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『年収100万円の豊かな節約生活術』山崎寿人

年収100万円の豊かな節約生活術 (文春文庫)年収100万円の豊かな節約生活術 (文春文庫)
(2014/05/09)
山崎 寿人

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著者は、東大出身、大手企業を30歳で退職し、定職に就くことなく20年以上、わずかな収入で、愉快に暮らしている50代独身の方です。

この本は単なる節約の本ではありません。豊かな人生を問い続けた著者の思想実践書です。この楽しみを理解できる人は、人生を達観できた人かもしれません。参考になった点が多々ありました。それらの一部をまとめてみました。



・求めているのは、日々の生活を人生もろとも楽しむこと。あくまでも幸せが先、節約は二の次。だから、よくある節約術のように、「何円倹約できたか」に一喜一憂しない

・年収100万円や生活費月3万円(変動費部分)とは、生きることを楽しむために「これくらいあれば、大して支障はない」という金額。あるに越したことはないが、なければないで構わない。この予算内で、いかに豊かな生活が送れるかを楽しんでいる

・豊かな貧乏生活術の目標とする柱は二本。「いかに金をかけずに、生活の質を上げていくか」の追求。「いかに安い食材で、豊かな食生活を送るか」の追求。そのため、脳みそを使う

金のかからない楽しみを探すことが節約法の一つなら、これこそ最強の節約術。頭を使うことにお金はかからない

食費は月15000円(1日3食500円)が目安。もっと節約できるが、500円は、安い食材で、贅沢気分を味わえ、栄養バランスを考えた料理を作る額。朝食40円前後、昼食35円。夕食は主食40~45円、サラダ30円、小鉢30円~75円、おかず250円~300円

・月初めに、銀行から現金2万円を引き出し、財布に入れる。現金払いの生活費が1万5000円、予備費が5000円。これで、月の食費と日用品、雑貨、交際費、遊興費、医療費、衣料費、交通費をすべて賄うのが基本。光熱費とスクーターのガソリン代は銀行引き落とし

・日々のやりくりの主役は、食材の買い出し。徒歩10分圏(スーパー3店、ディスカウントショップ1店)スクーター10分圏(業務用スーパー3店、激安スーパー3店、輸入エスニック食材店4店、ショッピングモール5店、市場1か所)の巡り歩きと特売食材の物色

・割高の商品を買う人を見るたびに、「この人たちは、その割高の分だけ、タダ働きをしていると考えないのかな」と思う。無駄遣いは無駄働きと一緒

・世の節約術とは違う「貧乏生活術」の目指すところは、「1円でも安く」ではない。あくまで、自分の少ない収入の範囲で、豊かな気分になれるような生活を送ることが目的

・こういう生活を長く続けていくためには、健康に人一倍気をつけなくてはいけない。心と体の健康が生活を豊かに楽しむ基本。そして、医療費と歯科医療費のような不意の出費を避けるため

・『残すもの』「パソコン」(外界との接触が希薄になり、暮らしの孤立化を防げる)、「冷蔵庫」(料理が趣味)、「スクーター」(電車賃の節約、格安食材購入のため)

・『削るもの』「車」「電車」(スクーターで代用)、「携帯電話」(ほとんど家に居るため)、「コンビニ」(激安スーパーや深夜営業ディスカウント店で十分)、「タバコ」「酒・ドリンク」(健康と倹約を考えて)、「外食」「新聞」(節約のため)、「床屋」(電動ヘアカッターで代用)

お金なんて要らないと言えば、やせ我慢と取られ、成功に興味がないと言えば、負け犬の遠吠えと思われる世の中

・この生活を続けているのは、ここに自由な時間が無尽蔵にあるから。言い換えれば、何もしないでよいことを、何より大切に生きているということ

・世の中には、高揚感を幸福と錯覚している「興奮中毒患者」が多い。毎日のスケジュールが予定びっしりで、あくせく動き回っているのは、心の空洞をそのままにして、仕事や遊びで埋めようとしているようなもの。鎮痛剤で痛みを抑えているだけのこと

・何に贅沢を感じるかは、人によって違うのが当たり前。何に豊かさを感じるかもそう。何も自分の幸福や健康をないがしろにしてまで、社会の常識や価値観をそのまま受け入れる必要はない

社会の常識や価値観なんて利用するもので、縛られたり、踊らされるものではない。もちろん、社会の常識や価値観は尊重する。批判もしない。だが、自分がそれに従うかどうかは自分で決める。そして、そのリスクは甘んじて受け止めるということ



著者の生活こそが、未来志向の「贅沢な生活」なのかもしれません。世間の常識に惑わされず、企業の宣伝を無視し、すべて自分の頭で考えて、自分に合った生活を楽しむことができれば、こんなに幸せなことはありません。

世の中の全員が、こういう生活を求めれば、資本主義社会は崩壊します。とりあえず、みんなが資本主義社会に巻き込まれて、あくせく働くのを横目に、こういう生活を楽しむのが心地いいのではないでしょうか。

[ 2014/08/18 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(1)

『絶対貧困・世界リアル貧困学講義』石井光太

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)
(2011/06/26)
石井 光太

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売春、麻薬や銃の売買、殺人などの犯罪の温床であるスラム街は危険がいっぱいです。著者は、世界各国のスラム街14か所に足を運び取材した、根性のあるジャーナリストです。

世界のスラム街を本当に取材した人物は、著者が日本でただ一人だと思います。その貴重な記録から、貧困とは何かを考えさせられた点をいくつか選び、まとめてみました。



・貧しい人々は、次のような追い出されない場所にバラックを建てようとする。「危険な場所」(川べり、土手、鉄道沿い)、「不潔な場所」(ゴミ集積所、下水の溢れる場所)、「目立たない場所」(人気のない街角、隔離された居住区)

・スラムを分類すると、「同じ身分や職業の者が集まっているスラム」と「宗教や民族や出身地別に成り立つスラム」がある

・スラムが大きくなると、隣人相手に商売する人が出てくる。真っ先に作られるのが、食べ物を売る「八百屋」「肉屋」と「雑貨屋」。その次に現れるのが「酒屋」「賭博場」。店が一通りできると、ちょっと成功した人が、新しく住みついた貧困者を遣った会社を起こす

・スラムに会社ができると、やがて売春窟が作られるのが常。きれいとは言い難い女性や小太りの中年女性たちが働き始める。こうしてスラムがさらに大きくなると、完全な「街」となり、人口増加に比例して、店や会社の数が増え、競争原理で、サービスが向上する

・海外では、階級によって食生活が全く違う。途上国はそれが顕著。セレブ、ビジネスマン、庶民、スラムの住人ごとの食べ物や調理法がある。世界のスラム食に共通していることは、「火や油を使った料理」。ばい菌を殺し、保存期間を延ばせるから

・スラムの「貧困フード」には、魚の頭、鼠や昆虫、骨を油で揚げたもの等があるが、その中で、世界中の人々に受け入れられてグローバルフードになったのが、フライドチキン

・夫婦の秘事は、子供に囲まれながら、声を殺して、前戯などなく、即挿入で敢行する。その理由は、「体を洗っていないので汚いから」「早く射精して家族を起こさないため」

・スラム街の女性たちは、恋人をつくったり、結婚したりする度に子供をはらむため、腹違いの義理兄弟がわんさかできる。そのため、血のつながりは重視せず、どこかで血が繋がっていればみんな兄弟といった感覚を持っている

・スラムが巨大化して街になると、生まれる代表的な「表の仕事」が次の三つ。「人力車、自転車タクシーの運転手」「廃品回収業」「日雇いの肉体労働者、家政婦」

・スラムの片隅で行われる「闇の仕事」(犯罪行為)の代表が「麻薬売買」「武器売買」「臓器売買」「人身売買」。一部の住人が、様々な成り行きから、悪事に手を染めてしまう

・路上生活の天敵は、「季節」と「警察」。寒い地域には「マンホールハウス」(冬は暖かく、雨や雪をしのげる)がある。蚊の多い地域の人は、ミイラのようにボロ布を巻いて寝る

・路上生活者は、家族や仲間が亡くなったら、遺体を道路に置いて、線香を立て、通行人から埋葬費用を募る。そして、木の薪は高いので、古タイヤを使って火葬する

・路上には「物売り」と「物乞い」という二つの職業がある。物売りには、新聞売り、煙草売り、お菓子売り、宝くじ売り、ティッシュ売り、花売りなどがある。物乞いは、芸人型物乞い、ストリートチルドレン、アピール型物乞いに分けられる

・インドの「障害者や病人の物乞いランク」は、上から「ハンセン病」「象皮病」「四肢切断」「全盲、知的障害」「片手、片足、片目の障害」「火傷、皮膚病などの軽い障害」。「健常者の物乞いランク」は、上から「赤子」「老人」「女性+赤子」「女性」「青年」「成人男性」

ストリートチルドレンに男児が多いのは、「親戚は大人しい女児しか預からない」「女児は少女売春婦や家政婦に雇われる」「女児が犯罪から身を守るために男装している」から

・ストリートチルドレンが、幼いうちに多くが死亡する理由は、「薬物中毒死」「酩酊時の事故死」「感染症死」「栄養失調」。まっとうな道に進もうとしても、「シンナーなどの薬物依存症」「愛情欠如によるコミュニケーション障害」「トラウマによる社会不適合」が阻む

売春婦推計人口は、中国が2000万人(女性の30人に1人)、インドが1000万人(女性の50人に1人)。GDPにおける売春の占める割合は、韓国が5%、中国が6%

・一般の売春宿では、男性客が1000円支払ったら、その3割~5割(300~500円)が売春宿側の儲け。その代わり、売春宿は売春婦に3食とベッドを提供し、トラブル処理や警察への賄賂なども負担する



目を背けたくなる事実がいっぱい記載されている書でした。しかし、これが貧困の現実です。きれい事だけでは世の中を渡っていけません。

数年前、貿易会社を経営している人から「貧しい国を訪問するときだけ、まだまだ甘い息子を同伴させている」という話を聞きました。この話のように、厳しい現実を知らない人には、貧しい国はいい薬になるのかもしれません。


[ 2014/08/04 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『年収1000万円の貧乏人、年収300万円のお金持ち』伊藤邦生

年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち
(2013/02/09)
伊藤 邦生

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著者の「お金」の考え方が自分と似ています。著者が、本書で紹介する書もほとんど読んだものばかりです。

タイトルは、軽薄に感じますが、内容は、結構深いものがあります。その一部をまとめてみました。



・現代社会は、多くの企業が練りに練った販売戦略を行い、消費活動を喚起させようとしている社会。その中で生活するということは、強い意志がないとお金を使ってしまうということ

・私たちは、必要最低限の生活費を除くと、「公務員」と「建設会社」と「銀行員・保険マン」を食べさせるために、一生懸命働いていると言える。借金をして、マイホームを買うと、一生、建設会社や銀行・保険会社のために働く人生になってしまう

・「勉強した」からには、資格や学歴などの明確な結果が欲しい。「努力した」からには、明確な形で「報われたい」。だから、勉強、資格、学歴などのスキルアップに必死になる

・投資家は多くの案件を精査し、その中に一つ二ついい案件があればいい、と考える。投資は、損する可能性があることを覚悟した上で実行するもの

・サラリーマンは、リスクをとることを恐れる人種。「リスクをとる」というのは、何かを失うことを覚悟して、それ以上のリターンを追求する行為

・人口が増えれば株価が上がるというのは、単純な真実。株価の上下は、40代半ばの人口の数に比例するのも事実

・デフレ経済では、どの業界も「二極化」の現象が起きる。日本株は、勝ち組の企業を選べばいい

・68%のファンドマネジャーが「市場平均」に負けている。つまり、プロのファンドマネジャーに運用を任せる投資ファンドは買わないほうがいいということ。さらに言えば、金融機関は、投資で損して、手数料で儲けているということ

・不動産はとても参加しにくいマーケットだが、不動産投資は、完全に素人のマーケット

富とは、持っているお金の額のことではない。お金をすべて失ったときに残っているもののこと。富とは、あなたの中にあるもの

・投資ステージの特徴は、「1.アリ」貯金がなく、その日暮らし「2.カモ」貯金はするが、増えない「3.カメ」全額を銀行に貯金「4.ヒヨコ」投資を少し学び始める「5.スワン」優良案件を投資判断できる「6.ゴールドスワン」よい投資案件が流れ込む

・資本主義社会はアリの社会と似ている。少数の女王アリのために働き続ける多くのアリと、一握りの資産家のために働き続けるサラリーマンは同じ

住宅ローンを組んだサラリーマンは、30年後に価値がなくなるもののために、30年間働き続けるということ

アリは資産家のために一生働き続ける。カメは国のために一生働き続ける。投資のスキルがないと、アリとカメとして生きていくしかない

投資力がないのに、資産だけ持っていると、簡単にカモにされてしまう

・資産を守るためには、分散投資は有効だが、資産を増やす場合は、むしろ集中投資をしなければいけない

・投資で勝ち続けるためには、感情を克服しないといけない。そして、「優位性」を核とした上で、「規律」「忍耐」「リスク管理能力」「覚悟」の4つの資質が備わっていないと、長期的に資産を築き上げるのは難しい

・ノウハウや「優位性」をもって、アプローチや戦略を築き上げることで、投資もギャンブルではなく、仕事になる

・時間のない金持ちの主要な収入は「給料」。時間のある金持ちの主要な収入は「不労所得」。不労所得のある金持ちは、優雅な暮らしをしている。あくせく働くことはない。いくらお金があっても、人生の時間を買うことはできない。マネーよりタイムのほうが、断然重要



