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「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『没落金持ち1000人に学ぶなぜかお金が逃げる人大きくたまる人』立川昭吾

没落金持ち1000人に学ぶなぜかお金が逃げる人 大きくたまる人没落金持ち1000人に学ぶなぜかお金が逃げる人 大きくたまる人
(2005/10)
立川 昭吾

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大金持ちになれる人大儲けする人は、理屈ではなく、嗅覚で動き、度胸と実行力がある人です。著者自身、そういう人だと思います。

一般のお金持ち本に比べて、実践的で直感的な部分が多いのですが、これがいいと思います。

著者が考えるお金持ちの定義は、本質的で、当たっている部分も多いように感じました。

また、くだけた文章なので、楽しく、一気に読めます。

この本の中で、お金持ちについて、なるほどと思えた箇所が、20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・貧乏たらしい人にはお金は寄ってこない。そこそこはゆくのだが、大金持ちというレベルには達しない

・本当のお金持ちでマンションに住んでいる人はあまり見当たらない。億ションに住んでいる人でも、たいてい戸建ての持ち家が別にある。マンション住まいでは、住んでいる土地に根付くことができない。これがお金持ちになるには致命的欠陥である

事業の寿命は11年。平成以降の年商10億円以下の企業ならわずか7年。事業の好調のときなどわずかしかない。追い風に乗りきれるかどうかが大金持ちになれるか奈落の底に陥るかの分かれ道

・事業も好調になってお金がドンドン入ってくると、儲け話も次々に入ってくる。大儲けすればするほど儲かる情報が次々に持ち込まれ、金持ちは大金持ちへとなっていく。チャンスがやってきたときに、ビビらず、決断と実行で上昇運に乗らないと大儲けは難しい

・お金の匂いを染みつかせるものは3つある。ファッションと車と家だ。この3つがお金の匂いを一番感じさせるものだ

・一軒家を買うとき、絶対に6m以上の道路幅に面している家を狙う。昔から小路に面する家に住んでいて、大金持ちになった人はいない

・商売繁盛の基本は単純。「慌てず、休まず、飽きず」の三ず主義を実行すればいい。そういう人にお金は集まってくる。真面目な人でも不真面目な人でも、大金持ちになる人は、24時間いつも仕事のことを考え、動いている

・お金持ちにとってお金に几帳面ということは、時間に几帳面ということにもなる。彼らにとって、金銭感覚と時間感覚は同じ。時間を守れない人は、お金についてもルーズな人が多い

・事業に対する欲望は強いが、お金に対する欲望のない高潔な人にはお金が身に付かない。お金そのものに対する欲望が強くなければ、お金持ちになれない

・世の中には人間的に真面目であっても、お金持ちになれる保証はない。お金持ちになれる人はお金に真面目な人だけ。お金に真面目とは、お金に几帳面で、お金儲けにマメ。お金に好かれる人はお金にこだわる人である

・新しい商売は9割失敗する。1割の成功者になるには、時には冷徹でシビアにならなければならない。人がよいだけではダメ。「人がよい」と言えば聞こえがいいが、実態は、しっかりと自分の考えを持たず、自己主張できない人ということ

・成功したお金持ちは、良くても悪くても、そろって弁が立ち、我が強く、周囲を振り回すほど自らを主張する

・世の中は、ヒトモノカネの3つの要素でいつも動く。没落した人に共通しているのは、カネ、モノ、ヒト、あるいは、モノ、カネ、ヒトの順番でものごとを進めること。成功のための順序は絶対にヒト、モノ、カネである。人がお金を呼ぶ。お金がお金を呼ぶのではない

・「最後に金融業」は大金持ちの鉄則。これをはずすと一挙に没落する可能性がある

・商売が成功する道筋は、人と違うことをするか、人と違う方法でするかの二通り。「違うこと」は当たれば大きいが、巨額の開発コストがかかる。全く人気が出ずに失敗する恐れもある。個人のアイデアやパワーで勝負できるのは人と「違う方法」で、競争に勝ち抜く道である

・一代で大富豪になった人は、なぜか怪しい、いかがわしい、疑わしい人物が多い。お金はそういう人に集まる

・大金持ちになるには、稼ぐということと儲けるという発想の二つが必要になる。時給で稼ぐのではなく、お金の鉱脈を見つけて、穴を掘り、お金を湧き出させる。これが大金持ちになる手順

・儲ける発想の人は、時間を売る代わりに、常に金儲けのアイデアを考えている。頭の中は、いつも「お金がどんどん儲かる方法はないか」「うまい金儲けのネタはないか」でいっぱい。上司や会社への不満などが充満しているサラリーマンとは次元が違う

・お金には二種類ある。本当に必要なのは、資本ではなく資金。ここを勘違いしてはいけない。資金を上手に蓄えられる人が、お金を大きく貯める人

・成功者の多くは種銭をつくるまでは、怪しかったり、いかがわしかったりするが、成功の道に入ると、気持ち悪い「さなぎ」から美しい「蝶」に変化していく。物事は量の拡大に成功したら必ず質が高くなる。逆に質の拡充は量の拡大を生まない。だから量の拡大から始めた人が成功者になる



お金持ちはお金に執着する人です。お金持ちになるにはなりふり構わない。きれいごとを言わず、実をとる。当たり前のことですが、こういう人がお金持ちになっていきます。

大金持ちになるには、「がめつさ」が必要です。大金持ちになってからは、「きれいごと」も必要なのですが、多くの「お金持ちになる」本には、きれいごとばかり書かれているように思います。

この本には、倒産を経て、お金持ちになった著者が体験した「お金の哲学」が書かれています。この内容を理解するだけで、そこそこの小金持ちぐらいにはなれるかもしれません。
[ 2009/12/29 09:15 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『法華経はなにを説くのか』久保継成

法華経はなにを説くのか法華経はなにを説くのか
(2008/01)
久保 継成

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若いころ、宮沢賢治の作品が好きで、何冊も読みました。宮沢賢治の生涯も気になって、その経歴も調べました。すると、「法華経」が彼の作品に大きな影響を与えたことが示されていました。当時は、その事実に少し違和感をもっていたように思います。

その時から、法華経とは一体何なのか?ずっと心の中に引っかかっていました。今回、この「法華経はなにを説くのか」を読んで、その引っかかっていた何かが少しだけ解けたように思います。

しかし、法華経とは何かが、簡単にわかるほど、自分の頭は聡明ではありません。わかったような、わからないような気分ですが、人間の生き方にとって、重要なことを示唆していることだけは確かなようです。

今の自分の頭で理解できたところだけですが、重要と思った箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・さとりは仏の境地とされるが、法華経では、さとりは皆が具えている「気づける能力」、気づいた者の心の力である。このことに気づけば、人間誰しも「この自分がこの自分を生きていく」という「こころ」が自ずと心の中に沸いてくる

・生きていく中で、ひとつひとつ「そうか」「そうなんだ!」と気づく。生きていく個人にとって、そのひとつひとつが「さとり」。これが明日に向かって生きていく糧となり喜びとなる

・法華経によれば、「さとり」とは、生きた人間が菩薩としての生き方をする中で、現実に掴むもの。私たち自身の「仏の道」を拓いていくもの。その中で「さとり」を積み重ねていくのは自分。自分が自分を救う道を拓く

・最澄が比叡山に開いた日本の天台宗は、「法華経」を中心として始まった。鎌倉期、そこから巣立った日蓮上人も、道元禅師も「法華経」によって仏道を歩んだ。作家では、宮沢賢治だけでなく、江戸川乱歩もSF作家の教科書として「法華経」を奨めていた

・「自分を生きる」そこに心を向けることが「すべて」の始まりというのは、実にあたりまえのことである。しかし、人間にとって、自分ほど手強い相手はいない。その自分との勝負が「すべて」の始まりだということ

・「話してよかった!」「聞いてよかった!」という間柄の人がいる毎日には安堵感と幸せ感がある。そんな思いはお互いの人生を豊かなものにする。法華経が説くしあわせとは、話を聞ける自分、そして自分を語れる自分、そういう生き方をするということ


・自分の本当のところを真剣に話せる人がいて、そういう話をしてくれる人がいる。こんな話し合える間柄を、自分の周囲につくり保っていくことは、人間の生活に欠かせないこと

・法華経の菩薩行とは、自分の掴んだものを他人に話していくこと、法を語る者(法師)になることである

・法華経には、人々が生きる上で、真剣な会話を聞くだけではダメで、同時に言うことが必要。聞くことに対して言うことのできる場でなければならない。そういう間柄がつくれて、初めて本当の会話が成り立つと説かれている

・「修行」とは、気づいたらそれを土台にまた次の行動に移るということ。「さとる」とは、「そうか」「そうだったか」と気づくこと、また目覚めること

・宗教は、誰かに何かを救ってもらう方法を説くものと考えられている。しかし、法華経が説く仏教の本質は、自分がさとる道を歩むこと。救いは自分自身が気づくことによって得られると教える

増上慢とは、慢心のために自分は「すべてわかった」と思い込み、聞く耳を持たない心の状態。さらに求める心が沸いてくる状態を失うことを、人間として最も自戒しなければならないという指摘

・もとめる心(アディムクティ)とは、ある人がその時に何を求めているのか、「金、異性、地位、権力、家族と自分の幸せなど」さまざまであろうが、そのさまざまな人間の心の向きという言葉

・人には高尚な精神の持ち主と品性下劣な人間との区別があるわけではなく、その人の心が、その人の生活の中で、今、どこを向いているかによって、その人に違った生きる姿勢が生まれてくる

・もたれ合う人間関係も、さぐり合う人間関係も、どちらも人の心を豊かにしない。生きる方向に心が定まった時、自分にとって信頼できる人がハッキリと見え、自分を支えてくれる人が得られる

・相手の心に届く言葉で語る、相手に分かってもらえるように話すということは、他の人との間柄を保つために、意を尽くさなくてはならない大事な基本

・分かってもらえるように話すということは、聞き手の心の向きを話し手の方へ向けてもらい、さらに、話し手への信頼感を持って、聞いてもらえるようにするということ

・「聞く」ということは、何かが「聞こえてくる」とか、誰かの言うことが「聞こえる」だけではない。聞く人に聞く気持ちがなければ、単に音がしただけ。法華経で、聞けない者とは、増上慢の人、欲に執われて心が盲になっている人

六波羅蜜とは、さとりを実感する行動のこと。まず、与える(布施)ことが大前提。続いて、身を処す(自戒)、寛容の心を得る(忍辱)、ひとつのことに打ち込む(精進)、心を集中させる(禅定)。それらの修行を通じて自己の確立(智慧)が果され、6項目が全うできた境地がパーラミター(波羅蜜)



法華経は、2世紀半ばごろに、釈尊の教えをもとに、世に遺されたものです。聖徳太子の著作に「法華義疏」があり、日本でも古くから関心が高かったようです。

この本を読み、法華経とは、宗教書ではなく、哲学書であることがわかりました。まだまだ理解できる代物ではないこともわかりました。

人生を深く考えている方なら、この本を読みこなすことができるのではないでしょうか。
[ 2009/12/27 08:23 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『マイクロトレンド-世の中を動かす1%の人びと』

マイクロトレンド―世の中を動かす1%の人びとマイクロトレンド―世の中を動かす1%の人びと
(2008/04)
マーク・J. ペンE.キニー ザレスン

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アメリカでどんな新しい変化が起きているか?

この本は、最近のアメリカ人の意識変化や市場動向の変化を紹介しています。日本でも同様の変化が起きている場合もありますし、まだ起こっていない場合もあります。

それらを含めて、時代の新しい息吹を感じるために、この本は面白いと思います。

今回、興味深かった箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、これらを紹介したいと思います。


・金銭的にも性的にも自立しはじめた40~69歳の女性は、3人に1人が年下男性と付き合っており、しかもこうした男性の4人に1人は10歳以上年下

・40代、50代、60代の夫婦による「熟年離婚」の66%は、男性でなく女性が切り出したもの。仕事で成功する女性と夫とのセックスに不満の女性が最大の要因

・40~44歳で出産した女性が10万人を突破。45~49歳で出産した女性も5000人を超えている

・ロマンスの相手を求めている独身アメリカ人の4人に1人、つまり1600万人がデート相手紹介のウェブサイト(1000以上ある)を利用。こうしたウェブサイトの純益は4億7000万ドル(400億円以上)にまで達している

・オンラインでデート相手を見つけた人のうち17%、つまり全米で300万人近くの成人が結婚へと発展させている。これは教会で出会ったと答えている夫婦の数とほとんど同じ

・インターネットで出会って結婚した人々の世論調査を実施したところ、
1.所得は平均以上(約700万円)、69%が持家、61%が大卒(うち20%が大学院卒)
2.都市部で暮らしている(50%)
3.民主党支持者が多い(43%で全国統計の33%を上回る)
4.運命の人と出会う前に6人以上とデート
5.結婚生活に満足(92%が満足、80%が非常に満足)

・父親が50歳以上の新生児が18人に1人まで上昇。同時に、40~44歳の男性で新生児の父親になる人が32%、45~49歳で21%にまで上昇。高齢パパの傾向は、イスラエル、オランダ、イギリス、ニュージーランドでも見られる

・400万人の父親が一番の稼ぎ手としての役割を妻に任せて、子育ての大部分を引き受けている

・アメリカで寝たきりの大人を無報酬で介護している人は4400万人いるが、そのうち40%近くは男性である。とくにアジア系アメリカ人の介護者の54%が男性。ヒスパニック41%、白人38%、アフリカ系33%で、アジア系に孝行息子が多い

・ペットに投じられたお金は約400億ドル(4兆円弱)にまで増加。ペット用品への支出は、玩具、菓子、ハードウェアよりも巨大産業に成長している

・65歳で退職する人はますます減っている。アメリカには、65歳以上の労働者が500万人(1980年代前半の2倍)おり、さらに爆発的に増える見込み。毎年200万人が65歳になるが、その半分が仕事を続けるだけで、労働人口は毎年1%増えることになる

・340万人が毎日の通勤に90分以上かけている一方で、420万人はスリッパを履いたままで自宅のオフィスに向かう。この在宅ワーカーの数には、「ときどき在宅で仕事する」2000万人は含まれていない。在宅ワーカーの53%が女性、88%が白人、68%が大卒

・女性の割合は、建築士・エンジニア14%、工科大学教授15%、大企業幹部16%と科学やビジネスの分野では少ないが、法律事務所スタッフ50%弱、ニュースアナリスト・レポーター・記者57%など、言葉を操る職業では、女性が席巻している

・体力を必要とする仕事(警察官、消防士、建設作業員、兵士など)を選ぶ女性が急増。消防士の5%、警察職員の25%、軍関係の15%が女性。彼女たちは大柄(25%が170cm以上、58%が70kg以上)42%が世帯収入75,000ドル(約700万円)以上

・アメリカの億万長者(家を除く資産100万ドル以上)は900万人いるが、そのうち約40%が「質素な富裕層」。彼らは高級な宝石、衣服、車には見向きもしないが、投資、子供の教育、慈善事業には大金を投じる

