とは学

「・・・とは」の哲学

『PM2.5越境汚染』沈才彬

PM2.5「越境汚染」 中国の汚染物質が日本を襲う (角川SSC新書)PM2.5「越境汚染」 中国の汚染物質が日本を襲う (角川SSC新書)
(2014/03/10)
沈 才彬

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中国の環境汚染は深刻なレベルに達しています。PM2.5のような大気汚染だけでなく、土壌汚染水質汚染食料汚染など、汚染は複合化しています。

人が環境をつくると同時に、環境が人をつくります。最近の中国の動向を見ていると、人の心も汚染されてきているのではないでしょうか。本書は、中国の汚染の実態が記されている書です。参考になった点をまとめてみました。



・「真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」(田中正造)。中国が出すべき答えは、この田中の言葉にはっきりと示されている

・中国の河川の40%が汚染されており、人が触れることもできない有毒な川は全体の2割まで達している。地下水にいたっては、95%の都市で汚染が確認され、そのうち60%が厳重汚染とされている

・中国の土壌の40~70%が重金属化学肥料に汚染されている。このため、カドミウムのような重金属に汚染された食料が市場に出回っている

・WHOの発表によると、世界各国で毎年200万人が大気汚染の影響で死亡しているというが、そのうち65%がアジア人。事実、北京市の肺がん患者はここ10年で60%増えている

・PM2.5が人体に及ぼす悪影響には、喘息、気管支炎といった呼吸器系の疾患が多い。そのほか、心臓や血管などの循環器系疾患への影響も指摘されている。とくに、子供や高齢者は免疫力が弱く、PM2.5を吸い込むと呼吸器系疾患にかかりやすい

・清朝時代から都に住んでいる北京人のプライドは高い。そのため、3K(危険、きつい、汚い)の仕事をやりたがらず、これらの仕事を出稼ぎ労働者に任せるため、北京への人口流入を招いている

共産党の人事政策では、経済成長を成し遂げた人が評価される。任期中にGDPが前年比0.3%上昇すれば、昇進率・出世率は8%高まるが、市民の生活改善や環境保護に力を費やすと、昇進率・出世率はマイナスに落ち込むことがわかっている

・PM2.5の日本のレベルは中国の50分の1から20分の1程度でしかないが、西日本では、1日平均値の環境基準を上回る日も出てきている

・中国には、長江、黄河などの7本の主要河川があるが、これらの河川流域面積の半分以上の水質が汚染されている

湖の汚染も深刻。35の主要な湖のうち、17の湖が厳重汚染の指定を受けている。また、地下水の汚染も進行しており、都市部水源の4割が飲用不能

地下水汚染には、次の3つの経路がある。「1.工業排出物」「2.化学肥料」「3.ゴミ捨て場から染み出た有害物質の浸透」3による汚染は、日本では想像できないが、中国では大問題となっている

・中国の耕地面積の20%に相当する2000万haが汚染されている。土壌汚染により廃棄された食料は年間1万トンにのぼり、損失額は毎年200億元(約3400億円)に達している

・現在の北京には、PM2.5、砂漠化渇水交通渋滞、人口急増と、様々な問題が押し寄せてきている。近い将来、首都としての機能が麻痺するという危惧が強まっている

・1980年代から年間2460㎢(ほぼ神奈川県の面積に匹敵)の土地が砂漠化している。砂漠化によって影響を受けた人は、すでに4億人。砂漠化は黄砂の原因となり、春には朝鮮半島や日本にも影響を与えている

・国土の砂漠化に加え、中国は渇水問題にも頭を悩ませている。中国の1人当たりの水資源は2300㎥しかなく、世界平均の4分の1にしか過ぎず、世界121位という低ランクで、最も水が不足している国の一つ

・中国は、自国内部に「環境破壊」という安全保障上の問題を抱え込むこととなった。この脅威は外部からもたらされたものではなく、自身によってつくられたもの。「北京廃都」は政府が最も恐れるシナリオ

・中国には、散歩しているかのような体裁をとりながら、無言の抗議を行う抗議活動(デモ)がある。このデモを政府は「群発事件」と呼んでいる。群発事件の発生件数は1年に20~30万件。特に、環境問題に端を発したデモが頻発している



