とは学

「・・・とは」の哲学

『あなたにYell』玄秀盛

あなたにYellあなたにYell
(2008/11/01)
玄 秀盛

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玄秀盛さんの本を紹介するのは、「生きろ」に次ぎ、2冊目です。新宿歌舞伎町で1万人を超える人たちの人生相談に乗って来られただけあって、人に元気を与えるツボを心得られています。

この本は、悩み多き人に、勇気と元気を与える書です。目線が相談者の側にあり、実践的な内容です。

この本を読み、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・最後の最後で、夢がある人間は強い。人生には運不運がある。でも、その時に夢があるかどうか。夢があれば、いつどんな時でも前向きに生きていくことができる。自分の夢のために、強い判断ができる

・人の気持ちを受け入れたり、人の考えを聞くということは、自分の心という花瓶に新しい花を生けるということ。過去の枯れた枝、しおれた花をいつまでも心に残したままにしないこと

・反発するのは、自分に余裕がないということ。だから、とにかく相手を否定して負かそうとしている。それは、弱い自分のエゴでしかない

・自分の弱さが欲から始まっていることを知って、受け入れたらいい。そこが出発点。何かを欲しがる気持ちがなくなれば、すぐに心が軽くなる

・優しさはもらうものではなくて、一方的に与えるものと、そのまま覚えてしまえばいい

・最近、自分との約束をしたか?それを守れたか?結果はどうだったか?それを日々繰り返しチェックすること。自分との約束をごまかすようになったら、何も進まない

・自分からどんどん恥をかくこと。叱られることもどんどんすべき。恥をかくことは進歩に変わる。恥もかききれば度胸に見える。先輩や実力者にかわいがられるし、さらなる力につながる

・どこまでも、その人の領域に入っていくこと。こっちの領域で話そうとしたら、その時点で終了

・相手の魅力にひかれて、その魅力を吸収して、自分の身につける。そうやって、身についた力が、その人の新しい魅力になる

・人間は一生のうち、逢うべき人に必ず逢える。しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅過ぎることもないときに

・人間の直感に間違いはない。ただし、それには、自分の中に不純なものがないのが前提

・目標があるのなら、必ず期限を持つこと。そして、その数字にこだわりぬく。自分で決めた自分の数字にこだわれなくなったら、どこにもたどりつけない

情熱と欲望の違いは、たどり着こうとしているゴールがきちんとあるかどうか。欲望そのものがゴールになってしまっては、どこにも行き着きはしない

・何度も同じミスはしない。結局はそこ。してしまったミスにしっかりと始末をつけることが大事

・自分のパワーをためこんで、土台を高くしようとがんばれば、運なんか、頼みもしないうちに向こうから、ニッコリ笑顔で近づいてくる。運は人を見る

・一番効果の上がりそうな一点をよく見極めること。そして、攻めどころを決めたら、そこだけを攻め抜く。派手な大振りよりも、一寸法師の一撃

・もし間違った電車に乗ったら、誰でもその電車を降りて乗り換えるもの。そのまま乗り続けていても正しい目的地に着かないってわかったら、一回降りて、ひとまず終わりにする。そして、改札の外でもう一度切符を買えばいい

・まずは、相手の息を吐かせること。すべて吐かせて、それを受けたら向こうは息を吸いたくなる。そのときに、ちょこっとこっちの息を吐けばいい



この本の中には、いい例え話が数多くあります。みんなにわかってもらおうとすれば、例え話が有効です。

それに、著者の過去の挫折体験や辛く苦しい体験が加わっているので、共感できるのだと思います。

また、著者の文章は、一見、浅く感じてしまうのですが、じっくり読むと、深く心に響いてきます。

このような文章とよく似た文を書く人は、名僧か名経営者の晩年に多いように思います。

つまり、不特定の人と多く接してきて、人の悩みを多く聞き、その改善策を一緒に悩んできた人たちです。

そういう意味で、著者は、現代の駆け込み寺の名僧にすでになっているのかもしれません。
[ 2011/04/28 07:35 ] 玄秀盛・本 | TB(0) | CM(0)

