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『嫉妬のお作法』川村佳子

嫉妬のお作法 (フォレスト2545新書)嫉妬のお作法 (フォレスト2545新書)
(2014/06/07)
川村佳子

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嫉妬は厄介なものです。嫉妬は、人間の遺伝子に組み込まれたものであり、それをなくしていくのは容易ではありません。

本書は、嫉妬をなくすのではなく、嫉妬への対処法、つまりお作法について書かれたものです。なかなか読みごたえがあります。それらの一部をまとめてみました。



・嫉妬心は、人間が生まれてから死ぬまで、ずっと付き合っていく感情。基本的な感情である「喜怒哀楽」に、この「嫉妬」が加わってもいい

・人間関係に共通する一つのキーワードが「嫉妬」。親子、兄弟、嫁姑、友人、同僚、部下、恋人、ご近所の人など、あらゆる人間関係にまつわる問題の多くが「嫉妬」に結びつく

・嫉妬心は、自分と他者を比較したときに湧き起こってくる感情

・「妨害された」「妨害されるのではないか」という危機感不安感が、嫉妬心に火をつける

・嫉妬心は抑圧され、変形された間接的な方法(悪口を言う、批判する、中傷する)で、表される

・成人期、社会人になると、自分と他者を比較することから目を背けられなくなる。受験や恋愛、就職、出世、才能、容貌、健康、財産など、嫉妬心は「自分より優れた人」「評価の高い人」に、ますます向けられる。現役を退いて、老年期に入っても続く

・「うらやむ」は、他者の優位性をはっきり認めた上で、その状態になれない自分を省みることができる状態。一方、「妬み」は、他者の優位性は認めてはいるものの、省みることをせずに、むしろ自分の中から排除しようとするもの

・手を伸ばしても届かない人には憧れを抱き、少し手を伸ばしたら、届きそうな相手には嫉妬する

・「調和」と可能性の「平等」が、逆に、妬みやひがみを生みやすくしている

・嫉妬には、「1.貶める『嫌がらせタイプ』」「2.不満をぶつける『ストレス発散タイプ』」「3.時間をかけて復讐する『自己優越タイプ』」「4.目をそらす『現実逃避タイプ』「5.悔しさをパワーに変える『自己成長タイプ』」がある。目指したいのは5のタイプ

・嫉妬深い人の特徴は、「自己アピールの強い人」「目立ちたがり屋の人」「噂好きな人」「虚栄心の強い人」「他者と常に比較する人」

・正論や正義を振りかざし、人を正そうとする人には、自分では気づいていないが、嫉妬心が根底にある。そういった人の特徴は、間違いや失敗を何より恐れ、自信がないために、「自分」を主語にせずに、「世間一般」や「常識」を盾に、世間の意見だと言ってくる

嫉妬されやすい人の5つの特徴。「1・正直すぎる人、率直な人」「2.相手が嫉妬するかもしれないという想定が足りない人」「3.自慢せずにはいられない人」「4.無頓着、無自覚な人」「5.存在感のある、目立つ人」

・男性は、「表面上は嫉妬心など抱いていない」といった、涼しい顔をしている。嫉妬心を表に出すことで、自分の評価を下げたくない、という気持ちがはたらく

・男は学歴に嫉妬する。女は美しさに嫉妬する

・人間関係に悩みを抱える相談者は、「嫉妬する」側が多いと思われがちだが、実は「嫉妬される」側の相談が多い

・嫉妬深い人から身を守るには、一定の線引きをして、深入りをしないこと。いっさい関係を持たないと、敵視されてしまうので、注意が必要

・嫉妬の矢を自分以外の場所へ方向転換させるには、「運が良かっただけ」「皆さんの協力があったおかげ」といった、自分だけの実力でないことを強調すること

・嫉妬心が湧き出るとき、目の前の相手や出来事を極端に考えてしまう。それを防ぐには、「根拠のない決めつけ」「白黒思考」「部分的焦点づけ」「過大評価・過小評価」「すべき思考」「一般化」「自己関連づけ」「情緒的な理由づけ」の思考グセに注意を払うこと

・本当は自分がそうしたいと思っているのにできないこと、自分で制限していることを自由に行っている相手が現れたとき、嫉妬してしまう



本書は、嫉妬は誰でもするものなので、嫉妬されたときに身を守る方法が大切であるという内容の書でした。

喜怒哀楽に次ぐ、第5の感情である「嫉妬」からの防衛戦略書ではないでしょうか。


[ 2014/08/27 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『特に深刻な事情があるわけではないけれど』山口路子

特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです特に深刻な事情があるわけではないけれど 私にはどうしても逃避が必要なのです
(2013/05/22)
山口 路子

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このタイトルの後に『私にはどうしても逃避が必要です』と続きます。だらだら長いタイトルが、本書の内容を暗示しています。

著者の逃げたいこと(「前向きに生きる」「人づき合い」「家庭」「仕事」「世間」日常)「良識」「孤独」「貞操」「夢を叶える」「運命」)を挙げて、それを説明していくのが内容の書です。その一部をまとめてみました。



・「自分に疑いをもたない人」との会話は時間の無駄。疑いなし人間、前向き人間、まっすぐ人間に遭遇したら逃げてしまう

・欲していない道を選ぶこともまた本人の欲望。ほんとうに、人間とは不可解な欲望をもつ生き物

・悪意よりも非難よりも恐ろしいもの、それは自分の個性が消滅させられてしまうこと

・「自分のしたいことをしたい、自分が楽しいと感じることをしたい」と決意したなら、そのときは、「人に意見を求めない」強情さが必要になる

・人づき合いの恐いところは、愛から憎悪への変換がたやすいこと。「愛しすぎている」というのは、もはや愛ではない、「愛していない」のと同じ

自分のために生きていない人は、いつか窒息する。「私を窒息させるのは、そうあるべきだという理想」(アナイス・ニン)

・個人的な楽しみこそが、人生のテーマ。仕事と同じくらいのエナジーで真剣になれる「喜び」をもっているのかどうか。ポイントはそこ

・明日できる仕事を今日するな。他人ができる仕事を自分がするな

・他の誰とも似ていない自分自身であり続けるためには、「世間が非難するところのものを育てる」(コクトー)べき

・多くの人に好まれるものは、ろくでもないもの。世間を意識して生きるのではなく、自分を同じ香りの価値観をもつ人たちを意識して生きる。そのことで「ろくでもない」人生から遠ざかることができる

・誰かを見下すことで安心する人は、醜い人。「合法的な愛は、自由奔放な愛を見下すのを常とするもの」(モーパッサン)

・中身がからっぽな人になるのが嫌なら、日常から離れてみなければならない

・人は一生の間に、言わなければならない言葉を言うために生きる

・異常も正常もない、不健全も健全もない、ただ、違っていることこそが、生命の基本原理

・道徳教育とは、偏見教育のこと。「道徳なんて、全く相対的なもので、その国や地方の風俗から生じたものであり、偏見の結果にほかならない」(澁澤龍彦)

・「幸福なときが正しくて不幸なときは間違っている」(サガン)のであるならば、できる限り正しいところの近くにいたいもの

・経済的な成功、名声、そこに人の価値があるのではない。自分自身が直接的あるいは間接的に関わった人に美しいものを残すことができるかどうか。人の価値はそこにある

・すべきことも大切な人も、探してはいけない。「探すのではない、出会うのだ」(ピカソ)

・「肝心なのは、嘘を避けること。いっさいの嘘を、特に自分自身に対する嘘を」(ドストエフスキー)

・熱烈な告白は、決して冷えた魂からは生まれない。恥ずかしいほどに熱い魂からしか生まれない

・自分が何者なのか「決意する」という行為には、その道を進むための強さを取り戻そうという意識があり、生きることへの答えもある

・生きている意味は、ひとりひとりの人間を感じとる熱い想いの中にある



人生を真面目に生きようとする著者の決意のようなものを感じました。

真面目に生きようとすればするほど、小さな逃避がないとやりきれないのかもしれません。


[ 2014/08/13 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『群れない力』関口智弘

群れない力 「人付き合いが上手い人ほど貧乏になる時代」における勝つ人の習慣 (経済界新書)群れない力 「人付き合いが上手い人ほど貧乏になる時代」における勝つ人の習慣 (経済界新書)
(2013/04/25)
関口 智弘

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著者の力強さが全面的に出ていて、スカッとする書です。みなぎる自信がこの発言を生んだのだと思います。

独立自営で生きている人は、こうあらねばなりません。本書の、決意表明のような内容の中から、共感できたところをまとめてみました。



・人付き合いが上手い人ほど貧乏になる時代

・厳選された付き合いであっても、いざという時に力を貸してくれるのはごくわずか。その一方で、一方的に友達と思い込んで、タカりに来る連中の多たるや、数知れず

・1日24時間のうち、自由裁量の8時間を、しょうもない知り合いとの交流に使うのか、自分を高めるために使うのか。その時間の質の違いが、人生の質の違いをつくっている

・「友達」とは、家族みたいな無償の愛に近い形で結びついているもの。相手に期待する時点で、もはや利害関係であり、本質的な人間関係のつながりではない

・真のコミュニケーション能力とは、本音で語り合って理解し合える価値観の共通点が多い人間を選びだして深くつき合う力

・コミュニケーション能力とは、自分の価値観や考えを正しく相手に伝える力のこと。言い換えれば、価値観が同じ相手に好かれる力であり、価値観が違う相手にキッパリと嫌われる力のこと

弱い奴らは、存在意義がないに等しいから、群れになって影響力を強めようとする

・ザコ同士が群れたところで、シナジーなんて生まれるわけがない

・群れというのは、絶えず敵をつくりだすもの。群れに属していない人間を群れの中から否定することで、自らの信ずるものや、正しいと思うことを正当化する材料とする

・群れに属することで平穏無事な生活が保障されるので、誰もが群れに依存する。社会の支配者からすれば、これほど楽なことはない。今も昔も、村八分の概念は、日本社会に深く根づいている

・世の中の多くの人は、人脈が大事だなんて言いながらも、他人様を利用して、手前がおいしい思いをすることしか頭にないのが現実

・会社でのうわべづき合いを効率的にやり過ごすには、近寄りがたい雰囲気を醸しだすのが一番。「仕事はできるんだけど、仕事以外に興味なさそう」と思わせたらしめたもの

・ランチタイムという時間は、薄っぺらい人間関係の連帯感を確認する場として使われることが多く、そのスパイラルに巻き込まれると、抜け出すことは容易ではない

・お客様が神様であっても、福の神なのか、疫病神なのかは見極めるべき。疫病神であるならば、何のためらいもなくぶった切るくらいの決断をしてしかるべき

自分の時間を確保するためには、絶対に自分のお客さんからは時間外に問い合わせが来ないようにしておくこと

・無視もまた一つのコミュニケーションの手法。コミュニケーション上手は、相手の反作用を生まないために、あえて無視というコミュニケーション手法を多用している

久々に電話をかけてくる奴の用件は99%が面倒事なので、連絡がつかないほうがいい。あなたに繋がらなければ、また別のターゲットに狙いをつけるだけだから

・普通の生活をしていて得られる人脈や仲間というのは、往々にして薄情な利己主義者で、いざという時、頼りにならない

・家族同様に、無償の愛を捧げられるような相手こそ、真の友。その価値があるかどうか見極めるためには、お互いに本音で語り合う必要がある

・自分の思うがままに生活すること、思ったことを口にすることが、すべて法律で禁止されているかのように、自分を殺している人が多い

・会社はあなたを幸せにするために存在していない。会社が儲けるために存在している



著者が首尾一貫して主張しているのは、「自分中心でいい」ということ。

自分中心=群れないことこそ、すべての生命力の源であり、勇気の源になるのではないでしょうか。


[ 2014/07/28 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『関係する男・所有する女』斎藤環

関係する女 所有する男 (講談社現代新書)関係する女 所有する男 (講談社現代新書)
(2009/09/17)
斎藤 環

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精神医学者である著者の本を紹介するのは、「30歳成人時代の家族論」「ヤンキーと精神分析」に次ぎ3冊目です。鋭い分析力で、現代人の精神病理を解明されています。

