とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『悪の引用句辞典』鹿島茂

悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)
(2013/07/24)
鹿島 茂

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著者の本を紹介するのは、「悪女の人生相談」「セックスレス亡国論」などに次ぎ、4冊目になります。

本書は、古今東西69人の名言名句を引用しながら、その言葉について考察するものです。著者の深い人間観や社会意識を知ることができました。その一部をまとめてみました。



・愛国心には、非難することが誰にもできない不可侵性がある。ゆえに、これを言い立てて、その後ろに身を潜めるなら、悪心や利己心を隠し、人の非難をかわす有効な盾として機能する。厄介なのは、真の愛国心と偽の愛国心とを区別する基準がどこにもないこと

・叱るときには、心から発する怒りが不可欠だが、その怒りが感情に任せたものであってはならず、怒りを理性的にコントロールする能力が要求される。だから、叱るよりも、優しくしているほうが、はるかに楽

・政治家を「勇ましい」とか「臆病」だけで判断することほど危険なことはない。臆病な保守主義者であることのほうが、はるかに勇気を必要とすることだってある

・人が(とくに身分の上の者が)他の人をなんだかんだと理由をつけて叱責するのは、そんな理由は見せかけで、本当は「おまえが嫌いだから嫌い」式の「好き嫌い」が思いのほか多い

運と気質が世を支配する。突然、運が向いてきて、これをうまく掴めば、万事好転すること間違いなしと思えるときでも、その人の気質に欠点があると、せっかくのチャンスが台無しになってしまうこともある

・プロパガンダは資本家階級や労働者階級よりも、知識人階級に向けてしなくてはならない。なぜなら、前者は利害以外には動かないのに対し、後者は利害だけではなく「道徳的」価値観で動くから

・真のエリート教育とは、エリート教育を馬鹿にすることができる総合的エリートを育てることにほかならない

・明治の急激な文明開化と戦後の驚異的復興は、すべて日本人の「いいな、いいな」のなせる術であった。しかし、羨望の強さは容易に物欲の強さに転じる。その結果、今日広く観察されるところの物欲全肯定主義となって現れ、「分相応」の言葉は死語となった

アメリカン・マインドにおいて、金儲けの道は、そのまま栄光の道に通じる道と信じられているがゆえに、世の尊敬と称賛を集めるために強欲になるという逆転現象が起きる

・アメリカには王侯貴族がいないため、金銭獲得の努力への軽蔑が生まれなかった。逆に、自助努力によって蓄財を成し得た者こそが、アメリカ的エリートであるという共通認識が生まれた。拠るべき規範としての「」がないところでは、「金銭」が規範となるしかない

・「人が求めるのは、戦争の危険でも、職務上の苦労でもない。われわれの不幸な状態から、われわれの思いをそらし、気を紛らせてくれる騒ぎを求めているのである」(パスカル)

・自我と自我は対立して軋轢を生むという西欧的「前提」を直視せずに、対立が起こりそうだと問題を先送りし、軋轢を避けてきた。あげくに、「面倒くさいことには一切かかわりたくない」というのが社会一般の「思想」になり、これが今日の日本の危機を招いている

・知識人にとって、自分と家族の損得しか考えない大衆の原像を、自らの思想の強度の試金石として織り込んでいくことが絶対に不可欠

・「判断力とは、集中力と冷静さをもって、現実をそのまま受け入れることのできる能力、事物と人間から距離をおくことのできる能力のこと」(マックス・ウェーバー)

・消費者が自己実現としての消費を行うには、金を稼ぐこともさることながら、そのための時間もまた作り出さなければならない。要するに、「面倒くさい」ことを極力省力化しない限り、消費にエネルギーを傾けることはできない

・ヨーロッパの王侯貴族の間では、親から子を切り離さない限り、教育は不可能と考えられていた。学校教育とは、親からの隔離であるという観点から、教育を再考してみるのも悪くない

・人間というのは、どんなときも彼我の「差」を激しく意識して、その「差」に生きがいを感じたり、嫉妬したり、あるいは絶望したりするもの。つまりは、本質的に、人間は「差」で生きる動物なのである



