本ブログの読者であるCさんからすすめられて読みました。
日本の医者の実態を、経済的な側面から洗い出し、その中で、患者は医者と、どう付き合えばいいのか、
岡本裕医師が白昼の下に晒してくれた力作です。
医者や製薬医療業界にとっては、「発禁にしたい書」かもしれません。患者もしくは患者にされそうな人にとっては、「バイブルにしたい書」です。
ともかく、
健康で長生きが、お金をかけないで、手に入る「大変お得な本」です。
参考になった箇所が40ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満症、痛風、便秘症、頭痛、腰痛症、不眠症、自律神経失調症などは総称して「
喜劇の病気」と言われる。その理由は、それらの疾患は、悲劇のヒロインの病気には絶対になりえないから
・日本には「
おいしい患者」(医者にとってありがたい患者)が、3000万人以上いる。「命にかかわる患者」は、やりがいを喚起するものの、精神的負担が大きく、金銭的に報われないのが現状。「命にかかわらない」「完治しない」
リピーター患者はありがたい存在
・開業医や市中病院の勤務医が1日に
外来で診る患者数は50~60人。米国の5倍。OECD平均の3.5倍。日本も欧米も医者の報酬は同じなので、日本の医者は非常に忙しい思いをしていることになる
・従来から日本の
医者の技術料は低く設定されている。以前は、薬価差益があった。つまり、技術料は安く設定するかわりに、医者は薬を売って儲けなさいという暗黙の了解があった。昨今は薬価差益もなくなり、技術料も低く設定され続け、まさに八方塞がりの状態
・
病気の状態をおおまかに分類すると次の3つのカテゴリーになる
1.医者がかかわらなくても治癒する病気
2.医者がいないと治癒しない病気
3.医者がいても治癒しない病気
・「医者がかかわらなくても
治癒する病気」は「喜劇の病気」。その「おいしい患者」が日常診療の、多ければ90%以上いる。「医者がいないと治癒しない病気」(医者の本領を遺憾なく発揮できる領域)の患者は追いやられている
・どんな仕事でも、やりがいがなければ、仕事を続けることが耐えがたいストレスとなる。そのストレスが高じると、その
ストレスを和らげる代償として、
割り切りが必要になる。一度割り切ると、やりがいに代わって、お金儲けを初め、新たな目的が頭をもたげる
・日本
糖尿病学会は1999年、血糖値が126mg/㎗以上を糖尿病にするといきなり決め、一夜で数百万人の糖尿病を増やした。高血圧も2000年に140/90mmHgに引き下げられ、これで
高血圧患者を3000万人増やした
・
医者の卵たちの、研修前希望診療科と研修後希望診療科の比率で、最も減少率が大きかったのは、脳神経外科(42%減)外科(33%減)小児科(28%減)。増えたのは形成外科(41%増)皮膚科(24%増)。仕事がきつく、生命に直接かかわる診療科への希望が減っている
・人道的
救命精神を医者から遠ざけているのは、金銭的なことだけに限らず、医療訴訟を巡る問題、年齢を経てからのリクルートシステムの未整備などが理由。医者そのものがヒューマニズムの心を失ってしまったからではない
・開業医になった人たちのほとんどが
転科組(内科と専門分野の看板を掲げる)。開業に踏み切った年齢は40~55歳。共通しているのは、「勤務医に疲れた」というのが一つの大きな動機
・糖尿病と診断された年寄りがほとんど治ることで有名な老人ホームでは、
玄米菜食と
日本の伝統食を基本にしている。高血圧、肥満症、高脂血症も改善している。家族の方が「何十年も飲み続けたあの病院の薬は何だったのか」と話すのを嫌というほど耳にしている
・
単品食品ダイエットは昔からよくある手法。同じものばかり食べるとお腹がいっぱいになり、摂取量が低下する。栄養が偏ることで体重は減少する。炭水化物を減らすと、エネルギー源として必要な筋肉を解かし、自己治癒力も著明に低下する。命懸けのダイエット
・果物には、ビタミンやミネラルなどの栄養素がふんだんに含まれていることから、意外に太る原因にはなりにくい。果物はダイエットの敵とされる向きもあるが、むしろ
ダイエットに適した食物
・意外に思われるかもしれないが、花粉症、気管支喘息、アトピーなどの
アレルギー疾患のなりやすさは、
腸の環境に大きく左右されることが明らかになっている。がんを初めとする慢性疾患のほとんども腸の環境いかんで、発病率や治癒率が大きく影響する
・すごい腸の機能を適正に保つためには、安易に薬剤に頼るよりは、
プロバイオティクス(有用な微生物、乳酸菌が代表的)や
プレバイオティクス(オリゴ糖や繊維質)をうまく活用することが、非常に賢明な考え
・腰痛や膝痛は、消炎鎮痛剤の服用よりも、姿勢の是正、体重の是正、運動(歩行)習慣によって、痛みからの離脱が可能
・「薬」と「検査」は、
患者をつなぎとめる最強のアイテム。医院に次に通ってもらえるのは、薬をもらうため、検査をするため、検査結果を聞くため、というように次の受診を決められる
・責任感の強い人、義務感の強い人、我慢強い人、遠慮深い人、周りを気にしすぎる人は、自身のストレス負荷を過小評価する傾向にある。そういう人は、
ストレスセンサーである「嫌」という正直な感覚を大切にしなければならない