本書では、男と女の本質的違いを分析しています。異性を知る上で、貴重な書ではないでしょうか。その中で、納得できたところをまとめてみました。



・男と女の最大の違いは、「所有」と「関係」の違い。所有を追求する男と関係を欲する女

・「性愛」こそが、すべての欲望の根源。欲望をもたらすのは常に「差異」であり、性差こそが、人生で最初に経験する、最も重要な「差異」にほかならない

・欲望に傷つけられまいと否定を重ねていくと、人はシニシズム(冷笑主義)に陥る。シニシズムは防衛としては強力だが、自分の欲望すら否定するので、しばしば間違った悟りのような境地を作り出してしまう

・男にとっては、結婚したばかりの妻こそが「最高の妻」。性格的にも外見的にも。だからこそ、男は結婚による所有欲の満足に酔いしれる。しかし、妻は変わっていく。外見も性格も、そして「夫に対する忠誠度」までも

・男子は社会的地位、とりわけ「良い職業+良い結婚+良い子孫」への期待度と重圧がことのほか高く、必然的に学歴が重視される

・男性は自分の立ち位置、つまり「立場」を所有していないと安心できない。しかし、女性は、男性ほど立場にこだわらない。女性は「関係」によって自分を支えようとするから

・男子の場合、自己評価を決めるのは「社会的スペック」。すなわち、知的・身体的能力やコミュニケーションスキルなど。外見的よりは本質的・機能的な側面にこだわりが強い。「恥」や「世間体」の意識も、「能力を低く見積もられるのでは?」という葛藤によるもの

・女子の視線を意識し始めた男子は、外見以上に自分の能力にこだわり始める。それは女子にアピールする要素として、社会的評価が最も重要であることに気づくから

・女子には、外見よりも能力といった発想はあまりない。外見と能力の評価はあくまで別物であり、どちらかと言えば、外見重視に傾く

・女性は「1度に1人」が原則。新しい恋人ができる度に、過去の男は消去(デリート)され、新たな関係が「上書き」される。恋人フォルダには1人分の容量しかないから

・異性のどこに魅力を感じるかという点で、男女で一番分かれるのは「ルックス」と「」。「男は目で恋をし、女は耳で恋に落ちる」なんて格言があるくらい。男は女の声に驚くほど無頓着。顔さえよければ、相当の悪声でも個性的な美声に「脳内変換」されてしまう

・哲学とは、言葉だけで閉じた世界を構築しようという試み。これは極めて男性的な言葉の使い方。男が使う言葉は、それによって世界を構築する=所有するための道具にほかならない

・「女らしさ」と呼ばれるものの大半は、可愛い髪型や化粧、フェミニンな衣服あるいはしとやかな仕草といった、身体=外観に関わる要素から成り立っている。要するに、女らしい身体性とは、他者の欲望を惹き付ける身体性を意味している

・「女らしさ」にも容姿以外の内面的な要素もある。例えば「やさしさ」「おとなしさ」「従順さ」「受け身性」などだが、これらはいずれも「欲望を放棄する態度」にほかならない

・女性は「共感脳」を持っている。相手が感じたり考えたりしていることを察知し、それに反応して適切な感情を催す傾向を持つ脳。他者への配慮にすぐれている反面、他者の感情に左右されやすい問題がある

・男性は「システム脳」を持っている。対象をシステムとしてとらえ、そこにあるパターンや因果関係を論理的に理解することを得意とする脳。しかしその分、他者への共感は不得手であり、攻撃的になりやすい問題がある

・男が会話するのは「情報伝達」が目的。だから男は、いつも会話の結論を急ぐ。一方女は、結論を出すためよりも「会話そのもの」を楽しむことが目的。だから男性は、女性の愚痴につきあうのなら、すぐに答えを出してはいけない



「♪男と女の間には~、深くて暗い川がある♪誰も渡れぬ川なれど、エンヤコラ今夜も舟を出す」(黒の舟歌)という曲が、昔ありましたが、今も男と女には、深くて暗い川が存在しています。

本書を読むと、男と女の根本的な違いが理解でき、川底が浅くなり、透明度も増してくるのかもしれません。


[ 2014/06/18 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『人類滅亡を避ける道』関野吉晴

人類滅亡を避ける道―関野吉晴対論集人類滅亡を避ける道―関野吉晴対論集
(2013/04)
関野 吉晴

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著者は、医師と大学教授を務めながら、南米の先住民を尋ねる旅を20年続けて、植村直己冒険賞を受賞した探検家です。

そのユニークな活動をされている著者が、日本の賢者9名と対談したのをまとめたのが本書です。人間とは何かを深く語り合う内容の書です。

その中から、宗教学者の山折哲雄氏、芥川賞作家の池澤直樹氏、霊長類学者の山極寿一氏、作家の島田雅彦氏との対談が、面白かったので、その4氏の主張をまとめてみました。



・「欲望の制限や抑制ということを考えるならば、まず人類が狩猟採集の段階から農耕の段階へ移行した時期のことを考え、捉え直してみることが非常に重要」(山折哲雄)

・「日本には、黒潮に乗って日本列島にたどり着いた南方系の平等社会に則った文化と、中国大陸からの氏族社会、階層社会との対立構造がいつの間にか形成されていた」(山折哲雄)

・「関心が蓄積に向かう土着農耕民に対して、移動する人たちはできるだけムダを省くから、欲望を制限する方向に向かう」(山折哲雄)

・「移動する、歩く、旅する。それは人間の限界を試すことにつながっていく。当然、移動の途中は、欲望をコントロールする知恵や工夫が働かざるを得ない。欲望を抑制していく生き方については、その知恵や工夫からも多くを学べる」(山折哲雄)

・「インドは、世界最大の民主主義国として生き残っている。その根源エネルギーは、カースト制度。社会学者は、カースト制度を、人間を不幸にするマイナスの制度と語るが、そうではない。カースト制度こそ、土着の生活から生まれた観念であり、価値観」(山折哲雄)

・「翁が童子を養い、育てる。童子は翁を尊敬して生きていく。こんな関係を大切にした文化は、世界でも日本だけ。これからの高齢社会、老人問題を考えるうえで、大事なのは、日本特有の「翁」の思想と「童子」の思想」(山折哲雄)

・「文明とは、農村ではない、絶対に都市。狭いところに人がたくさん集まって、密度が高まって、出会いが増えて、小さくすればするほど効率が上がって、面白いものがどんどん出てくる」(池澤直樹)

・「成長と拡大はどこかで行き詰まる。大量生産・大量消費とは、その外側に資源の大量搾取と廃棄物の大量蓄積がある。だから、いつまでも続かない」(池澤直樹)

・「資本の論理というのは悪辣。少人数で多くの仕事ができるようになると、多くの人に仕事を少しずつ分けたりしない。どんどん首を切って人を減らす。残った連中は首になるのが嫌だから、めちゃくちゃ働く。そうすると、その仕事が他に回らない」(池澤直樹)

・「人間の家族は、平等性や対等性を担保する「負けないためにつくられた社会の装置」だと考えられる。家族は、繁殖における平等を徹底的に保証するだけでなく、他の家族を支配したり、攻撃したりしない」(山極寿一)

・「人間は狩猟によって進化したのではない。その逆で、人間を襲う強い肉食獣から身を守り、生き延びるために、コミュニケーション能力や共同体を発達させてきた」(山極寿一)

・「人間以外に、家族と共同体を両立させた動物は一つもいない。なぜなら、家族と共同体の論理は対立するから」(山極寿一)

・「資本主義というのは、キリスト教やイスラム教よりも、より世界に浸透している「宗教」。資本主義は「拝金教」として世界で最も成功した宗教。中国でも信者が多くなっている」(島田雅彦)

・「働きながら暮らすほうが、実は楽。そして、働かずに暮らすことほどキツいことはない。ゼロ円では食っていけないし、生きがいがないと食っていけない」(島田雅彦)

・「イギリスで成功した人は、いつまでも都会で暮らさず、田舎に引っ込んでジェントルマンになる。発展の恩恵に浴した者も、発展し続けてもロクなことはないと悟り、あこぎなふるまいを反省し、この先は滅びない程度に力を抜こうとする」(島田雅彦)

・「人は、ある程度大人になって悟ってきたころに、みんな優しくなる。この「優しいおじいちゃん」になる感覚は、誰もがたどり着く先。その「おじいちゃんの哲学」は、民族レベルでも成熟度とともに発揮されてくる」(島田雅彦)



人間が滅亡しないためには、何が必要かを、それぞれの専門家が持論を述べる刺激的な対談集でした

これらに共通していることは、やはり「少欲知足」ということです。どうすれば、人間の欲を抑えることができるか、これも立派な学問なのかもしれません。


[ 2014/06/11 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『生きる悪知恵』西原理恵子

生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)
(2012/07/20)
西原 理恵子

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きっぱりと本質を言い切る女性は少ないものです。修羅場をくぐり抜けてきた女性はなおさら少ないものです。その代表格が西原理恵子さんではないでしょうか。著書を紹介するのは、「この世でいちばん大事なカネの話」以来。

本書も、きれいごと一切なしの本音トークがさく裂。少し女性の怖さを感じてしまうくらいです。ともかく、勉強になった悪知恵をまとめてみました。



・日本人って「正直であれ」とかよく言うが、真面目すぎると生きづらい。もっとウソつきでいい

・私の仕事は、笑わかしてナンボ。自分の表現がどうかとか関係ない。もらえる仕事は何でもやってきた。身もフタもないことを平気でできるというのは大事。プライドで飯は食えない

・生きるって、みっともないことだし、みっともなくていい。あの手この手で、どうにかして生き残った者が勝ち。そのためには、ついていいウソがある

・嫌な会社って嫌な人しかいない。いい会社っていい人しかいない

・もう二度と会わないと思えば、どんなに嫌われてもいい。後ろ足で砂かけて、「立つ鳥跡を濁す」でいい

・どちらかが失業したり病気になったりしたら、もう一人が頑張って支えるのが結婚というシステム。夫婦どちらかに頼りきりというのは、すごく無謀で危険なこと

・年収300万が不満だったら、隣の350万の人を真似すること。年収5億の人は真似できない

・どんな間違った情報でも、真っ赤なウソでも、絶えず発信し続けた人間が勝つ。どんな証拠があっても、言い続けると、それが正義になる。世界の歴史を見てもそう

・嫌な上司を改心させよとしても無理。こういう人は、弱い者にはとことん強く、強い者にはペコペコする。だから、あなたが力をつけて強い立場になるしかない

・「育てたい」とか思っても、育たない。だいたい育つ人は勝手に育つ

・人を育てるというのは、すごく手間暇がかかること。自分の子供でも難しいのに、愛情もない可愛くもない部下はどうにもできない

・ウソはいけないことではない。自分の心のバランスを保つために、うまいこと使えばいい

・まずい飯しか作れない人というのは、ほかの生活部分もいろいろまずい人

・商売は雪山と一緒。うっかり一緒に登ったら、夫婦で遭難してしまう

・才能があるかどうかなんて、やってみないとわからないし、親が判断することではない。それは世間様が判断すること。まず世間様にお出ししてみないとわからない

・一番大事なのは、家族と仕事。そこに親は入っていない。邪魔なら親でも何でも捨てないと、自分が難破してしまう。親と仲よくできないと悩むこと自体がムダ。親子仲よくなくてヨシ困ったときはカネで解決

・夫婦は、親友であり戦友でないと成り立たないもの。つまり、フェアであること。どちらかに負担をかけるばっかりでは、何十年も持たない。結婚はフェアトレード、等価交換ということ

・素敵な彼と結婚したかったら、彼の持っている仕事力や人間力と、自分の持っている力と同等にする努力をすること。要は、売りどころを鍛えるということ

・家も仕事も子供も全部持っている者が、全部なくした被災者には何も言えないはず。同じような体験をした人が、どうやって立ち上がって歩いてきたかが、被災者の一番の救いになるはず

・女の子はみんな生まれたときからホステスなので、うまくあしらうことができるはず。嫌いなヤツでも適度にほめて、近寄るふりをしてさっと逃げるような間合いをとる能力があるはず



貧病争の激しいところでは、人は生きるのに必死です。人生相談をする資格があるのは、そこから抜けてきた人だと思うのです。その適任者である著者の発言には、スカッとした爽快感があります。

まずは、生きること。その先のことを考えてもしかたがないよ、という書でした。


[ 2014/06/09 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『美女入門金言集』林真理子

美女入門金言集 マリコの教え117美女入門金言集 マリコの教え117
(2013/07/19)
林 真理子

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林真理子さんの本を紹介するのは初めてです。週刊誌のエッセイや小説など、意欲的な執筆活動には、いつも感心させられます。

