とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『良寛・清貧に生きる言葉』向谷匡史

良寛 清貧に生きる言葉良寛 清貧に生きる言葉
(2009/04)
向谷 匡史

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以前は、良寛のことを、世を嫌がって逃避した「世捨て人」のように感じていました。

ところが、良寛に関する書物を読むと、精神的な自由を目指して、むしろ闘ってきた人であることがわかります。

その良寛が、どんな思想や人生観を有していたのか?資料はあまり残っていないのですが、その詩歌から読み解こうとするのが、この本です。

著者は向谷匡史氏です。以前、「武道に学ぶ必勝の実戦心理術」「困った上司とつき合うヤクザ式心理術」という本を、このブログでも採り上げました。

武道家としてのイメージが強い著者が、良寛について語っていることにも興味をおぼえました。共感できた箇所が20ほどあります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・良寛は金銭や名誉、安楽な生活を断ち切ったのではない。世俗の名利を求めようとする、その貪り求める心を棄てることで、何ものにもとらわれない絶対自由の境地を目指した

・人生を不条理とするのは間違いで、不条理なものを人生と言う。だから、どんな不条理な事態になっても、じたばたしてはいけない

・苦しくてけっこう、つらくてけっこう、苦があってこそ楽に気づく。楽に気づかずして、楽が手に入るわけがない

・ゴールを目指す生き方には、実はゴールがない。ゴールは決してたどり着くことのできない永遠の彼方にある

・「人生」というものは存在しない。在るのは「いま」という一瞬だけであり、一瞬を積み重ねた結果を「人生」と呼ぶにすぎない

・幸せになりたい、気持ちを楽に生きたいというのも欲であり執着。欲を捨てたい、執着を断ちたいと念ずるのもまた、欲であり執着。そのことを知って日々を生きれば、いまよりは楽に生きることができる

他所に求めず、この場で、この境遇で人生を楽しんだらいい

・世の中の人々と交際しないというわけではないが、ひとりで読書をしたり、歌を作ったりしているほうが、より自分には好ましいこと

・苦しみは結局、人と自分を比較するところに生じるもの。それが至難のわざであろうとも、「人は人、我は我なり」という絶対の境地を願い、求め続けるところに心の平穏がある

打算の人生とは、相手に応じて自分を変えることであり、そこに自分という主体はない。そんな生き方をしていたら、やがて自分を苦しめることになる

・良寛は、他人の金儲けを否定せず、非難もせず、それはそれとして認めながら、「でも、誠意が大事、努力が大事、信用が大事」と、普遍の真理、正道だけを説く

・人に投げられたら素直に転べばいい。そして転んだら、何事もなかったような顔をして、ひょっこり起き上がればいい。投げられまいとして踏ん張るから疲れる

・「赦す」とは認めること。相手の非を咎め、批判することで、自己の正当性を主張するのではなく、赦すことによって、相手を認め、自己との共存を図る

・慈悲の心とは「人が先、我は後」の生き方。人に道を譲るには自己を律する強い心が求められる

・出世を望むもよし、背を向けるもよし、自分がどういう生き方を選び取るか、その違いだけである

・虎になろうとして、猫にさえなれなくても、それでいい

・案ずることはない。舟の綱を切って、ただ水に漂えばいい。所詮人生は、過ぎてしまえば、あっという間

・仕事でくたくたになって帰宅し、家族の笑顔に迎えられ、湯船にのんびりとつかって、「あぁ、気持ちがいいな」とつぶやく、この心境が悟り

・名利を求める心を断ちきれずとも、断ち切りたいと真に願ったときから、人生は変わっていく



良寛は、清貧の道を選びましたが、「清貧に生きるもよし、豊かな暮らしを目指すもよし、精神的に満足できれば、それでよし」と言いたかったように思います。

昔、「いいじゃないの、幸せならば」という歌がありましたが、その心境に達することではないでしょうか。

幸せに関して言えば、人にとやかく言われる筋合いはないのだと思います。自分がどう感じるかだけなのかもしれません。
[ 2011/03/30 08:04 ] 向谷匡史・本 | TB(0) | CM(0)

『中国人観光客が飛んでくる!』上田真弓、池田浩一郎

中国人観光客が飛んでくる! (マイコミ新書)中国人観光客が飛んでくる! (マイコミ新書)
(2010/12/25)
上田 真弓、池田 浩一郎 他

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昨年、京都の西陣織会館で着物ショーを見ました。平日だったのですが、会場はごった返していました。700~800人近くの人がいたと思います。

見ると、欧米系の観光客が10%、日本の修学旅行生が5%、日本人観光客が5%くらいで、後の80%はすべて、中国人観光客でした。

着物ショーにおいても、派手な赤い着物を着たモデルが登場するとフラッシュの嵐です。ところが、おしとやかな薄い色合いの着物のモデルには全く反応しません。

ショーが終わった後の買物行動を観察していると、着物にはほとんど関心がなく、低単価の雑貨やお菓子売場の前には長蛇の列でした。今までと売れるものが、全く違ってきているように思いました。

中国人観光客のパワーに圧倒されたのですが、最近の中国人観光客はどんな人が多いのか気になっていたところ、この本を見つけました。

中国人観光客や他のアジア系観光客の特徴と、彼らが見たいところ、欲しがるものなどが、詳細に書かれており、勉強になりました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・中国人観光客の訪日理由は、「自然・景勝地」「ショッピング」「温泉・リラックス」の割合が高く、一方「伝統文化・歴史的施設」などは、やや割合が低い傾向

・中国人は、「日本の温泉はサルも一緒に入る」「日本の温泉は混浴だ」というイメージを持っている人が多いが、日本の温泉に関心が高い

・中国人が、日本で炊飯器を購入するのは、本国では増値税(消費税のようなもの)が17%かかるから。いくつも購入するのは、親戚や知人から頼まれているから

・中国人観光客には、麺類や回転ずしなどのチェーン店の人気が高い。日本料理は食べたいものの、高級な料理店では、びっくりするほどの金額かもしれないし、日本語がわからないし、どんな料理なのかも理解できないから

・土産を購入する場所としては、ドラッグストアや百円均一ショップが人気。女性はコスメ、薬は男女を問わず人気。薬の人気商品は、「目薬」「正露丸」「キャべジン」など

・男性特有の化粧品として、育毛剤が人気。日本で購入するのは、日本人と中国人は似ているし、日本製品は優れているので効くと思っているから

・ビザ発給要件の下限の年収6万元(約85万円)であっても、物価が安い中国では、生活費がかからずに過ごすことができ、お金が貯まり、資産が増えるので、可処分所得が高い

・中国人は、面子を大切にするので、多くの知人友人に購入をお願いされた商品を先に買う。その結果、飲食は節約する

・2010年、海外に出かける中国人旅行者数は、前年比11%増の5300万人に達する。行先は1位から香港、マカオ、日本、ベトナム、韓国、タイ、ロシア、米国、シンガポール、マレーシア。タイ、ベトナム、マレーシアが上位の理由は、ビザが緩いこと

・中国人観光客はリピーターになりにくい(日本へのリピーター率43%)。他のアジア諸国(香港80%、台湾76%、韓国66%、シンガポール63%、タイ62%)に比べて低い。日本を観光した次にヨーロッパへ行くことを計画しているのが今の状況

北京の人は保守的で面子を重視、上海の人はトレンドに敏感で個性的、広州の人は実用性を重視。広大な中国では、趣向性、商習慣の違いを認識することは重要

・中国人観光客や訪日外国人を増やすために、いろいろなことをしても、結局は為替次第。外国為替の変動は、行く末に大きく影響する

・中国人の場合、検索をするための入力が、単語ベースではなく、文章ベース。例えば、日本へ旅行する時に「日本 食事 美味しい店」などと単語で入力しないで、「日本で食事する時に美味しい店はどこにあるか」と入力して検索する人が多い

・観光庁は訪日外国人旅行者数の多い12の国(韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア)に、大きな伸びが期待できる3国(インド、ロシア、マレーシア)を追加し、プロモーションを展開している

・中国人はカジノが大好き。マカオへ多くの中国人が訪れる理由はカジノである。日本でも大阪の橋下知事がカジノを推進しているが、日本の議論では時期尚早で、当面実現は難しい



この本を読む限り、中国人の旅行者が今増えているのは、たまたまの一過性なのかもしれません。

これをリピーターにしていくためには、中国人の関心、性格、習慣、嗜好性、地域性などを研究して、中国人に喜ばれる策を練らないといけません。

この本は、中国人個人と商売されたいと考えられている方には、参考になるところが多いように思います。
[ 2011/03/29 08:04 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『我らクレイジー☆エンジニア主義』

我らクレイジー☆エンジニア主義 (中経の文庫)我らクレイジー☆エンジニア主義 (中経の文庫)
(2010/11/27)
リクナビNEXT Tech総研

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この本も前の会社の上司であったFさんの推薦です。本の冒頭に、「技術を伝えるメディアは多いが、技術を生みだした技術者自身を伝えるメディアは少ない」ということが書かれています。

経営者なら、成功した会社だけでなく、成功させた経営者自身に必ずスポットが当たります。考えてみたら、技術者の人間にスポットが当たることが極端に少なかったように思います。

この本には、技術者物語が数多くあり、興味深く読めた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人生は短い。新しいことへの挑戦は最高の贅沢だ

