この本は、日経新聞の産業地域研究所に勤める著者が、真面目に書いています。売らんがためのセンセーショナルな記述ではなく、信頼できるデータをもとに、きちんと事実を確認して、調べ上げた書です。
この本を読むと、若者についての驚くべき事実が数多く記されています。参考になった箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・20代男女の若者は、車やブランド品を含め、「見せる」「差をつける」「
ライフスタイルを体現する」商品への関心の低下が顕著
・日々を淡々と過ごしたい若者にしてみれば、「飲んで日頃の
憂さを晴らす」類の非日常はもはや必要なく、面倒なだけである
・今の若年層は、たとえ待つ人がいなくても、とにかく家に帰って、まったりしたい
・20代に限ると、男性の甘党比率は40%と目立って高くなった。20代女性は42%で、男女の比率の差はわずか。若者の場合、かつて見られた「酒か、甘いものか」という
嗜好の男女差はほぼ消失している
・21世紀に入り、旅行商品や交通、宿泊などに金を使い、日常の生活圏の外に出かけるタイプの「
ハレの消費」は、若者に好まれなくなった
・20代の過ごし方で、2000年調査時より、最も大きく伸びたのは「家で勉強や読書をする」という回答。次いで伸びが大きかったのが「掃除や洗濯など家事をする」という回答
・若年層が
身体性の喜びから離れつつある。時間とお金をかけて、遠くまで出かけて、時に用具を使って体を動かすのは面倒
・何より今の若者は、差異を見せつけるための「威張り」や「モテ」のために、お金を使わず、労力もかけようとしていない
・貯蓄の現在高で、300万円以上ある人が20代回答者のほぼ4分の1に達した。500万円以上ある人も1割を超えた。20代男性たちは、口を揃えて、「日々の生活を切り詰めたり、買いたいものを我慢しているわけではなく、自然に
貯まっていく」と言う
・「今を楽しむより、将来に備える」という
堅実志向のアリ派の20代は、2000年調査時に比べて、年収400万円未満の層では、22%から36%に。400万円以上850万円未満の層でも24%から40%に増えている。堅実志向は所得階層にかかわらず高まっている
・デート関連の出費を嫌い、恋人と過ごすクリスマスのようなイベントに消極的な若者が増加している。特に若い男性は、恋愛に手間暇やお金をかける意欲自体が低く、交際に付随する労力を面倒に感じている
・今の20代は、「
異性との交際は面倒、わずらわしい」の回答が、上の年代の3倍近くに達している
・クリスマス時期の都市ホテル利用は長期にわたり減少傾向にある。自宅で家族とクリスマスを過ごす人が増えている
・20代後半の男性から
女性へのプレゼントでは、宝飾品、花、バッグの凋落ぶりが鮮明になっている
・異性と仲良くするために多額のお金を使うことをばからしいと考えている人は、20代独身者で3割強、18~19歳では4割近い
・多くの若い男性は、経済的負担や労力を含め、
旧来の男性が背負ってきた役割を背負いたいと思っていない。静かで小さな世界で暮らしたいと思っている
・19歳の3分の2は、休日は外出するより自宅で過ごしたいと答えている。同じように考えている29歳は半数弱。仕事疲れはなく、時間の余裕があるはずの19歳は、今の20代以上に「
巣ごもり派」
・幼少期からネットに慣れた世代にとっては、マスに向けて流される番組の受信者となるよりも、膨大な情報の中から
好みのコンテンツを選択し、他の閲覧者とのつながりも感じられるメディアの参加者となる方が、喜びが大きい
・平成生まれの若者は、安くて流行をちゃんと取り入れた店舗や服を選ぶ。服を選ぶ審美眼があるから、あまり整理されていないごちゃごちゃした陳列の店で選ぶ方が好き。幅広い選択肢から
財布と好みで選べるしっかり者
・仕事を選ぶ基準は、どの世代もトップが「収入が安定している」こと。19歳では20代よりもその比率が高い。そして、19歳で特に目立つのが、「
失業する心配がない」こと。彼らは安定を求めながら、実は安定をあまり信じていない
・19歳がしてみたい仕事の首位は公務員。全体の3割以上が挙げる。2004年の調査で人気上位職種のテレビ番組制作者、編集者、コピーライターはすべてベスト10圏外に消えた。弁護士、公認会計士なども人気が落ちた。職業選びから
差異表示は消えつつある
・20歳を迎える平成成人に
お気に入りのものの画像を送信してもらう調査で目についたのが、毛玉とり機(男子)、座椅子(女子)、こたつ布団(女子)、湯沸かし器・ポット(男女)、鍋(男子)など。自室で安らぐ時間そのものが主役になっている
・20代の若者は、茶華道や盆栽、神社仏閣、平安の美意識などへの関心を高め、精神文化に深く分け入ろうとする傾向が強い。彼らにとって、次世代に伝えるべき重要な価値は科学や合理性ではなく、
京の雅に代表される美意識や自然観となっている
・若年層が特に重視するのは「雅など京風の美意識や季節感」である。彼らが魅かれているのは、武家社会で発達した文化よりも、それ以前の平安期の
王朝文化である。
江戸より京という傾向は若年層で鮮明
・今後浮上すると目されるのは、東京一極集中が崩れ、狭い地域内でモノや情報の交換を軸として成り立つクラスター型社会。かつてほど「
大きな経済」が生み出すものに信頼を置かない。若者が感じる付加価値は「
固有性」に移っていく
・今の若者が希求するのは、静かで
小さな社会の中での暮らし。彼らは自宅とその周辺の地域内で暮している。「地元を徒歩や自転車で散策することが多い」人の割合は、20代が最も高く、ほぼ7割
・多くの若者は近所を散策することが好き。ネット検索に熱中する一方で、散歩の中でふと見つけた店や景色、不思議な建物にも
発見の喜びを感じている
・今の若年層は、上の年代よりも格別エコに熱心とは言えないが、結果的にエコロジストである。海外旅行やドライブをせず、最新の商品に飛びつきもしないので、エネルギー消費は少なくなる。これ以上
便利にならなくていいし、高いモノを買わなくてもいい
・
地元で暮らすのが好きな一方で「電脳派」。消費関連の情報は居ながらにして十分に持っている。買い物は地元のショッピングセンターで十分。情報収集にはネットを使うという層が一段と増えている
ここで記載されているのは若者の流行ではなく、今後の
社会の時流です。時代が、この世代と共に、大きく変わっていくように感じます。
若者の行動をいくら否定しようとも、この世代が時代をつくっていく以上、この流れは変わらないように思います。
この事実を頭に入れておかないと、間違った判断を犯してしまうのではないでしょうか。