本書は、人間と社会(日本人と日本社会)の本質と構造を見抜いている著者の力作です。

古今東西の知識人の引用句を借りていますが、著者の思想の集大成のように感じられました。著者のオリジナリティあふれる書です。


[ 2014/03/17 07:00 ] 鹿島茂・本 | TB(0) | CM(0)

『パスカル「パンセ」 (100分de名著)』鹿島茂

パスカル『パンセ』 2012年6月 (100分 de 名著)パスカル『パンセ』 2012年6月 (100分 de 名著)
(2012/05/25)
鹿島 茂

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本書は、NHK・Eテレの100分de名著で放映したものを、鹿島茂さんがまとめた書です。

パスカルは、「パスカルの定理」や「ヘクトパスカル」などの数学者、物理学者として有名ですが、「人間は考える葦である」「もしクレオパトラの鼻が・・・」などの思想家として、もっと有名です。

本書は思想家、哲学者として、パスカルが「パンセ」の中で、どのような考えを語っているのかについて言及しています。勉強になった点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・私たちは、快楽に到達したとしても、そのために幸福になることは決してない。その新しい状態にふさわしい別の願望を持つに至るから

・自分は心の底から休息を欲していると思い込んでいるのだが、実際に求めているのは、興奮することなのだ

・真実を伝えるのは、伝えられた人にとっては有益のはずが、たいていは伝える人にとって不利に働く。真実ゆえに憎まれることになるからだ

・叱責という苦い薬は、相手の自己愛にとって苦いことに変わりはない。苦い薬は飲み込んだら嫌悪感でいっぱいになる。そして、たいていは、その薬をくれた人に対して、ひそかな恨みをいだくようになる

・人は自分の欠点を、自分と他人の目に触れないよう、覆い隠そうとして全力を尽くす。その欠点を人から指摘されることもいやだし、人に見破られることも我慢できない

・自我は自分をすべてのものの中心にしようとする点において、それ自体で不正である。また、自我は他人を従わせようとする点において、他人にとっては不愉快な存在となる

・私たちは、他人の頭の中で、イマージナルな生活をしたいと思っている。そのために、見てくれに気を配る。私たちのイマージナルな存在を他人の頭の中でより美しくし、そのままに保ちたいと考えて、いつも一生懸命働き、本当の生活をなおざりにしてしまう

・私たちは、ひどく思いあがった存在だから、全世界の人から知られるようになりたい、いや、この世から消えたあとでさえ、未来の人に知られたいと思っている。それでいながら、周囲の5、6人から尊敬を集めれば、それで喜び、満足してしまうほどに空しい存在

・批判を書いている当人も、批判が的確だと褒められたいがために書く。また、その批判を読んだ者も、それを読んだという誉れが欲しい

・人は精神が豊かになるにつれて、自分の周りに独創的な人間がより多くいることに気がつく。しかし、凡庸な人というのは人々の間に差異があることに気づかない

・好奇心とは、実は虚栄心にほかならない。たいていの場合、人が何かを知りたいと思うのは、あとでそのことを誰かに話したいと感じている

・真の雄弁とは、雄弁を馬鹿にするものだし、真の道徳は道徳を馬鹿にするもの。哲学を馬鹿にすることこそが、真に哲学するということ

・人を効果的にたしなめ、誤っていることを教えるには、その人が真に見えるものを、別の方向から見ると誤っている事実を発見させてやること。そうすれば、その人は満足する。自分が誤っていたのではなく、全方位的に見る術を欠いていたにすぎないと気づくから

・不幸の状態から目を背けさせ、考えないでいられるようにしてくれて、気を紛らわせてくれる喧噪こそが求められている

・男に必要なのは、カッカと頭に血の上ること、および、賭金を手に入れれば幸せになれると思い込んで自分を欺くこと。要するに、熱中する対象をつくりだすことが目的なので、自分がつくった対象に対して、欲望や怒りや恐れをかき立てることができればそれでいい