本当に豊かに暮らすには、どうしたらいいのかを真剣に考えた人であれば、著者の意見に同意すると思います。

著者に同意する人が圧倒的多数になったとき、日本は豊かな社会になっているのではないでしょうか。


[ 2014/07/14 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『資本主義から市民主義へ』岩井克人

資本主義から市民主義へ (ちくま学芸文庫)資本主義から市民主義へ (ちくま学芸文庫)
(2014/04/09)
岩井 克人、三浦 雅士 他

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東大名誉教授である著者の「貨幣論」(貨幣は貨幣だから貨幣である)は、貨幣の本質を真に言い当てたものです。この実体のない「貨幣」の獲得に奔走する社会に、私たちは今生きています。

本書には、この資本主義社会を「よりよく生きる」ためのヒントがいっぱい詰まっています。それらをまとめてみました。



・人は手に持っている貨幣を今使うべきか、もう少し後に使うべきか、常に決断に迫られている。何も債券や株式、さらには先物やスワップやオプションの登場を待つことなく、人類は貨幣を使い始めたときから、投機という現象に直面せざるを得なかった

・人間は投機するサル。投機は未来を実体化する。おそらく、それこそが時間の起源であり、欲望が時間の起源ということ

・紙幣のほうが貨幣の本質を具現している本来的な貨幣。貨幣とは、最初から本物の代理でしかなく、すべての貨幣の価値はそこから出発する

・不換紙幣は近代の錬金術と言われるが、実は錬金術こそ、貨幣を模倣しようとした。鉛や錫といった粗悪な金属を金や銀に換えるのは、貨幣経済がすでに成立してからの試みであった

・産業資本主義以前の富は、自然発生的なもの。したがって、富は掠奪や戦争で獲得していた。その掠奪品は、必ずしも自分の欲しいものとは限らない。そこで、掠奪品を自分が好きなものと替えてくれる人間が必要になり、掠奪品を売買する商人が登場する

・農村における共同体的賃金が都会の工場労働者の賃金を抑えてくれたおかげで、資本家は自動的に利潤を得ることができた。一つの国民国家の中に、市場的な部分と非市場的な部分が共存していたことが、産業資本主義を可能にした

・「世界経済は<中心><半周縁><周縁>というメカニズムによって形成されている」(ウォーラーステイン)

・日本では1970年代に入ると、農村の産業予備軍が枯渇し、国民経済の中の二重構造が解消し始めた

・貨幣を持つことは、もともと未来に向けた投機にほかならない

・貨幣を持つのは遊戯。食べ物は食べないと腐ってしまうが、貨幣は今の使用価値に通じなくてもいいので、遊びそのもの

・貨幣発行者の大儲けを経済学ではシニュレッジ(王様利得)と呼ぶ。かつては貨幣の発行権は君主の特権だったから。アメリカは今、王の特権を享受している

基軸通貨国であるアメリカは、基軸通貨国としての世界経済全体の立場に立った規律が求められている。例えば、アメリカが不況であっても、世界がインフレになれば、アメリカはドルの供給を減らして、デフレ政策をとらなければならに

・日本の会社は「会社共同体」でユニークと言われるが、アメリカは「株主主権」、ドイツは「労使参加」、イタリアは「家族支配」でユニーク。そもそも会社は融通無碍

・資本主義は差異を食って生きている。逆に言えば、差異を見つけて均していく、世界を均一化していくことで生きているということ

・人間とは社会的動物だが、それは、「言語」「」「貨幣」を媒介として、お互いを抽象的な意味での人間として認め合うことによって社会を形成する動物ということ

・貨幣はすべてのモノを手に入れる可能性を与えてくれるということから、人間はモノそのものを欲望するよりも、モノを手に入れる可能性を欲望するようになった

貨幣が貨幣として価値を持つのは、すべての人に貨幣が受け入れられているから。法が法として人々の義務と権利を確定するのは、すべての人に法が受け入れられているから。言語が言語として意味を伝えるのは、すべての人に言語として受け入れられているから

・一万円札を欲するのは、他の人も一万円札を欲しているから欲しているだけということ

・資本主義の本当のクライシスとは、貨幣が貨幣でなくなってしまう貨幣経済解体の事態。これに対して、モノを買う人がいなくなり、モノが売れなくなる恐慌は、本当のクライシスではない。なぜなら、それは貨幣の存在を支える社会の永続を人々が疑っていないから



貨幣という欲望(色欲)の権化が、実体は何もない(空洞)というのが印象的な点でした。それは。まるで「色即是空」の世界です。

「ない」ものをみんなが「ある」と信じるから、「ある」ようになっている。そういうものは、貨幣以外でも他にたくさんあります。社会とは、幻想の上に成り立っているということを認識できる書でした。


[ 2014/07/07 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『男性不況・男の職場崩壊が日本を変える』永濱利廣

男性不況――「男の職場崩壊」が日本を変える男性不況――「男の職場崩壊」が日本を変える
(2012/10/26)
永濱 利廣

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日本は、女性の社会進出が遅れていると言われているが、実は、ジワリジワリ進行し、男の職場を侵食している、ということが記されている書です。

10年前のデータと比較すれば、その傾向は一目瞭然で、今後も、男性が苦境に陥りそうに思います。

どういう対策をとれば、この苦境から逃れることができるのか?男の立場としては関心のあるところです。その一部をまとめてみました。



・男性不況とは、「男性向きの仕事が減り、女性向きの仕事が増えた結果、男性の価値が低下した」状況

・製造業や建設業などの男性向きの雇用が減り、医療・福祉などの女性向きの雇用が増える。それと並行して、かつては男性向きと考えられていたホワイトカラーの門戸が女性にも開かれる。その結果、「女性高・男性安」になった状況を男性側から見たのが「男性不況」

・2002年当時の男性就業者の4割近くが、製造業と建設業に集中していたので、製造業(205万人減)と建設業(145万人減)の就業者減が、男性の就業者が減った最大要因

・生産年齢人口比率は建設投資と相関するので、日本の建設投資も1990年を境に減り続けている

病院や介護施設で働く人の数が大幅に増えている。その数は、2002年から2011年の9年間で178万人増と、他業種とはケタが違う

・男性はピーク時の577万円から直近の500万円へ(13%減)、金額にして77万円も給与が減ってしまったのに対し、女性は280万円から263万円へ(5%減)と、わずか17万円の減少で済んでいる

・男性の給与が下がった理由は、非正規雇用の増加だけではなく、正規雇用者の賃金の低下にある。そして、もう一つ、女性の正規雇用者の給与が上がったこと

・2020年までに、女性の雇用が134万人増加するのに対し、男性の雇用は55万人減少すると予想されている

・男女間給与格差の縮小にこそ、家計の所得格差拡大の原因がある。女性の賃金が男性の賃金に近づけば近づくほど、お金持ちの家庭とそうでない家庭の所得格差が大きくなっている

・自然に任せていては、男女が収入階層の壁を超えて、相手を選ぶのは期待薄で、高所得者同士、低所得者同士のカップルができやすい。家計所得の格差は今後さらに広がっていく

・男性が主なユーザーである嗜好品は、ここ数年一様に売上を減らしている。たばこの販売数量(ここ15年で40%以上減)、お酒の消費量(ここ15年で15%減)。家電の不況も、メカ好き男性の財布の紐が極端にきつくなったことも無縁ではない

・男性向けから女性向けへのシフトの例で、最も顕著なのが飲食店で盛んに見られる「女子会」

・男性が一家の大黒柱として家族を養う家庭のあり方が限界に来ている。将来予測を見ても、男性不況が解消される見込みはまったくない

・「管理的職業従事者」は、1997年に221万人いたものが、2010年には159万人と60万人も少なくなっている。この間の減少率は、「製造・制作・機械運転及び建設労働者」の22%を凌ぐスピードでその数を減らしている

・アメリカは自国通貨を安く誘導した結果、2000年代に入って、ずっと減り続けていた製造業の雇用者数が、2011年から増加に転じた

・自国通貨が安いほうが、国の成長率は高くなる。自国通貨と成長率の関係は、各国の当局は周知の事実なので、自国通貨を安くしようと働きかけるのが一般的

・男性不況に個人としてとるべき戦略は4つある。「1.付加価値の高い成長分野の職に就く」「2.海外で日本人であることがプラスにはたらく職に就く」「3.女性がメインだった職場に職を求める」「4.専業主夫を目指す」。男性は防衛策を講じるべき



男女平等が着実に進んでいることを明らかに示す書でした。この「男性不況」を回避していくには、男性が女性にすり寄っていくのが最適の戦略かもしれません。

稼ぎが少なければ、腰を低くしないと生きていけません。若い男性が「草食系」と揶揄されていますが、実は、それが、現代にふさわしい賢い生き方なのではないでしょうか。


[ 2014/02/10 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『40歳からのリアル』人生戦略会議

40歳からのリアル40歳からのリアル
(2013/05/24)
人生戦略会議

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以前、「35歳からのお金のリアル」という本を紹介しました。本書は、その続編となる書です。お金だけでなく、仕事、住まい、健康、家庭、老後のリアルが載っています。

時すでに遅しなのですが、私の40歳を反省して、なるほどと思った点がいっぱいありました。それらをまとめてみました。



・人生の目的は「年収1000万円の男」という自己満足ではなく、楽しく、不安なく、笑って過ごせる人生。金額を追うことと満足できる人生を手に入れることは別次元

・支出に関して40歳が特徴的なのは、人生の「3大支出」と言われる「住居費」「教育資金」「老後の生活資金」が重なり、家計の負担が大きくなること。収入が増えない状況で、これらの3つが重なってしまうと、一気に支出が増えて、家計が危機的状況になる

・「あれもしたい、これもやりたい」という願望を持つのは20代まで。「こういう方法はどうだろう」「あんな方法もあるらしい」と模索するのは30代。40歳からは、「ウチはこう暮らす」「そのためにこれを買い、これは買わない」と決断する基準を持たなければならない

・情報に「夢を与えてもらう」のは20代まで。情報に「踊らされる」のは30代。40歳からは、情報を「へえ」の一言で聞き流す勇気を持たなければならない

・医療保険には「万一に備えて入るもの」という常識があるが、現金があれば医療費は払える。しかも、アメリカのように公的な保険制度がない国と違い、日本には国民皆保険という制度がある。つまり、民間の医療保険は、けがや病気のリスクに二重に備えるもの

・アメリカで破産した人の約半数は、高い医療費が支払えなかったため。日本で10万円ですむ盲腸の入院が、アメリカでは200万円ほどかかる。アメリカで暮らすなら医療保険に入ったほうがいいが、日本で暮らすなら、その必要性は大きく下がる

・都市部で車なしの生活と、郊外で車を持つのとでは、かかるコストはほぼ同じ。どちらが満足度が高いかを夫婦で話し合えばよい

・「お金の話なんて・・・」と言ってかっこいいのは、お金持ちだけ。貧乏な人が、「お金より大事なものがある」と強がっても、負け惜しみにしか聞こえない

・土地は地価によって価値が変わる。そのため、ローンを組んで家を買うということは、借りたお金の一部で不動産投資をすることと同じ

賃貸の場合は、今のところ、家賃、管理費、敷金、礼金などには消費税はかからない。一方の持ち家は、建物の建築代金、不動産業者、登記のために司法書士に支払う手数料などに消費税がかかる

・日本は「新築信仰」が強い。日本の住宅は90%が新築、アメリカでは逆に80%が中古。イギリスやフランスでも中古が新築を上回る。世界的に見れば、日本の住宅市場は異質

・新築物件は、買った瞬間に2割ほど価格が下がる。つまり、この2割が新築の価値(「気分」と「性能」の値段)。「気分」とは、買ったという満足感と新鮮だったという思い出。「性能」とは、10年経てば「ひと昔前の設備」、30年経てば「買い替えなければならない設備」

・片道2時間の通勤がもったいないと感じるのは、時間の使い方に問題があるから。仕事をすることもできるし、勉強もできる。もったいないのは、通勤時間ではなく、通勤時間を活用できていないこと

・子供と一緒に住む期間は、その家に住む期間の半分にも満たない。ローンの返済期間よりも短くなる。最終的には要らなくなる子供部屋は、最初からなくてもよいと考えられる

・会社やスポーツチームのように規律、価値観、指揮系統を明確にすることが、いい家庭を築く上でのポイント

・愛やお金や健康など不安定に変化するものに頼らずとも、先行き不透明な世の中を生き抜ける家庭をつくること。未来を生き抜けるかどうかは、家庭という最小単位の組織を強固で成長性のある集団に構築できるかどうかにかかっている

・組織では「やさしい社長」がいい社長ではない。「利益を出して、社員を幸せにする社長」がいい社長。家庭も、そのような視点で考えれば、正しい独裁によって家庭が強くなる

・夫婦間で、「価値観」と「戦略」をあらかじめ共有しておくこと。価値観とは、何に価値を見出すかであり、決断の生命線となる基準。戦略とは、何歳まで働き、老後はどこに住み、そのためにお金を準備しておくかという「進んでいく方向



本書を簡潔にまとめれば、「世間の目を気にせず、自分の(夫婦の)思い描く人生を歩んでいくことができれば、幸せな人生が送れる」ということです。

家庭を上手に経営するという視点が必要です。その家族経営を始める(創業する)のは、40歳までが望ましいのかもしれません。


[ 2014/02/03 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(2)