先日も、中国の食料汚染が話題になりました。空気も汚い、水も汚い、土も汚ければ、安全な食品などつくれるはずがありません。

しかし、考えてみれば、空気や水や土を汚くしているのは、中国国民です。つまり、心の汚い人たちだから、食品も汚くなるといってもいいでしょう。心の汚染が終焉するまで、中国の食品に手を出さないほうが無難かもしれません。


[ 2014/08/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『森から生まれた日本の文明―共生の日本文明と寄生の中国文明』黄文雄

森から生まれた日本の文明―共生の日本文明と寄生の中国文明 (アマゾン文庫)森から生まれた日本の文明―共生の日本文明と寄生の中国文明 (アマゾン文庫)
(2010/03/02)
黄 文雄

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著者の本を紹介するのは、「厚黒学」「中国陰謀学入門」に次ぎ、3冊目です。本書も、中国及び中国人に関する書です。

そのキーワードを日本は「共生」、中国は「寄生」として、台湾出身者の視点で日中文明論を展開されています。興味深い切り口の数々をまとめてみました。



・文明の衰退は、地力の過剰な収奪による表土流出、土砂堆積、水資源枯渇、砂漠化、森林喪失、そして水旱、疫病などによって、地力が衰退することで起こる。流民や難民は別天地を探し、そこでまた地力を収奪する。こうして生まれたのが中国の寄生文明

森林を破壊する文明が地球に広がると、一神教が支配的な思想となる。一方、アニミズムの世界に生きて、自然と人間あるいは森と人間が共生するような文明は、未開であり野蛮なものと見なされるようになる

・中国人と日本人の国民性を一言で言えば、木を伐る民族木を植える民族の違いに尽きる。それは、寄生の文明と共生の文明という風土から育てられた民族性である

・中国の森林喪失は、避けられない文明の法則や自然観によるもの。孔孟(孔子と孟子)の人間優先思想と老荘(老子と荘子)の自然優先思想の対決の中で、漢代の儒家独尊国家政策により、人間的価値が自然的価値より優先となったから

・日本人ボランティアの植林パフォーマンスとして、中国へ植林に行く者があるが、これほど偽善的な行為はない。中国は禿げ山だらけで、砂漠化は昂進しているが、数億の農村余剰人口がいる。1人当たり生産性はアメリカの150分の1。ヒマ人だらけ

・「砂漠」と「砂漠化」は違う。もともと降水量が少なく植物が生育できない土地が「砂漠」であり、本来は植物があったのに、何らかの原因で不毛の地になる現象が「砂漠化」。中国の砂漠化はとくに深刻。砂漠化した国土面積はすでに全国土の3分の1にまで達している

・中国は常に「発展途上国」として語られ論じられているが、実はすでに数千年来、開発しつくされた過剰開発国家

・過剰な人口を養うための生活用水や急発展の工業を支える工業用水は地下水に頼っているため、全国的な地下水の低下、地盤沈下が深刻。灌漑目的の河川の流れ変更、都市化による河川・湖沼の水や地下水の大量使用が、砂漠化に拍車をかけている

・エネルギー消費量に占める石炭の割合は、日本18%、アメリカ24%に比べ、中国は71%(全世界平均では27%)。石炭消費が大きいことは、浮遊粒子や硫黄酸化物の排出量も大きいことを意味する

・中国人は有史以来、北方から南方へと、地上資源を食いつぶしながら南下し続けてきた。さらに地下資源に期待し、今日に至っては、地球資源に寄生せざるを得なくなった

中国の流民は、水旱、飢饉、戦乱によって常に繰り返される。ことに王朝末期に大量に噴出する。20世紀に入っても続き、西北大飢饉で陝西省を離れた婦女百余万人、売られた者七十余万人。男子も加えると二百万人が流民となった。これは全省人口の六分の一

・儒家思想とは、寄生文明から生まれたイデオロギー。「礼の主張は、形式的支配秩序の論理」「忠孝の思想は、家族論理から天下を正当化する奴隷の思想」「科挙制度は、一極集中の官僚制度による掠奪制度を確立するシステム」

・儒教思想の中でも最も極端に排他的なのは、朱子学。その独善性は、朱子学以外のすべての学を排斥するだけでなく、仏教を初めとする宗教をすべて排斥し、敵対視する。また、教義の中で、異民族を蔑視し、帝王を徹底的に尊重する