・小さな成功に満足するな。小さな成功を守ろうとするな

・エンジニアというラベルを貼った段階で、もう壁ができている。ビジネスマンであり、クリエーターであり、デザイナーであり、ストラジテストであり、アーティストでないといけない

・世の中で不思議なことは主に二つ。ひとつは、物事の起源は何か。そして、もうひとつが、人間とは何か

・研究なんて狙ってできるものではない。それこそノイローゼになるくらいに考えて、アイデアはようやく出る

・苦しみ抜いてひとつの発見ができると、後は芋づる式につながる

・研究の方針は、流行にとらわれないこと。他の人がやらないこと、自分しかやっていないことでないと、研究の意味がない

・今では、壁にぶつかることは楽しみなくらい。今度はどうクリアしてやろうかとワクワクするほど図々しくなった

・あまりにも慌ただしい毎日から抜け出してみる。それもいい仕事をするための大事なヒント。ゆとりが独創を生む

・開拓分野の人は、つねに知識を捨てながら、新しい知識を得たり、創り出して生きていくことになる

・技術とは、人間がラクをするものをつくること。それに尽きる。人をラクにする目的のためにこそ、モノづくりは行われてきた

・人はついつい、ちょっと聞きかじっただけで、すべて知っているような気持ちになりがち。評論家になっちゃダメ。自分でやってみないと

・瞬間瞬間のすべてを問い続ける感覚を持ちながら、日々生活すると、実は自分がいかに何も考えずに生きてきたかがわかる

新しい理論を発想できたのは、とことんやり抜いたから。だから、理論が間違っているという大胆な結論に行き着いた

・目標をもって、不器用でも、そこに必死で向かっていく。だから成功できる。だから助けてくれる人がいる



市場を創る人の話は読みごたえがあります。この本に登場する15名のエンジニアの個性は強烈です。皆、自分の信念に基づいて動いています。

この本を読んで、本当のエンジニアとは、理系の英知に、芸術系のイマジネーションを兼備した人であることがよくわかりました。

技術者だけでなく、何かを創造する人になろうとすれば、イマジネーションと理性の両方を鍛えないといけないのかもしれません。
[ 2011/03/28 08:04 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『失敗しない田舎暮らし入門』山本一典

失敗しない田舎暮らし入門―土地や家の取得法から土いじりの楽しみ方まで失敗しない田舎暮らし入門―土地や家の取得法から土いじりの楽しみ方まで
(2006/04)
山本 一典

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山本一典氏の本を紹介するのは、「お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条」に次ぎ2冊目です。

著者は、実際に田舎暮らしをしているだけあって、具体的記述、細部記述など、非常に参考になります。

今回も、詳しい記述、しつこい記述に、著者の田舎暮らしにかける情熱のようなものを感じました。共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「団塊の世代」の退職もあって、農村をめざす都会人は増えている。しかし、それは田舎暮らしの二大条件である生活場所と生活手段、言い換えれば、田舎物件と収入の確保ができた一部の都会人だけである

・節約、不便、非文明、親切、さらに加えれば自然や癒しといったイメージは、田舎を実像ではなく、都会の反動でしか見ていない一部のエリートの幻想に過ぎない

・田舎暮らしが失敗しやすいのは、「農地があればすぐに収穫できる」「農村は自然を守る場所」「リストラにあっても田舎に行けば何とかなる」「田舎で自給自足すればお金がなくても暮らせる」という認識不足、誤解、考えの傲慢さ、甘さ、幼稚な発想が原因

・都会人の中には、田舎ならどこでも安い土地が手に入ると思っている人、漠然と温暖な田舎に住みたいと考えている人、カネがかからないと誤解している人が多い。こういう人たちは、田舎暮らしの入口でつまずくことになる

・リゾート地は地方都市に近い農村部の外れにあるのが普通だが、地元の人にとっては別世界。あれこれ干渉されることはない。買物や外食、バスの便などの利便性にも恵まれており、快適な生活を送れる。しかし、これを田舎とは呼べない

・低価格で敷地の広い田舎物件は、海抜の高い山岳地帯のまわりの過疎地に集中しているから、寒冷地から出てくるものが圧倒的に多い

・ムラは、良くも悪くも平等社会。都会人は、立派な人、駄目な人という烙印を押したがるが、ムラにはそれがない。弱い者いじめをしない反面、目立ったことをする人がいれば足を引っ張る傾向がある

・周囲の移住者に実際に意見を聞くと、田舎への移住には「年間200万円×年金開始までの年数+住宅費+予備費500万円」が必要

・自給自足にはカネがかかるというのが実感。自給自足はあくまでモノ作りの喜びを追求するためのもの

・田舎で便利屋を始める移住者が増えてきた。高齢化が進んでいるため、買物を手伝ったり、建物の簡単な補修をしてくれる人を求めている。手先の器用さが求められるが、今後、もっとも有望な自営業の一つになる

・生活環境よりも仕事を優先する人は、地方都市近郊の農村に移り住むしかない。過疎地に比べれば、就業条件は恵まれている。地方都市には、工業団地が造られ、幹線道路沿いに郊外型店舗も増えてきた。電気工事やエンジニアなどの技術職は、地方でも需要が高い

・「人づきあいの苦手な人は別荘地帯を選ぶ」「利用目的を明確にする」「敷地は最低でも100坪以上」「最低1000万円以上の現金を用意する」「景色で物件を選ばない」ことが、物件選びを成功させるポイント

・過疎地域における水道普及率は88%、公共下水道普及率は8%。だから農村は遅れていると考えるのも早合点。実際には、飲み水で美味しい沢水か井戸を使っている農家が多いし、浄化槽利用を含めた水洗化率は過疎地域でも47%

・家庭菜園には、「耕耘機」「平鍬」「レーキ」「一輪車」「長靴」などの道具、山林や敷地には、「チェーンソー」「草刈り機」「ナタ」「マサカリ」「電気ドリル」などの道具が必要になる

鶏の産卵率は夏場で60%くらい。産卵率の低い冬でも2~3日に一個の卵を産んでくれる。夫婦二人なら雌鶏が三羽いれば十分。雄鶏の鳴き声がうるさいのなら、有精卵はあきらめ、雌鶏だけ飼えばいい



田舎暮らしに本当に憧れて、実際に行動に移す都会人が増えることが、日本の豊かさを示す一つの指標になるように思います。

この本を読めば、都会人の最高の贅沢は、田舎暮らしであることに気づくのではないでしょうか。
[ 2011/03/25 08:04 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『群れのルール・群衆の叡智を賢く活用する方法』ピーター・ミラー

群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法
(2010/07/16)
ピーター・ミラー

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この本は、動物の集団行動を学び、人間が群れることの損得、長所短所を解明していこうという内容です。

動物からのヒントは、将来の人間行動を大いに変えていくかもしれません。勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・自己組織化を支えるメカニズムは、「分権的な統制」「分散型の問題解決」「多数の相互作用」の三つ。この三つを足し合わせると、群れのメンバーが誰の指図を受けなくても、シンプルなルールに従って、意味のある集団行動をとることができる

・「知識の多様性を確保する」「友好的なアイデア競争を促す」「選択肢を狭めるための有効なメカニズムを用いる」。これがハチの群れの成功から学ぶべき教訓

・意思決定をしようとする集団にとっては、専門的な知識と同じくらい、多様な視点が重要な意味を持つ

・CIA(米中央情報局)のアナリストチームは、自分たちを取り巻く環境の変化に対応するには、迅速かつ効率的に力を合わせるためのオープンで柔軟な構造(情報を持ち寄るシロアリ塚)が必要だと気づいた

・ウィキペディア成功の一つの鍵は、「記事を最初から書き始めるより、すでに存在する少々難ありの記事を改良するほうがいい」という、誰もが簡単に参加できる「間接的協業」のしくみ

・ブロガーが互いのアイデアを引用することで、優れたアイデアはコミュニティ全体に広がる

・「適応的模倣」(協調・コミュニケーション・知的模倣がメカニズム)とは、集団に属する個体が互いをよく見ながら、集団がどこへ向かうのか、どんな情報を持っているのかといったサイン(合図)を読み取ることを指す

・飛行中に密着度を保つため、鳥たちが従っているルールは、「それぞれの個体が相互作用する相手は少数で、前後でなく、左右の隣人」。重要なのは距離ではなく、数で、平均的には6~7羽

・個々のムクドリは、常に同じ数の仲間を意識しておくことで、ハヤブサに襲われたときなどの急激な変化に対応でき、餌をついばめる時間も長くなる。進化の過程で、外部からの攻撃に最も耐性のある相互作用のルールが選ばれた

・水の中を泳ぐ魚の群れは美しく、非常に統制が取れているように見えるが、本音を言えば、敵が現れたら、前を泳ぐ仲間が食われればいいと思っている

・人間も動物と同様に、十中八九、群れに従うのが正しい行動であり、リスクを最小限に抑える戦略。群れにいるほうが、餌や結婚相手や渡りのルートを見つけるのも簡単。情報をつかんだ個体が去っても、群れにその情報が残る「内省の蓄積」がある

幸せな気分の人と社会的ネットワーク上で直接結びついている人は、そうでない人と比べて、自分も幸せと感じている確率が15%も高い。こうした影響は、ネットワークを通じ、家族や親戚(一段階)だけでなく、二段階、三段階離れた人にまで到達する

