とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『寝る前に読むブッダのことば』奈良康明

寝る前に読むブッダのことば寝る前に読むブッダのことば
(2002/03)
不明

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この本は、ブッダが説いた真理を、現代の社会、仕事、家庭に当てはめて、生じた悩みを解決していこうとしたものです。

現代のサラリーマンとブッダは結びつかないように思われますが、悩みは古今東西共通で、ブッダが解決の糸口になります。

ブッダのことば」で、ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



『下劣なしかたになじむな。怠けてふわふわと暮らすな。邪な見解をいだくな。世俗のわずらいを増やすな(法句経167)』

・なぜ誘惑に負けるのか?一つはストレス。もう一つは浮世の義理で誘惑に乗ってしまう場合。「誘惑」の行き着く先は「わずらい」。よこしまな欲望を抱かないことがいちばん幸せ

『他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたことしなかったことだけを見よ(法句経50)』

・病気と紙一重の完全癖。この完全癖が他人を干渉する性格となって現れる。他人の行動を気にせず、自分に関心を向けること

『ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、福楽はその人につき従う。影がそのからだから離れないように(法句経2)』

・人間関係は心によってつくり出されるもの。影が体から離れないように、いつも心を寄せていく

『他人に教えるとおりに、自分でも行え。自分をよくととのえた人こそ、他人をととのえるであろう。自己は実に制し難い(法句経159)』

・制しがたいのは部下ではなく、部下を制しようとしている自分

『称賛してくれる愚者と、非難してくれる賢者とでは、愚者の発する称賛よりも、賢者の発する非難のほうがすぐれている(ウダーナヴァルガ25-23)』

・実績をあてにし、ゴマをすってほめてくれる人よりも、ちゃんと事実を明らかにし、自分の実績を自分で作れとはっきり言ってくれる人のほうが、ずっと優れている

『足ることを知り、わずかの食物で暮らし、雑務少なく、生活もまた簡素であり、諸々の感官が静まり、聡明で、高ぶることなく、諸々の家で貪ることがない(スッタニパータ144)』

・もっともっと、と無限に欲望を募らせることをやめにして、欲を少なくして足るを知らないと、いつまでたっても悩みや苦しみから逃れられない

『以前には悪い行いをした人でも、のちに善によってつぐなうならば、その人はこの世の中を照らす。雲を離れた月のように(法句経172)』

・方法を間違えて犯した失敗でも、やるべきことを怠った失敗でも、自分の過失を反省し、さらに次回の栄養にする

『人がもし善いことをしたならば、それを繰り返せ。善いことを心がけよ。善いことがつみ重なるのは楽しみである(法句経118)』

・善なる行いには善なる結果が、悪なる行いには悪なる結果が伴う

『聡明な人は、奮い立ち、努めはげみ、自制、克己によって(よるべとしての)島をつくる。激流もそれをおし流すことができない(ウダーナヴァルガ4-5)』

確固たる原理を持っていれば、それに照らして自分を制し、弱い自分を励まし、乗り越えていくことができる

『世俗的であっても、すぐれた正しい見解をもっているならば、その人は千の生涯を経ても、地獄に堕ちることがない(ウダーナヴァルガ4-9)』

・職業即人間の価値ではない。自分なりの世界観や価値観をしっかりと持って過ごしているかで、人生の価値が決まってくる

『奮い立てよ。怠けてはならぬ。善い行いのことわりを実行せよ。ことわりに従って行う人は、この世でも、あの世でも、安楽に臥す(法句経168)』

・自分を励ましたり鼓舞したりするだけでなく、善い行いを実行すれば心の安楽が得られる

『自分こそ自分の主である。他人がどうして主であろうか?自己をよくととのえたならば、得難き主を得る(法句経160)』

・自分の個性にあった主体性を持つこと。それこそが自分の主を求めることであり、自我のあり方

『勝利からは怨みが起こる。敗れた人は苦しんで臥す。勝敗をすてて、やすらぎに帰した人は、安らかに臥す(法句経201)』

・勝利したとか敗北したという相対的な価値観で右往左往させられることなく、世俗の次元を離れた、安らぎを模索していく生き方が大切

『身についてつねに真相を念い、つねに諸の感官を慎しみ、心を安定させている者は、それによって自己の安らぎを知るであろう(ウダーナヴァルガ15-3)』

身心一如。心と身体は一体。変化に合わせて心を成熟させていくことができれば、身心の安定を得ることができる



はるかかなたの遠い存在と思えたブッダが、身近に感じられます。「ブッダの教え」が難しくないこともわかるので、面白いと思います。

「ブッダのことば」で、嫌なことをさっぱり忘れ、明日に残さないために、寝床で読むにふさわしい本ではないでしょうか。
[ 2010/07/30 09:03 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『ランチェスター思考・競争戦略の基礎』福田秀人

ランチェスター思考 競争戦略の基礎ランチェスター思考 競争戦略の基礎
(2008/11/28)
福田秀人

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ランチェスター戦略はシェアを確保して、安定を図る戦略です。ランチェスターはもともと戦争における法則、理論なので、抵抗を感じる人も多いように思います。

しかし、デフレの時代においても、シェアの高い大企業の売れ筋商品は、売上を大きく落としていません。シェアの低い企業、商品が脱落していきました。

このビジネス分野の基本戦略を優しく解説したのがこの本です。ためになった箇所、即活用できる箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介します。

ちなみに、福田秀人氏の著書を紹介するのは、「見切る!強いリーダーの決断力」「成果主義時代の出世術」に次ぎ3冊目です



・衰退期を生き抜こうと決断した場合、その企業は、生存確率を高めるためのさまざまなステップを考慮しなければならない。典型的には、業界で最大の市場シェアを有する企業になっておくこと

・予期せぬ好機や脅威に対応するには、部下が自発的に行動することが必要である。部下の主導性(イニシアチブ)を発揮させる方が、整然と行動させるより、よい結果を生むことが多い

・ナポレオンが連戦連勝を続けているとき、その理由を問われ、「事実に基づいて判断しているから」と答えているが、これは判断の鉄則である

良い戦略「部隊に能力の限界を超す努力を要求せず、目標を達成できる戦略」。悪い戦略「部隊に能力の限界を超した努力を要求し、目標を達成できない戦略」

要職につけてはいけない人は、「戦いが嫌いな人」であり、「やれることしかやらない人」。ただし、怠慢とは違い、「やれることは熱心にやる人」

弱者の戦略「局地戦を選ぶ」「接近戦を展開する」「一騎打ちを選ぶ」「兵力の分散を避ける」「敵に分散と見せかける陽動作戦をとる」

・弱者の戦略は、新しい商品を市場に出して参入する場合、新しい地域に出店する場合、新しいマーケットに参入する場合など、常に新しいものの開発や参入の場合の基本的な発想の原点となるルール

・顧客のセグメンテーション「スキミング層(3~4%)」年収1000万円以上「イノベーター層(10~15%)」扱いにくいグループ「フォロアー層(30~35%)」中間的、平均的であるのに満足「ベネトレーション層(40~45%)」年収300万円以下

・新規開拓のさいは、攻撃の主体をナンバー2に集中していく。この攻撃による新規開拓の成功例が、分析の結果、確率的に非常に高い

・大量販売を追求する近代ビジネスは、終焉するどころか、ますます勢いを増し、「集中と標準化の巧拙」が企業の命運を左右する状況が続いている

・「大きいことはいいこと」「商売というのは、結局、最後は量。量よく質を制すという一面を持っている」

規模と範囲の経済は、大企業にコスト優位を与える。顧客の価格弾力性の高いマーケットでは、大企業は一部を顧客に還元できる。この結果、小企業は大企業が扱っていないニッチへ追い込まれる。小企業が大企業の生産費用に対抗するには、成長する必要がある

戦いの勝ち方は、ナンバーワンをいくつもつかにかかわる。強者であれ、弱者であれ、勝利を得るためには、細分化した領域で、ひとつでいいから、個別にナンバーワンを勝ちとっていかなければならない

ナンバーワンになる順序は、弱者の戦略「地域で№1→得意先の№1→商品の№1」、強者の戦略「商品で№1→得意先の№1→地域の№1」

・一点集中で突っ込むのが「グーの戦略」。多様な展開をするのが「パーの戦略」。多様化を見直し、整理するのが「チョキの戦略」。導入期は「グーの戦略」成長後期は「パーの戦略」成熟期は「チョキの戦略」

・自分が強者なのか弱者なのかを、はっきり数値で認識する

勝ち目のないところに力を入れていれば、他で勝つチャンスを逃す

マーケットシェア率が、あるレベルを超したなら、安全性、利益率、持続可能性、拡大可能性、成長性が飛躍的に向上する

・小さくてもナンバーワンになれる。ないし、なっている得意分野を見つけ、それを起点に、ナンバーワンの領域を広げていく

・先発のやることをじっと見ていた後発組は、デモンストレーションの時期をチャンスと見てとり、間髪を入れずに参入してくる

・特許申請は、技術やノウハウを詳細にさらすため、裏目に出ることが多い



ランチェスターという名前だけを知っている人が新たに勉強するのに、この本は最適です。経営戦略に携わっている人にとっても、得るものが非常に多い本です。

ランチェスターの戦略は、現代のビジネス戦争の「孫子の兵法」かもしれません。ビジネスで競争しなければならない人たちにとって、欠かすことのできない必須の法則、理論だと思います。
[ 2010/07/29 06:42 ] 福田秀人・本 | TB(0) | CM(0)

『離婚の心理学-パートナーを失う原因とその対処』加藤司

離婚の心理学―パートナーを失う原因とその対処離婚の心理学―パートナーを失う原因とその対処
(2009/09)
加藤 司

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この本のタイトルは、離婚の心理学ですが、良きパートナーと巡り合い、良き関係を続けていくには、どうすればいいのかを考える内容の書です。

その上で、不幸にも離婚に至った夫婦は、どんなケースが多いのかを学術的に調べています。

素晴らしき夫婦円満生活を構築するために役に立つと思った箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・タバコを吸う男性の離婚率は、吸わない男性離婚者の1.9倍。タバコを吸う女性の離婚率は、吸わない女性離婚者の2.7倍

・「仲のいい夫婦は似てくる」のではなく、似ている夫婦が別れにくいために、「仲のいい夫婦は似てくる」と言われているだけ

・妻の結婚年齢が24~26歳の離婚の危険性を1とした場合、20歳以下の離婚率は2.52倍。21~23歳の離婚率は1.5倍となっている。さらに27~29歳の離婚率は0.78倍。30歳以上の離婚率は0.49倍

・先進11カ国の35年間の失業率と離婚率の関係を調べたら、失業率と離婚率の関係が最も強い国が日本だった。わが国は、カネがなければ愛が続かない国。まさに「カネの切れ目が、縁の切れ目」

・夫の自分勝手なレジャーが離婚を招く。妻の嫌いなレジャーを楽しんだりすると、結婚の満足感が低下する。レジャー活動は妻の趣味に合わせるほうがよい

・子供のいない夫婦の離婚率を1とすると、0~6歳の子供がいる夫婦の離婚率は0.64倍。7~12歳の子供がいる夫婦の離婚率は0.52倍。13歳以上の子供がいる夫婦の離婚率は0.5倍。「子はかすがい」という言葉は事実のよう