・日本が幸運だったのは、聖徳太子の時代から平安鎌倉時代にかけ、主流は仏教思想であったから。儒教思想は、江戸時代になって、やっと徳川幕府に取り入れられた。それゆえ、日本は仏教国家の道を歩み、儒教国家にはならなかった

・中国人の自己中の対極にあるのが、日本人の思いやり。他人への思いやりは義理人情の社会をつくる。それは、他人あるいは余所者を見れば、すべて敵かカモと見なす中国人とは全く違う社会から生まれた人間観であり社会観

・中国を知るには、「」「」「」「」「」の五文字で十分。最も簡潔な中国観

・中国の美は巨大にして完璧な美。日本の美は「七分の美」、完全や完璧を求めない。常に「余白」や「間」を残している



本書は、中国と日本を客観的にとらえています。それは、肉食系と草食系の違いなのかもしれません。

漢民族をわれわれと同じ草食系と見ると、痛い目に遭います。絶えず、警戒しながら、食われないように、生きていくことが重要であることを教えてくれる書でした。


[ 2014/03/21 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『中国人には、ご用心!』孔健

中国人には、ご“用心中国人には、ご“用心
(2012/09/25)
孔健

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中国という国を理解しようとしても、なかなか理解できません。それを知るには、公式なものではなく、もっと庶民の日常的なものが大事なように思います。

著者は、孔子直系の子孫で、日中関係評論家として活躍されています。本書は、中国の大衆のことが多く、興味深く読めました。その一部をまとめてみました。



・中国社会は今、拝金主義に陥っている。多くの人が浮き足立ち、頭の中はお金のことだけ。中国人は古来より貧しかった。何千年に渡り、豊かだったのは、支配階級や一部の商人だけ。それが今や国民全部に豊かになる道が開かれた。お金に群がるのも仕方がない

・中国人は今、老いも若きも「狼の道」(金に群がる拝金主義)を歩んでいる。人の心を傷つけ、裏切っても、自分だけは金持ちになるのが正義、という社会。道徳はすり減った

・中国人女性と日本人男性が結婚する数は、1年間に2万カップル以上。そして、たっぷりと慰謝料を懐に入れ、子どもの手を引いて、中国に帰る中国人女性も多い

・浙江省温州の人は「中国のユダヤ人」と称され、古くから金儲けがうまい。偽ブランド商品の製造も盛ん。温州人150万人が、中国各地で軋轢を起こしながら商売をしている

・自宅と車と別荘を持ち、海外旅行をする人々を中国ではリッチマンと呼び、約7500万人いるといわれている。中国総人口の5%。中国の富裕層は、一代で財を築いた「爆発戸」と呼ばれる成金。市場が広いだけに、一発当てれば爆発戸も夢ではない

・中国には、一人っ子政策以降、戸籍のない「黒孩子」が、数千万人いる。黒孩子は、戸籍上は存在しないため、学校教育や医療など行政サービスを受けることができない

・中国では、日本現地企業に働く幹部は、ほとんど5~6年勤めてから、中国の企業に転職するという風潮がある。日系企業は、中国企業への転職用の専門学校のようになっている

・中国では、党の幹部が妻子を外国に出し、一人中国に残るのを「裸官」と言うが、不正が発覚しそうになる寸前に「裸官」本人が海外逃亡をはかるケースが増えている。1998年から10年間で、海外逃亡した政府や国有企業の幹部は17000余人。流出資産は約10兆円

・中国人の国民性を表わす言葉は、「自尊自大 自満自足」(なんでも世界一)、「吃苦怕難 貪図享楽」(苦しいことは苦手だが、享楽は好む)、「克己忍辱 残酷無情」(我慢強さも残忍さも世界一)、「反古薄今 旧習悪俗」(常に不平不満をもらし悪い習慣を直さない)

・今でも中国では「日本はその昔中国がつくった国」と思っている人が大勢いる

・中国人の伝統的長所を表わす言葉は、「謙虚学習 団結向上」(天が与えた不遇から脱却するには勉強するしかない)、「尊重権威 官僚為重」(権威を尊重し、官僚を重視する)、「修身斉家 楽天知命」(自分を磨き家庭を平穏に保ち運命に従う)

