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著者は、現在、早稲田大学の教授です。専門分野は生物学、昆虫学です。最近は環境問題に異を唱える学者として有名です。
ところが、この本は哲学書です。今から、4年前に図書館で偶然手にし、本質を捉えた内容が面白く、読みふけりました。
世の中、理屈だけでは生きていけませんが、非常に頭のいい著者の理屈は、一読の価値があると思います。思わず、うなってしまいます。
そのうなってしまった箇所を「本の一部」ですが、ご紹介したいと思います。
・道徳や倫理や法律というのは、欲望を調整するための道具。ところが、おかしいことに、目的と道具をひっくり返し、道徳や倫理を守ることこそが社会や人生の目的になってしまう
・人間が善く生きるのには二つの相がある。一つは、規範をよく守り、何気ない日常生活や人生の目標の中に楽しみを見出して生きる。一つは、規範からの逸脱、すなわちエクスタシーを感ずることに楽しみを見出す。善く生きるとは、この2つの欲望を調和させて、結果的に欲望を上手に解放すること
・人は、他人の快楽への嫉妬を道徳にすり替えて正当化する。新聞の投書の多くの部分はこの類の道徳で埋まっている。不道徳だと思えば、自分だけしなければ、それですむこと。
・すべての規範はフィクション。しかし、規範なしに人は生きられないもの。そのことをわきまえて、自分が納得した規範に従って生きること。善き生き方はこの心構えからの中から生まれる
・欠如感が大きければ大きいほど、それが埋まった時の幸福の程度が大きい。だから、お金が十二分にあっても、自分で自分を律しない限り、善く生きることはできない
・本来、人々の欲望や楽しみは多様なはずだが、資本主義は人々に金を消費させることによって成立しているため、人々をして金を使わなければ楽しくないと思い込ませる
・資本主義における欲望は、他人に差異をつけること、他人との差異を埋めることに収斂する
・画一的な差異化過程(羨望・嫉妬システム)の中では、新しい情報や製品はそれだけで価値があるものとなる。このシステム内で生きていると、新しさを獲得することだけに欲望の大半が収斂されてくる
・生物の最善の生き方は、食うためにだけに最小限働いて、後はボーッとして生きること
・自分の気持ちをくんでほしいと相手に要求することは、相手に自分と同じ行動パターンをとれと要求することと同じ。これほど傲慢な態度はない
・他人の選んだ規範は、自分の選んだ規範と原理的に等価である。さしあたってこれを承認すること。これは正しく生きるための第一歩
少し難しく思われるかもしれませんが、じっくり読むと、その深い意味が理解できると思います。
そして、今、自分たちがどういう社会の中で生きているのかがよくわかります。それを踏まえた上で、どう生きたらいいのかを示してくれる良書です。
良質の哲学に触れてみるのも、たまにはいいのではないでしょうか。日頃から何かモヤモヤとしていたものが晴れ、視界良好になると思います。
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Author:多角つつむ
経営コンサルタントをリタイア
趣味:歴史散策,読書