とは学

「・・・とは」の哲学

『社員が「よく辞める」会社は成長する』太田肇

社員が「よく辞める」会社は成長する! (PHPビジネス新書)社員が「よく辞める」会社は成長する! (PHPビジネス新書)
(2012/07/19)
太田 肇

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太田肇さんの著書を紹介するのは、「認め上手」「見せかけの勤勉の正体」などに次ぎ5冊目です。

著者は、日本社会に合ったマネジメント術を真面目に研究されている方です。今回も、眼からウロコの実例を書き記されています。それらを一部、紹介させていただきます。



・上司に忠実で組織の論理を重んじるばかりに、会社の幹部から一般社員に至るまで、視野が内向きになり、世論や顧客の視点といった「外の目」に驚くほど鈍感になってしまった。しかも、彼らは人材が均質なので、目の付け所も、考えることもみな一緒

・一つの会社で働き続ける呪縛から解放された若手社員は、会社や上司とも、つかず離れずの距離を保とうとする。金魚すくいの金魚と同じで、囲い込もうとすると、自律性の危機を感じて遠ざかる。逆に、距離をおいて接すると、安心して心を開き寄ってくる

・近年問題にされている若者の依存的な態度は、「行き過ぎた管理」や「囲い込み」と裏腹の関係にある。それでは、いつまでたっても、自立した大人同士の関係は築けない。思いきって、管理→依存→管理の悪循環を断ち切ることが必要

・企業にとって、一番危険なのは、能力を持て余した人材が会社の中にとどまり、会社に「ぶら下がる」こと。「この会社で適当に働いて残りの生活を送ろう」といった「隠れぶら下がり」が、会社の足を引っ張る

・「仕事を見つけるには、親密な友人よりも、関係が薄い知り合いのほうが助けになる」と、アメリカの社会学者グラノヴェターは「弱い紐帯」仮説を提示した。親密な友人は、情報が自分と似通っているのに対し、薄い関係の人は自分が持っていない情報があるのが理由

・日本では、同期意識、序列意識が強いので、社員の中から人材を抜擢すると、人間関係がギクシャクする。ねたまれたり、足を引っ張られたりして、抜擢された社員がつぶれてしまうケースもある。だから、「優秀な人材は外部からスカウトしたほうがよい」という

・IT革命は、起業のパターンや環境を大きく変えた。情報ソフト系の仕事なら、建物はいらないし、たいした機械や設備も必要ない。自宅やオフィスの一室とノートパソコン一台あればいい。しかも、資本金1円から、1人で株式会社を設立できるようになった

・上り調子の人が多ければ、組織に活気が出るが、下り調子の人が多いと、組織内の空気が悪くなり、活力もなくなる。課長から部長に昇進した人がたくさんいる職場と、課長から平社員に降格した人がたくさんいる職場を比べたら、一目瞭然

・自衛隊の任官制度には、期限のない任官と期限付き任官の二種類がある。期限付きの場合、二年ごとに雇用が更新される。任官中は給料をもらって資格を取得できるし、就職先の世話をする制度がある。退官後は、民間企業に就職したり、自分で事業を興したりする

・5年~10年の実績を積んだ人材は、ある意味で「品質保証」された安心できる労働力。とくに即戦力が不可欠な業種や新卒採用で優秀な人材を採りにくい企業にとって、彼らは「狙い目」

・急成長する、あるラーメン店では、本社から独立して大丈夫と認められたら、店の純利益の15カ月分で店を買い取ることができる。独立の際に、営業権、店舗、厨房機器などが会社から譲渡される。独立を目指す社員にとって、最短3年という期間の短さも魅力

・大企業で働く派遣社員の中にも、将来正社員として採用されるのを目標にしている若者が混じっているが、彼らの働きぶりは際立っている。鳥のヒナが巣立つときの姿を連想する。「巣立ち」にはパワーが秘められている

