昨日の「
インテリジェンス人生相談個人編」続き、今回は社会編です。個人編が「軟」だとすれば、社会編は少し「硬」な感じです。
著者の脳の引き出しの多さに感動しながら、今回もあっという間に読み終えてしまいました。
ためになった箇所、役に立つ箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。
・介護の仕事は、社会的に価値がある「
魂の労働」だから、低給与でも名誉が得られるというイメージを先行させて、末端のヘルパーさんたちに
低賃金労働を押し付けている構造がある。この構造的問題を個人で変えることはできない
・人生から半ば降りてしまった人は、心が頑なになる。その頑なな心を解きほぐすのは容易ではない。ホームレスは、個人が「やる気がない」から生じるのではなく、「
やる気を持たせない社会」が生み出す構造的問題
・期間工を含む社会構造的に弱い立場に置かれた人々の地位を改善する方策を日本国家がとらないならば、この国は内側から崩れ、世界の三流国になってしまう
・新自由主義がもたらす格差問題、正確に言うと貧困問題は、構造的問題なので、個人の努力で解決できない。
新自由主義政策に反対する候補者に一票を投じ、新自由主義を是正しないと、日本人の大多数が貧困層に転落し、日本国家が内側から崩れる
・学校秀才や努力家タイプのエリートが陥りやすい罠がある。「成功しない者は
努力が足りないからだ」という間違った発想を持つのがそれ。成功には努力と運の双方の要素があることを理解しないと、他人の気持ちが理解できない歪な人間になってしまう
・日本の学歴は、外国に出るとまったく神通力がなくなる。人間的魅力、地アタマのよさ、少々の語学力があれば、日本の因習に囚われずに生きていくことができ、困難な状況に直面しても路頭に迷うことはない
・自分の内側にきちんとした価値観があり、いざとなったら勝負できる実力があれば、世間の評価に迷わされず、フリーターをしながら、今後の人生を決めることができる。案外、それは
国際スタンダードに合致している
・人のために何かをしてあげると、天からの
巡り合わせがあり、それは必ず一定の時間を置いてから、数倍になって返ってくる
・政治活動を行うには、「怖い顔」と「優しい顔」の双方が必要。横着な官僚に対しては、街宣車と
墨字巻紙、市民に対しては、
徒歩デモや対話集会というように、政治目的に応じて最も効果的手法を用いること
・愛が強いと、自分の感情に重きが置かれすぎて、不和が生じやすくなる
・近代資本主義の基本は生産。金融資本が大儲け、大損していたのは古代や中世の話。ただし、そのころは
金貸し資本が破綻しても、影響は社会の一部にしか及ばなかった。しかし、現在は、金融恐慌になれば、その悪影響は非正規雇用者を含む社会全体に波及する
・
転職をあおるだけあおらないと人材ビジネス会社は儲からない。転職者が転職に失敗しても、クレームをつけられる確率は低いし、転職者と企業に問題を転嫁できる。これほど儲かる産業はない
・人間が商品経済の便宜のために作り出したカネごときのために一つしかない命を捨てるほどバカバカしい話はない
・作家に経済合理性と異なる発想がないと、よい作品はできない。カネを支払うことで、他人に自分の意思を強制することができる。カネは権力と代替可能で、暴力性を持っている。カネを追求し始めると作品が暴力的になる
・自己啓発や心理学の本をいくら読んでも、自分の性格は変化しない。20歳くらいまでについた性格は一生変化しない。したがって、自分の性格を変えようとせずに、このままの性格で世の中とうまく折り合いをつけた方がいい
・東大の非常勤講師を長年務めたが、東大生であることを
鼻にかけるのは、苦労して何年も浪人して東大に入り、その後も能力が劣るので留年したような、東大の中の
下位集団に属する連中
・カネには悪魔が宿っている。この悪魔は、生活に必要な範囲でカネが動いているときには、頭をもたげてこない。しかし、一般市民の場合、1億円を超える利権抗争が生じると、この悪魔が動き始め、愛情も友情も壊していく
・苦しいときは、正直に「苦しい」と言い、「
助けてください」と叫ぶこと。そうすると必ず助けてくれる人が出てくる
・優秀な人ほど、「自分の得意なことと、自分の好きなことは違う」という意識をもっている
・自分のことをダメ人間と思っている人は決してダメ人間ではない。なぜかというと、ダメである自分を外から観察しているもう一人の自分がいるから。本当のダメ人間は自分がダメ人間であることに気づかない
著者は同志社大学
神学部出身のキリスト教徒、ロシア
元外交官、
東大元講師、鈴木宗男事件に絡む背任罪で逮捕後、1年半の
拘置所生活、その後人気作家という激動の人生を歩まれています。
エリートの目線と庶民の目線、外国人的な眼と日本人の眼、とにかく幅広い知識と経験を有して、堂々と生きておられます。
著者に学ぶべき点がいっぱいあるように思います。その著書を読めば、何事にも動じない考え方が身につき、悩むことが少なくなるのではないでしょうか。