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「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『図説・山鹿流兵法-組織を活かす必勝の戦略』武田鏡村

図説 山鹿流兵法―組織に活かす必勝の戦略図説 山鹿流兵法―組織に活かす必勝の戦略
(1999/03)
武田 鏡村

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山鹿素行は、孫子の兵法を中心に、日本で兵法を体系的、学問的に初めてまとめた人物です。

赤穂藩で兵法を教えていたため、赤穂浪士の討ち入りの戦略や用兵には、山鹿流兵法の影響が強く見られると言われています。そして、幕末期に入り、長州藩の倒幕の戦略も、吉田松陰が教えた山鹿流兵法にのっとったものとも言われています。

兵法の、戦略、戦術、攻防、指揮、情報などの記述は、現代の商売やマーケティングでも大いに役に立ちます。人間のやってきた行為は昔も今も違いはなさそうです。

今回、この本を読んで、商売にも応用できると感じた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・孫子のいう最高の戦い方は、敵の意図を見抜いて、これを未然に封じること。これに次ぐのは、敵の同盟関係や内部を分断し、孤立させること。第三が合戦をすること。最低の策は、守りの固い城を攻めること

・孫子の「戦力比による戦術」六原則は、
「1.兵力が10倍ならば包囲」「2.兵力が5倍ならば攻撃」「3.兵力が2倍ならば敵を分断」「4.兵力が互角ならば猛戦」「5.兵力が劣勢ならば退却」「6.勝算なければ戦いを回避」

速戦速攻は、勢いを周囲に及ぼして、巻き込む力をもつ。古来、「防衛に回って勝ったためしはない」。守りは愚将、攻めは良将。攻めでも速戦速攻型は優将

・大兵を動かすには、小兵を用いるように心がける。小兵こそ組織の原点
「命令が徹底しやすい」「臨機応変な行動がとれる」「上下ともに一体感がある」「逆心者がすぐわかる」「心が死地にあるため勇戦する」
衆を治めるは、寡を治めるが如くにせよ

小が大に勝つ「三つの戦法」は、
「1.局所優勢主義」(敵の兵力の集中を妨げ、味方の全兵力を集中し、敵の要点をつく)「2.少数精鋭主義」(質を充実させ、大兵の量の欠点をつく)
「3.奇襲」(思いもよらない奇手を用いる)

詭道14変のポイントは、
「劣勢のふり」「不必要なふり」「油断させる」「焦燥感をあおる」「誘い出す」「急襲」「備えを固める」「避ける」「撹乱」「低姿勢」「疲れさせる」「離間」「薄い所を攻める」「意表をつく」

大義は自らの正当性をアピールし、自軍の結束とやる気を高めるばかりでなく、傍観する周辺部の人々の共感を呼び、その力を取り込むことができる。天下国家の大義と国民のためという大義の双方が一致することが理想

・戦いに巧みな「良将」は、武力に訴えることなく敵を屈服させ、城を攻めることなく城を落とし手に入れる。相手を傷めつけずに、無傷のまま味方に引き入れる

・「吸収された者は最前線に立つ」。厳しい条件だが、降伏した者に課せられるのは、最前線に立って戦うことであり、それによって、功績と忠誠を示さなければならない

・「離間の策」とは、
「偽り情報で内部対立を助長」「法外な贈物で背信を促す」「地位で寝返りを誘う」「敵大将と現場指揮官を引き裂く」「敵中に内通者をつくる」
などで敵の力を削ぐ策

・中立は、周囲の力関係によって変化する、中立だけにこだわっていると勝者に攻められる。また、対立する両者が和睦すれば、仲間はずれにされ、両者の草刈り場と化す恐れもある。中立を保つには、両者に積極的に外交交渉を展開する必要がある

・「弱いものは表面上では、必ず強い態度に出る。これは兵の通法なり」。交渉事では、優位に立つ人は、相手の出方を窺えるから物腰が柔らかくなる。失地回復を狙おうとする人は、見破られまいとして、強気に出る

・「まず敵の愛する所を奪え」。敵の機先を制して、敵がもっとも重視している所を奪取すると、敵は奪われまいと焦るので、思いのまま振り回すことができる

・「二の勝ち」とは、たとえ先手をとられて守勢に回ったとしても、次の勝利を考えること。これができるのは、「怯」を捨てて「勇」の心を持ち続けるか否か

・「勝つことのみに心を奪われるな」。変幻する敵の本心を冷静に読みとることが、勝利の基本

・強者の攻撃は、
確率戦」「総合戦」「遠隔的戦闘」「短期決戦」「誘導作戦
弱者の攻撃は、
「局地戦」「接近戦」「一点集中主義」「陽動作戦」「一騎打ち」

・「勝ちて後に戦う」とは、あらかじめ勝てる態勢をととのえてから戦うこと。「和して後に戦う」とは、とりあえず和睦するが、その後に主導権を握ること

・追いつめて逃げ場がなくなると、人は自虐的に逃避するか、むきだしの反撃に転じる。追いつめて得意になってはいけない。むしろ逃げ場を与えてやると、逃げることを考えて戦う意欲を喪失する

・よく訓練され、統率された集団は、乱・怯・弱という「陰」が生じても、それは一時的なものであって、必ず「陽」に回復することができる

集団を動かすには、「金鼓を用いよ」(言葉で号令するだけでは聞き取れないから)「旗を用いよ」(手で指図するだけではよく見えないから)

・情報に信頼できる優秀な人材と、惜しみない資金を投入することは、勝ち残るための法則

・敵情をつかむためには「視観察」が重要
「視」とは、目に見える現象の把握(陽)
「観」とは、現象の背景と意図の把握(陰)
「察」とは、「視」「観」を踏まえて全体の把握(陽陰の止揚)



この本には、日本人が戦ってきた歴史と戦いに勝つ方法が体系的に記されています。

戦わなければいけない経営幹部や、ビジネス上で判断を求められるリーダー職及び専門職に就かれている方にとって、参考になることが非常に多いと思います。
[ 2010/05/31 07:19 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『「イライラ脳」の人たち・脳の仕組みから探る男女の違い』阿部聡

「イライラ脳」の人たち 脳の仕組みから探る男女の違い (知恵の森文庫)「イライラ脳」の人たち 脳の仕組みから探る男女の違い (知恵の森文庫)
(2006/04/05)
阿部 聡

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脳神経外科医の著者が、男女の脳の構造の違いから、イライラの原因と解消法を教えている書です。

著者は開業医で、臨床心理士でもあり、さまざまな患者の症例に出くわされています。そのため、実践的で、読みやすい内容になっています。

以前、未熟ながら「イライラ解消法とストレス対策」という文章を書きましたが、この本を読んで、また新たな発見がありました。

今回、勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・あっという間に、イライラを消失させた女性の共通項は、夫や彼氏などのパートナーとの関係が改善した人、独身キャリアウーマンを気取っていた人が恋する女性に変身した人たち

・人生は、ある意味「暇つぶし」。心理学では「時間の構造化」と言う。イライラは同じ考えが堂々巡りしている状況だから、暇がつぶれて、時間の構造化ができている。何か行動を起こし、出力系を変えていくことが堂々巡りから脱出するのに有効

・本来、言語能力の発達した女性脳は、生理時間になると男性脳に変化する。つまり、言語能力が低下する。しゃべれるはずの言葉がうまく出てこなくなり、イライラする。自分の気持ちを伝えきっていない「分かって欲しい症候群」になる

・男性はヒエラルキーとか上下関係をつくるのが好き。アイデンティティーが弱い生き物のため「何とかの長」になりたがる

・女性ホルモンの世話好きや優しさといった行動が男性のやる気を起こす。このやる気の源が男性ホルモン。女性が女性らしくすると、男性はマザコンから脱出できる。逆に男らしい男に接した女性は女性ホルモンの分泌が増える。ホルモン同士の相乗効果が生まれる

・女性ホルモンの不安定さこそ、イライラする原因を作っている。菩薩か観音様になった気持ちで、男を大目に見ると、回り道に見えても、イライラしなくなる、言いかえれば「わかってもらえる」最高の近道

・男性脳はあくまで論理的であり、ここに人間性を加えるためには。夢を持たなくてはならなかった。論理的であるがゆえに、ロマンを持たねばならなかったと言える

・心にもご飯に当たるものが必要。この心のご飯に相当するのが「ふれあい」

・男性が普遍的なところでアイデンティティーを確立しやすいのに比べ、女性の場合、他人とのふれあいの中でアイデンティティーを確立する傾向にある

・相手に深いところで「受けいれたよ」という感じを伝えるための最大の方法は「傾聴」するということ

・何も言わなくても、時間を共有するだけで、実際はかなりの「ふれあい」になり、愛が伝わることになる

・物心つき出した子供とって、褒めることや優しく抱っこするという「おいしい心のご飯」を食べられるかは重要。虐待されて育った子供は、虐待そのものを「おいしい心のご飯」と誤って認識し、無意識の中に保存され、自分が子供を持った時、子供に虐待してしまう

・女性は自分自身のエネルギーを「育む」目的で使った時に、至福の幸福感を覚えられるようにプログラミングされている

・優しさ、思いやりを持った瞬間、人はある種のオーラを発する。それは素晴らしい育むオーラが出ている。それに多くの人がシンクロして、傍に寄ってくる

・現代社会における仕事では、「育む」目的と違って、より一層の生産性を上げること、より一層の富を貯えることが目的になった。そこに、女性がイライラする原因がある。育むエネルギーを上手く使うためには、男性のエネルギーも必要

・男性の脳は、獲物を追って狩りをしていくのに適した構造になっている。集中力はあるものの、ひとたびそれに夢中になると、他は雑音にしか聞こえない

マザコン男の第一の特徴は「すねる」こと。これは結構うっとうしい。第二の特徴は「責任が取れない」こと。自己責任が取れないマザコン男は、自分より権力や能力のある人間に絶対服従の態度を取り、自分が優位だと考える相手には、無礼な行動をとる

・女性は男性と関係性を持って、男性も女性と関係性を持って生きていくことが、幸せになる近道。そうプログラミングされている

・すべての人は幸せ。心にちゃんとそうプログラミングされている。ところが、「未熟な自己愛」ゆえに、幸せを感じることができない



この本を読んで、男女の脳の違いが本当によくわかり、すっきりしました。夫婦で揉め事が起きても、これからは大目に見ることができそうです。

内容的には、イライラ解消の本というよりか、男女の関係を改善し、男女の仲を良くしていこうという本です。異性のことでイライラしている人にはおすすめの1冊です。
[ 2010/05/30 10:31 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『カネと暴力の系譜学』萱野稔人

カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)
(2006/11/16)
萱野 稔人

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著者は、新進気鋭の哲学者です。カネとは何か、国家とは何か、暴力とは何か、税とは何かを明快に指し示してくれているのがこの書です。

大きく世の中を見渡し、お金について考えるのに、役に立ちます。

今回参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが紹介したいと思います。



カネを手に入れるためには、四つの方法がある
「1.誰かからもらう」
「2.自ら働いて稼ぐ」
「3.他人からカネを奪う」
「4.他人を働かせて、その上前をはねる」
後の三つは、労働、国家、資本という社会の外枠を組み立てている三つの柱に関わっている

・軍事的強者が人々の生活に寄生し、かれらに貢物を強要するというのが国家のもともとの姿

・消費によってカネが増殖することはない。従業員の労働を通じてカネが増えるというところに、資本の活動の特徴がある。従業員は労働の成果(収益)をすべて受け取ることはない。資本の自己増殖のために上前をはねられている

・まっとうな企業も悪徳な企業も上前をはねることに変わりがない。両者の違いは、働かされる人がどれくらい納得して、どれくらいの上前がはねられるかという「程度の違い」だけ

