とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『「教える技術」の鍛え方-人も自分も成長できる』樋口裕一

「教える技術」の鍛え方―人も自分も成長できる「教える技術」の鍛え方―人も自分も成長できる
(2009/04)
樋口 裕一

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著者の本を紹介するのは、「バカを使いこなす聞き方話し方」に次いで2冊目です。

樋口裕一氏は大学教授で、人気ノンフィクション作家ですが、元は、予備校の人気講師だった経歴の持ち主です。

つまり、教える技術の最先端にいた方です。読みながら、何度もうなずきました。この本の中で参考になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・教えるからには、学ぶ側が、自分で考えることができるように強制しなければならない。その強制と自立との兼ね合いこそが、教えるテクニックのすべて

・教えるのに失敗する最大の理由は、生徒の能力を読み違えること

・相手が興味を覚え、身を乗り出して聞いてくれるような面白さが必要

・教える人間は、教える内容を盛りだくさんにするのではなく、できるだけ絞って繰り返し説明する方が、相手はしっかりと理解できる

・予備校で人気がある講師は、大事な点を押さえた上で、「ほかは捨てて、これだけを覚えればいい」と言い切る講師。そして、事実、このように教える講師の方が、間違いなく生徒の力を伸ばす

・授業内にできるだけ生徒に覚えさせ、予習も復習もしなくていいようにすること、授業内にこれまでの復習をさせるように仕向けることが大事

・最初に、段違いの力量があることを生徒に見せつけること。教える人間はなめられてはいけない

・懸命に工夫をして教えようとする人間に対しては、少々教え方が下手でも、生徒は付いてきてくれるもの

・間違った場合、素直に認めるのが原則。妙に強がって間違いを認めず、黙って隠したままにしていると、後々で困ったことになる。さっさと間違いを認めてしまうのが、最も害が少ない

質問に答えられない場合、「きちんと答えたいので、家で調べてくる」と言って、できるだけ誠意を尽くす。そうすると、相手はなめなくなる

・教える人間にとって、自慢するのは、教える内容に信頼を持たせるための大事な要素である

・モチベーションを高めるには、伸びを実感させることが最大のポイント

・ほめる時には、漠然と「よくできました」と言うのではなく、この部分のこの点が優れていると、はっきりと具体的に、そして、本音の言葉としてほめるのが原則

・理屈人間と実践人間、まず自分自身がどちらに当てはまるか自覚する。その上で、生徒がどちらかを見極めて教える。理屈人間は「なぜ、そうなるのか」「どんな意味があるのか」といった質問をする。実践人間は「どうすれば、うまくできるのか」と質問する

・理屈人間には「これ以上理屈を考えても難しいので、とりあえずやってみよう。そのうちわかってくるかもしれないよ」と実践を呼びかける。理屈人間は、実践に移るほうが理にかなっていることを説明されてこそ、納得できる

・「」を強調すること、「危機感」を強めること(学んでおかないと大変なことになる)、「裏技」であるかのように語ること、「目からうろこ」を体験させること、「大袈裟な予告」をすることは、教えるテクニックとして効果的

・最も悪い教え方は、知っていることをすべて教えようとすること

・物事を教える時、大事になるのは教える順序。「単純なものから複雑なものへ」「大事な順」「場面順」

・学ぶ側にも参加させるために質問を交える。先生のほうから「なぜ、そうなると思う?」「こうなると、どうなるだろうか?」「次にどんなことが起こるでしょう」などと尋ねる

・相手の学ぶ気持ちを高めるには、「自分で発見するように導く」「実践させながらわからせる」「手本を見せる」「短期的目標を与える」「ゲーム感覚で反復練習をさせる」「その場で暗記させる」「小テストをする」「うまく宿題を出す」こと

・最初に教える時に、「私語は許さない。私語をする人は出ていってもらう」と宣言すること。私語が完全にやむまで、口を開かないこと

・クラスの交流を盛んにし、お互いに友達関係になるように促すと、教えやすくなり、教育効果が上がる

・生徒のレベルを知るためには、最初に能力判定試験をしてみること

・ぎくしゃくしているクラスを和ませるには、後ろにいる生徒に話しかけるのが有効

・雑談の理想は、生徒の全員が笑うこと。10分に1回の笑いがほしい。授業プランを作ったら、その際、どこで何を話して笑わせるかも考える

・全員相手の授業が終わったら、必ず質問タイムを設ける必要がある。そこでこそ、先生としての信頼を得ることができる



一対多のコミュニケーションは、一対一のコミュニケーションより、テクニックが相当必要です。

多くの人に伝える「技」を学んで、その「裏技」も活用すると、今後の人生、必ず「得」になります。逆に考えたら、学んでおかないと「損」することになります。

大勢の人数を率いる方にとっては、「目からうろこ」の教えるテクニックは必要不可欠です。この本は、そういう意味でものすごく参考になると思います。
[ 2011/02/28 09:03 ] 樋口裕一・本 | TB(0) | CM(0)

『生きろ・地獄からはい上がるための教科書』玄秀盛

生きろ 地獄からはい上がるための教科書生きろ 地獄からはい上がるための教科書
(2009/09/16)
玄秀盛

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玄秀盛氏は、新宿救護センターの所長をされています。いつかテレビで、関西弁丸出しで、相談に当たっている姿を見たことがあります。

相談といっても、生易しい相談ではなく、本当に、生と死のギリギリのところを生きている人たちの相談ですから、真剣勝負です。

人生の修羅場をくぐった人でないと言えない言葉が数多く出てきます。体験に基づいた言葉の数々は、お金と人生の勉強になります。ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「人生は取り戻せる」という人がいるが、そんなもの取り戻さなくていい。経験は上積みしていけばいい。「取り戻そう、取り戻そう」と思うから、無理な話になってしまう

・私の目の前にいる、このただひとりの人を救いたいという気持ちで話を聞く。「何かに傷ついた体験」が一つあって、傷つく痛みを知っていれば、人の話は聞けるもの

・「死ぬな、死ぬな」と言ったら、よけいにモチベーションが落ちていく。逆に「おう、死ね、死ね。死に方を教えてやる」と言うと、腹が立ってきて、私への怒りや憤りが、エネルギーの点火剤になる

・社会で活躍している女性でも、自分にどこか自信がなくて、ご主人様を求めてしまうタイプがいる

・「いつの日か、暴力がなくなって、優しい夫になるかも」などと期待せず、「暴力をふるう人間は、暴力をやめることはない」と見切って逃げること。「すまなかった。暴力をふるわないと約束するからもう一度やり直したい」と言うのは、DV男性の常套句

・一回でも、自分の人権を侵害したり、高圧的な態度に出てきたときは対等にけんかしたほうがいい。そうすれば、男のほうが繊細で怖がりだから、コロッと態度が変わる

・子供が「強い態度に出たり、暴言を吐けば、親は言いなりになる」ことを覚えたら、今度は暴力で支配しようとする。「こんなことが世間にばれたら恥ずかしい」と思う気持ちが、DVを助長する


・人助けはやり過ぎたらいけない。「小さな親切、大きなおせっかい」。これは人助けの基本

・契約書があれば、警察も対応が違ってくる。証明があれば反論もできる。たった一枚の紙切れが人を助ける。最後に紙は人を救う

・金に関係のないように見えるDVや家庭内暴力も、結局は金につながっている。金があれば、DVから逃げ切れる。金がないからイライラして子供を虐待する。金がないばかりに、認知症の親を自宅介護して、夫婦仲がぎくしゃくする

多重債務者の大半は、金の奴隷になって、金の呪縛から抜けきれない。金しか見ていないから、みんなささくれ立っている

・金で死ぬのも、金本位でしか物事を考えられないのも人間だけ。だから、借金による苦しみさえ取り除ければ楽になる

・7年経てば、自己破産の経歴は消える。再出発するために、7年に1回使える法律が自己破産

・自己破産すると、家は管財人に処分しなくてはならないが、住み慣れた家を手放すのはつらい。家を任意売却する場合、その価値は市価の3分の1、競売では4分の1から5分の1。家を合法的に残すには、知人に買ってもらうのがいい方法

・毎月の返済額は銀行など、相手側が決めると思っている人が多いが、そうではない。こちらで決めるもの

・親兄弟でも、絶対に連帯保証人にならないこと。親兄弟へ金を貸す場合でも、借用書を取ること

自己破産すると官報に住所と名前が載る。しかし、官報なんて誰も見ない。裁判所から会社に通知がいくことはないし、もし会社に知れても、自己破産は解雇する理由にならない


結局は、お金絡みというのが世の中の現実なのかもしれません。この本の相談内容のほとんどがお金で解決できることが多いことに驚かされました。

逆に考えれば、悩みの相談を受ける人は、お金で苦労した人でないと務まらないということなのかもしれません。
[ 2011/02/25 07:04 ] 玄秀盛・本 | TB(0) | CM(0)

