とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索
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『世界が土曜の夜の夢なら・ヤンキーと精神分析』斎藤環

世界が土曜の夜の夢なら  ヤンキーと精神分析世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析
(2012/06/30)
斎藤 環

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斎藤環さんの本を紹介するのは、「子育てが終わらない・30歳成人時代の家族論」以来です。ひきこもりの精神分析に関する本ですが、今回紹介する書は、真逆とも言える「ヤンキー」の本です。

ヤンキーはオタクに比べて、分析した書物は少ないのですが、ヤンキー人口は非常に多いことで知られています。そのヤンキーを徹底解剖しています。その一部をまとめてみました。



・「個人の美意識にひそむヤンキー性」は、「不良文化」という言葉を使ってしまったが最後、雲散霧消してしまう

・男は会話に「情報」と「結論」を求めすぎる。家庭円満の最大の秘訣は、「毛づくろい的会話」を日常的に交わすこと。夫婦間であれ、親子間であれ、「無駄話」や「お喋り」を交わし合える関係こそが、最も深く安定する

・ヤンキー系の音楽活動において「音楽性の追求」は最重要課題ではない。優先されるべきは、商業性であり、あるいは彼ら自身のスタイル(=生き様)の主張と確立

・「現実志向」が、ヤンキー系アーティストに共通する「生活苦」に根差している。これは貧乏だったり虐待を受けたりということばかりではない。族に入って喧嘩三昧の日々を送ったり、長い下積み生活でリアルに苦労したといった経験も含めてのこと

・欲望の形式は、「私はそうでもないけれど、みんな欲しがるから、私もそれに合わせて仕方なく、“欲しがっているふり”をしているだけ」。ヤンキーファッションに、その傾向が強い。だぼだぼのジャージ、金髪、ぶっとい金ネックレス、彼らがすすんで選択した結果

・日本のお笑いの特殊性は、そのかなりの部分がキャラに依存して成立している点。ギャグとしての面白さ以上に、まず「笑えるキャラ」を成立させることがはるかに重要となる。いったんキャラが立ってしまえば、ゆるいネタでも十分に笑いが取れる

・徹底して「ベタ」であること、徹底して「現状肯定的」であること。彼らは個人が社会を変えられるとは夢想だにしていない。わずかでも変えられるのは、自分だけ

・ヤンキー文化の特徴は、地元志向つながり志向、内面志向、実話志向、これらは広義の保守的感性。ヤンキー文化は「反社会的」ではない

・ヤンキー的感性は、フィクションをあまり好まず、本当にあった話を好む

・日本人のキャラ性を極めていくと、必然的にヤンキー化する。最もキャラが立っている日本人は、言うまでもなく「坂本龍馬」

・複雑な物語は必要ないが、ほどほどの不幸や、やんちゃだった過去は、キャラ性を際立たせる

・ヤンキーは仲間とのつながりを大切にする。また家族を大切にする。彼らは、両親を尊敬し、パートナーとの絆を大切にしつつ、わが子をこのうえなく愛おしむ。ヤンキーは「女性的」な存在

・ヤンキー的成功者の多くは、その過剰なまでの情熱と行動力をもって、業績を上げている。しかし、その分野は必ずしも革新的なものとは限らない。新たな価値観を創造するのではなく、従来からある価値観を新たなる手法で強化するのが、ヤンキー成功者の秘訣

・ヤンキー主義に欠けている要素は、「個人主義」の欠如と「宗教的使命感」の欠如。ヤンキー主義は、集団主義(家族主義)

・ヤンキー主義は、地元志向や伝統指向が強い。地方における「祭り」の主要な担い手は彼ら。地元志向は政治的に保守の立場につながり、さらに徹底されれば右翼的な活動につながる

母親の存在は、すべてのヤンキーにとって「重い」。彼らの自伝を読めば、そうした感覚が如実に伝わってくる。奇妙なことに、総じて「父」の影が薄い。圧倒的な存在感と影響力を発揮するのは、決まって「母」のほう

・ヤンキーの人々は、「発光体」をたいへん好む。車に装着するライトやネオン。家の外壁のイルミネーション。彼らにとって、「光」は理屈抜きで、ありがたいもの



日本には、ずっと昔から、貴族文化とヤンキー文化があり、歴史的に残っているのは、貴族文化ですが、われわれの心に継承されているのは、ヤンキー文化です。

日本人の大半は、「ヤンキー」か「オタク」です。ヤンキーの研究は、重要なテーマなのかもしれません。


[ 2014/03/05 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『努力する人間になってはいけない・学校と仕事と社会の新人論』芦田宏直

努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論
(2013/09/02)
芦田宏直

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校長である著者が、専門学校の入学式や卒業式の式辞などで述べたことを文書化したのが本書です。

エリートではない人が、社会に出て、どう戦っていくか、生きていくかが記されているように思います。本書の中で、気に入ったところを一部まとめてみました。



・「1.怠け者だけれども目標を達成する人」「2.頑張り屋で目標を達成する人」「3.頑張り屋で目標を達成できない人」「4.怠け者で目標を達成できない人」。有害な人材とは、3番目の人

・仕事の仕方を変えて目標を達成しようとせず、時間をさらにかけて達成しようとする。これが努力する人が目標を達成できない理由。努力が唯一の武器と思っている。努力は時間、努力すればするほど疲弊する、息苦しくなる、つらくなる。これでは仕事はできない

企業は時間を嫌う。時間をかけることが企業の美徳ではなく、いかに短時間で高度な目標を達成できるかが企業の見果てぬ夢。努力主義は、時間をかければ目標が達成できると思っているので、残業して(無理して)やり遂げようとするが、企業の考えとは全く逆

・努力主義は、自己のやり方を変えようとしないエゴイズム。努力する人は謙虚なように見えて、そうではない。むしろ自分に固執する偏狭な人

・努力しているのに評価してくれないときは、立ち止まって、深呼吸して、やり方を変える、自分のスタンスを変える、そのことに思いをはせること

・「努力する」の反対が、「考える」ということ。努力する人は、考えない人ということ

・「時間がない」と言ってはいけない。「お金(予算)がない」と言ってはいけない。まして「クライアントはケチだ」などと言ってはいけない。「お金と時間がない」ときにどうすればいいかという知恵こそが、勉強の実践的意義

・人間の本質は、若者に引き継がれている。人間性とは若者のこと

・「遠い」お客様を大切にすること。お客様は近所であっても、「遠い」ところから来ている人たちだと思うこと

・自立するというのは、自分が使いたくないものにお金を使うことを意味する。光熱費もアパート代もできればなしで済ませたい。しかし、社会人になるというのは、そういうものを担うこと。自宅通いでも、社会人になったら、家に月5万円以上入れるべき

・お金を借りるには、貸してくれる人を説得しなければならない。説得する過程で一所懸命プランを練らなければならない。そうやって、精度の高い、成功する確率の高いプランに成長していく

・コミュニケーションとは、無償のもの(=片方向のもの)。お互いが理解し合うなんて、最低の貧相なコミュニケーション。返ってこないから、無償の配慮が存在する

・いわゆる低偏差値の学生というのは、家庭、地域、クラスメート、担任の先生といった近親者との比較の中でしか、自分の位置を測ることができない子たち。若者が大人になる契機の一つは、対面人間関係(=親密圏を越えるとき

・日本の若者の大半は勉強していないけれども、消費者としての水準、サービス水準への要求は、どこの国の若者にも負けない

・日本の若者は、放っておいても顧客志向のエリートアジアのエリート学生を採用しても、スキルや学力は高いが、消費者水準が実感できない。そこに一番気づいていないのが、大学や専門学校の教育関係者

・アメリカは実力主義と言われるが、大学に入るには、ボランティア活動、親の推薦状、高校の先生の評価など「人間的なこと」を聞かれる。試験点数以外の家族主義的な履歴、長時間の評価を問う。それこそ差別主義。日本のマークシート方式こそウルトラ近代主義

・人間の観察を長いスパンで見る場合、その人間がどこで生まれたか、どんな親元で育ったかということに密接に関わってくる。「長い時間」の観察・評価というのは、ヒューマンな管理主義



著者は、文部科学省、経済産業省などで教育に関する委員を務めた方なので、独自の「教育論」を持っておられます。

人材とは何か、教育とは何か、極めて実践的な視点から発するその論評は、参考になる点が多いように感じました。


[ 2014/01/22 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『「使える人材」を見抜く・採用面接』細井智彦

「使える人材」を見抜く 採用面接「使える人材」を見抜く 採用面接
(2013/02/26)
細井 智彦

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面接の受け方の本が、書店にいっぱい山積みされていますが、本書は、面接を受ける側の本ではなく、面接をする側の本です。

全く立場が違うと思われるかもしれませんが、相手(敵?)の心理を見抜くことは、面接という戦いにおいて役に立ちます。本書の中から、気になった点を幾つか紹介させていただきます。



・内定辞退者の70%もの人が、「面接官の印象によって志望先を変えた」と答えている。面接官が応募者を観察するように、応募者も面接官をよく見ている。面接官の印象で、企業の良し悪しを判断し、入社するか否かを選択することもある

・優秀な人材を採用したいなら、自分も見られているという意識が必要。面接も「ビジネスの現場」と肝に銘じ、クライアントとの打ち合わせのように、気を締めて臨むこと

・面接の評価をすべて数値化すると、「ずば抜けた能力を持ちつつも、マイナス面のある人物を見逃す」「優等生タイプばかりになる」「面接官の好みに左右される」「直感による評価が反映されなくなる」のような問題点が起こる

・相手に一度よい印象を持ってしまうと、その人のよい面ばかりが目につきやすくなる。だからこそ、最初に好印象を抱いた人にほど、「言っていることは本当かな」という視点で、具体的なエピソードを聞く必要がある

・「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」など、聞き心地のよい言葉だけが一人歩きして、採るべき人材を具体的に想定できている会社が、意外に少ない。採用活動を成功させるには、会社にとっての「使える」人材をはっきりさせること

・企業は「しんどい状況でも我慢して頑張ってくれる人(ストレスに耐える人)」を求めるが、本当に必要なのは、ストレスに耐える力ではない。ストレス耐性とは、ストレスへの対応力や適応力。だから、ストレスをためこまず、うまく「逃がせる力」のほうが重要

・応募者にだまされまいと「見抜こう・見破ろう」とする意識が働くのはわかるが、取り調べ型の面接は、応募者に過度なプレッシャーや不快感を与えるので、注意が必要

・理想にぴったり当てはまる応募者を探す「マッチング」にこだわりすぎると、結局、採用したい人が見つからない状態に陥る

・どういう人を採用したいかを具体的にイメージできるよう、社内で見本となる人物を数名ピックアップしておく。「明るく元気で・・・」のタイプだけでなく、「口ベタだが・・・」「押しは弱いが・・・」「聞き上手で・・・」など、デキる営業マンはいろいろ

・経歴や外見などの表面的な情報で採否を決めるのは、直感ではなく、ただの「思い込み」。勝手に思い込まないよう、ロジカルに判断した上で、直感を働かすこと。そして、「何かあったら自分が責任を持つ」と思えたら、直感を信じるべき

・相手に気持ちよく話してもらうことが重要なので、面接官は「是非話を聞かせてください」というスタンスで、相手の話を聞くこと

・「不満や文句を言う人はNG」と考える人が多いが、仕事に不満はつきもの。求めるべきは、不平不満を言わない人ではなく、それを人のせいにせず、少しでも状況をよくしようと行動できる人。チェックするのは、不満の有無ではなく、不満とのつき合い方

・自社の魅力を伝えるのに、用意したいのが「ウラ話」。「実は、今ヒットしている商品が生まれたキッカケは・・・」などの秘話を話せるようにしておくこと。内情を話してもらった応募者は、信頼された気持ちになる

・応募者に選ばれるには、会社のこと、仕事のことをわかりやすく伝える必要がある。例えば、転職希望者が本当に聞きたいのは、給料やボーナス、残業時間、有給消化率など、とても生々しい内容

・「とても優秀だが、何か見落としている気がする」「完璧すぎて、なんとなくうさんくさい」など、落とす理由がないが、心に引っ掛かるものがある場合、試したいのが「雑談」。過去の仕事内容や実績ではなく、普段の生活についてのリアルな話を聞き出すこと

判断ミスをなくすためには、「1.第一印象で決めつけない」「2.経歴や肩書で判断しない」「3.応募者同士を比較しない(印象のよい人を過大評価しない)」「4.判断がブレないように(面接が続くときは注意)」「5.感覚的な評価も無視しない(直感も大切に)」



いい会社に就職したいと願う人も必死ですが、いい人を採用したいと願うほうも必死です。

その両者の立場を理解できる人は、冷静に、落ち着いて、面接に臨めるのではないでしょうか。面接を受ける側なら、面接をする側の本を一回くらい読む必要があるように感じました。


[ 2013/11/06 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『[新装版]土光敏夫・信念の言葉』

[新装版]土光敏夫 信念の言葉[新装版]土光敏夫 信念の言葉
(2013/03/29)
PHP研究所

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メザシの土光さんとして有名な方です。元経団連会長・臨調会長として、日本の行政改革に取り組まれました。

日本再建という重要な使命を遂行することができたのは、土光さんの人柄と熱意の賜物です。土光さんが何を考え、何を話されていたのか気になるところです。その言葉の一部を要約して、紹介させていただきます。