・国家や資本は人々が働いた成果を自分のものにすることができる。よく考えると、労働者というのは、国家と資本から二重に奪われていることになる

・国家が、「暴力への権利」を手中に収めていることこそが、国家だけが人々からカネを奪っても犯罪にならないことの根拠である

・ヤクザが飲食店などから徴収する用心棒代が「みかじめ料」。みかじめ料の支払いを拒めばいやがらせを受ける。それと同じ構造が税。税の徴収も、逮捕されたくないからいやいやカネを支払っている

・民衆は国家が自分たちの安全を保障してくれるとみなして、国家による実力行使と税の徴収に正当性を与えている

・警察は、社会でおこる暴力や犯罪を取り締まることができなければ、市民から「税金泥棒」のそしりを受けることになる。ここに、暴力の正当化をめぐる一般的な図式がある

・日本の司法では、国家や大企業の責任を問うような裁判になればなるほど「和解」という判決がくだされる。その理由は、判例によって、国家や大企業の責任を法的に確定してしまわないようにするためである

・地位やコネのある人間ほど法によって処罰されにくい。同じことをしても、簡単に処罰される人間もいれば、お目こぼしをうける人間もいる。法の解釈や運用に恣意的なものがある

・近代以降の資本主義社会においては、「暴力への権利」と「富への権利」が分離する。暴力への権利に基づいて富を徴収するのが国家であり、富への権利のもとで人々を働かせてその成果を吸い上げるのが資本である

・カネとは「富への権利」である。カネを所有する量によって、その人間が富にアクセスする可能性は決まってくる。カネを所有することは「富への権利」を所有することにほかならない

・貨幣は本来、交換よりも、富を吸い上げることのほうに密接に結びついている。税が経済の貨幣化をもたらすのであり、税が貨幣をつくりだす

・資本主義は、それまでカネを払って手に入れるものでなかったもの(結婚の仲介、老人の世話、葬式など)まで商品化していく。だから資本主義が深化すればするほど、カネの介入しない相互行為の幅は狭まっていく



この本を読めば、労働者は働いた成果を資本家に上前をはねられるだけでなく、国家からも税の徴収という形で二重に奪われていることがわかります。

労働者が資本家と国家にコントロールされているのが資本主義です。労働者の収益が徴収される率の高い国では、公務員か資本家になることが最良の選択です。

職業選択の上で、時代や本人の性格もありますが、サラリーマン、事業主、公務員といった大きな視点で、仕事を考えることが重要に思えます。

どうでもいいことかもしれませんが、社会はこういった構造になっていることを理解しておいて、損はないように思いました。
[ 2010/05/28 06:34 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『自然に学ぶ粋なテクノロジーなぜカタツムリの殻は汚れないのか』石田秀輝

自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか (DOJIN選書22)自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか (DOJIN選書22)
(2009/01/25)
石田秀輝

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これから伸びると言われている産業で、環境関連、ロボット、ナノテクノロジーなどが有名ですが、忘れてならないのが、バイオミミクリー(生物模倣)です。

バイオミミクリーは、いろんな分野で採り入れられてきています。マーケット規模の大小にかかわらず、今後も、生物模倣による商品が巷にあふれてくるのではないでしょうか。

この本には、ネイチャーテクノロジーとして、自然界に存在する生物で、産業に応用できそうな卵たちが紹介されています。

この本を読んで、ためになった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・虫たちは利己的である。しかし利己的でありながら完璧な循環をつくり上げている。一方人間は、利己的であるがゆえに文明崩壊に向かって全速力で進んでいる

・人間だけが、生活価値の不可逆性という欲の構造を持つ。一度得た快適性や利便性を容易に放棄できない欲のかたちである。この生活価値の不可逆性と自然観の欠落が、利便性や効率のみを追求する物欲をあおるテクノロジーへとその姿を変えていった

・外気は昼間50℃、夜は0℃の環境の中で、シロアリの巣の中の温度は30℃にぴたりと制御されている。高い巣はチムニー効果で換気を促進し、地下深くから水を含んだ土を運び、その気化熱で冷却している

・土蔵は、土が構成する微粒子の凝集構造の小さなすき間を利用し、温度湿度を一定に保つ。粘土鉱物は、紙の30~40%、鉛筆の55%、口紅の15%、ファンデーションの40~70%に利用されており、自動車のバンパーなどのプラスチックにも不可欠

カタツムリの殻は、水をかけるだけで汚れが落ちる。汚れがつきにくく取れやすいカタツムリのテクノロジーは、家庭のキッチンシンクやビル外壁に使われ始めている

・「ハンマーで叩いても割れないアワビの殻

厚さ1マイクロメートル以下の薄い炭酸カルシウムの板を軟らかい接着剤で貼り合わせた積層構造になっている。ナノ積層が実用化できれば、しなやかで、錆びず、強くて割れない材料ができる

・「しなやかで強いクモの糸」

クモの牽引糸は弾性値限界で体重の2倍、破壊限界で体重の6倍まで支えることができる。クモの糸を大量につくることができれば、しなやかで軽く、鉄よりも丈夫な繊維素材ができる

・「竹は天然プラスチック

竹はしなやかさと強度をあわせもつ材料。FRPの繊維材料にはガラス繊維が使われるが、竹繊維を使用すれば、耐光性、リサイクル性の高い強化プラスチックができる

・「剥がれない水中接着剤

川の岩場に住んでいるカウロバクター・クレセンタスという細菌は体の部分に強力な接着部をもっている。この接着部は水中でも機能し、最も強力なアクリル系接着剤の2倍以上の接着力をもつ

・「凹凸があっても吸い付くタコの吸盤

タコの吸盤の表面には、直径3マイクロメートルの毛がびっしり敷きつめられていて、ゴツゴツした岩場や魚などの獲物にも強力な接着力を示す。この技術が応用できれば、コンクリートや木材の壁にもいろんなものを接着できる

・「どこでもくっつくヤモリの足

ヤモリは天井を逆さまに全速力で走ることができる。ヤモリの指先には、人の毛髪の10分の1の直径の毛が、片足に100万本生えている。この「ファンデルワールス力」という分子が引きき合う接着力を応用すれば、ハガキ1枚の大きさで200㎏を接着できる

・「ハスの葉をコロコロ転がる水滴」

疎水性突起のハスの葉の撥水性表面を利用すれば、濡れない表面をつくることができる

・「ノミのジャンプ、蜂の羽ばたき」

体の大きさの100倍の高さまでジャンプできるノミの脚の付け根、一生のうちに5億回以上羽ばたく蜂の羽の付け根には、レジリンというゴム状たんぱく質がある。レジリンの間接補強具があれば、人間が空を飛ぶことさえ夢ではない



この分野は、まだまだ研究余地のある世界だと思います。昆虫、鳥、魚、植物など、高等動物ではない生物の中に、人間に役に立つものがいっぱい残っています。バイオミミクリーは、研究者にとって、とても有益で面白い分野ではないでしょうか。

地球上にあるものを奪って利用するばかりでなく、素直に学んでいくことが、人間にとって、今後の大事な姿勢のように感じます。
[ 2010/05/27 08:48 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『成功する男はみな、非情である。』角川いつか

成功する男はみな、非情である。 (だいわ文庫)成功する男はみな、非情である。 (だいわ文庫)
(2007/12/10)
角川 いつか

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著者は大物です。経歴的にも大物(元角川書店社長、角川映画で有名な角川春樹氏が5回の離婚を繰り返した4番目の妻)ですが、人物的にも、危ない世界を渡ってきた、肝っ玉のすわった大物だと感じました。

非合法の世界に潜入して取材を重ね、闇社会に顔が利くまでの体験をしているだけに、本当の意味の「強い男」を見る眼が養われているように思いました。

男が書いた「強い男」の本は多く出版されていますが、女が書いた「強い男」の本は、なかなか目にすることはありません。しかも、記者だけあって、文章が上手。

そういう意味で、参考になる部分が多く、読みやすくて勉強になりました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・できる男は、まず結論から先に言う。トップから「コイツは使える」と好かれる。使えない奴は、無駄口が多い

非情になることは、効率的になるということ、合理主義に徹すること。今やっている行為が、銭を生みださず、無駄と思ったら、それ以上はやらない。「時は金なり」がわかっている

・世界的な成功者は決まって礼儀正しい。しかし、心では何を考えているかわからない。だから怖い。外見を立派につくれば、心の中は見せなくてもいいもの

・面会を求められるとき、無意識のうちに「その人は自分にどんなメリットを与えてくれるか」「大切な時間を割いてまで会うにふさわしい人物か」と考えるもの。信用できる人は「金の匂いがするから会った」と正直に言ってくれる

・効果的に結果を出すには、焦点を絞ることが大事。目標を定めたら、その達成を邪魔するものは、どんどん切り捨てていく。つまり「非情の決断」をする

・「金に照れてはいけない。そうすると金が逃げる」。成功者は、負けたらどうなるか知っているから、勝利の美酒が飲める

・「誰のおかげでうまくいっているの?」それが、いつまでも目に見えない足枷となり、相手は引け目を負い続ける。貸しをつくっておくことは、相手を傘下に収めるのと同じ効果を発揮する

・貸しをつくった相手が裏切ったら、徹底的に相手を潰す。成功者と言われる人ほど、逆上したら手がつけられない。非情の法則というより激情の法則

・戦国時代、トップは必ず一番後ろにいた。自分が殺されたら負け。卑怯と言われようが、それが戦い方というもの。将が生きている限り、復活のチャンスはいつでもある

・うまくいったら自分の手柄、失敗したら他人のせい。良いことと悪いことの振り分けがわかっていなければ、成功者にはなれない。成功者は成功し続けなくてはいけないもの。失敗したら、蹴落とそうとする人間の攻撃材料にされる

・成功者たちは汚れるような仕事はやらない。もちろん人生を賭けた真剣勝負にきれいごとばかりでは通用しない。急激にのし上がった人は多かれ少なかれ、どこかに後ろめたい傷を隠し持っている

・昔から一代で名をなした者は「刑務所の上を歩く」と評される。逮捕されなければ成功者、塀の中に落ちれば落伍者。本人は塀の上に踏みとどまり、誰かが塀の中に入る。こうすれば、当初の目的が達成される。非情な人間は、自分が卑怯者だとわかっている

・人生おひとり様、一回限り。思う存分やるべき。大きな望みを実現するためには、何も背負わないこと。恋愛でも何でも、人のためにと思うと、何かを背負うことになる

・悪い奴ほど、会ったら「いい人」だったり、そうでなかったり、常にイメージを裏切り続ける。そういうイメージを与えられたら、人を動かすことができる。でも本性は見せない。つまり、美しき誤解と錯覚で、新鮮さを維持する

・成功者は初めから違っている。語るべき将来プランがとにかく面白い。世界中どこでも人は興奮したいし、笑いたいし、喜びたい。そんな物語を待っている

・成功した人は、自分が気に入った若い人に賭けたがるもの。本当に成功したいのなら、あなたの将来に賭けてくれる人に、興味をひくような面白い話をすること

ハッタリがあってもいい。でも、あなたが信じていない話はダメ。完璧に信じる話でなければ、赤の他人は乗らない。「このチャンスを逃すと後悔するかも」と話を持っていくことが重要

・男は、相手より強いことを示したいという「能力拡張ごっこ」が好き。大人になれば、組織や社会でしつけられて丸くなるが、成功者は大人になっても闘争本能を捨てたりしない。だから多くの成功者は子供っぽい

・成功者の周りにいる人間は、基本的に利害関係で結びついている。逆境にあっては、潮が引くようにみんないなくなる。このときだけは「孤独であった」ことが骨身にしみてわかる瞬間。信じられるのは自分の力だけ

・自分の「大きな絵図」からはみ出す人を身近に置いておくと邪魔になる。「裏切り者」と言われようが、ズバッと斬る決断が成功を決める

・人は自分のレベルにあった相手と付き合うもの。売れてきて、成功してくると、相手が自分のレベルについてこられなくなる。成功者は、過去は潔く斬り捨てて、チャンスをつかみ取る

