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『マネーの公理スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール』マックス・ギュンター

マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルールマネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール
(2005/12/22)
マックス・ギュンター

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この本のサブタイトルは、「スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」というものです。

スイスは、金融立国です。USB銀行、クレディ・スイスなど、世界をリードする巨大銀行があります。どの銀行も、プライベート・バンキング(個人の資産管理業務)による収益比率が高いのが特徴です。

日本では、お金儲けの話もしづらい環境にあるのですが、この本は、「お金がお金を生む」投機の世界のことが書かれています。

まだまだ、抵抗感を持たれる方も多いと思いますが、厳しい投機の世界の現実を知っておくと、狡賢い企業や、小賢しい人に、騙される危険は減ると思います。

この本の中で、読んで役に立ったと思われた箇所を紹介したいと思います。



・人生はすべてギャンブルである。ほとんどの人々は、この事実に不満であり、どうしたら、賭けをしないで済むかを考えながら人生を過ごす

・人生において、富であれ、個人の名声であれ、利益として定義できるものを増やすためには、自分の所有物や精神的な満足感をリスクにさらさねばならない

・給与だけでは、決して金持ちになれない。多くの人々が、給与をもらって貧しくなるのだ。自分のために何かほかのものを持たなければならない

第1の公理
心配は病気ではなく健康の証。もし心配がないのなら、十分なリスクをとっていないということ」

・心配したくないなら、貧乏なまま。もし、心配と貧乏の選択肢があるのなら、心配するほうを選ぶべき

・分散投資はリスクを軽減するが、金持ちになるという希望も同じくらい減少させる

第2の公理
「常に早すぎるほど早く利食え

・強欲とは、過剰な欲望。常にもっと多く欲しがることを意味している。自分が当初望んだ以上に望むことを意味している。それは、自分の欲望のコントロールを失うことを意味する

・1回や2回、早めにやめるという決断が間違いだったとしても、12回、24回と場数が増えるにしたがい、その決断は正しいものになる

・あらかじめ、どれだけの利益がほしいのか決めておけ。そして、それを手に入れたら投機から身をひくのだ

・ランナーは、レースを走り終えたとき、そこがゴールだと知っている。すべてのエネルギーは、ゴールで使い果たされる。テープが切られ、勝者は記録に名を残す。すべて終りだ

・終わったことを自分に納得させるための優れた方法は、何かしらの褒美を設けることだ

第4の公理
「人間の行動は予測できない。誰であれ、未来がわかると言う人を、わずかでも信じてはいけない」

・予測が可能で信頼できるのは、自然現象が対象だからである。お金の世界は、人間模様についてのもの。人間模様は、どんな方法でも、誰にも、絶対に予測できない

・投資助言は話半分で受け流しておけばいい。ほとんどのアドバイザーは、商品を売るために、ある種の秩序ある幻想を用意している。幻想自体が商品なのだ

・勝利の公式を見つけたので金持ちになったと信じている者は、単に幸運だったから金持ちになったにすぎない

第6の公理
根を下ろしてはいけない。それは動きを鈍らせる」

・愛着は人だけに感じるべきもの。物に愛着を持つと、必要な時に素早く行動する機動力が低下する

第7の公理
「直観は説明できるのであれば信頼できる」

・直観と希望を混同するな。直観は、慎重かつ懐疑的に対処すれば、有効な投機ツールになりうる

第9の公理
「楽観は最高を期待することを意味する。自信は最悪に対処する術を知っていることを意味する。楽観のみで行動してはならない」

第10に公理
大多数の意見は無視しろ。それはおそらく間違っている」

・投機の流行を追うな。何かを買う最高のときは、誰もそれを望まないときである

第12の公理
「長期計画は、将来を管理できるという危険な確信を引き起こす」

・お金に関する限り、必要な長期計画は、金持ちになろうとする意志だけだ。どうやって、その目的を達成するかは、正確に知ることはできない



この本は、銀行家の手の内を見せる、本音をずばり暴露した書です。儲ける具体的記述はありませんが、この本を真剣に読めば、投機(投資)する上で、役に立ちます。

資産を増やしたい方にも、資産を減らしたくない方にも、おすすめです。お金の本質投機の本質を教えてくれる貴重な本だと思います。


[ 2009/09/29 07:57 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『ロングテール』クリス・アンダーソン

ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
(2006/09)
クリス アンダーソン

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ロングテール(長いシッポ)は、これから、ますます重要なキーワードになっていくように思います。

日本でも、20対80の法則(パレートの法則)が、すべてのマーケットで崩壊してきているように感じていました。この現象を、単に、消費の多様化という言葉で片付けられないようにも思っていました。

ネットの普及との関係で、この現象を見事に解き明かしてくれたのが、この本です。今後、どうなっていくのか、興味深い事例もいっぱい出てきます。

従来の、出版、放送、音楽などのコンテンツ産業が、斜陽産業になっていき、インターネットに呑みこまれてしまうのは、避けられないのかもしれません。

この興味深い本を、一部ですが、紹介したいと思います。



テレビ番組が70年代に、今より人気があったのは、作品がよかったからではなく、画面に映る作品が他になかったから

やがて大衆市場は、多数のミニ市場とミニ・スターでできた、ニッチ市場の集合体になる

流通経済は根っこから変わる。インターネットが店舗、映画館、放送局の代わりをして、あらゆる産業を呑みこむ

スペースが無限にあれば、ヒット商品にばかり焦点を合わせて商売するのは間違い

ヒット指向の経済は、すべての人にすべてのものを提供する余裕がない時代の申し子。CDやゲームを並べる店舗スペース、映画を上映できるスクリーン、テレビ番組を放送できるチャンネルが不足していただけのこと

アマゾンでは、書店が置かない本(上位10万タイトル以外の本)の市場がすでに3分の1を占め、その市場が急激に成長

「最大の金は最小の販売にあり」

グーグルは小さな会社から広告収入をほとんど得ている。イーベイもレアもの、ニッチ商品で成り立っている。これらのネットビジネスは、地理や規模の制約がなくなり、完全に新しい市場を発見した

農業経済においては、文化は地域に密着。各地ばらばらの文化から土着のなまりや民謡などが生まれた。昔のニッチ文化は、趣味より地理で決まっていた

音楽ファンは、自分から見つけたものを聴くか、何か新しいものを聴くかの選択肢がある場合、たいていは、自分から見つけたものを気に入る

音楽配信サービスでは、400のジャンルそれぞれに、トップ10のランキングが用意されている。かつて40だったヒット曲が一気に4000を超えた

トップ40の時代は終焉を迎えつつあるが、音楽そのものの人気は落ちていない。人気がなくなったのは、音楽ではなく、旧来のマーケティング、販売、流通のモデル

大物俳優の報酬の多さとその社交生活に大騒ぎし、スポーツのスター選手や有名社長といった山の頂点に過剰なほど注目し、世界をヒットという色眼鏡で見るように調教されていた

人々は、親近感や共通の趣味を通じて結びついた独自のグループをつくり、自発的にそこに集まるようになった。僕たちは、大衆市場に背を向け、地理ではなく興味で定義されるニッチの国を目指している

大量「消費主義」から参加型「生産主義」への移行

百科事典は紙に印刷された瞬間から化石になっていくが、ウィキペディアは自己修復しつづける生きた事典。生体システムのように、天敵や病原菌を制する能力を身につけながら進化していく

ロングテールのヘッドは旧来の貨幣経済で始まり、テール非貨幣経済で終わる

ヘッドは営利が優先。大衆市場の流通媒体により、商品から利益が生まれる。そこはプロ(好きより仕事)の領域。このヘッドの経済には、二軍選手の創造性を受け入れる余地はない。金がプロセスを支配する

テールは、生産と流通のコストが低く抑えられ、利益は二の次とされる。創造の目的は、自己実現、楽しみ、実験など

ヘッド・テールの立場によって、著作権に対する見方が違う。ヘッドは、出版社などが著作権をしっかり防衛。真ん中あたりは、グレーゾーン。テールは非営利な領域。著作権保護をあきらめたコンテンツ生産者が多い

ルル・コムは新興のDIY出版。本を200ドル以下でつくり、オンライン書店で販売してもらえる。しかも、売上の80%が直接作家の手に渡る。アメリカの出版社は普通、作家に15%しか渡さない

今後、みんな作品を出版する最初の舞台として、インターネットを使うようになり、誰でも出版できるようになる

アマゾンは、オンデマンド大手印刷会社、オンデマンドDVD制作会社を買収。スペースをとらずコストもかからない在庫を持とうとしている

検索エンジンを使って商品の購入を検討するのが習慣になった世代の顧客にとって、企業のブランド価値は、グーグルの検索で何がヒットするかで決まる

現在、ネットの消費者に音楽を売ろうと思ったら、いい曲だというだけでは足りない。ネット上に口コミを広げてくれるようなファンの基盤が必要

情報時代からレコメンデーション(推薦、おすすめ)時代に。情報の森の中で賢明な判断を下せるように、近道を案内してくれることが大事に

ネットフリックスで貸し出される映画は3割が新作で7割が旧作(普通、大手レンタルの店舗では9割が新作)その理由は、顧客が愛せる名画をコンピュータ解析で発見する手助けにある

「高品質」とは、1.私に合っている 2.よくできている 3.新鮮だ の順

グーグルは検索結果に関して、新しさより関連性を重視(新しいページより良いページ)投稿記事の人気度の落ち方は、かつてよりゆっくりしたスピードになっている

古い発想をしているために犯しやすい勘違い 
・みんなスターになりたがっている
・みんな金のためにやっている
・売れなければ失敗
・成功とは大衆受けすること
・DVDでしか観てもらえない作品は二流
・自費出版本はクズ
・インデペンダント系とはプロ失格のこと
・アマチュアは未熟の別名
・売れないのは質が悪いから
・いいものなら売れるはずだ

テレビが低俗でくだらないのは、視聴者が低俗でくだらないからではない。ただ、人々は、低俗でくだらないことにかけては非常に似ており、洗練されて上品なことにかけてはあまりにも異なっているから

ロングテールの法則
1.在庫は外注かデジタルに
2.顧客に仕事をしてもらう
5.価格を変動させる
7.どんな商品も切り捨てない
9.無料提供をおこなう



日本でも、このようになっていくのは、ほぼ間違いないように感じました。この事実を直視して、仕事に取り組む人と、知らないで仕事に取り組む人とでは、今後大きな差が生まれるのではないでしょうか。

転職や独立を考えられている方にとっては、必見の書だと思います。



[ 2009/09/28 08:06 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『沖縄・宮古のことわざ』佐渡山正吉