・典型的な自己破産申告者は「白人」で「中流階級の世帯主」で「子供」がいて「フルタイム」の仕事をしており、半数近くが「既婚者」で、平均よりも「少し高い教育」を受けている。そのほとんどが「失業」「離婚」深刻な「病気」など辛い目に遭っている

・自己破産がいまのペースで増え続けると2025年までに800万人近くが破産することになる。アメリカでは中流階級が減って、破産階級が増えている

・「片づけられない人」の45%が女性。3人に2人はフルタイムで働いている。大学や大学院卒の割合が高い。年収10万ドル(900万円以上)を超えている人では、「片づけられない人」が「片づけられる人」の2倍

・汚れた食器を台所の流しに1日以上放置する人33%、服を脱いだら床に置きっぱなしの人40%、台所の調理台を使って汚し1週間以上放置する人33%

・現代の整理整頓の基準に合った生活が送れないのは「上流階級」が抱える問題。金持ちで高い教育を受けて多忙な人ほど「片づけられない人」の仲間入りをする可能性が高い

・賢い子供(統計的確率の高い)ほど、遅れて学校教育を受けさせる傾向にある。幼稚園の入園を1年延期する子供が、高所得地域で20%を占めるのに対し、低所得地域では2~3%。幼稚園児が高齢化してきている

・店頭での薬の売上が急増(この40年間で年間20億ドルから150億ドルへ)。アメリカ医療の最大のトレンドは素人医師(DIYドクター)。1億3600万人がインターネットを通じて、自分の症状を調べ、病気を診断し、治療する

・医師とメールでやりとりしていると答えた成人は8%にすぎなかったが、81%はそれを希望すると答えた。医師たちは、メール診察に課金する方法を見つける必要がある

・アメリカ政府は積極的に日光浴を規制していないが、オーストラリアでは、皮膚がんの発症率が非常に高くなったために日光浴規制に乗り出している

・アメリカ人の平均睡眠時間は7時間以下で、1900年代初頭より25%短くなった。睡眠6時間以下の人も急増しており、16%になった。睡眠6時間の場合、肥満になるリスクは23%上昇し、4時間睡眠では73%も高まる

・難聴者(65歳以上の3人に1人近く、75歳以上では2人に1人)が増えているが、アメリカの聴覚障害症の3分の1は高齢者ではない。85デシベルに達するレジャーやエンターテイメントなど日常生活の騒音が悪影響を及ぼしている

・かつては高齢で金持ちの白人女性が密かに受けていた美容整形だが、今では、最も多く占めているのは収入が31000~60000ドル(300万円弱~550万円)の人。アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系の人で検討中の人が200%増加。男性も美容整形手術の8%を占める

美容整形手術に124億ドル(1兆1000億円以上)が投じられ、フィットネスやエクササイズに投じられた額とほぼ同じ。200万人以上が複数回手術を受けている。このままでは、美容整形医師が急増するとともに、一般の医師不足が深刻になる

・毎日コーヒーを飲む人が60%、仕事中にコーヒーを飲む人が25%と急増。栄養ドリンクも4000億円市場に急増。紅茶の売上も1990年代前半の3倍に伸びた。アルコール摂取量は1980年に比べて減少しているが、カフェイン摂取量が増加。アルコールよりもカフェインの時代

・女性がテクノロジー購入の57%、家電売上の900億ドル(8兆円以上)に影響を及ぼしている。女性の使用率が男性より多いのは、携帯電話、デジタルカメラ、DVDなど。男性が多いのは、携帯音楽プレーヤーとテレビゲーム機だけ

・2000万人近くが自分で編み物をしている。棒針編みかぎ針編みの愛好者で最も急増しているのは10代や20代。いま最先端の流行。編み物は野暮から粋に変わった



この本を読むと、これから日本にも訪れるであろう変化が見られ、ビジネスのヒントとして参考になります。

年下男性デート、高齢パパ、オンライン結婚、言葉系女性、体力系女性、片づけられない上流階級、DIYドクター、メール診察、大衆美容整形、短時間睡眠、アルコールからカフェイン、女性家電、編み物ガールなど、重要なキーワードが目白押しです。

次のビジネスのヒントを探している人は、読むと得する1冊ではないでしょうか。
[ 2009/12/25 08:23 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『ニッポンの底力がわかる本』村上玄一

ニッポンの底力がわかる本 (青春新書インテリジェンス)ニッポンの底力がわかる本 (青春新書インテリジェンス)
(2009/08/04)
村上 玄一

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たまには、こういう元気が出る本も必要です。不況だけでなく、デフレが長く続くと、暗い気分になります。日本に明日がないように思えてきます。

こういう時は、成長しているもの、伸びそうなものにあやかることです。そうすると、気分が明るくなります。

この本には、日本のいいところばかり書かれています。今回、この本を読み、日本も満更でもないと底力に気づいた箇所が20ほどありました。

これらを本の一部ですが、紹介したいと思います。


・太陽電池の特許出願数は、日本68%、アメリカ11%、欧州15%。太陽電池の9割を占めるシリコン系では、日本の特許数は約70%

・ハイブリッドカーの特許では、日本が1400件超、アメリカや欧州は200件を超えない。電気自動車でも、日本が500件超、米欧は100件にも満たない

・重さは鉄の4分の1、強度は鉄の10倍の炭素繊維。いま主流となっているPAN系炭素繊維では、日本企業の東レ、帝人、三菱レイヨンの3社が70~80%のシェアを誇る。航空業界でも、燃費向上のため、炭素繊維の大量採用が始まっている

・原子力発電設備の建設コストは1基あたり、数千億円から1兆円が必要。今後20年間に150基以上が新設。この市場は、東芝・ウエスチングハウス(アメリカ)、三菱重工・アレバ(スランス)、日立・ゼネラル・エレクトリック(アメリカ)の3グループに集約されている

日本製鋼所室蘭製作所では、原子力発電用パーツで世界の8割ものシェアを獲得している

・日本周辺の海底には豊富な海底資源が眠っている可能性が高い。海底資源は大きく分けて、メタンハイドレート、海底熱水鉱床コバルトリッチクラスト、石油・天然ガスの4種類

・世界トップレベルの水処理技術の中で、特に注目されているのが、逆浸透膜技術。東レや日東電工といった日本企業が開発し、世界市場におけるシェアは約7割に達している

・ハイブリッドカーや電気自動車のリチウム電池は日系企業が世界シェアの5割以上。デジタルカメラや携帯電話プレーヤーに使われるニッケル水素電池は実に7割以上

・日本の産業用ロボットの出荷台数は世界の7割を占める。稼働台数は世界一で、日本は36%、日本を除くアジアは14%、アメリカは16%、欧州全体でも33%

白色LED照明(白熱灯の40倍の高寿命、7分の1の消費電力)は、日本企業が世界シェアの過半を占める。5年後には10倍の市場規模に成長すると予測される

・高級スポーツ自転車や競技用自転車の駆動系パーツはその8割がシマノ製。自転車では、日本の技術が世界のスタンダードとなっている

・環境への取り組みが進んでいる欧州では、電動アシスト自転車が注目され、近年市場が急拡大している。技術力で、パナソニックやヤマハといった企業が、世界の自転車業界で存在感を増していく可能性は十分

・日本のカメラは手ぶれ補正機能、動画記録、高画素数、顔の表情に自動ピント機能など、高性能化が進み、海外企業が追いつけない強さを持っている

・iPS細胞を治療に生かすため、日本で世界初となる研究成果が多く出てきている。二プロが世界で初めてヒトiPS細胞からつくった心筋細胞の販売に乗り出した

・世界では、鉄道網の整備が急速に進んでいるが、川崎重工はニューヨーク市営地下鉄・台北地下鉄、日立製作所がイギリスの高速鉄道など、日本のメーカーは世界の鉄道受注レースに本格参戦している

・米欧のゲーム市場で任天堂は、アメリカ47%、英仏独で55%の高いシェアを誇っている。任天堂の社員一人当たり利益は1.8憶円

・日本の15歳以上の肥満者の割合は24.9%で、先進30カ国中最も低い。平均寿命では女性が世界1位、男性が世界3位

・2008年の日本の食品輸出額は4312億円で04年に比べて46%も増えた。経済発展が著しいアジア諸国への輸出が7割を占める

・KUMON(公文)は、教育界のマクドナルドと言われ、イギリス、イタリア、ドイツ、ケニア、中国、インド、アルゼンチンなど世界46カ国にフランチャイズ展開。400万人以上の生徒が学習している

・世界で成功している日本の医薬品。ロート製薬の目薬、メンソレータムの薬用リップクリーム、エーザイのアルツハイマー病薬、武田薬品の胃潰瘍薬、第一三共の高コレステロール血症治療剤、アステラス製薬の排尿障害改善剤など


ここに出ている企業は、地方が多いように思いました。地方の元気な企業を真面目に取り上げようとしない、東京のマスコミが日本を暗くしているように感じます。

不況の時ほど景気のいい話を、デフレの時ほど急成長している分野の話を聞きたいものです。この本を読むと、気分が晴れるのではないでしょうか。
[ 2009/12/24 07:40 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『コピー用紙の裏は使うな!-コスト削減の真実』村井哲之

コピー用紙の裏は使うな!―コスト削減の真実 (朝日新書 37)コピー用紙の裏は使うな!―コスト削減の真実 (朝日新書 37)
(2007/03/13)
村井 哲之

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以前、「労働時間削減手法」の記事で、その方法論について書きましたが、この本には、人件費を除く、「コスト削減手法」が書かれています。

著者が示す、コスト削減の正しい手順は、非常にわかりやすく、読みやすく思えました。

また、著者の「マーケティングには100%の成功法則はないが、コストマネジメントには、やれば必ず会社の利益が増す100%の成功法則がある」という言葉が印象的です。

コスト削減できる100%の成功法則を中心に、気になった箇所を20ほど紹介したいと思います。



・蛍光灯を外してしまえば、電気代が節約できる気がするが、これは間違い。蛍光灯の多くの機種は、1本間引いても回路の関係で電流が流れてしまう

・売上を上げるのは至難だが、コスト削減はコストをかけずに行うことができる。正しい考え方で推し進めていけば、必ず成果に結びつく

・目標と評価の仕組み、それも収入に直結したものがあれば、やる気が増す。「見える化」と「共有化」と「明快な分配ルール」は、従業員のモチベーションをも大きく変える

・コピーの経費を削減したいなら、紙を再利用するのではなく、コピー機の販売会社とカウンター料金の単価引き下げの交渉をすること

・徹底して競わせる電子入札を採用したら、削減率で大きな成果。自社は最適な価格で購買できていると思っている企業ほど、意外と少ない数社の見積りで安心している

・コスト削減のためにすぐ投資してしまうのが「設備投資中毒症」。今、日本中で数千万円以上の投資をした1000基を超える自家発電設備が廃棄されつつある。投資効果が長年続くのか、投資回収の年限が短いかを徹底検証すべき

・コスト削減を達成できる企業のほとんどは、部門を横断したプロジェクト結成と、そのプロジェクトに総務部長を入れない

・電気代を削減するプロジェクトに設備担当者が入っていたり、情報システム関連費用削減プロジェクトに情報システム部の人間が入っていては、それに関する削減はできない。「既成概念のあるところに削減なし」

・電気、ガス、上下水道代は法律で決まっているものではない。基本は取引量に応じた1年間の契約。そこには、常に交渉の余地がある。契約条件の見直しは均等に与えられている

・コスト削減の先進的自治体も出てきた。群馬県太田市では、事業別の収支計算を公表。学校給食1食当たり経費、教養講座の受講者1人当たり経費を公表。救急車の出動費用は1回当たり10万~13万円。「いたずら電話で、年間6000万円が吹っ飛ぶ!」と訴えている

・経費項目が読み解ける、シンプルなコストの3分類
1.エネルギーコスト
電気代、都市ガス・プロパンガス代、上下水道代など
2.オフィスコスト
通信費、コピー代、宅配郵送代、家賃、ビルメンテナンス費、警備費、カーリース代、事務用品代、OA機器代、器具備品代など
3.オペレーションコスト
パート労働人件費、物流費、商品ロスに伴う経費(不良品、万引き対策)など

・コスト削減のための3つの手法(取り組み順)
1.調達改善
おおもとの契約条件そのものを見直す
2.運用改善
使用量そのものを最適化する
3.設備改善
設備を投入することでのコスト削減

・すべてのコスト削減の源は契約書の中身にある
(いつからいつまでの契約、特約条件、契約変更の余地、解約の条件など)

・電子入札の業界では、「8社以上のサプライヤーが入札に参加すると、その経費項目は3割は下がる」というジンクスがある

・削減可能性マップを基に、削減目標と達成期日を決定する
(表の横軸に削減対象の経費項目、縦軸に削減プロセス「調達改善」「運用改善」「設備改善」を書き、取り組みの優先順位を決める)

契約種別を変更して電気基本料金、使用量単価を下げる
(倉庫の場合、業務用電力契約だが、工場の場合、高圧電力契約になる。工場の方が安く、基本料金単価で20%以上引、使用量単価で8%引)

・「周辺のテナントより高い」「土地の相場からいって家賃が高いのではないか」と思ったら貸主と交渉。ポイントは、事前準備と理論武装。以下のものを用意
1.路線価格など周辺相場の推移
2.対象となる土地や建物の登記簿
3.自社の経営状況をまとめたもの

・大きなビルや商業施設の場合、貸主がその供給元からまとめ買いしているため、テナントで入っている場合でも、電気代やガス代、上下水道代を下げることができる。

・現場に経営を「見せる」ということは、コスト削減に始まり、さまざまなモチベーションを高め、組織力を高める上で、大変有効

・電気代のコスト削減成果が出たら会社が3分の1、現場が3分の1、将来への投資が3分の1とし、電気代削減額の3分の1が給与として還元すると打ち出す姿勢も大切

・コスト削減は現場に任せないと成功しない。現場の問題は現場にしか解決できないから。現場力を引き出す魔法の杖ともなる



家計の節約術の本はいっぱい出ていますが、会社の経費の節約術の本は意外に少ないように思います。

この本には、コスト削減の考え方と具体例が書かれており、非常に参考になりました。

優秀な社員は、「人を上手に使う」と同時に「経費概念がある」ものです。

会社のことを思うものが出世し、自分のことしか思わないものは出世しないのは当然です。会社にプラスを与えると、将来、必ず返ってきます。すぐできるプラス、誰もができるプラスは、コスト削減ではないでしょうか。

コスト削減手法をマスターするために、是非読んでおきたい1冊だと思いました。
[ 2009/12/22 08:39 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『眠れる二〇兆円マーケット-法務ビジネスという埋蔵金』西田研志

眠れる20兆円マーケット ~法務ビジネスという名の埋蔵金~眠れる20兆円マーケット ~法務ビジネスという名の埋蔵金~
(2008/12/17)
法律事務所ホームロイヤーズ 所長弁護士 西田研志

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久しぶりに、エネルギッシュでパワフルな、起業家精神を感じる人の本を読みました。誇大妄想狂ともとれる部分も多いのですが、世の中を変える人は大抵こういう人です。