・「お客様は神様」は新規顧客開拓の発想。固定客づくりでは「お客様は悪魔」にもなる。客の理不尽な要求を聞いていたら、利益が上がらないので、客層を上質の客に絞り込む必要がある。優秀な経営者ほど、客や取引先の要求を非情に斬り捨てる

・成功者は結構嘘をつく。百戦錬磨の嘘つきは、目をそらさない。ついていい嘘(相手に不快感を与えない、気分を害さない、傷つけない)がとっさに言えることも成功するために必要な要素

・いつでも三人の顔を持つ。「渦中にいる自分」(必死、ときには感情的)、「客観視する自分」(冷静に自分に問いかけ)「上から見る自分」(全体を眺め、相手の反応や場の雰囲気を判断)。これで自分のバランスがとれる。成功者は多角的にものを見ることができる

・成功者は、勝負どころがわかると、チャンスを絶対に逃さない。迷わず駒を進め、ときにはハッタリをかける。確信を持って力強く説得する。話はデカく、金額や数値は細かく話す。いわば演技

・人はみなわかりやすい話を聞きたがっている。「言いたいことは二つある」(ひとつでは少ない。三つでは多すぎる)といった、聞きたい話をしてやること

アクの強さと自信が人を引きつける。自分に自信があれば、陰口を言われようが気にしないもの。面と向かって直接注意されたのなら、反省するなり反論すればいい。自分がいないところで話された内容など一切無視する

・噂好き、イジメ好きの人間は、狭苦しいところに閉じ込められた哀れな人。自分に自信がないから、他人に矛先を向けて自分が標的にならないように防御しているだけ

・女性は恵まれている。女性の特権はいきなり中核に入れること。それは、色仕掛けをするということではなく、若さや笑顔だけでも、はるか雲の上の人にかわいがってもらえる。男なら一生名刺交換できない人物に女性なら会える

・「機会」を与える人、「勇気」を与える人、「癒し」を与える人、「時間」を与える人、「運気」を与える人。周りに「運命の五望星」をかたちづくっていれば、成功への道は盤石

・努力とは結果を出す手段にすぎない。努力を褒められても喜ばない

・トップを目指すなら、同業者とのつき合いはほどほどにする。それよりも異業種のトップクラスで、叱ってくれる人を探し、つき合うべき

・最悪の事態を考え、手を打っておく。一見、ものすごくネガティブで後ろ向きに映るが、実は至って前向きで積極的な考え方

・人の悪口を言っていいことはほとんどない。嫌いであっても、波長が合わないだけと思うこと

・良い話はなかなか伝わらない。自分に得になるように、人の評判をこちらから仕掛けて操作すること

・成功する人は、思考停止ができる人。自分の都合のいいことしか見ない、聞かない、記憶に残さない

・成功したいなら、なるべく数多くの実体験をすること。失敗体験も含めて、体験に勝るものはない。受け売りばかり口にせず、自分の体験を語ること

・人間は本当に自己中心的動物。ただ、エゴ丸出しにすると、どうしても他人から醜く見えてしまう。だから、人は醜いものをカバーする。表現はエゴを包み込む役割



著者は、数々の大物と接してきたので、上に立つ男の欲望と本質が透けて見えるようになったと思います。

女性が、トップや幹部の男性を見るとき、この本は役に立ちます。できる男の特徴を知っていれば、緊張しなくて接することができます。

できる男性と接する機会の多い女性にとっての、必読の書ではないでしょうか。
[ 2010/05/25 12:14 ] 角川いつか・本 | TB(0) | CM(2)

『インテリジェンス人生相談[社会編]』佐藤優

インテリジェンス人生相談 [社会編]インテリジェンス人生相談 [社会編]
(2009/04/25)
佐藤 優

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昨日の「インテリジェンス人生相談個人編」続き、今回は社会編です。個人編が「軟」だとすれば、社会編は少し「硬」な感じです。

著者の脳の引き出しの多さに感動しながら、今回もあっという間に読み終えてしまいました。

ためになった箇所、役に立つ箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・介護の仕事は、社会的に価値がある「魂の労働」だから、低給与でも名誉が得られるというイメージを先行させて、末端のヘルパーさんたちに低賃金労働を押し付けている構造がある。この構造的問題を個人で変えることはできない

・人生から半ば降りてしまった人は、心が頑なになる。その頑なな心を解きほぐすのは容易ではない。ホームレスは、個人が「やる気がない」から生じるのではなく、「やる気を持たせない社会」が生み出す構造的問題

・期間工を含む社会構造的に弱い立場に置かれた人々の地位を改善する方策を日本国家がとらないならば、この国は内側から崩れ、世界の三流国になってしまう

・新自由主義がもたらす格差問題、正確に言うと貧困問題は、構造的問題なので、個人の努力で解決できない。新自由主義政策に反対する候補者に一票を投じ、新自由主義を是正しないと、日本人の大多数が貧困層に転落し、日本国家が内側から崩れる

・学校秀才や努力家タイプのエリートが陥りやすい罠がある。「成功しない者は努力が足りないからだ」という間違った発想を持つのがそれ。成功には努力と運の双方の要素があることを理解しないと、他人の気持ちが理解できない歪な人間になってしまう

・日本の学歴は、外国に出るとまったく神通力がなくなる。人間的魅力、地アタマのよさ、少々の語学力があれば、日本の因習に囚われずに生きていくことができ、困難な状況に直面しても路頭に迷うことはない

・自分の内側にきちんとした価値観があり、いざとなったら勝負できる実力があれば、世間の評価に迷わされず、フリーターをしながら、今後の人生を決めることができる。案外、それは国際スタンダードに合致している

・人のために何かをしてあげると、天からの巡り合わせがあり、それは必ず一定の時間を置いてから、数倍になって返ってくる

・政治活動を行うには、「怖い顔」と「優しい顔」の双方が必要。横着な官僚に対しては、街宣車と墨字巻紙、市民に対しては、徒歩デモや対話集会というように、政治目的に応じて最も効果的手法を用いること

・愛が強いと、自分の感情に重きが置かれすぎて、不和が生じやすくなる

・近代資本主義の基本は生産。金融資本が大儲け、大損していたのは古代や中世の話。ただし、そのころは金貸し資本が破綻しても、影響は社会の一部にしか及ばなかった。しかし、現在は、金融恐慌になれば、その悪影響は非正規雇用者を含む社会全体に波及する

転職をあおるだけあおらないと人材ビジネス会社は儲からない。転職者が転職に失敗しても、クレームをつけられる確率は低いし、転職者と企業に問題を転嫁できる。これほど儲かる産業はない

・人間が商品経済の便宜のために作り出したカネごときのために一つしかない命を捨てるほどバカバカしい話はない

・作家に経済合理性と異なる発想がないと、よい作品はできない。カネを支払うことで、他人に自分の意思を強制することができる。カネは権力と代替可能で、暴力性を持っている。カネを追求し始めると作品が暴力的になる

・自己啓発や心理学の本をいくら読んでも、自分の性格は変化しない。20歳くらいまでについた性格は一生変化しない。したがって、自分の性格を変えようとせずに、このままの性格で世の中とうまく折り合いをつけた方がいい

・東大の非常勤講師を長年務めたが、東大生であることを鼻にかけるのは、苦労して何年も浪人して東大に入り、その後も能力が劣るので留年したような、東大の中の下位集団に属する連中

・カネには悪魔が宿っている。この悪魔は、生活に必要な範囲でカネが動いているときには、頭をもたげてこない。しかし、一般市民の場合、1億円を超える利権抗争が生じると、この悪魔が動き始め、愛情も友情も壊していく

・苦しいときは、正直に「苦しい」と言い、「助けてください」と叫ぶこと。そうすると必ず助けてくれる人が出てくる

・優秀な人ほど、「自分の得意なことと、自分の好きなことは違う」という意識をもっている

・自分のことをダメ人間と思っている人は決してダメ人間ではない。なぜかというと、ダメである自分を外から観察しているもう一人の自分がいるから。本当のダメ人間は自分がダメ人間であることに気づかない



著者は同志社大学神学部出身のキリスト教徒、ロシア元外交官東大元講師、鈴木宗男事件に絡む背任罪で逮捕後、1年半の拘置所生活、その後人気作家という激動の人生を歩まれています。

エリートの目線と庶民の目線、外国人的な眼と日本人の眼、とにかく幅広い知識と経験を有して、堂々と生きておられます。

著者に学ぶべき点がいっぱいあるように思います。その著書を読めば、何事にも動じない考え方が身につき、悩むことが少なくなるのではないでしょうか。
[ 2010/05/24 11:13 ] 佐藤優・本 | TB(0) | CM(0)

『インテリジェンス人生相談[個人編]』佐藤優

インテリジェンス人生相談 [個人編]インテリジェンス人生相談 [個人編]
(2009/04/25)
佐藤 優

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著者の佐藤優氏の本を紹介するのは、「国家論」に次いで2冊目です。国家論が「硬」だとしたら、この本は「軟」です。

著者は、やり手の外交官だっただけに、さすが、硬軟問わず、教養に満ちあふれています。

さらに、「学習する目的は、知識人(インテリ)になること。立身出世のためではない」というポリシーを持っておられて、その知識は半端じゃありません。

この本は、週刊「SPA!」に連載されている「佐藤優のインテリジェンス人生相談」に掲載されたものを編集したものです。

人生相談という形をとっていますが、著者の幅広い知識、教養に触れることができます。面白く読めて、教養が身についた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・古代インドの性の経典「カーマ・スートラ」には、モテ男の類型が書かれている。
モテ男とは、「愛の学問に精通している男」「話し上手の男」「女の弱点を知っている男」「相手の女友だちと親しい男」である

・「カーマ・スートラ」に書かれている、ゲットしやすい彼女とは、「いつも男を見つめる女」「社交を非常に好む女」「見栄っ張りな女」である。さらに簡単にゲットできる彼女は、「だらしない女」「無教養な女」「悪臭を放つ女」である

・秘密の90%は自分の口から漏れるので、話さない限りにおいて、愚かな行為を満喫すればよい

・人間は愛する相手に何かを与えたくなる本能がある。猫はエサを入れた端から音をさせて勢いよく食べ、エサやり冥利に尽きるが、満腹になったらスイとその場を離れる。男の態度はこの猫のエサに対する姿勢につながる。男は愛情がなくてもセックスする動物

・自由主義においてはカネが全て。しかし、カネでしか価値を測れなくなると、人間的な価値がわからなくなる。この人と一緒にいたい、この人を幸せにしたい、この人を守りたいという価値観が心の底から湧いてこない限り、まともな恋愛はできない

・地方議員は、政党や政治的傾向に関係なく、悩んでいる人に対しては親身になって相談に乗ってくれる。牧師は守秘義務に関しては徹底的な訓練を受けており、相談も多く受けるので、適切なアドバイスをしてくれる

・「耐える女」の場合、我慢の限度を越えると「キレる女」になる危険性を自覚しておくべき。「落ちこみ」よりも、容赦ない発作的な「怒り」が問題になる

・恵まれた家庭で育ち、エリートの夫を得た妻が陥りやすい病は、子供に夢を託し、強要すること。「お受験」はその一例

・人間には、自分の生活を成り立たせる事項については、マイナスになることは絶対に言わないという職業的良心がある。自分の職業と利害相反になることを公言する人がいれば、社会人としての自覚に欠けると言われて仕方がない

・他人の気持ちを思いやることができる優しさ、嘘をついてはいけないこと、家族の絆の重要さ、勇気の大切さなどは、幼いころ何度も読み聞かされる絵本や童話によって、子供に刷り込まれる