・王位をはく奪された王でない限り、王でないことを不幸に感じない

・私たちの尊厳は、すべてこれ、考えることの中に存する。その考えるところから立ち上がらなければならないのであり、私たちが知らない空間や時間から立ちあがるのではない。ゆえに、よく考えるよう努力すること。ここに道徳の原理がある

・流行は、楽しみをつくるのと同様に、正義もつくる



17世紀にパスカルは、「人間は一本の葦にすぎない。自然の中でも最も弱いものの一つである。しかし、それは考える足なのだ」という言葉を遺しました。

この言葉は、人間にとって「考える」とは何か、人間社会において理性とは何かを探求するものです。現代社会において、もう一度、考えるとは何かを問うことが必要なのかもしれません。


[ 2013/07/19 07:00 ] 鹿島茂・本 | TB(0) | CM(0)

『セックスレス亡国論』鹿島茂

セックスレス亡国論 (朝日新書)セックスレス亡国論 (朝日新書)
(2009/07/10)
鹿島 茂斎藤 珠里

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著者の鹿島茂氏は、現在、明治大学で仏文学の教授をされており、積極的に執筆活動もされています。著書を紹介するのは、「悪女の人生相談」に次ぎ、2冊目です。

著者の考え方は、人間の欲望や本質を見据え、それを基に、経済や芸術を論じられるため、独創的なものが多く、知的刺激を受けます。

今回のテーマ「セックスレス」は、なぜそうなったのか?何が要因なのか?以前から気になっていました。それについて、この著書で、独自の見解が綴られています。

非常に興味深く読むことができた箇所が30ほどありました。「本の一部」ですが、これらを紹介したいと思います。



・贅沢したいという気持ちよりも、面倒くさいことはしたくないという気持ちの方がはるかに強い。それが人間の本性のかなりの部分を占めている。現代の資本主義のほとんどは、この面倒くさいことの代行業で成り立っている

・恋愛し、相手を説得してセックスまで持っていくのは、男にとって、非常に面倒くさいこと。放っておくと、男はこの面倒くさいことをしないで済ませようとする

・かつては、社会が共同体の掟で無理やり結婚を強いていた。この掟がなくなったため、面倒くさいし、コストもかかるからと、セックスはもういいやという男が激増している

・面倒くさいことを進んで引き受ける代わりに金はもらうよという代行業者だけが勝者となる。面倒くさがっていると、資本主義の餌食になる。手間ひまを惜しむか惜しまないかが、人生の分かれ道

・ドイツの経済学者ゾンバルトは、「恋愛と贅沢と資本主義」の中で「恋愛が資本主義を発展させた」というテーゼを打ち立てたが、奢侈と恋愛が資本主義を引っ張るという理論が当てはまったのは、日本では、80年代のバブル期まで

・男たちは、一生懸命頑張って金を稼ぎ、それを使ってモテようと努力するよりも、面倒くさいことをやりたくない方に走ってしまった。現状では、ゾンバルトの考えた資本主義の仕組みは、一部の勝ち組にしか適用されていない

・どこの国の文化にも必ず相聞歌の類がある。万葉集も現代語訳したら、露骨に言えば、「一発やらせろ」に対して、「イヤです」「OKです」ということになる

・成功した宗教はどこも、疫病と近親婚を避けるため、遺伝子のバラエティを確保する強制的カップリングを行うかたわら、非生殖的なセックスを全面禁止した。人間ではなく、神様だったら禁止事項を命じても言うことをきく

・家督相続できない次男、三男が大都会に出てきて、社会的ポジションと女に対する欲求不満を爆発させると革命が起きる。イギリスの名誉革命、フランス革命は、あぶれた次男、三男が起こした。現代のイスラム原理主義の反乱も、この人口爆発理論で説明できる

男性識字率が50%を超えた(下層中産階級の上まで中等教育)とき、革命が起きる。しばらくして、女性識字率が向上(ローワー・ミドルも娘に教育)すると、出生率が一気に下がり、社会はおとなしくなって、革命は起きなくなる

