とは学

「・・・とは」の哲学

『森づくりの明暗―スウェーデン・オーストリアと日本』内田健一

森づくりの明暗―スウェーデン・オーストリアと日本森づくりの明暗―スウェーデン・オーストリアと日本
(2006/05/11)
内田 健一

商品詳細を見る

「森林」の産物である木材は、戦後すぐに関税が自由化されました。農林水産の中では、珍しい存在です。その結果、円高や国際競争に翻弄されて、産業として力を無くしていきました。

「北欧」は、民主主義が最も進んだ国々です。本ブログでも、度々とり上げてきました(参照:「北欧の本」)

本書は、「北欧」の国、スウェーデンが、どのような「森林政策」をとっているのかを、現地取材した書です。興味深い内容だったので、その一部をまとめてみました。



・スウェーデンの国土面積は日本の1.1倍。森林面積割合は65.9%(日本は66.7%)。森林面積も、森林面積の割合も、日本と非常に近い

・スウェーデンは、林業と、製材・製紙など林業関連製造業に従事する人口が10万人を超え、従事者の人口で見れば、スウェーデン第二位の産業

・木材と木材加工製品は、輸出額から輸入額を引いた額が、スウェーデン国内の産業中最大で、木材加工業は、国に最大の収益をもたらす基幹産業

・スウェーデン林業は、驚異的な高能率機械化林業(大型のタイヤが6個ついた収穫用機械「ハーベスタ」がアームの先で林木を根元からつかみ、鋸刃が回転し根から切り離す)で、しかも、サーチライトを装備し、昼夜を問わず24時間3交代制

・収穫や集材を担当している作業者は、多くの場合、森林企業や森林組合に雇用された者ではなく、日本でいう一人親方的な、少人数の独立した作業チーム。そして、高能率収穫用機械「ハーベスタ」(約5000万円)を所有

・スウェーデンの木材の品質は、樹種と末口径で決まる。年輪の入り具合や筋の有無などは考慮されない。日本に比べると非常に単純

・林業現場で機械を運転して木材を伐り出す森林作業者のほとんどが、農林学校の林学科出身者(農林高校は全国16か所3年制で40名)。学生の25%が森林所有者の子供

・スウェーデンの林業は、樹木を一度に伐採する「皆伐林業」。更新から伐採までの「伐期」は南部では70年~100年。日照の短い北部では、さらに20~30年ほど伐期が伸びる

1回目の間伐材は、パルプ原料またはバイオマスエネルギー原料。2回目の間伐では、パルプ用材と1割程度は製材にまわされ、3回目の間伐材は8割が製材用になり、そして主伐を迎える

・スウェーデン林業の収支は、1ha当り、経費が31~35万円、収入が114~201万円で、期間が100年。主伐まで100年かかるが、2回目の間伐以降は確実に収入になる

・スウェーデン地域森林局森林官(公務員)の作業は、「森林施業計画の作成」「森林の評価」「立木の評価」などの調査を行うこと。彼らは「独立採算制」であり、1日に30haの森林を調査しないと飯が食えない

・スウェーデンには森林ボランティアという人は存在しない。プロとして関わるか、遊びに行くかのどちらか。森林率12%のイギリスでは、プロの数が少なく、市民ボランティアの取り組みがある

・スウェーデンの森林面積のうち、10%が国や自治体が持つパブリックフォレスト。40%が企業の所有する会社有林、50%が個人所有者の森林。スウェーデンの個人所有林一戸当たりの森林面積は、日本のほぼ10倍

・日本の森林組合は、木材の伐採や素材の販売など、フタを開けてみないと黒字か赤字か分からないような「山師の商売」には手を出さず、確実に収入が得られる補助金や公共事業を中心に生計を立てる道を選んできた

・日本の森林が現在のように荒廃し、林業が補助金の麻薬中毒患者のようになってしまった原因の一端は、行政機関と森林組合の相互依存関係にある

バイオマスエネルギー原料は、買い上げ価格の設定が難しい。値を良くすれば、パルプ用材に流れなくなって製紙業者が困る。スウェーデンでは、バイオマス利用技術が既に確立しているが、技術以外の要因が今後の普及を握る鍵となる