・浮気は、それまでの性的体験が多い男女ほど、危険性が高い。20~39歳の女性を対象にしたアメリカの報告では、性的経験がなかった女性と比較して、1~3人の男性と性的関係があった女性では4倍、4人以上では8.5倍、浮気をする危険性がある

・妻が妊娠している夫は、そうでない夫と比較して、浮気をする危険性が4.5倍高いことがわかった

・離婚する要因(妻の場合)
神経質、結婚前の妊娠、両親の離婚、経験への開放性、結婚前の同棲経験

・離婚しない要因(妻の場合)
性的満足感、結婚年齢、現在の年齢、教育水準

・離婚する要因(夫の場合)
両親の離婚、神経質、結婚前の同棲経験、妻の仕事

・離婚しない要因(夫の場合)
性的満足感、夫・家庭の収入、現在の年齢、教育水準、誠実性

夫婦喧嘩の原因
1位「子供のこと」2位「家事や家庭の雑用」3位「コミュニケーション」4位「レジャー活動」5位「仕事」6位「お金」7位「習慣」8位「親戚や元配偶者のこと」9位「愛情表現やセックス」10位「性格」

・会話の最中に観察される「批判」「侮辱」「言い訳」「逃亡」は、離婚する夫婦の4つの危険要因



この本の中で、「夫婦の言動をわずか5分観察すれば、その夫婦が離婚するかどうか91%の確率で予測することができる」というアメリカの研究者の記述がありました。

それは、話し手と聞き手の言動で判断するのですが、聞き手の言動の特徴として、「相槌を打たない」「表情を変えない」「否定的な表情」「視線をそらす、視線を落とす」ということでした。

要するに「否定」と「無視」です。逆に夫婦円満の場合は、聞き手の特徴が「肯定」と「関心」です。

夫婦関係だけでなく、「肯定」と「関心」があれば、大抵の場合、人間関係は上手くいきます。これが「円満の心理学」ではないでしょうか。
[ 2010/07/27 08:32 ] 人生の本 | TB(0) | CM(1)

『アンケートの作り方・活かし方』大久保一彦

アンケートの作り方・活かし方 (PHPビジネス新書)アンケートの作り方・活かし方 (PHPビジネス新書)
(2010/06/19)
大久保 一彦

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説教や理屈では、なかなか動かない人が、「数値」と「客の意見」には、すぐ動くことがあります。特に、接客サービス業において、「客の意見」は絶大です。

この本は、客の意見や感想を聞く「アンケート」についての書です。著者は、アンケートを経営に活かすプロです。

アンケートを経営戦略やカイゼンの手段として、有効に使っている会社はまだまだ少ないように思います。

この本には経営のヒントが多く含まれているように感じました。参考になった箇所が15ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・アンケートから見えてくる表面的な結果は、すでに起こってしまったこと。「どうしてそんなことをしたんだ!」と叱るより、「なぜそうなったのか」という原因を探るほうが大切

・効率よく有益な結果を得るには、100から400くらいのサンプル数が適当。1000も2000もサンプル数を集めるのは無駄であり、時間もかかる

・アンケートでは、お客様の購入(利用)を妨げる致命的な要素を調べることができる。この点もアンケートの利点

アンケートの目的
1.お客様像をつかんで戦略を立てる
2.買うか買わないかの決め手を見つける
3.潜在的ニーズをつかみ、価値を生み出す
4.見えないお客様を知る
5.顧客名簿をつくる
6.お客様と従業員の意識をある方向に向ける

・目的に応じてアンケートの形式を選ぶこと
「不満の受け皿」テーブルにアンケート用紙
「コストに対する意見」会計時に記入
「詳細な情報の入手」面談式のアンケート
「広く回答を集める」電話やメールを使う

・客層戦略は、お客様像を細分化して明らかにしていく「セグメント」、標的とする市場を決める「ターゲッティング」、ターゲットへの「アプローチ」の3段階に分かれる

・男女の差は、団塊ジュニア世代までは顕著にあらわれる。ただし、年々ライフスタイルが多様化し、男女の境目が曖昧になりつつある

・評価を点数化して比較するのが「スコア経営」。スコア経営はお客様の問診を受けることだが、不満がなくてもお客様が減る時代がやってきている。これからは一点の満足を目指す時代

・お客様のニーズは「仕方がない」とあきらめてしまった既存の商品やサービスの中に隠れている。その隠れた潜在的ニーズを満たす商品やサービスを改善すれば、お客様の満足度は飛躍的に上昇する

・基準レベルを10点とするならば、それを1点でも超えれば、お客様の潜在ニーズを満たし、「ほかと違うな」と思ってもらえる。商品やサービスの価値は、お客様に「ここにしかない」と思わせることで生まれる。「ここにしかない」うちが花

・潜在的ニーズが隠されている代表的な質問は、「○○はありますか?」「○○できますか?」

・人の潜在的ニーズには、「誰かに教えたい」「しゃべりたい」というものがある。「お知り合いが○○される場合、当△△をご推薦いただけますか?」という質問をして、その人の満足度を見ることができる

・「どんなきっかけで当店を利用するようになりましたか?」この質問の回答を掘り下げれば、見込み客を動かす何かを探ることができる

・「お気づきの点がございましたら、ご記入ください」だと、良かった点よりも悪かった点が書かれることが多くなる。嫌なことは忘れてもらい、いい印象を引っ張り出すことが大事

・「お客様の喜びの声を聞くと、私たちは励みになります。喜びの声をご記入ください」という質問は、現場で働く従業員のモチベーションを上げる。お客様の喜びの声は、従業員の心の報酬



このように、アンケートは戦略を立てる武器にもなりますし、次の大きなヒントも与えてくれます。

ネットや情報誌の情報が「新情報」なら、アンケートの回答は「最新情報」ではないでしょうか。しかも、この最新情報は、何回掘り起こしても尽きない、純度の高い宝の山です。この宝の山を放置したままにしておくのは、もったいない限りです。

この本は、アンケートの重要性を改めて気づかせてくれる、貴重な1冊ではないでしょうか。
[ 2010/07/26 08:42 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(2)

『億万長者より手取り1000万円が一番幸せ!!』吉川英一

億万長者より手取り1000万円が一番幸せ!!―年収400万円+副収入でプチリッチになる億万長者より手取り1000万円が一番幸せ!!―年収400万円+副収入でプチリッチになる
(2009/04/10)
吉川 英一

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日本の税制は「官僚様」が作っています。つまり、「官僚様」に一番有利な税制を作っています。国民はそのことを余り知らされず、マスコミまでが口を閉じています。

税率がそこそこ低い手取り1000万円の年収をもらう。退職金規定を狡猾に利用し、巨額なのに税率の低い退職金を何回ももらう。退職前の給与を多くして年金をいっぱいもらう。

このやり方を真似ることが、日本で資産を残す方法ではないかと、前から考えていましたが、この本にも、同様のことが記載されています。

今の政治では、このおかしな税制を変えることは無理なようです。それならば、海外に脱出するか、この税制に合わせた生き方をするかのどちらかしかありません。

著者は、「年収400万円+副収入」でプチリッチになる方法を、この本で伝授されています。この閉塞感漂う社会主義国家?日本で、賢く生きていく方法論を示されています。

この本の中で参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本の税制を考えると、大勢に逆らって会社経営を目指すのではなく、サラリーマンをやりながら、税率23%の小金持ちを目指すのが最も幸せな生き方

・日本では個人の所得税においても課税所得金額で1800万円を超えると、最高税率が40%になる。住民税10%、事業税5%と合わせて、55%が税金。こんな税率の高い国でお金持ちを目指そうなんて、とんでもない

・税務署と税理士は庶民から税金をきちんと徴収するという共通の目的のために存在する。青色申告や会社設立が増えると、収入が増える点で利害が一致している

・現在、国と地方を合わせて400万人の公務員がいるが、公益法人や第三セクターに補助金として支払われる人件費も含めると、国税と地方税収入の半分がこれら役人の人件費に消えている。この国では賢い人は官僚を目指す

・具体的に小金持ちとは、どれくらいの年収を指すのかといえば、可処分所得(手取り)で1000万円程度。夫婦と子供2人の標準世帯の場合、給与所得者であれば1448万円までが、小金持ち層。手取り1000万円でも普段の生活は億万長者と一緒

・自分の子供にお金の知識を何も教えないまま、クレジットカードやキャッシュカードを持たせて、社会に放り出す親は「バカ親」としか思えない

・不動産投資や株などの投資本を何冊も出している人の場合、最初の処女作が一番ノウハウが詰まっている。その後も出し続けているなら、本人がいかに進化しているかを見てから買うのがいい。でも、一番安くて投資効率がいいのは投資本

生命保険の見直しをしない限り、お金は絶対に貯まらない。生命保険、医療保険、ガン保険、個人年金、学資保険で合計4万5000円が毎月出ていく。死亡で1000万円~2000万円あれば十分。生命保険だけで何十年も暮らそうなんて期待していない

しつこい勧誘を受けたら「そんなによい商品だったら、あなたが買えばいいじゃない」と言おう。さんざんすすめておきながら、本人は絶対に買っていない

・株で勝ちたいと思ったら、あまのじゃく投資家になる。自分が買いだと思ったら売ってみて、売りだと思ったら買ってみれば、今まで勝てなかったのが、勝てるようになる。株なんてそんなもの

・株で勝つには、買うも売るも中長期で待てることができるようになってから。自分の思う値段まで下がるのを待つこと。買いたいと思っても、一度踏みとどまる。きっと値下がりしてくる。中長期投資が株の基本

・底値を仕込むにはピラミッド投資法。ピラミッド投資法は、低いところで常に株数を多く買い付ける。平均買付単価を下げるには非常に有効

・不動産投資は、安定した収益を生み出す投資。空室を埋める努力さえ怠らなければ、安定収入が入り続ける。株式投資や転売目的の不動産投資では、大きく儲かることはあっても、それをずっとコンスタントに続けていくことは不可能

・サラリーマンが副業で不動産投資を始め、可処分所得が1000万円に達したら、いかにリスクを減らすべきかを考える。税率23%の世界が日本では一番居心地がいい

・出口戦略を考えたら、あまりにも投資金額が大きい物件は買わないこと。売りやすい物件を買うこと

・リタイア生活こそ人生における至福の時間。日々減っていく貴重な時間を会社に切り売りすることほどもったいないことはない。自分のやりたいことや目標が定まっているなら、命を削ってサービス残業なんかしないで、早くリタイアしたほうが幸せに決まっている



著者は、サラリーマンの給与と安定収入が見込める不動産収入を合わせて、1448万円(税率23%)を目指すこと。会社が嫌なら、いつ辞めても、一生食っていける態勢に、収入と資産を確保しておくこと。主にこれらについて述べています。

著者自身が、実践されてきたことなので、説得力があります。

大金持ちになるのを目的とせず、「束縛やストレスからの解放と安心感の獲得」。つまり、自由が目的というスタンスです。

今、サラリーマン生活で夢をなくされている方にとっては、夢を与えてくれる書ではないでしょうか。
[ 2010/07/25 08:59 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『10の悩みと向き合う・無宗教は人生に答えを出せるのか』島田裕巳

10の悩みと向き合う 無宗教は人生に答えを出せるのか10の悩みと向き合う 無宗教は人生に答えを出せるのか
(2009/02/20)
島田 裕巳

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島田裕己氏の本は、「3種類の日本教」に次ぎ2冊目です。宗教学者であり、社会学者といった存在です。現在は、東京大学の先端科学技術研究センターの研究員をされています。