・群がる障害に耐え、隘路を乗り越える過程で、真の人間形成が行われる。艱難汝を玉にす。そして艱難を自らに課し続ける人間のみが、不断の人間成長を遂げる

・「活力知力×(意力体力速力)」。活力は単なる馬力ではない。そのベースは知力。だが活力にとって、知力は必要な条件だが、十分な条件ではない。十分な条件とは、その知力を成果として結実させる行動力。その行動力の重要な要素が、意力・体力・速力

・職場や仕事をグイグイ引っ張っているのは、そばにいると、火花がふりかかり、熱気が伝わってくるような人。周りの人たちに、火をつけ燃え上がらせている。誰にも火種は必ずある。もらい火するより、自分で火をつけて燃えあがらせよう

・価値観というのは、時代とともに変わっていくのが当たり前。それでなければ、歴史は生まれない。ご老体たちが「このごろは価値観が違って困る」とこぼすが、そんなことは当然のこと。価値観がみな一緒になったら、それは独裁国家ということ

・肯定的態度とは、相手の発言を、どこに賛成しようかと考える姿勢。その底には、思いやりの気持ちが流れている。反対に、否定的態度とは、相手の発言を、どこに反対しようかと考える姿勢。その裏には、自己防衛自己顕示といった気持ちが潜んでいる

・現在は「変化の時代」。第一に、変化の断層性がある。現在の変化は過去の変化から質的に飛躍している。第二に、変化の波及性がある。一つの変化がその領域内で治まらない。第三に、変化の加速性がある。人はモノサシとして時間を無視できない

・根性とは、「仕事への欲の強度と持続力」のこと

・人ははっきり二つのタイプ、「自分の足で歩ける人」と「他人の助けを借りないと歩けない人」に分かれる。これは、人生へ立ち向かう態度の問題。人生へ厳しく立ち向かったか、甘えがなかったかによって差が現れる。老年は若年の延長ではない。老年は若年の裏返し

・賃金は不満を減らすことはできても、満足を増やすことはできない。満足を増やすことのできるのは仕事そのもの

・真実を敬語で覆うことをやめること。率直さを敬語で失うことをやめること。中央への、上司への敬語過剰は排すること

・一回限りの成功は。まだ本物の成功とは言えない。第一の成功が呼び水となって、第二、第三の成功を生み出してこそ、「成功は成功の母」となる

・変化の時代の経営は「時間」の要素が大きくものをいう。スピードこそ生命。経営をスピーディにするには、何をおいても、幹部自らがスピーディになること。具体的には、決定をスピーディになすことである

・本来の情報は天然色なのだが、幹部の持つ情報は単色情報になりがち。そんな薄まった情報に基づいて判断したら大変。単色情報を天然色情報に戻すためには、自らの足で現場を歩き、自らの目で現場を見て、現場の空気を味わい、働く人々の感覚に直に触れること

・部下所有意識を部下借用意識に切り替えること。部下は会社からの借りものにすぎない

・コストダウンにはタネ切れはない。目のつけどころとやり方次第

・われわれは習性として、「原因の探求」はいい加減にして、すぐ「対策」に走る。原因を掘り下げれば、すぐれた対策が生まれる。原因の探求とは、「原因の原因」を探り、「原因の原因の原因」を求めること。この面倒くさい作業に敢然と挑戦しなくてはいけない

・死せる規程、守られざる規程は、ルール軽視の風潮を生む。規程が初めからない場合より悪質である。多過ぎる規程規則の類を整理して少なくするのが先決

権威が先行し、権力がそれに従えば、組織は生き生きと動き、組織は強くなる

・少数精鋭という言葉の意味の一つは「精鋭を少数使う」ということ。もう一つは「少数にすれば皆が精鋭になりうる」ということ。後者の意味を重視したい



偉くなっても、メザシを食べ続け、驚くほど質素な生活をされていた土光さんだからこそ、三公社(国鉄、電電公社、専売公社)民営化を実行することができたのだと思います。

亡くなられて25年経ちますが、その筋金入りの信念の言葉は、今も健在ではないでしょうか。


[ 2013/11/04 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『采配』落合博満

采配采配
(2011/11/17)
落合博満

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本書は、2年ほど前のベストセラーです。少し前、落合氏がテレビで、リーダー論を語っていました。その洞察力や着眼点が、かなり高いレベルにあると思い、この本を手に取りました。

いつ、どこで、誰に、何を指示するのかが合理的で、非常にクレバーです。本書の内容も、実例も踏まえていますので、具体的で、読みやすいと思います。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「一人で過ごすのは好きだけれど、孤独には耐えられない」というのが、最近の若い選手の印象。いいか悪いかではなく、これは時代の流れ。でも、グランドでは若者の気質に配慮などできない。頼りなげな視線を向けられては困る。自分一人で決めねばならない

・会社を背負って、勝負を背負って、たった一人で複数の相手に立ち向かう場面では、緊張感とともに孤独感も抱くもの。その孤独感は、「一人で過ごせる」こととは意味合いが違う。孤独に勝てなければ、勝負には勝てない

・自分が身を置く世界で、太く長く生きたいと思っているのなら、向上心よりも野心を抱くべき。孤独に勝つ強さは、野心を抱くことから生まれる

・プロに入ってくる選手は、センスに恵まれていて、プレーの才能がある。しかし、成功するためには、自分自身を適性に導く才能、すなわち、セルフプロデュース能力が必要

不安だから練習する。不安を抱えているからこそ、どんな練習をすればいいか考え抜く

・心技体を大切な順に並べると、「体・技・心」になる。若い時期に必要なのは基礎体力。基礎体力は年齢とともに落ちていくが、代わりに、仕事をしていく体力が備わってくる。「体」の次は、技術を持っている人間は「心」を病まないので、「技」が先

飲み込みの早い人は忘れるのも早いことが多い。自分は不器用だと自覚している人ほど、何度も何度も反復練習するので、一度身につけた技術を安定して発揮し続けることが多い

・直面する仕事の3つの段階の戦いとは、「自分」「相手」「数字」。まずは、力をつけるまでは、自分との闘い。次に、相手のある戦い。最終段階としては、数字と闘うことになる。数字と闘えるようになれば、本当の一人前

・一流の選手までは自分一人の力でいける。でも、超一流になろうとしたら、周りに協力者が必要になる

・レギュラーになって活躍したいと思うなら、「1.できないことをできるようになるまで努力し」「2.できるようになったら、その確率を高める工夫をし」「3.高い確率でできることは、その質をさらに高めていく」の段階を踏まなければならない

・何も反省せずに失敗を繰り返すことは論外だが、失敗を引きずって無難なプレーしかしなくなることも成長の妨げになる

・指導者は、欠点を長所に変える目を持って、新人に接していくことが大切

・部下が「あの人の言う通りにやれば、できる確率は高くなる」と上司の方法論を受け入れるようになれば、組織の歯車は目指す方向にしっかりと回っていく

・高い実績を残した者だけが、自分の引き際を自分で決めることができる

・自分にない色(能力)を使う勇気が、絵の完成度を高めてくれる

・どんな世界でも、かつての「初」を次代が抜き去り、新たな「初」が生まれていく。その世界を発展させていくという意味で、「初」の価値を再認識すべき

・歴史を学ばないということは、その世界や組織の衰退につながる。歴史を学ぶことは、同じような失敗を繰り返さないことにもつながる

・豊かになった国で、次代のリーダーになろうとしている人たちを、昔の人と比較してばかりいたら、リーダーは育たなくなってしまう

・現代のリーダーは、愛情や情熱、変革しようという意欲を基本に考えていくべき

・人生の素晴らしさは、誰と比べて幸せだから、というものではない。大切なのは、何の仕事に就き、今どういう境遇にあろうとも、その物語を織り成しているのは、自分だけだという自負を持って、自身の人生を前向きに采配していくこと



名選手で名監督という人はほとんどいません。落合氏は、考えて、考えて、考え抜く人だから、プロの厳しい世界で、選手としても、監督としても、成功したのだと思います。

その考え抜いた結論を、本書でたくさん披露されています。プロフェッショナルとは何か、リーダーとは何かを知るためには、大いに参考になる書ではないでしょうか。


[ 2013/10/28 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『女子刑務所・知られざる世界』外山ひとみ

女子刑務所 知られざる世界女子刑務所 知られざる世界
(2013/01/24)
外山 ひとみ

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10年以上前に、刑務所の作業製品取扱業者の案内で、刑務所(男子)を見学したことがあります。そのとき見た受刑者の顔は、その3分の2近くが、普通のどこにでもいる人だったのを憶えています。

女子刑務所はどう違うのか?興味があったので、本書を読み、女性ならではの犯罪事情と受刑状況を知ることができました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本には77の刑事施設がある。そのうち女子受刑者を収容する刑事施設は9ヵ所。2011年末時点で、62080名の受刑者が服役しているが、うち女子受刑者は4718名

・女性の場合は男性に比べて凶悪な犯罪は少なく、罪名のトップ2が「覚せい剤取締法違反」と「窃盗」。第3位には、件数は少ないが、殺人が登場してくる施設もある

女子刑務所の1日は、<6:30起床・点検><7:10朝食><7:40作業><10:00運動><12:10昼食><12:40教育><16:30還室><17:10夕食><17:40余暇><21:00就寝・消灯>

・女子施設は「半開放処遇」と呼ばれる収容方法が採られており、ある程度、移動の自由が認められている。1部屋に6~8人の受刑者が集団で生活しているが、各部屋には施錠されず、寮の入口にだけ鍵がかかっている。トイレや洗面所など、必要に応じて移動できる

・男子刑務所は、刑罰の種類(「初犯」「累犯」「長期」「無期」「交通刑事犯」「少年」)ごとの収容施設。だが女子は、施設が少ないので、刑罰の重さや性質に関係なく、すべての受刑者を同じ刑務所に収容。無期受刑者と刑期1年の受刑者が同じ部屋で暮らすこともある

・男子に比べて女子は初犯受刑者が多く、約70%を占める。収容者で最も多い「覚せい剤取締法違反」による受刑者は、実は、それ以前に逮捕歴があり、執行猶予中だった場合がほとんど

刑務作業は大きく4つに分けられる。「生産作業」(工場での洋裁、部品の組み立て)、「社会貢献作業」、施設の運営に必要な「自営作業」(炊事、洗濯、清掃、経理など)。そして、資格や免許の取得を目標にする「職業訓練」(美容、ホームヘルパー、ビル施設管理など)

・薬物を続けるにはお金がかかるが、密売人は最初はお金をとらない。しかし、中毒(快感が忘れられず、薬物を使用してのセックスに溺れていく)になれば、彼らの金づるになる。これがよくあるパターン

・高齢化が一気に加速する日本社会で、65歳以上の高齢者の割合は、総人口の4分の1に迫っている。刑務所もまた例外ではない。高齢者の検挙者数は他の年齢層より著しく増大。20年前の約7倍になっている

・女子高齢者の犯罪で最も多いのが窃盗で、その割合は92%。なかでも万引きが81%と際立つ。常習累犯窃盗罪(10年間に3回以上罪を犯し、6ヵ月以上の懲役刑)の受刑者は、身寄りも、帰る場所もなく孤立し、日々の生活の困窮から犯罪を繰り返す

・高齢化と同様に、どの女子刑務所でも大きな問題になっているのは、精神に疾患を持つ受刑者や摂食障害の受刑者の存在。周囲に迷惑がかかるので、単独室に収容されている場合が多い

・行き場のない孤独な老人や障害者が止むなく犯罪を繰り返し、そうした人々にとって、刑務所は「最後の福祉」。介護施設化した刑務所が映すのは、この国の歪みそのもの

・全国52ヵ所にある少年院の種別は、初等(16歳未満)、中等(16歳以上)、特別(犯罪傾向が進んだ者)、医療少年院の4つに分けられ、さらに非行の深度に応じて、一般短期処遇と特修短期処遇(4か月~6ヵ月以内)、および長期処遇(12ヵ月以内)に区分される

・東北少年院は唯一、専門的な職業訓練を実施することで知られている。職業訓練は、「電気工事科」「建築科」「配管科」「溶接科」「自動車整備科」の5種目ある

・東北少年院は、国家資格を取得するだけの理解力が必要なこともあり、IQ(知能指数)の高い子が多い。だが、たとえIQが120あっても、入所したときは、小学3、4年生の学力レベルしかない少年が多いため、まず国語と算数を毎日勉強する

・保護観察対象者は、「刑務所からの仮釈放者」「少年院からの仮退院者、保護観察処分の少年」「刑の執行猶予者」「婦人補導院からの仮退院者」。保護司(全国で48000人、平均年齢64歳、女性が26%)は保護観察官と協力して、更生環境を整え、社会復帰を円滑にする



最近の刑務所は、食事や居住環境もよくなり、職業訓練も充実しているようですが、女性の場合、受刑者数が少ないせいか、待遇面でまだまだ不備があるようです。

刑務所は更生施設なのですが、待遇面がよすぎると、福祉施設になってしまいます。この問題をどう考えるかが、特に女性の高齢者の場合、大きな課題なのかもしれません。


[ 2013/09/05 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『[新装版]青年の思索のために』下村湖人