日本とほぼ同じ森林面積を持つスウェーデンの林業が、産業として立派に成立しているのに、日本がなぜ成立していないのかを問う書です。

そこには、複雑な要素がありますが、それを一つ一つ解決していけば、日本の資源である森林も立派な産業になることが示唆されています。地方の疲弊を防ぐには、森林産業の育成しかないのかもしれません。

[ 2014/04/30 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『スウェーデンはなぜ強いのか』北岡孝義

スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)スウェーデンはなぜ強いのか (PHP新書)
(2010/07/16)
北岡 孝義

商品詳細を見る

スウェーデンの本を紹介するのは、これで10冊目(「北欧の本」を参照)になります。

本書は、経済学的観点からスウェーデンを見た書です。著者は、スウェーデンの経済力を生み出すもとを、国家戦略にあると考察されています。その一部をまとめてみました。



・スウェーデンは不思議な国。税金が高い国なのに、国民からの反発の声が少ない。それどころか、国民の幸福感は日本よりもはるかに高い。福祉が行き届けば、国民はやる気を起こさないはずなのに、国民は勤勉であり、労働生産性は日本よりはるかに高い

・大きな政府、反市場主義の国と見られながら、スウェーデンの企業政策は、米国以上に市場原理主義的。スウェーデン政府も企業のリストラを容認。その結果、失業率は高い

・北欧諸国の森林利用率は高い。森林の成長量に対する伐採量の割合は7割に達する(日本は4割)。北欧の木材利用は進んでいるが、森林破壊が進んでいるわけではない

・スウェーデンの人口増加時期(1960年代前半、80年代前半~90年代半ば、90年代後半~現在)は移民の増加時期に対応している。人口成長率の76%が移民の増加によるもの

・所得税は、地方税が収入の額に関係なく30%。国税が年収390万円まではゼロ、590万円までは20%、それ以上は25%。消費税は25%

・社会保険(年金、医療保険、失業保険、介護保険など)の保険料は、個人負担が給与の7%、企業負担が給与支払総額の29%。企業負担の割合が高いのは、スウェーデンでは、企業活動で得た利益は従業員や株主に還元するべきとの考え方があるから

自殺率が高かったのは、高福祉・高負担のスウェーデンモデルが完成する前の時代。現在の自殺率は、日本に比べてはるかに低い

・スウェーデンの国会議員の多くは、議員活動を行うとともに、もともとの本業を続けている。これは、政治家が実社会から遊離せず、政治屋になることを防ぐ効果がある。国会議員は職業ではなく、一種の社会奉仕であるとの認識が定着している

・社会・経済環境が変化しても、それに最低20~30年は耐えうる制度の構築が必要。それが制度への信頼を生み、国民に安心を与える。スウェーデンの年金改革は「生活の安心は、十分な年金額ではなく、制度の持続可能性によって得られる」との考えに基づいている

・「情報の非対称性」(供給者は知るが、需要者は自分の受けるサービスの質の良否を知らない)の市場で、自由取引を認めると、悪い者がはびこり、良心的な者は市場から排除される(レモンの原理)。医療サービスや社会インフラ整備は、政府が行うほうが効率的

・スウェーデンの政府は、中央政府と、ランスティング(日本の都道府県)とコミューン(市町村)の地方政府に分けられる。コミューンは、学校教育、児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉、ラスティングは医療、中央政府は年金、失業保険などの社会保障を担当する

・近年のスウェーデンは、福祉と環境を成長戦略として位置づけている。環境では、CO2排出の減少とともに経済成長率は高まっている。しかし、旧来型のスウェーデン福祉政策は、低成長、少子高齢化という経済・社会環境に対応できていない

・福祉は、「新たなビジネス、産業を創出する」「セイフティネットの構築を通じて、雇用を流動化させ、労働の低生産性部門から高生産性部門への移動を促す」「国民の不安を軽減させ、総需要の拡大に寄与する」点で、経済成長の原動力になり得る