『東京は郊外から消えていく!首都圏高齢化・未婚化・空き家地図』三浦展

東京は郊外から消えていく!  首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)東京は郊外から消えていく! 首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)
(2012/08/17)
三浦 展

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東京だけでなく、全国の大都市でも、郊外の住宅地(特に、通勤に不便で、女性の働き場が少ないところ)の地価が下がり続けています。この状態が続くのか、非常に気になるところです。

本書は、人口減少の時代、しかも若者の大都市流入も減りつつある時代に、大都市の地価が今後どうなるのかを調査分析している書です。住んでいい地域、買っていい地域とは、どこなのかも記されています。その一部をまとめてみました。



郊外の地価は、1992年から2011年にかけて、5割から6割減。それに比べて、都心近くの住宅地は3割減くらい。郊外住宅地の地価下落率が高いのは明らか

・住宅の価格が下がるのは、日本全体の景気が悪いからだけではない。昔は、郊外の駅から遠い不便な物件でも売れたのは、男性だけが働き、長い通勤時間に耐え、通勤定期代が会社持ちだったから

・都心から遠く、駅からも遠くに立地している住宅は、男女役割分担時代の遺物。現代においては利用価値がない。だから、価格は下がるしかない

団塊ジュニアが住む地域は、「未婚で所得が低い者」は郊外の親元の家。「未婚で所得が高い者・既婚で子供がいない夫婦」は都心部のブランド地域。「既婚で子供のいる裕福な世帯」は都心部や郊外のブランド地域。「既婚で子供のいる一般世帯」は大衆的な郊外住宅地

・マーケティング系の人は、住んでみたら意外に楽しい、便利だ、生活しやすいと評価される街が今後発展すると考えている。コンサルタント系の人は、従来型の価値観(ファッショナブル、流行や時代の先端、ステイタスなど)の街が今後も発展すると考えている

若い女性の関心が、都心で高級品を買うことから離れていっている。ブランド志向、おしゃれ志向が弱まり、よりカジュアル志向、シンプル志向になっていることが、買い物をする街の選択にも現れている

・いつの時代も新しい流行をつくるのは若い女性。今、若い女性は脱ブランド志向になり、逆におじさん的な趣味に向かっている

・ずっと長期不況を経験してきた団塊ジュニアやそれ以降の若い世代にとっては、イメージはよいが値段が高いブランド地域は、そう簡単に手は出せないし、コストパフォーマンスが悪いと感じる

二世帯同居は、親にとっても、行政にとっても都合がよい。そして、特に子育て期の女性にとって、親が近くに住んでいると都合がよい

・女性が働ける郊外地域でなければ、女性は都心に出ていく。あるいは、働ける別の郊外地域に引っ越していく。若い世代がいなくなれば、高齢者だけの地域になり、税収が減り、福祉予算ばかり増える。これからの時代は、自治体が若い世代を奪い合う時代

・若い世代が、街にブランド性を求めなくなっている。それよりも、楽しさ、便利さ、刺激やクリエイティブな風土を求め始めている。若い世代が、下町に関心を向ける背景には、単なるレトロ志向ではなく、職住一致の地域への憧れがある

・第一の消費社会は大正から戦前。都心に百貨店ができ、鉄道沿線に住宅が開発された時代。第二の消費社会は、戦後から1974年まで、大量生産による画一的消費の時代。第三の消費社会は、個性志向が強まった時代。第四の消費社会は、モノが完全に飽和した時代

・第一の消費社会から第三の消費社会までは、地方から都市へ、都市から郊外へという動きが単線的直線的に起こった。大量の人々が同じ価値観を持ち、田舎より都会のほうがいい暮らしができると信じ、都会は狭苦しいから郊外に家を買うのがいいと考えた

・東京の都心がつまらなくなっているのは、一概に不況のせいばかりではない。それは、空間が均質になり、個性が失われているから

・新しいものでも、無駄なもの、意味のないものは、つくってほしくない人が増えている。そんな無駄をするなら、古いものをうまく利用したほうが面白いと考える人が増えている

・単純な近代化を終えた社会においては、人々は単純なモダニズムを信じない。まっすぐな道路を嫌い、曲がりくねった路地を好み、自動車を嫌い、歩くことを好み、ピカピカの巨大なビルを嫌い、古くて味のあるビルを好むようになった。これは退歩ではなく成熟

・放っておくと住宅地が劣化してしまうのは、「多様な世代が住める居住の場がない」「まちに必要な『働・学・憩・農』の機能をつくらなかった」から



業者が考える「住んでほしい街」よりも、消費者が考える「住んでよかった街」のほうに軍配が上がるのかもしれません。

人気の街は、女性の現実的な願いが70%、若者の未来嗅覚が30%くらいの割合によって決まっていくのではないでしょうか。


[ 2014/01/20 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕

10年後に食える仕事、食えない仕事10年後に食える仕事、食えない仕事
(2012/02/03)
渡邉 正裕

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本書は、若者を不安に陥れるものでも、必要以上に鼓舞するものでもありません。ただ冷静に、食える仕事(安定的に給料をそこそこもらえる仕事)とは何かを探す内容の書です。

現実路線の生き方をする上で、非常に役に立つ書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・これからの経済はグローバル化だ、皆が英語を操って世界を相手に丁々発止のビジネスをしなければならない、といった言説がはびこり、そんな文句に脅されて、講演に出かけ、ビジネス書を読み漁り、学校に通い、資格取得マニアになって、疲弊している人が多い

・グローバル化がいくら進もうが、日本人の仕事として日本に残る仕事は、必ず残る。逆にグローバル化で、減る仕事、賃金相場が限界まで下がり続ける仕事、丸ごとなくなる仕事もたくさん出てくる。だから、どの領域で稼ぐのかを考え、仕事を選ばねばならない

・世界を相手に厳しい競争社会で勝ち続け、№1を目指したいという人には、より頑張ればいい。だが、日本人の皆が世界70億人を相手に激烈な競争を繰り広げる必要など全くないし、向いていない人が競争率70倍の激戦区に参戦するのは不幸でしかない

・実は、日本人として、この国で生まれ育ったこと自体がスキルであり、武器になる分野もたくさんある。それを自身の強みと理解し、強みを活かせる分野で、能力アップに励むことが最も賢い道。この認識で仕事選びを行っていれば、雇用のセーフティネットになる

・究極的に「一物一価」へと収斂していくグローバル化によって、ブラックホールのように「重力の世界」へと引き込まれる仕事は着々と増えており、その流れやメカニズムを理解した上で、自身の仕事を選んでほしい

・グローバル化時代の職業には、「1.重力の世界」(グローバルの最低給与水準に収斂)、「2.無国籍ジャングル」(70億人との戦い・超成果主義)、「3.ジャパンプレミアム」(日本人ならではの質の高いサービス)、「4.グローカル」(日本市場向け高度専門職)がある

・国境を越えたアウトソーシングは、米国で早くから行われ、英語が公用語のインドが受け手になっていた。中国の大連市は、日本のアウトソーシング受託の一大拠点に育ち、日本語を操る中国人が激増している

・グローバルの波にのまれて去っていく者もいれば、グローバル化と無縁の者もたくさんいる。公務員(教師、消防、警察、各役所の職員)や、民間でも鉄道系の正社員も「グローバル耐性」が強く、フラット化した世界でも食べていける仕事

日本人メリットを活かせる職に就くことで、ハングリー精神旺盛な新興国の人たちとの不毛な消耗戦、血みどろの戦いを避けられる

・日本人メリットを活かせる仕事とは、一言で言えば「外国人には容易に代替がきかないモノやサービスを提供する仕事」

・世界から並外れている日本人の特性は、「清潔さ」(exツバを吐かない)、「きめ細やかさ」(ex裏側までキッチリ施工)、「勤勉さ」「顧客へのサービス精神」「道徳心」(ex会社のものを盗まない)、「組織への高い忠誠心」(exすぐに会社を辞めない)など

・IT化で瞬時に海外移転する職業、海外移転しないが、国内で徐々に外国人に置き替わっていく職業は、日本人メリットがなく、特段の高いスキルも必要とされない。一刻も早く抜け出すことを考えたほうがいい

・「情報」や「金融」が、一瞬で国境を越えるのとは対照的に、「土地」「建物」は国境を越えにくい。建築や不動産業界の職種は、グローカル職の集合体

・商品単価が安く、失敗時のリスクが低く、単発で長期的関係が不要な商品を売る営業、マニュアル化ができて、足で稼ぎ、数を撃って当てるスタイルの営業も、誰が売っても品質に差が出ない営業なので、今後沈んでいく可能性が高い

・「人事」が行う採用、育成、昇給昇格管理、人事制度設計、労務対応といった業務は、国ごとに固有の制度がモノを言う土着の世界で、「グローカル」職業の典型。一方、「経理・財務」は一部が中国へ移され始め、遅れている会社でも、非正規社員化は進んでいる

・日本国内の雇用者数を分類すると、「重力の世界」(72%)、「無国籍ジャングル」(3%)、「ジャパンプレミアム」(16%)、「グローカル」(6%)、「分類不能の職業」(3%)になる。7割の人は危機感を持たないといけない



年輩の人たちは、若者に覇気がないと言います。しかし、そういう人たちは、真のグローバル競争を経験しなかった人たちです。時代と共に、考え方も変わっていかなければなりません。

今の日本は、成長の時代ではなく、成熟の時代です。それにふさわしい生き方や仕事を模索するうえで、本書は役に立つのではないでしょうか。


[ 2013/12/06 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『ヤバいです!その金遣い』石原伸浩

ヤバイです!その金遣いヤバイです!その金遣い
(2011/10/21)
石原 伸浩

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著者は、1万件にのぼる「お金のトラブル」の相談を受けてきた弁護士です。

お金で失敗した人の、その平均的借金額やそれに陥った理由などが、具体的に示されている本です。お金の使い方について、反面教師になる点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



ギャンブルで相談に来る人の抱えている借金額はだいたい500万円前後。複数の消費者金融会社から借りている。ギャンブルにハマる人は執着心が強い性格の人。経済的にはまずまずの中堅会社に勤めている中流層。既婚者なら家庭がうまくいっていない人が多い

ホストクラブにハマって借金が膨らみ、債務整理の相談に来る人も多い。日常生活で味わえない優越感が楽しくてあっという間に借金を作る。若い20代の女性の借金額はだいたい200~300万円。それ以上貸すと回収できないリスクが高いと貸す方も警戒する

キャバクラにハマって相談に来る人は両極端。ガテン系で年収200~300万円の仕事をしていて、120~130万円の借金で来る人と、年収1000万円以上の30~40代の人で、最初は会社の接待だったのが、経費が落ちず、積もり積もって1000万円くらいの債務になる人

エステの多重債務で相談に来る女性(典型的なのは20代200~300万円の借金)が後を絶たない。ホストより多いという点で「浪費の女王」。施術費だけでなく、美顔器などを買わされて、借金が膨らむ。相談者は、エステに通う必要のない「太っていない」子が多い

・借金を抱えているのに、車を持っていて、そのローンも抱えている人が多い。普通の人なら真っ先にお金のかかる車を処分して返済に回すが、彼らは違う。経済的コンプレックスを持つ人は、いまだに高級車に乗ることが成功の証のように思い込んでいる

絵画や骨董で借金を作るのは中年女性と若い男性。中年女性は、自分には芸術を理解するセンスがあるという自意識で、150万円の絵を何枚も買ってしまう。若い男性は、30~50万円の絵を一回買った後、何度も勧誘されて、200万円ほどの借金を作ってしまう

借金を作る人の特徴は、「1.収入の範囲内で収められない」「2.周りによく思われたいという見栄が強い」「3.ストレス解消のために、本当はやりたくないけどやってしまう」

・債務整理の相談に来る人の中に、住宅ローンを抱えている人(身だしなみもきっちりしていて、ある程度の会社に勤め、収入もある人)が多い。そういう人たちの多くは頭金なしのフルローンを組んでしまっている。頭金は、最低3分の1は払うべき

・目の充血した人が相談に来ると、投資で借金を作ったとすぐわかる。投資で来る人は借金2000万円とかザラ。自信過剰でプライドが高く、ギャンブルする奴らは下賤で、頭のいい人は投資をやり、仕組みがわかっているから損することはないと思っている人が多い

宗教で多額の借金を抱えた人の通帳は、振込先の宛名に個人名がたくさん記載されている。宗教の会合や寄り合いでお金がどんどん出ていく。月収20~30万円ほどの人が、月に10万円以上平気で使っている。もう少し収入のある人は、教団に多額の寄付をしている

マルチ商法で相談に来るのは若い層、20~30代で負債額は300万円程度が多い。マルチにハマった動機は人を騙して楽して儲けたいというよりも、友達づくりから始まった人が多い。「絆」や「つながり」という言葉に弱い若者は、簡単にハマっていく

・債務整理の相談に来る人はほぼ皆、職を転々としている。自己破産申請をする際に、ここ10年の職歴を書く必要がある。その欄は6行しかないが、収まりきらずに別紙が必要になる人も少なくない。業界ではアパレルとITが多く、職種では圧倒的に営業職が多い

安易な起業の場合、負債額700~800万円という場合が多い。サラリーマンよりもっと稼げそうだから起業する人はいいが、組織の中で浮いてしまったから起業する人はうまくいかない。起業して5年以内に倒産する会社は80%、10年以内が95%。生き残りは厳しい

離婚は、前段階として別居を伴う。その間、家賃や生活費など二重の費用がかかる。愛人がいたら出費が一層かさむ。協議離婚の費用もバカにならない。離婚調停と裁判をやれば、弁護士費用が100万円ほど。さらに、男の場合、そこから慰謝料や養育費もかかる

