とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『成果主義時代の出世術-ほどほど主義が生き残る!』福田秀人

成果主義時代の出世術―ほどほど主義が生き残る!成果主義時代の出世術―ほどほど主義が生き残る!
(2006/04)
福田 秀人

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この本は、サラリーマンにとっての福音書です。経営者にとっては発禁書にしてほしいものかもしれません。

評論家や経営コンサルタントの本は、経営者側(お金をもらえる側)の立場に立ったものが多いのが実情です。

本当は、経営者の論理労働者の論理のせめぎ合いで、会社の報酬制度が決まっていくものですが、労働組合の怠慢と不勉強で、経営者の論理がまかり通るようになってしまいました。

この本には、そういう成果主義時代のサラリーマンにとって、経営者の論理に巻き込まれないためのアドバイスやノウハウが豊富に掲載されています。

弱体化して、意味のなくなってしまった労働組合に代わって、労働者の論理を知的武装するのに役に立つ本です。

今回、面白く読めた箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



サラリーマンの保身の3原則

1.都合の悪いことは言わない(省略)
2.都合の良いことは大袈裟に伝える(誇張)
3.ウソでない程度に内容をアレンジして伝える(変形)

サラリーマンの出世の3原則

1.部下や下位部門からの提案には「NO」と却下(拒絶)
2.同僚や同等部門には同意しても協力はせず、激励に回る(回避)
3.上司や上位部門からの指示や意見には無条件で賛成して従う(盲従)

成果主義に対抗するための不滅の3原則

1.優等生になるな
2.みんなの足を引っ張る劣等生になるな
3.密告をするな

・目標を低く設定。上司や管理者には、いかに難しい目標であるかをアピール。ノルマを必死にこなす「一生懸命クン」には、「損するよ。バカを見るのは自分だよ」と諭し、改心しない場合、意地悪、仲間はずれにする。「出る杭は打つ」それがダメなら「引っこ抜く

・成果主義にはウソがある。成長産業のように努力すればするほど成果がどんどん上がる状況でないと、成果主義は成立しない。実際に、個々の社員の努力以外の要素で成果は大きく変化する

・成果主義は「業績不振の原因は経営者ではなく、社員の無能や怠慢にある」との前提に立っている。経営責任を棚に上げ、「やればやっただけ報われる。もっと頑張れ」と社員の尻を叩く、経営者の身勝手な理屈こそ成果主義

・成果や評価が歪む理由
「評価者の主観」(上司は好き嫌いで評価する)、「相対評価」(成果をあげたのはお前だけではない)、「制度運用のデタラメさ」

・最小のリスクと最小の努力で、まあまあの報酬を安定的に得ることを追求する「均等報酬原理」に支配された者の行動は、「評価対象となる結果だけを追求」「高い評価を得やすい仕事に時間と労力を配分」「評価対象とならない仕事は重要でも無視」する

・「努力が成果に反映しない」「成果が評価に反映しない」「評価が報酬に反映しない」リスクがあれば、社員はやる気を起こさず、成果主義制度は失敗する

・成果主義を成功させるには、リスクを厭わないギャンブラーのような社員に仕事の権限を大きく与え、彼らのやる気を喚起することである

・成果主義を導入した企業の多くは、リストラの方便にしたかっただけ。リストラが一段落した途端、成果主義を見直す企業が相次いでいる

・成果主義を本気でやろうとすればするほど、「みんながライバル心むきだしに戦う」「職場ぐるみでさぼる」「人材が育たなくなる」「チャレンジ精神が失われる」「目標未達の言い訳がうまくなる」ような状況が現出する

人を育てられない会社ほど成果主義を採用したがる。本来、会社の役目である人材育成を放棄して、すべてを社員のやる気と能力に押しつける

・米国では人事スタッフも弁護士に負けないほど嫌われ、軽蔑されている。机上で書類をいじくり回す「ペーパーシャフラー」と皮肉られる存在である

・純粋無垢な「一生懸命クン」にならないこと。成果主義を本気で導入するような会社で愛社精神に燃え、一生懸命働くほど愚かでみじめな結果を生む行動はない。ほどほどが一番

・ほどほど主義を実践するには、情報を私物化し、簡単に他の人間が仕事を引き継げなくすること。具体的には、聞かれたことのみ答え、悪い情報も良い情報も抱え込んで誰にも報告しないこと。報告するのは結果だけ。プロセスは秘中の秘とする

・情報を隠さず、どんどん提供すると、仕事が引き継ぎやすくなる。自分の存在価値を高めるには情報は隠すに限る。「情報は力なり」で、情報統制による地位保全、勢力強化、仕事の私物化が生き残りと力の強化のために重要な条件となる

ダメなトップほど制度をいじりたがる。業績が悪いのを制度のせいにする。そこにコンサルタントがつけこむ。そして、人事屋は人事制度が悪いと言い、マーケティング屋はマーケティングが悪いと言う

・「ホウレンソウ」(報告連絡相談)はしない。これが情報私物化の大鉄則

・動機が善であれば、行動も結果も許されるのが日本の伝統。もし、報告を怠り、上司から叱られても、「悪気はなかった」という立場を堅持し、動機を譲らず、善なる動機へ逃げ込む

・ほどほど主義に徹していても、思わぬ業績を上げてしまったら「たまたまです。運が良かっただけです」と運に逃げる。知られてしまったら期待値が上がってしまう。「能ある鷹は爪を隠す」で、独自の情報はライバルや上司に横取りされないよう私物化する

・太平洋戦争時の中国の抗日組織マニュアル「日本人にはごちそうせよ」の一文、「1.一度ごちそうすれば、好意をくれる」「2.二度ごちそうすれば、情報をくれる」「3.三度ごちそうすれば、命をくれる」。日本人は酒席に弱い

・「失敗をするな。失敗を避けて生きよ」。人事の評価はプラスよりマイナスに厳しい。だから、プラスをあげるより、マイナスを犯さないことの方がはるかに大事

ゴマすりは保身と出世の大鉄則で、世界でも常識のグローバルスタンダード。保身と出世の一番のリスクは、自分ではなく、周りの人間。業績を上げ、上司への忠勤に励んでも、誰かがドジすれば水の泡。「見ざる聞かざる言わざる」で、嵐が去るのを待つしかない

上下2階層をマークすることが出世のために大事な方法。2階層下の部下の状況までマークしていれば、多くの問題の早期発見、早期対応ができる。直属の部下の誤った判断や手抜きの巻き添えを食らう危険が大きく減る

・直属の上司だけ見ている「ヒラメ族」は三流ヒラメ。上下1階層しかマークせず、そのサンドイッチ状態に汲々としているようでは出世はおぼつかない

・社内に敵をつくらないためには、「1.正論を吐かない」「2.正論を吐くときは、相手が聞く耳を持つかどうかで判断」「3.聞く耳を持たないグループにはだんまりを決め込む

・「将を射んと欲すれば奥さんを射よ」。上とのパイプをつくるには、まず彼らの奥さんとのパイプをつくればいい。実際、奥さん同士の懇親会の席で、上司やトップの奥さんと妻が仲良くなって、夫を引き立ててもらうケースは多い。これは取引先の開拓にも使える手

・ドジな部下ほど危険な存在はない。そのためには、「自分の足を引っ張らない程度の部下を育てる」「自分の足を引っ張るような部下は矯正または排除する」こと

ダメな部下がミスしたときに備えて、あらかじめ予防線を張っておく。そのポイントは「ホウレンソウの重要性を繰り返し説く」「ダメ人間を証拠づける反省メモを書かせる」

・一般に、できる上司ほど細かい報告を求める。自分の知らないことがあるのを嫌うし、「部下は情報を抱え込んで私物化する」ものだと知っているから

・旧日本陸軍では「馬鹿な指揮官、敵より恐い」と言われていたが、馬鹿な指揮官の最大の特徴は「決めたことはテコでも変えない」「問題が悪化しても自らの決定を失敗と認めて中止しない」点にある



部下には部下の論理、上司には上司の論理、経営者には経営者の論理があります。それぞれの立場にふさわしい論理を実行できるかが、出世や成功をもたらすように思います。

今の立場の論理をわきまえ、それにふさわしい行動が何かを学ぶのに、この本は役に立ちます。

特に、成果主義の導入下で働くサラリーマンの人たちにとって、精神的支柱になる本かもしれません。
[ 2010/04/30 09:22 ] 福田秀人・本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ5000年の教え』マービン・トケイヤー

ユダヤ5000年の教え―世界の富を動かすユダヤ人の原点を格言で学ぶユダヤ5000年の教え―世界の富を動かすユダヤ人の原点を格言で学ぶ
(2004/03)
マービン トケイヤー

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著者のマービン・トケイヤー氏は、ラビ(ユダヤ教の牧師)であり、日本に10年ほど滞在した経験があり、日本人向けの著書も数多くあります。

ユダヤ人に関する本は、陰謀本や金儲けの教えの本も含め、数多く出版されています。しかし、ユダヤ人自身が書いた真面目な本は少ないように思います。

この本は、ユダヤ教の牧師である著者が、ユダヤ民族の学びの歴史である、タルムードの教えを中心に、真面目に、わかりやすく、ユダヤの教えを伝えています。

今回、勉強になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・「道順を10回聞いた方が、1回道に迷うよりも良い」
人生の基本を教えた諺。基本がいかに大切かという話がタルムードには多い

・「人は金銭を時間よりも大切にするが、そのために失われた時間は金銭では買えない」
限られているものは、人の生命であり、時間である。金銭よりは、時間の方が大切

・人は自分の町では、評判によって判断され、よその町では、衣服によって判断される

・「食事は自分の好みに合わせ、服装は社会の好みに合わせよ」
自分だけ変わったことをすると、社会から疑わしい目をもって眺められ、排斥されることになる。しかし、食事の好みの差異については寛容である

・「退屈な男が部屋を出ていくと、誰かが入ってきたような気がする」
退屈な男とは、他人がどう感じているかを無視し、他人の気持ちを察しようとしないので、人々に合わせることができない者のこと

・すでに良い指導者がいたら、指導者になろうと思ってはならない

・幸運に恵まれるためには知恵はいらない。しかし、この幸運を活かすためには、知恵がいる

・賢人とは、あらゆる人から学べる人。強い人とは、感情を抑えられる人。豊かな人とは、自分の持っているもので満ち足りている人。人に愛される人は、あらゆる人をほめる人

・「世界で最も不幸な人間は、自分を意識することが過剰な人間である」
自分の失敗をいつも他人が笑っていると思う者は、自分が世界の中心にあり、他人が1日24時間自分を注視していると勘違いしている

・お金がなくなったときには、人生の半分が失われる。勇気がなくなったときに、すべてが失われる

・人間の中でも賢い者ほどよく笑う。ジョークを理解するには、素早い頭脳の反応、連想力と多角的な幅広い知識が要求される

・当人の前でほめすぎてはならない。人をほめるときは、陰でほめよ

・「自分を笑える者は、他人に笑われない」
自分を笑うことができる者は、自分を客観視することができ、自分の滑稽さを知っているが、自己中心的な者は、自分を他人と同じように冷静に眺めることができない

・「どのような人間でも近づけば小さくなる」
自分が小さく見える人は、自分をよく知りすぎている

・「評判は最善の紹介状である」
評判は、つねに数千の紹介状が世間に向かって差し出されているようなものであり、業績がもつ声である。そして、業績ほど雄弁な語り手はいない。その声は高く広く伝わる

・表情は最悪の密告者である

悪い友人はあなたの収入を数えても、あなたの経費を数えようとしない

賢い敵は人を賢くするが、愚かな友人は人を愚かにする



ユダヤ人は、知性と知恵を重んじた「本の民族」です。その結晶がタルムードです。先祖の成功と失敗が凝縮されて、紙面に残されています。

ユダヤ人は世界中に1400万人しかいないのに、ノーベル賞学者、財閥系企業家、芸術家、政治家など、成功者が目白押しです。この実績が、生活の知恵の集大成であるタルムードの有用性を示していると思います。

ユダヤ人は、毎日、「旧約聖書」を読んで、3日、タルムードに触れない人はいないと言われています。旧約聖書はともかく、成功を目指すなら、タルムードに時々触れてみることは重要ではないでしょうか。

この本は、そのタルムードの格言をまとめたものです。有効に活用したい1冊です。
[ 2010/04/29 06:46 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(1)

『小商人(こあきんど)のすすめ-小さな成功で大きな幸せ!』長勝盛

小商人(こあきんど)のすすめ―小さな成功で大きな幸せ!小商人(こあきんど)のすすめ―小さな成功で大きな幸せ!
(2006/05)
長 勝盛

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独立して、自由に生きて、さらに、そこに安定が加われば、最高にしあわせな人生を送ることができると思っています。

