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『ブラック企業・日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
(2012/11/19)
今野 晴貴

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ユニクロが警告状を出したことで有名な書で、昨年度の大佛次郎論壇賞にも輝きました。そして、著者は「ブラック企業」で、昨年度の流行語大賞を受賞されました。

ブラック企業問題に取り組んでいる著者の渾身の作が本書です。ブラック企業の特徴や手口がよく分かります。それらをまとめてみました。



・耐えきれずに自主退社を余儀なくさせる「ハラスメント手法」に共通するのは、努力をしても罵られ、絶え間なく否定されるということ。人格破壊の巧妙かつ洗練された手法

・若手社員は、苛烈な退職強要、圧迫、加虐のあり様を目にするなかで、恐怖と緊張により、「コスト=悪」「稼いだ奴は何をしてもよい」という価値観を強力に内面化していく

・研修の目的は、技術の向上や社会人としてのマナーを教えることを企図していない。本当の目的は、従順さを要求したり、それを受け入れる者を選抜することにある

・正社員で採用されても選抜は終わらない。店長になって初めて本当の正社員になる。それ以外は、淘汰されていなくなる

・ブラック企業の共通点は、入社してからも終わらない「選抜」と、会社への極端な「従順さ」を強いる点。自社の成長のためなら、若い人材を、いくらでも犠牲にしていく

・ブラック企業は、「固定残業代」「定額残業代」によって、低い給与を多く見せかける。「試用期間」によって、正社員と見せかけ、若者を非正社員として契約させる

・ブラック企業は、解雇の規制を免れるために、社員が「自ら辞めた」形をとらせる

・ブラック企業の「使い捨て」パターンは、代わりがいくらでもいる中で、若者を、安く、厳しく、使い尽くす

・残業代の支払いを免れるように装う場合、「労働者ではない」と言ってしまう。大体、「管理監督者」とされるか、「個人請負」とされるかのどちらか

・日本の大企業の大半で長時間残業が導入され、さらに国家も事実上規制をかけないという状況は、世界的に見れば異様な事態

・選別のために辞めさせるのも、辞めさせずに使い潰すのも彼ら次第。ブラック企業は、「生殺与奪」の力を持っている

・寄せられる相談の一定部分が本人ではなく、両親や恋人など家族の身の回りの肩からのもの。当人が精神的に追いつけられている中で、家族が異変を察知し、相談を寄せてくる

・辞めさせる技術は、主に三つ。「1.カウンセリング形式」(個別面談で抽象的な目標管理を行い、反省を繰り返させる)。「2.特殊な待遇付与」(みなし社員、準社員、試用期間など、辞めることを前提とした呼称を設ける)。「3.ノルマと選択」(過剰なノルマを課す)

・ブラック企業の所業の結果、若者の不本意な離職が増加。大卒就職者57万人のうち早期退職者(3年以内)が20万人。無業、一時的な仕事に就いた者、中途退学者も含めると、学校から雇用へと円滑に接続できなかった若年者は41万人で、52%を占める

・ブラック企業は、日本の有効な資源を消尽し、自分たちの私的利益に転換している。特に若者のうつ病の増加と少子化はこれに当てはまる

・日本企業の「命令の権利」が際立って強いのは、「終身雇用」「年功賃金」との引き換え

・日本の労働組合には、もはやブラック企業の発生を抑える力はない。日本型雇用の「いいとこどり」を簡単に許してしまう

・採用面接で「環境問題への配慮」「ワークライフバランスへの取り組み」について質問した学生は、全員不採用になる。もはや労働条件について、何も言えない、言うべきでない

・最近流行のキャリアカウンセラーは、「カウンセリング」を受け入れさせるという意味で、マインドコントロールに一役買っている

・ブラック企業の労働の特徴は、「単純化(マニュアル化)」と「部品化」にある

・悪徳な社会保険労務士弁護士が、ブラック企業と労働者との間に介在し、ブラック企業が用いる「パターン」を企業に唱導し、日本型雇用の「悪用」の仕方を説いている



日本型雇用体制においては、新卒採用が優遇され、そこから漏れた人たちは、冷遇されます。その新卒採用において、ブラック企業に引っ掛からないために、情報武装する必要があります。

本書は、ますます手口が悪質になっているブラック企業を見極める手法が記されています。参考になる点が多いのではないでしょうか。


[ 2014/08/20 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『プレゼンの極意はマンガに学べ』三田紀房

プレゼンの極意はマンガに学べプレゼンの極意はマンガに学べ
(2013/02/22)
三田 紀房

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ドラゴン桜で有名な著者の書を紹介するのは、「ドラゴン桜東大合格をつかむ言葉161」「ここ一番に強くなれ」に次ぎ、3冊目です。

前の二冊は、一般論でしたが、本書は、マンガの技法をもとに、プレゼンについて説くという、具体的なものです。ためになる点が多々あり、それらをまとめてみました。



・プレゼンの本質とは、「赤の他人を味方につける」行為。自らの主張をぶつけ、顧客を説得し、同意を取りつける行為

・マンガの持つ「中毒性」と「わかりやすさ」の秘密を解き明かせば、プレゼンを考える上で、大きなヒントになる

・週刊マンガ誌は「足の速い」商品。クチコミで評判が広がるのを待っている余裕はない。「おもしろいから買う」のではなく、「最新号が出たら買わずにいられない」という熱狂的な固定ファンをつくる必要がある

・物語に大きな謎を残したまま、あと一歩というところで「次週へ続く」と終わらせる。あえて結果を見せないまま、次週へつなぐ。「このあとどうなるんだ!」「早く続きが読みたい!」と思わせ、翌週まで興味を引っ張る

・ラストに持ってくる「引き」が大きければ大きいほど、ドキドキワクワクは高まる

企画立案とは「新規出店」。ショッピングモールに出店する個人商店のようなもの。第一に考えるべきは、競合の回避

・世の中全体の空席を見つけるには、世間のでっかい流れを見て、その逆を張ればいい

・国や時代を超えて、必ず生き残る産業は不安産業。「お金」の不安を穴埋めするのが、銀行や保険の金融業。「健康」の不安を穴埋めするのが医療や健康産業。これらはたびたびマンガの題材になってきた。そして、子育てや将来設計の不安をカバーするのが教育産業

・世間の常識に反旗を翻す暴論には「よくぞ言ってくれた!」というカタルシスがある

・なにかしらの流行に乗っかろうとしたとき、すでにそのムーブメントは終わっている。流行とは残像であり、その残像はすぐさま「恥ずかしいもの」へと風化してしまう

アイデアとは、天から降ってくるものではなく、「そのジャンルの王道に何を掛け合わせるか」という掛け算の賜物

・プレゼンは、「最後のひとコマ=人を惹きつける結論」を設定できるかにかかっている

・人は「謎」を前にすると、答えを確認せずにはいられない習性を持っている。なぜなら、人の心は「答えがない」という宙ぶらりんの状態に耐えられるほど、強くないから

・プレゼンには、埋めるべきピースと、空けたままにしておくべきピースとがある。情報を詰め込みすぎず、あえて説明しない「余白」を意識すること

意外な展開、衝撃的なセリフ、予想もしなかった結末があってこそ、読者は感情の振り子を揺さぶられ、おもしろいと感じる

・何でもない日常に驚きを演出するには、登場人物にむちゃくちゃなことをさせればいい

・「毎回決めゼリフがある」「顔がデカい」「多彩な比喩表現を駆使する」のは、プレゼンに応用可能な原則

・マンガとは省略のメディア。場面を省略し、動きを省略し、セリフを省略し、背景を省力していかねばならない。省略こそがリズムを生み、読みやすさを生む

・全18ページの作品ならば、最初に4つの大ゴマを考え、「起」のコマを2ページ目に、「承」のコマを8ページ目に、「転」のコマを12ページ目に、「結」のページを18ページ目に置いてみて、パズル感覚で考える。構成とは、「大ゴマの配置を考える作業」のこと

・自分のプレゼン資料を受け取ったクライアントが、「捨てたくない」「ずっと手元に置いておきたい」と思わせる工夫が必要。所有欲をかき立てるものでなくてはならない

・プレゼンの禁止事項は「負けを認めること」。最後まで強気な姿勢を貫かないといけない。プレゼンの根底には、挑戦者としての「熱」が必要。プレゼンで試されるのは「本気度



毎回、毎回が勝負の週刊連載だからこそ、上記のような発想が出てくるのだと思いました。

プレゼンも、一回一回が勝負です。そのために、どういう作戦を立てるかが重要です。本書は、その援けに大いになるのではないでしょうか。


[ 2014/07/09 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『マイクロものづくりはじめよう』三木康司・宇都宮茂

マイクロモノづくりはじめよう ~「やりたい! 」をビジネスにする産業論~マイクロモノづくりはじめよう ~「やりたい! 」をビジネスにする産業論~
(2013/04/12)
三木 康司、宇都宮 茂 他

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脱下請けのモノづくり、ワクワクできる中小企業のモノづくりを目指す書です。

本書には、大企業出身の著者が、中小企業にモノづくりの喜びを見つけた数々の内容が記載されています。それらの一部をまとめてみました。



・図面からすぐに思いつくようなキーワードをググっても(Google検索しても)、希望にかなった工場が簡単に見つけられない。そこでぼくたちの出番

・高付加価値のモノをマイクロ生産(少量生産)し、マイクロ消費(少量消費)していく。「マイクロモノづくり」はそんな時代の産業論

・大企業のサラリーマンの多くは、いわば「上司の下請け」のような仕事をしている

・「大企業の下請け企業」でも「企業における上司の下請け社員」でも、下請けはデメリットばかりではないが、無視できないリスクがある。いったん大口の顧客である大企業や上司からの発注が減ると、そこからの仕事に依存してきた分、苦しい立場に立たされること

・依存することに慣れてしまった下請け会社の経営体質、上司の言いなりに慣れてしまった生き方は、簡単に変えられない。非現実的な価格提示無茶な仕事の指示に対応せざるを得ない。そして、徐々に体力を消失し、最後は倒産の危機や、リストラの危機を迎える

・「下請けマインド」とは、「独立自尊」の経営方針ではなく、大手企業の下請けとして、その取引先の要求に最適化し、応えていくことを最優先する中小企業の経営方針

・借金でスタートすると、「マイクロモノづくり」はうまくいかない。それは、自分が欲しいモノをつくりたいという志で始めたはずなのに、資金回収するまでの、売上が立たない期間、借金返済のためのキャッシュを生み出す作業に忙殺されるから

・モヤモヤを感じ、解消しようとすることが、「理念」「目的」「ビジョン」と呼ばれるもの

・多くの人たちの意見を自分の耳で直接聞く。それから「内観」(自分を見つめる作業)に入っていく。内観は一人製品開発会議のような意味を持つ。心の中を見つめ、「自分が本当につくりたいモノ」を心の中に思い浮かべる

・「自社の持っている技術」×「成長している市場」=「儲かる自社製品開発」という単純な計算を当てはめて自社開発を行うことは危険。「本当にやりたいコト(好きなこと・趣味)」×「自社の持っている技術」=「長く持続できる自社製品開発」という考え方が大事

・「ワクワク」を表わす縦軸と「自社(自分)の持っている技術」を表わす横軸が交わる点に、「マイクロモノづくり」の「タネ」である「宝」がある

・SNSを活用した人脈形成で気をつけたいポイントは、「1.短絡的・短期的な目的でつながらない」「2.気の合いそうな人とだけ付き合う」「3.情報発信して、自分が誰なのかわかるようにする」「4.知り合いの数を増やすことを目的にしない」といったところ

・ネットワークにおけるタグ付けとは、いわゆる「ブランディング」である

・自分が存在する「場」、すなわち「居場所」の居心地が悪いと、生きていくのがつらくなってしまうし、生きていけなくなる。自分が存在している「場」に対しても贈与することで、その「場」に存在している全員が恩恵を受けるという「与贈循環」の考え方が大事

・「人脈を求めない」ことが、結果として「人脈づくり」のポイントになっている

・心臓部になるようなパーツが、すでに大量生産されて流通しており、小ロットでも調達できるからこそ、「マイクロモノづくり」は実現できる

・「マイクロモノづくり」では、つくって売るまでを考えて、息の長い計画を立てられるようにしておく。そのためのポイントは、イニシャルコストをいかに下げるかである

・町工場規模のモノづくりが盛んな日本では、米国のモノづくりと比較して、圧倒的に開発期間を短縮でき、技術的な刷り合わせのコストも小さく、ストレスが小さい

・他者に伝えた時、その内容にどれくらいの人が共感したり、面白がったりして、お金を払ってくれるのか?それを探ることを「マイクロモノづくり」的マーケティングとして行わなければならない



やりたいこと、好きなことと、需要のあること、お金になることを合致させようとすれば、自ずと「マイクロモノづくり」となるのではないでしょうか。

この考え方は、単なるモノづくりではなく、生き方そのものと言えるのかもしれません。


[ 2014/05/14 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題』下東史明

あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題あたまの地図帳: 地図上の発想トレーニング19題
(2012/07/19)
下東 史明

