とは考

「・・・とは」「・・・人とは」を思索

『人間を磨く言葉』鍵山秀三郎

人間を磨く言葉人間を磨く言葉
(2007/10/25)
鍵山 秀三郎

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著者の本を紹介するのは、これで4冊目(参照:「鍵山秀三郎・本」)になります。

凡事徹底」という全くブレない著者の考え方が、何に影響を受けたのか、以前より気になっていました。本書は、著者の人間を形づけた「お気に入り」の言葉集です。それらの言葉の数々をまとめてみました。



・「少しの労作で大きな成果を得た人は、得た成果の量に比例して、不安も一緒に抱えることになる」

・「過去相も現在相も決定相ではない。過程相に過ぎない」(三谷隆正)

・「十年偉大なり、二十年畏るべし、三十年にして歴史なる」

・「魅は与によって生じ、求によって滅す」(無能唱元)

・「益はなくとも、意味はある」(晏子)

・「境遇に強いられしところにより事を行えば、そのことは必ず成就する」

・「本物は続く、続ければ本物になる」(東井義雄)

・「簡単の向こうには荒廃が待っている」(竹花豊)

・「私が私を捨てれば、そこにあなたがいる。あなたがあなたを捨てれば、そこに私がいる」(山本紹之介)

・「己を捨つるより、大いなる愛はなし」

・「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ」(芥川龍之介)

・「自分よりも弱いものを守ろうとすれば、勇気が湧いてくる。自分より苦しんでいる人に優しくなれば、自分の苦しみがやわらぐ」

・「親切で優しくあれ。あなたを訪ねてきた人を、少しでも幸せにしないで帰してはいけない」(マザー・テレサ)

・「聖人は微を見て以て萌を知り、端を見て以て末を知る」(韓非子)

・「動中の工夫は、静中の工夫に勝ること百千億倍」(白隠禅師)

・「ゴミを拾えば拾う習慣が身につき、捨てれば捨てる習慣が身につく」

・「百術、一清に如かず」(玉木文之進)

・「教育とは流水に文字を書くようなはかない業である。だがそれを巌壁に刻むような真剣さで取り組まねばならぬ」(森信三)

・「カッコよさは、破滅につながる」(三浦綾子)

・「規則は人を咎め、規律は人を和ます」

・「変えることのできないものを、素直に受け入れる心の落着きがほしい。変えることのできるものを、敢然と変えていく勇気がほしい。変えることのできるものと、できないものとを見分ける賢明さがほしい」(ラインホルド・ニーバー)

・「己のために、計らわず」(広田弘毅)

・「エリートとは、断れば断ることのできる責務を、あえて受諾する者である。自分自身の上に、困難を積み重ねる者である」(オルテガ)

・「一所懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る」

・「善友は助け合って成長し、悪友は誘い合って堕落する」(孔子)

・「大きな欲望を持つと心が荒む。自分を自分のためだけに使うと心身を消耗する。人のために使うと心に余裕が出てくる」



時代を超えた言葉の数々。これらが、著者の血となり肉となり骨となり、そして脳となったのではないでしょうか。

先人たちが遺してくれた言葉をどう受け止めるかで、人間は磨かれていくのかもしれません。


[ 2014/01/27 07:00 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『日々これ掃除』鍵山秀三郎

日々これ掃除日々これ掃除
(2011/09/16)
鍵山 秀三郎

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カー用品チェーン店創業者である著者の本を紹介するのは、「凡事徹底」「頭のそうじ心のそうじ」に次ぎ、3冊目です。

本書には、掃除哲学を推進する著者の基本となる考え方が載っていましたので、興味深く読ませていただきました。その一部を要約して、紹介させていただきます。



・平凡なことを継続して実行していると、平凡の中から生まれてくる非凡というものが必ず出てくる。これは大変大きな力を持っていて、人を感動させる力を持っている

・人間は、誰でも理想と現実に大きな差がある。理想と現実が一致している人はいない。必ず現実に対して理想は、はるかに高いところにある。掃除をしていると、理想にどうしたら近づくことができるかが、実に具体的に見えてくる

