著者の本を紹介するのは、7冊目になりました。70歳を過ぎ、著者の文章は、ますます過激になってきています。
しかし、それは純粋な気持ちから生まれたものなので、その過激な「提言」の数多くに感銘させられます。
この本を読んで、感銘した箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・多くの日本人が今持っている欲望というのは、人間本来の欲望ではなく、持たされている欲望、
押しつけられた欲望・「けちになろう」これまでの既成概念の「けちけちしている」のけちではない。欲望を減らし、不安や苦悩から解放された「
人間らしい生き方」を営むための必要哲学
・あらゆる不安に「前提を持つ」というのが、
不安との付き合い方・貧困を抱える人や雇用を切られた人への寄付金を募るのは本末転倒。日本には納税の義務がある。そのお金を上手に使って、雇用を維持させる、ホームレスを出さない、貧困をつくらないのが国や政治家の役割
・今の日本のコミュニティと呼ばれるものは、他人を監視する「
お目付役」
・年賀状を出したのに、相手から音沙汰がなかったら「なんと無礼な!」と言って腹を立てる。逆にこちらから出さなかった相手から年賀状が届いてしまったら「こりゃいかん!」と言って慌てて出す。日本人の言う「友だち」とはそのレベルのもの
・
損得抜きに成立する、人と人との交わりは、家族をおいて他にない
・けちになって、友だちを減らし、見栄や欲望を減らし、そして不安や悩みを減らして、身軽になる。そんな自分になって、その空いた時間を「家族」と呼ぶべき人と費やしていくことが大事
・人間は「
欲望の奴隷」になると、まず良心がなくなる。そして、良心のなくなった隙間に入り込んでくるのが「
競争原理」。競争原理は勝ち組をつくるのではなく、負け組を不幸にさせる。これはもう「悪魔」である
・市場経済は、自由競争の上に成り立っているわけだが、本来、自由化してはいけない「人」まで自由化した。労働者をなるべく安い市場で需要に合わせて必要なときに必要なときだけ集めて、必要がなくなれば「ポイ捨て」する仕組みを生んだ
・砂漠の遊牧民は、誰と協力しなくても一人で牧畜ができる。ところが農耕社会で治水事業をするには、共同でやらないとできない。「お隣さんは
いないと困るけど嫌なやつ」これが日本人の我田引水型の思考
・日本人は終身雇用が素晴らしいと信じている。これは企業が植えつけた論理。終身雇用は、
飼い殺し、奴隷になるということ
・生まれて、ただ食べて、それなりに田畑で働き、老いて死んでいくというのが、実は一番幸せ
・企業という王様のもとで、従業員という商人たちがやっきになってモノを作り、モノを売り、消費者たちが「欲望」という名の悪魔に衝き動かされている
・ヨーロッパではプロテスタントの「
けちの思想」から生まれて、「金を使え、消費しろ」とアメリカによってテコ入れされ、そして「人間なんてどうでもいい」「会社が大事」という
日本型資本主義が育まれ、最終的に行き着いた先が「市場経済」という墓場
・資本主義は資本の投下はするが、さすがに借金は売りださない。ところが、「プラスだろうがマイナスだろうが関係ない」といって、借金を売り出すのが金融主義。こんなものは資本主義でもなんでもない
・けちになって「人から善く思われたい」という欲望を減らして、嫌われればいい。嫌われれば、自然と世間から遠ざかる。世間から遠くなれば、縛られてきた鎖が切れて、心は楽になる。つまり「
けちの哲学」を持って、
世間を敵に回す覚悟があれば、何も恐くない
・世間体とは、社会の
監視の目。生きがいとは、世間が押しつけた幻
・出世することはいいこと、若々しいことは素晴らしいと言って、そのために身の丈以上の欲を持つ。だから、出世の道が閉ざされると悲しくなり、歳をとることに不安を感じる
・「人生に
意味を求めること自体、
意味のないこと」と思った方がいい。「あるがままに生きる」、それが人生
・人は悩むために生きている、老いるために生きている、死ぬために生きている、苦しむために生きている。悩んだら、とことんしっかり悩む。それが大切
・「人生の危機」とは、「人間は何のために生きているのか」が分からなくなったとき。多くの人は「
お金の不安」による「生活の危機」のときだと思っている
・
年賀状を出さない、
飲み会を遠慮するなど、損すると言われることを実行すれば、当然友だちは少なくなる。それは、世間で言う損だが、世間の損はほとけさまの得(ただし、この得はほとけさましか分かってくれない得)。世の中すごく面白くなるし、楽になる
・「きっちり
損をする智慧」を持っていれば、たとえ自分が落ちぶれたり、不幸になったときでも「ああ、面白い。おつなものだな」と人生を味わうことができる
・関心があるから腹が立つ。関心があるから欲望が生まれる。関心があるから他人と比較してしまう。他人に関心を持つとろくなことがない。だからこそ「
他人は他人、自分は自分」と割り切る智慧を持つことが大切
けちになると、見栄や欲望が減る。仲間や友だちも減るが、不安や悩みも減る。つまり、けちになれば、身軽になり、心が楽になる。次に、会社に費やした時間を、
家族との時間に振り替える。そうすれば、人間らしい生き方ができると著者は説かれています。
また、著者は、この本の中で、社員を社畜、奴隷にしてしまった日本の
会社の横暴、策略を厳しく批判されています。
しかし、エリート社員のみんなが、自分たちが奴隷であると意識し、それを恥と思わない限り、この体制は変わりません。奴隷解放してくれるリンカーンも現われてきそうにもありません。
それならば、自らの手で、繋がれた足枷、鎖を断ち切るしかないように思います。その足枷、鎖を切断する道具が「けち」ということではないでしょうか。