とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『ブラック企業・日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
(2012/11/19)
今野 晴貴

商品詳細を見る

ユニクロが警告状を出したことで有名な書で、昨年度の大佛次郎論壇賞にも輝きました。そして、著者は「ブラック企業」で、昨年度の流行語大賞を受賞されました。

ブラック企業問題に取り組んでいる著者の渾身の作が本書です。ブラック企業の特徴や手口がよく分かります。それらをまとめてみました。



・耐えきれずに自主退社を余儀なくさせる「ハラスメント手法」に共通するのは、努力をしても罵られ、絶え間なく否定されるということ。人格破壊の巧妙かつ洗練された手法

・若手社員は、苛烈な退職強要、圧迫、加虐のあり様を目にするなかで、恐怖と緊張により、「コスト=悪」「稼いだ奴は何をしてもよい」という価値観を強力に内面化していく

・研修の目的は、技術の向上や社会人としてのマナーを教えることを企図していない。本当の目的は、従順さを要求したり、それを受け入れる者を選抜することにある

・正社員で採用されても選抜は終わらない。店長になって初めて本当の正社員になる。それ以外は、淘汰されていなくなる

・ブラック企業の共通点は、入社してからも終わらない「選抜」と、会社への極端な「従順さ」を強いる点。自社の成長のためなら、若い人材を、いくらでも犠牲にしていく

・ブラック企業は、「固定残業代」「定額残業代」によって、低い給与を多く見せかける。「試用期間」によって、正社員と見せかけ、若者を非正社員として契約させる

・ブラック企業は、解雇の規制を免れるために、社員が「自ら辞めた」形をとらせる

・ブラック企業の「使い捨て」パターンは、代わりがいくらでもいる中で、若者を、安く、厳しく、使い尽くす

・残業代の支払いを免れるように装う場合、「労働者ではない」と言ってしまう。大体、「管理監督者」とされるか、「個人請負」とされるかのどちらか

・日本の大企業の大半で長時間残業が導入され、さらに国家も事実上規制をかけないという状況は、世界的に見れば異様な事態

・選別のために辞めさせるのも、辞めさせずに使い潰すのも彼ら次第。ブラック企業は、「生殺与奪」の力を持っている

・寄せられる相談の一定部分が本人ではなく、両親や恋人など家族の身の回りの肩からのもの。当人が精神的に追いつけられている中で、家族が異変を察知し、相談を寄せてくる

・辞めさせる技術は、主に三つ。「1.カウンセリング形式」(個別面談で抽象的な目標管理を行い、反省を繰り返させる)。「2.特殊な待遇付与」(みなし社員、準社員、試用期間など、辞めることを前提とした呼称を設ける)。「3.ノルマと選択」(過剰なノルマを課す)

・ブラック企業の所業の結果、若者の不本意な離職が増加。大卒就職者57万人のうち早期退職者(3年以内)が20万人。無業、一時的な仕事に就いた者、中途退学者も含めると、学校から雇用へと円滑に接続できなかった若年者は41万人で、52%を占める

・ブラック企業は、日本の有効な資源を消尽し、自分たちの私的利益に転換している。特に若者のうつ病の増加と少子化はこれに当てはまる

・日本企業の「命令の権利」が際立って強いのは、「終身雇用」「年功賃金」との引き換え

・日本の労働組合には、もはやブラック企業の発生を抑える力はない。日本型雇用の「いいとこどり」を簡単に許してしまう

・採用面接で「環境問題への配慮」「ワークライフバランスへの取り組み」について質問した学生は、全員不採用になる。もはや労働条件について、何も言えない、言うべきでない

・最近流行のキャリアカウンセラーは、「カウンセリング」を受け入れさせるという意味で、マインドコントロールに一役買っている

・ブラック企業の労働の特徴は、「単純化(マニュアル化)」と「部品化」にある

・悪徳な社会保険労務士弁護士が、ブラック企業と労働者との間に介在し、ブラック企業が用いる「パターン」を企業に唱導し、日本型雇用の「悪用」の仕方を説いている



日本型雇用体制においては、新卒採用が優遇され、そこから漏れた人たちは、冷遇されます。その新卒採用において、ブラック企業に引っ掛からないために、情報武装する必要があります。

本書は、ますます手口が悪質になっているブラック企業を見極める手法が記されています。参考になる点が多いのではないでしょうか。


[ 2014/08/20 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『プレゼンの極意はマンガに学べ』三田紀房

プレゼンの極意はマンガに学べプレゼンの極意はマンガに学べ
(2013/02/22)
三田 紀房

商品詳細を見る

ドラゴン桜で有名な著者の書を紹介するのは、「ドラゴン桜東大合格をつかむ言葉161」「ここ一番に強くなれ」に次ぎ、3冊目です。

前の二冊は、一般論でしたが、本書は、マンガの技法をもとに、プレゼンについて説くという、具体的なものです。ためになる点が多々あり、それらをまとめてみました。



・プレゼンの本質とは、「赤の他人を味方につける」行為。自らの主張をぶつけ、顧客を説得し、同意を取りつける行為

・マンガの持つ「中毒性」と「わかりやすさ」の秘密を解き明かせば、プレゼンを考える上で、大きなヒントになる

・週刊マンガ誌は「足の速い」商品。クチコミで評判が広がるのを待っている余裕はない。「おもしろいから買う」のではなく、「最新号が出たら買わずにいられない」という熱狂的な固定ファンをつくる必要がある