来間島・長間浜/photo by福家金蔵
昨年の夏、宮古島池間島来間島と地続き)と伊良部島下地島と地続き)の5島を自転車で3日間かけ、170km走りました。

170kmは大変な苦行のように思われるかもしれませんが、道もいいし、起伏も少ないし、車も少ないので、島の隅々を観光も兼ねて、休み休み、走ることができました。

その時、宮古島は、人も穏やかで、のんびり、ゆっくり時間が流れているような印象をもちました。

緯度的にも、台湾の首都、台北とほぼ同じで、距離的にも、沖縄本島と台湾のほぼ中間に位置しており、日本文化との違いも多く感じました。


また、島のタクシーの運転手さんの話によれば、毎年1500名近く参加する有名な宮古島トライアスロン大会(25年目を迎えた、水泳3km、自転車155km、マラソン42.195kmの本格的な大会。石垣島のミニコースより過酷)に、宮古島で参加したのはたったの1名だけだったそうです。

島の人たちは、「何であんな過酷なことをすすんでするのだろう」といつも言っているようです。

そんな宮古島に、どんな歴史があったのか、ずっと気になっていたところ、図書館でこの本を見つけました。(この本は、Amazonでは扱っていません。ひるぎ社という出版社のおきなわ文庫として1998年に発行)

ところが、読んでびっくりでした。「穏やか、のんびり、ゆっくり」「日本文化との違い」を感じたのとは正反対で、日本の生活と何も変わらない諺が載っていました。

この本に100載っている諺から、お金に関する諺を中心に、幾つかを紹介したいと思います。


朝起きは富貴、夜ふかしは餓鬼
(朝起きして仕事に精を出せば、働く時間が長くなって富裕の身になるが、夜ふかしは、飲食遊興に時間を費やし、あげくの果ては身代をつぶす結果になる)

富裕はへらから、伸び上るのは女から
(富裕になるのは男の力量次第。家庭が伸び上がっていくのは主婦次第)

貧乏者が塩をたくと雨が降る
(困ることの上に困ることが起こる。不幸の上に不幸が重なる)

・子を亡くした夜は眠れても、ひもじければ眠れない

・手足が動くから口も動く
(働きがあるから食える)

畑にやせ地とはなく、主のなまけがある

明日やるものは今日やれ、今日食うものは明日食え

・かわいい子は他人に使わせ
(親元を離れて他人のところで働き、苦労を経験した子は人生を拓いていく)

タカが舞えば、カラスも舞う
(能力のない者が人の真似をしても無駄)

・一事にかなえば百事にかなう
(一つの事がよくできる人は、それ以外のこともできるようになるものだ)

上がる太陽を拝む
(弱いものがいくら抵抗しても無駄だから大人しく従っていた方が得)

・叱る人の前には行け、ほめる人の前には行くな
(人間は叱られて思慮分別はでる)

・短気は人のため、堪忍は自分のため
(自分が短気を起こすと、相手が得して、自分は損する)

老人は心を食い、若者は力を食え
(老人は豊かな人生の知恵や心を持ち、それを財産にして世を渡れ。若者は体力を存分に発揮して世を渡れ)

高木に風はかかる
(高い地位にある人には人のねたみや非難、そしり、悪口などがかかってくる)

・自分のことは後頭につくまでわからない
(人の欠点はよく目についても、自分のことはわからないもの)

・離れた付き合いがよい付き合い

・道や座で知恵は出る
(社会で多くの人と関わりを持ちながらさまざまなものを学びとる)



結局、言葉や例え方は違っても、日本の諺とほとんど同じです。

人間の本性」は万国共通、変わらないということが確認できたので、収穫でした。私にとっては、面白い本でした。



[ 2009/09/27 10:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『未知の力を開く!』桜井章一、名越康文

未知の力を開く!未知の力を開く!
(2008/09/02)
桜井 章一名越 康文

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精神科医の名越氏曰く、
「何の肩書もなく、何の資格も権力も持たず、これだけ深い影響を与える人はいない」
と、桜井章一氏のことを紹介しています。

桜井章一氏は、麻雀の世界で、20年間負けなしの無敗伝説をつくり、超絶的な強さから「雀鬼」の異名をとり、劇画や映画のモデルにもなった人です。

私は、初めて桜井氏の著書に触れたのですが、桜井氏の思想に深く感銘いたしました。

この本は、桜井氏の実践思想を名越氏が分析診断するという形式ですが、今回は、桜井氏の思想で感銘した箇所を紹介していきたいと思います。



・この世に存在するものすべてに流れがある。過去、現在、未来、連綿と続く流れを感じれば、次に何が起こるか分かるし、結末も見えてくる

・能動と受動、私にあるのは受動かもしれない。やるからには、勝たなければいけないが、こちらから何かを仕掛けたことはない。ただ相手が自滅していった。欲望はなるべく自分から遠ざける。それが私のスタンス

・多くの人が他人の捨て牌に目を光らせている。私はまったくその逆。自分の捨て牌は、自分が通ってきた道選んだ道がそこに残っている。それは自分の姿。自分の捨て牌を見る方が、自分の今の状況を見つめられる

・多くの人が他者から得ようとするから他者を見る。他にばかり目をやるから自分を見失う。自分を見失ったら勝負に勝てるわけがない

・必要なものばかり見ていると、どんどん自分の世界を小さくしてしまう。自分がいらないと思ったものこそ大切で、そこに本当の自分、ものの本質が隠れていると思う

・発見は、考え方、思いの幅を広げる。すなわち、精神の幅を広げること。精神の幅が広がれば、いろんなことが受け入れられる。今まで否定したものも許せるようになる。心の領域が自然に広がっていく

・自分にとって都合のいいこと、価値観が同じに思えるものだけを対象にしていると心は鍛えられない。時間を惜しまず、いろんなものを見て、いろんな人と話して、いろんな体験をすることで、心の領域は広がり、鍛えられるのだ

・面白さというのは、危機感と重なりあったものが多い。危機感と面白さは背中合わせの存在。「やばいな、これ」という感覚が、実は往々にして面白い

・自然の中で遊んでいると、水や風の流れを肌で感じることができる。生命の息吹が私を刺激する。私は、そうやって感じる力を磨いてきた。五感を研ぎ澄ますには、自然の中に身を置くのが一番

・五感を使わなくなった人間が増えてしまった。「一感」しか使わない人間は壊れていく

・「善意の池」と「悪意の池」があった場合、気をつけるのは、「善意の池」。善意の池とは名ばかりで、実情は地獄谷。悪意がボコボコ吹きだしている。悪だけ溜まっている悪意の池の方が、素、本音の部分が多い。建前、表層的な部分だけの善意の池こそ用心

・進化の過程で、人間は脳を発達させるために、その代償として「未熟」を残したのではないか。それなのに、人類は脳を肥大化させ、「未熟」を助長させているように思う。人間は危うい方へ向かっている気がする

・ギリギリの緊迫感の中には「生」がある。「生」というみずみずしい爽快感を味わうのが好きである

・自分以外の何かを当てにする「期待
・自分以外の人に代償を求める「見返り
・期待も見返りも行き着くところは「」だ

・ルールを破ると掟破りと呼ばれるが、世の中のルールをつくっている人間が、掟破りかもしれない。それに気づいていない人があまりにも多い

・道場生(雀鬼会の生徒)が毎日乾くのは、世間が焼けているから。でも、彼らはそこで生きなければならない。そして石はまた乾く。私はまた水をかける。その繰り返し。教えるということは焼け石に水なのだ。だから今日もまた、私は道場生に水をかける

・相手が尽くす人なら、尽くしてあげないようにしてあげようと思う。私の方が先に尽くしてあげよう、と

・ゲーム的感覚で麻雀をしている人はとても脆い。流れを読まずに、ただ勝利だけを追い求めているから脆いのだ

・今の世の中を見渡すと、そこには作為が満ちあふれている。作為の嫌いな私は、少しでも作為のにおいを感じると、とたんに楽しめなくなってしまう

・「友達」「親友」というくくりで考えてしまうと、人間関係の幅が狭くなる。どうしても都合のいい人間、分かりあえる人間を選んでしまうから

・運には流れがある。流れがあるということはその「通り道」がある。そしてその道は目に見えない。感じなければ見えない道なのだ。運の流れを感じる力を身につければ、あなたにも運は必ずやってくる

・笑いを失った人、楽しみを失った人、つまらなくなった人が精神的なストレスを感じ、病になっていく

・恐怖感や不安は、自分の気持ちから浮き上がってくる。恐怖は動いていれば薄らぐ。忙しいと恐怖に慣れていく

・私は、金のかかる遊びに興味がない。そんなの面白くも何ともない。本当の遊びは金のかからないもの。よいもの、本物には金がかからない。金がかかることは、偽であって嘘なのだ

・結果だけを求め、そこに行き着くまでの過程はどうでもいいという結果主義は、人間の弱い心をくすぐり邪心を刺激する


著者が、サラッと掬い出した「人間の本質」を、お裾わけしてもらえたように感じました。
桜井氏の素晴らしい哲学・発想に出会えて、とてもうれしい気持ちです。おすすめの1冊です。

[ 2009/09/25 08:02 ] 戦いの本 | TB(0) | CM(0)

『お金より名誉のモチベーション論』太田肇

お金より名誉のモチベーション論  <承認欲求>を刺激して人を動かすお金より名誉のモチベーション論 <承認欲求>を刺激して人を動かす
(2007/01/04)
太田 肇

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欧米の経済学的理論やモチベーション論が、日本人には、どうもしっくりこない場合があります。その「しっくりこない」部分とは何かを追究しているのが、この本です。

日本人が感じる微妙な心の機微を言いえて妙の言葉で伝えてくれています。この本を読めば、日本人をやる気にさせる方法が、新たに気づかされる部分があるかもしれません。

その新たに気づかされる部分を「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・サービス残業を厭わない多くの日本の社員は、経済学が規定している合理的な「経済人」ではなく、「承認人」といった存在

・日本の場合、「金銭」の背後にも、「承認欲求」が隠れている

・自己実現欲求や達成欲求も、自分の行っていることや成し遂げたことに対し、外部からのフィードバックがあって初めて充足する

・日本社会は、裏の承認(減点主義評価)に対して、厳しい

・傑出を優先する欧米、関係性重視の日本
(日本では、周囲との調和や良好な人間関係を築いて裏の承認が得られる。裏の承認をクリアできなければ、表の承認を受ける資格を与えてもらえない)

・日本社会で尊敬されている人は、「関係性」と「傑出性」を備えている
(全人格的な序列を守りながら、他方では、人並み以上の活躍をして、周囲の人々に利益をもたらさなければならない)

・成果主義より厳しいかもしれない年功主義
(年をとると、お金や地位にふさわしい貢献をするように社会的心理的プレッシャーがかかる。“心”の部分に焦点を当てると優しくない制度)

・一番大切なのは「名誉の分かち合い
(名誉や尊敬を特定の人の専有物にしないこと。誰でも、努力と能力次第で、名誉や尊敬を手にすることができたら、互いにけん制する必要がなくなる)

・人格的な序列意識の弊害を取り除くためには、「プライドを棚上げ」する時や場が必要

・名札を付け、意見箱を置くようにすると、客の前では愛想がよくなった反面、裏では手を抜く傾向が表れた。大きなストレスに耐えきれず、辞めていく人が続出したところもある