・鳥の群れは仲間と行動を共にするという戦略によって天敵を逃れている。同じ行動は、投資家が問題のある投資対象から逃れるのに役立つ

・バブルや経済危機は、集団的意思決定の失敗の典型例。独立性、多様性、独自の判断といった集団を賢くするすべての要素が消え失せてしまう。個人が完全に他人の判断に頼って行動するようになり、てっとり早い儲け話に盲従する

・誰もが群衆の叡智にただ乗りし始めると、叡智に磨きをかける者がいなくなる。それが極端なケースでは、巨大なバブルが生成され、国全体が激しい混乱に陥る

・集団が機能するには、「ローカル知識を重視」(情報多様性の維持)、「単純ルールの適用」(複雑計算をなくす)、「メンバー間の相互作用繰り返し」(意思決定の迅速化)、「定足数の設定」(意思決定の精度を高める)、「適当なでたらめさ」(型通りの解決策を防ぐ)が必要

・集団に所属しても、個性を封印する必要はない。自然界における優れた意思決定は、妥協ではなく競争から、合意ではなく意見の不一致から生まれる



どうすれば、集団や組織を長く繁栄できるか?その答えが、この本の中に出ていました。それを一言で言うと、「友好的競争」ということではないでしょうか。

「中央集権」「一極集中」「お上に逆らわない」「空気が読めない」といった日本人の「なびく精神風土」は、個人にとってはプラス要因であっても、集団や組織にとっては、衰退スピードを加速させるマイナス要因になるのかもしれません。
[ 2011/03/23 08:04 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『お金とつきあう7つの法則』山崎元

お金とつきあう7つの原則お金とつきあう7つの原則
(2010/03/26)
山崎 元

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お金の思想が満載の本です。山崎元氏は、以前、「超簡単お金の運用術」「転職哲学」の本を紹介しました。どの書も、ユニークかつ本質に迫る視点が秀逸です。

この本を読み、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・お金は「汚い」のではなく「危ない」もの

・お金を道具として目的のために使いこなすには、お金と心の関係をはっきりさせておく必要がある。その上で、お金を合理的に扱うことに徹する。いわば、「お金の思想」の骨子

・お金があると「自由の範囲が広がる」。そして、目的達成可能性が高まる。また、多くの不幸が避けられる

・お金について心配しなくてもよい状態をつくることが、一つの目標。安心してお金のことを忘れられる人生が理想的

・お金に関して最も恐ろしい副作用は、お金が容易に価値観に置き換わって、人を支配する場合があること

・お金がそこそこ以上にあり、その上で、これから稼ぐのが難しい状況にあると、「お金が減ること」「お金を他人に取られること」「お金の価値が減ること」が気になって仕方がない。こうした心境にある人が怪しい投資話に騙されやすい

・自分の「プライド」とお金の関係、自分の「倫理」とお金の関係、自分の「時間」とお金の関係について、あらかじめ考えておくのが「お金の思想」

・大方針は、お金(経済力)に関して、「威張らないこと」と「ひがまないこと」

・お金との関わり方には、株式で稼いでいる「株式階級」、主にボーナスで稼いでいる「ボーナス階級」、安定的な雇用を得て給料が収入の大半の「給料階級」、雇用の継続性がほとんど保証されない「非正社員階級」の4つの階級に分けると考えやすい

・誰にでも取って代わられる仕事なのか、それとも、ある程度の経験やノウハウを要する代わりが少ない仕事なのか、その違いが大きい。「代わりの少ない仕事」を選ぶと有利に稼げる。自分が有利な競争環境のつくり方が求められている

・自分はなるべくリスクをとらずに儲けることこそ金融ビジネスの本質。「客の非合理性に利潤が宿る」

・1年間に4%を超える物価上昇と15%以上の円安が同時に起こった場合には、日本の金融資産に対する警戒モードに入ると考えるべき

・お金を失うかもしれない可能性を心配する場合、真に怖いのは、金融商品やマーケットの変動よりも「人間」。どんな金融商品を選ぶかよりも、誰にアドバイスをもらうかが重要

・お金を守ることに注意がいっている人が引っ掛かりやすい、ダメな金融商品、金融サービスの3つは「プライベートバンク(PB)」「毎月分配型投信」「変額保険(個人年金保険含む)」

・相場を予測して運用計画を変更することは難しい。基本ポートフォリオ(資産配分)を決め、それをきめ細かく計画を修正しながら運用していくこと



お金の本質をすべて見とおした著者ならではの見解は、非常に参考になります。特に、50歳以上の方には、参考にするべきところが多いように思います。

お金から自由になるためには、お金について、とことん考えておかなければならないのかもしれません。
[ 2011/03/22 08:04 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『自分を生かす人生』本多静六

自分を生かす人生自分を生かす人生
(1992/10)
本多 静六

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この本も、以前勤めていた会社の上司であったFさんに、薦められた書です。

以前、このブログで「人生を豊かにする言葉」という本多静六の書を紹介したことがありますが、それは、本多静六が書いたものを上手に編集した本でした。

自分を生かす人生」は、本多静六の肉声(肉筆)が、ほぼ記載されている貴重な書です。今回、自分を生かせる指針になると思えた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人生で最大の幸福は、家庭生活の円満と職業の道楽化にある

・病弱になれば、富貴栄達、美衣美食も何の意味も持たない。何物にも代え難いのは健康。一度、病気にかかった時に誰でも痛感する事実である。多年、健康第一主義を唱道するゆえんがここにある

・貧乏暮らしをしていても、世界の図書を友として、心は千古の聖賢と語り、居ながらにして世界各国の事情に通じ得るのは、まったく知識の功徳、幸福のゆえんである

・肉体がなければ精神の宿る場所もなく、またいかに精神修養のできた人でも、長く食わずにおられないのだから、決して物資を軽視するわけにはいかない

・自分が目的、理想の下に、努力しつつ、次第にその理想を実現していく途中に、自分の味わうにふさわしい幸福が生ずる

・努力実行によって物質的に満足を得ること。心の修養によって精神的に満足することの二つの満足によってはじめてその幸福が実現される

・人の幸福は出発点の高下によるのではなく、出発後の方向のいかんにある

・欲望は、絶えず向上し進化し、かつ常に比較的であるから、幸福は小より大に、下より上に、後戻りせずに次第に進んでいかなければならない。幸福は決して、固定的、永久的、絶対的なものではない

・名家や金持ちの子弟が幸福になるには、最初はなるべく低い生活から始めて、欲望は自分の努力で満たすことにし、しかもその生活を自分の努力次第で高めていくことである

・人生最高の幸福は社会生活における愛の奉仕によってのみ生じる。わかりやすく言えば、他人のために働くこと

・世に処するに虚偽なく正直でありさえすれば、心の中に恥じるところ、恐れるところがないから、良心に苦痛がない。良心に苦痛がなければ、精神的に勇者となる

・成功の秘訣は、第一に貧乏人の子供に生まれること。第二にどんな職業でもいいから絶えずその第一人者となること(カーネギー)

・勤勉忠実、縁の下の力持ちなど、処世上損な回り道に見えるが、その実、最も徳用な近道である。権謀術策、才知は一時的なもの。これを用いる間は大成功できない。このことは誰でも四、五十の齢になればわかるが、それを二十代で気づいたら、大成功できる

・人の悪口を言わないことは、自分をよく宣伝すること。陰で人の善行を賞賛することは、自分の善行を賞賛することに等しい

・過ちを悔いる必要はない。悔いても仕方のないことは、その過ちを改めていないのと同じこと。世の善人はすべて過ちからできている。そして、百人が九十九人までは、本当に悪かったために、かえってますます善良となった(シェークスピア)

・教育上、学生のインスピレーションを圧迫せずに、発達させる必要がある。インスピレーションが正しいか正しくないかを事実にあてはめて解説する習慣をつけさせ、もって各自のインスピレーションを自由に育て上げる習慣を養わなければならない

・注意すべきは、投資に味を覚えて、投機に進むこと。投資は、本業に励みつつ、臨時的にやり、半年ないし数年以上の時の威力を利用するもの。投機は、本業そっちのけで、一日ないし三か月の時の力しか利用し得ないもので、極めて危険な事業である

・悪魔は次の四つの言い草で、人を罪悪に導く。「誰でもするから」「たった一度だけ」「これしきのこと」「まだ前途が長いから」

・失敗して金を借りに来る人は、たいてい何か欠点があり、金を貸してもとうてい成功できない人。いつかは断らなければならないので、「気の毒は先にやれ」で、早く断るのが双方の利益になる

・普段は葉書もよこさないくせに、自分の用事ができた時だけに、急に頼みに来るような人は、とうてい成功できない人。成功する人は絶えず緊張して、あらゆる方面に努力するから、自然筆まめになる




本多静六氏ほど、お金と仕事と人生、それに幸福とは何かを理解していた人はいないのではないでしょうか。

地に足付いた幸福論は、経験した人でないと語れないのかもしれません。自らの努力で、東大教授になり、投資で大成功し、晩年、資産を全額寄付するように遺言したような人は、今後ともあらわれてこないように思います。

成功を夢見る方には、是非一度読んでほしい書です。
[ 2011/03/18 07:22 ] 本多静六・本 | TB(0) | CM(1)

『電子書籍元年』田代真人

電子書籍元年 iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?電子書籍元年 iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?
(2010/05/21)
田代真人

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今、こういう時期に、書評のブログを書くことに、虚しさと無力さを感じます。でも、そう考えていても何も始りません。今回は、前向きに、明日の飯のタネである「電子書籍」に関する本を採り上げてみたいと思います。

文章を書く人間にとって、電子書籍は気になる存在です。紙の書籍は、最低5000部完売しないと出版社が儲からない構造になっています。したがって、5000部売れない作家は切り捨てられます。

ところで、人間みんなに共通する基底の部分は「欲深さ」です。その上に「知性」が多かれ少なかれ乗っかっています。知性的な人にも欲深さがあり、欲深い人には欲深さだけあるのが人間です。

つまり、「下品」にならないと成功できないのが出版業界でした。それでは、電子書籍になると「上品」でも成功できるのか?