・スウェーデンは昔から学者が尊重される国柄。学者出身の政治家が多いので、政治が理念を優先させる。現在の首相も経済学者

・政治家が悪いことをしても、ばれなければ、政治家は悪しきに流れ、悪い政治家のみが生き残り、政治は機能不全に陥る。スウェーデンでは、国民(依頼人)の利益にかなう政治を、政治家(代理人)にさせるために、情報公開、説明責任の徹底を法的に義務づけた

・市場の機能がうまく働かない分野の代表が、教育と医療。スウェーデンでは、ほとんどの学校や病院・診療所は国営・公営。金融の分野も、市場機能に全面的に委ねていない。すべての分野を市場の機能に委ねる考え方は、真の市場主義ではないと考えている

・市場経済にふさわしい経済人の育成は、市場経済を支える無形の社会的インフラ。市場の参加者は、独立心が強く、自由と平等、個性の尊重を持つ必要がある。スウェーデンは、この無形の社会的インフラの維持に努力している。これがスウェーデンの底にある強さ



スウェーデンという国の強さの要因は、「学者を尊敬する社会」「市場と政府の役割を決める考え方」「政治家の不正排除の徹底」にあるようです。

スウェーデンといえば、福祉や環境の面ばかり強調されますが、根底に、上記のような強さがあることを忘れてはいけないのかもしれません。


[ 2014/03/19 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『デンマークの教育に学ぶ・生きていることが楽しい』江口千春

デンマークの教育に学ぶ生きていることが楽しい (子どもとともに生きる幸せ)デンマークの教育に学ぶ生きていることが楽しい (子どもとともに生きる幸せ)
(2010/11/01)
江口 千春

商品詳細を見る

著者は、「幸福度世界一の国」デンマークの鍵は教育にあると考え、デンマークの教育をさまざまな角度から検証されています。

本書には、幸福を実感できる人を社会が育てていくヒントが数多く記されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・スクールアドバイザーは1対1で、子供と話し、進路を決める手助けをする。6年生と7年生は「自分を知る」、8年生は「どんな進路があるかを知る」、9年生は「自分の進路を決める

・図書室は校舎の中央にあり、専任の先生が配置されている。教員が授業を準備するにあたって、資料を提供する役割も果たす

・デンマークの学校は、学童保育を校内か隣接地に持つ。3年生までのほとんどの子は、放課後、学童保育所で過ごす。朝は6時半から8時まで、下校は5時まで。動物の世話、スポーツ、編み物、おやつづくり、楽器の演奏、大工仕事、卓球、ゲームなどをする

・学童保育所には、エネルギーの余っている子の暴れる部屋もあり、一人になりたくなった子が過ごすコーナーもある。広い敷地で、子供を受け止める大勢のスタッフがいる(子供12人あたり指導員1人)

・デンマークの子に、デモクラシーの意味を聞くと、「みんなが意見を言えること」「誰かが命令して動くのではないこと」と答える

・デンマークには、さまざまな職業学校がある。農業から自動車修理までたくさんのコースを持つ高校、食肉コースが主な学校など、学校での学びと現場での実習を繰り返す。そして、現場実習すると給料がもらえる

・デンマークの会社は、雇用者と従業員がよく協議して、合意に基づいて運営される。会社(35人以上)の役員会には、従業員の代表が複数参加するという決まりがある

・デンマークでは、大声を出したり、ガミガミ怒ったり、一方的に指示したりすることが少ない。対話が成立し、発する言葉が内面に届き、新たな変化のステップが始まる。このような関係は親子、教師と生徒、大人同士の関係にも見られる

・デンマークでは、家庭であれ、学校であれ、街の環境であれ、税金の使い方であれ、自分の思いを表現し、決定に関わる。だから、意見を言うこと、人の意見を聞くこと、時間をかけて話し合うこと、合意を見出すことが重要になる

・デンマークでは、「連帯(ソリダリティ)」という言葉をよく聞く。ソリダリティとは、人同士は助け合わなければならないという精神であり、福祉社会を維持する理念

・「自己決定」は、デンマークらしさを示すキーワード。「自己決定の尊重」は、幼児期から始まり、一生を貫く。自分自身が、どう生きるかを決めることができてこそ「よい人生

