とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年』大澤武男

ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)
(2013/08/07)
大澤 武男

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本ブログの「ユダヤ本」分類で、ユダヤ人に関する書をとり上げるのは、これで22冊目になります。

本書は、ユダヤ人の教育がテーマです。ユダヤ人がユダヤ人たる原点と言えるべきものが教育です。興味深い点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・ユダヤ民族の最も古く、重要で、聖なる史料「旧約聖書」には、子弟の教育の大切さと、人生の命の糧としての知恵と教養が繰り返し、教訓として語られている

・ユダヤ人の自信と伝統を大きく支える特徴は、自己批判精神にすぐれていること。事象や己自身を神の眼で客観的、批判的に考察、反省し、正そうとする態度。このユダヤ教精神こそ、ユダヤ人の学問、学術研究における大きな成果の根源になっている

・優秀な生徒とは、すぐれた質問や疑問を持ち出し、教師を利口にする子供

・ユダヤ人地区(ゲットー)への略奪は、単に借金の証文を奪い取って、焼き捨てたり、質入れ品を取り返すだけでなく、ユダヤ人所有の金品を強奪する機会となった

・放浪のユダヤ人が身につけた生活の知恵は「行商」。店を構えての商売が許されなかったユダヤ人は、質流れ品(衣類、貴金属、鍋釜、工具等)を田舎へ持って行って売りさばき、田舎の産物、穀物、野菜等を仕入れ、都市へ持ち帰り、路上や戸口訪問で売りさばいた

・ユダヤ人は「調達」や「仲介」という仕事に極めて優れ、その能力や条件を備えている

・ユダヤ人特有の、貨幣の改造再鋳造という仕事は、ユダヤ人が率先して携わったのではなく、資金に困った領主からの要望によるもの。その片棒を担がされたのがユダヤ人

・キリスト教会の政治的勝利の下、罪深い流浪の民のレッテルを貼られたユダヤ人は、差別、規制、侮り、隔離、迫害、虐殺、略奪、追放、搾取、罪の捏造に耐えて生きなければならなかった。そのため、処世術、知恵、知識、賢明さ、判断、行動力を常に必要とした

・ユダヤ人は、過去の体験から「物事を抽象化して考察すること」「なぜと問うこと」「じっくり考えること」を学び、聖典を共に読み、「対立見解を議論する」という学習方法を実践し、それらを自分たちの伝統とした

・ユダヤ人の生徒は、男女共に、「学習成績の優秀さ」とは対照的に、評価のところで、「勤勉さ」や「学習態度」は普通。しかも、「生意気」「早熟」と書き込まれた

・ユダヤ人のノーベル賞受賞者数185名(全体の20%)は、日本人の10倍。人口比で見ると、日本人の100倍以上

・「自己実現(個の独立)への努力という態度は、ユダヤ民族がその宿命的な伝統として受け継いだ根本思想である」(アインシュタイン)

・ユダヤ的学習指導方法の特徴の第一は、不動の律法トーラーをそのまま声に出して、復唱、暗唱して完璧に学ぶこと。第二は、伝承のタルムードを学ぶ時は、鵜呑みにすることなく、質問、疑問を提示して、議論を重ね、その時々にふさわしい律法の適用を学ぶこと

・教育とは教師と生徒との対話が前提であり、両者の対話が親密であるほど、理想的な教育がなされる

・日本の子供は、行動が早く、てきぱきと物事を処理する。ユダヤ人の子供は、おっとりしていて行動が遅く、戸惑いがち。なぜなら、日本の子供は、何をどんな手順ですべきかを教えられており、ユダヤ人の子供は自分で考え、行動するように仕向けられているから

・20世紀初め、ユダヤ人が多かったベルリンでは、ユダヤ人の収入は、キリスト教徒市民の5倍だった。また、フランクフルトのユダヤ人の平均納税額は、一般市民の5倍だった

・「学校のないところに住んではいけない」というタルムードの教えを待つまでもなく、ユダヤ市民の高等教育進学率は、キリスト教徒市民の数倍(ベルリンでは8倍)であった

・反ユダヤ主義の根源には、彼らの優れた教育、教養、知恵、学識に先を越されたという、ドイツ人インテリの嫉妬、不愉快があった。その気運がヒトラー・ナチスの狂気を許した

・不安定な移動の民として、農耕生活から締め出されたユダヤ人は、得意とする商取引の中心地である都市の住民となったが、そこでも職人仲間から締め出されたため、知恵と巧妙さを駆使して稼ぐ、金融、両替、商取引を生業とすることになった


ユダヤ人がなぜ勉強をしてきたのか、なぜ最適な教育方法を考えてきたのか、本書を読むと、よくわかります。それは、現代の世界を生き延びる知恵でもあります。

ユダヤ人のような教育を受けた子供は、自立心の強い、打たれ強い人として、多民族の世界を堂々と渡っていけるのではないでしょうか。


[ 2013/11/25 07:00 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『知られざる技術大国・イスラエルの頭脳』川西剛

知られざる技術大国イスラエルの頭脳知られざる技術大国イスラエルの頭脳
(2000/06)
川西 剛

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本書のサブタイトルは「知られざる技術大国」です。イスラエルやユダヤ人に関する本は、金儲け、商売、教育、教訓などが主流ですが、技術の本は少ないように思います。

そこの国民や民族が、どういう技術や産業を得意とするのかで、国民性や民族性が見えてきます。本書によって、ユダヤ人の性質を知ることができたように思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・かつてのイスラエルの主な輸出産業は、ダイヤモンド加工製品とオレンジに代表される農産物だったが、今では、ハイテク関連部門の輸出額が大半を占める

