とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『カリスマ教師の心づくり塾』原田隆史

カリスマ教師の心づくり塾 (日経プレミアシリーズ 9)カリスマ教師の心づくり塾 (日経プレミアシリーズ 9)
(2008/07/09)
原田 隆史

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著者は、大阪市内の公立中学に20年間勤務し、その間、荒廃した学校の立て直しに力を注がれました。

また、陸上競技部を独自の育成手法で、13回の日本一に導きました。現在は、大阪、京都、東京に教師塾を開き、8年で1600人の教師が受講されるほどになっています。

元体育教師の実績に裏付けられた、一本筋が通った自信に満ちあふれた理論に心酔される方が、教育界以外にも多いようです。最近は、企業研修にも引っ張りだこのご様子です。

今回、この本を読み、感心した箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・しんどい状況の中で、背筋を伸ばし、基軸を立て、両足で地面に根を張って教育していくには、理念がないとできない。難しい状況に出合った時、理念思いがない者は乗り切れない

・「ロジックツリー」の手法で、各々が理念を作り上げる。ツリーのトップには「指導理念」、その下には「指導理念」を実現させるための「指導方針」が三つ。三つの「指導方針」に、三つの「行動方針」。「行動方針」には五項目の具体的指導内容。計45個の指導内容が並ぶ

・意志の力は、客観的な数字として結果を出す力のこと。成果を上げられる教師は、「意志の力」が強い。しかし、成果を追い求めて厳しくするだけでは、子供は教育できない。そこに必要なのが「愛の力」。簡単に言えば、「みんな仲良くする」こと

・教師塾の方針は、目の前の行動、態度をちょっとだけ変えるというもの。しかし、そのことによって、心が変わる。教師の心が変われば、生徒の心も変わる。主体変容とはこのこと

・実践している三種の神器は、長期目標設定用紙ルーティンチェック表日誌の三つ

・大切なのは、自分で目標を立てること。そして、達成目標を、最高の目標、中間の目標、絶対できる目標と三段階に分けて記すこと。さらに「経過目標」や「目標達成時にどんな人間になっているか」「目標達成によって得られる利益は何か」も書き入れる

・具体的行動として、毎日継続して繰り返し行う「ルーティン目標」と、いつまでにやると決めて行う「期日目標」がある。最低ルーティン目標が10個、期日目標を10個決める

・世の中の成功者の一つの共通点は「日誌」を書いていること。提唱している日誌は、前日に「翌日の行動予定」「その日に必ずやること」を書き込む。当日は一日の自分の行動を評価する。8項目で40点満点とし、その日の行動を評価

・「今日立てた目標の中で、やり直しができたらどれをやる?」という問いかけは、反省をさせるのに威力抜群。「ダメだったところは?」と問いかけてもソッポを向かれるだけ

・弱者は、まず差別化の一点突破で勝たなければならない

・スキル練習は、格好いいし楽しい。でも、上を目指せば目指すほど、泥臭い練習が大切。それをよく分からせないといけない。企業研修で大人たちを教えていても同じことを感じる

・人は自分のためだけに頑張ろうとしても、力は出ない。人のため、仲間のため、誰かのため、そういうものを背負った時に、爆発的な力が生まれ、奇跡を成し得る

・教育指導には、4つの原則がある。「1.教育理念をしっかり持つ」「2.態度教育を徹底する」「3.行動の意味づけを教育して価値観を高める」「4.知識、技術、ノウハウの専門教育を行い、成果を上げる」

・生徒には、まず、「挨拶」「時間厳守」「すさみ除去」の3つのことを徹底してやらせる。掃除をすることで身の回りからすさみを取り除き、それによって心のすさみも取り除く

・清掃活動では、まず生徒に「一人一役」を割り振る。3、4人でやらせ、誰がどの役割かをはっきりさせる。掃除の手順も決める。終わった時には担当者がチェックする。役割が決まれば責任感が芽生える。目標時間を設定すればチームワークがよくなる

・人にやる気や元気を与えるものはストローク(人と人との肯定的な関わり)。笑顔で20秒間に3つのストロークを打てるようになったら、教師としてのコミュニケーション能力は上出来

・「褒めたら子供は育つ」と言われるが、心のこもっていない浅い褒め方で、人が育つわけがない。自分の理念、基準を持って、ズバッと切り込んでいかないと、相手の心に届かない

・カウンセラーは相手の心を聞き癒す。それは優しい支援。生徒指導主事は、ルール、マナー、校則、規範を守らせる厳しい指導を受け持つ。厳しさと優しさの両方が必要

・今の若者は「生き方モデル」に飢えている。本来は教師が生徒の「生き方モデル」にならないといけない。主体変容(自ら変わることで相手を変えろ)は、生きた価値観教育

・「有能感を高める」(人前で褒める)「統制感を高める」(できそうだと思わせる)「受容感を高める」(居場所を与える)の3つの刺激で、やる気を高める

・人間は、肉体的ブレーキがかかる前に、必ず心理的ブレーキがかかる。逆だったら、気づく前に死んでしまう。心が「もうダメ」と言っても、実は頑張れる

・いい教師は生徒の基本情報をよく覚えている。いい教師は、相手のことを考えている。生徒が言ったことを考えて、その上で質問する。そうすると返事も増えてくる

理想の集団であれば、悩みを茶化したり、足の引っ張りをしないから、大いに悩みを語ろうという人がすぐ出てくる

・どんな集団にもA型人間(関わらないのに成果を出せる人)B型人間(関わってやれば伸びる人)C型人間(関わってもなかなか結果が出ない人)の3種類の人間が存在する。生徒で見ると、A型10%、B型60%、C型30%くらいの割合

・集団を改革するキーポイントはB型にある。この60%の大グループがA型に向かうか、C型に向かうかで集団の良し悪しが決まる

・A型をリーダーにB型を組織すれば、B型グループがA型に向かっていく。集団の70~80%が生き生きと動ける形になると、残りのC型も生き生きとしてくる。足の引っ張り合いをするのではなく、お互いに高め合っていける集団になる

・A型の生徒には「自立的指導」(育成不要、権限移譲)、B型の生徒には、「対話的指導」(ティーチングとコーチング併用)、C型の指導には「独裁的指導」(マンツーマン指導)で良くなってくれば「父性的指導」(ティーチング)。タイプ別に適した指導方法がある

馴れ合いの集団にいる生徒ほど携帯電話の料金は高くなる。理想の集団にいる生徒の携帯電話の料金は安い

・ユニフォーム、ロゴマーク、理念の唱和、これらはすべて帰属意識を高める道具。洗脳のようなもの。帰属意識が高まらないと集団は次の段階に進めない。さらに、帰属意識を高める手法に「栄光浴」がある。集団の誰かが輝いて、その栄光に浴させる



「関わらないのに成果を出せる人(10%)」には自立的指導、「関わってやれば伸びる人(60%)」には対話的指導、「関わってもなかなか結果が出ない人(30%)」には独裁的指導後に父性的指導というタイプ別指導法にはもの凄く共感しました。

実践を積んだ著者の記述により、以前から、そうではないかと思っていたことが正しかったとわかり、自信になりました。

問題児の多い中学校を立て直し、修羅場を経てきた教育のプロの言葉には重みがあります。企業向けの教育研修者とは段違いのレベルです。

義務教育の生徒は、入れ替えることも、辞めさせることもできません。もちろん、報酬でやる気を高めることもできません。

そういう逃げ場のない悪条件の中で、教育の成果を上げる教師は本当の聖職者だと思いました。

この本は、教育に携わっている職種の方にとって、絶好の参考書になるのではないでしょうか。
[ 2010/06/29 08:25 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業』夏野剛

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)
(2009/07)
夏野 剛

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著者はiモードの生みの親です。日本のネット業界の現状にお怒りです。確かに言わんとすることはよくわかります。

この本を読むと、日本のネットビジネスの寂しい現状が見えてきます。この2、3年で、世界は急激に変化してきているのかもしれません。

日本のネットビジネスの現状が理解できた箇所が10箇所以上ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「自分の趣味に合った人」に出会いたいと条件を絞って人を探すのに、ネットは抜群に威力を発揮する。さらに自分の情報を発信することで、自分と合いそうな人と出会える可能性が飛躍的に高まる

・「ウェブだから何か新しいことをやろう」という発想ではなく、「自分のビジネスをウェブを使ってどう強めるか」の方が重要

・「買い物の最初または途中に個人情報を登録させるサイト」は最低のシステム。これは完全に企業側の都合であり、システムの都合に合わせた供給者主義

・DMは美しい写真や美辞麗句を並べ、受け取った方が不愉快にならないように最大限の気を遣うのに、メールマガジンは、どの客にも同じ内容のニュースを適当に垂れ流しているだけ

・リアル店舗で「当店のメンバーにならなければ、買い物ができない」などと言ったら、その店はもう終わり。先に買い物をさせて「特典があるからメンバーになりませんか」と勧誘するのが当たり前。ネットはその工程が逆になっている

・ケータイ大国日本でも、革新的な携帯端末は生まれていない。日本企業の場合、リーダーがビジネスのディテールを知らない。知らなくてもリーダーが務まってしまう組織構造になっている

・ネットビジネスは「寡占」になりやすい。最初にサービスを開始して走り続け、一番最初に「クリティカルマス」(あるラインを超えると顧客が一定期間離れない)に達する

・ネットショッピングに向くものは、「反復購買系」の商品。例えば、サプリメント、ダイエット食品、電池、電球など。また「正確なサイズを測らなければならないもので、しかも急を要するもの」。例えば、カーテン、カーペットなど

・ネットショッピングがフォローしきれない分野は、どういうものを買いたいか決まっていない、「決め打ちできていない商品」例えば、洋服など。それと「高額商品」例えば、宝石など

・ウェブの場合、店頭に来ない人の購買を喚起できる。例えば、ワインショップ。一度購入すると、店舗からのメールマガジンが来たり、自分で問い合わせがしやすい。店舗とのコミュニケーション頻度が抜群に高くなる

・インターネット通販市場は2.2兆円弱、モバイルは0.3兆円弱。併せても民間消費支出のわずかでしかない。しかし、Eコマースは、今後10倍以上に伸びていくことが考えられる

・ネットを使いこなしていない人は、どんなに啓蒙しようが、どんなに環境を整えようが、使いこなせるようにならないもの。ウェブビジネスは、そういった層に照準を合わせてはいけないし、合わせても無駄な努力というもの



著者が怒りをぶつけているということは、この業界は、まだまだ伸びる余地があるということかもしれません。

見方を変え、やり方を違えるだけで、探せばチャンスがあるように思いました。
[ 2010/06/28 08:11 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『祈りの力-願望実現へのアプローチ』中村雅彦

祈りの力―願望実現へのアプローチ祈りの力―願望実現へのアプローチ
(2009/02/06)
中村 雅彦

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私の父親は、町内の老人会の会長をしています。最近は、老人が増えているのに、老人会に入る人が少なく、年に一度の老人会主催のバスツアーはガラガラのようです。

昨年は、善光寺御開帳のツアーを企画したのですが、人が集まらなくて嘆いていました。ところが、数日たって、「バスがほぼ満席になった」と言って喜んでいます。

「なぜ?」と聞くと、「町内の拝み屋さんに頼んだら、20名集めてくれた」と言うではありませんか。「拝み屋さんって何?」と聞くと、拝み屋さんとは、祈祷師の別称ということでした。

参加者の20名ほどの信者の住所は、3県にまたがっていました。それだけ広い地域の信者を集める拝み屋さんが、昔から町内にいたとはびっくりでした。

話は長くなりましたが、今回紹介する本の著者である中村雅彦氏は、心理学者で元愛媛大学教授です。現在は大学の講師をしながら、拝み屋(プロの祈祷師)をされています。

奥四国の神社で修業を積み、神職の資格を持つ「拝み屋さん」です。この本の内容は、少しオカルト的なところもありますが、学者だけあって、それを、できるだけ論理的に説明されています。

この本を読み、面白く思えた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・拝み屋は一種のセラピストであり、カウンセラー。祈祷自体が「相補代替医療」の一種。ある意味では、医師に近い

・拝み屋というのは、相手の幸福を願う「祈祷」という表の部分だけでなく、「呪い」という裏の面もある

眷属(神のお使いをする狐や蛇といった霊的存在)とは、人間のイメージがつくった想像上の産物。その想像上の産物が「意識エネルギー」を持って、神社であれば神社の場を形成している

・「気を操る」「念を操作する」「術を使う」これが祈祷師の三大スキル

・意識とは、集合意識が土台にあって、そこに個々人の意識がポコッ、ポコッと水の泡のように出ているイメージ。個々人の意識が集合意識を通して、相互リンクしている感じ

・運気上昇の真っ最中なら、「守りの力」が働いて、多少の恨みつらみなどは跳ね返してしまう

宇宙との一体化を瞬間風速で経験するのは、ある程度誰でもできる。しかし、それを維持するのは、ものすごく難しいこと

・祈祷師は気合いがないと拝めない。思いっきり気を入れているから、格闘技とかアスリートが試合に臨む前みたいな雰囲気に似ている

・利害とか利益のことを考えていると全然効果が出ない。本当にその人のことを思う愛他的な精神慈悲の気持ちがないと通じない。プロの祈祷師には、寿命を使いきって、死ぬ人も実際にいたりする