宗教や社会を見つめる、ユニークな視点は、何冊読んでも、大変参考になります。

この本も、無宗教なのに祈り、そして悩みが尽きない、現代の日本人の精神構造がよくわかり、勉強になりました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・今もっとも勢いのある新宗教は、精神的なカウンセリングを施すものに変化してきている。信者が結束して、社会の中でのしあがっていこうとする激しさは見られない

・悩みから救われたいけれども、宗教の世界に深く入り込んで、現在とはまったく違う世界には行きたくない、人生を根本から変えたくない、周囲の人間関係に影響を与えてほしくないというのが本音

・人は、何かが欠けていれば、それを求めて頑張ろうとする。煩悩は原動力になる

・祈りの対象となる神や仏より、祈るという行為自体が重要と言える。さらには、祈りを捧げなくても、心を無にし、気持ちを切り替えることの方が、はるかに大切なことになっている

・庭をボーッと眺めるということは、一番単純で、純粋な祈り。世俗の生活のことは何も考えず、ただ庭を眺めている感覚は、ほかではなかなか味わえないもの。こうした感覚が祈りの奥にあり、信じることの根底にある

・自分を解き放っていこうとしても、それを受け入れ、受け止めてくれる何かを信じられなければ、怖くてそれはできない。解き放つこと信じることは密接な関係を持っている

・金儲けを戒める宗教はないが、利息は、ユダヤ教でも、キリスト教でも、イスラム教でも戒められている。お金を貸して生活するようになれば、物を作る人がいなくなり、社会が成り立たない。そこで、金貸しの価値を認めず、利息を禁じる考え方が打ち出された

・お金がないと結婚もできない。子供も産めなければ、家庭も作れない。そんな時代が訪れている。実際、個人の収入が増えれば、未婚率も減少している

・消費することが気持ちいいという感覚は相当薄れている。お金が必要でない社会になったわけではないにしても、金儲けに意義を見出すことが難しくなっている

・私たちは、お金を第一に考える必要がなくなっている。金儲けという、わかりやすい目標が立てにくくなったことで、人生全体の目標がはっきりしなくなり、それでさまざまな悩みが生まれてきている

・人間は、物語を必要としている。自分がいったいどんな人生を歩んできたのか、それを一つの物語として語りたいという欲求をもっている

・たんなる思いつきでも、途方もないものでもいいが、夢を言葉にしたり、どこかに書いたりすることで、実現に向かって動き出していく。かなわない夢に思えても、それが言葉として表現されると、途端に現実味を帯びてくる

・どうせ夢を語るなら、なるべく多くの人に向かって語るべき。夢の内容も、希有壮大なほうが、かえって実現に結びついていきやすい

・妄想を抱かなかったら、面倒なことは、ただただ厄介なことに終わってしまい、本気でそれに立ち向かおうという気にはなれないもの

・目の前に立ちふさがっている壁を乗り越えることが、イニシエーション(通過儀礼)の本質。師は弟子に対して、壁を乗り越えなければいけない状況に追い込んでいく存在

・教養をもつことで、物の理解が深まり、より深いレベルで楽しむことができるようになる。世界がつまらなく感じ、生きていくことに手応えを感じないのは、教養が欠けているから。物の見方がわからなければ、興味深い事項でも、なぜ興味深いのか理解できない

・早い段階で結婚相手が見つかれば、結婚する時期も早まり、子供も早く生まれる可能性が高くなる。そして、早めに子育てを終え、それから自由な時間を送る。結婚積極派は、そうした将来を考えている

・恋愛をしなければわからないことがある。恋愛は、すべてを賭け、自分をさらけ出さなければならないから、そこではじめて見えてくるものがある。それを知らないまま一生を終えるとしたら、とても残念なこと

・人間関係においては、甘える側甘えられる側が明確に分かれる。第一子は甘えられる側で、末っ子は甘える側に回る。それは兄弟姉妹だけのことではなく、ほかの人間関係でも起こってくる

・いかに素晴らしいエンディングを迎えるか。そのイメージがわいてくるなら、死を恐れる必要はなくなる。物語を描ききった後の死は、輝かしいゴールになっているはず

・負けを認めることで、今度は勝とうという気持ちが生まれてくる。そのとき、次に勝つことが生きる意味になり、人生の目的になってくる。この考え方を「負け教」と呼ぶのなら、負け教の唯一の教えは、負けを素直に認めることである

・悩みが生じたら、それを乗り越えるべき壁と考えることで、悩みは課題になり、その瞬間に悩みではなくなっている



この本には、悩みの本質が簡潔に書かれています。

難しく書けば、「悩んでいることを悩まなくてすむかを悩むことで、悩みが解決する」ということです。

簡単に書けば、「悩みを課題とすることで悩みはなくなる」ということになります。

老若男女、古今東西、悩みは尽きませんが、悩みに闘いを挑むことで、悩みは解決するのではないでしょうか。悩みと向き合う姿勢が大事だとわからせてくれる1冊です。
[ 2010/07/23 08:47 ] 島田裕巳・本 | TB(0) | CM(0)

『ポケット解説・理詰めのトレンド予測』森田洋一

ポケット解説 理詰めのトレンド予測 (Shuwasystem Pocket Guide Book)ポケット解説 理詰めのトレンド予測 (Shuwasystem Pocket Guide Book)
(2006/06)
森田 洋一

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著者は、流行予測、市場予測のコンサルタントです。この著書では、大きな周期でのトレンド予測について書かれています。

そして、誰でも流行を読むことができ、それをビジネスに役立てることができるというのも、この本の面白いところです。

著者のユニークな理論で参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・トレンドが変化すると、それを正当化する理屈ができる。消費者は正当化されるのが好きだから、流行がさらに大型化する。自ら進んで正当化に荷担することは、あなたに利益をもたらす

・大義名分で流行を作ることはできない。大義名分にできるのは、小さな流行を大きな流行にすること

・あなたが投機家なら流行を軽視してはいけない。市場が急拡大しているのに商品が余ることはないし、市場が急激に縮小しているのに、商品が足りなくなることはない

・曲がっていて当たり前のものを真っすぐにする流行が「」、真っすぐであって当たり前のものを曲げる流行が「」。この「直曲流行周期」は3年6カ月

・循環要因は性別年齢が違うとその位相(タイミング)もそれぞれ違ってくる。年齢が3歳上がると1カ月遅くなる。男性は女性より5カ月遅くなる

・あなたが画期的な商品を開発しても、消費者がそっぽを向くタイミングでは何にもならない。消費者にいつ見せるか、どの機能をどのように強調するか、トレンドと相談しながら決めること

・上部が下部に比べて間延びして見えるものがヒットする時期を「上比長」、下部が上部に比べて間延びして見えるものがヒットする時期を「下比長」。「上比長下比長循環周期」は3年

・機能は売れるデザインを決めないが、たくさん売れるよう、もっと長く売れるようにする。つまり、儲かるようにする。デザインの決定権があるなら、機能重視のデザインにするのは当然

・自分と同じ服を着ている人を見て、ニコニコする人が増える時期を「同一視」(共通点を評価する流行)、自分と同じ格好をしている人を見て、ムカッと腹を立てる人が増える時期を「対立視」(違う点を評価する流行)。この「同一視対立視循環周期」は約7年

・自分の考えを社会に受け入れてもらおうと思うならば、抽象概念の流行を無視してはいけない。あなたの主張がどんなに正しくても、時流に反していると浸透しない。逆に時流に合っていれば、例えホラ話でも受け入れられる

大当たりビジネスは繰り返す。成功パターンは失敗パターンに、失敗パターンは成功パターンに。何かをやろうとするなら、7年前と14年前を思い出すこと

・消費者が物事を長期的に計画的に見る時期が「アリ」、消費者が物事の先を考えずに刹那主義的になる時期が「キリギリス」。「アリキリギリス循環周期」は約7年半。一対のカップルで交互に流行する。家電業界の景気と関係の深い循環要因

・耐久消費財を扱っていて、「アリ」の時期に売れなくなったら、価格を率先して下げる。ローン金利を下げ返済期間を短くする。現金で買う客を優遇する。修理やメンテナンスで利益を上げることを考える

・「アリ」の時期に耐久消費財は売れないが、それは消費者が嫌うようになったからではなく、締まり屋渋ちんになったから。価格感度が高いわけだから、価格を思い切って安く設定すると、それだけは例外的に売れるようになる

・「先憂後楽」型ビジネス(省エネ家電、資格検定など)は「アリ」型ビジネス。「先楽後憂」型ビジネス(消費者金融など)は「キリギリス」型ビジネス

・「エレガンス」(束縛)と「カジュアル」(自由)は互いに替わりばんこに流行。「エレガンスカジュアル周期」は約12年。「エレガンス」→「中間」→「カジュアル」→「中間」→「エレガンス」と変化する。それぞれの期間は3年。1周4ステップで12年

・書類を作る時、カジュアルの活性期には、話し言葉に寄せた表現を使う。逆に、エレガンスの活性期なら、ビジネスの場で「ため口」をきくのは、書類でも厳禁



今、どの時期なのか。行動するには、タイミングが重要です。大きく言えば、人生はタイミングです。

さらに言えば、5W1Hで、一番大事なのはWHENです。このWHENを探る意味で、この本の循環予測は役に立ちます。

この本は、機を見て敏に行動するのに、お守りになる書です。理詰めですから、感性がなくても、機を予測することができます。

タイミングの取り方で失敗してきた人にとっては、今後の人生に役に立つ書ではないでしょうか
[ 2010/07/22 06:38 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『凄い時代・勝負は二〇一一年』堺屋太一

凄い時代 勝負は二〇一一年凄い時代 勝負は二〇一一年
(2009/09/02)
堺屋 太一

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堺屋太一さんの本を紹介するのは「堺屋太一の見方」に次ぎ、2冊目です。今まで、数多くの氏の著書を読んできましたが、氏の本質は、経済学者ではなく、文明学者のように思います。実際に過去数々の予測を的中させてきています。

この近著でも、将来の世界を予測されています。社会がどのように変わろうとしているのか、わかりやすく説明されています。

今回、この本を読み、ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・過去30年間の国際的不均衡は、知価革命が進んでモノ離れしたアメリカと、近代工業社会を完成させた日本を含む東アジア諸国との発展段階の違いに由来する。これから起こるのは、消費の面でのモノ離れである

近代工業社会は「物財の豊かなことが人間の幸せ」と信じる社会。人々は「まず教育を受けて所得の高い職場に入り、貯蓄して金利を得ながら物財を消費する」のを「健全な生き方」と考えた

・アメリカの貿易赤字は減少する。消費の面でもモノ離れが進み、近代工業社会的な「使い捨て走り回りの生き方」から脱する

・日本の経済不況は、自由化・規制緩和のせいではない。製造業を中心とした物財の面だけを自由化・規制緩和しながら、21世紀の成長分野である医療・介護・育児・教育・都市運営・農業などを完全な統制体制のままにしてきた「偽りの改革」にある

・人生の規格と順序を変更すること。近代工業社会では、すべての人々が規格大量消費型の工業に適するように作ろうとして、教育・就職・結婚・出産・子育ての人生順序を定めた。これでは教育年限が延びると出産年齢が上がり、少子高齢化を必然にしてしまう