著者の西田研志弁護士は、世の常識や風評を気にしないで敢行する「織田信長」タイプだと思います。今の日本に、このタイプの人が、100人登場すれば、デフレもなくなり、今後50年、新たな成長軌道に入っていくのではないでしょうか。

この本は、著者の信念と夢を描いた本です。つまり自己宣伝がほとんどです。参考になったというよりか、著者の強烈な個性に惹きつけらてしまったような感じです。

その惹きつけられた箇所を、20ほど、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本の国内は、弁護士が解決しなければいけない問題であふれている。多重債務者の問題、リストラに伴う不当解雇の問題、新手の詐欺や悪徳商法の問題。企業法務で言えば、海外との取引やM&A、知的所有権の問題など、ざっと計算しただけで約20兆円のマーケットが眠っている

・もともと「弁護士は聖職者であって、金儲けであるビジネスに精を出すのはもってのほかだ」という意識が、弁護士にも、国民にも根強くある。しかし、その認識は大きくあらためなければいけない時にきている

・ホームロイヤーズ(新社名MIRAIO)という法律事務所を設立し、多重債務問題やヤミ金融問題など、他の弁護士が手をつけない問題に取り組んできた。普通の弁護士は1年間に30~40件の事件しか処理しないが、私の事務所では年間2万件の事件を処理している

・現在、法務サービスを必要としている日本の国民は確実に1000万人いると言われている。しかし、弁護士の登録数が2万5千人、年間にこなす件数30~40件で、75万件。1000万人分の法務サービス需要に到底及びもつかない状況である

・多重債務のマーケットは(100万人×40万円の報酬=4000億円)離婚事件は(10万人×100万円の報酬=1000億円)敷金回収は2000億円、残業代未払いは1兆円。企業法務だけでも数兆円。老後の生活のサポート業務も1兆円は下らない。詐欺商法、詐欺事件の被害総額だけで数兆円にのぼり、これもマーケットになる。これらを全部あわせると10兆円~20兆円のマーケット

・弁護士の収入は、税理士はもちろん、司法書士より少ない。成功した弁護士でさえ、売上が3000万円、手取り2000万円。(年間弁護士報酬100万円×年間こなす件数30件=3000万円)

・弁護士のほとんどは個人事務所(約7割が1人事務所)で、12~3坪くらい。スタッフは平均で1.5人。事務員が帰ってしまえば、相談者が来たら、お茶を出し、話を聞き、コピーもとる。裁判所への書類提出、郵便局への内容証明など細かいことも自分でする

法テラスにおける相談内容内訳(年度計)
1.金銭の借り入れ(23%) 2.男女・夫婦(11%) 3.相続・遺言(7%) 4.民事法律扶助(4%) 5.金銭の貸し付け(4%) 6.借地・借家(3%) 7.その他・生活上の取引(2%) 8.各種裁判手続(2%) 9.情報提供(2%) 10.犯罪被害者(2%)

・離婚問題は5つのポイント(1.離婚できるか否か 2.親権はどちらが持つか、養育はどちらがやるか 3.養育費はどちらが払うか 4.慰謝料は誰が誰にどれだけ払うか 5.財産分与はどうするか)で結果がすぐ出るのに、今までの弁護士は相談者の悩みや愚痴を聞き、2~3時間かけてしまう

・弁護士は1件あたり20~30万円という細かな事件を扱いたがらない。今の仕事の仕方では、年間30件がいいところ。年間2000万円の利益を上げるとなると、1件あたり、50~100万円もらわないとやっていけない。

・弁護士業務の生産性の悪さゆえ、弁護料が高くなり、救わなければいけない人たちを救えないでいる。弁護士は、この現実に対して、真摯に向き合い、何が改善できるか考えるべき

・多重債務者は、放置され続けてきた問題。彼らは1人200万円の借入がある。弁護士の成功報酬は30~40万円が相場だが、手元にお金がないので、分割で2~3万円ずつがほとんど。最後まで弁護士が関わっていたら弁護士も干上がる。成功したのは、やり方を変えたから

・1日に40~50件の法律相談をこなすが、それが可能なのも、離婚、医療誤診、交通、契約、多重債務など、各分野のチームがあり、そこで事前にヒアリングを行っているから

・現在、ホームロイヤーズ(現社名MIRAIO)では、パラリーガル(法律事務職)が約200名、外部協力弁護士も含め弁護士が25名いて、売上は年間100億円に達する。案件は債務関係が9割以上、およそ2万5千件。マニュアル化、分業化、システム化して可能に

・100件の相談を受けた場合、弁護士が必要なのは10件程度。残りのうち何もしなくてもよいのが半分。後は、弁護士が出なくても解決できるものや、内容証明で解決できるもの

・核家族化が進んだ現在、「リバースモゲージ制度」(住宅評価額分を分割して借り、死亡後に不動産を処分して借入金を返済)を活用することで、高齢者は経済的不安から逃れられる。ここにおいても弁護士が役立つはず

・下請け会社は請求代金未払いに頭を悩ませている。一流企業やIT系企業の下請け、放送局の制作現場はひどいもの。個別の相談を募ってひとかたまりの大きな問題として、大量に処理すれば、強大な力となる

・弁護士のあいだでは、カネにならない事件を「ゴミ事件」と表現する。これこそ、弁護士たちが人権を蔑視していることを象徴する言葉である。5万円、10万円ぐらいのトラブルは、みんな泣き寝入りしているのが現状

・24時間、電話1本で簡単に相談を受けつける体制を敷いているので、どこに相談に行けばよいかわからなくて困っている人々から相談が舞い込む。これがほぼ9割にあたる地方からのアクセスになっている



法律事務所が、マニュアル化、分業化、システム化において、遅れていたとは、驚きでした。低単価でも利益が出るシステムを構築することは、世の中で、悩んでいる人たち、困っている人たちを助けることを意味します。

これからは、健康の相談先が「医者」、お金の相談先が「弁護士」というようになっていくのかもしれません。公認会計士、弁理士、税理士、司法書士のマーケットをその気になれば、どんどん食っていけるように感じました。

弁護士過剰の声も聞くのですが、やる気のない人たちが既得権益を守ろうとしているだけの話で、弁護士過疎が正しいのではないでしょうか。

弁護士は、今後ますます需要が膨らんでいく、「お金」の急成長分野と思いました。弁護士や法律事務職に興味のある方は、読んでおくべき1冊ではないでしょうか。
[ 2009/12/21 08:14 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『食糧がなくなる!本当に危ない環境問題』武田邦彦

食糧がなくなる!本当に危ない環境問題 地球温暖化よりもっと深刻な現実食糧がなくなる!本当に危ない環境問題 地球温暖化よりもっと深刻な現実
(2008/08/20)
武田 邦彦

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食糧とエネルギーは、市場経済的な価値にとどまらず、国家の命運を左右する、外交カードとして、度々利用されてきました。

著者は、食糧資源や鉱物資源を握ることが、重要問題なはずなのに、今の日本は、それを忘れて、環境問題が、最も重要とされる風潮に対して、警笛を鳴らしています。

人間は、根っこの部分と、葉っぱの部分を混同してしまいがちです。重点課題、優先順位を考えれば、著者の言うとおりではないでしょうか。

著者が指摘している警笛の箇所を「本の一部」ですが、20ほど紹介したいと思います。



・アメリカは、石油ショックの前までは、自国の石油を日量1000万バレルも生産し、OPEC諸国以外でトップだったのに、今では3分の1の300万バレルまで落ち込んでいる。原油の井戸が枯れたわけではない

・アメリカ人は陽気で好人物だが、国の政策はしたたか。石油のある国とは親しくする。しかし、反抗されると、弱いと見れば、イラクやアフガニスタンのように攻撃する。北朝鮮も言うことをきかないが、石油がないので攻撃しない

・トウモロコシをバイオエタノールにして自動車燃料にすれば、食糧がそれだけ少なくなる。飢餓人口が増えるのは間違いない

・食糧自給率が話題に上るが、生存を考えると、肉や野菜を入れない「コメ、麦、トウモロコシ」の穀物自給率の方が何倍も重要

・世界の約60億人の3分の1に相当する人間の主食になる量をアメリカのトウモロコシ畑が作り出している

・アメリカのトウモロコシ農家は、価格が暴落すれば、バイオエタノール用に切り替え、品薄になれば、トウモロコシのまま出荷すればよくなり、相場乱高下問題が一気に解決される

・食糧を作るのに、昔に比べて5倍の石油が必要な時代になった。ここに、もう一つのエネルギー問題が潜んでいる。「石油が食糧を作っている」という時代

・日本のコメの生産も、1キロカロリーのコメに、その3倍から5倍の石油を使っている。今の農業は、「機械づけ石油づけ」。カーボンニュートラルではない

・東京の食糧自給率は1%。北海道は200%なのに、東京が威張っている。実におかしな世界

・穀物自給率はオーストラリアが279%、フランスが191%、アメリカが133%、ドイツが126%、イギリスが112%、インドが107%、中国が94%。北朝鮮でも53%なのに、日本は生命線と言うべき穀物自給率が27%。常識では考えられないほど低い

・もしアメリカが決意をすれば、トウモロコシのすべてを燃料にして石油不足を補う。だから、ロシアやイランが強硬にアメリカに盾突くと、世界は食糧危機に陥り、中国を始めとした多くの国が混乱する

・戦略のない国、良い子を演じたい国、日本。国際問題は辛く動く

・肉1キロには穀物7キロが必要。食糧供給という立場から見ると、肉が消え、「穀物、野菜、魚」の3種類しかない

・日本は穀物自給率が27%。同時に飼料自給率も25%。つまり、穀物が足りなくなると、豚肉や卵も不足するのは当然のこと

・「人類」と「鯨類」が争って、「魚類」を捕っている。学問的に確定していないが、人類が捕る魚の量が1年に1億トン、鯨類が5000万トン~3億トンと言われ、同じ程度。決して「クジラが可哀想」などというメルヘンチックなことではない

・石油がなければ漁業もままならない。魚も原油と同じように、価格が上昇し、品不足の時代が来る

・二酸化炭素が増え、温暖化が進んでいるが、これは食糧危機には朗報。気温が下がる「寒冷化」より、気温が上がる「温暖化」の方がよい。温暖化する国と寒冷化する国のどちらかに移住できるとしたら、躊躇せずに「温暖化する国」を選ぶ

・温暖化のもとを作っているのは日本では東京。東京の人が「温暖化が怖いから皆で防ごう」と呼びかけているのは滑稽。東京が先頭を切って、ビルを壊すのなら、説得力はある。世の中、自分がラクして、他人に苦しんでもらうことほど良いことはない

・温暖化すると海水の温度が上がるので、植物プランクトンの量が増え、ひいては、魚の量も多くなることが予想される。陸上でも海でも生物にとって温暖化は歓迎

・陸上の面積では日本は世界の中で「小さい国」だが、200海里経済水域という意味では、米国、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、カナダに次いで世界で6番目の大きな国。あの大きなロシアより大きい

・アメリカが数十年前からリンの輸出を制限し、中国も2008年からリンの輸出規制に踏み切った。この大事な元素は、枯渇が予想される段階に達したのに、日本では、この必要な元素を摂取できない時代になっている

ダイオキシン騒動は、史上最強の人工毒物から始まり、プラスチックを燃やせば出る、木の葉でも燃やせば出る、と進み、ついに「焼くのは全部ダメ」というところまで発展したが、いつの間にかダイオキシンの話は消えてしまった

・プラスチックは1400万トン作られ、包装に430万トン使われているが、たった4万トンぐらいしかリサイクルされていない。他はほとんど焼却されている


今の日本のマスコミは、本質を捉えるのではなく、時の流れに身を任せ、実況中継しているだけのように感じます。

そのマスコミのご意見に右往左往せずに、しっかりと、事の本質を理解しておく必要があると思います。

この本は、事の本質を理解するのに、参考になります。本質を捉えることは、地に足つけて、生きていくことと同義ではなでしょうか。そのための参考になる1冊です。
[ 2009/12/20 10:51 ] 環境の本 | TB(0) | CM(0)

『人生にはいらない人間関係がいっぱいある』高橋龍太郎

人生にはいらない人間関係がいっぱいある―気持ちをラクに生きるヒント人生にはいらない人間関係がいっぱいある―気持ちをラクに生きるヒント
(2007/02)
高橋 龍太郎

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この本は人生相談から生まれた本です、著者の高橋龍太郎氏は、精神科医ですが、ラジオの人生相談を担当されています。

そこに寄せられる悩みの数々を、精神科医の視点で、ズバッと答えられていますが、本人も書かれているように、

「相談者に対して、そっと肩を押してあげることはできても、体の向きを変えさせて、違う方向に行かせることはできない」

「オーダーメイドの意見で、相談者が出している答えの背中を押してあげることが必要とされている」

「相談者は、行動のための理屈がほしい。そんな理屈を代わりに考えてあげなければいけない」

この言葉は、相談を受ける立場にいる人なら、誰でも感じる事実だと思います。

この本には、人間関係の悩みに関する相談事例が網羅されており、その相談事例に対して、精神科医ならではの「理屈」を使った人間関係の築き方が明確に示されています。

その中で、とくに興味深かった箇所が20ほどありました。それらを「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・メールアドレスの数が人より多かったりすると、ちょっと人気者のように感じたり、偉そうに思えたりする。そういう数の論理に引き連られると、自分が思うように行動できず、自分がどんどん薄っぺらになっていく

・あらゆる呼吸法は、まず吐くところから始まる。老廃物や汚れた空気をゆっくり吐き出すと、自然に新しい空気が入ってくる。これは人間行動の全ての基本。まず「別れ」より始めよ

・無駄な人間関係は、どんどん切っていくこと。新しい空気が入ってこない濁った肺のように、抱えすぎた人間関係は、あなたを豊かにするどころか、あなたを貧しくするだけ

・人前で威張る人は、「自分が上だぞ」と確認したい。自分が上位にいないと不安になる。だから偉そうにしている人にかぎって、上下関係にはすごく敏感で、自分より偉い人が来ると、へりくだったような振る舞いをする

・偉そうな仮面をかぶっているに過ぎない人に、本当に委縮していたら、心がいくつあっても足りない。あなたも命令をよく聞く仮面をかぶって場面にのぞむ。人生劇場はしょせん仮面劇

手柄を横取りするような奴はイヤな奴。イヤな奴の下で一生懸命自分の力を発揮しようと思うのは、力の無駄遣い。こいつ取り上げる気だなと思ったら力を発揮しないこと。盗まれないようにしないといけない

・中間管理職というのは、やっぱり上を見ているもの。ヒラメと思って、あきらめるのではなく、割り切って、むしろヒラメをうまく使うこと

・部下に仕事以外の雑用までさせる上司は、人の全部を支配しようとしているわけだから、その部下のことを気に入ったら、いずれは立ててくれて、売り出すように働きかけてくれるかもしれない