『スター・ワーズ』星新一、星マリナ

スター・ワーズスター・ワーズ
(2010/10/13)
星 新一 / 星 マリナ

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中学生の時、星新一のショートショートをよく読みました。周りの友人たちもよく読んでいました。エスプリがきいていて、都会的センスがあり、読後のさらっとした爽快感は、他の作家の類に見ないものでした。

星新一の世界は、その時代の流行であったと考えていたのですが、少し前に、NHKでショートショートがテレビ放映されていました。

我が家の息子たちも録画して、熱心に見ていました。これは、時代を超えた何かが、星新一のショートショートにあるのだと思います。

その何かを探るために、この本を読みました。星新一が何を考えていたのかがよくわかりました。時代を超えて、共感できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・個性のある人と話すのは楽しい。しかし、それには、こちらも一つの個性を持たなければ、会話が成立しない。人生を豊かにするためには、そういった努力がいる

・できるだけ多くのものを内に秘め、一方、口数は少なく、軽々しい判断はしない。その修行が気品というものを作り上げる

・学問のもとは、好奇心。好奇心を育てるようにしておけば、優れた人物も、自然に育ってくる

・人が夢の世界を持っていなかったら、現実に対して、何の批判もしなくなり、ただただ現実に押し流され、ずるずるとだめになっていく。現実の世界は、それぞれの人の夢の世界で支えられている

・わが国の世の中のごたごたの多くは、ノー・サンキュー精神の欠如が原因かもしれない。この種のごたごたこそ、われわれ社会の特色であり、人生というものを構成している要素かもしれない

・アメリカ社会の特長は、人々が独立心を持つばかりでなく、他人の独立心を尊重し、それに手を貸そうとする点にある

・想像は楽しい。しかし、事実の発見はそれより一層大きな喜びである

・普通ならざることへの直観能力が笑いである。論理の飛躍になるが、笑いは、普通とは何かを知る経路でもある

・みんなが偉大なことを完成するとは限らない。完成ができたほうがいいに決まっているが、できない人だっている。完成を心に描きながらずっと楽しく生きていくのもいい

・人間の成長とは、絶対という緊張感と顔なじみになっていくこと

・忙しく動き回りながら、深く考えることは、人間にはできない

・ニュートンは「どうやって法則の発見を」と聞かれ、「考え続けて」と答えた。執念、ここが大事なのだろう

・まず、ものにこだわること。異質なものを見つける。これを結びつけるために、ものをそれぞれ要素分解していく。すると、全然違うものなのに、似た部分や関連したつなぎが見えてくるようになる

・とにかく、あの人と会話をすれば、何か楽しい時を過ごせる。利口になった気分になれる。そう思ってもらいたい。つまり、それは小説を書く心構えでもある

・われわれが過去から受け継ぐものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア



星新一という人は、イマジネーションと英知という両立し難い能力が、両方強くあったのではないでしょうか。

この両立こそが、センスであり、気品であり、爽やかな印象を感じさせたのかもしれません。

また、深いものを浅く、難しいことをやさしく、暗いものを明るく、読むものを飽きさせない表現になったように思いました。
[ 2011/02/23 07:56 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『「諜報的生活」の技術・野蛮人のテーブルマナー』佐藤優

「諜報的生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー「諜報的生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー
(2009/01/23)
佐藤 優

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著者の本を紹介するのは、これで4冊目です。佐藤優氏は、外務省国際情報局で情報活動に従事し、その後、背任容疑で逮捕されましたが、あり余る才能で、数多くのノンフィクションを執筆されています。

特異な経験と文筆才能を併せもつ人は稀有です。今回もお国の裏事情及び国際人としての考え方や技能など、さまざまなことを学ばせていただきました。

勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間の理性を信頼し、合理的な計画で理想的社会を構築できると信じる者が左翼・市民主義陣営をつくる。これに対し、人間の理性や知恵は限界あるものとして、合理的な計画でつくる社会を諦め、伝統や文化、神仏を尊重するのが、右翼・保守陣営である

・一旦、自らの命を何らかの理念のために捨てる覚悟ができた人間は、他者の命を奪うことを躊躇しなくなる。大量殺戮は常に自らの命を差し出す覚悟ができた人々によって行われる。だから思想の危険性を認識しなくてはならない

・「余人をもって代えがたい」人をつくると、「ガン細胞」になり、システムが内部から崩れる危険性がある。資本主義は、均質な人々からでないと社会が回っていかない構造にある

・軍事情報以外に関しては、インテリジェンス機関が必要とする情報の95~98%を公開情報で入手することができる

・新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、公刊印刷物などに注意していて、目的に関係あるものを片っ端から切り抜いたり、書きとめておいて、これを継続的に整理し、総合判断すると、その国の考えなど意外によくわかる

・「事前にあなたの了承を得ておきたい」と一言声をかけるだけで、中長期的にあなたは「信義則を守る人だ」という高い評価を得ることになる

・カネがあるところに権力の実体があるということは、普遍的真理である

・一緒に食事をしながら話をすることはとても重要。外交交渉は、敵の中に友人をつくること。そして、敵と取引しなくてはならない

・動物は、敵の前では排泄しない。案外気づかないことだが、実はトイレでの交渉で、難しい問題が解決することが結構ある。ヨルダンとの平和条約も、最後はフセイン国王と二人でトイレの中で決めた

・偽装して近寄ってくる者は、背後に組織があり、何らかの魂胆を持っている。したがって、相手が嘘をついていることを理解した上で、相手の目的をつかみ、偽情報を与え、相手を攪乱することも情報戦ではよく使われる

・女遊びをするときに一番大切な技法は、女の子が向こうから逃げていくような嫌われる技法を身につけること。そうすれば、トラブルに巻き込まれることはない

・上手にカネを渡すには、相手が運んでくる情報とカネに直接の因果関係をつけないこと。よい情報をもらっても「ありがとう」だけで済ませ、息子が学校に入学するとき、50万円をお祝いで渡す。情報対価ではなく、「友情の印」としてカネを渡すこと

・情報屋と接触して、相手がカネを渡してきたら、そいつはあなたを「モノ」として考えている。要注意のスイッチを入れること。絶対にカネを受け取ってはならない

・実は、何かを始めるとき、まず「終わり」について、決めておくことはとても重要

・一旦できあがった組織は、必ず組織自体が生き残ろうとする本能を持つ。解散について決めておかないと、組織の生き残り本能に翻弄されて、本来の目的以外のところで大きなエネルギーを消費することになる



本当に価値のある情報は、このような諜報的活動によって得られるのだと思います。

こういう人間臭く、労多いやり方が苦手な人は、著者がすすめるように、公開情報をしつこく、コツコツ集めるしかないのかもしれません。

とにかく、その道の情報通になることが、出世や成功に大きな影響を与えることだけは確かではないでしょうか。
[ 2011/02/22 07:16 ] 佐藤優・本 | TB(0) | CM(0)

『一瞬で相手の心をツカむ!笑いのスキルで仕事は必ずうまくい『』殿村政明

一瞬で相手の心をツカむ!笑いのスキルで仕事は必ずうまくいく一瞬で相手の心をツカむ!笑いのスキルで仕事は必ずうまくいく
(2010/05/11)
殿村 政明

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著者は、吉本総合芸能学院(NSC)を卒業後、漫才コンビを組み、心斎橋筋2丁目劇場で5週勝ち抜き、レギュラーを獲得し、テレビ出演も決めた経歴の持ち主です。

その後、相方とのコンビを解消し、営業マンとなって、笑いのセンスで営業成績を上げ、独立開業を果たされました。

初対面の相手の心をつかむのに、笑いが大きな武器になることを、自らの体験で証明されています。その数々を披露されているので、面白く読めました。参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・初めて来店してくれた客が、自分のファンになってくれるために必要なのは「質問力」。おすすめは、二拓質問。「お客さん、どちらかと言うと、○○派と△△派、どっちですか?」ときくと、客は答えやすい

・ツカミの切り札として、笑いがとれる名刺や名札を作ることは大事。自分を印象づけるためには、相手がツッコミたくなるボケを入れておく

・共感、イメージできる会話の的をつかんだ上で、「○○といったら、△△でしょう」などと、「あえて大きくはずす」ことが大事。計算して笑いをとれる賢いアホになること

キャラづくりのポイントは、「誰にも嫌われたくない」という考えを捨てること。みんなに受け入れられなくても、深く突き刺さる数名がいるほうがいい。キャラづくりが成功すれば、自分のファンが増える

