世界各国、様々な特徴があります。日本は、その国々の文化の
いいとこどりをして、悪いところを無視してきたように思います。
外交、交渉、付き合い方は、国々の長所と短所を知ることによって、的確に行えるのではないでしょうか。
世界各国の短所を紹介する本はないかと探していたらこの本がありました。
筆者は
フランス国立行政学院に留学後、国土庁長官、通産大臣の官房官参事などを務められた世界各国に詳しい方です。
辛口評論が面白く感じられた箇所を大国の34カ国に絞って、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・中国人は実利へのあくなき追求からものを考える人たち。それは強みであると同時に弱みでもある。彼らは、さし当たっての役に立たないことを追求するのは苦手
・中国は、工芸、建築、料理では優れた文化を生み出したが、音楽、数学、物理などは苦手
・中国人は、何事につけても大袈裟な話が好まれ流布されがち。彼らの話は、2、3桁減らして聞けばいいと割り切らないといけない
・始皇帝が作り上げた中央集権の仕組み(科挙制度で採用した官僚を、全国ほぼ均等な大きさの郡に任期制で派遣する
郡県制)は、イエズス会によりヨーロッパに紹介され、その後、ナポレオンにより、フランスで採用。各国に移植され広がった
・台湾は原住民(
高砂族)が2%、
外省人は台北市に多く13%、残りは
本省人(終戦以前に大陸から移住)。本省人の70%は先祖が福建省人
・韓国は儒教の影響もあって、価値観が一元的。例えば、整形手術も、
美人顔の条件がある好みのタイプに収斂されるため盛んに行われる。このように大衆文化は単純で分かりやすい
・日本に60万人いる在日の多くは
慶尚道出身者。韓国の李明博大統領も北朝鮮の金正日夫人の
高英姫も大阪生まれ
・日本は、自然条件と均一社会の居心地がよいせいか、海外へ進出しても、日本国内と同じ流儀を持ち込みたがる。あらゆる階層の人たちの上昇志向が強く教育熱心。
世襲に甘い半面、抜きんでて優秀な才能に激しい妬みを示す
・日本の20世紀後半の成功は、輸出によるもの。資本進出や投資の受入れは低調。その成功を継続する意欲も持たず、排外的な風潮と自己陶酔によって世界史の表舞台から消えつつある
・フランスの近代国家確立には、ナポレオンという制度構築の天才が不可欠だった。隙のない法典、充実した公教育、均一的な地方制度、全国民を基礎にした軍隊、安定した通貨などはナポレオンの創造物
・フランス人の物事の考え方はひたすら論理的。価値観の普遍性を信じ、なんでも
順位を付けること、
格付けすることに情熱を燃やす。「ミシュラン」が見てのとおり
・ドイツ人のモットーは「
他人に迷惑をかけない」「
ルールを守る」こと。アパートでは、午後10時以降に風呂に入るのもトイレの水を流すのも憚られる。しかし、1人ずつだと内気だが、集団になると急に気が大きくなり、要求を通そうとする
・ドイツ人の美的センスは音楽において最高に発揮される。論理性と構築力の精華である交響曲、
集団芸のオーケストラや合唱が得意。しかし、美術、工芸、建築、ファッションは頭で考えすぎて、良くできているけれど垢抜けない
・イギリスの
ジェントルマンの文化が世界を制したのは真似しやすいから。
すました態度やワンパターンのファッションは無難で外国人にも安心
・イギリスの食べ物はおいしくないのではなく「まずい」。味にこだわるのを恥と思うのは、日本の武士も英国の紳士も共通。「
もののふの国」だからルールを決めて
疑似戦争するスポーツには熱心(サッカー、テニス、ゴルフなど)。英国式の庭園は素晴らしい
・スイスには1971年まで婦人参政権がなかった。兵役の義務は厳しく、男性は定期的に軍人の訓練を受けなければならない。スイスの銀行では
匿名口座が認められ、世界中から怪しい預金を集めてきたが、このところ風当たりが強くなってきている
・スペインは騎士たちの国。イタリア人と違って融通が利かない。日本人で言えば、イタリア人が関西人なら、スペイン人は九州男児といったところ
・ポルトガルを安定させたのは、政権についた経済学者
サラザール。彼は、緊縮財政を徹底。変化を嫌い、組合主義によって過当競争を排除。少子化に悩んでいたフランスが
ポルトガル移民を大量流入させてきたのは、彼らが真面目で正直で働き者だから
・オランダ人は金儲けそのものが人生の目的。贅沢な生活に興味がなく、食べものもまずい。この国の商人たちは絵画には審美眼を持っていたらしく、世界市場に輝くすばらしい画家たちが生まれた
・スウェーデンでは労働時間は短く、男女差別も少なく、保育所も完璧だが、税金は高く、物やサービスの選択肢は少ない。
女性の働く環境が整っているというより、夫だけの収入ではやっていけず、子育てに専念できないようになっているだけ
・スウェーデンに限らず、19世紀以降、寒冷地の発展が見られたのは、暖房が普及したことが主因。20世紀後半以降は、冷房の普及で、高温や多湿の地域が発展している。寒さを克服した19世紀、暑さが気にならなくなった20世紀は、人類の歴史において革命的な時期
・デンマークは静かな国。山もなければ谷もない。刺激が嫌いな人にとってこれほど向いている国はない。玩具のレゴだけはこの国の大発明だと誰もが称賛する
・イタリア人でもミラノなどの北部の人たちは
南イタリア人をひどく馬鹿にする。北部には貧しい南部の面倒を見せられているという気分が強い
