とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『天才投資家「お金と人生」の名語録』桑原晃弥

天才投資家「お金と人生」の名語録 ウォーレン・バフェットから、ジョージ・ソロスまで (PHP文庫)天才投資家「お金と人生」の名語録 ウォーレン・バフェットから、ジョージ・ソロスまで (PHP文庫)
(2013/06/05)
桑原 晃弥

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バフェットやソロス、是川銀蔵など、古今東西の天才投資家13人にスポットを当て、彼らの名言を拾い集めた書です。

成功だけでなく失敗も、よく描かれているように思います。この貴重な名言の数々をまとめてみました。



・「相場に勝つ必要はない。勝たなければならない相手は私自身。自分の中の感情の起伏」(ジェシー・リバモア)

・「片手間に相場を張る人間は山ほどいるが、相場を張る技を磨くことにフルタイムで取り組む者は数えるほどしかいない」(ジェシー・リバモア)

・「情報はすべて危険である。情報はあらゆる形態を装い、採用をもちかける」(ジェシー・リバモア)

・「大衆と同じバスに乗っていても、時期が来たらいつでも、そこから飛び降りようと身構えている。そして、逆方向に進む結果となることも恐れはしない」(ジェシー・リバモア)

・「考えを巡らすことで、金が儲かるわけではない。ひたすら待つことで金が手に入る」(ジェシー・リバモア)

・「経済の実態は学問で説かれるような決まりきった変動はない。一つとして同じ形の経済変動はない、というのが経済の実態」(是川銀蔵)

・「自分で一度確信したことを、他人の横やりで曲げてしまうことは結局、研究、分析、判断がまだ、そこまで行きついていないということ」(是川銀蔵)

・「人の何倍も大儲けしようと思ったら、やはり、金儲けには思想が必要」(是川銀蔵)

・「テンバガー(10倍上がる株)を見つけるには、まず自分の家の近くから始めること」(ピーター・リンチ)

・「大切なのは、数字を手に入れるかどうかではなく、手に入れた数字が、十分に信頼できるものかどうか」(フィリップ・フィッシャー)

・「分散投資にこだわるあまり、よく知りもしない会社に投資するほうが、はるかに危険」(フィリップ・フィッシャー)

・「どんな場合にも使える物差しはない。最終的には、自分の生き残り本能に頼るしかない」(ジョージ・ソロス)

・「重要なことは、正しいか、間違っているかではない。正しい時にいくら稼ぎ、間違っている時にいくら損をするか」(ジョージ・ソロス)

・「不安が大きければ大きいほど、より多くの人々が市場のトレンドに影響される。そして、トレンドを追う投機が大きければ大きいほど、状況はより不安定となる」(ジョージ・ソロス)

・「社会通念や常識と呼ばれるものが間違っていることなんかしょっちゅう」(ジム・ロジャーズ)

・「大勢に従って成功した者は、今まで誰一人としていなかった」(ジム・ロジャーズ)

・「まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うほうが、はるかに良い」(ウォーレン・バフェット)

・「リスクは、自分が何をやっているか、よくわからない時に起こるもの」(ウォーレン・バフェット)

・「最も重要なのは、自分の能力の輪をどれだけ大きくするかではなく、その輪の境界をどこまで厳密に決められるか。自分の輪をカバーする範囲を正確に把握していれば、投資は成功する」(ウォーレン・バフェット)

・「優秀なトレーダーは、成功例よりも失敗のほうをよく覚えている」(マイケル・スタンハイト)

・「欲しいものを手に入れる一番確かな方法は、欲しいものに相応しい人間になろうと努力すること」(チャーリー・マンガー)



すべての成功の要因は外部にあるのではなく、自分自身という内部にある、ということを感じる本でした。

あまり夢のない話ですが、自分自身という内部の力を蓄えていかない限り、外部のものを獲得しようとするのは難しいのかもしれません。


[ 2014/02/17 07:00 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『空き家急増の真実-放置・倒壊・限界マンション化を防げ』米山秀隆

空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ
(2012/06/02)
米山 秀隆

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シャッターを閉めた空き店舗だらけの商店街が、すでに当たり前の光景となっているように、空き家の住宅やマンションも増え続けており、限界集落が都会の中でも出現するのかもしれません。

しかし、政府は景気刺激策として、新築住宅・マンション購入を促しています。人口減少社会になった今でも、その政策を止めようとしません。一方、住宅の長寿命化もすすめています。これでは、将来的にも、空き家が増え続けていくのは間違いなさそうです。

こういう状況下の中で、住むことに関して、どう行動し、どうお金を使ったら得なのか、本書には、そのヒントになることが数多く載っています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・空き家数全体に占める割合は、売却用住宅5%、賃貸用住宅55%、二次的住宅5%、その他住宅35%。賃貸住宅が最も多い

・もともと賃貸用住宅は、10%程度の空き家率を折り込んで経営しているが、全国の(賃貸住宅の空き家数)÷(賃貸住宅の総数)が18%となっており、10%を上回る空き家率となっている

・分譲マンションの空き家率が高まっていくと、管理組合が機能しなくなり、建物の手入れが行われず、やがてスラム化していく。こうした分譲マンションは、人口減で、共同体機能を果たせなくなった「限界集落」になぞらえ、「限界マンション」と呼ばれる

・空き家率の高さが問題になるのは、賃貸市場や売却市場にも出されず、手入れもされずに朽ち果てていく住宅が増えていく場合

・大都市圏空き家率は、東京圏では、半径10km圏域50㎞以上圏域の空き家率が高い。同様に、名古屋圏では、10km圏域と30~40㎞圏域、大阪圏では、10km圏域と40㎞以上圏域の空き家率が高い