わかってもらうだけで不満は半減
(上司から不当に低い評価を受けても、周りの人がその不当に気づいてくれていれば、不満は大きく軽減)

・「外から受ける屈辱」と「仲間から受ける冷たい視線」では、後者の方がつらいという声が圧倒的

・リーダーの仕事は部下を売り出すこと
(売り出すことは、ほめることより、大きな意味での承認欲求を刺激する)



この本には、日本人が喜ぶ、日本人が納得することは何か?のヒントが多く、ためになりました。「やっぱり」「なるほど」と思うこともしばしばでした。

評価は、お金だけでは困るが、お金で評価してくれなくても困るといった心理の中で、やる気を引き出すことは、なかなか単純ではないことがわかります。

部下を持つ人に、是非読んでほしい1冊です。

[ 2009/09/24 06:45 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『できる会社の社是・社訓』千野信浩

できる会社の社是・社訓 (新潮新書)できる会社の社是・社訓 (新潮新書)
(2007/04)
千野 信浩

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最近では、社是・社訓といったら、古くさく感じられる方が多いと思います。

でも、社是・社訓=経営理念・哲学です。だから、社是・社訓のある会社は、組織や社会に対して、どう生き、どう貢献していくかを明言していることになります。つまり、高い倫理性と使命感を有した、信用おける会社なのです。

信用を重んじる会社は、大抵、崇高な社是社訓を持っているように思います。これをないがしろにする会社は尊敬できない会社なのかもしれません。

この本には25の会社の社是・社訓とそれを記した創業者の物語と精神が書かれています。その中で、ためになった箇所を選び、紹介したいと思います。



すぐやる、必ずやる、出来るまでやる (日本電産)

従業員8万人、年商は5000億円を超え、急成長し続ける日本電産・永守社長の信念の言葉。学歴無用、筆記試験なし、世間を驚かせた「大声試験」「早飯試験」「マラソン試験」「留年限定」で採用した社員が今や幹部社員となっている

スピード!!スピード!!スピード!! (楽天)

成功のコンセプト(5項目の社訓)を作った理由として、三木谷社長は、「人間には、さまざまな手段をこらして何が何でも物事を達成する人間と現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間の2タイプしかいない」前者を評価し、怠け者にならないようにするため

商売はお客様のためにある。まず、お客様の利益を考えよ
一人のお客様に誠意を尽くせ。これが野越え山越えの精神である
給料はお客様から頂くもの、前のお客様があなたの主人  (ヨークベニマル12章より)

故大高社長が、一番初めに打ったチラシには、「ベニマルは小さなお店です。キタナイお店です。設備もお粗末、商品も不揃いです。何もとりえはございませんが、ただ一つ、真心だけを買って下さい」と訴えた

「お客様は来て下さらないもの、お取引先は売って下さらないもの、銀行は貸して下さらないもの。一番大切なのは信用であり、信用の担保はお金や物ではなく人間としての誠実さ、真面目さ、そして何より真摯さである」 (日経新聞「私の履歴書」故大高社長の言葉)

善の循環
他人の利益を図らずして自らの繁栄はない (YKK創業者・吉田忠雄の方針)

二意専心 誠意と創意
この二意に溢れる仕事こそ、人々に心からの満足と喜びをもたらし真に社会への貢献となる (シャープ創業者・早川徳次の経営信条)

その言動は、
1.法律や規定に触れていませんか?
2.資生堂のイメージを損ないませんか?
3.家族に知られても構いませんか?
4.誇りをもって実行できますか? (資生堂・倫理カード

1.黄金の奴隷になるな
2.学問の奴隷になるな
3.組織・機構の奴隷になるな
4.権力の奴隷になるな
5.数、理論の奴隷になるな
6.主義の奴隷になるな
7.モラルの奴隷になるな (出光興産・出光佐三の「奴隷解放」の言葉)

自分に対しては
損と得とあらば損の道をゆくこと
他人に対しては
喜びのタネまきをすること (ダスキン・経営理念)

何事でも人々からしてほしいと望むことは、
人々にそのとおりにせよ (白洋舎~マタイ福音書7章12節~)

1.高く買い、安く売って儲けよ
2.同業者より常に3年間は先を歩け (マルハ・中部翁略伝)



社是・社訓という凝縮された言葉の形で、成功した経営者の理念・哲学を知ることができるいい本でした。

読む人によって、サッと、パッとも読めますし、ゆっくり、じっくり、読むこともできます。

いずれにしても、創業者の気持ちが伝わってくる本です。まさしく金科玉条の言葉の数々です。昔の言葉であっても、新しく感じることができるのではないでしょうか。



[ 2009/09/22 07:49 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)

『日本のお金持ち妻研究』森剛志、小林淑恵

日本のお金持ち妻研究日本のお金持ち妻研究
(2008/08)
森 剛志、小林 淑恵 他

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お金持ちの研究本は出版されていますが、お金持ちの妻を研究した本はなかったと思います。

この本の読後感想は、「やっぱり、そうか」でした。代々続くお金持ちの家を見ることが多かったので、大体、想像はつきました。

この「やっぱり、そうか」と感じた箇所を、本の一部ですが、紹介したいと思います。


富裕層は、おおむね二つのタイプに分けられる。一方は60代の企業経営者。堅実で実直、趣味よりも仕事が好きという傾向。もう一方は医師。医院を開業している人たちで、消費旺盛な傾向

お金持ち妻は、容姿端麗でお金持ちに見初められた「玉の輿妻」ではなく、独身時代から大変に仕事熱心で、夜遅くまで働いていた「キャリアウーマン型妻」であった

お金持ち妻への結婚前職業調査では、玉の輿に乗れそうな職業分類「芸能人、タレント、モデル、キャビンアテンダント、コンパニオンなど」の該当者はわずか1.9%。若いころの容姿は関係なさそう

キャリア妻たちは一様に仕事熱心。満足のいく仕事を追い求めていく過程で、未来の夫となる人物に出会って結婚。当初は仕事の継続を望むが、やがて夫の補佐役や子供の教育に全精力を投入

彼女たちの生まれ育った家庭は貧しくない。父親は地元の名士や堅実な勤め人。母親は、教育水準が高く、娘に経済的自立とその基盤になる高い教育を望んだ

彼女たちの夫は経済的基盤を親の代から受け継いでいる場合も多いが、その環境に甘んじず、人生に高い意欲と野心を持っている。その夫のハートを射止めたのは、美貌ではなく、人生のパートナーに必要な知性とバイタリティー

夫と妻への「私は倹約家である」というアンケート結果では、夫婦共に倹約家と答えた夫婦は全体の50%を占めた。堅実な金銭感覚を持つ人が多い

妻の実家の社会経済的環境(裕福さ・父親の学歴)の方が夫の実家よりも総じて高い。元々、夫と同程度かそれ以上に恵まれた環境で育った妻が多い

美貌を磨くよりもまず知性を磨く方が、お金持ちと結婚する方法として、はるかに近道であり、王道である

9割以上のお金持ちは、子供に倹約精神を身につけることを望んでいる

高額納税者調査によれば、お金持ちの月平均消費支出は110万円(内訳は、家族共通55万円、夫15万円、妻16万円、子供14万円、その他10万円)、貯蓄・生保は70万円、ローン返済は20万円である。貯蓄率が高いのが特徴的

お金持ちの持家率は約8割(うち自分で購入7割、親から譲り受け3割)、一戸建ての場合、土地100坪未満が3割、100坪~300坪が5割。マンションの場合は、平均130㎡



お金持ちと結婚するには、「美より知、知より心」ということでしょうか。

でも、お金持ち妻たちは、なりたくてなったのではなく、日ごろの行いが評価されて、自然とそうなってしまったというのが実情かもしれません。

そして、将来有望な男性が、思慮分別で人生のパートナーを決める場合、その条件は、古今東西変わらないものなのかもしれません。



[ 2009/09/20 06:11 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

人を惹きつける力(2)~マグネット効果~

シスレー/サン・マメスのロワン河畔の風景/鹿児島市立美術館/POST CARD
こう考えると、
「どれだけ、遠くから客を呼んでいるか」ということも
「どれだけ、売っているか」以上に、世間に自慢できる指標に違いありません。

小さくても、客を吸い寄せる「マグネット効果」を発揮していることになります。

地方は、都会に吸い取られる「ストロー現象」ばかりが話題になりますが、そこにしかないものを作り出せば、都会から客を吸い寄せる「マグネット効果」も十分に考えられるのではないでしょうか。

本当は、地方こそが、都会と違う「個性」ある生き方をしないといけないのに、都会に憧れて、都会のマネをした「標準」的な生き方をしようとします。ここに大きな矛盾が生じているように思います。

以前、お付き合いしていた観光農園の社長は、いつも
「うち、田舎ですから」と発言されていました。

私が、
「これ、ボリュームありますねえ!」と言うと、
その社長は、
「うち、田舎ですから。都会のように量が少ないといかんのですわ」
「大きい方が売れるんですわ」と言われました。

さらに、私が、
「この売り方、ユニークですねえ!」
「スーパーの買物袋に入れて、俵積みですねえ!」と言うと、
またもや、その社長は、
「うち、田舎ですから。泥臭くした方が受けるんですわ」
「いろいろ試したけど、この売り方が一番売れるんですわ」と言われました。

田舎の観光農園という、自分の置かれた状況を客観的に把握し、自己受容した上で、都会の客を喜ばし、お金を支払っていただくためには、どういう商品や売り方が一番受けるのか?一生懸命考えられて、実行されています。

この観光農園には、田舎の卑下など少しもありません。田舎という立場を、存分に利用しています。

むしろ、田舎だからこそ、この商売が成り立っています。「個性ある生き方」と「冷静な考え方」のできる非常に頭のいい社長だと思いました。

このように、人のマネのできないものを作り出すには、いろんなものをいっぱい見ても、それを安易にマネせず、それを糧として、自分の頭で考え、人と違うことをすることです。

個性ある生き方をして、独自のものを作り出し、人を惹きつけて、人を集めていると、ますます魅力的になります。

そうすると、自然と人に慕われるようになります。そして、小さな企業でも、マグネット効果がさらに高まっていくのではないでしょうか。


人を惹きつける力(1)~個性と没個性~に もどる



[ 2009/09/18 07:47 ] お金の話 | TB(0) | CM(0)

人を惹きつける力(1)~個性と没個性~

高野山・金剛峯寺/photo by福家金蔵
我が社は、16年目になりましたが、マイナーなおかげで、細々と何とか生き伸びております。少々恥ずかしくても、「個性」を貫いたことが、人を惹きつける結果となったのかもしれません。

小さくても、個性を貫いていれば、この個性に関心のある方が探して出してくれます。

零細企業主が、こんなことを言うのは、おこがましいのですが、本当に素晴らしいオンリーワンのものを持っていれば、東京にいなくて、地方でも、日本中いや世界中から人が集まってくれるのかもしれません。