今、個人事業主として、何とか独立して生きていますが、安定に乏しく、しあわせを実感するに至れていません。

もし、人を雇って、経営していたらどうだったかと考えることがあります。

人を雇うと、給与以上の働きを要求することになるため、規律や道徳で社員にガミガミ言わなければなりません。

もともと、規律や道徳がいやで、会社を辞めたのに、それを要求するのは矛盾することになります。割り切ってしまえばいいのかもしれませんが、自分にはできません。

再度、自分の人生をやり直すことができるのならば、需要のブレが少ない業種で家族経営できる事業を目指すと思います。

理想は、食べ物商売で、名物(おいしくて、安い)を1品つくり上げ、事業拡大せず、代々続かせることです。

いずれにせよ、サラリーマン、公務員、従業員を抱える社長より、個人事業主で、安定を図りながら、長く生きていけるのが、楽しいと考えています。

個人事業主=小商人です。著者も、小商人の素晴らしさを説いています。その素晴らしさを実現するための方法について、この本で具体的成功事例を解説しています。

今回、勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・会社にもたれて仕事している人間と、自分の才覚で真剣勝負している人間では、自ずと実力のつき方が違ってくる。商人とは、職業でも、職種でもない。生き方である

・会社のために働くなんて、自分の会社であってもゴメン。商人とは、昔から自分の利益のために働く人間。それが原因で、滅私奉公を美徳とした封建時代には、商人は蔑まれ、身分も一番低いランクに置かれた

・自分より社会や組織を優先しようとか、自分を犠牲にしてでも何かに尽くそうというのは、もともと商人の発想ではない。組織の中でしか生きられない武士の発想

・自分の才覚やスキルをアップするために、一生懸命働こう。そんな小商人的な目的意識を持つだけでも、小成功中成功ぐらいはラクラクと達成できる。目的意識さえ持たずに仕事している人が、圧倒的大多数

・「自分のため」という目的意識を持ち続けるためには、「意識的、自覚的に生きている仲間とつき合う」ことと、「人生計画を持つ」こと

上司にへつらうなんてカッコ悪い。努力を集中するなら、客と女性以外にない。ビジネスのキーも、時代のキーも、それを握っているのは女性

・妻一人幸せにできない人間は信用されない。口でどんなに立派なことを言っても、妻を観察すれば、どんな人間かわかる

・男という生き物はなかなか変わらない。過去が捨てられないから、自分を変えるのが下手。別れた恋人の写真を捨てられないのは、女より男。そこへいくと女性は驚くほどしなやか

・簡単に相手を感動させる方法は、自分が素直に感動すること。それが相手に伝わり、その心を動かす。この以心伝心が理屈を超えた不思議なところ

・ものだけを売るのは二流、三流の商人。二流の美容師は、髪型を整えるが、一流の美容師になると、心まで整える

・恋愛がヘタで、商売のうまい人はいない。愛する人のために知恵を絞るからこそ、さまざまなアイデアが湧いてくる。それが商売を成功するテクニックになる

・消費者に不要なものは売らない。消費者が欲しがるものも売らない。消費者に必要なものを選んでさし上げる。客を好きにならなければ、本当に必要とするものはわからない

・「よい店舗」の絶対条件は、ホスピタリティー(もてなしの心)とエンターテイメント(楽しさを与える心)の二つ

・商品を売りつけ、お金を落とさせる対象としてしか客を見ない者は、いつまでも魅力的な商人になれない。客に心から喜んでもらい、なおかつ儲かるというのが小商人の醍醐味

・知恵を出すという小商人の本領を忘れ、大商人依存体質に陥っている会社や小売店が圧倒的に多い

・誰かを好きになると、人は自然と観察力が増し、聞き上手になる。人は関心を持たれることに喜びを感じるもの。恋愛の方法と商いの方法も同じ。観察と傾聴で1人1人の客を理解する。その積み重ねが小商人のマーケティング

・有能な小商人が陥りがちな間違いが「しゃべりすぎ」。その結果、客に尋ねたり、客の話に耳を傾けたりする姿勢がおろそかになる

見込み客の見つけ方は、客からの紹介と情報提供が一番。客が新しい客を紹介してくれる。こんなラクなことはない。つまり、ラクに仕事する商人ほど、たくさん稼いでいる

・自信がないと、客にかける言葉や声、その表情にも魅力がなくなり、売れない小商人になる。自分を高く評価した者が勝つ。自惚れたほうが得をする

・商人にとって、「頭が悪い」は最高の誉め言葉。赤ちゃんのように素直で、シンプルな心を持っているという意味

・客は「できれば買いたくない」と思っている。「買っても失敗するかも」「もっといい商品がどこかにあるかも」と考えているマイナス思考の人たち。この人たちをプラス思考に変えていくのが小商人の仕事。「売れっこない」と思っていたら、客の心を動かせない

・頭の悪い人たちは、素直だから、すぐ熱くなって、プラス思考になり、客をそこに巻き込んでいく。新しいことも吸収でき、疑いや不安がない分、瞬発力や持久力も高い。バカがつくほど素直で真面目な人こそ、天使のハートを持った最高の小商人になれる

・サラリーマンであれば、給料の10倍は稼いで、会社の役に立たなければプロとは言えない。役に立たなければ、いくら素晴らしい能力や技術を持っていても、個人的な趣味に過ぎない

・相手に呼ばれ、こちらから売りに行くような営業はやめる。取引先が来てくれる商売なら、こちらが優位に立てる。条件も通りやすい。しかし、それには、大きな魅力をこちらが備えていなければならない

・家庭の平和なしに成功なし。夫婦や親子が一緒に働く小商人は、この言葉を肝に銘じなければならない。客を愛するように、家族を愛すること。これが成功の大きな要素

・アメリカの家庭で5歳までに厳しく躾けられるのは、笑顔でハイと自然に言えること。ハイと素直な返事ができる子は、そのときどきの気分や感情に支配されず、自分をコントロールする能力が優れている

・未来にはいいことしか待っていない。この楽観主義さえあれば、小商人は最高の仕事



バカで、素直で、単純で、真面目によく働く、明るい人には、損得を考えずに、何とか助けてあげようとするものです。

その逆の、賢いが、理屈ばかり言って、なかなか動かない、暗そうな人には、メリットがなくなったら、すぐに離れたくなるものです。

この本は、皆から好かれる、可愛らしい商人になることをすすめています。著者の体験と指導実績をもとに書かれた本なので、内容も充実しています。

しかも、読んでいると、小商人になれる自信が湧いてきます。すべての働く人たちに勇気を与える貴重な1冊ではないでしょうか。
[ 2010/04/27 09:01 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『オタクの考察』ヒロヤス・カイ

オタクの考察オタクの考察
(2008/01/29)
ヒロヤス・カイ

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この本は、オタクの著者がオタクについて調べ、まとめた書です。

世の中には、オタクでない人が、オタク市場を調べた本は多く出ていますが、この本は、オタクならではの微妙な心理と、オタクの新しい動きが的を射ていると感じました。

しかも、この本のシーアンドアール研究所という出版社が新潟市ということにも興味を惹かれました。

コミックマーケット(同人誌即売会イベント)で、大手出版社を通さない流通が拡大しているそうです。この実態を知る上で、この本は非常に役に立ちます。

参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「萌え」とは、心境的にグッとくること、心をつかまれてしまったことを言う。「萌え」を感じるのは、「恋をした」というよりは、自分の美的感覚が「マッチング」した状態

・現在、さまざまなゲームが女性ファンを獲得するに至っている。「女性オタク」に好まれそうなキャラクターが溢れている

・ユーザー側が二次創作を行いやすいコンテンツであることが重要。クオリティの高さを背景にしたキャラクター作りは欠かすことのできない部分。同人誌を作ることや、コスプレの衣装を作る根底には、そのキャラクターの人気が一つの目安になっている

・フィギュアは、キャラクターを立体的に具現化したものであるから「2.5次元」という表現が用いられる。フィギュアの魅力は、立体化することで生まれた表現や趣向とともに、カラーリングや顔の形、衣装に至るまでの細部へのこだわり

・痛車とは、「見た目が痛い車」のこと。漫画やアニメのキャラクターをボディに貼りつけたり、塗装を施した車。今までは水面下で流行っていた存在が、痛車の総合展示イベントが開催されて盛り上がる動きを見せている

コスプレ衣装もビジネスの潮流に乗ってきており、コスプレ専門店が制作販売し、簡単に手に入る。しかし、既製品が気に入らない場合、個人が、裁縫、金属加工、プラ板削りなどの技術力を駆使する。そして、それらを販売するケースもある

・コスプレを語る上で、今、注目すべきなのは「異性装」。これは女性が男性キャラに、男性が女性キャラになりきるもの。イベント会場で頻繁に見られる。この点に目を付けた業者が衣装を販売しているケースもある

・2次元に魅力を感じる醍醐味は、脳内補完できるところにある。「容姿・声・性格」の3拍子を自分の好みに合致させれば、恋に近い感情を抱ける。気に入ったキャラクターについて「こんな声で・・・」「こんな格好もして・・・」と妄想を繰り広げることができる

・男性オタクの聖地の秋葉原に対して、女性オタクの聖地は、池袋の「乙女ロード」。アニメグッズ販売店や漫画専門店とともに、「執事喫茶」(女性スタッフが男装し、執事として振る舞う店)も登場している

・コミックマーケット(通称コミケ、同人誌即売会イベント)の一般参加者は、3日間で50万人を超え、サークル参加者が3万5000スペースとなって、大規模イベントになった

・コスプレイヤーがコスプレする場所は、同人誌即売会と併せて開催されるコスプレイベントが一番多いが、コスプレだけのイベントも、北海道から沖縄まで各地で開催される。コスプレダンパ(アニソンを流して振付で踊るイベント)も盛んになってきた

・メイド喫茶以外にも、メイドが、お菓子屋、美容室、マッサージ、リフレ、眼鏡屋までに進出。「メイド」が売れるコンテンツであることが確立されてきている

オタクコンテンツは発信する側と消費者側が常に入り乱れている状況。特に同人レベル(アマチュア的)で見ると、数多くの作家やコンテンツ発信者が存在。ネットの浸透と動画配信により、無名のクリエイターによる多数の作品が発表されるようになった

・「同人誌」で生計を立てている人がいる。自らが描く同人誌やその他製作物を販売し、年に5~6冊製作で300万~400万の年収の人や、有名サークルやネット販売などで、年収1000万円を超える人々も登場。経費が極端に少ないので利益を得やすい

・同人誌の発行形態は、コピー機のみで作成した「コピー誌」、印刷所に依頼して作成する「オフセット誌」の他、CD-ROMの販売も行われる。その他、ゲーム、音楽、コスプレ写真集、グッズ関係、手作り雑貨も販売される

・全国の遊園地施設は軒並み収益を下げている中、屋外でもコスプレイベントを楽しめるよう開放を始めた。コスプレイヤーが窮地を救っている

・芸能プロダクションがメイド喫茶を運営し始めた。将来性のある女性を、取り込むことで、今までの、雑誌、テレビといった媒体ではなく、メイド喫茶を媒体にする動きがある



この本には、新しいキーワードがいっぱい登場してきます。ということは、それだけオタク市場が伸びており、日本が少子化にもかかわらず、オタク市場の規模が世界に広がっているということかもしれなせん。

オタクビジネスには、これからも新しいものが、どんどん登場してくると思われます。これを単に現象と捉えるのではなく、本質的なものとして捉えることが必要です。

昨年、子供と一緒に、日本橋のオタロード周辺を歩き、カードゲームショップ、ロボット専門店、鉄道模型店などを巡りましたが、何か新しい息吹のようなものを感じました。

この本にも、新しい息吹が満載されています。今の日本には、珍しい1冊ではないでしょうか。
[ 2010/04/26 08:36 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『ブッダ-大人になる道』アルボムッレ・スマナサーラ

ブッダ―大人になる道 (ちくまプリマー新書)ブッダ―大人になる道 (ちくまプリマー新書)
(2006/11)
アルボムッレ スマナサーラ

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日本は大乗仏教文化の国ですが、著者が生まれたスリランカは、大乗仏教ではなく、テーラワーダ仏教(上座仏教)が信仰されています。

テーラワーダ仏教は、ブッダの教えを忠実に守る仏教です。スリランカの他に、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどがテーラワーダ仏教の国です。

ここ数年、ブッダの教えに、深い興味があったので、著者の本を何冊か読むようになりました。このブログで紹介するのは、「ブッダの幸福論」「結局は自分のことを何もしらない」に次ぎ、3冊目です。

裕福な家庭で育ったブッダの教えは、経済的に豊かなはずの日本のような国に、最も適した思想、哲学だと思うのですが、実際は、ブッダの教えと逆方向に進んでいるような感じがします。

著者の文章は、毎回参考になります。今回も「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・仏教とは、人が「自分のことを自分にできる」ようにしてあげて、独立する、自立する、自由になる手助けをする教えである

・人間というのは、親に依存し、友達に依存し、会社に依存し、社会に依存し、酒やタバコに依存し、ゲームや娯楽に依存し、犬猫にも依存したがり、そして神様仏様に依存する。これは惨めな生き方。「独立する」ということの意味さえも理解していない

・人にはそれぞれ自由があるから「人の役に立つ」のは難しい。生きることへの深い理解がなければ、「人の役に立つ」ことは実行できない

・「人間全員に短所と長所がある」と認めると、他人が嫌なこと、悪いことをしても、「人間は不完全だから」「まあ、いいや」となって、カンカンに怒らなくても済む。得るべきところは得て、そうでないところは放っておくという生き方になれば、結構うまくいく