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「地図を見る眼」で、発想やアイデアを得る方法が記されている書です。それは、「凝視」「方角」「スケール」「距離」「経路」「目印」「交差点」などの眼です。

それらの眼を使うだけで、頭が活性化していく具体例が数多く載っています。それらの中で、ためになったところをまとめてみました。



・自分探しをするには、自分と関係のあるものを「凝視」することで、自分の中へと自然と深く分け入っていける。「凝視」は情報を取り込む作業。「凝視」は、一点を「長く」見据えることに始まり、その「長さ」に比例して、対象の情報を取り込める

・表面を「見た」「眺めた」で止まらず、「凝視」を利用してみること

・本を読むだけで、自分以外の人が立っている場所に立つことができ、著者が切り開いた新しい視界を味わうことができる。古典には「立場」を超えた共感や感動、時代を超えた理解などの要素もある

・自分のことを「あの人」と呼んでみると、いつもの自分から離れた視野を手に入れることができる。ひいては他人の「立場」に立つことができるように思われてくる

・「立場」という思考法も、「凝視」と同じく、使おうと意識しないとなかなか使えないし、効力も発揮しない

・ブレることのない縦軸と横軸を設定することができれば、「方角」が出現する

・「方角」は2つの軸の組み合わせなので、この「方角」あまり面白くないな、ありきたりだな、と感じたときは、別の2つの軸から「方角」をつくっていく

・「方角」は現在地を教えてくれるだけでなく、どこに向かって進むべきか、目的地を分かりやすくしてくれる

・他人の批判や意見に揺らいでしまうのは、自分の歩いている「方角」に自信がないとき

・フロンティアになる、なりそうな「分野」を小まめに観察すると、将来の「争点」を発見することができる

・「2位」という思考法は、見晴らしをよくしてくれる。「1位」の存在に隠れて忘れがちなものにスポットライトを当ててみること

・数字を照らし合わせてみることは、「スケール」という思考法の応用

・「距離」が遠いものは、手間もかかり、ときには迂回も必要で、どうしても時間がかかるが、「急がば回れ」は妥当することがある

・頭の中を歩くにも、自分の頭の中に「目印」があれば便利だし、「目印」を手がかりに目的地に辿り着ける。つまり、思い出せる

接続詞という言葉は、心強い「目印」になる。接続詞に注意して文章を読むと、理解が速くなる

・「目印」は街中、頭の中、日常生活の中で、目的・目標となるものへ導いてくれる、近づきやすくしてくれる思考法

・日本人はいろんなものを「交差」させるのが好き。神も仏もイエスさまも区別しないのが日本人の「雑種文化

・「似たもの」を見つけること、「似たもの」の中身を探ること、そこから派生して、「似たもの」に潜む大きな違いや差異を見つけること。それだけでも、かなり長時間、頭の中を歩き回ることができる

・他人の「志向」「嗜好」を知る大きな収穫は、以前より付き合いやすくなること

・実用性に駆られた所有ではなく、趣味として所有する志向や嗜好が、これからの所有の主目的になる。いわゆるコレクターとして、使用価値ではなく、所有価値にこそ意味があるという人が一定数存在している

・「限定」という思考法は、「ストーリー」づくりに有効。テーマやジャンルを「限定」すると、とても話がしやすくなる



著者は、博報堂のコピーライターです。さまざまなCMを手がけ、数々の広告賞を受賞されています。その頭の中を公開しているのが本書です。

クリエイターの頭の中の引き出しが、どう仕切られ、分類されているのかを知ることができる書だと思います。


[ 2014/05/05 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『会社の老化は止められない』細谷功

会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論
(2013/04/05)
細谷 功

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著者は、「地頭力を鍛える」の書で、世の中に「地頭」の概念を提唱した工学部系のビジネスコンサルタントです。

その著者が、会社について論じたのが本書です。組織老化の判断方法に関する切り口は非常に参考になります。その一部をまとめてみました。



・会社も人間と同様、生まれた瞬間から老化の一途をたどる。具体的には、「ルールや規則の増加」「部門と階層の増殖」「外注化による空洞化」「過剰品質化」「手段の目的化」「顧客意識の希薄化と社内志向化」「社内政治家の増殖」「人材の均質化・凡庸化」・・・

・老化という不可逆プロセスを不可避の運命として受け入れ、そのメカニズムを理解して「必要な抵抗」はしても「無駄な抵抗」はしないこと

・不可逆プロセスの現象例は、「規則少→規則多」「単純→複雑」「尖った人材→角の丸い人材」「プロジェクト型→ルーチン型」「加点主義→減点主義」「外向き志向→内向き志向」「内製→外注」「中身重視→形式重視」

・人間の老人には、不老不死を信じて永久に生きながらえようとしている人はいないのに、会社に関しては不老不死をほとんどの人が暗黙のうちに信じている

・人間の心理の非対称性「変化に抵抗し、それまでの習慣に固執する」「一度得たものは手放さない」「合理的損得ではなく、リスクの大きさに反応する」「低きに流れる」「手段が目的化する」「縄張り意識を持つ」「近視眼的になる」「自分中心に考える」は老化に貢献する

・官僚的仕事のやり方は、よく言えば「組織立って仕事をしている」となるが、悪く言えば、「縄張り主義(横方向)と権威主義(縦方向)」ということ

既得権は、もともと持っていなければ何とかなるのに、「一度持ったものを手放すのは非常に難しい」という人間の心理の普遍的不可逆性に基づいている

・「ほうれんそう」はあくまで手段。本来「そう(相談)」において創造的な活動がなされるべきだが、多くは「ほう」と「れん」で終わってしまう

・会社は徐々に「性善説」から「性悪説」へと変わっていく。つまり「従業員を信用します」というスタンスから「信用しません」というスタンスへと変わっていくということ

・会社が大きくなって従業員が増えれば増えるほど、その質的分布が「少数の優秀な尖った社員」から、「大多数の普通の社員と少数の優秀でない社員」という「標準的分布」へと近づいていく

・言いだしっぺが失敗し、「それみたことか」と言われ、言いだしっぺがますますいなくなるという負のサイクルへと入っていく。万が一成功しても、「結果の平等」を旨とする老化した組織では、妬みを買いやすく、足を引っ張られるのがオチ

・ブランド力を高めれば、社員の依存心は増し、集まってくるのは「ブランド力に惹かれた人材

・「大学生の人気就職先ランキングの上位になったら、その会社は落ち目」と言われるが、その原因の一つが、ブランドのジレンマ

・「凡庸な人間は自分の水準以上のものには理解をもたないが、才能ある人物はひと目で天才を見抜く」(コナン・ドイル)

・「イノベーション型人材VSオペレーション型人材」は、「事例は真似しないVS事例を真似する」「利益は再投資VS利益は分配」「確率論的VS決定論的」「リスクはあって当然VSリスクは最小化すべし」「未来志向VS過去志向」「機会の平等VS結果の平等」など

サービスビジネス指標は、1.「純粋な製品」→2.「製品優先(サービスはコストセンター)」→3.「製品優先(サービスはプロフィットセンターだが赤字)」→4.「サービス優先(サービスだけで黒字)」→5.「純粋なサービス」

会社の子離れ、子会社の親離れが世代交代を実現する

・子供が独り立ちできるまでは、経済的にも教育的でも親が面倒を見るが、目標は「一人で生きていけるようにする」こと。これが、会社では「いつまでも親が抱え込んで子供の分まで吸い上げる」という構図になっていることがほとんど



会社の老化は止めようがないのかもしれません。しかし、予防と管理で、長生きさせることは可能なように思います。

その処方箋が本書に記されています。著者は、会社の「名医」のような方ではないでしょうか。


[ 2014/04/02 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『サイゼリヤ革命』山口芳生

サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話サイゼリヤ革命―世界中どこにもない“本物”のレストランチェーン誕生秘話
(2011/08/27)
山口芳生

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サイゼリヤは、年に数回利用しますが、無駄が少ない外食チェーンの印象です。その理由が、本書を読み、分かりました。創業者の会長は、理学部物理学科卒ですし、大学理系を積極的に採用している会社だからと察しました。

何かとブラック企業が話題になる外食業界にあって、サイゼリヤは、根性論を排し、合理的、科学的な経営を行っています。理系頭の人たちが、考え抜いたレストランです。本書に、その興味深い内容が記されています。その一部をまとめてみました。



・頭の中には、あるべき価格があって、それに近づけたいが、力がないと、それができない。値段をもっと下げようとすると、客単価が下がるとか、客数が伸びるのかと、みんな言うけど、そんなの考えていない。頭にあるのは、財布に負担のかからないイタリア料理

・ミラノ風ドリアを値下げしたのは、それが一番売れているから。一番売れているということは、一番喜んでもらっているということ。それを、もっと安くすれば、もっと喜んでもらえる。サイゼリヤにおける価格引き下げは、あるべき姿に至る道程

・「安くておいしいものを出すことが一番の社会貢献」というのが、サイゼリヤの考え

・心を込めて作っているから高くていいなんて、お客さんは思っていない。お客さんに一番よくわかるのは価格であり、安いというのは本当に大切なこと

・不思議なことに、外食産業には「おいしさ」の定義がない。おいしさを科学としてとらえているレストランはない

・おいしさとは、客数が増えること。その商品に価値を感じるのなら、たくさん売れるし、そういう商品が揃っていれば、客数が増える

・労働分配率50%、社員に年間500万円の給料なら、1人年間1000万円の粗利益高。年間総労働時間2000時間なら、人時生産性は5000円。あるべき人時生産性の設定がスタートライン。これを実現するために、観察・分析・仮説・検証を科学的手法で繰り返した

・作業が人の手によるローテクである限りは、「数量化とは、関節をどれだけ曲げるのか、何回曲げるのか、動く距離はどれだけあるのか」ということを観察し、数値に置き換えていくことになる

・店舗にビデオカメラを設置し、従業員の動きを撮影し、すべての作業を洗い直した。熟練者と経験の浅い従業員の作業の手際を分析し、これまで平均1時間かかっていた開店前の清掃作業を30分に短縮するなど、効率化を実現した

・人間はなかなか正しく生きられない。だから、ビジネスを通じて正しく生きているのかを常に考えていくことが大事になってくる。ビジネスを道具にして自分を鍛えていきたい

・「理念はとにかく言い続けろ、犬猫にでも言え」、人間は弱いところがあるから、人に言い続けていないと、自分自身がブレてしまう

科学的思考能力のある人間を採用するのは、一つに、能力の高さゆえ、ボカを起こす確率が低くなるから。もう一つは、彼らが改善点を発見した場合、それを数字に置き換えることができるという点。明確な数字が指標としてあれば、改善の効果も明らかになる

・サイゼリヤのスカウトの特徴は、メーカーの生産管理技術者を集めている点にあり、外食業が行っているような同業他社からのスカウトは一切しない

・世の中は原因があって結果があるという因果関係で成り立っている。さらに、その結果が原因となって結果を生み、その結果がまた原因になる。世の中は変化しながら先に広がっているわけで、これは宇宙が膨張しているのと同じこと

力とは何かと考えると、それは努力ではないか、と気づいた。努力をすると物事は動くが、努力を止めてしまうと止まったまま

・人が避けたいと思うことや嫌がることに真理があり、最高の体験を与えてくれる

・うまくいかないのは欲を出しているから。欲をなくしてあるがままに観察しないと、自然の法則は見えてこない。原理原則から言えば、価格と品質、そして便利さが揃っていなければ、売れない



会長を初め、理系頭の経営幹部が多いサイゼリヤの経営は、他の外食産業と違い、異質の存在です。

数学的、科学的な考え方は、世界共通です。そういう意味で、今後、サイゼリヤは、アジアを初め、世界を席巻していくのではないでしょうか。


[ 2014/03/12 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(1)

『なぜ「あれ」は流行るのか?-強力に「伝染」するクチコミはこう作る!』ジョーナ・バーガー

なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!
(2013/09/26)
ジョーナ・バーガー

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本書は、クチコミについて研究した本です。マスコミよりも効果の大きいクチコミについて、どのような方法で伝えたらいいかが記されています。

一般的に見落とされがちなことが、クチコミには意外にも有効ということがあるようです。それらの一部をまとめてみました。



クチコミを生み出す6原則。「1.それを語るのがカッコイイ」「2.あるきっかけで思い出せる」「3.良くも悪くも気になる」「4.目に見える」「5.役に立ちそう」「6.語りたくなるストーリーがある」

・クチコミは、あらゆる購買判断の20~50%に影響を及ぼす主要因

・従来型の広告よりもクチコミのほうが効果的な理由は二つ。一つは、クチコミにより説得力がある点。もう一つの理由は、クチコミのほうが、ターゲットがより絞られている点

・クチコミは、そもそもが関心のある相手に向けて発信される。その情報を知らせるためにふさわしい相手だけを選んで話すのが普通

・サルまねという言葉は、ただ単に人間の模倣癖を指摘しているのではない。目に見えなければ、何かを模倣することは難しい、ということを意味している

・人は他人の役に立つのが好き。したがって、その商品やアイデアがいかに時間の節約や、健康、倹約に役立つかを示せば、話を広めてもらえる

・人々はただ情報を共有するのではなく、物語を伝える。物語は、道徳や教訓といったものを運ぶ容れ物。情報はどうでもよさそうな話の裏側で伝達される。だから、商品やアイデアを、人々が話したくなる物語の中に組み込むことが必要