この考え方は、小売業と観光業の違いで説明するとわかりやすいように思います。

小売業は、基本的にメーカー・生産者がつくった商品を仕入れて、販売します。どこにでもある商品を仕入れて、販売する以上、人の集まる場所に、出店するのが得策です。多くの人に合わせていく、没個性戦略です。

ところが、観光業は、風光明媚、歴史的街並み、地元にしかないおいしい食べ物など、そこにしかないものを「売り」にして、人を惹きつける戦略です。

観光客は、そこにしかないものに価値を認めているからこそ大切な費用と貴重な時間を使ってくれるのだと思います。

つまり、小売業は、独自のものがないので、客の集まるところに出向く。観光業は、個性的なものを有して、遠くの客を惹きつけていくという図式になります。

企業や人を「売上や数字」だけで見るのなら、人の集まるところに出向く没個性的な生き方が高く評価されると思います。

しかし、企業や人を「内容」で評価するのなら、遠くから人を惹きつける個性的な生き方が、もっと尊敬されるべきではないでしょうか。

先月、和歌山の高野山に行きました。自宅から3時間以上かかりました。帰り際に、生胡麻豆腐を買いました。

4年ほど前に、この店で買って、食べたところ、今まで食べたことのない、ねっとりとした食感と胡麻の薫る風味があり、無茶苦茶おいしかったのです。でも、この店は、支店を出していませんでした。大きな会社では、ないようでした。

全国のデパートに出店している業者の高野山の胡麻豆腐を、その後食べましたが、値段の割りには、おいしいと思いませんでした。

このおいしい生胡麻豆腐を再度買う目的も兼ねて、4年ぶりに高野山に行きました。考えてみたら、たかが、1個200円弱の胡麻豆腐を10個ほど買うために、往復交通費を5000円以上かけて行ったことになります。

高野山へは、避暑とわずかながらの信心も目的にありましたが、胡麻豆腐を買うことが大きな目的だとすれば、割に合わない、非合理的な行動になります。

ということは、この胡麻豆腐屋さんは、単なる小売業を営んでいるのではなく、観光業も営んでいると言えるのかもしれません。


人を惹きつける力(2)~マグネット効果~へ つづく



[ 2009/09/17 06:14 ] お金の話 | TB(0) | CM(0)

『中国の赤い富豪』ルパート・フーゲワーフ

中国の赤い富豪中国の赤い富豪
(2006/12/14)
ルパート・フーゲワーフ

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近年、成長目覚ましい中国で富豪となった人は、どういう人なのか?興味があって、この本を手にしました。

今から、10~11年前、広州交易会(中国の広州で年2回開かれる貿易展示会)に2度行ったことがあります。その時の出品は、衣料、生活雑貨、工具、工業部品などが多かったので、そういう業種の人たちが富豪になったのかなと思っていました。

ところが、全然違っていました。後述の「富豪の業種」を見ていただければ、中国の発展が次の段階に入ってきていることがよくわかります。

このように、この本の著者、フーゲワーフ富豪調査を見ると、中国の経済成長が想像以上に進んでいることで驚かされます。

この本を読み、驚いた箇所の一部ですが、紹介したいと思います。



・富豪になるには、5つの特徴を備える必要がある。すなわち、見識、度胸の良さ、指導力、粘り強さ、それに強運の持ち主であることだ。これら5点は互いに補完し合う密接な関係にある

・私が接触してきたどの富豪たちもほぼ同じ共通点を持っていた。それは、人との接し方に優れていることだ

・私の知っている企業家は、多かれ少なかれ過去に失敗した経験を持っている人間ばかりである

・創業の際のタイミングも極めて大切。富豪が輩出した時代は、1988年の海南島の開発事業、1992年の小平南巡講話の後で、創業者に春が訪れている

・富や富豪に対する中国人の考え方は、外国と異なるところがある。海外では、富豪は英雄と考えられているが、中国における歴史上の英雄とは、富豪から財産を奪って貧者を救済する人物のことである

・中国のトップ企業家100人を調査した結果に基づき、「富豪資質番付」を発表したが、上位10項目の資質は、誠意、機会を捉える見識、斬新な思考、具体性のある取り組み姿勢、終わりなき学習、勤勉、指導力、執着心、直観力、冒険心

・近年の富豪トップ4人からは、極めて明らかな傾向が見て取れる。四大富豪の平均年齢は37歳である。チャンスをつかまえれば若者でも成功できる

・もうひとつ重要なことは、四大富豪いずれも泥亀(海亀=海外留学組の対比で、国内で勉強した人の意味)で、海外留学経験がないのに、中国本土で成功者になった点である

・最近では、不動産業が富豪の最も多い業界。今後は、IT業界、小売業界、エネルギー業界が、富豪の湧き出る無尽蔵の泉になりそうな予感

・富豪の多くが、不動産や株式市場などで、最初の元手を手に入れた後、健康医療業界への参入を始めている

・休暇で行きたい所を富豪に質問すると、国内ならば海南島の三亜を選ぶ人が大半。海外では、豪州をトップとする人が最も多かった。富豪の好みを地域別で見ると、上海や広東の富豪はフランス、北京の富豪は米国を好む傾向がある

・2006年フーゲワーフ富豪番付資産30億元(約400億円)以上の100人

本社所在地

1.広東20人 2.上海16人 3.北京14人 4.浙江11人
5.江蘇10人 6.福建 6人 7.香港 5人 7.河北 5人 
9.天津 3人 9.四川 3人 9.遼寧 3人 9.山西 3人 
13.山東 2人 13.河南 2人 15.新疆 1人 15.吉林 1人
15.陜西 1人 15.シンガポール1人

年齢

20代  1人  30代 18人  40代 37人 
50代 33人  60代 10人  70代  2人

業種

不動産23人 総合11人 食品・農産物・飼料9人 医療保健衛生用品 7人
鋼鉄6人 小売6人 エネルギー電池石炭 6人 衣服4人 
電子商取引ネットサービス4人 金融保険4人 車両自動車輸送機4人
ガラス3人 建設2人 物流2人 通信機器2人 広告メディア2人
その他9人



ビジネスで中国の人と付き合われている方は、この本の「富豪のお金に対する考え方」を知ることで、見識が深まり、取引する上において、何らかのプラスに働くように思います。読んで、損はない1冊ではないでしょうか。



[ 2009/09/15 07:05 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『マーケティング・リテラシー-知的消費の技法』谷村智康

マーケティング・リテラシー―知的消費の技法マーケティング・リテラシー―知的消費の技法
(2008/06)
谷村 智康

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この本は、テレビの業界が斜陽産業になっていくという話です。

話は変わりますが、1985年にサンフランシスコからロサンゼルスまで国内線に乗りました。乗客は150人くらいでしたが、エプロンをした男性の副機長が、黒人のスチュワーデスと2人で飲料サービスに機内を動き回っていました。

その時、日本では、航空会社が憧れの就職先だったのですが、今後、日本も厳しくなっていくのかなと感じたものです。

そして、今、テレビの業界に憧れている方が多いようですが、この本を読めば、今後、厳しくなっていくのかなと感じると思います。

「伝える」「PRする」という行為は不変ですが、手段としてのメディアは、大きく変わっていくようです。

この本は、本音でズバズバ書かれていますので、ハッと感じさせられた箇所だらけでした。その結果、紹介したい箇所も増えてしまいました。



ネット広告売上(6003億円)はラジオ(1670億円)雑誌(4585億円)を抜き、テレビ(1兆9981億円)新聞(9462億円)に次ぐ。それは、「割高なマスメディアから効果的な手段へ移行」を示している。ネットはその一部の手段

・今の消費はマスメディアの広告の思惑どおりに動かず、家電量販店で「どれにしようかな」と見比べる。そのため、大手家電メーカーは、マスメディアを使った広告にではなく、量販店のポイント還元に予算をつける

・広告主は、データにもとづき客観的に判断し、費用対効果が最大になるように科学的に予算配分を決める。マスメディアから広告が離れているのは、その影響力が低下したから

・広告の値決めとなる視聴率の調査対象者は平日昼間に自宅で面談を受けることが可能な人で、東京圏で600世帯だけ。抽出に問題がある。ネット調査なら、年齢、性別、職業、居住と勤務地域、年収などのあらかじめ登録された項目で効果を測定できる

・いまや、視聴率を重視しているのはテレビ局と広告代理店のメディア部門だけ。広告主にとっては、プロモーションの過程を管理する一指標。真に欲しいのは、利益であり、売上であり、それらに直接つながる消費者の行動

・ネットのキーワードランキングを見れば、テレビで紹介されてヒットした商品が多い。「知らせる」「関心を持たせる」には、テレビの影響力は絶大だが、それらは、広告ではなく、番組で紹介された商品ばかりである

・クーポン付フリーペーパーに広告を出し続けているのは、居酒屋かカラオケ店(粗利率が高く、集団来店も高い)くらいで、小さな店は効率の悪さに気づき、広告を継続しない。雑誌形式からネットやケータイ検索のクーポンに移行している

・電通など大手広告代理店は売りの現場の仕事を嫌う。マスメディアを中心とした仕事の方が華やかだし、売上が大きく粗利も高いから。店頭セールスプロモーションを「川下」として軽んじている

・広告人たちは、過去の成功体験が忘れられず、「知らせることが重要」と主張する。店頭での棚割ポイント還元が売上を決める要素になっていることを認めようとしない

・「続きはWebで」とか「○○のキーワードで検索」と広告するのは、広告での認知は重要でなくなり、自社サイトに誘引してからが「説得」の山場となっているから

・ネットは、見込み客の絞り込みに優れている。ネットを重視した方が、マーケティングの費用対効果が高くなる。だから、広告主は、マスメディアの広告費を削って、ネット広告に予算を回している

・さらに広告がマスメディアを離れてネットに移行している理由は、バナー(看板)やテキスト広告をクリックさせれば、テレビや新聞を使わなくても、精度の高い見込み客を自社サイトに誘導できることがわかってきたから

・都市圏・生活圏に合わせて広告の放送をしたい企業にとって、県という枠を強いられては使い勝手が悪い。また、商圏以外の全国に広告が放送されても無意味な負担になる。地デジは放送規格として失敗している上に、ビジネスとしても破綻している

・アメリカでは、広告の費用対効果をよく知っている企業であるペプシコーラがテレビ広告をやめてしまった

・テレビ局の売上が維持できているのは、消費者金融、パチンコ、宗教団体など、かつて放送にふさわしくないとされた業種を広告主として受け入れたから

・NHKは2500億円の予算でテレビ・ラジオ合わせた8つのチャンネルで多数の番組を作成。フジテレビは、2000億円の予算でテレビ1波の放送のみ。民放は、どんぶり勘定の丸投げで、現場に仕事が回るときに、制作予算の7割が消えている。世間の先入観とは裏腹に、NHKが効率的民放が不効率

・「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らき☆すた」は、地方U局17局のみで深夜帯に放送。各局で曜日・時間帯もまちまち、再放送もなかったのに、大ヒット。動画投稿サイトで人気が広がり、DVDとキャラクターグッズが売れ、儲かった。全国ネットで放送しないビジネスが成立することが証明され、地上波テレビ網の影響力が落ちていることも証明された

