出かける手間も省ける。社員が相談や報告に来たり、電話が入ったりして、仕事を中断させられることがない。やりたいことに集中でき、効率が抜群にいい

・会議で使う資料もパソコンでつくるので、資料棚も秘書も社長室も要らない。運転手も必要ない。社長交際費も一切使わない。これだけで年間1000万円近いコストダウンを実現している

・Webカメラを使えば、視察を毎日30分で済ませられる。交通費や宿泊費など、これまた、年間1000万円のコスト削減になる

・メールを効果的に使い、普段会えない社員たちの士気を鼓舞する。寝る前に、Webカメラをチェックして、社員の残業状況を見て、簡単なメールを送る。そのメールを社員が見るのは翌朝だが、送信時間が記録されている。このメールの送信時間こそが重要

・メールは3パターン。「1.業務報告、日報、社長承諾メールの返事」(了解、ご苦労さんなど簡単な返信)「2.残業中の社員へのねぎらいと業績を上げた社員をほめる」(ほめるのは直接メール)「3.注意したり叱ったりする」(叱るのは上司経由の間接メール

パソコン日記には、「いつ」「誰と」「どこで」会ったのかに加え、時には「どんな話をしたか」まで記録している。予定も書き込み、スケジュール表も兼ねている

・会社に出社しないと、ずいぶん楽そうに見えるが、実際には1日19時間労働で、365日無休。大手企業のサラリーマン社長より、はるかに働いている

・Webカメラは水平方向なら360度、上下なら90度の範囲で動かせる。カメラから300m離れた場所でも、倍率10倍のズーム機能を使うと、肉眼では見ることができない点が、きれいに見ることができる

・Webカメラによって、「社員への安全技術指導」「トラブル時の緊急対応」「盗難防止」「手抜き工事の発見」「品質検査」「作業員の表彰」「売上・利益予測」「出張費・管理費削減」などの業務改革ができた

・Webカメラで見て、気になったところは、デジカメで撮影してもらい、添付ファイルでメール送信させる。Webカメラのおかげで、工場内外で発生する製品トラブルなどの第一発見者の9割が社長の私になった

・より多くの権限を与えて、自由闊達にやらせる。学歴国籍性別不問で、能力のある人材をどんどん抜擢する。社長が出社しなくても、社員のやる気が向上した

・会社の利益の源泉は、研究開発であり、営業戦略であり、財務戦略

・上海出張でも、飛行機のエコノミー席しか利用しない。上海子会社の中国人CEOも海外出張はすべてエコノミー席。上海に行くと、工場の敷地内にある日本人社員寮に泊まる。社風とは、社長が率先してつくり出すもの

・優秀な人材に限って、出戻り自由。誰でも「隣の芝生は青く見える」。転職したものの、実際に働いて、当社のよさを再認識し、戻ってきたいと恥をしのんで言ってきた優秀な人を、温かく迎えてやれば、以前以上に熱心に働いてくれる

・上海に行くと、社員寮などを掃除してくれている、中国人のオバサンたちを招いて食事会をする。掃除のオバサンを大切にすることは、社員を大切にするぞというアナウンス効果にもなる

・人はどうしても「ないものねだり」をしてしまいがち。それを「あるもの探し」へ切り替えられたろきに、新たな可能性が開けてくる。欠点が長所になれば成功する

・周到な返済計画がより緻密な経営計画をつくってくれる。借金が経営に緊張感をもたらす。借金の返済期間が短くなることの喜びは、経営をやった者でないとわからない

・経営の基本は、「営業」と「製造」と「財務」のバランス。しかし、多くの経営者が、その3つの条件のうち、どれかがアンバランスな場合が多い

・お金は儲かったり損したりの繰り返しだが、信用は違う。何十年にわたって積み重ねた信用でも、たった一回の失敗であっさりと失ってしまう。お金と信用のどちらをとるかと聞かれたら、迷うことなく信用を選ぶ

・常に最悪の状況を想定して、どんなに苦しい状況に直面したとしても、とにかく生き残ることを優先する

・「大企業の下請けには絶対にならない」。海外進出でも「既存商社には絶対に頼らない」。社員が考えず、創意工夫しなくなることを避けたかった

・発注者と受注者は、どこまでいっても五分五分が原則。強弱や優劣の差はない。親交を深める誘いや飲食を共にすることも許さない。「お客様は神様です」の日本式では、世界市場で競争を本気で勝ち抜くことはできない