・人間は、欲しいものが、がんばれば手に入るとわかったときにやる気を出す。「報酬や目標の魅力」にしても「期待」にしても、客観的な値ではなく、あくまで本人の主観、つまり本人がどう考えるか

・あるメーカーでは、社員の身分を「社内独立」へ切り替えた。「社内独立」した人の報酬は、製品ごとに原価計算される。仕事は「独立」前と同じだが、会社にいながら稼げるようになり、モチベーションが著しく上昇し、個人所得も1.4倍に増大した

・部下に「自立能力」をつけさせるには、「外の世界をわからせる」「強みを生かさせる」「実戦を積み重ねさせる」、三つのステージが必要。この過程には、「がまん」や「しんぼう」も必要になり、それを精神的に支えるのは、やはり将来の「夢」である

・将来辞めていく社員に対して、将来性にかけて、「投資」する人事戦略があってもよい



成長しようとする企業は、一般的なマネジメント戦略や人事戦略ではなく、自分の会社や従業員に合った戦略を考えださないといけません。

本書には、そういった日本の風土に合った急成長企業の例が載せられています。参考にできるところが多々あるのではないでしょうか。


[ 2013/01/16 07:02 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『公務員革命:彼らの〈やる気〉が地域社会を変える』太田肇

公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書)公務員革命: 彼らの〈やる気〉が地域社会を変える (ちくま新書)
(2011/10/05)
太田 肇

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太田肇氏の著書を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」「認め上手」「見せかけの勤勉の正体」に次ぎ、4冊目です。

太田肇氏は、評価や表彰のしくみなど、お金以外で人のやる気を高め、成果を上げる研究をされている大学教授です。

今回の本は、今、最もやり玉にあげられている公務員のやる気をどう高めるかの研究です。

公務員の数は、国家公務員。地方公務員、公社、公団、政府系企業、公営企業を含めると、その数は500万人以上で、日本の雇用労働者数のほぼ10人に1人の割合になります。

やり玉にあげられるのは、「給与が高い割に、働きが悪い(お値段以下)」と国民のみんなが判断しているからです。そのためには、給与を下げていくことはもちろん、もっと働いてもらわなくてはなりません。

この本は、どうすれば、公務員にもっと働いてもらうことができるのかを主眼に置いています。興味深く読めた箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・海外の自治体では、個々人の成果によって給与や賞与に差をつける成果主義を採用しているのは、主に管理職だけ。非管理職に対して採り入れているところは見当たらない

・満足をもたらす要因には、「達成」「承認」「仕事そのもの」などが含まれ、不満をもたらす要因には、「給与」「上司との人間関係」「作業環境」などが含まれる。給与は、「やる気」をもたらすというよりも、不足しているときや不公平なときに不満をもたらす性質のもの

・「時間をかけ遅くまで残業」「休暇をとらない自慢」「忙しそうな素振り」「必要のない仕事を増やす」「頻繁に長時間の会議を開く」「市民に慇懃無礼に応対」「冗長な文章を書く」「資料は質より量を重視」。やる気をアピールする「やる気主義」が役所に蔓延している

・日本の役所組織には、欧米のような厳密な職務概念が存在しない。その結果、成果主義が「やる気主義」に変質している

・公務員が「お役所仕事」「事なかれ主義」「休まず、遅れず、働かず」などと揶揄されるのは、真面目に努力するが、ある水準以上になると、やる気が発揮されない「やる気の天井」が存在するから

・「お金持ちになりたい」「他人より裕福な暮らしがしたい」という動機で、公務員になり、働いている人は少ない。いわゆる「経済人」ではない。このことからも、公務員に対する成果主義の導入は、不満や不公平感をもたらすだけで、積極的な動機づけにならない

・「住民のために尽くしたい」「地域の発展に貢献したい」という思いは、地方公務員の特徴である「ローカル志向」と関係している。彼らは、行政区域内のことには強い関心を抱くが、区域外のことには無関心な人が多い

