著者は、5000に及ぶ
不審死体を解剖してきた法医学者です。本書は、豊富な実績をもとに、
不慮の死の原因を詳しく論じるものです。
私たちの身の回りにある死の危険を回避するためにも、本書に目を通すことは重要だと思います。その貴重な内容の一部を、要約して紹介させていただきます。
・「
風呂溺」とは、風呂場における溺死の意味。監察医・検案医として日頃接している突然死のカテゴリーでは、風呂溺が圧倒的に多い。特に、冬場における中高年男性の突然死第1位は間違いなく風呂溺
・満腹かつアルコールの入った状態で、お風呂に浸かると、ふーっと眠くなる至福の瞬間がある。それは、眠気に襲われているのではなく、気絶しかけている。医学用語で、「
一過性脳虚血」という症状。意識が遠のくのは、一瞬、死に近づいていると考えたほうがいい
・日本では、風呂溺で年間1万人以上死んでいると推定される。交通事故で死ぬより、風呂場で死ぬ確率のほうが2倍高い。日本は、
風呂溺大国・鼻や口から水が流入して、完全に窒息したら、タイムリミットは5分。
無酸素状態が5分以上続くと、脳が回復不能のダメージを負ってしまう
・睡眠薬中毒による風呂溺は、比較的若い人に多い。1錠飲んでも効かなかったので、もう1錠飲んで、寝る前に温まろうと入浴するうちに、いつの間にか薬が効いてくる。仕事が忙しい
不眠症傾向の女性などに多いパターン
・
大動脈解離で突然死した人の遺体には
湿布薬が貼られていることが多い。貼られている場所は、左の肩甲骨のあたりで、背中の中心線より少し左側。そこに上下2枚貼ってある。家にある湿布薬を「背中が痛いから貼ってくれ」と、奥さんに貼ってもらうケースが多い
・心臓には知覚神経が通っていないから、心臓がボロボロになっても、心臓自体に痛みを感じない。しかし、「
放散痛」といって、別の部位に痛みとして現れる。心筋梗塞の際の放散痛は、主に左肩や左上腕部に現れる。体のほうで、「
心臓が危ない」と、シグナルを送る
・遺体の腰の部分に湿布薬が横向きに貼られていたら、
膵炎の可能性がある。膵炎を発症している状態は、膵臓と密接な関連がある肝臓にも、重大な異変があることが疑われる
・心筋梗塞の放散痛がもっとも出やすいのは、みぞおちの部分。自覚症状は「おなかが痛い」「気持ちが悪い」「吐き気がする」など。心臓は横隔膜の上に乗った状態で、横隔膜は腹膜に接している。そのため、敏感な腹膜が、心臓付近の障害を
おなかの痛みと感じる
・
ポックリ病で死亡するのは、決まって、日頃から多忙な人。証券会社や広告会社の営業マン、新聞記者、刑事、病院勤務の医師や看護師など、仕事の時間が不規則で、しかも非常なストレスにさらされながら働いている人が多い
・青年突然死症候群には、脂肪肝を持っている死亡者が比較的多い。しかも、この脂肪肝は、なぜか「
非アルコール性脂肪肝」が多く、「メタボ」が関係している
・山では、人の体温を奪う。気温が10℃でも、毎秒10mの風速の「
対流」があれば、体感温度は0℃まで下がる。また、冷たい石や岩に体が接する「
伝導」で、体温も奪われていく
・細菌やウイルスに感染したときには、体を発熱させてしまったほうが、体内に侵入した異物を殺せる。ただし、脳は守らなければならない。頭だけは
ギンギンに冷やすこと
・死後損壊の一種として、動物や虫に死体が食われることを「
蚕食」という。山林に遺棄された死体は、動物によく食われる。屋内でも、ネズミや虫に食われることがある
・どんなに喉が渇いても、
海水を飲むと死を招く。海水を飲むと、赤血球が壊れ、赤血球のカスが腎臓に溜まり、目詰まりを起こし、腎不全の状態になる。どうしても、水分補給したいなら、
おしっこを飲むほうがずっと安全。
・自宅以外の
もの珍しい場所でコトに及ぶと、男性はどうしても、必要以上に興奮する。そして、歳も顧みずにハッスルし、自らの肉体を酷使してしまうのが腹上死のパターン
・「性交渉の相手は、どんなに若くても、
年齢差二回り(24歳)以内に留めておくべき」という、法医学者が書いた論文もある
・性行為中や自慰行為中に男性が急死する場合、どの事例にも共通するのは、死ぬのは決まって射精した後。興奮が高まっていく途中で死亡した例はない。射精するまで死ねないのか、射精後に気が抜けて死んでしまうのか、いずれにしても、
男性は悲しい生き物不審死体という事例から、さまざまなことの原因が見えてくることがわかります。死体が、われわれの日常生活に、警告を発してくれているのかもしれません。
日頃の健康維持対策として、体の予防策として、本書の知識は役に立つのではないでしょうか。