・「勉強をして大人になる」というのは「不完全なところを一つ一つなくしていく」こと。それが人間の正しい生き方。短所、欠点、至らないことを直していこうとすると「誰の協力を受けた方がよいか」わかってくる

・「人間には自由がある」ということは、「みなプライドを持っている」ということ。だから、世の中では、人にアドバイスしても、逆にアドバイスされてもうまくいかない。他人に言われると腹が立ってくるもの

・ブッダは「人間の行為は三つ」と言った。最も大きな行為は「考える(意)」。次に「喋る(口、語)」。そしてもう一つは「身体でいろいろなことをする(身)」。この三つに私たちの行為のすべてが入り、それ以外はない

・言葉を喋る前に考えて、考えたことを喋る。何かをする前に考えて、考えたことをする。つまり、人の考えがすべての元締め。何か考える時、その考えが「自分の役に立つか、周りの役に立つか、すべての生命に役に立つか」と注意を払わなくてはいけない

・親しい人々と別れること、嫌な人と過ごさなければいけないこと、生まれること、死んでしまうこと、年を取ること、病気になること、期待が外れること、それらは人間の普遍的な苦しみであると、ブッダは説いた

・人間は苦しんでいるから、「幸福になりたい」という夢を見ている

・人間の苦しみは、事実を認めない心の問題

・子供は大人になる過程で、教育と称して、いろいろ固定概念を叩き込まれる。そうして「知り得る能力」を失ってしまう。その後は「○○の立場」から物事を見るようになる

・「知り得る能力」を失うことは大きな損失。「知り得る能力」を取り戻すためには、「ただありのままに見る」ところに戻らなければいけない

・「心は元気に回転しているだろうか、それともガタガタと回転しているだろうか」とチェックする。心が明るく元気に回転していると気分がいい。それを「幸福」という

・「自分がいる」と思うから、喧嘩が絶えない。「もともと何もない。その時その時の反応」と解れば、自由になれる。過去のことで悩んだり、将来が不安になったりなんて、どうでもいい。今をしっかり生きればいいことが解かる

・人間が学ぶべきは心の問題。だから仏教では、「嫉妬、憎しみ、怒り、落ち込みはやめよう」「興奮することもやめよう」「集中力を育てて優しい心でいよう」と心を育てる方法を教える

・ブッダは「怒りには優しい心を返しなさい。憎しみには優しい心を返しなさい。憎んではいけない」と言う。とにかく「自分からみんなに笑顔を見せよう。怒っている人にも笑顔を見せよう」というモットーで生きれば、世界が変わっていく

・心の問題を解決したければ、「私が思う、ゆえに正しい」という考えをなくすこと。おいしい物を食べて、「これ、おいしい」と思うだけでいい。「あなた、これ、おいしいよ」という押し付けをやめること

・もし嫌われてしまったなら、嫌われている環境から別の場所に行けばいい。「自分が咲く場所」は必ずどこかにある

・「人を嫌う」ということは「自分が狭い」ということ。自分が嫌われたら、「どうぞご自由に、ご勝手に」という態度でいればいい

・人の悪いところしか見えないメガネをかけたら、一生、人生は暗い。でも、人のいいところが見えるメガネをかけると、どんなに悪い人を見ても、「この人にもこんないいところがある」と、いいところしか見えなくなる

・人の愛情はタダでは得られない。自分が仕事をして得るもの。仕事とは、自分が先に笑ってあげる、お辞儀をしてあげるなど、何か助けになることをしてあげること

・ブッダは「人間が智慧を開発するためにどうすればいいのか?」と聞かれたとき、たったひと言「質問しなさい」と答えた。人にあれこれ質問すると、いい人間関係ができるし、自分の頭の中も整理される



この本は、著者が高校で講演したものがもとになっています。したがって、わかりやすく、読みやすい内容です。

若者に身近な問題も多く取り上げられています。ブッダの教えである初期仏教に、興味を持たれた方には、入門書の1冊になるかもしれません。
[ 2010/04/23 07:36 ] スマナサーラ・本 | TB(0) | CM(0)

『一番になる人』つんく

一番になる人一番になる人
(2008/08/05)
つんく♂

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この本を何気なく手に取り、パラパラとめくっていると、著者がミュージシャンやプロデューサーではなく、中小企業の社長のように感じました。

最後まで読み終えて、この本が成功した起業家の書であり、著者が鋭い経営者感覚を有していることもわかりました。

たまたま、音楽で成功したのであって、他の事業に携わっていたとしても、きっと成功していたと思います。

著者が成功した理由が時の経過とともに描かれており、一気に読める、ためになる本です。参考になった箇所を、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・夢は心の中で描くもの。目標は頭の中で立てるもの。妄想は体の内側から沸き上がってくるもの。妄想には、人生を前進させていく力がある

・事がうまく運ぶ妄想が夢や希望を育てるのなら、失敗やトチリの妄想は、それを回避する方法や注意を促してくれる

・分析と努力で、その道のプロになれる。プロといってもたかが知れている。そう思えるかどうかが、実はとても大切

・カリスマと呼ばれる人とただのプロとの違いは最後のひとさじ加減が決定的に違う。その微妙なさじ加減を誰にも真似のできない、自分のものにしている人間が、カリスマと呼ばれる人たち

・すごいアーティストでも20曲も書くと、表現したいことがなくなり、プロとして、この先やっていけるのか不安になる。それは、プロとして次の段階に入ったということ。才能がなくなったのではなく、最初から才能などなかったと認めることでしか次に進めない

・歌詞、リズム、サビの部分。天才は素晴らしい曲や詞が天から降ってくるかもしれない。でも、僕のような天才でない人間はそのノウハウを研究し、コツコツやっていくしか道はない

・百回、二百回と練習しているうちに、僕ら凡人は、天才に見えないものが見えてくる。それがいわゆるコツとかツボというもの

クラスで一番には誰でもなれる。でも、クラスで一番になれないと世界一にはなれない。トップクラスに成長する秘訣は、「教室内ニッチを見つける」こと。一度でも一位になると、その快感は忘れられなくなり、一位をとると、次に一位になる確率はとても高くなる

・あるとき、「4位」というのは、大衆の中の1位だと気づいた。天才や秀才を除いた凡人の中で、努力で勝ち取れる1位である

・子供のころ一位になった経験は、人格形成において大きなプラスになる。一位をとらせるのは最高の教育。一位をとれて初めて見えてくる世界がある

・「好き」(感情が伴う)と「得意」(自他ともに上手と認める)を混同している人は多い。「得意」も「好き」にはかなわない。「好き」なことに夢中になっているとき、人は時間を忘れ、至福の時間を過ごしている。「好き」の感情はとてつもないエネルギー

・いつも使っているという日常的な要素に、少し新しい要素を付け加えることで、これまでにない視点を与える。そうすることで日常が新鮮に感じられる。そういうものがヒットする

・キーワードは一つでいい。ワンフレーズ、印象に残る言葉があればいい。あとはおまけ。耳に飛び込んでくるワンフレーズで勝てないものは、絶対に勝てない

・優れた歌詞の9割は1枚の写真からできている。その歌を聴いた人に、ある景色が浮かぶようにできている

・ヒット商品というのは、最初から多くの人にウケるのではなく、嗅覚の優れた一部の人たちが騒ぎはじめ、口コミによって広がっていくケースが非常に多い

・言葉は短く簡潔な方が、一語にこもるエネルギー量が大きくなる。力強い弓から放たれた矢のように、相手の心の的にまっすぐ突き刺さる。エネルギー次第では、人間としての徳が上がる。人間は誰でもエネルギー業者

・今も頭に浮かぶ、爺ちゃん、婆ちゃんの「人の遊んでいるうちに働け」「いま売れないものも、頭を使えば売れる」「安くは売ってるけど、安ものを売ってはいけない」という口癖を集約すると、それは「サービス根性」。相手の期待を常に上回るサービスを提供すること

・「売店のおばさん、タクシーの運転手、宅配のお兄ちゃん、すべてがお客さんになる可能性がある。絶対に偉そうな口調やさげすんだ口調で話さないこと」と口酸っぱく言っている

・「成功」はいい意味でも悪い意味でも、人を変える。とくに自分なりの理論を持っている人は、人の言葉を聞かず、自分の方法を貫き、曲げない。しかし、自分が成功したパターンに固執しすぎると、次のステージに進めなくなり、成長できなくなる

人が嫌がる仕事を、嫌な顔一つせず、笑顔でさらりとやると、その人は「徳」を積んだことになる。面倒な仕事は、失敗しても咎められない。逆にうまくいったときは一目置かれる存在になる。面倒な仕事を引き受けることは、結果がどう転んでも必ずプラスになる

・サクセスストーリーはピンチヒッターから始まる場合が多い。「人が嫌がる仕事をやる」のが唯一、どんぐりの背比べ状態から一気に「ごぼう抜き」できるチャンス

・自分の満足は大衆の満足ではない。そこを勘違いしたために、どれだけ優秀な人たちが自滅していったことか

・締切とは、人間の力を目一杯に引き出す装置。だから絶対に締切は守る。凡人は締切を守ることを繰り返すことで、能力が鍛えられていく

・自分が受けた恩を、今度は別の人に返していく。今度はその人がまた別の人に義理を果たしていく。そういう流れが途切れずに続いていくことで、優しさや思いやりのある世の中がうまく回っていく



著者は凡人ではない(自分を凡人と思い込む天才)と思いますが、凡人でも成功できる方法がこの本に書かれています。

スポットライトが当たる世界であろうと、なかろうと、やるべきことは何も変わらないことがよくわかります。

体験を交えた話が、わかりやすくて、ためになり、後で、スカッとした気分にもさせてくれます。エンターテイメントと経営ノウハウが融合した面白い1冊です。
[ 2010/04/22 08:26 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『欲の研究-アナタのその欲望を充たすために』山本峯章、林幸範

欲の研究―アナタのその欲望を充たすために欲の研究―アナタのその欲望を充たすために
(1998/02)
山本 峯章林 幸範

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著者は政治評論家の山本峯章氏です。欲を掘り下げて、欲の本質に迫る文章は、評論家、ルポライターというより、思想家、哲学者といった風に思えました。

金銭、名誉、権力などの欲望は、どういうものかが明確に示されており、なるほどと思える箇所ばかりです。

複雑極まる欲の構造と、欲の制限のあり方についても、参考になった箇所が多数ありました。著者の素晴らしい見解を「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ギリシャの哲学者エピクロスは「食欲には限界がある」と言ったが、この真理も「金銭欲」には通用しない。預金通帳にいくらゼロが増えても、誰も苦痛を感じない。金銭欲には、食欲に対する胃袋のような受け皿がない

・うまそうなステーキや美女の裸を見ても、胃液や性ホルモンが騒ぐだけだが、札束を目の前に差し出されると、大抵の人は没我的歓喜をこえた深い歓びに包まれる。金銭欲は本能的欲望を超え、その上位にある社会的欲望の域に達している

・本能的欲望は自己満足にとどまる。一方のお金は、衣食住をほぼ完全にカバーしながら、他者から社会全体へとパワフルに広がっていく。金銭欲こそが、社会的欲望の花形

・社会が危機的状況にあるとき、「欲望のゲーム」は男性中心のものになる。信じられるものは自分だけになり、貨幣の価値は低下し、金銀宝石だけが価値を有する。社会が平和になると、「欲望のゲーム」は女性中心に回転しはじめる。その象徴が実は金銭欲

・「女性の自立」は、金銭上の自立。お金の安全な流通を保証する社会になれば、女性は男性と肩を並べて働けるようになる。受身で装飾的な技のゲームが能動的な力のゲームに勝つ

・欲望が分相応なら、人生は充実する。欲望と達成感が順繰りに訪れてくると、毎日が楽しくて仕方がない。逆に分不相応な欲望を持つと、挫折感と空回りだけになり、いつまでたってもスカッとした気分になれない

・贅沢な逸品をながめ、ひとり至福のときを過ごす。そのとき心に去来するのは、勝利の気分。贅沢は、欲望の子ではなく、権力の連れ子

・芸術や文化をつくったのは大天才や巨匠だったとしても、その舞台を用意し、育てたのは金持ちや権力者。金持ちの欲張りや虚栄心、嫉妬深さが、皮肉にも、人類の崇高美をひきだした

・昔、中国の大金持ちは、跡取りの息子に阿片を吸わせ、廃人にした。まともに育つと、政治や経済に興味を持ち、大きな商いに手を出して破産させてしまう可能性がある。家財の運営は優秀な執事に任せた。これが究極の「守る経済」というべきもの

ムダを嫌うのとケチは大違い。ムダを嫌うのは生きていくのに必要な現実機能。ケチは一種の神経症。ケチが人生に役立つことはほとんどない

・経済を支えるのは小賢しい理屈ではなく、二宮尊徳の言うとおり、「至誠の心と勤勉」。尊徳は「ムダという皮を剥ぐと真理があらわれる」と述べたように、優れた現実機能の持ち主であった

・生産が経済の中心になったのは近世以降。それ以前は、掠奪が正統にして当たり前の経済活動。列強による植民地政策も国家的な掠奪経済。財力につきまとうケチという感情は、もともと権力にまつわる感情