結果主義というのは、比べる世界。多いとか少ないとか、一位とか二位とか、絶えず比べる。だから、心のやすらぎというのがない。これが今の世相を悪くしている大きな原因

・「良樹細根」とは、良い樹は、細い、細かい根が深く張っている。根さえ健全に張れば、必ず樹は育ってくるという意味。そういう風土を築けたら、いかにして競争相手に勝ち、また相手を倒そうとかいう、過激な考え方を持たなくても、企業は健全に伸びていく

・「涙総量、汗無限」とは、人間は一生のうちに流す涙は決まっている。その涙を若いうちに流すか、歳を取ってから流すか、という意味。歳を取ってから流す涙は辛い。だから、若いうちに大いに涙を流しておかねばならない。汗は無限。流せば流すだけよい

・「『そんなに苦労されたのですか。とても、そのように見えませんね』と言われたら、私の人生は勝ち」(浪花千栄子)

・「運命はその人の性格の内にあり」(芥川龍之介)と「汝の行動は汝の予言者」(聖書)は、今何をやってもいいが、今とっている行動が、あなたの将来を予言するという意味

・社員の心が荒んでまでやるのは、事業ではない。人の心が荒むのが最も嫌いだったので、社員の心が荒んでくる前に、思い切って、撤退に踏み切った

・比べるものがない人生、比べるものがない会社、これを絶対差と呼んでいる。絶対差の世界は、プロセス主義。過程を大事にする、道筋を大事にするという考え方

・絶対差の世界に到達するには、「微差僅差」を追求し続けること

・「世の中は根気の前に頭を下げる」。これは、夏目漱石が、弟子の芥川龍之介と久米正雄に宛てた手紙の中で、二人を諫めた言葉。世の中の人は、根気強くやることに対して、敬意を持っているということ

・「鄙事多脳」。これは、福沢諭吉が塾生に話した言葉。普通の人たちが身辺の雑事として片づける細々としたことに対して、いつも多能で、器用でなければならない、という意味

・江戸時代の狂歌師、大田蜀山人は、「雑巾を 当て字で書けば 蔵と金 あちら福々(拭く拭く) こちら福々」といった面白い歌をつくっている。掃除をするというのに価値がある、意味がある、意義も高いということを示している

・人間はやはり人から尊敬されなければ、いい人生にならない。人から軽蔑されたり、ひんしゅくを買ったりしているようでは、絶対にいい人生にならない

・一番汚いと思っているトイレを徹底的にきれいにする。徹底してやれば必ずきれいになる。いくら他をきれいにしても、トイレだけを汚くしていたら、全部そのレベルになる

・「一人光る みな光る 何もかも光る」(河合寛次郎)。人がやろうがやるまいが、自分一人はやる。それを続けていくと、いつのまにやら、みんながやるようになって、良くなるという意味

・何をやっても成果を上げる人は、やることなすことムダがない。このムダのない人とは、物事の価値を知っている人。あるいは、人の価値も知っている人。その価値を見出していくには、気づく人になるということ。気づく人は、何でも、できるだけ先に早く知る

・よく気がつく人になるためには、「単純で単調で、ごくありふれた小さなことをいつも大切にする」ということが第一条件。もう一つの条件は、「絶えず人を喜ばす」ということ

・幸せには、「もらう幸せ」「できる幸せ」「あげる幸せ」の三つがある。最も大事なのが、三つ目の「あげる幸せ」



会社が変わるには、人が変わらなければなりません。しかも、立派に変わらなければなりません。

立派に変わっていくためには、凡事徹底であり、その中でも掃除が一番であると著者は述べられています。ごくごく当たり前のことですが、これを徹底することは、本当に難しいことです。これができている会社は未来永劫安泰なのかもしれません。


[ 2013/07/15 07:00 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『頭のそうじ心のそうじ―人生をキレイにする』鍵山秀三郎

頭のそうじ 心のそうじ―人生をキレイにする頭のそうじ 心のそうじ―人生をキレイにする
(2007/11)
鍵山 秀三郎

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著者の本を紹介するのは「凡事徹底」に次ぎ、2冊目です。著者は、カー用品チェーン店「イエローハット」を経営する傍ら、「日本を美しくする会」の活動をされています。