・中国人は、強烈な上昇志向や、個々のハングリー精神があっても、上司が一方的に命令するだけでは動かない。その作業や業務内容に納得して初めて動く。日本人幹部には、「中国人に尊敬される日本人になりなさい」と繰り返し言っている

・生き残るために、強い国と強い客に接し、強い中国人社員をもつこと



筋金入りの創業オーナーが、既存の常識にとらわれないで、考え出したのが、今の時代にうまく適合させた経営法です。

このような企業が、日本を支え、日本を大きくしているのだと思います。この本を単なる「Webカメラとメールを駆使した経営法」として読むのは間違いです。

日本の製造業の新しい経営法として、読むといいのではないでしょうか。
[ 2011/05/17 06:52 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『対話で心をケアするスペシャリスト精神対話士のほめる言葉』メンタルケア協会

対話で心をケアするスペシャリスト精神対話士の ほめる言葉対話で心をケアするスペシャリスト精神対話士の ほめる言葉
(2008/03/22)
財団法人メンタルケア協会

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いつも、自分の横に、どんなことをしても、ほめてくれる人がいたら、一日はバラ色に変わると思います。

ヨイショ、ゴマすりをする人を批判する人は多いですが、いざ自分がされるとうれしいものです。

人を愉快に、前向きにする「ほめる言葉」を知っていれば、人間関係が良好に、劇的に変わっていきます。

この本には、ほめる言葉が満載です。すぐに使えそうな、ほめる言葉が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ほめる言葉というと、言葉だけにとらわれがちになるが、しぐさや態度でほめることもできる。視線やしぐさでアピールする「ほめしぐさ」も使ってみる

・苦労を理解していることを示すには「大変だったね」と言葉を投げかけると、相手は報われた思いを強くする

・相手がミスや失敗をしたら、「私もそうしたと思う」と同調を表わす言葉をかけると、味方であることを示せる

・「やるじゃないか」と、こちらからほめる言葉を投げかけると。自分のことを見てくれていると感じる

・「わかっていてもなかなかできないこと」と、当たり前のことでもほめると、ほめられた方は意外性もあって喜ぶ

・「よく頑張ったな」とほめるより、「頑張ってくれて、うれしいよ」と言いまわしを変えてほめることも大事

成長をほめるには、「言葉に説得力が出てきた」「先月よりも○○%伸びているね」と、過去と現在を比較して、ほめてあげる

初心者を力づけるには、「飲み込みが早い」「筋がいい」「センスがいい」と有望な将来をほめてあげる

・別れ際に、「今日は本当に楽しかった」のほめ言葉は、強い印象を与える

・先行きの不安を取り除くには、「どこへ行っても大丈夫、保証する」と言葉で励ましてあげる

・「もっと上を目指せるはずだ」と部下に言うと、上司が自分に期待していることに応えようとモチベーションが上がる

・「ちょっと教えてほしい」と言うと、部下は自分の力が上司に信頼されていると感じる

・「客がほめてたよ」と第三者の口を借りてほめると、直接言われるより強く響く

・感謝の言葉もほめ言葉。「助かったよ」と気持ちを素直に表現すると、人は喜ぶ



ほめるパターンを幾つか持っていて、TPOに合わせて、それを出すと、効果的ということを教えてくれる書です。

つまり、ほめる言葉のボキャブラリーを増やすことが、人生をいい方向に導いてくれるのかもしれません。

ほめる言葉は、笑顔と同様に、即効性かつ実用性が高いと思います。苦手な方は、練習したほうが、今後の人生、プラスになるのではないでしょうか。
[ 2011/05/16 08:16 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『暮らしうるおう江戸しぐさ』越川禮子

暮らしうるおう江戸しぐさ暮らしうるおう江戸しぐさ
(2007/07/06)
越川 禮子

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越川禮子さんの本を紹介するのは、「江戸の繁盛しぐさ」に次ぎ2冊目です。