・イスラエルに研究開発拠点を置く米国系企業の幹部たちに話を聞くと、誰もが口を揃えて「技術人材の質の高さに目を見張るものがある」と評する

・「労働者1万人当たりの研究開発従事者数」は、イスラエル、アメリカ、日本、フランス、英国の順。イスラエルは日本の約2倍。「人口1万人当たりの科学技術系大学の卒業者数」は、イスラエル、ドイツ、アメリカ、英国、日本の順。イスラエルは日本の約4倍

・苦難に満ちた歴史的教訓からユダヤ人は「最終的にわが身を守るのは知識であり、教育に対する投資である」「知識こそが何物にも代え難い財産」と深く認識するようになった

・ユダヤ教では、常に「クエスチョン、クエスチョン、クエスチョン」で、「絶対的価値を疑え」と奨励している。それが、ユダヤ人の普通の勉強の仕方

・イスラエルの技術人材の質の高さは、突き詰めて言えば、数学的才能の凄さで、それはそのままイスラエルが得意とするハイテク分野と重なる

・イスラエルの技術人材の質の高さには、三つの大きな要因がある。1.「優れた教育システムの存在」2.「軍と濃密な関係」3.「旧ソ連からの優秀な科学者や技術者の大量移民」

・イスラエルは国民皆兵(男子は18~29歳までの間に36カ月、女子は18~21歳までの間に19~21カ月の兵役に就く)。ただし、全員が戦闘部隊に配属になるわけではない。数学的才能に秀でた者は、情報部門に集められ、高度なシステム開発に携わる

・高校までの成績が特段に優れた人材は「タルピオット」という少数精鋭エリートコースに進むことができる。イスラエルは小国ゆえに、才能は探し出し、国家のために活用する

・「タルピオット」に選ばれた若者は、入隊と同時にヘブライ大学に入学し、3年間で数学と物理学の学位を取得する。同時に軍人としてのハードな肉体的訓練も課され、将校を目指す。知力、体力ともにケタ違いのものが要求され、3分の1程度は脱落する

・イスラエルでは、「軍は最高の教育機関」とか「軍は最高のビジネススクール」と言われる。事実、タルピオットの卒業生から多くの優れたハイテクベンチャー経営者が出ている

・軍との濃密な関係は、除隊後も継続される。イスラエルでは、毎年2~4週間、仕事を休んで予備役として軍のために働かなければならない(男子は54歳、女子は24歳まで)。そのことで、定期的に軍の持つ最先端の装備や情報に直接触れることができる

・イスラエルは「情報通信」「ソフトウエア」「医療機器」「マルチメディア・エレクトロニクス」「農業技術・バイオテクノロジー」「代替エネルギー」において、世界最先端レベル

・イスラエルの建国運動は、ギブツ(集団農場)に始まる。ドイツ・東欧・ロシア系移民がギブツの運営を担ったため、イスラエルは長く社会主義色の濃い政策を続けた。建国後しばらくは、農業こそが国の基礎であり、人も技術もお金も農業分野に投下された

・イスラエルが、最終的に量産志向の産業ではなく、頭脳集約型産業へ針路を定めた背景には、「天然資源がない」「国内市場が小さい」に加え、「水不足」ということも大きかった

・ユダヤの思想では「100%賛成という議論は間違っている」とされる。神ならぬ人間が、みんな同じことを言うのはおかしい、という発想。10の意見を戦わせたら、一つ、また一つ欠点が見えてくる。そうやって、議論を重ねて最善の意見に集約していく

・イスラエルの最大の強みはR&D(研究開発)。独創的技術を開発し、それを何に使い、適用するかを緻密に考えるのが上手。一言で言えば、アイデアとコンセプトに優れている

・ユダヤ人の根底には「誰もやらない、だからやる」という独創的で挑戦的な思想がある。「60・20・20の法則」(利益の60%は人と違うオリジナル製品を作る、20%は安く作る、20 %は人よりうまく売る、ことで得られる)で言えば、イスラエルは60の部分に強い



イスラエルの技術力が高いのは、ユダヤ教的思想、エリート教育、軍との関係に拠るところが大きいように感じました。小国ゆえに、知徳体に突出した人材を、国のために徹底活用させていくシステムも参考になりました。

本書を読むと、国力を高めるには、人材発掘の教育システムとその活用が欠かせないということが、よくわかるのではないでしょうか。


[ 2013/08/19 07:00 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ人の頭のなか』アンドリュー・J・サター

ユダヤ人の頭のなかユダヤ人の頭のなか
(2004/07/22)
アンドリュー・J・サター

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ユダヤ人の思考、発想など、頭の中身を分析した書です。著者は、大学で物理学を専攻した国際弁護士です。日本企業にも関わった経験があります。

ユダヤ人の頭の中も、基本的には日本人と何ら変わりません。ちょっと、勉強すれば、獲得できるものばかりです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・ユダヤ人好みの職業は、すべて頭脳労働。その頭脳労働は、間接的に経済や文化、ひいては世界全体に貢献するもの

・権力者や隣人たちといった他人の考えを推し量ることが、ユダヤ人にとって、非常に重要なサバイバル技術になっていった

・サバイバル精神の重要な要素は、「環境変化とともに出現するチャンスを見つけること」「顧客第一主義の精神を持ち、競合に勝つこと」「損切りすること」

・身の丈にあったリスクだけをとること。常に第2のプランを用意すること

損害を与える場合には、一気にやるべき。そうすれば、痛みを味わわせることも反抗されることも少ない。反対に、恩恵を与えてやる場合は、少しずつすべき。そうすれば、恩恵のありがたみが長く存続する