・物語に大きな謎を残したまま、あと一歩というところで「次週へ続く」と終わらせる。あえて結果を見せないまま、次週へつなぐ。「このあとどうなるんだ!」「早く続きが読みたい!」と思わせ、翌週まで興味を引っ張る

・ラストに持ってくる「引き」が大きければ大きいほど、ドキドキワクワクは高まる

企画立案とは「新規出店」。ショッピングモールに出店する個人商店のようなもの。第一に考えるべきは、競合の回避

・世の中全体の空席を見つけるには、世間のでっかい流れを見て、その逆を張ればいい

・国や時代を超えて、必ず生き残る産業は不安産業。「お金」の不安を穴埋めするのが、銀行や保険の金融業。「健康」の不安を穴埋めするのが医療や健康産業。これらはたびたびマンガの題材になってきた。そして、子育てや将来設計の不安をカバーするのが教育産業

・世間の常識に反旗を翻す暴論には「よくぞ言ってくれた!」というカタルシスがある

・なにかしらの流行に乗っかろうとしたとき、すでにそのムーブメントは終わっている。流行とは残像であり、その残像はすぐさま「恥ずかしいもの」へと風化してしまう

アイデアとは、天から降ってくるものではなく、「そのジャンルの王道に何を掛け合わせるか」という掛け算の賜物

・プレゼンは、「最後のひとコマ=人を惹きつける結論」を設定できるかにかかっている

・人は「謎」を前にすると、答えを確認せずにはいられない習性を持っている。なぜなら、人の心は「答えがない」という宙ぶらりんの状態に耐えられるほど、強くないから

・プレゼンには、埋めるべきピースと、空けたままにしておくべきピースとがある。情報を詰め込みすぎず、あえて説明しない「余白」を意識すること

意外な展開、衝撃的なセリフ、予想もしなかった結末があってこそ、読者は感情の振り子を揺さぶられ、おもしろいと感じる

・何でもない日常に驚きを演出するには、登場人物にむちゃくちゃなことをさせればいい

・「毎回決めゼリフがある」「顔がデカい」「多彩な比喩表現を駆使する」のは、プレゼンに応用可能な原則

・マンガとは省略のメディア。場面を省略し、動きを省略し、セリフを省略し、背景を省力していかねばならない。省略こそがリズムを生み、読みやすさを生む

・全18ページの作品ならば、最初に4つの大ゴマを考え、「起」のコマを2ページ目に、「承」のコマを8ページ目に、「転」のコマを12ページ目に、「結」のページを18ページ目に置いてみて、パズル感覚で考える。構成とは、「大ゴマの配置を考える作業」のこと

・自分のプレゼン資料を受け取ったクライアントが、「捨てたくない」「ずっと手元に置いておきたい」と思わせる工夫が必要。所有欲をかき立てるものでなくてはならない

・プレゼンの禁止事項は「負けを認めること」。最後まで強気な姿勢を貫かないといけない。プレゼンの根底には、挑戦者としての「熱」が必要。プレゼンで試されるのは「本気度



毎回、毎回が勝負の週刊連載だからこそ、上記のような発想が出てくるのだと思いました。

プレゼンも、一回一回が勝負です。そのために、どういう作戦を立てるかが重要です。本書は、その援けに大いになるのではないでしょうか。


[ 2014/07/09 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『マイクロものづくりはじめよう』三木康司・宇都宮茂

マイクロモノづくりはじめよう ~「やりたい! 」をビジネスにする産業論~マイクロモノづくりはじめよう ~「やりたい! 」をビジネスにする産業論~
(2013/04/12)
三木 康司、宇都宮 茂 他

商品詳細を見る

脱下請けのモノづくり、ワクワクできる中小企業のモノづくりを目指す書です。

本書には、大企業出身の著者が、中小企業にモノづくりの喜びを見つけた数々の内容が記載されています。それらの一部をまとめてみました。



・図面からすぐに思いつくようなキーワードをググっても(Google検索しても)、希望にかなった工場が簡単に見つけられない。そこでぼくたちの出番

・高付加価値のモノをマイクロ生産(少量生産)し、マイクロ消費(少量消費)していく。「マイクロモノづくり」はそんな時代の産業論

・大企業のサラリーマンの多くは、いわば「上司の下請け」のような仕事をしている

・「大企業の下請け企業」でも「企業における上司の下請け社員」でも、下請けはデメリットばかりではないが、無視できないリスクがある。いったん大口の顧客である大企業や上司からの発注が減ると、そこからの仕事に依存してきた分、苦しい立場に立たされること

・依存することに慣れてしまった下請け会社の経営体質、上司の言いなりに慣れてしまった生き方は、簡単に変えられない。非現実的な価格提示無茶な仕事の指示に対応せざるを得ない。そして、徐々に体力を消失し、最後は倒産の危機や、リストラの危機を迎える

・「下請けマインド」とは、「独立自尊」の経営方針ではなく、大手企業の下請けとして、その取引先の要求に最適化し、応えていくことを最優先する中小企業の経営方針

・借金でスタートすると、「マイクロモノづくり」はうまくいかない。それは、自分が欲しいモノをつくりたいという志で始めたはずなのに、資金回収するまでの、売上が立たない期間、借金返済のためのキャッシュを生み出す作業に忙殺されるから