・大学入学の前に、多くの若者はサバトー(次の進路へ進むまで、在学中できなかった、仕事をする・外国を旅するなどの体験)の期間をとる

・対話を重んじ、競争を好まず、試験による教育を控えるのが、デンマーク教育

・教員は、授業・保護者会・専門分野の仕事を含めて週37時間労働。週25時間以外は学校に拘束されず、家で授業準備をしてもよい。教員の夏休みは5週間(生徒は6週間)

・子供に「させる」「やらせる」ことが大半になると、交遊を広げ、創造性を発揮して、生を楽しむ機会が少なくなる

・創造性豊かな職業能力は、個々の土台となり、国の経済を支える基となる。意識的に育てるべきは、子供の生活力と職業能力

・北欧の青年の語学能力の高さは、彼らの世界での活躍の土台となっている。「雇用の機会」には、外国をよく理解し、外国語能力を持つ必要がある

・格差なき繁栄のカギは教育にある。デンマークは、高度な知識社会でなければならない。この過程で、誰もが取り残されることがないようにしなければならない

・賃金の安さで競争してはならない。そのやり方で前進はない。代わりに、知識を競うべきであって、新しいアイデアや新たな変化と発見の能力において競うべき



デンマークの教育と日本の教育の違いを一言で言うと、それは、「個人の成長」のためのものか、「国家の繁栄」のためのものかということです。

デンマークは、「個人の成長」によって、「国家の繁栄」があると考えているのに対し、日本は、最初に「国家」を優先し、「個人」をないがしろにしています。個人の成長をじっくり見守る姿勢が、そろそろ日本の教育界にも必要なのかもしれません。


[ 2013/11/07 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『子どもが自立できる教育』岡田尊司

子どもが自立できる教育 (小学館文庫)子どもが自立できる教育 (小学館文庫)
(2013/03/06)
岡田 尊司

商品詳細を見る

著者は、発達障害が専門の精神科医ですが、小説家でもあります。著書を紹介するのは、「社会脳・人生のカギをにぎるもの」「マインドコントロール」に次ぎ、3冊目です。

本書は、一人一人の特性に合った教育について、世界中の教育システムを調べ、考察した書です。第4章の「海外の教育から学ぶ」は、参考になる点が多々ありました。その中の、オランダフィンランドスイスを中心に、一部要約して、紹介させていただきます。



・オランダでは自立がとても早い。自由主義の伝統をもつ、成熟した個人主義社会であるオランダでは、子どもが自立することを念頭に置いた子育てや教育が早い段階から始まる

・オランダでは、小学校に上がるまでは、甘やかして大切に育てられる。しかし、小学校から、自主性や責任ということを教え込まれる。自分のことは自分でやる、自分のことは自分で決める、ルールや約束を守る、自分の責任を果たす、といったことが重視される

・オランダで重視されるのは、一人一人の子どもに合った教育。時間割も、小学校から自分で決める。学びたいことを自ら選ぶという形で、本人の進歩に合わせ、学習に取り組む

・オランダでは、教師が前に立って説明し、子どもたちが聞くという「古典的な」教育の仕方よりも、実際に手を動かしたり、体で体験して学ぶ方法が大幅に取り入れられている

・オランダには受験はない。勉強は自分がやりたいからするもの。大学進学希望者は、6年制の大学進学コースに進み、高度な専門技術を学びたい人は、5年制の高等職業専門学校準備コース、早く働きたい人は、4年制の中等職業専門学校準備コースに進む

・オランダでは、本人の特性に合った、本人の可能性を最大限に伸ばせる学校や教育が、最高であると考える。こうした点は、フィンランドやデンマークなど教育先進国でも同じ

・オランダの教育の特色は、中等教育になると「フェルゾルヒング」(世話をするの意)という独立した科目があり、自己管理から対人関係、人生設計までを、学び、考えていく

・先進国の中で、生活満足度が最も高い国がオランダ。OECDの調査では、10段階で7以上の満足度が9割。日本の生活満足度は、先進国で最も低く、7以上の満足度は5割。生活満足度は自殺率と相関する。オランダの自殺率は日本の3分の1で、先進国中最も低い