・財欲と非情はコインの表裏。お金持ちだから気前よく融通してくれるかといえば、大抵はその反対。お金は非情のシンボルだから、借金の申し入れには冷酷に首をふる

・モノもまた自己確認の手段。持ち物によって自分の価値が決まってしまう気がするのが人情。豊かさや力のシンボルを持つことによって、ようやく自分の成功をその目で確かめることができる

・天皇を凌駕する権力を持つことが許されなかった日本では、権力を掌握するには、天皇の下の官僚的権力構造で、出世競争するしかなかった。出世の最短コースは、「遊泳術」「ペーパーテスト」「上から目をかけられる幸運」の三点セット

・聖(=権威)は俗(=権力)を超越してこそ敬われる。生々しい権力には直接タッチしないが、それがなければ権力たりえないという微妙な存在が権威である

・権力は自ら奪い取るものではなく、それなりの段取りを踏んで、上から承認されるもの。企業に会長や相談役、顧問など社長を超える名誉職が多いのはそのせい

・人類は多くのエセ権力主義者に悩まされてきた。彼らが行ったのは、全体の調和を達成するための善の権力行使ではなく、私情(=イデオロギー)からくりだされる暴力装置の発動であった

・権力は、法や暴力装置を動員し、抑圧的に行われる。権力の三要素は「支配」「制限」「強制」だから、極めて一方的な強権。これが「公」にではなく「私」に属することになると一大事

・人間から名誉心をとったら、「他人の目」「世間の耳」といったチェック機能がきかなくなり、なりふりかまわず我執に走る。名誉心があれば、考え方にも行動にもブレーキがかかる

・名誉が人間の最高価値だと知っているから、年寄りは名誉を欲しがる。ところが、この名誉は、欲しがる人にはなかなか与えてくれない。「名誉と恥」が一体になっているから、求めることも恥になる

・社会的勝利は必ず敗者を必要とする。地位や名誉を手にした者はひそかに「あいつに勝った」「オレの方が偉いんだ」といった攻撃的な気分を抱くもの。そういう陰湿な勝利感を求めない人にとっては、地位や名誉は必要でない

・天下国家を論じる公人然とした人が私腹をこやし、商売しか頭になかった人が私財をはたいて公に寄付することもよくある。この「公と私の精神」をどこで線引きしてよいのか、実は難しい問題

・私利私欲のためにガツガツと生きたところで人が行き着くところは死である。ところで、この死は、欲があればあるほど、怖いものになる

・「欲望」にとらわれると、失うことや破滅ばかりが気になって不幸な人生を送らねばならない。「死」の側に身をおくと、生きていることだけで有難くなる

・若い人は貪欲に求め、挫折することがあっても意に介する必要はない。自分にセーブをかけることは、伸びる芽を摘むものであり、欲のまま生きるのがむしろ若者の特権。ところが壮年や中高年になると話は違ってくる

・遊びは、お仕着せの世間から退却し、自由を手に入れることから始まる。ビジネスから引退して、損得意識を断ち、自分だけの非日常の世界、空間、時間をつくりあげること

・日本の隠居制度は、別天地で悠々自適な老後を送るのではなく、居ながらにして奥に引っ込む。つまり、生活空間はそのままにして精神だけを世俗と断ち切る



この本には、欲深き人間が、欲とどう付き合っていくかのヒントが多く出てきます。

若者、中高年、老人とそれぞれの年代に伴う欲と、最適に付き合うことができたら、人生は素晴らしいものになっていくのかもしれません。

少し難しい本ですが、非常に参考になる1冊です。
[ 2010/04/20 09:44 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『オタクで女の子な国のモノづくり』川口盛之助

オタクで女の子な国のモノづくり (講談社BIZ)オタクで女の子な国のモノづくり (講談社BIZ)
(2007/07/18)
川口 盛之助

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この本のタイトルが、少しオタクっぽい雰囲気がして、真面目なモノづくりの企画の本には見えません。

しかし、中身は立派な、商品開発の専門書です。日本の商品開発が、どういう方向性にあるのかを、分析して、わかりやすく説明されています。

かなり詳細に書かれた記述から、商品開発のヒントがいっぱいあるように感じました。ヒラメキやアイデアを促しれくれる書です。

この本を読んで、面白く、役に立つと感じた箇所が15ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


HOW論とは、「どのように仕事を進めるか」というビジネスのプロセスに関する議論。WHAT論とは、「今後何を手がけるべきか」というビジネスの内容に関する話。「HOW論」が鳴りを潜め始め、「WHAT論」が増えてきている

・「モノに情が移る伝統」を持つ日本文化の土壌の上に、現代のマスコット文化が花開いている。暮らしの中のあらゆる場面で、擬人化されたマスコットが見られる

・日本人には世界でも珍しい「道」を目指す職人気質が備わっている。他国で産業育成に携わる政治リーダーたちにとって、日本人のこの気質は何ともうらやましく、垂涎の的

・「一つ一つの製品ごとに、性能や外観が少しずつ違ってくる大量生産」の時代がやってくる。これを「ゆらぎ型生産ライン」と呼んでいる

・五感に関して「思わず○○してみたくなる」と感じる場面で、特に強いのが触感関係の衝動。肌ざわり、舌ざわり、噛みごたえ、着心地、座り心地などの感覚に人は惹かれる。そして、それが満たされたとき「プチ快感」を味わい、癖になる

触ってみたくなる系は「プニプニ快感」「出っ張り快感」「滑らか快感」「サリサリ快感」「サラサラ快感」。剥がしてみたくなる系は「こすりとる快感」「剥がす快感」「むく快感」。潰してみたくなる系は「踏み潰す快感」「破裂させる快感」「すり潰す快感」「切り裂く快感」

・身体にフィット(持ちやすい、使いやすい=ストレスフリー)、頭にフィット(わかる=使いたくなる)、気持ちにフィット(楽しい=クセになる)。病みつきやクセがもとの気持ちよくなる「道」の探究心はモノづくりを前進させる巨大なパワー

・今後のモノづくりの重要なポイントは「寸止め」。これは、むやみに使いやすさを追求するのではなく、「道具や製品を使いこなすまでの苦労と、その苦労の代償として得られる『使う喜び』を大切にする」という考え方

・日本人のコミュニケーションの特徴は、「語らぬ(察する)」「わからせぬ(説得しない)」「いたわる(周囲を意識する)」「ひかえる(売り込まない)」「流れる(荒立てない)」

・「周囲の人のための機能」は、騒音対策、静音化。「周囲に配慮する機能=恥ずかしさ対策」は、体臭、口臭、テカリなど

・「隠し贅沢」は、江戸時代より文化として完成した。本当の贅沢は奥ゆかしさに秘められているという考え方

・気まずいシーンでの、気まずさを隠す小道具があると便利。小道具があれば、コミュニケーションのきっかけになる。需要は大きい

・初めのころは「すごい」ともてはやされ、見せびらかしたくなる機能も、ユーザーが使い慣れるにつれて、最終的に「ビルトイン(備えつけ、作りつけ)」となり、目立たなくなって、その製品にすっかり溶け込み、なじんでいく

・「据え置き型」の電化製品は、ビルトイン化する運命にあるが、「携帯型」は、「ウェアラブル化(着用できる)」されるようになる。軽薄短小化は日本人のお家芸。折り畳むのは日本の伝統

・日本人の気質は、「女性&子供」。フランス、イタリア人の気質は「女性&大人」。アメリカ人の気質は「男性&子供」。ドイツ、北欧人の気質は「男性&大人」



著者は、欧米の商品開発情報などに惑わされることなく、日本独自の道を進むことが、世界に影響を与える。それが、最先端のモノづくりになることを示唆されています。

商品開発に携わっている人にとっては、自信とヒントを与えてくれる書になります。有益な1冊になるのではないでしょうか。
[ 2010/04/19 08:10 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『タオ-老子』加島祥造

タオ―老子 (ちくま文庫)タオ―老子 (ちくま文庫)
(2006/10)
加島 祥造

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タオとは道のことです。TAOZENとともに国際語になっているようです。この本は、老子の教える道を著者が現代日本訳でわかりやすく翻訳しています。

中国では、絶対君主制がうまくいっている時は、儒教が前面に出てきます。しかし、ひとたび乱世になると、老荘思想が頭を持ち上げます。儒教と老荘思想は表と裏の関係です。「孔子VS老子」と言えるかもしれません。

老子の思想に触れ、実感するのにぴったりの本がこの書です。今の自分が共感できた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・世の中が、生きるのに必要のないものまで、やたらに欲しがらせるから、みんな心が煩ってしまう

・金貨や宝石を倉いっぱいに詰め込んでも、税金か詐欺か馬鹿息子で消えてなくなる。富や名誉で威張る人は、あとで必ず悪口を言われる

・何もかもぎりぎりまでやらないで、自分のやるべきことが終わったら、さっさとリタイアするのがいい。それが天の道に沿うこと

・人の頭に立つ人間は、下の者たちを信じなくなると、言葉や規則ばかり作って、それでゴリ押しするようになる

・最上のリーダーは、治めることに成功したら、あとは退いて静かにしている。すると下の人たちは、その幸せな暮らしを「おれたちが自分で作り上げた」と思う

・自分のなかにある素朴な素質をなによりも大事にすること。自分のなかにある本性は、もともと、我を張ったり、欲張ったりしないもの

・突っ張って直立するものは折れやすい。自分を曲げて譲る人は、かえって終わりまでやりとげる

・自我を押しつけないから、かえって目立つ存在になる。自分は正しい、正しいって主張しないから、かえって人に尊敬される。自慢しないから、かえって人に信頼される。威張って見下さないから、人はその人をリーダーにしたがる

・まわりの人が、あれこれ言っても気にしなければいい。台風は上陸しても半日で過ぎ去る。大雨は、いくら降っても二日と続かない

・強い力で押しまくる時、必ずしっぺ返しがくる。戦うことなんて、本当の自分を守る時だけでいい。暴力に反抗して命を守る時だけでいい。暴力や力ずくでしたことなんて、みんな長続きしない

・勢いづいているものを、さらに勢いづかせると、早く萎む。強大な権力に、もっと強い力を持たせると、いっぺんに崩れ去る。流行しているものを、もっと流行らせれば、たちまち消える。だから、もし奪いとりたいものがあれば、それに、まずたっぷり与えること

・人道主義を造りだし、それを失うと、正義を造りだした。正義さえ利かなくなると、儀礼をはじめた。儀礼がみんなの基準になると、形式ばかり先行して、裏では毟りあいがはじまった

・他人の物を欲しがるのが、いちばん誤りの元。今あるもので充分、と知る人だけが、今生きることの豊かさを知る

・蓄えたものを、忘れていく。いわば損をしていく。どんどん損していって、しまいに、空っぽ状態になった時、その人は内なる自由を獲得する。それを無為という。無為とは知識を体内で消化した人が何に対しても応じられるベストな状態のこと

心を空にする人は、定まった意見など持たない。その人がリーダーになると、人々の考え方や感じ方にどのようにも応じられる

・生みだしたからって、自分のものにしない。大変な働きをしたからって、威張らない。成功して人々の頭に立ったからといって、支配したり操ったりしない

・のしあがった者たちが、政治や経済を支配して、あんなに着飾ったり、巨大な建物を建てたり、とてつもない武器をつくったりする。飲み食いに贅沢し、金銭を積み上げる。これはみんな盗っ人のすること

・「無為」は何もしないことではない。余計なことはしないということ。小知恵を使って次々と、あれこれ事を起こさないということ

・成功や財産や高い地位なんて、まったく欲しがらない。知識ばかり取り込もうとしないで、知識を超えた向こうのものを腹に収めようとする。知識や欲望からの行為をできるだけ控えること

・三つの宝を大切にしている。その一、愛すること。その二、倹約すること。その三、世の人の先頭に立たぬこと

・「自分には知らないことがいっぱいある」と知ることこそ上等の知識

・権力を恐れないで、ただ勇敢にやる者は殺される。あえて勇敢にしない勇気を持つ者が生き抜く



老子は、孔子のように説教臭くありません。その反面、「無為自然」の思想ですから、とらえどころのない表現が多いのが特徴です。

読む人によって、見解が大きく異なってきます。また、同じ人でも、読む時によって大きく違ってきます。このような曖昧さが、逆に想像力をかきたてることになるのかもしれません。

ある程度の精神年齢に達したとき、初めて老子の思想が身に浸みてくると思います。熟年を意識するようになったら、読むと面白い1冊ではないでしょうか。
[ 2010/04/16 08:10 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『見切る!強いリーダーの決断力』福田秀人

見切る! 強いリーダーの決断力見切る! 強いリーダーの決断力
(2006/09)
福田 秀人

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リーダーは決断するのが仕事です。しかし、そのほとんどは、読んで字の如く、「断る」ことを「決める」ことです。断るのは、嫌な仕事です。人間、誰しも、みんなにいい顔をして、好かれたいものです。

リーダーは、好かれたい人がほとんどの組織メンバーの中で、その組織を代表して、その組織の将来を考えて、NOと決めなければいけません。

この本は、強いリーダーは「見切ることにあり」という視点で、書かれています。

リーダーは、どんな時でも、どんな場所でも、見切って、見切って、見切っていかなければならないということがよくわかります。

この本の中で、参考になった箇所が15ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・だめな業務改善の三大用語