帰宅拒否症候群は、登校拒否や出社拒否の裏返しのような症候群。彼らは、家庭の居心地が悪いので、家庭にいる時間をできるだけ短くしようとする。帰宅に抵抗ないというのは、実のところ家庭に満足しているということ

・人間は自らの利害損失を冷静に計算できなくなると、周辺に次々とトラブルを呼び寄せるようになる

・人間社会には、愚行権というルールがある。他人のすることが愚かに見えても、自分に直接的危害が加えられる可能性がない場合、他人の愚かな行動を認めること

・民族的伝統と見られているものの大半が過去百数十年の間に「創られた伝統」に過ぎない

・宗教のポイントは、その宗教を信じていて、自分は救われていると感じるかどうか

ギャンブラーがカッコいいのは、手にしたカネを派手に使い、バラまくから。消費(浪費)しない人は、投機型の投資家に過ぎない

・オタクと教養人に上下関係はないが、オタクと呼ばれる人たちが教養人でないのは、知識に対する視点と知識の使用法が違うから。教養とは知識を頭の中で蓄え、発酵させて、自分で運用できるようになることを指す

・英会話学校に行っても語学力がそれほど向上しないのは、教師が教授法の訓練を受けていないから。おすすめは、予備校の大学院受験コースで英文解釈の訓練を徹底的にすることと海外の語学学校に短期留学すること

・交渉術の要諦は、動物行動学(エソロジー)。動物は親愛の情をもっているか敵愾心をもっているかを、目で判断する。鏡を見て、怒ったとき、哀しいとき、嬉しいとき、親愛の情を抱くときなどの瞳の動きを研究すること

・動物は警戒する相手と同じえさ箱からえさを食べることを嫌がる。裏返して言うと、一緒に食事をするようになると、動物的本能から信頼関係が増す。食事をする機会に、なにか面白い話をし、相手に認知されて、懐に入り込む技法を身につけるといい

・記憶の中に眠っている情報を引き出す鍵となる情報(インデックス情報)をメモに記すことで、人間の脳は、必要な情報を自然に定着させる

・論壇で影響力のある人に噛みつくのは、地獄坂を転げ落ちている状況の人が生き残る方法のひとつ



この本は、人生相談の個人編です。個人の悩みに、作者の経験や教養の中から、最適の解を相談者に示しています。作者の引き出しの多彩さに興味が惹かれました。

もう1冊、社会編もあります。「インテリジェンス人生相談社会編」を次回、紹介したいと思います。
[ 2010/05/23 10:21 ] 佐藤優・本 | TB(0) | CM(0)

『「たのしみ」な生き方-歌人・橘曙覧の生活法』神一行

「たのしみ」な生き方―歌人・橘曙覧の生活法 (角川文庫)「たのしみ」な生き方―歌人・橘曙覧の生活法 (角川文庫)
(2001/07)
神 一行

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橘曙覧(たちばなあけみ)は、江戸末期、福井県で生まれた歌人です。もともと大商家の後継者であったのに、その地位を捨て、清貧を友にし、名を求めず、利も求めず、悠々自適の生活を送った人です。

死後30年近く経って、正岡子規が「曙覧こそ実朝以後のただ一人の歌人である」と絶賛の評価を与えたことで、世間に知られるようになりました。橘曙覧の歌として「たのしみは」で始まる「独楽吟」が有名です。

この「独楽吟」で、共感できる歌を幾つか選び、著者の橘曙覧に関する意見で参考になった箇所をまとめました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・たのしみは 妻子むつまじく うちつどひ 頭ならべて 物をくふ時

・たのしみは 空暖かに うち晴れし 春秋の日に 出でありく時

・たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時

・たのしみは 心にうかぶ はかなごと 思ひつづけて 煙草すふ時

・たのしみは 常に見なれぬ 鳥の来て 軒遠からぬ 樹に鳴きし時

・たのしみは 物識人に 稀にあひて 古しへ今を 語りあふ時

・たのしみは そぞろ読みゆく 書の中に 我とひとしき 人をみし時

・たのしみは 心をおかぬ 友どちと 笑ひかたりて 腹をよる時

・たのしみは 昼寝せしまに 庭ぬらし ふりたる雨を さめてしる時

・たのしみは 機おりたてて 新しき ころもを縫ひて 妻が着する時

・たのしみは 人も訪ひこず 事もなく 心をいれて 書を見る時

・たのしみは 好き筆をえて 先づ水に ひたしねぶりて 試みる時

・たのしみは 庭にうゑたる 春秋の 花のさかりに あへる時時


・橘曙覧は、人を純粋に愛し、自然と調和し、家族を大切に思い、利欲を求めず、かといって世を恨むことも愚痴ることもなく、ただひたすら自分の魂に忠実に生きた。こうした生き方は求めようとしてもなかなかできるものではない

・豊饒たる生活に慣れてしまった現代人の目からすれば、曙覧の歌を、貧乏くさい歌と思う人もいようが、そういう人は現代社会の贅沢に毒されている人で、本当の幸福が何であるか知らない人である

・曙覧が偉いのは、物質的に恵まれない生活をしていながら、人生に対して何のひがみも持たず、そうかといって悟りきったような隠遁者のすましきった感慨がないこと

・詩人ワーズワースは「低く暮して、高きを思う」と謳ったが、曙覧の心境もまさにこれ

・物がなくても、貧しい生活であっても、人間の幸福とは関係ない。「たのしみ」は見つけようとすればどこにでもある。それに気づかないのはわれわれの心に幸福を発見する「たのしみ」の思想がないからと曙覧は歌っている

・「好きに生きる」これは人生を楽しく生きるときの至言。結局のところ人生は一度かぎりなのだから、幸福に生きるには「好きに生きる」ことしかない

・われわれは、無意識のうちに「明日」と「昨日」の自縛の中で生きていることが多い。もし「今」だけに生きているならば、人生の半分以上の悩みはないはず

・幸福とは、喜びを感じている状態のこと。なんでもない平凡な日常生活にこそ「たのしみ」があると曙覧は教えてくれる。逆に言えば、喜びを感じる心を持てということ

・曙覧は高邁なる思想で生きたわけではない。「嘘いうな、物ほしがるな、体だわるな」の三原則をもとにし、それを「至誠の精神」「知足の精神」にまで高め、結果として「無為自然」の思想に到達して一生を送った人



私自身、橘曙覧の感性、考え方と生活態度に憧れています。清々しい貧しさ、つまり清貧こそ、幸福ではないかと考えています。

若い時は、そんなことは思っていませんでしたが、ある程度齢を重ねると、そう思うようになってきました。

考え方や生き方は、それぞれ違うと思いますが、こういう生き方もあるのかなと思われた方は、一度、橘曙覧の本を手に取られると面白いのではないでしょうか。
[ 2010/05/21 08:04 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)

『お届けにあがりました!』三田村蕗子

お届けにあがりました!お届けにあがりました!
(2006/11)
三田村 蕗子

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この本は、デリバリービジネスについて書かれたものです。デリバリーと言えば、米、酒、新聞、寿司、ピザなどを想像してしまいますが、それ以外の意外な商品の宅配も紹介されています。

流通のビジネスでは、客を遠くから呼ぶか、客に近づいていくかの、どちらかを徹底するしか策がないように思います。

この本には、客に近づいていく商売の新しい展開が載っています。今回、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



蕎麦の出前持ちは、「かつぎ」と呼ばれ、享保年間(1700年代前半)にすでに出現している。しかし、蕎麦の出前が景気よく伸びていったのも1970年代前半まで。伝統的出前は衰退の一途を辿っている

・本格中華のデリバリーで躍進する「チャイナクック」は、出前ラーメンで、のびない麺の開発と、玄関先で保温ポットに入ったスープを注ぎ入れることで有名。「しょせんデリバリーだからこんなもの」という客の意識を払拭しようとしている

・この10年ほど牛乳の宅配軒数はずっと伸び続けている。120万軒まで減っていたのが、600万軒までに増加。重いのが億劫な高齢者の増加、働く女性の増加、宅配独自の健康志向商品開発などが、増加の後押しをしている

洗濯代行サービス(バッグ詰め放題2400円で洗濯物を洗って、乾かし、きれいにたたむ。但しアイロンかけなし、集荷から配達まで中1日)が伸びている。最初は男性やお年寄りを想定していたが、客の7割が20~40代の女性。下着に抵抗が薄れてきている

・住友不動産のおそうじ宅配便(依頼主にキッチンやトイレなど掃除箇所を決めてもらい、スタッフ2人が2時間単位で掃除し、1回18900円の料金)は年4万件以上、売上20億円の実績。いったん利用すると便利さが手放せなくなる「中毒性」がある

・お掃除本舗では、お掃除のプレゼントをキャンペーンに使いたいという企業からのオファーが増えてきている。景品利用者の反響は大きい。その後リピートオーダーになだれこむ場合が多い。利用者の7~8割が専業主婦

・宅配ピザは、すでに1300億円市場に育ち、しっかりと食生活に根づいた感がある。ただし、ハレの日の利用に限定されている点は、米国と大きく異なる

・「オフィスグリコ」のおやつのデリバリーサービスの価格は100円。富山の置き薬のお菓子版。小腹が空いたときに男性が食べるパターンが目立つ。残業時に人気がある

・外食チェーンの「オフィスほっぺ」は100円均一の焼きそばやコロッケ入りの調理パンを届ける。工場地帯で人気

・演奏家、マジシャン、大道芸人、占い師、似顔絵師など多彩なエンタメ系職人をデリバリーしているのが、グリーンリビング。「手に職」を身につけたのに、営業が上手でない人をイベントやパーティーに派遣し、クライアントの集客に貢献している

・「商品が底を突く頃」を見逃さず、お米が切れそうな2日くらい前に電話を入れる。「米粒管理」を徹底し、配達業務を精力的にこなしている業者がある

・水のデリバリーの歴史は浅いが、ボトル入りの水を定期的に配達するアクアクララのような会社も出てきた。顧客の7割は個人客だが、美容室、エステ、レストラン、菓子店などの利用も増えてきている

・古紙問屋老舗の大久保が実施している出張機密文書処理事業は、強力、高速を誇る大型シュレッダーで、コピー用紙1箱2500枚分を1分で裁断する。2005年の個人情報保護法施行以来、急速に伸びている



この本を読むと、システムをつくれば、宅配ビジネスには、まだまだチャンスがあるように感じました。

ニュービジネスの立ち上げを難しく感じてしまいますが、デリバリーという視点で考えると、まだまだ、隙間があり、需要も見込めるものが多いのではないでしょうか。

新規分野の開拓の仕事に携わっている方や、起業しようと考えている方には、面白い1冊になると思います。
[ 2010/05/20 08:29 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『ニセモノはなぜ、人を騙すのか?』中島誠之助

ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21 C 135)ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21 C 135)
(2007/08)
中島 誠之助

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著者は、開運なんでも鑑定団でおなじみの中島誠之助氏です。開運なんでも鑑定団は、毎週欠かさず見ているお気に入りの番組です。著書を紹介するのは、「ニセモノ師たち」に続き2冊目です。

骨董の世界は、騙し騙されが日常茶飯事で、大人の駆け引きが常に繰り広げられています。騙される方が悪い世界です。

特殊な世界のように感じられますが、この世の中も、騙し騙されが、目に見えないところで常に行われています。自然に騙されていたり、後で騙されていたとわかることがしばしばです。

騙される人は当然ながら、お金が残りません。そうならないために、一番奥が深い、骨董の世界での騙し方を知ることは参考になります。日常世界の中でも応用できる部分が多いのではないでしょうか。

今回、勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、これらを紹介したいと思います。



・「人を陥れるには、まず利益を与えてやり、のちに策をめぐらせば、中人以下は皆落ちるものなり」とは坂本竜馬の処世訓のひとつ。見事に本質を捉えている

・お人良しで懐が甘く、そこそこ使えるカネを持っているやつがひっかかる。大金持ちは、いくらでも使えるカネはあるが、頭がよくて懐が吝いから、時間と労力が要り、骨が折れる