・古い分譲マンションの空き家率が高いのは、居住者がいなくなったことのほかに、賃貸物件が多いことから、その空き家が増えている。古い分譲マンションでは、住む人がいなくなった後に賃貸化しているケースが多い

空き家の継続期間を見ると、持ち家では5年以上が45%と最も多い。これに対し、借家では、1~3カ月未満のものが20%と最も多い。持ち家の方が、空き家期間が長期化している

・2050年までに、現在、人が居住している地域の約2割が無居住化する。無居住化する地点の割合が高い広域ブロックは、北海道52%、四国26%、中国24%

・高齢化社会のコンパクトシティでは、居住地域を集積させるだけでなく、必要な用事は歩いて足せる街づくりに取り組まなければならない。中心市街地が衰退する主な理由は、商店街の衰退。空き家の利用促進策が講じられても、それはメインの政策ではない

・建築基準法では、既存不適格で、著しく保安上危険または衛生上有害であるものについては、所有者に建築物の除去などの措置を命ずることができるが、これを適用するには、著しく危険であることを証明する必要があり、かなりハードルが高い

・空き家貸出の条件調査で多かったのは、「空き家の修繕費用を入居者が負担」「賃貸期間を5年や10年に限定」「仏壇や位牌の安置場所を他に確保」「家具や荷物の保管場所が他に確保」など。これらの点がクリアされないと、所有者は、家を貸し出す決心がつきにくい

・不動産業者の間では、中古物件を仕入れてリノベーションを施し、再販するビジネスが活発化しており、すでにマンションではかなりの成功を収めている

・シェアハウスは若者向けがほとんどであるが、将来的には高齢者が共同生活するシェアハウスができれば、高齢者の孤立や孤独死を防ぐと期待されている。すでにUR賃貸住宅では、一部をシェアハウスに改装する取り組みが行われている

・REIT保有物件の築年数を見ると、新しい物件が圧倒的に多いが、中には、古い物件を取得するケースもある。収益性が期待できる状態の良い物件であれば、REITは築年数にこだわらずに物件を取得している。取得費用の安さにより、中古部件の方が利回りが高くなる

・アメリカではREIT組み入れ物件で、賃貸住宅がオフィスを上回っている。中途解約権の排除によるキャッシュフローの確定が、証券化の前提として機能している。今後、日本においても、中途解約権の排除、中途解約の違約金支払いを契約に盛り込むことが必要



空き家が増えているのに、新築大型マンションが増える現象は、閉店する商店が増えているのに、大きなショッピングセンターができている現象によく似ています。

ということは、シャッター通りならぬ空き家通りが、住宅地にも生まれてくることもあり得るということです。そういうことを見越して、賢く、住宅を購入、賃貸していくことが、今後必要になると思います。本書は、その助けになるのではないでしょうか。


[ 2013/11/19 07:00 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『稼ぐ経済学「黄金の波」に乗る知の技法』竹中正治

稼ぐ経済学 「黄金の波」に乗る知の技法稼ぐ経済学 「黄金の波」に乗る知の技法
(2013/05/18)
竹中 正治

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著者は、日経新聞にも時々寄稿される国際金融論が専門の大学教授ですが、外貨投資や不動産投資にも詳しく、投資の本を多数執筆されています。

本書には、「外貨投資」「不動産投資」「債券投資」の長期運用の方法が記されており、投資中級者以上の方に、有益なことが多いように思います。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・短期(数カ月)や中期(数年)の時間軸では、市場価格はファンダメンタルな価値からの乖離が起こる。だが長期の時間軸(数年以上)では市場価格はファンダメンタルな価値への回帰、収束を見せる。ここに希望とチャンスがある

・現実に可能であり大切なのは、「予測」ではなくリスクに対する「準備」である

・賃料の変化以上に資産価格が大きく変動(高騰や暴落)してしまう背景には、市場参加者の心理が悲観に振れている時には、資産価値の過小評価が起こり、楽観に振れている時には、資産価値の過大が起こるということがある

・株式と長期債券の双方を保有すると、運用資産全体(ポートフォリオ)の投資リターンを安定化する効果があるという、基礎的かつ極めて実用的な知恵を実践している個人投資家は極めて稀

・好況で債券利回りが高くなっている時こそ、長期固定金利の債券を買う時

好況の時には、運用資産(ポートフォリオ)の中で、株式保有の比率を下げ、債券保有の比率を上げる。反対に、不況の時は、株式の比率を上げ、債券の比率を下げる。これができれば、毎年のリターンの変動を平準化できると同時に、投資リターンも向上できる

・「ハイリターン」は、長期の時間を前提にして成り立つ原理であり、バクチのように時間の概念と関係のない「当たり外れ」とは関係ない

デフレ圧力が半ば恒常化した低成長の経済では、長期分散の株式投資を愚直に持続しても、リスクに見合ったリターンは得られない

・市場の躁状態も鬱状態も無限に持続しない。必ず転換し、長期で普通の状態に回帰する。市場の合理的対処法は、予測という不確実な判断に頼らず、絶好調の躁状態にいる時に売り、絶不調の鬱状態にいる時に買い、短期的な変動は無視すること

・「金利平価原理」と呼ぶ2国間の為替相場と金利格差に関する原理が、日米の国債と為替相場に現実的に働いている。すなわち、金利の高い米国債に投資しても、円ベースの米国債のリターンは、長期では為替相場変動で、日本国債の低リターンと同じ水準に収斂する

・現実の為替相場は、購買力平価からの乖離と回帰を繰り返す。この事実は、短期トレーディングで儲ける役には立たないが、長期で資産形成を考える投資家には重要で、購買力平価は、為替相場の割高・割安を見抜く指標となる