・公務員の場合、仕事での貢献と報酬が密接にリンクしていないため、金銭や地位といった報酬(外的報酬)を実力で獲得することが難しい。それを補償する形で、内発的動機づけ(達成、仕事そのもの)が強くなる

・公務員の出世意欲が強いのは、役職以外に「偉さ」を表わすシンボルが乏しいのが一因。成功や有能さを示す機会が他にあれば、役職へのこだわりは薄れる

・「やる気の天井」を破るためには、受け身の「公僕」意識から一歩踏み出し、自分が仕事の「主役」であるという自覚を持たすことが必要

・「やる気の天井」を突き破った「超やる気」スーパー公務員には、「1.自律性」(トップから仕事を一任、自由な仕事、専門性)「2.承認」(役所内での目立つ存在、住民からの注目)「3.」(実力次第でさまざまな仕事につけて活躍できる可能性)がある

・自律性には、「仕事の自律性」(自分の裁量や判断の余地)、「行動の自律性」(勤務時間や休息、仕事の場所の自由決定)、「キャリアの自律性」(携わる仕事、働く職場、伸ばす能力、進む道の自己決定)がある

・近年、管理監督責任の強化、仕事の「見える化」が叫ばれ、役職のない人は公式な権限がなく、自己決定できなくなった。そして、細かく仕事をチェックされるようになった。特に役所では外部競争がないので、行きすぎた手続き重視に歯止めがかからない

・役所の管理職の数は、合理性と無関係な処遇の論理によって決まる。財政の悪化で新採用職員が減る一方、定年延長によって中高年職員は増えた。彼らにそれなりの役職を与えた結果、暇になった管理職が増え、管理職過剰による管理過剰が生まれている

・スウェーデンの国の機関では、残業時間を貯金し、好きな時に使える制度がある。海外の役所は、職員に対して、いかに働きやすい環境を与え、効率的に仕事をさせるかという視点がある。有益な制度があれば次々に採用し、職員もそれを積極的に利用する

・中国の国営企業や台湾の公益企業の重職には、30代から40歳前後の若い女性が多い。彼女たちには、残業がなく、時間の融通が利くためハンディがない。日本の役所では、仕事の分担責任範囲がはっきり決まっていないので、残業が増え、時間の融通が利かない

・欧米の大企業の評価制度は、たいてい3段階か4段階。8割~9割の人は真ん中に集まる。日本の役所でも、3段階くらいで評価するのが妥当。「とくによくできる人」「ふつうの人」「とくに問題がある人」の割合は、1:8:1くらいが現場感覚に近い

・評価結果が処遇に反映されるなら、評価される側は受け身になり、自分をガードする。処遇評価は3段階くらいにとどめ、本人の主体性を取り入れた育成評価に重点を置くといい

・役所に限らず、日本の制度改革がなかなか進まず変化に適応できない原因は、体系性画一性無謬性を追求しすぎるところにある。それにこだわっていては、改革は常に後追いになる

・「超やる気人間」は、上司に良い評価をしてもらえる、同僚より早く課長になれる、賞与が同僚より10万円多いといったことにはほとんど関心がない。彼らの目は、外の広い世界に向けられている。その視野の広さ、射程の長さが、規格外のやる気を生み出している

・日本人には、自分の功績をアピールしたり、自ら名を出したりすることをためらう奥ゆかしさが残っている。けれども内心は、自分の活躍や功績が名前とともに公表されるとうれしい。わが国の役所風土では、「裏の承認」(○○大賞、△△賞)の仕掛けづくりも大切

・近年、どの役所でも、大きな名札をぶら下げて仕事をするようになった。個人の名を出し、仕事をさせる以上、仕事に必要な裁量権、自律性を与えなければ、名を出させることが単なる監視の手段になり下がり、「さらし者」にしかねず、動機づけに逆効果となる

・韓国の行政組織は、基礎的自治体(市・郡・区)、広域自治体(道・広域市)、中央政府の三つに分かれているが、それぞれの間を移籍できる転入制度がある。韓国の行政組織は日本の影響を強く受けているが、アメリカの制度も参考にし、独自に発展し続けている



