著者は、今までに、世界各地から6000人分の大便を集め、観察して、
腸内細菌を数々発見されてきた研究者です。
まさに、大便のプロ、つまり「大便通」です。世界的に見ても珍しいウンチの大家である著者が、大便についてのウンチクを披露されているのが本書です。興味深い点が多々ありました。それらの一部を紹介させていただきます。
・大便の大部分は水分が占めている。下痢の場合は90%以上が水分だが、普通の健康な大便でも重量の80%は水分。どんなに硬くても、その半分以上は水
・大便の固形成分の3分の1は
食べカス、3分の1は
腸粘膜のはがれカス、残る3分の1が
腸内細菌・水分を除いた大便1gの中には、6000億個~1兆個もの細菌が含まれている。しかも、すべてが同じ細菌ではない。腸内に棲息する細菌は
1000種類以上と考えられている
・口から肛門までつながる消化管は、全長8~9m。胃に入った食べ物は、1食分およそ4時間かけて、小腸(全長6~7m)に送り込まれる
・小腸の役割は消化と吸収だけではない。外部から侵入した異物に真っ先に反応し、免疫活性化の臓器として機能する。そのため
小腸の働きが弱まると、風邪をひきやすくなったり、疲労が溜まりやすくなる。どんな動物も、小腸に病気を抱えると、長生きできない
・小腸から大腸に送り込まれる内容物は、1日に約600ml。大腸では、そこから水分とミネラルを吸収し、マグネシウム、カルシウム、鉄などを排泄する。それが大便として
排泄されるまでの所要時間は、約12時間~48時間
・大腸を通る内容物には「
発酵」か「
腐敗」かのどちらかが起きる。どちらも微生物による分解作用だが、人体に有益なものが「発酵」で、有害なものが「腐敗」
・「臭い」がきつくなるのは悪玉菌の特徴の一つ。
肉をたくさん食べる人の大便によく見られる。オナラに含まれるガスの成分は、腸内に悪玉菌が少ない場合は、窒素、二酸化炭素、水素、メタンガスが大半を占めている。これらは、臭いはほとんどない
・典型的な
大便の色は、黄土色や茶色。これは脂肪の分解・吸収に使われる
胆汁による色づけ。肉を食べすぎると、悪玉菌が増殖して腐敗が進み、大便は黒っぽくなる。そんなに肉を食べていないのに、黒色の大便が出たとしたら、
腸内での出血を疑ったほうがいい
・大便は、便意をもよおしたときに出すのが一番。ただし、排便を促す
直腸の蠕動運動は、1日に1~2回程度しか起きない
・下剤を使っても2週間に1回しか大便が出なかった女性たちに、ヨーグルトを
毎日300gずつ食べさせたら、効果てきめんだった。およそ1週間程度で、大便が出るようになった
・大便がたくさん出れば、有害物質もそれだけ体外に排出される。とくに
食物繊維は、ほかの食べカスよりも有害物質を効率よく吸着するので、おなかの中を掃除してくれる
・死亡数1位はがんで30%。そのがんの中でも、男性は肺がん、胃がんに次ぎ、大腸がんが第3位。女性は大腸がんが第1位。
大腸がんは顕著な増加傾向を見せている
・精神的ストレスによる下痢や便秘に悩んでいる人は、「
過敏性腸症候群」の疑いがある。腸内に悪玉菌が多いところに、ストレスが加わり、善玉菌が減って腸内環境が悪化する
・肥満の人は、痩せている人よりも腸内細菌のバクテロイデス類が少なく、ファーミキューテス類が多い。腸内細菌の種類によって、人間が
太ったり痩せたりする・あまり息むことなく、ストーン、ストーンと楽に出ることも「
良い大便」の条件。また、便器の底に沈むような便は水分が少なく、あまり健康的でない
・大便をチェックするときの重要なポイントは「色」と「臭い」。色は黄色がかった褐色がベスト。これは腸内にビフィズス菌が多い証拠。悪玉菌が多い大便は、思わず息を止めてしまうような腐敗臭を発し、黒みが強くなる
・「ヨーグルトをトッピングした
サツマイモ」は、理想的な大便を出すのに、もってこいのメニュー。サツマイモは、ヨーグルトに欠けているビタミン類、カリウムや食物繊維を多く含んでいる上に、ナトリウムの抑制作用もあるので、高血圧の予防にも役立つ
本書を読むと、大便は健康のバロメーターになるとともに、簡単にチェックできる、大変便利なツールであることがわかります。
ストレス、風邪、疲労、肥満といったものだけでなく、がんのチェックにも大便の観察が有効なようです。大便通になることが、健康通になる近道なのかもしれません。