・「物財の豊かさ」と「満足の大きさ」は全く別物。物財の豊かさは客観的で科学的で普遍的だが、満足の大きさは主観的で社会的で可変的である。それ故、物財の豊かさを求める工業社会人と、満足の大きさを追いかける知価社会人とは生き方も考え方も違ってくる

・今や先進地域の都市間競争は中核100人の争奪戦となっている。リチャード・フロリダは、これを「クリエイティブ・クラスの争奪」と呼んでいる

・知価社会の中核となるメンバーは、デザイナーでも技術開発者でも、芸術芸能、法務、医療、金融ディーラーでも、最高の能力と人気が長く続くわけではない。大抵の人は、最盛期10年、長くても20年までである

・世界の巨大な国際企業の本社機能は地方都市に分散している。大都市に集中しているのは金融と商品の取引所だけ。今回の金融危機と大不況の原因は大都市で作られた。東京一極集中を今も進める日本が、実体経済で最悪の落ち込みになったのは不思議ではない

・金融業者に倫理を説くのは無駄。金融業者があくどいことは、シェイクスピアでも近松門左衛門も書いている。金融業者に望むのは、倫理よりも理性である。もう少しましな人材を育てる教育をすべき

・2008年、日本の人口は45,000人の流出超過だった。外国に移住した人の数が、日本に移住してきた人よりも多かった。高賃金で高齢化が進んでいる国では、実に驚くべきこと。特に意欲的な若年層の流出が気にかかる

官僚統制の恐ろしさは、誰も反対できない極端な少数の例を挙げて規制権限を強化し、一般的な利便コストを吊り上げる点にある。社会主義政権はそのために滅亡したが、今の日本も同じ道を辿っている

・経済の中心が規格大量生産から知価創造に移るなら、都市の構造も変えなければいけない。それが「歩いて暮らせる街づくり」である

・公務員制度の改革の要点は何か。それは、公務員を「身分」から「職業」にすることである

・「自分のお金を使う時は、他人のお金を使う時より利巧」。お金はできるだけ身近な側、自分のお金に近い方で使うべき。国よりも都道府県、市区町村。最良なのは、可能な限り、お金を稼いだ本人に使わせるのが社会全体の満足度を高める

・高齢者の心理と本音は未知の分野である。高齢者の体力や身体機能、多様で用心深い好みを探り当てるには「高齢者学」の開発が必要である

・高齢化は環境以上に重大な全人類的問題である。グリーン・ニューディール以上に成長性のあるシルバー・ニューディールを真剣に考えるべき



著者は、数々の予測をされています。ビジネス面においても、将来に有用な予測が多くあります。

その中でも、特に大きな波である、知価社会の到来高齢化社会の進展は、乗り遅れないように対処すべきかもしれません。

10年先、20年先を見据えて行動するには、著者の本を読んでおく必要があるように感じました。
[ 2010/07/20 07:02 ] 堺屋太一・本 | TB(0) | CM(0)

『ほとけさまの「ひとりを生きる」智恵-人生の不安をとりのぞく22講』ひろさちや

ほとけさまの「ひとりを生きる」智恵―人生の不安をとりのぞく22講ほとけさまの「ひとりを生きる」智恵―人生の不安をとりのぞく22講
(2007/01)
ひろ さちや

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ひろさちや氏の本を紹介するのは、今回で6冊目です。この本は、「会社に頼らない生き方」がテーマになっています。

日本のサラリーマンは、会社に上手に利用され、蟻地獄の中に閉じ込められています。

しっかりとした意思がなければ、この蟻地獄からは脱出できません。その意識改革になる智恵が、この本には満載です。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・世間を信用するなどというおめでたい民族は、世界のどこを探してもない。政治家や大企業を信用しないというのは、どこの国でも常識以前の当たり前

・一神教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教では「神だけは裏切らない」という考えのもとに成り立っている。この考えは、裏返せば「世間を信じない」ということに他ならない。むやみやたらに他人を信じないというのが宗教者の基本

・幸福に生きようと思ったら、「世間は虚仮」だと思うことが大切。他人が何を買おうが、何をしようが放っておけばいい。それが「精神の亡命」の基本

・宗教と道徳はまったく違う。道徳というのは、強者が弱者を縛るための教え

・「共生」という考え方は、単なる「平等」とは違う。共生というのは、強いものが強い環境に住んで、弱い者には弱い者にふさわしい場所を譲るという発想。だからこそ「棲み分け」になる

・サル山のサルは、敗者が負けを認めれば、勝者は相手を許して、絶対にそれ以上の攻撃をしない。敗者にも棲む場所がきちんと用意されている。つまり、強い者と弱い者の関係ができあがって、強い者が弱い者を保護するシステムができあがっている

・「零細企業の取り分」という棲み分けを考えずに、「自由競争なんだから」と、儲かるものに何でも手を出すのは、企業倫理の低い大企業の悪い癖。

・競争原理こそが正しい考え方だと、いつのまにか信じ込まされている。しかし、それも結局は政府や大企業に騙されている。競争原理は、学校にいじめを生み、企業倫理の低下をもたらし、日本社会をめちゃくちゃにしようとしている

・本当のエリートとは、自分の能力を人々の幸せのために使い、いざとなれば命を投げ出す覚悟でいる人のこと。だからこそ、普段はいい給料をもらっていい暮らしをさせてもらっている

・優れたエリートを育てるためには、徹底的な競争が必要。そうした競争が求められるのは人口の5%くらい。彼らは必死になって国の行く末や国民の幸せを考える。残りの95%の人間は、競争などしないで、のんびり生きる。そういう社会をつくるべき

・現代社会は、競争をしたくない者までもが駆り出され、結局は大企業や政府の得になっている。例えて言えば、麻雀の強い人も弱い人も無理やり一緒の卓を囲んでゲームをさせられて、麻雀店の店主だけががっぽり儲けているようなもの

・職場で仲間や友人が求められないのは、日本の職場が競争原理で成り立っているからに他ならない。競争原理で動いているのだから、会社の同僚はみなライバル

・現代の会社は刑務所であり、同僚は囚人同士であるという認識を持つこと。決して、仲間や生きがいを会社に求めてはいけない。そうした強い意志を持たないと、いつのまにか会社に洗脳されてしまう

・会社を利用するだけ利用して、騙せるだけ騙さなくてはならない。会社が従業員を無理やり転勤させたり、いきなり給与をカットすることに比べたら、はるかにかわいいもの

・明治維新、終戦、そして高度成長が始まる1960年。結局この3つの分岐点において、日本人は家族を崩壊させることによって、金持ちの国にするという選択をしてしまった

・会社は肉体的な居場所にするのは仕方ないにしても、決して精神的な居場所にしてはいけない

・ただ金を持っているだけでは、立派な金持ちではない。金を持つことに伴う責任を感じ、国民を代表して、国民のために使うという意識を持っていないといけない。その考え方を端的に表すのが「ノブレスオブリージュ(高貴なる者の義務)」という言葉



日本のサラリーマンが会社の奴隷となり、その状態から脱け出せないのは、著者が言うように、刑務所の囚人と同じ状態になっているからかもしれません。

囚人と言っても、夜は自宅に帰れます。帰宅できる家族を大切にすることで、囚人状態を脱け出すことができます。

会社と個人と家族の関係を改めて問うのに、役に立つ本です。
[ 2010/07/18 09:17 ] ひろさちや・本 | TB(0) | CM(0)

『社会脳・人生のカギをにぎるもの』岡田尊司

社会脳 人生のカギをにぎるもの (PHP新書)社会脳 人生のカギをにぎるもの (PHP新書)
(2007/07/14)
岡田 尊司

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著者は、東大哲学科中退、京大医学部卒の精神科医です。小笠原慧のペンネームで、横溝正史賞を受賞した小説家でもあります。

この書のはじめに、著者は「近年の研究で、社会性の能力が、知的能力以上に、人生の幸福度や社会的成功を左右していることが明らかとなってきた」と書かれています。

学力以上に大切な社会性の能力とは?社会に通用する人間とは?その社会性を司る脳や遺伝子はどうなっているのか?

こういったことが本書のテーマです。今回、読み終えて、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間には、さまざまな情動があるが、それは概ね、怒り、恐怖、嫌悪、驚き、喜び、悲しみの6つに分けられる。6つの基本情動のうち4つまでがネガティブなものであるあたりに、人間がいかに否定的な反応に囚われやすい存在かわかる

・怒りは、自己愛を傷つけられることと深い関係がある。自己愛的怒りと呼ばれるものは、自己愛の尊厳を守るために、しばしば命さえも犠牲にする

・社会性の基本は、他の個体に対して適切な距離をとることと、互恵的な関係(毛づくろいに代表される)をもつことにある。適切な距離と互恵的に関わることができれば、社会生活はスムーズにいく。そのどちらかを侵害すると、社会での摩擦や孤立を招く

・社会性を成り立たせる二つの要素「距離をとるシステム」と「触れ合いを求めるシステム」、そして、その「両者のバランスをとるシステム」の三者が、社会脳を構成している

・リーダーシップを取ったり、交渉や折衝をしたり、仲裁をするといった、高度な社会的行為においては、二者関係以上の三者関係を扱う能力が必須になる。多対多の関係は、社会的情報量も多く、流動的でどんどん変化するため、対応しきれなくなる

・社会的な知恵がある者とない者の決定的な違いは、表面に現れている言葉や態度の裏にあるものを見通すことができるかどうか。知恵の乏しい者はうわべだけに反応する。知恵ある者は背後の意味を見抜く

・競争と協力という葛藤状態におかれたがゆえに、人間は欺くことと信頼することという二面性を抱えた複雑な心を発達させた

・成功した人に共通する点は、目標をもち、たゆまぬ努力をしたことである。超俗的な生き方をした人でさえそうである。一角の人物と凡人の差は、大部分、目的意識と努力の差に還元できる

・創造性と注意力とは、両立が難しい。不注意な傾向は、新しいものに対する好奇心と関連がある。芸術家や独創的な研究の科学者の子供時代を調べると、大抵落ち着きのない不注意な子どもだったことがわかる

・話がすぐに脱線する人がいる。最初話していた肝心な問題から、話せば話すほど逸れてしまう。そうした傾向を持つ人は、話だけでなく、仕事や生き方の面でも、しばしば同様の行動を見せる

・報酬系は、現在の行為の満足に関わるだけでなく、将来の「報酬予測」にも関わることで、意欲を左右する。意欲の源泉とは、将来予測される報酬だからである

・無気力は、その人の脳が、報酬予測を切り下げることによって起きる。つまり、努力しても報われない、無駄だと思い込んでしまう。それは何らかの躓きによって自信を打ち砕かれる体験より生じる。そうなると、チャレンジに消極的になったり臆病になったりする

・長期間恵まれた状況にいると、心の安定や判断力の低下を引き起こし、長期的な利益よりも、目先の誘惑に惑わされやすくなる。そのため、転落の道を歩むことになる

・人間の社会脳はヒエラルキー型の社会集団を前提として発達してきた。人間は本性として、集団内ヒエラルキーをつくろうとする。霊長類以来の遺産。ヒエラルキー型社会を乗り切ることができるかどうかという局面に我々はいる

