とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『中村天風一日一話』財団法人天風会

中村天風一日一話中村天風一日一話
(2013/03/15)
財団法人天風会

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中村天風さんが、自ら語った書を紹介するのは、「成功の実現」「君に成功を贈る」に次ぎ、3冊目です。

本書には、中村天風さんの言葉が、簡潔に収められています。哲人の教えが、コンパクトで読みやすい形になっています。366もある尊い教えの中から、その一部を紹介させていただきます。



・人間の欲望というものは絶対に捨てることはできない。それを捨てることができるように説いているのは、偽りを言っている

・理想には信念が必要。信念がつかないと、万難を突破しても、その理想の完成成就へと猛進しようとする力が、分裂してしまう

・人生とは、思考そのもの。極限すれば、人生即思考とも言える

・心と体という、命を形成しているものの関係は、ちょうど一筋の川の流れのごとく、切れず、離れない。そして、常にこの川の流れの川上は心で、川下は肉体ということに気づいたならば、心は、どんな場合も積極的であらしめなければならないと気がつくのは当然

・我が人生をつくるには、その人生設計の中から余計なものを、きれいに取り除かないとだめ

・自分の欲望のみでもって、しようとしたことは、そう滅多に成功するものではない。事業に成功するには、自分が欲望から離れて、何かを考えたときに成功する

・心の中の気高い強さというのは、卑屈にやせ我慢で強さをつくろうとするのではなく、淡々として、少しも気張らずに強くなり得ていることを言う

・信念は煥発しなければ、強くならない。信念は出たくてうずうずしているのに、消極的な観念がそれにフタをしている

・人生観が自己中心主義に偏っているのを解決するためには、この世の万物万象が、互いに助け合って、調和をはかりながら存在していることを知ること

・人を鼓舞奨励することは尊い。しかし、人から鼓舞されたいとか、奨励されたいとかいうふうに望んだならば、これはもう恥であると同時に、人間としてさもしい心がけである

・人間の心の本質は、真・善・美という尊いもので、それは大自然の調和と同様なもの

・哲学的に形容すれば、人の命は、自然をその故郷にしていると言える

・人生における価値高い目標とは、いかなる場合があろうとも自己を正しく向上せしめること。今日よりも明日、明日よりも明後日というふうに、自分を日々プロモートさせることを考えなければならない

・いかなる場合にも、心に喜びを感ぜしめて生きる。換言すれば、人生の一切のすべてに対して喜びに生きること、ただこれ一つ

・世の人の多くは、幸福の獲得に、金の力、知識の力、または経験の力や計画の密度にのみ重点を置いて、信念をさして重大視していない

・人を喜ばせて、自分がまた、その人と喜ぶということが一番尊いこと

・命の力の使い方とは、力を入れることに重点を置かずに、力を働かすことに重点を置くことである

・ヨーガ哲学の講義の中に「人の心の中には、檻の中に入れられた猛獣がいる。そして、その檻の手入れを怠ると、しばしばその猛獣が檻を脱け出してきて、心の花園を荒らしまわる」という戒めの言葉がある

・とにかく元気溌溂たる状態で活きることこそ、最も重要かつ大事であるから、心の置きどころを常に積極的にするために、「自分は力だ」ということを断じて忘れてはならない

・絵を画いたり、字を書いたりする時は、出来上がった姿を心に描くからできる。出来上がった後の姿を心に描かないで書いている字や絵は、見るに堪えられない

・理想はよしんば、その理想とするところに到着しなくても、たえずその理想へ意志するという気持ちを変えないことが、人生を尊く生かす



中村天風さんの哲学を一言で表すとすれば、「心身一如」が最適な言葉だと思います。

「心が人生をつくる」。そのためには、心を常に積極的に見張っておくことを肝に銘じる必要があるのかもしれません。


[ 2013/05/16 07:00 ] 中村天風・本 | TB(0) | CM(0)

『中村天風と「六然訓」』合田周平

中村天風と「六然訓」 (PHP新書)中村天風と「六然訓」 (PHP新書)
(2012/02/15)
合田 周平

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著者は、大学時代(戦後間もないころ)に、中村天風の「天風会」東京青年部に所属し、中村天風さんに、公私ともに可愛がられた方です。

その後、アメリカに留学し、工学博士として活躍した後、現在は電気通信大学の名誉教授をされています。

中村天風さんから直に教わったことが、記されている貴重な本です。中村天風の哲学を、中国古典の「六然訓」に見出し、それを題材に書かれています。勉強になった箇所が数多くありました。その一部を、要約して、紹介させていただきます。