秘密にすべきことほど、人は話してしまう傾向が強い

奇抜さは話が大きくなっていく過程で重要。人から人へと話が伝わるうちに、ある部分は消えていき、別の部分は誇張されていく。そして、話がだんだん大きくなって、広がっていくにつれて、奇抜さはどんどん増していく

希少価値と限定価値は、人々をインサイダー気分にさせることで、クチコミを促す

・人は金銭の見返りがなくても意欲的になる。さらには、人に何かをしてもらうためにカネを払ったとたん、払われた側の内発的動機づけはかき消されてしまう

・人は面白いから、役に立つからという二つの理由で、情報を共有する。面白い情報は、それ自体が楽しめるうえ、それを伝えた人の印象を良くする。同様に、役に立つ情報を伝えれば、相手の手助けもできるし、伝えた側の印象も良くなる

・健康や教育に関する記事は、よく共有される

怒りやユーモアのレベルが高いほうが、共有される確率が高い。感情をかき立てることが伝染のカギとなる。生理的覚醒によって、人は会話し、共有するから、人を興奮させたり、笑わせたりする必要がある

・他人が実際にやっていることを目にする機会がなければ、その行動をまねるのは難しい。だが、より観察可能な状態にすれば、まねもしやすくなる。人の目に触れるように作られたものは、人気を呼ぶために作られたも同然

・商品やアイデア、行動は、使われたり、実行されたりするときに自らを宣伝する

・ほかの人に伝えるだけの値打ちがあるのは実用的な価値。その代表が、カネの節約。値下げ幅の大きいものの情報を共有したがる

・セール品の表示は需要増加につながる。「セール品」と表示した商品の売上は、表示していない同じ商品の売上を50%以上も上回る

・クチコミを生み出そうとする際に、話題にしてもらうことにこだわるあまり、人々が何について話しているかという一番大切な部分を見失う。だから、売り込みたいだけの商品やアイデアと無関係なコンテンツを作ってしまう

・社会的伝染は一握りの特別な影響力の強い人々によって引き起こされるというよりも、商品やアイデアそのものの力によって勢いづく



宣伝広告費がなければ、クチコミを上手く利用するしかありません。そのためには、クチコミされるような商品を持つことです。それを考えるのに役に立つ書です。

クチコミは、組織の中やチームの中で、自分の地位を高めていくのにも役立ちます。自己PRを上手くするいうのは、人生のさまざまな局面に応用できるのではないでしょうか。


[ 2014/02/26 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『業界のセオリー・ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵』鹿島宏

ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリービジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリー
(2010/07/21)
鹿島 宏

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さまざまな業界で言い伝えられてきた言葉をコンパクトに載せている書です。

業界外でも、それらのノウハウを知れば、納得できることが多く、参考になります。その一部をまとめてみました。



・「ヒット商品は多数決から生まれない」(飲料業界)。多数決でクセのないものを選ぶよりは、「ものすごく好き」と熱狂的な支持者がいるものを採用すべき

・「人生の3Dがビジネスチャンス」(画商)。オークションの世界では、絵が売りに出されるチャンスは、3つのD「DEATH(死)」「DEBT(借金)」「DIVORCE(離婚)」

・「不況になると鉄道本が売れる」(出版業界)。不況のときはマニアを攻めろ。これは出版以外の業界にも当てはまるセオリー

・「ランドセルは夏から売れ」(ランドセルメーカー)。お盆の帰省で、祖父母が孫に会う機会を狙う。子供には「シックス・ポケット」(両親、祖父母4人の合計6人)の財布がある

・「棚には赤と緑の商品を交互に置け」(スーパーマーケット)。マグロの刺身が緑の大葉を添えるのは、赤と緑がお互いを引き立てる効果のある「反対色」だから

・「金持ちは貧乏人から物を買わない」(宝石商)。富裕層は、流行に流されない。不特定多数の人と群れることなく、少数の富裕層仲間の間で交わされる口コミ情報を信用する

・「商品の色は3色に絞れ」(商業デザイナー)。採用する色が3色を超えると、色と色がぶつかり合い、途端にイメージがはっきりしなくなる

・「急な仕事ほど忙しい人に頼め」(出版業界)。忙しい人ほど、時間の使い方がうまく、すきま時間を上手に利用して、期限通りに上げてくれる

・「女性誌がマネー特集を組むと相場が下がる」(証券業界)。過熱した相場は下がり始めるから、この時期に高値づかみをして大損することを投資家たちは熟知している

・「アイデアは馬上、枕上、厠上でやってくる」(商品企画)。中国北宋、欧陽脩の言葉に「三上」がある。名案は「馬上(移動中)枕上(就寝中)厠上(排泄中)」に浮かぶという意味

・「発想はポジティブに、詰めはネガティブに」(広告業界)

・「セレブの名前は自然に伝わる」(サービス業界)。セレブな人から贔屓にされている話は、さりげなく伝えるだけで、評判は勝手に伝わっていく

・「大安はホテルにハンドルを切れ」(タクシー業界)。優秀なドライバーは、毎朝、天気だけでなく、暦もチェックする

・「お客は、靴と時計で見抜け」(ソムリエ)。ソムリエは、高級な靴を履いている客には、少し高めのワインを、繊細で個性的な時計をしている客には、複雑なワインを出す

・「会釈、敬礼、最敬礼」(キャビンアテンダント)。15度頭を下げるのが会釈、30度が敬礼、キャビンアテンダントは最敬礼の45度でお客を迎える。お辞儀の速度「1、2、3、止め、5、6、7、8」は、3秒間で頭を下げ、1秒間止め、4秒間で頭を戻すという意味

・「ユーザーの悩みは、ヒット企画を生む」(出版業界)。悩み相談に投稿された悩みから、多かった悩みを割り出し、それを解消するノウハウを特集すると、その号は必ず売れる

・「沈黙は、住んでいる土地の話で破れ」(美容業界)。始めてのお客に、何を話したらいいか悩んだら、「どちらにお住まいですか?」と質問すれば、会話がスムーズに運ぶ

・「連絡はメールで、頼みごとは電話が早い」(ウエブ業界)

・「安易な謝罪は訴訟に通ず」(証券業界)。証券マンが顧客にすすめた株が暴落するなんて日常茶飯事。謝っていては身が持たない。銀行でも、責任の言質をとられる軽率な言動を慎むよう教育される

・「転職は在職中にせよ」(人材業界)。在職中なら余裕があるため、不利な条件を出した企業に対して強気で交渉できる。失業中だと、気持ちがあせり、面接もうまくいかない

・「市場価値を上げたいなら、異業界に転職せよ」(人材業界)。同じ職種、同じ業界のほうが、市場価値が上がると考えがちだが、異業種だからこそ、オンリーワン人材になれる



ビジネスの世界は、損得に密着しているだけに、思わず耳を傾けてしまいました。

業界の如何を問わず、「ビジネスの知恵」になります。まさに「業界の格言集」のような本でした。


[ 2014/02/19 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『和解する脳』池谷裕二・鈴木仁志

和解する脳和解する脳
(2010/11/17)
池谷 裕二、鈴木 仁志 他

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脳科学者と法律家の対談共著です。人はなぜ争うのか、どう和解していくのか、これを脳科学によって、検証しています。

人と人との軋轢、互恵、不和、利己、利他、愛情など、興味深い人の言動の数々を知ることができます。それらをまとめてみました。



・科学は基本的に帰納を排除するが、司法の現場では、帰納をすごく重要視する。人間は、ほとんど癖と言っていいくらい、帰納が大好き。でも、科学は帰納をやるとミスる。演繹のほうが100%正しい(池谷)

・多くの人は、科学者は仮説を証明するために実験していると勘違いしている。本当は、仮説を否定するために実験をしている。「反証可能性」こそが科学の大前提(池谷)

・刑事裁判は「実体的真実」を追求する。本当に何が起こったのかを調べる。けれども、民事裁判は「形式的事実」でいい。実は違うかもしれないが、両当事者がそうだと認めた場合、それが真実ということで進む(鈴木)

・記憶は後からも作られるという意味で、「理屈」は、人を説得したり、自分を納得させたりする点で、嘘や作話に近い面があり、本能をねじ曲げる側面がある(鈴木)

・言っていることが真実かどうか見極めるには、証言に立ってもらって、反対尋問を受けてもらう必要がある。その記憶が実際にその人自身の体験から出たものかを質問して、その反応、言葉のスムーズさ、表情などを直接確かめないと、なかなかわからない(鈴木)

・和解を進めるには最初、共感と受容が有効。とにかく喋るだけ喋ってもらい、こちらはとことん聞くことに徹する。医者が患者に汗をかかせて熱を下げるようなイメージ(鈴木)

・受容がある程度進んだところで、理性や思考といった「理」の部分を使う段階に入る。弁護士の仕事を、共感や癒しの部分だけで解決するのは難しい。「理」は、弁護士の切り札。これをいつ、どのタイミングで、どんな表現で切るかが重要(鈴木)

・心が落ち着いてから、客観的な情報を教えられると、素直に受け入れられる。例えば、煙草を吸っている人に「煙草を吸うな」と言えば、相手はムッとするが、「ここでは法律上煙草を吸えないはず」と言えばいい(池谷) 紛争解決規範としての法は有用(鈴木)

・人間は妙なところに快感がある。食欲を満たすのも、寝るのも快感だが、それ以外に特有の快感がある。達成感も快感だし、お金を使うのも快感。お金をもらうだけでなく、使うのも快感。そういう点を考えずに、人間の営みは理解できない(池谷)

・「経済合理性」は一見すると、「理」(理性)の問題のように感じるが、本質的に「情」(感情)の問題。なぜなら、経済合理性というときのその合理性の基準が、人や社会によって全然違うことがよくあるから(鈴木)

・金銭の話は、経済合理性の問題のように考えられがちだが、結局、快不快、好き嫌いの問題に行き着く。お金は「約束」でしかない。それだけでは、単なる期待。最終的に「快」に変換されないと意味がない(鈴木)

・「金をくれてやる」「恵んでやる」といった優越感の表現では、相手の感情を逆撫でし、大金でも受け取られない。反対に、愛情や謝罪の意味を感じれば、お金を受け取る。つまり、お金の裏にある「情」の部分の意味合いが、行動決定に大きな影響を与える(鈴木)

・関係が濃ければ濃いほど、その中で積もり積もった不快感が爆発するということはよくある。親子なんだから、兄弟なんだから、友達なんだから仲良くしなさいといっても、紛争解決にはつながらない。近い関係であればこその葛藤がある(鈴木)

・決断するとき、決断したあとにも、うまい言い訳を探すこと。「こういう理由だからしかたがない」「この理由なら文句はつけられない」と納得できる論理に乗ること(鈴木)

・マネーは、いろんな「快」と交換できるので、無限の欲望が生まれてくる。ここが他の欲求と「金銭欲」の違うところ(鈴木)

・通貨の発行量・流通量は慎重にコントロールされているから、実は有限に近い。その有限のお金をみんなで奪い合う。捕った人がいれば、奪われている人もいる(鈴木)

・規制って、簡単に言えば、福祉ということ。規制には、社会の害悪を防ぐための自由の制限と弱者救済のための強者の経済的自由の制限の二つがある。自由には内在的な制限や社会的責任が伴う。規制を緩和すれば、世の中がよくなるというものではない(鈴木)



社会における人々の紛争を解決する手段が法律です。その法律の有用性を高めるには、脳を知る必要性があります。

法律だけでなく、個人的な揉め事、言い争いなどの解決ルールにも、本書は役に立つのではないでしょうか。


[ 2014/02/05 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。』千田琢哉

あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。あなたが落ちぶれたとき手を差しのべてくれる人は、友人ではない。
(2012/08/18)
千田 琢哉

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何とも長ったらしくて、冷徹な感じのする本のタイトルです。人間関係というものを客観的に、現実的に見ているようにも感じます。

人間関係を「先輩・上司」「同期」「後輩」「顧客」「友人」「恋人」「親族」に分けて、それらの付き合いを本当はどうすればいいのかのヒントが得られる書です。その一部をまとめてみました。



・誰も耳にとめない窓際の先輩社員のつぶやきをアタマの片隅に焼きつけて仕事をする。挫折知らず、出世コースまっしぐらのエリートより学ぶことは多い。窓際の先輩は予言者

・怒鳴り散らす上司を怖がるのではなく、上司が何を怖がっているのかを考える。怒鳴っている人は、怒っているのではない。怖がっている

・「嫌なヤツだ」と思う人ほど、その逆の姿を想像して接する。いつもペコペコして頼りない上司に限って、家では亭主関白。人は精神的にバランスをとらなければ生きていくことはできない