・仕事がうまくいかなくなったときに、突然投げ出して逃げてしまう人がいる。こういう人は「できません」が言えない人。非を認めないということは、恐怖心の只中で生きている。でも本人はあまり分かっていないので、結果そうなってしまう

根掘り葉掘り聞いてくる人は、情報や知識の量で、人間のつながりを考えてしまうタイプ。情緒的な交流に問題があり、コミュニケーション能力が高くない。人を評価するのに情報や数値で判断してしまう。そういう人には、本質的な情報は隠して、どうでもいい情報をたくさん教えてあげよう

・自分から提案せずに否定ばかりする人には、会議で、司会役になってもらう。「具体的にどうしたらいいのですか」と問い返す。しぶしぶ具体策を提示してきたら、「実行委員になってもらいましょう」と役割分担を与えれば、無駄な意見を言わなくなる

愚痴を聞かされると損した気分になる。逆に愚痴を聞いてもらった人は楽しくなって「あの人はいいよ」って評価してくれる。自分の時間をあの人にプレゼントしたと思うしかない

・調子がよすぎる人は、現実から逃避するために、躁的防衛をはかって、現実を直視しないところがある。みんなが幸せになるには、うまく乗ってあげて、お互いだまされることも必要

・暴力とか暴言とか衝動性の強い行動で、ボコボコにされた後、次に何倍も優しくされたりすると、その振幅の激しさで茫然自失状態になり、逃れられなくなる。「愛しすぎる病気」にかかっていたら、逃れられない。しかし、逃げるしかない

・自慢したがり屋さんとのお付き合いはいい勉強になる。ここを押せばこうなる。こうやるとこう離れる、怒る。本当にわかりやすい。人間関係の勉強にいいと思って、お相手してあげるのもいい

・人間は情報を食べて生きている以上、情報が伝わる構造は善意。秘密の話をしたのに、しゃべってしまう人を憎くは思えない。おしゃべりに悪い人はいないとあきらめるしかないところもある

・男性はオンとオフの切り替えがはっきりしている。家庭に戻ったオフのときは何もしないでゆったりしたい。オンのときの備えと思い、ゴロゴロさせてあげればいい

・イヤだと言ったら二度と誘われないのではないか?不快な思いを味あわせてしまうと仕返しがくるのでは?と自分の弱さの表れで、断りきれない人がいる。こういう場合、イヤなら断って、近い時期にこちらから1回誘ったらいい。そうすれば、人間関係がうまくいく


人間関係というか、上手な付き合い方のテクニックが、この本には、書かれているように思いました。実際の相談者の質問に答えたものなので、実用的です。

人間関係がうまくいかない人が、今すぐ改善できるわけがありませんが、このような本で、付き合いのテクニックを学び、日ごろに備えておけば、少しずつ改善できるのではないでしょうか。



[ 2009/12/18 08:36 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『太りゆく人類-肥満遺伝子と過食社会』エレン・ラペル・シェル

太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会 ハヤカワ・ノンフィクション太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会 ハヤカワ・ノンフィクション
(2003/08/08)
エレン・ラペル・シェル

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今や、ダイエットは急成長産業です。これは、日本に限ったことではないようです。

金持ちが肥えている時代から、貧しい人の方が肥えている時代になった今、世界中でダイエットを必要としている人が、猛烈な勢いで増え続けています。

そういう状況なのに、世界のダイエット事情を知るのに適した本がなかったように思います。

この本は、科学ジャーナリストが世界のダイエット状況を取材して、まとめた本です。6年前の本ですが、その内容は今でも新鮮で、役に立つところが多いと思います。

この本の中で、気になった箇所が20ほどありました。濃い内容の「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・「過体重」は世界で最も蔓延し、費用のかかる障害となっており、11億人の成人に悪影響を及ぼしている。アメリカ公衆衛生局では成人の34%が過体重(BMI25以上)であり、27%が肥満(BMI30以上)であると発表した
< BMI値=(体重㎏)÷(身長mの2乗)>

・ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、ウルグアイ、パラグアイ、イギリス、フィンランド、ロシアの成人人口の半数が過体重か肥満である。ブルガリア、モロッコ、メキシコ、サウジアラビアの状況も似たようなもの

・日本では、女性の20%、男性の25%近くが過体重。インドは中産階級で過体重と肥満が蔓延。南太平洋の諸国は島によっては、成人の4分の3が肥満に相当し、健康に危険が及んでいる

・ここ20年でアメリカの児童の過体重と肥満の割合は2倍以上増えた。イギリスは、若者の肥満者の割合がたった10年で7割上昇した。この傾向はロシア、中国、ブラジル、オーストラリアにも当てはまり、警戒が必要である

・アメリカ人は年間330億ドル(大半の発展途上国のGDPより高い金額)を、さまざまなダイエット製品痩身法に費やしている

肥満科学は、いまや科学界きっての頭脳をひきつける研究課題となり、遺伝要因、環境要因など事実が明らかになり、肥満を予防し、治療する方法への期待も高まっている

胃バイパス手術を受けると体重が激減する。標準より50kg以上余計に体重のある者のみに行われ、平均すると、手術後1年半で、余分な体重の6割を落とす。年間4万人のアメリカ人が胃バイパス手術を受けている

・重度の肥満者が、自暴自棄、屈辱、孤独、そして激しい罪の意識のうちに一生を過ごす。調査によれば、子供たちも、太りすぎの友人に好感を持たないし、ときには、いじめることもある

・現在ではアメリカ成人の1000万人以上が、「重症肥満」(標準より50kg以上体重が重い)か、重症肥満になる境界線ギリギリのところにいる

・女性の15%、男性の11%が、望みの体重になれるのなら、引き換えに寿命が5年短くなっても構わないとの調査が報告された

・脂肪は蛋白質や炭水化物の2倍のエネルギーをもつ。脂肪1gにつきエネルギーは9キロカロリー。平均的な若い女性は、体内に1カ月分の脂肪をエネルギーとして蓄えている

ゼニカルはFDAが承認した最新の抗肥満薬。1999年春に承認を受けると、その年だけで、アメリカ国内で1億4600万ドルの売上を記録。ヨーロッパでも好調。医師が不安を感じずに処方できる薬。食事に含まれる脂肪の3分の1を腸に吸収させない。油っぽい便が出る

・どこの社会にも、歴史上「食糧のストレス」にさらされた時期があり、その結果、わたしたち全員がある種の「倹約遺伝子」のメカニズムを進化させた

・大半の成人は、座りがちな1日を送りながら、簡単に高脂肪食品が手に入る環境で過ごすと、肥満になりやすい遺伝的傾向と関係なく、太りだす。座業が肥満を助長している

・1日にテレビを1時間しか見ない子供の肥満の割合が8%であるのに対し、1日に4時間以上見る子供は18%が肥満だった

・アメリカ人は「待つことが我慢できない状況」になっている。何も考えないで食べられる「ノー・シンク・フーズ」(垂れない、粉々にならない、食器がいらない、それほど注意も必要としない)が一番の人気製品

・ファーストフードだけが犯人ではない。たいていのレストラン料理には、家庭で調理された料理の倍ほどのカロリーがある。どんなレストランのシェフでも、バターとクリームがメイン料理になることを知っている

・食べ物を選ぶときには、人はまず経済的な側面に反応する。アメリカ人は自宅での食事に1日あたり3ドル75セントを使う。1ドルあれば、1000キロカロリーのピザ、クッキー、3000キロカロリーのお菓子も買えるが、ほうれん草は30キロカロリー。料理や栄養の研究者は、経済的なことを考えない料理を提案している

・徒歩と自転車の交通量は、この25年間で40%も減少。アメリカ人が移動する距離の85%を自動車が占め、残りは飛行機と電車。郊外では、徒歩や自転車に乗っていたりすると風変りな人間だと思われる

・肥満は、アメリカ国内では、公衆衛生を危険にさらす要因の第2位。年間30万の生命の損失原因。1位のタバコが40万の生命の損失原因であるが、今後10~20年後に肥満がタバコを圧倒するのは確実

・健康論者や、一部の国会議員は、高脂肪食品の慢性的な過剰消費を阻止するため「脂肪税」の徴収を提案している。すでに、18の州で、清涼飲料、キャンディー、スナック菓子などの食品に、増収の目的で課税されている


実は、私も「過体重」です。「タバコ」は8年目にやめましたが、「過体重」は、ほぼ15年近く続いています。この本を読んでいると、「タバコ」の次に「肥満」が悪玉になるのは、間違いなさそうです。

将来、太る原因となる、すべてのものに課税が強化されるのかもしれません。逆に考えると、低カロリー食品で、おいしいものが開発できたら、莫大な富を得ることができるということです。

ダイエットは、人類にとって克服しないといけない課題であり、大きなマーケットです。肥満とダイエットの研究は、国家戦略的な学問分野になっていくようにも思います。

太っている人も太っていない人も、参考になる1冊ではないでしょうか。


[ 2009/12/17 09:13 ] 健康の本 | TB(0) | CM(0)

『イラスト図解-お寺のしくみ』井上暉堂

イラスト図解 お寺のしくみイラスト図解 お寺のしくみ
(2005/09/15)
井上 暉堂

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お寺はどうやって儲けているのだろうか?
何軒、檀家を持てばやっていけるのだろうか?
葬儀社や霊園との関係はどうなっているのだろうか?
本山にどのくらい上納しないといけないのだろうか?

前から、お寺に関して、いろいろと疑問に思っていましたので、こういう本を探していました。

こう言うと語弊があるかもしれませんが、お寺には金儲けの秘訣が潜んでいるように感じていました。

日本の国宝の数多くは、お寺・神社が所蔵しています。それだけ、芸術や文化を庇護してきた証です。でも、芸術や文化を庇護しようとしたら、お金が必要です。

そのお金がどこから出てきたのか?どこから生み出されてきたのか?

これらの疑問が「お寺のしくみ」を読んで、ほぼわかりました。

この本で、お金に関することを中心に、参考になった箇所が、25ほどありました。これらを紹介したいと思います。



・お寺には、大きく分けて以下の3種類がある
檀家寺(葬儀、年忌法要など)※葬儀で遺族に先祖供養の重要性を説く
信者寺(賽銭、お札お守り、おみくじ、厄除けなど)
観光寺(拝観料など)

・お坊さんの階級は、宗派によって多少違うが、ある宗派では、一番位の高い順から、
1.「大僧正」(緋の衣をまとえる)2.「権大僧正」(権は副の意味)3.「僧正」4.「権僧正」5.「大僧都」6.「権大僧都」7.「僧都」8.「少僧都」9.「権少僧都」10.「大律師」11.「沙弥」(少年僧)

・江戸幕府は、寺院法度(お寺の決まり)を皮切りに、すべてのお寺を宗派に組み入れ、それぞれを「本山」「本寺」「中本寺」「直末寺」「末寺」という上下関係の組織にした。幕府は、頂点の本山だけを抑えておけば、お寺と信者が管理できるようになった

 

・宗派別信徒数

(宗派)(宗祖)(中心宗派の総本山)(寺数)信徒(万)
天台宗最澄比叡山延暦寺(大津)  4,446   315
真言宗空海高野山金剛峯寺(和歌山)12,5171,265
  智積院(京都)  
  長谷寺(奈良)  
浄土宗法然知恩院(京都)  8,152   647
浄土真宗親鸞西本願寺(京都)20,9271,273
日蓮宗日蓮身延山久遠寺(山梨)  6,9371,722
曹洞宗道元永平寺(福井)14,687   156
臨済宗栄西妙心寺(京都)  5,726     81


・お坊さんのお盆の5日間は、朝8時から夜10時くらいまで、1日30~50軒の読経はザラ。5日間でどれだけこなしたかで年間収入に大きな差が出る

・大都市のお寺では年収1000万円以上の安定した収入があるのはザラ。そのほとんどは、妻帯し、実質的に世襲制

・葬儀屋を取り巻く仕事環境
1.病院と太いパイプづくりをし、遺体を回してもらい、見返りとしてリベートを提供
(業務委託等の契約もあり)
2.遺体を運ぶ寝台車の中で葬儀の見積りや段取りの決定
(遺族との交渉、花屋、仕出し屋、お寺の手配)
3.お葬式が始まってからお坊さんの登場
(お布施は3~6割のマージンを引き、お坊さんの元に届ける)

五宗(浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗)は、現在、仏教信者の7割を占めるが、その開祖はいずれも皆、比叡山で修行している。最澄は、大乗仏教(天台教学、密教、禅、戎)を融合した総合仏教をつくり、日本仏教の母胎となった

・葬儀屋マーケットは3兆円市場と言われるが、急激に市場拡大してきた背景には、お寺の檀家制度の崩壊があげられる。都心部においては、自分の菩提寺を持つ家は少なく、葬儀屋に客が集まり、収益が伸び続けた

・葬儀の依頼先(全国平均、葬儀についてのアンケート調査より)
1.その他の葬儀社(互助会)47% 2.葬儀社36% 3.農協・生協・漁協7% 4.町内会・組・講3% 5.寺・神社・教会2% 6.その他2% 7.無回答1% 8.市町村(自治体)1%

・葬儀代の相場は200万円ぐらい。葬儀屋の出現で、お寺の縄張りがすっかり荒らされ、お布施・戒名も葬儀屋が遺族との相談で勝手に設定して、その6~7割以上が葬儀屋のポケットに入るしくみになっている

戒名の値段の目安としては、1.○○院殿□□△△大居士(清大姉)で500万円近く 2.○○院□□△△居士(大姉)で50万円が相場 3.○○院□□△△信士(信女)で15~20万円程度 

・墓地1㎡当たりの料金は
お寺(永代使用料150~200万円)(年間管理料2万~3万円)
公営(永代使用料 18~ 30万円)(年間管理料700~800円)
民営(永代使用料 70~ 90万円)(年間管理料5千~8千円)

・日本に中国製墓石は40%くらいあると推測される。原材料コストは、工賃が日本の40分の1なので、中国製は日本の10分の1以下ですむ

・お坊さんの出世の一番の近道は、本山に多額の寄付をすること。お金さえ積めば、年齢に関係なく出世が可能。浄土真宗を例にとると、課せられた檀家1軒当たりの冥加金すべてを本山に納めるのが基本。金額が低くても、毎回ノルマ分をしっかり納めていれば出世の道は開かれる

・お寺の奥さんを寺庭婦人と呼ぶが、寺庭婦人の90%が在家出身者(普通の一般家庭出身)

・お寺経営の純利益だけで生活しているのは、全体の2割弱。8割のお坊さんは僧職のかたわら、他の仕事に従事し、お金を稼いでいる。檀家の数が300軒以上でないと生活できない

・檀家100軒の台所事情
1.1年間の葬儀数は檀家総数の5~7%。年間多くて7件。1件に15万円のお布施が出ても、最高105万円
2.お葬式が7件あれば、年忌法要はその9倍が目安で63件。1件につき2万円なら、126万円
3.月参りのお布施が71万円とすれば、
合計300万円。これでは親子3人暮していけない。大半の兼業のお坊さんは、尊敬されて、お金がもらえる人気ナンバーワンの教職を選ぶ