このことを知りたくて、この本を読みました。出版業界に詳しい著者の分析、予測はとても参考になります。今回、勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本の電子書籍市場は500億円。その中心コンテンツは、漫画やボーイズラブ系のライトノベル、エロティックな小説。書店で買いにくい小説を20~34歳の女性が携帯電話上のネット書店でこっそり買って自分の部屋で読んでいる

・今後の電子書籍では、すべての著書の印税が70%になると言うのは暴論。編集者の仕事(校正、校閲、全体構成、マーケティング、宣伝など売れる書籍に仕上げる)すべてを一人で行える著者は一部に限られる

・紙メディアは96年をピークに売上が落ち始める。この年は、ヤフージャパンが設立された年。読者は、本の代わりに、時間を消費できるものを見つけてしまった

・ネットは、手紙を飲み込み、電話を飲み込み、ラジオを飲み込んだ。そしていまや、映画を飲み込み、テレビを飲み込み、本を飲み込んでいく。だが、人間の時間は1日24時間のままである

・著者の日々の想いや出来事、意見を綴るブログは、情報としては「フロー」。それに対して、電子書籍はパッケージ化された「ストック」。今までの情報のフローやストックは紙に印刷された新聞、雑誌、書籍であり、紙は情報を入れる器であり続けた

・文芸小説を読むという行為は、エンターテインメントを味わっている行為。テレビや映画を観るのと同等の行為。つまり、パソコンで小説が読めないわけではないが、読む気が起こらないだけ

・アマゾンやアップルは、プラットフォームの開発メーカーだが、コンテンツを販売する小売店でもある。グーグルのブックストアであるグーグルエディションを加え、電子書籍の書店は、3つに寡占されていく

・iPhoneを所有せずにiPadを購入する層は限られている。当面、電子書籍の創り手は、iPhone所有者をターゲットにするほうが賢明

・通勤電車の中では、スマートフォンなどのeブックリーダーが似合う。他方、長距離の新幹線や飛行機の中ではiPadのような大きなタブレッド型でも構わない。家のリビングで読む場合も、いままでのノートパソコンより違和感がない

電子書籍は、欲しい本を手軽に安い価格で手に入れられるという理由で購入されることが多い。ユーザーは、読む場面を想定して購入するのではなく、手軽に買える+読める+安いという理由に突き動かされて購入に走っている

・スマートフォンであれば、表示画面が小さいので、雑誌のような誌面展開よりは、むしろテキストだけの読み物のほうがいい

・女性誌は年齢で区別したクラスマガジンが主。ターゲット年齢の女性が好みそうな話題(ファッション、仕事、趣味、恋愛、健康など)であれば、なんでもネタにする。車、スポーツ、モノ、ビジネスの専門誌以外の総合男性誌の大半は高所得者向け

・現在、出版社がやっている仕事は、電子書籍時代になろうとも必要な仕事ばかり。出版社がなくなることはないが、電子書籍が普及することで、ビジネスの構造が変わっていくことは確か

・書籍は、通常一度読めば十分。音楽のようにカバー曲が流通することもない。基本的には、同一作家が、単行本を文庫にして2回転させるくらいのもの。つまり、出版が音楽と全く同じ道を辿るとは思えない

・目的はユーザーの財布の中からお金を支払わせることではない。24時間しかないユーザーの時間を、お金をいただいてまで占有することができるかということ

・日本では、通販サイトに多くのクレジットカードなど個人情報が集まっている。すでにユーザーが課金情報を登録した楽天やヤフーなどのサイトで電子書籍を販売すれば、ユーザーは、ストレスなく購入できる

・リーズナブルな価格を考慮すると、350円、450円か600円くらいが、電子書籍を購入しやすい価格になる

・書店の取り分(売上の22%)取次会社の取り分(同8%)著者に払う印税(同10%)で、単価1000円の本が5000部完売で出版社は損益トントン。3000部・返本率40%なら140万円の赤字。10万部ベストセラーなら3760万円の黒字

・電子書籍で、単価600円・部数500部・売上30万円の場合、配信・決済料(売上の30%)、著者に払う印税(同35%)、デザイン・DTP費10万円、出版社の経費5万円なら、出版社の損益は4.5万円の赤字

・400ページに及ぶ大作で3000円の価格の分厚い本があっても、書籍の厚みのわからない電子書籍では価格は800円まで。したがって、その原稿を9つのパートにわけて、それぞれ450円で販売するというテクニックも必要になる

・既存の出版社が電子書籍分野への参入を躊躇する理由は「儲からない」から。しかし、時代の流れは止められない。その流れの中で、やるべきことはやってみるというのが現実的

・著者から原稿のみを集め、電子書籍の体裁に加工して、電子書籍サイトにアップロードしていく。著者からは、電子書籍化とアップロードの手数料をいただくビジネスは強いものとなる



この本を読んでいると、電子書籍の時代へと、急には変わらないが、徐々に変わっていくだろうことが想像できます。

電子書籍の時代になれば、「儲からないが、本当に書きたい本」を出版できる時代になるのかもしれません。

来るべき時代が来るまで、今、書きたいことを書きためておくと、面白いことが起きそうに思います。
[ 2011/03/16 08:16 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『戦話・大空のサムライ-可能性に挑戦し征服する極意』坂井三郎

戦話・大空のサムライ―可能性に挑戦し征服する極意 (光人社NF文庫)戦話・大空のサムライ―可能性に挑戦し征服する極意 (光人社NF文庫)
(2003/04)
坂井 三郎

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東北大地震に心が痛みます。財産と家族の命を一瞬にして奪われてしまった方には、何と言葉をかけていいかわかりません。また、宮古、釜石、南相馬には、何回も足を運んだことがあっただけに、テレビで見る、町の惨状に目を覆いたくなる気分です。

しかも、私自身、阪神大震災で、震度7の揺れ、その後、火事が近くで発生し、2軒先で止まり、自宅の周り、半径200メートルで、30人ほど命が奪われるのを目にするという経験をしました。

津波に遭われた方の足元にも及びませんが、虚しさ、はかなさ、あわれさといった無常観を味わったことがあります。

今、こういう時に、坂井三郎氏という、生きるか死ぬかを何度も経験された方の書を採り上げるのは、どうかと考えましたが、あえて、この本を紹介することにしました。

坂井三郎氏のことを教えてくださったのは、以前勤めていた会社の上司のFさん(脳梗塞で倒れ、リハビリ後復帰)です。

坂井三郎氏は、零戦で200回以上の空中戦を闘い、敵機を64機、撃墜した海軍航空隊のエリートです。太平洋戦争で、ガダルカナル、硫黄島の決戦を体験した中で、九死に一生を得ましたが、敵機に狙撃され右眼を失明し、左半身も不自由になられました。

昭和56年に出版された本ですが、死生観を有している方なら、今読んでも、感動するところが多いのではないでしょうか。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



人生是勝負。私たち一人一人は勝負師であらねばならない。それも半可通の勝負師ではなく、正々堂々たる勝負師を目指さねばならない

・安易に勝ちをとろうとすると、やることなすこと姑息になり、眼前の勝ちにばかりこだわり、全体を見失う結果となる。これでは、勝ち抜き、勝ち進んで生き残ることができない

・強固なる勝負師の根性を土台の条件にして、自分の行う戦術、進める戦闘技術が、つねに理にかなっていなければ、勝負に勝つことはできない

・相手が致命的なミスを犯すように、また犯させるように持っていくのが、「理にかなう」戦いの進め方

・「理にかなう」とは、すべて読みにはじまり、その読みが正しく実践できることにつきる。その時にこそ、勝機を自分で創り出せる

・極意は「先手必勝」。真剣勝負の場で一度、後手に回ってしまったら、元始の状態に戻すためだけで大変な危険を払い、無駄な時間を浪費し、エネルギーを消費しなければならない。先手を取ることで、相手の心の動きを読み、致命的なミスを誘発させることができる

・勝負というのは、強いから勝つのではない。その勝負に勝ったから強い。勝負に勝っても、次の勝負に勝てる保証はただの一片もない。勝負は負けたら終わり。次の戦いの準備に最善をつくすことが「必勝の信念」となる

・勝負師は一つの事象にのみ、心を奪われてはならない。中でも指揮者は、二つも、三つも、四つもの事に眼を配り、心を配る「分散集中力」をつけなければならない

・高空に上がれば上がるほど、スピードが速くなればなるほど、人間の能力が減殺されていく。それを「パイロットの六割頭」と言った。自分を正常と思い込み、自分の能力の低下を自覚しないところにこわさがあり、命とりとなる危険が潜んでいる