・モヤモヤを感じ、解消しようとすることが、「理念」「目的」「ビジョン」と呼ばれるもの

・多くの人たちの意見を自分の耳で直接聞く。それから「内観」(自分を見つめる作業)に入っていく。内観は一人製品開発会議のような意味を持つ。心の中を見つめ、「自分が本当につくりたいモノ」を心の中に思い浮かべる

・「自社の持っている技術」×「成長している市場」=「儲かる自社製品開発」という単純な計算を当てはめて自社開発を行うことは危険。「本当にやりたいコト(好きなこと・趣味)」×「自社の持っている技術」=「長く持続できる自社製品開発」という考え方が大事

・「ワクワク」を表わす縦軸と「自社(自分)の持っている技術」を表わす横軸が交わる点に、「マイクロモノづくり」の「タネ」である「宝」がある

・SNSを活用した人脈形成で気をつけたいポイントは、「1.短絡的・短期的な目的でつながらない」「2.気の合いそうな人とだけ付き合う」「3.情報発信して、自分が誰なのかわかるようにする」「4.知り合いの数を増やすことを目的にしない」といったところ

・ネットワークにおけるタグ付けとは、いわゆる「ブランディング」である

・自分が存在する「場」、すなわち「居場所」の居心地が悪いと、生きていくのがつらくなってしまうし、生きていけなくなる。自分が存在している「場」に対しても贈与することで、その「場」に存在している全員が恩恵を受けるという「与贈循環」の考え方が大事

・「人脈を求めない」ことが、結果として「人脈づくり」のポイントになっている

・心臓部になるようなパーツが、すでに大量生産されて流通しており、小ロットでも調達できるからこそ、「マイクロモノづくり」は実現できる

・「マイクロモノづくり」では、つくって売るまでを考えて、息の長い計画を立てられるようにしておく。そのためのポイントは、イニシャルコストをいかに下げるかである

・町工場規模のモノづくりが盛んな日本では、米国のモノづくりと比較して、圧倒的に開発期間を短縮でき、技術的な刷り合わせのコストも小さく、ストレスが小さい

・他者に伝えた時、その内容にどれくらいの人が共感したり、面白がったりして、お金を払ってくれるのか?それを探ることを「マイクロモノづくり」的マーケティングとして行わなければならない



やりたいこと、好きなことと、需要のあること、お金になることを合致させようとすれば、自ずと「マイクロモノづくり」となるのではないでしょうか。

この考え方は、単なるモノづくりではなく、生き方そのものと言えるのかもしれません。


[ 2014/05/14 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題』下東史明

あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題
(2012/07/19)
下東 史明

商品詳細を見る

「地図を見る眼」で、発想やアイデアを得る方法が記されている書です。それは、「凝視」「方角」「スケール」「距離」「経路」「目印」「交差点」などの眼です。

それらの眼を使うだけで、頭が活性化していく具体例が数多く載っています。それらの中で、ためになったところをまとめてみました。



・自分探しをするには、自分と関係のあるものを「凝視」することで、自分の中へと自然と深く分け入っていける。「凝視」は情報を取り込む作業。「凝視」は、一点を「長く」見据えることに始まり、その「長さ」に比例して、対象の情報を取り込める

・表面を「見た」「眺めた」で止まらず、「凝視」を利用してみること

・本を読むだけで、自分以外の人が立っている場所に立つことができ、著者が切り開いた新しい視界を味わうことができる。古典には「立場」を超えた共感や感動、時代を超えた理解などの要素もある

・自分のことを「あの人」と呼んでみると、いつもの自分から離れた視野を手に入れることができる。ひいては他人の「立場」に立つことができるように思われてくる

・「立場」という思考法も、「凝視」と同じく、使おうと意識しないとなかなか使えないし、効力も発揮しない

・ブレることのない縦軸と横軸を設定することができれば、「方角」が出現する

・「方角」は2つの軸の組み合わせなので、この「方角」あまり面白くないな、ありきたりだな、と感じたときは、別の2つの軸から「方角」をつくっていく

・「方角」は現在地を教えてくれるだけでなく、どこに向かって進むべきか、目的地を分かりやすくしてくれる

・他人の批判や意見に揺らいでしまうのは、自分の歩いている「方角」に自信がないとき

・フロンティアになる、なりそうな「分野」を小まめに観察すると、将来の「争点」を発見することができる

・「2位」という思考法は、見晴らしをよくしてくれる。「1位」の存在に隠れて忘れがちなものにスポットライトを当ててみること

・数字を照らし合わせてみることは、「スケール」という思考法の応用

・「距離」が遠いものは、手間もかかり、ときには迂回も必要で、どうしても時間がかかるが、「急がば回れ」は妥当することがある

・頭の中を歩くにも、自分の頭の中に「目印」があれば便利だし、「目印」を手がかりに目的地に辿り着ける。つまり、思い出せる

接続詞という言葉は、心強い「目印」になる。接続詞に注意して文章を読むと、理解が速くなる

・「目印」は街中、頭の中、日常生活の中で、目的・目標となるものへ導いてくれる、近づきやすくしてくれる思考法

・日本人はいろんなものを「交差」させるのが好き。神も仏もイエスさまも区別しないのが日本人の「雑種文化

・「似たもの」を見つけること、「似たもの」の中身を探ること、そこから派生して、「似たもの」に潜む大きな違いや差異を見つけること。それだけでも、かなり長時間、頭の中を歩き回ることができる