・祈祷師は拝んでいる間は「変性意識状態」になる。そのときはまったくといっていいほど自我はない。自分という感覚もない。ひたすら拝んでいるだけ

・祭りも変性意識が起こっている。大阪のだんじりとか、諏訪の御柱とか、祭りに参加している人たちは狂気の世界に入っている

・お仏壇か神棚がある家というのは、ハッピーな家が多い。それは、社会心理学の文献で研究結果として統計がちゃんと出ている

・神頼みというのは「後方支援」的な意味合いがある。自分が何をする、その代わりにお願いするという気持ちが必要

・警察官とか教師とか、正義感を強く持つ必要のある職業の人、あるいは正義感、責任感の強い人は、どうしてもシャドウが強くなる。善人であろうとすればするほど、深層心理では極悪人の自分が強くなってしまう

・シャドウに向き合うために、一番簡単なのは、自分と同性で、一番嫌いなタイプの人間と仲良くすること。自分が一番虫の好かない「こんな奴大嫌い」みたいな相手が自分のシャドウ

祈りが叶いやすい人は、完全にビジョンを作る力が強い人。想像力、イマジネーションが強い人。それから、気の強さ念の強さ。善悪は関係ない

・男性は念じる力というか、念自体がはっきりした形で出てきづらい。しかし、思ったことをそのとおりに起こすという、目標達成能力は男性の方が強い

・願望達成の祈りは、夫婦とか、カップルで祈るとより効果が出る

・いろんな神社を回ってみることが大事。佇んでみて、いい感じ、ぽかぽかしてくる、つまり体が温まる感じがする場所は、とてもいいところ。自分に合うところ



人は、自分のために、祈ってくれる人がいたら、うれしいし、心強くなるものです。自分の幸せを祈るだけでなく、他の人の幸せを祈ることが大事だと感じさせられました。

それが無理でも、一生懸命、その人のことを考えてあげる、思いやる。これも祈りに近いものがあるのではないでしょうか。

この本を読むと、形式的な文面ではなく、本当に、「ご多幸をお祈り申し上げます」という気持ちが大切なことがわかります。

祈りの力」が偉大であることを改めて教えてくれる書です。
[ 2010/06/27 09:53 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『僕は人生についてこんなふうに考えている』浅田次郎

僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)
(2006/04)
浅田 次郎

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NHKのBSで1月より放送されている「蒼穹の昴」を毎週欠かさず見ています。中国の清朝末期の難しい時代を大きなスケールで描いた、浅田次郎さんに感服しております。

しかも、「蒼穹の昴」は、「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞をとる前の作品です。このエネルギッシュな創作意欲が、どこから湧いていたのか興味と関心がありました。

氏の人生観について書いたものがないのかを探していたら、この本を見つけました。

早速、読んでみると、そこに著者の固い意志や強い性格が数多く見受けられ、創作意欲の源を知ることができました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・根底に、知識と努力があった上で初めて、勘が閃くというのは、人生すべてに共通すること

・「食えない苦労」と「生命の危機」の二つの心配さえなければ、誰でも「幸福な人間」と言うことができる

・労働が善行で、遊びが悪行だとする意識を改革しなければ、幸福の実感は永遠にわれわれのものにならない

・襲いかかった不幸の有様をどのように記憶するのか、幸福がもたらされた原因と理由をどのように分析するのか、これがまことの学習であろう

・金で買えないものがあるってことを、貧乏人はよく知っている。それが貧乏人の有難さというやつ

・善人ばかりと付き合って退屈するか、悪党と付き合って泣き笑いするか、どっちが得かは、棺桶に片足つっこんでみなければわかるまい

・メスは受胎したとたんに愛したことも愛されたことも忘れて母になる。そうでなければ種を維持することはできない。逆にオスは愛し愛されることにこだわり続ける。これもまた、そうでなければ種を維持することができない

・世の中には自分のことを差し置いて、他人の心配ばかりする人間が多すぎる。自分のケツも拭けないやつが、どうして会社のためだとか、公共のためだとかに走り回れるのか。自分のことがしっかりしていれば、世の中良くなるに決まっている

・底辺に行けば行くほど人間は明るくなる。逆に上に行けば行くほど人間は暗くなる。永遠のお坊ちゃまみたいな奴がいちばん暗い。本当の笑いはハイソサイエティの社会の中にない。涙も知らないから、笑いも知らない

・死んでもいいというのと、死にたいというのは大違いだ。最高の男と最低の男の違いだ。一緒くたにしてはいけない

・人生の経験談を見聞きしていると、必ず共通しているのが、いちどハネた後にやってくる「冬の時代」で、この挫折を克服した者が真の成功を勝ちうるという図式がある

ドンブリ勘定でやっているヤツは、勝負事に絶対に負ける。セコイくらいの金銭感覚を持っているくらいでちょうどいい

・競馬でも麻雀でも、負けるヤツを見ているとわかる。負けている人はグチり始める。悪態をついた時点で負け

成功の感覚は「これは行けるかもしれないぞ」である。失敗の感覚は「もうダメだ」である。勝利の実感も満足に味わえぬまま劣勢に立った者は、ヤケクソになる

・土地や家に愛着なんか持ってはいけない。たかがクソたれて寝る場所である

・「力こそ正義、富こそ幸福」というアメリカ流合理主義を讃美するわけではないが、「権力は悪蓄財は不善」とする日本人のモラルにも異論がある。サクセスストーリーを思い描く権利を奪われた日本の子らは、長じて悪い権力者になり、不善を働きつつ蓄財をなす

・「貧乏は罪悪である」というのは、かなり的を射ている。私はかつて「赤貧洗うが如き」などという立派な貧乏人に会ったことがない

・貧乏人は犬や猫と同じで、与えられたものを食うしかない。まずくても、腹をこわしそうな気がしても、生きるためには目の前のものを食うしかない。ガキの時分からそういう暮しをしていると、習い性になって、他人の言いつけに逆らうことを忘れる

・神頼みとは、「自分はこうします。願わくば照覧あれかし」と自分の心に誓いながら、神に語りかけること。神仏に祈りを捧げるには、「~にしてください」ではなく「~になります」と言うこと

・俺がおまじないをしてやる。「忘れろ、忘れろ、忘れろ」。苦しみは片っ端から忘れて行かないと、人間は生きてはいけない。全部忘れたら、希望が残る

・真の努力をした者は己の努力の至らなさを知る。だからその結果、どれほどの名望を得ようともそれを容易に信じようとはしない。自分を取り巻く人々のすべてが、自分より優れた者と考えてしまう

・個性は経験によって獲得される。平穏無事な人生を歩んできた人は、その性格まで平穏無事、没個性的。波乱万丈の人生を送ってきた人は、喜怒哀楽の残滓を体内に蓄積して個性的。しかし、個性と能力は別物だから、人生経験が社会評価につながるとは限らない



著者の知識の量と努力する時間が尋常でないように感じました。何かと常に闘っているようにも思います。しかも、勝負に出ることができる、勝負師的な勇気も持ちあわせられています。

精一杯やるだけやったら、後は運に委ねる潔さ。これも著者の創作活動に欠かせない要素ではないでしょうか。

クリエイティブな仕事に携わる人に、おすすめできる1冊です。
[ 2010/06/25 07:27 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『人生、しょせん気晴らし』中島義道

人生、しょせん気晴らし人生、しょせん気晴らし
(2009/04)
中島 義道

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著者の本を5冊持っていますが、日本社会の中で成功を夢見る人には、著者の作品はあまりおすすめできません。

しかし、真実を知りたい人、教養を深めたい人、成功を考えない人には、面白い書になるかもしれません。読む人によって、毒にも薬にもなります。

中島義道氏は東大法学部卒の哲学者です。ウィーンと日本を往来されています。著書を読む限り、日本では珍しい、束縛されるものが少ない、真の哲学者でないかと思います。

毒をなめても大丈夫という方には、ためになることが多く書かれています。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・五十歳のとき、「どうせ死んでしまう、でも・・・」ではなく、「どうせ死んでしまう、だから・・・」という構文にそって生きていこうと決意した

・他人から嫌われてもいいから、儀礼的な、何のメリットもない人とのつき合いは清算する、苦痛でしかない社交や式典は避ける、年賀状など儀礼的習慣は撤廃する、すなわち、世間的雑事を削りに削って、残された膨大な時間を自分のためだけに使うようにした

半隠遁の美学の基礎は「悪いもの、厭なもの、不快なもの」を徹底的に避けるという一点に凝集される

・五十歳を過ぎたら、自分の信念と美学を貫き、それに合うものにはたっぷり時間や金を使い、合わないものは次々に削り取るという、徹底的に自己中心的な「ミニマリズム」を実現するのもいい

・真面目な顔つきで「未来社会の倫理」とか「地球環境問題」とか議論している人たちは、みな、あと五十年したらこの世にいない。自分が死ぬことのほうがよほど差し迫った問題。みんな自分が死ぬことなどどうでもよく、未来があると信じて語り続けたいだけ

・哲学者たちは真理を求め、善を求め、そして勝手な答えを提出して、みなチリになってしまった。これって一体何なのだろうか?パスカルの言うように、すべてが「気晴らし」。サルトルの言うように、すべてが「無益」なのだと確信する

・子供は、他人を理解する努力をせず、他人が理解してくれないと駄々をこねる。他人の悪口を言いながら、自分が言われると眼の色を変える。大人とは、「善いこと」「立派なこと」をする人ではなく、「他人を理解する」「他人に理解されないことに耐える」人のこと

・現代日本の学生は、自分の分をよく知って、現実を直視して、堅実に、まじめに生きている。歳になれば、みんな実現不可能な夢を語れなくなり、身の丈に合った無味乾燥な話しかできなくなる。急いで分別くさくならなくていい

・哲学は常に人間の基本的な枠組みに対して疑いを持つこところから出発する。大多数の人がきれいごとで済まそうとすることを切り崩していく。そういう信念に従って発言すれば、それはほとんど不謹慎な発言になり世間から袋叩きになる

・学問というものは努力が要り、高度な知識を必要とし、理解することは容易ではない。しかし、テレビに出る学者は、普通の人にわかるようにと茶化されながらも優しく対応する。「あなたにはわからないでしょう」とはっきり言ったっていい

・学問を含め、すべてを庶民的な視点で見ていこうとするから、お笑い系タレントがテレビを席巻する。無知な私にわかるように学者や専門家は話すべきだといった要求を出す人がのさばっている状況がある

・正義感あふれるコメンテーターたちは、魔女裁判のときに「魔女だ、魔女だ、火あぶりにしろ」と叫んだ人たちに似ている。そうした単純な正義感一色に染まることは多様性を殺す暴力にもなりうる

・どうせ人間は皆滅びるのだから、物体も適度に滅びていい。このままいけば、地球上、世界遺産だらけとなってしまう

・これまで営々と築き上げてきた「うそ」で固めてきた城を崩さねばならない。恐ろしいから握りつぶしてきたこと、排除されるのが怖いから、いやいやみんなに合わせてきたことを徹底的に崩さねばならない。そして、徐々に自由になること

・自分が組織を創立したり、拡大したり、危機から救ったりというように、組織にとって英雄であればあるほど、そこを脱した後は組織に介入しないほうがいい

・たとえ誰もほめてくれなくても、バカだ、アホだと罵倒されても、それがあなたの生き方だったらそれでいい。本物の「信念」とはそういうもの

・倫理学のあらゆる理論は直観の前に膝を屈するべきであり、理論と直観が一致しないときは、迷うことなく直観のほうを取るべきである

・他人の意思を無視し、自分の意思を押し付ける人は、圧倒的に善人が多い。「すべて本人のため」と固く信じているからたまらない

・マルクスには哲学的センスの片鱗もなかったがゆえに、あんな見事なほど論理的に破綻しながらもある種の人に勇気を与える書物が書けた。レーニンに至っては、さらに頭が悪かったから革命などできた

・生きているほうが、死んでいることより「いい」ことを論証できない。哲学はいかに生きるか、いかに死ぬかを教えることはできない。哲学は人間が死ぬことの意味そのものを問い続けることができるだけ

・人は「犠牲的精神」をもって生きると、結局犠牲を払わされた相手を憎むことになる。そして、何の生産性もない愚痴の仲間入りをして、そのまま歳を取っていく。まず、自分が幸福になるように邁進すればいい

・哲学は、どんな不幸になっても真理を求める。命よりも真実のほうが大事で、嘘に寛大な日本社会にはなじまない

・日本は、個人対個人の会話が成立しない国である。組織やマジョリティを背景に、曖昧な笑いで「対話」を拒否する



これらの考え方を知ったからといって、どうなるということはありませんが、人間としての奥行きが深くなっていくように感じます。

真理、真実だけを求めて生きていくのは、つらいことですが、歳をとると、そうなるように人間はできているのだと思います。50歳以上の方に、読んでほしい書です。
[ 2010/06/24 08:27 ] 中島義道・本 | TB(0) | CM(1)

『「人見知り」は案外うまくいく』吉岡英幸

「人見知り」は案外うまくいく「人見知り」は案外うまくいく
(2006/09/15)
吉岡 英幸

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私自身、人見知りだと思っています。社交的なふりをすることもありますが、本質的に人見知りです。

この本の中で、著者が分析する人見知りの性格が、自分に当てはまることが多く、うなずきながら一気に読むことができました。

人見知りの性格を知る上で、参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・会話には、何らかの目的があって会話する「目的型会話」と、特に目的のない「非目的型会話」がある。人見知りは、目的のない会話が苦手