・ボケ、ツッコミなどのトークが苦手なら、リアクションで勝負。大袈裟にリアクションするだけでも人は笑う

・お笑い芸人も、舞台裏では「表情」と「言い方」を必死で練習している。大袈裟にしなければ、相手に伝わらないことを認識している。「ありがとう」は大袈裟なくらいでちょうどいい

・思いついた擬音はバンバン口に出して言ってみることが一番。「トゥルントゥルン」「フリンフリン」「スランスラン」、うける擬音が見つかったら、仕事でも使ってみる

・表情やジェスチャーを大袈裟にすると、臨場感が出て、相手にリアルに伝わる

・話し始めるときの「あの~」「え~っとですね・・・」といった間があることで、過去の記憶を思い出している感じが聞き手に伝わり、話にリアリティーが増す

・「口が大きい人」だったら、「ペリカンみたいな口をしている人」。「元気な女子高生」だったら「満開の桜みたいな子」と言ったほうがイメージが広がる。たとえ話がうまい人の話は次が聞きたくなる

・面白いネタを持っていれば、雑談モードになったときに、客を笑わし、リラックスさせることができる。ネタ探しは「異変に気付く」こと。小さな異変は、日常にあふれている

・「面白い!」と思ったことは、その場ですぐにメモするくせをつける。トップ営業マンは、大抵、ネタ帳を持っている

・子供のころの失敗は、大人になるとネタになる。アルバムは過去ネタの宝庫

・元ネタに別の小ネタを付け足したり、数値をオーバーに言ったり、相手を笑わせたいなら、脚色してもいい

・テーマをより明確にしてもらうため、プレゼン前にポイントシートを配る。ムダなことをゴチャゴチャ言わない

プレゼンのポイントは、「私が一番伝えたいのは○○○○です」を意識し、「喩え」+「描写」+「大げさ」=「面白くてイメージしやすい」ようにすること



素人でもできる笑いのテクニックは非常に参考になります。日常で駆使すれば、仕事だけでなく、人気者になれると思います。

口下手であっても、笑いはとれます。笑いがとれる型をつくりあげれば、仕事で成功する確率がかなり高まるのではないでしょうか。
[ 2011/02/21 07:39 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『人間風眼帖-昭和21年-昭和49年』山田風太郎

人間風眼帖―昭和21年‐昭和49年人間風眼帖―昭和21年‐昭和49年
(2010/07)
山田 風太郎

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山田風太郎氏の著書を紹介するのは、「人間魔界図巻」に次ぎ、2冊目です。

山田風太郎氏は、独特の人生観、死生観、戦争観を持っています。摩訶不思議な山田風太郎ワールドに魅力を感じます。

この本は、著者の日記から抜粋されたものです。戦後から高度成長期までの日本人の本質を実によく見ています。

これらの箴言で、共感できた箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本人は、強いときはいたずらに高姿勢になり、弱っているときはシュンとしている。この点でも日本人は幼児的である

・日本が「外交下手」という言葉の裏には、「宣伝下手」の意が、むしろ得意げに含まれている

・日本人は紋切り型民族である。パターンから外れると手も足も出ない。その習癖は戦争時だけでなく、平和時になっても全然変わらない

・死は死ぬ本人よりも、残された人々に不幸なものである

人に支配されるべき人間が、人を支配するのは悲劇である。人を支配すべき人間が、人に支配されるのはさらに悲劇である

・有名人には多少なりともハッタリ根性山師的なところがある。作家を見る判断の一つにその題名がある。作家のつけた題名を点検すると、その作家のハッタリの程度と種類がわかる

・すべての望みを子供の成長にかけることは尊いことである。しかし、自分たちの愉しみがほとんどないのは哀しいことである。その子供が大きくなって、また同じことを繰り返すとしたら、繁殖には差し支えないが、生は無意味である

・老年に従って成長することはない。ただ変化するだけである

・意地悪だから人に嫌われるのではない。人に嫌われたいから(孤独になりたいから)意地悪になるのである

・人間は、幸福な生活に必要な人々(農夫、労働者、芸術家、売春婦)を虐待し、人間が善良ならば不必要な職業(官吏、政治家、裁判官、軍人)を優遇する

・洋の東西は問わず、地獄極楽は、死んだ人間の報告ではなく、現世の人間が考え出したこと。現世に、悪いことはしないのに不幸のままで死ぬ、悪いことばかりしているのに幸福な大往生をとげるという事実がいやになるほどあることからの着想である

・外国人には、聖者と悪人、それぞれ極端な人間がいる。しかし、国家としては中庸がとれて社会が安定している。日本人は、個人的にケタはずれの人間はいない。しかし、国家としては、極端に走りやすい。「個」がなく「雷同性」のみがあるからである

・幸福は求めて得られるものではない。しかし、快楽は求めて得られる。偶然性の多い幸福を求めるよりは、この短い一生に快楽を貪った方が賢明と言える。酒、美食、女色、趣味道楽然り

・「うぬぼれ」はないと言う。「自尊心」はあると言う。「自信」はあるかないかわからないと言う。日本語とは妙なもの

・体力も衰え、頭脳も明敏さを失っている年長者が、なぜ若い者を制圧しているか。地位や金ではない。それは、年長者が、若者が自信のないことを承知しているからである。ときには、自信を持っている若者もいるが、たいていバカのことが多い

・必要悪の最大なものは人間の長生き。必要なのは当人だけで、他人にはマイナスの影響ばかりである

・身分不相応な結婚式をあげ、流行りのものをやり、人気のものに行列を作り、中年になれば仲人をやり、葬式にはマメに出かけ、葬式が終われば帰りに一杯飲んで、死んだ人のことなど念頭にない。これが普通人の人生である

・人間が孤独になるのは、自我が強くて、しかもそれに比して、その自我の発言力が弱いときである

・五十代以降の人間は、あらゆる夢は消えている。自分の力量の限界も分かっている。前途に待っているのは自分の消滅だけだ。にもかかわらず彼らは生きている。それは子供のためだ。そのために彼らは苦闘している。子供に餌を運ぶ鳥みたいな気がする

・金持ちの子に親不孝が多いのは、親の自我が強く(強いがゆえに富む)、子に対しても、おのれを主張するために、子はそれに反発するからである

・選挙のとき、当選第一報を受けた候補者の感激ぶりは、投票者に命を捧げたいほどの表情だが、それが数時間後、当選者座談会では別人のように、そっくり返っている

お金が嫌いという人間にお目にかかったことがない。あまり好かぬような顔をしてみせる人も、それは見栄か、痩せ我慢か、可愛さ余って憎さ百倍という現象に過ぎない。お金だけは万人好きだから可笑しい

・ケチンボだから人間嫌いになるのではなく、人間嫌いだからケチンボになるのである

・人が孤独を口にするときは、たいてい甘えがある。要するに、人が自分を理解してくれないということである。それでは、自分が人を理解しているかというと、全然していないのである

・日本人は判官びいきだという。しかし判官は死んだから贔屓されたのである。日本人は、判官びいきどころか、勝てば官軍である

・流行作家になる要件は、どこかに読者に媚びるところがなくてはならない。この媚びの一種に自分を道化にするという手がある。しかし、この道化を悪口すべきではない。それは芸の一種である。ひょっとしたら、あらゆる芸や芸術の本質はそこにあるかもしれない



人間の愚かさ、厚かましさをえぐり出す著者の眼力は流石です。著者の力量を知らなければ、嫌なことをズバッと言う意地悪な爺さんのように思うかもしれません。

しかし、山田風太郎氏は、人間の愚かさ、厚かましさを許容しながら、みんなが肩ひじ張らずに自然に生活することを望んでいただけのように思います。

意地悪なことを言う人ほど、根は優しいのではないでしょうか。
[ 2011/02/18 07:44 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『英国ワーキングクラス直伝「逆成功」のルール』石原由美子

英国ワーキングクラス直伝「逆成功」のルール英国ワーキングクラス直伝「逆成功」のルール
(2004/12)
石原 由美子

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この本のサブタイトルは、「英国ワーキングクラス直伝」というものです。イギリスは古くからの階級社会です。

この階級社会の中で、イギリス人は、どのように幸せを見つけてきたか、成功をどう感じてきたかが記載されています。

逆成功という表現になっていますが、逆成功も成功であるということが、この本のテーマです。参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・形だけの成功を追いかけないこと。金銭的な利益や、エリートの肩書を追うよりも、人生の充実を優先させる

・逆成功の人は、気楽に生きている。無駄な競争はしない。無理にがんばらない。失敗しても気にしない。仕事ばかりやらない

・「騙すよりは騙されたほうがマシ」という「いい人」は、真っ先にカモになる。善良ぶって、騙されてもいいと考える人は、ただのマヌケ。決して「いい人」なんかではない

・家族や守るべき大切なものがある人は、自分を守ることによって周りの者も守れる。身内だから我慢してもらおう、周りにも一緒になって犠牲になってもらおうという考え方は間違い