[新装版]青年の思索のために[新装版]青年の思索のために
(2009/09/12)
下村 湖人

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著者は「次郎物語」の小説が有名ですが、若干35歳で旧制中学の校長を務められた教育者でもあります。本書は、昭和30年に発表された作品で、当時の青年たちに大きな影響を与えました。

本書の最後の章の「心窓去来」は、教育者を超えた、哲学者・思想家としての作品です。現代の中高年が読んでも、ためになります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・青年期は、出生当時の無自覚から覚めきって、己を知り、他を知り、社会を知り、そして、死ぬまでの自分の方向を自分で決めなければならない時期。青年期の大出発こそ、人間一生の中軸をなすもので、出発の中の出発

・「知育偏重」という言葉は、記憶偏重ということの誤り。日常生活を合理化し民主化するためにも、知育、とりわけ思考力の養成には、もっと力を注がなければならない

・「退くことの好きな人は心がきれいで恥を知っているから誠心誠意で働き、決して任務を汚さない。人に遅れまいとして競馬馬のように狂奔する人は、正道を曲げて上に仕え、へつらいこび、周囲に目立つことを求め、才を誇り、利を好む」(宋の賢臣・張詠)

・どんな仕事に従事していても、自分の仕事を拝む心を持つことが大切。仕事を拝む心はやがて神を拝み、神の大事業に参加する。利害を超越し、世評に煩わされず、一日一日をただひたすらに仕事の祭壇に奉仕して悔いざる心こそ、人間を偉大ならしむ唯一至高の道

・雑多な欲望を充たすことを自由と考えている間は、人格の自由は得られない。どんな圧迫にあっても、良心に背くことを弾ね返す力を持っていなければ、真の自由は得られない

・他人の邪悪から自分を守ることは、時として不可能な場合があるが、自分の邪悪から自分を守ることは全く自分の自由。然るに、たいていの人は、他人の邪悪によってよりも、自分の邪悪によって、はるかに多くの害を受けている

・運に恵まれて富んでいる人が、もし、富を永続きさせたいと思うなら、富を死守しようとする代わりに、富を無知克服のために一刻も早く利用すべきである

・素直に喜ぶということは難しい。というのは、もし、ほめられたあとの仕事が、もう一度ほめてもらいための仕事になったら、その喜びは決して素直であったとは言えないから。人間の素直さにとって、賞賛は大きな誘惑である

頭のいい人にとって、最も大切な修行は、おっとりした、親しみやすい謙遜な人間になるように努力することであるが、そこに気がつくほど頭のいい人は実際まれである

・凡人の社会を動かしている潤滑油の七八割は礼儀作法といった形式である。大多数の人間は凡人だから、そうした形式の軽視は、しばしば悲劇の原因になる

・人は、劣等感と利己心に出発した平等感を主張することで、内心の不平等感を告白する

高慢と怠惰から身を護りうる人は、たいていの悪徳から身を護りうる

・政治はその運営のために、法と公職と租税を必要とする。しかし、その必要は究極において、それを無用ならしめるための必要。法と公職と租税は少なければ少ないほど、人民にとって幸福である

・たいていの人は、「機会を求めなかった」のに「機会に恵まれなかった」と言っている

・自分で自分を支配する力のない者にとっては、束縛が善であり、解放は悪である

・無心になるとは一心になること。一心になるとは自己の一切をあげて至高の願いに集中すること。至高に集中するところに迷いはない。迷いなきがゆえに無心

・すきだらけの人間が、ゆとりのある人間のように思い違いされている。しかし、すきとゆとりとは本来似ても似つかない心の状態で、すきがないからゆとりがある

・自分が恩恵を施してやった人を「恩知らず」とののしる時、その恩恵はもはや恩恵ではなく、取引に変じている

・未来は、燈台と同じように、常に二つの意味の信号をかかげている。一つは「希望をもて」という意味。もう一つは「危険を警戒せよ」という意味。もし、この二つの意味の一方だけしかわからないとすれば、未来は、我々を心からの笑顔をもっては迎えてくれない



著者の思想は、青年期の生徒に触れ、その成長をつぶさに観察することによって、得られた思想です。成長の過程を知っているがゆえの重みがそこにあります。

良き教育者の本は、意外に少ないように思います。本書は、貴重な書ではないでしょうか。


[ 2013/08/21 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『愛と励ましの言葉366日』渡辺和子

愛と励ましの言葉366日 (PHP文庫)愛と励ましの言葉366日 (PHP文庫)
(2006/12)
渡辺 和子

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シスターであり、ノートルダム清心学園理事長である著者の本を紹介するのは、「目に見えないけれど大切なもの」に次ぎ、2冊目です。

著者の過去の作品の中から、愛と励ましの言葉を抜粋して、366日分にまとめたのが本書です。いろいろと気づかされるところがありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・ピカピカ輝くものは、誰でも愛せる。しかしながら、その輝きが失われた時に、なおも愛し続けていけるかということが、私たちの一生の中の苦しみの大部分と言ってもいい

大人であるということ、成熟した人であるということは、その関心の範囲がだんだん広がるということであり、さらに、物的なものだけでなくて、抽象的な価値とか、理想というものに対しても、関心があるということ

・自分の生活を大切にしたいなら、相手を許さないといけない。許すことによって、自分が相手の束縛から解放されるから

・「してもらうのが当たり前」という気持ちは人を醜くする。なぜならば、そこには「感動」がないからであり、不平しか残らないから

・ほほえみを惜しんではいけない。ほほえむことができるということは、一つの恵みであり、心が健康な証拠

・女性が、一日に鏡をのぞきこむ回数ほどに、自分の心をのぞきこみ、内省し、心の手入れを怠らなかったならば、高価な化粧品や装身具も与えられない美しさが、いつしかその人に備わる。その美しさは、年とともに色あせるどころか、むしろ深まっていく

・他人の評価には、たしかに的確なものもあり、それに謙虚に耳を傾けることも重要。しかし、他人の評価がすべてではないことも知らなければならない。他人も不完全な人間だから

・子供たちの心は昔と同じく、愛されること認められること理解されることを求めている。それを与えることができるのは、人間以外の何ものでもない

・人は、話す前は自分の言葉の主人だが、口から出てしまった後は、言葉の奴隷でしかない。そのためにもよく考えて話すことが大切

・コップの大きさ小ささが問題ではなくて、そのコップなりにいっぱいになっている、それが自己実現ということ

・自由の本質は「選ぶ自由」。自由とは、「勝手気ままに振る舞う」ことではなく、「考えてより善い方を選ぶ」こと

本当に謙遜な人とは、持っているものを持っていると言い、持っていないものを持っていないと素直に言うことができる人。それができたら、自由でおおらかでいることができる

・砂漠の中で、泉の水に人々が感じる感動を、私たちは失いがち。しかしながら、人間の幸福というものは、物が多くあるかどうか、その物が高価かどうかというよりも、むしろ私たちの眼差しが、「当たり前を輝いたものと見るかどうか」にかかっている

・一人の人間が人格であるということは、自ら考え、選び、選んだことに責任を持つ存在であるということ。自由の厳しさを経験することなしに、人は人格になり得ない

・自分の姿を見極め、一歩一歩、なるべき自分の姿、つまり理想像に近づけていくことこそ、人間一生の間の課題

・この世の中に、雑用という用はないのであって、私たちが用を雑にした時に、それは生まれる

・自己の可能性を実現するために必要な条件は、「名前で呼ばれること」、つまり、他と比較できない独自の価値、独自の生活をもった一人として愛されていくこと

・人間同士の親しさというものは、開放性の度合いに必ずしもかかっていなくて、一人ひとりの独自性というものを認めて尊敬する度合いにかかっている

・人は人、私は私、「咲かせていただきます」という気持ちで生きることが、美しく咲くことの秘訣


本書には、人格、寛容さ、成熟性とは何か、ということが記されています。それらを身に付けることによって、対人関係、仕事、自己実現などが上手く回っていきます。

自由と充実した人生を手に入れるために、ぜひとも目を通しておきたい書のように感じました。


[ 2013/08/07 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『マインド・コントロール』岡田尊司

マインド・コントロールマインド・コントロール
(2012/12/06)
岡田 尊司

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著者は、精神科医であり、作家です。「社会脳・人生のカギをにぎるもの」に次ぎ、2冊目の紹介となります。

本書は、マインドコントロールを「個人の洗脳」と「集団の洗脳」(消費者・社員・有権者など)という二つの側面に分けて、考察しています。搾取されないためには何が必要かを知ることができます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・個人レベルのマインドコントロールも、集団レベルのマインドコントロールも、使われ方一つで、人間を操り人形に変える非人道的搾取技術にもなれば、生活や人生のクオリティを高め、可能性の限界を広げる有用な手段にもなり得る。毒にも薬にもなる劇薬

・「トンネル」の仕掛けには、二つの要素がある。「外部の世界からの遮断」と「視野を小さな一点に集中」すること。トンネルの中を潜り抜けている間、外部の刺激を遮断されると同時に、出口という一点に向かって進んでいるうちに、いつのまにか視野狭窄に陥る

・小さな集団で暮らし、一つの考えだけを絶えず注ぎ込まれると、その考えは、その人自身の考えとなる。また、その小集団や仲間への愛着ゆえに、それを覆したり、期待と異なる行動ができなくなる。そこから逃げれば、仲間を裏切り、自分の存在を卑しめてしまう

・純粋な理想主義者が抱えやすい一つの危うさは、潔癖になり過ぎて、全か無かの二分法的思考に陥ること。自分たちと信条を同じくしない者は、すべて敵であり、悪だと見なされていく。離れていく者は、裏切り者であり、許せない存在となってしまう

・相手が騙されたと気づかずに相手を騙すことができれば、騙す側は、むしろ「味方」や「善意の第三者」に収まることができる。騙された人は、むしろ良いことを教えてくれたとか、助けてもらったとか、目を開かされたと感じ、感謝や尊敬を捧げる

・社会的動物は、群れで暮らすために、愛情や信頼関係を結ぶという特性を進化させてきた。ところが同時に、人類は高い知能を持ったがゆえに、信じる特性を悪用することを覚えた。親しみや愛情を利用して、信用させ、思い通りにコントロールする技を生み出した

・独裁者やカルトの狂信的指導者から、独善的な上司や配偶者、親、いじめに走る子供まで、本質的な共通項は、「1.閉鎖的集団の中で、優位な立場にいること」「2.弱者に対する思いやりや倫理観が欠如していること」「3.支配することが快楽になっていること」

被暗示性の高い人の特徴は、「1.人の言葉を真に受けやすい」「2.信心深く、迷信や超常現象を信じる」「3.大げさな話をしたり、虚言の傾向がある」

・幼いころ、安心できない環境で育った人は、不安が強い性格になりやすいだけでなく、人の顔色を気にする傾向や他人に依存する傾向が強まり、人から支配されやすくなる

・「私はできる」とか「それ(症状)が消える」といった言葉を唱えさせた「クーエの暗示療法」は非常に効果があったので、評判になった。それは、大人より子供に、都会人より田舎で暮らす人に、より顕著な効果を生んだ

・催眠中に与えた指示は、催眠後の覚醒状態でも、行動をコントロールし、その効果は長時間持続した。また、道徳的、信条的に望まない行為でも、巧みに操ることができた

・依存性パーソナリティの人は、むしろ強引な人押しの強い人を好む。命令や押し付けに逆らえず、相手の言いなりになりやすいだけでなく、そういう人に敬意を抱きさえする

・会社組織でも、独裁国家やカルトに通じる異様な状況が起こり得る。長時間のサービス残業が常態化した会社では、社員は、慢性的疲労を抱えるだけでなく、主体的な判断力や独創的な発想を持てなくなっていき、ノーと言えず、結局、使い潰されていく

・勉強のやらせすぎは、主体的な意欲がない子供を育てる。子供が「疲れている」状態は、絶対に避けること。余力を残しておくことが、子供を病まさず、可能性を伸ばしていく

・強力な暗示効果が奇跡を引き起こすことがある。優れた臨床家や教育者ほど、この原理を上手く使いこなす。「希望を約束する」ことで、実際にそれを現実にしてしまう

・人は心地よい体験をすると、それをもう一度求めるようになる。心地よい体験を与えてくれた者たちや場所に対して、愛着や親しみを覚え、それを肯定的に考えるようになる。自分をこんなに愛してくれる存在が、悪いはずがないと、理性より本能がそう思う

・カルト宗教は、大きく二つに分かれる。一つは、家族や愛といった絆を重視したもの。もう一つは、修行や祈祷により超常的パワーを手に入れるといった自己鍛錬に重きを置いたもの。前者は、大衆的、庶民的な宗教であり、後者は、エリート的な志向がみられる



日本の会社には、雇用者のような被雇用者が大勢います。すなわち、給料も安く、休みが少ないのに、懸命に働く人たちです。日本のホワイトカラーと呼ばれる人の多くは、これに属します。企業側のマインドコントロールのかけ方が上手ということかもしれません。

最近、マインドコントロールはいろんなところで使われています。マインドコントロールに引っかからず、搾取されない方法を身につけることが、人生にとって欠かせない技ではないでしょうか。


[ 2013/07/31 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『未来を予見する「5つの法則」』田坂広志

未来を予見する「5つの法則」未来を予見する「5つの法則」
(2008/09/19)
田坂 広志

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希望、夢、期待を与えるのは、リーダーの務めです。でも、それらを与えるだけで、外してばかりいたら、人は付いてきません。