・知識という土台の上に、「欲」という家を建ててやれば、ニセモノを売る架空の舞台は、たちまち整うことになる

・骨董商として大成する人は、目筋はほどほどで「目利き」と「物識り」をブレーンに抱えた懐の大きな人間である。狡賢いのは二番手にしかなれない

・実際に現場に出かけた場合、シナモノが置かれている場所、包んでいる風呂敷の様子、箱の様子を見て、その箱の中身を見る前に、真贋は見えてしまっていることが多い。これを骨董界では、「次第」という言葉を使うが、次第が悪いものがニセモノである

・日本人はカネモチで好奇心が強い。おまけに本当の意味で満ち足りていないから欲ボケしている。だから美術骨董品のネット売買は時期尚早だと思う

・日本の精神の「さもしさ」がまだ消えていないのは、心が貧しいから。その「さもしさ」が日本人の活力の源になっているが、骨董に関していえば、あまり美しい精神ではない。その「さもしさ」があるため、簡単にニセモノにひっかかってしまう

・名品や感動した作品は、頭の中で育ちすぎる傾向にある。名器名品に接してから、十年、二十年、時間をおいて、同じものと対峙したとき、あなたの感性が磨かれ成長していれば、そのものは必ず小さく見えるはず

骨董商鑑定家は、同じ古物を扱っても、まったく別業。ここをゴチャゴチャにするからニセモノにひっかかる。鑑定家は依頼された相手から鑑定料を高くいただくのが商売。鑑定するものが、ニセモノだろうとホンモノだろうと何だっていい

・一流の骨董商には、一流の職人がついており、修理品が修理品に見えないほど巧みな「直し屋」がいる。この「直し屋」の副業が「汚し屋」。「汚し屋」に頼むと、わびさびがついて、骨董商に戻ってくる。これを「時代づけ」というが、日本の「汚し屋」の腕は世界一

・骨董屋の主人は、店に客が入ってくると、世間話をしながら、相手の懐具合と、目筋を見ているもの。会話の途中で、相手の支払能力とか、趣味の善し悪しが先にわかってしまう恐ろしさがある

・奈良の仏教文化は、聖武天皇が律令国家を完成して天平文化を開花させた精神が基礎にあるから、いくらカネをかけても再現して真似ることはできない。京都の仏教文化は、道長以来の富と権力が基になっているからカネさえあれば作れる

・一心不乱に作る純粋さ、ごまかしのなさがホンモノの原点。「いい仕事している」というのは、誰にも真似のできない世界のこと。清朝の色絵磁器にしても、日光の陽明門にしても、職人の入魂の作品だが、原点ではない。そこを見ないと本質が見えてこない

・目利きの修業のひとつに「捨て目をきかせる」という言葉がある。見るともなく見ているという意味。「自然体でいながら常に注意を払う」ということ

・すぐれた骨董商にとっての願望は、出世するシナモノを発見することで、心の勲章を授かろうと思って仕事をしている。ホンモノニセモノを見分けるのはプロとして当たり前。大切なのは、出世するモノを見分ける力、つまり美の発見ができるかが本当の目利き

・芸術家は文化に耽美にひたりすぎると作品が形骸化する。豊かな流動性を常に注入しなければならない。それには、昔は旦那衆がその役割を担っていたが、大衆の力が必要である。その力が大きいほど、優れた能力を持つ芸術家は上に行くことができる



この本を読み終えてから、モノを見る目、出世するものを見分ける目を持つことが、人生の一つの目標になるのかなと感じるようになりました。

そういう目があれば、騙されることはまずありません。騙されないためには、やはり、自分を磨き、高めなければならないことがよくわかります。

この本には、微妙なニュアンスの言葉が多いですが、ある程度、経験を重ねた人には、納得できて、面白く感じられるのではないでしょうか。

文化芸術だけでなく、世の中を生きていくためにも役立つ1冊です。
[ 2010/05/18 07:19 ] 中島誠之助・本 | TB(0) | CM(0)

『日本の職人ことわざ事典』清野文男

日本の職人ことわざ事典日本の職人ことわざ事典
(2001/02)
清野 文男

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この本には、上達するヒントや基本が多く書かれています。上達するには時間と我慢がかかるものですが、それをしんどいと考えてしまいがちです。

昔もそうだったのだと思います。そう感じさせず、辛抱させるために、多くのことわざが生まれたのかもしれません。

この本を読み、ためになったことわざが25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・商は大きく堅く  (まとめて買いつけ、計画的に売ることが大事)

・一芸に通じれば六芸に通ず

一念の念  (一つのことに一生をかける)

古を師とす  (ものの歴史を知って、ものづくりをしてこそ、名作名品が生まれる)

・運針は上達の早道  (同じことを何度も繰り返すことが、上達の早道)

・起きて半畳、寝て一畳  (作業場は畳半分あれば仕事ができる。寝るのは一畳あればいい。贅沢せずに満足すると幸せを呼ぶ)

お尻が覚える  (座り仕事はまず、先輩の座った位置、高さを目で盗み、尻で覚えることが大切)

・木を買うなら産地を買え  (育った環境を見て材料を買うこと)

・木を見る者は土を読め  (木は育つ土壌によって性質が異なる。土を見ると、木の用途が決まる)

・緊張感も集中力も他人事  (職人に自信がつくと、緊張、集中という言葉も無用になり、怪我もしなくなる)

芸は道によって賢し  (芸の道に長くつきあうことが一番大切)

・怪我と病気は自分持ち  (「ケガは頼んでいない」ケガをしないように配慮して仕事をしろ)

西行の腕を盗め  (西行とは、諸国行脚した西行法師にちなんで、渡り職人のことを言う。渡り職人の仕事ぶりを、見ぬふりして盗む)

三分は匠、七分は主人  (建築の際、三分は大工の意見、七分は建て主の意見を採り入れる)

・仕事幽霊、飯弁慶  (仕事をしないで、食べるだけの人)

・品物を見てくれ (仕事を見てくれ、出来上がった品物を見てくれというのは、自信を示す言葉)

正直の頭に神宿る  (職人は馬鹿正直と言われるまで堅く生きることで、よいものがつくれる。正直に生きれば、神様がついてくれる)

商人系図なし  (商人は本人のやる気が大切で、血筋で仕事を引き継ぐのではなく、才で引き継ぐもの)

・職人は馬鹿でできず、利口でできず、中途半端でなおできず

・創作はご法度  (職人として生きるのなら日用品をつくれ、芸術品はつくるな。作家になってはいけない)

・大工の下拵え  (建てる前の作業と手順を踏んで仕事をすること)

手離れをよくしろ  (手数が少ないほど、いい仕上がりになる)

・平面はものづくりの基本  (設計図、構図を忘れては名人になれない)

真似されても真似するな  (親方は技を盗まれる存在にならなくてはいけない)

・名人は謗らず  (名人になると他人の悪口は決して言わないもの)

・世の中じゃ百点とらなきゃゼニもらえん  (完璧でないとお金を払ってくれない)



これらのことわざを見ていると、職人は職人の哲学、商人は商人の哲学をもって仕事に励んでいることがよくわかります。

そして、その哲学が実行できたとき、哲学が美学に変わったのかもしれません。仕事の哲学が、生き方の美学に結びついたとき、大きな満足感が得られるのではないでしょうか。

これらのことわざを、今就いている仕事に応用して、「古を師」とするのも悪くはないと思います。
[ 2010/05/17 06:45 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『成功の実現』中村天風

成功の実現成功の実現
(1988/09)
中村 天風

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この本は、1冊10000円を超える値段です。今から20年前に買いました。独立する前に、自分を鼓舞するために買ったように記憶しています。

とりあえず、今も何とかやっていけているのは、この「成功の実現」を読んだおかげかもしれません。

3回ほど読みましたが、この15年間ほどは手もつけずに、本棚に飾っていました。久しぶりに読んでみましたが、さすが、大物の中村天風さんだけあって、成功するための基本、王道が書かれているように感じました。

中村天風さんを師とする人は、原敬元首相、東郷平八郎元帥、宇野千代さんなどの門下生だけでなく、松下幸之助氏や京セラの稲盛和夫氏など、大物が多数います。

今から20年前に鉛筆で線を引いた箇所を中心に、我が身を振り返り、役に立ったと思えたところが30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・どこまでもまず人間をつくれ。それから後が経営であり、あるいはまた事業である

生命の力を増やすのは、第一が「体力」、第二が「胆力」、第三が「判断力」、第四が「断行力」、第五が「精力」、第六が「能力」。この六つの力の内容量を豊富にしていない限りは自分の人生をものにすることはできない

・健康も長寿も運命も成功も、人生の一切合財のすべてが、積極的精神で決定される

・自分の現在の思っていること、考えていることを、積極的か、消極的かと第三者の立場で厳密に検討するという気持ちが必要

・ほかの人の言葉や言動のなかの消極的なものに自分の心を同化せしめないこと

・現在も永久にも、自分がやましい気持ちを感じないというものこそ、本心良心のあらわれ。自分の言葉や行いは常に本心良心そのままという気持ちを心がけの第一とされたい

消極的な言葉を使わないようにするには、不平不満を口にしないこと。不平不満のある人は、始終上ばかりを見て、下を見ないでいる。自分だけが一番不幸な人間と考えている。この考え方から出てくる言葉は、未練、愚痴、価値のない世迷いごとだけ

・お前の生き方に誤りがあるぞと自覚を促すために、病や不運が与えられたとしたら、これは大きな恵み。そう考えて、心を積極的に振り向けかえる。人生を完全にする秘訣はただもう自分の心の置き方を変えるだけ

・心の態度というのが、人生の全体に対して、建築物で言えば、土台同様の重要な関係を持っているということ

・身に病ありしといえど、心まで病ませるな。運命に非ありしといえど、心まで悩ますな

・人間の頭で考えた事柄がいろいろの設備や組織になって、この世の中が進歩してきている。人間は、この世の中に、宇宙本来の面目である進化と向上に順応すべく出てきたと思う

・消極的な観念要素が心の奥底に溜まると、アンテナに相当する、感性性能の調子が崩れる。その調子が崩れると、心の働きの上でなくてはならない意志の力が弱ってしまう

・お風呂に入って、肉体の垢、汚れをとるように、毎晩、眠りにつく前に、心の垢、汚れをとる、心の中のお掃除習慣をつけること

・良きにつれ悪しきにつれ、考えたことはそのまま感光度の高いフィルムの入ったカメラのシャッターを切ったと同じ、パーッと潜在意識に刻印されてしまう

・憎い、腹が立つ、悲しい、いや、まいった、助けてといった消極的な意思表示を言葉で出さないように。明るく朗らかで、生き生きとして勇ましい感じを、自分も感じ、人も感じるような言葉以外はしゃべらないように

・自覚というのは自然承認。理屈を考え、理由を説明する必要もなく、「ハハァーン、そうか」と心がうなずくのが自覚。理解というのは人為承認。教育がそれ。偉くなる奴は、理解を自覚のほうへ移す分量が多いがための結果

・今まで自分と思っていた肉体は、自分ではない。自分という気体が生きるための必要な仕事を行う道具。心またしかり。気が生きるために体というものをこしらえ、心というものをこしらえた