・正直者がバカを見る社会で、伸びていく人間、生き残る人は「ストリート・ワイズ」。つまり、街(実際の社会)で生きる賢さを身につけた人間のこと

・何かひとつのことでいい。それが職業でなくていい。専門分野を見つけ、誰にも負けない知識や腕を持つことが、人脈の輪の中で認められる第一歩。そうした人間は居場所を確保できるし、皆から重宝がられる

・人間なんて似たり寄ったり。自分はエクスペンダブル(消耗部品)であることを肝に銘じたほうがいい。自分の代わりがいる人間が、仕事に生きがいを求めても失望する

・一部の人々は、徹底的に、本業と趣味の両方に同等の力を注いでいる。プロの建築士と音楽家、プロの不動産屋と庭師といった具合に、ダブルプロフェッショナル状態を涼しい顔でやりこなしている。これも典型的な逆成功のパターン

・何しろ食っていかなくてはいけない。生きがいだの、やりがいだのときれい事を言い、理屈ばかりこねて、一銭も稼げない奴は最低

・ディズニーランドに、楽しそうだからと想像してアルバイトに来る人間に限って、短期間で辞めていく。楽しいのは客だけ。スタッフは笑顔を見せていても楽しんでいるわけではない。それに気づかない人が半分以上いる

・仕事には妥協がつきもの。金銭面での妥協、組織内でのあつれきによる妥協。やればやるほどストレスがたまる。それが好きなことを仕事にする現実

・結局、仕事に選ぶのは、「まあまあ得意で好きなこと」というのが現実的な落とし所になる。年寄りならまだしも、人生半分も行かないうちから、好きなことを決めてしまって、人生の幅を狭くするのはもったいない

・新しい世界に挑戦すること、飛び込んでいくことは勇気の証明。住み慣れた環境から決して動こうとしない人間は、「レイジー(怠け者)」「チキン(臆病者)」「ルーザー(負け犬)」と言われるのがオチ

・言い訳が上手な人は、明るく賢い奴。陽気さで上手にはぐらかしてしまうのは男性が多いが、彼らは事実だけが正義だとストレートに結びつけていない。本当のことでなくても、相手も自分も双方ハッピーであることのほうを優先する

・人間は社会に関わりながら生きている。相手を不愉快にさせず、気持ちよく納得させる言い訳なら、どんどんすべき。それっぽい言い訳が上手にできてこそ、一人前の大人

・人間は勝負好き。やる以上は勝ちたい。それを熟知している支配階級の人間たちは、「社会は競争によって発展する」という大義名分のもとに、皆を競わせる

・お金があれば何でもできて、自由になれると思っている人たちが、実のところ、そのお金のために、最も不自由な身分である。「不自由なエリート」である

・カネがあり余って、働く必要がなく、誰からも必要とされず、さしあたって義務もなく、ついに消費しかやることのなくなった人間は、ある意味、もっとも不幸

・豊かさとは、選択肢が多いこと。自分らしくなどとは間違っても言えず、言ったらそれで退場、二度と試合に臨むチャンスがないのは豊かではない

ラッキーとハッピーを混同してはいけない。仕事を通じて、幸せを感じるのは、報酬を受け取ったときではなく、依頼主がものすごく喜んでくれたとき



著者は、幸福も考え方次第だが、成功も考え方次第であると言いたかったように思います。

成功の概念を自分でつくれば、誰でも豊かになれるということかもしれません。

この本を読めば、ちっぽけな仕事だけに人生を賭けるのは、バカバカしいことのように思えてきます。
[ 2011/02/16 08:23 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(3)

『ユダヤ人金儲けの知恵-ユダヤ人のように考えろ!』烏賀陽正弘

ユダヤ人金儲けの知恵―ユダヤ人のように考えろ!ユダヤ人金儲けの知恵―ユダヤ人のように考えろ!
(2004/04)
烏賀陽 正弘

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この本には、ユダヤ人の交渉術が数多く掲載されています。ユダヤ人と直接交渉をしている著者ならではの記述です。

ユダヤ人が、実際にどのようなビジネス方法を駆使してきて、財産を形成してきたかがよくわかります。

今回、この本を読んで勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・教育や経験で得た知識や知恵で武装することは、民族として生き延びる大きな力になったばかりではなく、ユダヤ人の強い自信を支える根拠になった

・自信や自尊心のない人は、粘りや執拗さがなく、えてして交渉の過程で気力を喪失し、途中で投げ出してしまいがち

・タルムードの中で「学問は、集団を通じてのみ達成できる」とした。つまり、グループを作り、タルムードを中心として熱心で活発な議論や討論を重ねながら、お互いに切磋琢磨して、論理的な思考を養い、分析力も身につけた

・ユダヤ人は、何事に対しても疑問を抱かせる考え方を深く植え付けた。疑問形(WHY?)で尋ねられて、また疑問形(WHY NOT?)で聞き返すことには、さまざまな効用がある

・お金では確かに幸福は買えないが、それでも人を幸福にさせる大きな手助けとなる。お金が人生のすべてでないと言う連中に限って、いつまでたってもお金が貯まらない

・日本人は、そんな安い給料で、どうしてそこまで身を粉にして働くのか?地位や名誉は、お金にならないじゃないかとユダヤ人に言われる

・「ファインダーズ・フィー」は「見つけた人への謝礼」。ユダヤ人や欧米人と取引をする上で、極めて重要な意味合いを持っている。このファインダーとは、新規の顧客または商品を紹介、あるいは仲介した個人、企業のことを指す

・初めに大きな数量で相手を釣っておいて、値引きさせる。ところが、商談の最終段階で、一転して買い付け量を大幅に減らし、その一方で当初の安い割引価格を頑として要求する。これがユダヤ人の駆け引きの常套手段

・ユダヤ人は、自分たちを皮肉ったり、あざけったりする自虐的なユーモアを好む。自分のことを、どんなにからかわれても、怒らずに笑えるのが真のユーモア精神

・どんな相手でも頭から信用せずに、初めから疑ってかかれば、人から裏切られ、だまされる可能性が低くなる。ユダヤ人は、騙した方が悪いのではなく、騙された自分が悪いと考える

・アメリカでは、ユダヤ人の5割以上が自営業に従事している。自営の比率が、平均で1割。宗派別で多いプロテスタントでも約2割といった数字から見ても、いかに彼らに独立志向が強いかよくわかる

・ユダヤ人は、交渉相手に質問をすすんでする。彼らは「聞くのはタダ」とよく言う。質問すれば、必ず何らかの答えが返ってくるもの

・ユダヤ人は、提示した値段に不満があれば、「これが、ベストなの?」という言葉をよく使ってくる。こちらの出した条件を頭から冷たく断らずに、その再考を促し、譲歩を求める、うまい手

・お互いに感情的になって、交渉が行き詰った場合、ひとまず交渉をお開きにすると効果的。「ウエイト・アンド・シー」の態度で静観すれば、冷静さが取り戻すことによって、情勢を改め、大局的に鳥瞰して分析し、次に取る交渉のステップを模索することができる

・ユダヤ人が「粘り強い」というのは、言い換えれば「しつこい」ということ。彼らは、時間をかけて、自分の要求を呑むまで執拗に駆け引きを行い、相手を説得する。しつこさが金儲けにつながることをよく知っている



日本人は、交渉や駆け引きは苦手です。しかし、部下のこと、家族のことを真剣に思えば、それを克服できます。

ユダヤ人が、交渉や駆け引きが上手なのは、厳しい環境に置かれてきて、民族のため、家族のために、真剣に生きてきたからではないでしょうか。

独立自営を目指す人にとっては、自営業比率5割のユダヤ人に学べば、参考になる点が多いと思います。
[ 2011/02/15 07:50 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『ヤフー・トピックスの作り方』奥村倫弘

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)
(2010/04/16)
奥村倫弘

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ヤフーのトップページをホームに据えて10年以上になりますが、一度も浮気をしていません。その理由は、ヤフー・トピックスによるところが大きいと感じています。

ヤフー・トピックスには人間臭さがあります。その謎を前から知りたかったので、この本を手に取りました。

非常に参考になる箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・2009年10月現在、ヤフー・ニュースは、閲覧数が月間45億ページ。訪問者数は6970万を数える規模

・ヤフー・ニュースには1日3500本以上のニュースが配信されてくる。その中からトピックス編集者が価値の高いと思われる記事を自分たちの目で選りすぐる。トピックスの数は1日およそ60本。配信記事全体の2%にもならない

・トピックスは「1.世の中の関心が高そうな記事を選ぶ」「2.そのニュースに関係するホームページを探してリンクする」「3.コンパクトな見出しをつけて、トップページに掲載する」という3つのプロセスから成り立っている