そのためには、リーダーは、精度の高い未来の予見をする必要があります。その予測精度を高める方法が、本書に示されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「世の中は、この方向に向かう」「社会に、このトレンドが生まれる」。そういった「方向的な予見」「大局的な予見」はできる。すなわち、未来に起こる「細かな動き」は分からない。しかし、未来に向かっての「大きな流れ」は分かる

・「大局観」を身につけるためには、世界発展の法則(世界がいかに変化し、発展し、進化していくか)を学ぶこと。世界とは、自然、社会、人間を含むすべての物事のこと

・「弁証法」が、世界の変化、発展、進化の法則を教えてくれる。「弁証法」は哲学者ヘーゲルだけのものではない。ソクラテスの「対話」、サルトルの「実存主義思想」、般若心経の「色即是空」、道教の「陰陽」、禅の「矛盾との対峙」も、弁証法の哲学を内包している

・弁証法の世界発展「五つの法則」とは、
1.「螺旋的プロセス」による発展の法則(螺旋階段を登るように発展する)
2.「否定の否定」による発展の法則(現在の動きは、必ず将来反転する)
3.「量から質への転化」による発展の法則(量が一定水準を超えると質が劇的に変化する)
4.「対立物の相互浸透」による発展の法則(対立、競っているもの同士は互いに似てくる)
5.「矛盾の止揚」による発展の法則(矛盾は世界発展の原動力になる)

・「進歩」や「進化」とは、単に、新たなものが生まれてくるプロセスではない。また、単に、古いものが捨てられていくプロセスでもない。それは、古いものが、新たな価値を伴って、復活してくるプロセス

・「集団」「一律」「他律」を特徴とする教育形式は、決して長い歴史ではない。「個別」「自由」「自律」を特徴とする教育形式こそが、歴史的に見れば、長い期間、主流だった。だから、古い教育システムが「新たな価値」を伴って、復活してくる

・ただ、「懐かしいもの」が復活するのではない。「便利になった、懐かしいもの」が復活する。その具体的な現れは、かつてよりも、「合理的」になり、「効率的」になり、「使いやすく」なり、「新たな機能」が付加され、「便利になっている」

・「進化」においては、「古いもの」が消えていかず、「新しいもの」と共存し、共生していく。進化のプロセスを、「個々の生物種の進化」という視点ではなく、「生態系全体の進化」という大きな視点で見ること

・「進化」の本質とは、「多様化」のこと。世界が「多様性」を増していくこと。「古いもの」と「新しいもの」が、共存、共生、棲み分けることは、「世界の多様性」を高めていく

・社会観察において、何が「懐かしい」のか、何が「便利になった」のかを考えるとき、世の中の変化の「本質」が見え、世の中の変化の「未来」が見えてくる

・すべての物事には、その内部に矛盾が含まれているが、その矛盾こそが、物事の発展の原動力。そして、この矛盾を機械的に解消するのではなく、弁証法的に止揚したとき、物事は発展を遂げる

・互いに対立し、矛盾する二つのものの間で、一方を否定してはいけない場合、二つの極を往復する「振り子」を振り、バランスを取ること。これが「矛盾のマネジメント

・「器の大きな人物」とは、心の中に、壮大な矛盾を把持し、その矛盾と対峙し、格闘し続けることのできる人物

・「割り切り」とは、魂の弱さである。我々は、さまざまな矛盾を前に、悩み、迷うとき、しばしば、「割り切り」という行為に流される

・「討論」とは、異なった意見の持ち主が議論を戦わせ、互いに自己の主張が正しいことを論証する営み。「議論」とは、異なった意見の持ち主が集まり、互いの意見を語り合うことによって、多様な意見を学び合う営み

・弁証法とは、「」「」「」のプロセスで、思考を深める技法。分かりやすく言えば、一人が語る意見(正)に対し、もう一人が、反対の意見(反)を語り、互いの意見に基づく対話を通じて、意見を包含、統合、止揚し、理解(合)に達するという技法


予測、予知、予見の方法の基礎を学んでいれば、どんな時にでも、応用を効かせることができます。

予測、予知、予見しなければいけない立場にいる人にとって、本書に記載されている内容は、是非身につけたい素養になるのではないでしょうか。


[ 2013/06/05 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『ニンジンの法則』エイドリアン・ゴスティック、チェスター・エルトン

ニンジンの法則―正しい「ニンジン文化」が社員を救い、組織を伸ばすニンジンの法則―正しい「ニンジン文化」が社員を救い、組織を伸ばす
(2008/07)
エイドリアン ゴスティック、チェスター エルトン 他

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報酬は金銭ばかりではありません。表彰、評価、承認などの報奨も、立派な心の報酬です。本書は、お金のかからない報酬をいかに有効に使うかに言及しています。

お金をかけずに人を動かす方法論は、まだまだ解明されていない点が多くあります。本書には、それらの事例がいっぱい載っています。その一部を紹介させていただきます。



・職場におけるアクセルは、社員の貢献を認めて称える「レコグニション」(報奨)。レコグニションとは、社員、メンバーの取り組みや成果を的確に認め、評価し、気遣いやねぎらい、商品や報酬で報いてあげること

・「社員の功績を認めている」上位4分の1の組織の株主資本利益率(ROE)は平均8.7%。下位4分の1の組織は平均2.4%。つまり、社員の功績を効果的に認めている企業は、そうでない企業の3倍のROEを実現している

・「社員の功績を認めている」のスコアが最高4分位に入る企業の営業利益率は6.6%。それに対して、最低4分位の企業の営業利益は1%

・職場で高い意欲を示している社員の94%が、「上司は部下の仕事ぶりを効果的に認めている」と答えている。意欲に乏しい社員の56%は、同じ質問に関して、上司に低い点をつけている

・金は、世間で思われているほど効き目のあるニンジンではない。実際、金一封をもらった人の3分の1は、その金を各種請求書の支払に使う。さらに5人に1人は、その金を何に使ったか、あるいは、いくらもらったかを、数か月できれいさっぱり忘れている

会社に対する忠誠心が5%上昇するだけで、利益はなんと50%も増加する(フレッド・ライクヘルド)

・リーダーシップの4つの基本(目標設定・コミュニケーション・信頼構築・責任感を持たせる)にレコグニション(報奨)が加わると、すぐれたマネジメントが生まれる

・すぐれたリーダーは、社員一人ひとりの目標と会社の目標をつなぐことができる

・信頼関係とは、「人は自分が相手から扱われたように相手に接する」ということ

・レコグニション(報奨)を実践するマネージャーの中に、その見返りを期待している「下心マネージャー」と、何の下心もなく部下に報いる「真心マネージャー」がいる。真心マネージャーは、部下を一人の人間として気遣い、一人ひとりの動機付けを探し出している

・マネージャーとしての高い適性は、ニンジンの供給量をコントロールできること

・ニンジンの法則を身に付けたマネージャーは、社員が職場で抱く「ここで何が重要なのか」「どうすれば貢献できるのか」「貢献すれば何が得られるのか」の3つの疑問に答えて、彼らの参加意識と満足度を高めていく

・功績に対するレコグニション(報奨)を改善する時のキーポイントは、「バリュー」「インパクト」「パーソナル」の3つ

勤続報奨は正規の報奨制度の基盤を成す。全社員との信頼関係を築き、結束感を強める

・誰を褒めたか記録をつけること。あまり褒めてもらっていない社員がいたら、彼らにチャレンジの機会を与えること。また、褒め過ぎると、部下たちは褒められることばかり期待し、意味がなくなる

・報酬と報奨は同義語ではない。給与のためだけに、つまらない職場にしがみつく人は少ない。人間は自分が重要な存在だと思いたい。個人の具体的な貢献を頻繁に称えれば、このニーズを満たすことができる

・日頃のねぎらい、チームのお祝い、功績に対する報奨、勤続報奨などで、何らかの品物を用意する場合、たいていの企業は、給与総額の2%を予算にとっている。社員1人当たりに換算して年間8万円あたりが現実的ライン

・有能なマネージャーたちが、部下へのねぎらいに費やしている時間は、週に1~2時間程度。就労時間の5%足らずだが、大きく実を結ぶ時間

・マネージャーはニンジン計算機。社員に正しいインパクトを与え、動機付けとなる報奨をどのように行うかを考えればいい



本書は、米国における「ニンジンの法則」です。日本には日本のやり方がありますし、企業の大小、業界、地域によって、そのやり方はもちろん違ってきます。

しかし、表彰、評価、承認を有効に使ったところが、マネジメントを制するということは、間違いのない事実ではないでしょうか。


[ 2013/06/04 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『[新装版]「なんでだろう」から仕事は始まる!』小倉昌男

[新装版]「なんでだろう」から仕事は始まる![新装版]「なんでだろう」から仕事は始まる!
(2012/04/27)
小倉 昌男

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著者は、2005年に亡くなられたヤマト運輸の元会長で、この世に「宅急便」をつくり上げられた方です。われわれが、今その恩恵に浴しているのも、著者が孤軍奮闘してきたおかげなのかもしれません。

本書は、著者が人生の中で、大事に思っていることを気さくに語ったものです。語り口調なので、非常に読みやすい本です。大事なことも盛りだくさんにあります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



広報マインドを持たないとダメ。記者の夜討ち朝駆けを嫌っていたら、絶対にいい社長にはなれない。これは経営者の義務

・物事をうまく説明する能力というのは、どんな仕事でも求められるもの。極端に言えば、「仕事ができる」とは、「うまく説明できる」こと

会社の価値とは、「志」のあり方で決まる。単に多くの収益を上げることが「いい会社」の条件ではない

・人を動かそうと思ったら、抽象的な言葉で高邁な理念を語るだけではいけない。それぞれの社員が、自分の世の中の役に立っているシーンを具体的に思い浮かべられるよう、わかりやすい言葉で説明することが大事

・いやな話をするときほど腰が引け、言うべきことが言えなくなる。何かを断るとき、あるいは相手の考えを変えさせたいときほど、相手のまたぐらに足を突っ込むくらいの覚悟で間合いをつめたほうがいい。要するに、敵の懐に飛び込むつもりで事に当たるべき

・「あいつは仕事ができるけど、面倒見が悪い」と言われる人間が、本当に会社の業績アップに貢献しているかは疑問

・軍隊では、人間性が悪くても、すばしっこい人間が評価された。しかし、終戦後に当時の仲間で集まってみると、そういう連中が必ずしも出世しているとは限らない。むしろ、のろまな善人ほど、立派に仕事をして出世している。人間、最後は人柄がものを言う

・客観的な評価が不可能だとなれば、人の評価は「人柄」で判断したほうがいい

・裁判なら「疑わしきは罰せず」が原則だが、部下は疑わしい上司を証拠なしに「有罪」と決めつける。冤罪だとしても、疑われるような行動をとった上司のほうに責任がある

・悪い循環は隠し事うそから始まる

・いい循環のときは放っておいてもよい結果が出る。リーダーは流れを悪くしないように目配りしていればいい。いわば、黒子の役割。しかし、悪い循環になったら、リーダーが陰に隠れていてはいけない。そんなときこそ、リーダーの出番であり、存在感を示すとき

・悪い循環を起こしているときは、気持ちが後ろ向きになっているから、目標が高いとモチベーションが低下する。だからこそ、「今できること」から確実にこなしていくこと

・ビジネスマンに「人柄」が求められるのは、仕事の根幹が人間関係にあるから

・商品やサービスに対して消費者がしぶしぶお金を払っているようだと、その会社の社格は高くない。逆に、お金を払う側が「ありがとう」と感謝の気持ちを抱いてくれるようなら、極めて高い社格がある

・筋の通らないことを言う人間に、自分の仕事や生活を邪魔されるのが我慢ならない。役人が筋の通らないことを言って、論理破綻を起こすときに共通してあるのは、その裏の既得権益

・税金を納める能力があるのに、収入をごまかし、補助金をもらって贅沢な暮しをしている人間は「タックス・イーター」。他人が苦労して払った税金を食って楽をしている

・タックス・イーターは、悪知恵を絞って、楽な生活を手に入れている自分を、他人よりも賢いと思っている。真面目に働いて多くの税金を納めている人間を「バカな奴らだ」と見下している

・税金の「イーター」と「ペイヤー」とでは、その立場に天と地ほどの開きがある。タックス・ペイヤーの誇りは、お金に代えられないほど大きな価値を持っている

・人間にとって、一番大切なのは、「正しい心」と「思いやりの心」。「倫理観」と「優しさ」と言ってもいい


著者の情熱の背景には、「義憤」があるように思いました。その義憤をバネして、仕事をなされてきた一言一言には、気さくな語りかけであっても、重みが感じられます。

偉大なる企業人の奮闘及び足跡を、亡くなれてからも知ることができる貴重な書です。


[ 2013/05/13 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『疑え、常識』川口淳一郎

疑え、常識疑え、常識
(2012/03/24)
川口 淳一郎

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小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーを務めた、川口淳一郎さんの著書を紹介するのは、「はやぶさ式思考法」に次ぎ、2冊目です。

本書は、著者が成功に導いたはやぶさで経験し、感じたことを、ビジネスマン向きに述べたものです。科学者兼マネージャーの視点は、参考になる点が多々あります。それらを一部要約して、紹介させていただきます。