本書は、今までの執筆作品の中から、女性、結婚、恋愛、ファッションに関する選りすぐりのものばかりです。それらの一部をまとめてみました。



・美人というのは、ディテールに凝る

・魔性の女たちに共通しているのは、ねっとり感投げやり感

不幸な女は、誰からも嫉まれない、嫌われない。だけど、そんな人生つまらない

・神様は、美女に生まれつかなかった女には、少々の才能と、美容に頑張れるようなお金をくださる時もある

・女は、階段を上り始めると、もっと上があることがわかってくる。歯を食いしばって、上に上らなきゃならなくなる。すごくつらいし、苦しい。だけど、これが野心というもの

・花には水、女にはお世辞。女のコにとって誉め言葉はすごく大切。それを言ってくれる男性のところに、自ら赴くべき

パーティーなんていうものは、いっときのもの。でも、このはかなさは、とても甘美で楽しい。女が美しくなるためには欠かせない多くの要素を含んでいる

・この頃ははっきりとわかる。内側のものって、時間をかけて外に出てくるみたい

・「体が目的では」と疑うより、「私の体は目的にされるぐらいスゴい」と自信を持つ。そんな時期、女のコはカラダをピカピカに磨く。それでまたグレードアップする

・いい男をひとり手にすることは、いい男のグループに入れる権利を手に入れること。やっぱり、いい男のグループがおマケで欲しい

・男の人にモテる女の大きな要素は、「可愛いわがまま」というやつ。仔猫のように男の懐に入って、ニャゴニャゴ甘えるすべをよく知っている。どこまで甘えていいのか、どこまで許されるのかも本能的によくわかっている

・女というのは、自分が別れてほしいときは、あっさりとキレイに別れてくれなきゃ困ると思うものの、それだとやはり物足りない。「別れましょう」と言った瞬間、「そうだね」と返されるほど淋しいものはない

・愛を貫くと、後悔が、金と地位を選ぶと、空しさが、セットでついてくる可能性は高い

・結婚という選択は重い。女がそれまで生きてきた年月、知恵やありったけの美意識、その人の今までの金銭観や人生観が問われる作業

・夫の悪口を言いまくる女性は、そんな男を選んだ自分がいかに馬鹿だったか、天下に公表しているようなもの

おしゃれになるというのは、「我慢できないもの」「こうでなきゃイヤ」というものが増えるということ

・おしゃれって結局はディテールのアイテム。おしゃれとかファッショナブル、といわれる女性は、小物に凝りに凝っている

・お買い物は、一回ごとに女を甦らせてくれる。反省をし、そして再生に向けて歩き出す

・どうせ私なんかと思うことが、不幸癖への第一歩。おもしろそうなことがあったら、何も考えずに、そっちに行ってしまえばいい

・人間、誉めてくれる人がいなけりゃ、いじけてしまう。だけど、叩く人がいなければ、ファイトもわかないし、勝ち気にもなれない。このバランスって、とても大切

・悲観するたびに女はフケる。辛いことがあっても、前向きに生きないと、女は美しくなれない



本能に、忠実にまい進している著者ならではの人生観が、本書によくあらわれているように思います。

本能を抑制しながら生きている人がほとんどの中、著者の人生観は、やってみた人でしかわからないことが満載です。


[ 2014/06/04 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(1)

『大停滞の時代を超えて』山崎正和

大停滞の時代を超えて (中公叢書)大停滞の時代を超えて (中公叢書)
(2013/07/09)
山崎 正和

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著者の本を紹介するのは、「社交する人間」に次ぎ、2冊目です。本書は、読売新聞や中央公論などに寄稿されたものを再編集した書です。

劇作家、評論家、思想家としての顔を持つ著者ですが、本書は、珍しく時事問題を論ずる内容です。斬新な切り口の論評に、気づかされることが多々ありました。それらの一部をまとめてみました。



・国際会議は二国間交渉とは違って、必ず第三国を巻き込み、それを納得させる言葉を必要とする。しかも、その言葉は当事者の利益を表現するだけではなく、各国の見栄や面子を操る美辞麗句を含まねばならない。国際会議は舞台上に繰り広げられる演劇である

・言葉は対話ではなく鼎話構造を持つ。実際、二者間の伝達は、言葉ではなく、肉体の実力行使によっても可能であり、怒りや憎しみは殴打や無視によって、愛情は微笑や抱擁によって、言葉によるよりも切実に伝えられる

・個人主義には、他者に自己を主張する「堅い個人主義」と、自己を表現する「柔らかい個人主義」の二種類が並立する。日本人は「柔らかい個人主義」の先駆的位置にいるが、反面この柔らかい個人主義の社会は、急激な危機に弱く、一転して集団主義の相貌を示す

・大きな人口の規模は、個人に自立と政治的自由を保証する。都市では地縁や血縁による締めつけも弱くなり、選挙の際の利益誘導も難しくなる。都市の無名性は、犯罪の土壌となる危険性もあるが、生活スタイルの自由をもたらす点では、それを上回る価値がある

・金銭は将来いつか他人から身を守り、他人を支配するための準備であって、客観的な数値で量られる武力に似ている。拝金主義者にとって、他人は潜在的な敵にほかならず、社会はゼロサムゲームの戦場に見える

・人生に金銭は不可欠、金銭に欲望を持つのも自然、投機も資本主義経済に不可欠というが、忘れてならないのは、文明社会では必要であることと礼賛することは別。必要なことも恥じらいながらするのが文明であって、この恥のありなしが社会の品格を決める

・公共的使命のもとに、経営者の知恵と感性によって、精緻に編まれた組織は、一種の文化財。内に幸福な従業員を抱え、外に満足した消費者をつなぎとめる企業は、少なくとも一つの生命体

資本と労働との関係は長い歴史を持つ。人類は労働権の適切な保護に知恵を絞ってきた。これに比べ、資本と経営の分離の歴史は浅い

・社会の倫理性を自然に高めるためには、人が職業人の誇りを抱き、結果として「恥を知ること」が第一。そのさい「高貴なる者の責任」を本人が自覚するのは当然だが、この自覚はその高貴さを社会が敬うことで支えられる

・今日の地域を貧しくしているのは、たんに金銭的な富の欠乏だけではなく、文化力が衰退したという思いと、それに伴う誇りの喪失が原因

・民主主義とは言葉による政治。そして政治の言葉は、抽象的な理念と具体的な政策の的確な組み合わせでなければならない

・互いに表現し、認め合う場は、固い組織ではなく、「社交」と呼ぶべき緩やかな関係。社交は、強い指導者と指揮系統を備え、力を評価基準にする組織とは逆。中心人物はいるが、権力も指揮系統もなく、自由な個人が自発的に集まる。人間的な魅力が評価基準となる

個人の欲望と社会の規制は、どちらも主張と要求が命であって、個人が飽食と淫奔と自己顕示を求めれば、社会は節約と禁欲と自己規制を命令する

・「」は、社会秩序の逸脱の世界に生まれ、虚栄心の逆説で逆転させて生じた美徳

・科学の基礎は観察と実験だとされるが、このどちらも想像力に左右される。統計と帰納とコンピュータの能力だけでは、科学は萎縮してしまう

・道徳と諺をつなぐものは、繰り返し。より抽象的に言えば、身体の習慣。諺や箴言が口になじむ言葉だということは、言葉が朗唱や暗唱に適していて、身体の癖になりやすいことを意味する。「口癖」になり、折に触れて「口をついて出る」のが諺の特色

・自らの営みを強く誇りとしながら、他人に追従や模倣を要求しないのが嗜みの本質。同じ意味で、伝統承継者が尊敬されるのも、彼らが自律の心に徹し、流行の追随をむしろ秘かに軽蔑しているところにある



著者は、大停滞の時代を超えていくためには、人類の文明史を一貫した流れとして捉える理解が必要との見解です。

この閉塞感に覆われた社会を生きていくためには、今一度、事の本質を解き明かすことが大事なのではないでしょうか。


[ 2014/04/21 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『迷わない生き方』富田隆

迷わない生き方 (新人物往来社文庫)迷わない生き方 (新人物往来社文庫)
(2011/12/07)
富田 隆

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心理学者として有名な著者が、「自分を不幸と思っている女性」にアドバイスしたのが本書です。

「もっと自由に」「もっと楽しく」「もっと自分らしく」そして、「調和も大切」が本書のテーマです。心理学者の意見として、参考になる点が多々ありました。その一部をまとめてみました。



・最初は両親の意見、年齢が上がるにつれ、先生の意見、先輩の意見、親しい友達の意見も加わり、それらの影響を受けて、ある種の、善悪を中心にした判断の枠組みが心の中にできあがる。それを「スーパーエゴ」と言う。言わば「内なる道徳」みたいなもの

・スーパーエゴと呼ばれる判断の枠組みは、すべて過去の経験に基づいている。だから、過去においては、その判断は社会や世間に適応的だったかもしれないが、今も当てはまるかわからない。今現在もそれがいけないことなのかどうかはわからない

・小さい頃から叩き込まれたスーパーエゴ(内なる頑固ばあさん)の、「これは正しいことだ」「人間はこう生きるべきだ」の声を聞き、それが自分の価値観だと思ってしまったら少し危険。それは、かつて植えつけられたものにコントロールされているということ

・周りからの暗示に邪魔されて、本当にやりたいことがわからない。そんな方は、昔を振り返ってみると、やりたいことが見つかる場合がある

・ハングリー精神を信奉する人たちは、「人間は怠け者で、放っておけばダラダラする。欠乏している状態、苦しい状態から這い上がるとき、がんばる」という人間観がある

不快を避けるために動くか、快を求めて行動するか。子供の頃から、どちらが多かったかによって、その人の人間観みたいなものが決まる

・正の強化を受けた行動は放っておいても持続する。しかし、負の強化に支えられた行動は、何らかの脅威や不安あるいは脅かす役割の人がいなくなった瞬間に自発されなくなる

・ビジネスで成功する人には「成功癖」がついている。普通の人が「これは無理だ」と止めてしまうところでも諦めない。それは根性とかではなくて、正の強化により支えられてきたもの

・快楽に支えられた行動のほうが、脅威や不安に支えられた行動より「楽しい」

・「快楽を追い求めてなんかいると、快楽に溺れてしまう」と堕落の心配をする人がいるが、全く心配する必要はない。なぜなら、求める快楽は、自然に、段階的に成熟していくから

・自己実現の欲求も満たされると、人のために何かしたくなる。褒められたい、認められたいからではなく、誰かが幸せそうにしていることが嬉しい。自分に関わる欲求を超えたところに、欲求が芽生えてくる

・本当に欲しいものが手に入らない。あるいは、どうしていいかわからない。そういう状況では、何かへの依存が起こる

・存在を認め、選択肢の幅を広げ、自由にしてくれる。それが正しい宗教。それ以外は、帰依してきた人を利用して何かしようとする場合が多い

・本当に鬱になると、人は性的ではなくなる。生きることと性的な欲望は繋がっている

・恋愛とは、異質なものと出会い、異質なものに恋いこがれる体験。別の個別者と出会うことによって、自分らしくなっていく。そういう意味でのエネルギー源が性だと言える

・何かに夢中になり、どんどんのめり込んで忘我の境地に至る。この仕組みは、個人の体験では性愛に似たものであり、性をモデルとして考えると理解しやすい

・生き方全般において正しいギャンブルをしていないと、利益を吸い上げる仕かけとしてのギャンブルにはまってしまう

・人を大切にする気持ち(愛)や人の役に立つ喜びといった素朴な心を失わない限り、あなたが発揮するユニークネスは魅力となり価値を生み出す

・個性化した者が、別の個性化した存在と良い関係を作ることによって、さらに良い、非常にクリエイティブなことが起こる

・調和とは嫌なものを認めること。だけど嫌は嫌でいい。好きにならなくてもいい



自分を縛りつけているものを見つけ、そこから自由になること。その自由を謳歌しながら、他人とうまく調和していくこと。これが豊かな生き方かもしれない。

本書には、そういう生き方を迷いなく実行するヒントが数多く記されているように思います。


[ 2014/04/16 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『人は死んだらオシマイよ。』山田風太郎

人は死んだらオシマイよ。 (PHP文庫)人は死んだらオシマイよ。 (PHP文庫)
(2006/02)
山田 風太郎

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山田風太郎氏の本を紹介するのは、「人間魔界図巻」「人間風眼帖」に次、3冊目です。