・仙台市民にとって、楽天カードを所有しておくことは、イーグルスを仙台に留めておく人質になる。イーグルスを畳むのなら、楽天カードを100万人解約すると威す方が、署名運動より効果的

・視聴者は、ニュースやスポーツ番組の生中継を除けば、放送時刻に合わせて帰宅を急ぐことがなくなった。広告の影響力低下は各種データから自明となり、広告主のテレビへの期待度が下がった

・消費者は、「広告を見せられる」というコストを支払うのがイヤになっている。自分の関心や時間を一方的に持っていかれることに抵抗している

・「広告を閲覧するごとに通貨」というしくみを電通が提案。お金を払ってまで番組を見るのに抵抗があるユーザーにも、広告を見る代価を利用料に充てるのであれば、納得されやすい。しかも、その通貨を貯めることができれば、広告を見ることは報酬の得られる労働にもなる



以上、この本は、広告とメディアのこれからの方向を暗示する内容です。これらの業界に携わっている方は、この本を読めば、現実を直視でき、次にチャレンジする方向が明確になり、今後が有利に働いていくように思いました。役に立つ1冊ではないでしょうか。



[ 2009/09/14 07:14 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(1)

『地域観光戦略-観光統計からみえてきた』額賀信

地域観光戦略―観光統計からみえてきた (B&Tブックス)地域観光戦略―観光統計からみえてきた (B&Tブックス)
(2008/11)
額賀 信

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日本の地方は、農業の衰退、円高による工場の海外移転などで、人口が減ってきました。そこを公共工事で何とかくい止めてきましたが、それもだめになりました。これからは、観光で地域振興を図っていくしかないように思います。

この本は、観光で食べていくということはどういうことか、各地域において、何が問題なのかを具体的に指示してくれる、ためになる本です。

その、ためになった箇所を本の一部ですが、紹介したいと思います。



・観光は、人口が減少しても、交流人口を増加させるので、購買力を底上げする

・07年の総宿泊者数は3億938万人、外国人は2265万人(7.3%)。国際的に見れば、著しく低い

・総宿泊数のうち、観光目的は1億7220万人(55.7%)業務目的は1億3701万人(44.3%)。観光目的の宿泊数は、国民1人当たり年間1泊~2泊と最低レベルである

・日本では、海外旅行や親類・友人宅訪問を含めても、国民1人当たり年間5.5泊。フランス16.2泊、英国16.2泊、ドイツ13.5泊、米国9.3泊で、日本の2~3倍の高水準

・日本人の観光目的国内宿泊数が少ないのは、観光で宿泊する人が少ないのと、連泊が少ないのが原因。90年代以降、国内旅行に「安・近・短」を求める傾向が強まった

・都道府県別宿泊者数順位は、東京(3718万人)北海道(2492万人)大阪(1600万人)千葉(1480万人)静岡(1348万人)神奈川(1058万人)長野(1057万人)愛知(1049万人)京都(961万人)の順。大都市圏に集中する傾向。大都市は業務目的宿泊者が多い(東京は81.5%、愛知77.8%が業務目的)

・宿泊者数が少ないのは、奈良、徳島、島根、高知、鳥取、福井、香川、佐賀、愛媛の順。順位の低い県の地域には、中核都市が乏しいことと、地域間の連携が不十分で、魅力ある連泊コースが提示できていない

沖縄では1つの施設への滞在型連泊が普及。北海道は域内を移動しながら連泊する割合が多く、延べ宿泊数を底上げしている

・文化遺産の集積だけでは宿泊者数を確保できないことは奈良県の例で示されている。夏祭りの青森、宮城、秋田、徳島でも宿泊者増にはあまり結びついていない。観光資源とスポーツ・芸能・音楽・コンベンション等、多様な誘客方法の組合せを工夫する必要がある

・外国人の宿泊者数は、東京、大阪、北海道、千葉、愛知、京都、神奈川、福岡、長崎、静岡の順。東京だけで全体の35%、上位5位までで66%

・アジア諸国からの宿泊者数が外国人宿泊者全体の約6割になった。外国人宿泊者数の少ない県は、地域の魅力を知らせる工夫、誘致する努力を十分にしていない。大きく伸びる可能性がある

観光度指数(=宿泊者数÷地域人口)が高いのは、沖縄、長野、山梨、北海道、石川の順。低いのは、埼玉、奈良、茨城、神奈川、愛知の順。観光統計は地域の通信簿。他地域と比較することで、観光政策の効果を検証すべき

・北海道の観光宿泊者数は第2位の沖縄を大きく引き離し第1位。北海道観光の強みは、札幌市(主要都市別宿泊者数が東京、大阪に次いで第3位)をハブにして、魅力的な周遊コース(自然、グルメ、スキー、動物園など)を展開して、移動型連泊を増やしていること

・冬の観光テコ入れが必要な青森、秋田。連携を問われる東北地方

首都圏外郭地方は首都圏観光客に依存しすぎ。東京を訪れる外国人旅行者への周遊コースを確立する必要がある(山梨県は成功)。長野県は県経済にとって観光の重要性を勘案する必要がある

首都圏では、東京を除き、主要見本市施設、テーマパーク、空港のある浦安市、横浜市、成田市の宿泊者数が多い

東海地方は、全国観光の縮図。富士山と静岡県観光、産業観光に力を入れる愛知県など観光事情がそれぞれ違う。首都圏、近畿圏からの集客力に課題

北陸地方は団体旅行者向け宿泊サービスから転換できていない。外国人旅行者への働きかけも不十分。小規模宿泊施設の乱立。旅行者の滞在期間が短いなどの問題点

近畿地方は、伝統的観光資源の宝庫で魅了する磁力があるにもかかわらず、活かしきれていない。修学旅行に依存しすぎた奈良県、保有する観光資源に比べて宿泊者数が全国第10位に甘んじている京都府など、本気になって観光振興に取り組むことが必要

中国地方は、広島市をハブにした観光戦略が期待される。中国地方の観光の盛り上がりは、広島市の集客力にかかっている

・全国最低の観光度指数の四国。域内宿泊交流も乏しい。首都圏、海外との結び付きを強化することが求められている

・アジアからの玄関となる九州地方。外国人宿泊者を幅広く受け入れている。これからの九州の課題は、北海道のように、域内の移動型連泊を増加させること。沖縄はその独自性で、交流人口と定住人口の両方を伸ばし、地域活性に成功している



観光客の中で、外国人旅行客を増やしていくには、国の方針も極めて重要です。これ以上の円高になると、地方が観光戦略で、一生懸命努力しても、それも水の泡と消えてしまうかもしれません。

地方をどういう方向に持っていくのか?行きあたりばったりでない政策が必要だと思いました。

この本を読めば、観光が地方の活性化にとって、必要不可欠なことがよくわかります。国と大都市と地方が一丸となって、取り組むべき重要な課題ではないでしょうか。観光に携わっている方にとって、是非読んでほしい1冊です。



[ 2009/09/13 08:35 ] 仕事の本 | TB(1) | CM(0)

鶏口となるも牛後となるなかれ(2)~客層分析~

スイス・グリンデルワルトの牧場にて/photo by福家金蔵
この鶏口戦略の「支持基盤」「支持層」とは、どう考えればいいのでしょうか?

支持基盤は、どの場所でがんばるのか、どの業界でがんばるのかを決めることから始まります。

世界なのか?日本なのか?○○地方なのか?
公共関係相手なのか?民間企業相手なのか?一般消費者相手なのか?
これによって、営業戦略が変わってきます。

支持層は、まず客層分析することから始まります。客層には、いろんな切り口があります。

一例ですが、以前、以下のような、主観的なものも含めた客層分析をしたことがあります。

<性別・独身既婚>
(女性・独身)(女性・既婚)(男性・独身)(男性・既婚)

<年齢>
(20代以下)(30代)(40代)(50代)(60代以上)

<到達レベル>
(ビギナー)(セミプロ)(プロ)

<所得と時間>
(『金あり時間あり』中高年専業主婦、高額年金受給者等)
(『金あり時間なし』夫婦正社員共働き、大企業管理職等)
(『金なし時間あり』非正規社員、低額年金受給者等)
(『金なし時間なし』多額住宅ローン返済夫婦、高額教育費支払夫婦等)

それぞれの客層から支持されているかどうか、分析しました。

もっと具体的なところで、ユニークな例としては、「家に仏壇のある長男夫婦」に強い!を切口にしているフラワーショップと出会ったことがあります。長男夫婦とは、いいところに目をつけています。

古くからの広い家に住んでおり、住宅ローンもないので、いいものを多く買ってくれます。こういう客層には、「高品質」「新鮮」「お値打ち価格」でがっちり固めていく作戦がとれます。このように、支持層を固めていくには、支持層毎の手法、作戦があります。

つまり、鶏口戦略とは、客層分析して、支持層を決めて、その小さなマーケット独占市場を形成していく戦略です。

方眼紙の小さなマス目を一つずつ、濃く塗りつぶしていくような感じです。経営の安定を考えれば、3個くらいの濃いマス目があった方がよいと思いますが、「牛後」のように、10個の薄いマス目にならないようにしたいものです。

特に、中小零細企業であれば、支持層を決めて、そこから、評価されるようにがんばるしかありません。

大企業のように華やかではありませんが、しっかりと客から支持されていれば、存在価値は高く、生き残っていけます。

つまり、「鶏口となるも牛後となるなかれ」というのは、「知ってる人は知っている」で生きていく作戦ということではないでしょうか。


鶏口となるも牛後となるなかれ(1)~独占市場~に もどる

[ 2009/09/11 07:58 ] お金の話 | TB(0) | CM(0)

鶏口となるも牛後となるなかれ(1)~独占市場~

伊藤若冲・雪中遊鶏図/POST CARD
鶏口となるも牛後となるなかれ」この諺を何回か耳にされたことがあると思います。「寄らば大樹の陰」の戒めとして、この諺が使われることが多いと思います。

実際は、日本人は性質的に、「牛後」が結構好きで、「鶏口」を余り尊敬していないのかもしれません。

ところで、経営の視点で考えればどちらが得になるのでしょうか?
「鶏口」は売上高は小さいが、利益率が高い
「牛後」は売上高は大きいが、利益率が低い
といったイメージだと思います。