・他人の「志向」「嗜好」を知る大きな収穫は、以前より付き合いやすくなること

・実用性に駆られた所有ではなく、趣味として所有する志向や嗜好が、これからの所有の主目的になる。いわゆるコレクターとして、使用価値ではなく、所有価値にこそ意味があるという人が一定数存在している

・「限定」という思考法は、「ストーリー」づくりに有効。テーマやジャンルを「限定」すると、とても話がしやすくなる



著者は、博報堂のコピーライターです。さまざまなCMを手がけ、数々の広告賞を受賞されています。その頭の中を公開しているのが本書です。

クリエイターの頭の中の引き出しが、どう仕切られ、分類されているのかを知ることができる書だと思います。


[ 2014/05/05 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『会社の老化は止められない』細谷功

会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論
(2013/04/05)
細谷 功

商品詳細を見る

著者は、「地頭力を鍛える」の書で、世の中に「地頭」の概念を提唱した工学部系のビジネスコンサルタントです。

その著者が、会社について論じたのが本書です。組織老化の判断方法に関する切り口は非常に参考になります。その一部をまとめてみました。



・会社も人間と同様、生まれた瞬間から老化の一途をたどる。具体的には、「ルールや規則の増加」「部門と階層の増殖」「外注化による空洞化」「過剰品質化」「手段の目的化」「顧客意識の希薄化と社内志向化」「社内政治家の増殖」「人材の均質化・凡庸化」・・・

・老化という不可逆プロセスを不可避の運命として受け入れ、そのメカニズムを理解して「必要な抵抗」はしても「無駄な抵抗」はしないこと

・不可逆プロセスの現象例は、「規則少→規則多」「単純→複雑」「尖った人材→角の丸い人材」「プロジェクト型→ルーチン型」「加点主義→減点主義」「外向き志向→内向き志向」「内製→外注」「中身重視→形式重視」

・人間の老人には、不老不死を信じて永久に生きながらえようとしている人はいないのに、会社に関しては不老不死をほとんどの人が暗黙のうちに信じている

・人間の心理の非対称性「変化に抵抗し、それまでの習慣に固執する」「一度得たものは手放さない」「合理的損得ではなく、リスクの大きさに反応する」「低きに流れる」「手段が目的化する」「縄張り意識を持つ」「近視眼的になる」「自分中心に考える」は老化に貢献する

・官僚的仕事のやり方は、よく言えば「組織立って仕事をしている」となるが、悪く言えば、「縄張り主義(横方向)と権威主義(縦方向)」ということ

既得権は、もともと持っていなければ何とかなるのに、「一度持ったものを手放すのは非常に難しい」という人間の心理の普遍的不可逆性に基づいている

・「ほうれんそう」はあくまで手段。本来「そう(相談)」において創造的な活動がなされるべきだが、多くは「ほう」と「れん」で終わってしまう

・会社は徐々に「性善説」から「性悪説」へと変わっていく。つまり「従業員を信用します」というスタンスから「信用しません」というスタンスへと変わっていくということ

・会社が大きくなって従業員が増えれば増えるほど、その質的分布が「少数の優秀な尖った社員」から、「大多数の普通の社員と少数の優秀でない社員」という「標準的分布」へと近づいていく

・言いだしっぺが失敗し、「それみたことか」と言われ、言いだしっぺがますますいなくなるという負のサイクルへと入っていく。万が一成功しても、「結果の平等」を旨とする老化した組織では、妬みを買いやすく、足を引っ張られるのがオチ

・ブランド力を高めれば、社員の依存心は増し、集まってくるのは「ブランド力に惹かれた人材

・「大学生の人気就職先ランキングの上位になったら、その会社は落ち目」と言われるが、その原因の一つが、ブランドのジレンマ

・「凡庸な人間は自分の水準以上のものには理解をもたないが、才能ある人物はひと目で天才を見抜く」(コナン・ドイル)

・「イノベーション型人材VSオペレーション型人材」は、「事例は真似しないVS事例を真似する」「利益は再投資VS利益は分配」「確率論的VS決定論的」「リスクはあって当然VSリスクは最小化すべし」「未来志向VS過去志向」「機会の平等VS結果の平等」など

サービスビジネス指標は、1.「純粋な製品」→2.「製品優先(サービスはコストセンター)」→3.「製品優先(サービスはプロフィットセンターだが赤字)」→4.「サービス優先(サービスだけで黒字)」→5.「純粋なサービス」

会社の子離れ、子会社の親離れが世代交代を実現する

・子供が独り立ちできるまでは、経済的にも教育的でも親が面倒を見るが、目標は「一人で生きていけるようにする」こと。これが、会社では「いつまでも親が抱え込んで子供の分まで吸い上げる」という構図になっていることがほとんど



会社の老化は止めようがないのかもしれません。しかし、予防と管理で、長生きさせることは可能なように思います。

その処方箋が本書に記されています。著者は、会社の「名医」のような方ではないでしょうか。


[ 2014/04/02 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『サイゼリヤ革命』山口芳生

サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
(2011/08/27)
山口芳生

商品詳細を見る

サイゼリヤは、年に数回利用しますが、無駄が少ない外食チェーンの印象です。その理由が、本書を読み、分かりました。創業者の会長は、理学部物理学科卒ですし、大学理系を積極的に採用している会社だからと察しました。