本書は、山田風太郎氏の小説、エッセイの中から、生と死について語った言葉を集めたものです。冷たいようでいて暖かい、氏の性格がよく表れているものが数多く載っています。それらをまとめてみました。



・もし自分の死ぬ年齢を知っていたら、大半の人間の生きようは一変するだろう。したがって、社会の様相も一変するだろう。そして、歴史そのものが一変するだろう

・ダメ人間の典型のような啄木は、数限りもないダメ人間たちの共鳴に支持されて、「大詩人啄木」の讃歌は永遠に消えそうにない。これが人間世界の面白さ。生きている間は優勝劣敗の法則に支配されるが、死後までを通観すると、必ずしもそうでないのが人間の世界

・男の世界は、男が二人おれば、食うか食われるかの関係にすぎない。悪などという言葉にとらわれないのがいい。天下を取るためには悪人にならねばならない。いや、大悪人にならねば天下を取れない

・強いやつには弱く、弱いやつには強いというのは、日本人のいちばん情けない癖

・人間は青年で完成し、老いるに従って未完成になっていき、死に至って無となる

・予想というものは、一般に希望の別名であることが多い。希望とは自分の利益となる空想である

・この世に一万人の人間がいるとするなら、そのうち九千九百九十人までが、ばかで、弱虫で、そいつを十人ほどの利口で強い奴が、おだてたり、だましたり、おどしたりして、いいように絞りあげている

・「金は出すが、口は出さない」という奇特な人は意外にいる。銀行の預金者、それから、日本の納税者。「金は出せ、その代わり口を出してもいい」というのは女房。「金は出せ、口を出すな」というのは、セガレや娘が親に対して言いたいセリフ

・金がくだらぬものと承知しているゆえに、そのくだらぬ金のことで苦労するのはいやなもの

・人間、いちばん気にかかり、気にさわるのは、自分とよく似た型の人間。これこそ出世競争の敵だから

・夢の中の恐怖ほど、恐怖の純粋形はない

・「去る者を追わず、来る者は拒まない人」は人生の達人、「去る人を追わず、来る者は拒む人」、これは厭人病で、私などこれに近い

・人に同情を与えることは、必ずしも軽蔑することではないが、人の同情を受けることは、軽蔑を受けることと同様である

・みんな日本が破産状態になるとか何とか脅すけれど、太平洋戦争の敗北のときでさえ凌いだのだから、あれに比べれば、コップの中の嵐みたいなもので、破滅状態にはならないと思う

・人生は野球や将棋や麻雀ほど純粋ではない。だから、それだけ、こういうレクリエーションが愉しいといえる。人生と同じだったら、レクリエーションにはならない

・「あの世」への親近感などないが、「この世」への違和感ならある。いわゆる「厭世観」というやつ。ただしほんのちょっぴり

長命の人々は、みんな春風たいとう、無欲てんたんのお人柄かと思ったら、そうではなく、みんな人の頭でも踏みつけて人生を越えてきたような個性の持ち主に見える

・人の生まれ方は一つだが、死にゆく姿は万人万様である

・いろいろあったが、死んでみりゃあ、なんてこった、はじめから居なかったのと同じじゃないか、みなの衆

死者への記憶は、潮がひいて砂に残った小さな水たまりに似ている。やがて、それも干あがる



死と人生とお金、これらは一体何なのか、山田風太郎氏の見解と結論が、本書に記されているように感じました。

それらは、あるものをないように思い、ないかもしれないものをあるように思っているだけ、ということだと思います。


[ 2014/03/26 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『われ以外みなわが師』吉川英治

われ以外みなわが師 (私の人生観) 新装版われ以外みなわが師 (私の人生観) 新装版
(1992/07)
吉川 英治

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「我以外皆我師」という言葉は、吉川英治氏が言って、世に広まっていったということも、今や忘れ去られようとしています。

本書は、「宮本武蔵」など、多数の著書がある吉川英治氏の人生観がよく現れており、珠玉の言葉が満載です。その一部をまとめてみました。



・転機は人生をつくる最大の一瞬。岐路の人生は、運命と人間の協同創作。自己の力が勝ってつくる場合もある。運命のつけた題名と運命の書いた筋書にもって行かれてしまう場合もある

・転機は、運命と自己との飽和された合作でなければならない。自己の力のみによって、急角度な転機を曲がろうとすると、いつも「茨の花、曲がった道も茨の花」である

・小説というものは作家も読者もお互いに自己の掘り下げみたいなもの。共同の人間開発でなくてはならない

・今日、民衆の中に何が一番欠けているか。考えてみることは先ずこれである

・人間が理智的になってきている。遠い過去の中には、今日にあってほしいような強さ、強靭な神経、もっと希望と力を持って歩いていくというような生活力、といったものがあったはず。それが今日はかなり稀薄になっている

・社会史なんか見ても、根底の野性というものの力が重要な役割を果たしている。野性の生命力が、後に咲く花の球根の役をしている。近代で言えば、野性と人間の叡智、科学と結び着いたものが、人間の中の生命体として瑞々しいものを持つ

・どうも人間は誰でも、自分が少し励んでいると、おれはかくの如くやっていると、すぐ自負してしまうところがある。それが何事においても修業の止まりとなってしまう

・伊達政宗の詩にもあるように、「青年馬上に棲む」といった気持ち、常に戦場に馳駆し、奔走する気持ち、そこにはハチ切れるばかりの精気と、活気と、それから余裕とが充ちあふれる

・武蔵は処世下手でも、世にすねたり、逆剣をつかう人ではなかった。独行道の冒頭に「世々の道に反かず」と書いているのを見ても窺われる。彼の孤独と不遇を、生涯、彼に持ち続けさせたものは、やはり「道」のためだった。求道一筋への犠牲だった

・歌人や俳人の遍歴は、人間を避けて自然の懐を慕うが、武蔵のそれは、行雲流水のうちに身をおいても、その視界は人間の中にあった。人間が解決できない生死の問題に、その焦点があった。その究極の目的として、形にとっているものが、つまり彼の「剣」である

・武蔵が「我れ事に於て後悔せず」書いてあるのは、彼がいかにかつては悔い、また悔いては日々悔を重ねてきたかを、言葉の裏に語っている

・五輪書中、武蔵が最も力を注いでいるのは、最後の「空の巻」。ここに至って、この書は、世の通念的な兵法書ではなく、精密なる哲学書になった。仏典、儒学、天文、諸芸諸道に参究して、そして、身一つを犠牲にして体得した、武蔵独自の哲学

・現代の女性は驚くべき表現を自覚してきた。それだけ、女性の生存もせちがらくなってきたに違いない。生存の激しさから女性美が発達する。女性美も産業である

・女性の採点率には多くの場合、男性としては弱点というものが加算されている。ずいぶん男性を観ている女性は却って男性がわからないし、婆さんになってからやっと間に合わない事を少しずつ解ってくる

・女性は、初めから完全に自分のものになりそうな男性を求めるから間違う。全部をもって恋愛に投じてくる男などに生涯を寄せようとするのは大きな危険。女のものになりきれる男を仮につかんでみたところで、それが女性の幸福感に何であるのか

デザイン過剰は、行き詰まりの混乱、末期神経のあえぎ。整理のない繁茂はあり得ない。
いいものほど、ほとんどは単調。民衆の素朴さは、それゆえに尊いし、健全だと言える

・「食えないから」は、一般庶民の生態には一理由になるが、宗教家の言いわけにはならない。飢餓にぶつかるときこそ、庶民は「いのち」の支えを探す。その彷徨混乱に伍して、依然たる布施経済の習性を持ち続けようとするのは無理。いや、あまりにも無慈悲

・古いものすべてがかびるのではない。永遠な「いのち」あるもののみが、常に新鮮なのである



本書には、吉川英治氏の人生論、文学論、宮本武蔵論、女性論、宗教論が記されています。なかでも、宮本武蔵論からは、著者の哲学を多くうかがい知ることができます。

宮本武蔵は「剣」によって、人生を悟っていきましたが、吉川英治は「宮本武蔵」という小説によって、人生を悟られたのかもしれません。


[ 2014/03/14 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『ポケットに名言を』寺山修司

ポケットに名言を (角川文庫)ポケットに名言を (角川文庫)
(2005/01)
寺山 修司

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寺山修司を紹介するのは、「両手いっぱいの言葉」に次ぎ、2冊目です。

本書には、詩人や演劇作家として活躍した著者の好きな言葉、人生に影響を与えた言葉が載っています。天才奇才と呼ばれた著者が懐に入れていた名言とは、何だったのか?それらの一部をまとめてみました。



・言葉の肩をたたくことはできないし、言葉と握手することもできない。だが、言葉にも言いようのない、旧友の懐かしさがある

・少年時代、ボクサーになりたいと思っていた。しかし、減量の苦しみ「食うべきか、勝つべきか」の二者択一を迫られたとき、食うべきだと思った。腹の減った若者は怒れる若者にはなれないと知った

・井伏鱒二の「さよならだけが人生だ」という言葉は、私の処世訓。それは、さまざまの因襲との葛藤や、人を画一化してしまう悪と正面切って闘うときに、現状維持を唱えるいくつかの理念(習慣と信仰)にさよならを言うことで成り立っている

・ブレヒトの「英雄論」をなぞれば、「名言のない時代は不幸だが、名言を必要とする時代は、もっと不幸だ」。そして、今こそそんな時代である

・「君は小さいときはサンタクロースを信じ、大人になっては神を信じるんだ。そして、君はいつも想像力の不足に悩むんだ」(映画・野いちご)

・「私は人間の不幸は只一つのことから起こるということを知った。それは部屋の中で休息できないということである」(映画。柔らかい肌)

・「死んだ女より、もっとかわいそうなのは、忘れられた女です」(マリーローランサン「鎮静剤」)

・「人生は苦痛であり、人生は恐怖である。だから人間は不幸なのだ。だが、人間はいまでは人生を愛している。それは、苦痛と恐怖を愛するからだ」(ドストエフスキー「悪霊」)

・「幸福とは幸福をさがすことである」(ジュール・ルナアル)

・「どうか僕を幸福にしようとしないで下さい。それは僕にまかして下さい」(アンドレ・レニエ「半ばの真実」)

・「でも堕落は快楽の薬味なのよ。堕落がなければ快楽も水々しさを失ってしまうわ。限度をこさぬ快楽なんて、快楽のうちに入るかしら?」(マルキ・ド・サド「新ジュスティーヌ抄」)

・「苦痛に二種あるように、快楽にも二種ある。一つは、肉体的快楽であり、二つめは、予想の快楽である」(エルヴェシウス「人間論」)

・「われわれは苦しむ以上に恐れるのである」(アラン「幸福論」)

・「崇高なものが現代では無力で、滑稽なものにだけ野蛮な力がある」(三島由紀夫「禁色」)

・「希望はすこぶる嘘つきであるが、とにかくわれわれを楽しい小道を経て、人生の終わりまで連れていってくれる」(ラ・ロシュフコオ伯爵「道徳的反省」)

・「ユートピアとは、贋物の一つもない社会をいう。あるいは真実の一つとない社会でもいい」(トマス・モア「ユートピア」)

・「苦しみは変わらないで、変わるのは希望だけだ」(アンドレ・マルロオ「侮蔑の時代」)

・「精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけなのだ」(三島由紀夫「美徳のよろめき」)

・「仁義なんてものは悪党仲間の安全保障条約さ」(黒澤明「酔いどれ天使」)

・すべてのインテリは、東芝扇風機のプロペラのようだ。まわっているけど、前進しない

・煙草くさき国語教師が言うときに明日という話は最もかなし

・レースはただ、馬の群走にすぎないが、その勝敗を決めるナンバーは、思想に匹敵する

・どこでもいいから遠くへ行きたい。遠くへ行けるのは、天才だけだ



最初と最後の章は、寺山修司本人の言葉です。ちょっと斜に構えた視線から発する言葉は、真実や本質をさりげなく表現しています。

寺山修司が亡くなって30年が経ちますが、現代は、秀才が世にはびこり、彼のような奇才が生きにくい時代になっているのかもしれません。


[ 2013/12/18 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『人生の指針が見つかる・恋愛の名言1300』別冊宝島編集部