・見出しの長さはパソコン版が全角13文字相当(半角英数字は0.5文字、最大13.5文字)、携帯電話への見出しは11文字相当で付ける

・13文字見出しに「一目で分かる効果」がある。京大大学院の研究による「一度に知覚される範囲は9~13文字」という知見報告を知り、13文字の字数制限で編集を続けることに決める

・アクセス数には3つのピークがある。午前8時~同30分(世間一般の就業開始時間)、午後12時~同30分(昼休み)、午後5時~6時(退社時間)

・トピックス編集部には災害に備え、大阪にもオフィスがある。災害のない平時、大阪の編集部は、東京と同じ仕事をこなすが、トピックスに地方の視点を加えることが期待されている

・そもそも「クリックさせる」というのは、情報を提供している側の論理。言葉が躍るだけの見出しが空虚だということは、読者はよく知っている

・8本のトピックスの見出しは、上から順に、国内、地域、海外、経済、コンピュータ、サイエンス、スポーツ、エンターテインメントのジャンル順で、硬軟のバランスがとれるように並べていく

・09年11月のトピックスは1640本。スポーツ315本(19%)、国内308本(18%)、地域261本(15%)、エンタメ231本(14%)、経済209本(12%)、海外159本(9%)、サイエンス106本(6%)、コンピュータ51本(3%)

・閲覧数ページでは、エンタメ(25%)、スポーツ(24%)、国内(15%)、地域(15%)、経済(9%)、海外(5%)、サイエンス(3%)、コンピュータ(2%)。どの月を集計しても、上位3ジャンルで60%以上を占める

・リアルタイムのアクセス数監視ツールを「御神託」と呼んでいる。御神託のおかげで、トピックスの閲覧数は飛躍的に伸びた。しかし、この「外在的価値判断」だけでなく、編集者の何が面白いか、重要かの「内在的価値判断」も大事にして、編集物を提示している

・アメリカでは、人の書いた記事を適当に手直しし、元サイトにリンクもはらない「コンテンツ泥棒」が横行している。この手口だと「取材したもの負け」になる。「安かろう悪かろう」を極限まで推し進めるレースが始まっており、「こだわる者が敗者となる」

・ジャンクフード・コンテンツ(低品質なコンテンツ)の方が、伝統的なニュースより読まれる傾向にある。しかも、閲覧数で成立するビジネスとの相性がいい。このままだとニュースの社会的な責任や意義は二の次になり、「大切なことを伝える手段」ではなくなる

・人間の心の内にある価値観を人間が信じているうちは、価値を数値化し、価値基準を外に求めるロボットの編集部より、人間の編集部が優位を保っていられる

・記事をピックアップする対象やセンスは、それぞれ違う。自分の趣味に合ったニュースを効率よくまとめてくれるサイトがあれば、利用したいもの

・トピックス編集部が掲載したい企業情報は、読者が求める商品やサービスに加え、企業が得意とする分野に関する知識やノウハウ

・企業が発信している情報が、単なる金儲けの「売らんかな」の宣伝ではなく、「世の中をよくしたい、いい方向に変えていきたい」という情熱や信念に支えられている価値あるものであれば、報道機関の記者や編集部にも届く



ヤフー・トピックスのようなニュースは、年々、社会的地位が高くなってきているように思います。

どんな商売でも同じですが、知的所有権などの法整備がなされていない場合は、製品化した人より、商品化・販売した人の方が儲かるようになっています。

情報は、今まで、製品化していた人が儲けていましたが、ネット時代の今は、商品化・販売する人が儲かるように思います。

この本を読むと、情報の今後を知ることができるのではないでしょうか。
[ 2011/02/14 08:07 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『明日の水は大丈夫』橋本淳司

明日の水は大丈夫? ~バケツ1杯で考える「水」の授業 (ThinkMap)明日の水は大丈夫? ~バケツ1杯で考える「水」の授業 (ThinkMap)
(2009/10/17)
橋本 淳司

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電気代、ガス代、水道代、灯油代、ガソリン代だけで、相当な金額を支払っています。

これらを月1万円節約するだけでも、大きな家計の足しになります。しかもエコロジーです。

この本は、水道代を節約する心構えとして、非常に役に立ちます。役に立った箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「飲み水」2ℓ、「洗顔歯磨き」(1分12ℓ)、「トイレ」(1回10ℓ)、「シャワー」(1分8ℓ)、「風呂」200ℓ、「洗濯」(1回70ℓ)、「調理食器洗い」(1回60ℓ)。これに使った時間、回数をかければ1日の水使用量が出る。日本人の平均は1日250ℓ

・世界の半分以上の人たちは、水道を持っていない。水道もなく、安全な水も利用できない人は世界に11億人いる

・蛇口からポタン、ポタンと水が落ち続けると、1日に30ℓ。世界には、1人が1日に使える水の量が30ℓ以下の国が40カ国ある

・使用済天ぷら油を500ml流せば、魚がすむ水に戻す水量は、バケツ9900杯分(1杯10ℓ)必要。同様に、牛乳200mlでバケツ300杯分。米のとぎ汁2ℓでバケツ120杯分。ラーメンの残りつゆ200mlでバケツ99杯分。家庭の排水口は川の入口

・何かをつくるときに使われる水を「バーチャルウォーター」と言う。食パン1斤つくるのに、小麦粉300g必要。そのためには630ℓの水が必要。お茶碗1杯のご飯75gに使われている水は277ℓ。牛肉100gでは、2060ℓの水が必要

・鋼鉄1kgをつくるには、100ℓの水が必要。新聞紙1kgでは220ℓの水が必要

水道料金家事用20立方メートル(20t、バケツ2000杯分)で、最も安いのは山梨県の富士河口湖町で700円(バケツ1杯0.35円)。最も高いのは、北海道羅臼町で6300円(バケツ1杯3.18円)。全国平均は3056円(バケツ1杯1.53円)

・もし4人家族が毎日ボトル水2ℓを飲みで生活すると、18600円かかる。水道水の場合、37円しかかからない

・たくさんの水を使うホテルや病院などが、独自に井戸を掘って、地下水を利用し始めた。地下水を利用すると、2割のコストダウンになる。大口需要者が上水道離れを起こすことによって、自治体の水道事業収益が悪化し、水道料金の値上げにつながる

・水をスマートに使うためには、次の3つの考え方が必要。「節水」「再使用」「再生利用」

・雨水は「流せば洪水、ためれば資源」と言われる。雨水・再生水の利用量は、年間2億8000万トンだが、このうち雨水利用量は年間700万トン。タンカー70隻分しかない

下水処理後の水を膜技術と紫外線殺菌によって、飲料水レベルまで改善できるが、この技術には、1t当り3~5kwの電力が必要。相当のお金がかかる

深井戸は、よい水脈に当たれば、初期投資も維持費も少なく、管理が楽。初期投資は、スムーズに水脈に当たれば50万円程度で済む。維持費は、水を汲み上げるポンプの電気代程度



この本は、家族全員で読み、学びたい内容のものです。我が家でも、水使用量を月に何立方メートル減らすことができるか、目標を決めて、実行したいと考えています。

風呂の残り湯で洗濯、庭の水やりへの再利用。シャワー、食器洗いの短時間使用法などを心がけるだけで、大きな節約になります。

その節約のきっかけになる本ではないでしょうか。
[ 2011/02/12 12:36 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『天才の世界』湯川秀樹

天才の世界 (知恵の森文庫 t ゆ 1-1)天才の世界 (知恵の森文庫 t ゆ 1-1)
(2008/12/09)
湯川 秀樹

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この本をすすめてくれたのは、独立前に勤務していた会社の上司Fさんです。Fさん曰く、「天才に出会わないと、成長が止まる」。その通りです。

世の中を動かすのは、天才です。凡人は、天才が築いた軌道の上を走っているだけです。行き詰まったとき、天才に出会うと、その光を浴びて、復活することができるように思います。

天才は滅多にいませんが、時空を超えた書物の中には、いっぱいいます。その天才に触れることは大事なことです。

湯川秀樹はまさに天才です。湯川秀樹が天才たるゆえんは、本業の物理学だけにとどまらず、他の分野にも造詣が深いことです。

この本では、湯川秀樹が、「空海」「石川啄木」「ニュートン」といった天才たちについてどう考えていたかを知ることができます。

特に、空海に対する知識の深さには驚かされます。今回、この本を読んで、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・空海は芸術で自己表現する欲望が強い。これは悪くすれば自己顕示欲まる出しになるが、もう少しスケールが大きい。宇宙的生命を自分のところへ凝縮し、それをワッと表現するので、非常に大袈裟なものになる。それが、彼の思想であり、人生でもあった