・人見知りは、相手に対する親密度ではなく、相手が持っているコンテンツへの好奇心で、自分のコミュニケーションが変化する

・超社交的な人って、結構浮いている。自分のペースでしかコミュニケーションがとれない人は、決して本当の意味で「社交的」ではない

・「自分をさらけだしている」というのは、自分の評価がプラスになる都合のいい情報ばかり出している状態。だから、うっとうしい。さらけ出す人ほど自分をつくっている

・「社交的信仰」が強くあるが、社交的でない人が自分を変えようとしても無理がある。無理してる人に魅力を感じることはない

・超人見知りは、人にレッテルを貼らない。苦手な人の意見でも、いい意見だと思えば支持する。そのかわり、仲のいい人の意見でも、違うなと思ったら容赦なくダメ出しする。いい意味でも悪い意味でも、あまり人に執着しない

・超人見知りは、人をランクで見ない。自分にとって関心が高いか、興味のあるコンテンツを持っているかどうか、それがすべて

・最も有効な本音を引き出す方法は、インタビューテクニックを駆使することではなく、相手に対して本当の好奇心を持つこと

・「社交的な人」と「人望のある人」は似ているようで全然違う。社交的な人が能動的に人を集めてくるのに対して、人望のある人は「尊敬」という求心力で自然に人を惹きつける。しかも、人望があるために、社交的である必要がない

・与えることだけが決して人望ではない。ほっとけないと思わせる何かがあれば、それも立派な人望

・クリエイティブな人は、一瞬で頭の働きを外向き→内向き→外向き→内向きと切り替えることができ、勝手に自分の世界に入る

・逃避とは、リスクをとってやりたいことをやりぬく勇気。何かを成し遂げた人はみな過去に逃避を経験している

・仕事をしていく上で人脈は必要だが、「人脈づくり」は必要でない

・交流会の場には「高いレベルに自分を引き上げてくれる自分より魅力的な人に会いたい」と思っている人ばかり。つまり、自分と同じ魅力のない人ばかり集まっている

・超人見知りの関心は常に「人」より「コト」にある。この特徴は、仕事において、もっとも重要な「経験を学びに変える」能力そのもの

・「人脈」がなんとなく打算的な、自分本位な感じがあるのに対し、「縁」はどことなくあったかい、心の通い合う響きがある

・はっきりした基準のない世界で「技術が高い」と思わせるには、突き抜け感が必要。そのためには「オタク」になるのがいちばん

・「ブランド人」は結果的にそう言われるのであって、そう言われるまでは「変人」。「変わってるな」という評価が、ある日突然「ブランドがある」に変わる

・コンテンツ自体に興味があるのなら、友達になるチャンスはあるが、超人見知り同士だから共感できるというのは幻想。超人見知りは、社交的な人に囲まれ、超人見知りを貫き、浮きまくって生きていくのがいい



この本を読めば、人見知りでもいいんだ。人見知りという性格を生かして、生きていく術はいくらでもあるということがわかります。

人見知りの人にとっては、自分の性格を全面的に肯定してくれるので、安心できる書になるかもしれません。
[ 2010/06/22 08:10 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『教育と格差-なぜ人はブランド校を目指すのか』橘木俊詔、八木匡

教育と格差―なぜ人はブランド校を目指すのか教育と格差―なぜ人はブランド校を目指すのか
(2009/09)
橘木 俊詔八木 匡

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先々月のことですが、「数学を勉強して、何の役に立つの?」と突然、息子に言われました。売り言葉に買い言葉で、「それなら、鉄棒ができて、何の役に立つの?」と言い返してしまいました。

今の時代、数学的頭脳を有していたら、絶対に得すると確信しています。それを証明する材料がないかと探していたら、この本を見つけました。

この本は、どんな教育や教育機会によって、どれほどの年収格差が生じるのか、事細かに解説している専門書です。得する教育、お金になる教育とは、どんなものか、この本を読むとわかります。

もちろん、教育には教養を身につける要素もありますが、「得になる」ことだけに絞って考えるのも面白いと思います。

今回、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本の学歴間賃金格差は、男女とも国際的に小さい。特に、男性の賃金格差はOECD加盟国で最小。中卒と大卒の差は、アメリカの約半分

・30~65歳大卒男性で、大学偏差値と所得の関係を見ると、偏差値50未満から59まで平均所得の差は存在しない。しかし、偏差値60以上の大学出身者は他大学出身者より平均所得が130万円以上高い。日本では学校間格差が存在している

・女性の場合、男性以上に大学間昇進格差が大きく、課長以上の大卒管理職は、偏差値55以上の大学出身者に数多く観察される

・母親の学歴よりも、父親の学歴の方が子供の学習達成レベルに強い影響を与えている

・子供のころの経済的貧しさによる影響は、父親の学歴、父親の職業、母親の学歴より弱い。経済的に貧しい子供は階層上昇動機を持つことが多く、努力していると考えられる

・子供の大学偏差値において、父親の高学歴効果が存在している。そのことは、父親による適切な学習指導効果と目的意識の付与があることを示している

・「子供のころ、親が本を読んでくれた」ことは、直接的な学力形成と強く結びついている

・男性の場合、「子供のころ美術館、音楽会に行った」頻度と学校間格差まで含めた学歴に正の関係を認めることができる

・最高偏差値グループでは、高レベルの学問を究めるために大学進学を考える者が多い。それ以外の大学では、就職に直結した教育が最も大きな理由。高卒では、就職に有利であることが最も重要な理由となっている

・男性の大学・大学院在学生比率のトップは東京都で2位が京都府。京都には、研究者の集積が認められ、共同研究の機会を求めて企業の集積も見られる。京都は技術の最先端を行く企業が多く、教育の質による地域間格差が認められる

・女性の大学・大学院在学率は、京都府がトップで、2位が東京都、3位が兵庫県。しかし、女性の場合は、高等教育機会に関する地域間格差はそれほど大きくない

・「社会で活躍する上で役に立った」と「得意だった」の比率を計算すると、国語が最も大きく、以下、数学、英語、理科、社会の順。これは科目の社会活動における実用度を示している

・「将来世代に熱心に勉強してほしい」科目は、英語、数学、国語、理科、社会の順。この順は、社会活動経験を経た後に重要と考える科目の評価である

・大学入試における数学受験者と非受験者との間での平均労働所得の違いを比較すると、共通一次試験導入後の世代において拡大傾向が明らか。数学受験者は709万円で数学非受験者は639万円。平均労働所得の低い、若い世代でも格差が顕著になっている



この本を読み、早速、息子に「数学を勉強すると、平均労働所得において年間70万円以上得するよ」と言ってやりました。

「数学は社会において不必要」「数学を勉強する意味なんてない」。これは、数学ができなかった人が負け惜しみで発言している感情的なものです。このような意見が、まだまだ世間にはびこっているように思います。

子供に教育を施すにも、費用対効果、価格分の価値をよく考えて、世間の意見に惑わされず、最適の方法を見つけ出したいものです。

あくまで平均値での判断ですが、この本は、得になる教育の方向性が見つかる書のように感じました。
[ 2010/06/21 08:23 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『一日3時間以上、勉強するな!』陰山英男

一日3時間以上、勉強するな!一日3時間以上、勉強するな!
(2009/03/26)
陰山 英男

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この本は、百ます計算などで、教育界に旋風を起こし、陰山メソッドで有名になった著者の近著です。

サブタイトルは、オキテ破りの名言集です。陰山英男氏の、教育界でのオキテ破りの言葉が収められています。

この名言のひとつひとつを見ると、教育界だけでなく、実社会にも当てはまり、参考になることが数多くあります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・子供は大人のイメージ以上に伸びない。伸びると信じ続けると、必ず突き抜ける日が来る。親は勉強できなくてもいいと絶対思ってはいけない

・自信は失敗しないから生まれるのではなく、困難を克服したときに生まれる

・うまくいかなかったときに、そこからどうあがくか、そのときに「がんばる」という言葉が出てくる。子供の自信は親がつくってやるもの

・何かをやるには時間がいる。時間を一元化できる、日程表の活用の工夫が、成功の鍵となる

・「大丈夫、何も心配いらない。やるべきことをきちんとやればいい」と安心させることがいちばん大事。親が不安に思えば、その3倍くらい子供は不安になる

・人間は結構同じ過ちを繰り返す。けれど日々の行動を記録しておくと、記憶の整理ができて、同じ失敗を繰り返さないようになる。日記は人生を成功に導く確実な方法

・まずは成功者に聞く。専門家の意見はそのあと。成功者は成功のための努力を語る。しかし、日本の専門家は失敗させないことを第一に語る

・子供が勉強できない理由は、自分は頭が悪いという思い込みプラス怠け心。誰しも努力はつらいもの。そこで自分は頭が悪いからと、怠ける口実を作っている

・子供は変わるためのチャンスとして叱られることを待っている。きちんと叱らないことはかえって子供を傷つけている

我慢させるのは親にとって面倒なこと。子供が嫌と言っても、粘り強くやらせなければいけない。それができない場合、我慢できないのは親

・不自由が自由の土台となる事実をしっかり教えることが、大人の責任

自分のルーツ祖先の話を聞くことで、子供は自分に祖先の命が引き継がれていることを知り、自分自身を確認する。そして、生きることに対して勇気づけられる。その勇気は学習に対する意欲となって湧いてくる

バカ正直はただのバカ、くそ真面目はただのくそ

・努力は楽をするためのもの。苦労するためのものではない

・努力が認められるのはアマチュアだけ。プロは成果の出ない努力はしない。「現場は努力している」という言葉は、つまり言い訳。成果の出ないことに時間を使って、叱られないように怠けている

・将来の自立に向けて、幼いころから身につけておきたいことは、礼儀作法、時間厳守、整理整頓。この3つは理屈抜きに身につけなければならない。教育とは型にはめること

・聞きながらメモをとるのは、実際は書きながら脳に定着させている。逆に言えば、メモをとらずに聞いて記憶するのは難しいということ

・教師はみんないい授業をすれば成績が上がると信じ込まされている。しかし、それは成功したことのない人の考え。実践してみると逆。成績を上げると授業はいいものになってくる

・人を批判するのは、自分が正しいことを前提としているから。正しいものは変えるわけにいかない。つまり停滞する。だから、人を批判する人は伸びない

・世界がどのように動き、今何が問題になっているかを知る、その上で子供の教育の方向性を探る。それが親の務め



この本は、子供のための教育書ですが、一般社会の教育書としても、十分に読めます。著者は、子供と向き合い、実践して、成果を上げてきただけあって、人を教育するプロ中のプロです。

本文の中の「子供」という文字を「部下」「新入社員」に置き換えるだけで、役に立つことがいっぱいあります。

すべての教育で悩んでいる人にとって、指針となる書だと思います。

[ 2010/06/20 11:01 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『幸せを科学する-心理学からわかったこと』大石繁宏

幸せを科学する―心理学からわかったこと幸せを科学する―心理学からわかったこと
(2009/06)
大石 繁宏

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この本のタイトルは、某宗教団体と類似していますが、関係ありません。アメリカのヴァージニア大学心理学部准教授を務める日本人学者が書いた学術書です。

日米の幸せに対する考え方の比較を中心に、科学的論拠が満載されている本で、非常に真面目な書です。世界基準の幸せを知ることができます。

この本を読み、幸せに対して、納得できた箇所が30ほどありました、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・アメリカ人では、幸せと誇りの相関関係が高かったのに対し、日本人では幸せと親しみの相関関係が高かった

過去の自分を未熟視することで、現在の自分が良く見える。人生の満足度は、過去をどのように統合していくかが重要な影響を与える

・いったん食、住の基本的な欲求が満たされれば、それ以上の年収は幸せの向上に繋がらない。高収入のグループは、仕事などの必要事項に費やす時間が低収入のグループよりはるかに多く、ストレスが多い

人生の満足度調査では、上位は、アメリカの大富豪が5.8点、マサイ族が5.4点で、経済的な差と関係はあまりなかった、下位はカリフォルニアのホームレスが2.8点で、経済的にも、家族からも見放された人たちであった。幸福感は経済面より人間関係と関連する

・人生の節目に当たる出来事の幸福感への影響は、最初の3ヵ月に限られる。ダメージの大きそうな出来事でも、長期的な影響は限られている

・家族を交通事故や自殺で亡くすといった極端な悲劇に見舞われた人の幸福感は、長期間に渡って影響を受け続ける。4年から7年後でも、うつ病の傾向が高く、「時が癒す」とは言えない

・不幸な出来事が21歳から26歳までの間にたくさん起きた人のほうが、そうでない人より、うつ傾向が高い

・人生全般の満足度と結婚生活の満足度との相関は0.51、仕事の満足度との相関は0.44、健康の満足度との相関は0.35、年収の満足度との相関は0.20未満。結婚生活の人生全般における重要性を物語っている

・性格の類似性と結婚生活への満足度の関係が意外に低いのに対し、趣味の一致は、結婚生活への満足度との関係が高いという結果が一貫して発表されている

良好な夫婦関係のカップルでは、褒め言葉が批判的な言葉の5倍交わされている。15分間のインタビューで、肯定的:否定的のコミュニケーション比率から、将来の離婚率が90%以上の確率で判別する

・現代社会の一番の問題点は、本当の友人を見つけにくくなったこと。昔は、生死に関わる体験を共にして、深い友情関係が自然と生まれた。平和な現代では、そのような機会は少なく、友人関係を長期に渡って保つことが非常に難しくなっている

・今の職は、56%の人が知人を通して得たと答えたが、その知人とどれくらい頻繁に会うかと質問したら、55%が「たまに会う」27%が「めったに会わない」と回答した。知人は、本当に顔見知り程度の関係だった

・知人を通して仕事を見つけた人の方が、新聞広告などを通して仕事を見つけた人より、年収も高く、職の満足度も高い結果が出ている。現代社会を生き抜くためには「顔が広い」ことが得であり、「知り合い」と「友達」の区別が曖昧になってきている