・「男性識字率の向上、女性識字率の向上、出生率の低下、この三つの過程を経ながら、世界すべての文明は同じパターンを描く」は、エマニュエル・トッドの理論

・お見合い拒否は女性サイドから出てきた。1970年代後半から、女性の大学進学が当たり前になると同時に、地域共同体と血縁共同体が崩壊し、「世話焼きばばあ・じじい」がいなくなってしまった

・悲しいかな、日本には、恋愛を促進するような社会的状況がない。恋愛自由経済になったのに、恋愛証券取引所がないようなもの

・運動会、社員旅行、社員ハイキング、さまざまな形の出会いが企業で用意されていた。短大卒の一般事務で重要なのは、容姿端麗の「社内結婚させるための女子社員」であったが、フェミニズムの攻撃対象になり、すべてが壊れた

・1970年代後半に「恋愛至上主義」が登場して、自由に好きな相手を探すことができるようになったが、変な方向に進み始めた。恋愛が女の見栄と結びつき、男からどれだけモテるかの「女のモテ競争」になった。恋愛が男女の戦いから女同士の戦いにシフトした

・女の子との会話の機会を6年間奪われ、女の子に臆病なモテないエリート、最初からモテようという意志を欠いたエリートが男子校で大量生産されてきた

・自由恋愛主義が一般的になってくると、「やりまくる男」と「風俗へ行く男」と「全く何もやらない弱者」と、男の三極分解が始まった。そこに恋愛弱者の福音として、「平凡パンチ」が現れた

・世界で最初にポルノ解禁したのは、北欧のスウェーデンやデンマークなどのプロテスタント国。それから、西ドイツ、次いでアメリカが解禁。プロテスタントが先行。つまり、結婚しないとセックスできない国だからこそ、ポルノが求められた

・女の子に、男選びの条件で、金、ルックス、学歴、背丈、性格の5項目から、譲れない項目を一つ選べと言ったら、「別に大金持ちでなくてもいいけど、最低限の贅沢はできる程度のお金はないと」と皆が言う。金欠男OKという女は一人もいない

・バブル崩壊以後、大モテはしないが、結婚するときには、きれいでかわいいお嫁さんがもらえるという恋愛ミドルクラスが消滅。一握りの大モテ成り金と、それ以外の非モテ貧乏オタクという二極構造になってしまった

資本主義の原理だが、ごく少数の大金持ちを相手にして大金を巻き上げようとするよりも、多数の貧乏人から広く浅く搾取する方が儲かる

・金持ちリッチビジネスは、労働集約的だから大変。反対に、多数の貧乏人を相手にするのは、資本集約的だから、資本投下さえできれば、うまくいく

・醜男は子孫を残せないから絶滅し、モテ男だけが勝ち組になる。高学歴の女たちは、男から敬遠されるので、頭のいい遺伝子を持つ女性も子孫を残せない。今の傾向が進むと、未来の日本人は、ルックスは少しよくなるが、頭が少し悪くなる

・日本の村落共同体で、夜這い若衆宿のあるところでは、セックスの快楽は、つらい労働を続けていくのに欠かせないドリンク剤のようなものであった

・ヨーロッパの結婚制度の根幹には、親元からの持参金がある。世継ぎの男の子を産む義務を果たすと、人妻たちは、夫に気兼ねなく、経済的にも自由に恋愛ができた

・禁欲的な宗教は、性欲の強い文化圏で生まれる。インド人は、カーマスートラにあるように性欲の強い民族だから性欲の減却を説く仏教が広まった。西洋人もコーカサス人種も性欲が強いからキリスト教が広まった

・「節婦は二夫に見えず」という武士道社会の掟は、裏を返せば、日本の女は片っ端から男をつくってしまって大変ということ。掟は非人間的だが、その背後にある考え方は、人間的考察に貫かれている