・年収600万円のお坊さんが年収を3倍に伸ばした成功事例
1.檀家から毎月の会費徴収(1件1000円。毎月35万円で年間420万円)
2.お布施を多くもらえる檀家を40軒ピックアップし、毎月お参り(1件1万円で年間最低400万円の増収)
3.50回忌までの年忌を檀家にすすめる(年忌は1周忌から9回設けられているが、33回忌、50回忌は省略されることが多い。これで、年間25件増。1件10万円のお布施で250万円)
合計600万円+420万円+400万円+250万円で1500万円以上に

・昭和40年代半ばから、お寺を持たずにアパートやマンションに住んで法事の手伝いをするお坊さんが誕生。この背景には葬儀屋の台頭がある。葬儀屋の仕事を日々請け負ううちに大きな寺を建立したお坊さんも多くいる

お坊さんになるための大学
臨済宗(花園大学、大正大学など)浄土宗(佛教大学など)浄土真宗(大谷大学、龍谷大学、京都女子大学など)曹洞宗(駒澤大学、愛知学院大学など)真言宗(種智院大学、高野山大学など)日蓮宗(立正大学、文教大学など)

・最近、定年退職後にお坊さんになってアルバイトする例が増加。葬儀屋と契約を結んで、月に何件かの葬儀のお手伝いに出向くと、1件につき5~10万円。仕事内容は、20~30分の読経をメインのお坊さんの脇で一緒に唱えるだけ。そういうお坊さんを養成している機関、お寺もある

無教会主義を主張した内村鑑三は、「富者よりは金を貰わんと欲し、権者よりは権を藉らんと欲し、識者よりは知識を貰わんと欲し、信仰家よりは信仰を貰わんと欲す。坊主根性とは、乞食根性なり」と述べている


この本を読むと、葬儀とはいったい何だろうかと考えてしまいます。普通、お金は自分が使うのですが、葬儀代金は、自分が死んだ後、遺族が意志決定して使うことになります。

遺族にも見栄をはらさせないように、葬儀方法やお墓などの細かい指定遺言を書いておく必要があるのかもしれません。

「死んだらおしまい」
「さよならだけが人生だ」
たったこれだけのことなんですが、人間って弱いのでしょうね。その弱さがお金になるということでしょうか。

少し、「お寺のしくみ」というタイトルから逸れて意見してしまいましたが、この本を読み、お寺と葬儀は密接な関係にあることが再確認できました。お寺の全貌を知りたい方には、非常に参考になる本だと思います。




[ 2009/12/15 08:22 ] 神仏の本 | TB(0) | CM(0)

『全世界200国おもしろ辛口通信簿-歴史・国民性・文化の真実』八幡和郎

全世界200国 おもしろ辛口通信簿――歴史・国民性・文化の真実 (講談社プラスアルファ文庫)全世界200国 おもしろ辛口通信簿――歴史・国民性・文化の真実 (講談社プラスアルファ文庫)
(2008/08/21)
八幡 和郎

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世界各国、様々な特徴があります。日本は、その国々の文化のいいとこどりをして、悪いところを無視してきたように思います。

外交、交渉、付き合い方は、国々の長所と短所を知ることによって、的確に行えるのではないでしょうか。

世界各国の短所を紹介する本はないかと探していたらこの本がありました。

筆者はフランス国立行政学院に留学後、国土庁長官、通産大臣の官房官参事などを務められた世界各国に詳しい方です。

辛口評論が面白く感じられた箇所を大国の34カ国に絞って、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・中国人は実利へのあくなき追求からものを考える人たち。それは強みであると同時に弱みでもある。彼らは、さし当たっての役に立たないことを追求するのは苦手

・中国は、工芸、建築、料理では優れた文化を生み出したが、音楽、数学、物理などは苦手

・中国人は、何事につけても大袈裟な話が好まれ流布されがち。彼らの話は、2、3桁減らして聞けばいいと割り切らないといけない

・始皇帝が作り上げた中央集権の仕組み(科挙制度で採用した官僚を、全国ほぼ均等な大きさの郡に任期制で派遣する郡県制)は、イエズス会によりヨーロッパに紹介され、その後、ナポレオンにより、フランスで採用。各国に移植され広がった

・台湾は原住民(高砂族)が2%、外省人は台北市に多く13%、残りは本省人(終戦以前に大陸から移住)。本省人の70%は先祖が福建省人

・韓国は儒教の影響もあって、価値観が一元的。例えば、整形手術も、美人顔の条件がある好みのタイプに収斂されるため盛んに行われる。このように大衆文化は単純で分かりやすい

・日本に60万人いる在日の多くは慶尚道出身者。韓国の李明博大統領も北朝鮮の金正日夫人の高英姫も大阪生まれ

・日本は、自然条件と均一社会の居心地がよいせいか、海外へ進出しても、日本国内と同じ流儀を持ち込みたがる。あらゆる階層の人たちの上昇志向が強く教育熱心。世襲に甘い半面、抜きんでて優秀な才能に激しい妬みを示す

・日本の20世紀後半の成功は、輸出によるもの。資本進出や投資の受入れは低調。その成功を継続する意欲も持たず、排外的な風潮と自己陶酔によって世界史の表舞台から消えつつある

・フランスの近代国家確立には、ナポレオンという制度構築の天才が不可欠だった。隙のない法典、充実した公教育、均一的な地方制度、全国民を基礎にした軍隊、安定した通貨などはナポレオンの創造物

・フランス人の物事の考え方はひたすら論理的。価値観の普遍性を信じ、なんでも順位を付けること、格付けすることに情熱を燃やす。「ミシュラン」が見てのとおり

・ドイツ人のモットーは「他人に迷惑をかけない」「ルールを守る」こと。アパートでは、午後10時以降に風呂に入るのもトイレの水を流すのも憚られる。しかし、1人ずつだと内気だが、集団になると急に気が大きくなり、要求を通そうとする

・ドイツ人の美的センスは音楽において最高に発揮される。論理性と構築力の精華である交響曲、集団芸のオーケストラや合唱が得意。しかし、美術、工芸、建築、ファッションは頭で考えすぎて、良くできているけれど垢抜けない

・イギリスのジェントルマンの文化が世界を制したのは真似しやすいから。すました態度やワンパターンのファッションは無難で外国人にも安心

・イギリスの食べ物はおいしくないのではなく「まずい」。味にこだわるのを恥と思うのは、日本の武士も英国の紳士も共通。「もののふの国」だからルールを決めて疑似戦争するスポーツには熱心(サッカー、テニス、ゴルフなど)。英国式の庭園は素晴らしい

・スイスには1971年まで婦人参政権がなかった。兵役の義務は厳しく、男性は定期的に軍人の訓練を受けなければならない。スイスの銀行では匿名口座が認められ、世界中から怪しい預金を集めてきたが、このところ風当たりが強くなってきている

・スペインは騎士たちの国。イタリア人と違って融通が利かない。日本人で言えば、イタリア人が関西人なら、スペイン人は九州男児といったところ

・ポルトガルを安定させたのは、政権についた経済学者サラザール。彼は、緊縮財政を徹底。変化を嫌い、組合主義によって過当競争を排除。少子化に悩んでいたフランスがポルトガル移民を大量流入させてきたのは、彼らが真面目で正直で働き者だから

・オランダ人は金儲けそのものが人生の目的。贅沢な生活に興味がなく、食べものもまずい。この国の商人たちは絵画には審美眼を持っていたらしく、世界市場に輝くすばらしい画家たちが生まれた

・スウェーデンでは労働時間は短く、男女差別も少なく、保育所も完璧だが、税金は高く、物やサービスの選択肢は少ない。女性の働く環境が整っているというより、夫だけの収入ではやっていけず、子育てに専念できないようになっているだけ

・スウェーデンに限らず、19世紀以降、寒冷地の発展が見られたのは、暖房が普及したことが主因。20世紀後半以降は、冷房の普及で、高温や多湿の地域が発展している。寒さを克服した19世紀、暑さが気にならなくなった20世紀は、人類の歴史において革命的な時期

・デンマークは静かな国。山もなければ谷もない。刺激が嫌いな人にとってこれほど向いている国はない。玩具のレゴだけはこの国の大発明だと誰もが称賛する

・イタリア人でもミラノなどの北部の人たちは南イタリア人をひどく馬鹿にする。北部には貧しい南部の面倒を見せられているという気分が強い

・イタリア人は、過去のローマ人たちの国を動かす組織力や制度構築力を忘れたらしい。長い間、しっかりした権力がなかったので、何でも融通無碍に、縁故などの個人的なつながりでものを解決しようとする

・イタリア人は女性に気に入られたいという気分が活かされて、絵画、工芸、ファッション、映画など見て美しいものをつくる能力は素晴らしい

・ロシア人は権威好き。格好良くても強さを感じない男は認められない。エリツィンのように粗野でも力があれば好まれ、アルコール依存症でも許される。プーチンのように凄みを感じさせるリーダーが理想的。あの理不尽なまでのやり口に酔いしれる。ロシアには専制政治しか向かない

・ロシア民族は勇猛でない。むしろ臆病である。恐怖心のあまり、過剰防衛に走りがち。気が小さいがゆえに暴れて手が付けられなくなるヒグマだと思えばいい

・ロシア人は美術や料理には無頓着だが、文学と音楽とダンスには最高の才能を発揮する。また、役に立たないことに情熱を燃やす民族なので、学術分野で大きな成果を上げる。インテリは、実用性がないからこそ尊敬される

・フィンランドはノキアの成功や学力世界一で注目を集めている。資源もない国が平和裡に世界有数の豊かさを実現しているのは驚嘆もの。フィンランド人はやや陰気だが自然をとことん愛し、湖沼の別荘での生活を好み、サウナで汗を流すことが無上の喜び

・ポーランド人は誇り高いが、ここ数百年、ロシア人やドイツ人にやられっ放しで、すっかり皮肉屋になってしまった。フランス人とは伝統的に気が合う

・エジプトは石油が出ないがゆえに産油国の後塵を拝しているが、サウジアラビアなどの社会を支える実務的労働力の大部分がエジプト人

・サウジアラビアは、宗教が原理主義。公開斬首刑、手足の切断、鞭打ち、女性差別など近代的な人権とは縁遠い。米国との同盟(石油の見返りとしての軍事力提供)は大きな矛盾を孕んだもの

・ユダヤ人がパレスティナに国を創る権利など全くないが、砂漠の真ん中に豊かな国をつくるイスラエル人の努力は大したもの

・トルコ人はやや寡黙で尚武の民としての雰囲気を残す。繊維産業が盛んで海外からの送金や観光とともに経済を支えている。イスラム料理の代表として、トルコ料理を世界3大料理にあげる人もいる

・かつてのイランの首都はイラク国内にあり、シーア派が人口の多数派。その意味でもイランという国家の存在自体に無理がある。イラン人は、かつての文化水準の高さから、恐ろしく誇り高い。容姿も美しい

・インド人は自宅に招いてのホームパーティーを好む。そのため、女性が政治や経済の話に参加し、知恵もつく。それが、未亡人や娘が政治家になることが多い理由

・インド人は世界で数学が一番できる。抽象的思考が得意。日本人女性と結婚するインド人男性は多いが、逆は少ない

・タイ人は美術的なセンスに恵まれ、シルクや工芸品によいものが多い。それらが、工業発展の基礎にもなった

・インドネシアの土着化されたヒンドゥー文化の伝統は、現代のバリ島に受け継がれ、世界中から観光客を集めている。インドネシア人は、かつて支配されていたオランダに対する嫌悪を露骨に示す

フィリピン人女性は、愛想がよく、社交的センスに恵まれ、家事手伝い、看護、接客、芸能に向いており、世界中に出稼ぎに出ている

・オーストラリアは白豪主義の国。人種差別が緩和されたのは1972年になってから。それまでは、アボリジニーの虐待と英国系の白人以外の移民を厳しく閉ざしてきた

・ニュージーランドは鉱物資源には恵まれないが、自然条件が畜産・酪農に好適。冷凍輸送が実用化されてから世界に市場を拡大。マオリ族が人口の15%を占める

・南アフリカは英国の植民地だったが、差別政策のアパルトヘイトを推進したのはオランダ系の人たち。ヨハネスブルグが経済の中心だが、治安の悪さも有名

・アルゼンチンはかつてGNPが世界で5本の指に入るほど豊かだったので、大国意識が強い。イタリア系移民が多い。牛肉王国

・メキシコ人の51%は混血のメスティーソ。純粋の白人は15%でインディオは25%にすぎない。誇り高く自己主張も強いが、大雑把で大らか。友人関係を大事にする

・ブラジル人は、ポルトガル系をはじめとする白人と、黒人・インディオなどとの混血が拮抗。最近はアフリカ系が最大勢力になった。世界最大のカトリック王国。国民は楽天的で大胆、開放的。日系人は138万人。食料資源も鉱物資源も豊富

・カナダを開拓したのはフランス人。英国に横取りされた結果、英語が主流になったが、ケベックでは、古いフランス語と流儀を今も守っている。国民性は少々いい加減だが、親切。生活は贅沢ではなくすべてにわたりシンプル

・アメリカにはアイルランド系移民の子孫が4000万人いる。アイルランド本国の人口の10倍になっている

・ワシントンの住民は戦後のある時期まで選挙権を持っていなかった。首都の意向が国政に反映されすぎないとの配慮。思い切りつまらない首都であるが、アメリカの地方分権を支えている

・開かれた経済社会や外国人留学生を平等に受け入れるシステムが人工国家のアメリカにはある。他国の地域社会に住む人の息苦しさを和らげる役目も担っている



この本には、著者の体験談も含めた膨大な国の情報が詰まっています。知っているつもりなのに知らなかったことも多く、参考になりました。

世界史の教科書や地理の教科書に載っていないことが多く載っています。外国人との付き合い方を知る上で、貴重な1冊だと思います。


[ 2009/12/14 09:41 ] 海外の本 | TB(0) | CM(0)

『悩まない・超「往生」論』ひろさちや

悩まない―超「往生」論悩まない―超「往生」論
(2007/12)
ひろ さちや

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ひろさちや氏の本を紹介するのは、「幸福術」に次いで2冊目です。氏の本は、仏教書の中でも、特に読みやすく、独自の哲学を持っておられるため、いつ読んでも新鮮に感じられます。

この本は、悩まないためにはどうすればいいのか?という書ですが、それだけにとどまらず、人生のいろいろな考え方にも言及されている、ためになる本です。

今回、ためになって、メモした箇所が20ありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・企業は人々に老後の不安を焚きつけることで、「老いは闘うべき対象であり、全力で抗い、自己防衛しなければならない」という、ねじれた風潮を生み出して、姑息に生き延びようとしている

・「俺はさんざん苦労してきたから成功したんだ。やつらは、努力しなかったから失敗したんだ」と蔑む人がいるが、懸命に努力しても報われず、下積みのまま年をとっていく人がほとんど

・現代の日本は、収入の多い人や働ける人の価値が高く、働けない人や働いても収入の低い人の価値が低くなっている。人間なのに、商品価値の物差しで、「成功者」や「勝ち組」といった価値が決まってしまう