・楽観主義と幸福感との相関関係は高い。自分を価値のある人間だと思っている人、そして自分の将来に明るい期待を持って生きている人たちは、自分の人生全般にも満足している

幸福感の低い人は、自分と他人を比較しながら自己評価を下す傾向が強い。特に、自分が劣っている領域で他人と常に比較をする

・感謝の気持ちが満足度を増したという因果関係が見てとれる。幸せになりたい人は、感謝することを、毎週5つ挙げると、対人関係の好転により、幸福感が上昇する

・感謝の気持ちと似た態度として、好ましい経験を満喫するという態度も、日常生活への満足度が高まる

・幸せな体験について15分間考えた群は、書いた群より、4週間後の人生への満足度が高かった。いいことが起こった時に、体系的に分析しないほうが、幸福感はより長く継続する

・幸せは怠慢を呼ぶとも言われるが、データを見ると、幸せな人のほうが、不幸せな人より働き者という結果が出ている

・アメリカの大学の新入生を対象に、19年にわたる追跡調査の結果、大学入学時に「性格が明るい」と自己報告した学生は、「性格が暗い」学生より、19年後、年収が87万円高かった

・修道女が22歳の自伝に、どれだけポジティブな言葉(幸せ、楽しい、嬉しい)を使っていたか調査した結果、80歳での死亡率は、ポジティブな言葉が多かったグループでは死亡率が24%、少なかったグループでは50%であった。言葉と寿命の関係は強い

・「人生の満足度」国別ランキングで、日本と韓国が、国の経済的豊かさにもかかわらず、国民の幸福度が他国に比べ低い。その理由は、首都圏への人口集中による通勤時間の長さ魅力ある仕事が住みたい街にないことが原因と考えられる

・日本人や韓国人は向上心が強い分、自分にも他人にも厳しい人が多い。幸福感には、やさしさ、甘さも必要

・「国の経済力」に加え、「人権保護」「年収格差」も「人生の満足度」との相関が高い

幸せランキングの高い国は、努力すれば成功が手に入る社会的システムが整っていると同時に、社会福祉を重視する、スイス、スウェーデン、デンマークのような国が目立つ

・住居の流動性が高い地区は住居の安定性が高い地域より犯罪率が高い。住人がころころと変わる地区は危険な地区

・大リーグのホームゲーム観客数と成績の相関を分析したところ、住居の流動性の高い都市では、観客数はチームの調子がいい時は増えるがチームが負け込むと減る。住居の安定性が高い都市では、逆にチームが負け込んでいる時に観客数が増えることがわかった

・個人の自己利益の追求とコミュニティの利益が相容れない関係を示していることは、個人と地域社会の幸福感を同時に高めることの難しさを示している


この本の中で、幸せと相関関係が高いと科学的に証明されたこととして、

「家族、知人との良好な関係」「楽観主義」「ポジティブな言葉」「過去肯定感」「感謝の気持ち」「自尊心」「仕事の満足度」「年収格差の少なさ」「ストレスの少なさ」「趣味の満喫」「安定した住まい」

などが挙がっています。

幸せになるには、これらを邪魔するものを、自分の生活から、できるだけ排除して生きていく意志が必要になるように思います。

今、幸せだと思えていない人は、読んでおいて損のない1冊ではないでしょうか。
[ 2010/06/18 08:28 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『実戦!「困った上司」とつき合うヤクザ式心理術』向谷匡史

実戦!「困った上司」とつき合うヤクザ式心理術実戦!「困った上司」とつき合うヤクザ式心理術
(2005/01)
向谷 匡史

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向谷匡史氏の著書を紹介するのは「武道に学ぶ必勝の実戦心理術」に次ぎ、2冊目です。今回の本は、サラリーマンの出世術がテーマです。

日本的な縦社会の組織を完璧に構築しているのが、ヤクザの組織でないかと前から考えていました。

そして、学歴など無用の世界で、何を規準にして出世していくのか、以前より興味がありました。

そういう考えや興味で、この本を読んだのですが、ヤクザの社会が特別なものではなく、一般の会社内で起こることと、さほど変わらないことがわかりました。ヤクザ社会では、よりストレートに結果があらわれるだけのことのように思いました。

この本を読んで、出世術で、役に立った箇所が25ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「今夜は無礼講」は、上司の悪魔の囁き。真に受けたら人生は終わる。無礼講と言われたら、いつも以上に気をつかうこと。これが鉄則

・「まかせる」と上司から言われたら要注意。ドジを踏めば「勝手なマネしてどうするつもりだ」が、組織における「まかせる」の正体。「オレは聞いていない」と上司に言わせないためのアリバイをつくっておくこと

熱血漢上司についたら、まず従うこと。そうしておいて、熱血漢に神経を尖らせる主流派に対して、上司の是非を論評せず、「部下の立場で責務に全力を尽くすのみ」とのメッセージを送っておく。これが保険となり、熱血漢上司が失脚しても生き残ることができる

・酒席での上司批判や会社批判は、いわば女房のグチをこぼすようなもので、お互い聞き流すのが暗黙のルール。本気にするほうがどうかしている

・出世競争の世界にいながら、サラリーマンは意外に会話には無防備。酒席で、悪口の尻馬に乗ってペラペラやるのは、他人に弱みを握られることであり、これを怖いと思わないのはおかしい。ヤクザは相槌一つにも命を懸け、出世の階段を上っていく

・「皮肉屋の上司に悪人なし」皮肉屋上司は見かけと違って人情家が多く、面倒もとことん見てくれる。注意すべき相手は、褒め言葉を装いながら部下のケツを叩く上司。衣の下の鎧である

パシリ仕事ほど、命じる上司は部下の態度に神経を尖らせている。だから、有能な部下は、パシリ仕事に不快な顔をしない。自分を認めさせる絶好のチャンス

・職人型上司が率いる部課は、仕事の質において社内外の評価が高い。数字に直結しないのは上司の責任であると社の上層部は知っている。その部課に所属することが、優秀な社員を引き抜く草刈り場となっていることに、社員自身が気づいていない

・仕事で失敗したときのポイントは、「上司に対する言い訳」ではなく、「上司が上司に言い訳できる理由」を考えて話すこと

・部下はまず、切れ味の鋭い道具になることを目指すべき。素晴らしい道具になれば、大工のみんなが使いたがり、引っ張りだこになる。これがステップアップにつながり、やがて、道具を使う大工になっていく

・決断のための一瞬の間を演出して、「やらせていただきます」と決意の返事をする。この一瞬のタイミングがポイント。二つ返事や立て板に水は、かえって信用を損なうもの

・上司も人の子。貧乏クジを引かせるなら、強そうに見える部下は敬遠し、弱そうに見える部下を選ぶ。強い「若い衆」に見られる雰囲気や言葉遣いが必要

・夢が実現可能かどうかは問題ではない。こいつについて行けば、自分の将来が開けるかもしれないという期待感を同僚に抱かせればいい。同僚に認められない人間は出世できない

ワンマン上司は、部下の進言で翻意するのは、プライドが許さない。だから説得してはいけない。経過報告という形で事実だけを告げる。ワンマン上司は有能だから、事態を呑みこめば、的確な判断を下す

・部下の提案はことごとく却下。やる気がないくせに、地位にしがみついている上司には、事前了解を求めるからノーの返事になる。既成事実先行、ワンテンポ遅らせて事後報告にする

・正論で人を説得しようとする人間はマヌケである。正論を受け入れるということは、自分の主張が間違っていたことになるからである。人を説得し、意に従わせるには、正論を正論に見せないようにすることがポイント

・戦略もなく、努力もせずして、意見が通らないと言ってボヤくような人間は無能であり、仕事などできるわけがない

・自慢話を得々とさせる。そうしておいて、「実は」と相談をぶつ。たいていの上司は「やってみろ」と言う。そう言わなければ、上司としての立場がなくなる

・「知ってる、知ってる」としたり顔で言う上司には、「ご存知かとは思いますけど」と枕を振れば、必ず返事はイエスとなる。その後に、意図する案件や頼み事をぶつければ、たいていうまくいく

・職場を見まわして、勤続年数を重ねただけの上司がいたら、それは大発見。リスクのある仕事を担当するときは頭になっていただき、失敗したら責任を取っていただくのもいい

・どんな嫌われ者でも、地位に応じた権限を持っている。凡人はこのことを忘れ、いい上司に群がる。結果として、取り入る競争率はうんと高くなる。嫌われ者の上司は誠実だから、みんなに煙たがられているだけ。嫌われ者の上司ほど自分にはチャンス

・上司からプライベートな質問をされて喜ぶようでは脇が甘い。部下の日常生活に興味を抱く狙いは、ヘッドハンティングの警戒、組合運動への牽制、リストラに向けた布石であり、決してハッピーなものではない

・直属の上司(例えば課長)の不正を知ったとき、部長に密告するのは御法度。部長は決して喜ばない。直訴が功を奏するかは、部長にとって、それを知ることが得なのか損なのかにかかっている

ヤバい仕事が回ってくる部下は、有能でも無能でもなく、ボーダーラインに立つ部下である。でも、ヤバい仕事が回ってきたときはチャンス。その仕事を成功させることができれば、ボーダーから抜け出し、ランクアップできる

・カリスマとは、凡人がマネのできない人間のことを言う。多くの若い衆は、このことに気づかず、マネのできないカリスマをマネしようとする。矛盾であり、無駄な努力である。だから、いつまで経っても成長しない



上司の良し悪しを嘆く前に、出来の悪い上司性格の悪い上司についても出世していくことがサラリーマンには求められます。

上司を選ぶことは、なかなかしにくいものです。上司の性格や立場を見抜いて、対処する術が必要不可欠です。

この本は、30代前半以下の社員が読むと、将来が得になる書だと思います。組織の中の人間関係の綾を学ぶには、最適の本ではないでしょうか。
[ 2010/06/17 07:03 ] 向谷匡史・本 | TB(0) | CM(0)

『吉田松陰名語録-人間を磨く百三十の名言』川口雅昭

吉田松陰名語録―人間を磨く百三十の名言吉田松陰名語録―人間を磨く百三十の名言
(2005/12)
川口 雅昭

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吉田松陰は、松下村塾で、維新の人材を多く育てました。では、具体的に何を教えたのか?何を信念としたのか?どのような教え方をしたのか?結構、知らないことばかりです。

この本を読むと、何を教えたのか、何を信念としたのかを知ることができます。そして、教育には、何が大事かということも知ることができます。

吉田松陰の思想、哲学の入門書として、この本は役に立ちます。特に、教育の面で、参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、著者の現代語訳で紹介したいと思います。


・「志を立てざるべからず」
人としての生き方が正しく優れているか、勉強がうまくいくかは、心に目指すところがきちんと定まっているか、つまり志があるか否かによる

・「志を以て」
重要な仕事をする者は、才能や知識を頼りとするようではだめである。必ず、何のためにその仕事をしているのかを考えて、気持ちを奮い立たせ、励むことで達成できる

・「人を信ずるに失するとも」
知を好む人は疑いすぎて失敗する。仁を好む人は信じすぎて失敗する。しかし、人を信じる者は人を疑う者に優っている

・「師恩友益多きに居り」
人としての徳を身につけ、才能を開かせるには、恩師のご恩や良友からの益が多い。立派な人は、心ない人とは交際しない

・「学問の大禁忌」
学問を進める上で絶対にしてはならないことは、やったりやらなかったりということである

・「備はらんことを一人に求むるなかれ」
あらゆる能力が備わっていることを、一人に求めてはいけない。ちょっとした失敗を理由に人を見捨てていては、素晴らしい才能をもった人は決して得ることはできない

・「大将は心定まらずして叶はず」
大将たる者は、決断しなければならない。もし大将の心がふらふらしている時には、その下の将軍らに、いくら知恵や勇気があっても、それを実際に施すことはできない

・「心に類す」
立派な人は、人情に厚いために、愛のために、無欲のためにあやまちを犯す。つまらない人は、人情に薄いために、残忍なために、貪欲なためにあやまちを犯す。過失を見れば、その人が分かる

・「己を正すの学」
自分を正しくして、その後で人を教えるのであれば、従わない人はいない。自分を正しくする学問に励まなければいけない

・「剛毅木訥」
学問と武芸を盛んにするため、最も大切なことは、意志がしっかりとしていて、飾り気がないという精神的な雰囲気を作り上げること

・「受けんのみ」
去る者は追わない。しかし、その人の過去の美しく立派な生き方を忘れてはいけない。来る者は拒まない。しかし、その人の過去の悪しき生き方を覚えていてはいけない。人として正しい道に向かおうという心をもって訪ねてきたら、受け入れるのみ

・「苟免を止む」
武士教育において大切なことは、武術についての技芸を盛んにし、贅沢を禁止し、目先の安楽をむさぼらないよう戒め、一時逃れをやめさせることである

・「點醒」
人に暗示を与えて、悟らせる

・「天下才なきに非ず」
世間に才能のある人がいないのではない。それを用いる人がいないだけである

・「誠の字の外」
一に言う、実際に役立つことを行うこと、二に言う、それだけを専一に行うこと。三に言う、ずっと行うこと

・「過を改むるを」
立派な心ある人は過ちがないということを重んじるのではない。過ちを改めることを重んじるのである

・「心なり」
俗人が見るのは形である。心ある立派な人が見るのは心である

・「深き者は」
ある事を論ずる際、心ない人は勝ち負け、つまり結果を重視して見る。心ある人は真心邪な心かを見る

・「己を以て人を責むることなく」
自分の尺度のみで他人を批判しない。一つの失敗だけで、その人のすべてをだめとして見捨てない。その人の長所を取り上げ、短所は見ないようにする。このような気持ちで生きれば、どこへ行こうが、人が集まってくる