人生の指針が見つかる 恋愛の名言1300 (宝島SUGOI文庫)人生の指針が見つかる 恋愛の名言1300 (宝島SUGOI文庫)
(2011/03/04)
別冊宝島編集部

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別冊宝島の文庫本を紹介するのは、「お金の格言1000」「座右の銘1300」に次ぎ、3冊目です。

お金も恋愛も欲望に変わりありません。欲望を成就する言葉が数多く載せられている書です。その中から、ためになった名言を紹介させていただきます。



・愛とは、孤独な人間が孤独を癒そうとする営み(エーリッヒ・フロム)

・恋愛の徴候の一つは、彼女に似た顔を発見することに、極度に敏感になることである(芥川龍之介)

・愛の記憶は永遠に消えるものではない(ナポレオン・ヒル)

・どんなやり手の、辣腕といわれる男でも、惚れた女には甘くて、抜けてるってことがある。反対に、相当したたかな、がっちりした女でも、男に対してはどこか無条件で優しい。それが異性同士のふれあいの、微妙さじゃないかな(岡本太郎)

・本当に人を愛するということは、その人が一人でいても生きていけるようにしてあげること(三浦綾子)

・その人の前に出ると、絶対にうそが言えない、そういう人を持つといい(相田みつを)

・愛を恐れることは人生を恐れること。人生を恐れる者は、すでに4分の3ばかり死んだも同じ(ラッセル)

・女のおしゃれは恋心に比例する。おしゃれをしなくなった娘は危険です(宇野千代)

・自分は愛されている、と思っている女はいつも魅力があるものだ(伊藤整)

・美しさが女の命なら、男の魅力はお金を動かす実力よ(チャールズ・レデラー)

・高尚な男性は、女性の忠告によって、いっそう高尚になる(ゲーテ)

・男は「これぞ、と感じる女を奪ってやれ」と思う。女は奪わず、そっと盗む(ニーチェ)

・男は将来に向かって努力し、女は習慣に向かって努力する(ゲーテ)

・男が臆病になり、女が大胆になる時、本当の恋が始まりかけている(ユーゴー)

・大部分の女の才気は、彼女らの理性よりも、狂気を強めるのに役立つ(ラ・ロシュフコー)

・男は知っていることをしゃべり、女は人に悦ばれることをしゃべる(ルソー)

・幸福な家庭の顔はお互い似通っているが、不幸な家庭の顔はどれもこれも違っている(トルストイ)

・恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる(リヒテンベルク)

画竜点睛といってね、結婚も確かに点睛の一つだよ。夫を持ったり、子供を持ったりする度に、人間の心の眼は開けてゆくものだよ(川端康成)

・人の持つ一番の財産は、共感してくれる配偶者である(エウリピデス)

・おそろしきは涙の後の女子心なり(樋口一葉)

・情欲に流されるのはいい。だけど、流されているという自覚を持つんだ(岡本太郎)

・幸福な人とは、過去の自分の生涯から、満足だけを記憶している人々であり、不幸な人とは、それの反対を記憶している人々である(萩原朔太郎)

・嫉妬の心には愛よりもさらに多くの自己愛がある(ラ・ロシュフコー)

・本当の愛は宗教心とさう違ったものではない(夏目漱石)

・愛は人生に没我を与える。それ故に愛は人間を苦しみから救う(トルストイ)

・追いかけてはいけない。追いかけないのが恋愛の武士道である(宇野千代)



恋愛という欲望は、他の欲望と違って、相手がいないことには成り立たないものです。自分の思いだけではなんともならないところが恋愛の難しさです。

お金があっても買えない、お金がなくても買える、のが恋愛であり、その恋愛の手ほどきの事例が満載の書です。参考になる点が多々あるように思います。


[ 2013/10/27 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『森毅の置き土産・傑作選集』森毅、池内紀

森毅の置き土産 傑作選集森毅の置き土産 傑作選集
(2010/12/22)
森毅

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本書は、森毅さんの遺作の随筆から、池内紀氏が70品ほど名作を選んだものです。著者の柔和な顔から発する鋭い発言は、甘いカプセルに包まれた苦い薬のように感じられます。

今回は、その中から、教育論、文化論、人生論にスポットを当て、効き目のある文章を選び、要約して紹介させていただきます。



・鍛錬せねば学力がつかぬというのは敗北主義である。鍛錬によらずに学力をつける道を追究するのが教師。それができないなら、あっさり敗北を認めて「鍛錬せねばつかない学力」なんて断念してしまったほうが、罪が軽い

・文化というものは、社会に寄生しているもの。若い社会では、まだ菌もあまり育っていないし、それらに養分をとられては生きていられない。それがある程度成熟すると、文化を寄生せぬと生きていけない。寄生とは共生でもある

・文化を商売にするということは、社会に寄生しているということ。それは社会の成熟の流れに身を置くことだが、「たかが寄生の文化」を誇るのはおかしい

・老人になっても、少年や若者の心を持つためには、自分が子供や若者だったころのことを、引きずってはいけない。心の中の子供は年をとらなくてもよいが、時代は流れている。五十年前の子供ではなくて、今の子供でなくては、今の時代を生きられぬ

・本場ニューヨークのミュージカルもいいが、宝塚もいい。それは本物志向の上流ではなくて、中流文化の産物。上流でもなく、大衆でもなく、その中間に中流があってこそ、都市文化

・人間というものは、自分の物語をつくることによって生きる。物語というのは芸能であって、思い出には虚構がまじり、虚構の力によって真実が映える

・ゆとりというのは、金や時間の問題ではなくて、自分の味のこと。人生の目的は、そのときどきで目標を持つことはあっても、結局は自分の味にゆとりを持たすことしかない

・目的達成の効率ということなら、人生の七割くらいはムダのようなもの。そして、そうしたムダを生きることで、その人の人格が作られる。仕事が人間を作るのではなく、暇が人間を作る

・産業も、学問も、カビも、そして人生も、四十年ですっかり変わる。しかし、それでは不安だから、現在の前後十年を安定させ、人間は生きていく。十年以上昔は、今と違う世の中だが、思い出という物語に封じ込むと、世の中は変わらないと信じて生きていける

・心の貧しい人の他人への気遣いは、その他人にとって迷惑である。豊かな心だけが、他人へ愛を届かせる資格を持つ。他人に気を遣ってばかりでは、自分の心がいじけてしまう。まず何より、自分に対して気を遣うこと。自分の心ほど、人間にとって大事なものはない

・隠すことによって得られた「血のこわさ」といったものは、一見きれいごとでも、非暴力の足しにはならない。人間という存在のやっていることは、できればすべて、目にしたほうがいい

・自由化というのは、本来は多様性志向にある。規制の枠を緩めるというのは、いろいろなことができるということで、みんなと同じルールの中で競争することではない。「自由競争」というのは奇妙な言葉。「自由化」と「競争原理」がいつも組にして語られる

・若いころ忙しくしたおかげで、というよりも、若いときに無駄をしたおかげで、目標や計画と無縁に生きられる。忙しがってないと不安、というのでは不幸

世の中が変わることを前提で、いま、そのときどきの進路を選ぶ、所詮は人間が生きるとは、そうしたもの。その覚悟だけは必要なこと

・制度だらけの世の中だけれど、制度というのは所詮は手段にすぎない。制度とは適当につきあって、実質のほうで勝負すればよいのに、制度に適合しさえすればよいうと思っていては、実質がどんどん空洞化する

・芸能以上に教育は、国家の保護を受けている。国家が保護しようとすると、いろいろな代償を求めたがる。昔の貴族のパトロンの方が鷹揚で、道化はパトロンをうまく裏切ることが才能だった。制度を裏切る以外に、教育の生きる道はない。道化の魂を失っては困る

世を動かしているのは俗。「清貧」は、俗から離れられず、富貴を羨みながら、痩せ我慢して、俗にこだわりたくないというだけのこと。「清貧」を美徳のように言うほどのことではない



数学が専門で、生物学の造詣が深く、芸能を愛し、洒落っ気とゆとりを愉しむ気質、そういう「味」があったからこそ、著者の文章には、色気が漂っているのかもしれません。

思想家でもなく、エッセイストでもないかもしれませんが、著者の文章には、惹きつけられるものがあるように思います。


[ 2013/10/13 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『人生読本』西部邁

人生読本人生読本
(2004/07/30)
西部 邁

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著者の本を紹介するのは、「人生の作法」以来、3年ぶりです。西部邁氏は、思想家、評論家として、多数の著書があります。

本書は、「恋愛」「家庭」「共同体」「学校」に分けられた64のテーマで構成されています。難しい内容なのに、コンパクトで読みやすくなっています。それらの中から、共感できる箇所を選んで、紹介させていただきます。



・人間は、自らの執筆した脚本に従って、自らの役割を演じる生物

・人間とは、自らの根本をなす獣性と霊性という矛盾をはらんだ二条件の間で、バランスをとる存在のこと

・現代において、若い男女につきつけられているのは、子供を産み育てることの意味を「人為的に、意識的に」いかにとらえるかという問題。その問題に解答を与えておかなければ、出産や育児が厄介事や困難事となって押し寄せたとき、その重みに堪えられなくなる

・子供は親のどんな希望・期待を自分が裏切ったのかを、多少とも覚えているもの。その子供の裏切りの記憶が、自分が迷う人生の岐路にあって、意外と重要な道標となる

・「能力と徳性と才能」の多寡が、その人の立場や名声や収入の高低を左右することは当然。その意味で、「人は、自由かつ権利において平等なものと出生し、かつ生存する」という人権宣言の文言は空語

・自由とは、「自分の背負った格差に事由があるとみなした上で、その格差を、利用するにせよ、乗り超えるにせよ、排撃するにせよ、引き受けること」

・趣味を大事にすることは、「社交」から離れるか、それを「同好者」のものに限定しがち。社交の本質は「他者」との交話という点にあるから、同好者の社交には、社交の拒絶といった雰囲気が漂う

・貧しさに抗うのは当然だが、そこで豊かさを「最高」の価値としたのが間違いだった。豊かさはあくまで手段的価値に属する

・知識人は、徒党を組んで、仲間褒めに精を出す。それは、次には自分を褒めてくれという挨拶

・権力の正当性は、その権威の正統性によって裏づけられる

・出来事の断片の、そのまた一局面だけを拡大鏡で映し出し、それに専門知の粉飾をほどこして仕立てられたその場限りの読み物、それが新聞であり、週刊誌

・思慮なき勇気は蛮勇にすぎない。同様に、勇気なき思慮は臆病にほかならない

・民人は、たとえ自分らが主権者と呼ばれていても、決して全知全能の存在でないことをよく知っている。だから、民人は、自分らの代表者も欠陥多き連中にすぎないとみなしており、その欠陥が露呈されるのを心待ちにしている

・日本人は、やみくもにも貯蓄に励んできたという経緯にもかかわらず、人生のカネ勘定をさしてきちんとは済ましていない

・情操とは、学問や宗教や芸術にかかわる、つまり真善美の基準を求める活動にかかわる、感覚的な能力。そういう感覚は、少なくともその素地は、生活体験の中で培われるもの

・自分は私人であるだけでなく公人であり、個人であるのみならず集団人でもある。この四面性においてバランスをとるには、巧みな「気配り」と「言葉づかい」が必要になる

・現代の空恐ろしさは、年寄りたちが精神的に若造りし始めたということ。若者たちの人口は減少しているというのに、年寄りの精神的若年化のせいで、時代精神が成熟から離れていくばかり

・歴史が語られるべきやり方は、一つは「英雄伝」、もう一つは「庶民史

・道徳教育において知られるべき最大のことの一つは、危機の超克法にある。偉人伝がその教育目的に資することは請け合い

自由の過剰が放任主義であり、秩序の過剰が管理主義。学校運営の支点とは、自由と秩序の間の平衡点のことにほかならない



著者の「人生読本」は、経験を踏まえた回顧録ではありません。著者が吟味する、人生の「考え方」読本です。

具体的な事例はありませんが、そこには人生のルールや原則が書かれています。このルールや原則に自分の人生を照らしてみたら、自分が見えてくるのではないでしょうか。


[ 2013/10/10 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『教養が滲み出る極上の名言1300』斎藤茂太

教養が滲み出る極上の名言1300教養が滲み出る極上の名言1300
(2004/08)
斎藤 茂太

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本書は、名言というよりか、名文句といったほうがいいのかもしれません。つまり、声に出して読む名言だと思います。