・競争的攻撃性や防衛的攻撃性は、生きていくのに不可欠な攻撃性。それに対して侵略的攻撃性は、集団内のランキング争いとも関係なく、生存が脅かされる状況でもないのに、攻撃対象の命を奪う過剰な攻撃。フェアなルールもなく、高揚や興奮を伴うだけ

・互いに毛づくろいする小集団のサイズは、人間において縮まり始めている。親密で温もりのある関係は、狭くなり、一人きりで食べ、遊び、生きていくことが、当たり前になりつつある



著者は、この本の中で、「摩擦」と「孤独」が一方的に走らないように、上手に「舵とり」することが社会性であると言われています。

日本人には、昔から「ふれあい派」が多く存在していたように思います。最近では、その反動なのか、「孤独派」が急増しているように思います。

人を「ふれあい派」「孤独派」という軸で観察すると、人との付き合い方も判断しやすいのではないでしょうか。

私自身は、「孤独70%ふれあい30%」くらいの人です。「かまわないでほしいのですが、ときには温もりもほしい」という、少しわがままなタイプのように感じます。

この本は、そういうことを判断するものではないですが、人間社会を生きていくのに、身につけておくと役に立つことが書かれている本だと思います。
[ 2010/07/16 07:12 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『銭道・実践編』青木雄二

銭道 実践編 (小学館文庫)銭道 実践編 (小学館文庫)
(2005/05)
青木 雄二

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著者を紹介するのは、「ゼニの幸福論」「青木雄二金言集」に次ぎ3冊目です。著者は、お金で苦労を重ねた後に、お金の名作を数々に生み出されました。お金とは何かを熟知されています。

著作には、表と裏で言えば、主に裏の部分が多いですが、お金には変わりません。この本を読み、お金で参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「逆欲」を張ること。最安値で買い叩いた時でないと儲けは出ない。江戸で大火事があった時「禁煙のお触れ」が出て、この時に大金持ちになった男は、お触れを逆手にとって、キセルを買い占めた男であった

・平均値というバーチャルな数字を持ちだすことを政府は好む。バーチャルな平均市民を仕立てておけば、つらい貧乏を経験則で味わい尽くした民衆の一揆、逆襲を緩和できる

・農業の時代は、農民からいかに効率よく生産物を搾取するかが「経済」であり、工業の時代は、市民の工賃をいかに搾り取るかが「経済」であった

・支配者がでたらめな税金の使い方をしたその穴埋めを、被支配者がする。まさに古代から続いている「経済」に他ならない

・資本主義とは、借りたものは返さねばならない社会。これは子供でも知る道理。日本は社会主義的要素を濃くしている。完全な資本主義を確立できないまま資本主義を終焉するのであろう

・労働なしに金が金を生む世界に一度ハマったら、これは薬物よりも怖い

・怖いのは、モラルの没落。これが国を徹底的に荒廃させる。この国が野蛮な国になるのを恐れている。秩序のない国に「金儲け」という言葉は成立しない

・才能とは「カネが集まるところに集まる」もの

・就職をするのなら、労働の強度が弱い公務員を選ぶこと。一般企業であれば、労働の強度がキツイ仕事は、給与面でも待遇面でも低いことになっている

・働きの度合いに応じて分配されるはずの富が、資本主義ニッポンでは、そうはならない。働かせる側、上に就く側が、いい仕事といい給料を取っていき、最後に残ったいやな仕事を下の者が奪い合う仕組みになっている

・金持ちというのは、ギャンブル係数が低い。貧乏人の自滅こそが金持ち連中のメシのタネになっている

・世界の大国は、世界に散らばった自国の企業の利益や特権を守るために、軍事力を使って、その国の政府に圧力をかけている。労働力や土地が安い情勢不安定な国でビジネスをしようと思ったら、まず軍隊

・神とは人間にほかならない。古来、その国、地域を支配する人間は、その都度、神と交信するだの、神の意思だのと偽って、自分の都合のよいように政治を行ってきた



この本には、日本の政治体制の中で、どう仕事を選んで、どう金儲けをしたらいいかが書かれています。

長い人生、損したくない、騙されたくないと考えるのであれば、著者の作品を何冊か読む価値があるように思います。
[ 2010/07/15 08:12 ] 青木雄二・本 | TB(0) | CM(0)

『社交する人間-ホモ・ソシアビリス』山崎正和

社交する人間―ホモ・ソシアビリス (中公文庫)社交する人間―ホモ・ソシアビリス (中公文庫)
(2006/05)
山崎 正和

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山崎正和氏は知性の人です。劇作家であり、評論家であり、演劇学者であり、大阪大学名誉教授であり、文化功労者です。

数多くのの著作があります。どれも秀逸です。しかし、じっくり腰を据えて、読まないと、内容を理解するのが難しいものばかりです。

この本を読むのにも、相当時間がかかりました。疲れてしまうことも度々でしたが、それ以上に、著者の色気のある哲学に触れることができ、楽しい時間でもありました。

この本の中で、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「いき」な人間はあえて誘惑の近くに身を置いてそれに耐え、放埒と慎み、好色と無関心という相反する心情を拮抗させる。そしてこの両者が危うい均衡を保つと、その微妙な緊張が魅力となって放散され、社交界をまとめる紐帯となる

・ゲームのルールは現実の道徳律より厳しいのが常であるが、それを守る苦労がそのままゲームの面白さである

・功利的活動集団は、不動の目的を達成するために組織されていて、権力の集中もピラミッド型の支配構造も、すべて人間を手段的存在にするために設計されている

・ネットワーキングの主宰者は「仲間を退屈させない」こと。これは社交において主人に期待される役割。ネットワーキングは科学ではなく芸術であるのも当然

・社交は遊びだという連想が流通しているために、人々はとかく社交を「ふまじめ」な行動になぞらえやすい。むだな贅沢とは言わないまでも、不要不急の「虚礼」として受けとる風潮が根強い

・消費の快楽は消費を続ける過程にしかなく、したがって満足を遅らせ過程を引き延ばすのが快楽を増す唯一の道だということは明白。面倒な礼儀作法がじつは飽食の限界を先送りし、結果として歓楽を増大させる

・自己顕示は個人主義の産物ではなく、逆に個人主義こそ自己顕示の中から生まれてきた。最初に確立した自己があって、それが自己を見せびらかしたのではなく、むしろ見せびらかしの競争の中で、個人は見せびらかすべき自己を発見して行ったに違いない

・政治は民主化、経済は市場化という形をとって、どちらも「無記名人気投票」という制度を確立させた

・ものを買うという行為は、一種の投票行為に似てきた。欲望は買うか買わないかを択一する固定的な意志へと姿を変えた

・経済の第一の系統は「生産と分配」の経済。第二の系統は「贈与と交換」の経済。「生産と分配」の経済は、同質性の高い社会に根差し、その同質性をさらに強める。「贈与と交換」の経済は、最初から対立を内部に包んだ異質性の高い世界をつくる

・競争という商業倫理が反暴力の美徳を捨て、排他的であれという政治の倫理と結合したとき、政治が商業を利己的に規制し、逆に商業が政治を利用することの弊害が起こる

名誉を尊ぶというのは政治にも必要な美徳だが、誠実の精神の重要な要素であって、商業にこそ不可欠な倫理であることは自明。逆に、効率や節倹や勤勉は政治にこそ求められる倫理

・工業社会の進展の歴史は、「生産と分配」の経済が、「贈与と交換」の経済を征服する過程であった。失敗に終わった社会主義経済の革命は、意図的に「贈与と交換」の経済を極限まで排除する試みであった

・利益感情は自然に生じる感情であるが、内に損得勘定を含む意味で理性に似ている。人が利益に目覚めるのには宗教や道徳の説教も無用であるから、これは暴君の情念を中和するのにもってこいの感情といえる。「君主は国民に命令し、利益は君主に命令する

・商業は君主たちの権力欲得を抑制し、たんに国内政治を穏和するだけでなく、国家間の戦争を防ぐ。「商業は自然に人々を平和に導く」「征服の精神と商業の精神は両立しない」

・どんな集団でも、外部の閉鎖力によって守られ、中心の求心力によって統合されている

・権力と同様に、権威も人々に規制力を及ぼす。権力の武器は法と制度であり、それを施行する実力機関。権威の力は礼儀と作法であり、相互に批評し合う人々の評判

・「生産と分配」の経済は権力の政治に、「贈与と交換」の経済は権威の政治に、それぞれ原理的にも対応し、互いになじみやすい性格を持つ

・権力を奉じて「生産と分配」にあたるのは組織であり、「贈与と交換」を通じて権威的な空間をつくるのが社交。生産物の交換は国家権力になじみやすく、交換され贈与される商品を価値づけるのは都市的な権威

・人間が社交を求めるのはたんに楽しみのためでもなく、孤独を恐れるからでもない。むしろ社交が人間の意識を生み、自律的な個人を育てる。社交の人間関係が情緒的な密着を嫌い、「付かず離れず」の距離を求めるのは、このことに起因している

・権威である以上、影響は強制ではなく感化力によって、閉じられた圏域ではなく、放射線状に開かれた世界に広がる。権威は非組織的な民衆の群れによって賛同を受け、いわば都市的な雰囲気に支えられてその力を保証される



この本を読むと、政治と商業、権力と権威、生産と消費、国家と都市、閉鎖と開放。この二律相反する概念を結びつけるためには、人間は社交しないといけないことがよくわかります。

社交は手段であり、技術であり、営みであると割り切ることが大切だと思いました。偏見を拭い去り、社交は遊びではなく、立派な仕事であると、考え直さないといけないのではないでしょうか。
[ 2010/07/13 08:29 ] 人生の本 | TB(0) | CM(2)

『透明人間の買いもの』指南役

透明人間の買いもの (扶桑社文庫)透明人間の買いもの (扶桑社文庫)
(2010/04/29)
指南役

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この本は、物言わぬ大衆を「透明人間」に仮定し、この「透明人間」がどういうものを好むのか、買うのかを書いたものです。

オタクの時代ロングテール現象などと言われて久しいですが、大企業にとっては、マスマーケットを対象にした方が、勝手慣れしていて、効率がいいのも事実です。

その扱いやすいが、見えにくい「透明人間」である「みんな」を探してみようというのが、この本の主旨です。なるほどと思えた箇所が多数ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・他人と違う服を着て、ひとりだけ目立つのは嫌い。大勢の中に紛れたい

・少し年をとり、今さら気取る必要がないと悟ると、とたんに素顔をさらけ出す

・今日のヒットより10年後のヒットを目指したほうが、みんなの支持は得やすい

・女性誌が時々扱う、仕事もできて遊びもできる「カッコいいOL」なんていない。忙しすぎて遊ぶ時間がない。時間はあってもスキルアップに夢中。良家の子女はアフター5は地味

・女性たちの多くは、無難なファッションをこの上なく好む。OLたちはオシャレに投資していない。毎日着飾って出社しているOLなどマスコミがつくった幻想

・食べ物に関して、そんなに好き嫌いはない。今どき客商売で、そんなにマズいものは出ない。だから、誰かが注文すると、つい「あっ、私も」とお決まりの台詞をはいてしまう。店で注文するメニューは、「私も」である

・「とりあえずビール」と言えば、勝手に店がすすめる銘柄のビールが出てきた昔のほうが幸せだった。人は「選択の余地がない」ほうが幸せに感じるもの

・スケジュールが空いていても、内容次第で「先約があって・・・」と嘘をつくことはあるし、スケジュールが満杯でも、相手次第で上書きする。約束する相手の格でスケジュールは決まる

