著者は、東急ハンズの
実演販売で、8年連続売上ナンバー1の商品を生み出した、販売のプロです。実演販売の道では、広く名が知られており、「完売王」と呼ばれているそうです。
その著者が、販売ノウハウを漏らさず公開しているのが本書です。モノを売る高度なノウハウがぎっしり詰まっています。その一部を要約して、紹介させていただきます。
・他人と趣味について話をすると、その人は友達になる可能性がある。他人と商品について話をすると、その人はお客様になる可能性がある。
・商品について話した人が「お客様」。商品について話してない人は「
通行人」
・販売のステップは、「1.接触する」「2.説得する」「3.納得してもらう」。接触することを「
引っ張る」とも言う。この「引っ張る」には、「1.遠くにいる人を商品の前に引っ張る」「2.その人の意識を商品の中に引っ張る」の二通りの意味がある
・「いらっしゃいませ」は
一方通行のコミュニケーション。「いらっしゃいませ」と声をかけても、お客様は返答できない。午前中は「おはようございます」、午後は「こんにちは」と挨拶すると、お客様は言葉を返さなくても、表情が変わり、接触のキッカケが生まれる
・販売員の裏返る声、甲高い声に、お客様は「いいカモにされそう」と受けとめる。これではモノは売れない。普通の声でしゃべるべき。不自然な声はメッセージを歪んで伝える
・キレイに陳列するのは、実は、お客様にとっては「手にとりにくい」こと。お客様が手にとりやすいように、「
チョイ崩し陳列」をすること
・お客様に
買い物カゴを渡すと、「YES=ありがとう、どうもの言葉」「NO=結構ですの言葉。必要ないのポーズ」が返ってくる。NOならば「失礼しました」と一礼して引き下がる。YESならば「何かお探しですか」と声をかけて、接触の最初のステップが果たせる
・POPの一番の役割は「エッ、何?」と思わせ、立ち止まらせること。それには、
歩いている人が読めるPOPを書くこと。大きく、太く、短く、シンプルに、ひと言ふた言で
・場面が変わる「移動ゾーン」に入ると、人の脳は緊張する習性がある。この「
移動ゾーン」(出入口、エスカレーター、階段など)で販売活動をしても、効果は期待できない
・お客様の目線は、ゆっくり移動しながら、商品を「見ている」(SEE)と、商品をじっと「見つめている」(LOOK)の2パターン。声かけのタイミングは「
見つめている」とき
・右脳に訴えて、お客様の心をつかみ、左脳で買う理由を見つけてもらう。この右脳から左脳への働きかけで重要なのは、右脳の刺激。そのためには、
擬声語(ふわふわ、ごつごつ、さらさら、ぱくぱく、つるつる、ぷんぷん、チカチカ、きらきら等)で伝えること
・「売ろう、売ろう」オーラを出している自分に気づいたら、一旦、待つ。でも、ただボーッと待ってはダメ。「積極的にお客様を待つ」こと。積極的に待つとは、
作業をしながら待つということ、適当に忙しそうにしている販売員に、お客様は声をかけやすい
・人は明るいところに引き寄せられる。楽しそうに集まっていると、ついついのぞいてみたくなる。その輪に入ると、自分の気持ちも楽しくなってくる。この集団心理を利用する
・人がモノを買う時の、
購入の5ステップとは、1「エッ、何?」、2「で、それで?」、3「へー、なるほど!」、4「欲しくなっちゃったなあ」、5「ヨシ、決めた!」
・お客様の期待を募らせるには、「情報完結欲」の刺激が効果的。情報が完結しないと、脳が不快になり、情報を完結しようとする。この「情報完結欲」の刺激には、「
暗示」が一番
・同じ商品を売っても、お客様は誰一人、同じように商品を見ていない。だから、その商品を正しく説明しようと気負わずに、お客様のイメージに合わせ、
うなずいておけばよい・最強の武器は、
しゃべらずに背筋を伸ばし、にこやかにお客様に微笑むこと。微笑みが表のメッセージで、「買ってほしい」が裏のメッセージとして、お客様は読みとる
・二兎を追う者は一兎を得ずで、
通路のどちらかを通るお客様を「断つ」勇気が必要
・工夫をする心こそが、モチベーションを高める。工夫する心は、どんどん増える脳細胞のようなもの。工夫した結果が失敗であっても、「経験」したということで成功と同じ
・販売員には、売場での接客を超えた可能性がある。その可能性は、観察し、
観察から得られた情報を活用することで、花を開かせることができる
著者は、お客様の観察力に長けています。その観察力が、そのまま販売力となっています。どの分野でも、プロと呼ばれる人は、観察力に長けた人です。
売上を5倍にする著者の秘技は、他の人に比べて、お客様を5倍観察していることから生まれてきたのではないでしょうか。