・自発的に挨拶する先輩社員をチェックしておく。そういう人ほど世の中に影響を与えていく。自ら挨拶する先輩は将来の重役

・机の上にモノが少ない先輩は決断力の鬼。机の上は言い訳できない生き様。役職者の机にモノがあふれている組織は、決まって業績が低迷している

・自分が媚びている人ほど他人が媚びている姿を毛嫌いする。周囲と一緒に腰巾着をバカにするのではなく、その裏の並々ならぬ努力を認めること。筋金入りの腰巾着は未来の専務

同期会で馴れ合うと不幸になる。成果を上げる人は、同期というちっぽけな枠をはみ出して、社内はもちろん社外に目を向けて切磋琢磨する人生を望む

・社内で友情を求めてくる同期は遠慮なく切っていい。友情とは、成果を上げながら育んでいくもの

・熟慮する優秀な人がチャンスを逃す。本気とは、圧倒的なスピードと具体的な行動のこと

・メジャー部門に配属された同期は落ちこぼれ。マイナー部門だからこそ、その実績が一層際立つ

・自分が会社から受けている恩恵をすべて棚卸ししてから独立を考える。あなたを尊敬する後輩は、あなたが独立したら離れていく

大嫌いな顧客の財布から給料の一部が出ている。今日の晩御飯を昨日会った顧客の顔を浮かべながら食べる

・無反応な顧客の本音は「早く目の前から消えてくれ」。「ダメだこりゃ」と思った商談は、早々に切り上げる

・会社で独りぼっちの人には生涯の親友がいる。独りで黙々と努力する人はまもなく親友と出逢う

・あなたが落ちぶれたとき、手を差しのべてくれる人は、友人ではない。落ちぶれても歯を食いしばって一人でがんばっていると、まもなく真の友人が現れる

・「アイツ、成功して変ったよな」。友人が成功した途端、こんなことを言い始める。欠点が目立ち始めるのは、成長しているから

・本当の人脈は切っても切れない。真の友人とは「にもかかわらず追いかけて来てくれる人」

・一度「うちの子自慢」に関わると、20年以上苦労する。我が子はみなかわいく、他人の過小評価と自分の過大評価の象徴

・レスポンスの遅い人がドタキャンする。レスポンスが遅くてドタキャンする人は、本当は誘わないでもらいたいのに、いい人だから自分から言い出せない。ドタキャンの犯人は、その人を誘ったあなた。誘ってほしくなさそうな人は勇気を持って誘わない



常識と思われていることが、実はそうでないことがよくあります。本書は、そういう常識について、疑問を投げかけている書ですね。

時代や所が変われば、常識も変わります。人間関係の常識を問い直すのに、最適の書ではないでしょうか。


[ 2013/12/16 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『アカシックファイル』明石散人

アカシック ファイル 日本の「謎」を解く! (講談社文庫)アカシック ファイル 日本の「謎」を解く! (講談社文庫)
(2000/01/11)
明石 散人

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博覧強記の著者の本を紹介するのは、「日本史快刀乱麻」以来、約4年ぶりです。日本の歴史ミステリーを解かしたら、著者の右に出る者はいません。

本書は、歴史を通して、知的興奮する世界へ誘ってくれ、しかも納得させられることばかりです。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・大企業の大企業たる所以は「お上の枠組みにがっちり組み込まれている」こと。この枠組みは大概有利に働くが、枠組みを守れなくなると否応なく倒産させられる。その国の経済が衰える時、最初に倒産するのは大企業

・個人的な人間関係に屈したり配慮したりするのは、権力者として最も排除すべき振る舞い。権力を持つ人に最も大事なポイントは孤立していること

・江戸後期の「世事見聞録」では、「軽蔑すべきは二足のわらじを履くもの」としている。弱きを助け強きをくじく侠客の顔を持ちながら、その裏で役人の手先をする者のこと。今で言えば、政府や官僚を批判しながら、裏でちゃっかり政府の委員などを務める評論家

・鎌倉幕府、室町幕府、徳川幕府の滅亡は、行財政改革がその根底にあった。明治政府は、当時流通していた各藩の藩札を全部ただの紙にして、借金を全部チャラにした。行財政改革というのは、新しい権力者による全取っ替えということ

・政治家に求めるのはヴィジョンではない。現実を踏まえた即効性。目の前で子供が溺れている。なぜ落ちたのか。なぜ溺れたのか。どこの子供なのか。誰の責任か。こんなことは、後で考えればいい。ここに理屈はいらない。すぐに飛び込んで助けてくれればいい

・人が形成する社会は、煎じ詰めれば、ねずみ講と少しも変わらない。いつか破綻するが、誰も今だと思わないだけ

・資本主義がねずみ講と違うのは、破綻するまでに時間がかかる、この一点だけ。資本主義の根本は、人口増加が最大の定義、これなくしては成立しない。但し条件が一つある。人口増加は必須の条件だが、増えていいのは貧乏人

目的意識というのは、現状に希望のない貧乏人に夢を与える幻想に過ぎない。つまり、まやかし。こんなことを信じるから、貧乏人はいつまでも貧乏人

・庶民の目的意識というのは、資本主義というねずみ講を継続するためのエネルギー。そして、この目的意識は、権力者に対する庶民の忠誠心ともイコールしている

・思い上がりというのは、自己価格がいくらか判らない人のことを言う

・ヨーロッパの文化では、収集趣味は貴族階級に限られていた。日本の場合は、庶民階級がそれを望んだ。浮世絵や日本古銭をコレクションしたのは町人階級。庶民が文化を要求したのは世界中で日本人だけ

・財産をたくさん所有したり、権力者になったり、社会的名声を得たからといって、必ずしも、その人の生き方が正しいとは限らない。最も大切なことは、結果ではなく、そこへ行くまでの正当性を所有しているか否か

知性は人を驚かすが、人の心を揺さぶらない。感性は人を驚かさないが、人の心を揺さぶる。人の機能で最も優先するのは感性。感性によって、人は自己が人であることを知る

・危機管理というのは、隠蔽工作に接続している。利益誘導、自己保身、ばれないようにする、まずいことは発表しない、これが本来の危機管理の姿

・我々は、とかく捕まる人間を悪と見がちだが、捕まえ裁く側の方が往々にして悪。彼らが人を捕まえるのは、自己保身を前提にした意図的な排除であり、それが彼らの危機管理に直結しているから

・理由の如何に関わらず、とりあえず何でも反対し、拒否することが、庶民の危機管理。なぜなら、庶民は決して利益配分にさずかることがないから

・権力者に対して、何でもごねる、何も言うことを聞かない、公表された情報はすべて意図的なものと認識する、勝手に枠組みから逸脱する。庶民の分際にもかかわらず、いかにも判ったような顔をする、これほど愚かなことはない

・善は悪に決して勝てない。勧善懲悪というのは庶民の理想であって、現実にはあり得ないからこその言葉。悪に勝つのはさらに大きな悪。当然、悪を裁くのも、また、より大きな悪



ものの道理を、歴史を通して拾い上げる著者の力量に感嘆してしまいます。著者の力量の根底には、「疑いの眼」が必ずあるように思います。

この「疑いの眼」こそが、「公正」「客観的」につながっているのかもしれません。振り子の球を真ん中に戻すには、「疑いの眼」「反対の視点」を持つことが重要であると、再認識させてくれる書でした。


[ 2013/12/04 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『人に喜ばれて収入を・仲人士という仕事』中西清美

人に喜ばれて収入を 仲人士という仕事人に喜ばれて収入を 仲人士という仕事
(2013/05)
中西 清美

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恥ずかしがり屋、面倒くさがり屋の男性が多い日本には、自由恋愛の結婚が難しいのではないか、見合い結婚が減ったせいで、婚姻率も減り、その結果の出生率も減っているのではないか、と思っています。

著者は、結婚を促す「仲人士」です。出生率を上げるには、この「仲人士」という仕事が、今の日本に欠かせないように思います。本書には、仲人士の心構えやノウハウが描かれており、その実態を知ることができます。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・仲人士には、「地域密着系仲人士」(定年退職者に多い)、「お友達系仲人士」(主婦の習い事、趣味等からの人が多い)、「オフィス系仲人士」(会社に勤めながら、土日の副業)、「お客さんサービス系仲人士」(お店をしながらの兼業)がいる

・名刺の裏に、料金表(入会金3万円、月会費5千円、お見合い料は結婚まで無料)を作っていると、お金のことを口でいちいち説明しなくても済む。名刺は、仲人士の必需品。この名刺を知り合った人に手渡すと、「実はうちの娘も独身なんですよ」と会話が弾む

・現実を知ってもらうことが信用につながる。言いにくいことこそ入会面談の時に必要。そして、決してがっかりさせないことも重要

・年の差のハンデを埋められる「何か」を「愛」以外に持っているか、と聞いている。若い女性と結婚したいといっても、資産がなくては、子供を育てていくことはできない

・一にも二にも大事なのが入会面談。ここで難しい条件の人を曖昧な態度で安請け合いをしたりすると、後でもめごとになったり、信頼関係を失ったりする。ここが、高額な入会金をもらう結婚相談所とは決定的に違うところ

・お見合いを組むために必要なのは、いかに魅力的で、誰もが申し込みたくなるようなプロフィール(釣書)をつくることができるかにかかっている。釣書に使う写真は、今はプロにヘアメイクをしてもらって写真館で撮るのが当たり前の時代

・本当に納得するまで「奇跡の一枚」を目指し、写真館を探すべき。たかが写真、されど写真。でも、いくら言っても「僕はこの写真が好きだから」と、聞かない人がいる。しかし、そういう人に限って、相手を写真で選んでいる。本当におかしなこと

・釣書に書く、おすすめしない趣味(男性)は、「散歩、家庭菜園、読書」(あまりに慎ましやかで、ついていけない)、「釣り、パソコン」(一人ぼっちにされそう)。(女性)は、「バイオリン、三味線、オペラ」(お金がかかりそう)

・お断りの返事も仲人士の仕事。辛い仕事の一つだが、避けては通れない大切な仕事。お断りの際に使う決まり文句「ご縁がありませんでした」は、誰も傷つけない魔法の言葉

・女性はデート中、なかなかトイレに行きたいとは言いにくい。男性から女性にトイレに行きたいかどうかを尋ねるのも難しい。そんなとき、「僕トイレに行きますけど」と声をかけるようにアドバイスしている。こういう細やかな気遣いが効く

・パーティーでは、自己紹介カード(名前、誕生日、好きな食べ物、苦手なこと、最近うれしかったこと、最近ハマっているもの、自分のここを変えたい、その他自己PR)を、前に来た相手と交換してもらう。話が苦手でも、このカードがあれば、会話に困らない

・男性はおだてに弱い生き物。「すごいですね」「ホントですか」「さすがですね」の三つの言葉を言ってあげたら、会話が弾む

・顔というのは、意識しないと笑顔にはならない、ことを知ってもらうために、鏡で自分を見てもらう。すると、自分がなんと険しい表情をしているのかに驚く。笑顔でなければ、いくら綺麗に化粧して、男性が喜ぶ会話をしても、効果はなくなる

・親御さんのための相談会を開くたびに、本当にたくさんの親が子供のために心配して来られる。今、各地域でたくさんの仲人士が必要。まだまだ足りない。安心して頼める仲人士のインフラ整備を急がなくてはならない。どこの地域にも世話好きな人はいるはず

・仲人士同士で集まって、自分の会員の良いところをアピールする「釣書交換会」という集まりがある。ある人を紹介すると、別の仲人士から「この人どうですか?」と必ず声がかかる。釣書を生かすも殺すも仲人士次第というところがある

・仲人士のモットーは、「1.親切丁寧なお世話」(時には厳しいことを言うことも)「2.安心の料金は成功報酬制」(入会時受取合計金額が5万円以下など)、「3.法令遵守」(個人情報保護法、特定商取引法など)、これを守れる仲人士がまだまだ足りない



本書を読むと、仲人士(世話好きのおばちゃん)を復活させることが、日本社会において重要であることがわかります。

地域疎遠になった今は、世話好きのおばちゃんを「地域」だけに求めるのではなく、「サークル」「会社」「店」などにも必要ということなのかもしれません。


[ 2013/11/20 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『ワニにはワニの事情がある―見方を変えると、ほっとする』すがのたいぞう

ワニにはワニの事情がある―見方を変えると、ほっとするワニにはワニの事情がある―見方を変えると、ほっとする
(2007/01)
すがの たいぞう

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異色のカウンセラーである著者の本を紹介するのは、「心がホッとする考え方」に次ぎ、2冊目です。

著者は、カウンセリングの経験が豊富です。その集大成が本書です。ためになる考え方が数多く記載されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



合理性効率性を重んじるばかりに、心に余裕がなくなり、いつもイライラしていたり、怒りっぽくなっている人が多い

・日本のサラリーマンに深く根づいている意識は「太く、短く」ではなく、「細く、長く」。したがって、力を抜くこと、ある程度手を抜くことを覚えなければならない。働きアリのような日本の社会にあって、それは自分の身を守る唯一の手段