・視聴者にチャンネルを替えさせないために、「テロップを多用する」「スタジオ画を減らし、ロケ画像を増やす」「『この後とんでもないことがー』とナレーションで煽ってCMに突入する」方策を考え、テレビの見せ方を進化させた

・一般にアイドルのファンは、そのアイドルが駆け出しのころ、一番熱心に応援する。「彼女の名前を世に広めたい」

・一世を風靡したアイドルは、落ちぶれるのも案外早い。反対に、細く長く人気を保ち続けるほうが、当人もファンも幸せ。「売れてほしい」と願いつつ、その思いが叶わないほうが、案外幸せ

・イベントの中身を楽しむというよりも、皆と同じことをしないと不安だから参加しているだけ。「乗り遅れるとまずい」からイベントに参加している

消極的推薦の積み重ねが視聴率15%。タレントで大事なのは嫌われないこと

・会社の本業は、商品の提供と客の満足で売上を伸ばすこと。ところが新社屋に移転すると、そこに邪念が加わる。自分たちのステータスが上がったような錯覚に陥る。そうなると業績が坂を転げ落ちるように悪化する

・人間、「知る人ぞ知る」くらいの存在感が一番いい。業界内で信用があり、有名であればそれでいい

・みんなから一身に視線を浴びたいのなら、容姿は関係ない。毛並みも学歴も関係ない。雑草から、実力一つでトップへのし上がればいい

・ラクをしたいからチェーン店に通う。煩わしい人間関係が待ち受けていそうな店から、足が遠のいている

・ほとんどのアイドルやアーティストは売れてから4~5年が経過すると、大抵失速する。人の才能が花開く期間は、平均4、5年。ヒット作を生み出せるのも、平均4、5年

・自分を失わずに貫いていれば、人生で一度だけスポットライトを浴びる時代がやってくる。それは、向こうから擦り寄ってくる。世間の嗜好と自分の輝きが一致する

・作り手の才能だけでは作品のクオリティは維持できない。時代の空気と合致して、初めてヒット作は生まれる

・本当に優れた商品は、分け隔てなく、人を幸せにしてくれる。ターゲットを絞り込む必要はない。ターゲットは、年齢、国籍、性別、貧富の差を乗り越えた「みんな」



どんな業界でも、今は、ターゲットを気にします。しかし、気にしている間に、ふと見上げると、雲がなくなり、青空がぽっかり広がっているかもしれません。

この青空こそ、透明人間かもしれません。雲に気をとられすぎて、青空がすっかり忘れられている、そんな状態です。

みんながターゲット。これは案外、穴かもしれません。この本を読み、そう思いました。
[ 2010/07/12 08:39 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(1)

『大江戸番付づくし』石川英輔

大江戸番付づくし大江戸番付づくし
(2001/10)
石川 英輔

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相撲の番付表は、江戸時代の形のまま、今に伝わっています。江戸時代には、この相撲番付の合理的形式を借りた「見立番付」というのが大流行しました。

鰻屋、料理茶屋、米の産地などグルメに関するものも多くありましたが、「お金」に関する、儲かる商売(諸商売人出世競相撲)、震災で得する人(世中當座帳)、開国後の物価(諸色高下鑑)、贅沢(花競贅二編)といった面白い番付も多くありました。

この本を読むと、日本人には、ランキング好きという伝統的な血が流れていることがわかります。

この中で、番付とその順位で興味深かく思えたものが10ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・儲かる商売(諸商売人出世競相撲

「大関」 米屋(米の総額は全商品の38%)、両替屋(金銀両替、貸付、手形発行)
「関脇」 唐物屋(輸入商社)、造酒屋(蔵元)
「小結」 材木屋(建築資材商社)、炭屋(燃料商社)
「前頭筆頭」 木綿屋(木綿生地の専門店、)古手屋(古着商)

・震災で得する人(世中當座帳

ひら家住居(にわか普請の家)、あな蔵(地下室)、こけら葺き(木の板の屋根)、わらんじ(草履)、しるし半天(職人の衣服)、どんぶり飯、干物のおかず、二八そば、もも引き

・開国で得する人(當時善悪競

武器職人、古道具屋、軽子(荷物運び)、車力(運搬労働者)、鉄砲鍛冶、人入れ人足宿(肉体労働職業斡旋所)、

・開国後の物価(諸色高下鑑

「物価高になったもの」 白餅米、鰹節、水油(菜種油、綿実油)、紙硯石、下女給金、干鰯など
「物価安になったもの」 白飯米、普請(職人の手間賃)、丈長(髪を結ぶ元結)、入湯銭、セメン(駆虫剤)、年季小僧給金、豆腐など

・色と欲(浮世人情合

女郎を買ふ人、逃げて添ふ人、しりの早い娘、女房のものを女郎にくれる人、三度三度玉子を喰う、富の札買ふ人

・神社仏閣の領地番付(大日本神社仏閣御領

伊勢内宮、伊勢外宮、阿州大麻彦社、周防玉祖明神、豫州大山祇社、備前酒折神社、高野山金剛峯寺、美濃谷汲寺、相州大念佛寺、甲州身延山、宇治平等院、山城月輪寺、山城粟生光明寺

・物産(大日本産物相撲

八丈縞、京羽二重、土佐鰹節、松前昆布、江戸紫、最上紅花、阿波藍玉、丹後縮緬、奈良晒、紀州蜜柑、紀州くじら、越後縮、博多織、宇治茶、三輪素麺、越前奉書、薩摩黒砂糖、浅草海苔、伊丹酒、薩摩上布、加賀撰糸絹、吉野葛、京水浅黄、備中大鷹檀紙

・贅沢(花競贅二編

伊勢参宮太々馳走駕籠、安芸宮島七夷舩廻り、東都川尻川一丸家形舩、京都加茂川夕涼、伊勢古市踊里、清水浮ム瀬ノ貝盃、新地一力鉄燈篭、洛陽四条生簀

・花(草木花角力

四月牡丹花、六月蓮の花、四月芍薬花、五月百合花、九月菊の花、五月紅の花、七月蕣の花(朝顔)、三月櫻草の花、正月梅の花、三月桃の花、十月楓の葉、三月木蓮花、正月椿の花、三月躑躅の花(ツツジ)、三月藤の花、四月卯の花、十月茶山花(サザンカ)



これらは、大関、関脇、小結、前頭の上位のものを書き記しただけで、本当は、虫眼鏡で見ないと見えないようなものまで、番付表にはいっぱい載っています。

さらに、この他にも「江戸のOL」「女房」「いらないもの」「大きなもの」「不思議」など、主観的なランキングが花盛りです。客観的なデータではありませんが、今では貴重なデータです。

江戸時代、何に価値を見出していたのか、何にお金を使っていたのか、何が流行っていたのか。それらを見比べると、今が見えてくるように思います。
[ 2010/07/11 08:21 ] 江戸の本 | TB(0) | CM(0)

『認め上手・人を動かす53の知恵』太田肇

認め上手 人を動かす53の知恵認め上手 人を動かす53の知恵
(2009/06/11)
太田 肇

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著者の本を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」に続き、2冊目です。太田肇氏は同志社大学教授の他に、日本表彰研究所を設立し、表彰文化の普及に尽力されています。人をお金以外の方法で動かす専門家です。

この本では、「ほめる」「認める」「表彰する」ことで、いかに人を動かすことができるかを、わかりやすく説明されています。

大きな仕事を成し遂げるには、「金の力より人の力」。最大限に人の力を引き出す重要なキーワードが、この本の中には満載です。

勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・長期的な有能感や自己効力感は、「ほめられる」より「認められる」ことで得られる。誇張を含んだ「ほめる」ことより、ありのままを認めることのほうが望ましい

・社内表彰で受賞者を決める委員会に異性を入れることで、違う視点から候補者を選ぶことができる。人事評価にも異性の目をとり入れることで、一元的になりやすい組織風土を変えることができる

大部屋オフィスは<日常の承認>にプラスだが、<キャリアの承認>にはマイナス。両方の承認がバランスよく得られるよう、仕事内容の変化に応じてオフィス環境も最適化する必要がある

・成績を公表する場合は上位3分の1以下に。成績の低い者の意欲をかき立てるためには、別の尺度も用意し、上位の者と違う次元の評価を公表し、全員のやる気をアップさせる

・日本人は、今も昔も世間を気にし、世間の中で生きている。その世間による承認が評判である。正しい評判を吸い上げて処遇に反映させることが、いちばん納得を得やすいし、動機づけにも効果がある。「評価」よりも「評判」を大切にすべき

・「コツコツ型」の社員には、日々努力を重ねて成長し、だんだんと認められていくような目標を与えてやることが大切。バッジや制服もステップアップのシンボルとなり、大きな励みになる

・実力を認められたい若者と人格的に認められることにこだわる年配者をうまく組み合わせれば、絶妙なチームワークを発揮させることができる。若者は「できる」、年配者は「えらい」と認めること

・ほめるときはメールやカードのようないつまでも残るものを使い、しかるのはいつまでも引きずらないように口頭で、というのが原則

・表彰には、「顕彰型」(高い業績をあげた者に対し功績を称える。社長賞、功労賞、MVPなど)「奨励型」(陰で善行、地道に努力している者に対し姿勢を称える。努力賞、奨励賞など)「HR型」(日常のよい仕事、ちょっとした工夫などの軽い表彰)がある

授賞理由を具体的に明記すると、ありがたみが増す。功績を顕するものは賞状や盾などに限らない。社内報、社史などに、授賞理由と名を刻むことで、会社への愛着、一体感が強まる

・受賞者を支えた人にも賞を贈るとチームワークがよくなる。サポーターへの配慮が欠かせない

・認めてほしいところを認めるには、自己申告させるとよい。全員に自己申告させると、はしたないという気持ちが薄れる。仲間や関係者に推薦、投票(他者申告)させれば、メンバーの貢献度もわかるので、納得感が得られやすい

・給与をはじめとした処遇は、公平性、安定性を第一に考えて保障し、その上で表彰を含めた承認によってモチベーションを引き出せばよい。表彰は査定に結びつけないのが原則

・仲間との人間関係や職場の雰囲気を重視する職場ではチーム表彰に重点を置く。組織への依存や仲間同士のもたれあいが見られる会社では、逆に個人表彰を増やすとよい

・アメリカ企業は部署ごとに軽い表彰を気軽にとり入れる。日本企業は全社的に体系化した制度をつくり、矛盾や不公平を排除する。体系化にこだわると、運用に手間がかかる。あえて乱雑にしておいたほうが、多様な角度から表彰できるし、序列を気にしなくてすむ



社員のやる気を引き出す表彰制度が、日本の会社ではあまり研究されていないし、有効に活用されていないのは意外に感じました。

お金よりも、公正な評価(評判)の方が、人のやる気を引き出すことを示した著者の研究は、貴重な研究です。

社員がイキイキと働き、業界で地位の高い会社は、表彰制度の効果を研究している会社のように思います。

表彰制度を再考したら、恐ろしく高い効果が出る会社も多いのではないでしょうか。表彰に興味のある方には、この本はおすすめです。
[ 2010/07/09 07:18 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『ずるい人に騙された時どう生きるか』加藤諦三