・日本は、大昔から、「セックス謳歌」で、性愛賛歌の洗練された文学が生まれた。恋愛とセックスが初めから合体していたという、世界的に見ても珍しい国

・江戸は独身都市だった。大量の独身者のために、考案されたのが浮世絵で、日本で最初のオナニー産業。性教育的な面もあって、娘が結婚するときに浮世絵を渡し、性生活の知恵を授けた

・上野の裏手に、現在ラブホテル街で有名な鴬谷があるが、江戸時代は、陰間茶屋と呼ばれる、オカマ趣味の男が、若い男を買うためのホテル街。やがて、陰間茶屋には、美少年が多いというので、人妻がやってくるようになり、人妻用の同伴旅館街となった

・ある程度禁欲を自分に強いることがないと、間違いなく堕落する。克己心をなくしてしまう。しかし、資本主義の側から見ると、克己心を持たれてしまうのは最悪。「面倒くさいものが嫌い」な人間を増やさない限り、自分たちの未来はない

・米軍でも英軍でも、性欲を我慢させすぎると、軍隊の中で爆発が起こって反乱になるから、適当に女郎屋に行かせて発散させてやる。ただし、戦闘が始まる前は、精液をため込ませる。人間が怒るのは、セックスの禁欲と食い物の禁欲を強いられたときの二つ



現代の資本主義が抱える問題点を、「セックスレス」を通して、宗教、歴史、思想、芸術、風俗、社会、経済の面から解き明かしてくれる、面白い本です。著者の博覧強記に驚くばかりです。

特に、今後の日本経済がどう変化するかのヒントがいっぱい詰まっているように思いました。そのとき、われわれはどうしたらいいのか?も教示してくれます。

経済学の本より、ためになるかもしれません。
[ 2010/02/19 09:14 ] 鹿島茂・本 | TB(0) | CM(0)

『悪女の人生相談』鹿島茂

悪女の人生相談 (講談社文庫)悪女の人生相談 (講談社文庫)
(2008/06/13)
鹿島 茂

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著者の鹿島茂氏はフランス文学者として有名です。大学教授の傍ら、テレビや雑誌などのマスコミにも登場されています。

先々月、NHKの「皇后ジョセフィーヌナポレオンの愛した本当の女」を見て、番組に出演されていた氏の話が面白く、改めて興味を持ちました。

フランスに造詣が深いだけあって、恋愛論や女性観に、日本の学者では考えられない、独特の感覚を持っておられます。

この本は、著者の鹿島茂氏が、女性雑誌の人生相談コーナーに寄せられた相談の名回答を編集したものです。

女性だけでなく、男性も大いに参考になります。恋愛を武器にして、現実的に生きていくための処世術が満載です。

その処世術の「本の一部」を、25ほど紹介したいと思います。


・男というものは見かけよりもはるかに単純。コスメとヘアメイクという「覆面」をして、ウッフンのムードが演出されていれば、ボーイフレンドは一線を越えるかも

・エロというのは、あまりエロのありそうもないところで見せるのが一番効く。「隠微なエロティシズム」を発散させること

・ナポレオンをたらし込んだ年上女ジョセフィーヌは、浮気が原因で、前の亭主に離縁され、女子修道院に閉じ込められたとき、恋のベテランである年増女から、これはと思った男をしっかりつかまえて放さないフェロモン誘導テクニックを伝授された

・自分からアタックして、恋を実らせた場合、男は必ず強烈な達成感を味わう。男に達成感を味わわせる女が恋に勝つ。なんとしても相手の口から「好きだ」と言わせなければならない

・ルックスやスタイルは男にモテる絶対条件ではない。ところが、ほとんどの女性はこのベクトルを見誤り、高級ブランド品を買いに走ったり、エステに通ったり、ダイエット、美容整形に走り、ほかの女に競り勝つ方法ばかりを追求したがる

・恋愛よりももっと大切なものがあるのではないかと考える「恋愛偏差値」が低い人には見合い結婚がおすすめ

・恋愛は苦手でも、結婚して子供はつくりたいという女性がいても、少しもおかしくはない

・現代の日本では、一人の男の子がごく自然に育つと、自動的にオタクになってしまうような社会・教育システムが働いている。オタクを回避していたのでは、男がいなくなってしまう。イイ男のオタクとの出会いは、尾行&逆ナンでもつかめる

