著者は、元日本マイクロソフトの社長です。時々、マスコミにも登場されています。以前聴いたラジオの番組で、自分と似た部分を感じたので、本書を手に取りました。
日本の異端児とも言える著者ですが、世界では常識人です。本書は、この常識人の目で、日本社会と日本人の特殊性を述べたものです。その一部をまとめてみました。
・努力には「時間」がかかる。時間がかかるということは「お金」や「労力」もかかる。そういった「
コスト意識」がないと、ムダな努力を重ねてしまう。だから、努力も「選別」する必要がある
・仕事でたいして使いもしないのに英語を勉強するのはムダ。今役に立っていないスキルが将来役に立つ可能性は低い。どうせやるなら、もっと
仕事に直結する勉強をしたほうがいい
・人に好かれるための努力なんて無意味。好かれる人は何もしなくても好かれるし、嫌われる人は何をやっても嫌われる。そして、ビジネスにおいては「好かれる」必要はない。それよりも「
信頼される」ことが重要
・外資系企業に勤めているなら、20代からがむしゃらに働く意味はあるが、日本の企業の場合、
細く長く働けるようにセーブしたほうがいい。一生サラリーマンで終えるつもりなら、過労死するまで働くなど、もってのほか
・親鸞聖人の教えに「
善人ばかりの家庭は争いが絶えない」というものがある。自分が善人だと思っていたら、相手が自分とは違う考えや行動をとったときに、それは「悪」だと決めつける。「自分が正しい」と思っていたら互いに譲らない。だから、争いが絶えない
・
善人に煙たがられるような人間のほうが、実は自由に生きている
・人を傷つけない人、不愉快にさせない人は、優しい人間のように思えるが、それは自分が
嫌われ者になりたくないだけ。マイナスの要素がない代わりにプラスの要素もない
・善人に憧れる日本人は、
謝罪を好むようになった。戦後60年以上たった今でも中国や韓国に謝罪している。中国や韓国は本気で謝罪を望んでいるわけではなく、外交カードとして要求している現実を、なぜ直視できないのか
・中国や韓国はしたたかで、世界で自国を売り込んでいるし、自国の利益になるためなら平気で裏取引もする。
お人好しの日本人は指をくわえて見ているだけで、技術や人材を盗まれてもオロオロしている
・人には無限の可能性があるといった、きれいごとに騙されてはいけない。人の可能性は有限。
育った環境でその人の将来の9割は決まる
・「ビジネスはしょせんビジネス」。必要以上に会社に「期待」も「依存」もしないこと
・
ムダな努力をしない人は、付き合う人を決め、それ以外の人とは交流を断つ。自分にとって意味を持たない人と一緒にいるのは時間のムダ。話が合わないのに、話題をあれこれ考えるのは労力のムダ
・権力を握ったときに孤独に耐えられる人間こそ、成功者になれる。
孤独のほうが気楽だと思えるタイプ
・友人にも「質」がある。表面的な付き合いをする程度の「友人」なら、いくらでも増やせるが、増やしたところで意味がない
・昔から上から目線でものを見てきたのは、
自分が一番優秀だと思っていなければ、仕事がうまくいかないと考えているから
・「自分が一番すごい」と思っていたら、他人から否定されても、それほど腹が立たない。「この人にはわからないか。しょうがない」と、こちらから
切り捨てられる・北大路魯山人は、「わかるヤツには一言いってもわかる。
わからぬヤツにはどういったってわからぬ」と言っている。わからぬヤツにわかってもらおうと努力するのはムダ
・成功者というのは「後悔しない人間」。どんな結果になっても、すぐに忘れてしまう。「
失敗に興味がない」とも言える。「反省」してもいいが、「後悔」してはいけない
・情報は知るのも大事、知らせるのも大事。情報の量によって自分の将来は決まる。
情報をうまく操れる人がチャンスをつかむ
著者は、合理的に判断する人ですが、そこが、日本人に最も欠けているところです。日本人は、合理的、数学的、金銭的にものごとを考えれば、単純に解決できるところを、感情論を持ち込もうとします。
グローバル間における話し合いの基本は、合理的に解決し、感情論を排除していくことなのですが、その辺りのことが、日本の知識人にもよくわかっていません。本書に納得できる人は、世界のどこに行っても、活躍できるのではないでしょうか。