・肉体は自分でない、心も自分でないという自己意識を常に自分から失わないでいると、勇気凛凛として、いかなる場合があっても恐怖なんか出てこない

・正義の実行を行う場合の本心良心は気が動く心の能動。宇宙本源のあり方は真善美いわゆる本心良心だから、汚れもなければ濁りもなく、ありのまま、そのまま

・自分自身を常にもう一人の自分で守らせていくような考え方で生きていくこと

・正しいことをしている人間に正しからざる出来事の生じるはずがないという信念でいると何も考えなくていい。無我無念のとき、自在境というものがあらわれるもの

・心は思う仕事をする道具。心は思ったり、考えたりする以外に仕事をする力がない

もう一人の自分が脇で見ている特定意識を自分の心とする習慣がつくと、どんな出来事に直面しても心の動乱が生じない。泰然自若として処置することができる

・人間の多くが、気が散りやすいのは、自分では気づかないうちに、己の心の中に不必要な雑念や妄念や邪念がたくさんたまっているから

・心は自分の生命を監督するために働かさなければならないのが、感情や感覚の奴隷になってしまう。そうなったら、人間は惨め以上の哀れなものになってしまう

・自分の心を常にはっきり使う習慣をつけることに努力すれば、三年、五年の後には、自分でもびっくりするような霊性心意識という、思ってもみなかった高級な意識状態が自分の心の中から発動するようになる

・「真・善・美」というのは、「真」とは「誠」。うそ偽りのない、筋道の乱れていないのが「誠」。「善」とは「愛情」。普遍的な気持ちで愛する「愛情」。「美」とは「調和」。消極的な気持ちになると「誠」と「愛」と「調和」の気持ちから離れてしまう

・想像力を応用して、心に念願する事柄をはっきり映像化することによって、絶えざる気持ちでぐんぐん燃やしていると、信念がひとりでに確固不抜なものになる。つまり、思っていること、考えていることが土台となって信念というものができてくる

・意識には実在と潜在の二つがある。実在意識は思考や想像の源、潜在意識は力の源という役割を行う。潜在意識は、実在意識の思念するものを現実化するよう自然に努力する



「成功の実現」は、中村天風さんが昭和33年~43年に講演されたテープを編集したものです。

現在、巷にあふれている自己啓発本の原点となる書です。この本を読めば、他の自己啓発本が小さく見えてしまうから不思議です。

読んでいるだけで、心の垢や汚れがとれてくるように思います。成功を目指す方にとっては、心の拠り所として、貴重な1冊になると思います。
[ 2010/05/14 08:22 ] 中村天風・本 | TB(0) | CM(1)

『「婚活」時代』山田昌弘、白河桃子

「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)「婚活」時代 (ディスカヴァー携書)
(2008/02/29)
山田 昌弘白河 桃子

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結婚する前は、「お金」より「モテ」の方が重要です。若いとき、「モテ」ることが、すべての行動の根底にあったように思います。

結婚してからは、生活を意識することで、すべての行動の根底に、「お金」が絡んでくるようになります。

「お金」も「モテ」も、人間にとって、避けて通ることのできない欲求で、行動に大きな影響を及ぼします。

最近、「モテ」事情に関しては、疎くなっているため、この本を読みました。特に、最近の結婚事情がどうなってきているのか詳しく知りたいと思っていたので、役に立ちました。

参考になった箇所が20ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・現在、生じているのは、晩婚化ではなく非婚化。それも、したくてもできなかったという非婚化。今後、今の若者の25%以上が一生結婚しないと予測されている

・「負け組」と思っている男性たちの中に、すでに、女性とつき合うことをあきらめてしまった層が多数存在する

・男女ともに、結婚したくないから結婚しないのではなく、結婚したいのにできない。さらに、すぐにでも結婚できそうな感じなのに、結婚できないでいる人たちが非常に多い

・男性に経済的に依存したいという従来型の結婚を望むタイプは、一般職や派遣で上場企業などに勤める女性によく見られる。その多くが、結婚相手に自分の2倍の年収を望む「年収2倍の法則」が見受けられる

・仕事のできる自立型女性は自分より仕事ができる男性が好み。依存型女性も、仕事ができる男性が好み。仕事ができる男性は自分をバックアップしてくれる旧来型の依存型女性が好み。仕事ができる男性は、依存型女性に根こそぎ刈り取られて残っていない

・日本の男性は、すっかり受け身の王子様ばかりになっているから、最初のひと声は女性からかけないと、何も始まらない

・日本人は、ずっと恋愛下手だったのに、それに気づかないまま恋愛のオープン市場化をしてしまって、そのツケを、今、支払わされている

・結婚すると、経済的余裕がなくなるからいやだ、というのは、親に寄生している独身者が多い日本独自の理由。欧米では、学校を出たら、子供は自立して親の家を出ていくのが普通。1人より2人暮しの方が生活が楽になる。低収入の人同士ほど早く結婚する

収入が多い男性というのは、それだけハードに働いているわけだから、そもそも家事分担などできるわけがないが、それではイヤという女性が多い

・女性が結婚に踏み切れないのではなくて、彼氏が結婚に踏み切れず、そのまま永過ぎた春を過ごすカップルが多い。転職が正念場、やりたい仕事に就いていない等々、経済状況がちゃんとしない限り、結婚できないと思っている男性がまだまだ多い

女性経験値が浅い男性ほど、女性に対するビジュアルの要求水準が高く、きれいな女性に一極集中する。女性には、ライバルが多いところを避ける戦略性と、相手を総合点で見る視点がある

・女性と交際したくても、その入口でシャットアウトされてしまう男性もいる。入口突破には外見を磨くこと。その次に、NGワードを減らすこと

・出会いの第一は「友人知人の紹介」、第二は「職場」、第三は「学校」。職場結婚は、ある程度の囲いの中に一定期間一緒にいて、時間を共有する「囲い込み漁」。同窓会は「出会いの時間差攻撃」。合コンは「一発勝負」だから、しゃべられない人は魅力を発揮できない

・ネット婚が確実に増えてきている。アメリカでは、すでに結婚の12%がネット婚。メールは意外に人柄を表すので、慣れると「ネット勘」が働く。選ばれる男性は、相手の立場に立ってメールの書ける人。ネット勘を養えば意外と出会いの宝庫である

・国内で国際結婚する人は、女性は増えていないが、男性は、毎年3、4%ずつ増えている。男性の相手は、中国、フィリピン、韓国、タイの順。女性の相手は、韓国、アメリカ、中国、イギリスの順

・世界中どこに行っても、現地の人と結婚している日本女性がいる。日本の女性は愛という動機でどこへでも行ける。それに対して、日本の男性は今、世界一モテない状況。コミュニケーション能力の格差で、外国人に負けてしまう

・モテない男性は、モテない男性同士でくっついているので、いつまでたっても、女性との会話トレーニングができず、コミュニケーション力が向上しない

・女性の場合、昔クラスのマドンナだった人は、いつまでたってもマドンナという魔法がかかっている。35歳以上の女性は、マドンナ幻想が使える「過去縁」を活用すべき

女性の好きな趣味を好きになれば、出会いは増える。甘いものを一緒に食べにいってくれる男性は人気がある

・男性は、稼げなくても、なんらかの魅力、モテ資産があれば、結婚は成立するという時代になっている



この本を読んで、結婚したくてもできない女性が意外と多いということがよくわかりました。

時代に合わせた価値観を持たず、古い考えに囚われていると、結婚できない時代になっていることもよくわかりました。

これらを考えると、少子化対策には、かなりの根気とただならぬ決意も必要なように思いました。

独身の人が、相手を探すためだけでなく、親や社会も、この本を読んで勉強しないといけないのかもしれません。
[ 2010/05/13 07:32 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『倒産警報-あなたの会社は大丈夫』内藤明亜

倒産警報―あなたの会社は大丈夫?倒産警報―あなたの会社は大丈夫?
(1999/07)
内藤 明亜

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著者は、会社を15年間経営した後、倒産させた経験のある「経営危機コンサルタント」です。

実際に起こり得る、倒産の予兆が微妙な変化を通して書き記されています。倒産現場に精通されていると感じました。

私も「倒産しそうな会社チェックリスト100」をまとめて、このブログに書きました。著者と同じ視点もあり、違った視点もあり、それらを含めて面白く読むことができました。

著者が簡潔に記した「倒産警報」は、「経済的危機」「組織的危機」「構造的危機」の3つの現象と、「連鎖型」「自己破滅型」「内部崩壊型」「構造型」「敗戦型」の5つの原因が上手に整理されており、読み応えがあります。

10年前の本ですが、内容的に全く色あせていません。倒産しそうな会社は時代や業種が変わっても、何ら変わらないことがよく分かります。

今回、参考になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・就業規則が守られなくなった
(社員が規則を守らなくなったのは、会社に魅力がなくなったことの現れ)

・取引先から会社の危機が囁かれた
(噂が囁かれる情報源は、銀行などの金融機関からというのが多い)

・社長の息子が会社を辞めた
(息子を社外に出すのは、経営者が会社の先行きに不安を感じている証)

・経理担当役員が突然替わった
金の出入りを全部見ている重要な立場にある人が替わるのはよほどの事情がある)

・突然知らない役員が増えた
(取引先や銀行からの役員は、支払の滞りが原因の場合が多い)

・支払条件が変わった
(支払条件の変更は、支払う側の資金回転力の低下を意味している)

・経理と社長の密談が多くなった
(ヒソヒソ話の内容は、支払待ち、手形への切替え、銀行融資などの事態が多い)

・ノンバンクから融資を受けている
(銀行からの融資が限界に達している。ノンバンク融資を受けた会社の7割は潰れる)

・税務署や社会保険庁から電話がよくくる
(税務署や社会保険庁からの電話は支払の督促だと思っていい)

・複数の銀行に融資を申し込んでいる
(メインバンクが融資を渋ったから、他の銀行に金策に走っていると考えられる)

・ライバルに水をあけられている
(同業他社も同様に落ち込んでいる時はいいが、そうでない場合は転換期)

・利益率が落ちている
(売上維持も難しい今の時代では、会社が維持できなくなる)

・クレームが多くなった
クレームの改善努力が感じられない場合は要注意)

・大手が参入してきた
(大手の参入は、中小企業には驚異。価格競争の徹底抗戦になれば勝ち目はない)

・仕入れ先が安定しなくなってきた
(支払いに問題が生じたら、商取引の制限をすることはよくあるもの)

・支払日に支払わない得意先が増えた
支払いジャンプがあると、自分の会社も支払先にジャンプを願って連鎖する)

・無理を承知の営業目標に変わった
(利益にこだわるべき時に、不可能な目標を提示する会社は相当焦っている)

・中間管理職などの異動が激しい
(売上減が個人のミスでない場合の異動は、トップがイライラしている証拠)

・会社に楯つくと、すぐに異動になる
(真に有能な人間が楯つくのを嫌ったら、会社はイエスマンばかりになり危険)



この本は、反面教師として、役に立ちます。こうすれば良くなるということも大事ですが、こうなると悪くなるということも大事です。

特に守りの時期は、倒産しそうな会社に学ぶべきことは多いのではないでしょうか。是非、この本を読んで、また「倒産しそうな会社チェックリスト100」を見て、日ごろから、チェックしておくことも重要だと思います。
[ 2010/05/11 08:34 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『生きがいの創造』出口日出麿

生きがいの創造生きがいの創造
(1997/11/06)
出口 日出麿

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出口日出麿さんの本を紹介するのは、「生きがいの探求」に次いで2冊目です。そのときにも書きましたが、著者は、明治30年生まれの宗教家で、戦前、国家から宗教弾圧を受けたことで有名な、大本教の3代目教主の婿だった人です。

この本は、著者が22~30歳の時(大正8年~昭和2年)に書いたメモから抜粋されたもので、昭和49年に初出版されました。

90年前に書かれたものとは思えないほど、新鮮で素晴らしい内容です。著名なコンサルタントや宗教家、宗教学者が、出口日出麿さんの本を読んで、参考にしていることは、知る人ぞ知る事実です。

何回も読んだ、この本の中で、気に入って、線を引いているところを抜粋すれば、以下の箇所になります。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ものの成るか成らぬかは、その人の一心に成るか成らぬかによって決まるもの