・「自分のやりたいことをやる」「嫌なことはできるだけやらないように工夫する」「できるだけ我慢をしない」。これが
自己治癒力を高める強力な手段であることを、数多くの癌患者や
癌サバイバーの方々から教わった
・癌患者のデータでは、「いい人」は
長生きできない傾向がある。
ストレス負荷が癌発症の大きな要因になっているケースが多い。おそらく、生きる姿勢が受身で、考え方が消極的という側面が影響していると推測される
・若い人にとっては多少のストレスが人生のスパイスになるが、40歳を過ぎた人には通用しない。衰えを感じる年になってからの我慢、忍耐、根性、がんばり、競争などは、すべて
身体に悪く作用する。また、義理、約束、責任感、義務なども
自己治癒力を低下させる
・「嫌」な感覚を大切にすることの裏返しが、WANT(したい)の気持ちを大切にすること。どうしてもMUST(
ねばならない)の考えを重視する人が、癌患者に圧倒的に多い
・癌患者の中でも、悪性リンパ腫、乳がん、肺がんの多くは、
自分より他人(家族、会社、社会など)のために生きてこられたという印象が強い。責任感が人一倍強くて、忍耐強く、完璧主義の方が多いのが特徴
・自己治癒力を高める感覚として大切なのが「
いい加減さ」。がんになる方の性向を見ると、ほとんどが、何事も生真面目に取り組み、完璧にそして徹底的に、とことんやらないと気がすまないタイプの人。つまり、いい加減さを知らない人たち
・「嫌(
NO)」「したい(
WANT)」「いい加減(
SOSO)」。癌患者をはじめ、慢性疾患で相談に応じた方々で、この3つの感覚をうまく取り入れた方は、治りが明らかにいい
・「
前かがみの姿勢をやめる」。うつむき加減は全身の血の巡りを低下させ、自己治癒力を低下させる。胸をはる姿勢を意識し、上半身を反ったり、視線を高くして空を見上げたりして、姿勢を正す
・「
食にこだわる」。脂肪分、塩分を抑え、加工食品はできるだけ避け、野菜、果物、穀類、海藻類、きのこ類、発酵食品を積極的に摂取する。魚類などの動物性タンパクは積極的に摂取したほうがいい
・「
便秘はくれぐれも気をつける」。便秘は腸内環境を測るバロメーター。便秘が起こる食生活は好ましくない。ストレスが原因で便秘が常習化する場合もある
・
BMI値が少し高めの方が、実は長生きすることがわかってきた。男性は身長170cmで67~75kg、女性は身長160cmで50~61kg
・「
ベースサプリを上手に用いる」。40歳を超えると、抗酸化能力や腸内免疫能力も低下するので、マルチビタミン、ミネラル、必須脂肪酸、プロバイオティクス(乳酸菌など)は摂取したほうがいい。アクティブサプリ(機能性食品)はベースサプリと併用で効果あり
・値段で言えば、1カ月分が
3ケタのサプリメントは疑ったほうがいい。健康ドリンクや健康スナックの類も似たようなもの。「百害」までは言わないが、少なくとも「一利」もない
・「気がついたら、ときどき
爪モミ」。爪モミには、自律神経のバランスとリズムを整える効果がある。両手(できれば両足も)の各指の
爪の生え際あたりを片一方の親指と人差し指ではさんで少し強く揉むだけ。時間は10秒、回数は1日に10回くらい
・「血流をよくする、
ふくらはぎマッサージ」。ふくらはぎには大量の血液がたまっている。そのたまっている血液を心臓に戻してやる。方法はいたって簡単。1日に10~20分、アキレス腱のあたりから、膝に向かってゆっくりとマッサージして筋肉をほぐす
・「1日に
6000歩歩く」。40歳を超えてからの激しい運動は、発生する活性酸素の悪影響があるので、おすすめできない。アスリートの寿命は長くない。のんびりと一人でウォーキング、スイミング、有酸素運動、ストレッチ運動もいい
・「
海外旅行と
読書」。時空を短期間で超え、
価値観を変える格好の方法。「海外旅行」と「読書」は、癌患者の予後追跡調査で自己治癒力を高めることを確認。感動やカルチャーショックを受けると、
リンパ球数が増える。すなわち自己治癒力が高まる
・医者の習性として、
押しに弱いところがある。したがって、医者にはあまり遠慮せず、厚かましいくらいに接する方が、結果的に得する場合が多い。癌患者の場合、積極的で、自己中心的で、厚かましい人の方が、断然予後が良好
・多くの医者は、白衣を脱げば小心者、白衣(権威)を着れば慢心者。医者に対しては、「
逆らわず従わず」が最も有効
・富裕層や政治家、官僚は、「おいしい選挙民」を狙い、お金や命まで吸い取る。「おいしい選挙民」がいる限り、
社会は変わらない。同様に、「おいしい患者」がいる限り、今の
医療は変わらない。「おいしい患者」が目覚めると、薄利多売の悪しき医療システムが変わる
何となく、医療業界の
胡散臭さを感じていたのですが、この本がキッパリと、胡散臭さの実態を暴いてくれて、心の中のモヤモヤが一気に解消しました。
要するに、医療や健康に関連する業界に、大切な
お金を奪われないで、どうやって健康を保っていくか。これが私たちの大きな課題だと思います。
医療側ばかりが悪いわけではなく、患者側が求めてくるから、それに合わせていたら、こうなってしまったのかもしれません。
少なくとも、この本を読んだ人だけは、「
おいしくない患者」になって、この悪しき医療の改革に貢献したいものです。
患者側に立った、非常に役に立つ良書です。書いていただいた著者の岡本裕医師に感謝です。