・自分が独創性を取るか、人間関係をとるかの選択で、主張するのを諦め、円滑な人間関係を選ぶのはバランス型の人間。なだめすかされてバランスを選ぶのは、懐柔されているのと同じ。そこからは何も新しい世界は生まれない

・信念を自身の成功体験から探さない人は、第三者の言葉に救いを求める

蜂起というのは決して悪い行為ではない。自分たちが主権を持って、自分たちの行動をきちんとやろうという活動へとつながる

・規制が頭の中に刷り込まれていると、いざというときに抜け出せなくなる。型を取り去らないことには、自分の可能性はわからない。型がない状態、ルールがない状態を想定して試行錯誤すれば、発展の可能性は必ずある

・研究者というのは、一つのベターを達成したら、さらに次のベターを目指し始める。それだとキリがない。そこで、私はいつも「セカンドベストでよい」と話していた。一つ一つの課題に対して100点を意識せず、60点を確実に取りに行く方法を提案していた

・ベストやベターは研究の中で目指すものであって、プロジェクトの中で目指すものではない

・「民主主義が正しい」という常識に縛られ、民主的に答えを導く習慣が身についている。意思決定に関与する人が増えると、多くの意見に流されて右往左往し、統一性のない決定になりがち。プロジェクトは、少人数による意思決定か独裁主義によって進められるべき

・性格が真面目な人間は、周囲からの多くの注文を受けると、それに対して完璧に応えようとする。プレッシャーに追い込まれても、なおベストにこだわってしまうのは、民主主義に縛られているから

反対する人たちは、正しいゴールを理解できていない。いま優先すべきことは、スケジュールなのか?コストなのか?性能なのか?プロジェクト内で統一すべき意思を再確認させれば、解決できる道がきっと見つかる

・日本人は民主主義に染まりすぎている。同様に、全体主義(秩序)にも強く縛られている

・日本人からすれば、変人とは、不可能な理由ではなく、可能な理由を探す人たち

・トップや経営者の頭が固いのは当たり前。経営者が暴走したら会社は簡単に傾くので、トップの人間には手堅い判断が求められる。提案する側は、受け入れられなくても、提案を続けなくてはいけない

・アメリカは価値があるものに対しては、極めてフェアに評価する。フェアな評価は、企業に限らず、学校教育でも同じ。こうしたフェアな評価は「個人主義の国」ならではの文化。個人主義が浸透している国は、個人的な恨みを防止することにも細心の注意を払う

・誰も主体的な絶対尺度を持っていない以上、何かしらの尺度となるものを求めたくなる。その一つが学歴。でも、それは自信がないから。自分の武器がわからないから、不安で学歴に頼ってしまう

・リーダーには、スペシャリストの視点が必要。「狭く深く」の人が、一つの分野で10年以上続けた経験は、困難を克服した経験を有している。その経験はリーダーとして欠かせない能力

・「広く深く」か「狭く深く」の二者択一で、さらに得られる経験の限界が同じならば、将来的に大切なのは「深さ

・そもそも「税金や税の還元先は万人に平等であるべき」と思い込んでいるから不満が起きる。それは、資本主義的ではなく、共産主義に近い

技術を武器にするのは、先進国ならば当たり前の話。経済面だけでなく、「国の価値を上げる」という意味でも大切



大きなプレッシャーの中でも、強いリーダーシップをとるためのノウハウが、本書に記されています。

失敗すれば、200億円が灰になり、国民から批判を浴びることを承知の上で、リーダーを務め、そのプロジェクトを成功に導いた著者の自信に満ちた言葉に、勇気づけられるのではないでしょうか。


[ 2013/05/08 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『子育てが終わらない・「30歳成人」時代の家族論』小島貴子、斎藤環

子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論
(2012/06/22)
小島貴子、斎藤環 他

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本書は、対談本ですが、精神科医である斎藤環さんの考え方、見解が素晴らしく思えましたので、斎藤環さんの発言だけを採り上げました。

現代は、世界中で「晩成人」が進んでいるみたいです。そういう中で、家族はどうあるべきなのかを示唆してくれる書です。その内容の一部を要約して、紹介させていただきます。



・子育てが終わらないと、ずっと「親は親、子供は子供」という関係が固定され、延々と親が「しつけ」をする。そのしつけに子供が反発し、こじれるということが繰り返される

・日本の家庭の3大タブーは「お金」「」「」の話題だが、お金の話を避けるのは、わが子を半人前扱いにしているということ

・コミュニケーションの達人というのは、「無意味な会話をいくらでもできる人」のこと

・コミュニケーションで大事なのは、情報ではなくて、相手の身になり、情緒的に交流すること

・欲しいものや不満があったりするときに、「待てる」のが欲求不満耐性。ひきこもりの人は、欲求不満耐性が強く、我慢強い。そのかわり、コミュニケーション能力が低い

・目指すべきは「冗談が言える」、あるいは「弱音が吐ける」関係。そのために必要なのは、「くだらない話」「たわいもないおしゃべり」

・ひきこもりとかニートの子どもを抱える家庭では、親の発言が「上から目線」になりやすい。「世間の常識を教えてあげる」的な半人前扱いが、子どもは癪に障る。でも、「助けて」(弱っているから何とかしてほしい)というお願いは、子どもに受け入れられやすい

本人を肯定するには、「あいさつ」(敵意のなさの表明)、「お願い」(力をあてにする)、「誘いかけ」(一緒に行こうという声かけ)、「相談事」(知恵や能力をあてにする)、「教わる」(自尊心を満足させる)といったことが大事

・「私はこう思う」「私はこう感じた」という言い方は、相手を傷つけないし、反論を呼ぶこともない。相手を説得しよう、負かそうとするから紛糾する

人の自信は、「社会的地位」か「業績」か「人間関係のネットワーク」に支えられている

・パラサイトシングル(親と同居する未婚者)は、今や全世界的。韓国では「カンガルー」、カナダでは「ブーメラン」(出戻りの)、イタリアでは「バンボッチョーニ」(大きなおしゃぶり坊や)、フランスでは「タンギー症候群」(コメディ映画に由来)と呼ばれている

・「欲望は他人の欲望である」(ラカンの言葉)のごとく、欲望は社会から供給されてくるもの。長くひきこもっている人は、欲望がどんどん希薄になっていく

・「根拠のない自信」は強い。反対に「根拠のある自信」は、根拠が崩れたら自信も失われる。「根拠のない自信」は、自己愛を成熟させていくことで育てられる。幼児期の親子関係が良好で、親から無条件の承認を受けた経験が多いことも大事

・日本、韓国、イタリア、スペイン、アイルランドは、成人した子の両親との同居率が7割前後。同居率が高い国は、ひきこもりは多いが、ホームレス化は起きにくい。個人主義の強いフランス、イギリス、アメリカには、若いホームレスが何十万人と存在している

・日本では、戦後とくに、第三者を家に入れなくなり、家が完全に密室になってきている

・ひきこもり予防の秘策は、子どもが思春期を迎えた段階で、親がいつまで面倒を見るのかの「時間的リミット」(大学卒業まで、30歳までなど)をきちんと伝えること

27歳は、社会的自立の節目。順調に就労が進んだ場合、何とか自立の見込みがつく時期

・必要な時に必要な分だけお金を与える方式では、まともな金銭感覚が育たない。蛇口をひねると水が出てくる環境では、使った水の量を気にしなくなる。使えばなくなる、使わなければ貯まる。これが一番原始的な金銭感覚

・ペットは「関係のメンテナンス」において、非常にプラスになる存在。動物は、予測できない動きをするので、そうしたものが、よい共有体験になる

・1992年以降、学校の評価システムが大きく変わり(知識・技能よりも関心・意欲・態度が問われる)、成績が言わば「全人的評価」になった。それが適用された世界は、非常に息苦しい。この「新学力観」導入後、子どもたちが異常なほど素直になっっている



戦国時代の成人時期は、元服(15歳前後)でしたが、現代の成人時期は、どんどん遅く(25歳~30歳)なってきているのかもしれません。

高齢化社会なので、当然と言えば当然ですが、日本のさまざまな風習、文化、制度、考え方が、昔のままで、それに付いていけていないようにも感じます。本書は、その事実に、貴重な提言を与えるものではないでしょうか。


[ 2013/04/25 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『40歳の教科書・ドラゴン桜公式副読本「16歳の教科書」番外編』

40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編40歳の教科書 親が子どものためにできること ドラゴン桜公式副読本『16歳の教科書』番外編
(2010/07/23)
不明

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本書は、子を持つ親のための特別講義として、総勢14名のスペシャリストが、「英語学習」「中高一貫校」「お金と仕事の教育」について、意見を述べた書です。

巻頭に、教育は仮説に従って「子供は厳しく育てるべき」「漫画を読ませてはいけない」「テレビゲームをさせてはいけない」などと行われてきているが、それを検証、証明されていないというドラゴン桜の著者の意見が載っています。

どんな教育が正しいのか、親もしっかり理解していないのに、子供に仮説を強要しているのかもしれません。本書には、「子供への教育」に参考になることが数々掲載されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「英語に時間をかけるな」が原則。「たかが英語」に必要以上の時間をかけてはいけない。時間をかけずに、日常生活に支障がない程度、仕事のやりとりができる程度までの英語力を達成する方法を考えること(大西泰斗)

・日本が経済大国に成長できたのは、英語力があったからではない。英語力でお金を稼いできたわけではない。国語や数学、物理や化学、社会など、英語以外の科目で身につけた知識・知性をベースにビジネスをやっている(大西泰斗)

・英語はツールにすぎない。学習のコストパフォーマンスを見極めること。「なんとか使えれば上等」と割り切ること。ネイティブになる必要はない(大西泰斗)

・日本人で本当に英語が必要とされる人は、全体の1割程度。残り9割の日本人には、英語なんて要らない。英語が「できない」のではなく、そもそも「要らない」(成毛眞)

・本当の英語とは、それを使って、人生や哲学を語り合える言葉のこと。あるいは、互いの感情を思いっきりぶつけ合える言葉のこと。そう考えると、やはり9割の日本人には英語など要らない(成毛眞)

ビジネス英語で覚えるのは、商品名、ビジネス用語、経済用語、業界用語くらい。そのへんを頭に叩き込めば、あとは上司の顔つきやその場の雰囲気で察することができる。ビジネス英語は、半年から1年で一定レベルまでいける。それで十分(成毛眞)

・日本人は自分たちだけが英語ができないと考えがち。英語がペラペラなのは、アメリカ人とイギリス人だけ。ヨーロッパ人の大半は英語ができない(成毛眞)

・母語の読み書きができてから英語を学習し始めた子供と、母語の読み書きができないうちから英語の学習を始めた子供を比較した場合、母語がしっかりできている子供のほうが、確実かつ急速に英語力を伸ばしていくという結果が出ている(鳥飼玖美子)

・数学が苦手だとしても、保護者はとくに文句は言わない。しかし、英語に限っては、学校教育に過剰な期待を寄せて、教育が間違っていると考えるのはおかしな話(鳥飼玖美子)

・現場を知らない大人に限って「小学生のうちから塾に通わせるのはかわいそうだ」「成績順でクラス分けするのは教育上よくない」などと批判するが、多くの子供たちは塾を楽しんでいる。成績順のクラス分けも、ゲーム感覚で受け入れている(藤原和博)

・難関中学受験はひとえに「親の受験」であり、「母親の力が9割」ということを知っておくべき。有名私立校を受験させるのは、母親のリベンジ(復讐)(藤原和博)

・私立一貫校最大の問題は、生徒や保護者の同質化(学力、価値観、家庭環境)。この「同質集団」の居心地のよさが問題になる。自分の人生を振り返ってみればわかるが、人はむしろ、居心地の悪い困難な環境で成長するもの(藤原和博)

・お金がなかったら、人は獣になる。そして、お金さえあれば、たいていの不幸は乗り越えられる(西原理恵子)

・夫に年収1000万円を求めても、夫の命を縮めるだけ。夫婦でリスクを分散して、300万円ずつ稼いでいけば、地方だったら十分幸せに暮らしていける(西原理恵子)

・公立校には最低限の料金しか払っていないのに、親はものすごいサービスを要求する(勉強、しつけ、友達関係など)。でも、それは市役所の窓口に行って「この子をしつけてください!」と要求しているようなもの。見当違いも甚だしい(西原理恵子)

・お金は「社会的な立地条件」のいいところに集まりやすい。先進国と途上国、東京と地方の差も「立地条件」。血縁関係や出身大学も「立地条件」。お金は「社会的な立地条件」で大きく変化するので、仕事の価値はお金で判断してはいけないと教えるべき(山崎元)

合理的判断力を身につけるため、また数学の延長になる知識として、もっと率直にお金の話をしていくべき(山崎元)



以前より、子供への教育が、母親の妄想と感情の手に委ねられてしまっていると感じていましたので。本書に同感するところが多々ありました。

社会の現実に晒されている父親が、子供への教育に参加してこなかったツケが現れてしまったのではないでしょうか。子供こそ、最大の犠牲者かもしれません。


[ 2013/01/29 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『生き物として忘れてはいけないこと―次代へ贈るメッセージ』コエン・エルカ