・「ヴィジョン」は、日本語の「言霊」とも言える。「言霊」には、潜在意識の「潜勢力」への扉を開くシグナル(暗示力)が秘められている

・「一人でいても淋しくない人間」を目指せ。これこそが自然の道理なのだから

・われわれは、「未来からの留学生」であるとの認識から、自らの「心身を鍛える」ことが大切である

・中村天風が好んだ「六然訓」の一節とは、「超然任天」(超然として天に任す)、「悠然楽道」(悠然として道に楽す)、厳然自粛(厳然として自を粛す)、藹然接人(藹然として人に接す)、「毅然持節」(毅然として節を持す)、「泰然處難」(泰然として難を處す)

・人生の日々で、心に得意感を感じたときは、大抵の人は、たちまち有頂天になる。その結果、心の備えが緩むことがしばしばである

・マイナスの消極的な観念が、心にどっかりと居座っている状態を解放することが先決

・「時間を耕す」とは、天風哲学でいう積極的な「心の領土」を獲得する大切な言葉

・人間の独立は、第一に神からの独立であり、霊魂からの独立である。人間はひとり立つ精神を持つ者でなければならない。神に媚び、お供え物をあげて機嫌をとり、幸せが来るように、禍が来ないようにと何百回願ったところで、人間の真の独立はない

・「幸せとは何か」を考えると、それは求めるものではなく、生活した結果として見出される産物

・修行の心得とは、「修行に励む」という力んだ意識ではなく、安らかな精神のもと、天空のリズムに心身を委ねることである

・人間の心は、悲観と楽観という両方の感情を、同時に宿すことができない仕組みになっている

・「名聞」とは、人からよく思われようとする心。人に偉く思われよう、名を高めようと思う心であり、そのことを喜ぶ心。「利養」とは、欲しがり貪り、算盤勘定の生き方。「勝他」とは、人に勝とうとする心、人より優れたいと思う心

・人間の心には、「名聞」「利養」「勝他」の煩悩や欲心があり、それらを心に留めぬため、「修羅の行」に励み、一時的にも欲心を捨てることに心を砕いた。これが「厳然自粛」の実践

・「理想」を持つことは、立派に自己を活かす「宗教」である

・現実に直面したとき、自己の心に語りかける言葉を「生活のヴィジョン」に刷り込むこと

・自分を向上させようという意欲が薄くなった人は、どうしても老衰を早める

・暗示作用とは、「力を入れることを考えずに、力を働かせること」に重点を移すこと

・人生は、心ひとつの置きどころ

・自分の言葉や行動や仕事などの結果で、何か不本意なことがあったとき、それを仔細に検討すると、必ず「」か「勇気」か、もしくは「信念」の欠如が原因であることがわかる

・若い時期には、「人物づくり」の教育に勤しんでこそ、経験や知識が身につき、その人の思想や哲学が生まれる。人生の「」を自覚し、日常的な「生活態度」を心に刷り込むことである



著者は、中村天風さんの側にいて、師弟関係という間柄にありながらも、淡々と天風さんを観察していたように見受けられます。

「崇拝する」のが常識的に思えますが、そこは科学者の血が、そうさせなかったのかもしれません。本書は、中村天風という人物を客観的に記録した、興味深い本だと思います。


[ 2012/11/19 07:01 ] 中村天風・本 | TB(0) | CM(0)

『君に成功を贈る』中村天風

君に成功を贈る君に成功を贈る
(2001/12)
中村 天風

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中村天風さんの本を紹介するのは、「成功の実現」に次ぎ、2冊目です。亡くなられて40年以上経っても、中村天風さんの本は、次々に出版されています。しかし、本人の口述本は、あまりありません。

本書は、中村天風さんの講演録を主に編集されています。政財界の大物を相手に「人生の成功」を説かれた生の声が収められている貴重な本です。

役に立つこと言葉が数多くありました。一部を要約して、紹介させていただきます。



・真心の親切でもって、他人に接するには、「イフ・アイ・ワー・ヒム」(もしも、自分がこういう立場になったらどうだろう)と考えることと、「絶対に他人に迷惑をかけない」ようにしなくてはダメ