・円高・円安は一般化できるような規則性はないので、それぞれの状況で判断するしかない。したがって、円高で外貨投資をする場合、一発決め打ちはせずに、投資のタイミングを数回に分けて対応すべき

・個人投資家が住宅・マンション投資で成功する鉄則は、「買う時は不況時、売るのは好況時」「中古マンションを物色して安く買う。価格は収益還元法で点検」「空室リスクの低い物件を選ぶ」「2~3割は自己資金を用意」「ワンルームよりファミリータイプを優先」

・アジアでの新興のREIT投資家層が登場しているのは、注目すべきこと。中国を含むアジアの新興投資家のマネーが、日本のREITの新たな買い手に加われば、日本のREIT市場にミニバブル的な高騰を起こす可能性がある

・投資スタイルを大別すれば、「トレンド追随型」と「逆張り型」がある。投資家として成功したいなら、どちらのタイプを選ぶか、どちらに適しているか、よく考えるべき。どっちつかずは最悪。首尾一貫しない投資スタイルで成功することはあり得ない

・人間の性格は「1.ハンター(狩猟民)型」(動くものに強いトレンド追随型)、「2.ブリーダー(牧畜民)型」(長期的な作業が得意で、逆張り・長期投資型)、「3.ファーマー(農耕民)型」(安全な倉庫に貯蔵したがる、投資不適型)の3つに分けられる

・ファーマー(農耕民)型とブリーダー(牧畜民)型が多い日本社会では、表面的な利息配当の高さに誘惑されて、意図せざる高リスク投資をして、失敗する傾向が強いので、要注意


本書には、長期型投資・逆張り型投資を行う上で、参考になる点が数多くあるように感じました。

日本人の性格に合った地道な投資法と呼ぶべきものです。大欲・中欲・少欲と考えれば、中欲の人の投資法かもしれません。


[ 2013/11/12 07:00 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『新マーケットの魔術師』ジャック・D・シュワッガー

新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密 (ウィザード・ブックシリーズ)新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密 (ウィザード・ブックシリーズ)
(1999/03/15)
ジャック・D. シュワッガー、Jack D. Schwager 他

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マーケットの魔術師シリーズは、アメリカの投資家たちの成功物語であり、成功ノウハウ集です。

本書では、約20人のトップトレーダーたちが、インタビューに応じて、事実を赤裸々に公開しています。投資のヒントになることが、数多くありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・負けが続くときの副産物として、自信の喪失がある。これによって、トレード情報の理解や分析能力が影響を受ける。したがって、失った自信を取り戻さなければならない。こんなとき、効果があるのは、トレードのサイズを減らすこと(ビル・リップシュッツ)

・トレードは50%の確率で勝てると思っていたら大間違い。たった20~30%の確率でしか勝てない。だから、勝ったときに、どういうふうに勝つか、それを考えなければいけない(ビル・リップシュッツ)

・安値での買い、高値での売りなんて、仕掛けたことはない。もし安値で買えても、マーケットはそのレベルで何年間も腰を据えてしまうかもしれず、資本が縛られることになる。変動が始まる状態まで待って、それからポジションを抱えるべき(ランディ・マッケイ)

・うまくいっていないとき、「こうなってほしい」とか、「こうであればよいのに」と思うようになる。そうすると、成功するトレードではなく、「成功してほしいトレード」をするようになってしまう(ランディ・マッケイ)

・分析をして、うまくいくトレードに集中し、それ以外のトレードを止めれば成功する。分析をしても、うまくいかないならば、何か他の仕事を探すべき(ランディ・マッケイ)

・パターンを見つけ出したいという願望は、人に迷信や占星術などに効力があると思わせる。人間の本性が成せる業。そんなことで成功するのは、失敗するよりももっと驚きに値する(ウィリアム・エックハート)

損失の痛みが分からなければ、金銭的にマーケットで生き残る確率は皆無。相続した財産でトレードを始めた数人の億万長者を知っているが、負けの痛みを感じないから、彼らはすべてを失っていった(ウィリアム・エックハート)

・快適なものは、しばしば良くない結果をもたらす(ウィリアム・エックハート)

・トレーダーに欠かせないのは、誰にも依存しない独立した考え方。トレード戦略を発想、認識、創造するために、芸術的な側面が必要。それらのアイデアを確固としたトレーディングルールとして規則化し、遂行するためには、科学的な側面が必要(ギル・ブレイク)

成功するトレーダーになるには、1「自分に合う投資対象、戦略、時間軸に集中する」2.「予測不能ではない価格動向パターンを見つける」3.「発見したものが統計的に有効であると納得する」4.「取引ルールを決める」5.「そのルールに従う」(ギル・ブレイク)

・教育を受けた大部分の人が失敗したのは、感情の管理能力が欠けていたから。つまり、トレードの決断から感情を切り離すことができなかった(ビクター・スペランデオ)

・「このトレードをしよう」と思う代わりに、「このトレードをする自分を見てやろう」と思うこと(トム・バッソ)

・人生は、今一度しか見ることのできない映画。同じ場面は二度とない。夢中になって、理解して、楽しまなくては(トム・バッソ)

・音楽には構造があり、形を変えながら繰り返されるパターンがある。マーケットにも繰り返されるパターンがある。この二つはいずれも、リラックスしているとき、最もうまくいく。そして、両方とも波に乗ることが大切(リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ)

・トレーダーを雇った経験から言うと、ブラックジャック、チェス、ブリッジなんかが強い人は、成功する可能性を備えていると思う(ブレアー・ハル)

・進歩がない人は、常にあるシステムや手法から別のものに変えてばかりいるため、どれについても熟練できない。対照的に、スーパートレーダーは、一つのアプローチに収れんしていき、そのアプローチに適応していく(チャールズ・フォルクナー)