・フィンランドがオランダと共通する点は、「子育て家庭を非常に大切にする」こと。両国とも残業がなく、帰宅が早く(午後3時~6時)、子どもと長く過ごしている。もう一つは「非常に読書好きである」こと。子どもの頃から、自然に読書の習慣が身についている

・フィンランドでは、4~5人単位のグループ学習が効果を上げている。科目ごとに、得意な子が不得意な子を教えるやり方。できる子も、できない子も、学習効果が上がっている

・フィンランドでは、約3割が大学に進むが、今人気が高いのは、35%が進む4年制の高等職業専門学校。こちらを卒業してから、大学に進む人も多い。学力世界一の評価にも関わらず、日本よりも職業系の高校、専門学校に進む人の割合が高い

・フィンランド社会は、犯罪や非行が少ないことでも知られている。刑務所収監されている人の割合は、日本よりさらに低く、アメリカのおよそ15分の1

・スイス経済は通貨高にもかかわらず、経済成長を続け、財政も極めて健全。10%を超える失業率が当たり前の欧米の中で、リーマンショックやギリシャショック後でも失業率が3%前後と低水準。とくに若年層の失業率が低く、国民の幸福度は先進国中でトップクラス

・スイスでは、大学を目指す15%の生徒は、ギムナジウムに進み、高等専門学校を目指す45%は中等学校に進み、手に職をつけることを希望する40%は、実科学校に進む

・スイスの中等学校の特徴は、数学の不得手な子に対しても、数学教育に大きな力を注ぐこと。その理由は、技術的な仕事をする上で、数学が鍵を握ると考えているから

・スイスの教育では、「人間形成」が重要な教育目標とされ、実践的な取り組みを通して、「責任ある社会的存在」として生活することに重きが置かれる

・先進国の中で高い学力維持に成功している国々に共通している点は、競争よりも「学習の社会的側面」や「主体的な体験の側面」を重視していること

・台湾、韓国、中国の教育状況は、日本が学力世界一を誇った頃に似ている。高い教育熱と経済的豊かさを求める激しい競争心を駆動力にして、高い学力が獲得されるという構図



本書の中に、「ヨーロッパの中で、大学進学率が低い国で、若者の失業率が低いという皮肉な事実は、重要なことを示唆している」という著者の見解があります。

若者の失業率が低い先進国の特徴は、日本の高専のような学校への進学率が高く、その高専が、産業界の需給を見極めた定員になっていること。しかも、その高専にいろいろな職業学科があることです。

一人一人の特性に合った学科を選び、そこで専門家になるための勉強をするシステムをつくることが、これからの教育にとって、一番大事なことではないでしょうか。日本の教育は、少し古くなってきているのかもしれません。


[ 2013/10/09 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『スウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたもの』

スウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたものスウェーデンのニッポン人―人がその地に求めたもの
(2012/12)
ノルディック出版編集室

商品詳細を見る

北欧の本」を紹介するのは、23冊目です。スウェーデンの本を紹介するのは、9冊目です。今までに、さまざまな角度から、北欧の本をとりあげてきましたが、本書は、スウェーデン在住の一般の方22人にインタビューした書です。

したがって、良くも悪くも、スウェーデンのありのままの姿が描かれています。その人たちから発せられる意見は、浮ついたものではなく、地に足ついたものばかりです。その中から、参考になった考えを要約して、一部紹介させていただきます。



・スウェーデン人は少しシャイで、積極的に話しかけてはこない。しかし、こちらから話しかければ、親身になって最後まで話を聞いてくれる。家に積極的に招待されることもない。でも、遊びに行かせてと言えば、歓待してくれる。スウェーデン人は日本人に近い

・スウェーデンでは、日本のように新卒を雇って、社会人として鍛え上げるという親切な制度はない。そのため、若者たちは、不況の影響を強く受けてしまい、就職が難しい。しかし、いつも楽しそうにしている

・本当に人間らしくないのは、失業=不幸とか、失業する奴はダメという発想がある社会。そんな社会では、失業という恐怖におびえ、会社にしがみつかざるを得ない。定時に帰れるのに、付き合い残業をする。嫌な仕事も引き受けるしかなくなる