・なぜ自分を責めてしまうのかというと、どこかで「できるはずだ」と思っているから。根本には自分へのこだわり、幻想がある。まずは、これを捨てると楽になる

・すごくがっかりしたり、後悔したりする人は、自分に多大な期待を抱いているから。期待が大きすぎると、失望も大きいのは理の当然

・人と違おうとするほどに、人と同じになっていく。この奇妙な現象の要因は、「人と違おう」と謳う各種の情報を、みなが取り込むから。情報は決して多様ではない

・「自信がない」と言う人は、自分にできそうもないことをいつもしている

・自分のできることをきっちりとやっていると、「自信」ということにこだわらなくなる。自信があってもなくても、どちらでもよくなる

・自信がないということは、自分自身への評価が下がっている状態。つまり「自己評価」が低くなっていること。これを言い換えると「自尊心」ということになる。こういうものは上がったり下がったりするのが普通

・「人は表現をする動物」。要するに自己表現。これが不足してくると、イライラしたり、悪態をついたり、ふてくされたり、むさぼり食いたくなったり、便秘になったりする

・人間関係は「誤解」によって成り立っている

・「自分を出す」という行為は、自分を他人に委ねるということ

・部下よりも給料が多いのは、偉いからではなく、部下よりもきつい目に遭わなければならない、その代償

・仕事ができる部下をどれだけ育てることができたかどうかが上司の値打ち。自分の成果を上げるよりも、圧倒的に会社に貢献している

・忙しいから、遊ぶ暇がないとか言う人がいるが、それは間違い。遊ぶ時間をつくらないから「忙しい」

・「忘れないように書いておく」のではなく、「忘れるために書いておく」。忘れるようにしておいて、「また思い出すために書いておく」

・昔の学校、教師には、はなから権威があったが、今は、学校や教師に権威がなくなった。教師たちは自分で自分の権威を築いていかなければならない。真の実力が試される

・他人の欲望と自分の欲望を調整していく術を学び、他人への想像力、配慮、思いやりといったものを備えた人間となる。このような社会化された人間を大人と呼ぶ

・失敗が問題となるのは、それを悔やむから。「失敗」があったとしてもしかたがない、後悔しない、受け入れるという姿勢をつくっておくことが大事

・「うまくいかなくても当たり前」「失敗しても当たり前」「そんなに驚くことではない」という考えは、悲観的でも弱気でもなくて、柔軟な構えというもの。世の中のほとんどのことは、自分の思い通りにならない

・人間関係は大事だが、一方で「独りでいられる力」もとても大切。それは、底のほうで、ものごとを考える力につながっているから

・私たちはみな世間知らず。多少仕事に通じているからといっても、それは狭い世界でのことに過ぎない



本書には、豊富なカウンセリングに裏打ちされた術が記されています。著者は、人を慰め、気持ちを切り替えさせ、目を見開かせ、前向きにさせることに長けているようにも感じます。

本書は、心を晴らすために有益な一冊ではないでしょうか。


[ 2013/10/23 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(2)

『儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書』川上昌直

儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書
(2013/02/20)
川上 昌直

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著者はビジネスモデルが専門の教授です。このビジネスモデルをどう構築するかのヒントが、本書に記されています。

著者は、企業の社外取締役も務められていますので、具体的事例も豊富です。わかりやすく、ためになるところが多くあります。そのためになる一部を要約して、紹介させていただきます。



・企業の目的は、「顧客を満足させること」。そして、同時に「利益を生むこと」。これを同居させた仕組みが、ビジネスモデル

・「顧客は製品など買っていない。顧客はなんらかの状況で、自分の<用事を片づける>ために製品を<雇う>。そして、既存の製品では未解決の用事があり、それが耐えられない顧客は、それを解決する代替策を雇う」(ハーバード大学・クリステンセン教授)

・顧客が商品やサービスを買うのは、その商品が「ほしいから」ではない。なんらかの「用事を解決したい」から、その解決策として、その商品を「雇っている」だけ

・ニーズでモノを分析する以上、「差別化」ができなくなる。「差別化」するために、ニーズを分析していても、結局は「同質化」を招くという、皮肉な結果をもたらす

・ビジネスに必要な要素は、「WHO」「WHAT」「HOW」、ビジネスをつくり出す要素は、「顧客価値」「利益」「プロセス」。儲けるビジネスを世に送り出していくためには、3×3の9セルをきちんと埋める思考法を身につける必要がある

・儲ける仕組みのツールが、次の9つの質問。「どんな用事を抱える人を客にするか?」「解決策に何を提示するか?」「どう表現するか?」「誰から儲けるか?」「何で儲けるか?」「どのタイミングで儲けるか?」「どの手順でやるのか?」「強みは何か?」「誰と組むか?」

・「顧客の支払意欲」-「価格」=「お得感」。支払った金額以上に感じる「お得感」こそが「顧客価値

・例えば、スポーツ店に来る客を「40代家族連れ」と見るのではなく、「家族でスポーツを始めようと思っているけれど、どんな道具を揃えたらよいかわからないファミリー」いった状況を特定して、客の「片づけるべき用事」は何かを探っていくこと

・売れているものを見て、「何」から「なぜ」へと目線を変えてみて、売れている理由をつきとめれば、「片づける用事」につき当たる

・大切なことは、客の購入時から、使っているとき(メンテナンス)、使い終わった後(廃棄・アップグレード)までを、一連の流れとして客目線で考えること

・すべての会社はサービス業。製造業であれ、小売業であれ、なんであれ、サービスの部分が多いか少ないかというだけで、すべての会社にサービスの要素がある

・顧客の「不」をとってあげる、それこそがビジネスの神髄。不便、不満、不確実性、不利益など。顧客が用事を解決する、あるいは、よりよい生活を送るために、このような「不」のつく言葉の「不」をとってあげること

・顧客がより便利で満足し、確実に利益になるように、なんとかする。それこそが、最終的に顧客の「価値」を生む。その魔法のキーワードが「不とれば価値

課金の方法として、「商品対価」「定額制」「従量制」「利ざや」「紹介料」「広告」がある。儲け方はたくさんある

利益設計のポイントは、「すべての顧客から儲けようとしない」「合算で利益を実現する」「すべての商品・サービスから儲けようとしない」「時間差で儲けることも考えてみる」

・自社の強みと弱みを判断するには「VRIO分析」。価値(Value)があって、稀少(Rarity)で、模倣困難(Inimitability)な資源を有して、組織(Organization)がそれをうまく使えているとき、持続的競争優位をもたらす

・すべて自前ではやらない。リスクを冒したり、資本ストックを集める時間をかけるより、外注先を見つけ、パートナーシップを結ぶほうがいい。協力者を巻き込むことで、新たな知識が混ざり合い、精度の高い、さらに異なったビジネスに変貌を遂げることがある

・すでに流行が終わったような顧客価値提案でも、利益やプロセスの組み立て方次第で、ビジネスモデルが甦り、新しいビジネスモデルとして成功することもある



儲ける仕組みをつくることは、視線をずらして、違うフレームで考えるということかもしれません。その視線のずらし方とずらす具体例が、本書に載っています。

フレームを幾つか持っているだけでも、誰でも少しは賢くなれるのではないでしょうか。


[ 2013/10/16 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『しばられてみる生き方―軍隊式・超ストレスコントロール術』下園壮太

しばられてみる生き方――軍隊式・超ストレスコントロール術 (講談社プラスアルファ新書)しばられてみる生き方――軍隊式・超ストレスコントロール術 (講談社プラスアルファ新書)
(2009/10/21)
下園 壮太

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著者は、陸上自衛隊メンタルヘルス教官です。自衛隊員のカウンセリングにもあたっている方です。主な研究テーマは「軍隊組織が兵士に及ぼすストレスの関係」です。

本書には、兵士がストレスに屈せず、力を発揮するために必要なことが記されています。日本の企業組織における社員とストレスの関係も軍隊に似たようなものを感じます。参考にすべきことが非常に多いと感じました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・ストレスとは、「不快感情の苦」と「エネルギー苦」の総合体。「不快感情の苦」とは、痛さ、不安、恐怖、焦りなどの苦しみであり、自分を襲う対象から距離をとるための感情。「エネルギー苦」とは、飢え、渇き、疲労、睡眠不足などの苦しみ

・不安は常にシミュレーションを要求する。情報を求め、相手などの動きを絡めながら、最悪のケースをシミュレーションする。いくつかのシミュレーションを比較し、十分な対策を立てなければ、不安は治まらない。これにはかなりのエネルギーを使ってしまう

・「もっと自由を!」と、ないものねだりして、不快感情を発動させ、エネルギーを消耗するか、「これくらいのプチ束縛感が、健康に良い」と受け入れ、エネルギーを節約するか。自由が足りないと思ったら、今は「自由太りをダイエットしている」と思い直すこと

・軍隊では、反復演練で、規律を体に覚え込ませる。回数をこなし、習うより慣れる。「40回400回の原則」とは、深刻な体験なら40回、そうでない体験でも400回も経験すれば、体が覚えて、自然に行動できるようになるという原則

・旺盛な責任感には欠点もある。責任感がある人とは、通常「結果」を気にする人。結果に関わると思うからこそ、仕事を一生懸命やり、分析や決断について、自分が正しいと思うことを強く主張する。このことが、軍隊という組織にとってマイナスに働くことがある

・軍隊は敵と戦っていおり、時間との勝負。もし軍隊が強い責任感を持つ人ばかりで構成されているなら、組織の決断に、かなりの時間が必要で、決まったことに従わない人も出る。そのような軍隊では、一枚岩になれないし、必要なタイミングにも間に合わない

・重要な決定では、誰が決める、どうやって決める、誰がやる、誰が従う、などの「決定の手続き」に大きなエネルギーを使う。お互いの命がかかっているため、腹を探り合い、人間関係も壊れ、疲労困憊する。これでは、戦う前に味方同士の人間関係で潰れてしまう

・自分が正しいと思う意見を、議論の結果、納めなければならないとき、自尊心が邪魔をする。そんなとき、階級があれば、あきらめもつきやすい。自分の意見が劣っていたからではなく、階級の高い人の案を採用するという「決まり」に従ったまでだ、と思えばいい

・組織はリーダーシップだけではうまくいかない。従うことが上手にできないと、組織力は低下する。組織が大きくなればなるほど、この傾向は強くなる。軍隊組織の生活の中で身に着くのはフォロアーシップ。理不尽さに対するある種の鈍感さを学べる

・戦争を初めとした悲惨な出来事は、人類の歴史以前から存在した。その苦しみに、人は宗教の力を借りて対処してきた。宗教は、自責を扱ったものが多い。例えば、キリスト教では、過剰な責任の苦しみを、神と折半する道を提示してくれる

・結果が悪かったときに、それを神に肩代わりしてもらう習慣もなく、すべて自分が悪いと考えると、自分を責め、自信を失い、社会から距離をとるようになる。過剰に太りやすい責任感(自責の念)をいかにコントロールするかは、現代人にとって大きなテーマ

・儀式によって、ストレスコントロールできる。カウンセリングでも、儀式的要素(忘れられない嫌な思い出を紙に書き、灰皿の上で燃やす「思い出のお葬式」)を使うこともある

・目標に必要な要件は、「1.意味があること」「2.具体的であること」「3.達成可能であること」。国防という任務を与えられた自衛隊員が、訓練を通じて自分の技量を伸ばすことは意味のあること。だから、隊員は訓練することが好き。訓練は隊員を元気にする

・自衛隊では、各訓練の到達基準以外にも、免許検定、検閲、各種試験競技会など隊員の目標となるものを設けている。それでよい成績を上げたものは、表彰される

・堅実な自信を作り上げるには、「1.体力を鍛える」「2.生活の基本的スキルを身につける」「3.人のためになることをする(その結果、お金が稼げればもっといい)」こと。人のためになったとき、本当の自信が持てる。そして、人生のストレスが大きく低下する

・ついたくさんのことを教えたくなる。それは一番ダメな教育。「教えたいことは、一つに絞れ」で、何度も強調しながら訓練すると、どんな隊員でも次第にそれができるようになる。つまり、自分に自信がついてくる



日本人の自信のなさを蘇らせ、ストレスを緩和する方法が、本書に記されていました。

自由行動ばかりでは疲れるし、しばられてばかりだと息苦しいものです。その中間の「少々しばられるくらい」が生きていくにはちょうどいいくらいです。本書には、「上手なしばられ方」によって、ストレスを緩和する道が示されているのではないでしょうか。


[ 2013/09/24 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『最高齢プロフェッショナルの教え』

最高齢プロフェッショナルの教え最高齢プロフェッショナルの教え
(2010/12/17)
徳間書店取材班

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各分野の現役最高齢プロ15人にインタビューした本です。個々たどってきた人生は違えども、何か共通したものを感じます。

この共通したものこそ、貴重な教えなのかもしれません。この15人の中から、6名を選び、その一部を要約して、紹介させていただきます。



・「こんな仕事、自分のやる仕事じゃない」なんて言わずに、何でもやっておくといい。その経験は、すぐに役立たないが、すべて自分の血や肉になる。10年後、20年後に「あのときの経験が、今、生きているんだな」と思えるときがやってくる(漫画家・やなせたかし)

