カー用品チェーン店創業者である著者の本を紹介するのは、「
凡事徹底」「
頭のそうじ心のそうじ」に次ぎ、3冊目です。
本書には、掃除哲学を推進する著者の基本となる考え方が載っていましたので、興味深く読ませていただきました。その一部を要約して、紹介させていただきます。
・平凡なことを継続して実行していると、平凡の中から生まれてくる非凡というものが必ず出てくる。これは大変大きな力を持っていて、
人を感動させる力を持っている
・人間は、誰でも理想と現実に大きな差がある。理想と現実が一致している人はいない。必ず現実に対して理想は、はるかに高いところにある。掃除をしていると、理想にどうしたら近づくことができるかが、実に具体的に見えてくる
・
結果主義というのは、
比べる世界。多いとか少ないとか、一位とか二位とか、絶えず比べる。だから、心のやすらぎというのがない。これが今の世相を悪くしている大きな原因
・「
良樹細根」とは、良い樹は、細い、細かい根が深く張っている。根さえ健全に張れば、必ず樹は育ってくるという意味。そういう風土を築けたら、いかにして競争相手に勝ち、また相手を倒そうとかいう、過激な考え方を持たなくても、企業は健全に伸びていく
・「
涙総量、汗無限」とは、人間は一生のうちに流す涙は決まっている。その涙を若いうちに流すか、歳を取ってから流すか、という意味。歳を取ってから流す涙は辛い。だから、若いうちに大いに涙を流しておかねばならない。汗は無限。流せば流すだけよい
・「『そんなに苦労されたのですか。とても、そのように見えませんね』と言われたら、
私の人生は勝ち」(浪花千栄子)
・「運命はその人の性格の内にあり」(芥川龍之介)と「汝の行動は
汝の予言者」(聖書)は、今何をやってもいいが、今とっている行動が、あなたの将来を予言するという意味
・社員の心が荒んでまでやるのは、事業ではない。
人の心が荒むのが最も嫌いだったので、社員の心が荒んでくる前に、思い切って、撤退に踏み切った
・比べるものがない人生、比べるものがない会社、これを
絶対差と呼んでいる。絶対差の世界は、
プロセス主義。過程を大事にする、道筋を大事にするという考え方
・絶対差の世界に到達するには、「
微差、
僅差」を追求し続けること
・「
世の中は根気の前に頭を下げる」。これは、夏目漱石が、弟子の芥川龍之介と久米正雄に宛てた手紙の中で、二人を諫めた言葉。世の中の人は、根気強くやることに対して、敬意を持っているということ
・「
鄙事多脳」。これは、福沢諭吉が塾生に話した言葉。普通の人たちが身辺の雑事として片づける細々としたことに対して、いつも多能で、器用でなければならない、という意味
・江戸時代の狂歌師、大田蜀山人は、「雑巾を 当て字で書けば 蔵と金 あちら福々(
拭く拭く) こちら
福々」といった面白い歌をつくっている。掃除をするというのに価値がある、意味がある、意義も高いということを示している
・人間はやはり人から尊敬されなければ、いい人生にならない。人から軽蔑されたり、ひんしゅくを買ったりしているようでは、絶対にいい人生にならない
・一番汚いと思っているトイレを徹底的にきれいにする。徹底してやれば必ずきれいになる。いくら他をきれいにしても、トイレだけを汚くしていたら、全部そのレベルになる
・「
一人光る みな光る 何もかも光る」(河合寛次郎)。人がやろうがやるまいが、自分一人はやる。それを続けていくと、いつのまにやら、みんながやるようになって、良くなるという意味
・何をやっても成果を上げる人は、やることなすことムダがない。このムダのない人とは、物事の価値を知っている人。あるいは、人の価値も知っている人。その価値を見出していくには、
気づく人になるということ。気づく人は、何でも、できるだけ先に早く知る
・よく気がつく人になるためには、「単純で単調で、ごくありふれた小さなことをいつも大切にする」ということが第一条件。もう一つの条件は、「絶えず
人を喜ばす」ということ
・幸せには、「
もらう幸せ」「
できる幸せ」「
あげる幸せ」の三つがある。最も大事なのが、三つ目の「あげる幸せ」
会社が変わるには、人が変わらなければなりません。しかも、立派に変わらなければなりません。
立派に変わっていくためには、凡事徹底であり、その中でも掃除が一番であると著者は述べられています。ごくごく当たり前のことですが、これを徹底することは、本当に難しいことです。これができている会社は未来永劫安泰なのかもしれません。