・チーターは世界で最も速い動物で、草原にいるどんな動物でも捕まえることができる。しかし、チーターはその獲物が絶対に捕まえることができると確信するまで待っている。茂みに隠れて、一週間でもその好機が訪れるまで待っている(マーク・ワインスタイン)



本書の序文に、ジム・ロジャースの「そこにカネがたまるまで待つ。その後、そこまで行って拾い上げるだけ。それまでは、何もしないこと」の言葉が記されています。

その言葉どおり、「得意の型を一つ見つけ出し、好機が来るまでじっと待ち、そして一瞬にして、大きな獲物を仕留める」といった作業が、投資で成功する秘訣ではないでしょうか。投資は、忍耐力が相当必要な、地味なゲームなのかもしれません。


[ 2013/07/23 07:00 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『人はみな相場師・勝つための法則』鍋島高明

人はみな相場師 勝つための法則人はみな相場師 勝つための法則
(2012/07/27)
鍋島 高明

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鍋島高明さんの著書を紹介するのは、「金と相場」「賭けた儲けた生きた」に次ぎ、3冊目です。著者は、古今東西の相場師、投資家、ジャーナリストを調べ、追いかけている方です。

今回の著書の中にも、5千円札の樋口一葉が相場好きだった話や、1万円札の福沢諭吉の婿養子が天才相場師であった話など、「人はみな相場師」である実例が数多く出てきます。これらの一部を、要約して、紹介させていただきます。



・「一高一低、波瀾極まりなき間に投じて金を儲けていくことは予の投機心を完全に満足させる。実に色情と賭博は人間本来最も好愛するもの。好むところに溺れるから過ぎる。快楽に淫するから身を亡ぼす」(福沢諭吉の婿養子・福沢桃介

・250年余り前の伊勢の米相場師・牛田権三郎の「三猿金泉録」は今に伝わる
「万人が万人ながら強気なら、たはけになりて米を売るべし」
「野も山も皆一面に弱気なら、阿呆になりて米を買ふべし」
「理と非との中に籠れる理外の理、米の高下の源と知れ」
「ふところに金を絶やさぬ覚悟せよ、金は米釣る餌と知るべし」
「売買はせかず急がず待つが仁、徳の乗るまで待つも仁なり」

福沢諭吉は、「相場会所の効用は、近遠の物価を示し、その現在未来の高低を明らかにし、生産物の運転を活発にし、もって農工商をして安んじてその業に従うを得せしめるにあり」と、先物取引所は「明日の価格を発見する」ところで、有益無害と説く

・「日本の資産家は付和雷同型が多く、土地がいいとなると、土地投資になびき、一転、公債がいいとなると、公債に集中投資し、投資対象を一、二に限る。これは危険。安全なものから、リスクを伴うものまで、分散するのが投資のポイント」と、福沢諭吉は説明する

・「人生は長いものではない。人は早急な結果を欲している。手っ取り早い金儲けには、特別の楽しみがある」(ケインズ

・「少ない勝ち数で大きな利益を獲得する」「必要なのは自制心」「大きく勝ち、負けは小さく」「誰も将来の価格など予想できない」(大相場師で大リーグのレッドソックスオーナー・ジョン・ヘンリー)

・「商売は薄利でも継続を望み、投機は一攫千金の機を狙う。商売に必要なものは勤勉で、投機に必要なものは智略。商売は腕で生活し、投機は頭で生活する。商売は確実、安定、投機は浮沈、消長を免れず」(博文館社主・大橋新太郎)

・「(大学出の新人に向かって)君は相場を知っているか。相場を知らないで書く経済記事など、玄人からみると何の価値もない。おれが五百円(今のお金で100万円強)出すから相場をやれ」(報知新聞社主・三木善八)

・「最小の労力で、最大の欲望を充たすことが、経済行為の根本原理である」(アダム・スミス)

・「先輩が歩んできた相場の道を振り返ることは大いに意義がある。なぜなら、相場は人生究極の根本原理を追求する学問にも通じる人生哲学で、単なる体験の表現ではない。その背景には、合理的な哲学的性格を持っているから」(時事通信名物記者・永松石秤)

・「人間社会の一切を包合して営々と続いていくのが市場。その頂点に咲いた花が相場。政治より何より優先する人間生活の本質」(時事通信名物記者・永松石秤)

・株の天才福沢桃介(福沢諭吉の婿養子)が記した成功4つの心掛けは、「1.倹約」(金を愛するが故に金は集まる)「2.計数」(ソロバン離れて経済なし。数字に立脚すれば必ず成功)「3.幸運」「4.利を積む」(薄利でも利を生むものに投資し、その利を再投資)

山本五十六は勝負事が滅法強かった。彼の賭博哲学は、「沢山の紳士が熱狂している際、白眼視され、馬鹿者扱いされても、勝機がくるのをじっと待つこと」など含蓄に富む。関東大震災にうろたえる財界人に「株を買う時。新東株を買い占めること」と発破をかけた

チャップリンは、「いつも素早い大儲けを狙っている。成功しろ、出世しろ、裏をかけ、現なまをつかんだら逃げろ」(チャップリン自叙伝)と、エネルギッシュだった。若き日は、友人たちと有り金はたいて養豚業に乗り出し、豚成金を夢見ていた

・キリスト教思想家であった内村鑑三はその著「後世への最大遺物」の中で、「金を残せ、金がない人は事業を残せ、思想を残せ、金も事業も思想も残せない人は、勇気ある高尚な生涯を残せ」と述べている



意外な人物が、相場に手を出しています。投機心は、人間のDNAに組み込まれたもので、これから逃れることはできないのだと思います。

投機心を上手に利用し、抑制し、コントロールする力を人間は身につけないといけないのかもしれません。本書を読み、古今東西の人物の投機心を知ると、投機心の怖さと大切さを同時に理解できるようになるのではないでしょうか。
[ 2013/05/14 07:00 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『老荘に学ぶリラックス投資術』岡本和久