・スウェーデンでは「格差」を感じることはあまりない。低所得の人だろうが、外国人だろうが、住むエリアが偏っているわけではない。学校にも「格差」がない。高級デパートもなければ、高級レストランもない。この「格差」がないことが、幸福度を上げる要因

・スウェーデン社会では、「個人」がとても強く、人間関係はドライ。子供との関係も、老親との関係も、友人隣人と変わらないと思えるほどドライ。それは、「早く大人になること」が子供たちに期待されてきた結果だと考えられる

・多くの老人は、老人ホームや訪問サービスなどの形で福祉の恩恵を受けており、実子の手で介護されている数は少ない。この裏には、老人が「孤独や寂しさに耐える強さ」を求められているということがある

・多くのスウェーデン人は、他人にさほど関心を示さない。それは、障害者、老人、困っている人に対しても、である。よく言えば、それは「個人」としての自分を大事にするために、他人の「個人」も尊重するということ

・スウェーデン人は、「助けて!」と大声をあげて、「あなたに助けてほしい」と指名されて初めて、「私の助けが要るの?」と気づく。個々のスウェーデン人が不親切なわけではない。察してくれない、気を利かせてくれない、といった甘えが通じないだけ

・恋愛感情が消えれば、躊躇ない別れが訪れる。もともと「個人」と「個人」なのだから、離婚やシングルに戻ることは、恥でも負でもない

・「個人」が「全員働く」スウェーデン社会では、「働いている」ことが大切で。どのくらい熱心に働いているかは、さほど問題ではない。「全員が働く社会」は、働くには困難のある人、働く能力の劣る人、働く意欲の乏しい人にも、仕事を与えなくては成り立たない

・スウェーデンは労働者視点。日本は、この十年、消費者視点が強すぎる。サービスを受ける側の要望が優先されるべき、お金をもらっているなら職務に忠実であるべき、といった日本人の価値観を持ち込み、スウェーデン社会に期待すると、失望する

・昔から北欧の人は、スペインの島へ避寒旅行をしていた。最近では、冬の三カ月、南の暑い国へ行くのがステータス。スウェーデン社会は、冬の逃避行を習慣として大目に見る

・スウェーデンでは、今や国民の5人に1人が外国人。ストックホルムのような大都市では、スウェーデン人よりも外国人の方が多い。街のたたずまいも空気も昔と変わってきた

・日本人は、表に現れない内面世界を大事にする。スウェーデンでは、表に現れる外面世界がすべて。言いなさい、主張しなさい、それがあなたの現実の姿であるということ

・この世の諸悪の根源は、つまらないインテリジェンスと男の闘争本能。権力欲、独占欲所有欲と、その暴走。スウェーデンでは、男女平等が近づき、将来的に、女性天下が来る

・「哲学の部屋」というラジオ番組では、招待された哲学者が3~4人、普段の考えを出し合い、考え方のデモクラシーが狙いである。聴取者は、自分の不十分な点が明白に分かる

・スウェーデンでは、家族のルーツを研究している人が多い。趣味としてだが、かなり高い専門知識が要求されるだけに楽しみもある。テレビやラジオでも、その種のものがある



本書で、素顔のスウェーデンを知ると、ドライで合理的で、人情味がないと受け取る日本人も多いように思います。

でも、それは、お客様第一主義ではなく、労働者第一主義だからであり、全員が働き、自立を求められる社会だからです。どちらが、幸せかよく考えてみる必要があるように思います。


[ 2013/08/22 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)

『デンマーク流「幸せの国」のつくりかた』銭本隆行

デンマーク流「幸せの国」のつくりかたデンマーク流「幸せの国」のつくりかた
(2012/09/26)
銭本 隆行

商品詳細を見る

著者は、大学生のときデンマークを訪れ、日本で新聞記者として11年働いた後、2006年に再びデンマークへ渡り、現在、デンマークの「日欧交流学院」院長を務められています。

本書は、デンマークのことがコンパクトに記されている本です。これ1冊で、デンマークがほぼわかる内容です。デンマークの意外な面も満載です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・1864年、ビスマルク率いるプロシアに戦争で敗れ、国土が3分の2に縮小されて、小国に転落した。そこで、「外で失ったものを内で取り戻そう」と、国の再興のため、荒涼とした原野の開拓に乗り出した。これが、デンマークが世界に誇る農業の出発点になった