・人付き合いの実践すべき項目、「無事随訪」(用事がなくてもたまに尋ねる)、「礼多無妨」(心を込めて時々贈り物)、「信上往来」(会わなくても文章でやりとり)、「以書会友」(勉強会に積極的に参加)、「活用所長」(お互いの長所を活用)、「背無悪言」(悪口を言うな)

・中国人の欠点を表わす言葉は、「自我為重 利益第一」(自己中心、自分の利益しか考えない)、「面子如命 相互不信」(面子を大事にし、お互い信用しない)、「馬虎了事 曖昧不明」(完璧を求めず、責任もとらない)「厚黒多計 闘争為栄」(腹黒い恥知らずが跳梁跋扈)

・最近目立つのがヤクザの社会進出。魚市場、野菜市場、精肉関係、セメント業界、建築土木業界、建材関係など、利権が発生するところはどこもヤクザが仕切っている

四直轄市の省民性、「北京」(怠惰な人間が多く、政治好き)、「天津」(女性が男性的)、「上海」(日本人男性との結婚が理想)、「重慶」(男は正業に就かず、女性が麻雀好き)

華北・東北・華東・華中の省民性、「河南」(評判がよくない)、「黒龍江・吉林・遼寧」(情熱的だが、気が短い)、「山東」(礼儀正しく、評判がいい)、「江蘇」(治安のよさは全国一)、「浙江」(中国のユダヤ人)、「安徽」(いまだに貧しい)、「湖北」(叡智に富み、美女が多い)

華南・西北・西南・五自治区の省民性、「福建」(日本の居酒屋で働く女性が多い)、「広東」(実利を好む)、「湖南」(男の気性が激しい)、「青海」(保守的で閉鎖的)、「四川」(多くの才能を輩出)、「雲南」(少数民族が多い)、「内モンゴル」(勇猛)、「チベット」(穏やか)

・来日した中国人は99%日本を好きになって帰る。日本に住む100万の中国人も穏やかに客観的に見ている。問題なのは、大多数を占める日本のことをよく知らない、また知りたいとも思わない中国人。しかし。この大多数の動き方が中国の行方を決める要因となる



中国と付き合うのは、なんて難しいことかと思えた内容の書でした。とらえどころのない雑多な大国を杓子定規に判断しようがありません。また、現在の日本と中国は、性格も大いに違ってきています。

付かず離れずの関係で、ご近所付き合い程度の「日中薄交」で、当分はいくしかないのかもしれません。


[ 2014/01/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『中国絶望工場の若者たち・「ポスト女工哀史」世代の夢と現実』福島香織

中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実中国絶望工場の若者たち 「ポスト女工哀史」世代の夢と現実
(2013/03/02)
福島 香織

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昨年秋に起こった中国での反日デモと日系工場のストライキは記憶に新しいところです。本書は、暴動が起こった原因を、日本の工場で働く中国人と中国の日系工場で働く中国人に取材して、探ろうとしたものです。

その原因には、中国の複雑な制度が横たわっています。現在の中国の若者を知る上で貴重な書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・親が農民工(出稼ぎ農民)の子供である「第二世代農民工」は、日本車が憎いのではなく、日本車を持っている金持ち層が憎くて、日本車を叩き壊した

韓国への出稼ぎを嫌がるのは、「1.仲介業者に預ける保証金6万元(約100万円)が帰国後全額返金されない」「2.労働時間が12時間~14時間と長いのに日本より給料が低い」「3.日本のように住居・宿舎が準備されない」「4.韓国人のほうが性格がきつい」から

・中国の一人っ子政策では、一人目が女の子や障害児であれば二人目を産んでもいい。次も女の子だったら、三人目から罰金が1万元(約16万円)かかる

・検品は日本人担当者がするが、本当にささいなキズを見つけては、納品を拒否する。そうなると金を払わない。すると、経理が怒って工場長を怒鳴りつける。ライン長がワーカーを蹴り上げる。検品の後の工場内はギスギス、ピリピリして地獄

・日本人は、日本製品がつくられている現場を知らない。管理のやり方が、1分遅刻したら罰金1元、トイレが1分長いと罰金1元、居眠りしたら1元罰金。何でも罰金、罰金

・2012年春節前に日系工場で起きたストライキには反日感情はない。このストライキは「経済補償金先払いスト」。まだ退職しないが、退職したとき本当に退職金が支払われるかどうか心配なので、今まで働いた分の退職金をとりあえず先払いしろ、というストライキ