人生の7割は運努力は1割。売れるか売れないかも本人の運。でも、人生が運で決まるならば、その運に巡りあうよう、いろんなことをやること。「自分に向いていない」なんて考えず、やっていくなかで巡りあう「人」がすごく大事になる(漫画家・やなせたかし)

・「この仕事は向かない」「この仕事は不満だ」と言って、熱を入れず、ずっとウロウロしていたら、一生そのままで終わってしまう。つまらないなら、「どうすれば面白くなるか」と考えて、自分で工夫すれば面白くなるもの(漫画家・やなせたかし)

・精神力がない人間が死ぬ。出撃前に「今日は危なそうだ」なんて言うやつ、遺書なんか書いているやつは、まず帰ってこなかった。どんな悪天候でも無事に帰ってくる、どんなきつい仕事でもこなしてみせる。そんな思いを忘れずに飛んできた(パイロット・高橋淳)

・心に余裕を持つことも大切。それは、常に80%の力でフライトして、20%を余力としてとっておくということ。さもないと、緊急のトラブルが起こったときに、あっさりパニックになる。判断力と決断力も失われる(パイロット・高橋淳)

・「今日も楽しかった、ありがとうございます」と生徒が言ってくれたら、最高の気分。お金を払う側が、お礼を言ってくれるぐらいでないと、プロではない(パイロット・高橋淳)

・せっかく生まれてきたのだから、死ぬまで進歩したい。だから、毎日、毎回反省する(パイロット・高橋淳)

・まず働いて、できるだけオリジナリティがあるものをつくらないといけない。だから、難しいことは考えない。今、面白いということだけが大切(ギター職人・矢入一男)

・正直、東京に行くと、みんな言うことが難しいし、面白くない。社会に貢献してどうやらこうやら。人の役に立たんでもいい。それよりも、人に絶対迷惑をかけないこと、面白いことをするほうが先。そんな簡単に、人の役になんか立てない(ギター職人・矢入一男)

・勘を磨くには場数しかない。たくさんのギターをつくる、暇さえあれば木を触ってみる。そして、いい音楽を聴いて、うまいものを食って、アメリカからヨーロッパまで見て回ってみる。ギターづくりは、論理学より体験学(ギター職人・矢入一男)

・「何かが足りない」と感じるのは、やはり何かが足りていない。もし目をつぶってしまったら、それ以上何かをつかむことはできなかった(ピアニスト・室井摩耶子)

・「体験のズタ袋」をつくっておくといい。ドイツ留学で教わったこと、演奏会で心を揺さぶられたことなど「音楽のズタ袋」に入れている。それで必要なときに、ズタ袋をかき分けて取り出している。このズタ袋は、私の音楽を支える土台(ピアニスト・室井摩耶子)

・若い人は、結果を出せばいいと思っているが、実は「能力」よりも「一生懸命さ」が評価される。極端に言うと、仕事ができなくてもいい。あと少しの作業をその日のうちにやる。また、道具を丁寧に扱う、節約するといった心がけが大切(杜氏・継枝邑一)

・人はいつも自分のしたことに満足したいものだが、満足するのは、何年かに一度でいい。それよりも、目標を上に設定しておくことのほうが大事。できる範囲よりも少し上、できないところを狙うから技術は向上していく(杜氏・継枝邑一)

・成長するには、自分にない知識を持っている人に教えを請うことが大切。「教えてください」と頭を下げてお願いすると、ほとんどの人が教えてくれる(杜氏・継枝邑一)

・経済界で成功された方は、皆さん総じて「サービス精神が旺盛」。「みんなが喜んでくれることはないか」と、相手のことだけを考えて仕事をしている。そこには自分のこだわりがない。ひたすら相手の好みだけを考えている(バーテンダー・山崎達郎)

・90年間生きてきて思うのは、「すべての物事は、原因と結果で成り立っている」ということ。どんなに大変でも、「きっとよくなる」と信じて、毎日を一生懸命生きていれば、必ずそうなる(バーテンダー・山崎達郎)



このプロたちは、長い間、評価され続けてきた人です。言ってみれば、「ロングセラー」の人たちです。

「ロングセラー」には理由が必ずあります。その理由に素直に耳を傾けることは、今後の人生において、必ず役に立つのではないでしょうか。


[ 2013/07/01 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『メディチ・インパクト』フランス・ヨハンソン

メディチ・インパクト (Harvard business school press)メディチ・インパクト (Harvard business school press)
(2005/11/26)
フランス・ヨハンソン

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本の副題が、「世界を変える発明・創造性イノベーションはここから生まれる」です。15世紀イタリアのフィレンツェでは、メディチ家が文化人や芸術家を保護し、彫刻家、画家、詩人、哲学者、科学者、金融業者、建築家など、さまざまな才能ある人が集結しました。

異なる分野、学問、文化が交差する場では、既存の概念を組み合わせて、新しい非凡なアイデアが数多く生まれ、創造性が爆発的に開花します。これを著者は、「メディチ・インパクト」と名付けました。

本書の主旨は「アイデアの交差点」を指南するものです。アイデアをどう見出すかのヒントが満載の書です。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



交差的イノベーションには、「驚きや意外性に満ちる」「これまでにない新しい方向に飛躍する」「まったく新しい分野を拓く」「自由にできる空間が生まれる」「追随者を生む」「その後何十年に渡っての方向性を提供する」「世界に影響を及ぼす」といった特徴がある

・「人の移動」「科学の相互乗り入れ」「コンピュータの飛躍的進歩」によって、交差点はかつてない勢いで増え続けている

・連想のバリアを壊すことに成功した人には、「さまざまな文化にふれた経験」「既存の教育にはない学び方」「思い込みを逆転する」「違う視点に立って物事を見る」といった共通点がある

・文化はルールと伝統によって既定される。ルールと伝統は一定の思考と行動の様式をもたらす。ここに、文化的多様性が連想のバリアを壊すのに、大きな効果を発揮する理由がある。多様な文化的背景と経験を持つことで、物の見方から自由になることができる

・伝統的な文化とのつながりを断ち切られた人や、複数の文化に徹底してさらされた人は、幅広い仮説について考慮できる強みをもち、創造的イノベーションを行う回数が多くなる

・イノベーションをやってのけるのは、独学で専門知識を身につけた人が多い。自分で自分を徹底して鍛えてきたというタイプ

・アーサー・ケストラー(ハンガリーの思想家)は、「創造性のプロセスと笑いのプロセスが似ている」ことを指摘した

・新たに結合する要素が互いに遠いものであればあるほど、そのプロセスや結果は、より創造的なものになる

・アイデアの質と最も強力な相関関係にあるのは、驚くなかれ、アイデアの量である

・イノベーターは成功したから多くを生み出すのではなく、多くを生み出すから成功した。量が質を生む

・クラッシック音楽の作曲家が数多くの傑作を生み出した時期は、たくさんの失敗作を生んだ時期でもある。ある人間が、画期的なアイデアを生み出したからといって、その人が同じことをやってのける確率が高まっているわけではない

重度のプレッシャーがかかったときに、創造性は落ちる。それは、時間的なストレスがかかった日だけでなく、その影響は、翌日、翌々日、さらに次の日まで及ぶ

・浮かんだアイデアに早まった判断を下さないための最良の方法は、アイデアが浮かぶたびに、それを書き留めるか、図にしておくこと。そうすることで、今まで思いついたアイデアについて頻繁に考えることが可能になる

・アイデアを実行しないことこそ最大の失敗であり、罰の対象になることを周知徹底する。失敗の数が少ないときには疑う必要があり、十分なリスクを負っていないか、失敗から学ぶのを嫌って、失敗を隠している可能性がある

・成功した新規事業の大部分は、最初のプランを実行に移し、何が市場でうまくいき、何がうまくいかないかを学んだ時点で、当初のビジネスプランを放棄している。正解を見つけるまで、挑戦を繰り返すことのほうが、最初に戦略を予測するよりも、はるかに重要

・同じ価値観を共有する緊密なネットワークから抜け出さなければ、成功のチャンスの最も大きい交差点に足を踏み入れることができない

・「事がうまく運んでいるからじっとしていよう」「長い間ここでやってきたから動かないほうが無難」「交差点のリスクを既存の視点から見る」といった行動のワナを回避すること

・勇気とは不安に抗うこと、不安を克服することであって、不安がないことではない



創造性やイノベーションは、多様な人が集まる場所で生まれます。同類の人間が集まる場所では生まれません。

同じ価値観の人間同士で徒党を組むと、精神的に楽ですが、その誘惑を払しょくしなければ、大きな成功は望めないというのが、著者の結論ではなかったかと思います。


[ 2013/05/22 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『欲望のマーケティング』山本由樹

欲望のマーケティング (ディスカヴァー携書)欲望のマーケティング (ディスカヴァー携書)
(2012/10/13)
山本 由樹

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先々月のことですが、沖縄本島郊外の道の駅に、「美魔女コンテスト」地区予選応募のポスターが貼ってありました。「美魔女ブーム」が、ここまで浸透してきているのかと、びっくりしました。

その「美魔女ブーム」の仕掛け人が著者です。欲望をとことん肯定する手法が、明るく、単純で、あっけらかんとしていたので、惹きつけられました。著者の手法の中で、納得できるところが多々ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・新しいマーケットを見つけ、ブーム化できた理由は、「欲望」にある。まだ認知されていない人々の欲望をマーケティングし、それをコンテンツ化、ブーム化できれば、そこには新たな消費が発生する

・「絞り込む(ターゲッティング)+巻き込む(エンクロージング)+揺り動かす(シェイキング)」といった3段階の働きかけ(インフルーエンス)が有効。それは、雑誌メディア独自のメソッド

・数字から、新しいマーケットは見つからない

・人間を突き動かすのは欲望。その欲望を聞きとらない限り、その人の本質は理解できない。「言えない欲望」にこそ、その人の本当の姿がある

・「こいつはバカだと思われれば勝ち」。分からないなら教えてやろうかということになる。自分より偉そうだったり、頭がよさそうな奴には、親切にしてくれない

・商品に自信があればあるほど、顧客をもっと増やそうとしてしまい、結果的に元の顧客も失うという失敗に終わりがち

・「選ばれる商品」より「選ばせる商品」にならなければいけない。なぜなら、「選ばれる商品」は、最終的に価格競争になってしまうから

・40代を本当に美しくするのは、衣食住より美食習

・「無難な表現」は何も言っていないことと同じ

・人間が他者に抱く感情は「同情→共感→賞賛→嫉妬」の4段階。「無視」は4つのどこにも分類されない。スターは、賞賛という憧れの頂点に位置するからこそ、賞賛と嫉妬のぎりぎりの際まで登りつめたら注意が必要。油断すると「嫉妬レベル」に入ってしまう

・一度定着したターゲットを変更するのは容易ではない。一度離れていった顧客を引き戻すのも容易ではない

・ごく一部の熱狂が、大衆の熱狂の種火となる。マニアを惹きつける際立った個性だからこそ、一般化できる

・私たちが考えるよりも、消費者がよっぽど先に行っている。だから、私たちは反対に、「自分たちは遅れている」という意識を持つことが必要

・広げるには、「好意的レスポンス」だけでなく「反感的レスポンス」も含めたノイズの発生が必要となる。というのは、たわいない人の悪口や噂話は楽しいから

・「情報」こそ「欲望」そのもの。あらかじめ刷り込まれ、記号化された「情報」が「欲望」を刺激するのであって、「欲望」は単体で存在するものではない。だから、欲望をあおるマーケティングができたなら、そこに新しい市場ができる

・理想へ向かうベクトルは「ああなりたい」。現実から遠ざかるベクトルは「ああなりたくない」。どのアプローチでマーケットにアピールするかはあなた次第だが、大切なのは、「ああ」の部分をどう見せるか

・「なんとなく不満」から、新しいマーケットを生み出すために一番大事なのは、「なんとなく不満」のディテールを刺激すること

・「揺るがす」ための効果的ファクターは、「本当はみんな知ってる、やってる」という共有感と、「乗り遅れてしまう」という強迫感

・目立ち過ぎても嫌だし、埋没したくもない。「集団の意志」を逸脱せずに、「個性」を発揮するという、とても微妙で難しいテーマを背負っているから、ディテールの勝負になってしまう



著者は、女性雑誌の元編集長です。その経験から、人の欲望という「火」を見つけだし、その「火」をあおる「火つけ役」のノウハウに長けているように思います。

火のないところに煙は立ちません。わずかな火をあおって大火にする(ブームにする)には、どうすればいいかを知りたい方には、非常に役立つ書ではないでしょうか。


[ 2013/05/21 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『思考のリフォーム』難波江和英

思考のリフォーム (神戸女学院大学総文叢書)思考のリフォーム (神戸女学院大学総文叢書)
(2012/03/20)
難波江 和英

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本書には、現代思想に関する1000字エッセイが88も収められています。タイトルのごとく、古くて、こびりついた思考を改めるきっかけになる書であり、汚れてしまった思考を洗い落す洗浄剤の役目をする書かもしれません。