何かとブラック企業が話題になる外食業界にあって、サイゼリヤは、根性論を排し、合理的、科学的な経営を行っています。理系頭の人たちが、考え抜いたレストランです。本書に、その興味深い内容が記されています。その一部をまとめてみました。



・頭の中には、あるべき価格があって、それに近づけたいが、力がないと、それができない。値段をもっと下げようとすると、客単価が下がるとか、客数が伸びるのかと、みんな言うけど、そんなの考えていない。頭にあるのは、財布に負担のかからないイタリア料理

・ミラノ風ドリアを値下げしたのは、それが一番売れているから。一番売れているということは、一番喜んでもらっているということ。それを、もっと安くすれば、もっと喜んでもらえる。サイゼリヤにおける価格引き下げは、あるべき姿に至る道程

・「安くておいしいものを出すことが一番の社会貢献」というのが、サイゼリヤの考え

・心を込めて作っているから高くていいなんて、お客さんは思っていない。お客さんに一番よくわかるのは価格であり、安いというのは本当に大切なこと

・不思議なことに、外食産業には「おいしさ」の定義がない。おいしさを科学としてとらえているレストランはない

・おいしさとは、客数が増えること。その商品に価値を感じるのなら、たくさん売れるし、そういう商品が揃っていれば、客数が増える

・労働分配率50%、社員に年間500万円の給料なら、1人年間1000万円の粗利益高。年間総労働時間2000時間なら、人時生産性は5000円。あるべき人時生産性の設定がスタートライン。これを実現するために、観察・分析・仮説・検証を科学的手法で繰り返した

・作業が人の手によるローテクである限りは、「数量化とは、関節をどれだけ曲げるのか、何回曲げるのか、動く距離はどれだけあるのか」ということを観察し、数値に置き換えていくことになる

・店舗にビデオカメラを設置し、従業員の動きを撮影し、すべての作業を洗い直した。熟練者と経験の浅い従業員の作業の手際を分析し、これまで平均1時間かかっていた開店前の清掃作業を30分に短縮するなど、効率化を実現した

・人間はなかなか正しく生きられない。だから、ビジネスを通じて正しく生きているのかを常に考えていくことが大事になってくる。ビジネスを道具にして自分を鍛えていきたい

・「理念はとにかく言い続けろ、犬猫にでも言え」、人間は弱いところがあるから、人に言い続けていないと、自分自身がブレてしまう

科学的思考能力のある人間を採用するのは、一つに、能力の高さゆえ、ボカを起こす確率が低くなるから。もう一つは、彼らが改善点を発見した場合、それを数字に置き換えることができるという点。明確な数字が指標としてあれば、改善の効果も明らかになる

・サイゼリヤのスカウトの特徴は、メーカーの生産管理技術者を集めている点にあり、外食業が行っているような同業他社からのスカウトは一切しない

・世の中は原因があって結果があるという因果関係で成り立っている。さらに、その結果が原因となって結果を生み、その結果がまた原因になる。世の中は変化しながら先に広がっているわけで、これは宇宙が膨張しているのと同じこと

力とは何かと考えると、それは努力ではないか、と気づいた。努力をすると物事は動くが、努力を止めてしまうと止まったまま

・人が避けたいと思うことや嫌がることに真理があり、最高の体験を与えてくれる

・うまくいかないのは欲を出しているから。欲をなくしてあるがままに観察しないと、自然の法則は見えてこない。原理原則から言えば、価格と品質、そして便利さが揃っていなければ、売れない



会長を初め、理系頭の経営幹部が多いサイゼリヤの経営は、他の外食産業と違い、異質の存在です。

数学的、科学的な考え方は、世界共通です。そういう意味で、今後、サイゼリヤは、アジアを初め、世界を席巻していくのではないでしょうか。


[ 2014/03/12 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(1)

『なぜ「あれ」は流行るのか?-強力に「伝染」するクチコミはこう作る!』ジョーナ・バーガー

なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!
(2013/09/26)
ジョーナ・バーガー

商品詳細を見る

本書は、クチコミについて研究した本です。マスコミよりも効果の大きいクチコミについて、どのような方法で伝えたらいいかが記されています。

一般的に見落とされがちなことが、クチコミには意外にも有効ということがあるようです。それらの一部をまとめてみました。



クチコミを生み出す6原則。「1.それを語るのがカッコイイ」「2.あるきっかけで思い出せる」「3.良くも悪くも気になる」「4.目に見える」「5.役に立ちそう」「6.語りたくなるストーリーがある」

・クチコミは、あらゆる購買判断の20~50%に影響を及ぼす主要因

・従来型の広告よりもクチコミのほうが効果的な理由は二つ。一つは、クチコミにより説得力がある点。もう一つの理由は、クチコミのほうが、ターゲットがより絞られている点

・クチコミは、そもそもが関心のある相手に向けて発信される。その情報を知らせるためにふさわしい相手だけを選んで話すのが普通

・サルまねという言葉は、ただ単に人間の模倣癖を指摘しているのではない。目に見えなければ、何かを模倣することは難しい、ということを意味している

・人は他人の役に立つのが好き。したがって、その商品やアイデアがいかに時間の節約や、健康、倹約に役立つかを示せば、話を広めてもらえる

・人々はただ情報を共有するのではなく、物語を伝える。物語は、道徳や教訓といったものを運ぶ容れ物。情報はどうでもよさそうな話の裏側で伝達される。だから、商品やアイデアを、人々が話したくなる物語の中に組み込むことが必要