・日系の工場はストレスがたまる。5S6S(整理・整頓・清掃・清潔の頭文字をとって4つのS。これに躾か作法が加わる)とか、耐えがたい

・日本人が尊ぶ「約束を守る」「時間を守る」「嘘をつかない」といったマナーを持ち合せていなくとも、中国では特に批判されない。むしろ、無法で厳しい中国社会を渡っていくには、相手を言い負かす自己主張力や、自分の落ち度を認めない交渉力のほうが必要

・賃金未払いなど、中国の工場ではよくあること。それより、トイレ休憩とか、携帯電話の持ち込みとか、そういう自由のほうが大切。今どきのワーカーは、3か月賃金未払いよりも、管理が厳しい職場のほうがイヤ

・2010年以降の日系企業のストライキ成功体験から、日本人相手ならば要求が通ると思われている。だからこそ、日本から日本人社長が来ている最中に合わせてストライキを行う

・ワーカーに対する管理や評価を中国人中間管理職に任せっぱなしにせず、日本人管理職がワーカーのいる現場に降りて、彼らの要求を直接吸い上げるべきだが、そういう日本人管理職(中国語が堪能、中国理解が深い、ストライキ対応経験あり)がいないことが問題

・「農民工」というのは差別用語。農民でありながら、工人(労働者)であるという言葉。日本語で言えば「出稼ぎ農民」。都市に暮らしていても、農民は農民というのは、中国の戸籍管理制度に由来する

・農民工には都市民の権利(医療、結婚の自由、子供の義務教育など)が与えられなかった。立場の弱い彼らは、悪条件で搾取され続け、厳しい差別や侮蔑、迫害の対象となった

・農民工同士が結婚し、そこで産まれた子供が「民工子女」。彼らは都市生まれだが、都市戸籍がなく、都市の公立校入学資格もない。親の期待に応えて大学に進学しても、農民戸籍ゆえに就職差別(都市の就職は、都市戸籍を有し、コネを持つ者が優先)される

・農村戸籍大卒者は「蟻族」と呼ばれる高学歴ワーキングプアとなって、都市の片隅に住むようになっていく。農民工は目下2.5億人、その6割の1.5億人が「第二代農民工」。故郷に帰って農業に就こうと考えているのは、わずか1%、99%が都市に溶け込みたい

・ネットで都市民の女の子と知り合っても、オフ会で、農民工だと分かると、フンと鼻先で笑われ、歯牙にもかけられない。休みの日に遊ぶ相手は同郷の同じ農民工しかいない

・2012年の反日デモ暴動が、中国当局の暗黙の指示や誘導による官製デモであるにしても、あれほどまでに若者が無法化し、破壊活動を起こしたのは、日本への憎しみでも歴史への恨みでもなく、「第二代農民工」の若者たちの抱える孤独と絶望感によるものと考えられる



中国の都市民と農民の差別問題がこじれ、「農民工」に不満が蓄積していけば、新たな天安門事件に発展していく可能性があります。その不満のガス抜きに、反日を利用しようとする中国当局のあざとさに閉口しますが、現実に、そうせざるを得ないのかもしれません。

チャイナリスクを把握するには、経済指標だけでなく、社会問題も考えておく必要があります。中国社会の歪を知る上で、本書は、貴重な書ではないでしょうか。


[ 2013/09/16 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『島国チャイニーズ』野村進

島国チャイニーズ島国チャイニーズ
(2011/08/25)
野村 進

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著者は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した実力派ライターです。本書は、日本在住の中国人を取材して、本当の姿を聞き出した、内容の充実した作品です。

取材先は、劇団員、留学生、教授、妻、学校、チャイナタウンなど多岐にわたります。日本にいる中国人の実態が非常によくわかり、そうだったのかと思えた点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



劇団四季には、中国人俳優が24人、韓国人俳優が48人。700名いる所属俳優の1割以上が外国人俳優。中国人・韓国人俳優のほとんどが日本名の芸名を名乗っている。「名前」という文化的アイデンティティーを死守する気概が、中国人には感じられない

・中国で雑技団にいた人は、日本で器械体操をしていた人より体ができている。ウォーミングアップを一切しなくても、ケガをしない。中国ダンサーの身体能力の高さとハングリー精神に、中国でのミュージカルの可能性を感じる