生き物として、忘れてはいけないこと―次代へ贈るメッセージ生き物として、忘れてはいけないこと―次代へ贈るメッセージ
(2004/12)
コエンエルカ

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著者のコエン・エルカ氏は、中央アジアの血を引く両親の間に、ニューヨークで生まれ、ネイティブ・アメリカンと交流し、ニューヨーク州立大学で生物学と考古学を学び、現在は日本に在住という、異質の経歴の持ち主です。

考え方や発想が、一般的な日本人と大きく違い、何かと気づかされる点が多々ありました。それらを要約して、一部を紹介させていただきます。



・女は男を永遠の子供だと思っている。「もうちょっと大人になれば」と、女は男に言いたい。動物でも、オスはずっと遊びたがっている。なんとなくじゃれたりして、子供っぽい

・群れをつくらない生き物のメスは、獲物を獲得する体力と、自分のテリトリーを守る体力と、子供を守る力がなければならない。メスは真剣

・男は永遠に大人になれないし、女は子供のころから大人である

・深い知恵と豊富な体験をもって部族や社会に貢献するという、役割を果たせるようになったとき、その生き物は大人になる

・死線を越えれば、もう死は怖くない。死ぬときがくれば死ぬ。それまで、がむしゃらに生きていこうと思うようになるのが生命力

・動物園の動物は、捕らわれているから、精神的に死んでいる。だけど、野生の動物は、生命力にあふれている。人間がしょんぼり見えるのは、動物園の動物と同じ。いつでも、食べ物にありつけるし、命をとられる緊迫感を失ってしまっている

・「弱肉強食」という考えは、自然界には合わない。ライオンより鹿が弱かったら、鹿はもうこの世にいない。野生の鹿は、本当は凶暴な獣。足は速いし、敏感だし、鋭いひづめで、人も狼も簡単に殺す

・自分にある強さ、自分にある弱さを自覚すること。強さ弱さは、人によってみんな違う。お互いにそれを比較する必要はない。その違いを尊重すること

・子供たちは、みんなちょっと曲がったところがある。それは、悪くない。でも、社会は、使いやすい真っすぐな木を欲しがる。「学校に行きたくない」子は、曲がった木と同じで自然のまま。しかし、名人でなければ、曲がった木の使い方はわからない

・「やりたい、食べたい、行きたい、見たい」。その気持ちを育てるのが大切。学校がちゃんとやれば、子供は飛びつく

・ニワトリはケージの中(逃げ出せない環境)にいると、気に食わない弱いものを見つけて、みんなでくちばしでつつき、羽を全部裸にする。つつかれる方は自信をなくして、死んでいく。人間も同じ。反自然の状況にいると、ストレスがたまり、そういうことになる

・仕事は本来、社会での自分の役割を果たすためにするもの。動物が、自分本来の役割を果たすことで、群れに属しているように、人間も、自分本来の役割を果たすために、社会につながっていくべき。働くとは、本当はそういうこと

・どんな生き物でも、命をとるとき、掟がある。その生き物の霊の許しを得て、その生き物に恐怖や痛みを与えてはならない。素早く命をとるのが原則

・先住民たちは、「自分の今の行いが、七代先に、いい影響を与えるかどうかを考えてから行動せよ」と言っている

・男は、動物が警戒するようなからだにつくりになっている。山に行って、動物に襲われるのは、ほとんど男。女はあまり襲われない。動物は男が怖いから襲う。女はあまり怖くない。動物たちから見れば、男と女は違う生き物

・民族は、その民族の言葉で考えている。その言葉がなくなれば、民族のアイデンティティがなくなり、白紙になる。だから、支配しようとする側は、相手の言葉を計画的に奪う

・言葉は食べ物と同じ、伝統と同じ、大地の一部。だから、風土とは切り離せない

・アメリカの歴史を見れば、二十年おきに戦争を起こしている。戦争を起こさないと存在できない国

・自然界では、死は目の前にある。すぐ隣にある。わざわざ死を選ぶ必要がない。山道を歩いていて、ほんの少し足をくじけば、餓えて死ぬ。自然界は、死と紙一重の世界



人間は、もはや野性の動物ではないですが、動物の掟を無視していいというわけではありません。本書には、動物の掟とは、どういうものかが記されています。その掟を忘れることによる弊害は、他の動物たちだけでなく、人間にも大きく及んできます。

野性から離れれば離れるほど、動物の掟を、しっかり学ばないといけないのかもしれません。


[ 2013/01/24 07:01 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『行為の意味―青春前期のきみたちに』宮澤章二

行為の意味―青春前期のきみたちに行為の意味―青春前期のきみたちに
(2010/07/06)
宮澤 章二

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本のタイトルは、心理学書や哲学書といった感じですが、意外にも、本書は詩集です。著書は、「ジングルベル、ジングルベル、すずがなる」の作詞者として知られる詩人です。5年ほど前に、亡くなられました。

その著者が、30年に渡り、中学生向け教育冊子に連載した詩を収めたのが本書です。世代を超えて、伝わってくるものがあります。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「原点について」 鳥が鳥である原点、それは翼を持ったこと。魚が魚である原点、それは水中に生まれたこと。ぼくらは人間の原点について考えたことがあるか・・・

・「若葉の道」 どんなに古い木でも、若葉だけは新しい緑。新しい緑に包まれた木は、新樹。この道を忘れていなかったろうか。あくせくしすぎていなかったろうか。夢が縮んでいなかったろうか。あなたの命が伸びる若葉になる。私の命も歌う若葉になる

・「自分で見つけながら」 やりたいことがないよ、なんて言うな。やっても仕方がないよ、なんて言うな。どうしてもやらなければならないことが、人間のつくる社会には無限にある。それは何か、それはどこにあるか。みんなが自分で見つけながら生きている

・「見えないものを」 枯れたように見えて、本当は枯れない枯れ野いっぱいの草たち。どこかに種子もこぼれている、数えきれないほどこぼれている。見えるものばかりに目を注ぐとき、残るのは虚しさだけではないか。見えないものたちを信じよう

・「だれに見られなくても」 花はだれかのために咲くのではない。だれに見られなくてもいいではないか。花たちは、みな自分のためにひらく

・「ぞうきんのうた」 水洗いされたぞうきんは、あちらこちらの汚れをふき取り、自分はいつも真っ黒になる。相手の汚れを自分の汚れにすることで清め、冷たい水で洗われ続け、自分はぼろぼろになってゆく

・「母と子の季節」 母は春の大地。子どもらは、そこから立ち上がる。子どもらは、そこから一歩を踏み出す。母は夏の青空。そこへ向かって、子どもらは手を振る。そこへ向かって、子どもらは飛ぶ

・「あなたに語りたい」 お父さんもお母さんも何かを求め続けてきた。それをあなたに語りたい。お父さんもお母さんも何かを知ろうと努めてきた。それをあなたに語りたい。お父さんもお母さんも一生懸命に生きようとしてきた。子供らよ、それをあなたに語りたい

・「耐える」 風や雨に耐える。長い時間に耐える。すべて耐えることの意味の深さ。急ぐことなく耐えて、耐えながらおのれを鍛えて、そこに初めて開ける真新しい風景よ。私たち一人一人に成長の重さを語れ

・「身構えているもの」 自分の力は自分で溜めなければならない。それこそ自らが生きている証拠。聞こうと身構えている者たちの、泳ぎ出そうと身構えている者たちの、伸びようと身構えている者たちの、熱い気迫がむんむんとあふれる早春の大地に私も立っている

・「別れの季節」 「成長したね」という言葉にうそはない。「これからだね」というのも正直な言葉。「がんばれよ」と励ましてくれる言葉を素直に信じて、前進を心に誓う季節。人の好意を、その時疑ってはいけない

・「マラソンの季節」 マラソンランナーは走る。スタートから自分の足を信頼して。自分のからだの調子も、自分のペースの配分も、一番よくわかっているのは自分だ。この世に生きる誰もがマラソンランナーになる時を待つ。孤独感と疲労感を自分で克服しながら

・「試されている」 走り抜く、やり抜く生き抜く。ありふれた言葉のように見えるけれど、本当はこれらの言葉によって、僕らの日常も、生涯も、人知れず試されているのだ

・「行為の意味」 <心>は誰にも見えない。けれど、<心づかい>は見えるのだ。胸の中の<思い>は見えない。けれど<思いやり>は誰にでも見える。温かい心が温かい行為になり、優しい思いが優しい行為になるとき、<心>も<思い>も、初めて美しく生きる

・「一心不乱に」 道に迷うことがあっても、独りぼっちになる時があっても、アリは絶対に絶望なんかしない。絶望なんかしているひまがないくらい、僕らは一心不乱に歩きたい

・「出発の意味」 「進もう」と決意するからこそ道がある。自分の道は自らの努力でしか歩けない。それを身をもって確かめるための出発

・「ことばの風景」 家という場所は、「おかえり」のひと言で明るくなる。「ただいま」のひと言で暖かくなる



若者にいちゃもんをつける年寄りが多くいます。老人の若者への嫉妬ほど醜いものはありません。本書は、若者への温かい眼差しに満ち溢れた詩集です。

本書には、若者を育てていこうとする美しい心があります。この心こそ、人間社会にとって、一番大切なものではないでしょうか。


[ 2012/12/24 07:03 ] 育成の本 | TB(0) | CM(3)

『堤未果と考える・人はなぜ同じ過ちを繰り返すのか』佐治晴夫

堤未果と考える  人はなぜ、過ちを繰り返すのか?堤未果と考える 人はなぜ、過ちを繰り返すのか?
(2012/07/06)
堤 未果、佐治 晴夫 他

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本書は対談本ですが、宇宙科学者である佐治晴夫さんの発言が、本質をとらえていて、秀逸だったので、佐治晴夫さんの部分だけを採り上げさせていただきました。

宇宙ばかりでなく、時代、生命、未来、教育についても言及されています。これらの一部を要約して、紹介させていただきます。



平常時に書かれたマニュアルで、有事や緊急時に対処しようとしても、まったく役に立たない。小惑星探査機「はやぶさ」も、マニュアルどおりやっていたら成功はしなかった

・想定外という言葉は、マニュアルにないという意味。マニュアルについての考え方が甘かったということ

・地球は薄皮饅頭のようなもので、その薄皮の上に山があり、街があり、人が住んでいる。言うなれば、ダイナミックな活動をしている地球の上に住まわせてもらっているのが人間。人間が地球に対して「地球にやさしく」など、言ってはいけない

・人間はヤドカリさせてもらっている。自然界に順応して共存していくしか道はない

・「こんな原発を誰が、どうして造ったんだ」と騒ぐ人は、一つ間違えば核ボタンを押す人にもなる。ワーッと騒いでパニックになる人には、核ボタンを押してしまう人との共通項があることに気づかなければならない

・速く走る車ほど、早く止まることができなければならない。これが車を造る上での倫理

・動物は自然に順応できるように自分を変えていった。ところが、人間は自然の方を変えようとした。そこに大きな違いがある

・有名店のおいしいパンを食べたら、スーパーのパンを食べられなくなる。それを是正するには、相当なエネルギーがいる。そこに必要なのは、代替の価値を見つけること

・目というものは、自分で好きなように対象を見る。その点、耳の方が優れている。目は見たいようにものを見る特性が顕著

・ゆらぎがないというのは、精神疾患。心の病気になると、一つのことに取り憑かれてしまって、ゆらぐことができなくなる

・ローマ帝国が制覇した後も、各国に受け入れられ、長持ちしたのは、クレメンティア(寄り添って受け入れる)の精神があり、占領しても、相手の国のやり方を尊重したから

集団を作るメリットは、みんなで安全を確保しながら生活できること。家族や環境など大事なものが危険にさらされると、外敵から守るために、人は立ち上がる。それによって、戦うという行為が必然として発生した

・人間の原始的な段階(戦争に発展する前の段階)に戻ることに、戦争を終わらせる基本がある。共にご飯を食べ(共食)、共に育て(共育)、共に感じ合う(共感)が大切にされていれば、戦争から遠ざかれる

人権を主張する団体の大半は、自分の主張ばかりで、相手の人権を考えていない

・自分の顔を自分で見れない。相手の顔は見えるが、自分の顔は鏡に映しても左右反対。写真が自分の顔とも言えない。だから、私の表情は、あなたの表情の中に見るしかない

原爆を落とした人は、防御反応として「正義」と思わないと、精神状態がおかしくなる

・教育とは待つこと。教育は、どこまで待てるかが勝負

・人間であるということは、大きい脳をもって、考えることができるということ。そして、考えるとは、想像できるということ。想像できるということは、夢を描ける能力があるということ。人間は、夢を描くことで、生きていけるところがある

・古い陶器などでも、いびつな形の中に美しさを秘めたものがある。人間でも、きちんと型にはまった人より、どこか破れた部分(いびつさの魅力)があって、素敵な人がいる

・学問とか智恵というものは、直感なしに成り立たない。孔子が「四十にして惑わず」と言ったのは、四十歳くらいになると、そろそろ直感が出てくるよということを言っている

・科学は「驚き」と「なぜ」。しかし、「なぜ」と問う前に「驚き」がないと、科学にならない。教育とは、まず、驚かせて、次に、「なぜ」に火をつけること



さすが、科学者であり、教育者である著者の見識には、目を見張るものがあります。

本書は、日常においても、同じ過ちを繰り返さない(理性で物事を考える)ための一助となるのではないでしょうか。


[ 2012/12/12 07:03 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす』宮本亜門

引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす (NHK出版新書 389)引きだす力―奉仕型リーダーが才能を伸ばす (NHK出版新書 389)
(2012/10/05)
宮本 亜門