・イタリア人は、過去のローマ人たちの国を動かす組織力や制度構築力を忘れたらしい。長い間、しっかりした権力がなかったので、何でも融通無碍に、縁故などの個人的なつながりでものを解決しようとする
・イタリア人は女性に気に入られたいという気分が活かされて、絵画、工芸、ファッション、映画など見て美しいものをつくる能力は素晴らしい
・ロシア人は権威好き。格好良くても強さを感じない男は認められない。エリツィンのように粗野でも力があれば好まれ、アルコール依存症でも許される。プーチンのように凄みを感じさせるリーダーが理想的。あの理不尽なまでのやり口に酔いしれる。ロシアには
専制政治しか向かない
・ロシア民族は勇猛でない。むしろ臆病である。恐怖心のあまり、
過剰防衛に走りがち。気が小さいがゆえに暴れて手が付けられなくなるヒグマだと思えばいい
・ロシア人は美術や料理には無頓着だが、文学と音楽とダンスには最高の才能を発揮する。また、役に立たないことに情熱を燃やす民族なので、学術分野で大きな成果を上げる。インテリは、実用性がないからこそ尊敬される
・フィンランドはノキアの成功や
学力世界一で注目を集めている。資源もない国が平和裡に世界有数の豊かさを実現しているのは驚嘆もの。フィンランド人はやや陰気だが自然をとことん愛し、湖沼の別荘での生活を好み、サウナで汗を流すことが無上の喜び
・ポーランド人は誇り高いが、ここ数百年、ロシア人やドイツ人にやられっ放しで、すっかり皮肉屋になってしまった。フランス人とは伝統的に気が合う
・エジプトは石油が出ないがゆえに産油国の後塵を拝しているが、サウジアラビアなどの社会を支える実務的労働力の大部分がエジプト人
・サウジアラビアは、宗教が原理主義。公開斬首刑、手足の切断、鞭打ち、女性差別など近代的な人権とは縁遠い。米国との同盟(石油の見返りとしての軍事力提供)は大きな矛盾を孕んだもの
・ユダヤ人がパレスティナに国を創る権利など全くないが、砂漠の真ん中に豊かな国をつくるイスラエル人の努力は大したもの
・トルコ人はやや寡黙で尚武の民としての雰囲気を残す。繊維産業が盛んで海外からの送金や観光とともに経済を支えている。イスラム料理の代表として、トルコ料理を
世界3大料理にあげる人もいる
・かつてのイランの首都はイラク国内にあり、シーア派が人口の多数派。その意味でもイランという国家の存在自体に無理がある。イラン人は、かつての文化水準の高さから、恐ろしく誇り高い。容姿も美しい
・インド人は自宅に招いてのホームパーティーを好む。そのため、女性が政治や経済の話に参加し、知恵もつく。それが、未亡人や娘が政治家になることが多い理由
・インド人は世界で数学が一番できる。
抽象的思考が得意。日本人女性と結婚するインド人男性は多いが、逆は少ない
・タイ人は美術的なセンスに恵まれ、シルクや工芸品によいものが多い。それらが、工業発展の基礎にもなった
・インドネシアの土着化された
ヒンドゥー文化の伝統は、現代のバリ島に受け継がれ、世界中から観光客を集めている。インドネシア人は、かつて支配されていたオランダに対する嫌悪を露骨に示す
・
フィリピン人女性は、愛想がよく、社交的センスに恵まれ、家事手伝い、看護、接客、芸能に向いており、世界中に出稼ぎに出ている
・オーストラリアは
白豪主義の国。人種差別が緩和されたのは1972年になってから。それまでは、
アボリジニーの虐待と英国系の白人以外の移民を厳しく閉ざしてきた
・ニュージーランドは鉱物資源には恵まれないが、自然条件が畜産・酪農に好適。冷凍輸送が実用化されてから世界に市場を拡大。
マオリ族が人口の15%を占める
・南アフリカは英国の植民地だったが、差別政策のアパルトヘイトを推進したのはオランダ系の人たち。ヨハネスブルグが経済の中心だが、治安の悪さも有名
・アルゼンチンはかつてGNPが世界で5本の指に入るほど豊かだったので、大国意識が強い。
イタリア系移民が多い。牛肉王国
・メキシコ人の51%は混血の
メスティーソ。純粋の白人は15%でインディオは25%にすぎない。誇り高く自己主張も強いが、大雑把で大らか。友人関係を大事にする
・ブラジル人は、ポルトガル系をはじめとする白人と、黒人・インディオなどとの混血が拮抗。最近はアフリカ系が最大勢力になった。世界最大の
カトリック王国。国民は楽天的で大胆、開放的。日系人は138万人。食料資源も鉱物資源も豊富
・カナダを開拓したのはフランス人。英国に横取りされた結果、英語が主流になったが、ケベックでは、
古いフランス語と流儀を今も守っている。国民性は少々いい加減だが、親切。生活は贅沢ではなくすべてにわたりシンプル
・アメリカには
アイルランド系移民の子孫が4000万人いる。アイルランド本国の人口の10倍になっている
・ワシントンの住民は戦後のある時期まで選挙権を持っていなかった。首都の意向が国政に反映されすぎないとの配慮。思い切りつまらない首都であるが、
アメリカの地方分権を支えている
・開かれた経済社会や外国人留学生を平等に受け入れるシステムが
人工国家のアメリカにはある。他国の地域社会に住む人の息苦しさを和らげる役目も担っている
この本には、著者の体験談も含めた膨大な国の情報が詰まっています。知っているつもりなのに知らなかったことも多く、参考になりました。
世界史の教科書や地理の教科書に載っていないことが多く載っています。外国人との付き合い方を知る上で、貴重な1冊だと思います。