業界が成長している時は、売上高の大きい「牛後」がいいように感じます。なんたって、夢があります。マーケットも世間の注目を集める大きな分野です。

「鶏口」のように、すき間で、重箱の隅をつつくようなことをしなくてもいいからです。堂々と主流を歩む感じが、格好いいように思われます。

ところが、いったんその業界が成熟し、マーケットが衰退期になってきますと、この「牛後」が一番危ない会社になってしまいます。

どんな業界でも、

一番手は大きく儲かり、
二番手は少しだけ儲かり、
三番手は少しも儲からず、
四番手以下はいずれ倒産および吸収合併

という鉄則があります。

でも、潰れず、吸収合併もされない四番手以下の手法があります。これが、「鶏口戦略」です。

「鶏口戦略」とは、自分たちの、「支持基盤」「支持層」をしっかり決めて、その場所、その人たちからの支持を高め、独占市場を形成していく手法です。

高めていくというより、固めていくという表現の方がピッタリなのかもしれません。

本当は、どの「支持基盤」「支持層」からも、しっかり支持される「牛前戦略」がいいに決まっています。

しかし、二番手以下なら、何かの分野、何かの客層で一番になり、しっかり儲けて、力を蓄えながら、総合一番を目指していくしかありません。「金がなくては戦はできぬ」が実情ではないでしょうか。


鶏口となるも牛後となるなかれ(2)~客層分析~へ つづく



[ 2009/09/10 07:24 ] お金の話 | TB(0) | CM(0)

『脳はなにかと言い訳する』池谷裕二

脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?脳はなにかと言い訳する―人は幸せになるようにできていた!?
(2006/09)
池谷 裕二

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池谷裕二氏は、薬学部出身の脳科学者です。医学部出身者の本に比べて、捉える視点が広いように思います。そのせいか、この本は読みやすく、わかりやすく思えました。

私は、人間の本質的なもの、変わらないものに興味があります。そのため、最近は、歴史、哲学、心理学、数学、脳科学に興味があります。

しかし、文系出身なので、科学的な専門書を読むのは苦手なほうです。したがって、科学的な本は、どうしても入門書を手に取ってしまいます。

この本は、入門書としては、最適の本だと思いました。本の一部ですが、読んで納得できた箇所を紹介したいと思います。



「馴れ=記憶」です。感受性を修復し、それを記憶することが、ストレス克服になる

人は先入観に踊らされるので、料理の味を本来のとおり正しく評価できない。料理は、味だけでなく盛りつけや食器や雰囲気まで含めた総合芸術と言われるが、脳科学的に見てもこれは正しい

お見合いも、先入観が影響するので、当人同士を会わせる前に相手のことを褒めておくとうまくいくことが多い

不快な情報は、快楽よりも、先入観、思い込みによって、より増強されやすくなっている

報酬に辿り着くまでのステップ数が多くなると仕事のエラー率が高くなる。大きな仕事を成し遂げるためには、最終目標以外にも、小さな目標、達成可能な目標を随時、掲げていくことが大切

モチベーションを高める方法の一つは、体を実際に動かしてみること。やる気がなくてもまず始める。そうすることで、脳が次第に活性化し、やる気が出て、のめり込んでいくことがある。これを「作業興奮」と言う

趣味に打ち込む盲目性、恋愛をする盲目性、夢に向かってひた走る盲目性、芸術に陶酔する盲目性。人の原動力は、多かれ少なかれ「盲目性」によって麻痺する精神構造から生まれている

「ストレスを解消する」かどうかではなく、「解消する方法を持っていると思っている」かどうか

ド忘れは健忘の証。記憶はちゃんと脳の中に残っている。健忘なんて起こってもいい、ド忘れだってしてもいい、怖れる必要なんかない

結婚や高額商談など重要な選択をした後に、人はもっともらしい言い訳を探して「後悔していない」と思い込みたがる傾向が強い

脳の出来・不出来を決定している重要なファクターは「好奇心」や「注意力

赤色は相手を無意識のうちに威嚇し、優位に立ちやすい状況を作る

生物は本質的にギャンブル好きであり、結果として、自分が損をしていることに気づかないことさえある

男性の方が不正に対して強い罰を望むけれども、女性はそうではない。むしろ罰を受けている人に同情する傾向がある

集中力の高い人はアイデアマンではない。集中力の欠如している(ゆらいでいる)人こそ、むしろ創造性に富んでいる

ダジャレは言葉の潜在能力を活かした一つの表現手段。ダジャレを言える脳は、余裕のなくなった現代において、むしろ歓迎されるべきもの

脳は起きていても再生できる。睡眠の重要性は、外部情報を「シャットアウト」することにある

先進国17カ国の自殺者に関する情報を解析したところ、国を超えて普遍的であった要因が血液型。O型は自殺率が少ない。血液型と脳機能の関係が垣間見える

シミュレーションを行えば、無秩序な交配を続けていくと徐々にB型かO型のどちらかが減っていく。しかし、そうなっていないのは、血液型同士に相性があって、私たちの祖先が決して婚姻相手を無作為に選んできたわけではないように思う

最大の敵はマンネリ化。歳をとると、「そんなこと、やらなくてもわかる」「どうせ、この前と一緒でしょ」という気持ちが生まれてくる。家族や給料も感謝しなければならない存在なのに、“当たり前”になる。マンネリ化に打ち勝たなければいけない

スポーツやカジノが面白いのは「未定の要素」を含んでいるから。人が生きていられるのは、未来が未確定だから。筋書きどおりの決まった将来は脳をダメにする。「将来への不安こそが脳にとっての栄養源」である

「不安」にはマイナスイメージが付きものだが、人間の生命力の肥やしにもなっている

記憶の種類によって学習スケジュールを変えることも重要。論理性の高い科目(数学など)は、時間をとってまとめて勉強、知識を覚える科目(英語など)は、毎日少しずつ勉強


やっぱりそうかと思った箇所は自信になり、知恵として活かされます。はっとさせられた箇所は好奇心が刺激されます。脳科学の本は、まだまだ、そういう気分にさせてくれます。

自分や社会の新しい発見が脳科学の本には、詰まっているように思います。読めば、確実に賢くなる1冊ではないでしょうか。

[ 2009/09/08 07:46 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『豊かに老いを生きる人生哲学-50歳からの生き方・考え方』白石浩一

豊かに老いを生きる人生哲学―50歳からの生き方・考え方豊かに老いを生きる人生哲学―50歳からの生き方・考え方
(2008/05)
白石 浩一

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この本のサブタイトルは、50歳からの生き方・考え方です。私も50代に突入しましたので、思わず、この本を手にしました。

著者の白石浩一氏は哲学・心理学が専門分野です。歴史的人物の名言を踏まえて、生き方・考え方に言及しています。

著者の考え方、哲学者・心理学者・文学者たちの名言で参考になったところを本の一部ですが、紹介したいと思います。



時間の浪費の原因は、永遠に生きられるかのように生き、真の人生を先送りし、死を凝視しないことにある

時間の奴隷になっている人は、時間にこき使われ、追いまくられて多忙な日々を暮らす。何かのことで多忙から見放されると、与えられた暇の使い方が分からない (セネカ)

名利(名声や利欲・利得)に使はれて、閑なる暇もなく、一生を苦しむこそ、愚かなれ。ひとへに高き官・位を望むも、次に愚かなり (吉田兼好)

出会いという決定的瞬間において、今までにない、まったく新しい事柄が起こる (マルティン・ブーバー

出会う相手は人間と限らず、「道端の野の草」でも「昇る朝日」でもよい

アウシュヴィッツ強制収容所では、当初、興奮状態に陥りパニック症状になる。第二段階は、深刻な無感動・無関心が現れ、人間的な感情が一切失われる。第三段階では、完全な自己崩壊・自己放棄に至る (フランクル)

自己崩壊はこころの拠り所を失ったため。拠り所を保たせる方法は、生きていく「意味」を自覚させることであり、最も有効なのは「目的・目標」をしっかりと把持させること (フランクル)

どんな人生にも必ず意味がある。意味への意志を持ちなさい (フランクル)

意欲を失い、無気力になるのは、目的の固着化にある

自己実現とは、「本来、滞在的に持っているものを実現する」こと、「本当の自分になる」「真の自分らしさを生きる」こと、これを目的・目標にするのが賢明

努力・克己も興味という道連れがあってこそ、人生の長旅が続けられる

流れの中に流れと共にあり、流れと融合・合一して、流れそのものになっている感じは、完全な没入感であり、恍惚感に近く、三昧境にいっそう近い。そういう、他人を忘れ、我をも忘れ、ただ楽しいという境地を追求する

もっとも長生きした人とは、もっとも多くの歳月を生きた人ではなく、もっともよく人生を体験した人だ (ルソー)

シニアの場合は、“広さ”よりも“深さ”を求めるほうがいい、また“楽しさ”が重視されるべき

幸福とは、感じるすべてのことを幸福に転じる“こころ”の能力

幸福とは、そのまま変わらないでつづいてほしいような、そんな状態である (ラ・ブリュイエール

日常の中の非日常的なものに気づく

たのしみは 妻子むつまじく うちつどひ 頭ならべて 物をくふ時
たのしみは 空暖かに うち晴れし 春秋の日に 出でありく時
たのしみは 人も訪ひこず 事もなく 心をいれて 書を見る時
たのしみは そぞろ読みゆく 書の中に 我とひとしき 人をみし時 (橘曙覧

たのしみある所に愉しみ たのしみなき所にも愉しむ (田能村竹田

騙されるためのいちばん確実な方法は、自分を他の人たちより、ずっと賢いと思いこむことだ (ラ・ロシュフコー

気乗りは、ひとたび着手すれば、おのずと湧いてくるもの (ヒルティ

愚者は未来のことばかり案じて人生を送る。未来を思い煩う心は不幸である (セネカ)

自分の欠点や弱点を指摘されたり、暴露されたりすると怒る、顔をゆがめる、ムキになって強弁する。これは未熟な青年がやること。おとなは、笑顔で受け入れ、率直に認め、反省の糧としたいもの。達人は、指摘してくれた相手に感謝する

人の行いで最も困難なことは自分自身を知ること。いちばん容易なことは他人に忠告すること (タレース

他人と比較してものを考える習慣は、致命的な習慣である (ラッセル)

自分の好きなものを享受してこそ幸せになれる。他の人たちが好むものを所有しても幸せになれない (ラ・ロシュフコー)

幼児の心性の特徴は「自己中心性」にある。利己主義と反対のもの (ピアジェ)

利己主義は、自分さえよければ他人はどうでもよいとする主義で、自分と他人の区別がついている。自己中心性は、自分と他人の区別がついておらず、自分が世界の中心にいる。「自分がそうだから相手もそう」と思いこむ性向

現に今、手もとにあるものを最大限に気持ちよく活用する人こそが、暮らし上手というものだ (プルタルコス

「それが一体、何のためになる?」この言葉が、恐らく老人にとっていちばん危険なのだ (モーロア

精神の無関心に陥らないためには、「外の世界に良質の好奇心、興味・関心をもつこと」と「生きる意義を自分で見出すこと、自分に与えること」である

老いの最大の危険はこころがひからびること (モーロア)

感動は、こころを枯渇させず、こころに瑞々しさと潤いを与える

人生は未完成の作業、仕事、出来事から成り立っている



この本は、人生のゴールが見えてきた人や見えてきそうな人にとって、心に響く部分が多いのではないでしょうか。上級のシニアライフを送りたい方には必見の書だと思います。



[ 2009/09/07 07:21 ] 老後の本 | TB(0) | CM(0)