秘密にすべきことほど、人は話してしまう傾向が強い

奇抜さは話が大きくなっていく過程で重要。人から人へと話が伝わるうちに、ある部分は消えていき、別の部分は誇張されていく。そして、話がだんだん大きくなって、広がっていくにつれて、奇抜さはどんどん増していく

希少価値と限定価値は、人々をインサイダー気分にさせることで、クチコミを促す

・人は金銭の見返りがなくても意欲的になる。さらには、人に何かをしてもらうためにカネを払ったとたん、払われた側の内発的動機づけはかき消されてしまう

・人は面白いから、役に立つからという二つの理由で、情報を共有する。面白い情報は、それ自体が楽しめるうえ、それを伝えた人の印象を良くする。同様に、役に立つ情報を伝えれば、相手の手助けもできるし、伝えた側の印象も良くなる

・健康や教育に関する記事は、よく共有される

怒りやユーモアのレベルが高いほうが、共有される確率が高い。感情をかき立てることが伝染のカギとなる。生理的覚醒によって、人は会話し、共有するから、人を興奮させたり、笑わせたりする必要がある

・他人が実際にやっていることを目にする機会がなければ、その行動をまねるのは難しい。だが、より観察可能な状態にすれば、まねもしやすくなる。人の目に触れるように作られたものは、人気を呼ぶために作られたも同然

・商品やアイデア、行動は、使われたり、実行されたりするときに自らを宣伝する

・ほかの人に伝えるだけの値打ちがあるのは実用的な価値。その代表が、カネの節約。値下げ幅の大きいものの情報を共有したがる

・セール品の表示は需要増加につながる。「セール品」と表示した商品の売上は、表示していない同じ商品の売上を50%以上も上回る

・クチコミを生み出そうとする際に、話題にしてもらうことにこだわるあまり、人々が何について話しているかという一番大切な部分を見失う。だから、売り込みたいだけの商品やアイデアと無関係なコンテンツを作ってしまう

・社会的伝染は一握りの特別な影響力の強い人々によって引き起こされるというよりも、商品やアイデアそのものの力によって勢いづく



宣伝広告費がなければ、クチコミを上手く利用するしかありません。そのためには、クチコミされるような商品を持つことです。それを考えるのに役に立つ書です。

クチコミは、組織の中やチームの中で、自分の地位を高めていくのにも役立ちます。自己PRを上手くするいうのは、人生のさまざまな局面に応用できるのではないでしょうか。


[ 2014/02/26 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『業界のセオリー・ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵』鹿島宏

ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリービジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリー
(2010/07/21)
鹿島 宏

商品詳細を見る

さまざまな業界で言い伝えられてきた言葉をコンパクトに載せている書です。

業界外でも、それらのノウハウを知れば、納得できることが多く、参考になります。その一部をまとめてみました。



・「ヒット商品は多数決から生まれない」(飲料業界)。多数決でクセのないものを選ぶよりは、「ものすごく好き」と熱狂的な支持者がいるものを採用すべき

・「人生の3Dがビジネスチャンス」(画商)。オークションの世界では、絵が売りに出されるチャンスは、3つのD「DEATH(死)」「DEBT(借金)」「DIVORCE(離婚)」

・「不況になると鉄道本が売れる」(出版業界)。不況のときはマニアを攻めろ。これは出版以外の業界にも当てはまるセオリー

・「ランドセルは夏から売れ」(ランドセルメーカー)。お盆の帰省で、祖父母が孫に会う機会を狙う。子供には「シックス・ポケット」(両親、祖父母4人の合計6人)の財布がある

・「棚には赤と緑の商品を交互に置け」(スーパーマーケット)。マグロの刺身が緑の大葉を添えるのは、赤と緑がお互いを引き立てる効果のある「反対色」だから

・「金持ちは貧乏人から物を買わない」(宝石商)。富裕層は、流行に流されない。不特定多数の人と群れることなく、少数の富裕層仲間の間で交わされる口コミ情報を信用する

・「商品の色は3色に絞れ」(商業デザイナー)。採用する色が3色を超えると、色と色がぶつかり合い、途端にイメージがはっきりしなくなる

・「急な仕事ほど忙しい人に頼め」(出版業界)。忙しい人ほど、時間の使い方がうまく、すきま時間を上手に利用して、期限通りに上げてくれる

・「女性誌がマネー特集を組むと相場が下がる」(証券業界)。過熱した相場は下がり始めるから、この時期に高値づかみをして大損することを投資家たちは熟知している

・「アイデアは馬上、枕上、厠上でやってくる」(商品企画)。中国北宋、欧陽脩の言葉に「三上」がある。名案は「馬上(移動中)枕上(就寝中)厠上(排泄中)」に浮かぶという意味

・「発想はポジティブに、詰めはネガティブに」(広告業界)