老荘に学ぶリラックス投資術 (現代の錬金術師シリーズ)老荘に学ぶリラックス投資術 (現代の錬金術師シリーズ)
(2009/08/05)
岡本和久

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本の帯の部分に、「急がない」「欲張らない」「考えすぎない」とあります。長期投資を心がけている身として、心惹かれるものがあり、読んでみました。

投資と老荘思想を結びつけることに少々の違和感もありましたが、読んでみたら、類似点を多く感じらました。それらの類似点の一部を、要約して紹介させていただきます。



・日本では「お金持ち」のイメージがあまり良くない。しかし、おカネは感謝のしるしだから、本当のお金持ちは、人から受けた感謝がたくさん貯まった人ということになる

・良い投資は、「時間」を味方につけている。種をまいて、収穫を待つようなもの。「早く芽を出せ」と水をやりすぎ、土を掘り返してはいけない。「まいた種は必ず芽を出す」の信念を持ち続けて忍耐することが大切。長期投資の高いリターンは、忍耐に対するご褒美

・本当に大切なのは、長期にわたるマーケットの動き。そのマーケットを動かす潮流

・「この世に永遠のものは存在しない。変化し続けるという事実を除いては」(ギリシアの哲学者ヘラクレイトス)。この世の本質は変化し続けることにある。それのみが永遠の真実

・「最大多数の人にとって、最も都合の悪いことが起こる」これが株式市場の真実。みんなが上昇を期待しているときには下落し、下がるだろうと期待しているときに上昇する。多くの人が株を所有しているときに、それ以上買う人がいなくなるのは当然の流れ

・株価は常に中立。「上がった、下がった」と周囲に自慢するのは、風向計を見つつ、「東風だ、西風だ」と喜ぶ小学生と同じ

・買いが積み上がるほど、売りの圧力になる。残念ながら、他者と考えが同じであればあるほど、株価という影は、逆の姿を見せていく

・精通した者は、「人気銘柄に飛びつかない」「守り中心にする」「欲張らない」「間違えたときは直ちに行動を修正する」「ポートフォリオをシンプルにする」「長期的視点でマーケット全体に投資する」「濁った水もじっと静かにしていれば澄んでくる」と体得している

・成功するためには、人からは阿呆に見えたり、たわけに見える行動が必要。浮かれている集団から距離を置き、落ち着いた心で投資を続ければいい

・分散投資と長期投資を低コストで実現する「分・長・低」が、成功するための銘柄選び

・公開された情報には、ほとんど価値がないことを知っておくべき

・「健康のため、株価の見すぎには注意する」。株価を一生懸命見ていても上がらない

・そもそもマーケットとは、分らないもの。その前提を踏まえ、スタートする。つまり、知の限界を知ることが、そもそもの基礎

・時間を味方につけるのが長期投資、マーケットを味方につけるのがインデックス運用。長期投資と分散投資は、リラックス投資の武器

・自分の思うように、市場を動かすことはできない。でも、リスクはコントロールできる

・長期投資では、勝たなくてもよい。それより重要なのは、負けないこと

・「俺が俺がの(我)を捨てて、お陰お陰の(下)で生きる」

・「おカネ持ち」になることではなく「しあわせ持ち」になること。知足は、しあわせ人生のために不可欠

・われわれの心の中では、落ち着きのないサルが「キャッキャッ」と騒いでいる。心を沈めてサルを落ち着かせることが必要

・投資の達人は、理論や技術、知識を身につけても、それにしがみつかず、とらわれのない心(無我・無心・無為)の境地で、マーケットと対峙する

・われわれは「世の中のためになること」をするために生きている。それを円滑にするためにおカネが存在する。そして、自分の余裕を人のために用立ててあげるのが投資。それは時間との付き合いでもある

・「1.適切な比率で資産の配分を決める」「2.それぞれの資産ごとにインデックス投信を選ぶ」「3.時々チェックしながら長い間、待つ」。ただ、この三点を行っていればいい



投資の世界とは、切ったはったの厳しい感じがするのですが、本書に出てくる文章は、常にゆる~い感じがします。

投資の本というよりも、幸せに生きるための指南書といった感じです。長期投資を目指す人にとって、最適の書ではないでしょうか。


[ 2013/02/12 07:01 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『あなたも株のプロになれる―成功した男の驚くべき売買記録』立花義正

あなたも株のプロになれる―成功した男の驚くべき売買記録あなたも株のプロになれる―成功した男の驚くべき売買記録
(1987/04)
立花 義正

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立花義正さんは、亡くなられたとき(1985年)に、5億円の遺産があったということで有名になった個人投資家です。工場の事故で、片足を切断された後、会社を辞め、投資家として自立する道を選ばれて成功されました。

その立花義正さんが、唯一残した書が、この「あなたも株のプロになれる」です。初版は、25年前ですが、現在も版を重ね続けています。本書には、今も昔も変わらない、株で儲けるルールが書かれています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「三猿金泉録や八木竜の巻のような本を読みなさいよ。そして、自分の力でやってみることだ。例えば、今の逆向かいを『下げの二日前から買い下がり始める』『三日目も安ければ買い、戻ったらいったん売り』というふうに、二~三回やってごらん。納得いくから」

・まず、技法習得のために、「1.簡単な技法を繰り返して身につけよ」「2.資金を大切にせよ」という二点を、技法入門の初めの言葉として贈る

・すべてに通じるものは、「九分一分三分割売買」、アメリカの売買技術書でも、まったく同じ。「ナンピン三分の一」「乗せは三分の一」「ツナギは三分の一」も、これと同じ考え