・人間は死ぬために生れてきた。形あるものは必ずこわれ、生あるものは必ず死ぬ。これは宇宙の鉄則

・自分の一生の大目標を果たすために、私たちはそれぞれの職業を持っている。ベストをつくさねばならない所以であり、人間の生存競争のための勝負がここに展開される

・天運と人運を混同しがちだが、勝負師の考える運は、人運でなければならない。人運は性格+環境+努力の三要素から成り立っているから、自分で切り開くべきもの。ここから、人事(人運)を尽くして天命(天運)を待つ心境が生まれる

逆境に鍛えられた人間は、難局に際しても、立ち向かう気力と打ち破る底力を持っている。逆境は本物の人間をつくる。思いやり、人の情けといった深みのある人間性はこのあたりから生まれる

・自分が日ごろ信じ切っている師匠の一言は、たとえ暗示であっても、死を生に変える力がある

負けなければ、次の勝負の権利が獲得できる。真剣勝負では、常にこのことを念頭に入れてかからねばならない

・最短時間内に冷静さを取り戻すことが大切であり、どんな事にも動揺しないだけの図太い神経を養っておく。つまり、最悪を覚悟しながら、最善をつくす

・勝負師というものは、どんな些細なことであっても、自分が感じたことを記憶装置に叩きこんでおけば、いつかはきっと役に立つ。たとえ、それが生涯に役に立たなくても、その心構えを持つと持たないとでは、大変違った人生になる

・パニック状態に遭遇したとき、あわてふためいて処置することはすべて誤り。まず、取り戻すべきは平常心。空中戦で弾丸をくらってキリキリ舞いになった時、すかさず時計の針を見る。今、何時何分を針が示しているかを確認できたら、平常心を取り戻せる

・野生動物の中でも、集団をなして行動するものには、リーダーが必ずいる。リーダーの使命はただ一つ、自分の率いる集団の安全保障をすることである。つまり、毎日の生活生存を全うし、安全に繁殖をはかり、外敵の攻撃に対して集団を守ること

・実戦において、実力即戦力のないリーダーなど、部下から見て信頼も希望もない。とくに小単位で直接指揮して戦うリーダーには不可欠の条件。その条件の中で、もっとも大切なのは、指揮官としての執念。絶対にあきらめないで、永く持続させること

・人間は追い詰められて、いよいよ苦しくなってくると、そこで迷いが生じてくる。どうも自分のやっていることが間違っているように思えてくる。もっと他にいい方法がありやしないかと迷う。しかし、ここで他の方法に転じたら、その時が自分の最後の時になる

・自分の言う「戦い」とは、競い合い、憎み合いのことではない。「戦い」は自分との戦い、つまり、怠けよう、驕ろう、安易に妥協しよう、諦めよう、悪い誘惑に負けようとする心との戦いである



この本には、強く生きる言葉が数多く出てきます。死線を彷徨ってきた人だからこそ、このような手記が書けたのではないでしょうか。

つらくても、やりきれなくても、虚しくても、明日の飯を何とかしないといけないのが人間です。結局、強く生きていかないといけないのかもしれません。
[ 2011/03/14 10:22 ] 坂井三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『ナマケモノでも「幸せなお金持ち」になれる本』アーニー・J・ゼリンスキー

ナマケモノでも「幸せなお金持ち」になれる本ナマケモノでも「幸せなお金持ち」になれる本
(2003/11/22)
アーニー・J・ゼリンスキー

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著者のアーニーJ・ゼリンスキー氏の本を紹介するのは、「働かないってワクワクしない?」「スローライフの素」に次ぎ3冊目です。

著者の本に共通する主張は、「お金」「時間」「心」のバランスを大事にして、個々の幸せを見つけるという単純なものです。

考えてみれば、当たり前のことなのですが、現代社会は「お金」一辺倒に傾いており、新鮮に聞こえるのかもしれません。

この本でも、共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・不幸への道に人を導くのは、無意味で不要なあれこれ(肩書、家、車、流行の品など)を追い求めずにいられない心のありよう

・大金持ちと言われる人たちは、えてして忙しすぎて、人生を楽しむ時間がないか、あるいは時間があったとしても、楽しむことを知らないかのどちらか

・群れがある方向へ向かったら、自分はそれ以外の方向へ進むことを考えたほうがいい。自分がほしくないものを追い求めるのは、時間や労力や金銭の浪費というもの

・あなたをほかの連中と同化させようと躍起になっているこの世の中で、ほかの誰でもない自分自身でいることを決してあきらめないこと

・人間は心の充足感を得られないと、浪費に走る傾向がある。買物がストレスを発散させるセラピーの役目を果たしている

稼いでは使うという悪循環は、金に対する執着と同様、心からの充足感を与えてくれる仕事に出会うまで断ち切ることができない

・ちまたに氾濫する魅力的な新商品に目がくらみ、物欲に支配されると、人間は本来の目的や夢を失いがちになる

・成功を確実にするのは、人生をできるだけ自分の手で操ること。人生の支配権を失ったとき、人間は不安を感じ、ストレスがたまりがちになる

・成功と金への飽くなき欲望は人間の品性を破壊する。他人を利用するのでなく、他人に尽くすことで成功を手に入れよう

・前向きなエネルギーを生み出すのは前向きな考え方。恐れや不安、ねたみや憎しみ、そして怒りといった否定的な感情は、人間の心を抑圧し、目標に向かって進んでいく気持ちに水を差す

・他人と違うことを考え、違う行動をしよう。重要なのは最初の人間になること。そのときはじめて、社会に貢献することができる。さらに大成功を収めているかもしれない

使う暇もない品の代金を支払うために毎日仕事に出かけるのはあまりにも悲しい

・つねに過労とストレスにさらされる仕事をする意味があるのか?たんに寝に帰るだけなら、豪華な家をかまえる必要があるか?楽しむ時間がないのに、どうして話題の新製品を買い揃えるのか?滅多に会えないなら、そもそも家族とは何か

・「人生でもっとも重要なのは、ものの価値を正しく判断できる能力だ」(ラ・ロシュフコー)

・ワーカーホリックの人たちは、たとえなんの利益ももたらさない仕事でも、一生懸命取り組むことで、自分が偉くなったような錯覚に陥っている

・何より大切なのは成功そのものではなく、そこに行き着くまでの過程を楽しむこと。途中で道草を食い、冒険するのもいい

・一番欲しいものは、その場にないもの。「ほかの人たちはみんな幸せに暮らしているはずだ」と誤って思い込まないこと



寝に帰るだけの豪華な家、楽しむ時間がないのに買った新製品。これらはすべて企業にお金を寄付しているようなものです。悪い言い方をすると、企業にうまく騙されているだけです。

そこを正しく判断できないと、幸せになれないのかもしれません。世間の常識と離れて、お金と時間の関係を正しく考えてみることが、幸せな暮らしの第一歩になるのではないでしょうか。
[ 2011/03/11 08:13 ] ゼリンスキー・本 | TB(0) | CM(2)

『ヒトラーの大衆扇動術』許成準

ヒトラーの大衆扇動術ヒトラーの大衆扇動術
(2010/07/10)
許 成準

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ヒトラーの大衆扇動手法は、現代でも多くの分野で応用されています。例えば、小泉元首相及び秘書は、このヒトラーの手法を実践して、高い人気を維持し続けていたのではないでしょうか。

宗教法人然り、大企業然り、上手に世の中を支配している者たちは、ヒトラーを真似したわけではなくても、ヒトラーの手法に似たことを自然とやっています。

ヒトラーは、「成り上がった後にやったこと」はよくないですが、「成り上がる前にやったこと」は参考にできることが大いにあります。豊臣秀吉にも同じことが言えるのかもしれません。

この本は、韓国の元ゲームクリエイターというユニークな経験をされた許成準氏が、ヒトラーの大衆扇動術を詳しくまとめられた面白い書です。

参考になった箇所が35ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ヒトラーの演説の特徴は「神秘的な登場」「分かりやすい内容」、そして「群衆を興奮させる熱狂的なスピーチ」に要約できる

・演説自体も大事だが、それをサポートする演出も同様に重要。演壇に上がるタイミング、雰囲気を盛り上げる補助演者、ボディーガードの存在。聴衆の期待感を目いっぱい高めておいて、長時間待たせた後、舞台に登場する

・人を動かすには、「怒り」の感情にアピールするのが基本。怒った状態では言葉が滑らかになると同時に、怒りは最も扇動しやすい感情である。大衆を行動させようと思えば、彼らの心の中にある怒りを覚醒させなければならない

・大衆を扇動するには、必ず「怒りの対象」が必要。ヒトラーは、大衆を結束させる最も効果的な方法が「共通の敵」を作ることだとよく知っていた

・多数の人を結束させる対決構図(ブルジョアVSプロレタリアなど)を作っておけば、既存の社会を転覆させるほど強く民衆を結束させることができる。逆に、そういう対決構図なしで、民衆を一つに結束させるのは非常に難しい