本書には、著者の「掃除哲学」が綴られています。場所の掃除、物の掃除に止まらず、本のタイトルのように、頭や心の掃除にまで、その「掃除哲学」を拡げられています。

著者の掃除哲学に学ぶべき点が多いように感じました。「本の一部」ですが、紹介させていただきます。



・掃除をして環境がきれいになると、職場の雰囲気が穏やかになる。穏やかな雰囲気は、その場にいる人の心の荒みをなくしてくれる。怒りも抑えてくれる

・掃除というのは、モノを大切にすること。そして、モノを大切にするということは、結局、人を大切にすることにつながる

・自分が掃除をすると、誰かが気持ちよくなる、誰かが喜んでくれる、誰かの心が穏やかになる。そして、そのことで自分もうれしくなる

・今やっていることから学ぶこと。今自分がやっていることがちょっとおかしいと思ったら、それを即座に変えること

・効率というのは、どうやったら能率的にできるかというのが本来の意味だが、それがいつの間にか、手抜きすることが効率になってしまった

・生活拠点の家庭が、和やかで、明るく、楽しく営まれていて、その中で、親も子供も生活感覚を育み、磨いていれば、社会や国家も安泰

・経営者があまりにも成果主義を推進した結果、本来は、社員がみんなで外に向かって出すべきエネルギーが、内に向かって悪循環する。つまり、社員同士が無用に争いあう

人間性を無視した大企業のやり方が、日本の家庭を崩壊させ、その結果として、子供たちが悪い方向へ向かう。「成果主義」というのは考えもの

・環境がきれいになれば、能率が上がるだけでなく、よからぬものを寄せつけない

・悪い意味での余裕がありすぎるときに湧いてくる雑念を「妄念」と言う。つまり、頭の中のゴミ。本当に切羽詰まっていれば、妄念など湧いてこない

・人間は、見ているものに自分の気持ちも似てくる。雑然としたものに囲まれていては、頭も心も整理できない

・人間には、「上品な人」と「下品な人」がいる。でも「中品な人」はいない。上品でなければ、すなわち、下品である

・お金でも、モノでも、時間でも、少ないと価値が高くなる。お金も、モノも、時間も、たくさんあると価値が下がり、ついつい粗末にするようになる。そして、お金や、モノや、時間を粗末にする人は、人まで粗末にして、人の骨折りや労働を正当に評価しなくなる

・世の中は、大変なことをやった人のみが成長するようにできている

・職業に貴賎はないというが、大企業の社員ほど、人の話を謙虚に聞かなくなり、卑しくなっている。あたかも上流の人間のように錯覚している。社会もそれをなんとなく許してしまっている

・虚栄心の強い、見栄っ張りな人ほど、中身は何もない。ない中身を、より大きく、より豪華に見せようとする。女性にも男性にも、虚栄心のかたまりのような人がいる

・仕事やお金がなくても、将来に希望が見えるような社会にすることが、そのまま社会の安全につながっていく

・人に親切にすること、経験をたくさん積むこと、これが不安を減らす方法

・最悪の状況を先に覚悟しておけば、パニックになることを抑えられる。逆に、なんとかなるのではないかと中途半端な期待を抱くと、状況が悪くなる度に、不安が増大し、パニックに陥ってしまう

・「動中の工夫は、静中に勝ること百千億倍」(白隠禅師)。いいアイデアは、動きの中から生まれてくる。じっとしていて、いいことはないかと考えても何も出てこない



整理整頓・清掃清潔」の気持ち、つまり、きれいにする気持ちがすべての基本であることを教えてくれる書です。

この「きれいにする気持ち」は、頭で覚えるものではなく、身体で覚え、半ば習慣化することで得られるものです。この大事なことを、もう一度理解するのに、とても大事な書ではないでしょうか。


[ 2012/07/26 07:01 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(0) | CM(0)

『凡事徹底』鍵山秀三郎

凡事徹底 (活学叢書)凡事徹底 (活学叢書)
(1994/11/10)
鍵山 秀三郎

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著者は、カー用品チェーン店「イエローハット」の創業者であり、NPO法人「日本を美しくする会」の相談役です。現在は、掃除をテーマにした活動で、全国を飛び回っておられます。