・まず、出発の玉は一枚ずつ三回、増しは三枚ずつ二回で、合計三枚ずつ三回。これでひと区切り。そのあとの乗せは10枚。もちろん分割してもよい。そして、ツナギ10枚

越年玉とは、年を越す手持ち玉のこと。「長期的な資産運用のための現株」「中短期の計画的な建て玉」以外は、越年してはいけないというのが、売買益で生活する上での鉄則

・手数料を払うとか、大発会が高かったら損するとかというのは本当につまらないこと。そんなものは手仕舞いすれば、冷静になれるという貴重な向上の代償として、安いもの

自分に合わないものを捨てなければ、理論からやり方まで一貫性をもつという、大切なことが身につかなくなる。自分に合わないものを、いさぎよく捨てて単純化していくこと

・「指値注文絶対禁止」「迷ったら翌朝成行きで手仕舞い」「雑音無視」「三分割仕掛け一括手仕舞いのみ」「買い注文は安い日の翌日、売り注文は高い日の翌日」「同値圏の増し玉枚数少なく」「順張りはやるな」「他人の相場観は聞くな」「朝テレビを見るな」

・「月曜日に売買するな」「リズムを追え」「仕手情報は聞くな」「5%逆行注意」「市場の分析をするな」「最高枚数は二十枚を限度に」「証券会社が推奨したら売れ」「新聞のトップ記事に出たら売れ」「平均値を計算せよ」「「ここは絶対と思ったときはやるな」

・グラフを見ただけで、自分にできそうにないと思った銘柄は絶対に売買すべきではない

・定石と言われるやり方どおりの玉の入れ方をした。つまり、自分で自分を機械のようにやった。相場観を殺し、弱気でも目をつむって買った。それで相場師として成長できた

・崩れてからの追っかけ売りは、成功の確率は極めて低い。崩れたときは、ジッと我慢しておいて、戻りを売るのがよい。将来の大成のために、絶対に追っかけをしないこと

・株で利益を上げるということは、株を持っていることではなく、処分すること。ケリをつける区切りをつけるということ

・競争相手は強弱の議論をしがちで、相場の励みとならず、友人は技術の向上には有害

・勉強とは、多くの知識を集めるのではなく、一つのものを深く究めることにある。それには、進むべき方向に不要のもの、邪魔になるものを捨て、残ったものこそが真に重要

・順張り専門のプロはまずいない。順張りは心理的に楽でやりやすいが、実質利益が少ないうえ、失敗の確率が高く、その金額も大きい

・「上手な人は何か秘密があって、それを隠しているのではないか」という考えは、キッパリ捨てること。上手な人というのは、繰り返し、繰り返し、練習して上達した

・相場の売買は、「長所を伸ばすことに積極的」で、「短所を補うことに消極的」でなければいけない。これは、私がいままでに会った上手な人たちすべてが言っていたこと

・自分に合った方法だけを行い、その技術を高めていくこと。他人の売買は、その上手さだけを見るべきであって、売買している銘柄とか方法をマネしてはいけない

・30年間売買を続けながら、苦しんで得た結論は、「自分に合った型を基準にして売買する」「分割売買をする」「ゼロをつくる(区切りをつける、不利な玉を切る)」、これだけ



どんな世界でも、名人というのは、自分が納得するまで何回も繰り返して、レベルアップした人です。株式の売買でも例外ではありません。

どんな道でも、30年飯を食っていこうとすれば、地味で、規則正しく、愚直に生きるほかないということを、本書が示しているのではないでしょうか。


[ 2013/01/08 07:02 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『イェール大学CFOに学ぶ投資哲学』デイビッド・スウェンセン、瑞穂 のりこ

イェール大学CFOに学ぶ投資哲学イェール大学CFOに学ぶ投資哲学
(2006/08/18)
デイビッド・スウェンセン、瑞穂 のりこ 他

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著者のデイビッド・スウェンセン氏は、イェール大学の基金運用局で、20年間平均、年率16.1%という驚異的な運用成績を達成したファンドマネジャーです。また、イェール大学で、経済学とファイナンスのクラスを持って、教えられています。

基金の運用を、ずっと、アセット・アロケーション(資産配分)という手法で行われてきた方であり、前に紹介した「資産運用の強化書」の手本となる方でもあります。

その手法に学ぶために、本書を読みました。参考になる点が多々ありました。それらを一部要約して、紹介させていただきます。



・投資家が資本市場で投資収益を稼ぎたいとき、役に立つアプローチは、「資産配分」「マーケットタイミング」「銘柄選択」の三つ。この三つの中で、投資結果を左右する中心的な役割を果たすのは「資産配分」。リターン変動のうち、約90%が「資産配分」に起因する

・投資家は、投資原則の基本を守っていない。長期的な資産配分目標を合理的に設定するのが先決なのに、役に立たない銘柄選択やマーケットタイミングに夢中になっている

・以下の6種類の資産クラスには、はっきりした特性に基づく働きが期待できる。ポートフォリオ例としては、「米国株」30%「米国以外の先進国株」15%「新興国株」5%「長期国債」15%「インデックス国債」15%「不動産」20%

・国債には、金融危機や不況からポートフォリオを保護する働きがあり、分散効果が期待できる

・外国株投資は為替リスクを伴う。現実的な投資家は、為替変動から差益も差損も期待しない。為替相場がどちらに向かうかは、実際に誰にもわからない。為替の方向性に賭けないこと

・リスク対リターン特性から言えば、不動産は債券と株式の中間に位置する。賃料が定期的に流れ込む点は債券に近く、残余価値が変動する点は株式に近いので、期待リターンは、債券と株式の中間になる