・空海は、非常にイマジネーションが豊富で、それがどんどん湧き出してくる天才。「生れ生れ生れ生れて」と言わなければ、中から出るものが表現しきれない。同じ文字を単に並べているように見えるが、ある意味、現代詩のパターンを無意識のうちに発見している

・空海は、自分の興味を、宗教だけに制限しようと思ってもできない万能的な天才。密教だけにとどまらず、他のものも別のものと思わずに、ワッと取り入れ、自分の思想体系を構築した。その体系の中には、他の思想がみな入ってくる

・ゲーテの一番の特徴は、非常に豊富でいくらでも詩が湧き出てくること。無理やりにひねり出したものではなく、湧くように出てくる。80歳になって恋愛したのは、すべて生命力のあらわれ

・天才というのは、どうしても自分を決まった軌道に乗せられない。悪く言えば、自我が強すぎることになる

・空海は全部やった。あとの人が先へ進める余地がない。あとの発展では、鎌倉仏教の法然、親鸞、道元、日蓮が出た最澄の比叡山のほうが盛ん。空海は、東寺にせよ、高野山にしろ、先にがっちりした体系をこしらえてしまった

・ニュートンは自分の体系をこしらえる。古くは、アリストテレスもそう。アインシュタインだって、一般相対論というとんでもない立派なものをつくると、それで完成してしまい、手をつけられなくなる。すると、研究する人が少なくなる

・空海が日本に持ってきた曼荼羅は金剛界曼荼羅胎蔵界曼荼羅。この二つの曼荼羅は、金剛界が認識あるいは知恵、胎蔵界が実在。認識と存在が両方いっしょに並んでいるのは実に見事なシステム

・空海は非常にヴァイタリティを持っているから、欲望を昇華、向上させなければならない。宗教的修行、学問的活動、芸術的活動、土木技師的なことまでやる。それらのすべてを意欲的にやらずにはおられない

・朝廷としては、空海を国家的宗教の指導者として、もっと利用したい。しかし、空海の希望は京都の東寺にいるより、高野山へ行って、自分を慕う弟子だけ集めて、静かに修行したい。本来的に体制べったりになれない気持ちがあるので、俗物にならずにすんだ

・啄木が落ちぶれて帰るのは失意の美感。失意がかえって自己陶酔を強める。文学はかならず一種のペシミズムを持っている

・芸術家、学者など、矛盾が唯一の根源となり、その中から天才が生まれてくる

・啄木は歌にとりつかれた。一つの問題を徹底的に考えぬいていくと、取り憑かれた状態になっていく

・ニュートンは、神の志、意思、知恵、神の力を求め、再現しようとしている人であることは明らか

・ニュートンは、生きている間から崇拝者が出て、死んでも二百年間、物理の教祖の地位にあるが、直接の弟子はいなかった。彼は非常に孤独な人であった

・人から何かをやらされて、他律的に学ぶのではなく、若いうちに、自律的に、独学的にやる時期を通らなければいけない

・ニュートンは万能の人。天才の素質は本来もっているが、幼児期の悪い環境のために、なかなか発現できない。それが、自分のものを確保したい、のちになって、自分の業績というところへいく

・相当古い時代の西洋の学者には、ニュートンと同じように、独身という人は割合多い。なにか宗教者に近いところがあった

・ニュートンは理性ばかりの人のように言われてきたけれど、非常にエモーショナルな人。それが、怒りや恐れなど、いろんな形であらわれる

・天才は精神的ヴァイタリティが強い。ということは、それを自分でコントロールする力が必要になる。コントロールの側を意識的につかんでいたのがデカルト

・どこかいやらしいところがあるとか、人に迷惑をかけても平気であるということが天才に共通している

・天才は、自己顕示欲が非常に強い。ないように見えても、あるいは丸出しであっても、本質的に自己顕示性が強い



凡才が天才を評する本は数多くありますが、天才が天才を評する本は稀です。天才である湯川秀樹が天才をどう感じていたかがよくわかります。

この本を読めば、真の天才の姿に触れることができます。天才に触れると、自分の至らなさを知り、謙虚になれます。これこそが読書の醍醐味のように思います。

[ 2011/02/09 08:24 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『その恋の結末、90%予測できる-恋愛テストで今度こそ見つかる』

その恋の結末、90%予測できる―恋愛テストで今度こそ見つかる、あなたに最適な相手その恋の結末、90%予測できる―恋愛テストで今度こそ見つかる、あなたに最適な相手
(2006/07)
エイドリアン・バージェス

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著者のエイドリアン・バージェス氏は、イギリスとアメリカに拠点を置く、オーストラリア出身のジャーナリストです。

著者は、「幸せな関係を築いているカップルほど、何も頑張っていない」という事実を検証するために、この本を書きました。

幸せな関係を築くパートナー探しにおいて、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・恋人と長続きするかどうかは、その人といつ、どのような場面で出会ったかによって、ある程度予測可能。失恋直後に出会った相手とは、たいてい長続きしない

・物事が順調で、冷静に判断できる精神状態のとき、人は情熱的な恋をしない。不安や嫉妬、孤独、恐怖、悲しみ、羞恥心などの心の動きには、肉体を攪乱する作用がある。人は、ストレスにさらされているときに恋しやすい

・安定した結婚生活を送っているカップルは、結婚前に平均44カ月かけて交際していたのに対し、離婚に終わったカップルは平均29カ月と、相対的に交際期間が短い

・自分をつまらない人間だと思う人(つまり、自尊心のない人)は、つまらない相手を選ぶ傾向がある

・自信と独立心のある人には高いメイト・バリュー(連れ合いとしての価値)がある。また異性にモテる人もメイト・バリューが高い。女性は、男性が自分以外の女性に好かれているのを知ると、その男性とのデートに積極的になる

・家族や友人のツテによるパートナー探しは、安全性が高い。身近な人の紹介だと、極端な変わり者やひどい嘘つきは、ある程度避けられる

・愛が幸せに続くかどうかを見極める重要な要素は、共通の余暇の過ごし方にある。波長が合うカップルは、基本的な信念や価値観が一致している

・金銭問題に次いで、口論の原因の二番目は、整理整頓や衛生状態に関する個人的習慣

・家事労働と子供の世話に関する意見の不一致が、近年離婚率が急上昇した原因

・男性が定期的に家事をすることが、二人の関係が長続きするバロメーター。たとえ妻の収入が夫の2倍あっても、離婚率は上昇していない

・愛をつなぎとめるのにいちばん威力を発揮するのはお金。人は、住居や、株、貯金などを共有していれば、少しくらいのことで別れたりしない。カップルが財布をひとつにするという行為は、その恋愛に投資がなされていることを示す重要な指標

・浮気をするのは、二人の仲がよくないためと思われがちだが、不倫に走るのは、孤独を感じるから。二人の仲を壊す要素で、もっとも深刻なのが孤独感

・理想のパートナーにめぐりあえない人は、回避型であることが多い。心の奥底にある、いつか捨てられるのではないかという不安のせい

・カップル両方の合意で別れるケースは全体の15%にすぎない。これは、6組中5組のカップルが、片方が関係を継続させたいと考えているということ



生涯を共にできる良きパートナーを得ることができれば、人生の幸福は半分手に入れたのも同然です。

この幸福は、努力ではなく、賢明な判断によって手に入れることができるのかもしれません。ある意味、いちばん手に入れやすい幸福です。

この本を読めば、良きパートナー探しの道筋が見えてくるように思います。独身者には、大事な本ではないでしょうか。
[ 2011/02/08 07:53 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『草食系ビジネスマンのらめのストレスフリー仕事術』奥田弘美

草食系ビジネスマンのためのストレスフリー仕事術草食系ビジネスマンのためのストレスフリー仕事術
(2009/05/24)
奥田弘美

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タイトルに「草食系ビジネスマンのための」という言葉が強調されています。表紙には、弱々しい男性のイラストがあります。初めは、軽い本かなと思っていましたが、中身は精神科の先生が書いた真面目な内容のものです。

草食系と考えている人が、そこから抜け出すヒントが数多く記載されています。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人は自らの意思に沿って、心の声のままに生きているときに、一番「楽しさ」「幸せ」を感じるもの。心にエネルギーが入ってきて、「よし、また頑張ろう」と前向きになることができる。つまり「わがまま」は心の貴重なエネルギー源

・草食系ビジネスマンは、幼いころから親や先生などから「わがまま=悪いこと」という刷り込みをされていることが非常に多い

・「べき・ねば思考」が連続してしまうと、心のエネルギーがどんどん消費され、疲れる。疲れた心からは、やる気、アイデア、行動力、楽しさといったポジティブな感覚が生まれにくくなる

・その行動は、エネルギーを奪うのか?くれるのか?といった視点が必要。心のエネルギー収支をプラスにするためには、心からエネルギーを奪うことは、できるだけ引き受けないことがベスト