・現在患っていることを非常に恨みがましく思っているけれど、死なずに生きていることをなぜ感謝しないのか。死なずに生きているではないか

・結局、人生といっても、それを決定するものは、心。昔から言われているように、「心ひとつの置きどころ

・心がピュアというのは、尊さと強さと正しさと清らかさを失わないこと

・夜の寝際、考えれば考えるほど嬉しくなることや、思えば思うほど楽しくなることだけを、心にありありと描いて寝るようにすれば、心の垢がとりのぞかれ、命が強くなる

・月を見ても、花を見ても、仕事をしても、遊ぶのでも、すべてそれを心が認識すればこその生き甲斐。人生は何より先に、まず考えなければならないのは、心

・「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」の諺は、人間に与えられた大きな戒め。出世する人、成功する人は、その心の内容が極めて積極的

・「いかなる場合でも、心の力を落としてはいけない。終始一貫、積極的な心の態度をもって、人生に生きる」というのが、プリンシプル(原理原則)

・自分の心が積極的にならない限りは、幸福や好運は呼び寄せられない。もっとやさしく言うと、幸福や好運は、積極的な心持ちの人が好きということ

・精神文化の遅れている人は、メンタルアビリティ(心理的能力)を使おうとしないで、すぐ「神さま仏さま」と言う。これは自分自身を冒涜した卑怯な考え方

・どんな名医や名薬といえども、楽しい、面白い、嬉しい、というものに勝る効果は絶対にない

・笑いは無上の強壮剤であり、開運剤。笑顔の人のそばにいると、何となくチャームされ、多少の悩みや悲しみがあっても忘れてしまう

・自分自身の人生は、もうこれ以上ないというくらいに価値高く活かさなければ、何のために生まれてきたやら、本当にもったいない

・金だ、家だ、仕事だ、名誉だ、愛だって、みんな大切だが、命あってのもの。命以外は、しょせんは、人生の一部分

・人間の心は、人生の一切をよりよく建設する力があると同時に、人生をより悪く破壊する力もある

・人生は、生かされる人生であってはいけない。生きる人生でなければいけない

・ジンクス、易、縁起、そのほか迷信的な行為をする人は、自分に消極的な暗示をかけている

・現在の人生は、たった今から、でき得る限り、完全な状態で生かさなければならない

・心というのは、熟練した技師が、精巧な機械を手足のごとく動かすように、使わなければならない

・言葉には、人生を左右する力がある。この自覚こそ、人生を勝利に導く最良の武器である

・できる人と、できない人との相違は、要らないことに心を脅かされているかどうか



中村天風さんの言う「成功」とは、お金、名誉、出世といった俗な「成功」を意味していません。それは、限りある人生を精一杯生き抜き、人間の完成を目指すことを意味しているように思います。

人間の完成を目指すためには、積極的な心が不可欠です。本書を読めば、心が積極的になり、成功の芽が出てくるのではないでしょうか。


[ 2012/08/20 07:00 ] 中村天風・本 | TB(0) | CM(0)

『成功の実現』中村天風

成功の実現成功の実現
(1988/09)
中村 天風

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この本は、1冊10000円を超える値段です。今から20年前に買いました。独立する前に、自分を鼓舞するために買ったように記憶しています。

とりあえず、今も何とかやっていけているのは、この「成功の実現」を読んだおかげかもしれません。

3回ほど読みましたが、この15年間ほどは手もつけずに、本棚に飾っていました。久しぶりに読んでみましたが、さすが、大物の中村天風さんだけあって、成功するための基本、王道が書かれているように感じました。

中村天風さんを師とする人は、原敬元首相、東郷平八郎元帥、宇野千代さんなどの門下生だけでなく、松下幸之助氏や京セラの稲盛和夫氏など、大物が多数います。

今から20年前に鉛筆で線を引いた箇所を中心に、我が身を振り返り、役に立ったと思えたところが30ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・どこまでもまず人間をつくれ。それから後が経営であり、あるいはまた事業である

生命の力を増やすのは、第一が「体力」、第二が「胆力」、第三が「判断力」、第四が「断行力」、第五が「精力」、第六が「能力」。この六つの力の内容量を豊富にしていない限りは自分の人生をものにすることはできない

・健康も長寿も運命も成功も、人生の一切合財のすべてが、積極的精神で決定される

・自分の現在の思っていること、考えていることを、積極的か、消極的かと第三者の立場で厳密に検討するという気持ちが必要

・ほかの人の言葉や言動のなかの消極的なものに自分の心を同化せしめないこと

・現在も永久にも、自分がやましい気持ちを感じないというものこそ、本心良心のあらわれ。自分の言葉や行いは常に本心良心そのままという気持ちを心がけの第一とされたい

消極的な言葉を使わないようにするには、不平不満を口にしないこと。不平不満のある人は、始終上ばかりを見て、下を見ないでいる。自分だけが一番不幸な人間と考えている。この考え方から出てくる言葉は、未練、愚痴、価値のない世迷いごとだけ