・ものごとの価値を決める物差しはすべて相対的なものであり、絶対的な物差しなんて存在しない。それが仏教の教える「空」の考え方であり、「価値中立性」ということである

・老後を保障するために年金制度をつくり、「お金さえあれば老後は幸せだ」という幻想をつくった世代は、戦後日本を作ってきた自分たちに他ならない。こうした結果、自分たちさえよければいいという社会を生み出してしまった

・いつまでも若くありたいなどと思うから、おかしいことになってくる。自分の中にある「老・病・死」を見なくなってしまう。そこが上手に年をとっていけない諸悪の根源である

・「いつまでも若くありたい、健康でいたい、死にたくない」というのも世間の欲望であり、それを捨て去ったとき、はじめて人間本来の姿が見えてくる

・年寄りは敗者であり、弱者である。敗者・弱者が存在するからこそ、社会は成立していく。勝者だけでは、社会は機能しない

・動物であれば、生殖能力がなくなった後、それほど長く生きていられなかった。そんな中、人間は自分の知恵と過去の経験を生かして、次の世代のお世話をするからこそ、長生きする能力を与えられているのかもしれない

・人間の欲望には「自然の欲望」と「奴隷の欲望」の二種類ある。自然の欲望は、食欲や睡眠欲のように充足されたら消える欲望。奴隷の欲望は際限がない。お金の欲望はまさにこれ

・敵の数を減らすことや敵を味方にすることなど、思うがままにならぬことに心を砕くより、家族や親族、仲間など味方になってくれている人をいかに減らさないか考えるべき

・多くの人は「あきらめ」というと、「諦」と書く「断念する」「思いきる」と考える。しかし仏教でいう「あきらめ」とは「明らめる」ことであり、物事の本質・真実を明白にしていくことを意味する

・小さな悪やトラブルには目をつぶるという「ゆとり」が大切。悪を徹底的に憎むのではなく、ほんの少しだけ赦してあげる

・阿修羅とは、本来、正義の神だったが、自分だけが絶対の正義だと思って、他人に対する思いやりを忘れ、神の世界から追放されて、魔類になったとされる。正しいことを言うとき、わたしたちは、その阿修羅と化す。正しいことは言わない方がいい

・遺された者がいつまでも死を嘆いていることは、死者にとって大きな苦しみでしかない。わたしたちが、死者を「しっかり忘れてあげる」ことによってしか死者は幸せになれない

・「ご先祖さまの供養を怠っているから病気になった、不幸になった」。考えたら、あなたのご先祖さまが、あなたにそんな意地悪をするのだろうか?そんなことを言って、お布施をさせるのは宗教でもなんでもない

・遺言を書きたがるのは、死んだ後も自分を大切にしてほしいというエゴだったり、いつまでも尽きぬ自分の金銭欲や権力欲を捨てきれないだけのこと

・欠点というのは、その人の個性でもある。よく、「個性を伸ばせ」と言うが、自分が自分らしいのは、欠点があるから

・戦争になれば、多くの敵を殺せる人間が役に立つ人間。平和な時代では、よく働き、会社のために尽くす人間が役に立つ人間。「世の中の役に立つ人間」とは、社会の都合によってつくられたもの。今、経済の第一線にいる人は、22世紀の人類から、地球に対する大罪を犯した者として断罪されるかもしれない

・「~して欲しい」という請求書の祈りをやめ、「生かしていただいて、ありがとうございます」という領収書の祈りを、感謝を込めてあげるべき。年をとったら、欲を捨てること。そういうことがわかってくるのが「老い」の本質と言える



深い話が多く、ためになりました。この本を読めば、年とともに、欲望を徐々に削いでいくことで、老いの人生が豊かになるということがわかります。

自然な老いを迎えたい方、晩節を汚さずに生きたい方は、老いの準備を早めにしておくことが必要ではないでしょうか。


[ 2009/12/13 07:57 ] ひろさちや・本 | TB(0) | CM(0)

『ドラゴン桜東大合格をつかむ言葉161』三田紀房

ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161ドラゴン桜 東大合格をつかむ言葉161
(2005/08/19)
不明

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ドラゴン桜は、東大合格の極意が描かれた漫画だと思っていたのですが、この本を読めば、作者が本当に伝えたかったことは、そうではなかったことがわかります。

世の中の厳しい現実を直視しないと社会的弱者になる
ずる賢い人間に騙されないためには、知識を持たないと社会的弱者になる
世の風潮に惑わされて、自分の考えを持たないと社会的弱者になる

そうならないための方法論として、勉強することの大事さ、勉強することの意味を伝えたかったのではないでしょうか。処世訓がいっぱい掲載されています。

この本を読み、大事だと思えた箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介します。


・金イコール汚いなんて、道理と本質から目を背けた教条主義のメルヘンバカだ。金にきれいも汚いもない。金は金だ

・かわいそう、大変だなんて言っている奴は、心底では心配していない。本当は他人に優しい自分が好きなだけだ

・ナンバーワンにならなくていい、オンリーワンになれだぁ?ふざけるな。オンリーワンというのは、その分野のエキスパート、ナンバーワンのことだろうが

・たとえば携帯電話、給与システム、年金、税金、保険・・・、みんな頭のいいやつがわざとわかりにくくして、ロクに調べもしないやつから多く取ろうという仕組みにしている。つまり、お前らみたいに頭使わずに面倒くさがっていると、一生、だまされて高い金、払わされるんだ

・どいつもこいつもバカヅラばっか・・・。お前ら一生負け続けるな。負けるって言ったのはだまされるって意味だ!お前らこのままだと一生だまされ続けるぞ!

・1位にこだわって競争しろ。1という数字のインパクトは人間を劇的に成長させる力を持っている

・素のままの自分から、オリジナルが生み出せると思ったら大間違いだ!創造するってことは、まず真似ることから始まるんだ!

・「知るか」「知らないか」たったこれだけの違いで、有利か不利かの差が出るんだ。つまり、「知らない」ということは実に恐ろしいことなんだ。逆に、「知る」ということ・・・その知識や情報は、幸せをもたらす強力な武器だということだ

・思いどおりに運ばないのが世の中だ。利益を損なう一番の障害はなんだと思う?それはな・・・人間の感情だよ

・テクニックを使うやつは要領がいいだけとか、本物じゃないとか、批判を浴びせるやつらがいるが・・・そんな見当違いの批判は、テクニックも使えないやつの負け犬の遠吠え

・賢いやつはだまされずに得して勝つ。バカはだまされて損して負ける。だまされたくなかったら、損して負けたくなかったら、お前ら・・・勉強しろ

・街に出て世の中を見渡してみる。世の中にはたくさんの“なぜ”があふれている。正しく読む能力を身につけるには、常になぜという「疑問」を持て

・お前たちが立派な点で合格しようとするなんて10年早い!「ギリギリ最低ラインで滑り込む!」これでいくことを思い出せ!

・俺がいっているのは確率の問題。一時の感情で利益を失うバカにだけはなるなってことだ

・基礎となる“カタ”をまず身につけ、それを工夫とアイデアでアレンジしていくんだ!てめえにその基礎があんのか!カタにはめるな!なんてホザくやつはただのグータラの怠け者だ!

・人間は、はっきりとゴールが見えれば準備をし、達成へと着実に進む。逆に目標を持たなければ漂流し、やがて無気力になっていくんだ

・強がりはやめとけ。お前らだって薄々感じているだろ。このままいきゃロクな人生じゃないって

本当の自由とは・・・自分のルールで生きるってことなんだよ

・人が作ったルールに従うだけで満足か?てめえも男なら、人を自分で動かす野心ぐらいもて

・あのコ、家庭的に恵まれてないんだろ。でもな・・・ああいう寂しい目をしたコは、最後に勝つ

・性格は変えられなくても、考え方なら変えられる。そう思い込めばいいんだよ。簡単なことだ


要するに、甘ったれるな勉強しろ!ということだと思います。

高度消費社会の世の中では、「ラクできるよ」「ラクしたらいいのに」という誘惑がはびこっています。

しかし、ラクすると、お金がなくなり、貧乏になります。誘惑に負けないためには、知恵と精神が必要です。この本には、そういう知恵と精神が満載です。

「東大合格をつかむ言葉」ではなく、「大金と自由と幸福をつかむ言葉」が、タイトルとして正しいのかもしれません。


[ 2009/12/11 08:31 ] 出世の本 | TB(0) | CM(0)

『悪女の人生相談』鹿島茂

悪女の人生相談 (講談社文庫)悪女の人生相談 (講談社文庫)
(2008/06/13)
鹿島 茂

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著者の鹿島茂氏はフランス文学者として有名です。大学教授の傍ら、テレビや雑誌などのマスコミにも登場されています。

先々月、NHKの「皇后ジョセフィーヌナポレオンの愛した本当の女」を見て、番組に出演されていた氏の話が面白く、改めて興味を持ちました。

フランスに造詣が深いだけあって、恋愛論や女性観に、日本の学者では考えられない、独特の感覚を持っておられます。

この本は、著者の鹿島茂氏が、女性雑誌の人生相談コーナーに寄せられた相談の名回答を編集したものです。

女性だけでなく、男性も大いに参考になります。恋愛を武器にして、現実的に生きていくための処世術が満載です。

その処世術の「本の一部」を、25ほど紹介したいと思います。


・男というものは見かけよりもはるかに単純。コスメとヘアメイクという「覆面」をして、ウッフンのムードが演出されていれば、ボーイフレンドは一線を越えるかも

・エロというのは、あまりエロのありそうもないところで見せるのが一番効く。「隠微なエロティシズム」を発散させること

・ナポレオンをたらし込んだ年上女ジョセフィーヌは、浮気が原因で、前の亭主に離縁され、女子修道院に閉じ込められたとき、恋のベテランである年増女から、これはと思った男をしっかりつかまえて放さないフェロモン誘導テクニックを伝授された

・自分からアタックして、恋を実らせた場合、男は必ず強烈な達成感を味わう。男に達成感を味わわせる女が恋に勝つ。なんとしても相手の口から「好きだ」と言わせなければならない

・ルックスやスタイルは男にモテる絶対条件ではない。ところが、ほとんどの女性はこのベクトルを見誤り、高級ブランド品を買いに走ったり、エステに通ったり、ダイエット、美容整形に走り、ほかの女に競り勝つ方法ばかりを追求したがる

・恋愛よりももっと大切なものがあるのではないかと考える「恋愛偏差値」が低い人には見合い結婚がおすすめ

・恋愛は苦手でも、結婚して子供はつくりたいという女性がいても、少しもおかしくはない

・現代の日本では、一人の男の子がごく自然に育つと、自動的にオタクになってしまうような社会・教育システムが働いている。オタクを回避していたのでは、男がいなくなってしまう。イイ男のオタクとの出会いは、尾行&逆ナンでもつかめる

・世の中には、長らく趣味に生きたために、彼女いない歴十何年の「モテない男」がわんさかいる。お見合いパーティーに出てくる男よりも、はるかによい「物件」(収入、学歴、美男度、背丈、性格など)が揃っている。出会いの場は、職場以外の「趣味の場」を狙うべき

・女の子がケガをしていたり、病気であったり、あるいは幼かったりすれば、男は何もしなくても「強者」として振る舞うことができ、一方的優越感を抱くことができる。弱い男はそういう女の子を選びたがる

・正常な男は幼児性の抑圧に成功した人、ヘンタイ男はその抑圧に失敗した人だが、抑圧が100%成功することはありえない。一見、普通に見える男でも多少は幼児性を残している

・オタクとの結婚生活で最大のメリットは、オタクは浮気しないということ。女あしらいのうまい男は、かならず浮気する。自分をただ一人の女性と思い定める夫を持つ方が、女にとって、どれほど幸せかわからない

・ナポレオン時代の名外交官タレーランは、外交の秘訣は「相手が言ってほしいと思っていることをこちらで先に言い、こちらで言ってもらいたいことを相手の口から言わせること」と喝破しているが、恋愛もこれと同じ

・告白は「させる」もの。「好き」という言葉は恋愛というゲームにおいては絶対の禁句。「好き」と言った方が負け、言わせた方が勝ちということになっている

・男の気持ちがこちらを向いてきたなと思ったら、頃合いを見計らって、相手を突き放すようにすること。一番いいのは不在になること。人間は、目の前にないものを美化する。「不在の術」をフルに活用し、愛を育てるのに役立てる

・男の口から「好き」と言わせるように仕向ける。ウッフンという仕草や態度、男のナルシズムを引き出す褒め言葉、さりげない誘いの言葉、それらを総動員しても、自分から「好き」と言わないようにする

・セックスは役人の許認可権と同じく、一つの大きな権力。相手が十分なる対価を用意したと判断すれば、させてあげてもよい。その反対だったら「させてやんない」。この使い分けが上手な女性だけがイイ男をゲットできる

・若い男は、本能的に、年上の女のほうがセックスさせてくれる確率が高いことを察知しているから、年下の男をつかまえることは、年上の男をつかまえるよりも簡単

・年下男をつなぎとめるには、完全な依存症、つまり、あなたなしでは何一つできないような体質にしてしまうこと。言いかえれば、彼をマザコンにして、あなたがママになってしまえばいい

・煎じ詰めれば、結婚は金だが、純粋に金という基準だけで男を選ぶ女性は少数派。最低限、生活水準が現状維持できれば、結婚に許可証を発行する心の持ち主が大半

・「高学歴」「高収入」「ルックスよし」「背高し」「性格よし」の5項目を二分法で処理しても、すべてに適する好条件の男などほとんどいない

・自由業、それもアート系の職業の男性は、女性の間で人気があるが、アーティストというのは、本当に面倒くさいもの。アーティストの妻で、幸せになった人など、滅多にいない

・大きく歳が離れた男とのつきあいは、期間限定にすべし。どんなにストックが豊富な男でも永遠に与え続けることはできない。いつかは「在庫切れ」の瞬間がやってくる

・不倫の男選びは金より文化を基準にする。金は文化に化けないが、文化は金に化ける。あなたが人生を切り開いていくための財産となる



若い時は、女性の現実的側面をあまり見たくないと思っていましたが、この歳になると、著者の言いたいことが、よくわかります。

若い時に、大人の恋愛術を駆使しすぎるのは考えものですが、必要とあらば、上手に使っていく必要はあると思います。

女性も男性も、大人になるために必要な1冊ではないでしょうか。



[ 2009/12/10 07:55 ] 鹿島茂・本 | TB(0) | CM(0)

『ビジネス説得学辞典』内藤誼人

ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法
(2008/09/27)
内藤 誼人

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ビジネスの分野で、心理学の著作が多い筆者が、交渉に関する戦略や技法を986集めた本です。