・「べき・ねば行動」の後は、「したい行動」をするというのをセットにして考える

・草食系ビジネスマンは、相手が何を望んでいるか、したがっているかを察知して、自らをそれに合わせるように行動する。「自分のしたいこと」と「他人のしたいこと」の区別が曖昧になると、楽しさ、嬉しさ、ワクワク感といったみずみずしい心の活力が失われる

・「自分ではなく、他者のため」という発想は、非常に宗教的で奉仕的で、尊敬される。他者メリットで行動する人は、「人格者、立派な人」と賛美される。しかし、他者メリットは、他者の反応がなければ感じることができない。そのエネルギーは非常に弱くて不安定

・人間は自分へのメリットがはっきりしていることに対しては、驚くぐらいの忍耐力や頑張りを出すことができる。「~させられた」を「~することを自分で選択した」に変えると、嫌悪感や抵抗感をグッと減らすことができる

・「会社では楽しくなくて当たり前」「仕事は面白くないのが普通」という期待値ゼロで、仕事に臨むように意識すると、意に反して、その職場が楽しければ、すごく幸せを感じる

・誰からも嫌われないように頑張りすぎると、自分が消耗する。幼いころから刷り込まれてきた「友だち100人できるかな」的呪縛から心を解放しないといけない

・仕事というのは、「お金を得る」という強い目的意識によって、苦しい部分や嫌な側面を乗り越えている部分が多い

・たいていの人は、相手が「ノー」だとわかると、「あ、そう。じゃあ仕方ないな」と要求を引っ込めてくる

・人生の成功者や幸せに生きている人たちは、一様に「自分の人生は、きっと良くなっていくはず」と無邪気に信じている

・女性は、普段から気が強くて自分の意見を主張する男性ではなく、ここぞというときに自分を助けてくれる「ここぞ力」を持つ「普段は優しい男性」に男らしさを感じる

・他者とのコミュニケーションは、心のエネルギーを消費するので、ひとりで過ごす時間が大切になる。草食系ビジネスマンの多くは、自分のために使える「ひとり時間」が不足している

・ひとり時間の一つは、「毎朝、ひとりミーティング時間」で、今日やろうと思うことを書き出し、実行の優先順位を考えること。もう一つは「夜の瞑想タイム」で、その日あったことを反芻し、心と対話し、頭の中で日記をつけることでいい



他者に合わせるのは、自分が生きていくための手段です。ところが、組織の中にいると、他者に合わせることが、どうしても目的になってしまいます。

そうならないよう、絶えず監視し続けるために、この本は役に立ちます。自分を再確認する手段として最適だと思います。
[ 2011/02/07 07:07 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『サツマイモと日本人』伊藤章治

サツマイモと日本人 (PHP新書)サツマイモと日本人 (PHP新書)
(2010/10/16)
伊藤 章治

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庭に、畳3枚分くらいの畑があります。15年ほど前は、いちご、ミニトマト、ズッキーニ、ハーブなど夢ある野菜を植えていました。

その他にも、いろいろな野菜に挑戦しましたが、ここ5年ほどは、「おいしさ」「育てやすさ」「実用性」の3拍子揃った「サツマイモ」と「ジャガイモ」に落ち着いています。

これらは、夢ある野菜ではありませんが、痩せ地でも、有機で十分に収穫することができます。つまり、食糧危機になったとき、誰でも簡単に、飢えをしのげる野菜です。

主食になる米や小麦の栽培には、良質の田畑が必要ですが、イモ類なら、日当たりさえよければ、結構どこでも栽培できます。

水光熱費の軽減に、薪ストーブ、井戸、太陽光発電が役立つように、食費の軽減には、イモの栽培が役立つと思います。これらがあれば半自給自足生活ができます。

この本は、サツマイモが歴史的に日本をいかに救ってきたかを記した内容です。世界的にも、サツマイモが偉大な作物であることが書かれています。

今回この本を読んで、サツマイモの偉大さを再確認できた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・江戸の飢饉から人々を救い、太平洋戦争の戦中・戦後、日本全土の未曾有の食糧難を土壇場でかわすのに、大きな力を発揮したのがサツマイモ

・さまざまな分野の研究者が集う宇宙農業サロンで、「宇宙で展開する農業の最適作物」の最有力候補は、米、大豆、蚕、ドジョウとサツマイモ。21世紀において、サツマイモは予想を超える新たな救世主になるかもしれない

・空き地や公園での食糧生産はすでに、戦時中から始まっていたが、戦後もしばらくの間、継続された。栽培が比較的簡単なサツマイモやジャガイモが、ここでも主役だった

・甘藷の中国への伝来が1593年、琉球への伝播が1605年、鹿児島への渡来は1612年、急速に伝わった

・1732年に100万人以上も餓死したと伝えられる享保の大飢饉も影響して、サツマイモは各地に急速に普及し、天明の大飢饉(1783年、1786年)の際、多くの人々の命を救った

・享保の大飢饉では、西日本を中心に被災民265万人、餓死者1万2000人を出したと言われる。一説では、松山藩だけでも3500人の餓死者を出したが、甘藷の栽培が行われていた大三島の周辺では、ひとりの餓死者も出さなかったと伝えられている

・1764年、朝鮮通信使によって、日本から渡ったサツマイモは、朝鮮半島のその後の飢饉の際、救荒作物として力を発揮する

・日本の代表的救荒作物である「かんしょ」と「ばれいしょ」の二つは、熱量では米にこそ及ばないが、ミネラルや炭水化物、食物繊維を豊富に含み、栽培も比較的簡単で、痩せ地でも育つ共通点がある

・太平洋戦争中の昭和18年、サツマイモの作付面積は325万ha、ジャガイモは20万ha。平成17年では、サツマイモ4.8万ha、ジャガイモ8.7万haで、二つとも大きく生産を落としている

・2009年のジャガイモの作付面積シェアは、北海道65%、鹿児島5%、長崎5%、福島2%、千葉2%。サツマイモは、鹿児島35%、茨城16%、千葉12%、宮崎8%

・18世紀末、江戸では焼きイモが爆発的人気を博するようになる。八百八町の一つ一つの木戸番小屋で、木戸番の内職として焼きイモが売られ、おやつ、夜食として爆発的な売れ行きとなった

・世界のサツマイモ収穫面積は、2007年で909万ha。アジアが60%、アフリカが35%。アフリカの生産量だけが1970年の3倍に増加。国際機関がビタミンAを大量に含むサツマイモ、カボチャの栽培を強く奨励し、アフリカの穀物不足を賄っている

・宇宙食でのサツマイモの長所は、栄養価が高いうえ、葉も茎も食用となり、廃棄物もほとんど出さない。重量がかさむ土ではなく、水耕栽培もできる。さらに、光合成で二酸化炭素を吸収し、酸素をつくる

・屋上のサツマイモ畑で、葉で覆われた所はそれ以外の所より温度が20度低かった。サツマイモの葉の遮熱効果が高く、都市のヒートアイランド対策になる



この本を読めば、食糧難対策(栄養価が高く、栽培が簡単)、農地不足対策(痩せ地や水耕でも栽培可能)、ヒートアイランド対策(屋上緑化)など、サツマイモの恐るべき地球環境対策効果を知ることができます。

しかも、サツマイモの品種改良もすすんでおり、甘くてホクホクのものが出回るようになってきています。我が家でも、昨年度より、種子島の安納芋を焼き芋にして、よく食べています。みんな大喜びです。

このように、サツマイモを再度見直すべき時が来ているように思っています。
[ 2011/02/04 06:18 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『善人ほど悪い奴はいない・ニーチェの人間学』中島義道

善人ほど悪い奴はいない  ニーチェの人間学 (角川oneテーマ21)善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学 (角川oneテーマ21)
(2010/08/10)
中島 義道

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哲学者である著者の本は、昨年、「人生しょせん気晴らし」を紹介しました。そのときは、「薬にも毒にもなる本」と書きました。

今回、紹介する本は、「善人が読んではいけない本」です。読むと腹が立ち、人格を全否定されているように感じると思います。

ところが、ディープな世界を歩んでこられた人には、面白い本です。なるほどと思えた箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・弱者は、自分の無能力、無知、怠惰、不器用、不手際、人間的魅力のなさを、卑下せず恥じないばかりか、「これでいい」と居直り、「だからこそ自分は正しい」と威張る

・弱者は、こっそり「善良」と裏で手を結ぶ。そのことによって、善良な自分の正しさを確信するだけに留まらず、強者を「強いがゆえに悪い」と決め込む

・弱者は、エリートに対する嫉妬心を巧みに隠して、初めは恐る恐る、そして次第に大声で、強者を指して、「自己チュー、エゴイスト、社会の敵」と叫ぶ

・善人が悪事をなさないのは、それが「悪い」からではない。ひとえに社会から抹殺されたくないから、つまり、悪をするだけの勇気がないから。社会に抵抗して、独りで生きていくほど強くないから