・「己を修め実を尽す」
世間が褒め貶すことは、大抵実態とは違うもの。それなのに、貶されることを恐れ、褒められたいとの気持ちがあれば、表面的なことばかりに心を遣うようになり、真心を尽くして生きようとの気持ちは薄くなっていく

・「己が任と為す」
天下後世を維持発展させることを自分の任務に自覚すること。人としての正しいあり方を、我が身から家に広げ、国家から天下へと広げる。また、子、孫へ伝え、更には雲仍、八代目の孫にまで伝える。広がらない場所はなく、伝わらない世代はない

・「偏聴は」
偏った意見を聞けば、邪な人やそうい状態が生まれる

・「身を戦場に置くの思いをなし」
人の心というものは、上の命令に従わず、上の好みに従うもの。今その地位にある人は、この点を本当に理解し、安易、軽佻で怠惰に走ろうとする欲望をたち、身を戦場に置く気持ちで自ら実践し、人を引率するならば、命令など下さなくても、人は従う

・「学の道たる」
思うに、学問というのは、自分の才能を見せびらかして、人を従わせるためではない。人を教育して、一緒に、善き人になろうとすることである

・「近き所を」
人にはそれぞれ生まれつきの性質がある。だから、昔の心ある人に学び、自分に近いよい性質を自分のものとするべきである



この本を読むと、吉田松陰がなぜ、現代に至るまで慕われ続けている理由がよくわかります。

教育者としての信念に関する記述は、現代の教育学で論じられていること以上のことが書かれています。

学校、会社、地域にかかわらず、人を教える立場にいる方は、目を通しておく1冊だと思います。
[ 2010/06/15 08:22 ] 吉田松陰・本 | TB(0) | CM(1)

『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ

なぜ美人ばかりが得をするのかなぜ美人ばかりが得をするのか
(2000/12)
ナンシー エトコフ

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著者は、マサチューセッツ工科大学で脳と認知科学の研究を行い、ハーバード医科大学で教える学者です。

この本は、外見がよければいかに得するかを、学術的に研究、証明する書です。本のタイトルは安っぽいですが、高尚な内容の書です。

外見がどういう時、どういう場合に得するのか、参考になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人類の歴史の最初から、人々は美の名のもとに、自分の肉体に彫りものをし、色を塗り、穴を開け、詰めもので膨らませ、締めつけ、削ぎ取り、磨き上げてきたことがわかる

・アメリカでは、美容にかけるお金は、教育や福祉以上になっている。人は外見にとらわれずにいられない。心の底では誰もがそれをわかっている

・赤ん坊は、大人が高い評価をつけた顔を、より長い間見つめる。人種に関係なく、魅力的な男性、女性を長く凝視する

・赤ん坊は人の顔全体を見つめるのと同じくらい長く、人の目を見つめる。知りたいことを目から読みとる。目の周辺の微妙な特徴は、人の外見の最も大きな決め手の一つ

・幼児虐待で施設に保護された子供たちを調査した結果、魅力に乏しい子供が被害者になる例が圧倒的に多いことがわかった

・美しさは周りの人々から善意を引き出す。男性は美しい女性に対して、危険を伴う利他的な行為をほぼすべて行う。唯一しぶるのは、お金を貸すことだけ

・見かけのいい人は、議論でも勝ちをおさめ、相手を説得できやすい。人から秘密を打ち明けられ個人的な情報を与えられることも多い。人は基本的に美しい人を前にすると、喜ばせたいと思う

・魅力的な人は、しあわせな結婚をし、いい仕事に就き、精神的にも健全で安定していると思われる。その期待は子供時代から始まる。教師たちは、見かけのいい子は、頭が良く、友達とも仲が良く、人気があるに違いないと考えている

・セックスの領域では、外見が絶大な威力を発揮する。見かけのいい人は人気者で、自信があり、気楽に人とつきあえると思われている。セックスの面では感度がよく経験豊かで大胆とも期待されている

・4歳や10歳の子供でさえ、きれいな子を友達にしたがる。見かけのいい人は社交的になる

・美しさは、女性の方がはるかに威力が大きい。男性は、見かけからセックス面を判断することが多い。女性はそれほど見かけだけで判断しない

・女性の知性の高さは結婚にとって有利ではない。最近の調査では、一度も結婚経験がない女性は、既婚女性よりかなり知的レベルが高いことがわかった

・女性の美しさが重視されることは、欲望をかきたてるイメージ産業に反映されている。あらゆる職業での報酬割合は、女性は男性の70%だが、女性モデルは男性モデルの2倍の報酬

・現在、男性は年間95億ドルを、美容整形手術、化粧品、フィットネス器具、かつら、植毛の毛髪関連に使っている。彼らの動機には性の競争もある

・女性の白い肌に対する男性の好みは、ほぼ世界的に共通している。特に、多人種社会では、色の白い女性に対する男性の欲望は、美的要素よりも大きい

・多くの人種の間で、美しいとされる女性は、大きくて丸い目、高い頬骨、小さな顎、豊かな唇の「若さの特徴」で一致した

平均顔は、個々の顔よりも魅力的になる。美の平均には、自然がつくりだした最適の設計に対する人間の感受性が反映される。自然界の平均は、すぐれた健康と機能をあらわすことが多い

・男性は、女性の「幼態保持」的な、幼げな特徴に強く反応し、反射的に保護したいという欲求を呼び起こす。男性は無力で頼りなげな生き物を好む傾向もある

・男らしさは、顔の骨格と筋肉にあらわれる。男性的魅力を高める一つの要素が、力強い印象を与える咀嚼筋である。髭も成熟した男らしさを強調する

・身長が平均以上の男性は、他の男性より資産に恵まれる可能性が高い。身長は企業が求める人材の隠れた条件にもなっている

・男性は、身長が180cm台の人たちは165cmの人より4000ドル以上収入が多かった。女性の場合、身長が収入に重大な影響を与えることはなかった

・女性のくびれたウエストは、美しく見える。ウエストのヒップに対する割合が0.8以下の女性は、0.8以上の女性に比べて妊娠する可能性が2倍。くびれたウエストは、男性が生殖能力の高い女性を望むあらわれ

・ファッションがセックスに関わることは明らか。デザイナーたちもそれを認めている。私たちは、自分の欠点や老化を隠し、若く、背が高く、裕福に見せるためにファッションを利用する

魅力的な声の持ち主を私たちは好ましく、有能で優れた人だと考える。声の魅力と外見は相乗効果をあげる。外見が美しくても声が耳障りだと魅力は半減する

美の追求にはお金と時間がかかり、感情的な負担も大きい。しかし、女性はほかの何にもまして外見で得することが多い。女性は美をあきらめないでいてこそ、法的にも社会的にも平等の権利や力を獲得することができる


この本では、これでもか、これでもかというくらい、美しいと得する事実が提示されます。

人は、「知より心」「金より心」「美より心」と言いますが、現実的には、美は心どころか、知や金よりも偉大であるかもしれません。

この本は、美を追求することは、後ろめたいことではなく、人間として当然のことと喝破してくれています。

美しくない人が、美しくなるように努力する、美しく見せるように装飾することで、人生が得になることを改めて感じさせてくれる1冊でした。
[ 2010/06/14 06:52 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『ビジネスに生かすギャンブルの鉄則』谷岡一郎

ビジネスに生かすギャンブルの鉄則ビジネスに生かすギャンブルの鉄則
(2001/03)
谷岡 一郎

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著者は、ギャンブル研究の第一人者であり、大阪商業大学の学長も務められています。

ギャンブルは、学問としては、陽の目を見ない存在かもしれませんが、古今東西、人間の営みの中には、必ず存在するものです。

宝くじ、競馬、パチンコだけでなく、債券や証券の投資だって、リスクを背負うという意味では、立派なギャンブルです。

直接、間接を問わず、われわれは、何らかのギャンブルと関わって生きています。

この本は、ギャンブルがビジネスにどう生かされるかについて書かれたユニークな本です。でも、真面目な本です。

今回、この本を読んだ中で、ためになった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・競争社会とは、偶然とランダムの支配する社会である。計画は常に狂うし、どんな経済学者にも予想しえないことが必ず起こる。ビジネスだけでなく人生にも起こる。真のギャンブラーとは、それらに対処できる人間

・リーダーは哲学を持ち、そして同時に「良いギャンブラー」でなくては務まらない。人が良いだけで、まとめ役をするだけで、トップでいられた時代は終わっている

・個人レベルでは、ギャンブルを理解せずギャンブルすることが最も危険。国家レベルでは、チャレンジすべきタイミングにチャレンジしなくなることが一番危険

・「才能は必然であっても当たりを引くのは偶然である」「チャレンジなくして当たりは引けない」という二点が重要

・努力すればその人は必ず報いられるというのは教育者にとって便利な言葉。人智を超えた運・不運はどうしようもない

・資本主義社会において、より大きな富を求めて一定の投資をすることは必要条件であり、善行。投資は巡り巡って、社会全体にとってプラスとなり、多くの人々の生活を向上させる

・初期の「資本主義の精神」は、「勤勉」「節約」「蓄積」「再投資」の四点に集約できる。キリスト教では、金儲けは悪であったが、「勤勉・節約」した結果の利益「蓄積」は肯定された。さらに「再投資」も肯定され、アメリカ発展を支えた資本主義が誕生する

・ギャンブルにおける「賭け金」も、ビジネスにおける「資本投下」も、「金を儲ける」ことが目的。金を儲けるのは、お金を増やすことではなく、「目標を定めてそれに向かって利益を集める」こと

・ギャンブルには、ビジネス(お金を儲ける)には存在しない目的であるところの、プロセスを楽しむという、もう一つの目的がある

・ビジネスはコツコツと積み重ねる努力の結果。つまり、必然であるのに対し、ギャンブルは偶然の結果である。しかし、「偶然」の意味がかなり誤解されている

麻雀が強い人の特徴
「自分の手より、場をよく観察する」「勝負手とオリる手を適度に混合する」「基本的に防御が中心」「他人の点棒を計算し、目標に従って手を作る」「じっくり待つ」

麻雀の弱い人の特徴
「場を見ず、自分の手ばかり見る」「どんな手でもあがろうとし、安い手でもオリない」「計算に弱い」「負け始めると、取り返すため高い手ばかり狙う」「ぐちる、言い訳する」

・いくつかの選択肢を適当な割合で混合する戦略を「混合戦略」と呼び、期待値の高い戦略セットを「適正混合戦略」と呼ぶ

・一晩ですべてをなくす人の一番の原因は、「負けを取り戻そう」とすること。この思考回路はギャンブルにおいて最も危険なもの

はまりゆくパターン
「1.勝ち経験→自信+甘い経験」「2.負け続け→金額アップ」「3.借金雪だるま→逃避」

・はまりやすいタイプ
思い込みの激しい人」「プライドの高い人」「意志が弱い人」「真面目だが仕事でうだつがあがらない人」「理屈っぽい人」「数字に強いが認識の甘い人」

・負けが続くとき、大成功を求めるのではなく、失敗を減らす「ミニ・マックス戦略」に切り替えることが重要。派手な成功物語は、現実社会では役に立たない。成功は「単なるツキ」だった可能性が高い

・15戦のうち10勝ならば勝ちすぎ。人生9勝6敗なら万々歳

・もし、この1年間で1回も失敗していないなら、チャレンジは十分ではない。われわれは基本的にギャンブラー。このギャンブラーの目的は楽しい人生を送ること



日本人は遊びもすべて「道」にして、仕事や人生の延長線上として考えます。ギャンブルを単なる遊びとして考えるか、ギャンブル道として考えるかは自由です。

この本を読めば、勝負事に勝つためには、「目標」「観察」「攻守戦略」「我慢」が重要であることがわかります。この要素は、勝負事に限らず、仕事でも人生でも、全く同じです。

そう考えると、ギャンブルは道なのかもしれません。仕事や人生に生かしていけるように思いました。
[ 2010/06/13 07:28 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『気配り王になる!-一目おかれる人の秘密の法則』知的生活追跡班

気配り王になる!―一目おかれる人の秘密の法則気配り王になる!―一目おかれる人の秘密の法則
(2006/10)
知的生活追跡班

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組織や集団の中で生きていくには、「空気を読む」ことも重要ですが、それ以上に大事なのが、「気配り」です。

気を読むだけでなく、気を配るという行動が必要になってきます。この「気配り」は、組織の中で出世していくためには、「能力」以上に求められます。

世の出世術の本の多くは、サラリーマンでない人が書いています。したがって、「能力の高め方」に重点を置いた内容になっています。

独立して生きていくためには、「気配り」より「能力」ですが、組織の中で生きていくためには、「能力」より「気配り」です。

しかし、「気配りの高め方」という本はありません。意外に、「気配り」は、学問的に体系化されていません。

この本は、500円のワンコイン本ですが、気配りについて、深い内容のことが書かれています。結構お得な本です。

この本の中で、深く思えた箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・引き合わせた人同士が、その後頻繁に接触していることを耳にしたら、紹介者は疎外感を覚える。こういう場合、紹介者に報告するというアフターフォローを忘れてはいけない。「スジを通す」という気配りが必要

・言葉の間違いや思い込みを人前で赤っ恥をかかせないように相手に気配りするには、その場では、気づかぬフリでやり過ごし、あとで二人きりのときに「みんなよく間違えます。自分も間違えていたんですけど、本当は・・・」とそっと言う