役所によっては、自己改革できたところもあるようです。特に、弱小貧乏「地方自治体」ほど、給料の少ない若手職員に裁量権を与え、活躍させています。海外にも、公務員の働き成功事例は数多くあります。

こういう地方や海外の事例を学び、公務員に「給与以上の働き(お値段以上)」をしてもらうきっかけとして、この本は役に立つのではないでしょうか。
[ 2011/12/06 07:28 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『「見せかけの勤勉」の正体』太田肇

「見せかけの勤勉」の正体「見せかけの勤勉」の正体
(2010/05/18)
太田 肇

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太田肇教授の著作を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」「認め上手」に次ぎ、これで3冊目です。

少し違った角度で、日本の経営を見る眼は秀逸で、非常に参考になります。

この本を読み、勉強になった箇所が、15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・日本人は、決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくとなると、さっぱりだめ

・外見だけ見ると、有給休暇も取らずに毎晩遅くまで仕事をしているし、無駄口一つたたかず規律正しく働いている。しかし、やむなくそうしているだけであって、本当の意味での自発的モチベーションは、昔からあまり高くなかった

・サラリーマンは、がんばって長時間働いているように見えるが、そうした働きぶりの、かなりの部分は「見せかけのやる気」だった可能性が高い

・人間は誰もが「本物のやる気」の種を持っている。しかし、仕事になると、「本物のやる気」を出さない者が多いのは、せっかくのやる気の芽が出ても、それが育つのを妨げる障害があるから

・認められるために頑張らなければならないが、頑張っても、報われるとは限らない。そして、頑張り過ぎると、自分の首を絞める。サラリーマン生活を10年もやって、昇進昇格や配属を何度か経験してきた人は、「あまり頑張り過ぎたら損」ということを学んでいる

・管理を強化することの弊害について省みられないのは、管理の効果はすぐ表われるのに対し、その弊害はゆっくり表われるから

・管理されていることに慣れている日本人は、過剰管理が相当ひどくならない限り、適応してしまう。気がついたときは、やる気も主体性もすっかり失った「ゆでガエル」状態になっている

・親しい仲間内での人間関係が濃密になれば、それだけ外の人間との関係は希薄になる。ときには、自分たちの団結を強めるための共通の敵をつくることもあるし、新人や気に入らない人を仲間から排除することもある

・給与や賞与の高い業種や職種のほうが、給与に対する不満の声が大きい。なぜなら、高額の報酬がもらえるような業種や職種には、お金に関心が強い人がたくさん集まっているから

・マネジャーというものは、自分のやる気や意気込みが強過ぎると、その意欲とエネルギーが、部下の管理に向かう。また、上司からやる気や忠誠心を見られていると思うと、それをアピールするため、部下を過剰に管理してしまう

・歴史を振り返れば、科学技術の発展、ビジネスの成長、社会の進歩は、いかに効率化するか、楽をするかという快楽主義に誘導されたもの。考えてみたら、頑張る、額に汗する、苦労することが尊いといった薄っぺらな努力至上主義がまかり通る社会は暗いし、恐い

・本物のやる気は、目的へ向かい、成果を上げるための心的状態だが、見せかけのやる気の先には、目的も成果もない

・勉強にしても仕事にしても、最初はそれに没頭していたのが、ほめ言葉や報酬を与えられることによって、ほめられるため、報酬をもらうために、がんばるようになってしまう

・自分のものであるという感覚を、心理学では、「所有感」と呼ぶ。この「所有感」こそが、「やらされ感」の対極にあるもの

・社員のモチベーションを引き出すには、社員のやる気をなくす要因を取り除いてあげればいい

・部下を持つ人は、肩に力を入れ過ぎないほうがいい。管理し過ぎないほうがいい。管理は「片手間」がよい。しかし、「片手間」と「無責任」とは違う



この本の中にも、出てきますが、
「日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)30ヵ国中20位」
「主要7ヵ国の中では、1994年以降、14年連続で最下位」
という事実を厳粛に受け止めなければいけないと思います。