・「セレブの名前は自然に伝わる」(サービス業界)。セレブな人から贔屓にされている話は、さりげなく伝えるだけで、評判は勝手に伝わっていく

・「大安はホテルにハンドルを切れ」(タクシー業界)。優秀なドライバーは、毎朝、天気だけでなく、暦もチェックする

・「お客は、靴と時計で見抜け」(ソムリエ)。ソムリエは、高級な靴を履いている客には、少し高めのワインを、繊細で個性的な時計をしている客には、複雑なワインを出す

・「会釈、敬礼、最敬礼」(キャビンアテンダント)。15度頭を下げるのが会釈、30度が敬礼、キャビンアテンダントは最敬礼の45度でお客を迎える。お辞儀の速度「1、2、3、止め、5、6、7、8」は、3秒間で頭を下げ、1秒間止め、4秒間で頭を戻すという意味

・「ユーザーの悩みは、ヒット企画を生む」(出版業界)。悩み相談に投稿された悩みから、多かった悩みを割り出し、それを解消するノウハウを特集すると、その号は必ず売れる

・「沈黙は、住んでいる土地の話で破れ」(美容業界)。始めてのお客に、何を話したらいいか悩んだら、「どちらにお住まいですか?」と質問すれば、会話がスムーズに運ぶ

・「連絡はメールで、頼みごとは電話が早い」(ウエブ業界)

・「安易な謝罪は訴訟に通ず」(証券業界)。証券マンが顧客にすすめた株が暴落するなんて日常茶飯事。謝っていては身が持たない。銀行でも、責任の言質をとられる軽率な言動を慎むよう教育される

・「転職は在職中にせよ」(人材業界)。在職中なら余裕があるため、不利な条件を出した企業に対して強気で交渉できる。失業中だと、気持ちがあせり、面接もうまくいかない

・「市場価値を上げたいなら、異業界に転職せよ」(人材業界)。同じ職種、同じ業界のほうが、市場価値が上がると考えがちだが、異業種だからこそ、オンリーワン人材になれる



ビジネスの世界は、損得に密着しているだけに、思わず耳を傾けてしまいました。

業界の如何を問わず、「ビジネスの知恵」になります。まさに「業界の格言集」のような本でした。


[ 2014/02/19 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『和解する脳』池谷裕二・鈴木仁志

和解する脳和解する脳
(2010/11/17)
池谷 裕二、鈴木 仁志 他

商品詳細を見る

脳科学者と法律家の対談共著です。人はなぜ争うのか、どう和解していくのか、これを脳科学によって、検証しています。

人と人との軋轢、互恵、不和、利己、利他、愛情など、興味深い人の言動の数々を知ることができます。それらをまとめてみました。



・科学は基本的に帰納を排除するが、司法の現場では、帰納をすごく重要視する。人間は、ほとんど癖と言っていいくらい、帰納が大好き。でも、科学は帰納をやるとミスる。演繹のほうが100%正しい(池谷)

・多くの人は、科学者は仮説を証明するために実験していると勘違いしている。本当は、仮説を否定するために実験をしている。「反証可能性」こそが科学の大前提(池谷)

・刑事裁判は「実体的真実」を追求する。本当に何が起こったのかを調べる。けれども、民事裁判は「形式的事実」でいい。実は違うかもしれないが、両当事者がそうだと認めた場合、それが真実ということで進む(鈴木)

・記憶は後からも作られるという意味で、「理屈」は、人を説得したり、自分を納得させたりする点で、嘘や作話に近い面があり、本能をねじ曲げる側面がある(鈴木)

・言っていることが真実かどうか見極めるには、証言に立ってもらって、反対尋問を受けてもらう必要がある。その記憶が実際にその人自身の体験から出たものかを質問して、その反応、言葉のスムーズさ、表情などを直接確かめないと、なかなかわからない(鈴木)

・和解を進めるには最初、共感と受容が有効。とにかく喋るだけ喋ってもらい、こちらはとことん聞くことに徹する。医者が患者に汗をかかせて熱を下げるようなイメージ(鈴木)

・受容がある程度進んだところで、理性や思考といった「理」の部分を使う段階に入る。弁護士の仕事を、共感や癒しの部分だけで解決するのは難しい。「理」は、弁護士の切り札。これをいつ、どのタイミングで、どんな表現で切るかが重要(鈴木)

・心が落ち着いてから、客観的な情報を教えられると、素直に受け入れられる。例えば、煙草を吸っている人に「煙草を吸うな」と言えば、相手はムッとするが、「ここでは法律上煙草を吸えないはず」と言えばいい(池谷) 紛争解決規範としての法は有用(鈴木)

・人間は妙なところに快感がある。食欲を満たすのも、寝るのも快感だが、それ以外に特有の快感がある。達成感も快感だし、お金を使うのも快感。お金をもらうだけでなく、使うのも快感。そういう点を考えずに、人間の営みは理解できない(池谷)

・「経済合理性」は一見すると、「理」(理性)の問題のように感じるが、本質的に「情」(感情)の問題。なぜなら、経済合理性というときのその合理性の基準が、人や社会によって全然違うことがよくあるから(鈴木)

・金銭の話は、経済合理性の問題のように考えられがちだが、結局、快不快、好き嫌いの問題に行き着く。お金は「約束」でしかない。それだけでは、単なる期待。最終的に「快」に変換されないと意味がない(鈴木)