・世の中には、長らく趣味に生きたために、彼女いない歴十何年の「モテない男」がわんさかいる。お見合いパーティーに出てくる男よりも、はるかによい「物件」(収入、学歴、美男度、背丈、性格など)が揃っている。出会いの場は、職場以外の「趣味の場」を狙うべき

・女の子がケガをしていたり、病気であったり、あるいは幼かったりすれば、男は何もしなくても「強者」として振る舞うことができ、一方的優越感を抱くことができる。弱い男はそういう女の子を選びたがる

・正常な男は幼児性の抑圧に成功した人、ヘンタイ男はその抑圧に失敗した人だが、抑圧が100%成功することはありえない。一見、普通に見える男でも多少は幼児性を残している

・オタクとの結婚生活で最大のメリットは、オタクは浮気しないということ。女あしらいのうまい男は、かならず浮気する。自分をただ一人の女性と思い定める夫を持つ方が、女にとって、どれほど幸せかわからない

・ナポレオン時代の名外交官タレーランは、外交の秘訣は「相手が言ってほしいと思っていることをこちらで先に言い、こちらで言ってもらいたいことを相手の口から言わせること」と喝破しているが、恋愛もこれと同じ

・告白は「させる」もの。「好き」という言葉は恋愛というゲームにおいては絶対の禁句。「好き」と言った方が負け、言わせた方が勝ちということになっている

・男の気持ちがこちらを向いてきたなと思ったら、頃合いを見計らって、相手を突き放すようにすること。一番いいのは不在になること。人間は、目の前にないものを美化する。「不在の術」をフルに活用し、愛を育てるのに役立てる

・男の口から「好き」と言わせるように仕向ける。ウッフンという仕草や態度、男のナルシズムを引き出す褒め言葉、さりげない誘いの言葉、それらを総動員しても、自分から「好き」と言わないようにする

・セックスは役人の許認可権と同じく、一つの大きな権力。相手が十分なる対価を用意したと判断すれば、させてあげてもよい。その反対だったら「させてやんない」。この使い分けが上手な女性だけがイイ男をゲットできる

・若い男は、本能的に、年上の女のほうがセックスさせてくれる確率が高いことを察知しているから、年下の男をつかまえることは、年上の男をつかまえるよりも簡単

・年下男をつなぎとめるには、完全な依存症、つまり、あなたなしでは何一つできないような体質にしてしまうこと。言いかえれば、彼をマザコンにして、あなたがママになってしまえばいい

・煎じ詰めれば、結婚は金だが、純粋に金という基準だけで男を選ぶ女性は少数派。最低限、生活水準が現状維持できれば、結婚に許可証を発行する心の持ち主が大半

・「高学歴」「高収入」「ルックスよし」「背高し」「性格よし」の5項目を二分法で処理しても、すべてに適する好条件の男などほとんどいない

・自由業、それもアート系の職業の男性は、女性の間で人気があるが、アーティストというのは、本当に面倒くさいもの。アーティストの妻で、幸せになった人など、滅多にいない

・大きく歳が離れた男とのつきあいは、期間限定にすべし。どんなにストックが豊富な男でも永遠に与え続けることはできない。いつかは「在庫切れ」の瞬間がやってくる

・不倫の男選びは金より文化を基準にする。金は文化に化けないが、文化は金に化ける。あなたが人生を切り開いていくための財産となる



若い時は、女性の現実的側面をあまり見たくないと思っていましたが、この歳になると、著者の言いたいことが、よくわかります。

若い時に、大人の恋愛術を駆使しすぎるのは考えものですが、必要とあらば、上手に使っていく必要はあると思います。

女性も男性も、大人になるために必要な1冊ではないでしょうか。



[ 2009/12/10 07:55 ] 鹿島茂・本 | TB(0) | CM(0)