本書には、それぞれの分野で、抜きん出た才能を発揮した人たちが、古今東西網羅されています。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・どんなバカでもヘンテコリンでも、女と付き合うほうがおもしろい。男と付き合うくらいなら、うちへ帰って本を読む(萩原朔太郎)

・人間を誘惑することのできないような者は、また人を救うこともできない(キェルケゴール)

・恋よりも虚栄のほうが、より多くの女を堕落させる(デファン夫人)

・嫉妬の裡(うち)には、愛よりもうぬぼれが、より多く入っている(ラ・ロシュフコー)

・社交の秘訣は、真実を語らないということではない。真実を語ることによってさえも、相手を怒らせないようにすることのできる技術である(萩原朔太郎)

・希望は不幸な人間の第二の魂である(ゲーテ)

・役者と思ったらあかん。人気商売と思わないかん。それなら人の気に入るようにすること(藤山寛美)

・最高に到達せんと欲せば、最低より始めよ(P・シルス)

・泥中にして、清く、白し(田宮虎彦)

・真の勇気とは、全世界を前にして為し得ることを、目撃者なしにやってのけることにほかならぬ(ラ・ロシュフコー)

・若者たちはすべて家出すべき。そして、自分自身を独創的に「作りあげていく」ことに賭けてみなければならない(寺山修司)

・諸君、謀叛を恐れてはならぬ。自ら謀叛人となることを恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である(徳富蘆花)

・芸人というのは、売れているときはわがままでいい。売れなくなったら、いくら八方美人をしていても捨てられる(古今亭志ん生)

・僕ぐらい僕に似ていない者はない(ルソー)

・人は生きねばならぬ。名は揚げねばならぬ。金はもうけねばならぬ。命がけの勝負はしなければならぬ(徳富蘆花)

・悪とは何か?弱さから生ずるいっさいのもの(ニーチェ)

・知はいつも情に一杯食わされる(ラ・ロシュフコー)

・大いなる知はおっとりと落ち着き、小さき知はあれこれと気を配る(荘子)

・たった一冊の本しか読んだことのない人間を警戒せよ(ディズレーリ)

・わけのわかった人は、自分を世の中に適合させる。わからず屋は自分に世の中を適合させようと頑張る。だから、すべての進歩はわからず屋のおかげである(バーナード・ショー)

・この世で成功するには二つの道しかない。一つは自分の勤勉によるもの。一つは他人の愚かさによって儲けること(ラ・ブリュイエール)

・金は自分で稼ぐもの。名誉は人がくれるもの(J・チャンドラー)

・金持ちでも貧乏人でも、強い者でも弱い者でも、遊んで暮らしている市民はみんな詐欺師だ(ルソー)

・貧困は不正なことを教える(セネカ)

・欲は出したらあかん。欲は持っておくものや(鈴木啓示)


愛、人生、金、運、勝負、幸せ、自由、労働、人間関係など、さまざまな事態が身に起こっても、本書にある言葉が、励まし、慰め、気づかせてくれるように思います。

昔の人も、みんな悩んで大きくなりました。その人たちが残してくれた言葉を参考にし、また、あやかって生きていきたいものです。


[ 2013/10/07 00:38 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『哲学のヒント』藤田正勝

哲学のヒント (岩波新書)哲学のヒント (岩波新書)
(2013/02/21)
藤田 正勝

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著者は、日本哲学史を研究する京大教授です。日本にも西田幾多郎などの立派な哲学者が輩出していますが、その内容まで深く知る人は、あまりいません。

本書は、日本の哲学者、思想家を中心に書かれているので、哲学を身近に感じられる部分が多いのではないでしょうか。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・自分自身に気づかうことが、「善い者となり、思慮ある者となる」とソクラテスは語った。自分の心のあり方に気づかうことは、結局「どのようにすればよく生きることができるか」ということ。つまり、「よく生きる」ことこそが人間にとって何より大切だということ

・和辻哲郎の基本的な考えは、人間は個人であると同時に、本質的に社会的な存在であるという点にある。人は、その存在の初めから、人と人との関わりの中で生きてきたのであり、ただ一人で生きる人間というのは考えられないと、考えた

・自ら抑制する心と、掟を守る感覚とがなければ、人間は生き残ることすらできない。倫理はもともと集団を前提にしたもの

・カントは、道徳の一番根本にあるものを「定言命法」と表現した。それは理性が、どういう状況にあっても守るべきものとして、私たちに無条件に命じるもの

・孟子の道徳についての基本的な考え方は、「惻隠の心」「羞悪の心」「辞譲の心」「是非の心」の「四端」の説に見てとれる

・サルトルは、人間は未来にある自己を意識し、その未来に向かって自らを投げる、つまり「投企」する存在であると言う

・パスカルは、「気晴らし」は確かに一時的には「幸福」をもたらしてくれるが、「気晴らし」は、決して本当の意味での解決ではなく、むしろそれは「不幸」だと、言う

・深層の「自己」へと立ち返り、「人間を根底からつくりかえる」ことを目指したところに、東洋思想の特徴がある

・西田幾多郎は、「自己の内容を映す鏡はまた自己自身でなければならぬ。物の上に自己の影を映すのではない」と、私たちの自己が、根本において「自己の中に自己を映す」ものであると、述べている

・「自己を集中しようとすればするほど、私は自己が何かの上に浮いているように感じる。いったい何の上であろうか。虚無の上にというほかない。自己は虚無の中の一つの点である」(三木清)

・「心に、つまり無常の思いに滞ってはいけない、生死に執着してはいけない、すべてを「はなちわすれる」ことこそ肝要。道元は、そのことを「放下」という言葉を使って言い表している

・自然はただ単に眺められるものではなく、むしろ人間の心に浸透してくるもの。逆に、私たちの思いが、自然の中に浸透していくこともある。重要なのは、美しい花を見たりすることによって、自らの生を充実したものとして感じ取っているという点

・感情は、その表層に現れたもので尽きるのではなく、むしろその下に、埋もれた厚い層を持つ。表層の感情は時間とともに消滅していくのではなく、深層に沈殿していく

・「無形の形、無声の声ということは、何物もないと云うことではない。無限なる情の表現であることを意味する。それは形ありながら形なきものである」(西田幾多郎)

・「用ゆべき場所で、用ゆべき器物を、用ゆべき時に用いれば、自ずから法に帰っていく」(柳宗悦)

・世阿弥は「物まねに、似せぬ位あるべし。物まねを極めて、その物にまことに成り入りぬれば、似せんと思ふ心なし」と述べている。つまり、物まねを追求していくと、最後には、似せようと思う心がなくなるような芸境に到達するという

・松尾芭蕉は、俳句に「なる句」と「する句」があることを語っている。「私意」によって「作為」した句が「する句」。それに対して、あらわになった物の「微」をそのまま写すのが「なる句」。芭蕉は、「そのものより自然に出づる」ものでなければだめだと言う

・西田幾多郎が言う「純粋経験」の特徴は、「主客合一」という点にある。主観と客観が一つとなった純粋経験の一つの典型は、ほとんど意識しなくても自由に手が動く「無意識」の芸術表現



少し抽象的で、概念的ですが、日本の思想家、哲学者の言わんとするニュアンスは伝わってきました。

作為を否定すること、あるがままを肯定すること。そして、「自分がない」「一体となっている」状態を良しとすること。この日本的な考え方を表現することは難しいですが、日本人の心の奥に、その考え方は脈々と受け継がれてきているのかもしれません。


[ 2013/10/04 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『生きているのはひまつぶし』深沢七郎

生きているのはひまつぶし (光文社文庫)生きているのはひまつぶし (光文社文庫)
(2010/10/13)
深沢 七郎

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作家の深沢七郎さんが、亡くなられて25年経ちます。姥捨山で有名になった「楢山節考」などの作品が知られています。作家活動の他に、40過ぎてから農場を開いて、百姓をされ、50前には、今川焼屋を開き、自ら焼かれていました。

その独特の人生観に、学ぶべきところが数多くあると思います。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・死ぬことは、清掃事業の一つ。ゴミがたまれば、ゴミ屋が持っていってくれるように、人間が片付いていくということ

・死の世界は、生まれる前の世界。死ぬということは、生まれる前の世界に帰ること

・地獄極楽は日本人が作ったもの。お寺は仏教を商売にしている。死ねば戒名をつけ、名を変える。そんなことで金をとるのはおかしい。大乗仏教は八百長。仏教にお寺が建つのもおかしい。金出すやつがいるから、金をもらうやつがいる

・思想というものは悪いもの。何かを思わせるのは悪いことで、何もないことがよいこと。お釈迦さまの思想は「何もないことが一番よいこと」。あることがいけない

・私の「人間滅亡教」は、「生活程度をあげない」「勤勉は悪事である」「怠惰はこの世を平和にする」ことを説く

・種をまくときは、収穫するまで生きているかなんて考えない。人は、明日死ぬかもしれないから。種をまいたら芽が出るまでが楽しい。二日見ないと変わってくるから

・土は、水がなければ水をほしがり、多ければ困る。ちょうどよいところを欲するというのは、まさに生きもの

・真実の人生は性生活が片付いてから。性が片付いたあとは、まったく別な世界に生きることになる。性という峠のような劇しい道を越えると、別な世界が展開する

・悩みは、人生のアクセサリーみたいなもの

・過去の社会は、立身出世型の人間たちをつくることで、オレたちの生活を不幸にしてきた。つまり、偉いと言われる人間をつくって、人間の差別をしてきた

・何も考えず、何もしないで生きることこそ、人間の生き方。虫や植物が生きていることと同じ。それで自分自身に満足であればいい

スポーツ選手というのは、おだてられて、自分の身体に無理して、自分の体力の限界以上のことをやっている、一つの犠牲者。一位だ二位だと、権威というものにあこがれて、本当にひどい労働以上のことをしている

・スポーツは運動。それを何秒で走ったなんていう競争になったら、楽しさを越えて苦しさになってしまう。苦しいなんてとんでもないこと。今は、苦しくなるまでやるのがスポーツになっている。とんでもない悪いほうに向いている

・涅槃というのは、生きながらにして、死んだと同じ心になることだから、喜びも悲しみも欲望もなくなってしまう

・金や功名とかで権威のある名をつけるのは、悪魔の仕事

・水商売をすれば、感覚が狂ってくるから、切符を買っても、靴下を買っても、ネギを買っても、違った物になってしまう。そこが落とし穴。感覚によって、同じものでも味が違ってしまうのは、おそろしいこと

・男だって、どんどん泣いたほうがいい。泣くのは、機械に油をくれるのと同じこと

裏切られたという人にかぎって、他人を利用しようと思っている。そんな人は、あっちにも、こっちにも裏切られている。自分の欲をさらけ出しているようなもの

・永遠というのは、私の生きていくうちということ。太陽が輝いているのも自分の死と同時になくなってしまう

過去はおぼろがいい。憶えていないのがいい。忘れるというのは、人間に大切なこと

・生きていることが青春。死ぬまではずっと青春の暇つぶし。暇つぶししながら生きているのが、人生の道、世渡り術というもの



「生まれたときに、死のゴールへのレースが始まる」。このように考えていたからこそ、著者は、すべてにおいて達観していたのではないでしょうか。

人生を、死ぬまでの暇つぶしと考えたら、自分の人生を、自分の思い通りに、自由に生きていくことができます。本書は、そのことを示唆してくれているのかもしれません。


[ 2013/08/29 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『新編・悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)
(1997/01/16)
アンブローズ ビアス

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本書は、およそ100年前にアメリカで出版されました。冷笑家、風刺家、毒舌家と言われた著者の作風は、芥川龍之介など日本の作家にも大きな影響を与え、100年経った今でも、世界中に影響を与え続けています。