この600ページ近い、分厚い本を手に取ると、著者の執念のようなものも感じます。

この986の中から、参考になった部分を30ほどピックアップして、紹介したいと思います。



・言いがかり法
交渉の議題とは全く関係のないところで相手を批判し、心理的に委縮させることが狙いの説得技法

オーディエンス効果
近くに人がいるだけで、私たちの行動は影響を受ける。見物効果、聴衆効果と呼ばれることもある

・隠された自分法
他者から「あなたには隠された自分がある」と指摘されると、何となくそれが正しいのではないかと思うようになる。この傾向を利用した説得技法

・確証的フィードバック
他者から「確かに、そうでしたね」と念を押されると、「そうなのかもしれない」と思い込み、誤った記憶を持つようになってしまうこと

カメレオン効果
相手のしぐさや身ぶりをカメレオンのように真似することによって、会話をスムーズにさせたり、相手に好印象を抱かせたりすることができる

・規範アピール
大多数の人間が従うことを期待されている「社会的規範」を論拠として持ち出し、相手に従うことを求める説得技法

・きまり悪さの効果
ばつの悪いところ、きまり悪いところを見られ、恥ずかしい気持ちでいるときには、他人に説得されやすい状態になってしまう

・恐怖後安心法
相手に恐怖を感じさせ、その後で、その恐怖を取り除くと、説得の承諾率を高めることができるという説得技法

黒い羊効果
自分と同じ集団に属する人間には、好意的な反応をする(内集団ひいき)ものだが、同じ集団内に好ましくない人間がいると、集団の秩序や和を乱すものと見なされ、逆に強く差別されたり、いじめられたりすること

系列位置効果
物語や小説を読むときや、テレビドラマを視聴するとき、その最初と終りの部分は鮮明に覚えているのに、中盤はよく覚えていないということ

・ザッツ・ノット・オール・テクニック
予期せぬおまけを2段階でくっつける説得技法。130円の商品を店員が「100円でいいよ」と値下げしてあげ、さらに別の店員が「もうすぐ閉店だから80円にしてあげるよ」と申し出るようなやり方

・三角測量効果
事実の判断についての意見が曖昧で、不明確なとき、自分と異なった特徴を持つ他者と意見が一致するときの方が、自分と似た他者の意見と一致するときより、判断の確信度が高まる現象

サンクコスト効果
すでに労力やコストを払っていると、それを無駄にしたくないために、さらに追加で労力やコストを投入してしまう傾向のこと。引くに引けない状況に置かれたときに発生する

自己高揚バイアス
自分自身に高揚感を与えてくれるような方向に、予測や判断が歪むこと

社会的インパクト理論
個人が他者から受けるインパクトは、他者の地位やパワーなどの「強度」(S)と、他者が時間的・空間的にどれだけ接近しているかという「直接性」(I)、および他者の「人数」(N)の相乗関数(S×I×N)であらわされるという理論

・ジヤ・プレッシャー
ジヤとは「嘲る」「野次る」「馬鹿にする」という意味で、他人に笑われたり、からかわれたりすると、自分に自信が持てなくなり、他人に素直に従ってしまいやすくなる。このときに感じる圧力のこと

・自由の呼び起こし
依頼するときに、「これを受けるも、断るのも、あなたの自由です」と念を押し、心理的な反発を起こさせないための説得技法

初頭効果新近効果
説得メッセージの最初の内容をよく覚えていることを「初頭効果」最後の内容をよく覚えていることを「新近効果」と呼ぶ

心理的リアクタンス
態度や行動の自由が脅かされたとき生じる心理的な抵抗や反発心を指す。人は自分の自由を取り戻すために、説得の試みに対して、反対の方向に意見を変えてしまう

スリーパー効果
説得効果は、時間が経過するにつれて薄れていくが、時として、説得効果が、時間の経過とともに増大する現象が見られることがあること

前景化
普段あまり使わない言葉を使ったり、文法を崩したり、いきなり声をはりあげるといったことをいう。話題やトピックを目立たせることを狙った技法

大数の法則
大きな数字は、それだけで説得効果があるという法則。10名の調査と1000名の調査なら、大きな数字という理由だけで、1000名を信頼できると思う傾向がある

・デッドライン・テクニック
デッドライン(締切・期日)を設けて、消費者の購買意欲を促進する方法

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
段階的要請法のひとつ。大きな要請→小さな要請の順序で進む

・特定被害者効果
被害者全体ではなく、ある特定の一人の被害者について焦点を当てると、強い共感や援助意図を高めることができるとする効果

・貼紙フィードバック法
言葉ではなく、貼紙やビラや看板によってフィードバックを行う説得法。例えば、「リサイクルしましょう」といった説得はせず、「昨日これだけの使用済み用紙が集まりました」と集めた用紙の重さを貼紙で示すとリサイクル行動が増加し、効果が上がる

バンドワゴン効果
賑やかな楽隊車に人が集まってくるように、「みんながやっているから、私もそうしよう」という同調的な合流が見られること

・反論先取り法
ある行動をとるように説得すると、人はそれに対する反論を頭に思い浮かべることが多い。この説得技法は、あらかじめ予想される反論を説得者が自分から取り上げ、それをつぶしておく手法

フット・イン・ザ・ドア・テクニック
段階的要請法のひとつ。小さな要請→大きな要請というように、段階的に要請を吊り上げていく説得技法。踏み込み法と呼ばれることもある

・漏れ聞き効果
自分に向けての直接的な説得よりも、無関係の人たちの会話を偶然耳にし、漏れ聞くときの方が、その話の内容に信憑性を感じる



何気なくやっていることもあると思いますが、再確認する意味で、この本は役立ちます。

営業などで、人を説得しないといけない職に就いている方は、困ったり、悩んだりしたとき、この「ビジネス説得学辞典」をめくると、ヒントになることが必ずあると思います。蔵書に加えておきたい1冊ではないでしょうか。


[ 2009/12/08 07:57 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『笑顔のチカラ』門川義彦

笑顔のチカラ笑顔のチカラ
(2002/03)
門川 義彦

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笑いと笑顔は違います。人を笑わせるには、それなりの力が必要です。

以前、このブログで紹介した「笑われ力」は、「笑わせ力」より簡単で、実践しやすいという内容でした。

この「笑われ力」よりも、もっと簡単で、実践しやすいのが「笑顔」です。それなのに、この「笑顔」を実践している人が少ないように思います。

赤ちゃんは、食事を世話してもらい、排泄物も世話してもらい、しかも大声で泣いて騒音をまき散らします。わがまま極まりないのに、「笑顔のチカラ」で、それらを帳消しどころか、プラスを与えて、周りの人気者になっています。

仕事や人生で得する、すべての答えが、赤ちゃんの笑顔にあるように思います。

この本には、笑顔の作り方の練習法も書かれています。もちろん、自分に合う、合わないがあると思います。自分に合うものだけでも、実践していけばいいのではないでしょうか。

この本の中で、私が気に入った箇所が15ほどありました。これらを「本の一部」ですが、紹介したいと思います。


・目の前にいる人に対して、「その人がどのような人物か」をイメージする時、判断されるのは、発する言葉が7%、声の質が38%、顔の表情が55%(アルバート・メラビアン

・笑いには、「快の笑い」と「不快の笑い」と「社交辞令の笑い」の3種ある(小山謙二)

快の笑い」は、口が先に動いて目は後から動く
不快の笑い」(嘲笑や苦笑)は、目が先に動き、その動きが止まった後で口が動く
社交辞令の笑い」は、目と口が同時に動き始め、目の動きが終わった後に口の動きが完了

・人は視覚83%、聴覚11%、臭覚4%、触角2%、味覚1%の比率で物事を判断する。目に映った情報によるところが圧倒的に大きい

・水泳のシンクロ競技の選手は絶対に笑顔を絶やさない。鼻をつまんで笑顔でいられるほど習慣になっている。いい笑顔もトレーニング次第

・笑顔によって、口元が上がっていれば優しい顔に見え、また口角を上げることによって声帯が開き、明るく優しい声になる

・たとえ無理につくった笑顔であっても、自然に笑った時と同じように血流の流れはよくなる。意図的にでも笑顔をつくれば、気持ちもそれにつられて楽しくなっていく

・赤ちゃんのオッパイを飲む時の口の両端(口角)の動きに注目し、表情をよく観察すると、口角が笑顔の原形をしていることがわかる

・口角を上げるだけで、人生はポジティブな方向にいきなりスイッチが切り替わるのは、赤ちゃんの時に記憶された快感と幸福が自然に呼び起こされてくるから

笑顔の表情診断
1.口元(口角)が上がっている
2.目が優しい
3.笑いジワがある
4.エクボができる
5.口元が左右対称
6.歯がきれい
7.顔の筋肉が柔らかい
8.髪の毛で、眉毛が隠れていない
9.眉間に縦ジワがない
10.自分の笑顔が好き

・口角を上げるだけで笑顔に見え、気持ちが伝わりやすくなる。口を閉じて歯を見せずにニコッと笑ったり、口を大きく開いてダイナミックに笑ったり、口元の表情で印象が大きく変化。口輪筋運動からスタート

・割り箸を前歯で軽く噛む。その状態で1分間、割り箸の線よりも口角を上げる。できない時は、指先を使って上げても構わない。このままの状態で、鏡の前でゆっくり割り箸を抜く。これを記憶しておけば、笑顔の口元の出来上がり

・眉間に縦ジワを入れたままでは楽しい気持ちは伝わらない。楽しい時は自然に眉が上下するもの。オデコに横ジワができるように、両手を使って眉を「上、下、上、下・・・」と5回繰り返し動かす。眼輪筋(目元の筋肉)を敏感に動かすことで感情が伝わりやすくなる

・お気に入りの笑顔の写真を持ち歩いたり、男性でも小さな鏡を持ち歩き、自分の顔の表情を気付きやすくする。笑顔は本来、習慣やクセとすべきである



ところで、今まで、中小企業の社長に数多く会ってきましたが、やり手の社長ほど、いい笑顔をしています。顔では笑いながら、結構キツイことを言います。従業員は、その笑顔にだまされるのか、不満を言いません。笑顔で絶対に得していると思います。

芸能人でも、笑顔だけで有名になっている人がいっぱいいます。ということは、笑顔も芸ということになります。しかし、この芸は、誰でも真似のできる、比較的容易な芸ではないでしょうか。

とにかく、「笑顔は得する、カネになる」これだけは事実です。

ニコニコがあれば、世界中どこに行っても、誰かが助けてくれます。もちろん、身近な人なら、もっと助けてくれます。困ったときこそ、ニコニコ笑顔が大きな武器になるのではないでしょうか。




[ 2009/12/07 08:35 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『老いの生きがい学-人生の第三年代を挑戦の季節に』白石浩一

老いの生きがい学―人生の第三年代を挑戦の季節に老いの生きがい学―人生の第三年代を挑戦の季節に
(1997/10)
白石 浩一

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白石浩一先生の本を紹介するのは、「豊かに老いを生きる人生哲学」に続き、2冊目です。白石先生の老いに対する考え方が、今の自分にピッタリくるように感じています。

なぜ、自分にピッタリくるか?その理由が、この「老いの生きがい学」に載せられていました。

これらのピッタリくる箇所が、この本に20ありました。「本の一部」ですが、これらを紹介したいと思います。



・「うつ病になる危険が一番高いと言えるのは、自分が年をとることを恐れるあまり、そのことを考えないようにして、自分は年をとっていないと、否認しなければならない人たちである」(フリーダン

・「老いを否認し、文字通り“若さの泉”に飛び込む年寄りたちが、あたかも25歳に若返ったように、セックスしたりダンスしたりしている姿には嫌悪感を覚える」(フリーダン)

・老いには、高度の創造性や生産性がひそんでいる。観念、世界観、思想、理論、学術、芸術など、「矛盾したものの統一」「分散・離散・乖離したものの統合」、つまり、総仕上げということがある

・次の世代へ何かを産み残す、何かをはぐくみ育てる。現世代と次世代のきずなを産むということもある

・「第一年代は、仕事や家庭での役割を果たすことに備えて学ぶ年代。第二年代は、家庭を築き、それを支えるための生産的な年代。第三年代は、自分自身の開発、成長のために学び、その能力を“自分の仕事”のために存分に発揮する年代」(フリーダン)

・「こんこんと湧き出る力を存分に発揮しよう。老いの泉の湧き出る水を存分にほとばしらせよう。まず大切なのは、心をオープンにして、何か新しいことが起こるかもしれないという気持ちを受け入れること」(フリーダン)

・「百年近く元気溌溂と生きてきた秘訣は何かと聞かれるなら、“1日10回感動なさい”と答えたい」(加藤シヅエ

・「高齢者となったら、ボケーッと漫然と聞き流したり、ながめたりしては駄目。自然の姿、四季の移ろい、世の中の変わり方、人の話、出来事をよく聞き、よく見、よく読み、感動をもって受け取ること。これが高齢期の健康法となる」(加藤シヅエ)

・「年をとったとき、人を幸福にするものは、重要でないことをすべて捨ててしまい、本当に興味をもった仕事だけをして、本当に好きな友人だけと時を過ごすこと」(フリーダン)

・「私たちが最初に老いの兆しを感じるのは、地位や役割や責任、個人的あるいは社会的な絆を失った時」(フリーダン)

・「金銭や健康よりも、自分の能力が発揮でき、やって楽しく、自分を表現できることに、時間をかけることの方が、はるかに重要。健康よりも、なんと3、4倍も大きな意味を持つ」(フリーダン)

・目標の達成自体よりも、目標に向かって進む過程が大切。目標にピントを合わせて、自己の全体を集中させていくプロセスの中に満足度がある

・「本物の楽しさ・喜びである“フロー”は必ずしも快感ではない。心血を注ぐ過程で、心と体を限界まで働かせきっているときに生じる“没入の恍惚感”こそが、フロー体験」(チクセントミハイ

・「元気溌溂と暮らしている高齢者と、ホロコーストを生き抜いた人々の間に強い類似性がある。その類似性とは、(1)人生に意味を与える。そういう課題に積極的に立ち向かう(2)新たな目的を設定する。目的意識を積極的に創り出す」(フリーダン)

・「意味や目的は、食料や水が私たちの身体に欠かせぬものであるように、人が人らしく生きるためには、欠くことができないもの」(フリーダン)

・「一流のスープは二流の絵画よりも創造的。料理や育児や家事も創造的であり得るが、詩が必ずしも創造的であるとは限らない」(アブラハム・マズロー

・「生きるとは、問われていること、答えること。自分自身の人生に責任を持つこと」(フランクル

・「アメリカ人の生活の最大の浪費は、余暇の軽率な過ごし方にある」(ロバート・バーク

・「逆境を楽しく、やりがいに満ちたものに変換する能力は、生存するために不可欠で、生活の質をより大きく改善する有用なもの」(チクセントミハイ)

・「人間のライフサイクルの最後の段階は“統合”を達成すること、つまり人生の過程で成し遂げてきたことや達成できなかったことを、自分自身のものとして主張できる意味のある物語として結び合わせること」(エリック・エリクソン