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宮本亜門さんは、ネスカフェのCMに出ていた20年前ごろから全く変わっていないように感じます。実績を積むと、人間は知らず知らずのうちに、偉そうになっていくものですが、低姿勢のままです。不思議だったので、その秘密を探るべく、本書を読みました。

本書には、宮本亜門流リーダー論が記されています。それは、自立した専門家集団を束ねるのに、最適なものです。奉仕型のリーダーは、今の時代に求められています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・僕の役目は、舞台初日に向けて、役者やスタッフの良さを引き出す舵取り。関わる人が、力を最大限発揮し得る環境を作り、ワクワクした創作現場にすること

・役者という肩書よりも大切なのは、生の人間がライブで存在することで、お客さんに直接伝わる感動。それは解放されたエネルギーから発せられる。そこに人は魅せられる

・自分の人生しか踏んでいない父親が、「自分の生き方こそ正しい。だからこうするべき、こうしてはいけない」と、子供を一つの枠組みに無理にはめ込むのがよくないのと同じで、リーダーは、みんな違う人間と認めて、個性や才能を引き上げ、共に成長するのがいい

・「演出家という職業になるのが目的」ではなく、演出家という職業を使って、「観客に感動を与え新しい考えを伝えていくことが目的」

・「いいよ」は、「ダメ出し」ではない「いいこと出し」。いいよが、人をもっとよくする

気づいたことを提案する時は、「ダメ出し」ではなく、「ノートにとったこと(気づいたこと)を言わせてもらう」という言い方に変えている

・親鳥のえさを待っているような甘えた行動の奥には、誰かが自分の道を切り拓いてくれるという他力本願な思いが渦巻いている。そういう姿が見えた時には、「やりたくて選んだ仕事だよね。自分の責任として、自由に自分で判断してほしい」と言うことにしている

・リーダーは、周りから一目置かれがち。その距離を縮めるべく、あえて自分から、できる限りさらけ出すことから始める

・子供のころから学んだ「ちゃんとする」教育のせいで、オーディション会場で、緊張が邪魔をし、その人の魅力が出ない。嫌な人と思われたくない、申し訳なくて言えないといった世間体や気遣いが入る。和を尊ぶことが、深層心理に植えつけられているのは問題

・意見を出し交換し合えると、共に創る実感が得られる。ブレーンストーミングのメリットは、参加した人がその議題にコミットしたことで、全体の中での自分の役割をよりはっきり認識できるようになり、自分のこととして、実行に移していけること

・凝り固まった考えは、その人の可能性を潰し、将来の希望を失わせ、段々と無気力にさせるだけ。役者でも伸びる人は、どんどん固定観念を壊そうとする

・褒められることに慣れていない役者には、躊躇なく、しつこく褒め殺す。相手に嘘だと言われても、あきれられても大丈夫。何も悪いことをしているわけではない

・人にはない輝きを放てる才能を持った人は必ずいる。それなのに、リーダーが、今までの歴史や実績を意識し、会社や自分の過去に囚われて、新しい試みができなくなるのはもったいない。組織は、新鮮な風が入ってくることで、これまでにない可能性が広がる

・もの作りをする上で、気をつけているのは「観客の想像力にゆだねる」ということ

・予算はどんなことにも関わってくるが、お金の話の振り方、持っていき方によっては、周りのメンバーのやる気をなくさせてしまうことを、リーダーは知っておくべき

・いくらやりたい仕事でも、忙しすぎて時間がなくなると、心の余裕がなくなり、楽しさは消えてしまう。そして、いつの間にか文句が多くなり、仕事が進まないことを、人のせいにするようになる

・シェークスピアの言葉通り、どんな方法であれ、まるで舞台に立つ一人の役者を見るかのように、自分を俯瞰で見ることができた時、はじめて自身の立ち位置を確認できる

・本や雑誌を作っている人で、紙や印刷のインクが好きだから、この仕事を選んだ人はそういない。それより「人に何かを伝えたい」の思いこそが目的、すなわち北極星のはず

俯瞰して見ることは、自分らしさが自分勝手なものになったり、自分だけの凝り固まった「幸福の物差し」で他人を計ってしまうことを抑制してくれる



目的を一つ上に置くこと、自分を俯瞰して見ること、この、高い頂に飛んでいく感じが、宮本亜門さんの、ふわっとした雰囲気の要因かもしれません。

とにもかくにも、リーダー自身が、「一歩先」にいて、「一段上」にいれば、メンバーに対して、いくらでも低姿勢になれるのかもしれません。奉仕型リーダーについて考えるのに、最適かつ有益な書ではないでしょうか。


[ 2012/12/05 07:03 ] 育成の本 | TB(0) | CM(1)

『選択日記』シーナ・アイエンガー

選択日記 The Choice Diary選択日記 The Choice Diary
(2012/07/20)
シーナ アイエンガー

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本書は、前の会社の上司であったFさん(「文化と達成」ブログを執筆)にいただき、読みました。

著者は、インド系の女性で、全盲ながらコロンビア大学ビジネススクールの教授を務められています。本書の内容は、「選択を記録し、評価するだけで、人生が豊かになる」というものです。

実際に、コロンビアビジネススクールで、その道のトップレベルになる力を養成するプログラムで実践されてきたものです。参考になる点が幾つかありました。それらの一部を紹介させていただきます。



・人間の「選択」には、二つの方法がある。一つは、条件を一つ一つ検討して決める「理性による選択」、いま一つは、「直感による選択」。その道の第一人者と呼ばれる人は、この両面をあわせた方法で「選択」している。それが「経験にもとづく直感

・「選択」において、人が失敗するのは、人間の認知システムが様々なバイアスによって歪められているから。適切な「選択」ができるためには、自分が行った「選択」をそのままにしておかずに、書き留め、その結果を折りにふれて評価することが必要になる

・「選択日記」は、「自分の行った選択」「そうするにいたった思考プロセス」「判断に用いた情報」を書き留め、その後、その判断について、「結果を自分で評価」「なぜ、うまくいったか、いかなかったか」を考える、というもの

・選択をするとき、私たちの脳は近道をしようとする(直感を使おうとする)。直感が判断のよりどころにするのが記憶。ところが、記憶は一定の方向に偏っている。人は、記憶の中の取り出しやすい情報を重視することが多い

・たくさんの選択肢を与えられたとき、一番思い出しやすいのは、最初と最後に出てきたもの。選択肢の内容よりも、それが現れた順番に判断を左右される

・記憶は情報の鮮明さや、入ってくる順番、頻度に大きく影響されるため、当てにならないことが多い

・大多数の人よりは目立ちたいが、奇抜で孤独な少数派にはなりたくない。その結果、他人の目を気にして、自分の意に沿わない選択をする。逆に言えば、人は自分がどう見られたいかを基準にして選択をするものである

・私たちは、日常生活において、自分の意見を裏付けたり、以前行った選択を正当化する情報のみを受け入れる。しかし都合の悪いことも直視することが必要

・理性で行う選択には、定量化データに頼るという致命的欠陥がある。定量分析では扱いにくい、感情に関わる事項がないがしろにされる。感情的側面も含めての「選択」には、「理性」と「直感」の「最適解」のゾーンが無意識のうちに見えてくる「選択日記」が有効

・人間の知覚判断には限界がある。どんな感覚でも、ほとんどの人が5つから9つまで(7±2)のものにしか対処できず、それを超えると、知覚の過ちを犯しがちになる

・選択肢が多すぎると、三つの弊害が起きる。1.「選ばなくなる」2.「ひどい選択をするようになる」3.「選んだ結果に満足しなくなる」。顧客の立場に立つなら、選択肢を絞ってあげることが必要

・個人主義社会では、「選択」の際、まず「自分」を中心におく。集団主義社会では「選択」の際、「私たち」を優先する。自分を、家族、職場、村、国など自分の属する集団との関係性でとらえる。見合い結婚と恋愛結婚はまさに二つの世界を象徴する「選択」

・自分のなじみのない「選択」の言語を学ぶことで、逆に自分のいる世界のことがよくわかってくる。常に異なる価値体系について考えることで、自他をよりよく理解できるようになる

・「一つのことを1万時間やり続ければ、その道で一流になれる。1万時間費やした人は、やり遂げるという意思を持って、何度も選び続けた人」(ビル・ゲイツ)

・成功した個人に共通する資質の一つが、「継続する意志」。目的を達成するために、継続しているうちに、次第に周りが脱落していき、自分が残っていく

・「人生とは、すべての選択が積み重なったもの」(アルベール・カミュ)

・そのブランドを選ぶとき、あなたは過去の思い出を買っている



本書には、
上欄に「下した選択」「日付」「選択にいたるまでの思考プロセス」「用いた情報」、
中欄に「結果」「日付」「点数・1~10点」、
下欄に「なぜ、うまくいった、うまくいかなかったと思うか」「日付」「点数・1~10点」
の選択シートが付いています。

選択の機会があるごとに、これに書き留め、結果を振り返っていけば、豊かな人生が切り開かれていくのではないでしょうか。


[ 2012/11/21 07:00 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『甘えの構造』土居健郎

「甘え」の構造 [増補普及版]「甘え」の構造 [増補普及版]
(2007/05/15)
土居 健郎

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この本の初版は昭和46年です。40年以上経っても読まれている名著です。著者は、東大医学部教授などを務められた精神科医です。3年前に亡くなられました。

本書は、40年前に、日本人にある「甘えの構造」を見事に解明したものですが、40年経っても、日本人の精神構造はちっとも変わっていません。ゆえに、本書が不朽の名著と呼ばれるのかもしれません。

著者が、40年前に指摘した日本の精神構造の中から、大いに納得できたところを、紹介させていただきます。



・「自分がある」人は、甘えをチェックでき、甘えに引きずられる人は、自分がない

・日本人の甘えに対する偏愛的な感受性が、日本の社会において、タテ関係を重視させる原因となっている

・恩というのは、人から情けを受けることを意味し、恩は義理が成立する契機となるものである。言い換えれば、恩とは、恩恵を受けることによって、一種の心理的負債を生ずることをいう。義理とは、恩を契機として、相互扶助の関係が成立することをいう

人情を強調することは、甘えを肯定することであり、相手の甘えに対する感受性を奨励することである

遠慮の有無は、日本人が内と外という言葉で、人間関係の種類を区別する場合の目安となる。遠慮がない身内は、文字通り内であるが、遠慮のある義理の関係は外である

・日本人にとって、内と外によって態度を変えることは当然なことと考えられているので、身内には、わがままを言い、外では、自制することを誰しも偽善とか矛盾とは考えない

・日本には、集団から独立した個人の自由が確立されていないばかりでなく、個人や個々の集団を超越するパブリックの精神も至って乏しい

・日本人にとって、内と外の生活空間は、三つの同心円からなり、一番外側の見知らぬ他人に対しては、一般に無視ないし無遠慮の態度が取られる。しかし、これは見知らぬ他人が、何ら脅威を与えない時のことであり、いったん脅威となると、態度は俄然変ってくる

・日本人の場合、自分が属している人たちの信頼を裏切ることに、最も強く罪悪を感じる。罪悪感は人間関係の関数といっていい

・罪は価値の内面化に由来し、恥は他人の非難に由来する。よって、人間の自立を謳歌した近代の西洋において、恥の感覚は疎んじられてきた

・甘えの心理的原型は、母子関係における乳児の心理に存することは明らか

・「東洋人の思惟方法を比較研究した結果、日本思想の特に顕著な傾向は、閉鎖的な人倫的組織を重視するということ」(中村元)。これは、日本人の甘えの心理を言い換えたもの

・甘えの世界を批判的否定的に見れば、非論理的・閉鎖的・私的ということになるが、肯定的に評価すれば、無差別平等を尊び、極めて寛容であると言える

恥じらう者は、相手に自分の気持ちが受け止められないので、いたずらに内向し硬化して、それが対人恐怖となって現れている

・「周囲に対する恥の意識」から「周囲に対するおびえの意識」への変化は、社会が個人の恥じらいを受け付けなくなったことに起因する

・日本人はくやしい感情を持ち、また奇妙なことに、それを大事にする。そこで、歴史上の人物で、くやしさを充分経験した者と同一化し、その人物を持ち上げることによって、自分自身のくやしさのカタルシスをはかっている

・「自分がある」とは、集団を否定することには存しない。集団所属によって、否定されることのない自己の独立を保持できる時に「自分がある」

・日本では依存的な人間関係が、社会的規範の中に取り入れられているのに、欧米ではそれを締め出しているために、日本では甘えが発達し、欧米では発達しなかった

・日本では、個人の自由といっても、個人が個人のまま自由なのではなく、所属集団と関係のない集団に参加することによって初めて自由を獲得できる



昔より、日本人は、内集団に甘く、外集団に冷たいと指摘されています。それが、「正社員と非正社員の関係」「いじめの論理」「系列と下請け」「派閥・同窓、同郷、同族意識」などを生んでいます。

それは、ムラ(田舎)で有効の論理であって、マチ(都会)の論理としては足かせになるのですが、未だに、その呪縛にとらわれてしまっています。そろそろ「甘えの構造」をなくす時期に来ているのではないでしょうか。