・チャンスをつかんだら、成功のために、権威に挑戦することを覚悟すること

・意見の食い違いは自然なこと。それを個人攻撃と勘違いしてはいけない。賛成できないなら、はっきりと意見を表明し、解決法も表明すること

・地位の高い人間に挑戦するときには、適切な時期はいつなのか、回り道はないのか、「いつ逃げるか」を常に判断しないといけない

・タテマエは、日本社会では「受容される嘘」だが、タテマエは単なる嘘

・イスラエル人は、交渉を個人的なことと受け止めない。交渉を感情とは切り離しつつ、交渉そのものを楽しむことができれば、交渉に成功することができる

・「シカタガナイ」と言ってしまうほうが、ずっと簡単だが、「シカタガナイ」は単なる怠惰

・論理的議論の基盤として、想像力を使って、物事の類似性を見つけること。応用範囲を拡大する意味で、想像力を使って、物事のより深い意味を得ること

・たとえ仕事に関係のない内容でも知的興味を持つこと。そして、その興味をいつか仕事に結びつけるべく、辛抱強く、チャンスを探すこと

・頭のいい子供の6つの特徴とは、言語能力、創造性、分析能力、忍耐力、大志と、そして好奇心。子供たちはこれらの能力を学校で学ぶことはできない

・「頭のいい子を育てる方法」とは、「才能をさらに伸ばすために、時間とお金を投資する」「好きなことのエキスパートになるように励ます」「楽しい議論をぶつける」「疑問に対して、自分で答えを見出させる」「複雑な状況に置き、問題解決させる」「負け方を教える」

・学ぶために、質問をすること。教えるために、話しかけること

・外国語でコミュニケーションすること。コミュニケーションは効果的であるために完璧である必要はない。たとえ、ひどい訛りがあって、間違いだらけであったとしても、外国人は、あなたが彼らの言葉を話そうとすることを高く評価する

・社会的な不公平・不正義に対し抵抗することは、その歴史を聖書時代の預言者にまで遡るユダヤの伝統

・他人があなたと同じように考えるだろうと決めつけてはいけない。他人の観点に立って、物事を見てみること

・他人が何を考えているか、推測すること。そして、他人が欲していることを、口にすること

・ユダヤ人には「マイノリティ意識」がある。日本人も、自らが世界の中では、圧倒的にマイノリティだと気づくべき



日本人も世界の中では、マイノリティ民族です。世界の中で、わかってくれる人たちが少ないということを自覚すべきかもしれません。そこが、出発点です。

マイノリティで、しかも差別を受けてきたユダヤ人には、他民族とコミュニケートしながら、自己主張する術に長けています。そういうユダヤ人を見習うべき点が大いにあるのではないでしょうか。


[ 2013/07/22 07:00 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ人大投資家の「お金と幸せ」をつかむ正しい方法』ヤコブ・ブラーク

ユダヤ人大投資家の「お金と幸せ」をつかむ正しい方法ユダヤ人大投資家の「お金と幸せ」をつかむ正しい方法
(2010/10/29)
ヤコブ・ブラーク

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著者のヤコブ・ブラーク氏は、イスラエルの実業家です。彼が設立したファンドは、イスラエル最大級に成長しているそうです。

本書は、投資の本というよりも、投資や人生で成功を収める雑学が記されている本です。参考になった箇所が多々ありました。それらの一部を要約して紹介させていただきます。



・昇給による幸福感は長続きしない。事実、アメリカ人の購買力は過去30年間で2倍以上に増えたのに、満足度に変化はない。悲しいことに、犯罪率、離婚率、アルコール依存症の発症率は、平均収入の上昇に正比例して増大している

・日々の暮らしの質を高めるためには、少額ずつのお金を使うこと。何であれ、多額の出費は避けること。それによる満足感がどんなに大きくても、決して長続きしない

・より多くの物を買うためではなく、自分が働く時間を減らすためにお金を使うこと。そして、社交のための時間をつくること

・私たちが自分と比べているのは、わずか150人ほどの人々にすぎない。150人は、私たちが、感情および頭脳で結びつきを持てる人数の限界

・オリンピックのメダリストが、20年たったとき、銅メダリストは銀メダリストより幸せだった。銀メダリストは、自分がなれたかもしれない金メダリストと自分を比較していたのに対し、銅メダリストは、全くメダルをとれなかった選手たちと自分を比較していた

・成功した企業家は、若いころの傷をビジネスの成功で癒そうとしていた。成功が自分の心の痛みを和らげてくれると無意識に信じている

・選択肢にランク付けをすると、情報の共有が促進される

・成功がすべてという世界で謙虚さを保つには、とてつもなく強固な精神力が必要

長子は現状を維持するのが最も快適だと感じ、組織の枠組みの中で最もよい働きをする。末子は対人関係のスキルが高いため、圧倒的にサービス関係の職業に従事する傾向が強い

・信用の高さは、対人信頼レベルが高い国々では報われる(信用の高い市民と実業家がより多く存在しているから)。しかし、対人信頼レベルが低い国々では報われることはない

・他人の成功は、嫉妬や敵意さえ呼び起こす。進化の観点から言うと、この二つの感情には、「人をより熱心に働かせ、生産性を向上させる」という極めて重要な目的がある

過度の情報は、それが大きな変動の時期に関連しているときには、有害なものとなる

・人間は低い確率を過大評価し、高い確率を過小評価しがち。保険契約者は、わずかな可能性に備えて、それに見合わない金額で、心の平穏を買う。女性は特にその傾向が強い

・私たちの脳は、最も近い過去に目にした数を、何かにつながりがあるかのように考えてしまう(高すぎる低すぎるにつかまってしまう)

・比較的成長率の低い市場が最も高い利回りを生む。その原因は、成長市場の投資家が、成長の見込みがすでに価格に折り込まれている株に割高な支払をしてしまっているから

・投資の世界では、行動を起こそうとする傾向が有害な結果をもたらす。「男たちのあらゆる苦難は、静かな部屋にひとりで座っていられないことから始まる」(哲学者パスカル)