『[新装版]子どもが育つ魔法の言葉』ドロシー・ロー・ノルト

[新装版]子どもが育つ魔法の言葉[新装版]子どもが育つ魔法の言葉
(2006/10/19)
ドロシー・ロー・ノルトレイチャル・ハリス

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この本は、あまりにも有名です。巻頭の「子は親の鏡」の詩を、誰もが1回は目にしたことがあると思います。

この詩は1954年に著者によって書かれ、年月を経て、世界中に広まっています。子育てをした人なら、思わずドキッとして、反省する箇所がいくつか出てくるのではないでしょうか。

このロングセラーを、さらに深く読むと、単に「親と子」の関係だけでなく、「上司と部下」「先生と生徒」「監督とプレイヤー」の関係に応用できるかもしれません。

今から、それぞれの詩に沿って、感銘した箇所を挿入しながら紹介していきたいと思います。


けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる
(不満だらけの親の気持ちは、ものの言い方や、ちょっとした仕草や目つきに表れる。小さな子どもは、こういう親の態度に敏感で、傷つきやすいもの)

とげとげした家庭で育つと、子どもは、乱暴になる
(子どもは敵意や憎しみの中で育つと精神が不安定になり、その不安から逃れるために、乱暴になる。自分自身が強くなることで、不安に打ち勝とうとするから)

不安な気持ちで育てると、子どもも不安になる
(親が配偶者の悪口を言うのを聞くと、子どもは不安になる。親が離婚したら自分は捨てられるのではないかと思うから)

「かわいそうな子だ」と言って育てると、子どもは、みじめな気持ちになる
(同情とは、相手と距離を置く感情。共感は相手に近づこうとする感情。同情するのではなく一緒に考え、励ます)

子どもを馬鹿にすると、引っ込みじあんな子になる
(人を笑うのではなく、自分で自分の失敗を笑い飛ばせる家族、そしてそれを許せる家族。そんな家族であれば、子どもは本当の強さを身につけていく)

親が他人を羨んでばかりいると、子どもも人を羨むようになる
(自分の不完全さを受け入れ、己の幸福を幸福とする親の姿が、子どもにとっての何よりの手本)

叱りつけてばかりいると、子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう
(厳しく叱りつけられて、おどおどし、罪悪感に苛まれていては、前に進むことはできない)

励ましてあげれば、子どもは、自信を持つようになる
(子の夢、子の力、子の内面を心から認め、子どもを支えれば、自尊心のある強い人間に成長する)

広い心で接すれば、キレる子にはならない
(我慢強いとは、現実を受け入れ、現実を認めるということ。癇癪を起したり、イライラして子どもに強く当ってししまうと子どもに我慢強さを教えることができない)

誉めてあげれば、子どもは、明るい子に育つ
(自分のよさを親に誉められて育った子どもは、この世の中のよさも認められる子になる)

愛してあげれば、子どもは、人を愛することを学ぶ
(親に愛されている子どもは、頑張り屋で親切)

認めてあげれば、子どもは、自分が好きになる
(親が忙しすぎたり、子どもに無関心だったりすると、子どもの長所に気づかず、優れた部分を伸ばすことができなくなる。長所が光る日常のほんの些細な出来事でも見逃さない)

見つめてあげれば、子どもは、頑張り屋になる
(いつも見慣れているものには、注意を払わなくなってしまうもの。日頃から、子どもの努力に気をつける)

分かち合うことを教えれば、子どもは、思いやりを学ぶ
(家族の時間やスペースやエネルギーを分かち合い、助け合い、協力する経験を通し、困っている人を助ける心が養われる)

親が正直であれば、子どもは、正直であることの大切さを知る
(正直であるということは誠実であるということ。正直な人は、見た事、聞いた事など自分の経験に対して誠実。自分に嘘をつかず誠実であれば心の安らぎを得られる)

子どもに公平であれば、子どもは、正義感のある子に育つ
(子どもを一人の人間として認めていると、正義感は暮らしの中で培われる)

やさしく、思いやりをもって育てれば、子どもは、やさしい子に育つ
(家族一人一人の個性や違いを認め、尊重し合って暮らしていると、子どもは偏見や差別意識のない人間に成長する)

守ってあげれば、子どもは、強い子に育つ
(何かを信じるということは、信念を持つということ。信念のある人間は、自信を持って人生を歩んでいける。親子の強い絆は、子どもの心を安定させ、自信を生む)

和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる
(家族以外のところにしか楽しみを求められないのでは困りもの。笑い声の絶えない家庭なら、いくつになっても、子どもは家族と共に過ごす時間を大切にする)



この詩をどう解釈するかは、個人によって違うと思いますが、教える立場にある者、上に立つ者にとっては、読んでおいて損はしない1冊ではないでしょうか。


[ 2009/09/06 08:07 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』山岸俊男

日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点
(2008/02)
山岸 俊男

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この本は、何となくそうじゃないかと思っていたことを、ズバッと説明してくれ、スッキリした気持ちにさせてくれました。

著者の山岸俊男氏は社会心理学者で北海道大学の教授です。日本人の“本音”“本質”“性質”が何かを捉え、社会に起きている現象をそこから解明してくれます。

一部だけを紹介しようと思っていたのですが、この本と出会ったことが、うれしくなって、たくさん紹介してしまうことになりました。読むのが面倒かもしれませんが、少しでも、多くの人にこの本を読んでもらえればと思います。



・国民に徹底した倫理教育を施したところで、「いい国」「美しい社会」など生まれないことは歴史が証明。教育改革論者たちが、歴史の教訓に無関心なのは理解できない

・社会主義体制になっても、人間の心から「資本主義時代の利己心」が消えず、業を煮やした社会主義国の支配者は徹底した利他の精神奉仕の精神の教育を国民に施したが、他人に奉仕する立派な国民は生まれなかった

・「人間の心は教育によって、いかようにも作り変えることができる」という考えはまったくの誤り。教育では知識を教え込むことは可能でも、人間性に反した形に心を作り変えることはできない。教育は万能ではない

・社会主義の国々が失敗したのは、人間の心に最初から組み込まれている「人間性」を無視した教育を行おうとしたこと。一部の例外は別にして、何の見返りもないのに他人のために働くといった人間性は、残念ながら私たちの心の中にはない

・心の中にある「人間性」の本質が分かれば、その性質をうまく利用して、社会の中にある様々な問題を解決することが可能

・いじめは現代日本だけの現象ではなく、人類共通の現象。私たちの心の中には残念ながら「他人をいじめる」という人間性がどうやら潜んでいるらしい。いじめの行為は禁止できても、心の働きは禁止できない

・お説教で問題が解決するのなら、今ごろ人類は何一つ犯罪のない「地上の楽園」に住んでいるはず

・「和の文化」が日本人の愛社精神や滅私奉公を作り出したという話は眉ツバ。戦国時代の武士は、現代のアメリカ社会と同様に、実力主義の原理で動いていた。自分の能力を評価してくれない上司なら、さっさと見限って転職すべしというのが戦国時代の常識

・日本のサラリーマンが本当に自分の会社を愛し、忠誠を尽くしているのであれば、会社の業績が落ち込んだとき、自分たちの給料を下げてくれと願い出るのが当然。会社に忠誠心を示したほうが何かとトクするから、会社人間になっているにすぎない

・昔から日本人は集団主義的であったわけではないし、会社を大事に思っているわけでもない。「日本人らしさ」なるものは、日本の社会で生きていくための知恵であり「戦略的行動」に過ぎない

・日本人が自己卑下傾向を示すのは、そういう態度を取った方が日本社会ではメリットが大きいから謙虚にしているだけのこと。「日本人の心の性質」が産み出したものではない

・「個人主義でもいいじゃないか」とみんなが内心思っていても、現実には集団主義が維持されてしまうのは、「個人主義的に行動したら、周りの人たちに嫌われてしまうのではないか」と思いこんでいるから

・相手が誰かわからない状況にあって、アメリカ人は「たいていの人は信頼できる」と考える。日本人は「自分を利用するのではないか」と疑う。「人を見たら泥棒と思え」の状態になる

・集団主義で人々がお互いに協力し合い、裏切りや犯罪が起きないのは、「心がきれいだから」ではなく「そう生きることがトクだから」に他ならない

集団主義社会が維持されている理由は、「もし、ここで他人のわがままを許せば、それを理由に私自身が他の人たちから責められるのではないか」と恐れてしまっているから

・都会の生活に適応していくには、自分の頭で、相手が信頼に足りる相手なのかを考える習慣を作らなければいけない

・日本人は、相手が「身内」であれば、それだけで相手を無条件に信用していいと考えるが、「よそ者」は、自分を騙し、利用しようと考える油断のならない存在と考える

・戦後の日本経済はケイレツ、株の持ち合い、元請け=下請け関係といった様々な集団主義的ネットワーク(安心の保証)を活用することで奇跡の経済成長を実現させた

・日本人が長らく生活してきた安心社会とは、実は「正直者である」「約束を守る」といった美徳を必要としない社会。安心社会では、その人が正直者であるか嘘つきであるかは本質的に関係ない

・信頼測定実験で、高信頼者と低信頼者を比べると、圧倒的に高信頼者のほうが相手の出方を正確に予測していた

・高信頼者の方が、その人に何か問題がありそうだと思うと、すぐに評価を変える柔軟性を持っている。「お人好し」どころか、高信頼者はシビアな観察者である

・高信頼者は、他人と協力し合うことで得られる成果は、裏切られる悔しさよりもずっと大きいことを知っている

・利他的な教育を受け、その精神が叩き込まれている人は、他者を疑う、裏切ることができない。皮肉な結果として、徹底したモラル教育は「利己主義者たちの楽園」を作る

・戦前戦中の「愛国教育」は、愛国者のふりをした一部の利己主義者たちが権力を握り、不正な利益を得る結果となった

・いじめが報告されている中学校では、傍観者の数が少ないクラスではいじめが起きていないが、傍観者の数が多いクラスではいじめが問題化していた

・いじめの臨界質量グラフでは、いじめを止める側の人間が40%よりも多ければ、いじめを止める人間が87%になるが、40%より少なければ、止める人間が10%になってしまう

協力行動を選ぼうか迷っている人たちには「アメ」を与え、非協力行動をしようとしている人たちに「ムチ」を与えて釘をさすこと

・「正直であること」「約束を守ること」を強制するのではなく、「正直な人」「約束を守る人」が少しでもトクする社会を作ることで、信頼社会が実現できる

・「ジェノヴァが正直な人間を守る」ことを裁判所をつくり具体的に示したことで、それを見た他の人々がジェノヴァの商人と手を組みたいと考えるようになり、ジェノヴァの商圏が拡大し、「ジェノヴァの成功」がもたらされた

・信頼社会は、相手を信じても馬鹿を見ない、損することがない前提がないと始まらない。その前提を維持する最大の力は法制度である

・ポジティブな評価が取引に与える効果は当初大きくないが、時間が経つとポジティブ情報の効果が尻上がりに高くなってくる。評判には「追い出し」作用と「呼び込み」作用があるが、良い評価は「呼び込み」効果が発揮される