『競争と公平感-市場経済の本当のメリット』大竹文雄

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)
(2010/03)
大竹 文雄

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競争を悪としてとらえるか、競争を公平な社会をつくるための善としてとらえるか。これで、競争に対する考え方が変わってきます。

平等主義の根源にある「ねたみ、ひがみ、うらみ」は、豊かな社会の弊害にもなります。

この本は、より豊かな社会へのステップとして。競争を前向きにとらえています。この本の中で、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・2000年代になってから、日本人の価値観が「勤勉」から、「運やコネ」を重視するように変化している。高校や大学を卒業して、不況を経験するかどうかが、その世代の価値観に大きな影響を与えているのもその理由

・成功する確率さえわからないプロジェクトに挑戦するには、自信過剰でないと無理。「無根拠な自信」が科学研究には重要

・成功している証券トレーダーは、薬指と人差し指の長さの比が大きい。薬指と人差し指の比は、男性ホルモンのテストステロンの量と相関がある。大相撲の力士でも、横綱や大関といった上位に昇進した力士は、薬指が人差し指より相対的に長い

・日本の子供の出生時の体重は、低下傾向が続いている。1980年には3200gだったが、3030gに低下している。出生時の体重とその後の教育水準には相関があり、大人になってからの経済状態にも影響を与える

・家庭環境に恵まれなかった子供たちに、学校教育以降でのみ援助しても効果がなく、就学前の段階での援助と組み合わせることが重要

・学歴が高いほど、所得が高いほど、将来のことを重視する。親の貯蓄行動が子供の教育や貯蓄に影響を与えている

平等主義的価値観は、学校での教育の結果であり、人間が生まれながらに持っている価値観ではない

・「わかっちゃいるけど、やめられない」財のことを経済学では中毒財と呼ぶ。中毒財を消費することからの満足度は、過去に中毒財をより多く消費していればいるほど大きくなる

・天国や地獄といった死後の世界を信じる人の比率が高い国ほど経済成長率が高い。一方、教会に熱心に行く人の比率が高い国ほど経済成長率が低い

・カトリックの国々では、プロテスタントの国々比べて、貸し手の権利が弱い

・アメリカでは、学歴や才能で所得が決まるべきと考えている人の比率が50%を超えるのに対し、日本では10~15%に過ぎない。日本人は「選択と努力」以外の要因で所得が決まることに否定的

・満足度を高める公共投資や公的サービスを増やすことで失業率を減らすのが一番の不況対策。失業者が増えている分野ではなく、環境投資、介護サービス、育児サービス、教育、芸術などの生活を豊かにする分野で失業率を減らしていくのが有効

・人口高齢化によって、投票数増加という政治力をもった高齢者は、年金や医療といった高齢者向け政府支出を充実させようとする。子供の教育負担はなくなっているので、公的な教育費を低下させようとする

・週休二日制の導入によって、平日10時間以上働く労働者の比率は、1976年には17%だったのに、43%まで上昇している。これからの労働時間管理の課題は、平日の労働時間をいかに短縮していくことにある

・ワーカーホリックになりやすい高所得者層には、累進所得税をかけることが、ワーカーホリック対策に有効

夏休みの宿題を最後のほうにしていた人ほど、週60時間以上の長時間労働をしていることが明らかになっている



人間の考え方、動き方が、経済に影響を与えることの検証事例が、この本には数多く紹介されています。

経済も、心理学の範疇にあることがよくわかります。市場経済が、「競争と公平感」といった行動や心理によって左右されることを知っていないと、現代の経済を語れないのかもしれません。
[ 2011/04/26 08:04 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『好かれる自分をやめる!「オレ様流」男の成功術』角川いつか

好かれる自分をやめる!「オレ様流」男の成功術好かれる自分をやめる!「オレ様流」男の成功術
(2010/03/20)
角川 いつか

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著者の本を紹介するのは「成功する男はみな非情である」に次ぎ、2冊目です。今回も、女性が書いた本と思えないほどに、ワイルドさが文章に滲み出ています。