ずるい人に騙された時どう生きるかずるい人に騙された時どう生きるか
(2008/12/13)
加藤 諦三

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誰でも、日常茶飯事に騙されます。特に、若いときは、騙されて、後悔することが頻繁に起きます。私もよく騙されました。

でも、今振り返ってみると、自分に隙があったから、騙されたということがよくわかります。今は、騙されることは少なくなりましたが、逆に面白みに欠ける人間になったように思います。

騙しにもいろいろありますが、人生取り返しのつかないような騙しは避けたいものです。

この本には、騙しの手口が満載です。参考になる所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「人は皆同じ」というのは、ずるい人たちが好きな言葉。人を騙すのに、これほど都合のよい言葉はない

・人が幸せであるためには「人を不幸にする人」の行動と心理を知らなければならない

淋しい人は、利用されているときでさえ嬉しい。それは、利用されているときに、「認められている」と錯覚するから

・淋しい人は何度でも騙される。一度騙されたからといって、その人が淋しい人でなくなるわけでないから

・ずるい人、人を陥れる人にとって相手は物である。ロボットを操るのと同じ感覚で、人を騙せる

・自分の中に価値を感じている人は、褒められることが、それほど重要でない。褒められてもそれほど気持ちよくならない

・ナルシストや自己蔑視している人は、相手の言葉に飲まれる。ずるい人にもてあそばれ、利用価値がなくなれば捨てられる。しかし、周囲に同情する人はいない。誠実な人はかつていたとしても、すでに去っている

・自分の良いところを見せようとするのは、その人の自信のなさ。自信がないということは「弱い」ということ。弱いと騙される

自己蔑視している人は、働いても、努力しても、自分から自分の価値を下げてしまう。皆に迎合して、皆にとって都合のいい人になる。そして、ずるい人が、その人を安く扱いながら、利益を得ていく

・人間関係で自分の意志がなければ、不安なときに自分を守るために迎合する。その迎合がずるさを呼び寄せる

何を言っているかではなく、誰が言っているかが大切である

・急激な親しさは危険である。すぐに親しさをつくる人も、多くの場合、騙す人である

・見えるところでどんなに親切で立派なことをしていても信用してはいけない。見えないところでその人が何をしているかである

・騙される人の消耗した姿を見ることが、騙す人のエネルギーの源になる。「儲け」がいよいよ近づいてきているのだから

脅す人は条件を出す。許してあげるから「これをして」といった条件を出してくる。条件を出す人は、質の悪い人

・「ちょっとだけ」というのは巧妙な騙しの手口、悪質な言葉。「ちょっとだけでいいですから」と言うときは、最初から計画的に全部騙し取ろうとしている

・取ろうとしているから、全て口で約束する。そして不利なことは、「ちょっとサインだけしておいてください」と言う

・人を利用しようとする人は劣等感の深刻な人が多い。どうしても利己主義になる。人を利用することにやましさとか罪の意識がない。うまくいけば「よかった」というだけのこと

騙される人騙す人との関係は、愛されなかった人同士の共食いみたいなもの。両方とも愛情飢餓感がある

・愛されることが大切で、愛することは眼中にない。つまり、いつも人に何かしてもらおうとしている人は騙される。ずるい人にとって、「これしてあげますよ」と近づくだけでいい

・感情的恐喝をする人は、ある時点で、がらりと態度を変えることができる。態度をがらりと変える人は、悪いことができる人

・「私を信じられないの?」と言うとき、その人は相手を裏切っている、舐めている

・人を本当に深く傷つける人は、いつも「愛や正義の仮面」を被って登場する。そして善良で弱い人を狙う

騙されないためには、「ずるい人と接しないように心がける」ことが何より大切

・「世俗の中でどう生きたらいいか」「どう自分を守るのか」を教えてもらっていない人が、何かを持っていれば、必ずずるい人に狙われる

・騙されたことがないとすれば、その人は何も持っていないということ。つまり、努力もしない、真面目でない、優しくない、才能がない、お金もない。騙すものがないから騙す人が近寄ってこなかっただけ



営業すれば売れるから営業職があるように、騙される人がいるから、騙す人がいる。もっともな論理ですが、騙される人にとっては、たまったものではありません。

この本に書かれているのは、明らかな騙しの手口ですが、怖いのは、見えない「騙しの手口」です。マーケティングもその一例です。人の弱さに上手くつけ込むという点では同じです。

騙しのテクニックに知らないうちに引っかからないためには、騙す人の心理を勉強する必要があります。この本は、騙されないための、よきガイドブックではないでしょうか
[ 2010/07/08 09:21 ] 加藤諦三・本 | TB(0) | CM(0)

『商人要道』倉本長治

商人要道商人要道
(1997/01)
不明

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流通業界に、商業界という有名な出版社があります。この創立者が著者の故倉本長治氏です。

昭和31年~49年にかけて、出版された著作の中で、「商人とは何か」「商人のあるべき道」を問うたものを集めたのが、この「商人要道」です。

商人の心構え、商人の真理を知る上で貴重な資料です。この本の中で、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・正しい商人は、何時も親しくしている周辺の顔馴染みのお客に対しても、特別の待遇をせず、誰彼の比較は行わない

・人に接する商人としては、いつでも微笑して、ニコニコして居られる修業こそ大切

・舵を失った船が波のまにまに、漂うように、目標を失った生温い人も、さまざまな方向へ誘われる

・親鸞は諭す「駄目なら駄目でよいではないか。人間としての正しさにつくことなら、人間として喜んで失敗しよう」

・商人が幸福であるためには、商売を通じ、己の働きによって、世の中の人に、喜び、安らかさ、温かみ、なごやかさ、豊かさなどが、少しでも作り出されているという自覚がなくてはいけない

・商売とは「お客の財布」が相手ではなく「お客の心」こそ本当の狙うべき相手

・商売もお習字を習うのと同じことであり、上手な手本通りやればウマクいく

・営業上の所得税は、商売の糞のようなものである。ご馳走を食べながら糞の出るのを心配したのでは、折角のご馳走が不味くなる

・商店の経営は、毎日が新開店、毎日が再出発、来る日も来る日も希望と期待でいっぱいの新年を迎える時のような心で居られたら申し分ない

・店から上がる報酬や利益が、自分の働きや、店のために投資された資金に対して、正当な額であるという確信がある時、初めて、報酬や利益を天下に声大きく吹聴できる

儲かるということと、繁盛するということとは別である。だが、これを一致させるのが商人の正しい姿

・大切なのは、店という容れ物ではなく、店を動かす精神、その精神を示す商品や値段やサービスにおいてである

・「付近の店で同じ品を安く売っていたら」「追加仕入れした品が安くなっていたら」「同種の品で格安のものが出たら」どうするか。原価意識の上に立つ、仕入原価のみが、売価を決めるものではない。逆に売価こそ、仕入値段を決定すべきもの

・高い値段をつけて商品を売るような店主に限り、店員には安い給料しか払わないもの。だから、商品はなかなか店から出て行かないのに、店員の方はサッサと出ていく

・これで一儲けと思って仕入れてはいけない。お客の喜ぶ笑顔を想い浮かべながら、仕入をせよ

・他の店で買い物をする時に、こうしてもらいたいと思う通りのことを、自分の店のすべての客にしてあげることである

・経営の合理化で一割二割の上昇を見ることはあるが、一躍奇跡的な大繁昌をもたらすことなどあり得ない。しかるに、計数を超えた彼方にこそ、店の大繁昌を招来する原因がある。むしろ、これからの経営には、その原因の追求こそ大切ではないか

商店経営とは、お客の利益を最大にし、店の利益が最低を割らないように調節をとりながら、繁昌に持っていく技術のことである



商売人にとって、耳の痛い話が多いですが、真髄をついていると思います。何年経っても、真髄は真髄です。

商売をしている人にとっては、業態を問わず、参考になる書ではないでしょうか。
[ 2010/07/06 06:32 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『かまわれたい人々』森真一

かまわれたい人々かまわれたい人々
(2009/06/17)
森 真一

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この本の題名は「かまわれたい」となっていますが、本当のテーマは「自由と孤独」です。著者は社会学の教授です。

自由をとると孤独になる。干渉されると孤独にはならない。「自由」を選ぶか「つながり」を選ぶか。両方とも手に入れるのは難しい。そのバランスで人間は生きていかないと仕方がない。

つまり、「自由のある人生」を選ぶか「孤独にならない人生(つながりのある人生)」を選ぶか。言い換えれば、「都会的」か「田舎的」か。「おひとりさま」か「大家族」か。これは、究極のテーマのように感じます。

この究極のテーマを、今の日本人は、どちらに傾いているのか、どちらを選択しようとしているのか。マスコミなどの偏向報道ではなく、現実に日本人がとっている行動が、この本には記されています。

今回、興味深かった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・自由であるということは、「個人として行動可能である」(プライバシーが尊重される。自分で考え、自分の意見を持つことが許される。他者からの干渉を排除できる)ことと「選択肢の中から選べる状態にある」ことである

・ショッピングセンター勝利とシャッター商店街敗北の大きな要因は「価格の差」だが、もう一つの勝利の要因は、店員にかまわれず、「自由」に買い物したいという客の欲求。店員にじゃまされず、ほうっておいてくれる気楽さ

・カーナビやケータイナビを使えば、知らない場所へ行くときも、人に道を聞く必要がない。自分の好きな場所に自分ひとりの力で着ける。情報を持つことによって、人は他者への依存度を減らし、より「自由」になれる

・誰でも不慣れな場所に行くには勇気がいる。失敗して笑われ恥をかいたり、だまされたりなど不安のタネはいくつもある。その分「不自由」。誰かが一緒にいてくれたら不安を感じずにすむ

・見つめられ、かまわれることで人生がスタートしているため、一生見つめられ、かまわれることを求める。「かまわれない自由」が大切でも「かまわれたい欲望」はついてまわる。現代人は「かまわれたくない」と「かまわれたい」の間で葛藤するようになった

・「かまわれない自由」を最大限に楽しもうとする「おひとりさま」の場合、「孤独」になってしまうリスクもとりわけ大きい。ハイリターン、ハイリスクである

・「男性おひとりさま」は「かまわれない自由」は愛するが、「かまわれない孤独」は愛せない。男性は「かまわれない自由」の「いいとこ取り」しようとする

・経営者は孤独。自分がする意思決定の影響は社員全員に及ぶ。その決定を行う義務と責任に押しつぶされそうになる。誰かにかまってほしいと弱気な自分が顔をのぞかせるのはそういう決断のとき。占い師に頼るのも不思議ではない

・新入社員は先輩に「かまわれない」。新人は何をすればいいのか途方にくれる。そこで、新人は逆に先輩を「かまう」。先輩がうるさがっても「かまう」のをやめない。そうすることで新人はやる気を周囲に知らしめ、先輩社員に受け入れられていく

・1975年から90年の間に、週60時間以上働く超長時間労働者は380万人から753万人に増えた。同時に週35時間未満の短時間労働者も353万人から722万人に増えた。つまり、1980年代に長時間労働者と短時間労働者の二極分化が起きた

・製品やサービスに対する顧客の要求水準が高度化し、それに対応する中で業務の専門性も深化、複雑化してくる。その結果、社員個々人のつながりも、仕事も分断されるようになった。まじめに成果を出そうとしただけなのに、ギスギスした職場になった