子育てには金がかかる。よく相談に来るのが子だくさんの家庭の親。主人が相談に来る場合の借金額は400万円前後。離婚して女手一つで沢山の子を育てているお母さんの場合は200万円台が多い。子供手当があるとはいえ、子供が多いとやはり経済的にマイナス

・優柔不断、八方美人な人は名義貸し保証人になってしまいがち。断るところは断らなければだめ。人から頼まれたらうまく断れない人は、最初に「ごめん、無理」と言ってから理由を言うのがコツ。理由を先に言ったら議論になり、優柔不断の人は押されてしまう



お金を貯めるには、いっぱい稼ぐか、出費を抑えるかしかありません。いっぱい稼ぐには、才能や運もあり、万人に共通する成功ルールはないですが、出費を抑える、節約と浪費防止の方法はルール化できます。

本書には、浪費を防ぐ方法がいっぱい記載されています。借金を背負わないための教訓にもなる書です。


[ 2013/11/26 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(2)

『超・階級スーパークラス』デヴィッド・ロスコフ

超・階級 スーパークラス超・階級 スーパークラス
(2009/06/23)
デヴィッド・ロスコフ

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この世には、100万人に1人(世界中で約6000人)のスーパーエリートが存在しているそうです。このスーパークラスのエリートを調査分析したのが本書です。

その生態、実態を知れば、権力お金名誉を獲得し、維持するというのは、どういうことがわかります。その恐ろしくて、おぞましい数々の事実はとても参考になります。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・影響力は人格ではなく、人格の欠陥から生じることもある。たとえば冷酷さ、一つの考えへの偏執狂的なまでの固執強欲といったもの

・富の大部分を支配し、その富を株式という形で保有する人々は、強大な影響力を持つ大企業に、強大な影響力を行使できる。とくに、巨大企業の場合、世界中にいる何百万人もの従業員とその家族、顧客、納入業者に影響を及ぼす

・時間は金や権力では手に入らない。すべてを手に入れた人々が口を揃えて言うのは、時間の束縛に対する不満

・ざっと6000人いるスーパークラスのメンバーの間には、一人一人を結ぶ無数の糸が張りめぐらされている。そのネットワークは、ビジネス上の取引。投資。組織や機関の理事会。出身校。超高級住宅街。空港。会合。レストラン。ホテル

・高額所得者層の増大は、資本所得(株式や土地の売買益など)によるものではなく、上位層の給与所得が大幅に増加したことによる。これはとくに企業トップの報酬に顕著に見られる現象で、1970年代に始まり、1990年代に加速した

・所得が下位60%に属する親のもとに生まれた子供が将来、所得上位5%に入る可能性は2%未満。もはや能力主義社会の体裁を保つのは困難

権力を維持する手段は、軍隊、称号や肩書き、あるいは地位を守り、他者がその地位を獲得できないようにする法律

・NGO、文化団体、宗教団体、政治団体など、特定の権益を守ろうとする多くの組織は、金の力(ロビー活動広告活動)で、世論を形成し、社会を動かそうとしていく

・大富豪たちが政治に引き寄せられるのは、経済上の成功を通じて獲得している以上の大きな力を政治がもたらしてくれるから。政治的要職を獲得するか、政治的決定を左右する能力や政治的な支援基盤があれば、個人は直接権力を握ることができる

・かつての悪徳資本家たちは、州をまたいだ通商に目をつけ、規制当局が手を打つ前に、巨利を貪った。同様に、グローバル化推進派のネットワークは、旧い世界を乗り越えようとして、悪徳資本家のように、驚くほど巨額の富を手にして、民衆の怒りをかっている

・慈善事業への寄付が影響力の行使の一形態であるのは、寄付によって自己の社会的地位を明示することになるから

・民間企業の影響力と政府の影響力の境目が判然としないのは、よく見られる現象。この種のあいまいさは、国防関連、メディア、そして、とくにエネルギー分野に多い

・エネルギー産業のトップに立つ人たちは、直接的な形で数十億人の生活に影響を与えている。彼らの決定が、生活必需品価格を決める重要な要素に作用するから

・民主化を推進するインターネットの人気サイトは、どれもこれも文句なしのスーパークラス(超権力者)が絡んでいる

エンターテインメント界の有名人ネットワークには重層的な構造があり、単なるスター以上のものが備わっている。彼らは政治やその他、現実の世界を動かす力を持っている

・情報化時代のエリートは前時代の起業家とよく似た手段や戦略を用いる。一方、伝統を重んじる宗教界のエリートは、政界や企業に多く見られるエリートに似ている。自分にふさわしい師を見つけ、権力基盤を構築し、野心を表に出さず、次の目標に焦点を定める

スーパークラスになるためには、「男に生まれること」「名門大学に通うこと」「ビジネス界または金融界に入ること」「組織の力を基盤とすること」「金持ちになること」

・国家的エリートはいまも存続している。しかし、たいていの場合、グローバル志向の強いライバルたちの規模、資源、ネットワーク、力に圧倒されている

・歴史は、富裕な権力者と、富裕ではないが権力を脅かす者との駆け引きの物語である



人間は影響力を及ぼしたいと考える動物です。そのため、権力と権威を獲得するために、腕力と知力をかけて、壮絶に戦おうとします。

その頂点に上り詰めた人が、100万人に1人、つまり、日本で約120人ということになります。その人たちの生態を知りたい方は、本書が参考になるのではないでしょうか。


[ 2013/11/05 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『縮む世界でどう生き延びるか?』長谷川英祐

縮む世界でどう生き延びるか? (メディアファクトリー新書)縮む世界でどう生き延びるか? (メディアファクトリー新書)
(2013/02/28)
長谷川英祐

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生物学者である著者の本を紹介するのは、「働かないアリに意義がある」に次ぎ2冊目です。

本書は、生物学者の考える、社会論、経済論、文明論です。縮みいく日本(人口減、デフレ)における最適行動とは何か。それらを明示してくれています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「草食系」がモノを欲しがらないのは、収入が減った上に、将来安定的に収入が得られる見込みが低い若者たちの文化的適応

・「貨幣と貯蓄」が人間を決定的に変えた。貯蓄が可能になり、個人が生きていくのに必要な量より大きな財産を持つ人間が現れた。裕福な人が余った貨幣を貸し、新たな商売が生じ、ますます人が増え、経済が大きくなるという、近代社会の道筋が築かれていった

・人間集団につながるルートには、(個人→地域集団→国家)と(個人→企業→経済社会)の階層がある。「経済階層」は、「国家階層」とは異なり、貯蓄と貨幣が現れた後に現れた

・最近(昭和の中頃)まで、個々の企業は国の中で活動していた。したがって、(個人→地域集団→国家)の階層と(個人→企業→経済集団)の最上位階層の範囲は一致していた。企業の利益=国家の利益だったから、矛盾が表に現れることはなかった

資源供給空間的な環境は、いつも潤沢に存在しているわけではなく、生物の増殖によって影響を受け、その結果が生き物自身に跳ね返ってくるもの

・不安定な環境に住むものが全滅のリスクを回避するために探るやり方は、ベット・ヘッジング(両賭け)と呼ばれる。ルーレットなら、チップがなくならないように、赤と青の両方に賭けておくやり方

・進化生態学には、「大卵少産小卵多産か」という問題が昔からあり、卵を少ししか産まないものは大きな卵を産み、多く産むものは小さな卵を産む。これは、どのような環境で有利になるかを考えての繁殖戦略

・不安定な環境とは、「時間的に持続せず、その出現が予測困難であるような環境」と定義できる。さらには、出現したときの持続期間がどのくらいかが予測困難なら、ますます不安定

・不安定な環境で増殖競争を強いられるものの特徴は、「早い成長」「逆境を耐え抜ける形態と適応力(移動力)」

・「短期的な効率を上げる性質」と「長期的な存続性を確保する性質」は両立しない。短期的には有利でも、長期的に存続できないものは生き残ることができないので、重要なのは、長期的存続

・すべての生き物は、現在まで生き抜いてきたからこそ、この世に存在する。長期的存続がどのように実現されてきたかを考えることは、生き物や企業を考える上でも重要

・低成長な飽和した安定環境では、大規模化して維持コストが大きくなると、たちまち苦しい状況に陥ってしまう。ほんの少量だけコンスタントに現れる資源を効率的に利用して生きるためには、小さな規模でなければならない

・共産主義亡き後、資本主義は唯一の勝者として現在に至っているが、そのテーゼともいうべき効率化、大規模化、大量生産が、勝利をもたらしたのは、産業革命以降の世界が「拡大する世界」だったから

・今までの経済学はすべて、成長する経済世界のことしか考えていない。成長しない世界がやってくるなら、その世界で「大きいこと」「強いこと」は最適解ではない

・生物は常に努力して(させられて)いるので、競争を生き延びることができる。「努力さえすれば報われるとは限らないが、努力しないものが報われることはない」。これは生物の世界のルール

・縮む世界で「幸せ」に生きるには、「個として小規模であること」「小さな利益を確実に確保できるようにすること」「利益が出た場合、それを生産増大や消費に費やさず、個の耐久性を高めるように使うこと」

・経済的なバックボーンなしに高い満足感を得るのは簡単。「欲望のレベルを下げる」「お金をかけないでできることで満足する」「多くを望まない」「ささやかなことで幸福を得る」こと。これらは「草食系」と呼ばれる現在の若者たちの行動パターンと一致する



「縮む世界でどう生き延びるか」は、まるで、京都の老舗の経営法のようでした。事業の拡大よりも、事業の永続性に重きを置く経営法は、今まで見過ごされてきたように思います。

縮む世界では、それに合った生き方が必要です。それが嫌なら、拡がる世界を探し歩かなければなりません。環境と自分をどう適合させるかは、永遠のテーマではないでしょうか。


[ 2013/10/24 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『日本の景気は賃金が決める』吉本佳生

日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)
(2013/04/18)
吉本 佳生

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日本人は、賃金の高い人ほど、お金をあまり使わずに貯金します。一方、賃金の低い人ほど、見栄を張って、お金を目一杯使いたがります。したがって、賃金の低い人の給料を上げたほうが、景気がよくなります。

日本の銀行員はサラリーマン体質なので、土地を担保に金を貸したがります。値上がりしそうな土地の持ち主なら、さらに簡単に金を貸します。ということは、土地の値段が上がったほうが、世の中にお金が大量に回り、景気がよくなります。

本書には、このような日本人の体質に合った「景気対策」が載っています。著者の景気対策論は、日本人というものをよく理解しているので、実践的かつ有効的だと感じました。これらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本銀行がデフレ脱出まで、どんどん供給すると決めたおカネを「賃金格差(所得格差)」と「バブル」の二つを意識して、回すことが景気回復の成否につながる

・「男性で、大企業に就職して、正規雇用のかたちで、長年働いている人」は、高い賃金を得る。ところが、この「男・大・正・長」のどれかの条件が外れると、いきなり、主要先進国中で一番落差が大きな(ワースト)賃金格差に直面する

・モノやサービスのデフレ(物価の継続的下落)だけを考えると、デフレは日本経済にとって一番の問題ではない。もっと重大な問題は「賃金デフレ」。賃金デフレが賃金格差をさらに拡大した

・「平均消費性向=景気回復への貢献能力」は、高所得世帯ほど下がる。上位2割の世帯は、可処分所得の7割弱しか消費しない。下位2割の世帯は、8割強を消費に回す。1998年以降、景気回復貢献度の高い世帯に回るおカネの総額が激しく減った

・日本は、子育て世帯を大切にしないという点でも、先進国で最悪の国。日本政府は、少子化を防ぐ努力をしてきたとはとても言えず、むしろ、少子化を促進してきた

・失業などの雇用面で不遇が続く人は、結婚して子供をつくることが難しいので、少子化がより一層進展する。失業問題を放置すれば、日本経済は長期的にどんどん衰退する。その対策を行う気がない政府なら、もっと小さな規模で十分

・中小企業の9割超が、資源価格高騰によるコスト増加の半分でさえ、モノやサービスの価格に転嫁できていない。国内物価が資源価格高騰の影響を受けないのは、そのため。他方、中小企業の付加価値の8割が人件費。価格転嫁できなければ、人件費を削るしかない

・高所得者は不況を深刻にするが、低所得者は不況を退治できる。年収300万円未満の勤労者世帯は、追加の所得の85%を消費に回す(15%を貯蓄に回す)が、年収1000万円以上の勤労者世帯は、追加の所得の52%しか消費に回さない(48%を貯蓄に回す

・日本は、企業規模による賃金格差が大きい。社員規模29人以下の企業の社員は、1000人以上の大企業の社員の約5割しか賃金がもらえない。企業規模が大きいほど賃金が高いという関係は、世界のどの国でも通用する法則ではない

・世帯主の勤め先産業別消費性向が75%より高いのは、宿泊・飲食サービス、他のサービス、教育・学習支援、建設、卸・小売。これら業種の所得が増えれば、消費が増えて景気がよくなる。消費性向が低い、公務、金融・保険の所得が増えても、景気はよくならない

・財務分析をきちんとやって、おカネを貸すかどうか決めるのが、本来の融資の基本。しかし、日本では「値上がりしそうな土地」に優る担保はない

・サービス業では「稼働率」が大切。人が密集すれば、サービス業の稼働率は高まる。人口密度が高まることで、第3次産業が発展し、国内需要が主導する経済成長スピードが高く維持できる