仕事のできる男を語らしたら、著者の右に出る女性はいないように思います。女の嗅覚で男性をよく観察されています。

この本を読み、共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・嫌われ力を持っている人が目指している先は、「成果」「結果」「未来」。ここに執着を持っているため、人から好かれるかどうかなど二の次

・自分にとっても、相手にとっても、マイナスにしかならない関係や時間を切り捨てる。つまり、こういう考え方が、嫌われ力を持つということ。大望の前では些事など関係ない

・人生はつまるところ、その人の思考をどう現実化するか。思考を何に定め、どれだけ重きを置くか。成果(成功)か?それとも平穏(人に好かれること)か?

・着実に出世の階段を上がるというなら、穏やかな人でも、ある程度の地位にまではつける。けれどそこまで。そういう人は、ステップアップはできてもジャンプアップできない。落ちたらどうしようと、先に不安が立ちはだかり、行く手を阻む

・自分にとって、本当に意味のある人間とつき合うために、嫌われ力が必要。つまり、人間関係をふるいにかけるということ

・嫌われ力は、あくまで返す刀。自分から喧嘩を売ってはいけない。売ってくる相手にどう対処するかがポイント

・今の世の中「実」のある人は2割もいない。残りの8割強が「虚」である。ほとんどの人間は、自分が「虚」であることに気づかない。「虚」であることに気づき、「実」に変換する過程において、嫌われ力が効果を発揮する

調子が良すぎる人間はブレる。ブレる人間は信用されず、力も貸してもらえない

・有言不実者との、いらない縁を切っておけば、時間と感情の無駄が省け、すべきことの優先順位がつけられるようになる。障害物競争から障害がなくなれば、すんなりゴールが見通せるようになる

・「すみません、悪気はなかったんです!」と悪気がないことを免罪符のように言って謝る人がいるが、悪気がない人は悪気があるもの

・自分と向き合う旅をして、人恋しさの果てにある「強さ」と「不動の孤独」を早く勝ち得よ!

・順風満帆に世の中を渡ってきたエリートほど、少しの挫折でポキッと根元から折れてしまう。「ひきこもり」の75%以上が優等生

・あなたに必要な人材とは?「結果を出す人」「一つのことを長年続けている人」「一芸に秀でている人」「尊敬できる人」「強運の持ち主」「地味派手タイプ」(外見は地味だが、考え方がポジティブで派手な人)「大望を追い求め続けている人」

・世の中の7割以上の問題は、お金で解決できる。「金が金を呼ぶ」「金に照れるな」



最近は、いい人になることに重きが置かれ、人を押しのけて成功することには重きが置かれていません。

こういう時代は、長く続かず、いずれ、反動が起きるように思います。次の時代に、目指すべきは、心優しい肉食系の人間ではないでしょうか。こういう肉食系が登場しないことには、デフレを脱出することも難しいように思います。

この本には、本当の強い男の姿が描かれています。次の時代の参考になるのではないでしょうか。
[ 2011/04/25 08:04 ] 角川いつか・本 | TB(0) | CM(0)

『「やさしい」って、どういうこと?』アルボムッレ・スマナサーラ

「やさしい」って、どういうこと?「やさしい」って、どういうこと?
(2007/09)
アルボムッレ スマナサーラ

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著者のアルボムッレ・スマナサーラ氏の本を紹介するのは、「ブッダの幸福論」など、これで5冊目になります。

いつも、わかりやすくて、心温まる仏教の講義に魅了されています。釈迦の教えを忠実に守る原始仏教は、仏教の原点なので、共感できるところが多々あります。

この本でも、ハッとさせられた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「こんな世界は嫌だ」と引きこもるのは、自分のエゴの型が世間と合わないことに我慢できないから。引きこもりは他人事ではない。私たちが何かのグループに所属しているのも引きこもり。「他人と違うんだ」とバリアを張って、似た者同士の群れに引きこもっている