・人間にとって、後悔は損失よりもはるかにつらい。事前に予想できたはずと思うと、その失敗はとりわけつらくなる。金銭的損失は、後悔の恐れに対して支払われる代償

・株式市場では、長期投資が成果をあげるという結論が出ているにもかかわらず、ニューヨーク証券取引所で株式が保持される平均期間は9カ月以下に落ちている。理由の一つは、情報の手に入れやすさであり、そのせいで投資家は自信過剰になって頻繁に動きすぎる

・人は、自分の意見を71%も信じて、アドバイザーやコンサルタントの意見は29%しか信じない。これを五分五分にできれば、意思決定能力は向上する

資産配分がファンドの運用成績の80%を決定しており、銘柄の選定や売買のタイミングはさほど重要ではない

・経済的格差の拡大した集団では、平均値に欠陥があり、中央値が重要になっている



著者は、動かないで我慢し続けること、情報よりも感情のコントロール(浮かれない、冷静になる)の方が重要であると述べられています。

投資の本というよりも、心を鍛練する本といったほうがいいかもしれません。つまり、投資も人間力も同じで、むしろ人間力が投資に勝つポイントであるということではないでしょうか。


[ 2013/04/09 07:03 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ商法』マーヴィン・トケイヤー

ユダヤ商法ユダヤ商法
(2000/09)
マーヴィン・トケイヤー

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本書は、ユダヤ商人が5000年の歴史の中で培ってきた力と知恵を「ユダヤ商人の十戒」という形でまとめています。

1.「正直であれ」2.「好機をとらえろ」3.「生涯にわたって学べ」4.「時間を貴べ」5.「笑え」6.「使命感をもて」7.「過去から学べ」8.「話す倍聞け」9.「弱者に施せ」10.「家族を大切にせよ」と、どれも参考になる項目だらけです。

これらの中で、特に参考になった箇所を、要約して、紹介させていただきます。



・ユダヤ人は聖典「タルムード」を1日1回はひもとく。タルムードは全部で20巻(12000ページ、1日1ページ読んでも33年かかる)。法、歴史、人物が語られ、人生の意義、人間の威厳、幸福、愛とは何かが語られ、ユダヤ人の知的財産精神的涵養が凝縮されている

・「自分の頭で伝統の意味を考えない者は、他人に手を引かれた盲人に等しい」

・人間を欺くことができても、神を欺くことはできない。法律に違反する商取引は、神に背くことと同意。ユダヤ商人の「正直」とは、必ず神との関係において問われる

・正しく行われた商売は徳の高い行い。得られた富を、同胞の貧しいユダヤ人に分配した

・ユダヤ人にとって、金は道具。道具に支配される者はいない。だから、道具である金は、たくさんもっていたほうがいい

・ユダヤ人に「清貧」の概念は存在しない。貧しさは、自慢できることではなく、むしろ、人間の幸福にとって大敵であり、恥ずかしいこと

・「金は要塞であり、貧苦は廃墟である」「金は肥料のようなもの。使わずに積み上げておくと臭い」と、金は必要だが、人生の落とし穴になることを警告する

・商人は、「誇大宣伝」「値をつりあげるための貯蔵」「計量のごまかし」をしてはならない

・ユダヤ商法とは「理詰めの商法」。ユダヤ商人は、さまざまな悪条件を合理化し、改善し、新たな手法を生み出すことによって、解決してきた

・ユダヤ人は「子供」と「本」を大事にしてきた。「生活が貧しくて、物を売らならば、まず金、宝石、家、土地を売りなさい。最後まで売っていけないのは本」という諺もある

ユダヤ人の教育の成功の秘訣は5つ。1.「個人を重視する」2.「得意分野で優越する」3.「全人格を向上させる」4.「創造力を養う」5.「生涯を通じて学ぶ」

・イマジネーションを作動するのは、「自己あるいは他人との対話」「読書」「執筆」の三つ

・「他の人より優れている人は、本当に優れてはいない。以前の自分より優れている人は、本当に優れている」

・「人間はしばしば手を抜くことによって、かえって大きなものをつくり出す」

・創造的な行為は、ユーモアやジョークと全く同じように、意外性という力によって支えられている。常識的な枠に、とらわれてはいけない

・「神の前では、泣け。人の前では、笑え」

・笑いは「許す」という機能を持っている。あらゆることについて笑える人間は寛容である。人間は厳しさの中にも笑いを忘れてはならない

・「理想を持っている者は、失敗してもくじけない。それは、理想が損なわれたわけではないから。実利を求める者は、失敗したら、立ち直れない。それは、実利が失われるから」

・ユダヤ商人には、過去に失敗した契約書を教訓として、額に入れて飾っている者がいる

・ユダヤ民族は、人の五感の中で、「音」が最も精神性が高いとみなしてきた「聞く民族

・「よい意見には人格はない」。アイデアを出した人間の評価をしてはならない

・「自分の悪事を隠すのと同じくらいに、自分の長所や功績を隠すように努めなさい」

・「人は、その知恵によって敬われ、親切さによって愛される」

・「人間を計るのに四つの尺度がある。それは、金、酒、女、時間に対する態度」



この本に出てくる格言、箴言の多くは、タルムードからの出典です。タルムードは論争集で、読む者が考え、自分で判断するものです。

自分の頭で考え、判断することが何よりも重要ということではないでしょうか。



[ 2012/10/23 07:00 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『新ユダヤ成功の哲学―なぜ彼らは世界の富を動かせるのか』越智道雄