「江戸の繁盛しぐさ」は、江戸の商人たちが、生きる知恵として、構築してきた礼儀、慣習、道徳感などが描かれており、日本人のマナーを再認識する良書です。

「江戸しぐさ」は、江戸の商人だけでなく、江戸に住む人たち全体の、暗黙の了解やルールまで掲載されています。

「江戸の繁盛しぐさ」と重複する部分もありますので、その部分を省いた箇所を今回は紹介します。詳しく知りたい方は、「江戸の繁盛しぐさ」も併せて、お読みください。



・人みな仏様の化身と思えば、親近感を覚え、優しい気持ちになれる。この優しい気持ちこそ、江戸しぐさへの第一歩

・「三脱の教え
初対面の人には、年齢、職業、地位をきかないルール。この三つが先入観になると、公平な眼で人を見ることができないことを戒めた

・どんな身分の人にでも決して失礼のないものの言い方をした。男と女、肩書や年齢、お金のあるなしによって、ものの言い方をガラリと変えたりする人は、井の中の蛙(井中っぺい)と言われた

・「人間(じんかん)」
人と人にはよい間合いが大切ということ。べったりはプライバシーの侵害になる。軋みの元。互角のつき合いは、ある間合いが必要

・江戸っ子でも一人っ子が多かった。一人っ子同志が契約兄弟を結ぶ儀式をして、血縁関係がなくても、家族同様のつき合いで、一人っ子の弊害を避けた

・「陽にとらえて
何事も明るい方向にとらえて対処していくこと。「もうこれだけしかない」ととらえるか、「まだこれだけある」ととらえるかで、仕事の成果が上がる

・「あいすみません
人は仏様の化身なのに、澄んだ気持ちになれなくて申し訳ございません、と詫びる言葉。

・「さしのべしぐさ
見下ろししぐさでなく、相手の立場を理解し、相手の自主性を重んじ、それから手を貸すこと。これができたら、一人前のおとな

・「稚児しぐさ」「稚児もどり
人の迷惑を考えない子供っぽい振る舞いを「稚児しぐさ」。一人前のおとなになっても、無神経なことを平気でする人を「稚児もどり」と言って、厳しく戒めた

・「肩引き」「腕引き
すれ違う際に、右肩、右腕を後へ引いて互いにぶつからないようにするしぐさ

・階段でのすれ違いは、上っていく人が立ち止まり、下りて来た人と同じ高さに並んだところで会釈して行き交う

・「会釈のまなざし
会釈とは、前後の事情をのみこみ、事の道理を会得する「和会通釈」の意味であり、すれ違いに交わす思いやりのしぐさ(目つき)。目つきや視線は人間性を表す鏡のようなもの

・「腕組みしぐさ」「足組みしぐさ
江戸時代、商人にとって足組みや腕組みは衰運のしるしと言われた

・「この世に要らぬ人間なし」が江戸の人たちの考え。社内でも、グループでも、この心で仕事を分担すればうまくいく

・「形振り(なりふり)かまわず」勝ちにいかない。ルールに従ってフェアーであることが大切。勝ちにこだわる卑しい態度は、その人の前世に悪い因縁があるからだと嫌われた

見越しのしぐさ
先を読むこと。一人前のおとななら常にアンテナを立てて、ひと足先を考えて仕事を進めるのが常道。江戸商人は、最低、先盆までの見通しを立てなければ資格がないと言われた



礼儀、マナーも立派な文化です。そこに住む人たちが快適に暮らしていけるように考えられてきた知恵です。

礼儀、マナーを知らなければ、そこに住む人たちの和を乱し、精神的な迷惑をかけることになります。

和をつくることは閉鎖社会のルール、和を乱さないことは開放社会のルール。大都市に住む人たちは、もっと開放社会のルールに学ばなければならないように思います。

この開放社会のルールが、江戸時代の日本で、すでに「しぐさ」として、行われていたことを、再認識すべきなのかもしれません。
[ 2011/05/13 06:56 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ人「頭の壁」を破る法-この“驚くべき教え”に学べ!』前島誠

ユダヤ人「頭の壁」を破る法―この“驚くべき教え”に学べ!ユダヤ人「頭の壁」を破る法―この“驚くべき教え”に学べ!
(2004/03)
前島 誠

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この本で学べることは、頭を柔軟にする方法です。人は、年をとり、地位や収入が上がれば上がるほど、頭が固くなっていきます。そして、そこで止まってしまいます。