なぜ、そうなったのか?それは、管理者の責任であると著者は見解を述べています。同感です。

日本の管理者の考え方とその管理手法が変わらなければ、日本の今後も変わらないように思います。
[ 2011/08/30 07:39 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『認め上手・人を動かす53の知恵』太田肇

認め上手 人を動かす53の知恵認め上手 人を動かす53の知恵
(2009/06/11)
太田 肇

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著者の本を紹介するのは、「お金より名誉のモチベーション論」に続き、2冊目です。太田肇氏は同志社大学教授の他に、日本表彰研究所を設立し、表彰文化の普及に尽力されています。人をお金以外の方法で動かす専門家です。

この本では、「ほめる」「認める」「表彰する」ことで、いかに人を動かすことができるかを、わかりやすく説明されています。

大きな仕事を成し遂げるには、「金の力より人の力」。最大限に人の力を引き出す重要なキーワードが、この本の中には満載です。

勉強になった箇所が15ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・長期的な有能感や自己効力感は、「ほめられる」より「認められる」ことで得られる。誇張を含んだ「ほめる」ことより、ありのままを認めることのほうが望ましい

・社内表彰で受賞者を決める委員会に異性を入れることで、違う視点から候補者を選ぶことができる。人事評価にも異性の目をとり入れることで、一元的になりやすい組織風土を変えることができる

大部屋オフィスは<日常の承認>にプラスだが、<キャリアの承認>にはマイナス。両方の承認がバランスよく得られるよう、仕事内容の変化に応じてオフィス環境も最適化する必要がある

・成績を公表する場合は上位3分の1以下に。成績の低い者の意欲をかき立てるためには、別の尺度も用意し、上位の者と違う次元の評価を公表し、全員のやる気をアップさせる

・日本人は、今も昔も世間を気にし、世間の中で生きている。その世間による承認が評判である。正しい評判を吸い上げて処遇に反映させることが、いちばん納得を得やすいし、動機づけにも効果がある。「評価」よりも「評判」を大切にすべき

・「コツコツ型」の社員には、日々努力を重ねて成長し、だんだんと認められていくような目標を与えてやることが大切。バッジや制服もステップアップのシンボルとなり、大きな励みになる

・実力を認められたい若者と人格的に認められることにこだわる年配者をうまく組み合わせれば、絶妙なチームワークを発揮させることができる。若者は「できる」、年配者は「えらい」と認めること

・ほめるときはメールやカードのようないつまでも残るものを使い、しかるのはいつまでも引きずらないように口頭で、というのが原則

・表彰には、「顕彰型」(高い業績をあげた者に対し功績を称える。社長賞、功労賞、MVPなど)「奨励型」(陰で善行、地道に努力している者に対し姿勢を称える。努力賞、奨励賞など)「HR型」(日常のよい仕事、ちょっとした工夫などの軽い表彰)がある

授賞理由を具体的に明記すると、ありがたみが増す。功績を顕するものは賞状や盾などに限らない。社内報、社史などに、授賞理由と名を刻むことで、会社への愛着、一体感が強まる

・受賞者を支えた人にも賞を贈るとチームワークがよくなる。サポーターへの配慮が欠かせない

・認めてほしいところを認めるには、自己申告させるとよい。全員に自己申告させると、はしたないという気持ちが薄れる。仲間や関係者に推薦、投票(他者申告)させれば、メンバーの貢献度もわかるので、納得感が得られやすい

・給与をはじめとした処遇は、公平性、安定性を第一に考えて保障し、その上で表彰を含めた承認によってモチベーションを引き出せばよい。表彰は査定に結びつけないのが原則

・仲間との人間関係や職場の雰囲気を重視する職場ではチーム表彰に重点を置く。組織への依存や仲間同士のもたれあいが見られる会社では、逆に個人表彰を増やすとよい

・アメリカ企業は部署ごとに軽い表彰を気軽にとり入れる。日本企業は全社的に体系化した制度をつくり、矛盾や不公平を排除する。体系化にこだわると、運用に手間がかかる。あえて乱雑にしておいたほうが、多様な角度から表彰できるし、序列を気にしなくてすむ