保留・・・よい案だが、時期尚早だから保留にしよう
検討・・・よい案だが、もっと検討する必要がある
参考・・・よい案だから、今後の参考にしよう

・危機管理の第一歩は、効果がはっきりしない仕事は、即やめること

・見切るべきものを発見するという強い意識を持って、現場回りをし、仕事状況を真剣に観察し、現場の話を聞くだけで、かなりのことが判明する。トップから現場の社員までが、一緒になって、どんどん見切っていかなければ、会社は、非効率のかたまりになっていく

面子未練希望的観測が破滅への3条件。面子第一人間は、自分の失敗を認めない人間。見切り提案する勇気のある人間が放逐される

・優れたリーダーは「できるだけやれ」ではなく、「これだけはやれ」と明確に指示する。部下のやる気と集中力、そして成果も大きく異なる

・官僚化や大企業病のコアは、なんでも規則にこだわる規則至上主義。社会学では「規則への過同調」と呼ばれるもの。その特徴は、「決められたとおりにしかやらない」「決められていないことはやらない」「決めたことはめったなことで変えない」

・ビジネスであれ、何であれ、物事が思うようにいかないのは「甘さの三拍子」によるところが多い。「読みが甘い」「脇が甘い」「つめが甘い」

・思うようにいかない案件の責任者に、人や資金の大量投入を提案する。そのとき、「不要」と責任者が回答すれば、ただちに、その案件を見切るか、責任者を代えたほうがよい

・プラス発想で考えれば、素晴らしいアイデアやビジョンが生まれることもある。しかし、それ以外の状況では、プラス発想は「百害あって一利なし」

・弱者と組んだ者は、弱者となる。弱く劣った先と組むと、そこに足を引っ張られて、勝てる戦いにも敗れる。軍事では「弱者連合」と呼ばれ、絶対にやってはいけないとされるタブーの一つ

・どこにでもある、標準化されたできあいの部品や材料、サービスの仕入れは、最も取引条件のよい先を選べる「一見取引」とすべき

・うまくいかない会社は、新たな事業や商品にチャレンジする部門に、企画力、行動力、折衝力などに優れた人材を投入していない。在来部門のミドルたちが、優秀な部下を手放すことを嫌い、抱え込んでいる

・本気で「すべてのお客様のニーズにこたえ、ご満足いただく」という発想を実行に移せば大変である。それは「顧客第一主義」ならぬ「顧客言いなり主義」になって、面倒、煩雑になりミスやトラブルが増えていく

・「計画と戦うな、現実と戦え」ということは「危ないと思えば、計画を捨てて逃げろ」ということ

・マキャベリは「敵がこちらの意図を察知したことが分かれば、ただちに計画を変更せよ。その変更は少数の者だけで協議すべきである」と論じている



自分はリーダーではないという人も、いるかもしれませんが、家庭を持てば、誰でも家庭の中ではリーダーです。

家庭を持っていなくても、地域の仲間や趣味仲間で、幹事やリーダー役を、1回は経験します。

成人するに従って、何らかのリーダーから逃れることはできません。そのリーダーをしっかり演じきるためにも、リーダーの心得を学んでおいて損はありません。この本は、その一助になる一冊ではないでしょうか。
[ 2010/04/15 07:27 ] 福田秀人・本 | TB(0) | CM(0)

『「発電貯金」生活のススメ』岩堀良弘

「発電貯金」生活のススメ「発電貯金」生活のススメ
(2009/12/25)
岩堀良弘

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わが家は、日照時間の多い地域で、南東向き。前は、道路と川で、障害物がありません。

ただし、家は築16年で、傷みも生じてきています。10~15年後に大幅に改築するかもしれません。

そういう状況下で、太陽光発電に「投資」して、得になるのか?また、補助金、金利など政治的状況、経済的状況を考えると、今後どうなっていくのか?

こういう点も含めて、公正な意見を述べた「太陽光発電」の本はないかと探していたら、この書がありました。

この本は、私のように、太陽光発電の導入に迷っている人に、とてもよい本です。今回、参考になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・昔の話をもとに、今でも「元は取れない」と言う人もいるが、それは現在の状況をあまり知らない人。今では効率も良くなり、システム価格も下がってきて経済的にメリットが出るようになった

太陽電池のパネル1枚1枚のことを「モジュール」と言う。このモジュールが何枚、屋根に乗るかで発電量が決定される

太陽電池のモジュールをよく見ると、10~15cmの四角い太陽電池がつなげてある。この10~15cm角の太陽電池を「セル」と言う。このセルは半導体の結晶でできている。その素材に、単結晶・多結晶・アモルファスシリコンがあり、発電性能が若干違ってくる

・通常は25℃から1℃上がるごとに発電効率が0.5%下がってしまう。夏の屋根が65℃だとすると、「65℃-25℃=40℃」「40℃×0.5%=20%」つまり20%も効率が落ちる。真夏の暑い日はよく発電すると思われがちだが実は間違い。春秋冬の方が発電効率がいい

・電気料金は、使えば使うほど単価が高くなるように設定されており、3段階に分かれている。第1段階「0~120kwh未満(単価14.82円)」第2段階「120~300kwh未満(単価19.66円)」第3段階「300kwh以上(単価21.13円)」(東京電力例)

・「売電収入=売電単価×余剰電力量」できるだけ節電して余剰電力を増やせば、売電収入、つまり「発電貯金」も増えることになる

・年金暮らしの人にとっては、1万円、2万円といった光熱費は馬鹿にならない経費。「太陽光発電システム」と「オール電化」を組み合わせたら、老後も原油高やインフレに振り回されない生活が手に入る

・発電貯金で年10万円ぐらい貯める人はざら。出力の大きなシステムを設置した人だと年20万円ぐらい貯める人もある

・平成21年度の太陽光発電設置補助金は1kw当たり7万円。ただし、システム価格が1kw当たり70万円以下のシステムに限っている

・買取価格は従来1kwh当たりの単価が24円だったが、平成21年度に、これを2倍の48円で買い取ることを電力会社に義務付けた。これにより設備導入の経済的メリットは大変大きくなった。買取価格は10年継続なので、投資リスクは軽減

・太陽光発電システムは6~8割が訪問販売業者で売られている。他業種からの参入も多く、ダーティーなイメージが払しょくされていない

・屋根の部分に設置するため、間違いがあると大変なことになる。日本の屋根は千差万別。複雑な日本の屋根に最適の設置プランと方法を設計するためには、本来、電気知識と建築知識の両方を必要とする

・太陽光発電の価格が適正かどうかの見積書を見るポイントは、1.「何kwのシステムか?(定格出力)」2.「システム総額(工事費含む)はいくらか?」

・定格出力は、1.「モジュールの型番×枚数」。システム総額は2.「太陽電池価格+付属機器等費用+設置工事費用」(明細記入のない“設備工事一式”見積書は論外)。2の総金額を1のkwで割り「1kw単価」を算出。これが太陽光発電の価格を判断する重要な数字

・「1kw単価」の全国平均単価は、新エネルギー財団(NEF)のホームページで公表されている。単結晶で82.9万円、多結晶で64.4万円、平均で68.4万円。この平均価格から上下10%以内なら適正と考えられる

・発電量は「モジュール表面温度25℃」「分光分布AM(エアマス)1.5」「放射照度1000w/㎡」が基準。エアマス1.5という値は、光の通過距離1.5倍、太陽高度42度に相当。放射照度は光のエネルギーの強さ

・「年間発電量=システム最大公称発電量(kw)×1000」でおおよその年間発電量がわかる

・屋根の向きと影の影響を受けるので、設置の際に注意。屋根の向きでは真南を100としたら、東面、西面では10~15%発電量がダウン。北面では40%ダウン。は「高層マンション」「樹木」「電信柱・電線」「陸屋根の手すり」「雪」を考慮する

・太陽光発電を設置する人のうち、新築の人は2割に過ぎない。あとの8割は既築の家。意外に新築での導入は少ない

・美観上の理由や屋根材費用や工賃から屋根材一体型を希望する人が多い。しかし、架台設置型(屋根置き型)の方が隙間に空気が入って空冷装置の役割を果たすので、発電効率が高くなる。コストパフォーマンスで考えるなら屋根置き型

・風があると、自動車の空冷エンジンのように、風のおかげで発電効率が上がる

・太陽光パネルを付けた、下の部屋は夏の涼しさが全然違う

・太陽光発電でエネルギーが自給ができるようになったので、庭の井戸掘りで、水の自給を考えている人が増えている。食物を畑で作れば、食物と水とエネルギーの自給ができ、何があっても、しばらく生きていける

・標高が高くて、空気が薄いというのは太陽光発電に非常に条件がいい。日射量も多くて発電量が増える



この本を読んで、太陽光発電の設置にかなり前向きになりました。わが家でも、家の外装補修をする2~3年先くらいに、設置しようと考えています。

太陽光発電の会社は、まだまだ、不可解と思えるところが多いですので、この本のように、消費者本位に書かれた本は役に立ちます。

そろそろ太陽光発電を考えている方や、発電貯金に興味のある方にはおすすめの1冊です。
[ 2010/04/13 08:03 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『ブルーオーシャン戦略・競争のない世界を創造する』

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
(2005/06/21)
W・チャン・キムレネ・モボルニュ

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結構売れている、隠れたベストセラー本です。2005年から版を重ねています。W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の共著です。

内容は、至って単純で、血みどろの戦いが繰り広げられる既存市場「レッドオーシャン(赤い海)」の航海を避け、未開拓市場「ブルーオーシャン(青い海)」の航海に乗り出そうというものです。

この本の中で参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・競合他社に勝つ、ただ一つの方法は、相手を負かそうという試みをやめること。輝かしい未来を手に入れるためには、競争から抜け出さなくてはいけない

・未開拓市場を創造するためには、コストを下げながら、同時に買い手にとっての価値を高めていく必要がある。こうすると、売り手と買い手双方にとっての価値を飛躍的に高められる

・買い手に提供する新しい価値は、「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」。この4つの問いを利用すると、従来の競争ルールを無効にすることができる

・優れたブルーオーシャン戦略には「メリハリ」「高い独自性」「訴求力のあるキャッチフレーズ」という3つの特徴がある

・戦略の第一原則は「市場の境界を引き直して競争を迂回し、未開拓市場を創造すること」

・既存市場の泥沼に入っている戦略は、「既存枠での業界一位を目指す」「他社と同じ買い手グループに焦点を当てる」「業界特性をそのまま受け入れる」「現在の競争状況に着目する」などで、競争相手と似通っていく

・業界誌、業界見本市、顧客評価などの影響で、業界ごとの縦割りは強まる。ところが、代替産業(代替財や代替サービス提供企業)同士の狭間には、往々にして、バリューイノベーションの機会がある

・競合各社は同じ買い手層をターゲットとしているが、買い手といっても「購買者」「利用者」「影響者」がある。業界の常識を疑い、どの買い手グループに目を向けるかを問い直すと、未開拓市場にたどりつく可能性がある

・機能志向から感性志向へ、あるいは感性志向から機能志向へと転換を図ると、往々にして、未知の市場空間が見えてくる

・新しい技術の台頭であれ、規制面での大きな変化であれ、たいていの企業は、出来事が起きてはじめて、仕方なく、少しずつ対応を試みる。視線を現在から将来に移して、将来の市場価値を予想すれば、未開拓市場を支配できる

・顧客経験サイクル「購入」「納品」「使用」「併用」「保守管理」「廃棄」と効用を生み出す6つのテコ「顧客の生産性」「シンプルさ」「利便性」「リスク」「楽しさや好ましいイメージ」「環境への優しさ」を組合せ、効用を妨げる要因を探り出す

・特許や資産の少ない企業は、ブルーオーシャン戦略において、顧客の密集価格帯を見極め、その範囲内で価格を決める。そして、戦略価格の設定からコスト目標の達成で、目指す利益額を決める

ティッピング・ポイント・リーダーシップとは、「どのような組織でも、一定数を超える人々が信念を抱き、熱意を傾ければ、そのアイデアは拡がっていく」現象を引き起こすため、核となる人材だけを選び、変革へと駆り立てるようにすること



これ以外にも、ブルーオーシャンの航海に乗り出した企業事例や、その方策が具体的に紹介されています。

「青い海」が「青い鳥」「青い芝生」のような希望や憧憬にも感じられますが、この本が新世界へ、一歩踏み出す勇気を与える効果は十分にあるのではないでしょうか。
[ 2010/04/12 07:53 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『「デタラメ思考」で幸せになる!』ひろさちや

「デタラメ思考」で幸せになる! (新書ヴィレッジブックス)「デタラメ思考」で幸せになる! (新書ヴィレッジブックス)
(2007/07)
ひろ さちや

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ひろさちや氏の本を紹介するのは、「幸福術」「悩まない・超往生論」「まんだら人生論上巻」「まんだら人生論下巻」に次ぎ、5冊目です。