さらに伸び続ける人は、頭が柔らかい人です。そのヒントを、ユダヤ人に学ぼうという内容です。

今回、役に立ったと思えた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



両面思考がユダヤ発想の特徴。片方の側面から考えを出発させたなら、その考えを逆のサイトに振ってみる。反対側の視点をフィルターにして、別の角度から問題を見つめ直す。これが「振り子発想」である

・自然の欲望であれば、ユダヤ人はこれを肯定する。性欲であれ、金銭欲であれ、基本的にはよいものと受け止める。間違っても、禁欲のほうを高く評価することはない

・ユダヤでは父親が果たすべき務めとして、「子供に商売の方法を教える」ことを宗教上の義務としている

・日本に住むユダヤ人は、高収入でも、たいてい貸家に住んでいる。また、タクシー愛好家が多い。これが彼らの金銭感覚を物語る。住んでいる土地に縛られなければ、面倒なこともなくなると考えている

人と自分を比べないこと。そうすれば自由になれるし、余計な見栄を張らなくてもすむ。見栄のためにどれだけムリな出費をしているか考えてみる

・ユダヤ人は「人と違うことを言う人」を重んじる。違いを大切にし、何かにつけ、周囲と違っているものを喜ぶ

・「マ・ニシュマ?」。イスラエルでの「元気?」という挨拶だが、直訳すると「何が聞けますか?」となる。「あなたから何が聞けますか」がユダヤ式の挨拶。何はともあれ、まず問いをかける

・よく調べないうちに非難するな。まず考え、しかるのち咎めよ。聴き終わらないうちに答えるな。他人の話に割り込むな(ベン・シラの知恵11章7~8)

・人間とは愚かなものである。自分勝手な行動に、もっともらしい理由をつけ、これを相手に押し付ける。それを相手は許してくれる、いや喜んでくれるとさえ思い込む。すべては自己中心的発想のなせるわざ

・友とは、相手が自分を友として選ぶこと、かりに自分を友として選ばなかったとしても、むしろ当然のことだと認識すること

・ひとさまに何かして差し上げることは難しい。よかれと思ってしたことが、相手にとって苦痛となることさえある。するほうの側は、善意でやるだけに反省がない。善意だからこそ、他人を傷つけることがある

・思考の動脈硬化を防ぐには、まず振ってしまうこと。振り子は自らを振りだして、対極に達し、やがてもとの極に戻り、幾度となく反復する。こうすると、深く考える必要もないし、あらたまった決心も要らない

・ユダヤ最強の思考法を構成する四つの約束事とは、「立ち返り」(自分をもとの姿勢に戻す)、「静思」(自分自身を見直す)、「黙考」(そのうえで黙る)、「信頼」(自分を認めてやる)

・自分の手に負えないことを詮索するな。きみの領分として定められたこと、それについて思索せよ(ベン・シランの知恵3章21~22)



賢い人は、自分を客観化する思考法を身につけています。賢いか賢くないかは、自己を客観化するか、主観的なままでいるかの違いではないでしょうか。

「賢くなりたい」「ずっと賢くいたい」と思われている方が、この本を読むと、得るものが多いのではないでしょうか。
[ 2011/05/12 06:27 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(1)

『人口減少時代の大都市経済-価値転換への選択』松谷明彦

人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択
(2010/11/12)
松谷 明彦

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7年ほど前に、著者の「人口減少経済の新しい公式」を読みました。日本人は、今後、生活のあり方をどう変えていくべきかの指針が書かれており、大変勉強になりました。

今回紹介する本では、大都市に暮らす住民が、人口減少時代に合わせて、生活をどう変えていくべきかについて言及されています。

松谷明彦氏は政策研究大学院大学教授も務められており、日本の都市のあり方について政策提案される立場にもあります。

都市研究の第一人者の著者の意見は、非常に参考になります。今回勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人口増加時代であれば、一度の増税で財政収支を改善することができたが、人口減少時代にあっては、増税は「いたちごっこ」になる。国民、住民は疲弊し、やがて離反する

・平均年収が減少すると、お金で買える価値を追求している限り、その人の人生は確実に貧しいものになる。お金をかけずに楽しむ世界やコツを模索し、それに多くの時間を使うようになれば、引き続き豊かな人生を送ることができる