・年長者に聞く気を伝えるときは、ヘタな相槌を打つよりもメモを取るのがいい

酒が飲めない人は、皆に気を遣わせないための気配りが必要。「ウーロン茶で酔えますから、みなさん遠慮なくどうぞ」と飲めないけど酔える宣言をすればいい

・人は間接的にほめられたときに、最もうれしく感じる。逆に、最も不快になるのは、間接的に自分の悪口を聞いたとき

人の目を見て話すときのポイントは「両目から鼻の間くらいを見る」「10秒以上は見続けない」の二つ

・反対意見は、「確かにその通りです。ただ、この案も面白いかと思うのですが、いかがでしょうか?」のように「クエスチョン方式」で言う

・自慢話をしたあと、失敗談や苦労話を添えれば、中和を図ることができる。失敗談は、自慢話をするときに付け加える、話のデザート

・後輩が失敗したとき、いちばんの良薬になるのが、自分の失敗談。カッコ悪い失敗談、情けなくて笑える失敗談ほど、部下は安心し、心が次第に晴れてくる

・「この話、前にしたことなかった?」と相手が気づいたとしても、「聞いたような気もしますが、面白い話は何度聞いてもいいです」のように応じる

・噂の輪の中に入ってしまった場合、「そんなことより」「ところで~」と別の話題を切り出し、少しでも抜け出す気配りをする。うまくいかなかった場合は、トイレに立ったり、電話をかけに行くなどしてその場を離れる工夫をする

上司が遅刻してきた場合、「ああ、よかったです。時間を間違えたかと思って慌てちゃいました」くらい、やんわり言うのが気配り

・気配り上手は、喜び上手感謝上手。「うれしい!」「ありがとう!」の言葉が自然に出てくるもの

・メールの分量は、相手に合わせていく。返信メールの文字量はフィフティ・フィフティがベストバランス

・返信メールが繰り返されないように、「返事はいいよ」「今日はこのへんで、おやすみ」など、たった一言を最後に付け加えて、自分から終了宣言して、相手の負担を軽くする

・人と一緒にいても電話が鳴ると平気で出て話し始め、しかもなかなか切らない人がいる。携帯と仲良くしすぎるほど、今そこにいる人との人間関係が冷える



「どうしたら、いちばん喜ばれるか」「どうしたら、場が盛り上がるか」「どうしたら、恥をかかせなくてすむか」「どうしたら、相手の負担を軽くできるか」「どうしたら、嫌われないですむか」

こういう考え方を頭に入れて、気配り上手の上司や先輩の行動を観察すると、気配り技を現場学習することができます。

それが積み重なってくると、自然と自分の「気配りの型」ができあがってきます。型ができあがってくると、スマートな気配りができるようになります。

この本のタイトルのように、「気配り王になる!」と思うことが、すべての出発点です。気配り王は才能ではなく、努力だけでなれるように思います。

この本は、気配り下手だと思っている人にとっては、お得な内容ではないでしょうか。
[ 2010/06/11 08:16 ] 出世の本 | TB(0) | CM(1)

『エジソンの言葉-ヒラメキのつくりかた』浜田和幸

エジソンの言葉―ヒラメキのつくりかたエジソンの言葉―ヒラメキのつくりかた
(2003/11)
浜田 和幸

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エジソンは、「天才とは1%のひらめきと99%の努力の賜物」という言葉があまりにも有名です。

しかし、「最初のひらめきが良くなければ、いくら努力してもダメだ。ただ努力だけの人はエネルギーを無駄にしているだけ」とも言っています。

実際は、どんな人だったのか、他にもどんなことを言ったのか、興味があり、この本を読みました。

破天荒な人生を歩んでいるので、そういう性格なのかと思っていましたが、実際は、質素で真面目で研究熱心な人です。

エジソンの人となりを感じる言葉を中心に、共感できた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



お金のありがたみに気づかないままでいることは悲劇

・自分の発明は、宇宙という大きな存在からメッセージを受け取り、自分なりに記録した結果に過ぎない

・人はしょせん好きなことしかやらない。好きなことだけやらせておけば、やめろと言ってもやめない。しかし、まわりを見ると、腹一杯食べて、本能のおもむくままに、快楽を追求するような生き方をしている者が目につく。なんたるエネルギーの無駄か

・発想にいきづまると、海辺や川に釣り糸を垂れに行く。波や風や光からアイデアが釣れるからだ

・一つのことばかり思い悩んでいても、よい考えは浮かばない。同時に複数の問題を抱えているほうが、よいひらめきを得る

・人から批判されることを恐れてはならない。それは成長の肥やし

・成功するにしても、失敗するにしても、何事も華々しくやるにかぎる

・人は聞きたいときに聞きたいことしか聞かないもの

・ラクな道を歩もうとする人は多い。ラクして儲けようとする人も多い。需要と供給の関係が明らかなように、そのような人には平凡な結果しか待っていない

・前途の見通しが暗いときには、将来の楽しい夢を語ることが肝心だ

・本ほど時代や世界を超えて、対話を楽しめる相手はいない

・読むべき本を選ぶことが大切。そのポイントは、複雑な内容をいかにわかりやすい言葉や身近な事例を使って説明してあるかどうかだ

・首から下で稼げるのは1日数ドルだが、首から上を働かせれば無限の富を生み出せる

・人々の抱く不満のもとを知ることこそ、新たなビジネスの出発点である

・人々の記憶や知識があいまいなのは、観察の仕方が中知半端なせいである

・数学者は私が実験で成功した後に、なぜ成功したのかと説明するが、実験の前には何も言わない。私は数学者を雇うことができるが、彼らは私を雇うことはできない

・目的をもって記録を取れ。自分はメモ魔に徹したおかげで、命を救われたり、財産を築くことができた

・規制のしくみに反抗することは、社会の進歩のために欠かせない。現状に満足した若者しかいない社会は発展しない

・子供のような素直な気持ちで、自分の内部に宿っている知性に従うことが大切

・どんな勉強や学問をするにしても、将来どんな仕事に就くにしても、最も大事なことは、観察力を養うこと

・自分の頭で徹底的に考え抜く人は本当に稀にしかいない。肉体を鍛える人はよく見かけるが、頭脳も肉体の一部だということを忘れている人があまりにも多い



エジソンは、「従業員1万人の創業社長」「プロジェクトを60近く同時進捗」「53歳のとき鉱山開発失敗で破産宣告」「数十万冊の蔵書」「自動車王フォードや三重苦のヘレンケラーと大の仲良し」「武士道精神好きで大の親日家」等、エピソードが盛りだくさんです。

小学校の時に、伝記を読んでから、エジソンの書物に触れたことがありませんでしたが、この本を読み、エジソンの多くの言葉やエピソードを知り、興味が再び沸いてきました。

偉大な発明の父、エジソンに興味のある方、ヒラメキや発想法に興味のある方が、手にすれば非常に面白い本だと思います。
[ 2010/06/10 08:30 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『人生と投資で成功するために・娘に贈る12の言葉』ジム・ロジャーズ

人生と投資で成功するために 娘に贈る12の言葉人生と投資で成功するために 娘に贈る12の言葉
(2007/04/28)
ジム ロジャーズ

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ジム・ロジャーズ氏は、世界的な投資家のジョージ・ソロス氏と共同で投資会社を設立し、巨額の資産を築いた人物です。

引退後、投資するに値する国かどうかを自分の眼で見て判断するため、世界中の国々を訪ねているユニークで行動力のある人です。

以前、「ジム・ロジャーズ世界大発見」という本を読みましたが、バイクでの世界一周に続く第2弾で、黄色いベンツで世界一周した物語でした。計2回で116カ国、24万㎞走破の偉業です。

この本で訪問した各国に対する観察と意見が、投資本というよりか冒険活劇本といった感じで、非常に面白く読めました。

今回紹介する「娘に贈る12の言葉」は、冒険投資家ジム・ロジャーズ氏が60歳を過ぎて、初めて授かった娘に、人生と投資について語りかける内容の本です。

この本には、著者の哲学が凝縮されており、投資のことがわからない人でも、簡単に読め、日常で参考になることが多く書かれています。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・大勢に従って成功した者は、いままで誰一人としていない

・それぞれの分野で成功してきた人たちは、誰のコピーもしていない。誰かのコピーをして成功した人間はいない

・細部に注意を払えるかどうかが成功と失敗を分ける。だから、どんなに些細なことに見えても、小石をひとつ残らずひっくり返すようにして調べないといけない。大半の人が成功できないのは、限られた範囲の不十分な調査しかしないからだ。徹底的に調べること

・ほとんどの人は、他人の言うことを鵜呑みにしている。成功したいと心から願うなら、自分の手で調べること

・自分自身や自分の国のことを本当に知りたいのなら、世界を見てくること。外国やそこに住む人々と比較することで、いままでと違った視点で自分や自分の国を見ることができるようになる

・観光だけでなく、人々の生活の場をその足で歩いて見てくること。美しく飾られた部分だけでなく、異国の日常を見ることで、新しい何かを発見し、疑問を抱き、自分自身の強さや弱さに気づく

他を知ること、他から眺めることで、観察は深まる。世界を自らの目で見ると、その経験はあらゆる分野で成功の糧となる

・日本は他の国々を排除する傾向が残っている。歴史的に見れば外国に対して閉鎖的な政策をとった国々は例外なく急速に衰退している

・世界を自分の足で歩み、人々と触れ合うと、「なんと世界は素晴らしいことか、なんと私たちは似通っていることか」と感じるに違いない。誰もが人生において望んでいることは同じだ

・哲学というのは、小難しい理屈ではなく、「自分の頭でどう考えるか」の技術。人生に哲学が必要なのは、それが進歩を与えてくれるからだ

・投資家として、いつも「どこが弱気か」を探している。ほとんどの投資家が強気を探し、過熱気味のマーケットに夢中になっているときに、割安な素晴らしい投資先がある

・投資で成功できたのは、歴史を学ぶことを通じて、大きな視点で世界の変化をとらえられるようになったから。歴史上の出来事と長期にわたるチャートを比較することで、「どんなことが起こったときに、商品や株式の価格が動いたか」がわかる

・歴史は繰り返すが、人類は常に変わらない

・自分の間違いを素直に認められないまま大人になってしまったら、人生も投資も厳しい試練が与えられる

群集心理にかられてはいけない。社会通念や慣習に盲目的に従っていては、正しい結論を導き出すことはできない

・投資で成功するためには、心理学を学ばないといけない。それは、感情がしばしばマーケットを動かすエンジンとなるからだ

・マーケットで起こるヒステリーの渦中で自分を見失うことは、お金を失うこと以外の何物でもない

・バブルはヒステリーのうちにはじけ、暴落はパニックで幕を閉じる

・世界は時とともに変化し、それが積み重なったものが歴史。すべての社会的環境も時間とともに変化する。変化を受け入れられないのは、濁流に逆らうようなもの

・大事なことは安く買うこと。たとえ、考えが間違っていても、この方法なら大損することはない

・これから何百年後まで生き残っていく言語は、英語、中国語、スペイン語くらいのもの。何かで成功したいのならば、滅んでいくものに賭けてはならない

・事実を調べずに、願望や欲望だけで事象をとらえると、大衆の考えや心理に流されてしまう。冷静に需要と供給を考えること

・もし自分が天才だと思ったら、しばらくは何もしてはいけない。その時は、運よく成功をつかんだにすぎず、危ないとき。自分の考えに確信が持てたときにこそ、行動に移すとき

・おごり高ぶれば、それまでに築いた富も成功も、あっという間に崩れていく。今のアメリカ人は、世界に興味がないくせに、自分たちが世界の中心であるかのように思っている。そんな考えでは、強さを維持することはできない。無知が自尊心を歪ませる



著者は、この本で、投資と人生で成功を収めるためには、「世界的視野」「歴史観」「大衆心理」「観察眼」「哲学」が必要であると言っています。

考えてみれば、世界的視野、歴史観、大衆心理、観察眼、哲学は、自分を知るための道具です。要するに、自分をどれだけ深く知ることができるかが勝負になるということです。

自己客観化こそが、すべての基本のように感じました。この本は、投資だけでなく、生きていく心構えとして、役に立つと思います。
[ 2010/06/08 07:23 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『お金と幸福のおかしな関係』マティアス・ビンズヴァンガー

お金と幸福のおかしな関係お金と幸福のおかしな関係
(2009/09/10)
マティアス・ビンズヴァンガー

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著者のマティアス・ビンズヴァンガー氏はスイスの専門大学で経済学部の教授をされています。

この本のテーマは、豊かになっているのに、なぜ幸せになれないかという「幸福の逆説」です。

日本だけでなく、どの先進国も「豊かになったのに、幸せになれない」ことで悩み、明解な答えを見つけ出せないでいます。

この本には、幸福感の停滞を防ぐヒントが多く掲載されています。参考になった箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・先進国に住む人々の平均的な幸福度や満足度は、随分長い間に渡って停滞を続けている。事はそれだけにとどまっていない。ストレスを感じている人の数が増加の一途を辿っている

マルチオプション社会が発展していくと、幸せになるために必要な製品やサービスを見つけることが難しくなる。氾濫するさまざまな可能性に興味が飛び移り、理性的に選択するだけの時間がなくなる

・製品やサービスの数は常に増え続けているにもかかわらず、愛や成功、健康、あるいは美といった人間を本当に幸せにしてくれそうなものは、昔と変わらず、そのほとんどをお金で買うことはできない