・正直者たちのほうが大きな利益を手にする世の中になれば、利己主義者たちも正直に取引するほうがトクだと悟るようになる

・人類のモラルには2種類ある。それは、市場の倫理(商人道)と統治の倫理(武士道)である。しかし、市場の倫理・統治の倫理は決して組み合わせてはいけないものである

・武士道が説く「無私の精神」が崇高であるのは、閉鎖社会の中だけのこと。無私の精神とは、利益や打算を超越したところに価値を見出すことであって、お互いがトクしていこうとする「市場の倫理」と共存できるものではない

・生きる知恵の結晶である“商人道”のモラルをないがしろにして、武士道の「清貧の思想」や「無私の思想」をありがたがる世の中が続くことは、日本社会にとって好ましい事態ではない

・武士道に親しんだ日本人にとって「~するべきだ」の教育を「~するほうがトクになる」の教育に転換するには抵抗があるだろうが、商人道のモラルを堂々と言えるようになって初めて、日本に信頼社会が定着する



このブログは、商人の知恵を「生きる知恵」として参考にしようというのが趣旨です。ただ単に、「今儲かる」商人の利己的行動ではなく、「末永く儲かる」商人の知恵に学ぼうと考えています。

この本は、社会心理学の書ですが、共通認識は同じようなものを感じました。読みごたえのある1冊です。


[ 2009/09/04 08:24 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『笑われ力』太田敏正

笑われ力笑われ力
(2008/11/14)
太田 敏正

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この本の最後の方に、せっかく「笑われ力」を身に付けたなら、自分よりも弱い立場の人たちにこそ笑ってもらいましょう!と書かれています。

全く同感です。私も50代に突入し、年下の人たちから、偉そうに見られることが増えたように感じます。

年齢とともに、馬鹿になることが、若い人たちに気をつかわせないという、生きていく上での礼儀だと思っています。

では、馬鹿になるとは、どうすればいいのか?お笑いは好きですが、人を笑わせる芸人のような力は私にはありません。

この本を読んで、笑わせるのではなく、笑われるのが答えだとわかりました。気づかないうちに、実践していたことも多かったのですが、これからさらに笑われてやろうという気になってきました。

笑われ力とは、どういうものか「本の一部」ですが、参考になった所を紹介したいと思います。



・「おバカ」タレントは、「笑わせよう」という気負いがないので、見ている方も疲れない

・プロの笑いが笑わせることを目的にしているのに対し、日常生活の笑いは、より良い人間関係を築くためのプロセスに過ぎない。大爆笑は不要

・自分の弱さ、みっともなさをさらけだし、「クスッ」と笑ってもらう。この「クスッ」には、同意や仲間意識が込められている

恥ずかしい話を率先して笑顔で話し、みんなに笑ってもらえると、逆に「恥じらい」から解放されラクな気分になれる

・笑われ力の最良のネタは、「失敗談」「悩み」「弱み」など、あなたの中のダメな部分に潜んでいる

・「矛盾」は「笑える部分」を見つける大きなヒント。客観的に見た自分の中に「矛盾」を発見したら、しめたもの

・あくまで「ダメな自分を一緒に笑ってもらう」スタンスが重要

・「ダメな自分」を時間軸で整理すると、
過去のダメな自分=「失敗談
現在のダメな自分=「無知」「悩み」「コンプレックス」「苦手
未来のダメな自分=「妄想

・「笑われ上手」になるためには「聞き上手」になること。聞き役に徹しながら、明らかなチャンスがあれば「笑われ力」をちょこっと使ってみるのが正しいスタンス

・「ダメな自分物語」を短いエピソードにまとめ、いっぱいつくっておく。会話の内容を予測して、このキーワードが出てきたらこれを話そうとイメージしておく

・いろんなテーマで自分についてのエピソードを100個くらい挙げてみる。「笑われ100本ノック」として、自分を客観的に見るためのトレーニングをする

(ちっちゃな夢100本)
密かに好きなこと100本)
(ちょっぴりうれしかったこと100本)
(無意味に得意なこと100本)
赤っ恥、青っ恥100本)
(やっちゃった!な失敗談100本)
(人知れず困っていること100本)
(くだらないのに腹が立ったこと100本)
実は苦手なこと100本)
(子どものころ信じてたアホなこと100本)
(子どものころのしょーもない武勇伝100本)
(子どものころ思わず泣いちゃったこと100本)
(友達の自分にとっていいところ100本)
(通りすがりの他人との妄想ロマンス100本)



以上、「笑われ力」の武器であるネタやエピソードをつくることの大事さ、必要性を実感しました。

今、自分自身、笑われるネタ数十本くらいはあると思うのですが、さらに増やしてやろうと思いました。笑われ力の修業を積もうと考えています。

初めは軽く見ていたのですが、意外に、この本は、今後の人生を有意義に、豊かにする重い1冊になるように思えてきました。



[ 2009/09/02 07:15 ] 営業の本 | TB(0) | CM(0)

『金儲けが日本一上手かった男-安田善次郎の生き方』

金儲けが日本一上手かった男―安田善次郎の生き方金儲けが日本一上手かった男―安田善次郎の生き方
(2008/04)
砂川 幸雄

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安田善次郎は、明治時代、銀行や保険会社を数々創設し、安田財閥をつくり、大成功した人物です。彼が寄付した東大の安田講堂は有名です。

この本を読んだきっかけは、安田善次郎が経営哲学を体系づけた「富の活動」「富之礎」「克己実話」「意志の力」「出世の礎」「使ふ人使われる人」「勤倹と貨殖」「金の世の中」という8冊の著書があることが、この本の巻頭に出ていたからです。

その著作のタイトルが、偶然ですが、このブログのカテゴリーに類似しており、非常に驚きました。

安田善次郎は、実践家(経営者)でもあり、理論家(作家)でもあったことがわかり、彼に興味を持ち、砂川幸雄氏の書いたこの著書を一気に読みました。

この本を読めば、彼がなぜ金持ちになったかの、今も昔も変わらないノウハウ、生き方、考え方が満載されています。

本の一部ですが、安田善次郎が語った、ためになった言葉を紹介したいと思います。


・慈善とか義援といえば、その名は立派であるが、人の厄介になるのを甘んずる人間は、本来意気地のない人間。そういう人間は恵んでやるより、むしろ鞭撻する方がいい

・私は勤倹貯蓄独立独歩一点張りで説いている。各人各個独立独歩で業務を進めていくことが、間接に世を益するわけであって、その効果は、公共事業、慈善事業に比して、はるかに大きなものと私は信じている

・元治元年(1864年)善次郎27歳の時、「一千両の分限者」になるため、三つの誓いを自らに課した
1.独立独行で世を渡る。女遊びをせず一生懸命に働く
2.嘘をいわず、正直に道を踏む。どんな誘惑があっても横道に逸れない
3.生活費は収入の8割以内にし、2割は貯蓄する、住居のために財産の1割以上の支出はしない

・善次郎は嫁さんを世話してもらう上で、三つの結婚に関する注文をつけた
1.お客は商人にとって出世の神様だから、お客様を大切にする親切心があること
2.夫婦共働きの精神でいる女性で、女中代理の労をも厭わぬ心掛けがほしい
3.倹約を旨とし、当分の間は絹布でなく木綿の衣服で我慢する女性でありたい

・「安心して金を貸す人」は、「勉強家で先見の明を持つ人」。その人が世間から批判されていても厭いません。評判の悪い人でも、悪心で始めたものでなければ、応援します

・銀行家には公私の混同は禁物です。同郷だから金を貸すなんてことはしません。銀行家は意志が強くなくてはいけません。情実に囚われるようでは失敗する他ありません

・善次郎は、発展性のある土地を神社仏閣から推察した。お寺が古びて粗末だとか、神社は大きくても崩れかかっていれば宗教心が薄く発展性がないと判断。また庭の掃除の行き届き具合、茅葺や土蔵の多さで家人の勤勉さを判断

・善次郎は、日本全国の土地を<富><気質><勤勉心><宗教心><風俗><地味><地形>に上中下の三段階にランク付けし、この上中下を次の上中下にランク付けして九段階に採点し記録

・善次郎は、江州各地をしばしば巡歴し、江州商人(近江商人)を観察し、「地味・堅実・用心深い」「独立せず、終生店の発展に打ち込む」「利益は均等に分配される組織」「家族的な組織で江州人以外ほとんど雇わない」「実業界に雄飛することを熱望」と特徴づけた

・大正の中ごろ、銀行協会が預金金利の引き下げを協定したが、安田銀行は「お客の利益を減らしてまで儲ける必要はない。現状の利率で経営が成り立っている」と協定を破った

・安田家の朝食は、善次郎、奉公人も含め「一椀の味噌汁に数切れの香の物を添えた程度」で、金のあるなしにかかわらず、「あくまで質素であるべきだ」の原則を貫いた

・人生は克己の二字にある。これを実行することに成功があり、これを忘れるところに失敗がある。今日の地位も財産もこの克己によって得たもので他に理由はない。この克己を確実に実行し得れば、神の信仰も不要である

・収入が多いよりも支出を少なくするほうが幸福なのである。倹素を守り、自分の用度を節約すれば、少ない収入でも余裕ができて、儲けたと同様の結果になる

勤と倹は車の両輪、夫婦のごとく離るべからざるもの。一方だけの成功はあり得ない。勤勉に且つ節倹しなければならない

・勤と倹を実行すれば、他人に頼る必要がなくなる。それ故、心中は常に安穏で、家庭は円満。物議は一切起きない

・自分の成功のコツは、次の5カ条を守ってきたこと
1.目的に向かって順序正しく進むこと
2.自分の弱点、悪癖と思うことは、誓いを立ててそれを矯正すること
3.真心をもって事に当たること
4.虚飾をさけて実益を収めること
5.身の分限を守り、公費を省いて不時の用に備えること

・人の心はいろいろのことで感動せしめられるもの。そこに誘惑は来る。それを退治し得る人が勇者。誘惑に打ち克つ方法は克己心の養成。心を正しくして、正道を踏み、邪道に迷わず、諸欲を制する強い意志を克己心という

・大いに心懸けるべきは、発心・実行・継続の三つである。実行には胆力、継続には克己心を要する。継続が最も困難である

・金持ちになってから何の必要があって貯金するのか?貯金は精神修養の一つ。貯金と克己が深く関連してくる

・平和に幸福に人生を送るためには、物薄くして情厚しという人間真の価値ある趣味を必要とする。その趣味とは茶道である



勤と倹」「克己心」という言葉が何回も出てきます。「真面目によく働き、質素に暮らし、誘惑に負けるな」ということでしょうが、これはお金持ちになる基本中の基本です。

今も昔も全く変わらないし、変わるはずもない真実ではないでしょうか。


[ 2009/09/01 07:54 ] 商いの本 | TB(0) | CM(0)