・2070年代の前半まで、大都市に住む人々は、地方に住む人々に比べ、より大幅な生活水準の低下を余儀なくされる。大都市地域に住んでいる限り、年々行政サービスの水準が低下し、年々税負担が重くなる。地方への移住を考える人が確実に増えてくる

・余暇時間と所得こそは誰の支配も受けないもの。自主独立に重きを置く欧米諸国の人々にとって、経済発展の成果たる労働生産性の上昇は、賃金の上昇長時間労働からの解放に直結しなければならない

低金利政策とは、金利を人為的に引き下げることによって、通常であれば採算の合わない投資(社会とって必要のない投資)の機会をビジネスチャンスに仕立て上げる政策である

賃金の縮減によって価格競争力を獲得するということは、自国民の労働成果を外国人に安く譲り渡すということ

・世界のロボットの3分の1以上が日本に存立する。世界における日本のGDPシェアが8%であることを考えれば、異常とも言うべき機械化水準。一層の機械化を目指した経営行動こそが、日本経済の低迷と企業の経営悪化(利益率低落)の最大要因

・大都市は数多くの多様な産業を持つべき。産業構造の高度化を図らなくても、大都市地域の人々は食っていける。むしろ、高度化を図ることによって、食っていけなくなる人のほうが多数出てくる

・政府は一層の税財源を投入し、年金制度を続けようとしている。しかし、税財源を投入するということは、年金制度がすでに破綻していることを意味する

・高齢になっても働くことができる社会は決して悪い社会ではないが、高齢になっても働かなければ生活できない社会は、間違いなく悪い社会。日本は先進国としては恥ずかしいほど高齢者の就業率が高い

・ドイツ人は日本人の3分の2弱の時間を働くだけで、日本人と同じ水準の生活をすることができる。フランス人、イギリス人、アメリカ人は、日本人の6分の5の時間を働くだけで、同じ水準の生活をすることができる

・長寿社会では、寿命が伸びるほどには就業時間が伸びない。そのため、生涯を通じた年平均所得が確実に減少する。だから、お金のかからない生活を探し求めるべき

・自身が動くよりも、モノを動かすことによって効用を手にするというのが、大都市の人々の行動様式の特徴。しかし、それが将来の大都市の豊かさを減じていることに気づくべき



日本の大都市で生活するには、今後どうあるべきか?親や先輩の言葉だけを忠実に守って、生活していたら、楽しく暮らすことができなくなるかもしれません。

人口減少という新しい時代に突入している現在、日本人も変わらざるを得ませんし、大都市住民も変わらざるを得ません。

どう意識を変えたらいいのか?そのヒントが、この本にはいっぱい詰まっています。経済の停滞=生活の停滞=心の停滞になることだけは、避けたいものです。
[ 2011/05/10 07:30 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『大富豪になる17条の賢法』ジェームス・カン

大富豪になる17条の賢法大富豪になる17条の賢法
(2002/09)
ジェームス カン

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前に勤めていた会社の上司で、投資でも成功を収められているFさんに紹介してもらった本です。

著者は、在日コリアン3世です。アメリカの大学を卒業し、国際的な投資の世界に身を投じられています。

少し前の本ですが、日本人の心を持つ国際人が書いた、富豪に関する書ですので、参考になります。技術的なことではなく、富豪になるマインドが主に書かれています。

この本を読み、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「苦労をせずに財産を持っても身につかない」「人を見る目を養え」。これが同胞の成功者の世襲の失敗例をさんざん見てきた、亡き父親のメッセージ

・「恩知らずからは財が逃げる」。大富豪は恥知らずが大嫌い

・モノの価値は必要性があるところに生じる。必要がなければ無価値

・わらしべ長者が幸運な結末を迎えることができたのは、途中で出会った人がいずれも富豪だったから

・嘘、愚痴、いいわけ、泣きごと、悪口、陰口・・・。大富豪はこれらとは無縁。これらに近寄ると、エネルギーが奪われ、禍が増えるだけ

・「失敗に乗れ、谷に乗れ」。安い時に乗れば、損はしない。成功の山にはなかなか乗せてもらえない。たとえ乗せてもらえても、コストが高く、すぐに後退局面がやってくる。目先の華々しさに多くの人が群がるため、うま味はまったくない