本書は賛否の分かれる書ですが、「言い得て妙」の表現に感嘆することが多々あります。それらの内容の一部を要約して、紹介させていただきます。



・「アマチュア」 趣味を技量と思い誤り、おのれの野心をおのれの能力と混同している世間の厄介者

・「安心」 隣人が不安を覚えているさまを眺めることから生ずる心の状態

・「自惚れ」 こちらが嫌っている奴に見られる自尊心

・「会社」 個々の人々が、責任を伴わないで、それぞれ自己の利益をあげ得るように工夫された巧みな仕掛け

・「感謝の念」 すでに受けた恩恵と、これから期待する恩恵との中間に位置する感情

・「頑張り」 凡庸な連中が、それによって不名誉な成功をかち得る、取るに足らぬ美徳

・「希望」 欲望と期待とを丸めて一つにしたもの

・「欺瞞」 商業の生命、宗教の精髄、求愛のさいの餌、政治的権力の基礎

・「群集」 その中に最も賢い構成分子に従う場合には、その者と同じ程度に賢くなるが、従わない場合は、その中の最も愚かな構成分子と同程度の英知しか持てないもの

・「幸福」 他人の不幸を眺めることから生ずる気持ちのよい感覚

・「搾取する」 人を信じやすい連中に教訓と経験を授ける

・「讃辞」 富および権力という利点を持っているか、この世におさらばを告げてしまった人をほめたたえること

・「借金」 奴隷を監督する者が用いる鎖と罠の代わりをなす、功名に工夫された代用品

・「信仰」 類例のない物事について、知りもしないくせに語る者の言うことを、証拠がないにもかかわらず、正しいと信ずること

・「人道主義者」 救世主は人間であって、当の自分は神である、と信じている者

・「侵略」 愛国者が、おのれの抱く祖国愛を証拠立てるために用いる、最も広く世に認められている方法

・「大胆不敵」 安全無事な立場にある人に見られる最も著しい特質の一つ

・「忠実」 今まさに裏切られようとしている人々に特有の美徳

・「長命」 死に対する恐れが、異常なほど長期にわたって引き延ばされること

・「憎しみ」 他人のほうが、自分よりも勝っている場合にふさわしい感情

・「忍耐」 小形の種類の絶望。ただし、美徳に偽装している

・「武勇」 虚栄心と義務感と賭博者の希望とから成る、軍人に特有の混合物

・「平和」 国際関係において、二つの戦争の時期の間に介在するだまし合いの時期を指す

・「法律家」 法律の裏をかく技術に熟練している者

・「民主国家」 数限りない政治的寄生虫によって運営されている行政上の統一体

・「幽霊」 内なる恐怖が外に現れた、目に見えるしるし

・「冷笑家」 物事をあるべきようにではなく、あるがままに見る、たちの悪い奴

・「霊廟」 富裕な連中に見られる最終にして最高に滑稽な愚行



世を客観的に、公平に観察できた著者にしか、本書は表現できなかったのではないでしょうか。

この作品を歪んだ、偏った表現であると思われた方は、ひょっとしたら、自分が、歪み、偏っているのかもしれません。


[ 2013/08/26 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『二度生きる―凡夫の俳句人生』金子兜太

二度生きる―凡夫の俳句人生二度生きる―凡夫の俳句人生
(1994/12)
金子 兜太

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著者は、日本銀行に勤務する傍ら、俳人として活躍してこられました。俳句一本で生きる決断をされたのは、50代半ばのことです。90歳を超えた現在も、俳句界の重鎮として、活躍されています。

仕事をしながら、趣味で地位を築くというのは、並大抵のことではありません。本書には、その物語が描かれています。参考になる箇所が多数ありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。



・徹底すること。それも本業ではなく、脇のことに徹底すること。本業はあくまで食べるための手段

・理想は、自分が本当に生きられる世界を持つこと。本当の自由とは何かをずっと求めてきて、その視点をいつもはずさなかったことが、周囲の風圧をはねのけられた最大のこと

・本当の自由とは、常に人間の持つエゴイズムと重ね合わされる。エゴイズムは人間の生き方の基本。それが悪い方向へ働けば、その極まった形が権力意識。いい方向に働けば、自由という形になって現れる。いい意味のエゴイズムとは、自由を指す

・人に迷惑をかけないで、自分が自然におられる形、それを「自然(じねん)」と言うが、自分の思う通りに生きていける形、その自由が理想となった

・理想はなかなか実現しない。一生かかってもできないかもしれない。しかし、理想というのは、実現するかしないかが問題ではない。理想とは、心への言い聞かせ心への止め金。大事なのは、理想を持つこと、身に課すこと

・理想を持つことは、誇りを持つことに繋がり、しのぎの大きな力になる。困難な状況を乗り越えるにも、自分の理想があれば、苦でなくなる。また、理想を持つことは、孤独に陥った時、そこから自分を救う手だてにもなる

・傑出した人間というのは、周囲からちやほやされ、それだけにいい気分にもなる。だが、ふと孤独に襲われる。ポストを昇りつめた人ほど、それが強く、孤独感が付きまとう。その途中の段階にあれば、さほど孤独は感じない

・職場では、けっして受け身にならず、いつも能動的であること。そして、ユーモラスであること

・第二の人生を豊かなものにするには、これまで培ってきたことが欠かせない。そこで、ものをいうのが偶然の体験。すべての体験が重要ではないが、軽く扱ってはならない偶然の体験については、きちんと見つめ直し、そこから何かを掘り起こさなければならない

・自分の楽しみには徹底性がないとだめ。それがないと趣味で終わってしまう。心底満足できる人生を送るには、趣味をプロレベルまで引き上げることが必要

・小林一茶が晩年に使った「荒凡夫」とは、「自由に生きている平均的な人間」のこと

・芸術性に傾いて、大衆の支持を失っては、俳句が存在する意味がない。俳句は、人の数、量が無視できない世界。芸術的で、質的に高いだけでは成立しない世界。俳句が芸術性庶民性の両方の兼ね合いの上で成立している文芸であることを、一茶を通じて教えられた

・人間の基本は本能にあり、その本能を制御する意志とのせめぎ合いの中に現出する赤裸々な姿こそ、人間の生々しい、ありのままの姿であることを、山頭火が示してくれた

・一茶は、自分は煩悩だらけの人間で、どうせ煩悩は捨てられやしない。それなら、愚の上に愚を重ねて生きていこう。娑婆で遊んでいる気持ちで自由に生きよう。そう言い聞かせ、書き留めている

・人間の本質とは、よくも悪くもエゴ。そのエゴの基本は本能だから、善玉の本能と悪玉の本能に振り回される人間を本当に分かって初めて、芭蕉を心底理解できる。きれいごとだけで見ていては、人間評価も作品評価もすべて中途半端に終わってしまう

・40代の頃から、勤めに対して冷めた目を向け、定年退職を機に、俳句をやり出すと、それまでの生き方の姿勢が句に現れ、短期間でいいものができる。一方、もともと変わった人間もすぐにいい句をつくる

・男性と女性とを比べた場合、初めは圧倒的に女性がいい句を作り、その後から男性が力をつけ、そこにまた女性が粘り強く追いつくという形をとるのが普通



俳句という詩形の奥深さ、俳句に現れる人間の本質について、深く知ることができ、また、俳句に魅了された著者の人間の大きさを感じた書でもありました。

俳句は、単なる言葉遊びではなく、17文字という制限の中に人生を押し込めるものであることがよくわかりました。人生の達人でないと、俳句は詠めないのではないでしょうか。ますます、俳句に興味が沸いてきました。


[ 2013/08/11 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『「人生二毛作」のすすめ-脳をいつまでも生き生きとさせる生活』外山滋比古

「人生二毛作」のすすめ―脳をいつまでも生き生きとさせる生活「人生二毛作」のすすめ―脳をいつまでも生き生きとさせる生活
(2010/03)
外山 滋比古

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外山滋比古さんの著書を紹介するのは「思考の整理学」に次ぎ、2冊目です。90歳になられた今も、執筆活動を続けられています。その元気の理由が記されているのが本書です。

人生二毛作を実践されてきただけに、老いて尚、意気軒昂でいらっしゃいます。その体験話が本書に満載です。それらの一部を、要約して紹介させていただきます。



・第一幕の人生と趣きを変えて、むしろ第一幕をしのぐほどの楽しさと充実感に満ちた第二幕を迎える。それが、人生の二毛作

・一毛作時代の「得意」には固執しない方がいい。サラリーマンの場合、自分の本来の価値観とピタリとはまったものを仕事にしているわけではない。それを、組織のエスカレーターに乗っているうちに、いつのまにか自分の「得意」と思い込んでしまっている

若いころの投資は、失敗も許される。年齢的に挽回できる。それゆえ、切羽詰まった強欲さを持たなくてもすむ

・投資の経験を重ねると、投資というものに謙虚になる。損をしたときは、それを取り戻そうとするより、まずあきらめて、欲をいったん断ち切ろうとする。そして、買って長く持つという長期投資のスタイルが自然と身についてくる

・預貯金はリスクがない。リスクがないから成功もない。成功がないからおもしろくない

・非合理きわまりない生命保険には入らない。退職金も年金もアテにしない。預貯金も眼中にない。老後の備えは、早くから自助努力ですべし

・サラリーマン社会になって、世代的にまだ三代目。歴史が浅いこともあって、まだ一人前扱いされない。たいていは、揶揄するニュアンスが込められる

・第二の人生の心得の一つは、生活のリズム。生活のリズムができあがると、就寝・起床時刻も安定する

・料理はなかなかいいスポーツ。われわれ人間の運動は、足を使う運動が中心。直立歩行する人間は、手の運動が疎かになり、手持ちぶさたになっている。その疎かになった手の運動として、料理は、毎日キッチンで繰り広げられる格好のエクササイズ

放談雑談のできる新たな輪をつくることで、人生をはるかに豊かにすることができる

若いときの友人関係は、もう賞味期限が切れている。賞味期限の切れたものは、捨てるか、買い換えるかのどちらか

・なるほどと思う話を聞けることも、雑談・放談会の楽しいところ。そして、大笑いもして、二時間たつとお開きになる。二次会はなし。基本は「淡交」。淡い交わりではあるが、得る喜びと収穫は大きい

・雑談・放談会に集うメンバーは皆、聞き上手、ほめ上手で、人の話を否定しないし、揚げ足をとらない。無責任な話にもうなずき、屁理屈にも耳を傾ける。難しい話にも分かったような顔をして聞き、大言壮語にも目を輝かせる。話が脱線しようが、咎めたりしない

・「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」の「義理を欠け」は、浮世の人間関係を考える上で、傾聴に値する。人生二毛作の基本精神は、できるだけ浮世のしがらみに縛られないこと

70点学生は、足りない分、自分なりに自分の頭で考える。90点の学生は、自分の知識で勝負する。だから、独自の思考力が求められる論文では、書いたものが面白くない。今、教育で行われているのは、この「90点学生」の再生産

・知識習得が生きる上で血肉となるのは、せいぜい30代まで。40代、50代ともなれば、その知識を土台にして、独自の知性を発展させていかなくてはならない。それによって、二毛作人生を花開かせなくてはならない

・染みついた知識・情報の多くは、他人の思考の結果。それを、人前でさも独自の思考結果のように言うのは、正直さに欠ける

人を真似ず、常識に拠らず、自らの思考を持ち続ける。これが、いつまでも働いてくれる頭脳を持つ秘訣

・年をとれば、世の中酸いも甘いもある。森羅万象にも陰陽あり、人生あざなえる縄のごとしと、両面あることを知る。血気盛んな若者は、それを矛盾、世の不条理と考える。しかし、大人はそれが人生と考える。だから、自分に都合のいいほうだけを見ておけばよい



著者は、雑誌の編集長、大学教授、幼稚園園長など、次々と職を変わられています。その間に、評論やエッセイなど、次々と本も出されています。人生二毛作どころか、五毛作くらいの経験をされています。

本書は、老後の備え、老後への対処といったものではなく、楽しい老後を送るための心構えといった書なのかもしれません。


[ 2013/08/04 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『悩み相談で解き明かす「人生って何?」・生きる』中村うさぎ

悩み相談で解き明かす「人生って何?」 生きる悩み相談で解き明かす「人生って何?」 生きる
(2004/01/22)
中村 うさぎ

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著者は、ブランド物の買い漁り、ホストクラブへの通い詰め、美容整形のしまくりなど、破天荒な人生を突っ走ってこられました。欲望に忠実に行動されただけに、人生の修行を完了されています。ゆえに、人生相談の資格が十分にあるように思います。

著者の本を紹介するのは、「愚者の道」に次ぎ2冊目です。本著は、人生相談に対する解説本です。著者の「人生の力量」の大きさを思い知らされました。非常に奥深い書です。その奥深さの一部を要約して、紹介させていただきます。


・「無為な時間」は必ずしも「無駄な時間」ではない。「何もする気になれない」と悩むのは、「何かしなきゃいけない」と思っているから。「何もしないこと」が必要な時期だって、人生にはある