都市部に人口が集まることは、経済成長を高めるための基本中の基本。とにかく都市部に人口を集め、人口密度を高めればいい。そうすれば、民間企業がいろいろ考え、起業する個人も増えて、バラエティに富んだ新しいビジネスが発生・発展する

・学歴別の賃金格差は世襲されやすい。だからこそ、「男・大・正・長」と「女・小・非・短」の賃金格差があることが問題になる

・消費者物価がじわじわと下がるデフレ現象の中でも、教育関係の費用はどんどん値上がりしていた。1997年を100とした場合、2012年の総合消費者物価指数は97だが、私立大学授業料は112、補習教育は108であった



海外の経済理論は、高所得者を優遇すれば、おカネをいっぱい使い、そのおカネが回り、低所得者も潤うというものです。日本もそれを真似して、高所得者の所得税率を下げましたが、逆にデフレが進んでしまいました。

日本は、世間体を気にし、横並びを良しとする社会です。どうも、海外の経済理論は当てはまらないみたいです。本書には、それを裏付けるデータや資料が満載です。日本独自のデフレ脱却論が記されているように思います。


[ 2013/10/22 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『マネー川柳-鏡見て サイフも覗く 試着室』オリックス編

マネー川柳  ---鏡見て サイフも覗く 試着室マネー川柳 ---鏡見て サイフも覗く 試着室
(2013/07/24)
オリックス編

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オリックスが「お金」を題材に募ったマネー川柳は、十年目を迎えるそうです。本書は、この十年の応募総数92万句の中の傑作選になります。

これらの傑作選には、お金に関する皮肉、嘆き、ぼやきなどがユーモアたっぷりに語られています。その中から、共感できた句を紹介させていただきます。



・8本の すねをかじった マイホーム

・鏡見て サイフも嘆く 試着室

売ったのに まだチェックする 株価欄

・小遣いを 減らせば帰宅 早すぎる

・いい人と 言われるたびに 減るお金

・一人っ子 育てるために 共稼ぎ

・医者でなく 財布がとめる 酒たばこ

・格言を 覚えるほどに 損を出し

・宝くじ 秘かに買って そっと捨て

・孫連れて 年賀に鵜匠 やって来る

・美味しそう 値段見てから 産地見る

・ぜいたくは 敵ではなくて 夢となり

・おばさんは ATMと 話する

・草食と 言われる息子 金を食う

・エコカーを 買って乗らない 倹約家

・お金では かえないコトに 金がいる

・私より 家族想いの 保険員

・母校からの 便りはいつも 金のこと

・パスポート 持ってないのに ドル預金

・侘しさは 英語でだます ワンコイン

・ケータイで 夢もおでんも 買う日本

・親切に 儲け話を する他人

・婚活で 財布痩せたが 目は肥えた

・猛暑日の 名残を残す 電気代

運の無い 人で支える 宝くじ

年金を 当てにするなと 定期便

・20代 ゆとり世代に ゆとりなし

・妻の愚痴 減って感じる 真の底

・年金の 目減り長寿で 取り返す

・節約を してる家庭と 出来ぬ国

・アメリカの クシャミで 社宅追い出され



世に、お金の貯め方、お金の使い方、お金の増やし方の教訓は数々ありますが、わかっていてもそうならないのが世の常です。

そうならなかった自分をあっけらかんと笑い飛ばしたのが、この「マネー川柳」かもしれません。本書は、人間の欲や業の集大成と言えるのではないでしょうか。


[ 2013/10/15 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『坂本龍馬の「贋金」製造計画』竹下倫一

坂本龍馬の「贋金」製造計画 (青春新書INTELLIGENCE)坂本龍馬の「贋金」製造計画 (青春新書INTELLIGENCE)
(2010/05/07)
竹下 倫一

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NHKのBS歴史館で坂本龍馬をテーマにした番組をやっていました。その中で、坂本龍馬が贋金をつくらせていたことが、ほぼ事実であることを知り驚きました。著者は、その番組にも登場されていた方です。

新しい日本の夜明けを生むのにも金が要ります。従来、龍馬の表の部分だけにスポットが当てられていましたが、本書には裏の部分に光を当てています。目的のためには手段を選ばない龍馬の生き方に感心しました。それらの一部を要約して紹介させていただきます。



・「贋金を製造する」「関門海峡を封鎖する」「奉行所の金庫を襲う」。これらは、坂本龍馬が真剣に計画し、実行しようとしていたこと。龍馬は、他の歴史上の偉人や、立志伝上の人物にはない「悪の魅力」を持っている

・「目的のためならば手段は柔軟に考える」「常識を超えた発想で現状を突破する」。それが龍馬の龍馬たる部分。だからこそ、「薩長同盟」や「大政奉還」という大事業をやり遂げた

・「商人が狡猾なのは当たり前。狡猾でないと利益を得ることはできない」(坂本龍馬)

・雄藩たちは、万延二分金による幕府の利益を横取りし、偽造品をつくって、その恩恵に与ろうとした。薩摩を初め、会津、久保田、仙台、二本松、加賀、郡山、佐土原、土佐、安芸、宇和島、筑前、久留米藩などでも、贋金を製造していたことが判明している

・岡内俊太郎の手紙に「薩摩でつくっている弐分金のニセ金貨を探して取ってきてくれ。薩摩藩と同じように土佐藩でもニセ金貨をつくっておかなければ、事が起こったときに困る」と言った龍馬の言葉が、公式資料として残されている

・龍馬の事業意欲と贋金製造計画は表裏一体。龍馬は「国を動かすにはまずカネがいる」ことを常に念頭に置いていた。経済的な裏付けを得るためには、なりふり構わなかった

・万延二分金は金の含有量が諸外国との間で明確に規定されていた。だから、規定量以下の貨幣をつくることは条約違反。ところが、幕府はそれを承知で秘密裏に金の含有量を減らした金貨をつくっていた。つまり万延二分金も幕府がつくった「贋金」ということ

・龍馬は大政奉還の直前、海援隊に「船には石炭を満載にしておけ」と命令していた。「戦いが始まれば、石炭が高騰する、だからその前に準備しておけ」ということ

・龍馬は1866年、薩摩藩士五代友厚、長州藩士広沢兵助との間にまとめた「商社示談箇条書」に「下関海峡を通過する船を停止させ、積荷をチェックする」というのがある。海運業者にとって、龍馬の商社は大きな脅威。龍馬は海の小さな王のような存在になった

・龍馬は土佐藩の後藤象二郎に「薩摩にはすでに100万両の偽造金貨がある。長州も同様。土佐が同じことをしても、三藩で300万両。驚くことはない。大政奉還は未曽有の大事業。300万両で新政府がぐらつくようなら、大政奉還は成功しない」と言った

・薩摩藩は幕府から、琉球の通貨不足を補うための「琉球通宝」鋳造許可を受けた。「琉球通宝」は「天保通宝」と形が同じ。薩摩藩が天保通宝を偽造しようとしたのは見え見え

・天保通宝で味をしめた薩摩藩は、二分金の偽造にも手を出した。二分金は、金よりも銀の含有量が多い「金貨」。つまり名目上は「金貨」だが、その実は金メッキをした銀貨

・土佐藩の大坂藩邸に贋金製造工場が置かれた。二分金の他に天保通宝の偽造も行われていた。この大坂の土佐藩邸は、後に岩崎弥太郎に買い取られ、三菱の前身である九十九商会が置かれた。元贋金製造工場が三菱の発祥の地ということになる

・龍馬は、新政府の財政官に招聘した由利公正に大政奉還の経緯を説明した。公正は「お金というのは、金銀に限ったものではなく、石でもいい。信用があれば、お金としての価値が生じる。朝廷の信用が確立すれば、お金に困ることはない」という意味の回答をした

・金メッキなどの製造コストが1枚につき900文かかったが、それを含めても原価の5~6倍になった。しかし、贋金は明治に入ってから、国際的な大問題となった

・龍馬が新政府の指針を示した「船中八策」は、国の骨格を論じたものなのに、八策目だけが、「金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事」という「金銀の価値」の話が出てくる。ここに、龍馬の「国の礎は経済」という思想が織り込まれていると言える

・龍馬が後藤象二郎に送った手紙に「幕府が銀座を京都に移すなら、将軍職を残してもいい。そうすれば、将軍職の名はあっても実はないので、恐るるに足りない」とある。龍馬は、権力の源である経済力を絶つためには「貨幣鋳造権」を取り上げることと考えていた



本書は、龍馬のスケールの大きさを示す書です。大きな善をなすためには、悪を厭わずの精神は、龍馬が大人物の器たる証拠です。

明治新政府の前に、こういったお金の駆け引きややりとりがあったことを歴史的に知っておくことは重要です。本書は、裏の日本史として、非常に興味深い書ではないでしょうか。


[ 2013/10/08 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『金持ちになる男、貧乏になる男』スティーブ・シーボルド

金持ちになる男、貧乏になる男金持ちになる男、貧乏になる男
(2012/05/01)
スティーブ・シーボルド

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著者のスティーブ・シーボルト氏は、アメリカの富裕層研究者で、経営コンサルタントをされており、イギリス、オーストラリアにまで、その活躍の舞台を広げられています。

本書は、長年の研究成果から、金持ちと貧乏を対比させ、その違いを単純、冥界、簡潔な言葉で記されています。うなずきの連続であった、その一部を要約して、紹介させていただきます。



・貧乏になる男が、恐怖と不安を意識して行動するのに対し、金持ちになる男は、豊かさを意識して行動する

・貧乏になる男は、「お金」が諸悪の根源だと考え、金持ちになる男は、「貧困」が諸悪の根源だと考える

・「お金は邪悪だと言う人が現れたら、すぐに身を遠ざけよう。その人は貧乏神だ」(アイン・ランド)

・この世の中は問題解決に対して報酬が支払われる仕組みになっているので、問題を解決すれば誰でも金持ちになれる

・「私は芯が強くて野心的で、明確な目標を持っている。それを批判されるなら本望だわ」(マドンナ)

・金持ちになる男の最大の秘密は、知識ではなく感性に頼ること。そのため、発想が豊か

・貧乏になる男は、「嫌いなこと」をしてお金を稼ぎ、金持ちになる男は、「大好きなこと」をして財産を築く

・「お金は寛容の精神を持つ自由な人々のためにつくられた」(ジョン・レイ)

・金持ちが金儲けを得意とするのは、知能が高いからではなく、一定の行動計画にしたがって、したたかに振る舞うから

・貧乏になる男は、お金に「支配されている」と考え、金持ちになる男は、お金が「自由にしてくれる」と考える

・貧乏になる男は、「お金」を得るために働き、金持ちになる男は、「充実感」を得るために働く

・財産を築く最も効率的な方法は、独立して働き、自分で給料の額を決めること。ところが、貧乏になる男は、安定という幻想にしがみつき、努力を怠りがち

・お金は良いものでも悪いものでもなく中立的。人々を傷つける使われ方をすることもあれば、人々を救う使われ方をすることもある

・貧乏になる男は、幸運に恵まれるのは「偶然」だと考え、金持ちになる男は、幸運に恵まれるのは「必然」だと考える

・「成功とは、お金の心配をしなくてもいいことだ」(ジョニー・キャッシュ)

・貧乏になる男は、「誰とでも気安くつきあい」、金持ちになる男は、「つきあう相手を慎重に選ぶ」

・貧乏になる男は、「努力せずに楽しよう」と考え、金持ちになる男は、「努力を楽しもう」と考える

・貧乏になる男は、「古きよき時代」に固執し、金持ちになる男は、「現在に生きて明るい未来」を夢見る

・銀行の融資担当者は、起業家の情熱、集中力、粘り強さを見落としがちだが、金持ちになる男は、これらの三つの要素が不可欠であることを知っている

・貧乏になる男は、「一握りの人が富の大半を独占している」ことを批判し、金持ちになる男は、「貧乏人が富裕層の仲間入りをする」ことを歓迎する

・貧乏になる男は、「お金」が腐敗の原因だと考え、金持ちになる男は、「お金の欠如」が腐敗の原因だと考える

・金持ちになる男は、「財産を与えることが子供の破滅を招く」と考える



「金持ち」と「貧乏」の違いは、古今東西よく言われていることです。しかし、ここまで徹底的に、100項目の「金持ちになる男」「貧乏になる男」を列挙されると、否が応でも、脳内にその考え方が、注入されてしまいそうです。

「金持ちになりたいと強く願う人」には必読の価値、「貧乏だけは避けたいと考える人」にも一見の価値、のある書ではないでしょうか。


[ 2013/09/17 07:28 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『犯罪者はどこに目をつけているか』清水賢二、清永奈穂

犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)
犯罪者はどこに目をつけているか (新潮新書)

(2012/09/14)
清永 賢二、清永 奈穂 他

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本書は、元泥棒によって書かれたものをまとめた書です。盗みやすい家(盗まれやすい家)とは、どんな家かを知ることができ、どんな防犯対策の本よりも役に立ちます。

犯罪者自身の記述の中に、なるほど、そうだったのかと思える箇所がたくさんありました。その中から一部を要約して紹介させていただきます。



・「やりやすいか、いい獲物か、上手く逃げられるか」(強盗の竹村弘)

・「賊にも三分の利というやつで、目的を得るために危険を犯し、全神経と労力を駆使したにもかかわらず、無駄骨折って終わった賊の心は反抗的となる」(忍びの弥三郎)