・お前の生き方に誤りがあるぞと自覚を促すために、病や不運が与えられたとしたら、これは大きな恵み。そう考えて、心を積極的に振り向けかえる。人生を完全にする秘訣はただもう自分の心の置き方を変えるだけ

・心の態度というのが、人生の全体に対して、建築物で言えば、土台同様の重要な関係を持っているということ

・身に病ありしといえど、心まで病ませるな。運命に非ありしといえど、心まで悩ますな

・人間の頭で考えた事柄がいろいろの設備や組織になって、この世の中が進歩してきている。人間は、この世の中に、宇宙本来の面目である進化と向上に順応すべく出てきたと思う

・消極的な観念要素が心の奥底に溜まると、アンテナに相当する、感性性能の調子が崩れる。その調子が崩れると、心の働きの上でなくてはならない意志の力が弱ってしまう

・お風呂に入って、肉体の垢、汚れをとるように、毎晩、眠りにつく前に、心の垢、汚れをとる、心の中のお掃除習慣をつけること

・良きにつれ悪しきにつれ、考えたことはそのまま感光度の高いフィルムの入ったカメラのシャッターを切ったと同じ、パーッと潜在意識に刻印されてしまう

・憎い、腹が立つ、悲しい、いや、まいった、助けてといった消極的な意思表示を言葉で出さないように。明るく朗らかで、生き生きとして勇ましい感じを、自分も感じ、人も感じるような言葉以外はしゃべらないように

・自覚というのは自然承認。理屈を考え、理由を説明する必要もなく、「ハハァーン、そうか」と心がうなずくのが自覚。理解というのは人為承認。教育がそれ。偉くなる奴は、理解を自覚のほうへ移す分量が多いがための結果

・今まで自分と思っていた肉体は、自分ではない。自分という気体が生きるための必要な仕事を行う道具。心またしかり。気が生きるために体というものをこしらえ、心というものをこしらえた

・肉体は自分でない、心も自分でないという自己意識を常に自分から失わないでいると、勇気凛凛として、いかなる場合があっても恐怖なんか出てこない

・正義の実行を行う場合の本心良心は気が動く心の能動。宇宙本源のあり方は真善美いわゆる本心良心だから、汚れもなければ濁りもなく、ありのまま、そのまま

・自分自身を常にもう一人の自分で守らせていくような考え方で生きていくこと

・正しいことをしている人間に正しからざる出来事の生じるはずがないという信念でいると何も考えなくていい。無我無念のとき、自在境というものがあらわれるもの

・心は思う仕事をする道具。心は思ったり、考えたりする以外に仕事をする力がない

もう一人の自分が脇で見ている特定意識を自分の心とする習慣がつくと、どんな出来事に直面しても心の動乱が生じない。泰然自若として処置することができる

・人間の多くが、気が散りやすいのは、自分では気づかないうちに、己の心の中に不必要な雑念や妄念や邪念がたくさんたまっているから

・心は自分の生命を監督するために働かさなければならないのが、感情や感覚の奴隷になってしまう。そうなったら、人間は惨め以上の哀れなものになってしまう

・自分の心を常にはっきり使う習慣をつけることに努力すれば、三年、五年の後には、自分でもびっくりするような霊性心意識という、思ってもみなかった高級な意識状態が自分の心の中から発動するようになる

・「真・善・美」というのは、「真」とは「誠」。うそ偽りのない、筋道の乱れていないのが「誠」。「善」とは「愛情」。普遍的な気持ちで愛する「愛情」。「美」とは「調和」。消極的な気持ちになると「誠」と「愛」と「調和」の気持ちから離れてしまう

・想像力を応用して、心に念願する事柄をはっきり映像化することによって、絶えざる気持ちでぐんぐん燃やしていると、信念がひとりでに確固不抜なものになる。つまり、思っていること、考えていることが土台となって信念というものができてくる

・意識には実在と潜在の二つがある。実在意識は思考や想像の源、潜在意識は力の源という役割を行う。潜在意識は、実在意識の思念するものを現実化するよう自然に努力する



「成功の実現」は、中村天風さんが昭和33年~43年に講演されたテープを編集したものです。

現在、巷にあふれている自己啓発本の原点となる書です。この本を読めば、他の自己啓発本が小さく見えてしまうから不思議です。

読んでいるだけで、心の垢や汚れがとれてくるように思います。成功を目指す方にとっては、心の拠り所として、貴重な1冊になると思います。
[ 2010/05/14 08:22 ] 中村天風・本 | TB(0) | CM(1)