著者の本は、宗教や哲学のような難しい問題をわかりやすくまとめられていて、読めてしまう書ばかりです。

しかも、著者の本を読むと、ハハハ~ンと、気づかされることが度々起こります。この本の中にもハハハ~ンが多くありました。

この気づかされた箇所を今から紹介したいと思います。



・病人がいないと医者や薬剤師は生活できない。犯罪者がいるお陰で、警察官が生計を立てられる。医者や警察官が世の中に役に立っているように、役立ち方は違うが、病人も犯罪人も役に立っていることは否定できない

・どんな人間であれ、すべての人にレーゾンデートル(存在意義)があるというのが仏教の教え。この世の中には、なくていいものなど一つも存在しない

・仏教は本質的に「出世間の教え」。世間を出て、世間の物差しを否定し、笑い飛ばす。世間の物差しを笑い飛ばすことができて、はじめて仏教が仏教たり得る

・聖徳太子の言葉に、「世間虚仮、唯仏是真」がある。「世間は嘘であり偽り。ただ仏教だけが真実」という意味だが、世間の側から見れば、まことに煩わしい発言になる。そのため、聖徳太子は江戸時代の儒学者からこてんぱんに非難攻撃された

・第二次大戦のころ「贅沢は敵だ」と言っていたのに、戦後は「贅沢は素敵だ」になる。世間が言うことはコロコロ変わる。筋も通っていないし、一貫性もない

・世間に執着していると、世間にふりまわされて、世間の奴隷になる。奴隷を恥じるのであれば、世間を馬鹿にしなくてはいけない。日本のサラリーマンは会社の奴隷。奴隷をやめるには、会社を馬鹿にしなくてはいけない

・日本のサラリーマンは、上司から嫌われると悄気返る。これは奴隷根性。ヨーロッパの労働者は、部下を依怙贔屓する上司には、全員で文句を言う。日本人の意識は、江戸時代の殿様に仕える家来の意識

・ときにわれわれは自分の奴隷根性に気づくことがある。権力に卑屈になって、ペコペコしている自分に腹が立つ。そして自己嫌悪に陥る。すると世間はすかさず、その人間に「変身」の罰を与え、「引きこもり」に変えてしまう

・世間(日本のサラリーマン社会)をあからさまに馬鹿にすると、嫌われ者になるので、態度には出さずに、心の中で密かに馬鹿にする。しっかりと、力強く、軽蔑するというやり方をすすめる

・テレビタレントなんて、奇抜さを売りにしているのだから、金のかかる流行の服を着ればいい。われわれは有名人ではない。流行(世間)を心の中で軽蔑しながら、いちおうは流行(世間)に従うくらいがいい

・「世間はわれと争うけれども、われは決して世間と争わない」というのが釈迦の世間に対する態度。つまり、釈迦は、世間を馬鹿にするが、あからさまに馬鹿にせず、心の中で馬鹿にする。無理に喧嘩を吹っかけない

・日本は経済大国とされているのに豊かさの実感がない。大企業は大きなビルを建てるが、個々のサラリーマンの生活は苦しい。国民は貧しいが国家は太っている。サラリーマンは貧しいが会社は豪華。これが現代日本の姿

・日本では、国家権力は豊かになっても民衆は貧しかった。民衆は富を吸い上げられるので、お坊さんに布施できない。そこで、国家権力がお坊さんを養うほかなく、寺院が官立になる。国家公務員としての僧侶の仕事は、鎮護国家のためにお経を読むことになった

・日本のお坊さんが権力に媚びへつらうのは、ある意味当然。権力・体制の側に立って、民衆に「国家に従順な人間になれ」「国家に役立つ人間になれ」と説くのが、後世にいたるまで、お坊さんの仕事になってしまった

・日本人は道徳というものがよくわかっていない。道徳の胡散臭さもわかっていない。道徳は、一時代、一地域しか通じないもの。日本の道徳は、よその国では通じない。戦前の道徳は現代に通じない

・父親が盗みをしたのを知った子供は、父親を告発するか?それとも黙っているか?「隠すのが道徳的に正しい。隠すことのうちに正直さがある」と孔子が答えたと、論語にはっきり書かれている。道徳がいかにいかがわしいかがこれでわかる

・過去の道徳は現在の不道徳、現在の道徳が未来の不道徳になる可能性がある。現代の日本では、競争に勝つことが善だが、将来、競争に勝つためにがんばる人間をエゴイストと非難する時代が来るかもしれない

・道徳というものは、強い者はそれに拘束されない。そして、弱い者だけが道徳に縛られる。道徳は強者が弱い者いじめするための道具。われわれは、道徳なんて馬鹿にしたほうがいい

・道徳は他の時代、他の地域とは相互に矛盾することが多い。そこで、いかなる時代、いかなる国においても通じる道徳が求められる。それが倫理。倫理学は、普遍的な倫理(高次元の道徳)を構築しようとする学問

・愛国心とは何か?それは、税金を払うこと。われわれは国家がなければ生きられない。その国家は、みんなの税金で維持されている。納税の義務を果たさず、脱税している人間は愛国心のない人であり、売国奴

・釈迦の教えは、世間にふりまわされるな(世間を馬鹿にせよ)ということ。つまり、「自由人であれ」のメッセージ

・私欲が衝突したとき、どちらの私欲を制限するか、それを調整するのが政治の仕事。ところが、「滅私奉公」では、私欲そのものが悪いとされ、自己主張することが悪と断罪される。私(国民)の利害は無視され、公(お上)の利害だけが肯定される

・第二次大戦中「贅沢は敵」ということで、国民の贅沢は悪とされ、窮乏生活を強いられた。だが、政府高官、職業軍人の将校クラス、軍需産業や政府や軍と関係のある商社の連中は、贅沢な生活をしていた。彼らは「公」と認定されていたから

・「滅私奉公」なんて、人間を馬鹿にした思想。われわれを国家の奴隷、大企業の奴隷にし、人間をやめさせる思想

・われわれはそれほど欲深いわけではない。広い家に住みたいと思うが、同時に、広い家だと掃除が大変だと、欲望にブレーキをかける心も働く

・「自然の欲望」は、食欲や性欲といった誰もが持つ欲望。そんなに質は悪くない。他人を蹴落とし出世したいという「奴隷の欲望」は、会社の奴隷となった日本のサラリーマン特有の欲望。弱肉強食は異種動物との関係。同種で闘争が起きないよう自然には配慮がある

・イギリス型の資本主義は「労働者の欲望」を充たそうとするもの。人間(労働者)を大事にする福祉型の資本主義。人間を軽視し、物欲の塊にしてしまうのがアメリカ型の資本主義。人間を経済動物の畜生に変えてしまうのが日本型の資本主義で、一番性質が悪い

・人間は働きたくないもの。それが人間らしい欲望。それがまともな欲望だということがわからないから、われわれはエコノミック・アニマルになってしまった

・「もしも人間の価値がその仕事で決まるものならば、馬はどんな人間よりも価値があるはずだ。馬はよく働くし、第一、文句を言わない」とロシアの作家のゴーリキーは言った

・日本人の労働観が労働神事説に基づいているため、労働懲罰説が全くわからない。労働神事説は「延喜式」に収録された「祝詞」に見られ、労働は神に仕えることであり、神聖なる宗教行為となる

・現在の日本の労働環境が最悪なのは、組織は労働懲罰説にもとづくピラミッド型組織になっているのに、思想は、経営者のお説教で、労働神事説の労働観を持たされていること。労働神事説では、能率は問題にされない。だらだら働くから24時間神に仕えられる

・アメリカ型の資本主義は、需要の拡大(未開拓の土地、人口の増加)と供給の増大(製品の単純化、部品の規格化、分業システムの確立による大量生産方式)の相乗作用によって発達した

・アメリカの労働者は、消費者に変えられ、「消費者の欲望」を持つことになった。「消費者の欲望」は「王様の欲望」の変形版。王様が持つ欲望は、他人が持っていないものが欲しいというもの

・ジュエリーの購買意欲は、その人がすでに所有しているジュエリーの個数に正比例して高まる。また、過去一年に購入した人は、一個も購入しなかった人より購買意欲が高くなる。ジュエリーは「持てば持つほど、買えば買うほど、ますます欲しくなる商品」

・現代人は、昔の貴族や権力者たちが想像もできないような贅沢な生活をしているが、いっこうに満足感がない。それは、われわれが「消費者の欲望」(餓鬼の欲望)に踊らされているから

・たばこを1本吸えば、次のたばこが欲しくなり、欲望の奴隷になってしまう。アメリカ型の資本主義がつくりだした消費者の欲望が、まさにこの奴隷の欲望である

・日本の資本主義は、基本的にアメリカ型の資本主義と同質だが、少し違うところがある。それは、企業中心主義になっている点。そこでのさばっているのは、資本家でもなく、労働者でもない。「企業」といった怪物が大きな顔をしている

・日本の労働者は、ある企業に「買われる」と、そこから動くことができない。自分を他の企業に「売ろう」としても。自由で公開された労働市場がないから「売る」ことができない。その結果、最初に就職した企業で「飼い殺し」にされてしまう

・会社と従業員の関係は、まるで江戸時代の藩とその家来の関係。馬鹿殿様が何をやっても、家臣は「ご無理、ごもっとも」と、それに従うほかない。それを諌めたりすれば、打ち首になる。それと同じく、企業の悪事に従業員は加担するか黙認しなければならない

・現代社会は、あれこれ数字をつくって、世間の奴隷にする。病院に行けば、数字ばかり見せられる。医者は患者を見ないで、コンピューターの数字ばかり見ている。そして、わたしたちは「病人」にされてしまう

・仏教はすべての人を好きになれとは命じていない。嫌いでもいい。われわれは嫌いな人を好きになることはできない。けれども、たとえ嫌いな人であっても、その存在をそのまま全肯定すべきである

・もし地球上の全員が大金持ちになれば、誰も働かなくなる。その結果、全員が自分で耕し、自分で機を織らなければならなくなる。みんなが金持ちになれば、みんなが困る。ということは、貧乏な人の存在が必要ということになる

・仏教の「空」とは、「ものには物差しがついていない。物差しはそれぞれの人が持っている」という意味。この「空」なる人生を、あくせく忙しく生きたい人はそう生きればいいし、のんびり生きたい人はのんびり生きればいい。そう思うと人生を楽に生きられる

・あなたの周囲で大勢の人が走っている。つられて駈け出してはいけない。走っている人たちは競走馬。彼らは、いったんゴールに入るだろうが、また新たなゴールを目指して走らねばならない。そして走れなくなったらお払い箱。私たちは競走馬ではない



日本の社会がどう動いているのか?どう動かされているのか?この本を読めばよく分かります。

動かされるのが嫌になった人は、社会をいったん出て、社会の物差しを否定することで、救われると思います。

この本はまた、社会の物差しがいかにいい加減なものかを教えてもくれます。その物差しの上で踊るか、休むか、その物差しから出ていくかは自由です。

一つの物差しの上で踊り続けていくことに疑問を感じている人にとっての、人生の指南書となるのではないでしょうか。
[ 2010/04/09 08:15 ] ひろさちや・本 | TB(0) | CM(0)

『サラリーマン大家さんが本音で語る中古マンション投資の極意』芦沢晃

サラリーマン大家さんが本音で語る中古マンション投資の極意 (お宝不動産セミナーブック)サラリーマン大家さんが本音で語る中古マンション投資の極意 (お宝不動産セミナーブック)
(2007/04)
芦沢 晃

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著者は、主に500万円前後の中古ワンルームマンション投資を行い、20室を所有するサラリーマン大家さんです。

理系の大学出身のようで、実に細かいシミュレーションをされています。細かさは、机の上だけでなく、マメな行動にも表れています。

サラリーマン大家さんとして成功したノウハウも、包み隠さず披露されていますので、大家さんの夢を抱いている方にとっては、非常に頼もしい書です。

この本を読み、参考になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・手取りの家賃収入が年間1000万円に達したが、「貯金した資金をワンルームマンションに投資し、家賃収入を貯め、それを再び投資して運用する」という単純な繰り返しをやってきただけ。財産や金融機関と無縁であっても実行可能

・ワンルームマンションに絞って投資してきたのは、仲介売買、賃貸管理、維持修繕などをプロにアウトソーシングして、運用できるシステムが完備されているから

築15年の中古ワンルームを購入する場合、築30年後までの15年間の家賃収入だけで投下資本の回収できる価格を逆算して、それよりも安く購入する。築30年の時点で投下資金が回収できれば、法律で47年償却規則なので、その後の戦略が立てやすくなる

・1室だけの場合、1室が空室になれば家賃はゼロになり、維持費が持ち出しとなる。しかし、所有物件が2室3室と増やすと、全室同時に空室になる確率は低くなり、リスクは低下する

・空室が最悪でも3カ月以内で済むような立地のいいマンションを選んでおけば安心。借地権でも駅前の物件は強い

・マンションによっては「大規模修繕費用の不足」と「管理費の累積赤字幅の拡大」という恐怖の時限爆弾がついている可能性もある

・賃貸経営を始めると、毎月家賃(卵)が入ってくるので、永遠に金のなる木を手に入れた錯覚に陥る。しかし鶏が日々歳をとるように、物件も老朽化して、その価値を下げていく。理想は、卵をたくさん産みながら、何年後かに鶏も大きくなっていくこと