・「人はどうでも言わば言え、おれはおれだけのことをやってみせる」という広い胸を持っていなければならない

・利己なければ畏れなし。畏れなければ自由自在なり

・「自分はこう思う」ということは言ってもいいが、「自分の言っていることは間違いない」というようなことを言ってはならない

・悟ることの大小は、反省力、観察力の大小によるままである

・自己をのみ幸福にしたいという欲望が、根本において常に潜んでいるので、やがて他人を見下したくなるのである

・自分に似ている者は愛せるが、自分に似ていない者は愛せないというばかりではなく、これを憎むのだからたまらない

・大悪人にせよ、大善人にせよ、その働きの大きい者は、そのみたまが大きい証拠

・人はいつでも、「自分は生まれたてだ」という気分で、「いまからやろう」という暢達(のびそだつ)なところがなくてはならない。年齢を気にしたり、家門を気にかけたりしていて、どうして真の仕事ができようか

・少し才知のある人は、どうしても気ばかり走って、粘り気がなく、急に効果をあげようとあせり、ともすると他を軽く見くびるくせがある

・自己を愉快にし、他人をも愉快にすることに努めるべき。愉快は愉快を呼び、不愉快は不愉快を呼ぶ。じっとものを停滞、抑留しておくということは大なる罪悪である

・人の性は天地に属し、天地は完成を目的とする。だから欲するままにおこなうことは、自己を完成さすことである

今のベストは未来のベストではないが、それでいい。ベストの内容は無限に変化していっても、今の自分に忠実でありさえしたら、悔いというものはない

・人の魂を感動さすのは熱と誠である。単なる知識や技能ではない

・学者や思想家や文筆家には、実際の力がない、度胸がない、腹ができていない。数多く、いろいろの場面、時間、人間にぶつかった人は、どこかに重みが備わっている

・人は自分を傷つけられたと感じるときほど癪にさわるものはない。くれぐれも、人を傷つける言葉や態度を慎まなければならない。これは処世上もっとも大切なことである

・名を認められた人を称賛しないと、自分が時代遅れ、非常識となる。人が誉める者を自分が誉めても、自分が損傷されることはない。こうした心理状態を考えると、人間というものがイヤになってくる

・世間一般に愛とか知と呼んでいるのは、神愛、神知ではなく、偏狭固陋なる執着心を愛と思惟し、利己一方の権謀術数の才を称して知と呼んでいるにすぎない

・賢愚は別として、なんとなく一緒にいて気持ちの豊かな人、取りつきは悪くても、付き合うほど味のある人、こうした人は善人である

ものを見分ける力のない人が上に立っていたら、もはや、その事業の底は見えている

・人間はどうしても自己本位であり、目先本位である

・自分自身の過去の狭小さ、醜汚さを笑わずにいられない。このことは永遠に繰り返される。こうして人は次第に向上していく

・順境に育った者は、不精になり、傲慢になり、忘恩になりがち。名を成す者は十中八九、逆境を突破した者であり、苦難をしのいできた者である

・見直し聞き直し、常にその人の身になって考えてやるだけの余裕と同情を持たなければならない

・発明とか発見とかは、目的に向かって精進した結果得られたものより、ふとした動機によって得られたものの方が実に多い。人間は、天啓によらなければ、大事業はなしえない

・うなるほどお金を持っていても、ちょっとした相場の高下に心配している人がいる。一方、赤ん坊は、家が貧乏で、両親があがき苦しんでいても平気である

・現界は、どちらかと言えば、きたない所である。純なばかりの人では、現界をどうすることもできない。現界をよくしようと思えば、きたない所に飛び込まなければならない。でも、きたなくなってしまってはダメだ

・最良の資本は、かたき決意なり

・力が強く、知恵が発達していればいるほど、方向がちょっと違うと、非常に悪い方に伸びてくる。神様に近づくのも悪魔に近づくのも、その人の決心一つ

・心中に邪念が生じれば、頭上に黒気が立ちあらわれ、邪気は自然にそこに引きつけられる。心中に喜悦の情があれば、その身辺に光輝があり、陽気善霊は自然にそこに集まってくる

・あるがままに楽しむ。なるがままに楽しむ。そのとき、その日のベストに、われを忘れることのできる人は幸せ

・悪魔はつねに、ちょっとの油断にも、つけ入るもの。「これではいかん」と気づいたなら、ただちに気持ちを陽気なほうに転換させること

・人間はこの世においてどうしたらよいか?他人に迷惑を及ぼさない範囲において、自己の欲するままをしたらよい。なすべき時になし、なすべからざる時になすべからず。なすべき時とは、「心が進んだ時」「周囲の事情のよい時」

・よいことかもしれないと思って、悪いことはできない。よいことだと思ってしたことが、悪いことになったのなら、いたしかたがない

・人の行動は、たいてい私利から出ている。まったく私がなければ、この世にわれはない。ただ他人に迷惑を及ぼさない程度の利己、自営であるべき。小児のような無邪気な自然的利己が理想である



私は「神仏を尊び神仏を頼まず」のスタンスが好きです。宗教に関わることはしませんが、宗教心を支えとして生きています。

このようなスタンスを有している人にとって、著者の「生きがいの創造」と「生きがいの探求」は、心の支えにできる素晴らしい書ではないかと思っています。
[ 2010/05/10 07:25 ] 出口日出麿・本 | TB(0) | CM(0)

『人生の作法』西部邁

人生の作法人生の作法
(2002/10)
西部 邁

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かなり前のことですが、「朝まで生テレビ」で、著者のお顔をよく拝見していました。論客というイメージでした。

新聞や雑誌で、著者の文章を読むことはあったのですが、本で読むのは初めてです。体験から形成された思想をお持ちなので、読み応えのある内容です。

この本の中で、勉強になった箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「人生の目的」を考えるということは、「時間」を意識して生きるということと同じ。「時間意識」を持ってこその人間であり、そうであるならば「未来」という時間に向けて、何らかの目的を設定せざるを得ない

・「人生の目的」は、とくに若年者の場合、選択「する」というよりも、むしろ「させられる」もの。だからこそ人生には「運命」というものを感じる

・目的を考えた途端、大なり小なり、遅かれ早かれ、上位の目的を考えざるを得ない。上位の目的を考えた途端、いま考えた目標は「手段」に変わってしまう

・自分の知らない、好きでも嫌いでもない、見たことも気を配ったこともない、一般的他者に対する福祉は、基本的には政府がやるべき

・人間の成功は自由の享受があって初めて満足できる。その大前提として、自分の意図に基づいて、自由な選択肢を選び、その選び方において成功したということが必要

・真善美の想念があるのなら、その反対の偽悪醜の次元も想念せざるを得ない。偽悪醜に敏感でない者は、真善美に鋭敏であるわけがない。人間を価値において優劣に区別したい人間精神のやみがたい傾きは、職業観にも反映される

・才能とか個性は自分勝手に思い込むのではなく、人間交際の場である社会で、他人が承認するもの

・精神の力強さを養うのは、知育ではなく徳育。しかし、厄介なことに、教師、教授、級友は、人格あるいは徳のあるべき姿を具体的に示すことができない。知育も徳育も無効であり、不可能であるが、絶対的に必要である

・「餌に飛びつく人生」と「夢に飛びつく人生」の折り合いは本当の意味での折り合い。日本人のすべてが夢に飛びつけば、日本社会はただちに崩壊する

・大衆社会で人気を博している者は優秀ではない。マス・マン(大衆人)とは劣等な代物を愛好する人のことを指す。劣った者は、劣った者を好む者から名声なり報酬をもらっていると考えることで、もやもやとした敵対意識は払拭できる

・帰る場所があるということ、歓迎されずとも迎え入れてくれるということが人間にとってセーフティネットになる。人間は己の弱さを自覚せざるを得ない事態に陥るもの

・異世代間の交流を持続させる粘り強い生活の連続の中で、人間の「精神の核」と言うべき良心のあり方が形づくられてくる

・上流階級というのは、高い地位にいて命令を下すという矮小な政治権力のことではない。文化的にも高い階級として、子供の育て方、礼儀作法、社交に範を垂れる振る舞いを、お芝居でもいいが、努力して演じ続ける人々の層のこと

・人間が受け入れるべき「拘束」と人間が発揮し得る「自由」というものを、両方勘案した上でのルールをしっかりつくっている社会が「よくできた社会

・知識人が唯一社会に貢献し得るとすれば、実務家たちが短い期間で最善の答えを見つけているのに対し、過去から考え、未来を想い、別の判断を示唆すること。それが知識人の本来の役割

・現代の最大問題は、知識人がスペシャリストにならざるを得なくなったこと。専門人は物事の一側面だけを限定的に分析・解釈する。専門人化した知識人は、全体的、多面的、多層的に存在している物事に発言できず、世論に迎合する

・マスコミは基本的に商売。人々の情動を刺激するものを、専門的知識を利用し、ニュース解説する。情動をあおれば売れるが、日本人の情動は1年以上もたない。知識人もマスコミも、大衆に情動的に迎合しているだけで、良識を発揮する勇気を持っていない

・会話と議論において大事なのは「安定した感情」と「確かな論理」。それに加えるに「ユーモア」がなければならない。感情や論理において絶対の安定性や確実性は不可能。自分は絶対に到達していないことをユーモアで表現する必要がある



本の題は「人生の作法」ですが、社会の作法とも言うべき、西部邁氏の思想が、縦横無尽に書かれているように思います。氏の深い洞察力と鋭い観察力に触れたい方には、おすすめの1冊です。
[ 2010/05/07 08:08 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『お金の心理学』ヘンリー・クレイリンドグレン

お金の心理学お金の心理学
(1988/03)
ヘンリー・クレイ リンドグレン

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この本は、人間とお金の関係を、社会心理、精神、歴史、経済、政治、宗教的観点から幅広く分析した学術書です。

お金が人間の行動と心理を規定するのは事実ですが、それを真面目に研究している人は少ないように思います。

少し古い本ですが、お金と人間を知る上で勉強になります。参考になった箇所を「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・古代、貧乏な人が裕福な人より通貨の粗悪化に強く反対したという事実は、貨幣制度が彼らの幸福に重要なものであったことを意味している

・キリスト教は初めから貧者の宗教であった。それは貧しさを賛美し、裕福を軽蔑した。貧者は恩恵を受けるものと信じている人々は、経済発展の計画を進めようとしたがらなかった

・中世期、暗黒時代に広がっていたキリスト教は、貿易を抑制し経済的沈滞を培った。神父の説教は精神の要求を満足させたが、肉体の要求を満足させることはなく、貧困、無知、無感動が大事業や成長を抑圧した

・多くの都市共和国の硬貨には、それを鋳造した都市の名や紋章が刻まれていた。硬貨はその地方のプライドや威光を示すものとしての働きをもった

・貨幣が経済的価値をもつために、必ずしも銀や金などに変換できる必要はない。社会が交換の手段として本質的に価値の少ないものを使用すればするほど、社会の富は大きくなる。貨幣の価値は期待に基づいたもの

・1920年代初めの大インフレから立ち直った後、その教訓にこだわり、ドイツ政府は、賃金や物価を下げる政策を行った。その結果、失業率が20%になり、ヒットラーが権力を握った。10年前の大インフレではなく、激しすぎるデフレが原因

・お金に主たる関心を持っていた人たちは、仕事の目標に集中した人より、お金の獲得に成功していない

・成功した人たちは、主たる関心が多額のお金を得ることではなかったが、お金に無関心だったわけではない。お金の消費には注意深かった

お金に対する態度や感情が、子供時代に入るころまでに、神経組織の中に非常に強く確立されるので、お金というサインに対して無意識的に反応するようになる

・お金は、勢力、地位、威信、利益などと結びつく。お金を持たないと弱くなり、お金を多く持っている人の影響を受けることになる

・お金はわれわれの感情状態に影響する。このことは、特に、自分の金銭的地位に予期しない変化が生じた場合に起こる。損失は、怒り、憂鬱、あるいは絶望感を引き起こす

お金を持つことは、社会的容認や自尊心を高め、性格的傾向にも影響する。高収入層の人は低収入層の人より、物の見方において幸福で、楽観的で、ゆったりしていて寛容であり、自由主義的である