群れることは引きこもること。同時に、群れ以外のすべての人間を排除すること

・人間は「やさしくしてほしい」だけ。自分の希望をかなえてくれるのが一番。他人のために骨を折るのは避けたい。できれば、そういうものは無視したい

・ボランティアをすることで、「人を助けてあげた」「有意義なことをしている」という精神的な見返りを得ている。それは大変な心の栄養。ボランティアで働く人がいきいきしているのはこのため

・世間のやさしさはエゴ。自分に都合がよければやさしくて、都合が悪ければやさしくないということ。それだけのことなのに、「やさしいから良い」「やさしくないから悪い」と信じて疑わない

・人間には、いろんな「刺激」が必要。眼から耳から鼻から舌から身体から入ってくる刺激が必要。その刺激は、他の生命からもらわないとうまくいかない

・自分に心地よい刺激を与えてくれる人はとてもやさしい。自分が生きていくのに欠かせない、とてもありがたい人。やさしさという刺激は、私たちの命。だから誰かと仲良くして、しゃべったりする関係ができあがる

・他人にやさしさを求めることは、自分の要求を満たしてくれと、他人に頼むこと。つまり、やさしさは、他人を自分のために使用すること

・エゴが強い凶暴な人は、自分のために他人をとことん支配する。支配者側は搾取し、支配される側は搾取される。少数が満足してやさしさを味わうのと引き換えに、大勢の人々が苦しむ。やさしさを求めるあまり、弱肉強食の世界になってしまっている

・自分は、独立して存在しているのではない。生命のネットワークの中の一項目、一つの中継点。生命のネットワークの一員である一個の生命は、他の生命と正しい関係を維持しなければならない

・「やさしくいる」ことは、そんなに難しいことではない。自我を張らず、余計なことを考えないで、自然の流れで生きていれば、その人はやさしい。誰にも迷惑をかけない。誰も損をしない。弱肉強食ではなく共存主義。これが「あるべきやさしさ」

・ネットワークが自然で、無理がないと、社会はうまく成り立つ。それぞれが自分の仕事をすればいい、それだけの話。そこに「欲しい」という欲が割り込むと、ネットワークがダメージを受ける

・現代人は誰も「必要」と「欲しい」をきちんと区別していない。必要のレベルを軽々と超えて、「もっと欲しい」というところまでいってしまう。むしろ「欲しい」だけで生きている。「欲しい」という欲の感情に振り回されている

・生命のネットワークの中で、「もっと、もっと」ということは成り立たない。初めからそんな自由はない。自分がいるネットワークのパーツとして振る舞わないと、ネットワークには迷惑な存在になる

・「これはこの人がすべき仕事だ」ということはない。どうやって能率、効率よくするのかを考えて、そのときに上手くできる人がさっさと動くだけでいい

本当のやさしさは、自然のネットワークの中で、空気のごとく、水のごとく、「私がない」状態でいること

・生命のネットワークでは、生命を殺してはいけない。いじめてはいけない。侮辱してはいけない。自分を含めたあらゆる生命がネットワークの部品だから、当然のこと

エゴがない人は、「私がやってやるぞ」の「私」というエゴがない。だから、常に客観的な立場で、「この仕事は誰がやると一番いいか」ということを知っている

・まわりの生命も、「幸福になりたい」「悩み苦しみは嫌だ」「努力は実ってほしい」と願っている

・自分が競争で負けた相手にも別に何の引っかかりもない人は人間を超越している。釈迦は「その人はとっくに神になっている」と言う。西洋では神に願ったり、恐れたりするが、仏教では、いとも簡単に「神になっている」と言う

・成功する人は、自分のことを我がことのように喜んでくれる人を、とても大事にする。彼らは社会で成功していて、人に恵みを与える能力があるので、真っ先に、他人の成功を我がことのように喜べる人に、恵みを与える



この本は、本当の意味のやさしさを知る上で、欠かせない書だと思いました。

著者が言うように、自分も生命のネットワークのパーツに過ぎないと考える癖がついてきたら、謙虚になれます。

つまり、やさしさとは、生かされているという気持ちの表れなのかもしれません。
[ 2011/04/22 08:05 ] スマナサーラ・本 | TB(0) | CM(2)