本書は、今から18年前に刊行され、版を重ねている書です。著者が、大会社を経営して、悟られてきたことが凝縮して詰まっています。それらの中から、共感した箇所を一部ですが、ご紹介させていただきます。



・「不動の商魂、それは凡に徹することである。これさえ身につければ、お金は向こうからやってくる。これは商の常道であり、不変の哲理である」(坂村真民)

・「天下に名をなす人は、皆この凡から出、凡に徹しきっている。凡事徹底、この四字こそ、商人道の根幹であり、運をつかむこつである」(坂村真民)

・「人生は瑣事(さじ)に苦しみ、瑣事を楽しまなければならない」(芥川龍之介)

簡単なこと、単純なこと、単調なことをおろそかにしない。それを極めていく

・成果をあげられない人は、成果をあげる人よも一生懸命、長い時間休まないで働いていることの方が多いが、やることなすことに無駄が多く、やってもやってもエネルギーが無駄に流れてしまって成果につながらない

・わずかな差だとついバカにしてしまうが、微差僅差の積み重ねが大差となる

・絶えず人を喜ばす気持ちで物事をやる、人生を送る、毎日を送る。これを続けて一年たてば、本当に人が変わるぐらい、気づく人間に変わってしまう

・人間は打算があったら、どんなことでも続かない。十年も二十年も続かない。それから、打算があってやっていることは卑しく見える。全部見えてしまう

・「良樹細根」。根が広く深く張っていれば、必ずいい木になるという意味だが、当然、根のほうが先で、上のほうは後。根が張れば、自然に上はどんどんよくなっていく

・合理化というのは、自分にとって不都合なことを人に押しつけること。しかし、これは大変怖い。自分にとって不都合なことは、他人にとっても不都合。他人の不都合に対する思いやりに欠けた行為は、合理化になったと思った以上の不合理になって返ってくる

・会社がお客の事情も考えずに、ただ売れ売れ、売上さえ上げればいい社員だという評価をすると、無理な売り方をして、心をすさませていく。すさんだ心の集団、会社ほど悲惨なものはない

・人間の喜びで最たるものは、人に頼りにされ、人にあてにされること。これが喜びの中で何よりも大きい。どれだけの財産を持つよりもこの喜びが一番大きい

・縁をよくしていくためには、よく気づく人間になることが一番大事。気づかない人は、自分でも思いもよらないところで人を傷つけ、あるいは人から嫌がられたり、敬遠されたりすることになる

悪くなった会社で、掃除が行き届いて、整理整頓ができているという会社は一つもない

・掃除をしていて、人をだましてやろうとか、人を陥れてやろうという考えは微塵も出てこない

やるときは徹底してやると、次からはどんどん効率、能率が高まっていく。能率、効率が高まらないやり方は駄目。さらに、この幅を広げていくことが人間の人格を深め、高めていくことと比例する

・人間は、義務でやらなくてもいいことを、どれだけやれるかが、人格に比例する

・「小さく生きて大きく遺す」とは、自分の生活はこじんまり小さく、やる事業はなるべく大きくするということ

・お客にも卑屈にならない代わりに、仕入れ先にも尊大な態度はとらない。どっちも同じ態度。そして、お客といっても、傲慢で横暴な人とは、取引はやめてしまう

・「人間が遺すべき遺産はなにか。金やものなど財産を残すことも意義がある。しかし、それは何人にもできることではない。何人にもできて、お金やものより価値のあることは、勇気ある高尚な生涯だ」(内村鑑三)



人間は、当たり前のことや、ありきたりのことは、面白くないので、それを避けようとします。そして、新しいことや楽しいことを優先してしまいがちです。

凡事徹底」とは、面白くないこと、楽しくないことを、喜んですることです。これは、ある意味において、人生修行です。

この修行が、成功につながることを、「凡事徹底」という言葉を使い、教えてくれる親切な書ではないでしょうか。
[ 2012/06/13 07:02 ] 鍵山秀三郎・本 | TB(-) | CM(0)