・「人間がかぶりつく、というのはもの凄い力。動けなくなった。痛いなんてものじゃなく、思わずイターッって叫んだ。許して下さい、と言って離させた」(猿の義ちゃん)

・「人の口には戸は立てられぬの言葉もあるように、極秘としている事柄ほど人から人へと漏れる。金庫や高額品の在り場、施錠箇所、防犯の設置不設置、有人無人といった秘密は完全にもらさないことに重点を置くべき」(忍びの弥三郎)

・「昔、爺さんと婆さんの二人暮らしの家に、コツコツ貯めた現金があるのを知って狙った。家の周りは格子があり、厳重だったので、家の横の木に登り、屋根に飛び移って、瓦をはずし、押入れの板を足で壊し、金庫をドライバーで壊し、大金を奪った」(猿の義ちゃん)

・「不幸にして、泥棒に侵入されても、泥棒自身の逃げ場がなくなったとき、大声を出してはいけない。泥棒が居直る恐れがあるので、見て見ぬふりをすること」(忍びの弥三郎)

・「堅牢な建物でも、現金があると感知したら、侵入する手段と方法を練り上げ、外から見られる率が最も少ない場所を見出す。どんな家にも必ず欠点の場所がある」(忍びの弥三郎)

・「空き巣を働く人間は、その犯行時の服装は紳士的で、その言葉や語調も真面目な人間としての表面を作り、一般善良な市民と変わらない。その格好で、狙う家屋の周囲を必ず一、二度往復し、住人の在不在、在宅人数や老若を判断する」(忍びの弥三郎)

・「賊は発覚した場合を考えて、近隣の家並みを把握する。突発時に備えて、弁解用語も備えており、落ち着いた動作で、相手に変化を覚られない細やかな芸を持つ」(忍びの弥三郎)

・「家の周囲1m内に、脚立、酒の空箱、自転車、車、街灯、電柱、植木、ブロック塀などが接近してある場合、泥棒は、家屋やベランダに飛びついて侵入する」(忍びの弥三郎)

・「いざとなれば、体当たり一発で突き破れる壁の家を狙う」(強盗の竹村弘)。プロの侵入盗は、古い家を狙い目と考え、新しい家を避ける傾向がある。古い家を狙う理由として、侵入盗23人中21人までが、「逃げやすいから」と答えた

・「家屋で最も侵入されやすい便所、風呂場、応接室、裏勝手口の窓や扉を覆ってしまうほどの樹木、障壁は低くすること。改善できない場合は、その各窓の施錠を三重ロックにして、家の中が見えないように、濃色のカーテンを引き閉めておくこと」(忍びの弥三郎)

・「泥棒は家の周囲を回り、一階に錠がかけてある場合、二階を狙う。その時、足場になるものを探す。そして、雨樋、クーラーの配管、水道のパイプなど手足を掛けられるものがあれば、簡単に侵入できる」(猿の義ちゃん)

・「玄関に発光ライトと防犯カメラが付いていたら、厄介だから避ける」(猿の義ちゃん)

・「一般家庭のシャッターは、簡単に開ける方法があるし、一階にシャッターを落としていても、二階までシャッターを落とすところは少ない。そこで二階から侵入を図る。シャッターは強い味方というより、裏切り者になる」(忍びの弥三郎)

・「狙った家の隣人から『どちらさんですか』と声をかけられるほど、嫌なことはない。だから、一人住まいのアパートほどやりやすいものはない」(忍びの弥三郎)

・「『防犯多発地区』『怪しいと思ったら110番』などのポスターが剥がれてかけていたり、汚れていたり、貼りっぱなしだったら、そこはそれだけやりやすいところ」(猿の義ちゃん)

・「カメラはどこに付いているか、すぐ分かる。それをよければ問題はない。しかし、逃げる時は熱くなって用心を欠き、知らぬ間に写されてしまう。でも、『スーパープロ』は、カメラが付いていても、狙ったらやる」(猿の義ちゃん)

・「犯罪というのは、隙間産業。その隙とは、やられるヤツの油断であり死角。自分たちはそこを突く」(猿の義ちゃん)



「強盗の竹村弘」「忍びの弥三郎」「猿の義ちゃん」といった本物の泥棒が登場するので、興味深く読むことができました。

泥棒に遭わないようにするために何が必要かの予防策を、泥棒目線で知っておくことは、重要なことではないでしょうか。


[ 2013/09/10 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『天皇家の財布』森暢平

天皇家の財布 (新潮新書)天皇家の財布 (新潮新書)
(2003/06)
森 暢平

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天皇家の家計簿、貯金、資産、収入など、どうなっているのか少し興味がありました。戦前に比べて、かなり予算が小さくなったみたいですが、それでも、お抱えの人件費等を考えれば、膨大な額になります。

本書は、それらを一つ一つ明かすことにより、天皇家の生活ぶりを知らせてくれます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・天皇、皇族の活動のための「皇室費」は、オフィシャルマネーの「宮廷費」と、プライベトマネーの「内廷費」「皇族費」の三つに分類される

・皇室の公的な活動に使われる「宮廷費」は、一般の役所と同じで、毎年金額が変わる(2003年度は64億円)。宮中晩餐会、国体や全国植樹祭への地方訪問、宮殿の補修、皇居の庭園整備など土木・建設費も含まれる

・「内延費」は、天皇家へのサラリーで、国家公務員の給与と同じ。定額制で3億円程度。ピアノの修理代、登山用品代などが、「内延費」から支出される

・「皇族費」は、天皇家以外の宮家(秋篠宮、常陸宮などの七家)のサラリーと考えると捉えやすい。秋篠宮家は約5000万円で、総額は約3億円程度

・宮内庁が管理する予算には、他に宮内庁費がある。1000人を超える宮内庁の経費は、110億円を超える。そのうち、人件費と手当関係が約8割を占める。つまり、宮内庁は「皇室費」を合わせると、「4つの財布」を持っていることになる

・皇室費(宮廷費・内延費・皇族費)と宮内庁費に、皇室関連の国の付属機関である「皇宮警察本部予算」を加えた広義の皇室関連予算は約270億円。国民負担は1人210円ほど

・戦前の皇室は、全国に広大な山林を持ち、林業経営で収入を得ていたほか、教育機関である学習院まで持っていた。宮内庁職員は、1945年の敗戦時、約6200人もいた

・現在も、京都御所、桂離宮、修学院離宮、正倉院、千葉・埼玉の鴨場、長良川筋漁場、那須・須崎・葉山の御用邸を抱える

・現在も、雅楽や洋楽演奏の楽師24人、正史編纂や陵墓調査の研究職46人、天皇陵の陵墓守143人、正倉院や古文書の修繕師12人、調理人25人、配膳担当22人、運転手と車両整備40人、土木・水道・電気・機械などの専門技官78人、庭園管理者30人がいる

・皇居の1カ月の水道代は約930万円、電気代は約840万円、ガス代は約340万円。東宮御所は別払い。NHKのテレビ放送受信料は約180万円

・出席者132人の大統領晩餐会の食材仕入れ費は約97万円。一人当たり7300円ほど。御料牧場の生産物や大膳課職員の人件費を考慮すれば、一人の食事単価は1万円単位

御料牧場では、乳牛18頭が飼育され、牛乳瓶200ml換算で、1日約200本の生産。豚は78頭が飼育され、年間に豚肉約3000kgの生産。他にも羊が385頭、鶏が886羽、キジが35羽いる。御料牧場の年間生産額は約4200万円。支出は6億円強で、やはり赤字

・天皇家のお小遣いは不明だが、「その他雑費」の7割、2500万円と推定すると、天皇家の成人で、年間一人当たり500万円になる

・戦前、天皇家が持つ「御料林」は、北海道夕張、静岡大井川、岐阜木曽など全国に散らばり、「金のなる木」と呼ばれるほど、莫大な収益を上げた。この利益を元手に、皇室は株式、国債への投資にも乗り出した

・皇居や御用邸などの土地、宮殿や御所のような建物は、天皇家の私有ではなく、国有財産で、国が皇室に提供する「皇室用財産」という種類にあたる。現在の皇室用財産は、土地を合わせると、4000億円以上になる

・昭和天皇が亡くなった時の資産はおよそ20億円。これは、昭和天皇個人の遺産

・昭和天皇逝去で整理された所有の美術品は約4600件(国有財産3180件、御由緒物580件、天皇陛下と香淳皇后が相続800件)。国有財産になった品に、「蒙古襲来絵詞」「源氏物語屏風」、小野道風の直筆、横山大観などの近代絵画、幕末志士たちの書画などがあった

・天皇家と比べると、宮家の暮らしは、ぐっと一般人に近い。自分自身で買い物をすることも、銀座で飲むこともある。秋篠宮家の6人いる使用人の人件費を除いた年間生活費は約2500万円。皇族という身分を考えると、潤沢とは言えない



本書を読み、天皇家や宮家は、庶民が思っているより、そんなに贅沢な暮しをしていないように感じました。

プライベートな行動が制限され、ストレスのかかる公務に追われることを考えると、決して、豊かとは言えないように思います。「天皇家の財布」を知ることにより、天皇家を身近に感じられるようになるのではないでしょうか。


[ 2013/08/27 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『「マネー大動乱」時代を生きぬく情報活用術』増田悦佐

「マネー大動乱」時代を生きぬく情報活用術「マネー大動乱」時代を生きぬく情報活用術
(2012/09/13)
増田 悦佐

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本書の初めの方に、「歴史なき経済学は、海図なき航海と同じ」という言葉が出てきます。本書は、長い期間のデータを読みとることによって、経済や社会の真実を見ていこうとするものです。

日米の比較データをもとに、マスコミが伝えた「真実」の間違いを解き明かし、正しい判断基準を提供しようともされています。本書の中で、新しい発見が数多くありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・日本の勤労世帯は、不動産と株のバブルがはじけて、経済情勢が大混乱した時期でさえも、堅実な家計運営で、借金を差し引いた金融資産を着々と伸ばし続けてきた

・1997年から2008年までの12年間の日本の家計金融資産残高は、11.6%拡大した。これは年率換算にして0.9%の伸び。2000年のITバブル崩壊と2008年のサブプライムローンバブル崩壊の二つを含む運用の難しい時代の伸び率としては立派なもの

・日本の経済学者たちは、日本と欧米で違っていることがあったら、日本の方がダメに決まっていると考える。日本人の安全第一の資産運用にも、否定的な論評をする者が多い

・日本の大卒以上の学歴を持つ女性は、受けた教育を生かすことが男性より上手で、高卒女性の1.61倍と、32カ国中真ん中よりやや上。日本女性は男性より、教育投資からの収穫を確実に得ている

・アメリカで、きちんとした教育を受けられることで名の通った大学は、私立、州立を問わず、年間で200万円以上の負担が必要。アメリカの大学授業料は、過去30年間、全国平均で年率7%くらいのペースで上がり続けている

・アメリカでは、社会人になってからの出世払いということで、大学生は学費ローンを組むことになる。アメリカの金融機関では、この学費ローンが、「住宅ローン以上の長期延滞や貸し倒れが続出する時期が迫った」と唱える人が増えている

・白人世帯と非白人(ヒスパニック系の白人含む)世帯との純資産中央値の格差は、2010年には6.4倍へと拡大している

・最近のアメリカでは、リセッション(景気後退)とマン(男性)を合成した、マンセッション(男性不況)という新造語が流行っている。女性は採用されるのに、男性が採用されない理由は単純で、同じ学歴の人なら、男性より女性を採ったほうが安上がりだから

・日本経済における、小売業や外食産業などが占める比重が上昇してきたことが、非正規雇用拡大の最大の理由

・世界中の先進国はどこも同じだが、製造業の雇用は、技術や知識の進歩によって、生産性が上がるにつれて縮小する。少ない雇用数で同じ生産量を生産できれば、あまった労働力を放出する。日本で製造業の雇用が減っているのは、円高が理由ではない

・製造業が順調に発展してきた国ほど、雇用者全体に占める製造業就業者の比率は低くなる。対人折衝の必要な接客業務の要素の濃い産業は、労働力の量が減らない。非正規雇用者が多い三大分野は、宿泊飲食サービス業、卸売小売業、医療福祉で、接客性の高い産業

先進国の条件は、エネルギー効率を持続的に高められること。先進国の経済は、値段が上がって貴重さが高まったものは、消費量を減らすという経済合理性が備わっている

・先進国で、日本だけが日常生活で通勤通学に頻繁に使える鉄道網を維持してきた。日本のエネルギー効率の高さは、利用頻度の高い鉄道網のたまもの

・日本の社会保障給付は、先進諸国の中で、一番歩留まりがいい。「歩留まりがいい」とは、国民の負担に対する給付の割合が高いということ

・日本ほど、お金をかけずに長寿をまっとうする人の数を増やしてきた国はない。高齢化比率が5%台半ばから22%へと16ポイント以上上がっているのに、医療費の対GDP比率は、約3%から約9.5%へと6.5ポイント上がっただけ

・日本国民は、アメリカ国民と比較すると、4割未満の医療費しか使っていない。でも、アメリカより4歳以上長い平均寿命を達成している

・円高が進んでも、日本は安定的な数量を輸出し続けているのは、価格次第で需要が変動することが多い「最終消費財」から、技術優位を生かせる「中間財・資本財」へと構造転換が進んでいるから



日本がいいと言われていることが、実は悪かったり、日本が悪いと言われていることが実はよかったりと、新たな発見となる情報を提供してくれる書です。

自虐的な日本人と自信家の欧米人といった性格的な面を排除するには、やはりデータを客観的に見つめ続けることです。それをしなければ、声のデカい民族に、知らず知らずのうちに、呑まれていくのではないでしょうか。