・「金をくれてやる」「恵んでやる」といった優越感の表現では、相手の感情を逆撫でし、大金でも受け取られない。反対に、愛情や謝罪の意味を感じれば、お金を受け取る。つまり、お金の裏にある「情」の部分の意味合いが、行動決定に大きな影響を与える(鈴木)

・関係が濃ければ濃いほど、その中で積もり積もった不快感が爆発するということはよくある。親子なんだから、兄弟なんだから、友達なんだから仲良くしなさいといっても、紛争解決にはつながらない。近い関係であればこその葛藤がある(鈴木)

・決断するとき、決断したあとにも、うまい言い訳を探すこと。「こういう理由だからしかたがない」「この理由なら文句はつけられない」と納得できる論理に乗ること(鈴木)

・マネーは、いろんな「快」と交換できるので、無限の欲望が生まれてくる。ここが他の欲求と「金銭欲」の違うところ(鈴木)

・通貨の発行量・流通量は慎重にコントロールされているから、実は有限に近い。その有限のお金をみんなで奪い合う。捕った人がいれば、奪われている人もいる(鈴木)

・規制って、簡単に言えば、福祉ということ。規制には、社会の害悪を防ぐための自由の制限と弱者救済のための強者の経済的自由の制限の二つがある。自由には内在的な制限や社会的責任が伴う。規制を緩和すれば、世の中がよくなるというものではない(鈴木)



社会における人々の紛争を解決する手段が法律です。その法律の有用性を高めるには、脳を知る必要性があります。

法律だけでなく、個人的な揉め事、言い争いなどの解決ルールにも、本書は役に立つのではないでしょうか。


[ 2014/02/05 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。』千田琢哉

あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。
(2012/08/18)
千田 琢哉

商品詳細を見る

何とも長ったらしくて、冷徹な感じのする本のタイトルです。人間関係というものを客観的に、現実的に見ているようにも感じます。

人間関係を「先輩・上司」「同期」「後輩」「顧客」「友人」「恋人」「親族」に分けて、それらの付き合いを本当はどうすればいいのかのヒントが得られる書です。その一部をまとめてみました。



・誰も耳にとめない窓際の先輩社員のつぶやきをアタマの片隅に焼きつけて仕事をする。挫折知らず、出世コースまっしぐらのエリートより学ぶことは多い。窓際の先輩は予言者

・怒鳴り散らす上司を怖がるのではなく、上司が何を怖がっているのかを考える。怒鳴っている人は、怒っているのではない。怖がっている

・「嫌なヤツだ」と思う人ほど、その逆の姿を想像して接する。いつもペコペコして頼りない上司に限って、家では亭主関白。人は精神的にバランスをとらなければ生きていくことはできない

・自発的に挨拶する先輩社員をチェックしておく。そういう人ほど世の中に影響を与えていく。自ら挨拶する先輩は将来の重役

・机の上にモノが少ない先輩は決断力の鬼。机の上は言い訳できない生き様。役職者の机にモノがあふれている組織は、決まって業績が低迷している

・自分が媚びている人ほど他人が媚びている姿を毛嫌いする。周囲と一緒に腰巾着をバカにするのではなく、その裏の並々ならぬ努力を認めること。筋金入りの腰巾着は未来の専務

同期会で馴れ合うと不幸になる。成果を上げる人は、同期というちっぽけな枠をはみ出して、社内はもちろん社外に目を向けて切磋琢磨する人生を望む

・社内で友情を求めてくる同期は遠慮なく切っていい。友情とは、成果を上げながら育んでいくもの

・熟慮する優秀な人がチャンスを逃す。本気とは、圧倒的なスピードと具体的な行動のこと

・メジャー部門に配属された同期は落ちこぼれ。マイナー部門だからこそ、その実績が一層際立つ

・自分が会社から受けている恩恵をすべて棚卸ししてから独立を考える。あなたを尊敬する後輩は、あなたが独立したら離れていく

大嫌いな顧客の財布から給料の一部が出ている。今日の晩御飯を昨日会った顧客の顔を浮かべながら食べる

・無反応な顧客の本音は「早く目の前から消えてくれ」。「ダメだこりゃ」と思った商談は、早々に切り上げる

・会社で独りぼっちの人には生涯の親友がいる。独りで黙々と努力する人はまもなく親友と出逢う

・あなたが落ちぶれたとき、手を差しのべてくれる人は、友人ではない。落ちぶれても歯を食いしばって一人でがんばっていると、まもなく真の友人が現れる

・「アイツ、成功して変ったよな」。友人が成功した途端、こんなことを言い始める。欠点が目立ち始めるのは、成長しているから

・本当の人脈は切っても切れない。真の友人とは「にもかかわらず追いかけて来てくれる人」

・一度「うちの子自慢」に関わると、20年以上苦労する。我が子はみなかわいく、他人の過小評価と自分の過大評価の象徴

・レスポンスの遅い人がドタキャンする。レスポンスが遅くてドタキャンする人は、本当は誘わないでもらいたいのに、いい人だから自分から言い出せない。ドタキャンの犯人は、その人を誘ったあなた。誘ってほしくなさそうな人は勇気を持って誘わない



常識と思われていることが、実はそうでないことがよくあります。本書は、そういう常識について、疑問を投げかけている書ですね。

時代や所が変われば、常識も変わります。人間関係の常識を問い直すのに、最適の書ではないでしょうか。


[ 2013/12/16 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)