新ユダヤ成功の哲学―なぜ彼らは世界の富を動かせるのか新ユダヤ成功の哲学―なぜ彼らは世界の富を動かせるのか
(2007/01)
越智 道雄

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明治大学教授である著者が、なぜユダヤ人は、世界の富を動かすようになったのかを30の成功遺伝子と12の統計を使い、科学的、論理的に解明しようとする書です。

ユダヤ人の文化や思想をヒントにした「成功遺伝子」には、学ぶべき点が数多くあります。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・成功の前提は、「絶望にめげてしまわないこと」。めげてしまわないためには、「負けるが勝ち」という倒錯の達人になればいい。それこそが、シュレミール(道化気質)の真骨頂

・現世の実存的時間を生きるにあたって、「Here & Now」(今、ここで)どう行動するかが常に問われ、それがユダヤ教徒に現世利益の傾向を高めた

・カトリックは、動植物や土地の産出力をよしとみなし、金銭は不毛と断じ、金利という金銭の産出力を否定した。ユダヤ教徒は、金銭という非自然物・非人間の産出力を信じた。土地所有を禁じられた彼らは、金銭の産出力を信じなければ、生業が成り立たなかった

・競争が大前提のユダヤ文化では、自分は競争の圏外に「脱出」し、競争するあまり、提携しにくい同胞たちに気軽に声をかけ、彼らを一堂に会わせる「マスタリング(駆り集め)」の能力がある

・「隙間産業」の最大の利点は、先代の蓄積ぬきで、いきなり巨富をつかめる点。これこそが、ユダヤ文化の成功遺伝子が、たゆみなく活性化し続ける秘訣であり、いつまでも「隙間」にとどまる原因でもある

・ユダヤ系は昔から国内で差別されるから「隙間」を見出すしかなかったわけだが、海外もまた一つの隙間だった。海外へ出ていった同胞につながればよかった

在米ユダヤ系は、ヨーロッパ~イスラエル~アメリカの「三角還流」のアメリカ人だからこそ、ユダヤ系が薬味として活き、イスラエルの存在が、薬味をさらに強化した。華僑や印僑に比べ、エスニック度を高めつつ、トランスナショナル度を高めてきた

WASP(アメリカ建国の主役だったプロテスタントとポーランド系・アイルランド系のカトリックの子孫)は競争を強く奨励した。しかし、それを剥き出しにするな、チームワーク重視の仮面をかぶれ、という偽善を建前にした

・日本人はいったん「島国」の外へ出てしまった同胞は、もはやただの無縁な「ガイジン」にすぎないとする不思議な「不感症」を国民病としてきた。これほどもったいないことはない

・激しい差別に直面し続けてきたユダヤ系の親にとっては、子供だけが希望の星だった。その希望の星を彼らはナーチャス(子供から得られる喜び)と呼んだ

・ユダヤ系の子育て七原則では、父親や他の大人に対しては、敬意を表すように躾けられるものの、母親には甘え放題に育てる。これは、被差別の衝撃を母親にぶつけることで、代理吸収してもらい、心身を立て直す心的操作

・仲間集団は往々にして「強い自我と自尊心」を目減りさせ、個人のユニークさを消耗させ、自分たちと同じレベルの「凡人」に還元しないと気がすまない

・チームワーク重視の文化だと、ユダヤ系の得意とする専門職分野進出の決め手となる読書、孤独の中でしか鍛えられない能力の開発が疎かになってしまう

・ユダヤ系の父親は、子供に家計簿を見せて、アメリカで実人生を生きていく、どうにもならない制限枠を明示する。玩具の取得(成人後の玩具は、車、住宅、衣類、外食、行楽などを指す)を先に延ばすテクニック、つまり「欲望充足の無限延期」こそ、成功の秘訣

・米国におけるユダヤ系が好む車種は「手頃な価格の車」で、高級車を避ける。彼らが好むのは日本車。彼らは、ローン金利を忌避し、キャッシュで購入する者が大半

・状況を見通す立場にいなければ不安なユダヤ系は、他人がコントロールしている組織に身を預けることに、ひときわ警戒心をかき立てられる。終身雇用制に安住してきた日本人とは、まるで違うメンタリティ

・ヨーロッパでは、土地所有を禁じられてきたユダヤ系は、逆に土地への愛着を切り捨て、土地を投機対象に還元できた。世界の金持ち400人の23%がユダヤ系で、そのうち20%が不動産業。すべてを借金でカバーし、徒手空拳でやれる「隙間産業」の最たるもの

・ユダヤ系は「人生の一回性」を固く信じているので、各自が一世代で財をなすのが基本



ユダヤ人は、その厳しい環境(被差別と居住場所と仕事の制約)を逆手にとり、それにも負けずに、生き抜いていくための知恵で、成功しました。

本書には、ユダヤ人が得意とする、専門職で自立していくためのノウハウや隙間産業を起業して生きていくノウハウがいっぱい掲載されています。専門職や起業家を目指す方に、読んでもらいたい一冊です。


[ 2012/08/06 07:01 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『新版・ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点』手島佑郎

新版 ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点新版 ユダヤタルムードビジネス―ハラハーにみる経済思想の原点
(2003/04)
手島 佑郎

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タルムードとは、ユダヤ4000年の記録であり、そこには、成功も失敗も記されています。ユダヤ人は、タルムードを学ぶことによって、成長してきました。

しかし、このタルムードを読むのは、難解で躊躇していました。本書は、タルムードの中から、ビジネスに関する箇所を選別した書です。タルムードの入門書として、読みやすい本です。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・ユダヤ教やイスラム教は、利息を禁じている(現実には、利息をつけての金銭の貸し借りが横行しており、再三禁止を命じている)。利息禁止だからこそ、ユダヤ人は実業という形で財産形成をはかり、投資や投機でさらにこれを殖やし、成功したものが多い