本書の中に、考えを改めるきっかけになりそうな箇所が数多くありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・人は「私の考え方」が、実は「私」と似た「私たちの考え方」のコピーであることに気づかない。そして、「私たちの考え方」もまた、「私たちをつくり出した時代の産物」であることに気づかない

見えている部分は、見えていない部分を犠牲にして、それと引き換えに成立している虚構(フィクション)にすぎない。哲学者のホワイトヘッドは「精密であることは、つくりものである」と語った

・私たちにとって「わからないもの」とは、「見ても見えないもの」ではなく、「見えるのに見えないもの」。こうして見落されたものは、抑え込まれ、忘れられた記憶として、思い起こす瞬間を待つ。しかし、「わかるもの」は、それに通せん坊をする

・知識は目標に向かう前進運動から生まれ、知恵は行き帰りの往復運動から生まれる

・「勉強」は学力、「学び」は生きる力。「勉強」は問題に答えること、「学び」は問題を立てること。つまり、「勉強」は理解することを目標にして、理解できないものを消去すること。「学び」は理解することを介して、理解できないものに触れ、恐れ敬うこと

・生きていくには、「考える」より「考え抜く」こと。「感じる」より「感じ入る」こと。対話の効用とは、案外、こんなところにある

・学生たちは「若者は頭が柔らかい」と信じている。つまり、「自分=若者=柔軟」という公式。しかし、実際には、こうした公式化そのものが、「頭の固さ」のあらわれ

・「キャリア」とは「道」。しかし、そのイメージには、人生を自力で構築できるものと考える西洋風の発想が見え隠れする。人が仕事をするのは、道の穴を埋めるためで、そうすれば、あとから来る人が歩きやすくなる

・「外面=仮面」、「内面=素顔」というパターン分けによって、「本当の自分」は「外面」にあるのではなく、「内面」に隠されているという現代人の思い込みが定着した。その結果、人間という存在は複雑怪奇なものでなくなり、なんともシンプルなものになった

・人間は、言葉を操っていると信じているときでも、言葉に操られている。どうやら人間は、動物を檻に入れるように、我が身を言葉の内側へ押し込みながら、その不自由さと引き換えに、社会で生きる存在になり得ている

・長生きすればするほど、住み慣れた家には流儀がしみつくし、思い出もつまる。つまり、人が離れにくく思っているものは、建物の家ではなく、その人によって「生きられた家」

・少年少女は、大人への階段を二つ上がる。一つは、自分を支えてくれたものから独立して、ひとりで生きていく「わたし」になるステップ。もう一つは、他の人たちにも、それぞれ「わたし」があることに気づき、共同生活をしていく「わたし」になるステップ

・ひらめきは「寝て待て」。ただし、「果報」が届かないというリスクもある。直感は「努力(訓練)のたまもの」。反復によって身につく

・芸術とは、日常的に見慣れたものを奇異なものとして表現する「非日常化」の方法。「鳥は生を名づけない。鳥はただ動いているだけだ。鳥は死を名づけない。鳥はただ動かなくなるだけだ」(谷川俊太郎)の詩は、鳥の生死のありのままを澄んだ眼で表現している

・修行の型に坐禅があるならば、走るとは「立禅」。マラソンの極意「10キロで足が変わる。20キロで体が変わる。30キロで心が変わる。ゴールで菩薩になる」

・後ろ向きに限界を知れば、人生に挫折を覚える。前向きに限界を知れば、人生にゆとりを生む。ただし、いずれにしても、限界を知ることには、なんらかの切なさが伴う

・自己の「安心感」より、他者への「感謝」。「居場所」とは、犬でも人間でも、相手によって生かされている喜びの別名

・過度の期待も過度の絶望もしないこと。そのためには「がんばる自分」の体軸とは別に、もう一本「いたわる自分」の体軸を想定すること。人間として壊れないよう、お大事に



本書を読むと、見慣れたものに「同化」してしまう人生、それを「異化」できる人生。この両者の差が大きいことを思い知らされます。

思考も、知恵も、芸術も、楽しみも、この「異化」を身につけることで、より深くなっていきます。日常生活の中に、どこか変なところ、何か違うと思えること、おかしさ面白さを見つけだすことが、日々の思考のリフォームになるのではないでしょうか。


[ 2013/04/10 07:01 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『小説講座・売れる作家の全技術』大沢在昌

小説講座 売れる作家の全技術  デビューだけで満足してはいけない小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
(2012/08/01)
大沢 在昌

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著者は、「新宿鮫」などの著作で知られる作家です。プロの作家として活躍している本人が直接、作家としての技術、ノウハウを公開したのが本書です。

脚本家や作家のように、物語をどう上手に作っていくかが、マーケティングにおいても問われるな時代です。読者(消費者)を惹きつけ、飽きさせない技術をもっと学ばないといけません。本書には、その技術が満載です。その一部を要約して紹介させていただきます。



・作家がよりよいものを書き続けるためのモチベーションは、結局のところ、本が売れるか賞をもらうか、その二つしかない

・キャラクターが中途半端だと途中でストーリーを背負えなくなって、話がダメになることも多い。ストーリーも大事だけど、キャラクターも大事

・嫌な人間というのは、実は自分のことを嫌な人間だと思っていない。最初から嫌な人を書こうとしないで、だんだん嫌な人に見えてくる、じわじわ嫌な感じが広がっていく、そんな風に書いてみる

・変化の過程に読者は感情移入する。物語のあたまと終わりで、主人公に変化のない物語は人を動かさない。主人公にどんな変化を起こさせるかということを意識して、ストーリー作りに取りかかること

・何かを失った人間が、何かを得ることによって、一つの物語が出来上がる。「喪失と獲得」の物語を人は求めている

・謎が解き明かされたとき、「なんだ、そういうことか」と読者も腑に落ちやすくなる。「隠す言葉」を効果的に使えるようになること

面白い小説というのは、ミステリーであれ、恋愛小説であれ、どんなジャンルの小説でも、主人公に対して残酷である。主人公に優しい小説が面白くなるわけがない

・自分を追い詰めれば、アイデアは出てくるもの。もし出てこなかったら、そのときは小説を書く才能が自分にはないと諦めるしかない

・八割は「どうだ、すごいだろう」と感情に流されて書いてもいいが、二割は「この言葉じゃ、伝わりにくいかな」と冷静に見る。八割熱く二割冷めている気持ちで書くこと

・描写とは、「場所」であり、「人物」であり、「雰囲気」。小説はこの三つが絡まって動く

・「発想」は一回きりのものである(「その発想、面白いね。ぜひ小説にしましょう」と、一回きりで終わってしまう)のに対して、「着眼点」と「情熱」は、その作家の武器になる

・描写に困ったときの虎の巻が、「天・地・人・動・植」の五文字。「天」は天候、気候、「地」は地理、地形、「人」は人物、「動」は動物、「植」は植物。それらがあると、描写がふっくらするし、シーンがより印象的になる

・うまく描写するコツは、頭の中に自分だけの映画館を持って、そこで物語を上映してみること。そこには、音もあれば、光もあれば、匂いもある。人物がいて、空気が流れている。その空気を描写するという意識を持つこと

・アイデアの出ない人はプロになれないし、万一プロになれたとしても、とてももたない。ゼロから作りだすものが、どこかで見たようなものであってはダメ

・読むことが好きで好きで読み過ぎて、そこから今度は書きたいという気持ちに転換した、そういう自分を自覚している人でなければ、作家にはなれない

・編集者とのつき合い方は「頼りすぎずに頼ること」

・作家はどこかに神秘性を持っていることが大切。女性作家なら、すごい美人じゃないか。男性作家なら、カッコいい人じゃないかと読者に思わせておくこと

・もっと自分を抑制して、読者をじらせること。読者をいたぶって、引っ張って引っ張って、もうこれ以上我慢できないと読者が手を伸ばしてきたとき、ようやく答えを与えてあげる

・100%の力を出し切って書けば、次は120%のものが書けるし、限界ぎりぎりまで書いた人にしか次のドアを開けることはできない。それを超えた人間だけが、プロの世界で生き残っている



どんな世界でも、プロになるのは厳しいものです。ましてや、筆一本で食っていこうとすれば、その努力は並大抵のことではないと思います。

本書には、作家として食っている人の知恵が披露されています。この知恵は、同業者だけでなく、他の商売にも応用できる貴重なものではないでしょうか。


[ 2013/03/26 07:02 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク』ナンシー関

信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク (角川文庫)信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク (角川文庫)
(1997/06)
ナンシー関

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ナンシー関さんが亡くなられて10年以上経ちますが、彼女ほどの人物鑑識眼を持つ人は、その後現れていないように感じています。

彼女は、「テレビ消灯時間」などの芸能人批評の本を多数遺されていますが、社会批評の本は意外に少ないように思います。

本書は、ナンシー関さんが、不思議な場所に直接足を運んで、感じたことを記載している珍しい書です。面白い箇所が多数ありました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・何かを盲目的に信じている人にはスキがある。自分の状態が見えてないから。しかし、その信じる人たちの多くは、日常生活において、そのスキをさらけ出すことを自己抑制し、バランスを保っている

・自己抑制のタガを外してしまう時と場所がある。それは、同じものを信じる「同志」が一堂に会する場所に来た時。全員が同じスキを持っているという安心感が、彼らを無防備にさせる

・絵本崇拝者が信じているものは、作品自体のクオリティよりも、絵本そのものに元来まとわりついている様々な概念にある。「大人になっても子供の心を持ち続ける」だの「夢がある」だの「心が安らぐ」だのといったもので、「その絵本」に対するものとは限らない

・絵本派の人々が、自信ありげに、何の疑いもなしに、絵本を礼賛するのは、絵本に一種の踏み絵的能力があると思っているから。絵本の良さが分からないのは、あなた自身に問題があるからだ、てなもんである

・「フェニミズムの実践」の形を目のあたりにすると、どうしても引いてしまう。徹底することは重要だが、どうしてもバランスの悪さが引っかかる。「運動」として「下手な見せ方」をしている。「上手く取り込む」ことが勝ち

・情報過多の今の世の中、盲信することは昔ほど簡単ではない。だったら何が「報い」となるのか。具体的報いはないと思う。「子供を劇団に入れている」状態が気に入っているのだと思う。そしてまた、子供を劇団に通わせるために犠牲を払っている自分が好きなのだ

・数字が並ぶところになぜか発生する、配列の特別性の信仰。その中でもダントツの支持を得る「ゾロ目」の威力。その力に吸い寄せられるように、数字配列マニアは、どこかへ集約する

・自分のことを「ちょっといい話」の主人公にしてくれる魅力が年寄りを引き寄せる。「自分が主人公」という考え方は、老若男女を問わず、陥りやすい蜜壷である

・「主流(流行とも言う)に乗る」ことへの抵抗感の消失は見事。抵抗感の有る無し、へそ曲がりと素直、どちらがいいわけではない。「主流に乗る」若者の何も考えてなさ加減と同様に、一昔前の若者の「(とりあえず)主流を拒否する」も、実は考えなんかない

・「第一」たるところには、それに立ち向かうためにつめかける人がたくさんいる。建物や施設のオープニング、道路や橋の開通、海開き山開き。「オープン記念」や「開通」に、いても立ってもいられない「物見高い人」は多い

・「福袋」の奥義とは、「もしかしたら大もうけかも」→「やっぱり損した」→「ちっきしょう」→「でも自業自得ね」→「ま、正月だからいっかあ」。この揺れ動く心模様が、人をまたひとつ大人にする

・同じ目標物を手に入れようとする人間が行列をつくる時に、そこには闘争心とある種の連帯意識が生まれる。誰よりもいい席を獲りたい、君たちには負けないぞという気持ちと、価値観を同じくする者としての仲間意識が交錯する

・「コチョウラン」が「最も高価」な花であるがゆえの宿命なのか、それともそんな「高価だけど下品」な人たちに、いたく気に入られてしまったから「コチョウラン」が「高価な花」になったのか

・日常生活の価値規準とはズレたところに、「幸せ」を見る、特殊な人たちが群れ集う「別天地」には、無防備に心を開いてしまう「無邪気」の異常さがある

閉じた小世界の異常な常識は、自白のもとにさらされると、やっぱり理解しがたい「謎」なのであり、その「異常な常識」を「異常」と自覚できない住人たちの危ういバランスはモロい。つけ入るスキだらけ



本書が書かれたのは、ほぼ20年前です。この20年で、ネット化が進み、信仰の現場は、リアルの場所から、ネットの中の場所へ、急速に移ってきています。

しかし、ネット社会になっても、「信仰の本質」は、何ら変わっていないように思います。ネットの世界とリアルの世界のバランスを守ることが、今の時代、一層求められてきているように感じます。


[ 2013/03/23 07:00 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『情報の文明学』梅棹忠夫

情報の文明学 (中公叢書)情報の文明学 (中公叢書)
(1988/06)
梅棹 忠夫

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本書のもとになったのは、1963年に梅棹忠夫さんが発表した「情報産業論」です。テレビが登場してすぐに、今日の放送文化、情報文化を予言されていました。