[ 2013/08/14 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『誰も知らない地盤の真実』前俊守

誰も知らない地盤の真実(経営者新書)誰も知らない地盤の真実(経営者新書)
(2011/08/26)
前 俊守

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著者は、地盤調査専業で唯一上場している会社の創業者です。東日本大震災以来、地盤についての関心は高まっているように思いますが、知識のほうは、あまり高まっていないように思います。

私が今住んでいる家は、川沿いの公園の前で、日当たりもよく、気に入っていますが、川沿いなので、地盤がゆるいのではないかと危惧しています。

そういうこともあって、本書を読みました。参考になる点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・地盤の性能は、主に「支持力」「沈下量」「耐震性」「汚染度」の4点で測られる。土地の価値は、駅からの距離といった立地条件や形状、価格だけで決まるものではない。十分な「性能」のある地盤があってこそ、土地の価値は維持される

・盛土をした斜面の土地には、擁壁がつくられる。擁壁の内部は盛土で満たされており、盛土に問題があれば、擁壁にも危険な兆候が表れる

・谷は、底に水が流れているから、たとえ盛土をしたとしても、その下には、地下水となった水が流れ続けている。さらに、盛土をしたために、水が不自然な場所に滞留してしまい、地震が起きると、液状化とよく似た現象を引き起こす事例が少なくない

・土の粒子は、75~2ミリのものを「礫」と呼び、それ以下のものを順に「砂」「シルト」「粘土」と言う。そのうち、圧蜜沈下(土の重みで少しずつ地盤が下がる)を起こしやすいのは、最も粒子が細かく、内部の水がなかなか抜けにくい「粘土」でできた層

・各都道府県で定める「がけ条例」では、高さ5m以上・傾斜30度を超えるがけの下に住宅を建てる場合は、がけの高さの2倍以上、がけから離さなくてはならない。押し寄せた水によって家が流されないよう、低地を避け、高台に建てることが、洪水リスク回避策

1万年前の沖積層でも自然界ではまだまだ若者だから、造成して10年の土地は、赤ちゃんのようなもの

・地盤調査に関わる者が参考にするのが、国土地理院の「土地条件図」(その土地が自然地盤か人工地盤か、急斜面か緩斜面か、過去の地滑りした箇所)。ネットで検索すれば、自宅で見ることができる。過去の地形を知るには、「国土変遷アーカイブ」のページも役立つ

・水田は粘性土で、ある程度掘ると、必ず水はけのよい砂質土が出てくる。沼の場合は、ズブズブと足が沈み込むような軟弱地盤が深くまで続くので、地盤補強をするのが難しく、宅地としては避けたほうがよい。「底なし沼」という言葉は、沼の怖さをよく表している

・土地の候補地周辺を、歩いて見て回ること。道路にヒビ割れ陥没があれば、要注意。地盤が軟弱な土地では、道路が波打ち、中央部が丸く盛り上がって「かまぼこ型」になっていたり、電柱が傾いていたりする

・擁壁は低い方が安心と思いがちだが、実は低い方が要注意。法律上、5mを超えない擁壁では、地震の力を想定して設計する必要がない。2m未満の擁壁は、役所に建築申請する必要すらないので、脆いものが多く、住まいの不同沈下の要因の一つになっている

・土地を見に行くときは、天気のいい日を選んで行きがちだが、あえて雨の日にも足を運ぶこと。擁壁の水抜き穴のつまり、ヒビ割れ、擁壁自体の歪み崩れ、前へのせり出しなどをチェックする

・擁壁は公共の道路に面しているから、何かあったら行政が補修してくれると思いがちだが、擁壁のある造成地は、擁壁も含めて土地の持ち主のもの。水抜き穴の目詰まりなどのトラブルが発生したら、自分で補修しなくてはならない

・安定した地盤では「布基礎」(枠で建物を支える)、やや軟弱な地盤では「ベタ基礎」(床下全面のコンクリート底版全体で建物を支える)、軟弱層が深い場合は「杭基礎」(地中深くの硬い地盤に杭を突き刺して建物を支える)を採用する

・家の傾きを沈下修正するには、軟弱層が比較的浅く、その下の地層がしっかりしている地盤なら、基礎の下にグラウトと呼ばれる薬液を注入して、建物を持ち上げる方法で対処できる

住宅の保証事故件数部位別割合は、地盤・基礎20%、柱・梁12%、床5%、壁(構造)6%、壁(防水)48%、屋根(防水)10%だが、部位別保険金割合では、地盤・基礎が66%を占め、1件当たり約750万円。つまり、基礎・地盤に問題があれば高くつくということ



地盤・基礎が沈み、傾けば、その症状が、家にも大きく及んできます。そうなると、絶えず家を修理しなければいけなくなります。

本書を読めば、家を買う前に、家だけでなく、地盤・基礎も綿密にチェックしておくことがいかに大事なことか、理解できるのではないでしょうか。


[ 2013/08/13 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『有閑階級の理論』T・ヴェブレン

有閑階級の理論 (岩波文庫)有閑階級の理論 (岩波文庫)
(1961/05/25)
T. ヴェブレン

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著者は、1857年生まれの経済学者です。しかし、経済学者なのか社会学者なのか、人類学者なのか民俗学者なのか、とらえどころのないところがあり、生きている間はあまり評価されませんでした。

近年ようやく評価され始め、人間の見栄や欲望が、いかなる消費を生み、どのような階級を形成していくのか、つまり、人間の愚かさと経済学を結びつけた理論が、人々の関心を惹くようになっています。本書の興味深い箇所を要約して、紹介させていただきます。



・上流階級は、慣習によって、産業的な職業から免除されて、名誉を伴う職業が約束されている。これらの免除されている一事が、彼らの卓越した地位の経済的表現である

・目に見える武勇の証拠(戦利品)は、生活の装飾品として不可欠。狩りや襲撃の戦利品である略奪品は、秀れた力の証拠として賞賛される。こうした略奪品が、成功した攻撃の自明の証拠として、役に立つ

・女に対する所有権は、低次の段階の野蛮文化の中で、女性捕虜の略奪とともに発生する。女を略奪したり、専有したりする本来の理由は、戦利品としての有用性である

・所有権は、成功した襲撃の戦利品として保有される略奪品であることをもって始まった。所有されている物や人の効用は、大部分、その所有者と、略奪対象であった敵との競争心にもとづく比較に由来する

・名声の根拠としての財産の強調は、富の蓄積の初期段階では不可欠である。労働を回避することは、富の証拠であり、社会的地位の刻印である。富の賞賛は、閑暇を導く

・洗練された趣味、行儀作法は、上品さの証拠。というのは、立派な教養を身につけるためには、時間と努力とお金が必要であり、時間とエネルギーを労働に吸い取られてしまっている人々には、達成し得ないものだから

・顕示的閑暇は、立ち居振る舞いの入念な修練や、どのような消費財が上品であり、それを消費する上品な方法はどんなものか、に関する鑑賞力識別力の教育へと発展していく

・食べ物や飲み物を巡る品質上の優秀さに関する儀式張った区別が発展すると、それは有閑紳士の訓練や知的活動にも影響を及ぼす。もはや、力と富と蛮勇を持つ男では不十分で、頭が足りないと思われないためには、眼識を養わなければならない

・有閑階級固有の職業になった仕事は、すべて高貴なものになる。すなわち、統治、戦闘、狩猟、武具や装具の世話等々。他方、産業階級固有の仕事、たとえば、手作業や他の生産的労働、使用人のサービス等々という仕事は、すべて下賤なものとなる

・立派な評判を得るための基礎は、金銭的な力に依存している。金銭的な力を示し、高名を獲得したり、維持したりする手段が、閑暇であり、財の顕示的消費である

・田舎の住民の間では、体面は、貯蓄や家族の快適な暮らし向きによって担われている。こうしたことは、隣近所の噂話を通じて広まる。消費が大きな要素を占めてくるのは、田舎より都市のこと

・美しさを規準に評価される財の効用は、財がどれだけ高価であるかに密接に依存している

・家庭の長のために、代行的な消費を行うことが、女の任務になり、女の衣服が、この目標を視野に入れて工夫された

・職業は、大別して、「金銭的な職業」と「産業的な職業」に分けられる。有閑階級の経済的利益は金銭的な職業(所有権や取得と関連する)にあり、労働者階級のそれは、産業的な職業(生産と関連する)にある。有閑階級への入口は、金銭的な職業を通じて開かれる

・ギャンブル好きな性向は、略奪的なタイプの人間性に属する特徴。ギャンブルを行う要素は、幸運を信じる心

暮らし向きのよい女性聖職者の日常生活は、平均的な男(産業的職業に従事している男)の日常生活に比べて、身分の要素をより含んでいる

・教育の要素とは、教育を受けていない人々を感銘させたり、彼らにつけこんだりしようという目的によって、きわめて魅力的で効果的なものである



著者が、100年前に指摘した、この構造は、根本的には変わっていません。

お金やモノを得た後に欲するのは、名誉や名声であり、資格の必要な職業、有名大学出身、文化や芸術に対する造詣の深さなど、一代では築けないもの、有閑階級にならないと、手に入らないものです。

著者は、その行為が、略奪行為の延長の愚かで卑しいものであると喝破しています。この構造は、人間の本能に根ざしたものである以上、今後とも大きく変わらず、続いていくのではないでしょうか。


[ 2013/08/12 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える』大垣尚司

49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える
(2012/05/16)
大垣 尚司

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著者は、外資系生命保険会社の執行役員や日本の住宅ローン会社社長などを務められて、現在は大学教授をされている方です。今は、どこの金融機関にも属されていないので、中立の立場で見解を述べられています。

本書では、老後を迎えるにあたって、個人資産をできるだけ流動資産化する(住宅・保険をキャッシュに換える)ことを主張されています。専門家の分析に納得できる点が多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・「もはや老大国になったわが国で、急成長を遂げる企業が数多く登場する可能性は低い」という考え方は真っ当。ここから単純に考えれば、「素人が株式で高い利回りを得ることは以前より格段に難しくなっている」ということ

・資産運用の目的には、「増やす」(資産形成)と「減らさない」(資産防衛)の二つがある。大雑把に言えば、貧乏人と若者は資産形成、金持ちと年寄りは資産防衛を目標にすべき

・「お金」という視点で考えると、「長生き」は良いことではない。少なくとも、お金に関する限り、自分を「短命」と想定せずに、「長生きしすぎる」という想定で備えておくべき

・標準的な引退サラリーマン夫婦は、退職・引退後に約9000万円の支出が見込まれる。約6500万円の公的年金収入が見込めるから、その差額約2500万円をどうやって埋めていくかということを考える必要がある

・われわれ大人は、株価や地価が右肩上がりの時代に若い時期を過ごしたため、「今日より明日はもっとよくなっている」と信じてしまう。その結果、株価の高い時期に買ってしまった株は、市場が多少戻っても損が消えないことになる。つまり、長期保有は報われない

・株で勝ちたければ、短期的な株価の動きをとらえて、値ざやを稼ぐようなやり方が従来以上に必要になってくる。しかし、短期売買にわれわれ大人が進出しても、若くて瞬発力のあるトレーダーや高速売買のコンピューター相手に勝ち目は少ない

・大人世代のバランスシートは「資産余って銭足らず」。シニアは「アセット(資産)リッチ(裕福)で、キャッシュ(現金)プアー(貧乏)」

・老後を安心して過ごすには、預金以外のすぐにお金にならない資産(非稼働資産)である「保険とマイホーム」の活用方法を考える必要がある

・日本人は平均的に男は6年女は8年ぐらい、「健康とはいえない状態」で死を待つことになる。この期間は、本人がつらいだけでなく、家族や身内に迷惑をかける可能性が高い

・男性は死ぬまでに5~6回、女性では7回以上入院しないと、医療保険の保険料を回収できない。言い換えれば、死ぬまでに1カ月の入院を5回以上、あるいは3週間弱の入院を10回以上するのでなければ、保険料と同じ額を貯金しておいたほうがよい

・相続というと、プラスの財産を受け継ぐことを想像する人が多いが、当然のことながら、借金も同時に相続する。ただし、財産も相続しないなら、借金も相続しないという「放棄」が認められている

滅失した住宅の平均築後年数は、英国77年、米国55年、日本30年。日本人は、魚と家は新鮮なものを好むが、最近は日本全体が貧乏になっているので、やすやすと滅失させる余裕がなくなっている

・自宅に住み続けないなら、賃貸に出せば、日本中どこでも平均的に月7万~9万円の安定収入を得ることができる

・都心までの時間が70分超あたりで「郊外」が終わり、その先「遠郊外」との間に「地価断層」が存在する。つまり、「郊外」と「田舎」の間に、「田舎並み価格」で買える「通勤通学は不便だが都市生活を営めて自然環境もよいところ」がベルト状に存在している

・家族とともに通勤通学時代を過ごしたマイホームに引退後も住み続けると、お金の問題で袋小路に突きあたる可能性が高い。お金に関する限り、上手に住み替えれば、間違いなく豊かになれる

・引退した者にとって、都市は決して心地よく住めるところではない。都市は働かない者にやさしい構造は持ち合せていない。金が尽きた老人は足手まといとなるだけ

・耐用年数の過ぎた住宅にそのまま25年程度住み続けた場合、必要となる修繕費は、少なくても累計800万円。価格が3割程度アップになるが、長寿命住宅は、賃貸価値で見る限り、家を家賃に変換する金融マシンとして機能するため、高い価値がある