・「銀行は中古ワンルームマンションの価値を0とみなすことが多いので資金調達ができにくい」「土地の持ち分が少ないので、建物の寿命がきたときが投資の終焉」管理が悪い管理会社を変えるにも「管理組合の議決合意が必要で、個人の裁量が狭い」ことがデメリット

・成功するためのチェックポイント

投下資金を何年で回収できるか
投下資金を回収できたとき、建物は築何年となっているか
その時、自分と家族は何歳になっているか
買値をいくらにすれば、築30年までに資金回収できるか
築47年までにいくらの累積キャッシュフローがあるか
法定減価償却期間が過ぎた後の建物価値(想定売値)はいくらか

・正確なシミュレーション力で検証

物件価格、築年数、現在の空室率、家賃設定、管理費、修繕積立金実額、修繕積立金残高状況、税金、保険料、維持諸経費、建物の減価償却額、土地課税評価額、現在の物件時価

築10年まで物件価格は急落する。築15年から大規模修繕費が発生。それを嫌って手放すオーナーが増え、中古物件の流通数は急増する。この物件から条件のよいものを探す

・物件情報は、ネットを使い、「衛星写真で街並み調査」「売買成約価格公開」「不動産会社の賃料相場」で下調べし、労力、時間、費用を省く

・物件を見るときは、「第一印象」「共用部分の管理状態」「共用機械設備の有無」「管理組合の収入源」「道路付き」をチェックする

・不動産屋が空室を内見する客に手渡す資料をつくると、内見率が高まる。資料には、写真(全体、内装、眺望)、物件の特徴(ペット、物干場、バイク置場、敷地内駐車場等)、内装の特徴(浴室、トイレ、洗面、インターフォン等)を解説し、チラシ風にまとめる

内見客対策(スリッパ、特徴ある説明箇所にPOP、巻尺の用意、匂い対策、水回りに消毒済の張り紙で封印等)もぬかりなくする

家賃滞納対策(不動産屋の人を見る直感を信用、契約条件・契約書、1日でも遅れたら即連絡。それでも遅れたら保証人へ連絡、電報、内容証明郵便で督促状。さらに遅れたら簡易訴訟)も万全にする。2か月分の滞納が発生すると回収できない

入居者からのクレームは、故障、問題箇所をデジカメに撮って送信してもらうなどして、即対応。入居入替時に、無駄な緊急修理出張費のもととなる箇所をメンテナンスしておくと事前に防げる場合が多い



この本には、著者自身が作成した、自己所有物件のシミュレーション表や資料などがいっぱい掲載されています。

ここまでノウハウを公開してもいいのかなと思うくらいの、具体的かつ実務的なものばかりです。

この本を読めば、行動力と余裕のお金さえあれば、誰でも中古マンションオーナーとして、成功できるように思いました。

家賃収入がうまく得られていない方や、これから得ようと考えている方にとっては、頼もしい書ではないでしょうか。
[ 2010/04/08 09:35 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『私の幸福論』福田恒存

私の幸福論 (ちくま文庫)私の幸福論 (ちくま文庫)
(1998/09)
福田 恒存

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この本は1979年に出版されたものが土台になっていますが、そのもとは、著者が1955年から2年間、雑誌に連載していたものです。

実に55年前の文章ですが、全く古く感じません。それは、著者の教養のなせる業だと思います。

福田恆存氏の本を紹介するのは「日本への遺言」に次ぎ2冊目です。幸福論という枠にとどまらず、著者の哲学に触れることができました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・男と女が初めて出会うとき、電車の中であろうが、路上であろうが、互いに見合った瞬間、それぞれに相手を裁いている。眼と眼を交わしたとき、それがいわば「勝負あった」瞬間である

美醜によって、好いたり嫌ったりするという事実は、残酷であり、しかもどうしようもない現実である。それを隠して、美醜など二の次だということのほうが、残酷なことのように思われる

・顔の美醜に限らず、世間に出て、金のあるものが貧乏人より、他人からちやほやされるという事実は、否定できないこと。どんな世の中でも、優者が劣者よりもてはやされることは、しかたのないこと

・まず自分の弱点を認めること。そして、それにこだわらないように努めること。その素直な努力そのものが長所を形づくっていく

・「だまされた」のは、人相と人柄の一致という原理を無視したからにほかならない。語っている人物の人相より、語られた言葉の内容のほうを信じたからにほかならない

自我意識を徹底させると、ままならないのは、家庭や社会ばかりではなく、自分自身だということに気づく。人格というのも顔の美醜と同様、簡単に変えることはできない

・失敗が続くと、どこかに失敗の原因はないかと、自分以外の場所に、その理由を探し始める。その気になりさえすれば、その理由をいくらでも拡大できる。その拡大工作が行きつく最後の地点が宿命というやつ。遺伝と環境という二つの武器

・自由とは、なにかをなしたい要求、なにかをなしうる能力、なにかをなさねばならぬ責任、この三つのものに支えられている。口先だけの自由を唱えても、その背後にこの三つの条件が欠けていたら、自由は辛いものになる

・私たちは、出発点においても、終着点においても、宿命を必要とする。言い換えれば、初めから宿命を負って生まれてきたのであり、最後には、宿命の前に屈服する。私たちはその限界内で、自由を享受し、のびのびと生きることができる

・私たちは、教育によって知識を得、文化によって教養を身につける。教育によって得られる文化的知識は、氷山の頭に関する知識であって、文化とはそれだけのものではない

・日常的でないものにぶつかったとき、即座に応用が利くということ、それが教養というもの

・ユーモアや機智は、その人の教養を物語るもの。今日、いろいろな意見の対立や勢力抗争を見ても、どこにもユーモアや機智の潤滑油が見られない。余裕を持つことが必要。相手の立場を認め、教養の限界を自覚することが真の教養人といえる

・知識のある人ほどいらいらしている実情は困ったもの。知識は余裕を伴わねば、教養のうちにとりいれられない

・理解することばかりが愛情ではない。理解し得ぬ孤独に堪えるのも愛情。愛情があれば、その孤独に堪えられるし、また相手の孤独を理解し得る

・恋愛の燃え上がりの時期において、「あなたでなければ」と言いながら、実は女でありさえすればいい。それは、恋を恋しているから。しかし、恋の手順を踏んで、最後に肉体的交渉を得ると、その時はじめて、相手は女性一般ではなく、特定の個性に転化しはじめる

・自分の家庭の幸福のために他を顧みない場合ですら、浅薄な慈善家よりは、愛と信頼に生きている

・快楽というものをつきつめていくと、どうしてもその極限には、相手を自己の欲望充足手段としか見なさぬ生き方に辿りつく

・ユートピアの世界では、私たちは孤独になるばかり。それは、一口に言えば、摩擦のない清潔な貧しさというものである

・「不幸」というのは、「快楽」が欠けていることであり、「快楽」でないことにすぎない。私たちは、その意味の「不幸」のうちにあっても、なおかつ幸福でありうる。真の意味の幸福とはそういうもの

・究極において、人は孤独である。実は孤独を見極めた人だけが、愛したり愛されたりする資格を身につけ得たと言える



幸福とは「不幸でないこと」だと思っていましたが、著者の考える幸福とは、「不幸にたえる術」というものです。

世の幸福論とは、似ても似つかぬ、厳しく冷たいものですが、著者の考え方が、本質を捉えているように思います。

幸福について、深く考えたい人にはおすすめの書です。あまり、考えたくない人は読まないほうがいいかもしれません。
[ 2010/04/06 06:40 ] 福田恒存・本 | TB(0) | CM(0)

『フランクルに学ぶ-生きる意味を発見する30章』斎藤啓一

フランクルに学ぶ―生きる意味を発見する30章フランクルに学ぶ―生きる意味を発見する30章
(2000/06)
斉藤 啓一

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フランクルは「夜と霧」(強制収容所における一心理学者の体験)の著者として有名です。大学生のときに一度読んだことがあるのですが、不勉強のせいか、内容をあまり憶えていませんでした。

この「夜と霧」は、ユダヤ人で精神科医である著者が、強制収容所に送られ、そのとき目にした極限状態の人間の姿を科学的な視線で描いたものです。世界的ベストセラーになりました。

この本は、そのフランクルの著述をもとに、その思想や哲学をまとめたものです。再度、フランクルの叡智に触れたくて、この本を読みました。

フランクルの著述や著者の見解で素晴らしく思った箇所を、紹介したいと思います。



・虚栄心も差別意識も、恐怖に対する防衛的態度の現れ。虚栄によって人を見下し、差別化する根本動機は恐怖である

・「そうだ、人生に期待するのは間違っているのだ。人生の方が、私たちに期待しているのだ」

・「待っている人、あるいは待っている仕事への責任を自覚した人間は、生命を放棄することは決してできない。また、ほとんどいかなる困難にも耐えられるのである」

使命感を自覚した人間ほどバイタリティ溢れる者はいない。使命感がロゴスのエネルギーを心身に流し込ませるからである

・未来の自分自身の姿「突然、明るく照らされた、美しくて暖かい大きな会場の演壇に立っていた。前にはゆったりした椅子に腰掛けながら、興味深く耳を傾ける聴衆がいた。私は強制収容所の心理学を語った」をイメージし、苦悩から超越することができた

・「自らの未来を信じることのできなかった人間は収容所で滅亡していった。未来を失うと共に拠り所を失い、内的に崩壊し、身体的にも心理的にも転落した」

・真の勇気が試されるのは、逆境のときではなく、むしろ幸運のとき。恵まれた環境において、どれだけ謙虚でいられるかが問われる

・「人間は、相当の苦難にも耐えられる力を持っている。しかし、意味の喪失には耐えられない」

・「文字通り無になった人は、まさに生まれ変わったように感じる。しかし、以前の自分に生まれ変わるのではなくて、もっと本質的な自分に生まれ変わる」と新たな精神の境地を述べた。絶望とは、新しい自分、新しい希望が生まれるという前兆にほかならない

・「これほどの試練を受けるのには、何か意味があるはず。何かが僕を待っている。何かが僕に期待している。何かが僕から求めている。僕は何かのために運命づけられているとしかいいようがない」

・「この地上には二つの人種しかいない。品位ある人種とそうでない人種である」

・私たちを苦悩させている原因は「人生の意味や目的の喪失」。すなわち「自分は何のために生きているのか?」という、生きる目的も価値も見出せない生活からくる脱力感や空しさが原因。それをフランクルは「実存的空虚」と呼んだ

・「どうせ・・・なんだ」。わずかな可能性に賭ける冒険心も、辛さに耐えて何かをやり遂げる勇猛果敢な精神も、その芽を出す前に、この言葉が刈り取ってしまう

・「私たちは、自分にもたらされた運命の意味がわからないとき、超意味であるロゴスの声(良心)に耳を傾けることで、それをつかむ可能性が開かれる」

・「人間の実存的本質は、自己超越にある」。自分を忘れること、すなわち「無我の境地」を、フランクルは「自己超越」と呼んでいる。そして、自己超越こそが、人間の本当の姿であると言っている

・肉体は快楽を求めるが、魂は感動を求める。自らの人生がどれだけ幸福で満たされていたかは、快楽を得たかではなく、感動を得たかによって決まる

・「自分の成功や楽しみに目もくれない人(自分を忘れ、あることやある人に愛を傾ける人)には、成功も楽しみもひとりでにやってくる」



強制収容所という絶望の淵に立たされた経験から見えたものは、現在、悩み苦しんでいる人たちにとっても、共感できるものであり、希望の証になるものです。

人生の岐路に立たされている人は、「フランクルに学ぶ」べきではないでしょうか。きっと人生の羅針盤になると思います。
[ 2010/04/05 07:54 ] 偉人の本 | TB(0) | CM(0)

『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか』

なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのかなぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか
(2008/02)
ケンジステファンスズキ

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デンマークには、8年前に3日間ほど滞在したことがあります。

「市役所の建物がなく、民間ビルの中に市役所があった」
「市議会は夜開き、市会議員は無報酬。最高のボランティアが議員だった」
「失業者に市が48時間以内に仕事を斡旋していた」

など驚くことだらけでしたが、同じ北欧のスウェーデンに比べて、垢抜けていない印象を受け、その後、あまり調べることがありませんでした。

デンマーク滞在41年になる、ケンジ・ステファン・スズキ氏のこの本を読むと、自分がいかに、浅はかな人間であったか反省させられます。

この本には、本当に感動しました。自分が考えていること、理想としていること、日本のおかしいと思っている点、すべてがこの本に掲載されていました。自分の代弁書のように感じました。

自分の理想=デンマークの現実であることもよくわかり、良き師に出会えたようなうれしい気分も味わえました。これから先も、ずっとデンマークを研究し続けようと考えています。

著者は、デンマークが、なぜ凄いのか、日本との対比を示しながら、感情的ではなく、論理的に詳細に記述されています。感銘した箇所、参考になった箇所をいっぱい紹介したいと思います。