本書は、1988年発刊の書ですが、ネット時代の現在でも、古さを感じません。そういう意味で、梅棹忠夫さんが天才だったことを改めて認識する次第です。

情報とは何か、情報産業とはどういうものか、著者が考える中で、今でも新鮮に感じる記述を、一部要約して紹介させていただきます。



・教師の社会的存立を支える論理とは、教育内容の文化性に対する確信以外にない。こうみるならば、放送人も一種の教育者である。仕事に創造的エネルギーを注ぎ込んでも、その社会的効果を検証するのは困難である

・新聞人は、本質的に報道者であるが、放送人は、本質的に報道者ではない。むしろ興行者に近い。テレビは速報性をもちながらも、報道が中心になることはない

・放送人は、新しい開拓地に独特の文化を樹立しつつあるパイオニアたちである。偉大なるアマチュアこそ、フロンティア・インテリゲンチャの特性である

・フロンティアの自由を満喫した初期の放送人たちも、やがてだんだん窮屈になってくるであろう。官僚的セクショナリズム人間関係の系列化は、どこからでも忍びこんでくる

・一定の紙面を情報で充たし、一定の時間内に提供すれば、その紙が「売れる」ことを発見したとき、情報産業としての新聞業が成立した。スポンサーから料金をとる民間放送も、売っているのは「時間」ではなく、その時間を充たす「情報」であるから、原理的に同じ

・情報の内容を言ってしまってから、「この情報を買わないか」ともちかけても商売にならない。だから、情報産業においては、先に金を取るのが原則である

・映画や芝居は、入口で入場料を取る。あれは観覧料であるが、観てからでは金が取りにくいので、入場することで料金をとる。映画や芝居も情報産業であることは明らか

・人類の産業史は、農業の時代、工業の時代、精神産業の時代という三段階を経て進んだ

・農業の時代は、生産されるのが食料であり、消化器系の機能充実の「内胚葉産業」の時代。次に、工業の時代は、人間の手足の労働代行であり、筋肉を中心とする「中胚葉産業」の時代。最後の精神産業の時代は、脳神経や感覚器官の機能拡充の「外胚葉産業」の時代

・需給関係で決まるといっても、情報は、聞くまでが花。一回聞いてしまえばおしまい。原則として、同じものがないし、見込み買いばっかり。そこへ、原価計算の原理を持ち込むと、変なことになる。芸術家の作品料や出演料も同じで、原価計算は成立しない

・情報の価格決定法について、暗示を与える現象は「坊さんのお布施」。価格は、お経の長さや木魚をたたく労働量で決まらない。お布施の額を決定するのは、「坊さんの格」と「檀家の格」。偉い坊さんにたくさん出し、金持ちは、けちな額のお布施では格好がつかない

・ホワイトカラーと呼ばれる人たちの大部分は、実は情報取扱業者

・今日において、農業生産物はすでに食料ではない。それは、食品として、味、香り、形など、多様な情報を満載した情報産業商品である

・生産と労働が、消費と享楽を伴うのではなく、消費と享楽が、生産と消費を導き出す。工業が情報産業への奉仕者となりつつある

・情報の時代には、情報の批評家ないしは解説者が不可欠である。情報氾濫の時代になればなるほど、情報の情報が要求される

・お免状の発行は、一種の巧妙な情報産業。それは、社会的に認知された権威にもとづいている。そして、権威そのものが、もともと極めて情報的なもの。江戸時代の京都の公家は、朝廷の権威を背景に、官位の発行権を独占し、一枚の紙切れの代価で生活していた

・都市は情報の場である。情報の集積と交換の場である。都市の発達は、市場すなわち物質交換の場として発達したという推論は必ずしも正しくない。むしろ、神殿を中心とする情報交換の場として発達した可能性がある

・情報産業の時代は、工業の時代における過剰教育の成果としてできたもの。高学歴者は、いわば、過剰品質人間。今日においては、この過剰品質人間が、社会の情報化を進めている。情報の時代にあっては、国民にいくら高度な教育を施しても、しすぎることはない



情報の時代を、情報産業の時代としてとらえるよりも、精神文化産業の時代としてとらえるべきという梅棹忠夫さんの着眼点に感服します。

「胃腸の時代」から、「筋肉の時代」へ、そして、「脳と感覚器官の時代」への変化を、しっかり認識して、未来を見つめていくことが大切なのかもしれません。


[ 2013/03/13 07:03 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『横井軍平ゲーム館RETURNS』横井軍平、牧野武文

横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力
(2010/06/25)
横井 軍平、牧野 武文 他

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横井軍平さんを知らない人が多いと思いますが、任天堂で数々のアイデア玩具を開発した後、ゲームウォッチファミコンを発明した方です。日本ゲーム界の父であり、日本国に多大なる貢献をされた方です。将来は、ゲーム神社?に祀られるかもしれません。

残念ながら、1997年、56歳で交通事故死されました。亡くなられる直前にインタビューしたものが本書です。日本の技術開発への指針となる言葉が数多く遺しておられます。それらの中から、一部を要約して紹介させていただきます。



・「売ることに徹すること、技術者の見栄を捨てることが、私の開発哲学。そう思って、今までやってきたものが、そこそこヒットしているので、そう外れた考え方ではないと思う」

・「私には専門の技術がない。全体をぼんやりと知っている程度。何かを作るときに、技術が必要でも、自分で勉強せずに、専門家を集めてきたらいい。開発のキーマンは『おまえ何やってんだ』と言われるのが怖くて、自分で勉強してしまう。それが間違い」

・「全体が見られる人間がこの世の中に少ない。みんな細く深く技術を習得していこうという姿勢になる」

・「『こうやれ』と高圧的に命じてしまうと、そのグループは動かないし、知恵も出してくれない。まかせてしまえば、技術者がやる気を出して、いろいろと提案をしてくれる」

・「理屈がわかっていないといけない。理屈がわかっていれば、どんどん応用が利いてくる」

・「難しい計算ができるのが偉いんじゃなくて、その計算をしたら何に役立つかがわかることが大切」

・「不要不急の商品のニーズは『暇つぶし』。暇つぶしのニーズを探り出すのは、そう簡単にはいかない。『何をしたら楽しいか』というのは、なかなか見つけにくいもの」

・「技術者にユーザーが何を求めているかを伝えることは簡単。しかし、『ユーザーが何を求めていないか』を探し出すのは難しい。『ユーザーはこう言っているが、本当のニーズはこうなんだ』ということを技術者に説明するインターフェイスの役目をする人間が必要」

・「インターフェイスになる人は、決して優秀な技術者である必要はない。センスがある人感覚が優れている人にやらせばいい。それを直接技術者がやったのでは、あれもできるこれもできるで、すごい商品を作ってしまう。すごい商品は必要ない。売れる商品が必要」

・「それを、お金を払って買う気になるかをいつも自問自答している。つねに第三者の目で、自分のやっている仕事を見直すことが重要なこと」

・「技術者というのは、自分の技術をひけらかしたいものだから、すごい最先端技術を使うことを夢に描いてしまう。それは商品作りにおいて大きな間違いとなる。売れない商品高い商品ができてしまう」

・「『その技術が枯れるのを待つ』こと。つまり、技術が普及すると、どんどん値段が下がってくる。そこが狙い目。ゲーム&ウォッチを5年早く出そうとしていたら10万円の機械になっていた。それが量産効果で、3800円になり、それでヒットした」

・「枯れた技術を水平に考えていく。垂直に考えたら電卓、電卓のまま終わってしまう。そこを水平に考えたら何ができるか。そういう利用法を考えれば、いろいろとアイデアは出てくる。これを私は『枯れた技術の水平思考』と呼んでいる」

・「ものを考えるときに、世界に一つしかない、世界で初めてというものを作るのが私の哲学。それは、競合がない、競争がないから」

・「安く作らないと売れないというのは、アイデアの不足

・横井氏に入れ込んでしまうのは、アナログ玩具だけの人でもない、デジタル玩具の人でもない、両方で活躍した人だから。こういう人は、世界的に見ても、ゲーム業界以外の世界を見ても、極めて貴重。そろばん職人が、コンピューターを開発したようなもの

・「枯れた技術の水平思考」は、先端技術で勝負するな、アイデアで勝負しろという教え

・「ものぐさ+便利」「動きの面白さ」の二つは、横井マインドそのもの

・横井氏は、「実直そうな人」という印象だが、実は音楽や自動車に造詣が深い「趣味人」。子供のころからピアノを習い、学生時代は社交ダンスで大会に出場、外車を乗り回し、夏にはダイビングを楽しむ学生時代を送った。この頃の感覚が生きているものが意外に多い



ゲーム文化を創った横井軍平さんが、仕事や会社や人生を楽しんでいたことがよくわかりました。文化を創るということはこうでなければいけません。

日本人は、アリのように真面目に働きますが、その上にキリギリスがいないと泥沼に入ってしまうように思います。ずるくないキリギリスの存在が、今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。


[ 2013/02/27 07:03 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)

『あの日、「負け組社員」になった…』吉田典史

あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方
(2009/12/11)
吉田 典史

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著者は、実際に、上司とぶつかり、退職を求められ、それを拒み、経営陣と争った方です。会社員が負け組になるのは、大きな差ではなく、たった1ミリの差(ささいな言葉や行動、ささやかな配慮)であると述べられています。

負け組にならないためには、どうすればいいのか、著者の実体験による数々の指南は、会社員として身を守るために役立ちます。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・後輩を育てると、今度は自分の立場が脅かされる。「○○を育ててやってくれ」といった命令は、聞いているふりをしておくだけで十分。正直者がバカをみるのが日本の会社

・人事部は、異動のときに「君の引き取り手はいない」と嘘をつき、その社員の責任にしようとする。引き取り手を探すのが人事部の仕事のはず

・人事部は、「そんなことは言っていない」とあいまいにする。人事部は、形を残したくない。対策として、合意事項の一筆啓上を願い、それが断られても。ICレコーダーなどに録音しておき、貴重な証拠とすること

・まともな会社は、社員を辞めさせようとするとき、解雇などせずに、社員の自尊心を傷つけてくる、仕事を取り上げる、年下の社員の傘下に入れるといったからくりを心得ておくこと

・前職で優れた実績がある人を認めない文化が根強い会社に行っても、入社後苦労する。歴史ある従業員300人以下の会社にそういう例が多い

・20代~30代の浅はかな女性は、徒党を組んでエスカレートする。泣き寝入りすると、一段とひどくなる。彼女たちには明確な論理がないので、自分が狙われたら、みんなの前で、大きな声で反論すること

・一定水準以上の会社では、社内競争が激しく、変人を排除する意識が高い。したがって、職場での感情的な発言はタブー。小さな会社では、社員がごねる言動をとると得をすることもあるが、そのせいで、意識の高い人が辞めていく

・争いになったとき、会社は退職強要を素直に認めず、「辞めろ!なんて言っていない」とシラを切る。会社は、どこまでもダーティーな組織

・部長が「辞めろ!」と言ったら、それは社長が言ったことと同じ意味。弁護士や労働監督署などは、部長を訴えると同時に社長を訴えることができる

・社内の噂は、「その社員を排除したい人が流すもの」と「他人の噂をすることでしかストレスを発散できない人たちが吹聴するもの」の二つの力が結集されて、「噂が噂を呼ぶ」状態となる

・役員や人事部が守るのは、けっして会社員ではない。あくまで会社を守る

・会社では、「人の噂も20日」。所詮、それくらいの希薄な人間関係しかないのだから、いじめを受けても、排除されても、落ち込む必要はない

・「あなたたちに何の責任もないとは言えない」の言葉は、権力の側にいる人の常套句。日本がかつて戦争に負けたときも、当時の指導者層は「国民に責任がないとは言えない」として、戦争責任をうやむやにした

・社員を辞めさせるときの常套手段は人事異動。不得意な仕事をさせる部署などに送り込もうとする。だからこそ、自分が異動になる理由は聞いておくこと

・冴えない女性たちから支持を受けるボス的な女性には注意すること。自分を過大評価し、慇懃無礼な態度をとる可能性が高い。けっして相手にしないこと

・「学歴なんて一切関係ない」と言う人は、不満を抱え込んでいる人。うまくいっている人を陥れようとするので、警戒すること

職場で浮く人は、自分が見られているという意識が弱い。こんな人は、遅かれ早かれ、排除される

・「独立」という言葉を口にするのはタブー。それが、いずれ上司や人事部の耳に入る。その結果、評価で低く扱われたり、配置転換などを受けやすくなる。不満があっても、それを口にしないのがプロの会社員



自分が会社員時代、「あってはいけない行動」をよくとっていたように思います。今思うと、背筋が寒くなってきます。

致命傷となる「スキ」をつくらないために、気をつけておかねばならないことが会社生活には多々あります。本書には、その「スキ」を埋めるポイントが列記されているように思います。


[ 2013/02/20 07:01 ] 仕事の本 | TB(0) | CM(0)