自分の第一年代(仕事や家庭での役割を果たすことに備えて学ぶ年代)は10~20代。第二年代(家庭を築き、それを支えるための生産的な年代)は30~40代でした。

50代から、徐々に、第三年代(自分自身の開発、成長のために学び、その能力を“自分の仕事”のために存分に発揮する年代)に入ろうとしているのだと思います。

この第三年代に入る前の人が、この本を読むと、豊かな老後生活が迎えるれるヒント得られるのではないでしょうか。



[ 2009/12/06 10:28 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『社長、曰く。』

社長、曰く。社長、曰く。
(2009/03)
「社長、曰く。」編纂委員会

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私は、中小企業のオーナー社長が好きです。エネルギッシュでユニークでハートフルな方にいっぱい会ってきました。

大企業のサラリーマン社長とは真剣味が違います。その生き様を見れば、ついつい応援したくなります。

この個性的で責任感あふれる社長たちが、何を考えているのか?何を指針に行動しているのか?この本を読むと、よくわかります。

「社長、曰く。」には、全国2500社の社長の座右の銘が載せられています。この中から、特に、面白いと感じた言葉を30社(30人)紹介したいと思います。


・人生は、スマイル・スペシャル・サプライズ(イーストン・大山泰正)

・物事は盛んになったらいましめよ(中山技術コンサルタント・中山尚之)

・最後には、のめりこむ時間の長さが、勝負を決める(東成建設・及川浩和)

・あせらず、あわてず、あきらめず、あてにせず、あなどらず(岩手クボタ・高橋豊)

・百術は一誠にしかず(第一商事・柴田義春)

・智恵ありといえども、勢いに乗ずるにしかず(日東通信・高橋進太郎)

・日本人、皆、西を向こうとも、我一人、東を向く(大潟村あきたこまち生産者協会・涌井徹)

・座って文句を言う人間より、動いて批判を受ける人間になりたい(秋田オイルシール・金谷信栄)

・人のやらない事を、人のやらない方法で(エヌ・デーソフトウエア・佐藤廣志)

・運は天に有り、勝つは人に有り(フジセン技工・木下不二夫)

・プロは結末から、アマは出だしから考える(ジャパニアス・西川三郎)

・買う心、同じ心で売る心(角上魚類・柳下浩三)

・情報は自分で身体を使って取りに行け(遠藤工業・遠藤光緑)

・「過去に」とらわれず「未来を」おそれず「日々を」おこたらず(ホクタテ・水持雄一)

・チャンスは貯金出来ない(石黒メディカルシステム・石黒忠夫)

・でけへんじゃないねん、やるねん(大一産業・藤井隆吉)

・一人の敵も作らぬ人は、一人の友も作れない(ゼンヤクノー・森下哲也)

・他の人の嫌がることをなし、他の人の嫌がるところへ行く精神(須山木材・須山泰則)

・努力しない人は不満を語り、努力する人は希望を語る(倉敷化工・立山修)

・人生、二度なし。頼まれたら「ハイ喜んで」と素直に受ける(サンロード・山下鉄太郎)

・天命・天機・天職(パブリック・三野輝男)

・人の入らぬ茨の道こそ、我が進むべき道とせよ(横井鋼業・横井実)

・視・聴・触・味で感じ、決断は嗅覚(オオノ開發・大野輝旺)

・地球規模で考え、自分の地域(持ち場)で行動する(西日本科学技術研究所・福留脩文)

・「気付く」が「築く」(ビルドアンプグループ・北村英彦)

・深く穴を掘れ、穴の直径は自然に拡がる(やずや・矢頭美世子)

・歴史に感謝、未来に挑戦(西井塗料産業・西井一史)

・我今何をすべきか。今に最善を尽くす(服部産業・服部一弘)

・得手に帆上げて(日新興業・河野孝夫)

・頼まれごとの数だけ幸せがある(ジャスミンソフト・贄良則)


気に入った社長の言葉を選んでいると、中心地の東京、名古屋、大阪から離れた(北海道・東北・九州など)地域の社長が多くなっていました。

地域のハンデキャップを乗り越えてきた社長の言葉には、重みがあります。社長のたった一行の言葉ですが、それぞれの人生が凝縮されているので、非常に面白く読めました。

人それぞれ、感じる言葉は違うと思います。興味のある方は、この本の2500人の社長の言葉から、自分のお気に入りを探し出すのも楽しいかもしれません。


[ 2009/12/04 09:05 ] 商いの本 | TB(0) | CM(1)

『よくわかる「見える化」の本』越前行夫

よくわかる「見える化」の本 (ナットク現場改善シリーズ)よくわかる「見える化」の本 (ナットク現場改善シリーズ)
(2008/02)
越前 行夫

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交通標識や店舗の案内板も「見える化」です。バス停も、現在位置や到着時間予測を電光表示され、「見える化」がより一層進化しているように思います。

この「よくわかる見える化の本」は、現場改善のために書かれたものです。しかし、見える化の事例を見ると、日常の生活場面においても、応用できる点が多いように感じました。

工場、倉庫、店舗などの現場を除けば、ほとんどが「見える化」できていません。この「見える化」をマスターしておくと、役に立てることが増えるのではないでしょうか。

この本を読み、自分自身、役に立ったと思えた箇所が10ありました。これらを紹介したいと思います。



・意識して見る「見る化」と無意識に見える「見える化」は大きく違う。本当に必要なものだけが自然に見える「見える化」が望ましい

・必要な時に見えなければ「見える化」の機能は果たせない

・見えない化の事例も日常には多い。見えない化はムダの宝庫である

・見えない化7つの弱点
1.探す (冷蔵庫の中を探す)
2.イライラする (交通渋滞)
3.危ない (夜の無灯運転)
4.美しくない (ビルの建築現場)
5.楽しくない (作っている製品の使命)
6.間違える (醤油とソース)
7.管理サイクルが回らない (生産進捗)

・見えない化の短所(弱点)を克服するのが「見える化」である。見える化は見えない化のすべての短所をものの見事に克服できる

・見える化の8条件
1.すぐにわかる
2.誰でもわかる
3.意識しなくてもわかる
4.何かがわかる
5.正しくわかる
6.楽しくわかる
7.いつでもわかる
8.言葉がなくてもわかる

見える化のステップ
1.見える化したいことは何か
2.恩恵を受けるのは誰か
3.満たすべき基準
4.見える化の方法
5.見える化の具体案

・見える化の分類
1.動き・動く(信号、サイレン、行灯
2.動き・動かない(交通標識、優先席表示)
3.色・白色黒色(横断歩道)
4.色・カラー(郵便ポスト)
5.色・多色(信号、国旗、蛇口の湯と水)
6.字と絵・字のみ(道路案内)
7.字と絵・絵つき(トイレの表示、非常口表示
8.立体物(道路凸面鏡、シンボル人形)
9.透明(クリアファイル、ボールペン)

・日常でできる見える化
「安全」「品質」「間違い防止」「中身」「効率」「情報」「現場状況」「人」「異常」「楽しい」「優先順位」「忘れ防止

・見える化の精度を高める
聞こえる化・触れる化・魅せる化


このように「見える化」という視点で、世の中を見渡すと、いろいろな発見があり、面白いものです。

会社の中でも、この「見える化」の視点で、現場やオフィスを見つめると、労働時間削減生産性アップ顧客サービスの向上など、見える化の効果が認識できるのではないでしょうか。

この「見える化」の考え方を学んでおいて損はないと思います。


[ 2009/12/03 07:44 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『色の新しい捉え方』南雲治嘉

色の新しい捉え方 (光文社新書)色の新しい捉え方 (光文社新書)
(2008/06/17)
南雲治嘉

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色の本は色々ありますが、風水、占い、セラピーなど、信憑性が薄いものが多いような気がします。

この本の著者である南雲治嘉氏は、日本カラーイメージ協会会長で、大学教授も務められている、この道40年のデザイナーです。

この本で、きちんと根拠のある色彩論を書かれています。服飾だけでなく、色で商品の売上が変わることが、しばしばあります。

もう一度、体系だって色を勉強しようと思い、この本を読みました。役に立ったところが  30箇所ありました。それらを「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・色にもアイキャッチャーとしての力、人の目を引く力がある。この力のことを「色の誘引性」という。赤の誘引性は高い。赤と青の標識があれば、先に目がいくのは赤い標識。黄も人目を引く色だが、赤ほどの誘引性はない

・色の持つ誘引性が効果を発揮するには、大前提として、背景がその色を生かすものでないといけない。赤ばかりのところに赤を置いても人目を引けない。これを「色の重畳性」という。補色に近い色やコントラストの強い色を選べば人目を引くことができる

・「赤は目立つ」「純色がいいに決まっている」といった色彩戦略では、新しい時代には対応できない

・目立つからといって、黄色に黒文字のロゴマークを使っている企業があるが、見る人に不安や危険を感じさせ、人は早く遠ざかりたくなる。虎の柄は、見た獲物が怖気づいて動けなくする効果がある

・同じ重さなのに、白より黒の方が重く感じる。白い箱の方が心理的な疲労が軽くなるので、持ち運ぶ人のことを考えて、白い段ボールが増えてきた

・花壇で花を見ていると、同じところにあるのに、黄色い花が前にあって、青い花が後ろに見えたりすることがある。これを「色の進出後退」という。暖色系の色は前進して見える。鮮やかな色、彩度が高い色、明度が高い色も前進して見える

・商品パッケージには、暖色系や高彩度の色、明るい色がよく使われるが、すべての商品が前進して見えるときは、逆に後退して見える部分に目がいく。あえて寒色系の色を使う手もある

・赤には、情熱、健康、元気などの意味がある。赤を身につけると誘引性が高まる。ワンポイントであっても人目を引く。赤い服を着れば、相手も血行が良くなり、少し血圧が高まる。お互い元気になるのが赤だと言える

・ピンクは、細胞や組織に活力を与える重要な色。女性ホルモンの分泌を促す効果がある。そうしたことが理由で、ピンクを着ると若返るとよく言われる

ベンガラ色は、生理的な効果としては赤に準じるが、明度が低い(暗い)分、落ち着きと古典的な伝統性をメッセージしている

・朱は、生理的にはオレンジと同じく食欲の増進。赤の血流促進の要素も含まれる。文化的メッセージとしては、神聖で暖かく包んでくれるといった意味がある。朱は赤より目立つため、服に取り入れるのは難しく、アクセント的に用いられるのがふつう

・オレンジは、インシュリンの分泌を促し、人の健康に影響を与える色。少量のグレリンの分泌も促し、食欲にも刺激をもたらす。色としては朱に近いが、黄の持つ明朗さがより多く含まれている

・茶色はオレンジを暗くしたもの。基本的にオレンジと同じ性質がある。一方で、自然を感じさせ安心感を与えるため、茶色がリビングにあると、健康的で落ち着きのある雰囲気を作り上げる

・黄はエンドルフィンの分泌を促し、見る人を自然に笑顔にしていく色。長時間、黄を見ると発作の引き金となることもある。黄を身につけるときは、少量に絞り込むと、ユーモアのある親しみやすさが醸し出される

・黄緑は成長ホルモンの分泌を促し、人を自然と引きつける色。ところが、身につける色としては嫌われている。黄緑と白との配色は若々しさを強調し、同時にハツラツと伸びているイメージを見る人に伝える

・緑はアセチルコリンの分泌を促し、ストレスなどで疲労した細胞を活性化する。損傷を受けた細胞を再生する力があり、実際の治療に応用されている。デザインで使われるときは、新たなスタートや安らぎを表現するとき

ピーコックグリーンは青と緑の波長からできている。生理的には、青と緑と同じ効果。落ち着いて見える色だが、見る人に再生への強い生理的メッセージを送る

・青はセロトニンの分泌に一役買っている。青を好む人は冷静さを好む。青の部屋で数時間過ごすと血圧が下がりリラックスできるが、長時間いると鬱的な雰囲気になる

ターコイズブルー色は青に緑と白を混ぜた色なので、安心感とストレスの解消を促すだけでなく、未来を感じさせる。自然界にない非現実的な色だったので、画家はこの色を好んだ

・濃紺は青に黒が混ぜられた色。寒色系のクールさと黒が入ることで誇張して見えないように引き締める効果がある。派手さがなく、きりりとした緊張感を生み出す。白との配色は清潔感があり、男女ともに好まれる

・青紫は、食欲を抑制するホルモンを分泌する。また集中力を高める働きもある。青紫を使う店内や室内は落ち着きと気品が生まれ、高級感が出る。ヨーロッパでは、高級ホテルや宝石店で多く用いられる

・藤色は青紫を薄くした色。生理的には、軽く食欲を減少させる。基本的には品格や上品さを表し、エレガントなイメージを表現するときには欠かせない

・紫は、神経を興奮させるノルアドレナリンの分泌を促し、不安や恐怖を引き起こすため、人は紫を見ると、潜在的に恐れ多く感じてしまう。体調不良や生理不順が生じることもあるので、病院ではタブー色

・灰色は、いま(現在)に近い感覚を脳に与える。この色の服は、未来でもなく、過去でもない、まさにいまをメッセージしている。灰色などの無彩色の力は、配色の際に、有彩色をより輝かせる。人気のデザイナーは無彩色の使い方がうまい

・白は太陽光(白色光)の色。未来はこの光から生まれる。無彩色としての働きをするが、好きとか嫌いとかという色ではなく、なくてはならない色

・黒は無彩色として白と並びなくてはならない色。黒は有彩色の発色を最も強力に生かす。ポスターの制作などで「背景の色に困ったら黒を使え」という教えもある。逆に言えば、黒は逃げの色というプロの戒めとなる。安易に黒を使う人は色使いが苦手になってくる

・金色は金属特有の全反射を行い光って見える。金色を使えば、より豪華さを演出できる。金は黄に近い色として感じられ、人を朗らかにする黄の生理的効果も生み出す

・銀も金と同様、貴金属の色。色味は、白というより灰色に近い。そのため、生理的影響は灰色に近い。つまり、いま(現在)を表す色であり、モダンなイメージを見る人に与える。自己主張せず、さり気なさもあるので、銀製は人気

・風水が採用している陰陽五行の色は五色。国の守りとして、東に青龍、南に朱雀(赤)、西に白虎、北に玄武(黒)に関する施設や門が建てられ、中心の皇帝の住まいである紫禁城は、屋根や外壁など、外から見えるところはすべて黄で塗られた

・人は色に対して4つのタイプに分けられる
(A)敏感タイプ「流行や情報を積極的に取り入れる」(市場構成比20%)
(B)慎重タイプ「受け入れに慎重だが、必要な部分は取り入れる」(市場構成比40%)
(C)鈍感タイプ「流行など気にせず、そこにあるものを取り入れる」(市場構成比40%)
(D)遮断タイプ「頑なに伝統や好みを通し、他色は取り入れない」(市場構成比10%)



色の使い方は、ビジネスだけでなく、一般教養としても身につけておくべきものかもしれません。

色の使い方が抜群に上手にならなくても、この色はおかしいんじゃないかと気づくくらいの配色センスは持ち合わせておいた方がいいように思います。

この本は、色のセンスに自信がなく、色を基礎から学びたい方には、簡単に読め、役に立つ1冊ではないでしょうか。


[ 2009/12/01 07:57 ] 芸術の本 | TB(0) | CM(0)