・善人という名の弱者は、自分が属する共同体から排除されることを恐れているがゆえに、いかなるものであれ、自分が属している共同体の方針に加勢する

・一番偉い人に尻尾を振ってきた人が、偉い人になると、自分の後輩に対して、同じこと、いやもっと卑屈な態度を要求する。そして、尻尾を振らないイヌどもや自分の前で仰向けにならないイヌどもを「生意気だ」と論じ、罵詈雑言を重ねる

・弱者は、他人に対しても「弱くあれ」という信号を送る。弱い者が強くなるのを妨げる。生命、安全、小さな幸福を念仏のように耳に注ぎ入れ、「世間は甘くない」「いつまでも夢みたいなことを考えるな」と言う

・善人は、自己反省することなく、強者による永遠の被害者を気取る。強者に翻弄され続ける哀れな自己像を描き続ける。これ以上の鈍感、怠惰、卑劣、狡猾、すなわち「害悪」はない

・弱者は油断すると傲慢になっていく。だから、心してそれを食い止めなければならない。それには、自分の弱さを憎まねばならない。それから脱しようとしなければならない

・ヒトラーは、ドイツ人というだけで、「劣等感を完全に払拭し、何も努力しなくても、自分は落ちこぼれでないと思い込める」ものを与えた。そういう幻想に陥りたい弱者の喝采を受けた

・弱者=善人が、権力に敏感であるのは、保身を求め、村八分にされないように細心の注意を払うから。弱いからそう動くしかない。そして、その時々の権力者に従い、支配者に反対する者から距離を保とうとする

・善人は「小さな幸福」を求め続けるうちに、ますます小さくなる。彼らの美徳はすべて消極性=否定性から成り立っているから当然である

・誰も彼も、目立ちたい、有名になりたい、儲けたい、自分を表現したいと望み、これらが叶えられなくても、自分らしい生活をしたいと望む。その結果、誰も彼もが、互いに見分けがつかないほど同じことを語り、同じ行動をし、同じ人生を歩む

・善人は小さく狡く、小さく利己的。壮大な悪徳には怖気づくが、小さないじましい儲け話にはすぐに乗ってしまう

・善人はあたり構わず「好意」を振りまく。それは、実は自分を守るため。相手の価値観や人生観を研究しての好意ではなく、押しつけがましい好意。「すべての人に喜ばれるに決まっている」という思いに基づく傲慢な好意

・善人は「善意から」と言いながらも、その好意は決して無償ではなく、相手から自分の望む見返りを求める。だから、その表面的な謝礼の言葉、恐縮した物腰、誠意ある態度がますます不潔に感じる

・善人の要求する誠実性とは、弱い自分たち仲間内だけに通用する誠実性、弱者の特権を信じる人だけに通じる誠実性。だから、善人はこの「弱者の原則」を破るものに対しては誠実性をかなぐり捨てる

・弱者は、「公正」「平等」「正義」を求める。真の強者は、不当に攻撃されても、非難されても、排斥されても、それを受け止める。自分が強者なら、あえて弱者と同じラクやトクを求めてはいけない

・善人は、自己批判をしない。「みんな」と同じ行動をとることに疑問を感じず、それに限りない喜びや安らぎを覚える。すなわち、善人の正しさの根拠は「みんな」である

・善人はラクをしたく、トクをしたい輩だから、自分のまわりに対立があってはならない。同じ考えの者同士で固まり、異質な者との接触を毛嫌いする。そうなると、人間は果てしなく「ダメ」になっていく

・一流の学者は、自分と違う意見にも耳を傾けて聞こうとする。二流以下の学者は、同じ意見の者だけ集まって、違う意見の者を排斥する。両者の差異は激しい

・強者は敵から逃げない。敵との対決こそ人生の醍醐味だから。弱者はあらゆる敵から逃げる。そして、敵のいない世界を望む

・相手に感謝する気持ちが純粋であればあるほど、自分の人格を明け渡して、相手に従うことになる。恩人に対して、わずかな批判的言動も避け、その命令に一途に従うのは、奴隷に身を落とすこと



この本を読めば、善人と弱者がいかに傲慢であり、醜いものであるかがわかります。世間の常識と違うので、怒りを覚える方がいるかもしれません。

しかし、善人や弱者の世界に逃げ込むと、人生は半ば敗北したことになるのも事実です。著者は、この本で、できるだけ、個々が強く生きるように励ましているのではないでしょうか。
[ 2011/02/02 08:21 ] 中島義道・本 | TB(0) | CM(2)

『子供は理系にせよ!』大槻義彦

子供は理系にせよ! (生活人新書)子供は理系にせよ! (生活人新書)
(2008/04)
大槻 義彦

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著者は、テレビで、オカルト批判を繰り返していた大槻教授です。科学的でないことを否定する理系魂を有する著者ならではの本ですが、現代社会を生き抜くのに、核心をついた内容だと思います。

この本を読み、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・文系は、これからの科学の進歩を肌で感じている。理系に対して多少のやっかみと憧れを抱きつつ、先進国の将来、政治も経済も、会社の命運も理系の活躍に依存していることを、文系は本能的に知っている

・先進国は科学技術レベルで持ちこたえている。巨大な国土を持ち、たくさんの資源を保有するアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの先進国でも、科学レベルの維持は最重要課題。科学文明の維持は、社会の発展と人類の幸福のために必要不可欠

・理系は先進国の花形。理系は手に職を持つから、失業を心配する必要がない。エリート文系のように出世はしないかもしれないが、食いっぱぐれがない。しかし、子供は科目の選択で理系を嫌う。子供の理系離れが進行すれば、日本の将来は危うい

・理系が冷遇されていたのは昔の話。現在では理系の方がむしろ有利。人づき合いだけでは仕事は回らない。システム思考を身に付けた理系こそ、なくてはならないものになっている

理系フリーターはどんどん増えている。特に、エネルギーの効率的利用を企画提案し、装置設計する関連の科学技術者が多い。このように、理系は就職に問題がなく、転職も自由自在、自分で起業しても成功している

・文系では、法、経済、商学部の選ばれた者でないと、出世の道は険しい。出世すれば天国だが、そうでなければ、無能の印を押される。これに対して、理系の仕事は努力して報われないことはほとんどない。製品化されなくても、失敗の責任を問われることは少ない

・経済学部などの学問が役に立たなかったことは、わが国のバブルとその後の経済破綻からも明らか。経済学がもっとも力を発揮すべき銀行、証券の破綻は決して見逃すわけにはいかない

文系エリートは、遊び呆け、大学院にも行かず、それでいて政治や経済を握り、この国を食い物にしてきた。理工系エリートは、普遍的真理を追い求め、それを役立てたいと願い、わが国を世界有数のハイテク王国に押し上げてきた

・数学や物理学の問題を解いたり、新しい実験を考えて装置を組み立てることは、ゲーム、ギャンブル、スポーツよりはるかに面白い。新しい法則性を見つける作業がうまく当たったときは、ギャンブルでうまくいったときの何百倍の感動を与えてくれる

・自然の美は、物体の姿、構造にあるのではない。その法則性、秩序、運動、変化にも、言うに言われぬ美しさがある

・理系は、「遊ばない、馬鹿な遊びをしない」「馬鹿なお金を使わない、馬鹿なお金を儲けない」「馬鹿な友人たちを作らない」「生活に乱れがなく合理的で当たり前の生活をする」

・文系は、「遊び呆ける」「馬鹿なお金儲けをやる、馬鹿なお金を使う」「馬鹿な友人たちを持つ」「生活が乱れる」

・会社が儲かるのは、文系サラリーマンの営業あってのこと。文系には成果主義が導入され、営業で大きな成果をあげた者が給料、昇進で優遇される。そのため、文系で出世した者は勉強を馬鹿にし、文系サラリーマン生活の方が上質だと大きな勘違いをする

・新入生が理系を選んだ理由は、「親の影響」が32%、「先生の影響」「本の影響」を含めると80%にもなる。親の希望が子供の進路に影響を与えている

・子供に理系進学を決意させた文系の親は、「科学好き」「NHKテレビや映画の科学映像が好きで子供と一緒に観賞している」「科学おもちゃを子供と一緒に遊ぶ」ことが特徴



理系一辺倒の論評ですが、大きく見れば、当たっていると思います。理系でありながら、視野の広さを併せもつ人が、これから求められる人材ではないでしょうか。

我が家も、文系の親ながら、男の子二人を理系に進学させようとしています。この本は、その決意に対して、背中を押してくれました。

子供を理系に進学させたい親にとって、最適の本ではないでしょうか。
[ 2011/02/01 07:13 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)