・デンマークの輸出品目の割合は、食料品が18%、医薬品が9%と高い。重工業は持たないが、世界に通用する専門的技術を持ち、ピンポイントで世界を圧倒し、外貨を稼いでいる

・北海油田の開発にも1980年代から本格的に力を入れ、1997年にはエネルギー自給率が100%に達した。デンマークは隠れた産油国

・税負担と社会保障負担をあわせた「国民負担率」で、デンマークは70%と、世界で最も高い水準。スウェーデンは59%、ノルウェーは55%、フィンランドは59%と北欧諸国は軒並み高い。一方、日本は41%と低い。日本は公的負担は少ないが、私的負担が大きい国

・デンマークの就業人口に占める公務員数の割合は31%。高校、大学、医療機関もほとんどが公立、介護職員もほとんどが公務員。税金は、公務員の給料として大部分が使われる

・デンマークでは、公務員=安定ではなく、羨望の対象にもならない。公務員でも人員削減の対象となれば解雇される。また、退職金という制度もデンマークにはない

・デンマークでは、まず残業はしない。残業の最初の3時間は時間給で50%増、さらに、それから先の残業は100%増。雇用主は、高額の残業代を払うより、残業させないほうが得

・デンマーク人がストレスを感じるのは「仕事ではない」。むしろ、「仕事を終わった後の余暇時間の使い方」で悩む

家庭医は医療の「門番」。病気になれば、まず家庭医に連絡し、診察・治療・薬の処方を受ける。この時点で85%以上の医療行為が終了する。家庭医は、医療費抑制に大きく貢献

・保育のあり方として、「子供は退屈しなければならない」と、よく言われる。子供が退屈すれば、何かをしようと自分で遊びを考える。そこからクリエイティブかつ積極的になる

・国民学校での教育の目標は二つ。一つは「知識を得ること」。もう一つは「社会的に生きていけるスキルを身につけること」。これが同時に動かなければ、人間は前に進めない

・デンマークでは職人の地位が高く、収入も高い。例えば、自動車整備工の時間給は最低でも4500円。そのため、男子は、高校よりも職業学校へ進む割合が非常に高い

・大学に進む際に受験はない。高校での学生試験をもとに志願する。しかも、試験の成績だけが入学条件ではない。高校を出た後の経験もポイントになるから、若者が「13年間教育を受けてきたから、次を受けるまで、しばらく休まなきゃ」という言葉に納得できる

・デンマークには徴兵制度があり、18歳から60歳までの成人男子には、祖国を守る兵役の義務が憲法で定められている。だが、全員が兵役に服するわけではない

職種別初任給は、販売員30万円、農家34万円、銀行員39万円、看護師39万円、塗装工41万円、美容師42万円、鍛冶工43万円、教師47万円、新聞記者52万円、家庭医54万円、弁護士60万円など。毎年昇給せず、ある一定レベルで止まる。ボーナスはなし

・デンマーク人は、生涯に平均6回転職する。課長や部長のポストが空けば公募が普通

・デンマークでは、離婚しても、父親が慰謝料や子供の養育費を支払うことはまずない

・のどかな印象を受けるデンマークだが、犯罪率は意外に高い。刑法犯の認知件数は、日本の4倍以上。検挙率は約3分の1。9割までが、スリ、置き引き、空き巣などの窃盗犯。そのため、多くの国民は損害保険にしっかり入っている

・日本の社会を不健全にしているのは、「相手を慮る」という大義名分による「他己決定」の慣習。他者が敷いたレールに乗って生きていくことはたやすい。他者が決めることに慣れてしまえば、人間は考えることをやめてしまう



デンマーク人が深く信仰している宗教は「民主主義教」だそうです。国民全体が民主主義を深く信じることができれば、北欧諸国のような高負担高満足の国が生まれるのかもしれません。

日本が北欧諸国のような世界に進むとすれば、民主主義を徹底的に、小学校から教え込む必要があるのではないでしょうか。そこからスタートのような気がします。


[ 2013/07/04 07:00 ] 北欧の本 | TB(0) | CM(0)