・貧富のアンバランスがあるから、お金はものをいう。全員が金持ちになってしまったのでは、金持ちになっても意味がない

・金持ちは常に少なく、貧乏人が圧倒的多数。金持ちは貧乏人からの利益の吸い上げによって富を築いている。金持ちからの、たらい回しによって、富を築いているのではない

・社会は拡大再生産を続けていかないと、やがて萎縮消滅する。拡大再生産のためには、生産技術の維持と継承、ならびに子孫の拡大増加は必須条件。幼子らが元気活発であれば、次世代の家族の繁栄も民族の発展も望める

・「ならず者は罪を恐れない。大衆は敬虔でない。恥ずかしがり屋は学ばない。短気な者は教えない。商売に耽りすぎる者は賢くならない。人々がいない場所で人間らしくあるべく努めよ」(ヒレルの言葉)

古典研究は、毎日の仕事と無関係に見える。だが、日々の仕事を離れて、真理の前に心を虚しくすることが、精神を鍛え、広い視野から物事を判断することを可能にする

・人が尊敬に値するかどうかは、自分の力で生活できるかどうか

・有名人の能力は過大評価され、凡人の能力は過小評価される。人に機会と責任を与えて、やらせてみよ。そうすれば人は伸びる

・原則として、ユダヤ人社会では、まず若い者から発言させる仕組みになっているから、ユダヤ人は闊達に意見を述べる

・人間とは不慮の過ちや事故を引き起こす可能性を常に持っている存在。そういう人間観を土台に、個人の責任の取り方を明示し、周知徹底させようとするのが、タルムードの基本的な考え方

・「余裕」と「意志」と「」、これは人が前進するための三要素

・理屈よりも行動が先行する。行動で先行してみて不都合なことがあれば、それから、おもむろに反省する。行動しないで議論しても、話がかみ合うはずもない

・学問と知恵こそは、ユダヤ人全体の存続に関わる最重要事。家柄や名門よりも、ユダヤ教の学殖と知恵が尊敬される。今日でも、ユダヤ人社会では、賢人学者には、権力者や金持ちよりも上席が用意される

・ユダヤ人のビジネスの基本は「広く浅く多く」であって、「狭く深く少なく」という発想はない

・ユダヤ人は、狭い専門領域だけに終始しようとはしない。間口の広さは、接触の多さと情報の多さとなり、新しい着想やビジネスチャンスの創出に関係する。要は、多く稼ぐ、多く儲けるかではなく、いかに多くの人々と接触できるかの発想

・ユダヤ人の母親は、普段から息子が早く一人立ちするように、しつける。生活習慣の中で、自立独立を子供たちに教える

・日本人は、契約とは、強者が弱者に押しつけるものであって、弱者が強者に提案するとは考えられていない。ユダヤ人と根本的に考え方の違いがある

・日本では、相手が自分よりも弱いと見るや、途端に高圧的にさまざまな要求をし始める。それでいて、高圧的要求の正当さを裏付ける根拠を何も説明できない。それが世間の常識、世間で当たり前だからとしか説明できない

・ユダヤ人の世界では、訴訟においても必ず三人の証人を立てる。客観というものは、少なくとも第三の視点から観察を得て初めて成立する



ユダヤ人は、タルムードの教えによって、宗教観以上に、人間観、社会観、ビジネス観が形成されているように思います。

過去の失敗を反省することで、成長してきた人や民族は、どんな事態が起きようと、しっかり生きていけます。このことが、一番大きな財産になるのではないでしょうか。
[ 2012/05/31 07:05 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『4000年のDNA・ユダヤのビジネス黄金律』手島佑郎

4000年のDNA ユダヤのビジネス黄金律4000年のDNA ユダヤのビジネス黄金律
(2004/11)
手島 佑郎

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ユダヤ人はビジネスの達人です。ビジネスをどう捉えているのか、興味のわくところです。
本書には、成功したユダヤ人の事例がたくさん登場します。

驚き、感心した例が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



ドラッカーが目指す「知識社会」の理想は、実は彼を育てたユダヤ人社会が、常に若者たちに教えてきた目標である。ユダヤ人が4000年間の亡国、民族の変転、家族の離散の中で今日まで生き延びてこられたのは、常に彼らが知識を武器としてきたからである

・「学べば学ぶほど、生命が増し加わる。聡明な人からの助言が多ければ、知性が増す」(西暦1世紀のユダヤの賢哲ヒレル)。学ぶということが、彼らのDNAの一部にしみ込んでいる

・ユダヤ人でビジネスに成功している人物の大半が、現代ではアメリカに集中している。それも、流通・小売業、不動産、金融、情報、娯楽などの分野が圧倒的である

・「例外のない法則はない。だから、考えられ得る限りの例外も想定し、それにどう対処するかも考えよ」と最初に教えたのがタルムード。タルムードの優れたところは、多数意見だけでなく、少数意見も表記されているところ

・多数決はあくまでも、そのときの社会情勢や社会事情が決定することである。多数を説得できる論理さえ見つければ、少数意見が多数の採用する意見となる

・ロー・コスト&ロー・リスクでできる商売は何か。ロスチャイルドは古物商から出発した。マイケル・ミルキンは屑債券(ジャンク・ポンド)からデリバティブを考案した。誰もかえりみない屑に近い物を商品化するのがユダヤ人ビジネスの原点

・怠け者にかぎって、「もし」と「おそらく」とかに期待する。それが間違いの始まり

ユダヤ人思想家には、自由の意味を論じ、革命思想を唱える者が多い。マルクス、シュムペーター、ドラッカー、フリードマン、エーリッヒ・フロムなどの考え方は、命令される隷属ではなく、自ら行動し生計を営むことを前提にしている