・適当にやることができないのが会社人間。全力でするか、全くしないか。オール・オア・ナッシング。「ウザい」と思われた会社人間は「だったらつながりなんかどうでもいい」といって、意地になってひとりでがんばろうとする

・イエのあちこちに神さまがいたら、年中行事に追われ「自由」がなくなる。神さまをかまってあげないといけないので、神さまに拘束される。伝統的な行事も楽しくなくなる

・儀礼は社会全体の節目としての規制力を弱めていき、個々人や集団ごとに選択される行事へと変化している。この役立つ儀礼に選ばれたのがクリスマス

・「かまわれない自由」は簡単に「かまわれない孤独」へ転化する。「自由」と「孤独」はセットになっている。「自由」を楽しみたいのなら「孤独」を覚悟しなければいけない

・「かまわれない孤独」に陥りたくない。かといって「かまわれない自由」は手放したくない。この葛藤をペットが解決してくれる。人間との間では、淡いつながりしか持とうとしないタイプは、ペットとは濃密な生活をする

・ペットの飼い主は「○○ちゃんのおかあさん」「××ちゃんのおとうさん」と呼び合っている。飼い主同士、互いのプライバシーに触れないもの。相手の実名、仕事などは聞かない。「かまわれない自由」を尊重し合う淡い関係が、ペットを縁にできあがっている

・アイドルはペットと同じく、新たな淡い関係をつくるのに効果を発揮している。ヨン様ファンは、お互いバラバラの地域に住んでいて、自分の生活範囲に侵入してくる可能性が低いからこそ「ヨン様」を通じてプライベートな話ができる

・キャラでつながろうとする人は、周囲の人への不信感や自分を守る意識の強い人。距離をつくるために、キャラでつながろうとする。キャラ的関係は、濃密なようで、実は淡いつながり

・ひとりの人に高い期待を集中させると、関係の破綻や「かまわれない孤独」へといたるリスクがある。そのリスクを分散させるために、期待分散させておく。金融商品を買うときと同じ

・「自由」が道徳になると、暴力につながりやすくなる。道徳だから、みんなにこの道徳を広めようとする人が現れる。「自由」を道徳とみなす人は、人々におせっかいを焼く

・野垂れ死にはいや。親しい人に囲まれて死にたい。周囲の人にほめられたい。嫌われたくない。友達をたくさんつくりたい。友達と仲良くやっていきたい。こういう人たちは、自由に生きるのに向いていない。「かまわれない自由」を求めないほうがいい

孤独死を覚悟してまで「かまわれない自由」を守ろうとする人が多数いる。迷惑をかけずに、いかに孤独死するかが、「かまわれない自由」を守りたい人の課題



仲間意識やつながりを重視する人、つまり「かまわれたい人々」。干渉されずに自由に生きたい人、つまり「かまわれたくない人々」。その両方とも増えているように思います。

おせっかいな人が増えると、おせっかいされたくない人も増える。この両者だけが際立ち、そのどちらとも言えない人が踏み絵を迫られている社会なのかもしれません。

商売の視点で見ると、「かまわれたい人」を想定して、マーケティングを行っている場合が多いように思います。でも、実は「かまわれたくない人」こそ、巨大なマーケットを形成しているのではないでしょうか。

この本は、世間、マスコミ、識者の良識に惑わされずに、真の現代人の姿を知る上で、非常に役立ちます。筆者の良識に感謝したいと思います。
[ 2010/07/05 08:53 ] 森真一・本 | TB(0) | CM(0)

『危機突破の経済学』ポール・クルーグマン

危機突破の経済学 (Voice select)危機突破の経済学 (Voice select)
(2009/06/02)
ポール・クルーグマン

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著者は、レーガン政権で大統領経済諮問委員会を務め、現在、プリンストン大学教授です。2008年には、ノーベル経済学賞を受賞し、ニューヨークタイムズのコラムニストでも有名です。

この本は、アメリカで超有名なクルーグマン教授が、日本の経済とアメリカの経済が、今後どうなっていくかを予測し、どうすべきかを提言する内容となっています。

日本経済が「失われた10年」から「失われた25年」にならないためには、何が必要かも詳しく説明されています。

この本の中で、気になった箇所が多々ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・バブルは自然発生するねずみ講。資産価格がどんどん上がり、お金持ちになると信じ、懐疑的な人が馬鹿であるかのように見え始める。バブルを完全に防ぐ方法を考え出した人はまだいない

・主要な通貨はすべて下がる必要がある。円安になることはいいこと。ドル安もユーロ安もいいこと

・通常インフレ率は2%に設定すべき。ただし、日本経済は構造上の弱点があるので、正常時でも、4%の高いインフレ率を必要としている

・日本は結果的に米国債に注ぎ込まれるお金を提供すべき。それは円安にもつながること

・ドル現金の60%は、アメリカ以外の地域にある。世界経済が成長すると、アメリカの収入が増えることになり、貿易赤字の一部をリカバーすることができる

・日本は資本輸出国でなければならない。それは需要の点で輸出型にならざるを得ない

・オバマは経済を十分理解できるほど頭がいい。しかも経済に得意な人たちをブレーンに持っている

・刺激策が「いくら必要か」ということ以上に、「いかに早く起動させるか」ということがさらに重要。規模よりスピード

・GDPの70%まで膨らんだアメリカの個人消費(アメリカの歴史上の平均は66%)は今後急激に落ち込む。世界にとって大きな問題は、何がアメリカの個人消費に取って代わるのかということ

・アメリカには自己破産が非常に多いが、それはクレジットカードでモノを買いすぎたからだけではない。いい学校がある地域に家を買うために、支払能力を超えて借りたという面もある

・アメリカの過当競争社会、すなわち、よりお金持ちに追いつこうとする強い気持ちが、貯蓄率を低くする原因の一つ

・日本の格差社会の進行は、アメリカの経験から言うと、それは社会に破壊的な影響を及ぼす可能性がある。国民の社会的一体性を蝕む

・アメリカの盤石な成長産業は、「病院及び医師による診療サービス」「処方箋薬」「医療保険処理にかかる運営」「老人ホーム、訪問による医療サービス」のヘルスケア。ポスト自動車産業はヘルスケア産業で、今後大きな市場になるのは間違いない

・2082年におけるアメリカのヘルスケア産業での消費が、GDPに対して50%近くにまでなる可能性がある

・自動車産業は危機が終わるまでの橋渡しをする意味で、しばらく生かしておくべき。最後には消えるとしても、いまは時期が非常に悪い

・最善のシナリオは、新しいテクノロジーを利用した投資ブームが全世界に大規模に起きること。それが起きれば、いまの問題はほとんど解決する。・景気循環を見れば、新しいテクノロジーが出てくると大きな経済不況は終わる

・ロシアがグルジアに侵攻し、大勝利を収めたが、ロシア人に利益をもたらさなかった。戦争をした結果、投資家の信頼を失った。今は、経済危機だからといって戦争を始められない

・株式市場は、多くの要素に影響されるので、指標として使えない。株価は、経済に実際に起きることと関係が薄い。株価よりも、長期国債の金利にできる限り注目しておいたほうがよい。情報を持った投資家たちが景気回復を期待すると、長期国債の金利が上がる



この本を読むと、通貨安、インフレターゲット、基軸通貨、ヘルスケア産業、GDP比個人消費、貯蓄率、格差社会、新しいテクノロジー、長期国債金利など、著者の見方や考え方がよくわかります。

日本にいるとアメリカの正確な情報がなかなか入って来ません。マスコミ偏向情報が多いように思います。

感情的なアメリカ批判をするのではなく、経済大国アメリカをまず認め、そのアメリカに、どう対応していくのかを考えるのが理性です。

アメリカでトップレベルの著者の発言は、アメリカが今後どう進もうとしているのかを示唆してくれます。

海外からの視点で、日本を客観的に見るのに、この本は役に立つのではないでしょうか。
[ 2010/07/04 08:01 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『人生論ノート』三木清

人生論ノート (新潮文庫)人生論ノート (新潮文庫)
(1978/09)
三木 清

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この本は、大学生の時(今から30年前)に読んだことを記憶しています。今、どう思えるのか、興味があって読みましたが、全く別物の書に感じました。

今、読むと、この本が名著と言われる所以がよくわかります。しかも、この本は、戦前の昭和13年(今から70年以上前)の「文学界」に掲載されたものというから、これまた驚きでした。

今回、この本を読み、気づかされた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・幸福は表現的なものである。鳥の歌うが如くおのずから外に現れて他の人を幸福にするものが真の幸福である

・懐疑は知性の徳として人間精神を浄化する

・自分では疑いながら発表した意見が他人によって疑っていないもののように信じられる場合がある。そのような場合、自分でもその意見を信じるようになる

虚栄心というのは自分があるもの以上であることを示そうとする人間的なパッション。仮装にすぎないが、一生仮装を通した者において、その人の本性と仮性とを区別することは不可能に近い

・人間が虚栄的であることは、人間が社会的であることを示している。つまり社会もフィクションの上に成立している

・すべての人間の悪は孤独であることができないところから生ずる

・人は軽蔑されたと感じたとき最もよく怒る。だから自信のある者は怒らない

・相手の怒りを自分の心において避けようとして自分の優越を示そうとするのは愚かである。その場合、自分が優越を示そうとすればするほど、相手は軽蔑されたのを感じ、その怒りは募る。本当に自信のある者は自分の優越を示そうとはしない

・孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にある

・嫉妬は、嫉妬される者の位置に自分を高めようとすることはなく、自分の位置に低めようとするのが普通である。それは、本質的に平均的なものに向かっている。愛が、その本性において、常により高いものに憧れるのと異なっている

・個性的な人間ほど嫉妬的でない。個性を離れて幸福は存在しない

・幸福は各人のもの、人格的な、性質的なものであるが、成功は一般的なもの、量的に考えられ得るものである。だから、成功は、他人の嫉妬を伴いやすい

利己主義者は期待しない人間である。従ってまた信用しない人間である。それゆえ猜疑心に苦しめられる

・ギヴ・アンド・テイクの原則を期待の原則としてではなく、打算の原則として考えるものが利己主義者である

・主義というものは自分で称するよりも反対者から押し付けられるものである

・秩序は生命あらしめる原理である。そこには常に温かさがなければならない。人は温かさによって生命の存在を感知する

・希望は欲望とも、目的とも、期待とも同じではない。決して失われることのないものが本来の希望である

怠惰我執傲慢ほど、自己の本質の理解から遠ざけるものはない

・自己を知ることはやがて他人を知ること。自らの魂が達した高さに応じて、周囲に多くの個性を発見していく。自己に対して盲目な人の見る世界は灰色である



感情的なことを、論理的に必死に説明しようとしているのが、この本のような気がします。
だから、哲学者の本でありながら、時代を超えて、多くの人に読まれてきたのだと思います。

人間は、感情的に生きています。論理はその後についてきます。ところが、支配する側、統治する側は、論理を先に持ってこようとします。

肌に合わない、虫の好かない、違和感を覚えるといった感情が生じたとき、なぜそう感じたのかを考えることが知性ではないでしょうか。

そして、筆者が言うように「懐疑は知性の徳として人間精神を浄化」していくのだと思います。久しぶりに読んでも、さらに良さを感じることができた1冊でした。
[ 2010/07/02 08:44 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)