・誰かを説得して動かそうとすれば、その人のプライドを傷つけるようなことを絶対に言ってはならない。思うとおりに大衆に動いてほしいと思うなら、大衆を褒めそやすこと

・不幸な人は誘惑しやすい。彼らの不満が何なのかを把握して、それを主要ターゲットにすれば、彼らを自分の望みどおりに動かすことができる

ナチスの宣伝原則は「大衆を興奮させる(冷静にさせない)」「間違いや失敗を認めない」「非難を受け入れない」「代案の余地を残さない」「敵の長所を認めない」「敵を責める時は、一度に一つの敵だけに集中する」に要約される

・ヒトラーは演出のために、夕焼け空などの自然、旗の波、大規模な軍隊行列、そして劇場的な照明などを使用した。特に照明効果はよく利用した

・人々は、最初はヒトラーの大げさな身振りや興奮する姿などの演劇的な要素に興味を持って、演説を聞きに行った。ヒトラーの演説会は入場料を徴収したが、それでも多くの人が詰めかけた。その入場料収入が初期の政党を支える資金源となった

・立派な指導者になりたいなら、上手い役者になること。ヒトラーはいつも演劇俳優の身振りを真似しながら演技の練習をした。感情を噴出する発作的行動も自ら演出した。ヒトラーにとって、演説は単なる言葉ではなく、大衆を扇動し、説得して操るための道具

・ヒトラーのイメージを維持するために一番重要だったのは、下手に大衆の前に姿を現さないということだった。このような神秘化戦略は人々に多くの興味と好奇心を植え付ける

・集まりの規模が大きくなればなるほど、マンツーマンのコミュニケーションの比重は小さくなり、参加者の心は全体の集まりの雰囲気に同化していく

・ヒトラーは、精神的に圧力をかけなければならない相手に会うときは、ほとんど瞬きをしないで、相手をじっと見つめた

シニカルな人は、初めは、真剣で熱情的な人をあざ笑うかもしれないが、その人の感情が一貫性を持って粘り強く続けられると、やがて好奇心を持ち始め、同調するようになる

・メッセージが単純であればあるほど、感情的になればなるほど、好感度が高ければ高いほど、説得力のエネルギーは強くなる

・ヒトラーは、実権を握った後、最初に通した三つの法案はどれも動物保護に関するもの。ヒトラーは残酷であったが人間的な一面もあった。破壊的であったが建設的でもあった。成功に導いたのも、明るい一面であった。矛盾する面があった

・指導者とは、たった一人で目的地に到達すれば良い存在ではない。みんなに自分の進む方向をはっきりと知らせて、一緒に目的地まで到達しなければならない存在。だから、先に何をするつもりかを宣言して、次にそれを実行に移さなければならない

・現実に順応して生きている人は、大衆を扇動できるファンタスティックなビジョンを提示することはできない。リーダーになりたければ、想像力を育てなければならない

・自分を美化し、実際の能力より誇張して話す人の方が有能と思われて、正直なライバルを打ち負かし、能力以上の利益を得る。正直な人は、能力に見合った待遇を受けることができないでいる

・優れた扇動家は、自分の嘘を他のみんなが信じるようにするだけでなく、それを自分自身でも信じてしまう。このようにすることで、言行に矛盾がなくなり、自分の嘘をすべての大衆が疑うことなく信じるようになる

・最良の嘘は、「現時点では嘘ではない希望的な嘘」。未来になって真偽が判明する嘘が良い嘘。未来についての肯定的な嘘は、あなたとあなたが率いる人たちを成功に導いてくれる

公共の敵の条件とは、「絶対多数の民衆に被害を与える集団」「民衆が一致団結すると、充分に勝つことができる相手」

・中立的すぎる、特色のない主張だけをする人は、いくら話術に優れて利口な人であっても、単純で極端な主張で武装したライバルに押されやすい

・自分のビジョンを明確にするためには、それを文書化したほうがいい。ヒトラーも、自分の初期のビジョンを「わが闘争」として、書籍に残したことが、頂点に上り詰めるための重要な役割を担った

・若い層に人気のない集団に未来はない。単に、支持層が老化し、死亡して数が減っていくという問題ではなく、集団の活力の問題である。会社組織でも、メンバーの年齢が高い組織は、円熟だが、エネルギーのない組織になってしまう

・結束をより堅固にするには、敵は内部に隠れている少数勢力の一つに設定する。そうすれば、一般の人々がその勢力に同調するのをあらかじめ防止することができる

・何かを強調したいなら、文言を繰り返す方法を使う。何かを対比したいなら、同じようなリズム感を持った語句を組み合わせて使う

・ナチスの軍服は格好よかったので、軍人たちの羨望の的になった。それによって軍の士気が高まったことは無視することはできない。軍服も、格好よさのために実用性を犠牲にする必要がある

・ヒトラーは、部下たちに権威的で派手な身なりをさせて、自分は質素な服を着た。派手な部下たちが自分を取り囲むことで、自分は権威のために派手な服を着る必要がないほどの力を持っているというメッセージを伝えた

・自分のイメージを創出する時は、そばに置く小品、背景、人物などを注意深く選択しなければならない

・言いたいことが一つあれば、これをいろいろな表現と多様な事例で、聴衆の中の最も愚かな人にまで分かるように語ること

・ヒトラーは細かいことに干渉するリーダーではなかった。彼は全体的な目標だけを立てて、残りは部下たちが各自の判断で実行するように放っておいた。この任務型戦術の最も重要な前提は、優秀なスタッフ

既得権を持つ人たちを動かす最も確かな動機は、「財産に対する脅威」と「より財産を蓄積できる機会」の二つ

・この世界には、騙す人と騙される人がいる。資本家と扇動家は騙す人で、大衆は騙される人。騙す人はメディアを使って自分に有利なことだけを見せて、大衆を洗脳する

資本家と政治家は、利害関係には鋭い感覚を持っていて、お互いに騙すのは難しいことを知っている。その一方で、いっしょに協力すれば、大衆をうまく騙して権力と経済的な利益をすべて独占できることも分かっている

・できるだけ多くの人に成功の機会を与える国が成功する。ファシズムが失敗した原因は、民族概念に捉われた閉鎖的なシステムだったから。他民族に排他的な体制を持つ国は、結果的には衰退する



今、私は50歳を過ぎてしまいました。30歳までに、ヒトラーを知っていたら、また別の人生を歩んでいたかもしれないと思うような書でした。

イデオロギーとアレルギーに捉われていると、人の長所が見えなくなってしまいます。まあ、とにもかくにも、ヒトラーは頭のいい人であったということは、紛れもない事実なのではないでしょうか。
[ 2011/03/09 08:23 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『バフェットの株主総会』ジェフ・マシューズ

バフェットの株主総会バフェットの株主総会
(2009/01/23)
ジェフ・マシューズ、Jeff Matthews 他

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ウォーレン・バフェット氏が初来日するそうです。バフェット氏は世界第3位の資産家です。アメリカの田舎に住み、質素な生活をしながら、資産を築いてきた人です。

しかも、貯めたお金をビル・ゲイツと共同で団体を設立し、世界の恵まれない人たちに積極的に寄付活動を行っています。

バフェット氏の投資行動は基本に忠実です。彼がどうやって儲けてきたのかが、この本で明かされています。投資の王道を行くバフェット氏だけに、参考になる箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・投資家の目的とは、5年や10年、または20年後、実質的な収益がほぼ確実に伸びると見込めるビジネスの一部を、合理的な値段で買うことに尽きる

・農場を買おうとするとき、毎日、その値段ばかりを見ている人はいない。買い値に対して、どれくらい生産高が見込めるかを見る。株式投資もそれと同じ

・ブランドには収益があり、コモディティにはそれがない。コカ・コーラ然り、ジレット然り、アメリカン・エキスプレス然り

・バフェットは自らが深く理解するいくつかの業界(能力の範囲内の業界)に的を絞って、投資を行う。能力の範囲外の業界には手を出さない

・バフェットが保険業に目をつけたのは、他の商売と違って、商品が実際に利用される前に顧客から現金を受け取れるから。保険業の収支がトントンなら、フロート(滞留資金)を株や債券に投資することで、多くの利益が上げられる

・保険のフロート運用益以外で、バークシャー(バフェットの投資運用会社)の最も重要な事業はエネルギー業

・200万ドルをもらえたら、みんな満足する。しかし、それは210万ドルもらっている者がいることを知るまでの話。欲望ではなく嫉妬がいちばん悪い大罪

・サブプライム問題を大きくしたのは「証券化」。複数の住宅ローンを束にして、地元から遠く離れた投資家に転売したこと。地元の銀行は、目の前で結果を見るから、そういうことをしたがらない。ウォール街で売られると、そういう抑制が働かなくなる

・大きな間違いを一度犯しただけで、それまでコツコツと積み上げてきた成功がいっぺんに崩れ去ることがある。ですから、前例のないことを含めて、重大なリスクを見抜き、避けることのできる力が生来備わっている人物が私たちには必要

・バフェットは会社を買うときや多額の資金を投じるときはボディーランゲージも参考にする。「どういうことを話す人物であるか。その人物が何を重要と考えているか」。そこからはいろいろなヒントが得られる

・損失を出すことは許せる。たとえ、莫大な額であっても。しかし、会社の名誉を傷つけることは許せない

売りたくないものを、ひとつ持つ。そうすると、30年間はじっとしていられる

・私たちが求めるのは、起こったことから学べるだけでなく、まだ起こっていないことも想像できる人間。保険や投資の仕事には、そういう能力が必要になる

・バフェットはいわゆる“電脳投資家集団”から距離を置くことで、ウォール街の短期的な動きに煩わされることなく、5年から10年先の長期的な観点から、株主のためになるチャンスを探している