・個人のバランスシート上で重要な非金融資産といえば、「持ち家」と「自営業」。持ち家のある投資家は、家賃の上昇リスクから保護されている。自営業の性格は株式に似ているので、自営業を営む人は、金融資産のポートフォリオで、株式比率を低めにしていい

・ウォール街が新商品を繰り出すとき、それが複雑であるほど、投資家はなるべく速足で、なるべく遠くまで逃げるが勝ち。複雑な仕組みを開発した本人や発行体でさえ、環境の変化にどう反応するか把握できていない

・うっかりヘッジファンドに手を出すと、結果はまず間違いなく期待外れに終わる。ヘッジファンドに投資していいのは、高度な知識を持ち、マネジャーを選択できる投資家だけ

・ミューチュアルファンド会社は、さまざまな口実をもうけて、お粗末な成績を隠そうとする。成績不良のファンドを他のファンドに吸収させて抹消するという手法やごまかしの手口もある

・過去の情報は何ほどの役に立たないことに気づかないかぎり、格付けシステムに効果があると思えない

・リバランス(再調整)を実行するには、常識に逆らった行動が求められる。まず、上昇中の資産を切り売りし、下落中の資産を買い足さなければならない。普通に考えれば逆。度胸が試される

・商業の世界で、利益を得るのは、大勢に従う者。勝者の戦略を取り入れ、敗者の流儀を切り捨てることで、商売は繁盛する。だが、投資の世界では、落ち目の資産が期待リターンを押し上げ、人気資産はプレミアムがつくので、期待リターンは押し下げられる

・賢明な投資家は、四半期に一度か、半期に一度か、あるいは年に一度ポートフォリオを見直す際に、リバランスの必要はないか、機会はないかと考えること

販売手数料は、投資家に対する侮蔑である。販売手数料を払えば払った分だけ確実にリターンが押し下げられる

・市場平均の上を狙うマネジャーには、粘り強さがどうしても必要。途中でやってくる苦境に対して、考え抜いたポジションを守り通すための確信が必要

・投資家が勝率を高くしたのなら、利益追求型でない会社が運用するファンドを選ぶことが近道。利益追求型でない会社なら、投資家利益の貢献だけに専念できる



本書を簡単にまとめると、「資産配分をリスクと期間に応じて考える」「資産配分の再調整を時期を決めて行う」「複雑なファンドやヘッジファンドには手を出さない」「為替変動に賭けない」「販売手数料や税金をできるだけ少なくする」ということになります。

要するに、マイナス要因をなくしていくことで、安定的な利益が見込めるようになるということなのかもしれません。


[ 2012/11/20 07:02 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『投資で迷ったら読む相場格言400』西野武彦

投資で迷ったら読む相場格言400投資で迷ったら読む相場格言400
(2009/11)
西野 武彦

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日本の相場格言には、大きく分けて、米国(ウォール街)生まれのもの、江戸時代の米相場から生まれたもの、明治以後の日本生まれのものがあります。

相場格言は、先人たちが相場で苦労し、失敗した体験が凝縮された言葉です。成功体験ももちろんありますが、失敗から生まれた言葉が多いのが特徴です。次世代への戒めがそこに込められています。

転ばぬ先の杖として、活用したい相場格言が、本書に数多く載せられています。一部ですが、紹介させていただきます。



・「人間の一生には投機をしてならない時が二度ある。投機をする余裕のない時と余裕のある時がそれだ」

・「大衆は常に間違っている」(大衆は多数意見が正しいと思い込み、みんなと同じことをして安心するところがある。大衆が大挙して市場に押し寄せてくれば、相場は天井)

・「判断を誤ることは正常なこと。それを修正しないのが異常」(自分の間違いを認めない人は、投資で大損することが多い)

・「よい銘柄だけを残せば利益は自然と生まれる」(値下がり銘柄はさっさと損切りして手放し、値上がり銘柄だけを長期保有するのが原則だが、素人の投資家はその逆をやる)

・「株を買うより時を買え、株を買う前に時を選べ」(個別銘柄を選ぶことよりも、相場が上昇する時かどうかを判断することの方が重要)

・「よい魚は底に近いところを泳いでいる」(底値圏にある銘柄は、大きな値上がりが期待できる)

・「理屈上手の商い下手」(相場の世界は、理論通りに動いてくれない)

・「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は恐れず」(相場をよく知っている人は迷うことなく、克己心の強い人は心配せず、勇気のある人はタイミングよく投資を行うことができる)

・「木は庭に植えず、山に植えよ」(庭に植えた木を毎日見ていると、枝を切りすぎたり、植え換えたくなる。また、成長にも気づきにくい。山に植えた木をたまに見に行くと、意外なほど成長していることに気づく。投資した銘柄を忘れているくらいの人が儲かる)

・「売るべし・買うべし・休むべし」(成功するには、じっくり待って、休むことも大切)

・「上り坂の悪材料は買い、下り坂の好材料は売り」(上昇相場では再び上昇に転じるが、下降相場では再び下降に転じる)

・「悪い予感はよく当たる」

・「売りは早かれ買いは遅かれ」(買う場合は慌てる必要はない。もし、買えなくても、それによって損失が発生する心配はない)

・「安値買い下がりの株数は、一、三、五の比率有効なるべし。そして資金の半分を温存すべし」(どのあたりで買えばいいのかの判断は非常に難しい。何回かに分けて買うのが有効な買い方)

・「不安になったら半分を手仕舞え

・「商いの利分の時、六七分にて取り申すなり。十分は却って損の元なり」(利益を確保する時には、6~7分の利益を得て満足すべき。目一杯儲けようと欲張ると損をする原因となる)

・「米相場をなさんと思えば、大酒淫事盤上慰事堅く禁すべし」(大酒、色事、賭け事などの遊びを禁じて、真剣に相場に打ち込まないと、相場では成功しない)