『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』ケンジ・ステファン・スズキ

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし  角川SSC新書 (角川SSC新書)消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし 角川SSC新書 (角川SSC新書)
(2010/11/10)
ケンジ・ステファン・スズキ

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著者のケンジ・ステファン・スズキ氏の本を紹介するのは、「なぜデンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか」に次ぎ2冊目です。この本はデンマーク国民として、実際に住んでいる視点で書かれたものです。

日本とデンマークの違いが、日常生活レベルでよくわかります。北欧諸国の人々は、真の民主主義国家を自分たちの力で作り上げてきた賢い国民です。

北欧には、学ぶべき点が非常に多いですし、日本の今後のモデルになるべきだと思っています。何冊も北欧に関する本を、このブログで採り上げているのも、この気持ちの表れです。

今回もためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・世界100カ国35万人に「今、幸せですか?」「現在の暮らしに満足していますか?」と尋ねたときの回答から判断した「幸福度調査」で、幸福度第1位はデンマークだった

・デンマークの税制の基本は国民総背番号制。高度に管理された「脱税できないシステム

・デンマークには「家庭医」と呼ばれる主治医を国民一人一人に割り当てる制度がある。家庭医の存在がなければ、体のちょっとした異変で、大病院に駆け込む人が多くなる。本当の意味で病院を必要とする患者が治療を受けにくくなるのを防ぐ

・デンマークでは、国民が本当に困っているものには、福祉制度として全力でバックアップしてくれる。しかし、命に別条はないものには、財布のひもは固く結ばれている

・デンマークでは医師が必要と思わない治療は、いくら患者が望んでも与えられることはない。風邪をひいて家庭医に行っても「3日も寝ていれば治る」と言って、薬もくれない

出産にかかる費用はすべて国庫負担。妊婦となってからの検診もすべて無料。検診は出産までに計8回行われ、胎児のスキャナー検査も含まれている。働く女性が出産した場合、出産直後に29週~34週間の有給休暇が与えられる

保育ママとは、その保育ママの自宅で子供たちを預かる制度。週48時間1人の子供を預ければ約8万7000円。料金の75%が助成されるため、保育園よりは保育ママのほうが使い勝手がよい

・デンマークの義務教育は10年。6歳になると幼稚園クラスに1年間入り、その後1年生から9年生まで学校に通う。日本に比べて、幼稚園の1年分が長くなる

・デンマークには高校も大学もランクがない。有名校とか、進学校とか、大学でも優秀とか、就職に有利とかがない。日常生活においても、卒業した大学名を聞かれることもよほどのことがない限りない

・すべての職業に資格があり、就きたい職業の資格を取らなければ就職できない。資格を取るには、学校で仕事の内容を習い、試験に合格する必要がある。仕事というのは、学校で覚えるというのがデンマークの基本的な考え方

・デンマークには「会社員」という職業概念がないので、一般企業に勤めている人は、自分の仕事を「営業職」や「経理職」、あるいは「事務職」などの職種で表現する。「事務補佐員」というのは、総務部や人事部などの仕事をする人

・デンマークでは18歳から成人になる。選挙権も被選挙権も18歳から。保護者の子供に対する扶養義務は17歳まで。18歳からは親に代わって、国が保護者の役割を担うのがこの国の考え方

・デンマークの人たちは頻繁に職場を変える。仕事へのモチベーションを高め、自己の可能性を追求し、所得増を見込むために転職を繰り返す。同じ職場での勤続年数は男女とも8年程度

・国民年金の支給が65歳から始まるため、だいたい62歳ぐらいを目安にリタイアする人がほとんど

・国民年金は、高齢者が生活する上で最低限必要とするお金を国民全体が納めた税金でカバーしようとする制度なので、生活費を十分に持っている高額所得者には払う必要がないというのがデンマーク社会の一致した認識

・介護サービスは市のサービス。高齢者向けの代表的な介護サービスは、在宅介護。裕福な高齢者向けの高級住宅であるとか、介護施設付きの豪華な集合住宅はない。高齢者同士の間にも格差を出さないようにしている