・国民総生産を1人当たりに直し、その国の裕福さの尺度として用いると、貧困な国は裕福な国より大きな硬貨を発行する傾向にあった

・労働者階級の子供たちは、複雑性と独創性において低い水準を示し、模倣が一般に見られた。子供たちは「他の人と違ってはいけない」という下層階級の社会的規範を学んでいて、独創性がないわけではないのに、独創的なことをやるのを抑制していた

・どんなに貧しい人でも、他者にお金を乞うのを喜ぶわけではない。お金を求める人も気詰まりを感じていることを、お金を与える人は気づいていない



この本を読めば、われわれの精神が、いかにお金に抑制されているかがわかります。お金がないと、行動も限定されてしまうことがしばしばです。「お金の心理学」は学術的にも研究に値するテーマだと思います。

人生をいい方向に導くには、お金があるにこしたことはありません。まずは、お金を少しでも貯めてから、人生を考えたいものです。
[ 2010/05/06 07:39 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『“人使い”の極意-乱世を生き抜いた知将の至言』小松哲史

“人使い”の極意―乱世を生き抜いた知将の至言 (新潮新書)“人使い”の極意―乱世を生き抜いた知将の至言 (新潮新書)
(2008/12)
小松 哲史

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秀吉の知恵袋であった黒田官兵衛は、本能寺の変の一報を受けて、豊臣秀吉に天下取りを進言しました。この切れ者の黒田官兵衛が遺した文章を以前読んだことがありました。

黒田官兵衛は、才気が溢れすぎて、後に、秀吉にも、家康にも恐れられることになりますが、彼の遺訓には、出世術、処世術が実に細かく記されており、現代でも大いに参考にできると思います。

この本は、人使いが優秀であった歴史上の人物を三人とりあげ、その人使いの極意について書き記しています。一部の多胡辰敬、二部の藤堂高虎の箇所は、今回は除き、最後の部の黒田官兵衛に絞って、面白く、ためになった箇所を紹介したいと思います。



・主君の罰より恐るべきは、家臣、百姓が下す罰なり。神の罰は祈れば免れる。主君の罰はわびれば、許されることもあり。しかるに家臣、万民(庶民)に疎まれば、祈ってもわびても罰は逃れがたく、ついには国を失う

・自らの趣味や好みはひそかに隠せ。主君が好きなことが漏れれば、家臣や百姓、町人がそれを悪用し大事となる恐れがある

・だれしも相性の良い者と仕事をしたいと願う。だが、ここから贔屓の心が生まれる。悪が善に見え、賄(ワイロ)にひかれ、いつのまにか深い関係となる。善人を悪人と見なし、道理あることも思い誤る。相性の良し悪しで人を選んではならぬ

・およそ大名の子は、生まれいずるより、安楽に育てられ苦労を知らぬゆえ、人使いが荒く、哀れみの心がない。心賢く生まれても、下々の苦しみや難儀を知らざる故に、家臣や人民は悪政に悩まされることになる。深くおもんばかれ

居丈高にいばりくさっている家老(重役)がいる。身分の低い者に言葉もかけず、軽薄でへつらいをいう人間ばかり重用する。善悪や得意不得意の基準があいまいとなり、無礼が横行する。家老には性格が温和で、身分の低い者が慕い寄る者を選ぶべし

・家老を選ぶときは家臣すべての入札(選挙)で人格高潔な人を選ぶのがよい。みなに選ばれれば、公明正大な人事が行われる

・もし私利私欲のため不正を犯した者が出れば、その者一人に重き罰を与えよ。この場合でも禄の召し放ち(解雇)をすべからず

・我がほうは小勢。防ぎがたく、落城は免れがたし。では、いかにして大の敵に勝つか?久しく守らんよりは、敵の不意をつくのみ。不意をつき、命を捨てる気で攻める。これぞ小が大に勝つ法なり

・治世に武を忘れず、乱世に文を捨てざるがもっとも肝要なるべし。乱世に文を捨てる人は、いくさの理を知らず、道理にもとづいた法を制定することができない。国や民を愛するが故でなく、自らの利益のためにいくさや国の政治を行う

・逃げていく敵を弱いと思ってはならず。弱敵にあらず。必死なるがゆえに強敵なり。はじめの勝ちを勝ちに終わらせんと欲すれば、深追いをしてはならず。いくさは勝ちすぎてもよからず。勝ちにおごればかならず落し穴がある

・食物はできるだけ質素にし、美食を好んではならぬ。家のつくり、衣類、道具類などすべて身軽にし、勝手(家計)の負担を少なくすべし

・馬も見かけが風流なものを選んではならず。武具や馬具は軍用であるが故に、実用第一。やたら華美にして無駄な金銀を費やすな

・我、常に倹約を好み、無用の出費を嫌う。なぜかといわば、必要なとき必要な者に、必要なだけの金銀を施し、使いたいときに使うためなり

・冷静に見えても油断したり、万事落ち度なく処理しているがせかせかとするものなり。また道理が明らかであるのに、欲や垢にまみれて動いてしまうこともある。朝夕茶を入れる際に思い出し、分別できるよう書きつけて置くものなり



昔も今も、成功する方法に変わりはありません。そのことがわかるだけでも、歴史書は役立つと思います。

この本は、黒田官兵衛の人使いについての記述が主ですが、この他にも、黒田官兵衛はさまざまな処世術を書き遺しています。

それらは、サラリーマンが出世するためのノウハウ本のような感じです。戦国時代の最高の軍師であった黒田官兵衛には、生き方も含め、学ぶべき点がいっぱいあるように思います。
[ 2010/05/04 07:36 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『史上最強の投資家・バフェットの財務諸表を読む力』

史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール
(2009/03/19)
メアリー・バフェットデビッド・クラーク

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バフェットの投資法をひと言で言えば、「新たに大きく投資しなくても毎年利益が確実に見込め、資金を集める必要が全くない、株式上場している意味のない優良会社のおこぼれに預る投資法」でないかと思います。

これに相応しい投資先をどのようにして選ぶのか?その投資先の投資時期をどうして判断するのか?

これらが、この本に具体的に示されています。単純なことが多いですが、参考になる箇所が多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います



永続的競争優位性から好業績を引き出している企業に投資しておけば、時間が大きな見方となって、自分を超リッチにしてくれる

・ユニークな製品もしくはサービスを売るか。一般大衆からの安定した需要がある製品もしくはサービスを低コストで仕入れて低コストで売るか。このいずれかの企業に投資していれば、毎年毎年、懐にキャッシュが転がり込む

・会社の財務諸表を見る時、「一貫性」を読みとる。一貫して「負債をゼロか低水準に」「研究開発費を低く」「収益を上げ続け」ているかで、永続的競争優位性の有無を確かめる

粗利益率が40%以上の企業は、永続的競争優位性を持っている。20%以下の企業は、競争の激烈な業界に属しており、長いスパンで私たちを金持ちにしてくれない。過去10年間の粗利益率を追跡し、一貫性を確かめる必要がある

粗利益対販売費及び一般管理費比率が30%以下なら優良企業。度々100%近い数字を示す企業は、業界の激しい競争に巻き込まれている。高い比率で競争に苦しめられている企業を避ける

・多額の研究開発費を必要とする企業は、競争優位性に先天的な欠陥があり、長期的経済性が危険にさらされている

・永続的競争優位性を持つ企業は、過酷な競争に苦しんでいる企業に比べ、粗利益に占める減価償却費比率が低くなる。バフェットお気に入りの会社は6~8%

・どの業界においても、営業利益対支払利息比率が最も低い企業は、競争優位性を持っている可能性が一番高い

・経常外収益が最終利益を大きく押し上げる場合もあるが、恒常的に発生することが期待できない要素は、純利益から除外して見定める

・いくら法人税が支払われたかを確かめる。税込の営業利益の数字に法人税率をかけ、この額が法人税額と一致しなければ疑惑の目を向ける。会社の税込利益が真実かどうかは、法人税からわかる。稼ぎのいい企業は、自分を良く見せる必要がない

・売上高に占める純利益の割合が、長期的に20%以上で推移してきた企業は、長期的競争優位性から恩恵を受けている。逆に一貫して10%以下の企業は、過当競争気味の業界に属している

・10年間の1株当たり利益が一貫性と上昇トレンドを示している企業は、長期的競争優位性を持っている

・大量の現金を保有。借入金が少量もしくはゼロ。株式発行や資産売却をしていない。長期的に収益の一貫性が確認。これらの場合は、永続的競争優位性を持つ優良ビジネスの可能性が高い

・永続的競争優位性を持つ企業は、棚卸資産と純利益がともに増加する。棚卸資産が急増したかと思うと、数年後に急落するケースは、過酷な競争体質を持つ業界で、バブルとバブルの崩壊を経験した可能性が高い。そのような企業に投資してはいけない

・総売上高に占める売掛金比率が、一貫して同業他社よりも低い企業は優秀。強みがあるからこそ妥協せずに他社より有利にビジネスしていける

・銀行における最も賢明かつ安全な金儲けの方法は、長期で借りて長期で貸すこと。金融機関に投資する場合は、長期借入金より短期借入金が多い会社を除外する

・貸借対照表を調査し、10年間の事業運営を通じて、長期借入金がほとんど生じていなければ、その企業は強力な競争優位性を持っている。そのような企業への長期投資は成功する

・収益力が極めて高い企業は、巨額の純資産(内部留保)を必要としない。積み上げられた純資産を自社株買いに注ぎ込むため、純資産は減少し、負債比率が上昇し、凡庸なビジネスとの見分けがつかなくなる

・優良企業は収益力が高く、資金を内部調達できる。貸借対照表に優先株をまったく計上しない傾向にある

・内部留保を積み増さない企業は、純資産の成長がない。そのような企業は私たちを長期的にリッチにさせてくれない

・収益性が極めて高い企業は、自社株買いに使える自由なキャッシュが豊富にある。貸借対照表の自社株式が存在することと実績があることは、重要な判断材料になる

・長期的競争優位性を持っている企業は、株主資本利益率が平均より高くなる。株主資本利益率の高さは、その企業が内部留保を有効に活用していることを示している。それは、いつの日か株式市場によって認識され、企業の株価の上昇となって現れる

・巨大なレバレッジを使って利益を創出する企業は避けるべき。短期的には金の卵を産むニワトリに見えても、長期的には必ず化けの皮がはがれてくる

・年間の資本的支出が純利益の50%以下という状況を長年にわたって維持してきた企業には優位性がある。25%以下なら競争優位性から恩恵を受けている

・配当アップよりも自社株買いを続けている企業こそが株主を富ませる

・永続的競争優位性を持つ企業を買っておけば、やがて株式市場が「エクイティ・ボンド」の価値を再評価し、長期債券の利率から計算した収益還元価値と同水準まで株価を上昇させる

・優良企業の株を買うのは、弱気相場を狙うこと。また、一時的トラブルに直面したときに願ってもないチャンスが訪れる

・スーパースター企業の株が高騰し、株価収益率が40倍以上になったら、売却を検討する潮時と考える



損益計算書や貸借対照表の項目や指標などに抵抗のある人も多いと思いますが、難しく考えずに素直に、なぜそうなるのかを考えれば、単純な道理で動いているように思います。

この本を、難しいと感じる人も多いと思いますが、非常にわかりやすく、当たり前のことが書かれているように思います。

長期投資で成功したいと思っている人にとっては、非常に役立つ1冊ではないでしょうか。
[ 2010/05/03 09:52 ] バフェット・本 | TB(0) | CM(0)