・中国共産党は、「千人計画」をぶちあげ、「海外有名学者」や「海外傑出人物」の呼び戻しに力を入れ、一人百万元(1500万円)を支給したうえ、最高峰の大学や企業、研究機関に、破格の待遇を用意して迎え入れている

・日本にいる中国人の大学教授や研究者のほぼ全員が、本国から好条件の誘いを受けている。しかし、彼らが勧誘に乗らなかったのは、子供の教育の問題。日本で教育を受けた子供は、言葉の面でもメンタリティーの面でも、中国人よりずっと日本人に近くなっている

・池袋界隈は「東北三省」(遼寧省・吉林省・黒竜江省)出身、蒲田は福建省出身、大宮は上海出身など、民族や出身地で、多数の「在日中国人コミュニティー」ができている

・反日・嫌日になるのは、バイト先などで日本人から受けた差別や屈辱による場合が断然多い。1990年代に留学生の間でささやかれた「留日反日」(日本に留学して反日になる)という自嘲は、いまだ死語になっていない

・「国家」が嫌いなら「国民」も嫌い。日本人は「国家」と「国民」を分けて考えられない

・日本の入国管理局は、留学生の送り出し地域別のブラックリストをつくっている。福建省や東北三省、内モンゴル自治区を不法就労や偽造文書作成などの前歴から要注意地域とみなし、それらの地域出身の留学生の入国審査をとりわけ厳格化している

中国人留学生の多い大学では、彼らだけで固まる傾向がある。日本人学生も、群れ集って声高に話す留学生たちを「何気に怖い」と遠巻きにながめ、近寄ろうとしない。中国人留学生も、日本人学生に対し「いつまで経っても中に入れてくれない」と不満を募らせる

・拝金主義と利己主義が蔓延する今の中国で、「親孝行」という徳目だけはまだ生き残っている。中国人留学生は、卒業式に両親を呼ぼうとする

・山形、秋田などの東北地方には、外国人妻が大勢暮らしている。これら地域のファミレスは、外国人妻たちの溜まり場になり、中国語や韓国語やフィリピノ語が飛び交っている。山形県の外国人妻の数は、二千人を超え、その半数近くが中国出身者

・中国はいま高度成長で、みんな気持ちが「お金、お金」に向かって、心というものを失いかけている。医者でさえ賄賂をとる。みんな、株で「もうかった、もうかった」という話ばかりする。中国にいたら、同じような人間になってしまう

連れ子のいる中国人花嫁が増え続けている。特に「東北三省」出身の花嫁に、連れ子の姿が目立つ。日本人男性への一回の仲介料は、200万円台から300万円台が相場

・1899年開校の神戸中華同文学校(小1~中3まで681名の生徒)では、日本国籍者が74%近くにのぼる。にもかかわらず、日本国からの援助がほとんどない。中華同文学校の教員給与は、兵庫県内の公立学校に比べ、4分の3にも届かない

・華僑への就職差別は、1980年代中頃まで明らかに存在した。旧財閥系有名企業でも、日本国籍者以外に、内定通知取消をしていた。今では逆に、中国語が堪能な華僑の子弟のほうが、就職に有利になった。日本企業の手のひらを返すような振る舞いに危惧を感じる

・華僑は、在日韓国・朝鮮人社会がとってきた、民族差別を日本社会に訴えるやり方と、あえて距離を置き、民族差別反対運動に関わらないほうが無難とみなしてきた

・いま中国では、競争し合っている。向上心も強いけど、物欲が半端じゃない。日本に住んでいたら、「これ欲しい、あれ欲しい」とか少なくなった。たまに中国に帰ると、友達から「静かになった」「ボーっとしてる」と言われる。日本文化が知らず知らず、浸みこんだ



「在日中国人」の実態や本音を聞き出した本は、少なかったように思います。中国との関係がぎくしゃくしている時代だからこそ、今必要な本なのかもしれません。

本書を読むと、中国国家と在日中国人を単純に同一視できなくなるのではないでしょうか。


[ 2013/07/29 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)

『華僑の商法―その発想と行動力』山下昌美

華僑の商法―その発想と行動力華僑の商法―その発想と行動力
(1987/03)
山下 昌美

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本書は、30年ほど前に出版された書です。東南アジア諸国の華僑から聞いたことを綴ったものです。