・デンマークは憲法で「国教はルーテル教会」であると規定。全国の教会運営を維持するために、教会税をとる。そのため、教会は公共の施設であり、牧師は公務員、そして教会での葬儀は無料。墓場の借料、墓石の購入代は自己負担だが、棺の代金は支給される

・デンマークでは満15歳になると、所得の課税対象者となり、アルバイトについても所得申告の義務が生じる

・デンマークは総所得から約7割(日本は約4割)の税を徴収する(高負担)ので、国民の懐には約3割しか残らない。その分、支払った約7割の中から国が福祉サービスとして再分配(高福祉)していくモデル

・日本では150万円程度で買える乗用車が、デンマークでは自動車登録税と消費税で400~450万円になる。そのため、乗用車の平均使用年数は14年

・デンマークは食肉&酪農王国。食料自給率は100%を超える食料輸出国。豚肉は100gで60円程度。豚や牛のひき肉なら100g85円程度。ともに消費税込みの価格

・デンマークでは小学校1年生で「職業及び労働市場の知識」が必須科目。小学校4年生で「就職の可能性や起業」、中学校2年生で「外国での就学と就業の可能性」の授業がある



北欧に10年前に旅した時、スウェーデンの人は、

「デンマーク人は、結構いい加減な人が多い。スウェーデン人のように生真面目ではなく、自由気ままに生きている。服装も格好をつけず、ある意味で、田舎者」

「節制など、あまりしないので、肥えた人が多い。酒もよく飲むので、スウェーデンに比べて、平均寿命も短い」

と言っていました。

この本を読めば、デンマーク人は、不安と心配をなくし、人生を謳歌できる体制をつくった賢い民族だということがわかります。

スウェーデン人は、「ヨーロッパの日本人」と呼ばれているだけあって、デンマーク人に対して、少々の偏見を持っていたのかもしれません。

しかしながら、今の日本人は、デンマーク人を見習っていくべきではないでしょうか。日本の今後のあるべき姿を「デンマーク」にするのも、悪くはないように思います。
[ 2011/04/21 06:54 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(4)

『超マクロ展望・世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)
(2010/11/17)
水野 和夫、萱野 稔人 他

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水野和夫氏は元三菱UFJ証券のエコノミストです。少し難解でしたが、氏の経済解説をネットでよく拝見していました。現在は大学教授をされています。

萱野稔人氏は哲学者です。以前、このブログでも「カネと暴力の系譜学」という本を紹介しました。独自の視点を持たれています。

この気鋭の経済学者と哲学者の両氏が、世界経済のこれからを熱く語り合うというのが、本書の内容です。

国家の関与と世界経済の現状について、お互いに言及されているところが数多くあり、勉強になりました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・資本主義経済の中には、すでに国家が組み込まれている。資本主義経済の分析には、国家を初めとする政治的なものについての考察が不可欠

・先進国は資源を安く買い叩くことができなくなって、モノを輸出しても儲けがどんどん減ってきてしまった。そのことが、交易条件(=輸出物価/輸入物価)の推移で如実にあらわれている

・先進国は交易条件が悪化したことで、実物経済では稼げなくなり、金融に儲け口を見出していくようになった

・16世紀から1973年のオイルショック前後までは、交易条件を有利にして市場を拡大していけば、名目GDPを増加できるといった資本主義経済の構造があった。ところが、70年代半ば以降、こうした構造は維持されなくなった

・1995年以降、国際資本の完全移動性が実現してから、アメリカは、日本やアジアの新興国で余っているお金を自由に使えるようになった。つまり、すべてのマネーがウォール街に通じるようになった

・1995年にルービン財務長官が「強いドル」政策への転換を表明した。アメリカに世界から投資マネーが入り、そのマネーを運用することで、経常収支赤字が膨らんでも、最終的に利益を出せるしくみができた。これによって、アメリカ金融帝国が成立した

・アメリカは植民地支配せずに経済的なへゲモニー(指導的立場)を確立してきた国

金融化に向かうということは、その時点で、その国のヘゲモニーの下で、生産の拡大ができなくなってしまったことを意味する

・今回のリーマン・ショックに象徴される金融危機はこれで最後とは言えず、今後、新興国で起きるであろうバブルのほうが大規模になる可能性が高い。中世から近代へと世界システムが変わった時に匹敵するような大きな構造転換があるかもしれない

