ナニワ金融道で有名だった青木雄二さんのエッセイです。亡くなられてから6年近く経ちましたが、物事の本質を捉えた文章は、今読んでも新鮮です。
生前、新神戸駅にある喫茶店に、よく1人で来られていました。私も、時々行く店でしたので、何回かお顔を拝見したことがあります。奥の席に座り、新聞を読むか、下を向いて何かを書かれていました。
青木雄二氏というと、大阪の柄の悪いオッサンのようなイメージがしますが、このエッセイを読めば、かなりの読書家で教養人だったことがわかります。
漫画以外の数ある著作の中で、私が一番気に入っているのが、この「
ゼニの幸福論」です。この本には、著者の苦い経験から体得した「
幸福の本質」が数々載せられています。
本の一部ですが、今から著者の「幸福の本質」に関する
珠玉の言葉を紹介していきたいと思います。
・新興宗教を支えているのは、
貧病争の三つの悩み。救われたいから信仰するが、「人間が神をつくった。神が人間をつくったのではない」ということを知った上で、神に祈ればいい
・人間は幸せだと「思う」だけでは幸せではない。幸せで「ある」ことが大切なんや
・奴隷の身でも幸福を感じることはあるが、これは幸福と違う。「幸福とは、精神的にも物質的にも満たされている状態」
・世の中には得する(搾り取る)側の人間と、損する(搾り取られる)側の人間に集約できる。得する側の人間は、「ゼニがゼニを生む」という法則を熟知している人間である
・仕事で充実しているときは、それなりに幸せだが、その満足感は、
遊んで暮らす幸福感に勝てない。これが、いま、なかば遊んで暮らしている僕の実感である
・あなたはおカネのない不幸と、おカネのある不幸のどちらを選ぶのか?
・「お金さえあれば、なんでもできる」といった単純な
拝金主義でなく、僕は、幸福にはゼニが必要だと考えている
・「
お金がなくても幸せになれる」という考え方は、僕には、
負け犬の遠吠えに思えてならない
・幸福は、他人の不幸を見ているうちにわき起こる快感。資本主義社会では、幸福とは、優越感のことである
・資本主義の世の中では、結局のところ、勝者の論理で成り立っている。
勝者が幸福になり、
敗者は不幸になる
・民主主義のルールが守られない資本主義は、大いに暴力的である
・国民年金は、国家規模の
ネズミ講と同じや
・住宅費と食費の合計が、家計の5割を超えているあなたは、とても貧乏である
・欲がなければ平穏に生きていけるのに、
欲をかくばかりにみんな不幸を感じてしまう。現代社会はきわめて欲の深い社会である
・自分にとって本当に価値のあるモノか?見極めることができる人は幸せになれる
・自分の経験から教訓を得られない人間は、けっして幸福になれない
・互いに理解しあえる伴侶は、なにものにもかえがたい幸福をもたらしてくれる
・僕の父親は、僕に対して絶大な愛情を持っていてくれた。だから、僕は、父親を100%信頼していた。これは、精神的な幸福の根源である
・想像力があるからこそ、人間は未来の幸福に向かって努力できる
・人間は
未来の幸福をつくり出すために生きている
・自分にとってほんとに大切なものを手にできることこそが、真の幸福なのである
・文句があるときは、大声で叫んだらいい。それが、だれもが幸福になる最もたしかな方法なんや
・幸福の本質は、結局のところ、
幸福に向かって闘うことにある
この本は、「ゼニの幸福論」という、ちょっといかがわしいタイトルになっていますが、内容は立派な哲学書です。
また、這い上がってきた人の叫びの書でもあり、這い上がれない人への応援の書でもあります。
青木雄二氏に若干の偏見を持たれている方もいますが、「
人は見かけによらぬもの」です。是非、読まれることをおすすめします。ためになる本です。