・大富豪を目指すなら、不動産ではなく、不動心が大事

・夢のない人が現実の厳しさを語ると、聞いているほうも落ちこむ

・お金をどう使うかは、その人が抱いている夢次第。夢がない人は大富豪になる資格はない

・到達点から現在の自分がどこに位置しているかを見極めるように心がけている。山の頂上に心を置くと、下から昇ってくる自分の姿が見えてくる

・自分の死亡記事を書いてみる。すると、今、自分はどこにいるのか、何をしようとしているのかがわかる。自己目標を定めると「彼岸の思考」ができる

選択には勇気が、集中には根気が要る。漠然とした不安、散漫な姿勢には、ムリ・ムダ・ムラがつきまとう

・夢に入れる数字の締めくくりは「How much」。空理空論を弄ばない。これが大富豪の鉄則

・山の上で「谷神」の声に耳を澄ます余裕がない。凡人は、山に群がり、谷に去る

・先にリスクを取れば、後で利を生む。それなのに、誰もが今すぐに利を取ろうとする。頭(ピン)で利を取るとは、いわゆるピン撥ねのこと

・人間の成長を阻むものがあるとすれば、ただ一つ。それは、自分で心の中に作ってしまう壁。面倒なことが起きると、その対処法を考えずに、勝手に限界だと思い込む

・それぞれの国が最も誇りにしている美徳は、実はその国に最も欠けているもの。これを「逆徳精神」と言う。イギリスの「フェアプレー」、フランスの「アムール(愛)」、日本の「和」


この本を読むと、ビジネスの世界も、投資の世界も、成功するかしないかはすべて「心次第」ということがわかります。

不動心という土台を固めた上で、選択と集中を行う。現在の位置を遠くから確認して、修正を繰り返す。これだけが、成功のポイントのように思いました。

内容的には、シンプルなことが書かれています。後は、成功したいかしたくないか。成功したいなら、それを信じて、やるかやらないか。成功とは、たったそれだけのことなのかもしれません。
[ 2011/05/09 07:46 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『デンマークのにぎやかな公共図書館』吉田右子

デンマークのにぎやかな公共図書館-平等・共有・セルフヘルプを実現する場所デンマークのにぎやかな公共図書館-平等・共有・セルフヘルプを実現する場所
(2010/11/11)
吉田右子

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北欧の本を、このブログで数多く採り上げています。今回は、より具体的に、図書館についての本です。

この本を読めば、知的レベルの高い北欧諸国は、教育制度が素晴らしいだけでなく、図書館も素晴らしいということがわかります。

図書館を、生涯学習の教育センターとして位置付けているように思います。単に本を借りる場所ではなく、学びの拠点という感じです。

図書館の驚きの制度などもあり面白く読めました。興味深い箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・公共図書館は、地域の文化センターとしての役割も果たしている。講演会、映画上映会、コンサート、語学講座などの行事に加えて、最近は、健康相談、法律相談などを行う図書館も増えてきた

・デンマークの図書館は静かな場所ではない。来館した利用者同士が自由におしゃべりする空間になっている。飲食の持ち込みも許されており、ランチを取りながら長居する人も多い。多くの図書館には「静寂コーナー」が設けられ、空間を区別している

・書籍などの視聴覚資料の貸出、返却、予約は自動貸出機と自動返却機で行う。貸出期限を過ぎても資料を返却しなかった場合は、延滞料金として、延滞日数1~7日は180円、延滞日数8~14日は750円。図書館法で延滞料金の徴収が明記されている

・図書館でも、室内装飾の配色デザインが抜群。椅子、机、書架などの什器やインテリアも温かい雰囲気をつくりだしている。居心地のよい空間が人々を図書館に引きつけている

・最近、「読者から読者へ」という、利用者が読み終わった本のコメントを図書館のウェブサイトに掲載し、推薦するシステムが普及してきている

・乳幼児と保護者を対象とした「ベビーカフェ」のプログラムを実施している図書館が増えてきた。ベビーカフェでは、「リズム体操」「ベビーマッサージ」「乳歯の手入れ」など、歯科医や保険師の専門的アドバイスやカウンセリングを無料で受けられる

・最近、住民サービスコーナーを図書館内に設ける自治体が増えてきた。行政手続き、税金相談、年金相談など、今まで役所で行われてきた行政サービスを図書館で行ってしまおうというもの