・世界資本主義のヘゲモニーは、新しい空間に、誰がどのようなルールを設定するかという問題。イギリスの海洋支配が、海という空間を略奪の空間として確立して成立したように、新秩序の確立を巡る戦いである

・先進国の有利な交易条件が消滅していく中で、何とか利潤率を維持しようと思えば、自国民から略取するしかない

・先進国の資本が新興国の生産現場と結びつくようになると、先進国の国民に仕事とお金がまわってこなくなる。つまり、先進国の資本は先進国の国民を見捨てることになり、先進国の労働者は、新興国の労働者との国際競争に敗れて没落してしまう

・1870年から130年間、地球の全人口の約15%だけが豊かな生活を営むことができた。15%が資本主義のメリットを受ける定員の可能性が高い。先進国の15%の人々は、残りの85%から資源を安く輸入し、その利益を享受してきたということ

・先進国の10億人がさらに成長を目指し、後ろから追いかける40億人の人も成長を目指すことになると、資源価格は天井知らずに跳ね上がる

・2008年の金融危機で、アメリカの金融機関に莫大な公的資金が注入された。あれほど、国家による市場介入を批判してきた金融機関でも、いざとなれば国家に頼らざるを得ない

・利潤率の低下は利子率の低下としてあらわれる。イタリアのジェノヴァで金利が1619年に1.125%になったということは、労働分配率が上がりすぎて、領主が利潤を得ることができなくなったことを意味する

・近代の資本制は、封建制が機能不全になったことで生れてきた。所有権を特定の社会関係から切り離し、その下で労働を組織化する新原理を編み出したのが資本主義。国家は所有の主体であることをやめ、私的所有の空間を法的行政的に管理していく主体になった

・レーガン時代は債券でお金を集めたのに対し、1995年の「強いドル」政策のルービンは、債券以上に、株式でお金を集めた。株式の場合だと、利払いが発生しないからいい

・日本は、利潤率の低下、少子高齢化という点で、今後世界が直面すべき課題を早く背負い込んでいる。バブルが10年以上早く起こっただけではなく、バブル崩壊後に、デフレ利子率革命が続いている点でも、先進国の中で先行している

・まず財政赤字という過去の不始末にけじめをつけなければならない。経済・社会システムが大きく変わる時、過去の清算をしないと、次のシステムに移行できない。これができなければ、日本経済の復活なんてありえない

・近い将来、人民元が自由化されることになれば、今度は、日本から資本流出が起こる。これまで、資本流出が起きなかったから、日本の銀行は日本の国債を買うことができた

・中国人民元が自由化された時、財政赤字が相変わらず巨額であれば、キャピタルフライトが起きて、金利が上がり、円安になる

・これまでは、人々の欲望を刺激して需要を拡大していくのが市場のあり方だった。これに対して、現在は環境規制が市場をつくりだしている。経済活動を阻害すると考えられてきた規制が、技術の市場価値を高め、新産業を育成し、ビジネスチャンスに変わってきた

国家による規制と市場での競争との関係を問い直すことが、低成長時代の経済戦略を考える時の一つの切り口になる

・G20で世界のGDPの8割を占める。G20の新興国がGDP2万ドルまで成長すると、日本やアメリカとの内外格差が1対2になる。1対2になったところで、新しい国際的な協調体制が生れてくる

・中国の一人当たりGDPが2万ドルに達したら、共産党の独裁体制は崩壊する。GDPの民主化ライン(3000ドル)があって、そのラインを超えると民主化運動が起こる



世界経済の今後、日本経済の今後を俯瞰できる書です。おおまかなところをつかんでおくと、今後、いざという時に行動がしやすくなります。

国家と経済の関係、日本とアメリカの関係、日本と中国及び新興国の関係を注視しておくことが、ますます重要になってくることを示唆してくれる書でした。
[ 2011/04/19 08:07 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)