・大切なのは収入を最大限に増やすことではなく、人間の幸福感や満足感、生活の質、あるいは「主観的な幸福」を最大にすること

・お金を稼ぐことにかけては抜群の知識をもっているが、その反面、その収入を幸せや満足感を得るために使うことにおいては甚だ頼りない人が多い。多くの人は、幸せになるお金の使い方においてはアマチュア

・貧しい国では収入が上がれば平均的な幸福感もすぐに上昇するが、1人当たりの収入が15000ドルを超えると、その後はいくら収入が増えても、幸福感は上がらない

・幸福感の停滞は社会の各階級に見られる。アメリカのデータでは、性、肌の色、教育レベルに違いがあっても結果は同じ

・「金とセックスと幸福」の研究では、アンケート調査の前年にセックスをしていない人々は、平均よりも明らかに幸せではなかった。ということは、収入を増やすために長期間セックスをやめる必要があるなら、あくせく働いても意味がないことになる

・幸せとは結局、セックス、友人と過ごす時間、誰かとともにする食事、リラックスできる時間など、ごくシンプルな事柄から成り立っている

・収入の増加は逆に幸せにつながる行動の時間を減らす傾向にあり、嫌な思いをする行動に多くの時間を費やすことになる

ステータスシンボルとなる品物は、車のほかに、家、インテリア、服、有名画家の絵画など、所有者以外の人々に自分のステータスを知らしめるために役立てられている

・プライベートでもビジネスでも、私たちは、もっとも多くの時間をともに過ごす人々と自分を比較する傾向にある。乞食がうらやましがるのは億万長者ではなく、自分よりももっと稼いでいる別の乞食である

・高い信望とそれに相応する高い収入を得られる職に就いていれば、相手を感嘆させることができる。それ以外で、周りから同じ反応を得ようと思ったら、魅力的な容姿をしているか、かなり有名でなければ無理である

・人々は自分の収入を友人知人、隣人や同僚の水準に保とうと常に努力している。そして、周囲にいるこれらの人々が出世して収入を増やすと、自分も今のステータスを失わないようにもっと働かざるを得なくなる

・多くの人間は、好きでもない人を感嘆させるために不要なモノを買う。そのために、たいして持っていないお金を使う

・周りにステータスのシグナルを送るという行動は労力も費用もかかるプロセス

・人間は収入の増加や物質的な豊かさの向上にはとても早く慣れ、当初の喜びは短期間で消えうせてしまう。モノに依存した生活を送っている人々は、物質的な豊かさに重きを置かない人々よりも幸せになれなくて当たり前

・目指す目標と自己能力の一致が個人的な幸福を得る一条件

・異常なほどのチャンネルの多様化は、「多すぎる番組、足りない時間」となり、人々をより幸せにすることはできなかった。選択の喜びは、いまや選択の苦悩となっている

・6種類から商品を選ぶ時と30種類から商品を選ぶ時の消費者の満足度は、6つの中から選ぶ時の方が断然に大きかった

・オプションが増えるばかりなのに、本当によい決断を下すための情報が足りない。そして、時間が足りない

・全体的な幸福感にネガティブな影響を及ぼす「毎日の通勤時間」は、時間を節約する技術が進歩したにもかかわらず、時間節約を阻む

・インターネットは時間を節約するというよりも、時間を盗んでいる

時間の恩恵は次の3つの次元に分けることができる
「自由に使える時間がある」
「自由に使える時間が生物的、社会的、自然的なリズムと適合する」
「時間に対する主権」

・心理的な「幸福配当金」は、お金から離れるほど高くなる。つまり、一緒にいるのが好きだから時間をともに過ごす場合と、報酬を受け取るから時間をともに過ごす場合は別物である

・家庭生活にストレスを与える生活スタイルを避けたほうがいい

・ランキングが少なくなれば、社会全体が幸せになるだけでなく、人工的なステータス競争の演出に浪費されるお金を節約することができる。ランキングは社会から排除すべき

・給与と業績のはっきりしない関係は、人々の根底にある倫理的な感覚を傷つけ、不満を募らせる。そのためには、給与の上限を定める拘束力のある規則をつくる必要がある



この本には、トレッドミル(ランニングマシーン)という言葉が頻繁に出てきます。

現代人は、トレッドミルに乗せられてしまっている。トレッドミルに乗っている以上、幸福は手に入らないので、一度降りてみましょうと著者は提言します。

「お金があれば、他人に比べて、幸福になれる」というのは幻想です。しかし、人間は、他人と比較してしまう生き物であることも事実です。

そこのところを冷静に見つめて、行動できれば、「お金と幸福の素敵な関係」が構築できるのではないかと思いました。
[ 2010/06/07 07:17 ] 幸せの本 | TB(0) | CM(0)

『思いやりはお金に換算できる!?』有路昌彦

思いやりはお金に換算できる!? (講談社プラスアルファ新書)思いやりはお金に換算できる!? (講談社プラスアルファ新書)
(2008/06/20)
有路 昌彦

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著者は、環境経済学生物資源経済学の専門家です。養殖マグロで有名な近畿大学水産研究所の客員准教授も兼任されています。

この本では、環境経済学を駆使して、「お金に換算できない」と考えられてきたもの(思いやり、景観、自然、快適、安全など)を、お金に換算して、その価値を知らしめようとされています。

持続可能社会をつくっていくための新しい学問である環境経済学を学ぶのに、役に立つ本です。

この本を読んで、面白かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人がお金を払うのは、欲望が満たされてヤッホーな気持ちになるためか、トホホな気持ちを癒したり、その原因を取り除くためのどちらか

・目の前の利益追求は必ずしも「善」ではない。経済学も「自分のことだけでなく、周囲に与える影響も計算に入れる」「今だけでなく、これから先のことも計算に入れる」と考えるようになった。環境経済学は今や、経済学の主流になりつつある

エコ経(環境経済学)とは、「人間が長く快適に生き、暮らし続けられる条件を整え、しかも利益を上げるための経済学」。エコ経が基準にしているのは、持続可能性

・自然資本は増やして使えば、ずっとある。やりようによっては、ものすごく増える。地球は、「元本」に手をつけない限り、長く、豊かに「利子」を生んでくれる

・数年で元も子もなくなって、共倒れになるような荒っぽい金使いはやめて、暮らしのベースを安心おトクな資産運用に切り替え、長く利子生活を楽しみましょうというのが、「持続可能性」

・材料を買い叩く、人件費をケチる、環境やまわりに配慮しない、無理に売りつけるなどの企業行動は、確かに数年は利潤が上がるが、最終的に地域の雇用も環境も持続可能でなくなってしまう

・みんなが少しずつまわりを思いやり、無理難題を言わないようにすれば、いろいろなものが持続可能になり、いい循環で回り始め、結局は儲かる

・人間はものごとがラクだったり楽しくなければ長続きしない。どんなに素敵なシステムをつくっても、長続きしなければ意味がない

・BSE感染するリスクを1としたら、スズメバチに刺されて死ぬリスクはその1000倍、お餅をのどに詰まらせて死ぬリスクは44,000倍、入浴中の溺死は38万倍。BSE感染の全頭検査にかけた費用が4000億円。1年に1人も死なないリスクに大切なお金を使った

・4000億円あったら、経済難にある13万世帯に300万円を給付できる。その5%の200億円で、高度不妊治療が健康保険で受けられるようになる。そうなれば、少子高齢化のこの国に2万人近い子供が増える

・リスクを小さくするにはそんなにお金がかからないが、ゼロにするにはものすごいお金がかかる。にもかかわらず、リスクはゼロにすると考えるのがゼロリスク症候群の考え方。この考え方に従えば対策費は無限大になる

・何か問題が起きたとき、情報が偏っていると、どう行動したらいいかわからなくなる。「このリスクの本当の大きさはどのくらいだろう、社会全体にあるリスクの中では、どのくらいの位置か」という目で考え直すことが大事

・みんなが魚をさばく技術を身につければ、ロットが小さくて流通に乗らなかった魚をおいしく食べられるようになる。浜で破棄される魚が無駄にならなくなる

・田んぼを昔の田んぼに戻したら、ドジョウ、ウナギも獲れるし、セリなど食用にできる野草も生えるし、シジミも獲れるようになる。田んぼそのものがおトクになる

・ボランティアの人たちは、やがて息切れする。余力や時間を注ぎ込み、タダで働くと、人の「時間資源」はなくなり、最後は対価活動に移る。実際に働いた人たちがお金をもらうシステムは長続きする。持続社会ではボランティアをしてはいけない

・主婦業をアメリカではホームメーカーと言う。主婦業は会社での仕事と同様に経済的に重要な役割を果たしている。主婦は社会コストのかなりの部分を肩代わりしている。主婦は社会コストを減らす役割を担っている



この本を読むと、何でも完璧を目指したり、何でも一方に偏ったり、何でも神経質になったりすると、社会的に大きな無駄が生じることがよくわかります。

とにかく、ラクして、楽しく長続きすること。これが環境経済学でいう持続可能社会の根本のようです。

私たちのコミュニティーも、企業も、国家も無駄なことばかりしています。その無駄を金銭価値に置き換えて判断し、上手に取り除くことが、環境問題より、先にしなければいけないことです。そのモノサシとして、環境経済学が役に立つように思います。
[ 2010/06/06 08:09 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『ヘタな経済学より名作に学べ・古今東西52編が語る金と相場』鍋島高明

ヘタな経済学より名作に学べ 古今東西52編が語る金と相場ヘタな経済学より名作に学べ 古今東西52編が語る金と相場
(2004/06/11)
鍋島 高明

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サブタイトルに、「ヘタな経済書より名作に学べ」とあります。この本は、「お金と相場」に関する古今東西の名作を50以上集め、その中の、金と相場に関する知恵の記述について、著者が言及されています。

古今東西の作家たちが、金儲けの口車に乗ってしまったり、高利貸に手を出したり、給料に文句を言ったり、相場に手を出して大損したりと、お金に執着する姿が描かれています。

お金を通して、その作家の考え方を知ることができ、人間臭い部分を感じることができます。

この本を読み、面白かった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・「朝起五両、家職二十両、夜詰八両、始末十両、達者七両、この五十両を細かにして、朝夕呑み込むからは、長者にならざるといふ事なし」(井原西鶴日本永代蔵

・西鶴は長者を妨げるものとして、次のものを挙げる
「美食、淫乱、絹物」「乗物」「琴、歌、かるた」「打楽器」「けまり、弓」「数寄屋建築」「花見、舟遊び、日風呂」「夜歩き、バクチ、碁、双六」「後生心」「請判」「食酒、タバコ、京上り」「金山の仲間入り」「家業の外の小細工」「八より高い借銀」

・「世に金銀のよけい有るほどめでたき事外になけれども、それは二十五の若盛りより油断なく、三十五の男盛りにかせぎ、五十の分別盛りに家を納め、惣領に万事をわたし、六十の前年より楽隠居」(井原西鶴・世間胸算用

・「節制」「沈黙」「規制」「決断」「節倹」「勤勉」「誠実」「正義」「中庸」「不潔」「平静」「純潔」「謙譲」の十三の徳目を掲げて日々実行(フランクリン自伝

・「台所が肥えれば遺言書はやせる」「美食家の末は乞食」「借金の馬に嘘が乗る」(フランクリン・富に至る道

・アメリカンドリームの先駆者であるフランクリンは今日では、アメリカ紙幣では最高額の100ドル紙幣の肖像におさまり、お金をめぐる現代人の悲喜劇を見詰めている

・「手をもって儲け得るものを、たちまち口腹の欲に費やすものを、下流卑品の人となす。かくの如き人は、貧苦に迫り、みずから給養することあたわずして、公衆の救助を仰ぐに至るなり」(スマイルズ西国立志編

・幕末の歌人、橘曙覧の「独楽吟」の中にも、お金の歌が登場する
「楽しみは 物を書かせて善き値 惜しみげもなく人にくれし時」
「楽しみは 銭なくなりてわびおるに 人の来たりて銭くれし時」
「楽しみは 欲しかりし物銭ぶくろ うちかたぶけて買い得たる時」

・早大教授の傍ら、生涯に詠んだ歌14,447首の窪田空穂にもお金の歌が多い
「わが友の逢へる喜びする話 おのづからにも金にうつり行く」
「おもちゃ買ふ銭のありやと問ひし子の問はずなりかけ無しと思ふらし」
「思はざる金を得たりと分たむと 裕かならざる友の差し出す」

・「人間の生き方は一つしかないんだ。貸方になるか、それとも借方に廻るか、大事なのは金ではなく、金のどちら側に立つかなんだ」(山本周五郎泣き言はいわない

・「人間には意地というものがある。貧乏人ほどそいつが強いものだ、なぜかといえば、この世間で貧乏人を支えてくれるものは、そいつだけなんだから」(山本周五郎)

・「金には二つの用途がある。事業に投資して収益を期待することと、使って楽しむことである。金の正しくない用途で、最も心配するのは、人に好印象を与えようとして、使うことである」(キングスレイ・ウォード/ビジネスマンの父より息子への30通の手紙

・「多少金のある家に生まれてきた君は、虚ろな言葉の偽りの贈物を携えた他人や友人に気をつけて欲しい。人は人情として金持ちに惹かれ、その友達になりたいと思う。なぜか、それだけで心丈夫に感じるらしい」(キングスレイ・ウォード)

・「金持ちのほうが(貧乏より)いい。しかし、財産があると孤独を感じることが多く、真の友情を保つこと、あるいは正直で忠実な新しい友人を得ることは難しくなる」(キングスレイ・ウォード)