著者は、住宅と保険の現金化をすすめています。すぐに現金化できないものは、老人にとって、リスクになると述べられています。

年齢によって、固定資産と流動資産と現金の比率を見直さないといけないのかもしれません。老後の安心を得ようと思われている方には、参考になる書ではないでしょうか。


[ 2013/07/16 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『運命を変える技術』加藤眞由儒

運命を変える技術運命を変える技術
(2010/04/16)
加藤 眞由儒

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著者はサイキックカウンセリングをされています。サイキックとは、霊能者のことです。本ブログでは、超能力、霊能力に関する本をできるだけ避けているのですが、本書は、真面目な内容なので、採り上げさせていただきました。

本書には、運命やお金について考えさせられる記述が数多くあります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人に親切にして、人のために行動する人は、心に余裕のある人。仕事に追われ、家族や生活の問題に悩まされていては、どんなに善人でも、人のために行動するのは難しい。その問題の根源は経済力にある。今の日本で、余裕のために必要なのは経済力

・豊かさや幸せって何だろうと考えられること自体が、豊かで幸せな証拠

・運命は人間が幸せになるための修行。だから、つらいこと、苦しいことがあって当然

・他人を「許す」ことを学ぶことが重要。この学びの過程で、人間は人間として成長することを試されている

・謙虚な行動とは、最も積極的で、強く、やさしく、賢く、美しい。謙虚な人には勝てない。よい運命は、謙虚な人に流れるようにできている。謙虚な行動が運命を好転させる

・人間関係は、人と人との調和のために、どうしたらよいかを知ることだから大事。嫌な上司との出会いも、この上司に対応できる自分になるための訓練

・人間関係は、時間的都合をつけなければならない、費用もかかる、体力も消耗する、ので大変。それでも「人を見る」ことは大事。人を見て、観察することができるようになれば、出会いを逃さないようになる

・愛と執着はまったく違う。その見極めができないと、執着から離れることはできない

・別れで傷ついた心を癒して、立ち直り、新たなスタートラインに立つことができたという過程を経て、人として向上していく

・生きている限り、人生は修行の繰り返し。しかし、する必要のない修行はある。いま現在幸せを感じているのであれば、あえてつらい修行などする必要はない

・我慢、忍耐、愛を学びながら、人間として大切な「許すこと」「感謝すること」を学ぶ

・子供が生まれるというのは「また一人、自分の思い通りにならない家族が増える」こと

・ストレス解消のポイントは「泣くこと」「笑うこと」「話すこと」。そのうち「話す」というのは、泣くこと、笑うこと以上に、体の中にたまったストレスを解消する作用がある

・自分と異なる性格やものの見方、考え方、捉え方を持った人と付き合い、接したほうが修行になる

・お金儲けは罪ではない。悪いのは、お金儲けのために他人を騙すこと、儲けたお金を悪いことに使うこと

・お金のトラブルが起きてしまうのは、親がお金の教育を子供に行っていないから。口座にお金が振り込まれるだけの親の子供にとって、お金は「数字」でしかない。お金や株、為替などについて触れる機会を作ってあげること

・一生懸命働いているのに、いつまでたっても豊かにならないと嘆いている人が多いが、それは「どのように稼ぐか」を知らないから。お金のない人はやはり努力不足。成功している人は、お金の勉強をしている人

・我慢と辛抱では意味が違う。しないほうがよいのが我慢、将来プラスになることが辛抱

・過度の我慢は、自分で自分を律するあまり、「人のためを思う」ことから離れる。過度な無理や我慢は、運命を不幸に変えてしまうので、期限を決めて実行すること

・日常生活で心がけておくべきことは、第一に、終わったことは「忘れる」こと。第二に、「許す」こと。第三は、「あきらめる」こと

・運命とは、周りとの軋轢が生じない「自分自身を磨く道」を探すこと。運命の改善には、自分のしたい仕事を早いうちに見つけること



本書に書かれてあることは、霊能者の発言というよりか、人生の成功者の発言といった感じがします。現実と夢、現在と将来の間に、それほど大きな差はないのだと思います。

ということは、今をコツコツ、大切に生きていくことが、運命を切り拓いていくことになるということかもしれません。


[ 2013/07/09 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『物狂ほしけれ』車谷長吉

物狂ほしけれ物狂ほしけれ
(2007/10)
車谷 長吉

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著者の本を紹介するのは、「反時代的毒虫」に次ぎ、2冊目です。お金に苦労する道をあえて歩まれた(貧乏の道を選ばれた)だけあって、お金に関する考え方が秀逸です。

どん底を経験された中から出てきた意見は、非常に参考になるものばかりです。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・ハイデッカーの言う現代人の特徴「好奇心・おしゃべり・無関心」は、石川啄木の「何か面白い事は無いかねえ」そのもの。言い直せば、「いい事は無いねえ」である。今も時代の状況は何も変わっていない。物欲しそうな、さもしい、淋しい時代である

・より速く、より高く、より強く、より多く、より面白く、より豊かに、より美しく、より便利に。この近代主義の欲望を生きることが「産業害」「人害」をもたらした

・「近代人=横着者」であるがゆえに、自分の権利だけを主張する。自分の義務はなるたけ避けて通りたい、これをギリシア哲学風に言えば、衆愚社会ということ

・この世には、歴史の一回性ということがある。一度出来てしまったものは、もう後戻りはできない。いかに、近代社会が「悪」であっても、もう引き返すことはできない

・金がないことの行き着く先は「泥の粥」をすすって生きること。この「泥の粥」をすする経験は、「絶望、虚無」「生きる力」「金さえあればというさもしさ、浅ましさ、浅はかさ」を人の心に強いる。その内面過程から何を汲み取るかが、その人のその後の生を決定する

・後期資本主義という醜い時代にあっては、美を倫理とする文学は当然に衰退していく。それを嘆く声はあるが、それでよい。どのみち文学など因業者のすること。簡単な生活がよい生活である

・自分の生きることの目的は金を稼ぐことではないと心の中で決め、「世捨て」という生き方を人生の目的・手段とした。だから、いつも貧乏だった。「世捨て」とは「人生を棒に振る」ことである

・経済体制として疲弊していた元禄時代から、徳川幕府体制が二百年ももちこたえたのは、支配階級たる武士階級が「金を軽蔑」していたから。「金あさり」に血まなこにならなかったから

・金なり言説なりが、「力」「権力」として作動する。この「力」に首根っこをおさえられ、頸をしめられ、黙らされ、やむなく「銭金崇拝」へ追い込まれていく

・人は「少し多め」「少し少なめ」の生活を維持するために、あくせくし、いや、あくせくせざるを得ない

・九割九分の日本人は、金を人生の目的に生きている。拝金主義にならざるを得ないのが、今日の時代と社会の仕組み。これが近代主義である。この近代主義が悪だとしても、より一層の近代化を推し進める以外に方途がない

・西行は出家遁世したが、荘園からの上がりは捨てなかった。荘園には百姓がいて、汗水たらして働かせておいて、自分は世捨て人という形で暮らしていた。昔から、お金なしには世捨てもへったくれもない。だから厳密、純粋な「世捨ての思想」というものはない

・できるだけ少ない収入で、できるだけ少ない支出で生活するのがよい。これでは、現実的に、けちで吝嗇でしわん坊でしぶちんにならざるを得ない。この禁欲的生活は、美徳であり、恥ずかしいことではない

・高い自尊心、強い虚栄心、深い劣等感は、人間の三悪。これを捨てるためにも、苦の道に進んだ

・この世では、金と無縁に生きていくことは不可能であるから、その金をあらかじめ調達するのではなく、現地調達で生きていくという考え方もある。これが究極の「世捨ての思想」。世捨てを実現するには、この現地調達の精神と片道切符だけで生きていくことが必要

・愚痴、泣き言、小言というのは女の三大特徴。それから、もう一つ女の癖は、すぐに自画自賛し、自分の功績を数えたがるということがある。これらを聞いて上げるのが、愛情と言えば愛情である

・虫の好かない女、虫の好かない男と結婚すれば、毎日「虫の居どころが悪く」、時には「虫酸が走る」思いをしなければならない。いずれにしても、私たち人間の中には虫が棲んでいる。「好き嫌いの感情」を決めるのは、この「虫」である



お金がないと、「世捨て」もできないというもの。それならば、世に媚びない範囲で稼ぎ、節約しながらも、潔く生きていくというのが著者の考え方です。その生き方には、相当な強い意志と覚悟が必要です。

現代社会で「世捨て」をして生きていくのは、贅沢することよりも難しいことなのかもしれません。


[ 2013/07/02 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(0)

『図解スイス銀行―究極のプライベートバンク』永井 隆昭、楠本博

図解スイス銀行―究極のプライベートバンク図解スイス銀行―究極のプライベートバンク
(2010/06)
永井 隆昭、楠本 博 他

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以前、スイスの地方に行った時、駅前の銀行店頭に、自動通貨交換機がありました。1万円札を入れたら、スイスフランが自動的にサッと出てきたのに驚きました。ドルならわかりますが、円にも対応しているところが凄いところです。

また、スイスのテレビで、日本株式の個別銘柄の終値が放映されているのにも驚きました。スイスのお金に対する考え方、投資に対する考え方は日本と相当違うようです。その代表的なものが、スイスのプライベートバンクです。

本書は、スイスのプライベートバンクについて、図入りで詳しく解説した内容になっています。日本と違う見所満載の書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・スイスの銀行を大別すると「州立銀行」「大銀行」「地方銀行」「貯蓄銀行」「組合銀行」「個人銀行」に分けられ、その総数は327行。そのうち、「個人銀行」(パートナーシップ制による資産運用業務が中心)はたったの14行。スイスの銀行から見ると数%しかない

・プライベートバンキングは、スイスの銀行が担う重要な役割。個人銀行ならずとも、巨大銀行でも、全収益の3分の1をプライベートバンキングが占める。一説によると「世界の個人資産の3分の1がスイスで運用されている」とも言われている

・スイスの大銀行は、預金や貸出といった業務だけでなく、社債、株式発行、証券売買の仲介引受、投信、投資顧問など、金融、証券、保険等の分野で活動を展開している

・スイスの銀行には「秘密保持」の原則がある。銀行員には、医師、弁護士、裁判官などと同様に、秘密を外部に漏らしてはならないという「守秘義務」が課せられる

・スイスへの外資流入の大きな要因は、「金準備が豊富」なこと。スイス国立銀行法には「金準備は銀行券発行高の少なくとも40%相当額で、国内にあるもの」と明記されている

・1572年フランスのサン・バルテミルミーの虐殺(新教徒狩り、犠牲者5万人)で、大量の難民が、多くの金と財産を持ってスイスに逃れてきた。事業家や銀行家も多く含まれていて、その難民がスイス繁栄のきっかけとなった

・スイス人の関心は「商売」にあった。商売のためにならないということで、「封建制」に反対し、「専制主義」や「中央集権国家主義」「社会主義」に反対した。だから、革命もほとんど起こらず、戦争に至ることもなかった

・「スイスの輸出品は人間」と言われた時代があった。貧しい農村の人減らしに、ヨーロッパの軍隊に傭兵として輸出され、その期間は500年、人数は延べ200万人に及んだ

・スイスの個人銀行の主な特徴は、「広告宣伝は避ける」「一度取引が始まると一生涯続き、さらに何代も続く」「顧客が多過ぎるとサービスがおろそかになる」という考え

・スイスの銀行、ことにプライベートバンクでは、郵便物に自分の銀行名やアドレスは書かない。郵便物が万一開封された場合、顧客の「秘密」がなくなってしまうから

・スイスの銀行員は、まず海外の銀行に行って、言葉と腕を磨き、スイスに帰ってくるというパターンが多く、広い世界観を持った銀行マンとしての知識と技術をもって初めて一人前とされる。その転職の多さ行動範囲の広さは、日本の銀行員の比ではない

・スイスでは金融が重要な産業になっている。その収益は、スイスの実質総生産高の11%以上。金融産業に働く20万人という数は、総就労者数の6%を占めている

・スイスのプライベートバンクでは、金融資産で、「豊か(1000~3000万円)」「裕福」「富裕(1~5億円)」「特段な資産家」という言葉でランク分けしている。対象としている層は、1億円以上の貯蓄を所有している富裕な個人顧客

・プライベートバンクの顧客のほとんどは資産家であり、その多くは相続で悩んでいる。したがって、その相談に乗るのが、プライベートバンクの最も大きな業務

・日本とフランスの資産家はよく似ている。官僚や学閥が強く、相続税が高いという類似点を踏まえ、「自分からは資産家と言わず、また、そういうふうに見せないし、見えない」

・スイスのプライベートバンクの伝統的運用手法は「国際分散投資」。リスクを分散させることが最も大切という考え方であり、100年以上にわたって培ったノウハウがある

・スイスのある銀行の「資産を失わないルール」は「1.浪費しない」「2.革命等、社会制度の急変に備える」「3.詐欺にあわない」「4.資産を特定の株式に集中しない」「5.インフレ時に現金、預金など保守的資産に集中しない」「6.重い相続税に備える」



日本とスイスでは、歴史も違うし、文化も人口も違います。しかし、マイノリティ国家が豊かに生きる道として、スイスは参考になる点が多いように思います。

本書は、スイスの金融面だけを掘り下げた本ですが、日本の生きる道が隠されているように感じました。


[ 2013/06/18 07:00 ] お金の本 | TB(0) | CM(2)