・他人と同じことを発言したのでは、自分の存在意義がない。ユダヤ人は、他人と少しでも異なる発言をする。他人の提案よりも、少しでも改善された提案をする

・ユダヤ人家庭には、どこの家にも「ツダカー(慈善)箱」がある。毎週金曜日に、少額でもお金を入れ、箱が一杯になれば、社会に用立ててもらうために差し出す。大富豪ジョージ・ソロスは、東欧の民主化と生活向上のため、ハンガリーに大学を丸ごと寄付した

・有に固執する者は、無になれない。無になれない者は、創造的知恵を得ることができない。だから、ユダヤ人は、事業で失敗して、無になることを恐れない

・ユダヤ人は、将来の安全のために、あえて現在のリスクを犯す。日本人は、現在の安全のために、将来のリスクを先送りする

・「人間の特筆すべき性質は、質問すること」「質問を恥じない者は、やがて偉大になる。恥ずかしがる者は、学ぶことさえしない」

・ユダヤ人は、常によりベターなアイデアや解決を模索している。目の前の意見に対して、適切でないと思えば「ノー」と言う。「ノー」と言った後で、考え直して「イエス」と豹変することもしばしば。他方、日本人は「ノー」と思っても言わない

・日本人は、金持ちになったら、蔵を建て、ここに宝をしまっていますよと言わんばかりに蔵を誇示する。ヨーロッパの金持ちは、盗難を避けるために、地下室に隠す。むやみに富の存在を外部に向かってひけらかさない

・ユダヤ教は、人間を神格化し、人間を崇拝することを忌避する。だからこそ、偉人と呼ばれるアダム、アブラハム、モーセ、サムエル、ダビデなどに関しても、その私生活の失敗を包み隠さず記録している

・タルムードは少数意見も記録する理由は、意見の多様性を認めるため。少なくとも対立する二つ以上の考えを知っておくことが、思考の枠を広げる。多様性が健全性を生む

・閑人を10世帯で養うとすれば、10人の閑人を養うには、100世帯以上のユダヤ人がいる。学者の卵10人を養えるのは、その町に文化や芸術を支える経済的余裕があること。才能がある若人を養えない町、あるいは養わない町は、滅んでしまうとタルムードは警告する


流浪の民定住の民。安心して暮らせるのは定住の民ですが、がんじがらめの社会の中で自由を奪われます。流浪の民は、自由ですが、いつも気を張っていかないと生きていけません。

どちらがいいとは言えませんが、少なくとも、ビジネス上では、流浪の民の精神が役に立つと思います。

ビジネスを極めようとすると、流浪の民の代表であるユダヤ人の箴言に目が行ってしまうのは当然のことかもしれません。
[ 2012/04/16 07:06 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『在日華僑が書いた華僑・華僑・ユダヤ・日本の民族商法』楊文魁

在日華僑が書いた華僑・ユダヤ・日本の民族商法在日華僑が書いた華僑・ユダヤ・日本の民族商法
(1995/07)
楊 文魁

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この本の中で、興味をそそられる「シオンの議定書」は、1900年前後に、ロシア語版で出版された「ユダヤ人を貶めるための本」「史上最悪の偽書」と呼ばれているものです。

内容はともあれ、国民を堕落させるには、どうしたらいいのかを、今から100年以上前に巧妙に考えていた人物がいたことに驚きです。

堕落の様子が、今の日本の状況に瓜二つなので、今回は、この偽書「シオンの議定書」の中から、印象深い箇所を絞り、紹介させていただきます。



・この世には、「性善」な人間より、低俗な本能に生きる者のほうが、はるかにたくさんいる。だから、政治において最も効果的なのは、学者などの議論ではなく、「暴力」と「恐怖」

・民衆はどんなことにせよ、表面しか分からないし、非論理や矛盾に誘われやすいから、理性的な助言や説得は功を奏さない。彼らは、浅はかな感情、迷信、習慣、伝統、感傷的な説に同調しやすく、党派根性に陥りがち

・モラルに制約される政治家は、政治家失格。とても権力の座は維持できない。政治家たるもの、策謀と偽善を用いなければならない。民衆が美徳とする誠実や率直さは政治において罪悪。こうした徳目は、最強の政敵よりも一層確実に政権を転覆させてしまう

・酒に浸って馬鹿になった青年は、若いうちから悪徳に誘われる。貴婦人もこの同類で、放蕩や贅沢の真似に忙しい

・歴史の事実を、公正な観察によらず、批判的検討をせず、結果だけを求めるインテリたちに、科学の法則を信じ込ませて、疑わせないようにする。マスコミを使い、理論に対する盲目的信仰を高めれば、必要なことを実行することができる

・人民の関心を商工業に引きつけなければならない。そうすれば、すべての人民は自分の利益に没頭して、共同の敵を見逃す

・優越のための闘争と市場の絶えざる投機は、人情酷薄な社会を現出する。そして、高尚な政治や宗教に対して嫌気がさし、金儲けに対する執念が、唯一の生き甲斐になる。彼らは金で得られる快楽を求め、金を偶像視するようになる

・民衆は、言論と行動を錯覚している。彼らは、その感情に訴えるものだけに満足し、公約が実行されたかどうかを見届けることをしない

・商工業に保護を加え、とりわけ投機を奨励すること。狙いは工業を不安定にすることにある。さもないと、工業は個人資本を増大させ、債務を返済する。工業の富をとり上げ、投機を通じ、全世界の財宝を手に収めるようにしなければならない