著者は序文で、中国商人の「したたかさ」「ねばり強さ」「あくの強さ」と「合理性の重視」に、今こそ学ぶべき、と書かれています。それを、今でも学ぶべき、ではないでしょうか。華僑に学ぶべき箇所の一部を紹介させていただきます。



・中国人の精神構造を知るためには、以下の言葉が手懸りになる。「没有法子」(仕方がない)、「馬々虎々」(徹底や完全を求めない)、「面子」(潰されることは大いなる恥辱)、「不要緊」(どうでもよい)、「差不多」(中途半端にする)

・「中国人は、それが本物だと立証されるまでは、人の話を信じないが、日本人は、それがウソだと立証されるまで信じつづける」(バートランド・ラッセル)

・一般的に、中国人は「忍耐強さ」「行動的」「利に聡い」の三面の性格を持っている

・中国人は、昔から政府や官吏を信用しない。「官字両隻口」は、「官」には口が二つあるということで、「お上は二枚舌を使う」という意味

・陶朱公の「商人の宝」(理財到富十二則)とは、1.「人の見る目」2.「客の応対」3.「新奇に走らず」4.「心を入れた陳列」5.「迅速な行動」6.「売掛金の回収」7.「人使いの心得」8.「議論の才能」9.「商品を見る目」10.「時機の把握」11.「提唱して指導」12.「先を読み、中道を歩む

・陶朱公の「商人の宝」(理財到富十二戎)とは、1.「下品になるな」2.「優柔不断になるな」3.「ぜいたくするな」4.「強弁するな」5.「怠けるな」6.「安売りするな」7.「競ってまで買うな」8.「タイミングを誤るな」9.「固執するな」10.「支払いを延ばすな」11.「在庫を少なくするな」12.「商品の選択を誤るな」

・華僑商人は「開源節流 量入為出」の格言を好む。「顧客を多くつくって売上を伸ばし、経費の支出を節約する」という意味

・中国商人の間では、「好客三年不換店、好店三年不換客」(よい客は長い間店を換えない。よい店は長い間客を換えない)という言葉がある。一度相手を信用したら、よほどのことがない限り、取引を継続していくということ

・華僑の立場から見た日本人の欠点は「好き嫌いが激しい」「無理をしたがる」「行き過ぎが多い」の三点

・「疑人不用、用人不疑」(疑いのある人を使うな、使ったら疑うな)とは、部下を使う立場にある者の最も基本的な人使いの心得

・「避実撃虚」(実を避けて虚を撃つ)。孫子の兵法として有名。行動中に、何か障害にぶつかったら、中央突破といった無理を避けて、迂回作戦をとるという意味。中央から強行突破すると、たとえ成功しても、かなり多くの犠牲を覚悟しなければならず、賢明でない

・「前事不忘、後事之師」(前の経験を忘れず、後の戒めとせよ)。日本人は、過去の経験を「水に流す」「いつまでもくよくよしない」といった一過性を好むが、中国人は、それを記憶し、記録にとどめ、それを教訓とし、今後の戒めにしようとする

・「養兵千日、用兵一時」(兵を使うのは一時であるが、兵を養成するには千日かかる)。いざという時のため、平素から準備を怠るなという意味

・「興一利不、如除一害」(プラスを追求するよりマイナスを除け)。破綻や損害を回避し、ダメージを最小限度に抑えるという意味で、この考え方は有効

・「打人不打瞼、罵人別掲短」(人をなぐるのに顔をなぐってはいけない。人をののしるのに痛いところをあばいてはいけない)

・「唾面自乾、百忍成金」(もしも顔に唾をかけられても、放っておけば、いつかは乾く。忍耐を重ねていけば、必ず一人前となる)

・「大富由命、小富由勤」(大きな富は運命で決まっているが、小さな富は勤労で築くことができる)

・「有借有還、再借不難」(借りたものは早く返しなさい。さもないと、この次借りることができない)



華僑は、社是、社訓、標語、戒め、諺などが好きです。目の付くところに、これらを書いた紙を貼り、自分への戒め、励ましとして、これを利用しているように思います。

商売での成功者は、世界中で似たようなことをしています。言葉を大事にすることは、精神力を保つことにつながるのかもしれません。


[ 2013/05/27 07:00 ] 華僑の本 | TB(0) | CM(0)