・「人の商いをうらやむべからず」(大相場の後期になると、大儲けした素人投資家の体験談がよく取り上げられる。それまで、投資に見向きもしなかった人が、それを見てうらやましくなって、思わず手を出し、高値をつかまされて大損するケースが多い)

・「ふところに、金をたやさぬ覚悟せよ、金は米釣るえば(餌)と知るべし」(金は米相場で儲けるためのエサと考えること。絶好の買い場を活かせるように、常に現金を持っておく必要がある)



投資だけでなく、不動産、美術品、骨董品など価格変動する高額商品を買う時にも、これらの相場格言は応用できます。

人類が、金儲けと格闘してきた歴史が、これらの格言に刻まれているように思います。これらを予習しておくことは、大事なことです。復習(損してから)では遅すぎるのではないでしょうか。


[ 2012/11/06 07:01 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)

『銀座の投資家が「日本は大丈夫」と断言する理由』大原浩

銀座の投資家が「日本は大丈夫」と断言する理由銀座の投資家が「日本は大丈夫」と断言する理由
(2012/03/16)
大原 浩

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著者は、投資や税務のアドバイザーをされている方です。証券新報の顧問も長く努められています。本書は、今年の3月に出版されたものですが、ここ最近の中国情勢をほぼ当てられています。

著者の予測は、「新しい現実」を探る姿勢なので、精度が高くなるのだと思います。著者の多くの予測の中で、注目すべきものが幾つかありました。それらを紹介させていただきます。



・日本や世界経済を読み解くキーワードが「資源国」「華僑」「イスラム」「高齢化」の四つ

・共産党政権下で教育を受けた大陸中国の人々と、やむなく母国を脱出して厳しい異国の中で這い上がってきた華僑の人々とでは、同じ「中国人」でも全く違った「人種・民族」。大陸中国にはネガティブな見方をしているが、華僑の今後の発展は疑いのないところ

・中進国を目指している段階では、中国共産党の一党独裁はプラスに働いた。しかし、中進国入りし、次のステップを目指す場合に、独裁的。強権的政治は大きなマイナスになる

・1人当たりのGDP成長率が一定水準になると、成長率が大幅に落ちる。この現象は、ドイツで1960年代半ば、日本で1970年代初期、韓国で1990年代後半に訪れている

・中国政府の人口調査によれば、出生人口男女比率は118:100。通常は106:100だから、かなり深刻な状況。その結果、33歳の独身者の男女比が3:1という極端な男性過剰になっている。ストレスをためた男性が巷にあふれているのは、政治的に好ましくない

・ブラジル経済は悪くないが、家計の可処分所得に対する借金比率が高いのに注意が必要

・インドの1人当たりGDPはまだ1400ドル程度の水準。3倍の4000ドルあたりまでは、比較的簡単に成長できる。しかし、インド人が「白いお金・黒いお金」と表現する賄賂の問題は深刻。黒いお金(賄賂の相場)は、白いお金(表のお金)の約3割

・アメリカは「発展途上国」。1950年に1.5億人の人口が、2050年には4億人に達する。中国やインドのような人口過密地帯でないことも優位に働く。アメリカは、シェールガス開発も進む「資源大国」でもあり、潜在能力は侮れない

・米国企業の多国籍化・グローバル化は着実に進んでおり、海外での売上・収益が、米国経済に大きく貢献している。対外直接投資残高のGDP比は、英国75%米国33%日本15%

・日本の「失われた20年」は、戦地で死線をくぐり抜けた戦後第一世代の遺産を、豊かでお気楽な団塊世代が引き継いだことにある。現在は、バブル以後の厳しい経済しか知らない世代が台頭してきているので、日本の将来については安心

・中国は、世界第2位の経済大国になった途端、「中華思想」が首をもたげ、尊大な態度が目につくようになった。それは、外国に対してだけでなく、一般の中国国民に対しても

・華僑集団の中では、裏切り行為があった場合、厳しい制裁を行う。華僑は、「幇(パン)」という出身地(郷幇)同業者(業幇)の連帯組織を作り、相互扶助をはかり、便宜を与え合っているので、「信頼・信用」することができる

・オーストラリアは、資源国として今後も安定的な成長を遂げる。カナダは、原油や天然ガスだけでなく、水や森林も潤沢。香港返還後の華僑たちの選択(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに移住)は結果的に正しかった

・資源・エネルギーが不足する時代には、米国の2倍、中国の8倍以上のエネルギー効率を誇る日本の産業が圧倒的に有利になる

・アフリカ諸国やブラジル、インドは「人口ボーナス」(人口増の維持)、欧州や日本では、逆の「人口オーナス」。アジアの新興国も人口オーナス化していく

・タイは、日本の投資先として、直接投資残高が2.3兆円と、アジアで中国に次ぐ位置

・どんな大企業であっても、雇われ経営者にとっては、投資収益を上げることよりも、規模の拡大がメリットだから、投資家は十分注意しなければならない

・米国が先頭、その20年遅れが日本。韓国がさらに20年遅れで、中国は韓国のさらに20年遅れ。過去、米国の低迷期に日本が発展した。20年説の答えは「世代交代」にある

・ネット社会では、日本の過去のような中間管理職の優秀さが必要ない。優秀なマネージャー(リーダー)とその他大勢のスタイルが、日本のビジネス社会の大いなる刺激となる



日本及び海外先進国や新興国への投資(株式、債券、土地、為替など)をされている方は、海外諸国の中長期を予測しなければなりません。

そこを間違わないようにするためには、大局をつかむことです。そういう意味で、本書はその一助になるのではないでしょうか。


[ 2012/10/30 07:02 ] 投資の本 | TB(0) | CM(0)