社員のやる気を引き出す表彰制度が、日本の会社ではあまり研究されていないし、有効に活用されていないのは意外に感じました。

お金よりも、公正な評価(評判)の方が、人のやる気を引き出すことを示した著者の研究は、貴重な研究です。

社員がイキイキと働き、業界で地位の高い会社は、表彰制度の効果を研究している会社のように思います。

表彰制度を再考したら、恐ろしく高い効果が出る会社も多いのではないでしょうか。表彰に興味のある方には、この本はおすすめです。
[ 2010/07/09 07:18 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)

『お金より名誉のモチベーション論』太田肇

お金より名誉のモチベーション論  <承認欲求>を刺激して人を動かすお金より名誉のモチベーション論 <承認欲求>を刺激して人を動かす
(2007/01/04)
太田 肇

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欧米の経済学的理論やモチベーション論が、日本人には、どうもしっくりこない場合があります。その「しっくりこない」部分とは何かを追究しているのが、この本です。

日本人が感じる微妙な心の機微を言いえて妙の言葉で伝えてくれています。この本を読めば、日本人をやる気にさせる方法が、新たに気づかされる部分があるかもしれません。

その新たに気づかされる部分を「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・サービス残業を厭わない多くの日本の社員は、経済学が規定している合理的な「経済人」ではなく、「承認人」といった存在

・日本の場合、「金銭」の背後にも、「承認欲求」が隠れている

・自己実現欲求や達成欲求も、自分の行っていることや成し遂げたことに対し、外部からのフィードバックがあって初めて充足する

・日本社会は、裏の承認(減点主義評価)に対して、厳しい

・傑出を優先する欧米、関係性重視の日本
(日本では、周囲との調和や良好な人間関係を築いて裏の承認が得られる。裏の承認をクリアできなければ、表の承認を受ける資格を与えてもらえない)

・日本社会で尊敬されている人は、「関係性」と「傑出性」を備えている
(全人格的な序列を守りながら、他方では、人並み以上の活躍をして、周囲の人々に利益をもたらさなければならない)

・成果主義より厳しいかもしれない年功主義
(年をとると、お金や地位にふさわしい貢献をするように社会的心理的プレッシャーがかかる。“心”の部分に焦点を当てると優しくない制度)

・一番大切なのは「名誉の分かち合い
(名誉や尊敬を特定の人の専有物にしないこと。誰でも、努力と能力次第で、名誉や尊敬を手にすることができたら、互いにけん制する必要がなくなる)

・人格的な序列意識の弊害を取り除くためには、「プライドを棚上げ」する時や場が必要

・名札を付け、意見箱を置くようにすると、客の前では愛想がよくなった反面、裏では手を抜く傾向が表れた。大きなストレスに耐えきれず、辞めていく人が続出したところもある

わかってもらうだけで不満は半減
(上司から不当に低い評価を受けても、周りの人がその不当に気づいてくれていれば、不満は大きく軽減)

・「外から受ける屈辱」と「仲間から受ける冷たい視線」では、後者の方がつらいという声が圧倒的

・リーダーの仕事は部下を売り出すこと
(売り出すことは、ほめることより、大きな意味での承認欲求を刺激する)



この本には、日本人が喜ぶ、日本人が納得することは何か?のヒントが多く、ためになりました。「やっぱり」「なるほど」と思うこともしばしばでした。

評価は、お金だけでは困るが、お金で評価してくれなくても困るといった心理の中で、やる気を引き出すことは、なかなか単純ではないことがわかります。

部下を持つ人に、是非読んでほしい1冊です。

[ 2009/09/24 06:45 ] 太田肇・本 | TB(0) | CM(0)