・「金は危ないところにある」「金がいわせる旦那さま」「金は湧きもの」「金は三欠くにたまる(義理、人情、交際を欠く)」(笹沢左保江戸の人生論

・「金の力で生きておきながら、金をそしるのは、生んでもらった親に悪態をつくのと同じことでる」(夏目漱石)

・「経済のことは経済学者にはわからない。それは理屈一方から見るゆえだ。世の中はそう理屈どおりにいくものではない。人気というものがあって、何事も勢いだからね」(勝海舟氷川清話



この他にも、正岡子規、石川啄木、菊池寛、三島由紀夫、谷崎潤一郎、池波正太郎などの著名な作家たちが、お金についてどう考えたかが記載されています。

文学とお金は相反するように思いますが、どの作家たちも、お金について悩んだり、金銭欲について考えたり、お金と真剣に向き合っていたことがわかります。

古今東西のお金に対する考え方を知る上で、役に立つ1冊です。
[ 2010/06/04 06:43 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『富と品格をあわせ持つ成功法則-自助論』サミュエル・スマイルズ

富と品格をあわせ持つ成功法則―自助論Self‐Help完全現代語訳富と品格をあわせ持つ成功法則―自助論Self‐Help完全現代語訳
(2007/08)
サミュエル スマイルズ

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サミュエル・スマイルズの自助論は、明治の初め、西国立志編のタイトルで紹介され、大ベストセラーとなりました。

自助論は、今から160年前に書かれたものですが、自己啓発本の原点となった書です。今、読んでも、全然古く感じられません。

お金について書かれた項目を中心に、久しぶりに読んで、勉強になった箇所が、20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・人間の知性の差は、能力の差というより、早いうちから「注意力を発揮する習慣」を発達させられるかの違い

・天才とは、ある特定のテーマに深い注意力をもって没頭した結果、生まれるもの

・人は本物の知識を得ると、うぬぼれが小さくなっていくもの

・真の教養とは独学で身につけるもの

・ビジネスの分野では、小さな物事をどう処理するかで資質を判断されてしまう。他の面で、人徳も能力もあり、善い行いをしていたとしても、いつも不正確な仕事しかしない人は信用されない

・多くのことをこなす近道は、一度に一つのことしかしないこと

・時間とその使い方に気を配らない人間は、他人の平和や静けさを乱す

・金儲け、貯蓄、支出、金銭の授受や貸し借り、遺贈などを正しい方法で適切に行っているかを見れば、その人の人格の完成度がほぼわかる

・自制と自助の精神は、なかなか人々の中に行きわたらない。真の自立を確立するには、一人ひとりが将来に備えて倹約することが何よりも大切

・正しく稼ぐことは、誘惑に負けず、望みをかなえられるよう辛抱強く真面目に働き、不屈の努力をすること

・正しく使うことは、倹約、将来への配慮、自制といった優れた人格の基礎となるものの証

・いつでも困窮すれすれの生活にとどまっている人は、絶えず他人の束縛にさらされる危険性があり、人に支配される関係を受け入れなければいけなくなる

・節約とは、安定した将来を手に入れるために、目の前の満足を我慢する力のこと

・人は誰でも、自分の持っているお金の中でうまくやり繰りして暮らしを立てなければならない。それを実践することが正直に生きることの本質に他ならない。分相応の暮らしで満足しないといけない

・借金への第一歩は、嘘への第一歩。借金が借金を生み、それにつれて嘘がさらに新たな嘘を生む

・貧しさは、数多くの善い行いの手段を奪い去り、心身ともに悪に抵抗する力を弱めてしまう

・最も価値ある修練は、目の前の小さな満足に縛られずに、将来のもっと大きく高い満足を得ようと努力すること

・人生の最高の目的は、素晴らしい人間性を形成し、できるかぎり、体と精神(知性や良心、心、魂といったもの)を発達させること



お金を稼ぐこと、お金を貯めることは、人格の基礎をつくり、自立を確立するもの。貧乏と借金は、他人に支配され、悪への抵抗が弱まること。

スマイルズのこの考え方には、同感できます。きれいごとではなく、実際にそういう部分がかなりあると思います。

肉体を鍛えた結果は数値にあらわれますが、精神の鍛錬度は、数値にあらわれません。しかし、自制心は、貯金額という数値であらわされるのかもしれません。

お金を貯める行動は、何となく後ろめたい気持が伴うものです。それを賞賛して、正当化してくれる書は、あまりありません。

自助論は、今や古典と呼ぶべき本かもしれませんが、一度目を通しておきたい1冊です。
[ 2010/06/03 06:36 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『芸術起業論』村上隆

芸術起業論芸術起業論
(2006/06)
村上 隆

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村上隆氏は、ニューヨークと日本に拠点を置く、現代の日本を代表するアーティストです。作品がオークションで2003年に6800万円、2006年に1億円の値がつき有名になりました。

作品を実際に見たことがありますし、NHKの日曜美術館などで、著者が語られるのを見たこともあります。

その時、芸術と金について多くを語られたのが、気になっていました。この本を読んで、著者が、お金について多くを語った理由がよく理解できました。

著者は、日本の美術界に対して戦いを挑んでいます。その情熱は半端じゃありません。著者の熱き思いに感動した箇所が35ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・欧米の芸術のルールに沿わない作品は、「評価の対象外」となり、芸術とは受け止められない。欧米のアーティストと互角に勝負するために、欧米のアートの構造をしつこく分析した。アートピースは、作り方、売り方、伝え方を知らなければ生み出せない

・欧米を中心とした芸術の世界で取引されているのは、「人の心」。アーティストの目的は人の心の救済。そのため、芸術家は自分の欲望を強く打ち出す必要がある。問題なのは、日本の芸術家に欲望がないこと

・自分自身のドロドロした部分を見つめなければ、世間に認められる作品なんてできない。日本人の芸術家は、商売意識が薄く、芸術を純粋無垢に信じる姿勢をとる。それなら趣味人で終わっていればいい。芸術には、金が要ることから目を逸らしてはいけない

・金があれば、制作する時間の短縮を買える。芸術には金と時間が必要ということを貧乏の中で実感したからこそ、お金にこだわるようになった。「芸術家のクセにお金にうるさい」と批判されるが、わからない奴にはわからないのだと思ってきた

・スポーツ選手が綿密な計画と鍛練を基礎におくように、芸術家は美術史の分析から精神力の訓練に至るまで独創的な作品のために研究修業を毎日続けるべき

・日本の美術大学は生計を立てる方法は教えてくれない。その理由は、「勤め人の美術大学教授」が「生活の心配のない学生」にものを教える構造だから。そのため、金銭を調達する作品を純粋に販売して生業とする芸術家は尊敬されない

・芸術家も作家も評論家も、どんどん学校教師になっていく。日本で芸術や知識を司る人間が社会の歯車の機能を果たせる舞台は、皮肉にも「学校」しかない

・熱量のある雰囲気がなければ客はつかない。すでにあるものを有難がりすぎたり、品のいいものだけをやりすぎたりしていれば、頭一つ抜け出せないのは当然。既存の流派を真似すればその中に埋没する

・欧米では、芸術に、日本的な曖昧な「色がきれい・・・」的感動は求められていない。知的なしかけやゲームを楽しむというのが、芸術に対する基本的な姿勢

・「アートを知っている俺は、知的だろう?」「何十万ドルでこの作品を買った俺って、おもしろいヤツだろう?」西洋で芸術は、こうした社交界特有の自慢や競争の雰囲気と切り離せないもの

・アメリカの富裕層には評価の高い芸術を買うことで「成功したね」と社会に尊敬される。そういう人たちが商売相手。コレクターはいいものを購入して自分自身をアピールできる上に、「美術館に寄付した作品の金額が税金控除の対象」になっている

・コレクターは悩むものほど欲しがる。コレクターは売買に賭けるので、金銭を賭けるに足る「商品の物語」を必要としている。物語がなければ芸術作品は売れない。売れないなら西洋の美術の世界で評価されない。この部分を日本の芸術ファンは理解できない

・媒体に出る、人にさらす機会を増やす、大勢の人から査定してもらう。ヒットというのは、コミュニケーションの最大化に成功した結果

・「美味しんぼ」の海原雄山のモデル、北大路魯山人は胡散臭い陶芸家とされている。彼は「星岡茶寮」を開き、階級社会の金銭や権力の構造を掴み、自慢の陶器に乗せた料理で要人をもてなした。この魯山人の販売方法こそ、欧米の美術世界で主流とされる方法

・美術作品を買うコレクターは、作品価格の変動の推移を知りたがる。美術館も価格や評価の変動を見た上で、芸術家の展覧会を企画する。アーティストは何をすれば、作品の価値を高めたり低めたりするか、研究しなければならない

・ビル・ゲイツは、ダ・ヴィンチの作品を持っている。経営者は、栄耀栄華を極めた時、芸術が気になる。人こそ、心の内実こそ、手に入れたと思った途端、蜃気楼のように逃げていくことを彼らは知っている。お金持ちの「物足りなさ」が芸術に向かう

・3000万円でできるはずが2億円かかった時にも、2億円支払えるようにできる構造を作らないと、最終的に客が喜ぶ「世界でただ一つのもの」を作る過程が絶たれ、他と似たりよったりのものしか作れなくなる

・日本の頼るべき資産は技術で、欧米の頼るべき資産はアイデア。日本は技術があるので、低価格でいいものができる基盤ができている。そこに目をつけるべき

・歴史に残るのは、革命を起こした作品だけ。アレンジメントでは生き残ることはできない。追従者は小銭を稼ぐことはできるが、小銭では未来に生き残れない

・黒澤明監督は、年を経るに従って、表層的な芸術的手法に集中し始めた。しかし、それらには、革命を起こした初期のサムライ映画のインパクトはない。芸術においても、技術ではなく考え方に力を注ぐべき

・アメリカでの成功の秘訣は明確。人のやらないことをやること

・芸術は人間と人間の戦い。世界水準の勝負の原点は、個人の欲望の大きさからはじまる

・日本では、時代のある瞬間にスパークする要素をバラバラまいていないと大勢には受けない。瞬発力のある人しか生き残れない社会

・海外の美術の世界は「すごい」と思われるかどうかが勝負の焦点。客が期待するポイントは、「新しいゲームの提案はあるか」「欧米美術史の新解釈があるか」「確信犯的ルール破りはあるか」。このルールを外した芸術家は失墜していく

・日本の異端は欧米の評価を受ける。日本の本道は欧米の評価を受けない

・日本で芸術が活発でないのは「ピンと来た」という新発見よりも、同じ考えを共有する価値が高くなっているから。「ピンと来た」を快感に思う教育を施された欧米人と、そうでない教育を施されてきた日本人の差

・芸術の世界だけでなく、どの業界にも、どの分野にも特有の文脈があるが、「文脈の歴史のひきだしを開けたり閉めたりすること」が価値や流行を生みだす

・教育の成否は本来、「自分の興味のある分野を探すこと」「自分の求めている目的の設定」この二つの試行錯誤にかかっている

・世界最高品質の日本のキャラクターの権利を守っていくことは、これからの芸術大国日本を未来に向けて作っていくこと

・天才同士が戦いを繰り広げている頂上決戦の中で、凡人は斬り捨てられていくのが弱肉弱食の世界のルール。どの世界でも、ごくわずかの天才の数より、天才を求める人の数の方が多い。美術作品の価格が高騰していく過程はそれに比例する

・闘犬のように怒り続けている。自分への怒り、周囲への怒り、世間への怒り、常に溢れるほど出てくる。成功したい情熱よりも、今のままではイヤという不満が動かしている。「怒り」こそ表現を続けるのに必要。宮崎駿さんもいつも機嫌の悪そうな「怒り」の人

・「若いこと、貧乏であること、無名であることは、創造的な仕事をする三つの条件だ、と言ったのは毛沢東です」と宮崎駿さんはよく言う

・アーティストの英才教育をする時に、真っ先に教えたいことは「挫折」。イヤなことを言われて心がズタズタに傷つく時は必ず来る。だけど、そこからもう一度戻ってこられるかどうかが勝負。絵を続けるための動機は、絵をはじめた時の動機よりも、ずっと大事

・劣悪な社会こそが、芸術家には「いい環境」と言える。病んだ文化を苗床にして、その掃き溜めに鶴を呼ぶというものが芸術

・芸術は「マネー」との関係なくしては一瞬たりとも生きながらえない。なぜならば、芸術は人の業の最深部であり核心であるから。「マネー」こそが、へばりつく最後の業。この業を克服していく方法こそが、真の練りあげられるべき「芸術」の本体



著者の村上隆氏を、芸術作品の製造販売業を営む会社の社長のように感じました。

芸術会社を運営しようとしたらカネが要る。また、運転資金がなければ、傑作を出し続けることができず、会社は倒産する。このような発想をする人は、日本の芸術の世界では稀有の存在です。

楽と苦の道があれば、あえて苦しい道を選び、自分を追い込み、「自分への怒り、周囲への怒り、世間への怒り」、現状の不満をバネにして、創作活動をされています。

その苦労されている姿には、新規分野に挑んで大成功した創業者社長の、若い時の苦労と重なるものを感じます。もし、著者が純粋なビジネスの分野に進んでいたら、今ごろ、ベンチャー企業の雄となり、巨額の富を得ていたと思います。

この本は、弛んだ精神に、鞭を打ってくれる、力強い書であり、心の震えを感じる書です。それと同時に、並外れた覚悟がないと、芸術家にはなれないと感じた書でもありました。
[ 2010/06/01 09:14 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)