・「市場に指示を仰ぐのではなく、市場を利用すること」。バフェットは事務所に株式市況の情報端末さえ置いていない

・バークシャーを成功に導いたシンプルで、長く変わらない方針は、「長期的な競争力があり、経営陣が信頼でき、納得できる値段で買える会社」

・人生で一番重要な仕事は、愛情や食べ物を与えること。それは、子供を育てるという仕事



バフェット氏に関する本は、「ゲイツとバフェット後輩と語る」「バフェットの教訓」「バフェットの投資原則」「バフェットの財務諸表を読む力」など、このブログでも幾つか採り上げてきました。

この本は、バフェット氏が実際に株主総会の質問で答えた言葉をもとに構成されています。バフェット氏の生の声が多いので、投資に関して参考になります。

バフェット氏の投資に対する心構えと大局的な戦略を知りたい方には、ためになる本だと思います。
[ 2011/03/08 07:58 ] バフェット・本 | TB(0) | CM(0)

『“35歳”を救え・なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか』

“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか
(2009/11/28)
NHK「あすの日本」プロジェクト、三菱総合研究所 他

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この本のサブタイトルが「なぜ10年前の35歳より年収が200万円低いのか」というものです。

人生の重要な節目である35歳は、自分の得意分野、専門分野を活かして自立する年齢であり、多くの部下をマネジメントしていく年齢であり、家庭では親として、子を躾ける大事な年齢です。

その35歳の年収が200万円低くなっているということは、由々しき問題のように思いました。これで、立派な社会人になることを要求するのは残酷なように感じます。

この本の中で、35歳のいろいろな問題点が提起されています。同情できる箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・雇用が安定せず、収入が伸びず、消費が落ち込み、これがさらなる所得の低迷をもたらす悪循環に陥るため、向こう20年間の実質経済成長率がゼロと予想され、20年後、失業率は5%台から10%を優に超えると予想される

・今後20年間で、消費税率は5%から18%まで引き上げられ、国による公共事業や教育向けの支出は2割近くカットされ、保険診療の自己負担率が現役世代は3割から4割へ、引退世代は1割から2割へと上がり、年金が30%カットされるようになる

・1997年、30~34歳の男性の所得分布で、最も多かった年収は「500~699万円」であったが、2007年には、それが「300~399万円」となっている。この10年で、低所得化が急速に進んでいる

・35歳1万人アンケートでは、「働きたい」と答えた子育て中の主婦は93%。そのうち78%が、働く理由として「生活費の維持」を挙げている

・「転職経験あり」と答えたのは、3人に2人。「転職4回以上」も18%いる。正社員のうち年収500万円台では、転職経験はほぼ半数、400万円台では63%、300万円台では73%、200万円台では77%、200万円未満では82%になる

・35歳の単身者の男性の8割が「結婚したい」と考えているが、結婚していない理由として「収入が少ない」という経済的理由を、正社員の男性で35%、非正社員の男性で65%、挙げている

・非正社員の単身者のうち56%が親元で暮らしていて、正社員の単身者でも46%がパラサイトの状態にある

過酷な勤務や低い収入。そして繰り返される転職。厳しい状況が続く中、精神的な悩みを抱える35歳が増えている。4人に1人が、「働きすぎて悩みを抱えている」と答えた。正社員では、32%がそう答えている

・地方都市の中には、企業誘致で生まれる雇用や消費で地域を支えてきたところが多い。工場の閉鎖で、雇用が崩れるということは、35歳世代の暮らしに影響を与えるだけでなく、地域全体、次の世代にまで影響が及ぶ

・35歳世代の、想像以上の困難に直面している原因には、「経済不況」「雇用のセーフティネットの崩壊」「人材ニーズのミスマッチ」の3つがある

・従来型の労働者は、グローバル化の中で、企業の海外進出が相次いだことで、発展途上国の労働者に取って代わられ、国内で必要とされなくなっている

・一部の先進国において、女性の就労率が高くても、出生率が高い国が増えている。少子化対策に乗り出した先進国では、働きながら産み育てられる政策が、並行して実施され、それが出産に結びついている

・現在の35歳世代が直面する困難は、親世代に比べて怠惰だったり、不真面目だったからではない。グローバル競争に代表される日本を取り巻く環境の激変や、諸制度の改革が副作用をもたらしたことで、35歳は苦境に立たされている



35歳の問題は、官僚のエゴ、大企業のエゴ、高齢者のエゴがもたらしたものだと思います。

つまり、強い者が、弱い者を助けずに、いじめ、性悪な人間になったということではないでしょうか。

強い者は弱い者のおかげで存在している(弱い者の生き血を吸っている)ことを忘れたら、足下をすくわれ、結局、自らも滅んでいくように思います。
[ 2011/03/07 07:20 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『老年学に学ぶ-サクセスフル・エイジングの秘密』山本思外里

老年学に学ぶ―サクセスフル・エイジングの秘密 (角川文芸ブックス)老年学に学ぶ―サクセスフル・エイジングの秘密 (角川文芸ブックス)
(2008/01)
山本 思外里

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老年学というのは、寿命を延ばすことを目的とするのではなく、生命力と活動力をできる限り長く保つことを目的とするというのが著者の見解です。

老いを愉しむためには、どうすればいいか?山本思外里氏は、この本でしつこく追究されています。従来の老後の本では、物足りない方にはおすすめです。

ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・プラトンは「哲学は死のリハーサル」と言い、モンテーニュは「哲学することは、どのように死ぬかを学ぶこと」と書いている。死について学ぶことは、死ぬまでの生き方を考えることであり、死を考えるのは、よりよく生きるためである

・平均寿命は、ガンが一掃されると、2年延びる。心臓病を一掃できると、3、4年延びる。しかし、この二つの病を解決しても、たった6年しか寿命が伸びないとすれば、通常の医学的進歩による寿命の延びは限界に来ている

・新たな関連づけをしたり、新しい知識を吸収したり、新しい技能を習得したりする能力は、高齢になっても決して衰えない

・頭の運動は、体の運動と同じくらい大切。最も好ましい運動は、学び続けることである

・老化による身体機能の低下は、80歳前には起こらない。しかし、自分はもう年なんだと老けこんでしまえば、それより早く機能低下が起こる

人生の午前の目的である「自然段階」(子孫を生み、養い育て、金を儲け、社会的地位を得る)が達成されると、人生の午後の目的である「文化段階」(本当に関心あることに集中する)に進む。つまり、「個性化」の道を進む

・老いを否認し、若さの価値にしがみついている人たちにとっては、「過ぎゆく時は敵」である。晩年になって変化している自分を認められる人にとって、残された時間は「かけがえのない楽しい時」である

・人間にとっての人生後半の課題は、自分なりのコスモロジー(宇宙論)を完成させること。この世に存在するものすべてを、自分に入れ込むことによって、一つの全体性をもったイメージへつくりあげるのがコスモロジー

・老いの意味とは、外面から内面へ、所有から存在への転換である。金を稼ぐ仕事から引退すれば、財産、知識、社会的地位、権力などへの執着を断ち切り、心を内面に向けなければならない

・自らの周囲に起こるすべてのものに全く関心を持たない老人と、関心に溢れている老人。一方は空虚で、他方は豊饒である

・「好人得難く、好書も得難し」(貝原益軒『慎思録』)、そう簡単にモデルは見つからないが、根気よく学習し続ければ、必ず素晴らしい出会いが待っている

・多くの人の楽しみはみな外欲にある。これをほしいままにすると、わが身の禍が起こってくる。貧を憂えず、楽しみを得ては書を読み、時節を感じ、風景になれ親しみ、月花をめで、詩歌を吟じ、草木を愛することを楽しめば極まるところがない(貝原益軒『樂訓』)

・読書の楽しみとは、色を好まなくても喜び深く、山林に入らなくても心のどかに、富貴でなくても心豊かになることである(貝原益軒『樂訓』)

閑適生活を楽しむには、金はまったくいらない。閑適の真の楽しみは、金持ち階級のものではない。それはただ、富貴をもっとも冷笑する人々にのみ、見出すことのできる楽しみである(林語堂)

・晩年の生き方のお手本である、貝原益軒とバーナード・ラッセルの二人に共通するのは、晩年まで持ち続けた目的意識と、その達成をライフワークにしていたこと。狭い自分だけの世界にとらわれず、旺盛な好奇心と探求心で、絶えず新しいことに挑戦し続けたこと

・どんな種類であれ、陶酔を必要とするような幸福は、いんちきで不満足なもの。幸福な生活は、おおむね、静かな生活でなければならない。なぜなら、静けさの雰囲気の中でのみ、真の喜びが息づいていられるからである(バーナード・ラッセル)

センテナリアン(100歳以上の高齢者)に共通していた特徴はただ一つ。それは一般的に「人柄」と呼ばれるもの。もっと具体的に言えば、前向きな性格と楽観主義という心理面での特徴

・長寿はストレスを免れた結果というより、ストレスに効率よく、効果的に対処した成果。人柄が、さまざまな問題や損失、精神的動揺によって被る心理的、身体的ダメージを絶縁する