・図書館内の「宿題カフェ」で行われるサービスは、移民の子供たちへの学習支援。サービスの対象を子供に限定せず、デンマーク語の読み書きが不自由な大人に対してのサポートや就業支援を実施している図書館もある

・デンマークには「公共貸与権」という著作権者の利益を守る仕組みが設けられている。作家の作品が図書館で無料で読まれてしまう損失を補償金として作家が受けとる権利

・公共貸与権が認められるのは、作家、イラストレーター、写真家、作曲家などの作品。2009年の統計では、8112人の著作者に23億7000万円が支払われている。作家の受け取る補償金は3万円~1000万円と開きがある

・どんな図書館にも児童書コーナーには漫画があり、ゲームのコーナーも設けられている。漫画とゲームが子供たちの間で広く人気があるのに、これを買って遊べる子供と遊べない子供がいるのは不公平という考え方

・「平等」は、北欧社会を形成するもっとも重要な理念。個人の格差を可能な限り排除し、平等な社会を目指す考え方が、図書館のサービス目標と重なっている



日本の図書館との違いを感じる内容でした。作家も喜び、市民も喜び、市民の知的レベルも上がるしくみを、図書館という場で実践しているところがすごいです。

図書館だけでなく、北欧の行政サービスは、参考になることが非常に多いと思います。日本国民ももっと、他国の行政サービスの実態を知って、行政に要求していくことが、日本の行政サービスの向上につながっていくのではないでしょうか。
[ 2011/05/06 06:42 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『ソロー語録』ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

ソロー語録ソロー語録
(2009/10)
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー

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ソローは19世紀半ばのアメリカの詩人であり、思想家であり、ナチュラリストです。自然保護運動の先駆けとなった人物です。

自ら、湖畔の森に小屋を建てて、移り住み、自然と対峙しながら、その思想を形成していきました。

この本の中でも、自然から見た人間を描いている箇所が多くあります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・外の世界が荒涼としていればいるほど、必ずといっていいほど、わくわくしてくる。海や砂漠、手つかずの自然が僕には必要だ

・人は完璧な自然観察者にはなれない。自然を直接見ても、自分の側からしか見ないからだ。人は自然を通して、その向こうにあるものを見なければならない

・自然の声を聞くには、人間である自分をいったん葬ることから始めなければならない。浅はかな考えは、世界すべてに通ずる道を封じてしまう

・植物は、その本来の性質に従って育つことができなければ死んでしまう。人間も同じだ

・人の手に負えないものはすべて野性的である。この意味において、独創的で独立心の強い人は野性的だ。彼らは、社会によって飼い慣らされたり、屈服させられたりしていないからだ

・僕らには、野性という気つけ薬が必要だ

・陽の光を浴び、風に吹かれながら、生活のほとんどを戸外で過ごしていると、間違いなく、性格がある種の荒さを帯びてくるはずだ。僕らの繊細な本性に、厚い表皮が形成される

・勤勉なだけでは十分とは言えない。そんなことはアリだってやっている。問題は、何について勤勉であるか

・自分のものより優れた資質を他人に見出すことは、僕らを無限に豊かにする

・人との交流において悲劇的なことは、言葉が誤解されたときではなく、沈黙が理解されないときだ

・努力から知恵と純粋さが生まれ、怠惰から無知と欲望が生まれる

・それが生であろうと死であろうと、僕らに必要なのは現実のみである。生きているのであれば、しっかりと生きることから始めよう

・僕にとって、希望と未来は、芝生や開墾された土地、それに町や市にはなく、ぬかるんで泥深い沼地にある

・道徳的になりすぎるのはよくない。人生のほとんどをまきあげられるかもしれないからだ。道徳よりも高い志を持とう。ただの善人になるのではなく、目的を持った善人になれ

腐敗した善から立ちのぼる臭いほどひどいものはない

・ユーモアは穏やかであれば、それだけ深遠なものである。自然にでさえ、遊び心や茶目っ気らしき側面が観察される

・必要なのは、何を見るかではなく、何が見えてくるかである



現代は、都市へ人口が集中して、自然と接触する時間が減っています。自然と接触して、気持ちいいと感じることが、精神的な疲れを軽減してくれます。

こちらから自然に出向いていかなければ、自然はやってきてくれません。この本を読むと、自然と対峙する時間の大切さを感じることができるのではないでしょうか。
[ 2011/05/02 06:53 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)