・工業を破壊するために、投機の他に贅沢を広めること。つまり、華やかなものへの強い欲望、財力を使い果たしてしまうような激しい欲求を募らせること

・政治的成功を収める秘訣は、腹の中に隠すこと。だから、外交官は言行不一致でなければいけない

・民衆を憎悪、闘争、欠乏にさらし、結局、金力の支配下に入る以外にないように追い込むこと

・民衆に事情を悟らせないために、マス・レジャーを盛んにして、芸能、スポーツをもてはやす。こうして、人間は次第に自ら思索する能力を失い、権力者の考えるとおりにしか考えないようになる

・権力を握ったからには、青少年を従順に育て、支配者を敬愛させるようにする。そして、古典と歴史の研究を廃し、未来社会の研究に眼を開かせること

視覚教育の狙いは、人々を、ものが考えられず、絵を見なければ何も理解できない従順な動物にすること

・政治犯が英雄視されることをなくすため、窃盗や殺人などの破廉恥罪の者どもと同じ席に座らせる。そうすれば、世間は、彼らを軽蔑の眼差しで見るようになる

課税の最善の方法は、財産に対しての累進税。そうすれば、財産高に応じて、何の造作もなく、税を徴収できる。貧困な階級に対する課税は、革命の萌芽となり、国家になんの利益ももたらさない

・国債は、政府が誤った行政をおこない、権力を正しく行使しなかったことの明白な証明



「シオンの議定書」には、マキャベリの君主論に少し似たところがあります。権力を長く維持し続ける方法論や策略が、ここには書かれています。

支配者、既得権益者、知識人の策略や謀略に引っ掛からないように、自己防衛するためには、このような文章を読んでおくことも必要ではないでしょうか。
[ 2012/03/15 07:56 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)

『ユダヤ賢母の教え』ジル・ザリン、リサ・ウェクスラー

ユダヤ賢母の教え (East Press Business)ユダヤ賢母の教え (East Press Business)
(2011/02/25)
ジル ザリン、リサ ウェクスラー 他

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ユダヤ人の本は、今までに9冊ほど紹介してきました。今回は視点を変えて、ユダヤ人の母が、子に何を教えているかについての書です。翻訳は、「女性の品格」が大ベストセラーになった坂東眞理子さんです。

本書を読めば、お金、生き方、教育等々、母から子へ伝わっているユダヤ人の成功の秘訣を知ることができます。

参考になった箇所が数多くありました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・「毎日、今日があなたの最後の日だと思いなさい。毎日、今日があなたの最初の日だと思いなさい」

・ユダヤ人の母親は複数のもの同士を結びつけるのが得意。最も重要なことの一つは、生まれつきの才能とそれを開花させる仕事を結びつけること

正当な支払いを要求するのは誰にとっても難しく、特に女性には骨の折れる仕事。でも、下品なことではない。ビジネスにおいて、お金はあなたが敬意を払われているかどうかを測る究極の指針である

・指導者が教えるべきこと、それは「隠れたカリキュラム」。これは、疑うことを知らない人の足元をすくうために作られた暗黙のルールを意味する。こうしたルールは、痛い目に合わない限り気づくことができない

・目指す職種のトップの人々が集まり、学ぶような集会には、お金と時間を使ってでも、出席すること。さまよえる魂のごとく会場を歩き回り、挨拶するだけでいい

・大切なのは、目的でなく、その過程。夢を実現させる過程を楽しむこと

・内容は関係ない。世の中に貢献すれば、必ず収入が得られる。苦しいときには、選り好みせずに仕事を見つけて、できるだけお金を稼ぐべき

・お金は選択の自由を手にする手段であり、その選択というのは、単に物質的な品物のことではなく、健康管理や教育、娯楽など、人生全般に関するもの

・世間で必要なものを揃えられる程度にはお金と向き合う必要があるが、あなたの価値を落とすほど強欲になってはいけない。お金のために愛や友情、信用を壊してはいけない

・ユダヤ人を称するのに、最もふさわしいのは「あらゆるものを読む民」。ハードカバー、ペーパーバック、新聞、雑誌、インターネットのサイトなど、とにかく読むことが大好き。いつでも何かを読んでいる

・ユダヤ人の教育への姿勢は、情報をただ鵜呑みにするのではなく疑問を持とうというもの。宗教色の強い学校においてさえ、疑問を持てと教えられる

・ユダヤ人の母親は、「情報を吸収するには本が一番」ということをわが子に知らさなければと強く思っている

・あなたが何かを成し得た喜びに浸っているとき、それを誇りに思ってくれる友人が最前列の友だち。言い換えれば、あなたの幸運を心から喜んでくれる人が本当の友だち

・ユダヤ人の母親にとって、人生が成功したかどうかは、その人が築き上げてきた人間関係の質で決まる。みんなから好かれる必要はないが、ある人と特別な絆を見つけたら、その絆を認識し、育み、維持しなければならない

・彼がいい父親になれそうかどうか、恋愛時代に常に観察しておくこと。いい父親になりそうな人は、生活力があることと、我慢強いこと

・「すばらしい結婚は、“盲目の妻”と“耳の不自由な夫”の間で生まれる」

親を尊敬できない子供は、先生、上司、指導者など、目上の人すべてを尊敬しなくなる

・仕事は一生できるが、わが子と一緒にいられるのは、18年ほど

親としての役割は、自分が学んだ教訓を子供に伝えることであり、あまり見返りを期待してはいけない



お金は大事、でも、信用はもっと大事。本をよく読むこと。疑問を持つこと。才能を開花させる過程を楽しむこと。本当の友達を持つこと。結婚相手を慎重に選ぶこと。人生で学んだことを子に伝えること。

これらを、母親たちがしっかり子に伝えてきたことが、ユダヤ人の礎になっていることがわかりました。教えを伝えることの大切さを感じさせてくれる一冊です。
[ 2012/02/09 07:09 ] ユダヤ本 | TB(0) | CM(0)