・あらかじめ死を考えておくことは、自由を考えることである。死を学んだ者は、奴隷であることを忘れた者である。死の習得は、われわれをあらゆる隷属と拘束から解放する(モンテーニュ『エセー』)

・老年は「支配世代」ではない。過去の地位や名誉や業績に恋々としてはならない。若いころに抱いていた拡張、攻撃、支配といった野心を、自分の「心的能力の成長」に振り向けなければならない

・老年は、これまでの経験の蓄えを生かし、若いころとは異なる性格を持つことが求められる。それは、自分勝手にならずに感情移入し、押しつけがましくならずに役に立ち、うぬぼれずに誇りを持つこと

・自分の幸福は、自分でつくりだすもの。それは、いつも学ぶことによって可能になる。生きることは、生涯をかけて学ぶことである



老年を科学的、哲学的な見地から研究されている人は少ないように思います。

この本は、年老いることの意味についての知的好奇心を満足させてくれる書です。老いを愉しみたい方には、貴重な一冊になると思います。
[ 2011/03/04 10:24 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『差別感情の哲学』中島義道

差別感情の哲学差別感情の哲学
(2009/05/15)
中島 義道

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中島義道氏の本を紹介するのは、「人生しょせん気晴らし」「善人ほど悪い奴はいない」に次ぎ、3冊目です。毎回、鋭い視点で、人間の本質をえぐり出してくれます。今回は差別感情についてです。

人は、他人を悪く差別するのはよくないとわかっていても、反対に、自分だけは特別に良く差別してほしいと願っています。

自分を良く差別してほしい気持ちが、努力する原動力にもなりますし、自分をよく見てほしいという気持ちの中には、他人を見下す気持ちが潜んでいます。差別は本当に難しい問題です。

この本は、差別感情とはいったいどういうものか解明しながら、差別とどうつき合うか、どう向き合うかを示唆してくれる書です。

参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・自他の心に住まう悪意と闘い続けること、その暴走を許さず、しっかり制御すること。こうした努力のうちに生きる価値を見つけるべき。人間の悪意を一律に抹殺することを目標にしてはならない

・非権力者が権力に立ち向かい、自らの理念を実現するためには、それ自身が権力を持たねばならない

・学力、学歴、肉体的魅力、政治的権力、芸術的才能、育ちのよさ、社会的地位、金銭的豊かさなど、プラスの価値は決まっていて、多くの人は、「一定の決まった価値あるもの」を欲しがる

・歴史的、文化的に背景をもつ差別の場合、その集団に嫌悪を覚えるにしても、個人的感情から離れていることが多く、差別感情を学んでいるに過ぎない

・子供たちの「いじめ」は、「不快」と「軽蔑」をも巻き込む感情であるが、やはりその中心は「嫌悪」である。嫌悪は社会的感情である

・差別感情としての嫌悪が強い人は、「正常だと思われたい欲望」を強く持ち、「儀礼的無関心」を装いながらも、自分の周囲に異常な人を嗅ぎつけ、括り出し、告発する人である

・差別感情の強い人は、自他に対する道徳的要求の高い人であり、それゆえ他人の不道徳を異様に攻撃的に追及する

自己批判精神を欠いている人は、時代の風潮に乗った「正義」の名のもとに、思う存分、その侵略者を弾圧する。強力な後ろ盾のもとに反対者を摘発し血祭りに上げる。こういう態度は、魔女狩りやユダヤ人全滅こそ正義だと確信した人と「心情構造」を共有している

・「軽蔑」は「嫌悪」より価値意識が高い。嫌悪の場合、まだ対等の感情であるが、軽蔑においては、視線は上から下へ向かう。まさに見下す。軽蔑とは他人を切り捨てる態度でもある

・差別意識の強い人は、一般的に人をランキングすることに情熱を燃やす。より社会的に優位の人を尊敬し、より下位の人を軽蔑する姿勢の強い人。上には媚びへつらい、下の者を足蹴にする

・差別を形成するものに、不快、嫌悪、軽蔑、恐怖という他人に対する否定的感情だけでなく、自分自身を誇りに思いたい、優越感を持ちたい、よい集団に属したい、つまり、「よりよい者になりたい」という願望がある

・わが国においては、誇りが優越感とみなされる危険をみんな察知しているがゆえに、「自分を」誇りに思うという発言は聞かれない。その代わり、自分の属する集団や同一の集団に属する他人を誇ることによって、差別感情は希薄化され、隠蔽される

・自分と同一の集団に属する他人を誇る人々は、差別感情を持っている。それを自覚していない鈍感さに苛立ち、その鈍感さにくるまれた狡さに辟易する

・負けた者、成果を出せない者は、努力に疲れたのではない。努力しても駄目だと言ってはならないことに疲れている。いわば、近代社会の残酷さの真実を見てしまったのであり、努力社会の正真正銘の犠牲者である

・誠実性と幸福との合致は、現実的にはできなくとも、理念としてそれを「求めること」、そこにこそ人間としての最高の輝きがある

・罪のない冗談の中に、何気ない誇りの中に、純粋な向上心の中に、差別の芽は潜み、それは放っておくと体内でぐんぐん生育していく。あなたが「高み」にいて、その「高み」に達していない他人を一瞬にせよ忘れたとき、差別感情はむっくり頭を持ち上げる



差別感情を否定すると、人間は人間として生きられなくなります。しかし、差別感情をコントロールできなければ、人間社会の中で生きにくくなります。

この本を読み、差別感情の制御こそが、「謙虚」だと感じました。人間として、成長するには、差別感情と向き合わなければいけないように思います。
[ 2011/03/02 07:49 ] 中島義道・本 | TB(0) | CM(0)

『華僑に学ぶお金の哲学投資のルール-資産を100倍にする方法』高橋守

華僑に学ぶお金の哲学投資のルール―資産を100倍にする方法華僑に学ぶお金の哲学投資のルール―資産を100倍にする方法
(2005/01)
高橋 守

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華僑に関しては、このブログでも、再三採り上げています。私自身、お金の面では、ユダヤ人と華僑、人生の面では北欧諸国の人々の考え方が好きです。

ユダヤ人と華僑の考え方は、安定できない世界、差別を受ける社会で暮らす知恵が詰まっています。

この本は、主に華僑の投資についての考え方が書かれています。今回参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・華僑が懸命になってお金を増やし守るのは、それ自体が目的ではない。人生を楽しみ、安定した生活を送り、豊かなときを過ごすため。そのために、世界中で投資を行い、節税を考え、人の輪を広げている

・華僑の社会では、一流企業で出世したり、大きな仕事をしている人よりも、小さくても一国一城の主(中国語で「老板」ラオパン)でバリバリ稼いでいる人のほうが、社会的にも高く評価される

・華僑の多くの人たちは、会社勤めのサラリーマンをしていても、チャンスがあれば独立して会社を興して社長になりたいという夢を持って仕事をしている

・日本の会社で重要な地位に就いていると自慢しても、「しょせん雇われ人で、大きな仕事をしていても、本人の実入りにならないのでは、全く意味がない」と評価してもらえない

・華僑の世界では、「アーリー・リタイア」して、自分の好きな時間に、好きなことを、好きな場所で、家族や友人たちと、どれだけ過ごせるかが、人生での成功をはかるバロメーターとなっている

・「自由気ままに生活する人生」と「歳をとっても時間に束縛された生活」。後者をよしとする人には、華僑の投資哲学を学ぶ意味も資格もない

・日本人は「人を最初から疑ってかかってはいけない」と教え育てられるが、華僑は「家族以外は絶対に信用してはいけない」「どんなことがあっても、人に金を貸してはいけない」だけは守るようにと教えられる

能力よりも信用を重視すること。華僑のビジネスは、血縁や友人の信用とつながりで成り立っている。それが、華僑が富を築き、増やし、それを守っていくための基盤になっている

・華僑は財産と同時に投資の哲学も継承し、投資を最初に学ばせる

・「大量の日本人が買いに入ったら売る。相場が暴落したら、日本人の損切り物件を拾う」というのが本当に鉄則になっている

・もっとも大きなリスクは国や政府。つまりカントリーリスク。政策次第で全財産を失う

・華僑の富裕層は、隠したい資金がある場合、現在居住している国に支店や事務所がある銀行に預金しない。金融当局、税務当局は、国内にある外国銀行の支店や事務所に対して捜査権を持っている。情報が当局に漏洩するリスクがある

・華僑は投資を薦めてくる者に投資を薦める。少額の投資でも、一緒に投資すればパートナー。同じ船に乗るわけだから真剣になる。売るときは、高く売ろうと必死になる

・一番難しいのは、売る勇気を持つこと。売らなければ利益は出ない



この本の中で、華僑は「投資を学んでから本業に就く」という目からウロコの箇所がありました。日本人からすれば、「本業で儲けてから投資を考える」というのが順序です。

日本人は、投資で儲けた人を軽蔑しますが、実際には、投資で儲け続けるほうが、事業で儲け続けるよりも難しいと思います。

この難しい投資を若いころから学ぶ姿勢は、商売をする上で、大いに役立つものです。独立して、細々と事業を行っている自分に欠けていたのは、その部分であったと、今になって思う次第です。

後半の人生を豊かにするには、華僑のように、若いときに、謙虚に、そして貪欲に「お金」について学んでおくべきではないでしょうか。
[ 2011/03/01 07:49 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)