・デンマーク国家は「出産費用」から始まって、小学校から大学までの「教育費」、病院の「入院、治療費」、「葬儀代」まで国家が負担する制度が導入されている

・子供が入院した場合、付添者用の無料宿泊施設、無料の食事提供だけでなく、仕事に出られない日の給与も国家から補てんされる

・国民は国家の財産であり、教育は国家を支える人材を育成する国家的事業。教育の成果は、個人だけでなく、デンマーク社会を豊かにすると考えられている

・今日の社会福祉国家や環境先進国と称される国家の理念が生み出され、継承されてきたのは、国民が総じて高い知的水準と教養を身につけているから

・大学教育はつねに実社会との関係を重視して行われているから、専門的に学んだ学問が卒業後の仕事と直接結び付く。日本のように大学進学を最終目標にして小中高の教育をしていない

・親が子供を扶養する義務は18歳まで。18歳を過ぎると親との経済関係が切れる。18歳以上の国民には、国庫から「就学支援金」(日本円で月額10万円)が支給される。学費は無料なので、それを生活費に充てる

・18歳以上のデンマーク国民で、何らかの所得支援(失業、疾病、出産、生活、リハビリ手当など)を受けている人は国民の約40%に上る

・国民や企業が払った税金が社会に公平に還元されるという信頼感がない限り、税金を納めることへの主体的な意識は生まれない

・政府が農業政策に傾斜した支援策を打ち出していないのに、自立的営農で、デンマーク農業関係者が、痩せた国土から農作物を自給するための努力を続け、ついにカロリーベースで300%の自給率を実現したことに、大きな感銘と敬意を抱く

・デンマークのエネルギー自給率はヨーロッパ諸国最高の156%になり、一部を輸出している。1973年の自給率は2%弱だったが、風力発電を一大産業に育て上げ、エネルギー先進国になった

・日本では、国内資源を活用して、食料やエネルギーの自給を向上させようという提案が、官僚や政治家、報道関係者からあまり出てこないのは不思議に思う

・幸福な国民の定義を「健康でよい教育が保証された国に住む者」とした「幸福な国民度」ランクでは、デンマークが1位、スイスが2位

・世界銀行発表の「全世界の統治指数」では、世界で最も民主主義が進んでいるのは、デンマークとフィンランドと報告されている

・日本では国民各層からの問題提起が、国家の運営や改善策の策定につながっていない。民主国家の指標からすれば、日本の民主主義の度合いはとても低い

・人口540万人のデンマークで、毎年2万5000件が起業されている。デンマーク人の起業家の多くは脱サラ。労働時間が少ない(法定週37時間)ため、職場から帰った後も多くの時間が取れ、起業の準備を進めることができる

・午前8時から午後4時までの勤労者が残業した場合、午後7時までの残業代が5割増、それ以降は100%増額。就業者は残業代の60%が所得税になる。雇用者も2倍の時給を払う。双方に残業のメリットがない

・デンマークの資金融資は事業内容の評価が基本で、日本のような悪しき慣習である「第三者の連帯保証」がないので、破綻しても、親戚関係、友人関係に負債の請求が及ばない

・デンマークは、田舎に行っても、三相交流の400ボルト電力が使える。日本の一般家庭用配電は北朝鮮と同じ100ボルト(中国、韓国でも230ボルト)。世界で最も高い電気料金を支払わされている。電力料金が高いと起業家にとって大きなマイナス要因

・1953年から2007年まで21回の国会議員選出選挙があったが、投票率が80%を割ったことが一度もない。国政選挙の投票権、被選挙権とも18歳以上

・デンマークでは街頭演説や選挙カーに大きなスピーカーを取り付けて連呼する選挙運動は認められていない。戸別訪問にも遭遇したことがない

・デンマークで最も視聴率が高いテレビ番組は、総選挙2日前に夜9時から11時まで放映する政策討論会。視聴率は74%で、540万人の国で400万人の視聴者数

・多くのデンマーク人が高率の税金を不満もなく納税するのは、教育費や医療費、働けなくなった際の生活保護費など、税の還元がはっきりと実感できるから

・年収1000万円のサラリーマンが支払う所得税額は45%、800万円なら40%。直接税と間接税(消費税25%など)の納税額は全体で19兆円。個人所得税が61%、法人税は8%弱。政府予算の歳入は12.9兆円、歳出は11.5兆円、高福祉の政策でも1.3兆円の黒字

・デンマークでは、個人番号、事業所登録番号を持たない事業体は運営できないようになっている。個人も個人番号なしに雇用されないシステム

・デンマーク人は旅行好き。毎年人口の19%が海外旅行に出る

・自分の知らない世間を知りたい、未知の体験をしてみたいという、バイキングの遺伝子は若者たちにも受け継がれており、一定の年齢になった若者が国内外を放浪して社会経験を積むという伝統がデンマークにはある

・日本のように現役の方が大学入試に有利ということがないので、高校卒業してから1年、2年、社会放浪体験しても、まったくハンディにならない

・人口1万人程度の町にも、2、3カ所リサイクルショップがあり、その収益が恵まれない人たちへの資金源になっている。中古家具、衣類、電気器具など修理して販売。1人当たり週2時間ほど無報酬で働き、月100万円程度の売上がある

・デンマークの1人当たり貿易額は、日本の1人当たりの3倍。主な輸出品は、肉類・酪農製品、薬剤・医療機器、機械・運輸機器など

・デンマークは地震のない国なので、築100年住宅が住宅市場で流通している。平均的な一般住宅の土地面積は240~300坪で、建坪は40~55坪。家族構成と経済状況に合わせ、一生の内に何度も住み替える

・2000万円の不動産評価額の家に住むと、その1%に当たる20万円の不動産税がかかる。火災保険のない建物の売買は禁止。全国の不動産評価額はネットで公開されており、即座に知ることができる

・中央集権国家体制が発達しなかったデンマークには、産業界と国家との間に癒着の構造が生まれることはなかった。業者と中央政府の役人たちとの日常的な密接な付き合いがないので、大企業でも本社を首都のコペンハーゲンに構えていない

・首都に本社を構えないことは、地方都市にとっても企業にとってもメリットが多い。土地の値上がりや通勤の渋滞がなく、国民の経済や健康から見てもプラス。通勤・通学の距離がバスで20分ほどの「職住接近」が実現し、食料の供給も「地産地消」が実現する

・日本の企業がこぞって東京本社を開設するのは、政治家や官僚との連絡機関、利権調整として必要があるようだが、デンマークでは考えられない。産業界は、行政や政治と関係を持たず、「天下り」など存在しない

・デンマークの労働者の多くは職業別組合に加盟しているため、仮に大企業が倒産しても、社会福祉のセーフティネットで守られているため、生活に困ることはない

・中央をありがたがる「寄らば大樹の陰」の国民性は、鎌倉幕府の成立から明治維新まで続いた670年の封建制度の名残が現代まで続いている

・日本で起きる公務員の数々の不正や杜撰な事務管理などのスキャンダルは、日本の教育の欠陥。国・公務員は誰のために存在するのかという検証が軽視されてきた結果のこと

・食料の60%を国外に依存し、エネルギーの95%を国外から調達し、しかも国家財政が赤字で累積の債務額が毎年膨大に増えているにもかかわらず、日本人の多くから危機感が感じられない

・デンマークでは働く職人は同一の職種では、雇用先、国籍に関係なく同一の報酬が保証されている。労賃のダンピングを防ぐため、デンマークの職人組合は、外国人労働者にも同一賃金を守っている

・デンマークの大工職人の労賃は1週間37万円で、公立学校の教員給与の2倍。看護師の月額給与は55万円だが、待遇に不満な場合、離職し派遣登録して働くと月額20万円増額になる。非正規雇用者を雇用すると事業主に割高になる賃金政策が採られている

・デンマークでは、日本のような企業別組合はなく、職種別組合が33あり、労働人口の8割が加入。学歴、年齢、性別、企業規模に関係なく、職種によって給与額が決まる

・デンマークには「新規採用制度」がなく、就職活動も入社式もない。定年制度もないので、65歳の国民年金取得後も働くか個人に任されている

・海運に恵まれた日本には、海外との交易に大きな可能性があったにもかかわらず、江戸時代の権力者は、自己防衛策として、国益を無視した国策に固辞した。この思考回路が今日の日本人の国民性に引き継がれてしまっている

・日本では、貧困者の救済は各藩や寺などの私的団体に任され、幕府などの中央集権が救済政策を実施した歩みはなく、あっても一時的な権力維持のための対応策であった。徳政令も武士階級の財政難を救済するもので、実際には貧困層に犠牲を強いるものであった

・デンマークに居住していたユダヤ人のうち、ドイツ軍に逮捕拘束されたのは、わずか485名でユダヤ人撲滅政策はデンマークだけ成功しなかった。ドイツ占領下にありながら、ドイツのいいなりにならなかったデンマーク市民のしたたかさが大きな力となった

戦争原因の多くが「食料とエネルギーの確保と争奪」。食料とエネルギーを国民に提供する任務を果たせない政治家・軍が戦争を発動する。戦争回避のためにも「食料とエネルギー」を確保する努力を続けることが安全安心につながる

役人の汚職事件は、デンマークでは考えられないこと。国家公務員や大学教授の汚職事件を見る度に、江戸時代から受け継がれてきた「偉い人は何をしても許されるという甘え」が日本人に受け入れられているように思える



日本とデンマークのあまりの違いにうんざりしますが、日本人には、この事実が知られていないように思います。また実感できない環境にもあると思います。

日本は経済的には素晴らしい国でも、政治的には全然素晴らしい国ではありません。

なぜそうなったのか?それは、官僚や政治家に、ノブレスオブリージュ(高尚な人間の義務)の意識に欠けていることと、理想と現実の整合を行ってこなかったことが考えられます。

一番には、徳川家康が、徳川家を守るために、自分たちに都合がいい儒教精神を定着させたことも大きな要因かもしれません。

いずれにせよ、自分の理想や考え方を再確認していくために、この本をずっと大切に読んでいきたいと思います。
[ 2010/04/02 08:37 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(1)

『こっそり読みたい相場の法則』前野晴男

こっそり読みたい相場の法則こっそり読みたい相場の法則
(2004/08/12)
前野 晴男

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商売の法則相場の法則には、お互いに共通した部分が多くあります。特に、大きな商いをされた方には、その共通性を感じます。

小さく成功するには、「信用」が第一です。しかし、さらに大きく成功していくには、「信用」にプラスして「商機」を捉えることが必要になります。この「商機」こそが、相場と似たものではないでしょうか。

この本は、相場と格闘してきた人たちの、汗と涙の結晶が、言葉に変換された書です。

500以上の相場の名言、格言、コメントの中から、面白く感じた箇所を「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


陰の極みは陽、陽の極みは陰(八木虎之巻

・天下の意の如くならぬものは、馬鹿と相場(豊臣秀吉)

・人生ことごとく投機なり、投機は人生の縮図なり

・損をしたければ確実なものに投資せよ(ウォール街の格言)

・思惑は人の本能にして、資本主義の基調なり(アダム・スミス)

・相場は一運、二金、三度胸(八木豹之巻)

・類より集まる意見は時遅し、その裏道を深く考えるべし(近世いろは相場金言

早耳の早倒れ、早耳の早損

・語るものは儲けず、儲けるものは語らず

・一心迷はず、念を以て考える時は、計り得ずといふ事なし(八木豹之巻

・賢い人ほど騙されたがる(マキャヴェッリ)

・相場の道、すなわち孤独に徹すること(是川銀蔵)

・わが思い入れをみだりに人に話すことなかれ。他の了簡聞くことなかれ(相庭高下伝

腹立ち売り、腹立ち買い、決してするべからず(本間宗久)

・クソ度胸、出すはよけれどヤケクソに、ならぬようにと心するべし(近世いろは相場金言)

・気の長き人は日計りの商すべからず。また気の早い人は長き思い入れすれば悪し。これ、その器に反せる当然の理なり(相庭高下伝)

正しい判断は絶望の中から生まれる

・理屈に負けて相場に勝て

・勝たんと打つべからず、負けじと打つべし(嶋井宗室)

・豊作に売りなし、凶作に買いなし(本間宗久)

・万人が呆れ果てたる値が出れば、それが高下の界なり(三猿金泉秘録

・一割二割は世の変動、三割以上は人の変動

・天井一日、底百日

・相場の金と凧の糸は出しきるな

・商い仕掛ける時、先ず損銀を積もるべし(八木虎之巻)

・クレヨンで説明できないアイデアには、決して投資するな(ピーター・リンチ)

・バックミラーで将来を見ることはできない(ピーター・リンチ)

・あまり物に値なし(田附政次郎)

・株を買わずに時を買え(ウォール街の格言)

・株屋の増築、売りの好機

・雨降りにタクシーはこない

・仕掛けは猫が鼠を捕らえる如くなるべし

若い相場は目をつぶって買え

・相場道の極意は手仕舞いにあり

・商いは急がず、迷わず、度を超えず、見切りは早く、利は早く喰へ(本間宗久)

・売るべし、買うべし、休むべし(田附政次郎)

・強気相場は悲観の中で生まれ懐疑の中で育ち、幸福の中で消えていく(ウォール街の格言)



この本を相場の法則と考えずに、チャンスの法則と考えれば、もっと面白く読めるのではないでしょうか。

古今東西、チャンスをものにした人たちの人生訓の宝庫かもしれません。老若男女、誰もが面白く読める書ではないでしょうか。
[ 2010/04/01 07:49 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)