・プロだから、真剣に作品に取り組んでいる。でも「好きなのか」と言われたら微妙。「好き」なのではなく「仕事」だからこそ、プロのプライドを賭けて書く。人は情熱によって物事を継続させるのではない。義務感や責任感によって継続させる

・恋愛とは、欠点のある女と欠点のある男の武者修行

・男はみんなバカ。それを言うなら、女もみんなバカ。ただ「バカ」の種類が違う。自分とは違うバカをどこまで愛しく思えるか、というのが、恋愛のメインテーマ

・男の人を「子供っぽい」と思うのは、彼らが内面世界にいまだに「遊戯室」を持ち、そこにいっぱいオモチャを溜め込んで喜んでいるところ。そのオモチャは、「車」や「釣り道具」や「楽器」だったりする。それらは、しょせん「ひとり遊び」のオモチャ

・人間関係に必要なのは、「自己への批判力」と「他者への想像力」。この二つを欠いたまま年をとった人間は、人間関係なしに生きていけばいいが、それには何か「技術」が必要

・自分は「やって後悔することを選ぶ派」か「やらずに後悔することを選ぶ派」か、どっちに属すか考えておく、それさえ決まれば、人生の決断を強いられた時、比較的短時間で答えを出すことができる

・自分にとって、より快適な「幻想」を手に入れること。幸せの本質は、そこにある

個性的であろうとするならば、人から嫌われることを覚悟しなくてはならないということ。要するに「覚悟」

・「運」で成功した人は、その「運」にすがりつきたくなるから、変なオカルトに走ったりする。占い師の言葉を信じる有名人は、その典型。そんな人生、歩みたくない。だって、その金も成功も、自分で勝ち取ったという誇りの持てないものだから

整形とは、美人になることではない。自分の顔を好きになること

・みんな、相手に「何か」を求め、その「何か」を手に入れる代わりに、相手の求める「何か」を支払っている。愛が物々交換であり、消費行為であることを悪いとは思わない。一番悪いのは、「相手に要求するばかりで、自分は何も与えない」行為

・自己愛の生き物である人間は、本当に無償で何かを差し出すことなどできない

・多くの人は「自分の幸福」の尺度が見つけられなくて、漫然と「世間の幸福」の尺度を採用してしまう。そして、その世間から外れた「幸福」観の持ち主を異常だと感じる

・恋愛は「ギヴ&テイク」のゲームではない。ゲームには必ず「勝ち負け」が存在する

・自信満々な人に脅えの影を、自信なさそうな人に傲慢なる自負を、きっと見つけられる

・人間にとって大切なのは「自信」ではなく「打たれ強さ」。打たれ強い人は、失敗を恐れない。彼らが自信ありげに見えるのは、自分が成功するという自信ではなく、自分が失敗に対処できるという自信

・「孤独」を癒すには、不倫(恋愛の共有)、宗教団体(神の共有)、カルチャースクール(趣味の共有)、ボランティア(大義名分の共有)と、この世にはたくさんある。世間の風当たりと家庭破壊の危険性を考えつつハマればいい。そこで「他者の共感と連帯」は得られる

・他者と手軽に「共感・共有感」を持つには、「共通の敵を持つ」のが一番。ところが、このような「仮想敵の存在による共感」は、ものすごく低俗なものになりがち

・「共感」を求めながらも「孤立」を選ぶのは、「共感」と同じくらい「プライド」が大切だから



著者は、本書で、「人間は他者との共感によって、魂の充実感を味わうもの」と述べています。魂の充実感なしには、人間は生きていけないのかもしれません。

そして、自己の魂の充実感を得ようとすれば、他者に対するルールと責任も不可欠です。そのルールと責任の認識があれば、人間関係もうまくいくように思います。生きるとは、それを知るということではないでしょうか。


[ 2013/06/11 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(1)

『人生を豊かに輝かせる「心のお守り」・金の魂語』美鈴

人生を豊かに輝かせる「心のお守り」 金の魂語人生を豊かに輝かせる「心のお守り」 金の魂語
(2012/02/22)
美鈴

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著者は、いわゆる霊能者と呼ばれる方です。しかし、本書は、霊能者にありがちな突飛な内容のものではなく、教育者が書くものに似ているように感じました。

当たり前のことが、丁寧に、易しく、数多く書き綴られています。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・人は、自分に都合の良いものを「好き」と言い、逆に、都合の悪いものを「嫌い」と言う。どちらにも、自分の執着と未熟な部分がある

・親しく会話のできる人は、自分の表の性格と裏の性格を映し出してくれる姿見さん。同じ波長で親しくなった相手には、自分がされて嫌なことはしないし、言われて嫌なことは言わないはず

・心が落ち着いていて、満たされていると、誰かを羨んだり妬んだりしない。幸せなときは、損することを恐れない。感謝できるとき、意地悪は言わないし、思わないし、しない

・あの手この手で、前へ一歩なんとか踏み出して、目の前の壁を乗り越えて、心を鍛えてこそ、人生は「報われる」。心を動かし、頭を使い、気を利かせた結果が良くても悪くても関係ない。大事なのは、どれだけ考え、悩み、分析し、心を動かし、実践したかの過程

・大事なのは、魂を成長させること。物質を多く得たとか失ったとかということではない。何を考え、喜び、悲しみ、痛み、愛し、傷つき、怒り、慈しみ、哀れみ、気づいたかという、感じて心を動かしたこと。「感動」こそ、魂を成長させる

・この世に、生まれつき「強い人」なんて存在しない。自分より心が強いと感じる人に、「あなたは強いから」「あなたみたいに強くないから」と、その人の今までの努力や人生を無視した言葉は、自分の弱さを宣言しているのと同じ

・「怒り」は、冷静な考えと、これまで積み重ねてきた「徳」を奪う。「怒り」は、人を弱くする

・本当の幸せとは、「恐れのない人生」のこと。真実を知ることで、恐怖はなくなる

・経験と感動の「数」と「量」こそ、私たちの最大の目的

・ウザい、辛い、苦しい、悲しい、恐い、嫌い、許せない、羨ましい、妬ましいなどの感情や出来事こそが、乗り越えなければならない「宿命

・すべての出来事は自分自身のため。「気づく」のも「学ぶ」のも自分次第。受け入れて、乗り越えようと前へ歩き出したとき、本当の「助け」がある。最初から「HELP!」では、何の意味もなくなる

大人とは、孤独に強く打ち勝ち、自分の道を貫き、悩みや挫折を肥やしにし、泣き言は自分の弱さと自覚しながら、また笑顔をつくり、他人に優しくできるもの

表情やシワ目の動きなどで、人間の「質」がわかる。顔には、人のすべてが現れる

・今、自分が発する言葉や想いが、少し先の未来をつくり出す。未来の自分の姿を知りたいときは、過去と今の自分を分析し、予想すればいい

・「自分は不幸だ」「満たされていない」「損をしている」と、どこかで感じながら生きている人は、自然と誰かに意地悪をしてしまうもの

・人間関係、家族、友達でも、恋人、職場でも、基本的に、みんな「迷惑の掛け合い」。それが、付き合う、向き合う、共に生きるということ。絆とは、迷惑を掛け合って、心寄せ合いながら深めていくもの

・近しい人には優しくできても、他人には優しくできない。それなら、近しい人への優しさも「偽り」ということ

・「どうせ私なんて」「どうせ俺なんか」という自己卑下は、自分に対しての立派な悪口

・悪いことをしたら、反省し、ただし、謝る。それ以外に何もない。開き直り、居直り、嘘をつく。それでは自分が可哀想

・本当の財産は、心・魂の中に蓄えられたもの、つまり、たくさんの経験と喜怒哀楽の感動。自分で集めた財産は、得るばかりで、絶対になくならない



本書には、人に反省を促す、「世の道理」「天の真理」が、簡潔、手短に伝えられているように感じました。

謙虚に、そして、立派に生きるための言葉が多く、自分を振り返るための大切な書になるように思います。


[ 2013/05/28 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)

『こころの旅』神谷美恵子

こころの旅こころの旅
(1974/01)
神谷 美恵子

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著者は、ハンセン病(らい病)の患者と長年向き合った精神科医として有名です。このブログで、著者が訳した「マルクス・アウレリウス自省録」を、紹介したこともあります。


著者は1979年に亡くなられましたが、その後も、ずっと版を重ねているのが本書です。人間の一生を「こころの旅」に例えて綴った名作です。その中から、感銘した箇所を一部要約して、紹介させていただきます。



・どのような個性をもって子供が生まれてきたにせよ、それをそのまま受け入れる心の姿勢が、母親にあるかどうかによって、この母子双方の将来が大きく左右される

・学ぶということは、ただのものまねとは違い、たくさんの新しい概念をとり入れ、たくさんの概念の間の新しい結びつきをつくり、それらをしっかりと記憶の中に刻み込む、という複雑な作業

・青年の心は、誇大的な自負心と極端な劣等感の間を揺れ動きながら、詩や音楽や演劇や絵画などの芸術的活動を試みる。この審美的傾向を人間が一生持ち続けるならば、「生きがい」の強敵の一つである「退屈病」から免れることができる

・青年期にまわり道をすることは、一生のこころの旅の内容にとって、必ずしも損失ではなく、それが後半生で充分生かされることが少なくない。人間は「ただではころばない

・理想を語り、夢みるのもいいが、結婚は恋愛と違い、現実との対決であり、かなり平凡な日常生活の積み重ねという厳しい面がある。自己と相手の現実に初めてナマの形でぶつかり、両者を融和させなくてはならない。愛というものが現実というテストで試される

・冒険なしの人生はありえない。人生のあらゆる曲がり角に、選択という冒険が待ち構えている。冒険を避ける人は、ただ萎縮するほかない

・生み出したものに対して、後々まで責任を負い続けることは、決して本能や惰性でできるものではなく、困難や苦労を伴うもの。こうした抵抗に打ち克ちながら生きていくときに、心は張り合いを感じ、充実を感じ、真に生きている実感を持つ

・「結婚生活というものは、たえず、破局に向かって遠心的に力が働き続けるものであり、いつでも破壊してしまう危機を常に内在している」(新田慶)

・「ものごとや人間の世話をしてきた人、他の人間を生み出したり、ものや考えをつくり出し、それに伴う勝利や失望に自らを適応させてきた人、そういう人においてのみ、これまでの実が次第に熟していく」(エリクソン)

・「成人は自分の生み出したものに対して責任をとり、これを育て、守り、維持し、そしてやがては超克せねばならない」(エリクソン)

・どのような仕事、学問、業績を生きがいにしたにせよ、すべては時とともに、その様相や意義が変わっていく。自分の後から来る世代によって、すべてが引き継がれ、乗り越えられ、変貌させられていく。しかも、その変貌の方向も「進歩」とは決まっていない

・「年をとるという現象の基礎にあるのは、周囲の生成に対する我々自身の生命の遅滞感であり、同時に無能感であり、しばしば非痛感である」(ミンコウスキイ)

・すべては、永遠の時間に合一するための歩みと感じられてくるとき、人間はどれだけの仕事を果たしたかということよりも、置かれたところに素直に存在する「ありかた」の方が重要性を帯びてくる

・知能だけが、人の存在意義を決めるものではない。知能や学歴如何にかかわらず、安らかな老いに到達した人の姿は、後から来る世代を励ます力を持っている。彼らは、穏やかな微笑みを浮かべ、愚痴も言わず、「存在のしかた」によって、周りの人々を喜ばす

・地球上の生と死は、互いに支え合う関係にある。生命の進化も、多くの生命の死の上に成り立っている。おそらく、生と死は、さらに高い次元の世界で調和しているに違いない

・体にとって空気や水や食物が必要なのと同様に、心には生きる喜びが必要であることは、一生を通じて変わらない

・人間の心の喜びとは、愛し愛されること、遊び、美しいものに接すること、学ぶこと、考えること、生み出すこと。人間には、野の花のように、素朴に天を仰いで、ただ立っているという喜びと安らぎが必要


誕生、幼年期、青年期、結婚、育児、老い、死などのライフサイクルに応じて、どう感じ、考え、学ぶかの例が、本書に盛り込まれています。

「自己と対話」する時間がとれていない人にとって、年齢に応じた「心の処方箋」を提供してくれる本書に効き目を感じるのではないでしょうか。


[ 2013/04/11 07:00 ] 人生の本 | TB(0) | CM(0)