[ 2012/10/18 07:01 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『生きていくための短歌』南悟

生きていくための短歌 (岩波ジュニア新書)生きていくための短歌 (岩波ジュニア新書)
(2009/11/21)
南 悟

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著者は、神戸の定時制高校で教える国語の先生です。25年以上前から、授業で、生徒に短歌を詠ませています。その集大成が本書です。

恵まれていない境遇で、もがき苦しみ生きていこうとする生徒たちの言葉に感動します。拙い言葉であっても、生活実感から湧き出た言葉は、虚飾に彩られた言葉を凌駕するものです。思わず感情移入してしまった短歌を幾つか紹介させていただきます。



・「鉄工所作業服に身を包みボール盤と毎日格闘」(田中政充)

・「中華屋さん注文聞いて客席へおいしいの言葉めっちゃ嬉しい」(松本咲夢)

・「腹立つわぜんぜん仕事決まらないボクシング練習ストレス発散」(吉野鉄生)

・「レジ打ちでお金もらい忘れ怒られてパートさんに慰められる」(北川一樹)

・「ラーメン屋朝早くから準備をしトンコツチャーシュー注文こなす」(東内佑弥)

・「ひきこもり中学行かずに定時制夜の生活僕を励ます」(藤田翼)

・「人なんて結局自分が大切で私の友は安定剤」(麻里)

・「夜学にはきびしさもなく自由がある楽しい学校夜間学校」(永井新平)

・「工場の昼なお暗い片隅で一人で向き合うフライス盤」(久保木和幸)

・「世間から冷たく見られる定時制それでも頑張る仕事と学校」(上野義弘)

・「一日の乗務を終えて洗車する満天の星の下われは小さし」(小峰文子)

・「遊ぶ時探して僕ら今生きる働き学ぶ暮らしの中で」(東和男)

・「仕事場の人間関係難しく夜学に通い生き方学ぶ」(菊池栄二)

・「早朝の車まばらな国道のガソリンスタンド一人掃除する」(谷川保)

・「解体屋まじでこの道極めたる楽ではないがあとは根性」(福永伸幸)

・「嬉しいなあやっとバイトが決まったぞうどん屋さんで頑張るぞ」(佐伯健治)

・「解体の木材運びけが続き治す暇なく夜学へ走る」(辻雄一郎)

・「炎天下長袖作業着暑苦し日照りに目くらみ足がもたつく」(立山真一)

・「溶接の火花するどくマスクを通す目の充血で眠れぬ痛み」(桑原一生)

・「震災で壊れた街に灯をともす俺の死に場所神戸と決めた」(豊永文一)

・「魚屋をなめてかかった一五才仕事しんどい誰か助けて」(多田幸輔)

・「靴加工削りくず飛び顔につくスポーツシューズ二四〇足完成」(松榮恭平)

・「パチンコ屋玉が出ないと客怒るいらつきながらも頭を下げる」(長沼斉房)

・「デリバリーお届けしますカツ丼を店を任され大忙しだ」(古木晴久)

・「父と母恨んだ日々は何処へやら今では父の分まで生きる」(西山由樹)

・「今日もまた仕事で秋刀魚開いては匂いまみれで学校へ行く」(北田巨人)

・「一日中道路工事でしんどいな三日頑張れ給料日まで」(平野裕樹)

・「祭日も現場に出ては汗流し夕日を背に浴びツルハシ振るう」(山下寿徳)

・「スーパーで働き始めてはや三年野菜のブツ切りあっこにお任せ」(中野明子)

・「夜明け六時オトンと二人現場行き腰道具付け大工の仕事」(結木涼)

・「金メッキプリント基盤メッキする基盤は高いが給料安い」(安本大輝)



石川啄木などの俳人詩人は、自らの意思で貧しい境遇に身を寄せ、その生活を描きました。本書の定時制高校生は、貧しく歪んだ家庭環境から、抜け出そうとする姿をリアルに描いています。同じ貧しさでも、つくられた貧しさではないから、リアルです。

名もなき定時制高校生の作品ですが、ズシリと重いものを、われわれに投げかけてきます。彼ら彼女たちの人生に幸あれと願わずにいられない書でした。


[ 2012/09/27 07:01 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)

『子どものための世の中を生き抜く50のルール』チャールズ・J. サイクス

子どものための世の中を生き抜く50のルール子どものための世の中を生き抜く50のルール
(2011/02)
チャールズ・J. サイクス

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著者のチャールズ・J・サイクス氏は、アメリカのコラムニストです。新聞やテレビ・ラジオで活躍されている方です。

本書は、甘やかされて育ったアメリカの子どもたちが増えてきていることに警告を発し、子供のうちから、親として教えておくべき人生の現実を綴ったものです。

子育てに困る親の姿は、日本と瓜二つです。この「現代の子育て論」は、万国共通に参考になるように思います。要約して、その一部を紹介させていただきます。



・「ひとりの人間からどれだけのものを奪おうとも、最後まで奪えないものがある。それは、どんな状況に置かれても、自分がとるべき態度、とるべき道を自ら選ぶ自由」(フランクル)

・「非現実的な希望と、未熟な自己主張と、根拠のない過大な自己満足を身につけて育ってきたのが、いまの若い世代」(ロイ・F・バウマイスター)

・自分を過大評価している者は、他者を疎外しがち

・「幸せな人と呼べるのは、自分の幸福以外のことに気持ちを注いでいる人だけ」(ジョン・スチュアート・ミル)

・批評家たちは、「ねたみ」を高潔な感情として、また「恨み」を公正さを求める熱意として飾り立てる

・「自尊心は人生の成功にはつながらない。自己鍛練自制心こそが、成功のカギとなる」(ロイ・F・バウマイスター)

・自立する唯一の方法は職につくこと。それは、汚れたり、嫌な臭いがつく仕事かもしれない。しかし、仕事の種類は、人としての価値を低めたりはしない。怠け者他人に頼っていることのほうが、ずっと恥ずかしい

・マクドナルドの仕事を経験した者のほとんどが、よりよい職につくためのスキルを身につけている。マクドナルドは仕事の基礎を身につけさせる、事実上の職業訓練プログラムとして機能している

怒りを克服すること。他人は君たちを困らせ、うんざりさせ、怒らせ、憤慨させ、イライラさせる存在である

・愛とは単なる感情ではなく、行動を伴うもの。気持ちがあるかどうかは問題ではない。何をするかが問題である

・「良心とは、訪ねてきて居座る義理の母」「良心とは誰かが見ていると警告する内なる声」(H・L・メンケン)

・迷惑な相手にも礼儀正しく接し、間抜けな相手とも笑顔で握手し、気に入らないプレゼントにも感謝のふりをし、退屈な話やくだらない冗談にも興味あるように反応する。これらはいずれも、よいマナー。偽善ではなく、洗練された大人の行動

・大企業の経営者の調査では、ウエイター、秘書、保険外交員などに接するときの態度がその人物を知るための信頼できる評価基準になると全員が答えた。目上の者には礼儀正しく、目下の者には、横柄な態度をとる人物は、すぐれた人物ではないということ

・「人生の勝者は常に、自分ならできる、自分はこうする、自分はこうだというふうに考える。一方、人生の敗者は、自分にはできない、こうしていたら、こうすべきだったという考えにとりつかれている」(デニス・ウエイトリー)

・敗者は、都合よく自分を正当化できる考え(敗者の哲学)を受け入れ、勝利に導く価値観を否定する方法をずる賢く見つけ出す

・考えること(合理的思考)を忘れた人たちは、無防備な状態に陥り、そのときの風潮や流行に流され、次から次へと、無意味な旗印を追いかける

・「最後には、人は、自分が生きる意味を問うのではなく、生きることで自分が何を期待されているのかを問わなければならない。そして、生きることに責任を持つことによってのみ、その問いに答えることができる」(フランクル)

・「人生は不公平だ。それに慣れるしかない」「実社会は、自尊心など気にかけてくれない」「学校の先生より、将来の上司はもっと厳しい」「ハンバーガーショップで働くのは恥ずかしいことではない」



本書は、子供たちへの説教であり、親たちへの警告です。これを「うるさい!」「偉そうに・・・」ととるか、「叱咤激励」ととるかは、その人の心の土壌によって変わります。

アメリカも子育てや教育に相当悩んでいるように感じました。その中から出てきた言葉の数々に、耳を傾けるべきものがあるのではないでしょうか。


[ 2012/08/29 07:01 ] 育成の本 | TB(0) | CM(2)

『大胆推理ヒトの進化から探る知性の本質』井上豊

大胆推理ヒトの進化から探る知性の本質―こどもに伝えたい本当の頭の良さ大胆推理ヒトの進化から探る知性の本質―こどもに伝えたい本当の頭の良さ
(2012/02/03)
井上 豊

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著者は、県立高校の教頭を経て、医療福祉大学の准教授になられた方です。この本では、「本当の頭の良さ」をテーマに執筆されています。

教師時代の経験をもとに、頭の良さとは何かを大脳生理学的に、明らかにされています。学校での実例も多く、面白く読むことができました。その要約を、紹介させていただきます。



・困難こそ、学習により獲得した知識の、実践の場であると同時に、進歩の原動力

・高齢になるにしたがって、大脳前頭葉だけが急速に委縮するとと、理性と感情のバランスが崩れ、怒りを爆発させて、癇癪を起こして、感情を抑えられなくなる

・沸き上がる「怒りの感情」をコントロールできなくなってキレる若者は、癇癪を起こす認知症患者に似ている。原因は、大脳前頭葉の成長の遅れ、すなわち「発育不全」にある

・脳は小学校入学までに、基本的なところは完成するが、大脳前頭葉だけは、20歳くらいにならないと完成しない。そのうえ、成長のスピードにも個人差がかなりある。若者の中に大脳前頭葉の成長が遅れている者がいても、少しもおかしくない

・大脳前頭葉は、感情をコントロールするだけでなく、目的意識向上心創造性などに関係する重要な器官だが、その成長は遅く、そのうえ老化の影響を受けやすいなど、極めてデリケートで故障しやすい側面を持っている

・体温維持・食欲・性欲などに係わる「古い脳」は、下等動物から使い続けられ、進化を通じて、完成度を増してきたので、滅多に不具合は起こらない

・酒乱の人たちは、アルコールの影響を受けやすく、大脳前頭葉が働かなくなる。気に食わないことに怒り、暴言・暴力で人を傷つける。「キレる」「癇癪」の状況と全く同じ

・昔の子供は、早くも赤ちゃんのときにキレていた。このキレることを「かんの虫が起こった」と言った。泣いて、ときにキレて、泣き疲れて寝る。不快・怒りの感情をうまく手なずける方法を身につけて、何事にも耐え、ガマンして毎日の生活を送っていた

・学級崩壊もADHD(注意欠陥/多動性障害)の子供たちが深く係っている。このADHDの直接の原因は、大脳前頭葉がうまく働いていないため

・ADHDの子供たちは、ふざけてやっているわけではなく、意地悪でも、面白がっているわけでもない。本人自身が、自分をコントロールできない。つまり、ガマンを強いられず、快適な環境でずっと育った結果、大脳前頭葉の成長が遅れたため

孫を溺愛する祖父母が、いつでも孫の味方につくほど、子供はキレやすくなる

大脳前頭葉の発達を促すには、1.「なすべき目標・目的を持つ」2.「イヤなことから逃げない」3.「自分を甘やかさない」4.「やるべきことはきちんとやる」5.「感情をストレートに出さない」6.「面倒なことから逃げない」7.「どんなことでも最善を尽くす」

・動物の頑張りは、「生きるため」「子孫をのこすため」という強烈な動機が引き金になる。要は、動機こそが頑張りの源。ダラけた生活の原因は、強烈な動機がないことにつきる

・人間は、自分の目標をどのくらいはっきり自覚するかどうかで、頑張れる度合いが決まる。そして、目標を持った人ほど、強く、たくましく、充実した人生を送ることができる

・感受性は、心ときめく「プラスの感動」と、不安を生み出す「マイナスの感動」の振幅差。振幅差の大きい人は、受ける感動も大きい割に、落ち込むと、とことん落ちてしまう

・扁桃体のおかげで、恐れや恐怖心が生まれ、危険な状態から回避できる。実は、怒りの感情も、扁桃体が生み出している。怖くて、怖くて、体がすくんでしまったとき、最後の反撃に「怒り」が必要になる

・不安を解消するには、やるべきことをきちんとやり、それでも不安が消えないのなら、もっとやればいいだけ

・「頭の良さ」とは、少しずつ確定していく「努力の跡

・目標・目的がしっかり認識できるようになれば、大脳前頭葉が不安・恐怖などの情動を抑え込み、目的に向かって努力するパワーを生みだしてくれる

・「頭の良さ」に差があるにしても、いくらでも「目標・目的を持って努力すること」で、差を縮めることはできる



大脳前頭葉を発達させること、つまり「頭を良くする」には、「目標・目的を持つ」「我慢する」「やるべきとをやる」「努力する」といった、当たり前のことをきちんとやるかどうかのようです。

飛び道具などありません。地道に、計画したことをやり抜けば、自然と頭が良くなっていくということなのかもしれません。


[ 2012/08/10 07:01 ] 育成の本 | TB(0) | CM(0)